JPH0724958A - 表面処理された基材およびその製造方法 - Google Patents

表面処理された基材およびその製造方法

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JPH0724958A
JPH0724958A JP6099687A JP9968794A JPH0724958A JP H0724958 A JPH0724958 A JP H0724958A JP 6099687 A JP6099687 A JP 6099687A JP 9968794 A JP9968794 A JP 9968794A JP H0724958 A JPH0724958 A JP H0724958A
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Takeshi Kawasato
健 河里
Kazuya Hiratsuka
和也 平塚
Takashige Yoneda
貴重 米田
Tsuneo Wakabayashi
常生 若林
Fumiaki Gunji
文明 郡司
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    • C03C2217/47Coatings comprising at least one inhomogeneous layer consisting of a dispersed phase in a continuous phase characterized by the dispersed phase consisting of a specific material

Abstract

(57)【要約】 【構成】水に対する接触角値が70度以上である表面を
形成しうる化合物(1)を含む処理剤で処理することに
より形成された最外層である第1層と、耐熱性高分子薄
膜を形成しうる化合物(2)と高分子微粒子を含む処理
剤で処理して得られる薄膜を加熱して高分子微粒子を熱
分解することにより形成された下層の第2層とを有する
基材。 【効果】撥水性に優れており、ほこり、汚れ、水滴の付
着がなく、半永久的にその状態を維持する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水滴の付着が少ないある
いは付着した水滴の除去が容易な表面を有する基材およ
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】各種基材、また表面処理層を有する各種
基材はあらゆる分野で使用されているが、その表面での
水のもたらす悪影響が問題となっている。
【0003】例えば、電車、自動車、船舶、航空機等の
輸送機器における外板、窓ガラス、鏡、表示機器表面材
等の外層部材、計器盤表面材等の内層部材、その他の物
品の表面は常に清浄であることが好ましい。輸送機器物
品の表面に、雨滴、ほこり、汚れ等が付着したり、大気
中の湿度、温度の影響で水分が凝縮すると、その外観が
損なわれる。それが、人の目に直接触れる表面であった
り、人が直接接する表面であると、不快感や衛生上の問
題も生じる。
【0004】さらには、輸送機器用物品が有する本来の
機能を著しく低下させることにもなる。特に、輸送機器
用物品が透明性、透視性を要求される物品(例えば、窓
ガラス、鏡等)である場合には、この透明性、透視性の
減少はその物品の本来の目的を達成できないことに通
じ、重大事故を誘発する原因ともなりかねない。
【0005】水滴を除去するための手段(例えば、拭き
取り、ワイパーによる除去)は、ときとして表面に微細
な傷を付けることがある。また、水滴等に伴われる異物
粒子よってかかる傷を一層著しいものにすることもあ
る。さらに、ガラス表面に水分が付着した場合には水分
中にガラス成分が溶出し、表面が浸食されていくいわゆ
る焼けを生じることはよく知られている。この焼けを除
去するために強く摩擦すると微細な凸凹を生じやすい。
焼けが激しく生じたガラスや表面に微細な凸凹を生じた
ガラスからなる透視部は、本来の機能が低下しまた、そ
の表面で光の散乱が激しく視野確保の点で不都合が生じ
るため安全性に問題がある。
【0006】その他にも、水分は輸送機器物品の表面に
有害な影響を与えて、損傷、汚染、着色、腐食等を促進
させ、また、輸送機器用物品の電気特性、機械的特性、
光学的特性等の変化を誘発することもある。この種の水
がもたらす悪影響は輸送機器用物品に限らず、建築・建
装用物品、電気・電子機器用物品等各種分野で問題とな
っている現象である。
【0007】このような現状において、基材表面に水滴
の付着が少ない、あるいは付着した水滴の除去が容易な
性質(以下これらを単に撥水性という)を付与すること
は強く求められている。従来から表面を撥水性にするた
めに、例えば、シリコーン系ワックスやオルガノポリシ
ロキサンからなるシリコーン油、界面活性剤など直接塗
布する表面処理剤が提案されている。
【0008】しかし、これらは塗布に伴う前処理を必要
とするものが多く、かつ塗布時に塗布ムラが発生しやす
いという問題があった。また、処理剤自身の基材への付
着性が低いことにより、撥水性の長期持続性を満足する
には至らず、適用範囲が限定されていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような
問題点に鑑みなされたものである。すなわち、本発明者
は従来の提案が有する欠点を解消しうる処理剤の研究、
検討の過程において、多種類の基材に応用が可能であ
り、優れた撥水性を発現する処理剤を見いだし、しか
も、該処理剤で処理した各種基材は撥水性を有する基材
として、特に、輸送機器用あるいは建築・建装用として
きわめて好適であることを確認し、本発明を完成するに
至った。
【0010】したがって、本発明は撥水性を有し、耐摩
耗性、耐薬品性、耐候性に優れることで、その効果が半
永久的に持続する基材の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
したもので、少なくとも2層の表面処理層を有する基材
であって、表面処理層の最外層である第1層が、水に対
する接触角値が70度以上である表面を形成しうる化合
物(1)を含む処理剤で処理することにより形成された
層であり、最外層に接する下層である第2層が、耐熱性
高分子薄膜を形成しうる化合物(2)と高分子微粒子を
含む処理剤で処理して得られる薄膜を加熱して高分子微
粒子を熱分解することにより形成された耐熱性高分子薄
膜層であることを特徴とする表面処理された基材、であ
る。
【0012】本発明において水に対する接触角値が70
度以上である表面を形成しうる化合物(1)[以下化合
物(1)という]は撥水性、防汚性を発現するのに必須
な成分であり、化合物(1)の構造に関しては特に限定
はない。しかし、後述する第2層との密着性を考慮した
場合には、反応性基を有しているものが好ましい。
【0013】ここで、反応性基とは、ハロゲン原子、ア
ルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシ置換アルコキ
シ基、アミノキシ基、アミド基、ケトキシメート基、水
酸基、メルカプト基、エポキシ基、グリシジル基、ビニ
ル基やアリル基等の不飽和炭化水素基、カルボキシ基等
の官能基、あるいは水素結合可能な原子(例えば酸素原
子、窒素原子等)を有する官能基等を意味する。
【0014】化合物(1)は、水に対する接触角値が7
0度以上である表面を形成しうる化合物である必要上、
疎水性の有機基を少なくとも1個有する。この疎水性の
有機基としては、長鎖の炭化水素基やフッ素原子を有す
る有機基等が適当である。
【0015】鋭意検討の結果、少なくとも1つのイソシ
アネート基がケイ素原子に直接結合したイソシアネート
シラン化合物、および/または少なくとも1つの加水分
解性基が直接ケイ素原子に結合した加水分解性シラン化
合物であって、上記のような疎水性の有機基を有する化
合物が、特に本発明における化合物(1)として有効で
あることが判明した。
【0016】以下、「反応性シラン化合物」とは、下記
「加水分解性シラン化合物」と「イソシアネートシラン
化合物」の両者の総称として使用する。
【0017】「加水分解性シラン化合物」とは、少なく
とも1つの加水分解性基がケイ素原子に結合している化
合物である。
【0018】「イソシアネートシラン化合物」とは、少
なくとも1つのイソシアネート基がケイ素原子に結合し
ている化合物である。
【0019】「イソシアネート基」は「加水分解性基」
の一種であるとする考え方もあるが(すなわち、ケイ素
原子に結合したイソシアネート基は加水分解性基の一種
であるとも考えられる)、本発明では両者は別物とす
る。
【0020】なお、本発明においては、「イソシアネー
ト基」と「加水分解性基」の両者の総称を「反応性シラ
ン基」とする。
【0021】反応性シラン化合物として好ましいもの
は、反応性シラン基を複数個有する化合物である。化合
物(1)は前述のように反応性シラン化合物が好まし
い。より具体的には、下記式(A)で表される化合物
[以下化合物Aともいう]、下記式(B)で表される化
合物[以下化合物Bともいう]、および下記式(C)
[以下化合物Cともいう]で表される化合物からなる群
から選ばれる少なくとも1種である。
【0022】
【化4】 (Z)3-a-b(R1)a(R2)bSi-Y-Si(R3)c(R4)d(Z)3-c-d ・・・(A) ただし、R1 、R2 、R3 、R4 は独立に水素原子、水
酸基、アミノ基または炭素数1〜30の有機基、Yは2
価の有機基、Zはイソシアネート基および/または加水
分解性基、a、bは独立に0、1、2であって0≦a+
b≦2なる整数、c、dは独立に0、1、2であって0
≦c+d≦2なる整数を表す。
【0023】
【化5】(R5)e(R6)g(R7)hSi(Z)4-e-g-h ・・・(B) ただし、R5 、R6 、R7 は独立に水素原子、水酸基、
アミノ基または炭素数1〜30の有機基(ただし少なく
とも1つは有機基)、Zはイソシアネート基および/ま
たは加水分解性基、e、g、hは独立に0、1、2であ
って1≦e+g+h≦3なる整数を表す。
【0024】
【化6】 (R8)i(R9)j(Z)3-i-jSiO(Si(R10)k(R11)m(Z)2-k-mO)n-Si(R12)p(R13)q(Z)3-p-q ・・・(C) ただし、R8 〜R13は独立に水素原子、水酸基、アミノ
基または炭素数1〜30の有機基(ただし少なくとも1
つは有機基)、Zはイソシアネート基および/または加
水分解性基、i、jは独立に0、1、2であって1≦i
+j≦3なる整数、k、mは独立に0、1、2であって
0≦k+m≦2なる整数、p、qは独立に0、1、2で
あって1≦p+q≦3なる整数、(ただし、i+j+k
+m+p+q≦7である)、nは繰返し単位数であって
0≦nなる整数を表す。
【0025】化合物(1)は、少なくとも1つの疎水性
の有機基を有する反応性シラン化合物であることが好ま
しい。特に、化合物A〜Cのうち、優れた撥水性を発現
するために有機基の少なくとも1つが疎水基である化合
物であることが好ましい。この場合、反応性シラン基の
Zは、イソシアネート基でも加水分解性基でもよい。化
合物(1)中に両方の基があってもよい。
【0026】化合物(1)におけるイソシアネート基ま
たは加水分解性基は各種基材との密着性を高めるうえで
非常に重要な構造単位である。
【0027】以下、まず化合物(1)についてさらに詳
細に説明する。
【0028】化合物(1)がイソシアネートシラン化合
物の場合、この化合物[以下化合物(1−NCO)とい
う]は水に対する接触角値が70度以上である表面を形
成しうる化合物である必要がある。すなわち、この化合
物(1−NCO)で処理された表面の水に対する接触角
値は70度以上となる必要がある。化合物(1−NC
O)は被処理層と化学的、物理的に結合すると考えられ
る。イソシアネート基が反応性であるので化合物(1−
NCO)は主として化学的反応により被処理層の表面に
結合するものと考えられる。すなわち、結合状態におい
て、イソシアネート基は変化しているものと考えられ
る。
【0029】例えば、被処理層が後述するような反応性
シランにより形成されている場合には、イソシアネート
基は被処理層表面のシラノール基と反応すると考えら
れ、また、イソシアネート基が脱離して生成するシラノ
ール基が反応するとも考えられる。
【0030】化合物(1−NCO)はこのイソシアネー
ト基の反応性により、またイソシアネート基が直接結合
したケイ素原子の効果により、表面の優れた撥水性、耐
摩耗性、耐薬品性、耐候性等の性能を発現するものと思
われる。
【0031】また、化合物A、Bは処理時に、化合物
A、Bの各々分子間でのイソシアネート基(または加水
分解性基)同士の反応によりシロキサン結合を形成する
ため、本発明の処理剤より得られる膜の架橋性、緻密性
は高く、このことが本発明の処理剤より得られる膜の高
い機械的強度、化学的安定性発現に寄与しているものと
思われる。
【0032】一方、化合物Cは少なくとも2つのシロキ
サン結合を有する化合物であり、加えて、処理時には、
化合物C分子間でのイソシアネート基(または加水分解
性基)同士の反応によりシロキサン結合を形成するた
め、本発明の処理剤より得られる膜の架橋性、緻密性は
飛躍的に高くなり、このことが本発明の処理剤より得ら
れる膜の高い機械的強度、化学的安定性発現に寄与して
いるものと思われる。
【0033】化合物Cにおいてはこの観点から膜の緻密
性・架橋性をさらに高めることが考えられる。これは本
発明における化合物Cにおいて繰返し構造単位数を増や
すこと(nを大きくすること)に相当する。この場合に
も、nに特に限定はなく、目的に応じて適宜決定すれば
よいが、nを大きくしすぎると処理時の作業性が悪くな
り、実用性が低下するため好ましくなく、nとしては0
〜5が好適であり、n=0の場合が特に好ましい。
【0034】また、後述するように、有機基を選択する
ことにより、これらの性能をさらに向上させることがで
きる。
【0035】また、本発明においては、被処理層、すな
わち、基材表面に形成される層(以下第2層という)に
対する結合性の面で1個のケイ素原子に結合したイソシ
アネート基は2以上であることが望ましい。
【0036】さらに、化合物Cにおいては下の層との密
着性を高めるには、化合物C内に存在するイソシアネー
ト基が直結したケイ素原子数を増やすことが考えられ
る。これは本発明における化合物Cにおいて繰返し構造
単位数を増やすこと(nを大きくすること)に相当す
る。nに特に限定はなく、目的に応じて適宜決定すれば
よいが、nを大きくしすぎると処理時の作業性が悪くな
り、実用性が低下するため好ましくなく、nとしては0
〜5が好適である。
【0037】次に、化合物(1)が加水分解性シラン化
合物の場合、この化合物[以下化合物(1−X)とい
う]は水に対する接触角値が70度以上である表面を形
成しうる化合物である必要がある。
【0038】すなわち、この化合物(1−X)で処理さ
れた表面の水に対する接触角値は70度以上となる必要
がある。化合物(1−X)は被処理層と化学的、物理的
に結合すると考えられる。加水分解性基が反応性である
ので化合物(1−X)は主として化学的反応により被処
理層の表面に結合するものと考えられる。すなわち、結
合状態において、加水分解性基は変化しているものと考
えられる。
【0039】この化合物(1−X)における加水分解性
基はケイ素原子に直接結合した基である。加水分解性基
としては、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、アシル
オキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、アミノキシ
基、アミド基、ケトキシメート基などがある。好ましく
は、アルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、アシ
ルオキシ基等の、酸素原子でケイ素原子と結合する加水
分解性基である。これらの加水分解性基の炭素数は好ま
しくは8以下、特に好ましくは4以下である。最も好ま
しくは、炭素数1〜4のアルコキシ基である。
【0040】化合物(1−X)はこの加水分解性基の反
応性により、また加水分解性基が直接結合したケイ素原
子の効果により、表面の優れた撥水性、耐摩耗性、耐薬
品性、耐候性等の性能を発現するものと思われる。ま
た、後述するように、有機基を選択することにより、こ
れらの性能をさらに向上させることができる。また、第
2層に対する結合性の面で1個のケイ素原子に結合した
加水分解性基は2つ以上であることが望ましい。
【0041】化合物(1−X)はそのまま用いてもよ
く、加水分解により部分加水分解生成物として用いても
よい。化合物(1−X)の部分加水分解生成物とは、水
や酸性水溶液中でこれらシラン化合物を部分的に加水分
解し、生成するシラノール基等を有する化合物またはそ
のシラノール基の反応により2以上に分子が縮合した化
合物をいう。酸としては、例えば塩酸、硝酸、酢酸、硫
酸、リン酸、スルホン酸等を使用できる。
【0042】これら、化合物(1−NCO)と化合物
(1−X)は、化合物A〜Cから選ばれるもので水に対
する接触角値が70度以上である表面を形成しうる化合
物が好ましい。化合物A〜C各々から選ばれるより具体
的な化合物[以下それぞれ化合物(1−A)、化合物
(1−B)、化合物(1−C)という]は、存在するR
1〜R13が有機基であって、それらの少なくとも1つが
疎水基であるか、またはYが疎水基である化合物であ
る。いずれも疎水基であってもよい。Zはケイ素原子あ
たり2以上が好ましい。疎水基は撥水性に有効であり、
Zが多いほど第2層に強固に結合すると考えられるから
である。
【0043】R1 〜R13は独立に水素原子、水酸基、ア
ミノ基または炭素数1〜30の有機基である。R1 〜R
13が有機基の場合、その有機基はアルキル基、アルケニ
ル基、シクロアルキル基、アリール基等の炭化水素基、
クロロアルキル基、ポリフルオロアルキル基等のハロゲ
ン化炭化水素基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、メル
カプト基、カルボキシ基、その他の官能基を有する(ハ
ロゲン化)炭化水素基および炭素鎖中にエステル結合、
エーテル結合、チオエーテル結合、イミノ結合、アミド
結合、ウレタン結合、その他の連結結合を有する(ハロ
ゲン化)炭化水素基が好ましい。
【0044】このうち、疎水基としては、長鎖の炭化水
素基と下記ポリフルオロアルキル基である。長鎖の炭化
水素基としては炭素数7〜30のアルキル基やアルケニ
ル基が好ましい。特に上記有機基における疎水基として
は、ポリフルオロ有機基が炭素数3〜21のペルフルオ
ロアルキル基部分あるいは炭素数2〜16のペルフルオ
ロアルキレン基部分を有する有機基であり、長鎖炭化水
素基が炭素数7〜30のアルキル基部分あるいは炭素数
7〜16のアルキレン基部分を有する炭化水素基が好ま
しい。疎水基でない有機基としては、低級アルキル基、
すなわち炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0045】さらに好ましい化合物(1−A)、化合物
(1−B)、化合物(1−C)は2つ以上のフッ素原子
を有する反応性シラン化合物である。
【0046】すなわち、化合物(1−A)においては、
Yが2つ以上のフッ素原子を有する2価の有機基である
か、あるいはそうでない場合は存在するR1 〜R4 の少
なくとも1つが2以上のフッ素原子を有する1価の有機
基である化合物である。Yと存在するR1 〜R4 の少な
くとも1つのいずれもが2以上のフッ素原子を有する有
機基であってもよい。
【0047】化合物(1−B)においては、存在するR
5 〜R7 の少なくとも1つが2つ以上のフッ素原子を有
する1価の有機基である化合物である。これらの場合に
おいて、フッ素原子を有しない有機基は前記の疎水基で
ない炭化水素基が好ましい。2つ以上のフッ素原子を有
する有機基はケイ素原子に、フッ素原子を有しない炭素
原子(例えばメチレン基)で結合することが好ましい。
【0048】化合物(1−C)においては、存在するR
8 〜R13の少なくとも1つが2つ以上のフッ素原子を有
する1価の有機基である化合物である。これらの場合に
おいて、フッ素原子を有しない有機基は前記の疎水基で
ない炭化水素基が好ましい。なお、2つ以上のフッ素原
子を有する有機基はケイ素原子に、フッ素原子を有しな
い炭素原子(例えばメチレン基)で結合することが好ま
しい。
【0049】Yが2つ以上のフッ素原子を有する2価の
有機基である場合、それはポリフルオロアルキレン基、
ポリフルオロオキシアルキレン基(ポリフルオロアルキ
レン基の炭素鎖の中間に少なくとも1つのエーテル結合
が存在するもの)、およびポリフルオロチオアルキレン
基(ポリフルオロアルキレン基の炭素鎖の中間に少なく
とも1つのチオエーテル結合が存在するもの)が好まし
い。特に、両末端のケイ素原子に結合する部分がポリメ
チレン鎖(特にジメチレン基)であり、それらの中間部
分がペルフルオロアルキレン基、ペルフルオロオキシア
ルキレン基(ペルフルオロアルキレン基の炭素鎖の中間
に少なくとも1つのエーテル結合が存在するもの)であ
る2価の有機基が好ましい。これらYの炭素数は6〜3
0、特に6〜16が好ましい。
【0050】Yが2つ以上のフッ素原子を有する2価の
有機基でない場合、それはアルキレン基、オキシアルキ
レン基(アルキレン基の炭素鎖の中間に少なくとも1つ
のエーテル結合が存在するもの)、およびチオアルキレ
ン基(アルキレン基の炭素鎖の中間に少なくとも1つの
チオエーテル結合が存在するもの)であることが好まし
い。その炭素数は2〜30、特に2〜12が好ましい。
Yのみが疎水基でありかつYがフッ素原子を有しない化
合物(1−A)の場合、Yの炭素数は7以上が好まし
い。
【0051】R1 〜R13のいずれかが2つ以上のフッ素
原子を有する1価の有機基である場合、それはポリフル
オロアルキル基、ポリフルオロオキシアルキル基(ポリ
フルオロアルキル基の炭素鎖の中間に少なくとも1つの
エーテル結合が存在するもの)、ポリフルオロチオアル
キル基(ポリフルオロアルキル基の炭素鎖の中間に少な
くとも1つのチオエーテル結合が存在するもの)、また
はこれらのいずれかの基とアルキレン基等の炭化水素基
とがエステル結合その他の前記したような連結結合で結
合した有機基(炭化水素基の他端でケイ素原子と結合す
る)が好ましい。
【0052】ポリフルオロアルキル基、ポリフルオロオ
キシアルキル基はケイ素原子と結合する端部あるいはそ
の周辺がアルキレン基(特にジメチレン基)であって、
他の部分がペルフルオロの有機基であることが好まし
い。
【0053】1価の有機基のペルフルオロ部分は炭素数
3以上のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロオキシ
アルキル基(ペルフルオロアルキル基の炭素鎖の中間に
少なくとも1つのエーテル結合が存在するもの)、また
はペルフルオロチオアルキル基(ペルフルオロアルキル
基の炭素鎖の中間に少なくとも1つのチオエーテル結合
が存在するもの)が好ましく、特に、炭素数3〜16の
ペルフルオロアルキル基が好ましい。
【0054】より具体的には、CnF2n+1CmH2m- (この式
においてnは3〜12の整数、mは2〜4の整数)で表
されるペルフルオロアルキル基部分を有するポリフルオ
ロアルキル基や、CnF2n+1-(この式においてnは3〜1
6の整数)を有するものが好ましい。
【0055】化合物(1−A)の具体例を式(A−1)
〜式(A−80)に、化合物(1−B)の具体例を式
(B−1)〜式(B−18)に、化合物(1−C)の具
体例を式(C−1)〜式(C−151)に示すが、それ
らに限定されない。
【0056】なお、これらの式(A−1)〜式(C−1
51)において、n、mはそれぞれ1以上の整数、Rは
アルキル基等、Rf はポリフルオロアルキル基、RF
ペルフルオロアルキル基、Zはイソシアネート基および
/または加水分解性基を示す。式(A−1)〜式(C−
151)において、Rは炭素数1〜12が、Rf は末端
にペルフルオロアルキル基を有するエチル基が、好まし
い。
【0057】本発明における第1層を形成するための処
理剤には目的に応じて他の化合物や添加剤が加えられ
る。添加剤等は各成分との反応性、相溶性を考慮して選
択すればよく、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、
チタニア等の各種金属酸化物や金属の微粒子、各種樹脂
などを添加できる。例えば、着色が必要であれば、染
料、顔料等の添加も支障ない。
【0058】添加量は化合物(1)の全重量に対して
0.01〜20重量%程度でよく、過剰な添加は本発明
の撥水性、耐摩耗性等を低下させるので望ましくない。
【0059】また、導電性が必要であれば、目的に応じ
た抵抗値の得られる材料(酸化スズ、1TO、酸化亜鉛
等)を添加できる。これら添加剤の添加量は目的とする
抵抗値および材料に応じて決定すればよい。
【0060】上記処理剤は被覆対象の第2層に直接手拭
き等の方法で塗布してもよいし、有機溶剤で溶解あるい
は希釈して溶液状の形態に調製して使用することもでき
る。この有機溶剤による溶液において、含まれる化合物
(1)の合計量は被膜の成形性(作業性)、安定性、被
膜厚さ、経済性を考慮して決定され、0.1〜30重量
%であるのが好ましい。
【0061】有機溶剤としては酢酸エステル類、芳香族
炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ケトン類、エーテ
ル類、アルコール類等の各種有機溶剤が適用できる。た
だし、化合物A、Bがイソシアネート基を有している場
合は反応性官能基(水酸基等)を有している有機溶剤は
望ましくない。したがって、化合物(1−NCO)に関
してはアルコール類は好適でないが、化合物(1−X)
に関しては特に限定はない。希釈溶剤は1種に限定され
ず、2種以上の混合溶剤も使用できる。
【0062】化合物A〜Cは表面自由エネルギーが低い
物質であり、被膜中にごく一部存在する遊離状態の化合
物が極表面層を移動することによって表面での摩擦抵抗
を低減することも耐摩耗性が良好である原因の一部と考
えられる。
【0063】第2層表面の処理にあたっては、特別な前
処理は必要としない。被膜の形成は調製された化合物
(1)を含有する液状物を通常の方法で表面に塗布(例
えば、はけ塗り、流し塗り、回転塗布、浸漬塗布、スプ
レー塗布等の各種方法)し、大気中または窒素中で乾燥
させればよい。
【0064】大気中での乾燥のみで優れた性能を発現す
るが、乾燥速度を高める等の目的で加熱してもよい。加
熱温度は50〜250℃程度が好ましく、加熱時間は5
〜60分程度が適当である。加熱は必要であれば基材の
耐熱性を加味して温度、時間を設定すればよい。
【0065】この表面処理によって生成する第1層の厚
さは特に限定されないが、きわめて薄いものであること
が望ましい。好ましい膜厚は2μm以下である。その下
限は単分子層厚である。
【0066】次に、耐熱性高分子薄膜を形成する化合物
(2)[以下化合物(2)という]と高分子微粒子を含
む処理剤とそれによる処理によって形成される第2層に
ついて説明する。
【0067】本発明において、第2層を形成するための
材料として化合物(2)と高分子微粒子とが使用され
る。第1層の下層の第2層は第1層の耐久性を飛躍的に
向上させ、基材との密着性を高める効果もある。第2層
は通常基材表面に形成されるが、基材表面にすでに蒸着
膜、スパッタ膜、湿式法等で得られた各種膜があっても
よい。
【0068】各種膜としては、帯電防止膜、透明導電
膜、電磁波シールド膜、紫外線吸収膜、熱線吸収膜、熱
線反射膜等が例示され、これらは組み合わせても用いう
る。各種膜の材質も限定はなく、Si、Zr、Ti、Z
n、Al、Sn、Sb、Pb、Ta等の金属酸化物を含
有する膜等が例示できる。
【0069】第2層を形成するための化合物(2)と高
分子微粒子は、特に制限なく目的に応じて適宜選択さ
れ、市販の種々の材質からなる高分子化合物が使用でき
る。
【0070】高分子微粒子としては、ポリエチレン樹
脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアク
リル酸樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化
ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネ
ート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポ
リアミド樹脂、ポリイミド樹脂、 フッ素樹脂、フェノー
ル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が例示され
る。高分子微粒子の材質はこれら例示される樹脂から選
ばれる1種以上が用いられる。
【0071】高分子微粒子の材質は上記したもののうち
特にポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂
などの熱可塑性樹脂が好ましい。
【0072】より表面だけに凸凹を形成したい場合に
は、表面自由エネルギーの小さい高分子微粒子を用いる
ことが望ましく、その場合には、高分子微粒子の材質と
してPFA(テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ
(アルキルビニルエーテル)共重合体)、PTFE(テ
トラフルオロエチレン重合体)等のフッ素樹脂が好まし
い。
【0073】高分子微粒子の平均粒子径は特に限定され
ず、膜強度の点から1〜1000nmであることが望ま
しい。透明性を重視する場合は、光線の散乱の防止のた
めに平均粒子径は500nm以下、特に200nm以下
であることが好ましい。
【0074】高分子微粒子の粒子径は形成される凸凹の
大きさを制御する因子の1つであり、粒子径が大きい高
分子微粒子を用いるほど、凸凹の大きさを大きくするこ
とになる。すなわち、多くの上層材料を埋め込むことが
可能となる。しかし、あまり凸凹の大きさを大きくしす
ぎると、埋め込みの効果が薄れ摩耗物からの保護が困難
となるため、耐摩耗性が低下することとなる。
【0075】高分子微粒子の分子量は、上記粒子径が満
足されれば特に制約はなく、好ましくは分子量1万〜1
00万以下である。分子量が小さすぎると溶剤と相互作
用し、溶解、膨潤等の影響を受けやすくなり、高分子微
粒子の形態を維持できなくなるためであり、逆に分子量
が大きすぎると微粒子が困難になるためである。
【0076】高分子微粒子の粒子径と膜厚とを調節する
ことにより、凸凹の深さの程度を制御できる。例えば、
膜厚を大きくするか、高分子微粒子の粒子径を大きくす
れば、深い凸凹を形成でき、逆に、膜厚を大きくし小さ
な高分子微粒子を用いるか、あるいは膜厚を小さくする
ことで、浅い凸凹を形成できる。
【0077】凸凹の深さは膜強度の点から1〜1000
nm、特に10〜50nm、が好ましい。一方、凸凹の
密度は高分子微粒子の形状、添加量等で制御できる。
【0078】高分子微粒子の形状は、特に限定されず、
好ましくは球形である。すなわち、アスペクト比の大き
い針状粒子の場合には、膜の表面付近での存在状態がラ
ンダムであり、形成される凸凹の形態が均一にならない
ため、表面膜物性が安定しない。一方、球状粒子の場合
には、表面付近での存在状態の影響を受けず、膜表面で
均一な凸凹が形成されるため、表面膜物性を安定させる
ことができる。
【0079】また、アスペクト比の大きい粒子に比して
球状粒子の方が凸凹の緻密性(密度)の観点から有利で
あり、結果として球状粒子を用いた方が、表面積の大き
い膜が得られる。
【0080】表面積の増大ということは、その上層材料
の反応点(官能基)の増加を意味し、このことにより、
その上層材料の高密度化が達成でき、耐久性が高まる。
【0081】また、下層の表面積が増大し、反応点が増
えても、従来材料では有効に(高い確率で)反応点と反
応することが困難であった。本発明の化合物(1)は高
い反応性を有するため、増加した反応点と完全に反応可
能であるため、飛躍的に上層材料の高密度化が実現さ
れ、本発明の高い撥水性、耐薬品性、耐候性、耐摩耗性
が発現可能となる。
【0082】また、本発明により形成される凸凹は、そ
の形状に起因して、第1層と摩耗物との接触面積を低減
することができ、さらに硬度がきわめて高いため、凸凹
間に埋め込まれた第1層を形成する材料が摩耗から保護
されるという作用を奏し、この結果、本発明の基材が高
い耐摩耗性を発現すると思われる。
【0083】高分子微粒子と化合物(2)の合計に対す
る高分子微粒子の割合は特に限定されない。基本的には
高分子微粒子添加量は目的に応じて決定するべきであ
る。凸凹密度を小さくしたい場合には添加量を小さく
し、また、逆の場合には添加量を大きくすればよい。高
分子微粒子添加量を制御することは、その上層である第
1層物質の存在量を制御することにも通じる。
【0084】高分子微粒子の添加量は、多すぎると熱分
解後に形成される被膜の機械的強度が低下するため80
重量%以下がよく、少なすぎると高分子微粒子の添加効
果が発現しにくいため5重量%以上がよい。5〜50重
量%が特に好ましい。
【0085】上述した通り、凸凹の密度は、高分子微粒
子の添加量、形状で制御しうる。形成される凸凹の密度
としては、凹部と凹部の中心間の平均距離が10μm以
下であることが好ましく、1μm以下が特に好ましい。
【0086】得られる凸凹の形態は成膜方法、膜厚、高
分子微粒子の形態、径等で制御可能であり、目的に応じ
て決定すればよい。
【0087】高分子微粒子が球状である場合の断面模式
図を図1〜3に例示する。図において、1は高分子微粒
子、2は耐熱性高分子薄膜層、3は基材、Xは凹部と凹
部の中心間の平均距離を示す。
【0088】好ましい形態としては図2〜3に示すよう
に高分子微粒子が、ある程度、膜に埋め込まれた後、熱
分解により形成された凸凹が好ましい。
【0089】高分子微粒子の埋め込まれ体積が、ある程
度以上となると、図3に示すように球状粒子に沿う形で
クレータ状の盛り上り部分が形成される。これも表面積
の増大、摩耗物との接触面積低減および上層材料の保護
効果増大に寄与するため、有効である。
【0090】化合物(2)は、耐熱性高分子そのもので
も処理の際の重合等によって耐熱性高分子となりうる化
合物でもよい。化合物(2)によって形成される耐熱性
高分子は高分子微粒子の熱分解温度よりも高い熱分解温
度を有する材料である必要がある。高分子微粒子を熱分
解する際に化学的、物理的に変化しない材料であること
が好ましい。この耐熱性高分子は高分子微粒子よりも少
なくとも50℃高い熱分解温度を有することが好まし
い。
【0091】化合物(2)は、処理の際基材等の表面で
薄膜を形成しうるものである。例えば、処理剤中に溶解
〜分散した化合物(2)が処理の際溶剤等が除去される
ことにより耐熱高分子薄膜となることが必要である。具
体的には耐熱性高分子そのものや架橋して耐熱性高分子
となりうる化合物の溶液や分散液が使用される。テトラ
アルコキシシランのような加水分解により耐熱性高分子
となりうる化合物やその部分分解物の溶液や分散液も使
用できる。
【0092】化合物(2)としては、高分子微粒子の材
質となりうる前記した樹脂やシリコーン樹脂なども使用
できる。最も好ましい化合物(2)は前記したような反
応性シラン化合物、およびそれらの部分加水分解物であ
る。この反応性シラン化合物としては、化合物A、Bの
うち疎水基を有しない化合物が好ましい。この反応性シ
ラン化合物はエポキシ基やアミノ基などの官能基を有す
る有機基を有していてもよい。
【0093】最も好ましい化合物は4官能性の反応性シ
ラン化合物である。この化合物は前記式(B)において
e=g=h=0である化合物であり、例えば、テトラア
ルコキシシランやテトライソシアネートシランなどの4
官能性の反応性シラン化合物などである。
【0094】次いで好ましい化合物は、前記式(A)に
おいてa=b=c=d=0の化合物である。Yは炭素数
6以下のフッ素原子を含まないアルキレン基が好まし
い。化合物Bで疎水基を含まない化合物も好ましい。化
合物Aで疎水基を含まない化合物も使用できる。第1層
に使用された化合物(1)よりも相対的に撥水性が低い
薄膜を与えるような前記化合物(1−A)、(1−B)
や(1−C)も使用できる。
【0095】第2層を形成する化合物(2)は高分子微
粒子とバインダーを溶剤で希釈して使用することが作業
上の点から好ましい。溶剤としては前記の有機溶剤等が
使用できる。
【0096】第2層を形成する化合物(2)には他の添
加剤を添加できる。この添加剤としては具体的には、例
えば、Sn、In、Al、Zn、Zr、Ti、Sb、P
b、Ta、Siなどの金属やそれらの金属酸化物からな
る微粒子等の充填剤、界面活性剤などがある。それらの
使用割合は、化合物(2)の全重量に対して0.01〜
20重量%が適当である。
【0097】基材の表面処理にあたっては特別な前処理
を必要としない。しかし、目的に応じて行うことは別段
問題なく、例えば、希釈したフッ酸、塩酸等による酸処
理、水酸化ナトリウム水溶液等によるアルカリ処理ある
いはプラズマ照射等による放電処理を行うことができ
る。
【0098】第2層の形成は特に限定されず、通常は調
製された化合物(2)を含む有機溶剤よりなる液状物を
通常の処理方法によって、表面に塗布(例えば、はけ塗
り、流し塗り、回転塗布、浸漬塗布、スプレー塗布等の
各種方法)し、大気中または窒素中で、加熱して乾燥さ
せる。この加熱処理により高分子微粒子が熱分解し、凸
凹な表面が形成される。したがって、加熱温度は球状高
分子化合物、基材の耐熱性に応じて決めればよい。通
常、300℃〜800℃の範囲で処理される。
【0099】加熱処理による高分子微粒子の熱分解は完
全である必要はなく、部分的に、例えば、耐熱性高分子
薄膜内部に、残存している場合でも本発明の効果は充分
である。
【0100】この表面処理によって生成する第2層の膜
厚は特に限定はなく、きわめて薄いものであってもよ
い。好ましい膜厚は第1層と同様、2μm以下である。
あまり厚い膜厚は耐擦傷性、外観品質および経済性の点
で好ましくない。
【0101】前述したように形成される第2層の凸凹の
程度、各層の厚さは組成物を含む液状物の組成物濃度、
塗布条件、加熱条件、高分子微粒子の材質、添加量、大
きさ等によって適宜制御しうる。
【0102】本発明の第1層は比較的屈折率が小さく、
これゆえに低反射性も付与される。こうした効果を期待
するのであれば第1層の膜厚を光学干渉が生じる膜厚に
制御すればよい。撥水性を発現するには理論的には被膜
の膜厚は単分子層以上あればよく、これに経済的効果も
加味して前記のように2μm以下が望ましい。
【0103】本発明が適用可能な基材は特に限定はな
い。例えば、金属、ガラス、セラミック、その他の無機
質材料や有機質材料、あるいはその組み合わせ(複合材
料、積層材料等)がある。基材の表面は基材そのものは
勿論、塗装金属板等の塗装表面や表面処理ガラスの表面
処理層の表面など基材表面とは異なる材質の表面であっ
てもよい。基材の形状は平板に限られず、全面にあるい
は一部に曲率を有するものなど目的に応じた任意の形状
であってよい。
【0104】本発明において特に適当な基材はガラス等
の透明な材料からなる基材であり、適当な物品とはそれ
らを装着した透明性を利用した物品である。したがっ
て、本発明の基材は、輸送機器用物品、建築・建装用物
品として特に望ましい。
【0105】輸送機器用物品とは、電車、バス、トラッ
ク、自動車、船舶、航空機等の輸送機器における外板、
窓ガラス、鏡、表示機器表面材等の外装部材、計器盤表
面材等の内装部材、その他の輸送機器に使用される部
品、構成部材をいう。電車のボディ、窓ガラス、パンタ
グラフ等、自動車、バス、トラック等のボディ、フロン
トガラス、サイドガラス、リアガラス、ミラー、バンパ
ー等、船舶等のボディ、窓ガラス等、航空機等のボデ
ィ、窓ガラス等が例示できる。
【0106】物品は表面処理された基材のみからなって
いてもよく、表面処理された基材が組み込まれたもので
あってもよい。例えば、前者として自動車用の窓ガラス
があり、後者としてガラス鏡が組み込まれた自動車用バ
ックミラー部材がある。
【0107】こうした基材、物品においては撥水性によ
り表面に付着する水滴がはじかれ、特に、運行に伴っ
て、受ける風圧との相互作用によって表面上を急速に移
動し、水滴として溜ることなく、水分が誘発する悪影響
を排除することが可能となる。特に、各種窓ガラス等の
透視野部での用途では水滴の飛散により視野確保が非常
に容易となり車両の安全性向上に通じるものである。
【0108】また、水滴が氷結するような環境下におい
ても氷結することなく、仮に、氷結したとしても解凍は
著しく速い。さらには、水滴の付着がほとんどないため
定期的な清浄作業回数を低減でき、しかも、清浄はきわ
めて容易で、美観保護の点からも非常に有利である。
【0109】建築・建装用物品とは、建築物に取り付け
られる物品、すでに建築物に取り付けられた物品、ある
いは建築物に取り付けられていなくてもそれとともに使
用される建築用物品、家具、什器などの建装用物品およ
びそれらの物品の構成要素である基材(ガラス板等)を
いう。
【0110】具体的には、窓ガラス板、窓ガラス、屋根
用ガラス板やガラス屋根をはじめとする各種屋根、ドア
用ガラス板やそれがはめ込まれたドア、間仕切り用ガラ
ス板、温室用ガラス板や温室、ガラスの代わりに使用さ
れる透明プラスチック板やそれを有する上記のような建
築用物品(窓材、屋根材など)、セラミック、セメン
ト、金属その他の材料からなる壁材、鏡やそれを有する
家具、陳列棚やショーケース用のガラスなどがある。
【0111】物品は表面処理された基材のみからなって
いてもよく、表面処理された基材が組み込まれたもので
あってもよい。例えば、前者として窓用ガラス板があ
り、後者としてガラス鏡が組み込まれた家具がある。
【0112】こうした表面処理された基材においては、
撥水性により表面に接触した水滴がはじかれて付着し難
く、たとえ付着してもその量は少なく、また、付着した
水滴の除去が容易である。また、水滴が氷結するような
環境下においても氷結することはなく、仮に、氷結した
としても解凍は著しく速い。さらには、水滴の付着がほ
とんどないため定期的な清浄作業回数を低減し得て、し
かも、清浄はきわめて容易で美観保護の点からも非常に
有利である。
【0113】
【実施例】以下に本発明の実施例を挙げさらに説明する
が、本発明はこれらに限定されない。
【0114】以下の実施例および比較例において得られ
た塗膜の形成された撥水性、防汚性を有するガラスの各
評価試験方法は次の通りであり、各試験後の撥水性は接
触角を測定して評価した。
【0115】[接触角測定方法]直径1mmの大きさか
らなる水滴の接触角(°)を測定した。表面上の異なる
5ケ所にて測定を行いその平均値で示した。
【0116】[耐摩耗性試験]試験機として(株)ケイ
エヌテー製の往復式摩耗試験機を用い、ネル布、荷重1
kg、10000回の試験条件で摩耗試験を実施し、試
験後の撥水性を評価した。
【0117】[耐候性試験]紫外線照射を8時間(70
℃)、湿潤曝露を4時間(50℃)とする工程を1サイ
クルとして、200サイクルの耐候性試験を実施し、試
験後の撥水性を評価した。
【0118】[煮沸試験]沸騰水中に1時間浸漬した。
試験後の撥水性を評価した。
【0119】[使用化合物] (a)C9F19C2H4Si(OCH3)3 (b)(CH3O)3SiC2H4C6F12C2H4Si(OCH3)3 (c)Si(OC2H5)4 (d)C8F17C2H4Si(NCO)3 (e)C18H37Si(NCO)3 (f)Si(NCO)4 (g)(C8F17C2H4)(NCO)2SiOSi(C8F17C2H4)(NCO)2 (h)(C8F17C2H4)(NCO)2SiOSi(NCO)3 [調合例1]撹拌子および温度計がセットされた容器に
ヘキシレングリコール260.2gを入れ、次に(c)
18.8g、1重量%塩酸水溶液18.0g、平均粒径
70nmのポリスチレン微粒子3.0gを順次添加し
て、30℃で撹拌を30分行い1昼夜放置し処理剤1を
得た。
【0120】[調合例2]撹拌子および温度計がセット
された容器にヘキシレングリコール260.2gを入
れ、次に(c)18.8g、1重量%塩酸水溶液18.
0gを順次添加して、30℃で撹拌を30分行い1昼夜
放置し処理剤2を得た。
【0121】[調合例3]撹拌子および温度計がセット
された容器にエタノール803.9gを入れ、次に
(c)104.2g、1重量%塩酸水溶液71.9g、
平均粒径150nmのポリメチルメタクリレート微粒子
20.0gを順次添加して、30℃で撹拌を30分行い
1昼夜放置し処理剤3を得た。
【0122】[調合例4]撹拌子および温度計がセット
された容器にイソプロピルアルコール246.8gを入
れ、次に(a)2.6g、(b)5.0g、(c)2.
0g、1重量%塩酸水溶液2.2gを順次添加して、3
0℃で撹拌を60分行い5日間放置し処理剤4を得た。
【0123】[調合例5]撹拌子および温度計がセット
された容器に酢酸イソブチル270.3gを入れ、次に
(d)27.0g、(e)3.0g、(f)0.6gを
順次添加して、25℃で撹拌を10分行い処理剤5を得
た。
【0124】[調合例6]撹拌子および温度計がセット
された容器にへキシレングリコール834.8gを入
れ、次に平均粒子径80nmのポリメチルメタクリレー
ト微粒子分散液40.0g、エチルシリケート40の6
2.5g、1重量%塩酸水溶液62.4gを順次添加し
て、30℃で撹拌を30分行い1昼夜放置し処理剤6を
得た。
【0125】[調合例7]撹拌子および温度計がセット
された3ツ口フラスコに、(g)1.0g、フロン22
5(C3 HF5 Cl2 )の99.0gを加え1時間撹拌
した。この溶液の温度を25℃に維持しながら1昼夜撹
拌を継続し処理剤7を得た。
【0126】[調合例8]撹拌子および温度計がセット
された3ツ口フラスコに、(h)1.0g、フロン22
5の99.0gを加え1時間撹拌した。この溶液の温度
を25℃に維持しながら1昼夜撹拌を継続し処理剤8を
得た。
【0127】[調合例9]撹拌子および温度計がセット
された3ツ口フラスコに、(d)3.0g、酢酸エチル
97.0gを加え1時間撹拌した。この溶液の温度を2
5℃に維持しながら1昼夜撹拌を継続し処理剤9を得
た。
【0128】[調合例10]撹拌子および温度計がセッ
トされた容器にへキシレングリコール834.8gを入
れ、次に平均粒子径80nmのポリメチルメタクリレー
ト微粒子分散液40.0g、平均粒子径5nmの酸化ス
ズゾル微粒子分散液120.5g、エチルシリケート4
0の62.5g、1重量%塩酸水溶液62.4gを順次
添加して、30℃で撹拌を30分行い1昼夜放置し処理
剤10を得た。
【0129】[実施例1]あらかじめ酸化セリウム研磨
を行い洗浄したガラス板にフレキソ印刷法で処理剤1を
塗布し、マッフル炉にて600℃、10分加熱処理を行
った。加熱処理後、マッフル炉より板を取りだし室温ま
で冷却した。次にこの板を処理剤4に浸漬し、6cm/
分の速度で引き上げ、200℃、30分加熱処理を行
い、試験片を作製した。この試験片を評価した結果を表
1に示す。
【0130】[実施例2]あらかじめ酸化セリウム研磨
を行い洗浄したガラス板にスピンコート法で処理剤3を
塗布し、マッフル炉にて650℃、10分加熱処理を行
った。加熱処理後、マッフル炉より板を取りだし室温ま
で冷却した。次にこの板を処理剤4に浸漬し、6cm/
分の速度で引き上げ、200℃、30分加熱処理を行
い、試験片を作製した。この試験片を評価した結果を表
1に示す。
【0131】[実施例3]あらかじめ酸化セリウム研磨
を行い洗浄したガラス板にフレキソ印刷法で処理剤1を
塗布し、マッフル炉にて600℃、10分加熱処理を行
った。加熱処理後、マッフル炉より板を取りだし室温ま
で冷却した。次にこの板に処理剤5を滴下し、ワックス
掛けの要領で塗布し、室温で60分乾燥し、試験片を作
製した。この試験片を評価した結果を表1に示す。
【0132】[実施例4]あらかじめ酸化セリウム研磨
を行い洗浄したガラス板にディップコート法で処理剤3
を塗布し、マッフル炉にて650℃、10分加熱処理を
行った。加熱処理後、マッフル炉より板を取りだし室温
まで冷却した。次にこの板を処理剤5を滴下し、ワック
ス掛けの要領で塗布し、室温で60分間乾燥し、試験片
を作製した。この試験片を評価した結果を表1に示す。
【0133】[実施例5]あらかじめ酸化セリウム研磨
を行い洗浄したガラス板にフレキソ印刷法で処理剤3を
塗布し、マッフル炉にて650℃、10分加熱処理を行
った。加熱処理後、マッフル炉より板を取りだし室温ま
で冷却した。次にこの板を処理剤7を滴下し、ワックス
掛けの要領で塗布し、室温で60分間乾燥し、試験片を
作製した。この試験片を評価した結果を表1に示す。
【0134】[実施例6]あらかじめ酸化セリウム研磨
を行い洗浄したガラス板にフレキソ印刷法で処理剤6を
塗布し、マッフル炉にて650℃、10分加熱処理を行
った。加熱処理後、マッフル炉より板を取りだし室温ま
で冷却した。次にこの板を処理剤8を滴下し、ワックス
掛けの要領で塗布し、室温で60分間乾燥し、試験片を
作製した。この試験片を評価した結果を表1に示す。
【0135】[実施例7]あらかじめ酸化セリウム研磨
を行い洗浄したガラス板にフレキソ印刷法で処理剤6を
塗布し、マッフル炉にて650℃、10分加熱処理を行
った。加熱処理後、マッフル炉より板を取りだし室温ま
で冷却した。次にこの板を処理剤9を滴下し、ワックス
掛けの要領で塗布し、室温で60分間乾燥し、試験片を
作製した。この試験片を評価した結果を表1に示す。
【0136】[比較例1]あらかじめ酸化セリウム研磨
を行い洗浄したガラス板にフレキソ印刷法で処理剤2を
塗布し、マッフル炉にて600℃、10分加熱処理を行
った。加熱処理後、マッフル炉より板を取りだし室温ま
で冷却した。次にこの板を処理剤4に浸漬し、6cm/
分の速度で引き上げ、200℃、30分加熱処理を行
い、試験片を作製した。この試験片を評価した結果を表
1に示す。
【0137】[比較例2]あらかじめ酸化セリウム研磨
を行い洗浄したガラス板を処理剤4に浸漬し、6cm/
分の速度で引き上げ、200℃、30分加熱処理を行
い、試験片を作製した。この試験片を評価した結果を表
1に示す。
【0138】実施例1〜7により、本発明のガラスは優
れた撥水性能、密着性、耐摩耗性能、耐候性能を有する
ことが確認できた。また、本発明の必須成分である高分
子微粒子を含まない構成(比較例1)および下層を有し
ていない構成(比較例2)のガラスでは密着性、耐摩耗
性能、耐候性能が不足していることが確認できた。
【0139】[実施例8]実施例4で作成した試験片を
表2に示す薬品に24時間浸漬し、取りだして直ちに洗
浄した後、この試験片の外観変化および撥水性を評価し
た。その結果を表2に示す。表2から明らかなように本
発明のガラスは耐薬品性に優れていることが確認でき
た。
【0140】[実施例9]実施例5の方法で自動車用フ
ロント合わせガラス表面に処理を行い、自動車に装着し
た。この自動車を日中4時間の走行テストを1ケ月間行
い、日毎にフロント表面への汚れ、ほこりの付着状態、
また、雨天時においては水滴の付着状態を肉眼で観察し
た。
【0141】その結果、汚れ、ほこりの付着、水滴の付
着による水垢の発生は全く見られず、まれにそれらの発
生が認められてもティッシュペーパーで軽く拭くことに
より容易に除去された。また、雨天時には、表面の水滴
がはじかれ走行による風圧との相互作用によってすみや
かに移動してしまい、ワイパーを使用することなく視野
が確保された。さらに未処理のフロント合わせガラスに
付着している水滴が氷結する、あるいは空気中の水分が
凝縮してフロントガラスに氷結するような環境下(0℃
〜−5℃)での走行テストにおいてフロントガラスでの
氷結は全くみられなかった。
【0142】次いでさらに厳しい低温環境下(−10℃
〜−15℃)ではフロントガラスでの氷結も認められる
が、その解凍も速く、未処理のフロントガラスに比し著
しい差があった。
【0143】[実施例10]実施例9の実施例5の方法
を実施例7の方法に変更して走行試験をしたところ、実
施例9と同様の効果が確認できた。
【0144】[実施例11]実施例9のフロント合わせ
ガラスをサイドガラス、リアガラスに変更して走行試験
をしたところ、実施例9と同様の効果が確認できた。
【0145】[実施例12]実施例9のフロント合わせ
ガラスをサイドミラーに変更して走行試験をしたとこ
ろ、実施例9と同様の効果が確認できた。
【0146】[実施例13]実施例9の方法で建築用窓
ガラスの表面に塗布し、被膜を形成した。かくして得ら
れた窓ガラスを家に取り付けた。この窓ガラス表面への
汚れ、ほこりの付着状態、また、雨天時においては水滴
の付着状態を肉眼で観察した。
【0147】その結果、汚れ、ほこりの付着、水滴の付
着による水垢の発生は全く見られず、まれにそれらの発
生が認められてもティッシュペーパーで軽く拭くことに
より容易に除去された。また、雨天時には、表面の水滴
がはじかれ転落し、特に風の強い日には風圧との相互作
用によってすみやかに移動してしまい視野が確保され
た。さらに未処理の窓ガラスに付着している水滴が氷結
する、あるいは空気の水分が凝縮して窓ガラスに氷結す
るような環境下(0℃〜−5℃)でのテストにおいて窓
ガラスの氷結は全く見られなかった。
【0148】次いでさらに厳しい低温環境下(−10℃
〜−15℃)では窓ガラスでの氷結も認められるが、そ
の解凍も速く未処理の窓ガラスに比し著しい差があっ
た。
【0149】[実施例14]あらかじめ酸化セリウム研
磨を行い洗浄したガラス板にフレキソ印刷法で処理剤1
0を塗布し、マッフル炉にて650℃、10分加熱処理
を行った。加熱処理後、マッフル炉より板を取りだし室
温まで冷却した。次にこの板を処理剤7を滴下し、ワッ
クス掛けの要領で塗布し、室温で60分間乾燥し、試験
片を作製した。この試験片の表面抵抗値を三菱油化
(株)製MCP−TESTERで測定したところ、3×
108 Ω/□であった。また、同サンプルを評価した結
果を表1に示す。
【0150】本発明の処理剤に導電性材料の添加が可能
であることおよび導電性材料の添加により導電性付与が
可能であることが確認できた。また、導電性材料を添加
しても本発明のガラスは優れた撥水性能、密着性、耐摩
耗性能、耐候性能が発現可能であることも確認できた。
【0151】実施例14は添加剤として導電性材料を例
示しているが、本発明のガラスは、導電性材料を他の添
加剤に変更しても同等の性能を発現するものである。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【化7】
【0155】
【化8】
【0156】
【化9】
【0157】
【化10】
【0158】
【化11】
【0159】
【化12】
【0160】
【化13】
【0161】
【化14】
【0162】
【化15】
【0163】
【化16】
【0164】
【化17】
【0165】
【化18】
【0166】
【化19】
【0167】
【化20】
【0168】
【化21】
【0169】
【化22】
【0170】
【化23】
【0171】
【化24】
【0172】
【化25】
【0173】
【化26】
【0174】
【化27】
【0175】
【化28】
【0176】
【化29】
【0177】
【化30】
【0178】
【化31】
【0179】
【化32】
【0180】
【化33】
【0181】
【化34】
【0182】
【化35】
【0183】
【化36】
【0184】
【発明の効果】本発明の基材は、あるいはそれを装着し
た物品は、実施例から明らかなように優れた効果が認め
られる。すなわち、1)撥水性に優れており、ほこり、
汚れ、水滴の付着、あるいはそれによる水垢の発生がな
く、まれにそれらの発生があっても容易に除去可能で水
が誘発する悪影響を遮断できるし、洗浄の簡略化が図れ
る、2)撥水性の持続性に優れ、半永久的にその状態を
維持する、3)耐薬品性に優れ、海岸線沿い、あるいは
海水が直接触れる地域での応用も可能で、幅広い分野に
適用可能である、4)撥水性は輸送機器分野、建築・建
装用分野に最適なものである。
【0185】以上のような効果は従来の材料では期待で
きないものであり、これまで使用不可能であった分野に
までその適用範囲を拡大することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る基材表面に形成された耐熱性高分
子薄膜層の断面模式図
【図2】本発明に係る他の例の基材表面に形成された耐
熱性高分子薄膜層の断面模式図
【図3】本発明に係る他の例の基材表面に形成された耐
熱性高分子薄膜層の断面模式図
【符号の説明】 1:高分子微粒子 2:耐熱性高分子薄膜層 3:基材 X:凹部と凹部の中心間の平均距離
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09D 7/12 PSM 175/04 PHV 183/08 PMS C09K 3/18 104 (72)発明者 若林 常生 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社中央研究所内 (72)発明者 郡司 文明 神奈川県横浜市神奈川区羽沢町1150番地 旭硝子株式会社中央研究所内

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも2層の表面処理層を有する基材
    であって、表面処理層の最外層である第1層が、水に対
    する接触角値が70度以上である表面を形成しうる化合
    物(1)を含む処理剤で処理することにより形成された
    層であり、最外層に接する下層である第2層が、耐熱性
    高分子薄膜を形成しうる化合物(2)と高分子微粒子を
    含む処理剤で処理して得られる薄膜を加熱して高分子微
    粒子を熱分解することにより形成された耐熱性高分子薄
    膜層であることを特徴とする表面処理された基材。
  2. 【請求項2】基材が透明材料からなる請求項1の基材。
  3. 【請求項3】基材がガラスである請求項1または2の基
    材。
  4. 【請求項4】基材が輸送機器用の部材である請求項1〜
    3いずれか1項の基材。
  5. 【請求項5】基材が建築・建装用の部材である請求項1
    〜3いずれか1項の基材。
  6. 【請求項6】基材が、帯電防止膜、透明導電膜、電磁波
    シールド膜、紫外線吸収膜、熱線吸収膜、および熱線反
    射膜からなる群から選ばれる少なくとも1種の膜を有す
    る基材である請求項1〜5いずれか1項の基材。
  7. 【請求項7】化合物(1)が、イソシアネート基および
    /または加水分解性基が結合した少なくとも1個のケイ
    素原子と、少なくとも1個の疎水基を有する反応性シラ
    ン化合物である請求項1〜6いずれか1項の基材。
  8. 【請求項8】化合物(1)が、下記式(A)、(B)ま
    たは(C)で表される反応性シラン化合物のうち、その
    有機基の少なくとも1つが疎水基である反応性シラン化
    合物の少なくとも1種である、請求項1〜7いずれか1
    項の基材。 【化1】 (Z)3-a-b(R1)a(R2)bSi-Y-Si(R3)c(R4)d(Z)3-c-d ・・・(A) ただし、R1 、R2 、R3 、R4 は独立に水素原子、水
    酸基、アミノ基または炭素数1〜30の有機基、Yは2
    価の有機基、Zはイソシアネート基および/または加水
    分解性基、a、bは独立に0、1、2であって0≦a+
    b≦2なる整数、c、dは独立に0、1、2であって0
    ≦c+d≦2なる整数を表す。 【化2】(R5)e(R6)g(R7)hSi(Z)4-e-g-h ・・・(B) ただし、R5 、R6 、R7 は独立に水素原子、水酸基、
    アミノ基または炭素数1〜30の有機基(ただし少なく
    とも1つは有機基)、Zはイソシアネート基および/ま
    たは加水分解性基、e、g、hは独立に0、1、2であ
    って1≦e+g+h≦3なる整数を表す。 【化3】 (R8)i(R9)j(Z)3-i-jSiO(Si(R10)k(R11)m(Z)2-k-mO)n-Si(R12)p(R13)q(Z)3-p-q ・・・(C) ただし、R8 〜R13は独立に水素原子、水酸基、アミノ
    基または炭素数1〜30の有機基(ただし少なくとも1
    つは有機基)、Zはイソシアネート基および/または加
    水分解性基、i、jは独立に0、1、2であって1≦i
    +j≦3なる整数、k、mは独立に0、1、2であって
    0≦k+m≦2なる整数、p、qは独立に0、1、2で
    あって1≦p+q≦3なる整数、(ただし、i+j+k
    +m+p+q≦7である)、nは繰返し単位数であって
    0≦nなる整数を表す。
  9. 【請求項9】疎水基がポリフルオロ有機基および/また
    は長鎖炭化水素基である請求項7または8の基材。
  10. 【請求項10】ポリフルオロ有機基が炭素数3〜21の
    ペルフルオロアルキル基部分あるいは炭素数2〜16の
    ペルフルオロアルキレン基部分を有する有機基であり、
    長鎖炭化水素基が炭素数7〜30のアルキル基部分ある
    いは炭素数7〜16のアルキレン基部分を有する炭化水
    素基である請求項9の基材。
  11. 【請求項11】高分子微粒子の平均粒子径が1〜100
    0nmである請求項1〜10いずれか1項の基材。
  12. 【請求項12】化合物(2)が、イソシアネート基およ
    び/または加水分解性基を有する反応性シラン化合物で
    ある請求項1〜11いずれか1項の基材。
  13. 【請求項13】化合物(2)が、テトライソシアネート
    シランおよび/またはテトラアルコキシシランである請
    求項12の基材。
  14. 【請求項14】第2層を形成する処理剤が、金属および
    /または金属酸化物の微粒子を含むものである請求項1
    〜13いずれか1項の基材。
  15. 【請求項15】少なくとも2層の表面処理層を有する基
    材の製造方法であって、基材表面を耐熱性高分子薄膜を
    形成しうる化合物(2)と高分子微粒子を含む処理剤で
    処理し、得られた薄膜を加熱して高分子微粒子を熱分解
    することにより耐熱性高分子薄膜層を形成し、その後、
    該耐熱性高分子薄膜層の表面を、水に対する接触角値が
    70度以上である表面を形成しうる化合物(1)を含む
    処理剤で処理することを特徴とする少なくとも2層の表
    面処理層を有する基材の製造方法。
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