イ オン解離性機能分子及びその製造方法、 イ オン伝導体、 並 びに電気化学装置 明
技術分野
本発明は、 燃料電池のプロ ト細 1ン伝導体等の材料と して好適な イ オン解離性機能分子及びその製造方法、 イオン伝導体、 並び に電気化学装置に関する ものである。 背景技術
固体高分子電解質型燃料電池等に最も広く 使用 されている プロ ト ン伝導体の 1 つは N a f i o n (パーフゾレオロ スノレホン 酸樹脂、 D o P o n t 社製) であ り 、 これは、 その構造が下記 のィ匕学式 1 1 で表される、 パーフルォロイ匕されたスルホン酸系 高分子樹脂である。
化学式 1 1 :
(化学図 1 )
—— (CF2— CF2 ]— (
Nafion
N a f i o n の分子構造は、 本質的に特性が異なる 2 つのサ
ブ構造体、 即ち、 ( 1 ) 疎水性の分子骨格をなす、 パーフルォ 口化された 1 本鎖の主鎖と 、 ( 2 ) 親水性のスルホ ン酸基を含 み、 プ口 ト ン供与サイ ト と して機能する、 パーフルォロ化され た側鎖と からなる。 こ の構造は、 不飽和結合を含まず、 パーフ ルォ 化された構造であるため、 熱的にも化学的にも安定であ るがヽ 乾燥雰囲気下や高温下では、 樹脂内部に吸蔵した、 プロ ト ン伝導性発現に必要な水を失い、 プロ ト ン伝導度が低下しや すレヽ o
一方 、 本出願人は、 既に後述の WO 0 1 / 0 6 5 1 9 (第
6 一 1 3 頁、 図 1 、 2及び 8 _ 1 0 ) において、 フラーレン等 の力 ボ ンク ラ ス タ ー に硫酸水素エス テル基 (- O S 03H ) 又 はスルホン酸基 (- S 03H ) のよ う なプロ ト ン解離性の基を導 入したカーボンク ラスター誘導体を主成分とする材料が、 固体 構造内でプロ ト ンを伝導でき る こ と を示し、 また、 特願 2 0 0
2 一 2 8 6 4 2 において、 プロ ト ン伝導性を有する フラー レ ン 誘導体と して、 図 3 に示す A〜 Dの化合物を例示した。
プ口 卜 ン解離性の基は、 図 3 Aや図 3 B のよ う にフラーレ ン核 に直 結合させる こ と も、 或いは図 3 Cや図 3 Dのよ う に種々 のスぺーサ一基を介して間接的にフ ラー レン核に結合させる こ と でき る。 これらの化合物は、 固体構造内に含まれる水の 量を最適化する こ と によ り 、 1 0 -2 S Z c mを超えるプロ ト ン 伝導率を発現する。
な 、 上記の 「プロ ト ン解離性の基」 と は、 その基から水素 原子がプロ ト ン ( H +) と して電離し、 離脱し得る官能基を意 味する 。 こ の定義は、 本発明においても同様とする。
また 、 本発明において、 金属イオン等をイオンと して離脱し
得る官能基を、 「イオン解離性の基」 と呼ぶこ と にする。また、
Γ官能基」 には、 結合手が 1 つのみの原子団のみな らず、 結合 手を 2つ以上有する原子団をも含む。 「官能基」 は分子端に結 a していても よ く 、 また、 分子鎖中に存在していても よ \ o しかしなが ら、 図 3 A 〜 D のフ ラー レン系材料は、 幾つ の 欠点を抱えている。 その 1 つは、 熱的及び/又は化学的分解に 対する耐性が十分でないこ とである。 図 3 Aの材料は、 水によ る加水分解を受けやすく 、 加水分解を受けないよ う に改良され た図 3 B 〜 D の材料も、 耐熱性が十分ではない。 1 つの例と し てヽ 図 3 C のプチル連結型フ ラー レロ スルホン酸は、 温度を上 げていく と早く も 1 0 0 °C付近から分解し始める。
燃料電池等の電気化学装置に用い られる材料にと って、 その 電 化学装置で求め られる条件の下で熱的にも化学的に も安 定である こ と は、 必須の要件である。
本発明の 目 的は、 上記のよ う な実情に鑑み、 電気化学装置で 求め られる条件の下で熱的にも化学的にも安定であ り 、 燃料 ¾ 池のプロ ト ン伝導体等の材料と して好適なイ オン解離性機能 分子及びその製造方法、 また、 高いイオン伝導性を有し、 電気 化学装置で求め られる条件の下で熱的にも化学的にも安定な ィォン伝導体、 並びにそのイオン伝導体を用いた電気化学装置 を 供する こ と にある。 発明の開示
即ち、 本発明は、 下記の化学式 1 で表される、 イオン解離性 機能分子に係 り 、 また、 そのイ オン解離性機能分子を含む第 1 のィ オン伝導体にも係 り 、 更に、 C m ( mは球状炭素分子を形
成し得る 自然数。 ) と I - C F 2- S 02F と を反応させて C m-(C F 2-S O 2F ) n ( n は 自然数。 ) を合成する工程を有する、 前 記イ オン解離性機能分子の第 1 の製造方法に係る も のでも あ る。
化学式 1 :
C m-(C F 2- G p 1 ) n
( mは球状炭素分子を形成し得る 自然数 : n は自然数 : G p 1 はイオン解離性の基。 )
また、 下記の化学式 4 で表される連結構造部を有する、 ィォ ン解離性機能分子に係 り 、 また、 C mと I - C F 2- S 02F と を 反応させて C m- (C F 2- S 02F ) n ( n は自然数。 ) を合成する 工程と、 前記 C m- (C F 2-S 02F ) nに下記の化学式 5 で表され る化合物を反応させる工程と を有する、 前記イ オン解離性機能 分子の第 2 の製造方法に係る も のでも ある。
化学式 4 :
C m- C F 2-G p 2 - C F 2- C m
( mは球状炭素分子を形成し得る 自然数: G p 2 はイ オン解離 性の基。 )
化学式 5 :
(化学図 2 )
(R2)3Sト IJI~Si(R2)3
M2
(M 2はアルカ リ 金属原子又は- S i (R 2) 3、 R 2はアルキル基。) また、 本発明は、 イ オン解離性の基 ( G p 1 ) と結合してい るジフルォロ メ チレン基が、 フラーレン分子に結合してなる フ ラー レン誘導体からなる第 2 のイ オン伝導体に係わ り 、 また、
第 1 の電極と第 2 の電極と の間に前記イ オ ン伝導体が挟持さ れ、 こ のイ オン伝導体が前記第 1 の電極から前記第 2 の電極へ オンを伝導する よ う に構成された電気化学装置に係わる。 図面の簡単な説明
図 1 A, B は、 本発明の好ま しい実施の形態に基づく 、 プ口 卜 ン解離性機能分子の模式的構造を示す説明図である。
図 2 は、 同、 燃料電池の構成を示す概略断面図である。
図 3 A, B , C, Dは、 特願 2 0 0 2 — 2 8 6 4 2 において 示されているプロ ト ン伝導性を有する フ ラー レ ン誘導体の例 でめ <3 o 発明を実施するための最良の形態
本発明のイ オン解離性機能分子において、 前記球状炭素分子
C mはフ ラーレン分子であるのがよい。 また、 前記イ オン解離 性の基は、 硫酸水素エス テノレ基一 O S 0 2O H、 スノレホ ン酸基 一 S 02O H、 リ ン酸二水素エステル基一 O P O (O H ) 2 、 V ン酸一水素エ ス テノレ基一 O P O (O H )— 、 ホ ス ホ ノ 基一 P o
(O H ) 2 、 カルボキ シル基— C O O H、 スルホ ンア ミ ド基 ― S o 2- N H 2 、 スルホンイ ミ ド基ー S 02— N H— S 02_、 メ タ ンジスルホニル基一 S O 2— C H 2_ S 0 2—、 カルボキサ 、 ヽ 基 — C O — N H 2 、 及ぴカルボキシ ミ ド基一 C O— N H— C o
―から なる群の中か ら選ばれたプロ ト ン解離性の基である の がよい。 これらの官能基に含まれる水素は、 プロ ト ンと して放 出 されやすく 、 これらの官能基は優れたプロ ト ン解離性の官台匕 目匕 基である。
目 U記官能基は、 上記の状態ではプロ ト ン解離性の基であるが 水素ィォンが別の陽イオンで置換されている状態では、 その陽 ィォンのィォン解離性の基と して機能する。 その陽ィォンと し ては アル力 リ 金属原子等の陽イオンがよ く 、 具体的には 、 ジ チクムイオン 、 ナ ト リ ウムイオン、 カ リ ウムイオン、 ルビジゥ ムィォン、 及ぴセシウムイオンを挙げる こ と ができ る。
本発明のィオン解離性機能分子の第 1 の製造方法にぉレヽて、
C 及び/又は C S 2を溶媒と して前記 C m- (C F 2- S o 2F ) nを合成する工程を行う のがよい。 C 6 F 6は前記 C m- ( C F 2- S
O 2F ) nの良い溶媒と して機能し、 C S 2は前記フ ラー レン分子 等の刖記球状炭素分子 c„の良い溶媒と して機能する。
また 、前記 C m- ( C F 2- S O 2 F ) nを塩基性下で加水分解して、 下記の化学式 2 で表されるイ オン解離性機能分子を製造する のがよい。
化学式 2 :
C (C F 2-S O 3M
( mは球状炭素分子を形成し得る 自然数 : n は自然数 : M 1は ァル力 リ 金属原子。 )
また 、 前記化学式 2 で表されるイ オン解離性機能分子の前記 ァル力 リ 金属原子 M 1の陽イ オンを水素イ オンで置換して、 下 記の化学式 3 で表される プロ ト ン解離性機能分子を製造する のがよい。
化学式 3 :
C (C F 2- S O 3H ) n
( mは球状炭素分子を形成し得る 自然数 : n は自然数。 ) 本発明のイ オン解離性機能分子の第 2 の製造方法において、
C 6 F 6及び/又は C S 2を溶媒と して前記 C m-(C F 2- S 02F ) „を合成する工程を行 う のがよい。 上述したよ う に、 C 6F 6は 前記 C m- (C F 2-S 02F )„の良い溶媒と して機能し、 C S 2は前 記フ ラー レン分子等の前記球状炭素分子 C mの良い溶媒と して 機能する。
また、 前記 C m- (C F 2-S 02F ) nに下記の化学式 5 で表され る化合物を反応させ、 下記の化学式 6 で表される連結構造部を 有するイオン解離性機能分子を製造する のがよい。
化学式 5 :
(化学図 3 )
(R2)3Si-N-Si(R2)3
in2
(M 2は、 水素又はアルカ リ 金属原子或いは- S i (R 2) : R 2 はアルキル基。 )
化学式 6 :
(化学図 4 )
Cm— CF2— S02— -S02-CF2— Cm
( mは球状炭素分子を形成し得る 自然数 : M 2はアル力 リ 金属 原子。 )
そ して、 前記化学式 6 で表される連結構造部を有するイ オン 解離性機能分子の前記アル力 リ 金属原子 M 2の陽イ オンを水素 イ オンで置換して、 下記の化学式 7 で表されるプロ ト ン解離性 機能分子を製造する のがよい。
化学式 7 :
(化学図 5 )
cm— CF2— so2— — so2— CF2— CM
H
( mは球状炭素分子を形成し得る 自然数。 )
本発明の第 2 のイオン伝導体において、 i 己フラ一 レ ン分子 が C f ( f = 3 6 、 6 0 、 7 0 、 7 6 、 7 8 、 8 0 、 8 2 、 8
4 等 ) であるの力 Sよ く 、 C 6。 又は C 7 0 であるのがよ り 好ま し い o C 6。又は C 7。は、 現在最も入手しやすレヽ フラ ― レ ン分子で める o 現在用い られている フラー レンの製造方法では、 c 6。 及び C 7。 の生成比率が圧倒的に高 く 、 製造コ ス ト的にも C 6。 及び /又は C 7。を用いるメ リ ッ トが大きい。 更に、 でき るだけ 形がそろ ったフ ラー レン分子を用レ、る こ と で細密にパ ッ キン グでぎ 、 フラーレ ンの表面に結合するイオン解離性の基の密度 を高める こ と ができ る。
また 、前記イ オン解離性の基( G p 3 )の少なく と も 1 つが、 硫酸水素エステル基— O S 02O H、 スルホ ン酸基— S 02O H リ ン酸二水素エス テル基一 O P O (O H ) 2、 リ ン酸一水素エ ス テル基一 O P O (O H )— 、 ホ ス ホ ノ基一 P O (O H ) 2 、 カルボ キ シル基一 C O O H、 ス ルホ ンア ミ ド基ー S 0 2— N H 2 、 ス ルホ ンイ ミ ド基ー S 02— N H— S 〇 2— 、 メ タ ンジスルホ ニル 基 ― S 02— C H 2— S 02—、力ルポキサ ミ ド基— C O— N H 2、 及ぴ力ルポキシ ミ ド基一 C O — N H— C O—力 ら なる群の中 から選ばれたプロ ト ン解離性の基であるのがよい。 これらの官 能基に含まれる水素は、 プロ ト ンと して放出されやすく 、 これ らの官能基は優れたプロ ト ン解離性の官能基である。
、
刖記官能基は、 上記の状態ではプロ ト ン解離性の官能基であ るが 、 水素イオンが別の陽イ オンで置換されている状態では、 その陽イ オンのイオン解離性の基と して機能する。 その陽ィォ ンと しては、 アルカ リ 金属原子等の陽イオンがよ く 、 具体的に
は、 リ チ ウ ムイ オン、 ナ ト リ ウ ムイ オン、 カ リ ウ ムイ オン、 ル ビジゥムイ オン、 及びセシウムイ オンを挙げる こ と ができ る。
また、 前記フラーレ ン分子が連結基によって連結され、 重合 体化されてい る のも よい。 こ の際、 前記連結基がスルホ ンイ ミ ド基を含み、 下記の化学式 6 で表される連結構造部を有するの がよい。
化学式 8 :
(化学図 6 ) Cf— CF2— S02— N— S02-CF2— Cf
H
( C f は、 前記フ ラ ー レ ン分子。 )
前記イ オン解離性の基 ( G p 3 ) が、 スルホ ンイ ミ ド基- S 0 2- N H - S 0 2-の よ う に、 2本の結合手によって 2個の炭素 原子と結合でき る 2価の基である場合には、 前記イ オン解離性 の基 ( G p 3 ) を介してフラーレ ン同士が結びつけ られる こ と になる。 こ のよ う に して重合体化したフラー レ ン誘導体では、 イ オ ン伝導性を高める ために 1 個のフ ラー レ ン に導入する前 記イ オン解離性の基 ( G p 3 ) の個数を増加させても、 水への 溶解性を低く 抑える こ とができ、 高いイオン伝導性と高い耐水 性を実現する こ と ができ る。
こ の際、 前記重合体が、 イ オン伝導性を高めるために、 前記 連結基以外に硫酸水素エス テル基一 O S 02O H、 スルホ ン酸 基— S 02O H、 リ ン酸二水素エス テル基— O P O (O H ) 2、 リ ン酸一水素エ ス テル基一 O P O (O H )―、 ホスホノ基一 P O (O H ) 2 、 カルボキ シル基— C O O H、 スルホ ンア ミ ド基ー S
o - N H 2 、 スルホンイ ミ ド基ー S 02— N H— S 02—、 メ タ ンジスノレホ 二/レ基一 S 02— C H 2_ S 〇 2_ 、 カ ノレポキサ 、
へ K 基一 C o - N H 2 、 及ぴカルボキシミ ド基ー C O— N H ― C o 一か らなる群の中から選ばれたプロ ト ン解離性の基を有 して レ、るのがよい。 これらの官能基に含まれる水素は、 プロ 卜 ンと して放出されやすく 、 これらの官能基は優れたプロ ト ン解離性 の基である
刖記官能基は、 上記の状態ではプロ ト ン解離性の基であるが、 水素イオンが別の陽イオンで置換されている状態では、 その陽 ィォンのィオン解離性の基と して機能する。 その陽ィォンと し ては 、 アルカ リ 金属原子等の陽イオンがよ く 、 具体的には 、 ジ チクムィォン、 ナ ト リ ウムイオン、 カ リ ウムイオン、 ルビジゥ ムイ オン、 及びセシウムイオンを挙げる こ と ができ る。
前記イ オ ン伝導体と 高分子バイ ンダー と が混合又は複合体 化されて成膜されているのも よ く 、 前記バイ ンダーは、 電子伝 導性が低い材料、 具体的には、 ポ リ フ ッ化ビニ リ デン、 ポリ フ ッ化ビ二 リ デンとへキサフルォロプロペン等と の共重合体、 ポ リ フノレオ 口 エチ レ ン、 ポ リ ビニノレアノレ コ ーノレ 、 ポ リ カ ーボネー ト 、 又はポリ フ エ 二 レ ンォキシ ドであるのがよい。 また、 溶媒 可溶な耐熱性樹脂である ポ リ べン ズィ ミ ダゾールゃポ リ ア ミ ドイ ミ ドを成膜材料とするのも よい。
本発明の電気化学装置において、 前記イ オン伝導体が 2 0 μ m〜 3 0 μ πιの厚さ を有する フ ィ ルム状であるのがよい。
また、 前記イオン伝導体がプロ ト ン伝導体であ り 、 燃料電池 と して構成されているのがよい。 この際、前記イオン伝導体が、 自 己加湿性 ( self- humidifying) であ り 得る厚さ を有する フ ィ
ルム状に形成されているのがよい。 また、 水素又はメ タ ノ ール を燃料とする燃料電池と して構成されているのがよい。
なお、 本発明の第 1 および第 2 のィオン伝導体の製造方法に おいて、 — S 02F の代わ り に— S 02C 1 、 — S 02B r または— S 02 I を用いても よレヽ。
以下、 本発明の好ま しい実施の形態に基づく 電気化学装置と して、 燃料電池の 1 例について、 図 1 A, B と 2 を参照しなが ら説明する。
図 1 A、 B は、 本発明に基づく プロ ト ン解離性機能分子の例 と して、 それぞれ、 後述の実施例 1 及び 2 においてその製造方 法を説明する、 図 1 Aフラーレン単量体、 及ぴ図 1 B フラーレ ン重合体か ら なるプ ロ ト ン解離性機能分子の模式的構造を示 す説明図である。
図 1 Aに示すプロ ト ン解離性機能分子では、 ブ ラ一 レ ン C 60 にプロ 卜 ン解離性の基である ス ルホ ン酸基- S O Hが 1 0 個
、、、
程度、 ンフルォロ メ チ レ ン基- C F 2-を介して結合している。 図 1 B に示すプロ ト ン解離性機能分子では、 フラーレ ン C 6。同 士が連結基— C F 2- S 02— N H— S O 2-C F 2—によつて 3 次元的 に連結されてお り 、 プロ ト ン解離性の基と して、 スノレホン酸基
- S O Hの他 に ス ノレホ ンィ ミ ド基- S O 2- N H - S O 2 -ゃス ノレ ホ ンァ 、、 ド基- S 02- N H 2が含まれる。
図 2 は 、 燃料電池の構成を示す概略断面図である 。 図 2 に不 す装置において、 本発明に基づく イオン伝導体であるプロ ト ン 伝導体 2 は、 薄膜状に成膜され、 その両面に燃料電極 3 と酸素 電極 1 と が、 図示省略した電極触媒等と共に接合されて、 膜一 電極接合体 (M E A) 4 を形成する。 そ して、 膜一電極接合体
( M E A ) 4 は、 セル上半部 7 とセル下半部 8 と の間に挟持さ れて、 燃料電池に組み込まれる。
セル上半部 7及びセル下半部 8 には、 それぞれガス供給管 9 及び 1 0 が設け られてお り 、例えば、ガス供給管 9 からは水素、 またガス供給管 1 0 からは空気も しく は酸素が送気される。 各 ガスは図示省略した通気孔を有する ガス供給部 5 及び 6 を通 過して燃料電極 3 および酸素電極 1 に供給される。 ガス供給部 5 は燃料電極 3 とセル上半部 7 を電気的に接続し、 ガス供給部 6 は酸素電極 1 とセル下半部 8 を電気的に接続する。 また、 セ ル上半部 7 には水素ガス の漏洩を防ぐために O リ ング 1 1 が 配置されている。
発電は、 上記のガスを供給しなが ら、 セル上半部 7及ぴセル 下半部 8 に接続されている外部回路 1 2 を閉 じる こ と で行 う こ と ができ る。 この時、 燃料電極 3 の表面上では下記 (式 1 ) 2 H 2 → 4 H + + 4 e -
(式 1 ) の反応によ り 水素が酸化され、 燃料電極 3 に電子を与 える。 生じた水素イ オン H +はプロ ト ン伝導体膜 2 を介して酸 —素電極 1 へ移動する。 こ こで、 燃料電極 3 には、 いわゆるダイ レク ト メ タ ノ ール方式の場合、 燃料と してメ タ ノ ールを供給す る こ と も可能である。
酸素電極 1 へ移動した水素イ オンは、 酸素電極 1 に供給され る酸素と 下記 (式 2 )
O 2 + 4 H + + 4 e - → 2 H 2 0
(式 2 ) のよ う に反応し、 水を生成する。 こ の と き、 酸素は、 酸素電極 1 から電子を取り 込み、 還元される。
こ の際、 プロ ト ン伝導体膜 2 の厚さ を十分薄く 作製しておけ
ば、 酸素電極 1 で発生した水でプロ ト ン伝導体膜 2 を加湿し、 プロ ト ン伝導体膜 2 に高いプロ ト ン伝導性を発揮させる こ と ができ る。 こ の よ う にプロ ト ン伝導体膜 2 が 自 己加湿性 (self -humidifying) である よ う にする には、 その膜厚を 5 0 0 μ m 以下とするのがよい。
(実施例)
次に、 本発明の好ま しい実施例を挙げて、 本発明に基づく ィ オン解離性機能分子とその製造方法を具体的に説明 し、 そのィ オン解離性機能分子か ら なるイ オン伝導体の分解温度およぴ プロ ト ン伝導度を測定した結果を説明する。
実施例 1 (フ ラー レン単量体からなるイ オン解離性機能分子の 製造方法)
以下、 フ ラー レン C 6。にジフルォロ ョ一 ドメ タ ンスルホニル フルオリ ド C F 2 I S 02F を作用 させた後、 生成物を加水分解 して、 プロ ト ン解離性機能分子と してポ リ (ジフルォロ スルホ メ チル) フラーレ ン C 6。を合成した例について説明する。
< ジフルォロ ョ一 ドメ タ ンスルホニルフルオ リ ドの合成〉
フ ラー レ ン c 6。に作用 させる反応物質である ジフルォロ ョ 一 ドメ タ ンス ノレホニルフルオ リ ド I -C F 2- S O 2 F の合成は、 Chen Qing-Yuu, ACTA. CHIMICA. SINICA. , 48 (1990) , 596、 又 は N. D. Volkov et al. , Synthesis, 1979, 972と 同様の方法で 実施した。
Chen Qing-Yuuと 同様の方法 :
まず、 下記の反応によってジフルォロ (フルォロ スルホニル) 酢酸から、 ジフルォロ (フルォロ スルホニル)酢酸銀を合成した, (化学図 7 )
Ag2C03
HOOCCF2S02F AgOOCCF2S02F 室温で、 ジェチルエーテルに炭酸銀 5 . 0 g ( 1 8 . 2 m m o 1 ) を分散させ、 攪拌しなが らジフルォロ (フルォロ スルホ ニル)酢酸 6 . 5 g ( 3 6 . 3 m m o 1 ) をゆっ く り 滴下した。 滴下後、 室温で約 1 日攪拌を続け反応させた。 反応終了後、 反 応液をろ過して未反応の炭酸銀を除去し、 続いてエーテルを蒸 発させて除去する と、 白い固体が得られた。
こ の固体をジェチルエーテルとへキサ ン と の混合溶媒力 ら 再結晶する こ と によ り 、 純粋なジフルォロ (フルォロ スルホニ ル)酢酸銀の白い針状結晶を得た。 収量は 9 . 6 g (収率 9 3 % ) であった。 同定には I R (赤外分光) 法を用いた。
F T— I R (フー リ エ変換赤外分光法) (K B r 法)
V [ c m -つ : 1707, 1690, 1423, 1380, 1232, 1173, 1141,
1021, 809, 758, 610
次に、 下記の反応によ ってジフルォロ (フルォロ スルホニル) 酢酸銀にョ ゥ素を作用 させ、 ジフルォロ ョー ドメ タ ンスルホ二 ルフルオリ ドを合成した。
(化学図 8 )
AgOOCCF2S02F ICF2S02F 反応容器中の反応液を直接蒸留でき る よ う に冷却管を設置 した反応装置を組み立てた。 こ の反応容器にジブルォロ (フル ォロ スルホニル)酢酸銀 7 . 2 g ( 2 6 . 2 m m o 1 ) と ヨ ウ 素 1 0 g ( 7 8 . 6 m m o 1 ) を仕込み、 1 0 0 °Cに力 Q熱する
と、 蒸留装置の冷却管を経由 して 目 的のジフルォロ ョ ー ドメ タ ンスルホニルフルオリ ドが留出 したので、 これを回収した。 収 量は 3 . 3 g で、収率は 4 8 %であった。 同定には、 I R法と、 13 C - N M R (核磁気共鳴) 法および 19 F — NM R法と を用い た。
N. D. Volkov et alと 同様の方法 :
下記の反応に よ っ てジフルォロ (フルォロ スルホニル)酢酸 銀にョ ゥ素を作用させ、 ジフノレオ口 ョー ドメ タ ンスルホニノレフ ルオリ ドを合成した。
(化学図 9 )
紫外光
ICOCF2S02F ICF2S02F 石英製の なす型フ ラ ス コ にジフルォロ (フルォロ スルホ ニ ノレ )ァセチノレョージ ド 1 4 . 3 g ( 5 0 m m o 1 ) を仕込み、 室温で 5 時間水銀ラ ンプか ら の光を照射した。 反応液を蒸留し て、 目 的のジフルォロ ヨ一 ドメ タ ンスルホニルフルオ リ ドを精 製して回収した。 収量は 8 . 2 g で、 収率は 6 3 %であった。 同定には、 I R法と、 13 C — N M R法および 19 F _ N M R法と を用いた。
F T— I R (K B r 法) V [ c m - 1] : 1460, 1240, 1160, 112 0, 930, 890, 810]
13 C - N M R (CDCls) [ ppm] : 115
19 F - N M R (CDCls 、 C6F6基準) [ppm] : 113, 192
< ポ リ (ジフルォロ スルホメ チル) フ ラー レンの合成 >
フラーレン C 6。に、 上述の工程で合成したジフルォロ ヨ一 ド メ タ ンスルホニルフルオリ ド C F 2 I S 02F を作用 させ、 その
反応生成物を加水分解する こ と によ り 、 ポ リ (ジフルォロ スル ホメ チル) フラーレ ンを下記の 3 つの工程によって合成した。 第 1 工程 :
第 1 工程では、 下記の反応によってフラーレン C 6。にスルホ -ルフルオ リ ド基を導入し、 一般式 : C 6。-(C F 2- S 02F ) n (但し、 n は約 1 0。 ) で表される第 1 反応生成物 (これは、 導入された官能基の数 nや導入位置が異なる複数の生成物か らなる。 以下、 同様。 ) を得た。
(ィ匕学図 1 0 )
まず、 フ ラーレン C
6。0 . l g をは力、り 取った。 他方、 ブラ 一レ ンの物質量の 2 4倍の物質量 (フ ラ ー レ ン 1 当量に対して 2 4 当量) の I - C F
2- S O
zF (イ オン伝導性官能基前駆体分 子) 0 . 4 3 g を、 C
6F
6と C S
2と を 1 : 1 の体積比で混合 した混合溶媒 2 0 m · 1 に溶解させた。 そ して、 はか り 取ってお いたフラー レンをこ の溶液に溶解させた。
次に、 その混合溶液を 2 0 0 °Cに加熱し、 9 4 時間反応させ たと こ ろ、 理論収量の 7 0 %以上の反応生成物が得られた (収 量 0 . 2 2 g ) 。 大気圧の下では C eF 6と C S 2と の混合溶媒 は約 5 0 °Cで沸騰するので、 上記の反応は、 オー ト ク レーブ中 のよ う な加圧条件下で反応を行わせた。
上記のプロ ト ン伝導性官能基前駆体分子は、 I 側の端部で I 原子と ラジカルに熱分解し、 この結果生じたラジカル (プロ ト ン伝導性官能基前駆体) が、 I 原子と の結合が切断されて生じ
たラジカル部位によってフラーレン分子に付加する。 一方、 プ 口 ト ン伝導性官能基前駆体分子の S O 2 F側の端部は、 後続の 工程で加水分解され、 スルホ ン酸基に変換される。
C 6 F 6のみを溶媒と して上記の反応を行わせる と、 フラーレ ン分子は C e F eに溶けにく いため、 フラーレン分子が沈殿して しまい、 未反応のまま残される割合が増加する。 従って、 反応 溶媒には、 フ ラー レ ン分子が溶解する C S 2の よ う な成分を添 加 したほ う がよい。 また、 第 1 反応生成物は C 6 F 6に可溶であ るので、 C 6 F 6を使用 して未反応の C 6。と第 1 反応生成物と を 分離する こ と も可能である。
反応に用いる溶媒は、 C 6 F 6と C S 2に限られず、 フラー レ ンを溶角军しゃすいベンゼン、 ジク ロ ロベンゼン、 ニ ト ロべンゼ ン、 トルエンなどのベンゼン系溶媒や、 ラジカルに対し活性が 低く 、 一般的にラジカル反応に用い られる 四塩化炭素、 テ ト ラ ク ロ 口 ェ タ ン、 テ ト ラ ク ロ ロ エチ レ ン、 ト リ ク ロ ロ エチ レ ンな どのハロゲン化炭化水素系溶媒を用いる こ と ができ る。
反応温度おょぴ反応時間も上記の例に限 られる も の ではな く 、 環境によって適宜変更する こ と ができ る。 即ち、 反応温度 および反応時間を決定する に当た り 、 反応温度が高い場合には 反応時間を短く し、 反応温度が低い場合には反応時間を長く す るのがよい。 大抵の場合、 高温側ではフラー レ ン 1 分子当た り に導入されるプロ ト ン伝導性官能基前駆体の数を多く でき、 ひ いてはプロ ト ン伝導体におけるプロ ト ン伝導性官能基の密度 を増加させ、 よ り 高いプロ ト ン伝導性を発揮させる こ と ができ る。
しかしなが ら、 反応温度は、 高すぎる と 、 プロ ト ン伝導性官
能基前駆体分子の分解が著しく な り 、 フラーレ ン と反応しない 分解物が多量に生じるので、 そのよ う な温度よ り 低い温度であ る こ と が必要である。 つま り 、 反応温度は、 フラーレ ンに導入 される プロ ト ン伝導性官能基前駆体の数をでき る だけ多 く す る と 同時に、 フラーレ ン と の反応以外の前駆体分子の副反応を 最小限に抑える よ う に選ばれる。具体的には、本実施例の場合、 好ま しい温度範囲は約 1 0 0 時間の反応時間で約 1 5 0 〜 2 4 0 °Cである。
また、 加熱の代わ り に、 或いは加熱に加えて、 例えば、 可視 光又は紫外光を照射して、 光エネルギーによって活性化のエネ ルギーを与えるな ど、 熱と は異なる別の適当なエネルギー源に よって活性化のためのエネルギーを賦与する こ と もでき る。 本実施例の未反応の C 6。は約 1 %〜 1 0 %であった。 なお、 未反応 C 6。及ぴ溶媒に不溶のその他の望ま し く ない副生成物 は、 生じた時点で濾過によって取り 除けばよい。
第 2 工程 :
第 2 工程では、 第 1 反応生成物を水酸化ナ ト リ ウム (N a O H)水溶液や水酸化力 リ ゥム (K O H )水溶液のよ う なアル力 リ 水溶液と反応させ、 下記のよ う にスルホニルフルオリ ド基を加 水分解して、 一般式 : C e。-(C F 2- S 03N a )n (但し、 n は約 。 ) で表される第 2反応生成物を得た。
(化学図 1 1 )
の工程で使用する反応溶液は、 第 1 反応生成物を加水分解
するために、 N a O H水溶液に C
6F
6と T H F (テ ト ラ ヒ ドロ フ ラ ン) と を加えて構成する のがよい。
乾燥した第 1 反応生成物は、 水や T H F には溶解しに く いた め、 第 1 反応生成物を溶解させて溶液状にするには、 C 6F 6を 溶媒と して反応溶液に添加する のが好ま しい。 こ の C 6F 6を添 加する比率は、 第 1 反応生成物が全量溶解して溶液が形成され る限り 、 特に限定される ものではな く 、 C 6F 6の量は適宜変更 でき る。
また、 こ こで T H F を加える理由は、 界面での活性を向上さ せ、 反応を速やかに進行させるためである。 即ち、 T H F を加 えない場合には、 N a O H水溶液相 と、 第 1 反応生成物を溶解 させた C 6 F 5溶媒相 と は、 完全に水と油の分離状態であ り 、 撹 拌しても反応が進行しにく い。 それに対し、 T H F を少量添加 する と 、 水溶液相と C δ F s溶媒相と がな じみはじめ、 一気に反 応が進行する よ う になる。但し、 T H F の添加量が多すぎる と、 水溶液相 と C 6F 6溶媒相 と が相分離しなく な り 、 反応後に第 2 反応生成物を回収する工程で、 C 6F 6をエバポレータ を用いて 蒸発除去する必要が生じる。 従って、 適量の T H F を添加する こ と が必要である。
例えば、 C 6 F 65 m 1 に T H F 5 O m l を加えた混合有機溶 媒に、 第一反応性生物を 0 . 2 g溶解させ、 1 M N a O H水 溶液 1 0 m l を加えて攪拌して反応させる と 、 加水分解に伴つ て分解生成物が有機溶媒相から N a O H水溶液相に移動 した。
反応後、 水と T H F と を 1 : 1 の体積比で混合した混合溶媒 を溶出液と して用い、 シリ カゲルカ ラムク ロマ ト グラフィ によ つて、 上記の水溶液相から過剰の N a O Hを分離して、 精製さ
れた第 2反応生成物を得る こ と ができた。
1 m o 1 の ス ルホ ニル フ ルオ リ ド基- S O 2 F を加水分解す るのに 1 m o 1 の N a O Hが必要である力 ら、 フラーレン 1 分 子当た り に導入されたプロ ト ン伝導性官能基前駆体の数を 1 0 とする と 、 フラーレ ン分子に導入されたスルホニルフルオリ 基を全量分解するのに必要な N a O Hの物質量の最少量は、 フラ一レンの物質量の 1 0倍 (つま り 、 フラーレン 1 当量に対 して最少で 1 0 当量) である。 通常は、 こ の最少量よ り 過剰の
N a O Hの存在下で加水分解を行い、 スルホニルフルオリ ド基 が全里分解でき る よ う にする。
加水分解反応後の上記 N a O H水溶液相には、 目 的の第 2反 応生成物以外に副生成物と過剰の N a O Hが含まれている。 こ の水溶液か ら第 2 反応生成物を前述のシ リ 力ゲルカ ラ ム ク 口 マ ト グラ フ ィ によって回収するにあたって、 N a O Hを除去す る効果を向上させるために、 溶出液と して上記の水と T H F と の混合溶媒を用いるのがよい。 溶出液と して水を単独で用いる と、 溶出液の極性が強いため、 シリ カゲルにいったん吸着され た N a O Hが徐々 に抜け出 して しまい、 溶出液に N a O Hが混 入する。一方、 T H F を添加 して溶出液の極性を低下させる と 、 シリ カゲルに吸着された N a O Hは吸着されたまま と な り 、 溶 出液に混入する - と はない。
このよ つ にして 、 極めて水溶性の高い第 2反応生成物のみを 含む中性の溶液を得る こ と ができ る。 こ の時点で、 こ の溶出液 から溶媒 ( T H F と水) を取り 除く こ と が好ま しい。 溶媒を取 り 除く 方法と しては、 溶出液から溶媒をエバポレータにて減圧 除去するのがよレ、 ο
第 3 工程 :
第 3 工程では、 下記のよ う に第 2反応生成物に含まれるアル 力 リ 金属イ オン (下記の式では N a +) をプロ ト ンで置換して、 —般式 : C 6。-(C F 2- S 03H)n (但し、 n は約 1 0。 ) で表さ れる第 3反応生成物、 即ち、 所望のプロ ト ン解離性機能分子を 得た。
(化学図 1 2 )
上記のよ う に第 2反応生成物から溶媒 (水と T. H F ) を取 り 除いた後、 第 2反応生成物を水に溶解させて溶液を作り 、 次に こ の溶液をプロ ト ンで置換された陽イ オン交換樹脂カ ラ ム に 注入する と、 カ ラム中で第 2反応生成物のナ ト リ ゥムイ オン N a
+がプロ ト ンによって置換され、 流出液中に上記プロ ト ン解 離性機能分子を得る こ と ができ る。
なお、 プロ ト ン化は、 陽イオン交換樹脂を用いる他に、 H C 1 、 H 2S O " H C 1 04若しく は H N 03のよ う な無機系の強 酸を用いる こ と によって行う こ と ができ、 或いはその他の任意 の好適な方法を用いても よい。
実施例 2 (フ ラー レン重合体からなるイ オン解離性機能分子の 製造方法)
以下、 フラーレン C 6。に実施例 1 と 同様にジフルォロ ヨ一 ド メ タ ンスルホニルフルオ リ ドを作用 させ、 その反応生成物をス ルホンィ ミ ド化によって重合体化し、 その後加水分解する こ と によ り 、 下記の 4つの工程によって溶媒不溶性のフラーレン重
合体か ら なる プロ ト ン解離性機能分子を合成 した例について 説明する。
第 1 工程 :
第 1 工程では、 実施例 1 と 同様に して、 下記の反応によって フ ラ ー レ ン C 6。にスルホュルフルオ リ ド基を導入し、 一般式 C 6。 -(C F 2 - S 0 2 F ) n (但し、 n は約 1 0。 ) で表される第 1 反 応生成物を得た。
(化学図 1 3 )
実施例 1 と重複するので詳細は省略するが、 実施例 1 と異な る点は 、 第 1 反応生成物に導入されたスルホニルフルオリ ド、基 の ―部が第 2 工程のス ルホンイ ミ ド化によ ってフ ラー レン同 士を 結するのに用レヽ られる こ と である。 スルホンィ ミ ド化さ れなかつたスルホ ニルフルオリ ド基は、 実施例 1 と 同様に して 後 の工程で加水分解され、 スルホ ン酸基に変換される。
第 2 ェ程 :
第 2 工程では、 第 1 反応生成物 中 のスルホニルフルオ リ K基 に下記の化学式 9 で表される化合物を作用 させ、 下記のよ 5 に スルホンィ ミ ド化によってフラーレン同士を連結して、 重合体 化した
化学式 9 :
〜75% 反応は、 まず、 濃度 1 Mのナ ト リ ウム ビス ( ト リ メ チルシ リ ル) ア ミ ドの T H F溶液 0 . 5 m l を、 窒素ガス雰囲気中で氷 冷しなが ら固体状の第 1 反応生成物 C 6。-(C F 2 S 02F ) n 0 . 2 g に滴下して加えた。 その後、室温で 5 時間攪拌し、 C 6。-( C F 2S 02F )nを十分に溶解させた。 暗褐色の沈殿物が生成した 後、 溶媒を除去して 6 0 °Cで 3 時間真空中で乾燥させた。
こ う して生成した固体にジォキサン 8 m 1 を加えて溶解さ せた後、 T H F 2 m l に溶解させた第 1 反応生成物 C 6。- ( C F 2 S O 2 F ) n 0 . l g を滴下濾斗力 らカ Bえた。 次に、 8 0 °C
で 1 8 時間還流させなが ら反応させた後、 溶媒を取 り 除き、 得 られた固体を T H F と水で洗浄して、 第 2反応生成物約 0 • 2 g を得た。
こ こで用いるイ ミ ド化試薬と しては、 上記のナ ト リ ウム ビス
( ト リ メ チルシリ ル) ア ミ ド以外に、 下記の化学式 5 で表され る化合物を用いる こ と ができ る。 溶媒は T H Fゃジォキサン以 外に ト ルエ ンやへキサン等の非水系有機溶媒も使用可能であ る 。 反応時間は 1 〜 3 0 時間程度で、 反応進行と と も に沈殿が 形成される。 室温下で反応は進行しにく いため、 反応液の沸点 付近まで加熱するのが望ま しい。
化学式 5 :
(化学図 1 6 )
(R2)3Sト ー Si(R2)3
2 ( Μ 2は、 Η、 又は L i 、 N a 、 K等のアル力 リ 金属原子、 又 は - S i ( R 2 ) : R 2はアルキル基。 )
第 3 工程 :
第 3 工程では、 第 2 工程の重合体化に用い られなかった残余 の スルホニルフルオリ ド基及び ト リ メ チルシリ ル基を、 アル力 リ 性水溶液を用いて下記のよ う に加水分解した。
(ィ匕学図 1 7 )
第 2反応生成物は、 N a O H水溶液、 又は K O H水溶液のよ う なアルカ リ 水溶液と反応させて加水分解する。 例えば、 0 . 2 g の第 2反応生成物を 5 O m l の 1 M N a O H水溶液に分 散させて、 室温で 1 6 時間攪拌した。 濾過したのち、 純水で洗 浄して、 固体の第 3反応生成物を回収した。
第 4 工程 :
第 4 工程では、 下記のよ う に第 3反応生成物に含まれるアル 力 リ 金属イオン (下記の式では N a +) をプロ ト ンで置換して、 所望のプロ ト ン解離性機能分子を得た。
10% HCI aq.
H,
陽イオンのプロ ト ンによ る置換は、 H C 1 、 H
2 S 〇
4、 H C 1 0
4若 し く は H N 0
3の よ う な無機系の強酸を用いる こ と に よって行 う こ と ができ る。 例えば本実施例においては、 固体状 の第 3 反応生成物を 1 0 %の塩酸と 共に 6 0 °Cで 1 2 時間加 熱した。 反応液を濾過した後、 引 き続いて 1 0 %の H C 1 水溶 液及び純水で洗浄する と、 所望の、 溶媒に不溶なプロ ト ン解離 性機能高分子が得られた。
本実施例において、 第 1 工程でフ ラー レンに導入されたスル ホニルフルオ リ ド基- S 02F う ち、 スルホンィ ミ ド化によ っ て フ ラ ー レン間の連結構造部である スルホ ンイ ミ ド基を形成す る も の と 、 その後の加水分解によ っ てスルホン酸基を形成する も の と の比率は、 第 2 工程において、 第 1 反応生成物とイ ミ ド 化試薬、 例えば、 ナ ト リ ウム ビス ( ト リ メ チルシ リ ル) ア ミ ド と のモル比(当量比) を調節する こ と によ り 、制御可能である。 例えば、 本実施例では、 C 6。-( C F 2 S O 2 F ) n 0 . 3 g に対 して、 濃度 1 Mのナ ト リ ウム ビス ( ト リ メ チルシ リ ル) ア ミ ド の T H F溶液 0 . 5 m l を作用 させ、 スルホニルフルオ リ ド基 のほ と ん どをスルホンイ ミ ド基に変換している。 一方、 C 60- (C F 2S 02F )n 0 . 2 g に対し、 同 じ濃度のナ ト リ ウム ビス ( ト リ メ チルシ リ ル) ア ミ ドの T H F溶液を 0 · 1 m 1 反応さ せる と、 プロ ト ン解離性機能高分子と しての収率を低下させる こ と なく 、 フラーレン核に結合している - S 02F基の半分程度 をスルホ ンイ ミ ド化させずに残すこ と が可能であ り 、 こ の未反 応の- S 02F基はその後スルホン酸基- S 03Hに変換される。
また、 C 6。—(C F 2 S 02F )n 0 . 2 g に対して、 同 じナ ト リ ゥム ビス ( ト リ メ チルシ リ ル) ア ミ ドの T H F溶液 0 . 0 1 m
1 以下を反応させた場合には、 十分な架橋構造が形成されず、 生じるプロ ト ン解離性機能高分子は水溶性と なるの に対し、 そ れ以上反応させた場合には、 生じるプロ ト ン解離性機能高分子 は水不溶性と なる。 このよ う に、 フラーレ ン核を連結するのに 十分なサイ トがある場合、 た と えフラーレ ンの単量体からなる プロ ト ン伝導体が水溶性であっても、 フ ラ ー レ ン間の連結構造 部の割合を増加させる こ と によって、 フラーレ ンの重合体から なるプロ ト ン伝導体は水不溶性にする こ と ができ る。
実施例 3 (加熱昇温時の発生ガス の分析によ る耐熱性の評価) 実施例 1 と 2 で合成 したプロ ト ン解離性機能分子から なる 試料、 及ぴ比較例と して図 3 A〜 Dに示したフラーレ ン誘導体 からなる試料について、 加熱昇温時に発生するガス の分析によ つて、 耐熱性を評価する実験を行った。
実験は、 試料約 2 O m g を開放容器に入れ、 こ の容器ごと 、 加熱制御可能な減圧容器に導入した。 減圧容器には、 発生する ガスを検出 し分析でき る R G A (Residual Gas Analyzer) 装 置 (分子量 1 〜 3 0 0 が検出可能) が取 り 付けてある。
減圧容器内を 1 0 - 7 t o r r まで減圧した後、 昇温速度 4 °C /分で 5 0 0 °Cまで昇温しなが ら、 加熱時に発生する ガスを検 出 し分析 した。 ス ルホ ン酸基の分解に起因する S含有の S O 2 または s o 3ガスに着目 し、 それらが発生する温度を分解開始 温度、 最大量のガスが発生する温度を分解ピーク温度と した。 の測定結果を表 1 に示す。
表 1 加熱時のガス分析測定によ る分解温度
(表 1 )
表 1 の結果から、 実施例 1 と 2 では比較例に比べ著しく 耐熱 性が向上したこ とがわかるが、 実用上、 特に、 比較例では分解 開始温度が 1 0 0 〜 1 1 0 °cであったの に対し、 本実施例では
1 0 0 °Cをはるかに超える分解開始温度 ( 1 7 5 °Cまたは 1 9
0 °c ) が実現されたこ とが重要である。 なぜな ら、 現在、 埶利 用や触媒被毒の防止の観点から、 固体高分子電解質型燃料 m池 を水の沸点である 1 0 0 °Cに近い温度で運転する こ と が望ま れてお り 、 それに用いられるプロ ト ン伝導体にも、 そのよ つ な 温度で工業的に有用な寿命を有する こ と が求め られてレ、 るからである。 本実施例はその条件をみたすもの と考え られる 実施例 4 (プロ ト ン伝導度の評価)
実施例 1 と 2 で合成 したプロ ト ン解離性機能分子か ら なる 料 、 及ぴ比較例と して図 3 A〜 Dに示したフラーレ ン誘導体 からなる試料について、 プロ ト ン伝導体と して のプロ ト ン伝導 度を測定した。
実施例 1 と 2 で合成 したプロ ト ン解離性機能分子か ら なる
5¾料を室温下で 1 2 時間真空乾燥後、 得られた粉末を錠剤成型 器で厚さ約 3 0 mのペ レ ツ トに成型した。 ペ レ ツ ト作製時に 金電極に挟み込みこむこ と によ り 、 加圧成型後は金電極にはさ
まれた状態でペ レ ツ トが得られ、 電極と プロ ト ン伝導体が一体 化する。 図 3 A〜Dのフラーレ ン誘導体についても同様にして、 金電極に挟持した試料を作製した。
作製した試料のプロ ト ン伝導度を、 ィ ンピーダンスアナライ ザ一を用いた測定データから算出 した結果を表 2 に示す。 表 2 中の乾燥状態の伝導度と は、 そのペ レ ツ ト試料をロータ リ ーボ ンプで排気した真空中での値である。 乾燥状態での測定が終了 した後、 相対湿度 7 0 %の雰囲気に一 日置いた後、 7 0 % R H の伝導度を測定した。その後、試料を水中に 3 日 間浸漬した後、 水中 3 日浸漬後の伝導度を測定した。 水への浸漬後の伝導度の 測定では、 電極間が短絡した状態になった場合、 プロ ト ン伝導 体が溶解したもの と判断した。
表 2 イ ン ピーダンス測定によ るプロ ト ン伝導度
(表 2 )
表 2 の結果から、 本実施例は、 比較例と 同程度、 或いはそれ 以上のプロ ト ン伝導度を有する こ と がわかる。 特に、 実施例 1 は、 乾燥条件下でのプロ ト ン伝導度が高いこ と から、 燃料電池 の加湿管理が容易になる点が重要であ り 、 実施例 2 は、 耐水性 が著 し く 高いこ と 力 ら ダイ レク ト メ タ ノ ール燃料電池等への
応用が可能である こ と が重要である。
以上に述べてきたよ う に、 本発明の実施の形態及ぴ実施例に よれば、 高度のプロ ト ン伝導性を有し、 電気化学装置で求め ら れる条件の下で熱的に も化 的にも安定である フ ラー レ ン系 プロ ト ン伝導性材料を提供する こ と ができ る 。
これは最も広く 使用 されているプロ ト ン伝導体である N a f i o nが有する安定性とい う長所を、 球状フラーレン分子か らなるプロ ト ン伝導体に賦与 した新規のフ ラー レン系プロ ト ン伝導性材料である。
こ の よ う なフ ラ ー レ ン系プロ ト ン伝導性材料は、 原子量単位 当た り 極めて多く のプロ ト ン伝導性基を有するので、 高度のプ 口 ト ン伝導性を達成し、 短い分子鎖である フ ッ化メ チ レ ン基を 使って酸性基をフラーレンと結合する こ と によ り 、 比較的低い 湿度感度を有するプ ロ ト ン伝導体を得る こ と ができ る。 また、 水溶性とい う 課題は、 プロ ト ン伝導性解離基の前駆体であるス ルホニルフルオリ ド基を用い、 スルホンイ ミ ド架橋する こ と に よ り 解決でき る。
また、 プロ ト ン交換膜と して本発明のフラーレン系プロ ト ン 伝導性材料を使用する こ と によ り 、 乾燥時のス タ ー トア ップや 自 己加湿可能な熱的及び化学的安定性も有する電気化学装置 を実現でき る。
以上、 本発明を実施の形態及び実施例に基づいて説明 した力 本発明はこれらの例に何ら限定される も のではな く 、 発明の主 旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である こ と は言 う までも なレヽ。
産業上の利用可能性
本発明は、 イ オン伝導体膜が対向電極間に挟持され、 電気化 学反応部を構成する、 燃料電池やセ ンサーなどの電気化学デバ ィ スに適用でき、 と り わけ、 従来の固体高分子電解質型燃料電 池の運転温度を引き上げ、 膜の水分管理のためのシス テ ムを簡 素化する等によ り 、燃料電池等の性能ゃコス ト を改善し、また、 従来のプ口 ト ン伝導膜では実現が難 しいダイ レク ト メ タ ノ一 ル燃料電池等を構成する の に、 最適に用い られる。
本発明のイ オン解離性機能分子では、 前記イ オン解離性の基
( G P 1 ) が、 不飽和結合を有する フラーレ ン核等の球状炭素 分子 C 二直結してお らず、 ジフルォロ メ チ レ ン基を介して間 接的に球状炭素分子 C Jこ結合している。 このジフルォロ メ チ レ ン基は 、 飽和炭化水素の基本骨格であるメ チ レ ン基の水素原 子をフ 素原子で置換して、 化学的に不活性化 し、 耐熱性を強 化した基である。 以上の結果、 前記イ オ ン解離性機能分子は、 不飽和 合の影響が前記イオン解離性の基 ( G p 1 ) に及ぶこ と がな < 、 しかもジフルォロ メ チレン基が化学的に不活性で耐 熱性が高いため、 前記イ オン解離性の基 ( G p 1 ) を有する球
Hi
状灰素分子 C mの誘導体の中で、 熱的にも化学的にも最も安定 な構 を有している。
本発明の第 1 のイ オン伝導体は、 前記イ オン解離性機能分子 からなるため、 熱的にも化学的にも安定である。 また、 前記ジ フ ルォ メ チ レ ン基がス ぺーサ一基と して の最小限の大き さ のみを有し、 しかも、 1 個の球状炭素分子 c mに対して多数の 刖記ィォン解離性の基( G p 1 ) を導入する こ と ができ るので、
—ヽ
W1記第 1 のイ オン伝導体における前記イ オン解離性の基 ( G p
1 ) の密度を高める こ と ができ、 比較的低い湿度条件下でも高 レヽィ オン伝導性を実現する こ と ができ る。
しかも、 前記イ オン解離性の基 ( G p 2 ) と して、 スルホン ィ 、、 ド基- S O 2 - N H - S O 2 -のよ う に、 2本の結合手によって
2 個の炭素原子と結合でき る 2価以上の基が含まれる場合に はヽ 前記イ オン解離性の基 ( G p 2 ) を介して前記球状炭素分 子 C „同士が結びつけ られ、 前記イ オン解離性機能分子は重合 体と なる。 重合体化したイ オン解離性機能分子では、 イ オン伝 導性を高めるために 1 個の球状炭素分子 C mにっき導入する前 記ィオン解離性の基 ( G p 1 又は G p 2 ) の個数を増加させて あヽ 水への溶解性を低く 抑える こ と ができ る。 このため、 前記 重合体化したイ オン解離性機能分子からなるイ オン伝導体は、 问レ、耐水性を実現する こ と ができ る。
また、 本発明の第 1 及び第 2 のイオン解離性機能分子の製造 方法は、 それぞれ、 球状炭素分子 C„の単量体及び重合体から なる前記イ オン解離性機能分子の製造方法であって、 いずれも 単純な付加反応と加水分解反応 と置換反応 と で構成されてい るので、 容易に実行でき、 収率も高い方法である。
また、 本発明の第 2 のイオン伝導体は、 前記イ オン解離性の 基 ( G p 3 ) が、 前記ジフルォロ メ チ レン基を介して間接的に フラ一 レン核に結合している フ ラー レン誘導体からなるため、 不飽和結合の影響が前記イ オン解離性の基 ( G p 3 ) に及ぶこ と がなく 、 しかもジフルォロ メ チレン基が化学的に不活性で耐 熱性が高いため、 熱的にも化学的にも安定である。 また、 前記 ジフルォロ メ チレン基が最小限の大き さ のスぺーサ一基であ るため、 前記第 2 のイ オン伝導体における前記イ オン解離性の
基 ( G p 3 ) の密度を高める こ と ができ、 比較的低い湿度条件 下でも高いイオン伝導性を実現する こ と ができ る。
また 、 本発明の電気化学装置によれば、 第 1 の電極と第 2 の ii極と の間に挟持された前記イ オン伝導体が、 前記第 1 の 極
、
か ら 刖記第 2 の電極へイ オ ンを伝導する よ う に構成されてい るので 、 よ り 広い温度範囲の下で熱的にも化学的にも安定な動 作を行わせる こ と ができ、 比較的低い湿度条件下でも高レ、ィ ォ ン伝導性を実現し、 また、 乾燥状態からの動作の立ち上が り を 早く する こ と ができ る。