JP5076310B2 - 高分子電解質、高分子電解質膜、膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明は、下記の一般式(I);
で表されるスチレン系誘導体に由来する構造単位を有する重合体ブロック(A)及びフレキシブルな重合体ブロック(B)を構成成分とし、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有し、重合体ブロック(B)が炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである高分子電解質に関する。
本発明はまた、該高分子電解質を含有する膜、並びに、該膜を用いた固体高分子型燃料電池用の膜―電極接合体及び燃料電池に関する。
また、R2がアリール基である場合の具体例としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができ、これらのアリール基は、炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基等)、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基等)などの置換基を1個または2個以上有していてもよい。
スチレン系誘導体(I)と上記他の単量体との共重合形態はランダム共重合である必要がある。
上記で、炭素数4〜8の共役ジエン及び炭素数2〜8のアルケンの具体例としては、後述の重合体ブロック(B)の説明において挙げるものと同様なものを用いることができる。
A−B−A−B型テトラブロック共重合体、(A−B)nX型星形共重合体(Xはカップリング剤残基を表す)等が挙げられる。これらのブロック共重合体は、各単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明のブロック共重合体が2個以上の重合体ブロック(A)を有する場合、それらは構造や分子量などが互いに同じであっても又は異なっていてもよい。また、該ブロック共重合体が2個以上のフレキシブルな重合体ブロック(B)を有する場合は、それらは構造や分子量などが互いに同じであっても又は異なっていてよい。
この場合のブロック共重合体の構造としては、A−B−C型トリブロック共重合体、A−B−C−A型テトラブロック共重合体、A−B−A−C型テトラブロック共重合体、C−A−B−A−C型ペンタブロック共重合体等が挙げられる。
水素添加は一般的に利用される方法で行うことができ、例えば、アルキルアルミニウム化合物とコバルト、ニッケルなどからなるチーグラー触媒等の水添触媒の存在下に水素を供給する方法、p−トルエンスルホン酸ヒドラジドのようなジイミドを系内で発生する化合物を使用する方法などを採用することができる。
イオン伝導性基の導入量は、得られるブロック共重合体の要求性能等によって適宜選択されるが、固体高分子型燃料電池用の高分子電解質膜として使用するのに十分なイオン伝導性を発現するためには、通常、ブロック共重合体のイオン交換容量が0.30meq/g以上となるような量であることが好ましく、0.50meq/g以上となるような量であることがより好ましい。ブロック共重合体のイオン交換容量の上限については、イオン交換容量が大きくなりすぎると親水性が高まり耐水性が不十分になる傾向となるので、3.0meq/g以下であるのが好ましい。
重合体ブロック(A)又は(B)を構成する単量体の種類、分子量等によって、重合体ブロック(A)又は(B)の製造法は、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法等から適宜選択されるが、工業的な容易さから、ラジカル重合法あるいはアニオン重合法が好ましく選択される。特に、分子量、分子量分布及び重合体の構造の制御のし易さ、重合体ブロック(B)又は(A)との結合の容易さ等からいわゆるリビング重合法が好ましく、具体的にはリビングラジカル重合法あるいはリビングアニオン重合法が好ましい。
また、リビングアニオン重合時に用いる有機溶媒としては、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼンなどの炭化水素溶媒等が好ましく、これらの有機溶媒は単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
前記化学式(Ia)で表される1−(4−ビニルフェニル)アダマンタンは、例えば、非特許文献1に記載されている方法により製造することができる。
具体的には、下記の反応式(I)に示すように、1−ブロモアダマンタンとベンゼンを炭酸カリウムの存在下にパラジウム/炭素触媒(Pd/C)を用いてカップリング反応させて1−フェニルアダマンタンを生成させ、その1−フェニルアダマンタンにジクロロメタン中でTiCl4の存在下で1,1−ジクロロメチルエーテルを反応させてホルミル化を行い、次いで生成したホルミル化物にテトラヒドロフラン(THF)中でトリフェニルホスフィンメチレン(別名:メチレントリフェニルホスホラン)(Ph3P=CH2)を反応させること(Wittigオレフィン反応)により製造することができる。
まず、得られたブロック共重合体にスルホン酸基を導入する方法について述べる。スルホン化は、公知のスルホン化の方法で行える。このような方法としては、ブロック共重合体の有機溶媒溶液や縣濁液を調製し、スルホン化剤を添加し混合する方法やブロック共重合体に直接ガス状のスルホン化剤を添加する方法等が例示される。
イオン伝導性基を有する単量体としては、前記したスチレン系誘導体(I)又はこれと異なる共重合体ブロック(A)の説明において言及した芳香族ビニル系化合物にイオン伝導性基が結合した単量体が好ましく、イオン伝導性基の導入のし易さから、上記した芳香族ビニル系化合物にイオン伝導性基が結合した単量体がより好ましい。上記した芳香族ビニル系化合物にイオン伝導性基が結合した単量体の具体的には、スチレンスルホン酸、α−アルキル−スチレンスルホン酸、ビニルナフタレンスルホン酸、α−アルキル−ビニルナフタレンスルホン酸、ビニルアントラセンスルホン酸、α−アルキル−ビニルアントラセンスルホン酸、ビニルピレンスルホン酸、α−アルキル−ビニルピレンスルホン酸、スチレンホスホン酸、α−アルキル−スチレンホスホン酸、ビニルナフタレンホスホン酸、α−アルキル−ビニルナフタレンホスホン酸、ビニルアントラセンホスホン酸、α−アルキル−ビニルアントラセンホスホン酸、ビニルピレンホスホン酸、α−アルキル−ビニルピレンホスホン酸等が挙げられる。これらの中では、工業的汎用性、重合の容易さ等から、o−、m−又はp−スチレンスルホン酸、α−アルキル−o−、m−又はp−スチレンスルホン酸が特に好ましい。
本発明の高分子電解質膜は、本発明の効果を損なわない限り、軟化剤を含有していてもよい。軟化剤としては、パラフィン系、ナフテン系もしくはアロマ系のプロセスオイル等の石油系軟化剤、パラフィン、植物油系軟化剤、可塑剤等があり、これらは各単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の高分子電解質膜を用いた燃料電池は、化学的安定性が優れ、経時的な発電特性
の低下が少なく、長時間安定して使用できる。
参考例1及び参考例2で得られた生成物(中間化合物、最終化合物)の構造の確認、重合の進行度、各実施例で得られた重合体の数平均分子量及び分子量分布の測定、動的粘弾性試験、並びにプロトン伝導率の測定は次のようにして行った。
以下の参考例1又は参考例2で生成した生成物(中間化合物、最終化合物)を重クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴装置(ブルカー社製「BRUCKER DPX300」)を使用して、プロトン核(1H)及び炭素核(13C)の磁気共鳴スペクトルを27℃で測定して、その構造の確認を行った。また、参考例2で生成した一部の生成物については、構造の確認に当たって、日本分光社製の赤外線分析装置「FT/IR−460」を使用して赤外線吸収スペクトルをKBr法により測定した。
以下の実施例で生成した重合反応液又は重合体を重クロロホルムに溶解させた溶液について、核磁気共鳴分光装置(日本電子データム社製「JNMLA400」)を使用して、プロトン核(1H)の磁気共鳴スペクトルを50℃で測定して重合の進行度を測定した。
ピーク分子量が既知の標準ポリスチレンを用い、該標準ポリスチレンで校正したゲル浸透クロマトグラフ(GPC)(東ソー社製「HLC−8020」)を使用して、重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した(展開溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃)。分子量分布は重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)として求めた。
試料を密閉できるガラス容器中に秤量(a(g))し、そこに過剰量の塩化ナトリウム飽和水溶液を添加して一晩攪拌した。系内に発生した塩化水素を、フェノールフタレイン液を指示薬とし、0.01NのNaOH標準水溶液(力価f)にて滴定(b(ml))した。イオン交換容量は、次式により求めた。
イオン交換容量=(0.01×b×f)/a
1cm×4cmの試料を一対の白金黒メッキした白金電極で挟み、開放系セルに装着した。測定セルを温度80℃、相対湿度90%に調節した恒温恒湿器内に設置し、交流インピーダンス法によりプロトン伝導率を測定した。
実施例又は比較例で得られた膜を用い、広域動的粘弾性測定装置(レオロジ社製「DVE−V4FTレオスペクトラー」)を使用して、引張りモード(周波数 11Hz)で、昇温速度を毎分3℃として、貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’及び損失正接tanを測定し、損失正接のピーク温度をTα(℃)とした。なお、Tαは高分子の耐熱性を示す、ガラス転移温度に準じた特性値である。
上記した反応式(II)にしたがって1−(4−ビニルフェニル)アダマンタンを以下のようにして製造した。
(1)1−フェニルアダマンタンの製造:
窒素雰囲気下で、マグネシウム3.36g(138.0ミリモル)に脱水エーテル20mlを加えた後、1,2−ジブロモエタンを数滴加えてマグネシウムの表面を活性化した。次いで、ブロモベンゼン10ml(84ミリモル)の脱水エーテル溶液100mlを滴下して室温で3時間撹拌した後、エーテルを減圧留去することにより、フェニルマグネシウムブロミドの灰色固体を得た。この灰色固体に、1−ブロモアダマンタン5.00g(23.2ミリモル)と脱水塩化メチレン70mlを加えて、GCとNMRで反応を追跡しながら1−ブロモアダマンタンの消費が完全に確認されるまで還流した(約24時間後)ところで、系を0℃に冷却し、水を加えて反応を停止させ、更に2N塩酸を加えた。塩化メチレンで抽出を3回、有機層を水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥した後、硫酸マグネシウムを濾別し、有機溶媒を減圧留去して、4.52gの淡黄色固体を得た。この淡黄色固体を、ヘキサンを展開溶媒に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して8.45gの白色固体を得た後、該白色固体をメタノールから再結晶して、下記の物性を有する1−フェニルアダマンタン6.30g(収率64%)の白色固体(mp84−85℃)を得た。
・13C−NMR(CDCl3):δ 29.0(C−3),36.2(C−1),36.9(C−2),43.2(C−4),124.9(C−c),125.6(C−d),128.2(C−b),151.4(C−a)
上記(1)で得られた1−フェニルアダマンタン3.60g(17.0ミリモル)に四塩化炭素34mlを加えた後、臭素17ml(330ミリモル)を加えて室温で4時間撹拌した。反応溶液を氷水中に注ぎ込み、過剰の臭素を亜硫酸水素ナトリウムで処理した後、塩化メチレンで3回抽出し、有機層を水で3回洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別した後、有機溶媒を減圧留去して、下記の物性を有する1−(4−ブロモフェニル)アダマンタン4.95g(収率100%、白色固体、mp101−102℃)を得た。
・1H−NMR(CDCl3):δ 1.71−1.81(m,6H,C(2)H2),1.87(s,6H,C(4)H2),2.09(s,3H,C(3)H),7.21−7.24(d,2H,C(c)H,J=8.6Hz),7.40−7.43(d,2H,C(b)H,J=8.6Hz)
・13C−NMR(CDCl3):δ 28.9(C−3),36.1(C−1),36.7(C−2),43.1(C−4),119.3(C−d),126.9(C−c),131.1(C−b),150.4(C−a)
窒素雰囲気下に、マグネシウム0.84g(35ミリモル)に脱水THF20mlを加えた後、1,2−ジブロモエタンを数滴加えてマグネシウムの表面を活性化した。これに、上記(2)で得られた1−(4−ブロモフェニル)アダマンタン4.95g(17.0ミリモル)の脱水THF溶液40mlを室温で滴下した後、還流した。還流中に、ガスクロマトグラフィーで反応を追跡し、1−(4−ブロモフェニル)アダマンタンが完全に消費されて4−アダマンチル−フェニルマグネシウムブロミドに由来する1−フェニルアダマンタンの生成が確認された時点(約2時間後)で、系を0℃に冷却し、脱水DMF25ml(323ミリモル)を滴下したところ、滴下と同時に白濁した。その後、室温で一晩撹拌した後、系に水を加えて反応を停止させ、さらに2N塩酸を加えて過剰に用いたマグネシウムを処理した。エバポレートによりTHFを除去した後、塩化メチレンで抽出を3回、有機層を水で3回洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別した後、有機溶媒を減圧留去して淡黄色固体4.87gを得た。これを、ヘキサンを展開溶媒に用いてクロマトグラフィーにて処理して、副生した1−フェニルアダマンタン1.01g(4.76ミリモル、回収率28%)を除去した後、ヘキサン/酢酸エチル=20/1,10/1(v/v)を展開溶媒に用いて3.25gの白色固体を得た。これを昇華精製(120〜130℃/0.2mmHg)して、以下の物性を有する1−(4−ホルミルフェニル)アダマンタン[別称:4−(1−アダマンチル)ベンズアルデヒド]2.88g(収率70%、白色粉末、mp253−255℃)を得た。
・13C−NMR(CDCl3):δ 28.8(C−3),36.7(C−2),37.0(C−1),42.9(C−4),125.7(C−c),129.8(C−b),134.2(C−d),158.6(C−a),192.2(CHO)
・IR(KBr):2903及び2848cm−1(C−H伸縮振動),1698,1686及び1654cm−1(C=O伸縮振動),1604cm−1(芳香環C−C振動),1448,1167,802cm−1(C−H変角振動)
窒素雰囲気下に、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド4.59g(12.5ミリモル)にカリウムtert−ブトキシド1.97g(17.6ミリモル)を加えた後、脱水THF95mlを加えて室温で約20分間撹拌した。系を0℃に冷却した後、上記(3)で得られた1−(4−ホルミルフェニル)アダマンタン2.61g(10.9ミリモル)の脱水THF溶液45mlを滴下し、室温で一晩撹拌した。ガスクロマトグラフィーにて1−(4−ホルミルフェニル)アダマンタンの消費が完全に確認された後、系に水を加えて反応を停止させた。エバポレートによりTHFを除去した後、エーテルで抽出を3回、有機層を水で2回洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別した後、有機溶媒を減圧留去して白色固体を得た。これを少量のTHFに溶解し、大量のヘキサン中に注ぎ込むことにより、反応により生成したトリフェニルホスフィンオキシドを沈殿させ、濾別によりトリフェニルホスフィンオキシドを除去後、有機溶媒を減圧留去して3.94gの白色固体を得た。この白色固体をヘキサンを展開溶媒に用いたシリカゲルグロマトグラフィーにより精製して3.45gの白色粉末を得た。この白色粉末をメタノールから再結晶して、以下の物性を有する1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン2.08g(8.72ミリモル、収率80%、白色針状結晶、mp98−99℃)を得た。
・13C−NMR(CDCl3):δ 29.0(C−3),36.2(C−1),36.9(C−2),43.2(C−4),113.1(CH2=),125.1(C−c),126.1(C−b),135.0(C−d),136.7(=CH),151.2(C−a)
・IR(KBr):2917,2903及び2847cm−1(C−H伸縮振動),1629cm−1(C=C伸縮振動),1510,1446,1345,988,897,838及び808cm−1(C−H変角振動)
(a)[{1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン/スチレン共重合体ブロック}−{ポリイソプレンブロック}−{1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン/スチレン共重合体ブロック}よりなるトリブロック共重合体]の合成
(1) 乾燥したガラス製容器内の気体を窒素ガスで置換した後、1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン2.087g(8.76ミリモル)及びスチレン0.912g(8.76ミリモル)を入れ、次に溶媒としてシクロヘキサン25mlを加えて1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン及びスチレンを溶解させて単量体混合物溶液を調製した。この単量体混合物溶液の密度が0.7804g/mlであり、かかる点から、溶液中の1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン及びスチレンの濃度はいずれも0.304モル/リットルであった。
(2) 乾燥したガラス製反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後、シクロヘキサン50mlを入れて50℃に加温した後、sec−ブチルリチウムのシクロヘキサン溶液0.081ml(sec−ブチルリチウムとして0.105ミリモル)を加え、ここに上記(1)で調製した単量体混合物溶液の8.65ml[1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン2.63ミリモル、スチレン2.63ミリモルを含有]を加えて、50℃で30分間重合した後、反応液の一部をサンプリングし、GPC測定を行ったところ数平均分子量(Mn)6900、分子量分布(Mw/Mn)1.07の重合体が生成していた。
(4) 上記(3)で得られた反応液の一部をサンプリングしてGPC測定を行ったところ、数平均分子量(Mn)114000、分子量分布(Mw/Mn)1.03のブロック共重合体が生成していた。得られたブロック共重合体の溶液(反応液)を水で洗浄した後、メタノール/アセトン混合溶媒で沈殿させて回収した。これにより得られたブロック共重合体の1H−NMR測定を行ったところ、得られたブロック共重合体は、{1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン/スチレン共重合体ブロック}−{ポリイソプレンブロック}−{1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン/スチレン共重合体ブロック}よりなるトリブロック共重合体であり、ポリイソプレンブロックには3,4−結合が5.5%含まれており、ブロック共重合体の質量に基づく1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン/スチレン共重合体ブロックの含有割合は28.7質量%であった。
(1) 乾燥したガラス製反応容器に、実施例1(a)で製造したトリブロック共重合体[{1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン/スチレン共重合体ブロック}−{ポリイソプレンブロック}−{1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン/スチレン共重合体ブロック}よりなるトリブロック共重合体]3.6g、酸化防止剤(日本チバ・ガイギー社製「Irganox
1010」)0.36gおよびp−トルエンスルホン酸ヒドラジド20gを入れて30分間真空脱気を行った。その後、反応容器内に窒素ガスを導入し、キシレ
250mlを加えて攪拌して120℃に加熱した。溶液は当初懸濁状態であったが、120℃まで加熱すると均一の溶液となるともに、窒素ガス、水素ガスの発生による気泡の発生が確認された。反応液の温度をそのまま120℃に保って15時間反応を継続した。反応終了後、反応液を室温まで冷却した後、大過剰のメタノールに投入して、水添トリブロック共重合体を沈殿させて回収した。回収した水添トリブロック共重合体をトルエンに溶解させた後、メタノールで再沈する作業をさらに3回繰り返して精製し、それにより得られた水添トリブロック共重合体を50℃で一晩真空乾燥した
。
(2) 上記(1)で得られた水添トリブロック共重合体について1H−NMR測定を行った結果、イソプレン中の二重結合に由来するするピークの大部分が消失し、水添率は98%であった。また水添トリブロック共重合体のGPC測定を行ったところ、ゲル化や分解を示すピークは観測されず、数平均分子量(Mn)122000、分子量分布(Mw/Mn)1.03であった。
(1) 実施例1(b)で得られた、[水添{1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン/スチレン共重合体ブロック}−{ポリイソプレンブロック}−{1−(4−ビニルフェニル)アダマンタン/スチレン共重合体ブロック}よりなるトリブロック共重合体]100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、塩化メチレン49.9ml中、0℃にて無水酢酸25.0mlと硫酸11.2mlとを反応させて得られた硫酸化試薬を、20分かけて徐々に滴下した。35℃にて20時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥して、最終的に求めるスルホン化ブロック共重合体を得た。得られたスルホン化ブロック共重合体中のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から32.5mol%、イオン交換容量は0.52meq/gであった。
実施例1(c)で得られたスルホン化ブロック共重合体の5質量%のTHF/MeOH(質量比8/2)溶液を調製し、ポリテトラフルオロエチレンシート上に約1000μmの厚みでキャストし、室温で十分乾燥させることで、厚さ50μmの膜を得た。
(a)スルホン化SEBSの合成
塩化メチレン34.2ml中、0℃にて無水酢酸17.1mlと硫酸7.64mlとを反応させて硫酸化試薬を調製した。一方、SEBS(スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレン)ブロック共重合体[(株)クラレ製「セプトン8007」]100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて4時間攪拌して溶解させた。溶解後、硫酸化試薬を20分かけて徐々に滴下した。35℃にて5時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分は、90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化SEBSを得た。得られたスルホン化SEBSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から19.3mol%、イオン交換容量は0.51meq/gであった
比較例1(a)で得られたスルホン化SEBSを用いる以外実施例1(d)と同様の方法にて厚さ50μmの膜を得た。
パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質として、DuPont社ナフィオンフィルム(Nafion112)を選択した。該フィルムの厚みは約50μm、イオン交換容量は0.91meq/gであった。
本発明の高分子電解質は耐熱性に極めて優れているため、その特性を活かして、耐熱性が要求される高分子電解質用途に好適に使用される。特に、高温条件下での安定運転が求められている固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜、あるいは、この膜を使用した膜−電極接合体、あるいは、膜―電極接合体を作製する際に使用されるバインダに好適に用いられる。さらには、耐熱性が求められるソフトアクチュエータ(ロボット、人工筋肉、治療用・介護用補助具)や各種ガスセンサ(例えば水素センサ)にも好適に用いられる。
Claims (13)
- 下記の一般式(I);
で表されるスチレン系誘導体に由来する構造単位を有する重合体ブロック(A)及びフレキシブルな重合体ブロック(B)を構成成分とし、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有し、重合体ブロック(B)が炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素−炭素二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである高分子電解質。 - 一般式(I)におけるR1が橋架け脂環式炭化水素基である請求項1又は2記載の高分子電解質。
- 一般式(I)で表されるスチレン系誘導体に由来する構造単位として、1−(4−ビニルフェニル)アダマンタンに由来する構造単位及び3−(4−ビニルフェニル)−1,1’−ビアダマンタンに由来する構造単位の少なくとも1種を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 重合体ブロック(A)に占める、一般式(I)で表されるスチレン系誘導体に由来する構造単位の割合が10質量%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比が95:5〜5:95である請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 一般式(I)で表されるスチレン系誘導体に由来する構造単位において、R2が炭素数1〜4のアルキル基又はアリール基である請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 一般式(I)においてR2がメチル基であり、重合体ブロック(B)が炭素-炭素二重結合の少なくとも一部が水素添加されていてもよい炭素数4〜8の共役ジエン単位からなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- イオン伝導性基が−SO3M又は−PO3HM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表される基である請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- ブロック共重合体のイオン交換容量が0.30meq/g以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の高分子電解質。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子電解質を含有する膜。
- 請求項11に記載の電解質膜を使用した膜−電極接合体。
- 請求項12に記載の膜−電極接合体を使用した固体高分子型燃料電池。
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