JP2006202737A - イオン伝導性バインダー、膜−電極接合体及び燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高分子電解質膜と、この高分子電解質膜に該膜を挟んで接合されている2つのガス拡散電極とからなる、固体高分子型燃料電池用の膜−電極接合体に用いるイオン伝導性バインダーであって、α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰返し単位とする重合体ブロック(A)及びフレキシブルな重合体ブロック(B)を構成成分とし、かつ、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有するブロック共重合体を含有することを特徴とするイオン伝導性バインダー及びその溶液もしくは懸濁液、並びに膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池。
Description
)以外にフレキシブルな重合体ブロック(B)を有する。重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とはミクロ相分離を起こし、重合体ブロック(A)同士と重合体ブロック(B)同士とがそれぞれ集合する性質があり、重合体ブロック(A)はカチオン伝導性基を有するので重合体ブロック(A)同士の集合により連続相としてのイオンチャンネルが形成され、カチオン(通常、プロトン)の通り道となる。かかる重合体ブロック(B)を有することによってブロック共重合体が全体として弾力性を帯びかつ柔軟になり、膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池の作製に当たって成形性(組立性、接合性、締付性など)が改善される。ここでいうフレキシブルな重合体ブロック(B)はガラス転移点あるいは軟化点が50℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下のいわゆるゴム状重合体ブロックである。
重合体ブロック(C)は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)とミクロ相分離する成分であれば特に限定されない。重合体ブロック(C)を構成する単量体としては、例えば芳香族ビニル系化合物[スチレン、ベンゼン環に結合した水素原子が1〜3個のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基もしくはtert−ブチル基)で置換されたスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン等]、炭素数4〜8の共役ジエン、炭素数2〜8のアルケン、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル、ビニルエーテル等が挙げられる。上記で炭素数4〜8の共役ジエン、炭素数2〜8のアルケン、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエステル及びビニルエーテルの具体例としては既述の重合体ブロック(B)の説明において挙げたものと同様のものを用いることができる。重合体ブロック(C)を構成する単量体は1種であっても複数であってもよい。
イオン伝導性基の導入量は、得られるブロック共重合体の要求性能等によって適宜選択されるが、固体高分子型燃料電池用のイオン伝導性バインダーとして使用するのに十分なイオン伝導性を発現するためには、通常、ブロック共重合体のイオン交換容量が0.30meq/g以上となるような量であることが好ましく、0.40meq/g以上となるような量であることがより好ましい。ブロック共重合体のイオン交換容量の上限については特に制限はないが、通常、3meq/g以下であるのが好ましい。
重合体ブロック(A)又は(B)を構成する単量体の種類、分子量等によって、重合体ブロック(A)又は(B)の製造法は、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法等から適宜選択されるが、工業的な容易さから、ラジカル重合法、アニオン重合法あるいはカチオン重合法が好ましく選択される。特に、分子量、分子量分布、重合体の構造、フレキシブルな成分からなる重合体ブロック(B)又は(A)との結合の容易さ等からいわゆるリビング重合法が好ましく、具体的にはリビングラジカル重合法あるいはリビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法が好ましい。
(2)α−メチルスチレンをアニオン系開始剤を用いてバルク重合を行った後に、共役ジエンを逐次重合させ、その後テトラクロロシラン等のカップリング剤によりカップリング反応を行い、(A−B)nX型ブロック共重合体を得る方法(Kautsch.Gummi,
Kunstst.,(1984),37(5),377−379; Po
lym. Bull., (1984),12,71−77)、
(3)非極性溶媒中有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30℃〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させた後、カップリング剤を添加して、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法、
のリビングポリマーに重合体ブロック(C)を構成する単量体を重合させてA−B−C型ブロック共重合体を得る方法、
(5)ハロゲン化炭化水素と炭化水素との混合溶媒中、−78℃で、2官能性有機ハロゲン化合物を用いて、ルイス酸存在下、イソブテンをカチオン重合させた後、ジフェニルエチレンを付加させ、さらにルイス酸を後添加後、α−メチルスチレンを重合させ、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法(Macromolecules,(1995),28,4893−4898)、及び
(6)ハロゲン化炭化水素と炭化水素との混合溶媒中、−78℃で、1官能性有機ハロゲン化合物を用いて、ルイス酸存在下、α−メチルスチレンを重合後、さらにルイス酸を後添加し、イソブテンを重合させた後、2、2−ビス−[4−(1−フェニルエテニル)フェニル]プロパン等のカップリング剤によりカップリング反応を行い、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法(Polym.
Bull., (2000),45,121−128)
ポリ(α−メチルスチレン)からなる重合体ブロック(A)及びイソブテンからなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体を製造する場合、(5)又は(6)に示す公知の方法が採用される。
まず、得られたブロック共重合体にスルホン酸基を導入する方法について述べる。スルホン化は、公知のスルホン化の方法で行える。このような方法としては、ブロック共重合体の有機溶媒溶液や縣濁液を調製し、スルホン化剤を添加し混合する方法やブロック共重合体に直接ガス状のスルホン化剤を添加する方法等が例示される。
イオン伝導性基を有する単量体としては、芳香族系ビニル化合物にイオン伝導性基が結合した単量体が好ましい。具体的には、スチレンスルホン酸、α−アルキル−スチレンスルホン酸、ビニルナフタレンスルホン酸、α−アルキル−ビニルナフタレンスルホン酸、ビニルアントラセンスルホン酸、α−アルキル−ビニルアントラセンスルホン酸、ビニルピレンスルホン酸、α−アルキル−ビニルピレンスルホン酸、スチレンホスホン酸、α−アルキル−スチレンホスホン酸、ビニルナフタレンホスホン酸、α−アルキル−ビニルナフタレンホスホン酸、ビニルアントラセンホスホン酸、α−アルキル−ビニルアントラセンホスホン酸、ビニルピレンホスホン酸、α−アルキル−ビニルピレンホスホン酸等が挙げられる。これらの中では、工業的汎用性、重合の容易さ等から、o−、m−又はp−スチレンスルホン酸、α−アルキル−o−、m−又はp−スチレンスルホン酸が特に好ましい。
イオン伝導性を含有する単量体としては、さらに、イオン伝導性基が結合した(メタ)アクリル系単量体も用いることができる。具体的には、メタクリル酸、アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
上記の方法で得られる膜−電極接合体を使用した燃料電池は、化学的安定性が優れ、経時的な発電特性の低下が少なく、長時間安定して使用できる。
ポリ(α−メチルスチレン)(重合体ブロック(A))と水添ポリブタジエン(重合体ブロック(B))とからなるブロック共重合体の製造
既報の方法(特開2001−172324号公報)と同様の方法で、ポリ(α−メチルスチレン)−b−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)型トリブロック共重合体(以下mSEBmSと略記する)を合成した。得られたmSEBmSの数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は74000であり、1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は56%、α−メチルスチレン単位の含有量は28.6質量%であった。また、ポリブタジエンブロック中には、α−メチルスチレンが実質的に共重合されていないことが、1H−NMRスペクトル測定による組成分析により判明した。
合成したmSEBmSのシクロヘキサン溶液を調整し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて、水素雰囲気下において80℃で5時間水素添加反応を行い、ポリ(α−メチルスチレン)−b−水添ポリブタジエン−b−ポリ(α−メチルスチレン)型トリブロック共重合体(以下HmSEBmSと略記する)を得た。得られたHmSEBmSの水素添加率を1H−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.8%であった。
ポリスチレン(重合体ブロック(A))とポリイソブチレン(重合体ブロック(B))とからなるブロック共重合体の製造
既報の方法(特開2000−159815号公報)に従い、ポリスチレン−b−ポリイソブチレン−b−ポリスチレントリブロック共重合体(以下SiBuSと略記する)を製造した。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は68000、スチレンの含有量は28.0%であった。
(1)スルホン化HmSEBmSの合成
塩化メチレン50.2ml中、0℃にて無水酢酸25.2mlと硫酸11.2mlとを反応させて硫酸化試薬を調製した。一方、参考例1で得られたブロック共重合体(HmSEBmS)100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、硫酸化試薬を、20分かけて徐々に滴下した。35℃にて6時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化HmSEBmSのα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から52.3mol%、イオン交換容量は1.13meq/gであった。
(2)製膜
(1)で得られたスルホン化HmSEBmSの5質量%のTHF/MeOH(質量比8/2)溶液を調製し、ポリテトラフルオロエチレンシート上に約1600μmの厚みでキャストし、室温で十分乾燥させることで、厚さ80μmの膜を得た。
(1)スルホン化HmSEBmSの合成
塩化メチレン28.9ml中、0℃にて無水酢酸14.5mlと硫酸6.47mlとを反応させて硫酸化試薬を調製した。一方、参考例1で得られたブロック共重合体(HmSEBmS)100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、硫酸化試薬を、20分かけて徐々に滴下した。35℃にて4時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分は、90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化HmSEBmSのα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から32.0mol%、イオン交換容量は0.71meq/gであった。
(2)製膜
実施例1(2)と同様の方法にて厚さ80μmの膜を得た。
固体高分子型燃料電池用の電極を以下の手順で作製した。Pt−Ru合金触媒担持カーボンに、(1)で得られたスルホン化体のTHF/MeOH溶液(THF:MeOH=8:2、4.3質量%)を混合し、均一に分散されたペーストを調製した。このペーストを撥水処理済みのカーボンペーパーの片面に均一に塗布した。常温で数時間放置した後、80℃で1時間減圧乾燥し、ついで触媒塗布面にポリテトラフルオロエチレンシートシートを載せ、2枚の耐熱性フィルム及び2枚のステンレス板で順に挟み、ホットプレス(120℃、100kg/cm2、10min)し、アノード側のカーボンペーパー電極を作製した。また、Pt触媒担持カーボンに、(1)で得られたスルホン化体のTHF/MeOH溶液(THF:MeOH=8:2、4.3質量%)を混合し、アノード側の電極と同様にカソード側のカーボンペーパー電極を作製した。作製した電極は、アノード:Pt 1.75mg/cm2、Ru 0.88mg/cm2、ポリマー 1.34mg/cm2、カソード:Pt 1.19mg/cm2、ポリマー 1.63mg/cm2であった。
上記で作製した膜−電極接合体(耐熱性フィルム及びステンレス板を外したもの)を、2枚のガス供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータで挟み、さらにその外側を2枚の集電板及び2枚の締付板で順に挟み固体高分子型燃料電池用の評価セルを作製した。なお、それぞれの膜−電極接合体とセパレータとの間には、電極の厚み分の段差からのガス漏れを防ぐために、ガスケットを配した。
(1)スルホン化HmSEBmSの合成
実施例2(1)と同様のスルホン化条件において、反応時間を1時間にすることでイオン基量の異なるスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化HmSEBmSのα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から21.3mol%、イオン交換容量は0.49meq/gであった。
(2)製膜
実施例1(2)と同様の方法にて厚さ80μmの膜を得た。
(1)スルホン化HmSEBmSの合成
実施例2(1)と同様のスルホン化条件において、反応時間を10分にすることでイオン基量の異なるスルホン化HmSEBmSを得た。得られたスルホン化HmSEBmSのα−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から10.1mol%、イオン交換容量は0.23meq/gであった。
(2)製膜
実施例1(2)と同様の方法にて厚さ80μmの膜を得た。
実施例2(1)で合成したスルホン化HmSEBmSと下記の比較例1(1)で合成したスルホン化SEBSとを80/20の質量比でブレンドし、ついで該ブレンドの5質量%のTHF/MeOH(質量比8/2)溶液を調製した。該溶液をテフロン(登録商標)上に約1600μmの厚みでキャストし、室温で十分乾燥させて厚さ80μmの膜を得た。
実施例6
実施例2(1)で合成したスルホン化HmSEBmSと、比較例1(1)で合成したスルホン化SEBSとを50/50の質量比でブレンドし、ついで該ブレンドの5質量%のTHF/MeOH(8/2=w/w)溶液を調製した。ついで実施例5と同様の方法にて厚さ80μmの膜を得た。
(1)スルホン化SEBSの合成
塩化メチレン41.0ml中、0℃にて無水酢酸16.9mlと硫酸9.12mlとを反応させて硫酸化試薬を調製した。一方、SEBS(スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレン)ブロック共重合体[(株)クラレ製「セプトン8007」]100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、硫酸化試薬を20分かけて徐々に滴下した。35℃にて6時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分は、90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化SEBSを得た。得られたスルホン化SEBSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から28.0mol%、イオン交換容量は0.73meq/gであった
(2)製膜
実施例1(2)と同様の方法にて厚さ80μmの膜を得た。
(1)スルホン化SiBuSの合成
塩化メチレン17.2ml中、0℃にて無水酢酸10.9mlと硫酸4.84mlとを反応させて硫酸化試薬を調製した。一方、参考例2で得られたブロック共重合体(SiBuS)100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、硫酸化試薬を、20分かけて徐々に滴下した。35℃にて15時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分は、90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化SiBuSを得た。得られたスルホン化SiBuSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率は1H−NMR分析から29.0mol%、イオン交換容量は0.74meq/gであった。
(2)製膜
実施例1(2)と同様の方法にて厚さ80μmの膜を得た。
パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質として、DuPont社ナフィオンフィルム(Nafion112)を選択した。該フィルムの厚みは約50μm、イオン交換容量は0.91meq/gであった。
以下の試験において試料としては各実施例又は比較例で得られたスルホン化ブロック共重合体から調製した膜又はナフィオンフィルムを使用した。
1)イオン交換容量の測定
試料を密閉できるガラス容器中に秤量(a(g))し、そこに過剰量の塩化ナトリウム飽和水溶液を添加して一晩攪拌した。系内に発生した塩化水素を、フェノールフタレイン液を指示薬とし、0.01NのNaOH標準水溶液(力価f)にて滴定(b(ml))した。イオン交換容量は、次式により求めた。
イオン交換容量=(0.01×b×f)/a
1cm×3cmの試料を、白金電極に挟み、開放系セルに装着した。測定セルを温度80℃、相対湿度90%に調節した恒温恒湿器内に設置し、インピーダンスアナライザー(HYP4192A)を用いて、周波数5〜13MHz、印加電圧12mVにてセルのインピーダンスの絶対値と位相角を測定した。得られたデータのCole−Coleプロットから図形処理を行い、プロトン伝導率を求めた。
3質量%の過酸化水素水溶液にD−グルコース及び塩化鉄(II)・4水和物を溶解させ、ラジカル反応試薬を調製した。ラジカル反応試薬の温度が60℃で一定になったことを確認して、試料を添加し、5時間及び10時間反応させた。ついで試料を蒸留水で十分に洗浄した。
実施例2(3)で作製した固体高分子型燃料電池単セルについて、燃料電池出力性能を評価した。燃料には1M
MeOH水溶液を用い、酸化剤には空気を用いた。MeOH:5cc/min、空気:500cc/minの条件下、セル温度60、80、100℃にて試験した。
実施例1〜6及び比較例1〜3で作製した膜のプロトン伝導率の測定結果を表1に示す。
表1における実施例1〜3の比較により、スルホン化率の増加に伴いプロトン伝導率が向上することが明確となった。なお、実施例4ではスルホン化率が小さく、プロトン伝導率を測定することができなかった。また、実施例2と比較例1と比較例2との比較からは、ポリマー骨格が異なっても同程度のプロトン伝導率が発現することが明確となった。
表2から、実施例1〜4で作製した膜(スルホン化HmSEBmS)では、10時間反応後でも膜の外観変化は認められず、質量保持率、イオン交換容量保持率共に高い値を示し、優れた耐ラジカル性を有することが明らかである。一方、比較例1で作製した膜(スルホン化SEBS)では、反応が進むに従い、膨潤、白濁が認められ、10時間試験後には、各辺の長さの膨張率は約1.6倍であり、激しい皺も認められた。比較例2で作製した膜(スルホン化SiBuS)では、膨潤は少なかったが、白濁、皺が激しく認められ、10時間反応後では、膜は形状を保持できず反応溶液中に微小粉となって分散した。また、実施例5、6で作製したブレンド膜(スルホン化HmSEBmS/スルホン化SEBS)においては、スルホン化SEBSの割合が高いほど、耐ラジカル性が低下する傾向が示された。なお、スルホン化SiBuSは耐酸化性に優れるイソブチレン骨格を有するにもかかわらず、スルホン化SEBSと同様に低い耐ラジカル性しか示さなかったのは、ラジカルが容易に拡散すると予想されるイオンチャンネル形成相の重合ブロックに3級炭素を有するためと考えられる。
一方、ナフィオンフィルムを使用した比較例3では、スルホン化HmSEBmSと同様に膜の外観変化は認められなかったが、イオン交換容量は経時的に変化し、10時間反応後では79.0%にまで低下した。質量変化については、ほとんど認められなかったことから、主鎖の分解反応による劣化ではなく、スルホン酸基の脱離による劣化が進行したと考えられる。
セル温度60℃、燃料供給圧1MPaGの条件下、単セルの開放電圧は0.53V、最高出力密度は20mW/cm2であった。セル温度依存性については、高温ほど高出力が得られ、セル温度100℃(燃料供給圧:0.1MPaG)における最高出力密度は43mW/cm2であった。
固体高分子型燃料電池単セルの発電特性の結果は、実施例2(3)で選られた固体高分子型燃料電池単セルが優れた発電特性を発揮することを示している。
Claims (12)
- 高分子電解質膜と、この高分子電解質膜に該膜を挟んで接合されている2つのガス拡散電極とからなる、固体高分子型燃料電池用の膜−電極接合体に用いるイオン伝導性バインダーであって、α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位を主たる繰返し単位とする重合体ブロック(A)及びフレキシブルな重合体ブロック(B)を構成成分とし、かつ、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有するブロック共重合体を含有することを特徴とするイオン伝導性バインダー。
- 重合体ブロック(A)に占めるα−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位の割合が50質量%以上である請求項1記載のイオン伝導性バインダー。
- 重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比が95:5〜5:95である請求項1又は2に記載のイオン伝導性バインダー。
- α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位が、α−炭素原子に結合した水素原子が炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基又はフェニル基で置換された芳香族ビニル系化合物単位である請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオン伝導性バインダー。
- フレキシブルな重合体ブロック(B)が炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位、並びに炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオン伝導性バインダー。
- フレキシブルな重合体ブロック(B)が炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位、及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオン伝導性バインダー。
- α−炭素が4級炭素である芳香族ビニル化合物単位がα−メチルスチレン単位であり、フレキシブルな重合体ブロック(B)が炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位である請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオン伝導性バインダー。
- イオン伝導性基が−SO3M又は−PO3HM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表される基である請求項1〜7のいずれか1項に記載のイオン伝導性バインダー。
- ブロック共重合体のイオン交換容量が、0.30meq/g以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載のイオン伝導性バインダー。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のイオン伝導性バインダーを含有する溶液もしくは懸濁液。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載のイオン伝導性バインダーを使用した膜−電極接合体。
- 請求項11に記載の膜−電極接合体を用いた固体高分子型燃料電池。
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