明 細 書 熱可塑性樹脂構造体 技術分野
本発明は、熱可塑性樹脂によって構成される構造体に関する。 さらに詳しくは、 柔軟性表皮材層 Z柔軟性発泡材層 Z硬質基材層の 3層構造を有し、クッション感、 強度に優れ、 且つ使用済物品の再使用適性すなわちリサイクル性並びにコスト低 減効果に優れた熱可塑性樹脂構造体に関する。 背景技術
従来から柔軟性表皮材層/柔軟性発泡材層 硬質基材層の 3層構造体の構成と しては、 以下に挙げたものが知られている。
従来技術 1 :柔軟性表皮材層 (以下、 単に表皮層ということがある。 ) にポリ塩 化ビニル (以下、 P V Cと略記することがある。 ) 又はォレフィン系熱可塑性ェ ラストマー (以下、 T P Oと略記することがある。 ) のスラッシュ成形品、 柔軟 性発泡材層 (以下、 単に発泡層ということがある。 ) にポリウレタン発泡体、 硬 質基材層 (以下、 単に基材層ということがある。 ) にポリプロピレン複合材又は A B S樹脂の射出成形品を使用した構造体。
従来技術 2 : P V C又は T P〇シートの表皮層にポリプロピレン又は高密度ポリ エチレンの架橋発泡シートを発泡層としてラミネートした 2層構造シートに、 ポ リプロピレン複合材又は A B S樹脂の射出成形品を基材層とした構造体。
これら構造体は車両内装材などに利用され、 優れた外観、 クッション感、 剛 性を兼ね備えたものとして、 産業界に多大の貢献をしてきた。
しかしながら、 従来技術 1は発泡層に熱硬化性榭脂である発泡ポリゥレタンを 使用していることから、 構造体を再使用すなわちリサイクルする場合、 表皮層、 発泡層、 基材層を分離する必要があり、 更に発泡ポリウレタンの再使用が難しい ことから近年の世界的要求であるリサイクルに適さないと言う欠点がある。
更に、 表皮層のスラッシュ成形工程、 基材層の射出又は射出プレス成形工程、
発泡層のゥレタン注入発泡成形工程とそれぞれの工程で全く異なる設備が必要で あるため、 製造コストが高いという欠点も指摘されている。
一方、 従来技術 2にあっては、 発泡層に架橋発泡材料を用いているために 3層 を同時にリサイクルする場合、 架橋発泡シートが表皮層及び基材層を構成する材 料と均一に相溶融せず、 再生材として使用する場合にその性能が低下する等によ つてリサイクル性が損なわれる欠点がある。
更に、 発泡層の発泡シート成形工程、 発泡シートへの表皮層のラミネートェ 程、 これによつて得られた複合シートの真空成形法又は圧空成形法による予備成 形工程、 得られた予備成形品を金型にセッ トして基材層との射出又は射出プレス 成形工程による一体化といった一連の成形工程が長く、 更に高価な複合シートを 予備成形する際の歩留まりが悪い等、 製造コストが高いという欠点も指摘されて いる。
また、 前記従来技術 1及び 2の何れの場合も各層間の少なく とも一部を接合 させるために、 接着剤又は粘着剤が使われており、 これもまたリサイクル性の阻 害及びコス ト高の要因となっている。
これら従来技術に於けるリサイクルの困難さや製造コスト高の問題の原因は、 外観、 クッション感、 剛性のそれぞれを担当する層が、 全く異なる系統の材料又 は性質の異なる加工法によって作られ、 これらを組み合わせたことにある。 この ような構造体では優れた品質は得られても、 上記のような問題点を解決すること はできない。
本発明は外観、 クッション感、 剛性等の性能を保持した上で、 これら従来技術 では為し得なかったリサイクル性の確保とコス ト低減効果を併せ持つ熱可塑性榭 脂構造体を提供することにある。
本発明者らは外観、 クッション感、 剛性等の性能を保持した上で、 これら従来 技術では為し得なかったリサイクル性の確保とコスト低減効果を併せ持つ熱可塑 性樹脂構造体を得るべく鋭意検討した結果、 柔軟性表皮材層、 柔軟性発泡材層及 ぴ硬質基材層の 3層構造を持つ構造体であって、 3層構造体の各層を相溶融接着 可能な同一系統の熱可塑性樹脂で構成し、 且つ、 柔軟性発泡材層を射出発泡成形 体によって構成することにより、 発泡材層成形時に表皮材層と基材層とを同時に
一体化できる上に、 この 3層構造体は各層を分離することなく粉砕するのみで容 易に溶融再生使用が可能であることから、 リサイクル性の確保とコスト低減が達 成可能であることを見出し本発明を完成するに至った。 発明の開示
本発明は下記の構成を有する。
1 ) 柔軟性表皮材層 柔軟性発泡材層ノ硬質基材層の 3層構造を有し、 3層 構造体の各層を相溶融接着可能な熱可塑性樹脂で構成し、 且つ、 柔軟性発泡材層 が射出発泡成形法によつて成形された熱可塑性樹脂構造体。
2 ) 柔軟性表皮材層、 柔軟性発泡材層及び硬質基材層の 3層構造体の柔軟性表 皮材層及び硬質基材層のそれぞれが、 柔軟性発泡材層を射出発泡成形する際の熱 及び圧力により、 柔軟性発泡材層を構成する熱可塑性樹脂との熱溶着又は熱融着 によつて接合された前項 1記載の熱可塑性樹脂構造体。
3 ) 柔軟性表皮材層、 柔軟性発泡材層及び硬質基材層の 3層構造体の各層が、 それぞれポリオレフィン系熱可塑性樹脂で構成された前項 1又は前項 2記載の熱 可塑性樹脂構造体。
( 4 ) 柔軟性発泡材層の平均発泡倍率が 1 . 2〜 1 0倍である前項 1〜 3のいず れか 1つの項に記載の熱可塑性樹脂構造体。 図面の簡単な説明
図— 1は本実施例で得たリブ付き箱形構造体の表面斜視図であり、 図一 2は同 構造体の裏面斜視図であり、 図一 3は同構造体の断面図であり、 図— 4は本実施 例及び比較例で用いた金型の断面図であり、 図一 5は上記金型に柔軟性表皮材層 ①と硬質基材層②をセットした状態を示す図であり、 図— 6は図— 5においてセ ットされた金型を柔軟性発泡材層材料を充填する空隙を残して型締めし、 柔軟性 発泡材層材料を射出充填して柔軟性発泡材層 (未発泡状態) ③ aを形成した状態 を示す図であり、 図一 7は図一 6の状態から所定量金型を後退させて、 柔軟性発 泡材層材料を発泡させて保持して柔軟性発泡材層 (発泡状態) ③ bを形成した状 態を示す図である。
符号の説明
①:柔軟性表皮材層、 ②:硬質基材層、 ③ a :柔軟性発泡材層 (未発泡状態) 、 ③ b :柔軟性発泡材層 (発泡状態) 、 ④:固定側金型、 ⑤:移動側金型、 ⑥:ゲ ート、 ⑦:射出成形機ノズル。 発明を実施するための最良の形態
本発明の柔軟性表皮材層に用いる柔軟性表皮材は押出成形法又は力レンダー ロール成形法によって得られるフィルム又はシ一ト状の成形体であって、 柔軟性 発泡材層と相溶融接着可能な材料によって成形される。 該柔軟性表皮材に用レ、る 材料として好適には、 熱可塑性エラストマ一を挙げることができる。
熱可塑性エラストマ一とは、 常温においてゴム弾性を示し、 一般の熱可塑性榭 脂と同様に成形でき、 I P N (インターぺネトレ一ティッ ド ネッ ト ワーク、 相互侵入網目構造) などの完全架橋型、 部分架橋型及び非架橋型があり、 本発明 では何れの型のものも適用し得る。 本発明で用いる熱可塑性エラストマ一として は、 ォレフィン系熱可塑性エラス トマ一、 スチレン系熱可塑性エラス トマ一、 ィ ソプレン系熱可塑性エラストマ一、 アミ ド系熱可塑性エラストマ一、 エステル系 熱可塑性エラストマ一、 塩化ビニル系熱可塑性エラストマ一などを例示できる。 これらの中で、 熱可塑性樹脂構造体の重量の軽量化の観点からォレフィン系熱 可塑性エラストマ一が好ましい。 該ォレフィン系熱可塑性エラストマ一の柔軟性 をより高めるために、 プロセスオイルを配合することが例示できる。 該ォレフィ ン系熱可塑性エラストマ一のゴム弾性をより高めるために、 過酸化物を配合し溶 融混練処理を行った完全架橋型若しくは部分架橋型ォレフイン系熱可塑性エラス トマ一が例示できる。
本発明で柔軟性表皮材として用いる熱可塑性エラストマ一は、 好ましくは 2 3 °Cにおける曲げ弾性率が 5 0 O M P a以下、 より好ましくは 3 0 0 M P a以下 である。 また、 J I S K 7 2 1 0の試験条件 1 4 (試験温度 2 3 0 °C;試験荷 重 2 1 . 1 8 N) に基づくメルトフローレート (以下、 M F Rと略記する。 ) 力 0 . 1 g / 1 0分以上のものが望ましい。 該熱可塑性エラストマ一の M F Rが 0 . 1 R / 1 0分未満では、 成形時における流動性が低下し、 成形品外観の低下及び
大型成形品の成形が難しくなる場合がある。
該熱可塑性エラストマ一には、 必要に応じて、 一般的な熱可塑性エラストマ一 に用いられている有機過酸化物などの架橋剤、 滑剤、 酸化防止剤、 中和剤、 顔料、 光安定剤、鉱物油などのプロセスオイル及び帯電防止剤を添加することができる。 本発明の柔軟性表皮材として用いる熱可塑性エラストマ一は一般的な方法で製 造される。 例えば、 ォレフィン系熱可塑性エラストマ一はつぎの方法で製造され る。 結晶性エチレン一プロピレン共重合体、 エチレン一プロピレン共重合体ゴム をタンブラ一にて混合し、 2軸押出機 (池貝鉄工(株)製、 P C M— 4 5 ) を用 いて、 シリンダー温度を 2 0 0 °Cに設定して溶融混練し、 ペレッ ト状のォレフィ ン系熱可塑性エラストマ一を得る。
本発明の柔軟性表皮材に用いる材料としては、 3層構造体の 3層全てをポリオ レフイン系樹脂で構成する場合、 ォレフィン系熱可塑性エラストマ一 (T P O) を例示でき、 他方、 3層構造体全体をポリ塩化ビニル系樹脂で構成する場合、 塩 化ビニル系熱可塑性エラストマ一である軟質ポリ塩化ビエル樹脂を例示できる。 また、 本発明の柔軟性発泡材層に用いる柔軟性発泡材料は、 柔軟性表皮材層及 び硬質基材層と相溶融接着可能な材料であって、 射出発泡成形法に適する流動性 を有し、 且つ、 1 . 2〜1 0倍以上の発泡成形が可能な材料が好ましい。 具体的 には上述の柔軟性表皮材に用いる熱可塑性ェラストマーを挙げることができる。 3層構造体全体をポリオレフィン系樹脂で構成する場合、 上述のォレフィン系熱 可塑性エラストマ一からなる柔軟性発泡材層と後述のポリオレフイン系樹脂から なる硬質基材層との接着性をより高めるために、 結晶融点が 1 2 5〜1 5 0 °Cの プロピレン一エチレンランダム共重合体を該ォレフイン系熱可塑性エラストマ一 に配合することが例示できる。
本発明の柔軟性発泡材料に用いる発泡剤としては、 後述の化学発泡法又はガス 発泡法に通常用いられている発泡剤であればなんら制限なく使用できる。 該発泡 剤としては、 化学分解することによって気体を発生する物質又は揮発性液体であ つて、 プラスチック又はゴム等に使用されている公知のものであれば問題なく使 用できるが、 具体的には、 ァゾジカルボンアミ ド、 ジニトロペンタメチレンテト ラミン、 p, p '—ォキシビスベンゼンスルホニルヒ ドラジド、 ρ , ρ '—ォキシ
ビスベンゼンスルホ二ルセミカルバジド、 N , N '―ジメチルー N , N '—ジニト 口ソテレフタルァミ ド、 重曹及びトリクロ口モノフルォロメタン、 ジク口口ジフ ルォロメタン等が例示でき、 ァゾジカルボンアミ ド及びジクロロジフルォロメタ ン等が好ましい。 代表的な発泡剤の添加量は、 上記熱可塑性エラストマ一 1 0 0 重量部に対し、 化学発泡法の場合には 0 . 0 1〜1 0重量部、 ガス発泡法の場合 には 0 . 1 ~ 1 0 0重量部が例示できる。
更に、 本発明の硬質基材層に用いる硬質基材は射出成形法又は射出プレス成形 法によつて成形される成形体であって、 柔軟性発泡材層と相溶融接着可能な材料 によって成形されたものである。 硬質基材に用いる材料として好適には、 熱可塑 性硬質樹脂を挙げることができる。
本発明で用いる熱可塑性硬質樹脂としては、 ポリエチレン樹脂 (低密度ポリエ チレン、 直鎖状低密度ポリエチレン、 高密度ポリエチレンなど) 、 ポリプロピレ ン樹脂 (結晶性プロピレン単独重合体、 結晶性プロピレン一エチレンランダム共 重合体、 結晶性プロピレン一エチレンブロック共重合体など) 、 ポリ 4一メチル ペンテン一 1などのポリオレフイン系樹脂、 ポリスチレン樹脂、 アタリロニトリ ルースチレン共重合体樹脂、 ァクリロニリ トル—ブタジエン—スチレン共重合体 樹脂、 メタクリル—スチレン共重合体樹脂、 ポリアミ ド樹脂、 ポリエチレンテレ フタレート樹脂、 ポリプチレンテレフタレート樹脂、 ポリカーボネート樹脂など を例示できる。 その中でも得られる熱可塑性樹脂構造体の重量が軽量化されるこ とから、 ポリプロピレン樹脂が好ましい。 該ポリプロピレン樹脂としては、 剛性 の高い熱可塑性樹脂構造体が得られる理由によりァイソタクチックペンダント分 率が 0 . 9 4以上、 より好ましくは 0 . 9 6以上、 結晶融点が 1 6 3〜 1 6 5 °C のポリプロピレン樹脂が好ましく、 複雑な形状又は肉厚の薄い成形品の成形が容 易である理由により M F尺が 1 0〜4 0 g Z 1 0分が好ましい。
本発明で用いる熱可塑性硬質樹脂は、 好ましくは 2 3 °Cにおける曲げ弾性率が 6 0 0 M P a以上、 より好ましくは 8 0 O M P a以上である。 また、 M F Rが 5 g / 1 0分以上であることが望ましい。 熱可塑性硬質樹脂の M F Rが 5 g / 1 0 分未満では、 成形時における流動性が低下し、 成形品外観の低下及び大型成形品 の成形が難しくなる場合がある。
本発明で用いる熱可塑性硬質樹脂には、その他必要に応じて、 タルクやマイ力、 ガラス繊維などの無機フィラー、 熱可塑性硬質樹脂と相溶性のある合成ゴム、 及 び一般の熱可塑性硬質樹脂に用いられている公知の酸化防止剤や中和剤、 滑剤、 帯電防止剤、 顔料などを添加することができる。 剛性の高い熱可塑性樹脂構造体 が得られる理由により、 熱可塑性硬質榭脂に対して無機フィラーを 5〜6 0重 量0 /0、 より好ましくは 1 0〜 5 0重量%、 更に好ましくは 1 5〜 4 0重量%添加 することが好ましい。
本発明の硬質基材に用いる材料としては、 3層構造体全体をポリオレフイン系 樹脂で構成する場合、 タルク複合化ポリプロピレン樹脂、 ガラス繊維複合化ポリ プロピレン樹脂などが例示でき、 他方、 3層構造体全体をポリ塩化ビニル系樹脂 で構成する場合、 硬質ポリ塩化ビニル樹脂が例示できる。
本発明の熱可塑性樹脂構造体は、 予め射出成形法又は射出プレス成形法にて成 形された硬質基材層と、 押出成形法又は力レンダ一口ール成形法によつて成形さ れたフィルム状又はシート状の柔軟表皮材層とを中間に空隙を設けて金型内に対 向して配置し、 同空隙内に柔軟性発泡材料を射出成形法又は射出プレス成形法に て充填した後、 金型のキヤビティを拡大することにより、 該柔軟性発泡材料を発 泡させることによって得ることができる。 この場合、 柔軟性表皮材層と硬質基材 層は柔軟性発泡材料を充填する際の熱及び圧力によって、 柔軟性発泡材層を構成 する材料との熱溶着又は熱融着によって相互に接着される。
本発明で云う柔軟性発泡材層の発泡のための手段は化学発泡法、 ガス発泡法の 何れであっても良く、 射出発泡成形又は射出プレス発泡成形を行うことによって 柔軟性表皮材層及び硬質基材層の双方を発泡材層の両外面に接合できれば良い。 また、 発泡剤は上述の種類を問わず所要の平均発泡倍率を実現できるガス発生量 を有するものであれば良い。 すなわち、 柔軟発泡材層に用いられる熱可塑性エラ ス トマーを溶融状態から射出又は射出プレス成形法により金型に充填し、 所要の 倍率で発泡させることが、 本発明で云う柔軟性発泡材層の要件である。
本発明で云う柔軟性発泡材層の平均発泡倍率は、 金型内空隙に充填した発泡性 熱可塑性エラストマ一の体積で製品の発泡材層の体積を除した値で近似的に示す ことができる。 すなわち、 2 0 O m 1の発泡性溶融熱可塑性エラストマ一を充填
して 60 Om 1の空間を発泡熱可塑性エラストマ一で満たした場合、 その平均発 泡倍率は 600m l ÷ 200m l = 3であり、 3倍の平均発泡倍率であると云う ことができる。 しかしながら、 射出発泡成形法の特徴としてキヤビティが拡大し ない部分の発泡倍率は 1倍、 すなわち無発泡若しくはほとんど発泡しない状態と なる。 従って、 平均発泡倍率を計算する場合、 上記計算の充填熱可塑性エラスト マー体積及び発泡材層体積からキヤビティが拡大しない部分を一律に除外する必 要がある。
すなわち、 キヤビティが拡大しない部分をもつ形状の成形品においては、 前記 の例においてキヤビティが拡大しない部分の体積が 5 Om lであれば、 前記式は (600 - 5 0) m 1 ÷ (200— 50) m l = 3. 6 6 6…となり、 約 3. 7 倍の平均発泡倍率であると云うことになる。
上記を前提にして、 本発明で云う柔軟性発泡材層の平均発泡倍率は、 製品形状 又は熱可塑性ェラストマーにおける発泡剤の分散状態や発泡性溶融熱可塑性エラ ストマ一の熱伝導状態により発泡材層の部分によって発泡倍率が異なる場合であ つても、 その平均発泡倍率は 1. 2〜 1 0倍であり、 より好ましくは 1. 5〜8 倍である。 柔軟性発泡材層の平均発泡倍率が 1. 2倍未満の場合は柔軟性材料を 用いても硬質感が残り、 1 0倍を超えると復元力が低下するため何れにしても良 好なクッション感が得られない。 実施例
以下に実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、 本発明はこれらの 実施例により制約されるものではない。
なお、 以下の実施例及び比較例で用いた材料、 射出成形機及び金型を以下に示 す。
1) 柔軟性表皮材層材料 A :結晶性プロピレン—エチレンブロック共重合体 (ェ チレン含有量 1 1. 0重量0 /0) 1 00重量部、 エチレン一プロピレンーェチリデ ンノルボルネン共重合体ゴム (E PDM;商品名 : E P 5 7 P、 J S R (株)製) 230重量部及びプロセスオイル (商品名 : D Iプロセスオイル PW380、 出光興産(株)製) 65重量部を混合し、 押出造粒して MFRが 0. 5 g/1 0分
のォレフイン系熱可塑性エラス トマ一 (TPO) を得た。 この TP〇を Tダイ式 押出装置によって 0. 5 mmの肉厚で製膜して J I S K 630 1の硬さ試験 A 形による硬度 74のシート状柔軟性表皮材層材料 Aを得た。
2) 柔軟性表皮材層材料 B : MFRが 1. 3 gZl 0分のォレフィン系熱可塑性 エラストマ一 (商品名 : NEWCON NNT 2005、 チッソ(株)製) を T ダイ式押出装置によって 0. 5 mmの肉厚で製膜して J I S K 6 30 1の硬さ 試験 Α形による硬度 85のシート状柔軟性表皮材層材料 Bを得た。
3) 柔軟性表皮材層材料 C :塩化ビニル重合体 (平均重合度 1, 000) 1 00 重量部に可塑剤 (DOP) 65重量部を配合して、 カレンダーロール装置によつ て 0. 5 mmの肉厚で製膜することにより、 J I S K 6 30 1の硬さ試験 A形 による硬度 75のシート状柔軟性表皮材層材料 Cを得た。
4) 柔軟性発泡材層材料:結晶性プロピレン一エチレンブロック共重合体 (ェチ レン含有量 1 1. 0重量。 /。) 1 00重量部に低密度ポリエチレン (商品名 :サン テック一 LD L— 1 8 5 0 A、 旭化成工業(株)製) 200重量部及びェチレ ン一プロピレン共重合体ゴム (E P R ;商品名 : タフマ一 P 0080K、 三井 化学(株)製) 200重量部を混合造粒して MF が 1 8 g / 1 0分で J I S K630 1の硬さ試験 A形による硬度 8 7の柔軟性材料を得た。 MFRが 6 g/ 1 0分の結晶性プロピレン一エチレンーブテン一 1ランダム共重合体 (エチレン 含有量 4. 5重量%、 ブテン— 1含有量 2. 5重量0 /0) 80重量%に対してァゾ ジカルボンアミ ド (ADCA) を 20重量%配合した発泡剤マスターバッチ (商 品名 : チッソポリプロ XKP 1 3 1 0W、 チッソ(株)製) 6重量%を、 前記 柔軟性材料 94重量%に対して配合して、 タンブラーミキサーにて混合撹拌し て柔軟性発泡材層材料 (ADCA含有量 1. 2重量%) を得た。
5) 硬質基材層 A:結晶性プロピレン一エチレンブロック共重合体 (エチレン含 有量 6. 0重量%) 80重量%に平均粒径 2〜 3 μπιのタルク 20重量%を配合 した MF Rが 20 g/ 1 0分の自動車内装材用ポリプロピレン複合材を用いて、 縦 41 0 mm, 横 295 mm, 高さ 49 mm、 天板部分の肉厚 3 mmとなるよう に下記射出成形機及び金型で成形し、 柔軟性発泡材層材料の通路としてゲート部 分に直径 1 0 mmの穴あけ加工を施した硬質基材層 A。
6) 硬質基材層 B :結晶性プロピレン単独重合体 80重量%にガラス繊維 20重 量%を配合した MFRが 2 g/1 0分であるガラス繊維強化ポリプロピレン (商 品名 : チッソポリプロ GC S 20、 チッソ(株)製) を用いた他は硬質基材層 Aと同様に成形加工して得られた硬質基材層 B。
7) 硬質基材層 C : MF Rが 5 gZl 0分の AB S樹脂 (商品名 :セビアン V VF 5 1 2、 ダイセル化学工業(株)製) を用いた他は硬質基材層 Aと同様に成 形加工して得られた硬質基材層 C。
8) 射出成形機:スクリュ一径が 90mmのシリンダー及び型締め制御機構を有 し、 最大型締め力が 650 Tである射出成形機。
9) 金型: 図— 4に示す、 縦 4 1 0 mm, 横 29 5 mmで、 高さが 47〜60 m m、 肉厚が 1〜 1 4 mmに変更可能なリブ付き箱成形用金型。
実施例 1
上記材料及び成形装置を用いて、 以下の如く実施した。 結果を表 1に示す。 高さが 5 1. 5 mm, 天板部の肉厚が 5. 5 mmとなるように調節した前記金 型に、 0. 5 mm肉厚の前記柔軟性表皮材層材料 Aを金型天面の形状に合わせて 切断した柔軟性表皮材層 A①を、 移動側金型⑤に取り付け、 更に予め成形加工し た天板部分の肉厚が 3 m mである前記硬質基材層 A②を固定側金型④に取り付け た 〔図一 5参照〕 。 次にこれらの金型を型締めして、 柔軟性表皮材層 A①と硬質 基材層 A②の間に生じた 2 mmの空隙に柔軟性発泡材層材料を射出充填して肉厚 2 mmの柔軟性発泡材層 (未発泡状態) ③ aを形成した 〔図一 6参照〕 。 充填直 後から 2秒間の一次冷却後、 移動側金型⑤を移動して天板部分の肉厚が 9. 5 m mになるように調整し、 該移動側金型⑤の移動と同時に柔軟性発泡材層材料が発 泡して柔軟性発泡材層 (発泡状態) ③ bを形成した 〔図一 7参照〕 。 その後、 上 記金型位置 〔図— 7〕 を保持したまま 60秒間の二次冷却を行った後、 成形品を 取り出した。 取り出した成形品は 0. 5 mm肉厚の柔軟性表皮層 A①と 6 mm肉 厚の柔軟性発泡材層 (発泡状態) ③ bと 3 mm肉厚の硬質基材層 A②がそれぞれ 強固に接合しており、 柔軟性発泡材層 (発泡状態:平均発泡倍率 = 726m 1 ÷ 242m 1 = 3.0倍) ③ bのクッション感も充分に保持した成形品であった。 また、 得られた成形品は、 接着剤又は粘着剤を使用せずに同一系統の材料のみで
3層構造体を構成しているためリサイクル性に優れるものであった。 実施例 2
表皮層に柔軟性表皮材層材料 Bを用い、 基材層に硬質基材層 B②を用いた他は 実施例 1と同様にして成形した。 結果を表 1に示す。 取り出した成形品は 0 . 5 mm肉厚の柔軟性表皮材層 B①と 6 mm肉厚の柔軟性発泡材層 (発泡状態) ③ b と 3 mm肉厚の硬質基材層 B②がそれぞれ強固に接合しており、 柔軟性発泡材層 (発泡状態:平均発泡倍率 = 3 . 0倍) ③ bのクッション感も充分に保持した成 形品であった。 また、 得られた成形品は、 接着剤又は粘着剤を使用せずに同一系 統の材料のみで 3層構造体を構成しているためリサイクル性に優れるものであつ た。
比較例 1
表皮層に柔軟性表皮層材料 Cを用いた他は実施例 1と同様にして成形した。 結 果を表 1に示す。 取り出した成形品は 0 . 5 mm肉厚の柔軟性表皮材層 C①と 6 mm肉厚の柔軟性発泡材層 (発泡状態) ③ bが接合しておらず、 成形品末端部分 から容易に剥離する状態であった。 更にゲート部分の柔軟性表皮材層 C①が溶融 によって破れ、 柔軟性表皮材層 C①の外観が著しく損なわれたものであった。 比較例 2
基材層に硬質基材層 C②を用いた他は実施例 2と同様にして成形した。 結果を 表 1に示す。 取り出した成形品は 0 . 5 m m肉厚の柔軟性表皮材層 B①と 6 mm 肉厚の柔軟性発泡材層 (発泡状態) ③ bは強固に接合していたが、 同柔軟性発泡 材層 (発泡状態) ③ bと 3 mm肉厚の硬質基材層 C②は接合しておらず、 成形品 末端部分から容易に剥離する状態であった。
表 1
(注) 結果の記号は、 Gが良好、 Nが不良を示す。
産業上の利用の可能性
本発明は柔軟性表皮材層、 柔軟性発泡材層及び硬質基材層を有し、 容易にリサ ィクルすることができる熱可塑性樹脂の 3層構造体を安価に提供することができ るため、 自動車、 家電、 一般工業用部品等に於いてクッション性、 吸音性、 断熱 性等の性能を要する用途に極めて有用である。