JPWO2020116101A1 - 粘着剤組成物および粘着シート - Google Patents

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Abstract

(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂と、(c)ポリイソシアネート化合物と、(d)光重合開始剤とを含み、前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、エポキシ基に由来する第2級炭素原子にオキシ基を介して結合されたエチレン性不飽和基と、エポキシ基に由来する第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基とを有し、前記(b)エステル樹脂は、エポキシ基を有し又は有さず、前記α,β−不飽和一塩基酸基の数がエポキシ基の数以上であり、前記(c)ポリイソシアネート化合物が、脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートである粘着剤組成物を提供する。

Description

本発明は、粘着剤組成物および粘着シートに関する。
本願は、2018年12月7日に、日本に出願された特願2018−229960号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
近年、スマートフォンの普及により、その前面板に用いられるガラス板の需要が急増している。スマートフォンの前面板は、従来、一枚の大型ガラス板から所望の大きさのガラス板を複数枚切り出し、切り出したガラス板の切断面を機械的な研磨処理により研磨する方法により製造されている。
近年、スマートフォンの前面板の製造工程において、切断面の研磨時間を短縮することが要求されている。しかし、ガラス板の切断面を滑らかにするために行う機械的な研磨処理は、ガラス板の割れおよびクラックの発生を抑えながら行う必要がある。このため、研磨時間を短縮することは難しい。
そこで、機械的な研磨処理に代えて、ガラス板の切断面をフッ酸溶液等のエッチング液を用いて溶解することで、切断面を滑らかにする方法が行われている。
エッチング液を用いてガラス板の切断面を処理する場合、エッチングしない部分(ガラス板の切断面以外の部分)をエッチング液から保護する必要がある。従来、ガラス板のエッチングしない部分をエッチング液から保護する方法として、ガラス板のエッチングしない部分に保護テープを貼る方法が用いられている。
ガラス板をエッチング液から保護する保護テープとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などからなる樹脂基材の表面に、粘着剤層が設けられている粘着テープがある。
例えば、特許文献1には、ガラスをエッチングする際に非エッチング部分に貼り付けて該非エッチング部分をエッチング液から保護するガラスエッチング用保護シートが記載されている。特許文献1に記載のガラスエッチング用保護シートは、基材と該基材の片面に設けられた粘着剤層とを備える。粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率は60%以上であり、粘着剤がアクリル系ポリマーを主成分とするアクリル系粘着剤である。このアクリル系ポリマーは、CH=CRCOOR(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rはアルキル基を示す)で表わされるモノマーを主モノマーとして含むモノマー原料を重合して合成され、主モノマーは前記式のRが炭素数6以上のアルキル基であるモノマーを主成分として含む。
最近、スマートフォンの筐体として、ガラス筐体を用いたものがある。ガラス筐体においては、意匠性を高めるために、表面にメッキ処理が施されることがある。ガラス筐体にメッキ処理を行う場合、ガラス筐体の非メッキ部分に保護テープを貼付して行われる。メッキ処理の前処理では、ガラス表面への酸処理およびアルカリ処理などの表面処理が行われる。
しかし、従来の粘着シートを用いて表面処理が施される被着体の表面を保護しても、表面処理に使用した処理液が粘着シートと被着体との界面に侵入して悪影響を来す場合があった。具体的には、粘着シートを用いてメッキ処理が施される被着体の表面を保護しても、メッキ処理の前処理に使用した処理液が粘着シートと被着体との界面に侵入し、被着体の表面が浸食される場合があった。このため、メッキ処理が施される被着体の表面を保護する粘着シートは、メッキ処理の前処理において用いる酸性処理液およびアルカリ性処理液に対する耐性を向上させることが要求されている。
粘着シートと被着体との界面への処理液の浸入を防ぐ方法として、粘着シートの粘着力を向上させることが考えられる。しかし、粘着力の高い粘着シートを使用すると、表面処理終了後、粘着シートを剥離した被着体の表面に、粘着シートの粘着剤層が転写される糊残りが発生してしまう。
特開2013―40323号公報
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、粘着シートの粘着剤層を形成する材料として用いた場合、被着体との界面への処理液の浸入を抑制でき、かつ粘着シートを剥離した被着体の表面に糊残りが生じにくい粘着シートが得られる、粘着剤組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と、特定の変性不飽和エポキシエステル樹脂と、特定のポリイソシアネート化合物と、光重合開始剤とを含む粘着剤組成物を用いて粘着シートの粘着剤層を形成すればよいことを見出し、本発明を想到した。すなわち、本発明の第一の態様は以下の粘着剤組成物に関する。
[1](a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂と、(c)ポリイソシアネート化合物と、(d)光重合開始剤とを含み、
前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、エポキシ基に由来する第2級炭素原子にオキシ基を介して結合されたエチレン性不飽和基と、エポキシ基に由来する第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基とを有し、前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、エポキシ基を有し又は有さず、前記α,β−不飽和一塩基酸基の数がエポキシ基の数以上であり、 前記(c)ポリイソシアネート化合物が、脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートであることを特徴とする粘着剤組成物。
第一の態様の粘着剤組成物は、以下の特徴を好ましく含む。
[2]前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物に由来する不飽和エポキシエステル樹脂構造を有する[1]に記載の粘着剤組成物。
[3]前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂が、下記式(1)で表される化合物である[1]または[2]に記載の粘着剤組成物。
Figure 2020116101
(式(1)中、2つのRは独立して水素原子またはメチル基である;Rは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である;Xはエポキシ樹脂から誘導された基を含む繰り返し単位である;nは1〜100の整数である;Rが水素原子である場合、[X]はエチレン性不飽和結合を有する基を少なくとも1つ有する;nが2〜100である場合、Xは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。)
[4]前記Xが、下記式(2)または下記式(3)で表される[3]に記載の粘着剤組成物。
Figure 2020116101
(式(2)中、2つのRは独立して水素原子またはメチル基である;Rは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である。)
Figure 2020116101
(式(3)中、2つのRは独立して水素原子またはメチル基である;Rは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である。)
[5]前記(c)ポリイソシネート化合物の含有量が、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂との合計100質量部に対して1〜10質量部である[1]〜[4]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
[6]前記(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂との質量比が、60:40〜40:60である[1]〜[5]のいずれかに記載の粘着剤組成物。
本発明の第二の態様は以下の粘着シートに関する。
[7]基材の一方の面上に粘着剤層が設けられ、
前記粘着剤層が、[1]〜[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物を含むことを特徴とする粘着シート。
本発明の粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートは、被着体との界面への処理液の浸入を抑制でき、かつ粘着シートを剥離した被着体の表面に糊残りが生じにくい。
以下、本発明の粘着剤組成物および粘着シートの好ましい例について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、省略、組み合わせ、交換、及び/又は追加することが可能である。
〔粘着剤組成物〕
本発明者らは、鋭意検討を重ね、その結果、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂と、(c)ポリイソシアネート化合物と、(d)光重合開始剤とを含み、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、エポキシ基に由来する第2級炭素原子にオキシ基を介して結合されたエチレン性不飽和基と、エポキシ基に由来する第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基とを有し、α,β−不飽和一塩基酸基の数がエポキシ基の数以上であり、(c)ポリイソシアネート化合物が、脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートである粘着剤組成物を用いれば、非常に優れた結果が得られること見出した。
前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂として、不飽和エポキシエステル樹脂構造中の2級ヒドロキシ基の一部にエチレン性不飽和基が導入されており、原料であるエポキシ樹脂のエポキシ基に対して50モル%以上のα,β−不飽和一塩基酸が付加された樹脂を、粘着剤組成物に用いると、好ましい結果が得られることを、本発明者らは見出した。
上記粘着剤組成物は、上記(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と上記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂と上記(c)ポリイソシアネート化合物とを含有する。このため、上記(a)成分および(b)成分に含まれるヒドロキシ基と、上記(c)成分のイソシアナト基とが加熱により反応して架橋構造を形成する。そのため、酸溶液およびアルカリ溶液に対する耐性に優れ、かつガラス板などの被着体に対して高い粘着力を有する粘着剤層を形成できる。よって、上記の粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートは、被着体との界面への処理液の浸入を抑制できる。
また、上記粘着剤組成物を含有する粘着剤層は、紫外線(UV)などの光を照射することにより、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂中のエチレン性不飽和基が反応して更なる架橋構造を形成して硬化する。その結果、粘着力が変化する。具体的には、粘着剤組成物を含有する粘着剤層に光照射する前には、被着体に対して十分な粘着力が得られ、光照射した後には、粘着力が低下して、剥離を容易にし、剥離後の被着体への糊残りを防止できる。
〔粘着剤組成物の特徴〕 本実施形態の粘着剤組成物は、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂(以下「変性エポキシエステル樹脂」という場合がある。)と、(c)ポリイソシアネート化合物と、(d)光重合開始剤とを含む。
それぞれの成分について、以下に詳細に説明する。
本明細書中において「(メタ)アクリル樹脂」とは、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂から選択される少なくとも一種を意味する。
<(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂>
本実施形態の粘着剤組成物に含まれる(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構成単位を主成分として有する重合体である。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂は、1分子中に1つ以上のヒドロキシ基を有する。(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の有するヒドロキシ基は、熱により(c)ポリイソシアネート化合物と反応する架橋点となる。したがって、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂を含むことにより、優れた凝集力を有し、糊残りしにくい粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。
本実施形態の粘着剤組成物中に(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂は、1種のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、重量平均分子量が20万〜200万のものが好ましく、20万〜150万であることがより好ましく、40万〜100万であることがさらに好ましい。(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が20万以上であると、より一層糊残りが生じにくい粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量が200万以下であると、塗布しやすい粘度の粘着剤組成物が得られやすく、好ましい。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が−80〜0℃であるものを用いることが好ましく、−60〜−10℃であることがより好ましく、−40〜−10℃であることがさらに好ましい。(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度が−80℃以上であると、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂との相溶性に優れる。また、光照射後に粘着力が低下しやすく、より一層糊残りが生じにくい粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度が0℃以下であると、より良好な粘着力を有する粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、水酸基価が0超〜40mgKOH/gであるものを用いることが好ましく、1〜20mgKOH/gであるものがより好ましく、1〜10mgKOH/gであるものを用いることがさらに好ましい。水酸基価が0超以上であると、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂のヒドロキシ基が(c)ポリイソシアネートと反応する架橋点となる。このため、十分な凝集力が得られ、糊残りしにくく、被着体との界面への処理液の侵入を十分に抑制できる粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。また、水酸基価が40mgKOH/g以下であると、十分な初期粘着力を有する粘着剤層を形成できる粘着剤組成物となる。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、酸価が0〜40mgKOH/gであるものを用いることが好ましく、1〜20mgKOH/gであることがより好ましく、3〜10mgKOH/gであることがさらに好ましい。(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の酸価が0〜40mgKOH/gの範囲である粘着剤組成物は、アルカリ性溶液に接しても粘着剤層が膨潤しにくい。このため、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の酸価が上記範囲である粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートは、被着体との界面への処理液の浸入がより一層抑制できるものとなる。
((a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の製造方法)
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂は、任意に選択される方法で製造でき、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む原料モノマーを重合する方法により製造できる。特に、原料モノマーとして、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのようなヒドロキシ基を有するモノマーと、アルキル(メタ)アクリレートとを用い、これらを共重合する方法を用いて製造することが、簡便で好ましい。(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂は、グリシジル(メタ)アクリレートを含む原料モノマーを共重合した後、エポキシ基を開環させてヒドロキシ基を生成させる方法を用いて製造しても良い。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の原料モノマーとして使用される(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、1種のみ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の原料モノマーとして使用される(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定はなく、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、環状アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート、フッ化アルキル(メタ)アクリレート、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を複数個有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
本明細書中において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートから選択される少なくとも一種を意味する。
また、本明細書中において「(メタ)アクリロイル基」とは、CH=CH−CO−およびCH=C(CH)−CO−から選択される少なくとも1種を意味する。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の原料モノマーとして使用される上記の(メタ)アクリル酸エステルモノマーの中でも特に、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートは、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂にヒドロキシ基を含有させるために有用なモノマーである。
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、3−メチルペンタンジオール(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも特に、(c)ポリイソシアネート化合物との反応性が良好で入手容易であるため、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシ基含(メタ)アクリレートとしては、例えば、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の原料として用いるカルボキシ基含有(メタ)アクリレートの有するカルボキシ基は、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂において(c)ポリイソシアネート化合物と反応する架橋点となる。したがって、カルボキシ基含有(メタ)アクリレートを含むことにより、より優れた凝集力を有し、より一層糊残りしにくい粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、これらの中でも特に、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の原料として用いる(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むことで、より一層、被着体との密着性に優れる粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。
環状アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
スルホン酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−スルホエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
フッ化アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリロイル基を複数個有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の原料モノマーには、重合性を損なわない範囲で、共重合成分として(メタ)アクリル酸エステルモノマーではない他の重合性モノマーが1種以上含まれていてもよい。
他の重合性モノマーとしては、特に(メタ)アクリル酸を含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸に含まれるカルボキシ基(−COOH)は、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂において(c)ポリイソシアネート化合物と反応する架橋点となる。したがって、(メタ)アクリル酸を含む原料モノマーを共重合して製造した(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂を含む粘着剤組成物は、より優れた凝集力を有し、より一層糊残りしにくい粘着剤層が得られるものとなる。そのため、(メタ)アクリル酸を原料モノマーの1つとして使用することが好ましい。
原料モノマー中の(メタ)アクリル酸の使用比率(含有量)は、0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%である。(メタ)アクリル酸の使用比率が、0.1質量%以上であると、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂が(c)ポリイソシアネート化合物と反応して、凝集力が向上し、被着体への糊残りをより一層低減できる粘着剤組成物となる。(メタ)アクリル酸の使用比率が、5質量%以下であると、被着体に対して十分な粘着力を有する粘着剤組成物となる。
(メタ)アクリル酸以外の他の重合性モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の原料モノマーとしては、耐水性が良好で酸溶液およびアルカリ溶液に対する耐性に優れる粘着剤層が得られる粘着剤組成物となるため、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを含み、さらにカルボキシ基含有(メタ)アクリレートおよびアルキル(メタ)アクリレートから選択される1種以上のモノマーを含むことが好ましい。この原料モノマーにおいては、カルボキシ基含有(メタ)アクリレートとともに、またはカルボキシ基含有(メタ)アクリレートの代わりに、(メタ)アクリル酸を含むことも入手のしやすさ及び反応性の観点から好ましい。
原料モノマーとしては、具体的には、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとして2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含み、さらにアルキル(メタ)アクリレートであるn−ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレートから選択される1種以上と、メタクリル酸および/またはアクリル酸とを含むものを用いることがより好ましい。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の原料モノマー中における下記モノマーの好ましい使用比率は、以下の通りである。
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの原料モノマー中における使用比率は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの使用比率が、0.1質量%以上であると、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂が(c)ポリイソシアネート化合物と反応して、凝集力が向上し、被着体への糊残りを低減できる粘着剤組成物となる。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートの使用比率が、5質量%以下であると、被着体に対して十分な粘着力を有する粘着剤組成物となる。
カルボキシ基含有(メタ)アクリレートの原料モノマー中における使用比率は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。カルボキシ基含有(メタ)アクリレートの使用比率が、0.1質量%以上であると、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂が(c)ポリイソシアネート化合物と反応して、凝集力が向上し、被着体への糊残りをより一層低減できる粘着剤組成物となる。カルボキシ基含有(メタ)アクリレートの使用比率が、5質量%以下であると、被着体に対して十分な粘着力を有する粘着剤組成物となる。
アルキル(メタ)アクリレートの原料モノマー中における使用比率は、好ましくは70〜99質量%、より好ましくは80〜95質量%である。アルキル(メタ)アクリレートの使用比率が、70質量%以上であると、酸溶液およびアルカリ溶液に対する耐性に優れる粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。アルキル(メタ)アクリレートの使用比率が、99質量%以下であると、被着体に対する糊残りを低減できる粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。
原料モノマー中に含まれるヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートと、カルボキシ基含有(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸と、アルキル(メタ)アクリレート以外のモノマーの合計の、原料モノマー中における使用比率は、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂を製造するための原料モノマーを重合する方法としては、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、交互共重合などの公知の方法を用いることができる。これらの重合方法の中でも、特に、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂のコストなどの点で、溶液重合が好適である。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂を製造するために原料モノマーを重合する際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択して使用できる。例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などの油溶性重合開始剤を例示できる。
これらの重合開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合開始剤の使用量は任意に選択でき、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の重合に用いる原料モノマー合計100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.02〜4質量部がより好ましく、0.03〜3質量部であることがさらに好ましい。
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂を溶液重合により製造する場合、各種の一般的な溶剤を用いることができる。例えば、溶剤として、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂>
粘着剤組成物に含まれる(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂の変性物である。(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂は、例えば「滝山栄一郎著、ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社編、1988年刊)または「塗料用語辞典」(色材協会編、1993年刊)などに記載されている。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂の不飽和エポキシエステル樹脂構造中における2級ヒドロキシ基の一部に、エチレン性不飽和基が導入されている樹脂である。(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、変性前の(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂中の2級ヒドロキシ基の一部に、エチレン性不飽和基を導入することにより得られた樹脂である。変性とは、(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂中の2級ヒドロキシ基の一部に、エチレン性不飽和基が導入されていることを意味する。
本実施形態の粘着剤組成物中に、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、1種のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、変性前の(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂の原料である(b−2)エポキシ樹脂のエポキシ基に由来する下記式(5)に矢印で示される第2級炭素原子に、オキシ基(−O−)を介して結合されたエチレン性不飽和基と、前記エポキシ基に由来する下記式(5)に矢印で示される第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基と、を有する。
Figure 2020116101
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、1分子中に1つ以上のヒドロキシ基を有する。(b)変性エポキシエステル樹脂の有するヒドロキシ基は、粘着剤組成物が加熱されることにより(c)ポリイソシアネート化合物と反応する架橋点となる。(b)変性エポキシエステル樹脂の有するヒドロキシ基は、エポキシ基の開環により生じた残基であることが好ましい。ヒドロキシ基は、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂のエポキシ基に由来する第2級炭素原子であって、オキシ基を介してエチレン性不飽和基が結合されていない第2級炭素原子に結合されていることが好ましい。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂において、原料である(b−2)エポキシ樹脂のエポキシ基に由来する第2級炭素原子にオキシ基を介して結合されたエチレン性不飽和基は、紫外線(UV)などの光が照射されることにより、架橋構造を形成する。このことにより、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、粘着剤組成物を含有する粘着剤層における光照射後の粘着力を低下させる機能を有する。エポキシ基に由来する第2級炭素原子にオキシ基を介して結合されたエチレン性不飽和基は、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂1分子中に1つ以上含まれていればよい。エチレン性不飽和基は、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂のエポキシ基に由来する第1級炭素原子に、オキサ結合を介して結合していても良い。
エポキシ基に由来する第2級炭素原子にオキシ基を介して結合されたエチレン性不飽和基は、エチレン性不飽和結合を有する基であり、例えば、α,β−不飽和一塩基酸からヒドロキシ基をのぞいた残基、(メタ)アクリロイル基を有する基などが挙げられる。エチレン性不飽和基としては、具体的には例えば、CH=CHCOOCHCH−NHCO−、CH=C(CH)COOCHCH−NHCO−などのウレタン結合により結合された基、α,β−不飽和一塩基酸からヒドロキシ基をのぞいた残基である(メタ)アクリロイル基、クロトニル基などが挙げられる。これらのエチレン性不飽和基の中でも特に、光硬化性の良好な粘着剤組成物が得られ、また(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂を製造する際に使用する原料の入手が容易であるため、CH=C(CH)COOCHCH−NHCO−または(メタ)アクリロイル基が好ましい。(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂が、1分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する場合、分子中のエチレン性不飽和基の種類は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂において、原料である(b−2)エポキシ樹脂のエポキシ基に由来する全ての第2級炭素原子の数のうち、オキシ基を介してエチレン性不飽和基が結合されている数は、30〜95モル%であることが好ましく、40〜90モル%であることがより好ましい。エポキシ基に由来する第2級炭素原子の数に対するオキシ基を介して結合されたエチレン性不飽和基の数が30モル%以上であると、粘着剤組成物に紫外線(UV)などの光が照射されることにより、十分な架橋構造が形成される。このため、粘着剤組成物を含有する粘着剤層における光照射後の粘着力が十分に低下する。また、上記のエチレン性不飽和基の数が95モル%以下であると、エポキシ基に由来する第2級炭素原子であって、オキシ基を介してエチレン性不飽和基が結合されていない第2級炭素原子にヒドロキシ基が結合できる。このことにより、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂に含まれる(c)ポリイソシアネート化合物と反応するヒドロキシ基の数を十分に確保できる。よって、耐水性が良好で酸溶液およびアルカリ溶液に対する耐性に優れる粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂中のα,β−不飽和一塩基酸基の数は、エポキシ基の数以上である。(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、原料である(b−2)エポキシ樹脂のエポキシ基に対して、50モル%以上のα,β−不飽和一塩基酸を付加したものであり、α,β−不飽和一塩基酸基の数が残存するエポキシ基の数以上である。言い換えると、エポキシ基に由来する第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基の数とエポキシ基の数との合計モル数に対するα,β−不飽和一塩基酸基の割合が50モル%以上である。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、原料である(b−2)エポキシ樹脂のエポキシ基に対して、好ましくは65〜100モル%、より好ましくは80〜100モル%のα,β−不飽和一塩基酸基が付加された樹脂であることが好ましい。(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、エポキシ基を有していなくてもよいし、α,β−不飽和一塩基酸基が付加されていない未反応のエポキシ基を有していてもよい。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂において、エポキシ基に由来する第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基は、紫外線(UV)などの光が照射されることにより、架橋構造を形成する。本実施形態では、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂中のα,β−不飽和一塩基酸基の数がエポキシ基の数以上であるので、粘着剤組成物を含有する粘着剤層における光照射後の粘着力を低下させる機能が十分に得られる。よって、糊残りしにくい粘着剤層が得られる粘着剤組成物となる。
エポキシ基に由来する第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基としては、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、珪皮酸、ソルビン酸などのα,β−不飽和一塩基酸から水素原子をのぞいた残基が挙げられる。これらのα,β−不飽和一塩基酸基の中でも特に、粘着剤組成物を含有する粘着剤層における光照射後の粘着力の低下が良好となるため、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂が、1分子中に複数のα,β−不飽和一塩基酸基を有する場合、分子中のα,β−不飽和一塩基酸基の種類は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
(b)ヒドロキシ基含有変不飽和性エポキシエステル樹脂の水酸基価は、好ましくは5〜90mgKOH/gであり、15〜85mgKOH/gがより好ましく、さらに好ましくは30〜80mgKOH/gである。必要に応じて、30〜60mgKOH/gや、40〜70mgKOH/gであってもよい。水酸基価が5mgKOH/g以上であると、ヒドロキシ基が十分に含まれている(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂となる。その結果、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂のヒドロキシ基が、粘着剤組成物が加熱されることにより(c)ポリイソシアネートと反応する架橋点となり、十分な凝集力が得られ、糊残りしにくく、被着体との界面への処理液の侵入を十分に抑制できる粘着剤層を形成できる粘着剤組成物となる。また、水酸基価が90mgKOH/g以下であると、十分な初期粘着力を有する粘着剤層を形成できる粘着剤組成物となる。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂の水酸基価は、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の水酸基価と同様の方法で測定できる。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂とα,β−不飽和一塩基酸との反応生成物に由来する不飽和エポキシエステル樹脂構造を有することが好ましい。すなわち、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ基に対して、α,β−不飽和一塩基酸基が付加された樹脂であることが好ましい。(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂に由来する不飽和エポキシエステル樹脂構造を有する場合、本実施形態の粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートが、光照射による粘着力の低下が顕著なものとなる。特に、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物に由来する不飽和エポキシエステル樹脂構造を有することが好ましい。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2020116101
(式(1)中、2つのRは独立して水素原子またはメチル基である。Rは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である。Xはエポキシ樹脂から誘導された基を含む繰り返し単位である。nは1〜100の整数である。Rが水素原子である場合、[X]はエチレン性不飽和結合を有する基を少なくとも1つ有する。nが2〜100である場合、Xは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。)
式(1)中、2つのRは独立して水素原子またはメチル基である。式(1)中の2つのRが同じであると、容易に製造できるため、好ましい。
式(1)中、Rは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である。
が水素原子である場合、すなわち−ORがヒドロキシ基である場合、粘着剤組成物が加熱されることにより(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂のヒドロキシ基と(c)ポリイソシアネート化合物とが反応する。そして、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂が、(c)ポリイソシアネート化合物を介して(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と架橋構造をとる。その結果、上記粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートは、剥離後の被着体への糊残りをより効果的に防止できる。
がエチレン性不飽和結合を有する基である場合のRとしては、上述したエポキシ基に由来する第2級炭素原子にオキシ基を介して結合されたエチレン性不飽和基と同じものが挙げられる。具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、クロトニル基などのα,β−不飽和一塩基酸からヒドロキシ基をのぞいた残基、CH=CHCOOCHCH−NHCO−、CH=C(CH)COOCHCH−NHCO−などのウレタン結合により結合された基が挙げられる。これらのエチレン性不飽和結合を有する基の中でも特に、UV照射後の剥離力の低下性が良好であるため、Rは(メタ)アクリロイル基またはCH=C(CH)COOCHCH−NHCO−であることが好ましい。また、Rがウレタン結合(−NHCO−)により結合された基である場合、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂を含む粘着剤組成物が、酸溶液およびアルカリ溶液に対してより優れた耐性を有するものとなるため、好ましい。
式(1)中、Xは(b−2)エポキシ樹脂から誘導された基を含む繰り返し単位である。Xは、エポキシ基を含む化合物を重合することにより、エポキシ基が開環して得られた基であることが好ましい。
式(1)中、nは1〜100の整数であり、1〜10の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましい。nは1、2、3及び/又は4であることがより好ましい。nが2〜100である場合、Xは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
式(1)中、Rが水素原子である場合、[X]はエチレン性不飽和結合を有する基を少なくとも1つ有する。[X]の有するエチレン性不飽和結合を有する基としては、Rとして用いることができるものと同様の基が挙げられる。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂が式(1)で表される化合物である場合、式(1)中のXは、下記式(2)または下記式(3)で表されるものであることが好ましい。
Figure 2020116101
(式(2)中、2つのRは独立して水素原子またはメチル基である。Rは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である。)
Figure 2020116101
(式(3)中、2つのRは独立して水素原子またはメチル基である。Rは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である。)
式(1)中のXが、式(2)で表されるものである場合、式(2)中の2つのRは独立して水素原子またはメチル基である。式(1)におけるnが2以上である場合、[X]を構成している複数のXは全てRが同じものであってもよいし、複数のXのうち一部または全部のRが異なるものであってもよい。
式(1)中のXが、式(2)で表されるものである場合、式(2)中のRは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である。式(1)におけるnが2以上である場合、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂に含まれる複数のR(言い換えると、[X]中に含まれる複数のR)は、全て同じであってもよいし、一部または全部が異なっていてもよい。
また、式(1)中のRが水素原子である場合、[X]はエチレン性不飽和結合を有する基を少なくとも1つ有する。したがって、式(1)におけるRが水素原子である場合、式(1)中の1つまたは複数のRのうちの少なくとも1つは、エチレン性不飽和結合を有する基である。Rとして用いられるエチレン性不飽和結合を有する基としては、式(1)におけるRとして用いることができるものと同様のものが挙げられる。
また、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂はヒドロキシ基を含有する樹脂であるため、式(1)中のRがエチレン性不飽和結合を有する基である場合、[X]はヒドロキシ基を少なくとも1つ有する。したがって、式(1)中のRがエチレン性不飽和結合を有する基である場合、式(1)中の1つまたは複数のRのうちの少なくとも1つは、水素原子である。
式(1)中のXが、式(3)で表されるものである場合、式(3)中の2つのRは独立して水素原子またはメチル基である。式(1)におけるnが2以上である場合、[X]を構成している複数のXは全てRが同じものであってもよいし、複数のXのうち一部または全部のRが異なるものであってもよい。
式(1)中のXが、式(3)で表されるものである場合、式(3)中のRは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である。式(1)におけるnが2以上である場合、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂に含まれる複数のR(言い換えると、[X]中に含まれる複数のR)は、全て同じであってもよいし、一部または全部が異なっていてもよい。
また、式(1)中のRが水素原子である場合、[X]はエチレン性不飽和結合を有する基を少なくとも1つ有する。したがって、式(1)におけるRが水素原子である場合、式(1)中の1つまたは複数のRのうちの少なくとも1つは、エチレン性不飽和結合を有する基である。Rとして用いられるエチレン性不飽和結合を有する基としては、式(1)におけるRとして用いることができるものと同様のものが挙げられる。
また、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂はヒドロキシ基を含有する樹脂であるため、式(1)中のRがエチレン性不飽和結合を有する基である場合、[X]はヒドロキシ基を少なくとも1つ有する。したがって、式(1)中のRがエチレン性不飽和結合を有する基である場合、式(1)中の1つまたは複数のRのうちの少なくとも1つは、水素原子である。
((b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂の製造方法)
本実施形態の(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂中の2級ヒドロキシ基の一部に、エチレン性不飽和基を導入することにより製造できる。
「(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂の製造方法」
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂の原料である(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂は、(b−2)エポキシ樹脂のエポキシ基に対して、α,β−不飽和一塩基酸を50モル%以上、好ましくは80モル%以上の量で、公知の方法により反応させる方法により製造できる。本実施形態では、(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂の有するエポキシ基のうち、α,β−不飽和一塩基酸と反応していない未反応のエポキシ基が残留していてもよい。
(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂の原料として用いられる(b−2)エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート及びこれらに臭素原子などのハロゲン原子を導入したエポキシ樹脂などが挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂のビスフェノール型としては、例えば、ビフェノール、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールSH型、ビスフェノールZ型、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ジヒドロキシナフタレンなどのビスフェノール類、テトラクロロビスフェノールAなどが挙げられる。
ノボラック型エポキシ樹脂のノボラック型としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ジシクロペンタジエン−フェノールノボラックなどが挙げられる。
(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂の原料として用いられる(b−2)エポキシ樹脂としては、上記の中でも特に、ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。ビスフェノール型エポキシ樹脂の中でも特に、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、水添ビスフェノールA型、水添ビスフェノールF型から選ばれるいずれか1種以上を使用することが好ましい。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂として、式(1)で表される化合物であって式(1)におけるXが式(2)で表され、式(2)中のRがメチル基であるものを製造する場合、(b−2)エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂として、式(1)で表される化合物であって式(1)におけるXが式(2)で表され、式(2)中のRが水素原子であるものを製造する場合、(b−2)エポキシ樹脂として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂として、式(1)で表される化合物であって式(1)におけるXが式(3)で表され、式(3)中のRがメチル基であるものを製造する場合、(b−2)エポキシ樹脂として、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂として、式(1)で表される化合物であって式(1)におけるXが式(3)で表され、式(3)中のRが水素原子であるものを製造する場合、(b−2)エポキシ樹脂として、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂の原料として用いられるα,β−不飽和一塩基酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、珪皮酸、ソルビン酸などが挙げられる。
これらのα,β−不飽和一塩基酸の中でも特に、(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂として、式(1)で表される化合物を製造する場合、α,β−不飽和一塩基酸として(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。
(b−2)エポキシ樹脂とα,β−不飽和一塩基酸とを反応させて(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂を合成する際には、必要に応じて、触媒および/または重合禁止剤を用いてもよい。触媒としては、例えば、トリフェニルフォスフィンなどの従来公知の触媒を用いることができる。重合禁止剤としては、例えば、メチルハイドロキノンなどの従来公知の重合禁止剤を用いることができる。
「(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂の変性方法」
次に、このようにして得られた(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂中の2級ヒドロキシ基の一部に、エチレン性不飽和基を導入して変性し、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂を製造する。
(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂を変性する方法としては、特に限定されず、例えば、以下に示す(I)または(II)の方法が挙げられる。
(I)不飽和エポキシエステル樹脂中の2級ヒドロキシ基の一部と、α,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートとを反応させる方法。
(II)不飽和エポキシエステル樹脂中の2級ヒドロキシ基の一部に、エチレン性不飽和基含有酸無水物を付加させる方法。
(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂として、例えば、式(1)で表される化合物を製造する場合、エチレン性不飽和基を導入する(b−1)不飽和エポキシエステル樹脂中の2級ヒドロキシ基は、式(1)中におけるRが結合されるもののみであってもよいし、式(1)中のXに存在しているもののみであってもよいし、両方であってもよい。式(1)中におけるRが水素原子である式(1)で表される化合物を製造する場合、式(1)中のXに存在している2級ヒドロキシ基の少なくとも1つに、エチレン性不飽和基を導入する。
「(I)の方法」
上記(I)の方法では、α,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートを用いて、不飽和エポキシエステル樹脂中の2級ヒドロキシ基の一部に、エチレン性不飽和基を導入する。このため、上記(I)の方法では、2級ヒドロキシ基の一部とイソシアネート基(−NCO)とが反応してウレタン結合(−NHCO−)が形成される。
上記(I)の方法において用いるα,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートとしては、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、1,1−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルエチルイソシアネートなどが挙げられる。これらのα,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
α,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートとしては、上記の中でも特に、粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートが、光照射による粘着力の低下が顕著なものとなるため、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートおよび/または1,1−ビス(メタ)アクリロイルオキシメチルエチルイソシアネートが好ましい。
上記(I)の方法において、不飽和エポキシエステル樹脂中の2級ヒドロキシ基の一部に、α,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートを付加する方法としては、公知のウレタン化反応の方法を用いることができる。具体的には、例えば、不飽和エポキシエステル樹脂と、α,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートと、必要に応じて用いられるウレタン化触媒とを、溶媒の存在下または溶媒の不在下で反応させる方法を用いることができる。
ウレタン化触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジアザビシクロオクタン(DABCO)などを用いることができる。
「(II)の方法」
上記(II)の方法では、エチレン性不飽和基含有酸無水物を用いて、不飽和エポキシエステル樹脂中の2級ヒドロキシ基の一部にエチレン性不飽和基を導入する。
上記(II)の方法において用いるエチレン性不飽和基含有酸無水物としては、無水(メタ)アクリル酸などが挙げられる。エチレン性不飽和基含有酸無水物として無水(メタ)アクリル酸を用いることで、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂を含む粘着剤組成物が、酸溶液およびアルカリ溶液に対してより優れた耐性を有するものとなる。また、不飽和エポキシエステル樹脂との反応により発生した遊離したアクリル酸を、続く乾燥工程で容易に除去できる点からも、無水(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。これらのエチレン性不飽和基含有酸無水物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
本実施形態の粘着剤組成物中における(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂との質量比(a):(b)は、60:40〜40:60であることが好ましく、より好ましくは55:45〜45:55である。上記質量比(a):(b)が60:40〜40:60であると、粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートは、剥離した後の被着体への糊残りがより生じにくく、かつ被着体との界面への処理液の侵入をより効果的に防止できるものとなる。
<(c)ポリイソシアネート化合物>
本実施形態の(c)ポリイソシアネート化合物は、脂肪族ジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートである。脂肪族ジイソシアネートは、非芳香族性のジイソシアネートであり、非環式脂肪族ジイソシアネートであってもよいし、環式脂肪族ジイソシアネートであってもよい。
(c)ポリイソシアネート化合物が、脂肪族ジイソシアネートから誘導されたものであると、芳香族性のジイソシアネートから誘導されたものである場合と比較して、酸溶液およびアルカリ溶液に対して優れた耐性を有する粘着剤層を形成できる粘着剤組成物となる。これは、脂肪族アミドでは芳香族アミドよりも脱離能が低いため、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂および(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂が、(c)ポリイソシアネート化合物を介して形成したウレタン結合が、分解されにくいものとなるためである。
(c)ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート体、多価アルコールへの脂肪族ジイソシアネート付加物などが挙げられる。
具体的には、鎖状脂肪族ジイソシアネートの3量体の一種であるヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」ともいう。)のイソシアヌレート体、多価アルコールであるトリメチロールプロパンのHDI付加物、環式脂肪族ジイソシアネートの3量体であるイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体などが挙げられる。これらの(c)ポリイソシアネート化合物を用いることで、これを含む粘着剤組成物が、アルカリ溶液に対してより優れた耐性を有するものとなる。
本実施形態の粘着剤組成物中に、(c)ポリイソシアネート化合物は、1種のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
(c)ポリイソシアネート化合物の原料として用いられる非環式脂肪族ジイソシアネートとしては、分子中に鎖状脂肪族炭化水素を有し、芳香族炭化水素を有しないジイソシアネートが挙げられる。具体的には、例えば、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、(c)ポリイソシアネート化合物の原料として用いられる環式脂肪族ジイソシアネートとしては、分子中に芳香族性を有しない環状脂肪族炭化水素を有するジイソシアネートが挙げられる。具体的には、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートなどが挙げられる。
粘着剤組成物中の(c)ポリイソシアネート化合物の含有量は、(a)ヒドロキシ基含有アクリル樹脂と(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂の合計100質量部に対して、0.5〜15質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、2〜6質量部であることがさらに好ましい。(c)ポリイソシアネートの使用量が0.5質量部以上であると、酸溶液およびアルカリ溶液に対してより優れた耐性を有する粘着剤組成物となる。(c)ポリイソシアネートの使用量が15質量部以下であると、粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートにおける濡れ性が良好となり、被着体に対して高い粘着力を有するものとなる。
<(d)光重合開始剤>
本実施形態における(d)光重合開始剤としては任意に選択でき、例えば、カルボニル系光重合開始剤、スルフィド系光重合開始剤、キノン系光重合開始剤、アゾ系光重合開始剤、スルホクロリド系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤又は過酸化物系光重合開始剤などが挙げられる。
本実施形態の粘着剤組成物中に、(d)光重合開始剤は、1種のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
カルボニル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンベンジル、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−N,N’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
スルフィド系光重合開始剤としては、例えば、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルアンモニウムモノスルフィド等が挙げられる。
キノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾキノン、アントラキノン等が挙げられる。
アゾ系光重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスプロパン、ヒドラジン等が挙げられる。
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン又は2−メチルチオキサントン等が挙げられる。
過酸化物系光重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル又はジ−t−ブチルペルオキシド等が挙げられる。
(d)光重合開始剤としては、粘着剤組成物中における溶解性の点から、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンベンジル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから選ばれるいずれか1種以上を用いることが好ましい。
粘着剤組成物中における(d)光重合開始剤の含有量は、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂との合計100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲が好ましい。必要に応じて、0.1〜0.5質量部、0.5〜1.5質量部、1.0〜3.0質量部、又は2.0〜5.0質量部などであっても良い。(d)光重合開始剤の使用量が0.1質量部以上であると、上記粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートに、光照射することによる硬化速度および粘着力の低下速度が速くなるとともに、粘着シートを剥離した後の被着体への糊残りをより効果的に防止できる。(d)光重合開始剤の使用量が5質量部以下であると、粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する粘着シートを剥離した後に、(d)光重合開始剤が被着体表面に残存することを抑制できる。
本実施形態の粘着剤組成物は、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と、(b)変性エポキシエステル樹脂と、(c)ポリイソシアネート化合物と、(d)光重合開始剤とを含み、さらに必要に応じて、粘着付与剤、各種添加剤、有機溶媒を含有していてもよい。
粘着付与剤としては、従来公知のものを特に限定なく使用できる。例えば、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ロジン系粘着付与樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられる。これらの粘着付与剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤組成物が粘着付与剤を含む場合、その使用量は、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、30質量部以下とすることが好ましい。
添加剤としては、任意に選択でき、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、ベンゾトリアゾール系等の光安定剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、界面活性剤のような帯電防止剤などが挙げられる。
有機溶媒は、粘着剤組成物を塗工する際の粘度調整において希釈剤として用いることができる。
有機溶媒としては、任意に選択でき、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサノン、n−へキサン、トルエン、キシレン、n−プロパノール、イソプロパノールなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種のみ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
(粘着剤組成物の製造方法)
本実施形態の粘着剤組成物は、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と、(b)変性エポキシエステル樹脂と、(c)ポリイソシアネート化合物と、(d)光重合開始剤と、さらに必要に応じて含有される粘着付与剤、各種添加剤、有機溶媒のいずれか1種以上を、公知の方法により混合し、攪拌する方法により製造できる。
粘着剤組成物が有機溶媒を含有する場合、有機溶媒として、粘着剤組成物を構成する各成分を製造する際に用いた溶媒をそのまま使用してもよい。
〔粘着シート〕
本実施形態の粘着シートは、基材の一方の面上に粘着剤層が設けられたものである。
(基材)
本実施形態の粘着シートは、基材、好ましくはシート状またはフィルム状の基材を有する。基材の材料としては、公知の材料を適宜選択して使用できる。基材としては、粘着シートへの光照射を基材側から行うことができるように、透明な基材、例えば透明な樹脂材料からなる樹脂シートを用いることが好ましい。
樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリイミド(PI);ポリフェニレンサルファイド(PPS);エチレン酢酸ビニル(EVA);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。これらの樹脂材料の中でも特に、適度な可撓性を有する粘着シートが得られるため、PE、PP、PETから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。基材に用いる樹脂材料は、1種のみでもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
基材として樹脂シートを用いる場合、樹脂シートは、単層であってもよいし、二層以上の多層構造(例えば三層構造)であってもよい。多層構造を有する樹脂シートにおいて、各層を構成する樹脂材料は、1種のみを単独で含む樹脂材料であってもよいし、2種以上を含む樹脂材料であってもよい。
基材として、樹脂シートを用いる場合、従来公知の一般的なシート成形方法(例えば押出成形、Tダイ成形、インフレーション成形等あるいは、単軸あるいは2軸延伸成形等)を適宜採用して製造できる。
基材の厚さは、粘着シートの用途、基材の材料などに応じて適宜選択できる。基材として樹脂シートを用いる場合、基材の厚さは、10〜1000μmであることが好ましく、50〜300μmであることがより好ましい。基材の厚さが10μm以上であると、粘着シートの剛性(コシ)が高くなる。そのため、粘着シートを被着体に貼り付ける際に、粘着シートにしわが生じたり、粘着シートと被着体との間に浮きが生じたりし難くなる傾向がある。また、基材の厚さが10μm以上であると、粘着シート表面からの処理液の膨潤浸入(浸漬)を抑制できる。また、基材の厚さが10μm以上であると、被着体に貼り付けた粘着シートを被着体から剥離しやすくなり、作業性(取扱い性、ハンドリング)が良好となる。基材の厚さが1000μm以下であると、粘着シートが適度な柔軟性を有し、作業性が良好となる。
基材の粘着剤層が設けられる側の面には、基材と粘着剤層との接着性を向上させるために表面処理(粘着剤の投錨性を得るための処理)が施されていても良い。
表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、酸処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗剤(プライマー)塗付等が挙げられる。
(粘着剤層)
本実施形態の粘着シートの粘着剤層は、本実施形態の粘着剤組成物を含むものであり、本実施形態の粘着剤組成物のみからなるものであることが好ましい。
粘着剤層の厚みは、任意に選択できるが、1〜100μmとすることが好ましく、2〜80μmとすることがより好ましく、5〜50μmとすることがさらに好ましい。粘着剤層の厚みが1μm以上であると、厚みの均一な粘着剤層を高精度で形成できる。粘着剤層の厚みが100μm以下であると、粘着剤層中に残留する溶媒に起因する臭気の問題が発生しにくく、好ましい。
(剥離シート)
本実施形態の粘着シートは、粘着シートの粘着面、すなわち、粘着剤層の基材と反対側の面に、剥離シート(セパレーター)を有していても良い。剥離シートを有することにより、粘着シートの粘着面(粘着剤層の表面)を被着体に接着する直前まで保護できる。また、粘着シートの使用時に、剥離シートを剥がして粘着剤層(貼付面)を露出させて、効率よく被着体に圧着する作業を行うことができる。
剥離シートの材料としては、公知の材料を適宜選択して使用できる。例えば、剥離シートの材料として、基材として使用される樹脂シートを用いることができる。
剥離シートの厚さは、粘着シートの用途、剥離シートの材料などに応じて適宜選択できる。剥離シートとして樹脂シートを用いる場合、剥離シートの厚さは、例えば5〜300μmであることが好ましく、より好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは25〜100μmである。
剥離シートの剥離面(粘着剤層に接して配置される面)には、必要に応じて従来公知のシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の剥離剤を用いて剥離処理が施されていてもよい。
(粘着シートの製造方法)
本実施形態の粘着シートは、例えば、以下に示す方法により製造できる。
基材上に、所定の膜厚となるように粘着剤組成物を塗布する。次に塗布した粘着剤組成物を、加熱乾燥して硬化させることにより、粘着剤層を形成する。
粘着剤組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、アプリケーターおよび慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いて塗布する方法が挙げられる。
また、粘着剤層は、剥離フィルムなどのセパレータ上に上記の方法により粘着剤層を形成した後、基材上に粘着剤層を転写(移着)する方法により、基材上に形成してもよい。なおこの場合、この後セパレータは除かれるが、必要に応じて、そのまま剥離シートとして使用しても良い。
次に、基材上に形成された粘着剤層の上に、すなわち粘着剤層の露出面に、剥離シートを積層して貼り合わせる。このことにより、基材と粘着剤層と剥離シートとが、この順に積層された粘着シートが得られる。
本実施形態の粘着シートは、打ち抜き法などにより、被着体の形状に応じた所定の形状とされたものであっても良い。
(粘着シートの使用方法)
粘着シートが剥離シートを有する場合、使用時に剥離シートを剥がして粘着剤層(貼付面)を露出させる。次に、露出した粘着剤層を被着体に対向して配置し、圧着する。このことにより、粘着シートと被着体とを密着させる。この状態で、例えば、被着体にメッキ処理の前処理を施す。そして、粘着シートが不要となった段階で、粘着シートに光を照射、好ましくは基材側から光を照射して、粘着シートの粘着力を低下させ、被着体から粘着シートを剥離する。
粘着シートに照射する光としては、必要に応じて任意に選択できるが、紫外線(UV)を用いることが好ましい。UV照射を行う際に使用される光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト、発光ダイオード(LED)などが挙げられ、高圧水銀ランプまたはメタルハライドランプを用いることが好ましい。
粘着シートに対するUVの照射量は、高圧水銀ランプを用いる場合、50〜3000mJ/cmであることが好ましく、100〜600mJ/cmであることがより好ましい。粘着シートに照射するUV照射量が50mJ/cm以上であると、UV照射することによる粘着シートの粘着力を低下させる効果が十分に得られる。具体的には、十分に速い硬化速度で粘着剤層が光硬化して弾性率が上昇し、粘着剤層の被着体に対する粘着力が十分に小さくなる。粘着シートに照射するUV照射量を3000mJ/cm以上にしても、それに見合う粘着剤層の粘着力低下効果が得られない。
本実施形態の粘着シートは、基材の一方の面上に、本実施形態の粘着剤組成物を含む粘着剤層が設けられたものである。このため、本実施形態の粘着シートの粘着剤層は、酸溶液およびアルカリ溶液に対して優れた耐性を有し、被着体との界面への処理液の浸入を抑制できる。したがって、本実施形態の粘着シートを被着体に貼付して表面処理を行うことで、被着体の表面処理不要な部分が処理されることを防止できる。また、本実施形態の粘着シートは、被着体に貼付した後に光照射することによって粘着剤層の粘着力が低下し、粘着シートを剥離した被着体の表面に糊残りが生じにくい。
したがって、本実施形態の粘着シートは、被着体の表面を保護するマスクとして好適に用いることができる。本実施形態の粘着シートにより保護される被着体としては、例えば、ガラスまたは金属からなるものを好適に用いることができる。金属からなる被着体としては、例えば、ステンレス(SUS)板、アルミ板、銅板などが挙げられる。
本実施形態の粘着シートは、具体的には、フッ酸溶液等のエッチング液によりエッチング(浸食研磨処理)する場合、酸性溶液およびアルカリ性溶液を用いてメッキ処理の前処理(脱脂処理)を行う場合などに、ガラスまたは金属からなる被着体表面のうち処理液から保護したい部分を保護するシートとして、好適に用いることができる。
酸性溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ酸から選ばれる1種または2種以上を含む混合液などが挙げられる。これらの酸性溶液のうち、ガラス板の切断面のエッチングには、フッ酸溶液が好ましく使用される。酸性溶液としては、pH1以下のものを用いることができる。アルカリ性溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどを用いることができる。
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の記述で「%」「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
<アクリル樹脂(A−1)>
攪拌機、温度調節器、還流冷却器、滴下ロート、温度計を付した反応装置に、原料モノマーと、溶剤としての酢酸エチル130部とを仕込み、加熱還流を開始し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加えた。この後、酢酸エチル還流温度で3時間反応させた。原料モノマーとしては、n−ブチルアクリレート80部、エチルアクリレート60部、メチルメタクリレート6.3部、アクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.8部を用いた。
3時間反応させた反応液に、アゾビスイソブチロニトリル0.1部を溶剤としてのトルエン4部に溶解させたものを加え、還流温度にて更に4時間反応させた。この後、トルエンにて希釈することにより、樹脂分40%であるアクリル樹脂(A−1)溶液を得た。
アクリル樹脂(A−1)溶液中のアクリル樹脂(A−1)の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、水酸基価および酸価を、以下に示す方法により測定した。その結果、アクリル樹脂(A−1)の重量平均分子量(Mw)は55万、ガラス転移温度(Tg)は−35.2℃、水酸基価は3mgKOH/g、酸価は5mgKOH/gであった。
(重量平均分子量(Mw))
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(昭和電工株式会社製、ショウデックス(登録商標) GPC−101)を用いて、下記条件にて常温で測定し、ポリスチレン換算にて算出した。
カラム:昭和電工株式会社製、ショウデックス(登録商標) LF−804カラム温度:40℃
試料:アクリル樹脂(A−1)の0.2質量%テトラヒドロフラン溶液流量:1ml/分
溶離液:テトラヒドロフラン
(ガラス転移温度(Tg))
示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、DSC7000X)を用いて測定した。
具体的には、アクリル樹脂(A−1)溶液から1g採取し、100℃で10分間乾燥させて、溶剤を揮発させて固形分とした。得られた固形分から10mg試料を採取した。そして、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度で−80℃から200℃まで試料の温度を変化させて示差走査熱量測定を行い、観察されたガラス転移による吸熱開始温度をガラス転移温度(Tg)とした。なお、Tgが2つ観察された場合には、2つのTgの平均値とした。
(水酸基価)
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の水酸基価は、JIS K0070に従って測定された水酸基価である。水酸基価とは、樹脂1gをアセチル化させたときの遊離酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数を意味する。具体的には、無水酢酸を用いて試料中のヒドロキシ基をアセチル化し、その際に生じる遊離酢酸を水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めた。
(酸価)
(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の酸価は、JIS K6901 5.3.2に従って、ブロモチモールブルーとフェノールレットの混合指示薬を用いて測定した。酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を意味する。
<アクリル粘着剤(A−2)>
攪拌機、温度調節器、還流冷却器、滴下ロート、温度計を付した反応装置に、原料モノマーと溶剤としての酢酸エチル130部とを仕込み、加熱還流を開始した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.2部を加え、酢酸エチル還流温度で8時間反応させた。その後、トルエンにて希釈することにより、樹脂分40%であるアクリル樹脂(A−2)を得た。原料モノマーとしては、n−ブチルアクリレート55部、メチルアクリレート85部、メチルメタリレート5.8部、アクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1.5部を用いた。
アクリル樹脂(A−2)について、アクリル樹脂(A−1)と同様にして、重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、水酸基価および酸価を測定した。その結果、アクリル樹脂(A−2)の重量平均分子量(Mw)は61万、ガラス転移温度(Tg)は−15.2℃、水酸基価は5mgKOH/g、酸価は5mgKOH/gであった。
であった。
<ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂(B−1)>
攪拌機、温度調節器、還流冷却器、滴下ロート、温度計を付した反応装置に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成株式会社製、商品名アラルダイトAER2603、エポキシ当量189)100部(エポキシ基のモル数0.53モル)と、α,β−不飽和一塩基酸であるアクリル酸38部(カルボキシ基のモル数0.53モル)と、触媒であるトリフェニルフォスフィン0.6部と、重合禁止剤であるメチルハイドロキノン0.12部とを仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、不飽和エポキシエステル樹脂を得た。
不飽和エポキシエステル樹脂を含む反応液の温度を60℃まで下げ、滴下ロートを通じて、α,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートである2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製、商品名カレンズMOI(登録商標))49部(イソシアネート基のモル数0.32モル)と、ウレタン化触媒であるジブチル錫ジラウレート0.02部の混合液を滴下した。滴下終了後の反応液を70℃で4時間保持して、反応液中のイソシアナト基を消失させた。
以上の工程により、式(1)で表される化合物であり、エポキシ基に由来する第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基の数と、エポキシ基の数との合計モル数に対する、α,β−不飽和一塩基酸基の割合が100モル%である、重量平均分子量1300の変性エポキシエステル樹脂(B−1)を得た。
変性エポキシエステル樹脂(B−1)において、式(1)中の2つのRは水素原子である。式(1)中のRはCH=C(CH)COOCHCH−NHCO−である。式(1)中のXは式(2)で表される。式(2)中の2つのRはメチル基である。nは1または2である。すなわち、変性エポキシエステル樹脂(B−1)は、nが1である樹脂とnが2である樹脂との混合物である。nが1の場合にはRは水素原子である。nが2の場合には、Xは2種であり、式(1)中の2つのRのうち一方は水素原子であり、他方はCH=C(CH)COOCHCH−NHCO−である。
変性エポキシエステル樹脂(B−1)の重量平均分子量は、アクリル樹脂(A−1)と同様にして測定した。
また、変性エポキシエステル樹脂(B−1)および変性エポキシエステル樹脂(B−1)の製造過程で生成した不飽和エポキシエステル樹脂について、それぞれJIS K 0070の中和滴定法により、樹脂中のヒドロキシ基のモル数を求めた。その結果、変性エポキシエステル樹脂(B−1)中のヒドロキシ基のモル数は0.24モルであり、不飽和エポキシエステル樹脂中のヒドロキシ基のモル数は0.56モルであった。
また、変性エポキシエステル樹脂(B−1)の水酸基価を、アクリル樹脂(A−1)と同様にして測定した。その結果、74mgKOH/gであった。
<ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂(B−2)>
攪拌機、温度調節器、還流冷却器、滴下ロート、温度計を付した反応装置に、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、商品名ST−3000、エポキシ当量230)100部(エポキシ基のモル数0.43モル)と、α,β−不飽和一塩基酸であるアクリル酸31部(カルボキシ基のモル数0.43モル)と、触媒であるトリフェニルフォスフィン0.4部と、重合禁止剤であるメチルハイドロキノン0.08部と、を仕込み、空気を吹き込みながら、120℃で8時間反応を続け、不飽和エポキシエステル樹脂を得た。
不飽和エポキシエステル樹脂を含む反応液の温度を60℃まで下げ、滴下ロートを通じて、α,β−エチレン性不飽和モノイソシアネートである2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製、商品名カレンズMOI(登録商標))45部(イソシアネート基のモル数0.29モル)と、ウレタン化触媒であるジブチル錫ジラウレート0.02部の混合液を、滴下した。滴下終了後の反応液を70℃で4時間保持して反応液中のイソシアナト基を消失させた。
以上の工程により、式(1)で表される化合物であって、エポキシ基に由来する第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基の数とエポキシ基の数との合計モル数に対する、α,β−不飽和一塩基酸基の割合は100モル%である、重量平均分子量1400の変性エポキシエステル樹脂(B−2)を得た。
変性エポキシエステル樹脂(B−2)において、式(1)中の2つのRは水素原子である。式(1)中のRはCH=C(CH)COOCHCH−NHCO−である。式(1)中のXは式(3)で表される。式(3)中の2つのRはメチル基である。nは1または2である。すなわち、変性エポキシエステル樹脂(B−2)は、nが1である樹脂とnが2である樹脂との混合物である。nが1の場合にはRは水素原子である。nが2の場合には、Xは2種であり、式(1)中の2つのRのうち一方は水素原子であり、他方はCH=C(CH)COOCHCH−NHCO−である。
変性エポキシエステル樹脂(B−2)の重量平均分子量は、アクリル樹脂(A−1)と同様にして測定した。
また、変性エポキシエステル樹脂(B−2)および変性エポキシエステル樹脂(B−2)の製造過程で生成した不飽和エポキシエステル樹脂について、それぞれJIS K 0070の中和滴定法により、樹脂中のヒドロキシ基のモル数を求めた。その結果、変性エポキシエステル樹脂(B−2)中のヒドロキシ基のモル数は0.23モルであり、不飽和エポキシエステル樹脂中のヒドロキシ基のモル数は0.52モルであった。
また、変性エポキシエステル樹脂(B−2)の水酸基価を、アクリル樹脂(A−1)と同様にして測定した。その結果、84mgKOH/gであった。
<ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂(B−3)>
変性エポキシエステル樹脂(B−1)と同様にして不飽和エポキシエステル樹脂を含む反応液を得た。
不飽和エポキシエステル樹脂を含む反応液の温度を130℃まで上げ、滴下ロートを通じてエチレン性不飽和基含有酸無水物である無水メタクリル酸(エボニックデグサジャパン株式会社製、商品名MAAH)49部(0.32モル)と、触媒であるトリフェニルフォスフィン0.4部との混合液を滴下した。滴下終了後の反応液を130℃で2時間保持して反応液中の酸無水物を消失させた。その後、水洗浄工程とトルエン洗浄工程と真空脱水工程とを順次行った。
以上の工程により、式(1)で表される化合物であって、エポキシ基に由来する第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基の数とエポキシ基の数との合計モル数に対する、α,β−不飽和一塩基酸基の割合は100モル%である、重量平均分子量1100の変性エポキシエステル樹脂(B−3)を得た。
変性エポキシエステル樹脂(B−3)において、式(1)中の2つのRは水素原子である。式(1)中のRはメタクリロイル基である。式(1)中のXは式(2)で表される。式(2)中の2つのRはメチル基である。nは1または2である。すなわち、変性エポキシエステル樹脂(B−3)は、nが1である樹脂とnが2である樹脂との混合物である。nが1の場合にはRは水素原子である。nが2の場合には、Xは2種であり、式(1)中の2つのRのうち一方は水素原子であり、他方はメタクリロイル基である。
変性エポキシエステル樹脂(B−3)の重量平均分子量は、アクリル樹脂(A−1)と同様にして測定した。
また、変性エポキシエステル樹脂(B−3)について、JIS K 0070の中和滴定法により、樹脂中のヒドロキシ基のモル数を求めた。その結果、変性エポキシエステル樹脂(B−3)中のヒドロキシ基のモル数は0.21モルであった。
また、変性エポキシエステル樹脂(B−3)の水酸基価を、アクリル樹脂(A−1)と同様にして測定した。その結果、80mgKOH/gであった。
(実施例1)
紫外線(UV)の遮断された室内でプラスチック製容器に、表1に示す(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂と(c)ポリイソシアネート化合物と(d)光重合開始剤とを、表1に示す割合で加えて、混合・攪拌し、実施例1の粘着剤組成物を得た。
次に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材上に、乾燥後の膜厚が20μmになるように、実施例1の粘着剤組成物を塗工し、105℃で2分間、加熱乾燥して、粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層の上に、基材と同じPETフィルムからなる剥離シートを貼り合せ、実施例1の粘着シートを得た。
(実施例2〜9、比較例1〜3)
表1または表2に示す原料を、表1または表2に示す割合で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9、比較例1〜3の粘着剤組成物を得た。
そして、実施例2〜9、比較例1〜3の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9、比較例1〜3の粘着シートを得た。
Figure 2020116101
Figure 2020116101
表1および表2中に記載の下記記号は、以下に示す化合物である。
「VR−77」ビスフェノールA型エポキシアクリレート(昭和電工株式会社製)「DPHA」ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名KAYARAD)
「コロネート(登録商標)HL」トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)付加物の75%酢酸エチル溶液(東ソー株式会社製)「コロネート(登録商標)HX」ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート体(東ソー株式会社製)
「デスモジュールZ−4470BA」イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体(住化コベストロウレタン株式会社製)
「コロネートL」トリレンジイソシアネート付加物(東ソー株式会社製)「イルガキュア184」1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製)
表1および表2中の(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂(A−1)(A−2)の数値は、固形分としての(メタ)アクリル樹脂(A−1)(A−2)の含有量(質量%)である。(メタ)アクリル樹脂(A−1)(A−2)における固形分は、下記方法によって測定した。
表1および表2中の(c)ポリイソシアネート化合物と(d)光重合開始剤の数値は、それぞれ(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂の固形分と(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂(比較例3においては、多官能アクリレート)との合計100質量部に対する含有量(質量部)である。
<固形分>
(メタ)アクリル樹脂(A−1)(A−2)を、それぞれ2g秤量し、これを空気中で110℃で5時間乾燥した後、再度、秤量を行った。そして、乾燥前の質量と乾燥後の質量を用いて、下記の式から求めた。
なお、(メタ)アクリル樹脂(A−1)(A−2)中の固形分は、全て共重合体であるとみなす。
固形分(%)=[A/B]×100
A:乾燥後の質量
B:乾燥前の質量
次に、実施例1〜9、比較例1〜3の粘着シートについて、それぞれ以下に示す方法により、UV照射前とUV照射後の粘着力、糊残り、処理液侵入性を評価した。その結果を表1に示す。
(UV照射前サンプルの作製方法)
粘着シートを縦25mm、横100mmの大きさに切り取り、その後、剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させた。次に、露出させた粘着剤層(測定面)がガラス板に接するように、粘着シートをガラス板に貼付し、2kgのゴムローラー(幅:約50mm)を1往復させ、UV照射前サンプルとした。
(UV照射前サンプルの粘着力の測定)
UV照射前サンプルを、23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した。その後、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、ガラス板と粘着シート間の粘着力(N/25mm)を測定した。
(UV照射後サンプルの作製方法)
UV照射前サンプルを、23℃、湿度50%RHの環境下で24時間放置した。その後、基材側に、高圧水銀ランプを用いて、UV照射量500mJ/cmの条件でUV照射し、UV照射後サンプルとした。
(UV照射後サンプルの粘着力の測定)
UV照射後サンプルに対して、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で180°方向の引張試験を行い、ガラス板と粘着シート間の粘着力(N/25mm)を測定した。
(糊残りの評価)
上記のUV照射後サンプルから粘着シートを剥がし、ガラス板に粘着剤が残っているかどうかを目視で確認し、以下に示す基準により評価した。
○(良):被着体に粘着剤が残っていない。
△(可):被着体の一部に粘着剤が残る。
×(不可):被着体の全面に粘着剤が残る。
(処理液侵入性評価)
上記のUV照射前サンプルを、以下に示す酸性処理液に10分間浸漬させた。その後、さらに以下に示すアルカリ性処理液に10分間浸漬させた。その後、酸性処理液およびアルカリ性処理液に浸漬させたUV照射前サンプルを、粘着シートの表面から目視で観察し、以下に示す基準により、粘着シートとガラス板との間への処理液の侵入を評価した。
○(良):処理液の浸入が見られない。
△(可):処理液の浸入が一部に見られた。
×(不可):処理液の浸入が界面全体に見られた。
「酸性処理液」
フッ酸と硫酸と硝酸とリン酸とからなるpH1以下の混合水溶液「アルカリ性処理液」
KOH1mol/L
表1に示すように、実施例1〜実施例9の粘着シートは、UV照射前の粘着力が13.0N/25mm以上であり、UV照射前の粘着力が十分に高いものであった。また、実施例1〜実施例9の粘着シートでは、UV照射後の粘着力が1.0N/25mm未満であり、UV照射後の粘着力が十分に低いものであった。
また、実施例1〜実施例9の粘着シートは、糊残りおよび処理液侵入性の評価が「○(良)」または「△(可)」であった。
これに対し、表2に示すように、(c)ポリイソシアネート化合物として、芳香族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート付加物)を用いた比較例1では、処理液侵入性の評価が「×(不可)」であった。
また、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂に代えて、エチレン性不飽和基で変性していない不飽和エポキシエステル樹脂(ビスフェノールA型エポキシアクリレート)を用いた比較例2では、UV照射後の粘着力が高く、処理液侵入性の評価が「×(不可)」であった。これは、以下に示す理由によるものであると推定される。
エチレン性不飽和基で変性していない不飽和エポキシエステル樹脂には、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂と比較して、ヒドロキシ基が多く存在している。エチレン性不飽和基で変性していない不飽和エポキシエステル樹脂中の過剰なヒドロキシ基は、これを含む粘着剤組成物を用いた粘着シートにおいて、耐水性を低下させる。このため、酸性処理液が含侵しやすくなる。その結果、比較例2では、処理液侵入性の評価が「×(不可)」になったものを推定される。
また、(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂に代えて、多官能アクリレート(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を用いた比較例3では、実施例1〜実施例9と比較してUV照射前の粘着力が低く、しかもUV照射後の粘着力が高く、糊残りおよび処理液侵入性の評価が「×(不可)」であった。これは、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と架橋構造を形成しないためであると推定される。
本発明によれば、粘着シートの粘着剤層を形成する材料として用いることで、被着体との界面への処理液の浸入を抑制でき、かつ粘着シートを剥離した被着体の表面に糊残りが生じにくい粘着シートが得られる粘着剤組成物を提供することができる。

Claims (9)

  1. (a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と、
    (b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂と、
    (c)ポリイソシアネート化合物と、
    (d)光重合開始剤とを含み、
    前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、
    エポキシ基に由来する第2級炭素原子にオキシ基を介して結合されたエチレン性不飽和基と、
    エポキシ基に由来する第1級炭素原子に結合されたα,β−不飽和一塩基酸基と、を有し、
    前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂は、エポキシ基を有し又は有さず、
    前記α,β−不飽和一塩基酸基の数がエポキシ基の数以上であり、
    前記(c)ポリイソシアネート化合物が、脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートであることを特徴とする粘着剤組成物。
  2. 前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物に由来する不飽和エポキシエステル樹脂構造を有する請求項1に記載の粘着剤組成物。
  3. 前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂が、下記式(1)で表される化合物である請求項1または請求項2に記載の粘着剤組成物。
    Figure 2020116101
    (式(1)中、2つのRは独立して水素原子またはメチル基である;Rは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である;Xはエポキシ樹脂から誘導された基を含む繰り返し単位である;nは1〜100の整数である;Rが水素原子である場合、[X]はエチレン性不飽和結合を有する基を少なくとも1つ有する;nが2〜100である場合、Xは1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。)
  4. 前記Xが、下記式(2)または下記式(3)で表される請求項3に記載の粘着剤組成物。
    Figure 2020116101
    (式(2)中、2つのRは独立して水素原子またはメチル基である;Rは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である。)
    Figure 2020116101
    (式(3)中、2つのRは独立して水素原子またはメチル基である;Rは水素原子またはエチレン性不飽和結合を有する基である。)
  5. 前記(c)ポリイソシネート化合物の含有量が、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂との合計100質量部に対して0.5〜15質量部である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  6. 前記(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂との質量比が、60:40〜40:60である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  7. 基材の一方の面上に粘着剤層が設けられ、
    前記粘着剤層が、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物を含むことを特徴とする粘着シート。
  8. 前記(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と前記(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂との質量比が、60:40〜40:60であり、
    (c)ポリイソシアネート化合物の含有量は、(a)ヒドロキシ基含有アクリル樹脂と(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂の合計100質量部に対して、0.5〜15質量部であり、
    (d)光重合開始剤の含有量は、(a)ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル樹脂と(b)ヒドロキシ基含有変性不飽和エポキシエステル樹脂との合計100質量部に対して、0.1〜5質量部である、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  9. 前記基材が、透明なシート状またはフィルム状の基材である、請求項7に記載の粘着シート。
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