JPWO2020044872A1 - スパッタリング装置及び成膜方法 - Google Patents

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Abstract

基板に薄膜を形成する場合に、その全面に亘ってより一層均一な膜厚分布を得ることができるスパッタリング装置を提供する。基板Wとターゲット3とが対向配置される真空チャンバ1と、真空チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、ターゲットの上方に配置される磁石ユニット4とを備えるスパッタリング装置SMは、磁石ユニットが基板側の極性が異なる複数個の磁石を有して、ターゲット中心とその周縁部との間に位置するターゲットの下方空間に磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が無端状に閉じる漏洩磁場を局所的に作用させると共に、磁石ユニットは、ターゲット中心からその周縁部に向かう仮想線上で、夫々が複数個の磁石42a,42bを有する複数の部分40a,40bに分割され、ターゲット中心回りに各部分を夫々回転駆動する駆動手段5,6と、漏洩磁場の無端状を維持する範囲内で各部分の角速度を制御する角速度制御手段72とを更に備える。

Description

本発明は、処理すべき基板とターゲットとが対向配置される真空チャンバと、真空チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、真空チャンバ内で基板からターゲットに向かう方向を上として、ターゲットの上方に配置される磁石ユニットとを備えるスパッタリング装置及び成膜方法に関する。
この種のスパッタリング装置は、例えば特許文献1で知られている。このものでは、ターゲット中心を含む中央領域が局所的に侵食されることを防止するために、ターゲット中心とその周縁部との間に位置するターゲットの下方空間に磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が無端状に閉じる漏洩磁場を局所的に作用させている。この無端状に閉じる線に沿って高密度のプラズマを発生させ、プラズマ中のイオンによりターゲットをスパッタリングし、スパッタリングによりターゲットから飛散したスパッタ粒子が基板表面に付着、堆積することで薄膜が成膜される。成膜中、磁石ユニットをターゲット中心回りに回転駆動させてターゲットの漏洩磁場が作用する領域を変化させることで、ターゲットがその全面に亘って均等に侵食され、ターゲットの使用効率が向上する。
ところで、ターゲットの材料や真空チャンバ内の圧力等のスパッタリング条件が異なると、スパッタ粒子の飛散分布が変化し、それに起因して、例えば基板外周部における周方向の膜厚分布が変化する場合がある。このように周方向の膜厚分布が変化したときにこれを調整する方法は、例えば、特許文献2で知られている。このものでは、ターゲットに対して磁場が局所的に作用する領域が起点から同一軌道上を移動して当該起点に戻るまでを1サイクルとし、1サイクルにおける磁石ユニットの軌道を複数のゾーンに区画し、これら複数のゾーンのうちの少なくとも1つのゾーンを所定の基準速度で移動する基準ゾーンとし、基準ゾーン以外のゾーン毎に、膜厚分布に基づいて回転速度(基準速度からの増速量又は減速量)を決定している。
然しながら、上記従来例のものでは、磁石ユニットを一体に増減速しているだけであるため、例えば、基板外周部における周方向の膜厚分布を調整すると、これより内側の基板内周部(特に、基板中央に近い領域)における周方向の膜厚分布が却って悪化する場合がある。
特開2016−157820号公報 特開2016−011445号公報
本発明は、以上の点に鑑み、基板に所定の薄膜を形成する場合に、その全面に亘ってより一層均一な膜厚分布を得ることができるスパッタリング装置及び成膜方法を提供することをその課題とするものである。
上記課題を解決するために、処理すべき基板とターゲットとが対向配置される真空チャンバと、真空チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、真空チャンバ内で基板からターゲットに向かう方向を上として、ターゲットの上方に配置される磁石ユニットとを備える本発明のスパッタリング装置は、磁石ユニットが基板側の極性が異なる複数個の磁石を有して、ターゲット中心とその周縁部との間に位置するターゲットの下方空間に磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が無端状に閉じる漏洩磁場を局所的に作用させると共に、磁石ユニットは、ターゲット中心からその周縁部に向かう仮想線上で、夫々が複数個の磁石を有する複数の部分に分割され、ターゲット中心回りに各部分を夫々回転駆動する駆動手段と、漏洩磁場の無端状を維持する範囲内で各部分の角速度を制御する角速度制御手段とを更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、磁石ユニットの各部分がターゲット回りの同一軌道上を夫々移動するときに、角速度制御手段により各部分毎に角速度を制御できる構成を採用したため、基板外周部における周方向の膜厚分布を調整することで、これより内側の基板内周部における周方向の膜厚分布が悪化したような場合、当該基板内周部の成膜に寄与する漏洩磁場を作用させる磁石ユニットの部分を、周方向にて膜厚が比較的薄い領域については、角速度を減速してスパッタレートを増加させ、他方、膜厚が比較的厚い領域については、角速度を増速してスパッタレートを減少させることで、膜厚分布が悪化した箇所における膜厚分布を再調整することができ、その結果、その全面に亘ってより一層均一な膜厚分布を得ることができる。
また、上記課題を解決するために、真空チャンバ内に処理すべき基板とターゲットとを対向配置し、真空チャンバ内にプラズマを発生させ、ターゲットをスパッタリングして基板表面に薄膜を成膜する本発明の成膜方法は、真空チャンバ内で基板からターゲットに向かう方向を上として、成膜中、ターゲットの上方に配置される磁石ユニットによりターゲット中心とその周縁部との間に位置するターゲットの下方空間に磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が無端状に閉じる漏洩磁場を局所的に作用させるものにおいて、磁石ユニットとして、ターゲット中心からその周縁部に向かう仮想線上で、夫々が複数個の磁石を有する複数の部分に分割されたものを用い、各部分をターゲット中心回りに同期して回転駆動して基板表面に薄膜を成膜し、基板面内における膜厚分布に関する情報を取得する情報取得工程と、情報取得工程で取得した膜厚分布に関する情報に基づいて、漏洩磁場の無端状を維持する範囲内で各部分の角速度を夫々決定する角速度決定工程と、角速度決定工程で決定した角速度で磁石ユニットの各部分を夫々回転駆動させながら基板表面に薄膜を成膜する成膜工程とを有することを特徴とする。
本発明においては、成膜中、ターゲットに対して漏洩磁場が局所的に作用する領域が起点から同一軌道上を移動して当該起点に戻るサイクルを少なくとも1回以上行う場合、前記情報取得工程にて、磁石ユニットの各部分を所定の基準角速度で夫々回転させて薄膜を成膜したときの膜厚分布に関する情報を取得し、前記角速度決定工程にて、1サイクルにおける磁石ユニットの各部分の軌道を夫々複数のゾーンに区画し、少なくとも1つのゾーンを夫々基準ゾーンとし、基準ゾーン以外のゾーン毎に、前記情報取得工程で取得した膜厚分布に関する情報に基づいて前記基準角速度からの増速量または減速量を夫々決定することが好ましい。
本発明のスパッタリング装置の構成を説明する模式図。 図1に示す磁石ユニット4を下方からみた平面図。 磁石ユニット4の第1の部分40aの角速度を第2の部分40bの角速度よりも遅くした状態を示す平面図。 (a)は、磁石ユニットの変形例の要部を拡大して示す平面図、(b)は、図4(a)に示すA−A線に沿う断面図。 (a)及び(b)は、磁石ユニットの他の変形例の要部を拡大して示す平面図。 磁石ユニットの他の変形例の要部を拡大して示す平面図。
以下、図面を参照して、本発明のスパッタリング装置の実施形態を説明する。以下においては、「上」「下」といった方向を示す用語は、図1を基準とする。
図1を参照して、SMは、本発明のスパッタリング装置である。スパッタリング装置SMは、ロータリーポンプやターボ分子ポンプなどの真空排気手段Pにより所定圧力まで真空引き可能な真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の側壁には、マスフローコントローラ10を介設したガス管11が接続され、図示省略するガス源からスパッタガスを所定の流量で真空チャンバ1内に導入できるようになっている。スパッタガスには、アルゴンガス等の希ガスだけでなく、反応性スパッタリングを行う場合には酸素含有ガス等の反応性ガスが含まれるものとする。
真空チャンバ1の底部には、絶縁体Iを介してステージ2が配置されている。ステージ2は、図示省略する公知の静電チャックを有し、静電チャックの電極にチャック電源からチャック電圧を印加することで、ステージ2上に基板Wをその成膜面を上にして吸着保持できるようになっている。
真空チャンバ1の上壁に開設された開口には、カソードユニットが配置されている。カソードユニットは、真空チャンバ1内を臨むように配置され、基板Wの外形より一回り大きい外形を持つターゲット3と、このターゲット3の上方に配置された磁石ユニット4とを有する。ターゲット3は、基板Wの中心を通り上下方向にのびる中心線上にターゲット中心が位置するように、ステージ2ひいては基板Wと対向配置されている。ターゲット3としては、基板W表面に成膜しようとする薄膜の組成に応じて適宜選択され、Cu、Ti、Co、Ni、Al、WまたはTaの単体金属、またはこれらの中から選択された二種以上の合金、または、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等の絶縁物製のもので構成することができる。そして、ターゲット3は、成膜時にターゲット3を冷却する銅製のバッキングプレート31にインジウムやスズなどのボンディング材を介して接合された状態で絶縁板Iを介して真空チャンバ1に装着される。ターゲット3には、スパッタ電源Eとしての公知の構造を持つ直流電源や交流電源からの出力が接続され、スパッタリング時、負の電位を持つ電力が投入されるようにしている。尚、スパッタ電源Eとマスフローコントローラ10とは、特許請求の範囲の「プラズマ発生手段」に対応する。
ところで、基板外周部における周方向の膜厚分布が変化する場合があり、このような場合に上記従来例の如く磁石ユニットを一体に増減速して基板外周部における周方向の膜厚分布を調整すると、基板内周部における膜厚分布が却って悪化することがある。
そこで、本実施形態では、図2も参照して、磁石ユニット4を、ターゲット中心3cからその周縁部3eに向かう仮想線L1上で、夫々が複数個の磁石を有する複数の部分(本実施形態では、第1及び第2の2つの部分40a,40b)に分割した。第1の部分40aは、磁性材料製で平面視円形のヨーク41aと、ヨーク41aの下面にその下側の極性を変えて設けられる複数個の磁石42aとで構成されている。ヨーク41aの上面には回転軸43が連結され、この回転軸43を駆動手段たるモータ5で回転することで、ターゲット中心3cを回転中心として第1の部分40aを回転駆動できるようになっている。また、第2の部分40bは、ヨーク41aを囲繞するように同一平面上に配置される、磁性材料製で平面視環状のヨーク41bと、ヨーク41bの下面にその下側の極性を変えて設けられる複数個の磁石42bとで構成されている。これら複数個の磁石42bと、第1の部分40aの複数個の磁石42aとが、ターゲット中心3cとその周縁部3eとの間に位置するターゲット3の下方空間に磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線L0が無端状に閉じる漏洩磁場を局所的に作用させるように、所定のパターンで配置されている(図3参照)。これらの磁石42a,42bの配置については、ターゲット3の形状や面積等に応じて種々の形態を有する公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。ヨーク41bの上面には、回転軸43の径方向外側に配置される筒状部材44の下端が連結され、この筒状部材44の上端に設けたフランジ部44aと噛み合うように設けたギア45を駆動手段たるモータ6で回転することで、ターゲット中心3cを回転中心として第2の部分40bを回転駆動できるようになっている。尚、第1及び第2の各部分40a,40bを回転駆動する機構は、これに限定されず、他の公知の機構を用いることができる。
また、回転軸43及び筒状部材44には、回転板46a,46bが外挿され、この回転板46a,46bには、径方向外方に突出する突片47a,47bが取り付けられている。そして、突片47a,47bに対応させて光学式センサ48a,48bが設けられ、光学式センサ48a,48bが突片47a,47bを検出するときに、第1及び第2の各部分40a,40bが起点位置にあると判断できるようにしている。この場合、起点位置と基板Wのノッチの位置とを相関させて後述する膜厚分布に関する情報を取得するようにしている。
上記スパッタリング装置SMは、公知のマイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた制御手段7を有し、スパッタ電源Eの稼働、マスフローコントローラ10の稼働、モータ5,6の稼働、真空排気手段Pの稼働等を統括制御するようにしている。
制御手段7は、情報取得部71と、角速度決定部72と、角速度制御手段73とを備える。情報取得部71は、例えば、スパッタリング装置SMに基板Wをロード/アンロードするための図外のEFEM(Equipment Front End Module)に設けられた膜厚計と通信可能に構成され、この膜厚計で測定した基板面内における膜厚分布に関する情報を取得できるようにしている。角速度制御手段72は、取得情報に基づいて各部分40a,40bの基準角速度ωからの増速量及び減速量を決定する角速度決定部72aを有し、その決定した角速度ω,ωで各部分40a,40bが回転するようにモータ5,6を駆動する。なお、膜厚計としては、公知の構造を有するものを用いることができ、例えば、抵抗値の低い金属膜を比較的厚い膜厚で成膜する場合には、渦電流式の膜厚を用いることができ、また、絶縁膜を比較的薄い膜厚で成膜する場合には、分光エリプソメータを用いることができる。他の膜厚計として、レーザ変位計を用いることができる。以下、上記スパッタリング装置SMを用いて、基板W表面にアルミニウム膜を成膜する場合を例に、本発明の成膜方法の実施形態について説明する。
先ず、真空排気手段Pにより真空チャンバ1内を所定圧力(例えば1×10−5Pa)まで真空引きし、図外の搬送ロボットにより真空チャンバ1内に基板Wを搬送し、ステージ2に基板Wを受け渡し、ステージ2のチャックプレートの電極に電圧印加して基板Wを吸着保持する。次いで、マスフローコントローラ10によりスパッタガスたるアルゴンガスを所定流量(例えば、100sccm)で導入して(このときの圧力は0.1Pa)、スパッタ電源Eからアルミニウム製のターゲット3に例えば、30kWの直流電力を投入することにより、真空チャンバ1内にプラズマ雰囲気を形成すると共に、起点位置から第1の部分40aと第2の部分40bとを同期させてターゲット中心回りに所定の基準角速度ω(例えば、360度/sec)で少なくとも1サイクル(1回転)回転させる。これにより、ターゲット3がスパッタリングされ、ターゲット3から飛散したスパッタ粒子が基板W表面に付着、堆積してアルミニウム膜が成膜される。成膜済みの基板Wを真空チャンバ1から搬出し、図外の膜厚計により基板W面内の複数箇所におけるアルミニウム膜の膜厚を測定することで、基板面内における膜厚分布に関する情報が得られる。得られた情報は制御手段7の情報取得部71に送信され、情報取得部71は当該情報を取得する(情報取得工程)。
次に、情報取得工程で取得した膜厚分布に関する情報に基づいて、漏洩磁場の無端状を維持する範囲内で第1及び第2の各部分40a,40bの角速度を夫々決定する(角速度決定工程)。この角速度決定工程では、1サイクルにおける第1及び第2の各部分40a,40bの軌道(円周)を周方向に均等に区画し(例えば、360°の回転運動を15°毎に24個に区画し)、区画された夫々をゾーンとすると共に、光学式センサ48a,48bが突片47a,47bを検出した起点位置を基準ゾーンとする。そして、この基準ゾーンでの角速度を基準角速度ωとし、基準ゾーン以外のゾーン毎に、上記取得情報に基づいて基準角速度ωからの増速量または減速量を決定する。ここで、基準ゾーンより膜厚が薄いゾーンでは、各部分40a,40bの角速度ω,ωを基準角速度ωから所定値だけ減速することで、ターゲット3がスパッタリングされる量(スパッタレート)を増加させる。他方で、基準ゾーンより膜厚が厚いゾーンでは、各部分40a,40bの角速度ω,ωを基準角速度ωから所定値だけ増速することで、スパッタレートを減少させる。
上記角速度決定工程にて各部分40a,40bのゾーン毎の角速度ω,ωを決定した後、基板Wを真空チャンバ1内に搬送してステージ2上に吸着保持し、決定した角速度ω,ωで各部分40a,40bを夫々回転駆動させながら、上記と同様の条件で、基板W表面にアルミニウム膜を成膜する(成膜工程)。
以上によれば、磁石ユニット4の各部分40a,40bがターゲット回りの同一軌道上を夫々移動するときに、角速度制御手段72により各部分40a,40b毎に角速度ω,ωを制御できる構成を採用したため、基板外周部における周方向の膜厚分布を調整することで、これより内側の基板内周部における周方向の膜厚分布が悪化したような場合、当該基板内周部の成膜に寄与する漏洩磁場を作用させる磁石ユニットの第1の部分40aを、周方向にて膜厚が比較的薄い領域については、角速度ωを減速してスパッタレートを増加させ、他方、膜厚が比較的厚い領域については、角速度ωを増速してスパッタレートを減少させることで、膜厚分布が悪化した箇所における膜厚分布を再調整することができ、その結果、その全面に亘ってより一層均一な膜厚分布を得ることができる。尚、図3は、基板内周部のスパッタレートを増加させるために、磁石ユニット4の第1の部分40aの角速度ωを第2の部分40bの角速度ωよりも遅くした状態を示している。
次に、上記スパッタリング装置SMを用い、本発明の効果を確認するために実験を行った。基板Wをφ300mmのシリコンウエハとし、真空チャンバ1内にアルゴンガスを100sccm導入し(このときの圧力は0.1Pa)、アルミニウム製のターゲット3に対し直流電力を30kW投入してプラズマ雰囲気を形成し、磁石ユニット4の第1の部分40aと第2の部分40bとを同期して回転駆動させながら基板W表面にアルミニウム膜を成膜した。そして、膜厚計により基板W面内の複数箇所で膜厚を測定し、基板面内の膜厚分布に関する情報を得た。これによれば、基板外周部(半径147mmの仮想円)における周方向の膜厚の最大値が40.79nm、最小値が38.9nm、最大値と最小値の差(以下「レンジ」という)が1.89nmであり、他方で、基板内周部(半径98mmの仮想円)における周方向の膜厚の最大値が40.65nm、最小値が38.9nm、レンジが1.55nmであった。
磁石ユニット4の第2の部分40bの角速度ωを24個のゾーン毎に決定し、基板外周部における周方向の膜厚分布を調整したところ、基板外周部における周方向の膜厚の最大値が40.96nm、最小値が39.73nmであり、レンジが1.23nmと小さくなったが、基板内周部における周方向の膜厚の最大値が42.56nm、最小値が39.73nmであり、レンジが2.83nmと悪化した。そこで、磁石ユニット4の第1の部分40aの角速度ωを24個のゾーン毎に夫々決定したところ、基板内周部における周方向の膜厚の最大値が40.06nm、最小値が39.76nm、レンジが0.87nmであった。基板外周部における周方向の膜厚の最大値が40.09nm、最小値が39.76nm、レンジも0.33nmとなった。本実験によれば、膜厚分布が悪化した基板内周部における膜厚分布を再調整することができ、その結果、基板全面に亘ってより一層均一な膜厚分布が得られることが確認された。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、各ゾーンの膜厚が基準ゾーンの膜厚よりも薄い(又は厚い)場合には、基準角速度から所定値だけ減速(又は増速)する場合に説明したが、周方向の全ゾーンの膜厚の平均値(全平均膜厚)を求め、この全平均膜厚に対する各ゾーンの膜厚の平均値(ゾーン平均膜厚)の比率を求め、求めた比率が低いゾーン(すなわち、ゾーン平均膜厚が全平均膜厚より薄いゾーン)では、磁石ユニット4の角速度を基準角速度から所定値だけ減速する一方で、求めた比率が高いゾーン(すなわち、ゾーン平均膜厚が全平均膜厚より厚いゾーン)では、磁石ユニット4の角速度を基準角速度から所定値だけ増速するようにしてもよい。各ゾーンにおける角速度は、例えば、下式(1)を用いて決定することができる。
各ゾーンの角速度=基準角速度+係数×(ゾーン平均膜厚−全平均膜厚)/全平均膜厚・・・(1)
上式(1)では、1つの係数を用いているが、各ゾーンで係数を設けるようにしてもよい。この場合、磁石ユニット4の基準角速度を2条件以上(例えば、低速、中速、高速の3条件)設定し、各ゾーンにおいて磁石ユニットの角速度と膜厚との相関値を求めることで、係数の精度を高めることができる。
上記実施形態では、膜厚に基づいて各部分40a,40bの角速度を決定する場合を例に説明したが、膜厚と相関のある情報に基づいて各部分40a,40bの角速度を決定してもよい。例えば、ターゲット3へ一定の投入電力を投入したときにターゲット3に印加されるターゲット電圧をゾーン毎に測定し、測定したターゲット電圧に基づいて各部分40a,40bの角速度を決定してもよい。この場合、ゾーン毎に対応するターゲット電圧を取得し、基準ゾーンを含む全ゾーンのターゲット電圧の平均値(平均電圧)を求め、各ゾーンに対応付けたターゲット電圧の平均電圧に対する比率を求めるように構成することができる。比率が高いゾーンでは、各部分40a,40bの角速度が遅くなるように、また、求めた比率が低いゾーンでは、各部分40a,40bの角速度の速度が速くなるように、基準角速度からの増速量または減速量を決定すればよい(速度決定工程)。
また、無端状の垂直磁場の磁場強度分布(3軸の磁場ベクトルの合成)は、各部分40a,40bの角度差Δθ(即ち、例えば第1の部分40aを基準としたとき、この第1の部分40aに対する第2の部分40bの周方向のずれ量)によって各部分40a,40b近傍にて変動させることができる。そこで、角度差Δθとそれに応じた膜厚分布形状を予め計測し、膜厚分布を改善できる角度差Δθに調整してもよい。この場合、ターゲットの消耗量やターゲットへの投入電力量に合わせて角度差Δθを調整してもよく、1つの基板に対して複数の角度差条件による処理を連続成膜もしくは不連続成膜にて組み合わせることによって膜厚分布を改善することができる。
ところで、各部分40a,40bのヨーク41a,41bの透磁率とヨーク41a,41b間の空間の透磁率との差によって、磁石のヨーク面から発生する磁場がヨークを通って収束していたものが、ヨーク41a,41b間の距離が広がると発散することがあり、これに起因して、ヨーク41a,41b間距離が周方向で不均一であると、膜厚分布が変動する虞がある。そこで、ヨーク41a,41b間距離を周方向で均一にするために、図4に示すように、ヨーク41a,41bの間をベアリング構造49とすることが好ましい。この場合、ベアリング構造49のボール49aの材質は、セラミックス等の非磁性体とすることが好ましい。ボール49aの材質を磁性体とすることもできるが、その場合は、ヨーク41a,41bの対向する周面に凹設されてボール49を保持する空間の上下方向の寸法b(図4(b)参照)を短くするか(これにより、当該空間を狭くする)、ボール49を周方向で密に設ける構成とすることが好ましい。また、図5(a)に示すように、ヨーク41aの外周面とヨーク41bの内周面とを互いに非接触の歯車形状としてもよく、これにより、無端状を維持する狭い調整範囲内でヨーク41a,41b間の空間を通過する磁場の割合を調整することができる。この場合、同じ磁場を維持したままヨーク41a,41b間の空間を通過する磁場の割合を調整するためには、図5(a)に示すように40a,40bの角度差Δθを±何れの方向に動かしても磁場の変化が対称となる点を中間地点(このとき、最大透過量の50%の透過量となる)として、図5(b)に示すようにヨーク41a,41b間の空間を左右非対称とすることで、この左右非対称の空間通過する磁場の割合を左右非対称となるようにしても良い。あるいは、図6に示すように、41a,41b間の歯数比率を変えることで、各部分40a,40bの角度差Δθによる無端状の垂直磁場の磁場強度分布の変化が少ない範囲内でヨーク41a,41bのわずかな角度変化で(例えば、ヨーク41aの歯数1個分だけ角度を変えることで)調整できるようにしても良い。
E…スパッタ電源(プラズマ発生手段)、W…基板、1…真空チャンバ、3…ターゲット、3c…ターゲット中心、3e…ターゲット周縁部、4…磁石ユニット、10…マスフローコントローラ(プラズマ発生手段)、40a…第1の部分、40b…第2の部分、42a,42b…磁石、5,6…駆動手段、72…角速度制御手段。
制御手段7は、情報取得部71と、角速度制御手段72とを備える。情報取得部71は、例えば、スパッタリング装置SMに基板Wをロード/アンロードするための図外のEFEM(Equipment Front End Module)に設けられた膜厚計と通信可能に構成され、この膜厚計で測定した基板面内における膜厚分布に関する情報を取得できるようにしている。角速度制御手段72は、取得情報に基づいて各部分40a,40bの基準角速度ωからの増速量及び減速量を決定する角速度決定部72aを有し、その決定した角速度ω,ωで各部分40a,40bが回転するようにモータ5,6を駆動する。なお、膜厚計としては、公知の構造を有するものを用いることができ、例えば、抵抗値の低い金属膜を比較的厚い膜厚で成膜する場合には、渦電流式の膜厚を用いることができ、また、絶縁膜を比較的薄い膜厚で成膜する場合には、分光エリプソメータを用いることができる。他の膜厚計として、レーザ変位計を用いることができる。以下、上記スパッタリング装置SMを用いて、基板W表面にアルミニウム膜を成膜する場合を例に、本発明の成膜方法の実施形態について説明する。

Claims (3)

  1. 処理すべき基板とターゲットとが対向配置される真空チャンバと、真空チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段と、真空チャンバ内で基板からターゲットに向かう方向を上として、ターゲットの上方に配置される磁石ユニットとを備えるスパッタリング装置であって、
    磁石ユニットは、基板側の極性が異なる複数個の磁石を有して、ターゲット中心とその周縁部との間に位置するターゲットの下方空間に磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が無端状に閉じる漏洩磁場を局所的に作用させるものにおいて、
    磁石ユニットは、ターゲット中心からその周縁部に向かう仮想線上で、夫々が複数個の磁石を有する複数の部分に分割され、ターゲット中心回りに各部分を夫々回転駆動する駆動手段と、漏洩磁場の無端状を維持する範囲内で各部分の角速度を制御する角速度制御手段とを更に備えることを特徴とするスパッタリング装置。
  2. 真空チャンバ内に処理すべき基板とターゲットとを対向配置し、真空チャンバ内にプラズマを発生させ、ターゲットをスパッタリングして基板表面に薄膜を成膜する成膜方法であって、
    真空チャンバ内で基板からターゲットに向かう方向を上として、成膜中、ターゲットの上方に配置される磁石ユニットによりターゲット中心とその周縁部との間に位置するターゲットの下方空間に磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が無端状に閉じる漏洩磁場を局所的に作用させるものにおいて、
    磁石ユニットとして、ターゲット中心からその周縁部に向かう仮想線上で、夫々が複数個の磁石を有する複数の部分に分割されたものを用い、各部分をターゲット中心回りに同期して回転駆動して基板表面に薄膜を成膜し、基板面内における膜厚分布に関する情報を取得する情報取得工程と、
    情報取得工程で取得した膜厚分布に関する情報に基づいて、漏洩磁場の無端状を維持する範囲内で各部分の角速度を夫々決定する角速度決定工程と、
    角速度決定工程で決定した回転速度で磁石ユニットの各部分を夫々回転駆動させながら基板表面に薄膜を成膜する成膜工程とを有することを特徴とする成膜方法。
  3. 請求項2記載の成膜方法であって、成膜中、ターゲットに対して漏洩磁場が局所的に作用する領域が起点から同一軌道上を移動して当該起点に戻るサイクルを少なくとも1回以上行うものにおいて、
    前記情報取得工程にて、磁石ユニットの各部分を所定の基準角速度で夫々回転させて薄膜を成膜したときの膜厚分布に関する情報を取得し、
    前記角速度決定工程にて、1サイクルにおける磁石ユニットの各部分の軌道を夫々複数のゾーンに区画し、少なくとも1つのゾーンを夫々基準ゾーンとし、基準ゾーン以外のゾーン毎に、前記情報取得工程で取得した膜厚分布に関する情報に基づいて前記基準角速度からの増速量または減速量を夫々決定することを特徴とする成膜方法。
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