JP4213777B2 - スパッタリング装置及び方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型マグネトロンスパッタリング電極で、大型基板に形成される薄膜の基板面内における膜厚および膜質の均一性の向上を目的としたスパッタリング装置及び方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリング法は真空蒸着法に比べ、高融点材料や化合物の薄膜が容易に形成できる薄膜形成技術ということで、現在広く半導体や電子部品等の工業分野で普及している。特に永久磁石や電磁石を磁気回路として用いるマグネトロンスパッタリング法は薄膜の形成速度が真空蒸着法に比べ約1桁遅いというスパッタリング法の欠点を解決し、スパッタリング法による薄膜形成の量産化を可能にしている。
以下、従来のマグネトロンスパッタリング電極とその電極を搭載した装置について、図6〜図9を参照して説明する。
【0003】
図6の(a)は従来の平板ターゲットを有するマグネトロンスパッタリング電極の平面図、図6の(b)は図6の(a)のA−A’断面図、及びび図7はマグネトロンスパッタリング電極の斜視図である。図において、101は平板ターゲットであり、インジウム等のハンダ剤によりバッキングプレート102に接着され、真空シール用のOリング103を介して電極本体104に設置される。ターゲット101の裏側にはマグネトロン放電用磁気回路105が、閉じた磁力線106を形成し、かつ、少なくともその磁力線106の一部が上記ターゲット表面で平行になるように配置される。そのため、ターゲット表面には図7に示すようにトロイダル型の閉じたトンネル状の磁場107が形成される。
以上のように構成されたマグネトロンスパッタリング電極について、その動作原理を説明する。
【0004】
図9は、上述したスパッタリング電極を設置したスパッタリング装置の概略図である。スパッタリング電極は、通常、真空チャンバー109に絶縁材110を介して設置される。薄膜形成を行うには、真空チャンバー109を真空ポンプ113により高真空(大気圧〜10−7Torr程度)まで排気し、Ar等の放電ガス114を流量調整器115を通して真空チャンバー109内に導入し、圧力調整バルブ116を調整して真空チャンバー109内を10−3〜10−2Torr程度の圧力に保つ。ターゲット101を取付けたスパッタリング電極112に直流あるいは交流のスパッタリング用電源111により負の電圧を印加することで、電場と磁気回路105によるトロイダル型トンネル状磁場107との周辺で、マグネトロン放電が起こり、ターゲット101がスパッタされ、スパッタ粒子が基板ホルダー117に設置した基板118に堆積され薄膜が形成される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のマグネトロンスパッタリング電極では、ターゲット面と平行に通る磁力線の最も強い部分でプラズマ密度が高くなるため、ターゲット01上に、スパッタされる侵食領域(図7の参照符号8)とスパッタされた粒子が再付着する領域とができ、ターゲット101の侵食が不均一に進む。このため、ターゲット101に対向して設置した基板118上に形成される薄膜の膜厚均一性を確保するためには、ターゲット101の大きさや磁気回路105、あるいはターゲット101と基板118との距離を充分調整する必要がある。一般的には薄膜の膜厚均一性を確保するため、一辺が基板118の約2倍の大きさ、つまり、基板118に対し約4倍の大きさの面積を有するターゲット101が必要とされる。図8に均一性を確保するために必要なターゲット101と基板118の大きさの関係を示す。図8の(a)が必要なターゲット101と基板118の平面図、図8の(b)が図8の(a)のA−A’断面図である。例えば、基板118の大きさをφ300mmとすると、ターゲット101の直径は約φ600mm必要となってしまう。
【0006】
現在、液晶や半導体、光や磁気ディスク等、スパッタリング技術を必要とする分野では基板の大型化が進んでおり、それにともなうターゲットの大型化が余儀なくされている。その結果、スパッタリング装置の大型化による設備コストや設備占有面積の増大、メンテナンス性の低下等が問題となってきている。また、ターゲットの大型化はターゲットそのものの高額化や、複雑な合金ターゲットではターゲットの製造そのものが不可能という問題も生じる。さらに、ターゲットの一部分が局所的に薄くなるので、大型で高価なターゲットの利用効率が悪いという問題点がある。
そこで、これらの問題を解決するため、小型スパッタリング電極で、大型基板(例えば、太陽電池やプラズマ・ディスプレイ・パネルなどの大版化に対応可能な基板)への薄膜形成を可能にする取り組みが幅広く行われてきている。
【0007】
その一例として、図10に平板の内周ターゲット121aと傾斜角を持つ外周ターゲット121bを組合わせ、2種類のターゲット121a,121bを独立に制御してスパッタすることができるスパッタリング電極を示す。この装置では、内周電磁石コイル122aと外周電磁石コイル122bの電流を磁石用電源123により、それぞれ独立に制御することで内周ターゲット121aと外周ターゲット121bの磁場を最適化し、さらにそれぞれのターゲット121a,121bへのスパッタ電力もスパッタリング用電源111により独立して制御することができるので、大型基板118での膜厚均一性の確保が可能となる。
しかし、この磁場の調整には微妙で複雑な制御が要求されるという問題がある。また、ターゲットの経時変化に対する膜厚均一性は確保できても、化合物のスパッタリングや反応性スパッタリングにおいては、基板面内やロット間での膜組成や構造などの薄膜物性に不均一性が生じるという問題がある。さらに、外周ターゲットはドーナツ状で傾斜角を持つという複雑な形をしているため、ターゲットの高額化につながるという問題がある。
そこで、本発明は上記の問題点を解決し、平板ターゲットを有する小型マグネトロンスパッタリング電極で、大型基板に形成される薄膜の膜厚および膜質の均一性を向上させるスパッタリング装置及び方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、以下のように構成している。
本発明の第1態様によれば、真空チャンバーと、前記真空チャンバー内に設置されかつ平板ターゲットを有するスパッタリング電極と、基板を載置すると共に前記基板の中心を軸に回転する基板ホルダーと、前記基板ホルダーを回転させる回転装置と、前記スパッタリング電極に接続されたスパッタリング用電源とを備えるスパッタリング装置において、
前記スパッタリング電極が、前記基板の半径より小さい前記平板ターゲットと共に、前記基板ホルダーの中心と外周との間の往復運動を可能とし、前記スパッタリング電極の移動範囲を前記基板の半径と同とする駆動装置を有すると共に、前記スパッタリング電極は前記基板ホルダーと対向して配置され前記平板ターゲットの裏面に配置された磁気回路で構成されるとともに、
前記スパッタリング電極が前記基板の中心に向かうときには前記スパッタリング電極の移動速度を加速させ、逆に前記基板の外周に向かうときには前記スパッタリング電極の前記移動速度を減速させるように前記スパッタリング電極を移動させる速度を制御する第1制御装置と、前記基板を自転させる速度を一定に制御する第2制御装置とをさらに備えること
を特徴とするスパッタリング装置を提供する。
【0009】
本発明の第2態様によれば、前記ターゲットは平面の矩形ターゲットであることを特徴とする第1態様に記載のスパッタリング装置を提供する。
【0010】
本発明の第3態様によれば、前記ターゲットは平面の円形ターゲットであることを特徴とする第1態様に記載のスパッタリング装置を提供する。
【0011】
本発明の第4態様によれば、真空チャンバー内に放電ガスを導入しつつ平板ターゲットを有するスパッタリング電極に負の電圧を印加することで前記真空チャンバー内にプラズマを発生させ、前記真空チャンバー内の基板をその中心を軸に回転させることで前記基板の表面に薄膜を形成するスパッタリング方法において、
前記スパッタリング電極を、前記基板の半径より小さい前記平板ターゲットと共に、基板ホルダーの中心と外周との間で往復運動させる際、前記スパッタリング電極の移動範囲を前記基板の半径と同し、前記スパッタリング電極が前記基板の中心に向かうときには前記スパッタリング電極の移動速度を加速させ、逆に前記基板の外周に向かうときには前記スパッタリング電極の前記移動速度を減速させるように前記スパッタリング電極を移動させる速度を第1制御装置で制御するとともに前記基板を自転させる速度を第2制御装置で一定に制御すると共に、前記スパッタリング電極は前記基板と対向して配置され前記平板ターゲットの裏面に磁気回路が配置された状態で前記基板の表面に薄膜を形成すること
を特徴とするスパッタリング方法を提供する。
【0012】
本発明の第5態様によれば、前記スパッタリング電極を移動させる速度を制御して、前記移動方向沿いの前記基板の膜厚の均一性を制御するようにしたこと
を特徴とする第4態様に記載のスパッタリング方法を提供する。
【0013】
本発明の第6態様によれば、前記基板を自転させる速度を制御して、前記基板の縁沿い方向での膜厚の均一性を制御するようにしたこと
を特徴とする第4又は5の態様に記載のスパッタリング方法を提供する。
【0014】
本発明の第7態様によれば、前記第1及び第2制御装置を制御する第3制御装置とを備えて、前記第3制御装置により、前記第1制御装置と前記第2制御装置とを制御して、前記第1制御装置により前記スパッタリング電極を移動させる速度を制御しつつ、前記第2制御装置により前記基板の自転速度を制御して、両速度を最適化させて前記基板面内での膜厚の均一性を制御するようにしたこと
を特徴とする第4の態様に記載のスパッタリング方法を提供する。
【0015】
本発明の第8態様によれば、前記ターゲットは平板の円形ターゲットであること
を特徴とする第4〜7のいずれか1つの態様に記載のスパッタリング方法を提供する。
【0016】
本発明の第9態様によれば、前記ターゲットは平板の矩形ターゲットであること
を特徴とする第4〜7のいずれか1つの態様に記載のスパッタリング方法を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、始めに、本発明の2つの実施形態の概略について説明する。
本発明の第1実施形態にかかるスパッタリング装置及び方法は、平板ターゲットを用いてスパッタリングを行い、基板に薄膜を形成するスパッタリング装置において、スパッタリング電極のターゲット裏面に設置した磁気回路、あるいはスパッタリング電極自体を、対向した位置にある基板面に平行に移動させるための移動装置を有するスパッタリング電極と、そのスパッタリング電極に対向した位置で基板を保持するとともに、その基板の中心を軸に基板を自転させるための回転装置を有する基板ホルダーを備えたことを特徴としたものであり、小型マグネトロンスパッタリング電極で大型基板に形成される薄膜の膜厚および膜質の均一性を向上するという作用を有する。
【0021】
本発明の第2態様にかかるスパッタリング装置及び方法は、ターゲット裏面に設置した磁気回路、あるいはスパッタリング電極自体を移動させる速度を制御するための制御装置を備えたことを特徴としたものであり、大型基板に形成される薄膜の膜厚および膜質の均一性をより一層向上するという作用を有する。
さらに、上記各実施形態にかかるスパッタリング装置及び方法では、基板を自転させる速度を制御するための制御装置を備えて、大型基板に形成される膜厚の絶対値精度や極薄膜の膜厚および膜質の均一性を向上させることができる。
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の上記第1実施形態にかかるスパッタリング装置及び方法について、図1〜図3を参照して説明する。
まず、上記スパッタリング装置のスパッタリング電極について図1、図2を参照して説明する。
図1の(a)は第1実施形態のスパッタリング電極の平面図、図1の(b)は図1(a)のA−A’断面図である。図1(a),(b)において、1は円形の平板ターゲット、2はバッキングプレート、3は真空シール用のOリング、4は電極本体、5は磁場発生用の磁気回路、19は基板18の対向面と大略平行にかつターゲット1の長手軸方向沿い(円形ターゲットの場合には直径)上に延在しかつスパッタリング電極32の両端部32a,32aで支持された磁気回路移動用シャフトである。ターゲット1の裏面に設置された磁気回路5は、磁気回路移動装置433によりシャフト19に沿って往復移動することができる。すなわち、支持ブラケット5aを介して、スパッタリング電極32の一方の端部32aに固定されたモーター等の駆動装置(図3(a)の33参照)により、ターゲット長手軸方向をシャフト19に沿って矢印31に示すような往復運動ができるように構成されている。この磁気回路移動装置433の例としては、シャフト19をねじ軸としてスパッタリング電極32の両端部32a,32aに回転自在に支持させ、このねじ軸であるシャフト19に磁気回路5の支持ブラケット5aを螺合させ、シャフト19を駆動装置33の一例のモータで正逆回転させることにより、支持ブラケット5aを介して磁気回路5を往復移動させることができる。
【0023】
図2の(a)〜(b)に、順に、以上の構成のスパッタリング電極を用いてスパッタリングを行った時のターゲット1から放出されるスパッタ粒子20の時間変化の模式図を示す。電場と磁場によるマグネトロン放電は、磁気回路5が存在するターゲット表面上でのみ起こり、スパッタ粒子20はターゲット1の局所から放出されるが、その磁気回路5を図1の矢印31のように磁気回路移動装置433により移動させることでターゲット表面全体からのマグネトロンスパッタが可能となる。
図3に上記のように構成されたスパッタリング電極を用いた第1実施形態のスパッタリング装置を示す。図3の(a)はスパッタリング装置の概略図、図3の(b)はターゲット1と基板18の大きさ及び設置位置の関係を示す図である。スパッタリング電極32は、絶縁材10を介して、真空チャンバー9に設置され、かつ、スパッタリング用電源11が接続されている。また、磁気回路5には、上記したように、その磁気回路5を移動させるため、モーター等の駆動装置33及びそ磁気回路5移動速度を制御するための制御装置34が接続されて、磁気回路移動装置433が構成されている。
【0024】
薄膜が形成される基板18を保持する基板ホルダー17は、真空チャンバー9内におけるスパッタリング電極32と対向し、かつ基板18の半径が少なくともターゲット1の長手軸方向(直径方向)上の内側(図3(b)のa−a’内)となる位置に設置される。また、基板ホルダー17には、基板18の中心を軸に基板18を自転させるため、モーター等による回転装置35及びその回転速度を制御するための制御装置36が接続されている。また、この制御装置36と磁気回路移動装置433の制御装置34とは制御装置500により動作制御されるようにして、必要に応じて、基板回転動作と磁気回路移動動作とを関連付けて制御できるようにしている。
なお、図3において従来例と同一物には共通の符号を付し、その説明を省略する。また、その動作方法も従来のマグネトロンスパッタリング装置と大略同一であるので、その説明は省略する。
【0025】
第1実施形態においてスパッタリングを行う場合、まず、スパッタリング電極32に着目すると、磁気回路5をターゲット裏面に設置し、磁気回路移動装置433により、(実験やシュミレーションなどで基板の径方向の膜厚分布が良くなる動作を決定するように)ターゲット1の長手軸方向に時間を制御して矢印31のように往復運動ができるような構成にしているため、基板18の径方向の膜厚均一性を制御することが可能となる。すなわち、このように往復移動できるようになったため、基板の径方向の膜厚均一性を制御することができる。
次に、基板18の中心を軸に、回転装置35により、基板18を回転できるような構成にしているため、基板18の周方向での膜厚均一性を制御することも可能となる。
つまり、制御装置500により、磁気回路移動装置433の制御装置34と基板18の回転装置35の制御装置36とを制御することにより、磁気回路5の移動速度と基板18の自転速度を上記制御動作と同様に膜厚分布を良くするために最適化することができ、基板面内での膜厚均一性の制御が可能となる。
【0026】
膜厚均一性の向上には、磁気回路移動装置433の制御装置34による磁気回路5の往復運動の速度制御において、磁気回路5が基板18の中心に向かうときには移動速度を加速させ、逆に基板18の外周に向かうときには減速させることで可能となる。ここで、このように移動速度をそれぞれ変化させるのは、基板の回転速度を一定とした場合には中心部分の方が外周部分より膜厚が厚くなることから、中心部分より外周部分へ向かう程、スパッタされている時間を長くして、単位時間あたり単位面積に形成される薄膜の膜厚を一定にするためである。
さらに、第1実施形態においては、ターゲットの大きさに比較して磁気回路を小さくでき、そのような小型の磁気回路を移動させてスパッタリングを行っているため、基板面内においてスパッタ粒子20の入射角度に大幅な違いが生じない。すなわち、基板面内での膜質の均一性向上にもつながる。
【0027】
以上のように第1実施形態によれば、ターゲット裏面を移動する磁気回路5の移動速度と自転する基板18の自転速度とを制御装置500により最適に制御することで、小型のスパッタリング装置で大型基板への安定した膜厚および膜質を有する薄膜形成が可能となる。
なお、第1実施形態においてはターゲット長手軸方向の大きさをほぼ基板半径と同程度としたが、ターゲット1の製造が可能であれば基板18の直径程度に大きくしても構わない。また、磁気回路5の形状は角型のほか、丸型でも構わない。
【0028】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態にかかるスパッタリング装置及び方法について、図4〜図5を参照して説明する。
まず、上記スパッタリング装置のスパッタリング電極について図4を参照して説明する。
図4の(a)は第2実施形態のスパッタリング装置のスパッタリング電極の平面図、図4の(b)は図4(a)のA−A’断面図である。図4において、1は円形の平板ターゲット、2はバッキングプレート、3は真空シール用のOリング、4は電極本体、5は磁場発生用の磁気回路、10はアース電位との絶縁材、7はアースシールド、19は基板18の対向面と大略平行にかつターゲット1の長手軸方向沿い(円形ターゲットの場合には直径)上に延在しかつ真空チャンバー9で両端が支持された磁気回路及びスパッタリング電極移動用シャフトである。スパッタリング電極42には、スパッタリング電極42を設置する真空チャンバー9内をモーター等の駆動装置(図5(a)に示す駆動装置233)により、シャフト19に沿って矢印31に示すような往復運動ができるようにスパッタリング電極移動装置533が設置されている。すなわち、支持ブラケット42aを介して、スパッタリング電極42をシャフト19の一方の端部に連結されたモーター等の駆動装置(図5(a)の233)により、ターゲット長手軸方向をシャフト19に沿って矢印31に示すような往復運動ができるように構成されている。このスパッタリング電極移動装置533の例としては、シャフト19をねじ軸としてスパッタリング電極42の支持ブラケット42aと螺合させ、シャフト19を駆動装置233の一例のモータで正逆回転させることにより、支持ブラケット42aを介してスパッタリング電極42を往復移動させることができる。
以上の構成のスパッタリング電極42を用いてスパッタリングを行うと、従来例と同様に電場と磁場によるマグネトロン放電が発生し、マグネトロンスパッタが可能となる。
【0029】
図5に上記のように構成されたスパッタリング電極42を用いた第2実施形態のスパッタリング装置を示す。図5の(a)は上記スパッタリング装置の概略図、図5の(b)は上記スパッタリング装置のターゲット1と基板18の大きさおよび設置位置の関係を示す図である。スパッタリング電極42は真空チャンバー9に設置され、スパッタリング用電源11が接続されている。また、スパッタリング電極42にはそのスパッタリング電極42を移動させるため、モーター等による移動装置233およびその移動速度を制御するための制御装置234が接続されている。
薄膜が形成される基板18を保持する基板ホルダー17は、真空チャンバー9内におけるスパッタリング電極42と対向し、かつ基板18の半径が少なくともスパッタリング電極42の移動範囲の内側(図5(b)のa−a’内)となる位置に設置される。また、基板ホルダー17には、基板18の中心を軸に基板18を自転させるため、モーター等による回転装置35及びその回転速度を制御するための制御装置36が接続されている。また、この制御装置36とスパッタリング電極移動装置533の制御装置234とは制御装置500により動作制御されるようにして、必要に応じて、基板回転動作とスパッタリング電極移動動作とを関連付けて制御できるようにしている。
なお、図5においても従来例と同一物には共通の符号を付し、その説明は省略する。またその動作方法も従来のマグネトロンスパッタリング装置と大略同一であるので、その説明は省略する。
【0030】
第2実施形態においてスパッタリングを行う場合、まず、スパッタリング電極42に着目すると、スパッタリング電極移動装置533により、スパッタリング電極42自体が、(実験やシュミレーションなどで基板の径方向の膜厚分布が良くなる動作を決定するように)対向する位置に配置された基板18の径方向に時間を制御して矢印31のように往復運動ができるような構成にしているため、基板18の径方向の膜厚均一性を制御することが可能となる。
次に、基板18の中心を軸に、回転装置35により、基板18を回転できるような構成にしているため、基板18の周方向での膜厚均一性を制御することも可能となる。
つまり、制御装置500により、スパッタリング電極移動装置533の制御装置234と基板18の回転装置35の制御装置36とを制御することにより、スパッタリング電極42の移動速度と基板18の自転速度を上記制御動作と同様に膜厚分布を良くするために最適化することで第1実施形態と同様、基板面内での膜厚均一性の制御が可能となる。
【0031】
また、膜厚均一性の向上には、やはりスパッタリング電極42の矢印31の往復運動の速度制御において、第1実施形態の場合と同様な理由で、スパッタリング電極42が基板18の中心に向かうときには移動速度を加速させ、逆に基板18の外周に向かうときには減速させることで可能となる。
さらに、第2実施形態においては小型のスパッタリング電極42を移動させてスパッタリングを行っているため、基板面内においてスパッタ粒子の入射角度に大幅な違いが生じない。すなわち、基板面内での膜質の均一性向上にもつながる。
以上のように、第2実施形態においても、制御装置500により、スパッタリング電極自体の移動速度と自転する基板18の自転速度とを膜厚分布を良くするように最適に制御することで、小型のスパッタリング装置で大型基板への安定した膜厚および膜質を有する薄膜形成が可能となる。
【0032】
また、第2実施形態は第1実施形態と比較して、ターゲット製造上やコスト等の問題で、あまり大型のターゲットが使用できないときに有効である。
なお、第2実施形態においてはスパッタリング電極42の移動範囲をほぼ基板半径と同程度としたが、基板18の直径程度に大きくしても構わない。また、スパッタリング電極42の形状は角型のほか、丸型でも構わない。
上記各実施形態において、ターゲットの形状は円形に限らず、矩形でもよい。この場合には、上記直径方向の代わりに、上記矩形の長手方向又は短手方向とする。
【0033】
【発明の効果】
本発明のスパッタリング装置及び方法によれば、以上の説明から明らかなように、円形又は矩形等の平板ターゲットを用いてスパッタリングを行い、基板に薄膜を形成するスパッタリング装置及び方法において、スパッタリング電極のターゲット裏面に設置した磁気回路、あるいはスパッタリング電極自体を、対向した位置にある基板面に平行にかつ上記ターゲットの直径方法又は長手又は短手方向沿いに移動させるための移動装置を有するスパッタリング電極と、そのスパッタリング電極に対向した位置で基板を保持するとともに、その基板の中心を軸に基板を自転させるための回転装置を有する基板ホルダーとを備えているので、小型マグネトロンスパッタリング電極で大型基板に形成される薄膜の膜厚および膜質の均一性を向上することができる。例えば、従来、大型基板に対しては、さらに大型のスパッタリング電極(面積にして約4倍)でしか均一性が得られなかったが、本発明ではそのように大型のスパッタリング電極を使用する必要がない。
【0034】
また、ターゲット裏面に設置した磁気回路、あるいはスパッタリング電極自体を移動させる速度を制御するための制御装置を備えることにより、大型基板に形成される薄膜の膜厚および膜質の均一性をより一層向上することができる。すなわち、従来は、ターゲットと基板のサイズ及び距離でほぼ膜厚や膜質が決定されていたが、小型のターゲットを移動させるため、理論上は±1%以内の分布が可能となる。
さらに、基板を自転させる速度を制御するための制御装置を備えることで、大型基板に形成される膜厚の絶対値精度(例えば、理論上、絶対値に対して±1%以内の精度)や数ナノメータ程度の極薄膜の膜厚および膜質の均一性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本発明の第1実施形態におけるスパッタリング装置のスパッタリング電極の平面図であり、(b)は図1の(a)のA−A’断面図である。
【図2】 図1のスパッタリング電極のターゲットから放出されるスパッタ粒子の時間変化の模式図である。
【図3】 (a)は第1実施の形態におけるスパッタリング電極を設置したスパッタリング装置の概略図であり、(b)はそのターゲットと基板の大きさおよび設置位置の関係図である。
【図4】 (a)は本発明の第2実施形態におけるスパッタリング装置のスパッタリング電極の平面図であり、(b)は図4(a)のA−A’断面図である。
【図5】 (a)は第2実施形態におけるスパッタリング電極を設置したスパッタリング装置の概略図であり、(b)はそのターゲットと基板の大きさおよび設置位置の関係図である。
【図6】 (a)は従来のマグネトロンスパッタリング電極の平面図であり、(b)はそのA−A’断面図である。
【図7】 従来のマグネトロンスパッタリング電極の斜視図である。
【図8】 (a)均一性確保に必要なターゲットと基板の大きさの関係図であり、(b)はそのA−A’断面図である。
【図9】 従来のマグネトロンスパッタリング電極を設置したスパッタリング装置の概略図である。
【図10】 内周ターゲットと外周ターゲットを持つマグネトロンスパッタリング電極の概略図である。
【符号の説明】
1 ターゲット
5 磁気回路
17 基板ホルダー
18 基板
19 シャフト
33,233 駆動装置
34,234 移動速度制御装置
35 回転装置
36 回転速度制御装置
42 スパッタリング電極
500 制御装置
433,533 移動装置

Claims (9)

  1. 真空チャンバーと、前記真空チャンバー内に設置されかつ平板ターゲットを有するスパッタリング電極と、基板を載置すると共に前記基板の中心を軸に回転する基板ホルダーと、前記基板ホルダーを回転させる回転装置と、前記スパッタリング電極に接続されたスパッタリング用電源とを備えるスパッタリング装置において、
    前記スパッタリング電極が、前記基板の半径より小さい前記平板ターゲットと共に、前記基板ホルダーの中心と外周との間の往復運動を可能とし、前記スパッタリング電極の移動範囲を前記基板の半径と同とする駆動装置を有すると共に、前記スパッタリング電極は前記基板ホルダーと対向して配置され前記平板ターゲットの裏面に配置された磁気回路で構成されるとともに、
    前記スパッタリング電極が前記基板の中心に向かうときには前記スパッタリング電極の移動速度を加速させ、逆に前記基板の外周に向かうときには前記スパッタリング電極の前記移動速度を減速させるように前記スパッタリング電極を移動させる速度を制御する第1制御装置と、前記基板を自転させる速度を一定に制御する第2制御装置とをさらに備えること
    を特徴とするスパッタリング装置。
  2. 前記ターゲットは平面の矩形ターゲットであることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
  3. 前記ターゲットは平面の円形ターゲットであることを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
  4. 真空チャンバー内に放電ガスを導入しつつ平板ターゲットを有するスパッタリング電極に負の電圧を印加することで前記真空チャンバー内にプラズマを発生させ、前記真空チャンバー内の基板をその中心を軸に回転させることで前記基板の表面に薄膜を形成するスパッタリング方法において、
    前記スパッタリング電極を、前記基板の半径より小さい前記平板ターゲットと共に、基板ホルダーの中心と外周との間で往復運動させる際、前記スパッタリング電極の移動範囲を前記基板の半径と同し、前記スパッタリング電極が前記基板の中心に向かうときには前記スパッタリング電極の移動速度を加速させ、逆に前記基板の外周に向かうときには前記スパッタリング電極の前記移動速度を減速させるように前記スパッタリング電極を移動させる速度を第1制御装置で制御するとともに前記基板を自転させる速度を第2制御装置で一定に制御すると共に、前記スパッタリング電極は前記基板と対向して配置され前記平板ターゲットの裏面に磁気回路が配置された状態で前記基板の表面に薄膜を形成すること
    を特徴とするスパッタリング方法。
  5. 記スパッタリング電極を移動させる速度を制御して、前記移動方向沿いの前記基板の膜厚の均一性を制御するようにしたこと
    を特徴とする請求項4に記載のスパッタリング方法。
  6. 前記基板を自転させる速度を制御して、前記基板の縁沿い方向での膜厚の均一性を制御するようにしたこと
    を特徴とする請求項4又は5に記載のスパッタリング方法。
  7. 前記第1及び第2制御装置を制御する第3制御装置とを備えて、前記第3制御装置により、前記第1制御装置と前記第2制御装置とを制御して、前記第1制御装置により前記スパッタリング電極を移動させる速度を制御しつつ、前記第2制御装置により前記基板の自転速度を制御して、両速度を最適化させて前記基板面内での膜厚の均一性を制御するようにしたこと
    を特徴とする請求項4に記載のスパッタリング方法。
  8. 前記ターゲットは平板の円形ターゲットであること
    を特徴とする請求項4〜7のいずれか1つに記載のスパッタリング方法。
  9. 前記ターゲットは平板の矩形ターゲットであること
    を特徴とする請求項4〜7のいずれか1つに記載のスパッタリング方法。
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