JPWO2019189209A1 - 錯塩化合物、染料組成物、陽極酸化アルミニウム用着色剤および着色方法、ならびに該化合物の製造方法 - Google Patents

錯塩化合物、染料組成物、陽極酸化アルミニウム用着色剤および着色方法、ならびに該化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、下記一般式(1):
Figure 2019189209

[式(1)中、
〜R10はそれぞれ独立に、―H、―SO 、―NO置換基を有していてもよい炭素原子数0〜20のアミノ基等を表し、MはCr原子等を表し、Xは非発色カチオンを表し、kは1〜8の整数を表し、Yは―O―または―O―(C=O)―を表す。]で表され、Rが−NHもしくはNHCOR5aであり、かつ、R5aがアルキル基である、Rが−NHCO−Phである、Rが−SO である、および/または、RもしくはRが−CHである、化合物に関する。

Description

本発明は、錯塩化合物、該化合物を含有する染料組成物、該染料組成物からなる陽極酸化アルミニウム用着色剤および該染料組成物を用いた陽極酸化アルミニウムの着色方法、ならびに該化合物の製造方法に関する。
従来、アルミニウム(アルミニウム酸化物またはアルミニウム合金なども含む)表面への着色方法として、水および適当な酸を含む電解液中でアルミニウムを陽極として通電し、アルミニウム表面を多孔質の酸化アルミニウム層(酸化皮膜、通称アルマイト)とする処理(以下、陽極酸化または陽極酸化処理、アルマイト処理などと略称する)を行った後、無機化合物、または金属化合物による電解着色法、無機染料、有機染料(アゾ染料、染料分子と金属原子などとの錯塩化合物染料、酸性染料、直接染料など)を着色剤として用いる染色法が利用されていた(特許文献1〜14参照)。
染料を着色剤に用いたものは耐光性に劣るという課題があり、着色アルミニウムの耐光性等を向上させるために、様々な錯塩化合物の染料が開発されてきたが、それらの色は黒色や灰色のものが多く(たとえば特許文献1〜6など)、近年の多種多様な着色アルミニウムの需要に応じるために、様々な色の染料に対応可能な染色方法(たとえば特許文献7〜10など)が開発されている。また、有機染料を用いた場合の耐光性を向上させるための添加剤の開発も進められている(たとえば特許文献8など参照)。
一方、一般的な染料を使用せず、有機酸または無機酸を含む電解液を使用し、陽極酸化の電圧条件を変化させることにより、陽極酸化アルミニウムを青、緑、黄、赤などの色に着色する方法(特許文献11〜13など)も開発されているが、色の種類には制限がある。
また、染料を用いた陽極酸化アルミニウム着色皮膜は、これまで市場が要望する鮮明で耐光性のよい青緑色、緑色または黄緑色を発色する単色染料がなかったことから、青色と黄色の着色剤を配合して使用してきた(たとえばTAC Green GM(1)、TAC Green SBM(2)、いずれも奥野製薬工業株式会社製)。しかし、色の安定性(色ぶれ、退色性の無いこと)の点から、単色染料を使用して要望の色を発色する着色剤が要求されている。たとえばアントラキノン系緑色アゾ染料(特許文献9)、またはフタロシアニングリーン顔料(特許文献14)を用いた陽極酸化アルミニウム用着色剤が提案されているが、色の種類としては少なく、アルミニウムへの染着性、耐光性が市場の要望する性能には達していないのが現状である。
特開昭55−60562号公報 特開昭55−97492号公報 特開平9−302256号公報 特開昭60−235867号公報 特開平6−93195号公報 特表2002−522617号公報 特表2013−506053号公報 特開2009−91622号公報 特表2003−504426号公報 特開2000−290524号公報 特開昭59−6397号公報 特開平10−158890号公報 特開2000−96293号公報 特開2016−216803号公報
本発明の一側面は、アルミニウム、アルミニウム酸化物またはアルミニウム合金の表面に、耐光性に優れ、かつ、青緑色系の色を単色で呈する陽極酸化皮膜を形成可能な新規構造の錯塩化合物を提供することを目的とする。本発明の他の側面は、上記錯塩化合物を含有する染料組成物、該染料組成物を用いた陽極酸化アルミニウム用着色剤および着色方法、ならびに上記錯塩化合物の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、発明者らはアルミニウム陽極酸化用の色素(染料)を鋭意検討した結果、特定の構造を有する錯塩化合物(アゾ染料)を陽極酸化アルミニウム用着色剤として用いることにより、陽極酸化アルミニウム上に、青、青緑、緑などの青緑色系の系統色を単色の染料で着色し、かつ、耐光性に優れた皮膜を形成することができることを見出した。すなわち本発明は、以下の各発明に関する。
[1]下記一般式(1):
Figure 2019189209
[式(1)中、
〜R10はそれぞれ独立に、―H、―SO 、―NO、―NO、―CN、―OH、―COO、―COOH、―SH、−F
置換基を有していてもよい炭素原子数0〜20のアミノ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数0〜20のスルホニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5〜30の複素環基を表し、
〜R10は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよく、
MはCr、Fe、Co、SiまたはAl原子を表し、
Xは非発色カチオンを表し、kは1〜8の整数を表し、
Yは―O―または―O―(C=O)―を表す。]
で表され、
が−NHもしくはNHCOR5aであり、かつ、R5aがアルキル基である、
が−NHCO−Phである、
が−SO である、および/または、
もしくはRが−CHである、化合物。
[2]一般式(1)において、R〜Rがそれぞれ独立に、―H、―SO 、―NO、置換基を有していてもよい炭素原子数0〜10のアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、または、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアシル基である、[1]に記載の化合物。
[3]Rが―Hまたは置換基を有していてもよい炭素原子数0〜10のアミノ基であり、Rが―H、―SO または置換基を有していてもよい炭素原子数0〜10のアミノ基であり、R〜R10のいずれか1個または2個が―SO である、[1]または[2]に記載の化合物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の化合物を含有する染料組成物。
[5][4]に記載の染料組成物を含有する陽極酸化アルミニウム用着色剤。
[6][1]〜[3]のいずれかに記載の化合物を、0.02〜10質量%含有する染料組成物を用いることを特徴とする、陽極酸化アルミニウム、陽極酸化アルミニウム酸化物または陽極酸化アルミニウム合金の着色方法。
[7][1]〜[3]のいずれかに記載の化合物の製造方法であって、
下記一般式(I):
Figure 2019189209
[式(I)中、R〜R10、およびYは、上記定義と同意義を示す。]
で表される化合物と、Cr、Fe、Co、SiまたはAl原子を含有する化合物と、を反応させて、一般式(1)で表される化合物を得る工程を含む、製造方法。
[8]一般式(I)で表される化合物が、下記式(II)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾ化物と、下記式(III)で表される化合物および/またはその塩とのジアゾカップリング反応により得られるものである、[7]に記載の製造方法
Figure 2019189209
[式(II)及び(III)中、R〜R10およびYは、上記定義と同意義を示す。]
本発明によれば、アルミニウム、アルミニウム酸化物またはアルミニウム合金の表面に、耐光性に優れ、かつ、青緑色系の色を単色で呈する陽極酸化皮膜を形成可能な新規構造の錯塩化合物を提供することができる。本発明に係る化合物を含有する染料組成物によれば、耐光性に優れた、青、青緑、緑などの青緑色系を呈する単色の着色皮膜を形成することができる陽極酸化アルミニウム用着色剤を得ることができる。また、該着色剤を用いることにより、青、青緑、緑などの青緑色系に着色された、耐光性に優れた陽極酸化アルミニウム皮膜を得ることができる。本発明に係る化合物を含有する染料組成物によれば、耐光性に加えて、耐熱性に優れた陽極酸化アルミニウム皮膜を形成させることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。一般式(1)で表される化合物における角括弧[ ]内の部分はアニオンであり、一般式(1)中、Xで表される非発色カチオンと錯体を形成する。
本実施形態に係る化合物は、下記一般式(1)で表される化合物(以下「化合物(1)ともいう。」)である。
Figure 2019189209
式(1)中、R〜R10はそれぞれ独立に、―H、―SO 、―NO、―NO、―CN、―OH、―COO、―COOH、―SH、−F、置換基を有していてもよい炭素原子数0〜20のアミノ基、置換基を有していてもよい炭素原子数0〜20のスルホニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアシル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基、または置換基を有していてもよい環形成原子数5〜30の複素環基を表し、R〜R10は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよく、MはCr、Fe、Co、SiまたはAl原子を表し、Xは非発色カチオンを表し、kは1〜8の整数を表し、Yは―O―または―O―(C=O)―を表す。
化合物(1)において、Rが−NHもしくはNHCOR5aであり、かつ、R5aがアルキル基である、Rが−NHCO−Phである、Rが−SO である、および/または、RもしくはRが−CHである。
以下に、化合物(1)について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。アニオン部は、一般式(1)の範囲の1種類の構造のものであってもよいし、互いに異なる複数の種類の構造のものでもよく、1種類の構造のものであるのが好ましい。つまり、複数存在するR〜R10およびYは、それぞれ同種であっても異種であってもよい。また非発色カチオン部は、1種類でも複数が混合したものでもよく、1種類であるのが好ましい。つまり、kが2〜8である場合、複数存在するXは同種であっても異種であってもよい。
本明細書において、「置換基を有していてもよい炭素原子数0〜20のアミノ基」としては、例えば、無置換のアミノ基(−NH)、一置換アミノ基、二置換アミノ基等が挙げられる。一置換アミノ基または二置換アミノ基における炭素原子数は、例えば、1〜20であり、1〜10であってよく、2〜6であってよい。置換基を有していてもよい炭素原子数0〜20のアミノ基は、−NH−を介して、後述する炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基、または環形成原子数5〜30の複素環基が結合した基であってもよい。一置換アミノ基としては、エチルアミノ基、アセチルアミノ基、フェニルアミノ基などが挙げられる。二置換アミノ基としては、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、アセチルフェニルアミノ基等が挙げられる。一置換アミノ基は、−NHCOR5aで表される基であってもよい。置換基R5aはアルキル基である。
本明細書において、「炭素原子数0〜20の置換基を有していてもよいスルホニル基」は、―SO―R100(もしくは―S(=O)―R100)で表される置換基R100を有するスルホニル基を表すものを意味する。置換基R100は、炭素原子を含む基であってもよく、炭素原子を含まない基であってもよい。置換基R100が炭素原子を含む基である場合、置換基R100の炭素原子数は、1〜20であり、1〜10であってよく、1〜7であってよい。炭素原子数0〜20の置換基を有していてもよいスルホニル基の具体例としては、例えば、スルホンアミド基(―S(=O)―NH)、メシル基、トシル基があげられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソオクチル基、t−オクチル基などの分岐状のアルキル基があげられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルキル基」における「炭素原子数3〜20のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などがあげられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」における「炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」としては、具体的に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの直鎖状のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、イソオクチルオキシ基、t−オクチルオキシ基などの分岐状のアルコキシ基があげられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルコキシ基」における「炭素原子数3〜20のシクロアルコキシ基」としては、具体的に、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などがあげられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、または、これらのアルケニル基が複数結合した直鎖状もしくは分岐状の基があげられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアシル基」は、−C=O−R101で表される基である。置換基R101は、炭素原子を含む基であってもよく、炭素原子を含まない基であってもよい。置換基R101が、炭素原子を含む基である場合、置換基R101の炭素原子数は、例えば、1〜20であってよく、1〜10であってよい。置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアシル基は、アシル基を介して、後述する炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基、または環形成原子数5〜30の複素環基が結合した基であってもよい。置換基R101としては、例えば、−H、−CH、−CHCHCH、−CH=CH、−C(−Ph)が挙げられる。「置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアシル基」における「炭素原子数1〜20のアシル基」としては、具体的に、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などがあげられる。
本明細書において、「置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基」における「炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基」としては、具体的に、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基などがあげられる。本明細書における「芳香族炭化水素基」とは、芳香族炭化水素基および縮合多環芳香族基を表すものとし、これらの中でも、フェニル基またはナフチル基が好ましい。
本明細書において、「置換基を有していてもよい環形成原子数5〜30の複素環基」における「環形成原子数5〜30の複素環基」としては、具体的に、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ヒダントイン基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などがあげられる。
本明細書における「置換基を有する炭素原子数0〜20のアミノ基」、「置換基を有する炭素原子数0〜20のスルホニル基」、「置換基を有する炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数3〜20のシクロアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、「置換基を有する炭素原子数3〜20のシクロアルコキシ基」、「置換基を有する炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、「置換基を有する炭素原子数1〜20のアシル基」、「置換基を有する炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基」または「置換基を有する環形成原子数5〜30の複素環基」における「置換基」としては、具体的に、―SO 、ニトロ基(―NO)、ニトロソ基(―NO)、シアノ基(―CN)、水酸基(―OH)、―COO、カルボキシル基(―COOH)、チオール基(―SH)、
無置換アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ−t−ブチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1〜17の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または炭素原子数6〜24のアリール基を有する一置換もしくは二置換アミノ基;
スルホンアミド(―S(=O)―NH)基、メシル基、トシル基などのスルホニル基(―S(=O)―)を有する基;
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、t−オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1〜17の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基などの炭素原子数3〜17のシクロアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などの炭素原子数1〜17の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素原子数3〜17のシクロアルコキシ基;
ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2〜19の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などのアシル基;
フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数6〜24の芳香族炭化水素基;
ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナントリジニル基、ヒダントイン基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、ピラニル基、クマリニル基、イソベンゾフラニル基、キサンテニル基、オキサントレニル基、ピラノニル基、チエニル基、チオピラニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、チオキサンテニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、モルホリニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの環形成原子数5〜24の複素環基;
シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、(1,3−もしくは1,4−)シクロヘキサジエニル基、1,5−シクロオクタジエニル基などの炭素原子数3〜24の環状オレフィン基;などがあげられる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。これら「置換基」は前記例示した置換基を有していてもよく、さらに、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
は、例えば、−Hであってよい。Rは、例えば、−H、―SO 、−CN、−NO、−NO、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20(または炭素原子数1〜10)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(例えば、−CH)、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20(または炭素原子数1〜10)の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基(例えば、−OCH)、または置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20(または炭素原子数2〜10)の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基(例えば、−CH=CH−CH)であってよく、−NOまたはCHであってよい。Rは、例えば、−H、−NO、置換基を有していてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20(または炭素原子数1〜10)の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20(または炭素原子数1〜10)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基(例えば、−CH)であってよく、−Hであってよい。Rは、例えば、−H、−NO、またはFであってよい。
一般式(1)において、RまたはRは−CHであってよい。Rが−CHである場合、例えば、R、RおよびRはそれぞれ−Hであってよい。Rが−CHである場合、R、RおよびRはそれぞれ−Hであってよい。
一般式(1)において、R〜Rは上記で述べたとおりの置換基を表すが、隣り合う基同士で、単結合、または酸素原子を介した結合(―O―)もしくは硫黄原子を介した結合(―S―)によって互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(1)において、「M」はクロム原子(Cr)、鉄原子(Fe)、コバルト原子(Co)、ケイ素原子(Si)またはアルミニウム原子(Al)を表し、Cr原子またはCo原子が好ましく、Cr原子がより好ましい。
一般式(1)において、「X」は、非発色カチオンであり、具体的に、水素イオン(H)、リチウムイオン(Li)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)などのアルカリ金属イオン、有機化合物からなるカチオン、などがあげられる。これらの中でも、アルカリ金属イオンがより好ましく、KまたはNaが特に好ましい。
kは、非発色カチオン「X」の数を表し、1〜8の整数を表し、3〜7の整数であることが好ましい。kは、一般式(1)が全体として中性になるような値となる。
一般式(1)において、「Y」は、「―O―」または「―O―(C=O)―」を表し、「―O―(C=O)―」を表す場合、「M」と「M―O―(C=O)―」のように結合するのが好ましい。
は―Hまたは置換基を有していてもよい炭素原子数0〜10のアミノ基が好ましく、―Hまたは―NHがより好ましい。Rは―H、―SO または置換基を有していてもよい炭素原子数0〜10のアミノ基が好ましい。R〜R10のいずれか1個または2個は、―SO であることが好ましく、R〜R10のうちいずれか2個が―SO である場合、RとR10が―SO であることがより好ましい。
化合物(1)において、Rは−NHもしくはNHCOR5aであってよい。置換基R5aは、例えば、上述の炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基として例示した基であってよく、メチル基であってよい。一般式(1)において、Rが−NHもしくはNHCOR5aである場合、例えば、Rは−H、またはSO であってよく、Rは−H、−SO であってよく、Rは−H、−SO 、−COOであってよく、Rは−H、置換基を有していてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基であってよく、R10は−H、−SO 、または置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアシル基であってよい。
化合物(1)において、Rは−NHCO−Phであってよい。本明細書における「Ph」はフェニル基を意味する。Rが−NHCO−Phである場合、例えば、R、RおよびRはそれぞれ−Hであってよく、R10は−SO であってよい。
化合物(1)において、Rは−SO であってよい。Rが−SO である場合、例えば、R、R、R、RおよびR10はそれぞれ−Hであってよい。
一般式(1)で表される本発明の化合物は、生じ得るすべての立体異性体を包含するものとし、いずれの異性体も本発明の化合物として好適に使用することができる。たとえば、一般式(1)の化合物に対して、下記一般式(1−a)で表される化合物が存在する場合、本発明の化合物は、一般式(1)および一般式(1−a)で表される化合物を包含するものとし、また、これらの立体異性体から選ばれる2種以上の混合物であってもよい。
Figure 2019189209
一般式(1)で表される本発明の化合物(化合物(1))の具体例を以下の式に示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、例示化合物中には、一般式(1)の角括弧[ ]内のアニオン部全体の電荷を記載しており、構造式中では水素原子を一部省略して記載している。
Figure 2019189209
Figure 2019189209
Figure 2019189209
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Figure 2019189209
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化合物(1)は、式(A−1)〜(A−24)で表される化合物であってよく、耐光性により一層優れる観点および耐熱性により一層優れる観点から、式(A−3)または(A−4)で表される化合物であってよい。
一般式(1)で表される化合物の製造方法の一例を以下に示すが、この方法に限定されない。具体的には、最初に、下記一般式(II):
Figure 2019189209
[式(II)中、R〜RおよびYは、上記定義と同意義を示す。]
で表され、適当な置換基を有する芳香族アミン誘導体および/またはその塩を、塩酸、硫酸などの酸水溶液中で、亜硝酸ナトリウムなどを用いて調製した塩基性水溶液と適温で反応させることにより、下記一般式(IV):
Figure 2019189209
[式(IV)中、R〜RおよびYは、上記定義と同意義を示す。]
で表される化合物および/またはその塩(ジアゾ成分)が得られる。
下記一般式(III):
Figure 2019189209
で表される化合物を水酸化ナトリウムなどの水溶液中に溶解し反応させることによって、下記式(IIIa):
Figure 2019189209
[式(IIIa)中、R〜RおよびYは、上記定義と同意義を示し、nは0、1または2を表す。]
で表される化合物(カプラー成分)が得られる。
次に、上記ジアゾ成分と上記カプラー成分とを反応(ジアゾカップリング反応)させることにより、下記一般式(I)で表されるアゾ化合物(アゾ染料)が得られる。
Figure 2019189209
[式(II)中、R〜RおよびYは、上記定義と同意義を示す。]
続いて、上記一般式(I)で表されるアゾ化合物を含有する反応液と、Mで表される原子を含有する化合物を含有する水溶液とを、原子(M):アゾ染料=1:2となるように調製して反応させ、錯塩化、塩析することによって、1:2型錯塩化合物として化合物(1)を製造することができる。Mで表される原子を含有する化合物は、Cr、Fe、Co、SiまたはAl原子を含有する化合物であり、1種の化合物を単独で使用してもよいし、2種以上の化合物を組み合わせて使用してもよい。Mで表される原子を含有する化合物の具体例としては、例えば、酢酸クロムが挙げられる。
すなわち、一実施形態に係る化合物(1)の製造方法は、下記一般式(I):
Figure 2019189209
[式(I)中、R〜R10、およびYは、上記と同意義を示す。]
で表される化合物(化合物(I))と、Cr、Fe、Co、SiまたはAl原子を含有する化合物と、を反応させる工程を備える。上述したとおり、化合物(I)は、下記式(II)で表される化合物(化合物(II))をジアゾ化して得られるジアゾ化物(化合物(IV))と、下記式(III)で表される化合物(化合物(III))および/またはその塩とのジアゾカップリング反応により得られるものであってよい。
Figure 2019189209
Figure 2019189209
化合物(1)は、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による再結晶、晶析法等の公知の方法で精製することができる。化合物の同定および物性評価は、紫外可視吸収スペクトル分析(UV−Vis)、熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA)、ガスクロマトグラフィー分析(GC)、核磁気共鳴分析(NMR)分析などを用いて行うことができる。
化合物(1)は、染料組成物の成分として用いることができる。化合物(1)は、1種類単独で用いることによっても、アルミニウム、繊維などを着色することができる。つまり、化合物(1)は、1種類の単色の染料を単独で用いてアルミニウム、繊維などを着色するための色素化合物として好適に用いることができる。化合物(1)は、混色により多様な色彩を得るために2種以上を併用してもよい。染料組成物は、最適な染色(染料を用いた着色)のために、その他の成分を混合してもよい。具体的には、水、アルコール、溶剤などの液体(溶媒);界面活性剤などの添加剤;などがあげられる。溶媒としては、水が好ましい。化合物(1)は、他の色素を併用して、染料組成物の成分に用いてもよい。他の色素は、化合物(1)以外の他の化合物、顔料、染料等であり、具体的には、ルテニウム錯体、クマリン系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、ロダシアニン系色素、フタロシアニン系色素、ポルフィリン系色素、キサンテン系色素などがあげられる。化合物(1)と、他の成分とを組み合わせて用いる場合、化合物(1)に対する他の成分の使用量を10〜200質量%とするのが好ましく、20〜100質量%とするのがより好ましい。
本実施形態に係る染料組成物は、陽極酸化アルミニウム用の着色剤として応用できる。化合物(1)を陽極酸化アルミニウムなどの着色剤として用いる際、その着色(染色)方法において、化合物(1)を含有する染料組成物における化合物(1)の濃度は、染料組成物全量に対して、0.02〜10質量%であることが好ましく、0.05〜1質量%がより好ましい。
ここで、陽極酸化アルミニウムとは、酸水溶液などの電解液中で、電解処理したアルミニウム表面に、細孔を有する酸化物層を形成する処理を行ったアルミニウムを意味する。陽極酸化アルミニウム用着色剤は、この細孔を有するアルミニウム表面に、化合物(1)を含有する染料組成物を用いて、化合物(1)を細孔内に吸着させることにより、着色(染色)させることのできるものを意味する。通常、着色されたアルミニウム表面の耐久性、耐光性を向上させるために、着色後に細孔を塞ぐための封孔処理が行われる。
陽極酸化アルミニウムにおけるアルミニウムとしては、アルミニウム、酸化アルミニウム、または他の金属とのアルミニウム合金など、アルミニウムを含有する金属または金属化合物などがあげられる。
陽極酸化アルミニウム用着色剤を用いたアルミニウムの着色方法は、アルマイト染色法として公知の方法を用いることができる。たとえば、日本工業規格(JIS H 8601:1999「アルミニウムおよびアルミニウム合金の陽極酸化皮膜」)、特許文献1〜3、8などに記載の方法を用いることができる。アルミニウムの着色方法は、特に限定されないが、以下に一例を示す。
最初に、アルミニウム板を硫酸、シュウ酸、クロム酸、スルホン酸などの酸水溶液を用いて脱脂処理し水洗する。次に、脱脂処理したアルミニウム板を陽極として、電解液として酸水溶液を用いて電解し、アルミニウム陽極表面上に、多くの細孔を形成する陽極酸化皮膜(アルマイト皮膜)を形成させ(陽極酸化処理)、水洗する。続いて、適宜、表面調整、水洗などを施した後、本発明の化合物を含有する染料組成物を含有する陽極酸化アルミニウム用着色剤水溶液などに浸漬し、細孔内に染料を吸着(染色、電解着色)させ、表面の細孔をアルミニウム酸化物水和物などで封孔し封孔物質を形成することによって、着色することができる。
本発明の染料組成物を2種以上併用する場合、あるいは本発明の染料組成物を他の色素と併用する場合、使用するすべての色素の混合溶液を調製して陽極酸化アルミニウムを浸漬してもよく、また、各色素溶液を別々に調製し、各溶液に陽極酸化アルミニウムを順に浸漬してもよい。
着色時における電解条件は、直流電解でも交流電解でもよく、直流電解が好ましい。電流密度は、0.1〜10A/dmが好ましく、0.5〜3A/dmがより好ましい。通電時間は、10秒〜60分が好ましい。陽極酸化皮膜の厚さは2〜20μmが好ましい。
上記の各工程の処理温度は、それぞれ適した温度が好ましく、陽極酸化時の温度は0〜80℃が好ましい。染色時の温度は10℃〜70℃が好ましい。その他の処理温度は、10〜80℃が好ましい。
本実施形態に係る染料組成物は、アルミニウム以外の金属を用いた陽極酸化物についても同様に使用することができる。たとえば、マグネシウム、亜鉛、チタン、ジルコニウムなど、陽極酸化した細孔に染料を吸着することができるものあれば、導電性プラスチックなどの非金属にも応用可能である。
本実施形態に係る陽極酸化アルミニウム用着色剤は、アルミニウムに着色した試料の特性を、色相、耐光性、耐熱性などを測定することによって評価することができる。色相は、目視で色味及び均一性を評価することもでき、色差計により濃度(K/Sd)、色味(L*、a*、b*)および色差(ΔE*)として測定してもよい。
本実施形態に係る陽極酸化アルミニウム用着色剤によれば、緑、青、紫、これらの淡色(淡緑等)、もしくは濃色(黒緑など)など濃淡の異なるものを表すことができる。本実施形態に係る陽極酸化アルミニウム用着色剤によれば、上述した化合物と、他の色素と併用することにより、混色したもの(黄緑、クスミ青、黒、灰(グレー)、茶などの中間色)を表すこともできる。中間色としては、黒、灰が好ましい。
本実施形態に係る陽極酸化アルミニウム用着色剤を用いて着色したアルミニウムの耐光性試験は、紫外光を含む太陽光を模した試験機などを用いて、一定時間、試料に光照射し、試験前後の着色アルミニウムの色相の変化を色差計などで測定して評価してもよい。耐光性の判定には、着色アルミニウムの色相を、日本工業規格(変退色用グレースケール、JIS L 0804)にて定める方法に従って、グレースケールを用いた目視による染色堅牢度判定を行ってもよい。
本実施形態に係る陽極酸化アルミニウム用着色剤を用いて着色したアルミニウムの耐熱性試験は、たとえば50〜300℃の温度範囲の恒温器または熱風乾燥機内で、30分から50時間などの範囲で、適当な一定時間加熱する方法など、耐光性試験と同様に試験前後の色相の変化を評価する方法があげられる。
本実施形態に係る陽極酸化アルミニウム用着色剤を用いた着色アルミニウムは、多様多種のアルミ板材料、アルミニウム製外装などに用いられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、以下の実施例に限定されない。
[合成実施例1:化合物(A−1)の合成]
(ジアゾ成分の調製)
反応容器に、2−アミノ−4−ニトロフェノール20g、水140mL、および35%塩酸11gを入れた。得られた反応液を10℃で撹拌しながら、40重量%亜硝酸ナトリウム水溶液を23g滴下し、その後、1時間反応させた。これにより、ジアゾ成分液を得た。
(カプラー成分の調製)
反応容器に、8−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸30g、水200mL、および24重量%水酸化ナトリウム水溶液18.9gを入れた。得られた反応液を10℃で1時間撹拌し、カプラー成分液を得た。
(ジアゾカップリング反応)
撹拌中のカプラー成分液にジアゾ成分液を入れ、1時間撹拌し、ジアゾカップリング反応を行った。反応終了は薄層クロマトグラフィー(TLC)で確認した。生成物の純度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、典型的なアゾ染料の観測される保持時間ピーク位置および面積により確認した。
(錯塩化)
カップリング終了後の反応液に48重量%酢酸クロム水溶液を入れ、80〜100℃の範囲で撹拌した。反応終了はTLCで確認した。反応後、得られた反応液を25℃まで冷却した。塩化ナトリウムを入れ、析出した固体をろ取した。固体を減圧乾燥し、化合物(A−1)を固体粉末として得た(15.3g、収率:31.1%)。
[合成実施例2:化合物(A−2)の合成]
2−アミノ−4−ニトロフェノールに代えて、2−アミノ−5−ニトロフェノールを用いたこと以外は、合成実施例1と同様にして、化合物(A−2)を得た。
[合成実施例3:化合物(A−3)の合成]
2−アミノ−4−ニトロフェノールに代えて、2−アミノ−4,6−ジニトロフェノールを用いたこと以外は、合成実施例1と同様にして、化合物(A−3)を得た。
[合成実施例4:化合物(A−4)の合成]
2−アミノ−4−ニトロフェノールに代えて、ピクラミン酸(2−アミノ−4,6−ジニトロフェノール)を用い、8−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸に代えて、1−アミノ−8−ナフトール−4−スルホン酸を用いたこと以外は、合成実施例1と同様の方法で、化合物(A−4)を合成した。化合物(A−4)は、固体粉末として得られた。
[合成実施例5:化合物(A−5)の合成]
2−アミノ−4−ニトロフェノールに代えて、ピクラミン酸(2−アミノ−4,6−ジニトロフェノール)を用い、8−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸に代えて、1−アミノ−8−ナフトール−2,4−ジスルホン酸を用いたこと以外は、合成実施例1と同様の方法で、化合物(A−5)を合成した。
[合成実施例6:化合物(A−6)の合成]
2−アミノ−4−ニトロフェノールに代えて、ピクラミン酸(2−アミノ−4,6−ジニトロフェノール)を用い、8−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸に代えて、1−アセチルアミノ−8−ナフトール−3,6−ジスルホン酸を用いたこと以外は、合成実施例1と同様の方法で、化合物(A−6)を合成した。
[合成実施例7:化合物(A−7)の合成]
2−アミノ−4−ニトロフェノールに代えて、2−アミノ−4−メチルフェノールを用いたこと以外は、合成実施例1と同様にして、化合物(A−7)を得た。
[合成実施例8:化合物(A−8)の合成]
2−アミノ−4−ニトロフェノールに代えて、ピクラミン酸(2−アミノ−4,6−ジニトロフェノール)を用い、8−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸に代えて、6―ベンゾイルアミノ−4−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸を用いたこと以外は、合成実施例1と同様の方法で、化合物(A−8)を合成した。
[比較例]
比較用の化合物として、緑色アルマイト染料である、カラーインデックス(C.I.)Acid Green 1、同9、同25、同28、同73、同104、同111の化合物を準備した。
Figure 2019189209
[参考例]
黒色アルマイト染料である、下記式で表される化合物(Q−1)および(Q−2)を準備した。
Figure 2019189209
<色相の評価および耐光性試験>
[実施例1]
以下の手順でアルミニウム基板上に、陽極酸化処理して、着色アルミニウムを作製した。なお、陽極酸化および染色の工程で、処理時間と染料化合物濃度を変えた2種類の染色条件を設定した。
(脱脂) 容器に、脱脂剤(奥野製薬工業株式会社製、トップADD−100)150mL、98%硫酸70mL、水1000mLを混合したものを脱脂液として調製し、適当な寸法に裁断した染色用アルミニウム基板を浸漬し、60℃で3分間脱脂処理を行い、処理後水洗した。
(陽極酸化) 98%硫酸を用いて180g/Lの電解液を調製し、電解装置の電極にアルミニウム基板を接続し、電解液槽に浸漬し、温度20±1℃、電流密度1.0A/dmの以下の通電時間の条件で陽極酸化を行い、以下の厚さの陽極酸化皮膜を得た。酸化後、水洗した。
染色条件(1):通電15分間 陽極酸化皮膜厚:5μm
染色条件(2):通電45分間 陽極酸化皮膜厚:15μm
(表面調整) 表面調整剤(奥野製薬工業株式会社製、TACソマール121)および水を用いて、濃度50mL/Lの表面調整液を調製し、45℃で1分間、アルミニウム基板を浸漬した。浸漬後アルミニウム基板を水洗した。
(染色) 色素として合成実施例1で得た化合物(A−1)を用い、本発明の染料組成物としてそれぞれ下記の濃度の色素を含有する染色用水溶液を調製し、以下の染色時間で浸漬し、ともに温度55℃で染色した。染色後アルミニウム基板を水洗した。
染色条件(1):色素濃度0.1重量% 染色時間:30秒間
染色条件(2):色素濃度0.2重量% 染色時間:5分間
(封孔) 封孔剤(奥野製薬工業株式会社製、トップシールH−298)および水を用いて40mL/Lの封孔液を調製し、約90℃で15分間封孔処理を行った。封孔処理後、温風で乾燥した。
(色相評価) 化合物(A−1)を用いて着色した着色アルミニウム板の色相を目視で評価した。評価した結果を表1に示す。
(耐光性試験) 化合物(A−1)を用いて着色した着色アルミニウム板について、次の方法で耐光性試験を行った。キセノンフェードメーター/ATLAS Ci3000+Xenon Weather Ometer(アトラス社製)を用いて、放射照度:300〜400nm、60W/m、試験槽内温度:38℃、湿度:50%、ブラックパネル(BP)温度:63℃の条件で、着色アルミニウム板に50時間照射したものを結果について、グレースケールの級数による染色堅牢度の目視判定(変退色用グレースケール、JIS L 0804)を行った。級数は、5級が最高で、1級が最低であり、高いものほど色が濃く照射前の色相を保っていることを示す。本発明の評価方法では、級数の判定結果を3段階に分け、以下の判定基準で評価し、結果を表1にまとめて示す。
グレースケール判定基準:級数と本発明における評価(A、B、C)との対応
5級〜4級:A(特に良好な耐光性)
3級:B(通常レベルの耐光性)
2級以下:C(耐光性低い)
[実施例2〜8、比較例および参考例]
化合物(A−1)の代わりにそれぞれ表1に示す化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、着色アルミニウム板を作製し、色相および耐光性を評価した。測定結果を表1にまとめて示す。
Figure 2019189209
表1の結果から、本発明の化合物を含有する染料組成物からなる陽極酸化アルミニウム着色剤を用いることにより、アルミニウム上に、青、青緑、淡緑、緑、黒緑、淡青、青、クスミ青、黒緑などの青緑色系で耐光性の高い皮膜を形成することができた。実施例の化合物による耐光性は、従来の黒色系の色素(Q−1)、または(Q−2)を用いて作製した皮膜と遜色ないものであった。一方、比較例の色素によるものは、耐光性に劣るものであった。
<耐熱性試験>
[実施例3]
化合物(A−3)を用いて、上記実施例の染色条件(2)で着色した着色アルミニウム板について、次の方法で耐熱性試験を行った。定温乾燥機(アズワン株式会社製、型式:87L EOP−450V)を用いて、下記の暴露条件で試料を加熱した。
乾燥機内温度および加熱時間:200℃−5時間、または250℃−3時間
本発明の耐熱性の評価方法は、加熱前後の着色アルミニウム試料の色差を下記の色差計で測定し、かつ、目視により、以下の判定基準で評価した。結果を表2に示す。
装置:色差計(コニカミノルタ株式会社製分光色差計、型式:CM−3700A)
色差計算式:ΔE ab(L、CIE 1976)およびΔE 00(CIE DE2000)
視野角:10°
耐熱性判定基準:
A:良好な耐熱性(変色も退色も無し。)
B:通常レベルの耐熱性(退色しないがやや変色あり。)
C:耐熱性低い(退色および変色する。)
[実施例4]
化合物(A−4)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、耐熱性試験を行った。250℃加熱後にわずかに黒味がかった緑色となったが、通常レベルの耐熱性であった。結果を表2にまとめて示す。
[比較例および参考例]
従来の緑色の色素であるAcid Green 9、28、104、または、TAC Green SBM(2)を用いたこと以外は、実施例3と同じ方法で耐熱性試験を行った。結果を表2にまとめて示す。
従来の黒色系の色素を用いた化合物(Q−1)および(Q−1)を用いたこと以外は、実施例3と同じ方法で耐熱性試験を行った。結果を表2にまとめて示す。
Figure 2019189209
表2の結果から、本発明の化合物を含有する染料組成物からなる陽極酸化アルミニウム着色剤を用いることにより、アルミニウム上に、緑色系で耐熱性の高い皮膜を形成することができた。実施例の色素を用いた皮膜の耐熱性は、従来の緑色系の色素を用いたものより優れており、従来の黒色系の色素を用いたものと遜色ない。
本発明に係る化合物を含有する染料組成物によれば、耐光性に優れた、単色で青緑色系の着色皮膜を形成することができる陽極酸化アルミニウム用着色剤を得ることができる。本発明に係る着色剤を用いることにより、単色で青緑色系に着色された、耐光性に優れた陽極酸化アルミニウム皮膜を得ることができる。本発明に係る化合物を含有する染料組成物を用いて得られる着色皮膜は、耐熱性にも優れている。

Claims (8)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 2019189209
    [式(1)中、
    〜R10はそれぞれ独立に、―H、―SO 、―NO、―NO、―CN、―OH、―COO、―COOH、―SH、−F
    置換基を有していてもよい炭素原子数0〜20のアミノ基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数0〜20のスルホニル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数3〜20のシクロアルコキシ基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜20のアシル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30の芳香族炭化水素基、または
    置換基を有していてもよい環形成原子数5〜30の複素環基を表し、
    〜R10は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよく、
    MはCr、Fe、Co、SiまたはAl原子を表し、
    Xは非発色カチオンを表し、kは1〜8の整数を表し、
    Yは―O―または―O―(C=O)―を表す。]
    で表され、
    が−NHもしくはNHCOR5aであり、かつ、R5aがアルキル基である、
    が−NHCO−Phである、
    が−SO である、および/または、
    もしくはRが−CHである、化合物。
  2. 前記一般式(1)において、R〜Rがそれぞれ独立に、―H、―SO 、―NO
    置換基を有していてもよい炭素原子数0〜10のアミノ基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
    置換基を有していてもよい炭素原子数2〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、または、
    置換基を有していてもよい炭素原子数1〜10のアシル基である、請求項1に記載の化合物。
  3. が―Hまたは置換基を有していてもよい炭素原子数0〜10のアミノ基であり、
    が―H、―SO または置換基を有していてもよい炭素原子数0〜10のアミノ基であり、
    〜R10のいずれか1個または2個が―SO である、請求項1または2に記載の化合物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物を含有する染料組成物。
  5. 請求項4に記載の染料組成物を含有する陽極酸化アルミニウム用着色剤。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物を、0.02〜10質量%含有する染料組成物を用いることを特徴とする、陽極酸化アルミニウム、陽極酸化アルミニウム酸化物または陽極酸化アルミニウム合金の着色方法。
  7. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、
    下記一般式(I):
    Figure 2019189209
    [式(I)中、R〜R10、およびYは、前記定義と同意義を示す。]
    で表される化合物と、Cr、Fe、Co、SiまたはAl原子を含有する化合物と、を反応させて、前記一般式(1)で表される化合物を得る工程を含む、製造方法。
  8. 前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(II)で表される化合物をジアゾ化して得られるジアゾ化物と、下記式(III)で表される化合物および/またはその塩とのジアゾカップリング反応により得られるものである、請求項7に記載の製造方法。
    Figure 2019189209
    [式(II)及び(III)中、R〜R10およびYは、前記定義と同意義を示す。]

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