JP3335941B2 - アルミニウム又はアルミニウム合金の硬質又は超硬質陽極酸化皮膜に対する着色用染料組成物 - Google Patents

アルミニウム又はアルミニウム合金の硬質又は超硬質陽極酸化皮膜に対する着色用染料組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアルミニウム又はア
ルミニウム合金の硬質又は超硬質陽極酸化皮膜に対する
着色用染料組成物及び染色方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、アルミニウム又はアルミニウ
ム合金の硬質又は超硬質の陽極酸化皮膜に対する染色法
として、硫酸、シュウ酸、混酸等を電解液としてアルミ
ニウム又はアルミニウム合金の表面に多孔質の酸化皮膜
を形成させた後、このアルミニウム又はアルミニウム合
金を染料水溶液に浸漬し、酸化皮膜の表面に染料を付着
させた後、アルミニウム又はアルミニウム合金の表面を
水洗し、封孔処理を行う無電解の染色陽極酸化皮膜処理
方法が知られている。
【0003】ところで、アルミニウム又はアルミニウム
合金の硬さによる陽極酸化皮膜の分類を説明すると、一
般に硬度の高い順に、ビッカース硬度Hvが450以上
である超硬質陽極酸化皮膜、同硬度Hvが350から4
50である硬質陽極酸化皮膜、同硬度Hvが250〜3
50である半硬質陽極酸化皮膜、同硬度Hvが150〜
250である普通陽極酸化皮膜に分けられる。
【0004】従来、このアルミニウム又はアルミニウム
合金の陽極酸化皮膜に染料による着色が行われているの
は普通陽極酸化皮膜から半硬質酸化皮膜までが多い。普
通陽極酸化皮膜は電解液の温度を例えば20℃、半硬質
陽極酸化皮膜では普通陽極酸化皮膜よりも電解液温度を
3〜5℃程度低くして、ともに浴電圧を一定に保持して
アルミニウム又はアルミニウム合金表層部に陽極酸化皮
膜を得る。普通陽極酸化皮膜から半硬質陽極酸化皮膜ま
では電圧及び電流密度を低めで行うので、酸化皮膜には
微孔の孔数が多くなるため、充分な染色着色ができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、硬質陽極酸化
皮膜から超硬質酸化皮膜では、皮膜形成には浴電圧を高
め、電流密度を高め、さらに電解液温度を低くする必要
があり(例えば硫酸浴では電解液温度0〜5℃付近まで
電解液温度を冷却する。)、このため酸化皮膜に形成さ
れる微孔の大きさが拡大し、それにともなって単位面積
あたりの孔数が減少する。
【0006】従って、従来の染料液では、この微孔に染
料を含浸しても陽極酸化皮膜表面に着色することが困難
であった。その理由として考えられることは、全体の染
料の付着量が低下し、甚だしい場合には微孔の大きさが
増大傾向にあるため微孔の中に染色液が止まらず、次工
程の水洗で染料が流失したためと考えられる。その結果
として染めむらや着色されない場合があった。
【0007】本発明の目的は、孔数が少なく且つ孔が増
大するアルミニウム又はアルミニウム合金の硬質又は超
硬質の陽極酸化皮膜に対して、染めむらがなく優れた着
色性を与えることができる染料組成物を提供するところ
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
鋭意検討した結果、請求項1の発明は、染料が染料組成
物全量中少なくとも2重量%含有されているアルミニウ
ム又はアルミニウム合金の硬質又は超硬質陽極酸化皮膜
に対する着色用染料組成物を採用した。染料を染料組成
物全量中少なくとも2重量%含有する染料組成物とする
ことにより、孔数が少なく且つ孔が増大するアルミニウ
ム又はアルミニウム合金の硬質又は超硬質の陽極酸化皮
膜であっても、染めむらのない好適な着色性を与えるこ
とができる。
【0009】請求項2の発明は、染料、多価アルコール
及び水を含有するアルミニウム又はアルミニウム合金の
硬質又は超硬質陽極酸化皮膜に対する着色用染料組成物
である。染料組成物中、染料と共に多価アルコール及び
水を配合することにより、従来の染料液と比較して当該
染料組成物は粘稠状態を呈しているからであると思われ
るが、孔数が少なくかつ孔の大きいアルミニウム又はア
ルミニウム合金の硬質陽極酸化皮膜であってもその微孔
内に染料が付着し易い一方、水洗しても微孔内の染料の
残留状態が良好であるため流出し難くなったからである
と思われ、染めむらのない高い着色濃度の染色性を与え
ることができた。
【0010】本発明の染料組成物は、上記の通りである
ため、硬質陽極酸化皮膜を有するアルミニウム又はアル
ミニウム合金を、上記粘稠状態の染料組成物に浸漬し、
前記染料組成物を、上記硬質陽極酸化皮膜の表面に付着
させた後、水洗し、封孔処理して、アルミニウム又はア
ルミニウム合金の硬質又は超硬質陽極酸化皮膜を染色し
てなる染色方法を採用することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明で用いられる染料は、特に
制限されず、各種の水溶性染料が用いられる。例えば、
保土谷化学株式会社製の商品名「アシッドフロキシンP
B」(CI ACID RED 92)、同社製の商品名「エオシ
ン」(CI ACID RED 87)、オリエント株式会社製の商
品名「ウォーターエロー NO. 6」(CI ACID YELLOW 23
2量化)、同社製の商品名「ウォーターブラック R50
0」(CI ACID BLACK 2)、同社製の商品名「ウォータ
ーブルー NO.9」(CI ACID BLUE 9)を例示することが
できる。
【0012】また、多価アルコールとしては、エチレン
グリコール、プロビレングリコール、グリセリン、ジエ
チレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレ
ングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレ
ングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレ
ングリコール、1,3−ブチレングリコール、チオジグ
リコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エ
チレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−
ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドントリエタノー
ルアミンを例示することができる。本発明ではエチレン
グリコール、プロビレングリコール及びグリセリンの群
の中から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いること
が特に好ましい。これらを用いることにより、染めむら
のない着色濃度の高い染色性を与えることができる。
【0013】多価アルコールを含有する本発明の染料組
成物の粘度は、少なくとも2.2mPa・S(ELD型
粘度計、3゜R14ローター、回転数100rpm、2
0℃)が好ましい。上記染料組成物の粘度が2.2mP
a・S以上の場合、従来の染料液と比較して水洗しても
微孔内の染料の流失が生じ難いと思われ、染めむらのな
い高い着色濃度の染色性を与えることができる。
【0014】本発明の染料組成物には界面活性剤を配合
することもできる。中でもポリエチレングリコールアル
キルフェニルエーテル(例えば第一工業株式会社製、商
品名「ノイゲンEA112」)、ジエチレングリコール
モノブチルエーテルが好適である。これらの界面活性剤
は、多価アルコールを含有する染料組成物の表面張力を
適度に制御し、硬質又は超硬質陽極酸化皮膜の微孔内に
染料を侵入し易くすることができる。
【0015】その他、各種の添加剤を配合することがで
きるが、例えば安息香酸ソーダを配合することが好まし
い。
【0016】本発明の染料組成物のpH値は6〜10が
好適であり、中でも7〜9の中性から弱アルカリ領域が
好適である。
【0017】
【実施例】表1に示す組成の実施例及び比較例の各染料
組成物を調製した。粘度はELD型粘度計、3゜R14
ローター、回転数100rpm、20℃で測定した。
【0018】
【表1】
【0019】表中、商品名「ウォーターエロー NO. 6」
はオリエント株式会社製、CI ACIDYELLOW 23 2量化、
商品名「ウォーターブラック R500」はオリエント株式
会社製、CI ACID BLACK 2、商品名「ウォーターブルー
NO.9」はオリエント株式会社製、CI ACID BLUE 9、商
品名「ウォーターブルー NO.116」はオリエント株式会
社製、商品名「ノイゲンEA112」は第一工業株式会
社製、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテ
ルである。
【0020】(染色試験)次に、A5052のアルミニ
ウム材(アルミニウム−マグネシウム系合金、AA−5
000シリーズ)を、常法により、脱脂及びアルカリエ
ッチング処理後、硫酸を電解液として、浴温2℃、電流
密度3Aで処理し、皮膜厚さ30μmの硬質陽極酸化皮
膜のアルミニウム材を得た。次に、この各アルミニウム
材を実施例及び比較例の各染料組成物にそれぞれ10分
間浸漬し取り出した。
【0021】その結果、実施例及び比較例の各染料組成
物は、浸漬浴から取り出すと、グリセリン及びプロピレ
ングリコールを配合していない染料組成物の場合は硬質
陽極酸化皮膜表面から染料液が流れ落ちたが、グリセリ
ン及びプロピレングリコールを配合した実施例の染料組
成物の場合は、硬質陽極酸化皮膜表面には粘稠状態の染
料組成物の被膜が固着し覆われていた。
【0022】次に、各硬質陽極酸化皮膜表面を水洗して
同皮膜表面を観察し、さらにこのアルミニウム材を95
℃以上の温度の沸騰状態で封孔処理し、その後の上記皮
膜表面を観察した。なお、封孔処理は酢酸ニッケルと酢
酸コバルトの各溶液を加えて処理された。その結果、染
料濃度が2.0重量%未満の比較例1の染料組成物の場
合は染料が流失し易く、封孔処理後の皮膜表面はほとん
ど着色していなかった。また、グリセリン及びプロピレ
ングリコールを配合しているが、染料濃度が2.0重量
%未満の比較例2及び比較例3の染料組成物の場合もほ
とんど着色していなかった。これに対して、染料濃度が
2.0重量%以上の各実施例の染料組成物では好適な着
色状態が認められた。これらのことから、硬質陽極酸化
皮膜のアルミニウム材に対する染色については、染料は
少なくとも2.0重量%含まれていることが好ましいこ
とを見出した。
【0023】一方、グリセリン及びプロピレングリコー
ルを配合している実施例1〜7の染料組成物は、同成分
を配合していない実施例8の染料組成物と比較して、更
に染めむらのない高い着色濃度の均一な着色皮膜が得ら
れた。特に、染料濃度の低い実施例4の染料組成物の場
合は、染料濃度の高い上記実施例8の染料組成物とほぼ
同等以上の高い着色性が得られた。このことから、グリ
セリン及びプロピレングリコールを配合した染料組成物
の場合、染料組成物中の染料濃度を低くしても高い着色
性乃至染色性が得られることを見出した。
【0024】また界面活性剤が配合されていない実施例
6及び安息香酸ソーダが配合されていない実施例7でも
染めむらのない高い着色濃度の均一な着色皮膜が得られ
た。このことから、上記の効果はグリセリン及びプロピ
レングリコールを配合することによる効果であることが
認められた。
【0025】
【発明の効果】以上の通り、本発明は、染料が染料組成
物全量中少なくとも2重量%含有されている着色用染料
組成物であるので、孔数が少なく且つ孔が増大するアル
ミニウム又はアルミニウム合金の硬質又は超硬質の陽極
酸化皮膜に対して、染めむらがなく実用上好適な着色性
を与えることができる。
【0026】また、染料、多価アルコール及び水を含有
する染料組成物の場合、従来の染料液と比較して、孔数
が少なくかつ孔の大きいアルミニウム又はアルミニウム
合金の硬質又は超硬質陽極酸化皮膜に対して一層染めむ
らのない着色濃度の高い染色性を与えることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−235693(JP,A) 特開 平2−125896(JP,A) 特開 昭62−263996(JP,A) 特開 昭61−243195(JP,A) 特開 昭54−93648(JP,A) 特開 昭54−93647(JP,A) 実開 昭59−117675(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09B 67/42 C25D 11/18

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 染料、多価アルコール及び水を含有する
    アルミニウム又はアルミニウム合金の硬質又は超硬質陽
    極酸化皮膜に対する着色用染料組成物。
  2. 【請求項2】 多価アルコールが、エチレングリコー
    ル、プロビレングリコール及びグリセリンの群の中から
    選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1記載の
    アルミニウム又はアルミニウム合金の硬質又は超硬質陽
    極酸化皮膜に対する着色用染料組成物。
  3. 【請求項3】 硬質又は超硬質陽極酸化皮膜を有するア
    ルミニウム又はアルミニウム合金を、請求項1又は2記
    載の染料組成物に浸漬し、前記染料組成物を、上記硬質
    又は超硬質陽極酸化皮膜の表面に付着させた後、水洗
    し、封孔処理して、アルミニウム又はアルミニウム合金
    の硬質又は超硬質陽極酸化皮膜を染色してなる染色方
    法。
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