JPWO2018225582A1 - ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、熱可塑性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の目的は、過酷な条件下に曝された際の色調の変化が少なく、発色性と低温耐衝撃性とのバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物及び成形体を提供可能な衝撃強度改質剤を提供することにある。また本発明の目的は、このような性能を有する熱可塑性樹脂組成物及び成形体を提供することにある。
[1] ポリオルガノシロキサン(A1)とビニル重合体(A2)を含有するゴム(A)を、ビニル単量体(b)でグラフト化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体であって、ビニル重合体(A2)がビニル重合体(A2)100質量%に対して単官能性ビニル単量体(a1)90〜100質量%と多官能性ビニル単量体(a2)10〜0質量%を含むビニル重合体であって、前記単官能性ビニル単量体(a1)の単独重合体のガラス転移温度が0℃以上であり、さらに下記の「測定条件1」で測定した際のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体のtanδのピークが−125℃〜−90℃の温度範囲にあるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。
「測定条件1」
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を160℃、5MPaで圧縮成型し、1mm厚とした試験片を動的粘弾性装置で引張りモード、昇温速度2℃/分、10Hzの周波数で−150℃〜180℃の温度範囲で測定する。
「測定条件2」
圧縮成型によって、薄膜化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を、JIS K 7142 A法に準じ、アッベ屈折計を用いて、温度23℃で測定する。
[3] tanδのピークをさらに−80℃〜0℃の温度範囲に有する[1]又は[2]に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。
[4] ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体100質量%に対するポリオルガノシロキサン含有量が0.1〜40質量%である[1]〜[3]のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。
[5] ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体100質量%に対して、ポリオルガノシロキサン(A1)を0.1〜40質量%、ビニル重合体(A2)を41〜99.8質量%を含むゴム(A)を、ビニル単量体(b)0.1〜19質量%でグラフト化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体であって、ビニル重合体(A2)が単官能性ビニル単量体(a1)90〜100質量%と、多官能性ビニル単量体(a2)10〜0質量%とのビニル重合体であって、前記単官能性ビニル単量体(a1)はその単独重合体のガラス転移温度が0℃以上である単官能性ビニル単量体の1種以上である、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。
[6] 「測定条件2」で測定した屈折率が1.531〜1.700の範囲である[5]に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。
[7] [1]〜[6]のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体と熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物。
[8] 前記熱可塑性樹脂と前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の合計100質量%中の前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の含有量が0.5〜50質量%である[7]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[9] 熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である[7]または[8]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[10] [7]〜[9]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。
分散相(A相)と連続相(B相)とを有し、「測定条件3」で測定される弾性率像において、前記A相における弾性率が0.4GPa以上であり、前記B相における弾性率が0.2GPa以下であり、「測定条件4」で測定される前記A相の平均直径が50nm以上であるグラフト共重合体。
「測定条件3」
グラフト共重合体の粒子をカプセルに取り、常温硬化型エポキシ樹脂を注ぎ、25℃で12時間放置し、硬化させ、得られる樹脂片を、ウルトラミクロトーム(商品名「Leica EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ(株)製)により、ガラスナイフを用いて、常温で面出したものをサンプル1として用いる。サンプル1を走査型プローブ顕微鏡(Veeco Instruments,Inc製)により、スキャン範囲1μm角の条件で、粒子の弾性率像を取得する。
該粒子の弾性率像において、該粒子に内接する矩形領域の弾性率のヒストグラムを取得し、該ヒストグラムのガウス曲線のピークトップを前記B相の弾性率とし、該粒子中において0.20GPa以上の弾性率を有する領域に内包される50nm角以上の大きさの領域においても弾性率のヒストグラムを取得し、該ヒストグラムのガウス曲線のピークトップを前記A相の弾性率とする。
「測定条件4」
測定条件3で得られた樹脂片を前記ウルトラミクロトームにより、ダイヤモンドナイフを用いて、常温で面出し及びトリミングし、さらに薄片厚さ50nmの条件で切片を切り出し、支持膜付きグリッドの上に回収したものをサンプル2として用いる。サンプル2を透過型電子顕微鏡(「商品名「H−7600」、日立(株)製)に設置し、加速電圧80kV、倍率20万倍の条件で、粒子像を取得する。取得した粒子像について、画像解析ソフト(商品名「Image−Pro(登録商標) Plus」、(株)日本ローパー製)を用いて、背景の輝度むらの平坦化、ノイズの除去、エッジの強調、2値化を行う。取得した粒子像で明コントラストに見えていた相を2値化により抽出し、一粒子像内に視認できる直径の大きい相から10点まで選択し、その平均直径を求める。さらに、粒子10点の平均直径について平均値を求め、その平均値をA相の平均直径とする。
[12]前記A相が、グラフト共重合体の一粒子中に2つ以上含まれる[11]に記載のグラフト共重合体。
[13]前記A相の平均直径が60nm以上である[11]または[12]に記載のグラフト共重合体。
[14]前記A相が芳香族ビニル重合体を含む相である[11]〜[13]のいずれか1項に記載のグラフト共重合体。
[15]前記B相がポリオルガノシロキサンを含む相である[11]〜[14]のいずれか1項に記載のグラフト共重合体。
[16]前記グラフト共重合体の質量平均粒子径が300〜2000nmである[11]〜[15]のいずれか1項に記載のグラフト共重合体。
[17][11]〜[16]のいずれか1項に記載のグラフト共重合体と熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物。
[18]前記熱可塑性樹脂とグラフト共重合体の合計100質量%中の前記グラフト共重合体の含有量が0.5〜50質量%である[17]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[19]前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である[17]または[18]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[20][17]〜[19]のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明の第1の形態に係るポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(単に「グラフト共重合体」ということがある)は、ポリオルガノシロキサン(A1)とビニル重合体(A2)を含有するゴム(A)を、ビニル単量体(b)でグラフト化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体であって、ビニル重合体(A2)が、単官能性ビニル単量体(a1)90〜100質量%と多官能性ビニル単量体(a2)10〜0質量%とのビニル重合体であって、前記単官能性ビニル単量体(a1)からなる単独重合体のガラス転移温度が0℃以上であり、下記の「測定条件1」で測定した際のグラフト共重合体のtanδのピークが−125℃〜−90℃の温度範囲にあるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体である。ゴム(A)をビニル単量体(b)でグラフト化するとは、ゴム(A)の存在下にビニル単量体(b)をグラフト重合することで、ゴム(A)にビニル単量体(b)からなるグラフト部を形成することである。
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を160℃、5MPaで圧縮成型し、1mm厚とした試験片を動的粘弾性装置(DMS6100、セイコーインスツル社製)で引張りモード、昇温速度2℃/分、10Hzの周波数で−150℃〜180℃の温度範囲で測定する。
「測定条件2」
圧縮成型によって、薄膜化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を、JIS K 7142 A法に準じ、アッベ屈折計を用いて、温度23℃で測定する。
本発明のグラフト共重合体の屈折率を1.531以上とすることで発色性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られ、1.700以下とすることで、低温耐衝撃強度に優れた樹脂組成物を得ることができるため好ましい。本発明のグラフト共重合体の屈折率は、ポリオルガノシロキサン(A1)の含有量、ビニル重合体(A2)、ビニル単量体(b)の種類及び使用量を調整することにより所望の屈折率とすることができる。
n=v1n1+v2n2+v3n3+・・・
なお、式中の「n1、n2、n3、・・・」は各単量体の単独重合体の20℃における屈折率を表し、POLYMER HANDBOOK 4th Editionに記載の値が使用できる。式中、「v1、v2、v3、・・・」は各単量体の体積分率を表す。
ポリオルガノシロキサン(A1)は、ケイ素原子に少なくとも1つの有機基が結合したオルガノシロキサン単位を構成単位として含有する重合体である。ポリオルガノシロキサン(A1)は、オルガノシロキサンまたは、オルガノシロキサンと必要に応じて使用される成分を1種以上含む「オルガノシロキサン混合物」を重合することにより得ることができる。必要に応じて使用される成分としては、シロキサン系架橋剤、シロキサン系グラフト交叉剤、及び末端封鎖基を有するシロキサンオリゴマー等が挙げられる。
また、2官能性ジアルキルシラン化合物とは、上記2官能性アルコキシシラン化合物のうち、アルキル基を2つ有する化合物であり、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシランが挙げられる。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
RSiR1 n(OR2)(3−n) (I)
式(I)中、R1は、メチル基、エチル基、プロピル基、又はフェニル基を示す。R2は、アルコキシ基における有機基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、又はフェニル基を挙げることができる。nは、0、1又は2を示す。Rは、式(I−1)〜(I−4)で表されるいずれかの基を示す。
CH2=C(R4)−C6H4− (I−2)
CH2=CH− (I−3)
HS−(CH2)p− (I−4)
これらの式中、R3及びR4は、それぞれ、水素又はメチル基を示し、pは1〜6の整数を示す。
ポリオルガノシロキサン(A1)の製造方法としては特に制限はなく、例えば、以下の製造方法を採用できる。まず、オルガノシロキサン、必要に応じてシロキサン系架橋剤、必要に応じてシロキサン系グラフト交叉剤、及び必要に応じて末端封鎖基を有するシロキサンオリゴマーを含むオルガノシロキサン混合物を、乳化剤と水によって乳化させてエマルションを調製する。その後、該混合物を、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和してポリオルガノシロキサンのラテックスを得る。尚、以下の製造方法の説明においては、重合用の原料として「オルガノシロキサン混合物」を用いた場合について説明するが、「オルガノシロキサン」を単独で用いた場合についても同様の製造プロセスを適用できる。
アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムを挙げることができる。
ノニオン系乳化剤としては、例えば以下のものが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等。
これらの乳化剤は、1種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
カートリッジ:専用の粒子分離用キャピラリー式カートリッジ(商品名;C−202)、
キャリア液:専用キャリア液(商品名;2XGR500)、
キャリア液の液性:ほぼ中性、
キャリア液の流速:1.4ml/分、
キャリア液の圧力:約4,000psi(2,600kPa)、
測定温度:35℃、
試料使用量:0.1ml。
また、標準粒子径物質としては、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレンで、40〜800nmの粒子径の範囲内の12種類の粒子が用いられる。
本発明のビニル重合体(A2)としては、単独重合体のガラス転移温度が0℃以上の単官能性ビニル単量体(a1)と多官能性ビニル単量体(a2)を重合して得られる重合体が挙げられる。
本発明の単官能性ビニル単量体(a1)は、その単独重合体のガラス転移温度が0℃以上であることが必要である。単独重合体のガラス転移温度は例えば、POLYMER HANDBOOK 4th Editionに記載の値を参照することができる。
本発明の単官能性ビニル単量体(a1)としては、例えば以下の単量体が挙げられる。
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;
メチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート等のアルキルアクリレート;
シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のエステル基が脂環式基である脂環式(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、ブロモフェニル(メタ)アクリレート、ジブロモフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、モノクロルフェニル(メタ)アクリレート、ジクロルフェニル(メタ)アクリレート、トリクロルフェニル(メタ)アクリレート等のエステル基がフェニル基または置換フェニル基であるアリール(メタ)アクリレート;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体等。
これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
多官能性ビニル単量体としては、例えば以下の多官能性単量体が挙げられる。
メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールジエステル、1,6−ヘキサンジオールジアクリル酸エステル、トリメリト酸トリアリル等。
これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)等の油溶性アゾ系開始剤、
4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシメチル)−2−メチルプロピオナミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス−(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等の水溶性アゾ系開始剤等。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物、
ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物等。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)等。
これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム(A)は、ポリオルガノシロキサン(A1)及びビニル重合体(A2)を含有する。ゴム(A)としては、以下の(1)〜(5)の構造を有するゴムを例示することができる。
(1)多層構造を有し、ポリオルガノシロキサン(A1)のコアがビニル重合体(A2)のシェルで被覆された構造を有するゴム、
(2)多層構造を有し、ビニル重合体(A2)のコアがポリオルガノシロキサン(A1)のシェルで被覆された構造を有するゴム、
(3)ポリオルガノシロキサン(A1)とビニル重合体(A2)が相互に介入した構造を有する複合ゴム。
(4)ポリオルガノシロキサン(A1)が島、ビニル重合体(A2)が海となった海島構造を有する複合ゴム。
(5)ポリオルガノシロキサン(A1)が海、ビニル重合体(A2)が島となった海島構造を有する複合ゴム。
この中でも(5)の構造を有するゴムが、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体のtanδの第1のピークを−125℃〜−90℃の温度範囲とし、さらに第2のピークを−80℃〜0℃の温度範囲に有するように制御できるため好ましく、グラフト共重合体を樹脂に添加した際の低温衝撃強度と発色性とのバランス、過酷な条件下での色調の変化の抑制が良好になる。
したがって、本発明の別の実施形態では、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体100質量%に対して、ポリオルガノシロキサン(A1)を0.1〜40質量%、ビニル重合体(A2)を41〜99.8質量%を含むゴム(A)に、ビニル単量体(b)0.1〜19質量%をグラフト化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体であって、ビニル重合体(A2)が、単官能性ビニル単量体(a1)90〜100質量%と、多官能性ビニル単量体(a2)10〜0質量%とのビニル重合体を含み、前記単官能性ビニル単量体(a1)はその単独重合体のガラス転移温度が0℃以上である単官能性ビニル単量体の1種以上である、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体が提供される。
上記ゴム(A)の存在下でビニル単量体(b)を重合し、ゴム(A)にビニル重合体からなるグラフト部を形成することで、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を得ることができる。
グラフト共重合体の粒子をカプセルに取り、常温硬化型エポキシ樹脂を注ぎ、25℃で12時間放置し、硬化させ、得られる樹脂片を、ウルトラミクロトーム(商品名「Leica EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ(株)製)により、ガラスナイフを用いて、常温で面出したものをサンプル1として用いる。サンプル1を走査型プローブ顕微鏡(Veeco Instruments,Inc製)により、スキャン範囲1μm角の条件で、粒子の弾性率像を取得する。
該粒子の弾性率像において、該粒子に内接する矩形領域の弾性率のヒストグラムを取得し、該ヒストグラムのガウス曲線のピークトップを前記B相の弾性率とし、該粒子中において0.20GPa以上の弾性率を有する領域に内包される50nm角以上の大きさの領域においても弾性率のヒストグラムを取得し、該ヒストグラムのガウス曲線のピークトップを前記A相の弾性率とする。
また、図2は、該粒子中において0.20GPa以上の弾性率を有する領域に内包される50nm角以上の大きさの領域における弾性率のヒストグラムの一例を示す。図2中、実線は該ヒストグラムにおけるガウス曲線を示し、そのピークトップが分散相(A相)の弾性率となる。
測定条件3で得られた樹脂片を前記ウルトラミクロトームにより、ダイヤモンドナイフを用いて、常温で面出し及びトリミングし、さらに薄片厚さ50nmの条件で切片を切り出し、支持膜付きグリッドの上に回収したものをサンプル2として用いる。サンプル2を透過型電子顕微鏡(「商品名「H−7600」、日立(株)製)に設置し、加速電圧80kV、倍率20万倍の条件で、粒子像を取得する。取得した粒子像について、画像解析ソフト(商品名「Image−Pro(登録商標) Plus」、(株)日本ローパー製)を用いて、背景の輝度むらの平坦化、ノイズの除去、エッジの強調、2値化を行う。取得した粒子像で明コントラストに見えていた相を2値化により抽出し、一粒子像内に視認できる直径の大きい相から10点まで選択し、その平均直径を求める。さらに、粒子10点の平均直径について平均値を求め、その平均値をA相の平均直径とする。
なお、「特定条件4」において、1つのグラフト共重合体粒子に視認できる相が10点未満の場合は、すべての相を選択し、その平均直径を求めるものとする。また、測定される直径は、対象となる相の外周の2点を結び、且つ、重心を通る径を2度刻みに測定した平均値である。
グラフト共重合体(G1)に弾性率が0.4GPa以上の相(A相)と弾性率が0.2GPa以下の相(B相)が含まれる。相の構造としては、A相が分散相、B相が連続相となった構造であり、グラフト共重合体(G1)のA相のサイズ(平均直径)は50nm以上であり、より好ましくは60nm以上である。A相が分散相、B相が連続相となった構造であると、グラフト共重合体(G1)の弾性率を低くすることができるので、衝撃強度改質剤として用いた際に優れた耐衝撃特性を示す。
A相はグラフト共重合体(G1)の一粒子中に2つ以上含まれることが好ましい。2つ以上含まれると、A相のサイズが必要以上に大きくならず、グラフト共重合体(G1)の弾性率をさらに低くすることができるので、衝撃強度改質剤として用いた際にさらに優れた耐衝撃特性を示す。
B相はポリオルガノシロキサンを含む相であることが好ましい。ポリオルガノシロキサンを含む相であると、弾性率が低く、ポアソン比が0.5に近いため、熱可塑性樹脂中に添加した際に変形しやすく、それによって優れた耐衝撃特性を示すため、衝撃強度改質剤として好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に使用される「グラフト共重合体」は、第1の形態で説明したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、第2の形態で説明したグラフト共重合体(G1)のいずれでもよく、熱可塑性樹脂と混合して熱可塑性樹脂組成物として使用することができる。以下の説明では、第1の形態で説明したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体、第2の形態で説明したグラフト共重合体(G1)を合わせて単に「グラフト共重合体」ということがある。
熱可塑性樹脂としては、例えば以下のものが挙げられる。ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、(メタ)アクリレート・スチレン共重合体(MS)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリル酸エステル・スチレン・アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル・エチレン・プロピレンゴム・スチレン共重合体(AES)等のスチレン(St)系樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル(Ac)系樹脂;ポリカーボネート(PC)樹脂;ポリアミド(PA)樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル(PEs)樹脂;(変性)ポリフェニレンエーテル((m−)PPE)樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリスルフォン(PSO)樹脂、ポリアリレート(PAr)樹脂、ポリフェニレン(PPS)樹脂等のエンジニアリングプラスチックス;熱可塑性ポリウレタン(PU)樹脂;硬質塩化ビニル樹脂、半硬質塩化ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂等の塩化ビニル(PVC)系樹脂;PC/ABS等のPC樹脂とSt系樹脂とのアロイ;PVC/ABS等のPVC系樹脂とSt系樹脂とのアロイ;PA/ABS等のPA樹脂とSt系樹脂とのアロイ;PA樹脂と熱可塑性エラストマー(TPE)とのアロイ;PA/PP等のPA樹脂とポリオレフィン系樹脂とのアロイ;PC/PBT等のPC樹脂とPEs樹脂とのアロイ;PP/TPE、PP/PE等のオレフィン系樹脂同士のアロイ;PPE/HIPS、PPE/PBT、PPE/PA等のPPE系樹脂とその他の樹脂のアロイ;PVC/PMMA等のPVC系樹脂とアクリル系樹脂とのアロイ等。
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲であれば、各種添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、フェノール系安定剤、燐系安定剤、紫外線吸収剤、アミン系光安定剤等の安定剤;燐系、ブロム系、シリコーン系、有機金属塩系等の難燃剤;耐加水分解性等の各種物性を付与するための改質剤;酸化チタン、タルク等の充填剤;染顔料;可塑剤が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、グラフト共重合体と、熱可塑性樹脂と、必要に応じて使用される各種添加剤とを、V型ブレンダーやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、この混合物を押出機またはバンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いて溶融混練することにより調製できる。これらの各成分の混合はバッチ的又は連続的に実施することができ、各成分の混合順序は特に限定されない。溶融混練物はペレットにして、各種の成形に用いることができる。
本発明に係る成形体は、上記の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、熱可塑性樹脂組成物、又はグラフト共重合体粉体と熱可塑性樹脂の混合物を、射出成形機で成形する方法が挙げられる。
(1)固形分
質量w1のポリオルガノシロキサンのラテックスを180℃の熱風乾燥機で30分間乾燥し、乾燥後の残渣の質量w2を測定し、下記式により固形分[%]を算出する。
固形分[%]=w2/w1×100
「ゴムラテックス」又は「グラフト共重合体ラテックス」を脱イオン水で固形分濃度約3%に希釈したものを試料として、前述した米国MATEC社製CHDF2000型粒度分布計を用いて、前述の条件を用いて、粒子径を測定し、質量平均粒子径Dwを測定する。
JIS K 7111に準じて、温度23℃及び−30℃にて、試験片(長さ80.0mm×幅10.0mm×厚み4mm、Vノッチ付き)のシャルピー衝撃強度を測定する。
JIS K 7375に準拠して、日本電色工業(株)製HAZE Meter NDH4000(商品名)を用いて、試験片(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)について、D65光源における全光線透過率を測定する。全光線透過率が高いほど、顔料等を添加した際の発色性が高くなるため、良好と判断した。ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名;ユーピロンS−2000F、粘度平均分子量24,000)97質量%に対して、グラフト共重合体の粉体3質量%を加え、溶融混練し、射出成型によって得られた試験片(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)を測定した際の全光線透過率が50%以上であることが、顔料等を添加した際の発色性が非常に高くなるため好ましい。
試験片(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)を温度120℃のオーブン中にて1000時間、熱処理する。オーブンから試験片を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気で12時間以上放置した後、JIS Z 8729(L*a*b* 表色系による物体色の表示方法)により、測定はJIS Z 8722に準拠して、日本電色工業(株)製SE−4000(商品名)を用いて、下記の「測定条件5」によって熱処理前と熱処理後の物体色を測定し、色調の変化<ΔE:((ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2)1/2>を求める。
「測定条件5」
装置:分光式色差計SE−4000(日本電色工業株式会社製、0−45°後分光方式)、
測定範囲:380〜780nm、
測定光源:C光(2°視野)
試験片(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)を温度85℃、湿度85%の恒温恒湿機中にて1000時間、湿熱処理する。恒温恒湿機から試験片を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気で12時間以上放置した後、JIS Z 8729(L*a*b* 表色系による物体色の表示方法)により、測定はJIS Z 8722に準拠して、日本電色工業(株)製SE−4000を用いて、前述した「測定条件5」によって熱処理前と熱処理後の物体色を測定し、色調の変化<ΔE:((ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2)1/2>を求める。
試験片(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)をブラックパネル温度:63℃、雨有りの条件のサンシャインウェザーメーター(スガ試験機製、型式:WEL−SUN−HCH−B型)にて500時間、暴露する。サンシャインウェザーメーターから試験片を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気で12時間以上放置した後、JIS Z 8729(L*a*b* 表色系による物体色の表示方法)により、測定はJIS Z 8722に準拠して、日本電色工業(株)製SE−4000を用いて、前述した「測定条件5」によって熱処理前と熱処理後の物体色を測定し、色調の変化<ΔE:((ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2)1/2>を求める。
圧縮成型によって、薄膜化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を、JIS K 7142 A法に準じ、アッベ屈折計を用いて、温度23℃で測定する。
カーボンブラックで着色した厚さ2mmの試験片2をJIS Z 8729(L*a*b* 表色系による物体色の表示方法)により、測定はJIS Z 8722に準拠して、日本電色工業(株)製SE−4000(商品名)を用いて、下記の「測定条件25」によって物体色を測定し、L*を漆黒性の指標とする。L*は低いほど漆黒性に優れ、顔料を添加した際の発色性が優れることを表す。
「測定条件25」
装置:分光式色差計SE−4000(日本電色工業株式会社製、0−45°後分光方式)、
測定範囲:380〜780nm、
測定光源:C光(2°視野)
1/16インチの試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mm)について、UL−94V試験(垂直試験法)を行った。
テトラエトキシシラン(TEOS)2部、γ−メタクリロイロキシプロピルジメトキシメチルシラン(DSMA)2部及び、オクタメチルシクロテトラシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(株)製、製品名:TSF404)96部を混合してオルガノシロキサン混合物100部を得た。脱イオン水150部中にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBSNa)1部を溶解した水溶液を、前記混合物中に添加し、ホモミキサーにて10,000rpmで5分間攪拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で2回通し、安定な予備混合エマルションを得た。
テトラエトキシシラン(TEOS)を2部から0.5部に変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行い、ポリオルガノシロキサンラテックス(AS−2)を得た。
テトラエトキシシラン(TEOS)1.5部、γ−メタクリロイロキシプロピルジメトキシメチルシラン(DSMA)1部及び、環状ジメチルシロキサン混合物(信越シリコーン(株)製、製品名:DMC)87.5部、ジフェニルジメトキシシラン(信越シリコーン(株)製、製品名:KBM−202SS)10部を混合してオルガノシロキサン混合物100部を得た。脱イオン水200部中にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBSNa)0.67部を溶解した水溶液を、前記混合物中に添加し、ホモミキサーにて10,000rpmで5分間攪拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で2回通し、安定な予備混合エマルションを得た。
製造例1において得たポリオルガノシロキサンラテックス(AS−1)67.11部(ポリマー換算で20.0部)を容量5リットルのセパラブルフラスコ内に採取し、脱イオン水160部を添加し混合した。次いでこのセパラブルフラスコ内に、スチレン(St)17.25部、アリルメタクリレート(AMA)0.44部、クメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.07部の混合物(ゴム重合に用いる混合物の1/4量)を添加し、25℃で1時間撹拌を続けポリオルガノシロキサンに含浸させた。
実施例1において用いた各原料の種類及び量を表1に示す条件に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−2、G−3、及びG’−1〜2)を製造し、さらにグラフト共重合体の粉体を得た。得られた各グラフト共重合体の重合率、質量平均粒子径を表1に示す。また、前記測定条件1で測定したtanδのピーク温度についても表1に示す。なお、表1中の単官能性ビニル単量体(a1)と多官能性ビニル単量体(a2)の欄の括弧内の数値はビニル重合体(A2)100質量%に占める組成比(質量%)を示す。また、組成から計算される屈折率、及びアッベ屈折率計によって測定した屈折率も表1に示す。
St:スチレン
BA:n−ブチルアクリレート
AMA:アリルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
PhMA:フェニルメタクリレート
MA:メチルアクリレート
また、グラフト共重合体の屈折率の計算値は実測値に近似しており、所望の屈折率を有するグラフト共重合体が組成を調整することで容易に得られることが分かる。
各ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−1)〜(G−3)、(G’−1)、(G’−2)の粉体、及び、ポリカーボネート樹脂(略称「PC」、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名;ユーピロンS−2000F、粘度平均分子量24,000)を、表2に記載の比率で配合し、混合した。該配合物を、30mmΦ二軸押出機(L/D=30)に供給してシリンダー温度280℃及びスクリュー回転数150rpmで溶融混合して押出して、熱可塑性樹脂組成物(H−1)〜(H−6)のペレットを得た。
tanδのピーク温度が−125℃〜−90℃の範囲にあるポリオルガノシロキサン含有共重合体を含む実施例4〜6は低温衝撃強度と全光線透過率のバランスに優れていた。耐熱老化性、耐湿熱性、耐候性が比較例3,4と比べてバランスよく優れていた。
各ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−1)〜(G−3)、(G’−1)の粉体、ポリカーボネート樹脂(略称「PC」、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名;ユーピロンS−2000F、粘度平均分子量24,000)、及び着色剤としてカーボンブラック♯960(略称「CB」、三菱ケミカル(株)製)を表3に記載の比率で配合し、混合した。該配合物を、30mmΦ二軸押出機(L/D=30)に供給してシリンダー温度280℃及びスクリュー回転数150rpmで溶融混合して押出して、熱可塑性樹脂組成物(H−7)〜(H−10)のペレットを得た。
実施例7〜8は比較例6と比較して、漆黒性に優れていた。
各ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体(G−1)〜(G−3)、(G’−1)、(G’−2)の粉体、ポリカーボネート樹脂(略称「PC」、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名;ユーピロンS−2000F、粘度平均分子量24,000)、芳香族リン酸エステル系難燃剤(大八化学工業(株)製、商品名;PX−200)、ポリテトラフルオロエチレン含有粉体(略称「PTFE」、三菱ケミカル(株)製、商品名;メタブレンA−3800)を表4に記載の比率で配合し、混合した。該配合物を、30mmΦ二軸押出機(L/D=30)に供給してシリンダー温度280℃及びスクリュー回転数150rpmで溶融混合して押出して、熱可塑性樹脂組成物(H−11)〜(H−16)のペレットを得た。
[実施例13]
製造例1において得たポリオルガノシロキサンラテックス(AS−1)67.11部(ポリマー換算で20.0部)を容量5リットルのセパラブルフラスコ内に採取し、脱イオン水160部を添加し混合した。次いでこのセパラブルフラスコ内に、スチレン(St)12.25部、n−ブチルアクリレート(BA)5.00部、アリルメタクリレート(AMA)0.44部、クメンハイドロパーオキサイド(CHP)0.07部の混合物(ゴム重合に用いる混合物の1/4量)を添加し、25℃で1時間撹拌を続けポリオルガノシロキサンに含浸させた。
製造例3において得たポリオルガノシロキサンラテックス(AS−3)73.3部(ポリマー換算で20部)を容量5リットルのセパラブルフラスコ内に採取し、脱イオン水160部、DBSNa0.7部を添加し混合した。次いでこのセパラブルフラスコ内に、スチレン(St)8部を添加し、25℃で1時間撹拌を続けポリオルガノシロキサンに含浸させた。
このセパラブルフラスコ内に窒素気流を通じることによりフラスコ内雰囲気の窒素置換を行い、液温を75℃まで昇温した。液温が75℃となった時点で過硫酸カリウム(KPS)0.09部を脱イオン水5部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始した。スチレンの重合を完結させるため、KPSを添加した時点から2時間、75℃の状態を維持した。
次いで、このラテックスの液温を75℃まで昇温し、液温が75℃となった時点でKPS0.09部を脱イオン水5部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始した。単量体成分の重合を完結させるため、KPSを添加した時点から2時間、75℃の状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとスチレンを含むゴムのラテックスを得た。
St:スチレン
BA:n−ブチルアクリレート
AMA:アリルメタクリレート
TAC:トリアリルシアヌレート
MMA:メチルメタクリレート
「測定条件3」
グラフト共重合体の粒子をカプセルに取り、常温硬化型エポキシ樹脂を注ぎ、25℃で12時間放置し、硬化させ、得られる樹脂片を、ウルトラミクロトーム(商品名「Leica EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ(株)製)により、ガラスナイフを用いて、常温で面出したものをサンプル1として用いる。サンプル1を走査型プローブ顕微鏡(Veeco Instruments,Inc製)により、スキャン範囲1μm角の条件で、粒子の弾性率像を取得する。
該粒子の弾性率像において、該粒子に内接する矩形領域の弾性率のヒストグラムを取得し、該ヒストグラムのガウス曲線のピークトップを前記B相の弾性率とし、該粒子中において0.20GPa以上の弾性率を有する領域に内包される50nm角以上の大きさの領域においても弾性率のヒストグラムを取得し、該ヒストグラムのガウス曲線のピークトップを前記A相の弾性率とする。
「測定条件4」
測定条件3で得られた樹脂片を前記ウルトラミクロトームにより、ダイヤモンドナイフを用いて、常温で面出し及びトリミングし、さらに薄片厚さ50nmの条件で切片を切り出し、支持膜付きグリッドの上に回収したものをサンプル2として用いる。サンプル2を透過型電子顕微鏡(「商品名「H−7600」、日立(株)製)に設置し、加速電圧80kV、倍率20万倍の条件で、粒子像を取得する。取得した粒子像について、画像解析ソフト(商品名「Image−Pro(登録商標) Plus」、(株)日本ローパー製)を用いて、背景の輝度むらの平坦化、ノイズの除去、エッジの強調、2値化を行う。取得した粒子像で明コントラストに見えていた相を2値化により抽出し、一粒子像内に視認できる直径の大きい相から10点まで選択し、その平均直径を求める。さらに、粒子10点の平均直径について平均値を求め、その平均値をA相の平均直径とする。
各グラフト共重合体(G−4)、(G’−3)の粉体、及び、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名;ユーピロンS−2000F、粘度平均分子量24,000)を、表7に記載の比率で配合し、混合した。該配合物を、30mmφ二軸押出機(L/D=30)に供給してシリンダー温度280℃及びスクリュー回転数150rpmで溶融混合して押出して、熱可塑性樹脂組成物(H−17)、(H−18)のペレットを得た。
2 分散相(A相)
3 連続相(B相)
4 エポキシ樹脂の硬化層
Claims (20)
- ポリオルガノシロキサン(A1)とビニル重合体(A2)を含有するゴム(A)を、ビニル単量体(b)でグラフト化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体であって、
前記ビニル重合体(A2)が、単官能性ビニル単量体(a1)90〜100質量%と、多官能性ビニル単量体(a2)10〜0質量%とのビニル重合体であって、
前記単官能性ビニル単量体(a1)の単独重合体のガラス転移温度が0℃以上であり、
さらに以下の測定条件1で測定した際のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体のtanδのピークが、−125℃〜−90℃の温度範囲にあるポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。
「測定条件1」
ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を160℃、5MPaで圧縮成型し、1mm厚とした試験片を動的粘弾性装置で引張りモード、昇温速度2℃/分、10Hzの周波数で−150℃〜180℃の温度範囲で測定する。 - 「測定条件2」で測定した屈折率が1.531〜1.700の範囲にある請求項1に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。
「測定条件2」 圧縮成型によって、薄膜化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を、JIS K 7142 A法に準じ、アッベ屈折計を用いて、温度23℃で測定する。 - tanδのピークをさらに−80℃〜0℃の温度範囲に有する請求項1又は2に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。
- ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体100質量%に対するポリオルガノシロキサン含有量が0.1〜40質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。
- ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体100質量%に対して、ポリオルガノシロキサン(A1)を0.1〜40質量%、ビニル重合体(A2)を41〜99.8質量%を含むゴム(A)を、ビニル単量体(b)0.1〜19質量%でグラフト化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体であって、
ビニル重合体(A2)が、単官能性ビニル単量体(a1)90〜100質量%と、多官能性ビニル単量体(a2)10〜0質量%とのビニル重合体であって、前記単官能性ビニル単量体(a1)はその単独重合体のガラス転移温度が0℃以上である単官能性ビニル単量体の1種以上である、ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。 - 「測定条件2」で測定した屈折率が1.531〜1.700の範囲である請求項5に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体。
「測定条件2」 圧縮成型によって、薄膜化したポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体を、JIS K 7142 A法に準じ、アッベ屈折計を用いて、温度23℃で測定する。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体と熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂と前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の合計100質量%中の前記ポリオルガノシロキサン含有グラフト共重合体の含有量が0.5〜50質量%である請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である請求項7または8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項7〜9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。
- 分散相(A相)と連続相(B相)とを有し、「測定条件3」で測定される弾性率像において、前記A相における弾性率が0.4GPa以上であり、前記B相における弾性率が0.2GPa以下であり、「測定条件4」で測定される前記A相の平均直径が50nm以上であるグラフト共重合体。
「測定条件3」
グラフト共重合体の粒子をカプセルに取り、常温硬化型エポキシ樹脂を注ぎ、25℃で12時間放置し、硬化させ、得られる樹脂片を、ウルトラミクロトーム(商品名「Leica EM UC7」、ライカ マイクロシステムズ(株)製)により、ガラスナイフを用いて、常温で面出したものをサンプル1として用いる。サンプル1を走査型プローブ顕微鏡(Veeco Instruments,Inc製)により、スキャン範囲1μm角の条件で、粒子の弾性率像を取得する。
該粒子の弾性率像において、該粒子に内接する矩形領域の弾性率のヒストグラムを取得し、該ヒストグラムのガウス曲線のピークトップを前記B相の弾性率とし、該粒子中において0.20GPa以上の弾性率を有する領域に内包される50nm角以上の大きさの領域においても弾性率のヒストグラムを取得し、該ヒストグラムのガウス曲線のピークトップを前記A相の弾性率とする。
「測定条件4」
測定条件3で得られた樹脂片を前記ウルトラミクロトームにより、ダイヤモンドナイフを用いて、常温で面出し及びトリミングし、さらに薄片厚さ50nmの条件で切片を切り出し、支持膜付きグリッドの上に回収したものをサンプル2として用いる。サンプル2を透過型電子顕微鏡(「商品名「H−7600」、日立(株)製)に設置し、加速電圧80kV、倍率20万倍の条件で、粒子像を取得する。取得した粒子像について、画像解析ソフト(商品名「Image−Pro(登録商標) Plus」、(株)日本ローパー製)を用いて、背景の輝度むらの平坦化、ノイズの除去、エッジの強調、2値化を行う。取得した粒子像で明コントラストに見えていた相を2値化により抽出し、一粒子像内に視認できる直径の大きい相から10点まで選択し、その平均直径を求める。さらに、粒子10点の平均直径について平均値を求め、その平均値をA相の平均直径とする。 - 前記A相が、グラフト共重合体の一粒子中に2つ以上含まれる請求項11に記載のグラフト共重合体。
- 前記A相の平均直径が60nm以上である請求項11または12に記載のグラフト共重合体。
- 前記A相が芳香族ビニル重合体を含む相である請求項11〜13のいずれか1項に記載のグラフト共重合体。
- 前記B相がポリオルガノシロキサンを含む相である請求項11〜14のいずれか1項に記載のグラフト共重合体。
- 前記グラフト共重合体の質量平均粒子径が300〜2000nmである請求項11〜15のいずれか1項に記載のグラフト共重合体。
- 請求項11〜16のいずれか1項に記載のグラフト共重合体と熱可塑性樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂とグラフト共重合体の合計100質量%中の前記グラフト共重合体の含有量が0.5〜50質量%である請求項17に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂である請求項17または18に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項17〜19のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形体。
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