JPWO2018212327A1 - 線材、及び鋼線の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の一態様に係る線材は、化学組成が所定範囲内であり、表層部と中心部との両方において、主たる組織がパーライト組織であり、フェライト組織の面積率が45%以下であり、非パーライトかつ非フェライト組織の面積率が5%以下であり、パーライト組織中の、ラメラフェライトの結晶方位の角度差2°以上15°未満となる亜粒界の密度ρ1が70/mm≦ρ1≦600/mmであり、全組織中での、フェライト結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界の密度ρ2が200/mm以上である。

Description

本発明は、線材、鋼線、及び鋼線の製造方法に関する。
本願は、2017年5月18日に、日本に出願された特願2017−099227号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本発明は、自動車等のタイヤの補強材であるワイヤーや、アルミ送電線などの補強用ワイヤー、PC鋼線、橋梁等に用いられるロープ用ワイヤーなどに使用される高強度鋼線の素材として幅広く用いられる線材に関するものである。また、本発明は、この線材から得られる鋼線、及びこの線材を用いた鋼線の製造方法に関するものである。
線材は、熱間圧延によって製造され、所定の線径にまで伸線加工することによって、ワイヤーに加工される。伸線加工の途中でパテンティング処理を1〜2回程度施し、細い鋼線にまで伸線加工されるので、線材には高い伸線加工性を有することが要求される。
たとえば、大型自動車用タイヤなどに使用される線径0.5mm以上の補強材では、生産性向上が要求されるようになっている。安定した熱間圧延によって製造可能な線径3.5mm以上の線材から、線径0.5mm〜1.5mmの鋼線を低コストで安定して製造できる線材が求められている。そのため、伸線加工途中で行なう中間パテンティング工程を省略できる伸線加工性を有し、且つ、伸線加工後に安定したねじり特性を発揮することができる線材の開発が進められている。
しかしながら、高伸線加工度まで伸線加工する工程によって製造されるワイヤーでは、伸線加工途中での断線がより発生しやすい状況になっている。さらに、高伸線加工度まで伸線加工した鋼線は、ねじり特性が劣化する傾向にある。更には、鋼線の材料である線材の線径が太いことは、鋼線のねじり特性にとって不利となる。
線材の伸線加工中の断線を防止するために、線材の組織の改善手法が様々提案されている。こうした技術として、例えば特許文献1(特開2014−055316号公報)には、アスペクト比を10以上としたラメラセメンタイトが、ラメラセメンタイトの総数に対し個数基準で50%以上存在された高強度鋼線用線材であって、このようなラメラセメンタイトとすることにより伸線加工性低下を防止した高強度鋼線用線材が提案されている。
また、特許文献2(特開2000−119756号公報)には、初析フェライトの分率が10%以下で残りはセメンタイト(cementite)が不連続的に形成されたパーライト(pearlite)を包含して構成することによって、伸線加工性低下を防止した高強度鋼線用線材が提案されている。
これらの技術は、いずれも線材のセメンタイトの形態を制御することによって線材の伸線加工性を良好にすることによって、線径0.1〜0.4mmの鋼線を得るまでの伸線加工工程においてカッピー断線等が発生しないようにしたものである。しかし、セメンタイトの形態を制御しただけでは、鋼線の断面内の強度ばらつきを抑制できない。そのため、これら特許文献に開示された技術によって線径0.5mm以上の鋼線を製造した場合には、断線の発生抑制とねじり特性の劣化抑制との両立が効果的になされず、上記の問題が発生することがある。
こうしたことから、高伸線加工度まで伸線加工して太径(例えば線径0.5mm以上)の鋼線を製造するような工程において断線が発生しにくく、伸線加工後のねじり特性が良好となる線材の実現が望まれている。
日本国特開2014−055316号公報 日本国特開2000−119756号公報
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、太径のワイヤー等の素材としても好適な、高い強度と優れたねじり特性とを有する鋼線を、伸線加工中の断線を抑制して安定して製造し得る線材を提供することを課題とする。また、本発明は、高い強度と優れたねじり特性とを有する鋼線、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記した課題を解決するために種々の検討を実施した。その結果、下記の知見を得た。
(I)線径5.5mm以上の線材を、線径0.5mmレベルまで伸線加工する場合、伸線加工ひずみは4.5以上となる。伸線加工性が悪い共析鋼又は過共析鋼にこのような高伸線加工度で伸線加工を行う場合、伸線加工途中でのパテンティングが必須となる。一方、セメンタイト分率の小さい亜共析鋼を線材の材料として用いることで、線材の伸線加工性の向上が可能となり、伸線加工ひずみが4.5以上となる伸線加工に線材を供することが可能になることがわかった。
(II)一方で、亜共析鋼の線材の横断面(すなわち線材の長さ方向に直角な切断面)における中心部においてフェライトの面積率が45%超になった場合には、フェライト組織が塊状かつ粗大になるために、亜共析鋼の線材であっても伸線加工性が不足することがわかった。また、結晶粒径が粗大になった場合(すなわち大角粒界密度が少ない場合)には、線材の絞り値が低く延性が悪いため、伸線加工中に線材内部に粗大なき裂が形成されやすく、伸線加工性が低下した。また、亜共析鋼の線材の横断面において、表層部でのフェライトの面積率が45%超になった場合には、伸線加工後のねじり特性が低下することがわかった。これは、フェライト組織に変形が集中するためと考えられる。
(III)パーライト変態後には、パーライト組織中の層状フェライト(以下、ラメラフェライト)中に亜粒界が多量に導入される。本発明者らは、線材の亜粒界密度と、線材の伸線加工後のねじり特性(以下、単にねじり特性と略する場合がある)との関係を調べた。その結果、基本的には、パーライト組織中の亜粒界密度が大きいほど良好なねじり特性が得られることがわかった。これは亜粒界が多いほど、伸線加工中に均一に加工ひずみが導入されて、鋼線の断面中の強度ばらつきが低減するためと考えられる。
(IV)本発明者らは、亜粒界密度の向上の手段について検討した。亜粒界は、パーライト変態時にラメラフェライトとパーライト組織中の層状セメンタイト(以下、ラメラセメンタイト)とが協調的に成長する際に、両相のミスフィットを解消するために導入されると考えられる。亜粒界密度は、パーライト変態温度、及びラメラフェライトに固溶する合金元素(たとえばSi)の含有量を用いて調整できることを本発明者らは知見した。
パーライト変態温度と亜粒界密度との関係について具体的に説明すると、パーライト変態温度が550℃以下では、パーライト変態温度が低いほど、ラメラフェライト中の亜粒界密度が低下することがわかった。これはラメラセメンタイトの成長が分断される箇所が増加するためと考えられる。一方、パーライト変態温度が550℃よりも高温の領域では、高温になるに従って亜粒界密度は徐々に低下する傾向にあった。これは、パーライト変態温度が550℃よりも高い場合、高温ほどラメラ間隔が粗大化していき、ラメラセメンタイトの枚数が減少してミスフィットの総量が減るため、ラメラフェライト中の亜粒界密度が低減していくと考えられる。これらの結果より、パーライト変態温度が550℃近傍となるように冷却条件を制御した場合、最も多量の亜粒界が導入されることがわかった。
また、合金元素量と亜粒界密度との関係について具体的に説明すると、Siに代表されるような合金元素の含有量を増やすことで、ラメラフェライトとラメラセメンタイトとの界面のミスフィットが増加し、亜粒界密度が上昇すると考えられる。
(V)しかしながら、上述の知見に基づいてパーライト組織中の亜粒界密度を高める実験を重ねたところ、亜粒界密度が大きいにもかかわらず伸線加工後のねじり特性が低い線材が認められた。原因は明らかではないが、600℃未満でパーライト変態させて亜粒界密度を高めた場合には、伸線加工後のねじり回数が低下する傾向が認められた。従って、亜粒界密度を最大化できる550℃近傍ではなく、600℃〜620℃でパーライト変態させて、ラメラフェライト中の亜粒界密度を増加させすぎないことで、伸線加工性と伸線加工後のねじり特性とを両立する線材を得ることができると考えられる。
上記(I)〜(V)の知見から、太径のワイヤー等の素材としても好適な高い強度と優れたねじり特性を有する鋼線を、伸線加工中の断線を抑制して安定して製造し得る線材を実現するためには、線材の材料として亜共析鋼を用いる必要がある。さらに、合金元素の含有量や熱間圧延後の調整冷却条件を調整し、パーライト変態温度を適切な範囲内に調整することにより、線材のフェライト分率、大角粒界密度、及び亜粒界密度を適切な範囲に制御する必要もある。このように、合金元素の含有量や熱間圧延後の調整冷却条件を調整し、大角粒界密度、亜粒界密度を増加させることで得られる線材は、強度水準がこれと同じ他の線材よりも伸線加工性や伸線加工後のねじり特性が優れることを本発明者らは見出した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記の通りである。
(1)本発明の一態様に係る線材は、化学組成が、質量%で、C:0.30〜0.75%、Si:0.80〜2.00%、Mn:0.30〜1.00%、N:0.0080%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下、O:0.0070%以下、Al:0〜0.050%、Cr:0〜1.00%、V:0〜0.15%、Ti:0〜0.050%、Nb:0〜0.050%、B:0〜0.0040%、Ca:0〜0.0050%、及びMg:0〜0.0040%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、前記線材の表面から深さ150〜400μmの範囲である表層部と、前記線材の中心軸から前記線材の直径の1/10の範囲である中心部との両方において、主たる組織がパーライト組織であり、前記線材の長さ方向に直角な横断面におけるフェライト組織の面積率が45%以下であり、前記横断面における非パーライトかつ非フェライト組織の面積率が5%以下であり、前記パーライト組織中の、ラメラフェライトの結晶方位の角度差2°以上15°未満となる亜粒界の密度ρ1が70/mm≦ρ1≦600/mmであり、全組織中での、フェライト結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界の密度ρ2が200/mm以上である。
(2)上記(1)に記載の線材では、前記化学組成が、質量%で、Al:0.010〜0.050%を含有してもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の線材では、前記化学組成が、質量%で、Cr:0.05〜1.00%を含有してもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の線材では、前記化学組成が、質量%で、V:0.005〜0.15%、Ti:0.002〜0.050%、及びNb:0.002〜0.050%からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有してもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の線材では、前記化学組成が、質量%で、B:0.0001〜0.0040%を含有してもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の線材では、前記化学組成が、質量%で、Ca:0.0002〜0.0050%、及びMg:0.0002〜0.0040%からなる群から選ばれる1種又は2種を含有してもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の線材では、前記線材の前記表層部及び前記中心部において、前記亜粒界の前記密度ρ1が、下記式1を満たしてもよい。
220×(C)+100<ρ1<220×(C)+300:式1
前記式1における(C)は、前記線材の前記化学組成における質量%でのC含有量である。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の線材では、前記線材の前記直径が3.5〜7.0mmであってもよい。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の線材は、鋼線の材料として用いられてもよい。
(10)本発明の別の態様に係る鋼線は、上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の線材を伸線加工することによって製造され、直径が0.5〜1.5mmである。
(11)本発明の別の態様に係る鋼線の製造方法は、上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の線材を伸線加工して鋼線を得る工程を備え、前記鋼線の直径が0.5〜1.5mmである。
本発明の一態様に係る線材によれば、ワイヤー等の素材として好適な高い強度と優れたねじり特性を有する鋼線を、伸線加工中の断線を抑制して安定して製造でき、産業上極めて有用である。本発明の一態様に係る鋼線は、高い強度と優れたねじり特性を有するので、例えばワイヤー等の素材として好適であり、産業上極めて有用である。本発明の一態様に係る鋼線の製造方法は、ワイヤーの素材として好適な高い強度と優れたねじり特性を有する鋼線を、伸線加工中の断線を抑制して安定して製造できるので、産業上極めて有用である。
本実施形態に係る線材の表層部及び中心部を示す概略図である。 パーライト組織の一例を示す説明図である。
以下、本発明に係る線材の一例である実施形態について詳細に説明する。
なお、図1に示されるように、本実施形態に係る線材1においては、便宜上、線材の表面から深さ150〜400μmの範囲を表層部11と定義し、線材の中心軸から線材の直径dの1/10の範囲を中心部12と定義する。また、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本実施形態の線材は、自動車等のタイヤの補強材であるワイヤーや、アルミ送電線などの補強用ワイヤー、PC鋼線、橋梁等に用いられるロープ用ワイヤーなどの素材として好適な鋼線の材料として用いることが可能な線材である。
なお、線材の伸線加工性とは、線材を伸線加工して鋼線を得る際の、断線の生じにくさを示す指標である。線材の伸線加工後のねじり特性とは、線材を伸線加工して得られた鋼線にねじり試験を行った際の、デラミネーションの発生しにくさ、及びねじり断線の発生しにくさ等を示す指標である。本実施形態に係る線材は、直径6.0mmの線材を50kg準備して、これを直径0.5mmまで伸線した際の断線回数が0回となるような伸線加工性を有することが好ましい。さらに、伸線加工後の鋼線は、引張強度が2800MPa以上であることが好ましい。また、ワイヤーに用いられる鋼線は、ねじり試験を10本行ってもデラミネーションが1回も発生せず、且つねじり回数の平均値が23回以上となるようなねじり特性を有することが好ましい。ねじり回数が23回以上の鋼線は、伸線加工後の矯正などの取扱で破断しないだけの十分な延性があると判断できる。
次に、本実施形態の線材の化学組成およびミクロ組織(金属組織)について詳細に説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成について
まず、本実施形態の線材の化学組成について説明する。以下、化学組成の含有量の単位は質量%である。
C:0.30〜0.75%
Cは、鋼を強化する元素である。この効果を得るにはCを0.30%以上含有させなくてはならない。一方、Cの含有量が0.75%超になると、セメンタイト分率が大きくなり、伸線加工性が低下する。したがって、適切なCの含有量は0.30%以上0.75%以下である。さらに、き裂形成抑制の観点からCの含有量を0.35%以上とすることが好ましく、さらには0.40%以上であることが好ましい。一方、伸線加工性向上の観点からC含有量を0.75%未満、又は0.70%以下とすることが好ましく、0.65%以下とすることがより好ましい。C含有量を0.42%以上、又は0.45%以上としてもよい。C含有量を0.60%以下、又は0.55%以下としてもよい。
Si:0.80〜2.00%
Siは、線材の強度を高めるだけでなく亜粒界密度の増加に寄与する成分である。しかし、線材のSi含有量が0.80%未満では、Siを含有することによる亜粒界密度増加の効果が十分に得られない。一方、線材のSi含有量が2.00%を超えると、フェライト分率が上昇し、伸線加工性が低下する。そこで、線材のSiの含有量は0.80〜2.00%の範囲内と定めた。また、安定して所望のミクロ組織を有する線材を得るために、線材のSi含有量を1.00%以上、1.15%以上、1.30%以上、又は1.50%以上としてもよい。線材のSi含有量を1.90%以下、1.80%以下、1.75%以下、又は1.70%以下としてもよい。
Mn:0.30〜1.00%
Mnは、鋼線の強度を高める作用に加えて、鋼中のSをMnSとして固定して鋼線の熱間脆性を防止する作用を有する元素である。しかしながら、Mn含有量が0.30%未満では上記作用が十分でない。このため、Mn含有量の下限値は0.30%以上とする。さらに、鋼線の強度確保及び熱間脆性の防止をより高いレベルで実現するためには、Mn含有量を0.35%以上とすることが好ましく、0.40%以上とすることがより好ましい。Mn含有量を0.50%以上、又は0.55%以上としてもよい。
一方、Mnは偏析しやすい元素である。1.00%を超えてMnを含有させると、特に中心部にMnが濃化し、中心部にマルテンサイトやベイナイトが生成されて、伸線加工性が低下してしまう。また、粗大なMnSが形成されることも伸線加工性の低下の一因となる。Mnは0.90%以下とすることが好ましく、0.80%以下であればより一層好ましい。Mn含有量を0.75%以下、又は0.70%以下としてもよい。
N:0.0080%以下
Nは、冷間での伸線加工中に転位に固着することにより線材の強度を上昇させる反面、ねじり特性を低下させてしまう元素である。線材のN含有量が0.0080%を超えると、ねじり特性の低下が著しくなる。そこで、線材のN含有量は0.0080%以下に規制することとした。N含有量の好ましい上限は0.0060%以下、又は0.0050%以下である。N含有量は低いほど良く、Nは線材に含有しなくてもよい。N含有量を0.0045%以下、又は0.0040%以下としてもよい。N含有量を0.0010%以上、又は0.0025%以上としてもよい。
P:0.030%以下
Pは、線材の粒界に偏析してねじり特性を低下させてしまう元素である。線材のP含有量が0.030%を超えると、ねじり特性の低下が著しくなる。そこで、線材のP含有量は0.030%以下に規制することとした。P含有量の上限は0.025%以下であることが好ましい。P含有量は低いほど良く、Pは線材に含有しなくてもよい。P含有量を0.020%以下、0.015%以下、又は0.010%以下としてもよい。P含有量を0.002%以上、0.005%以上、又は0.008%以上としてもよい。
S:0.020%以下
Sは、MnSを形成して、伸線加工性を低下させてしまう元素である。そして、線材のS含有量が0.020%を超えると、伸線加工性の低下が著しくなる。このことから、線材のS含有量は0.020%以下に規制することとした。S含有量の好ましい上限は0.010%以下である。S含有量は低いほど良く、Sは線材に含有しなくてもよい。S含有量を0.015%以下、0.008%以下、又は0.005%以下としてもよい。S含有量を0.001%以上、0.002%以上、又は0.005%以上としてもよい。
O:0.0070%以下
Oは、酸化物を形成することで線材の延性を低下させてしまう元素である。線材のO含有量が0.0070%を超えると、ねじり特性の低下が著しくなる。そこで、線材のO含有量は0.0070%以下に規制することとした。O含有量の上限は0.0050%以下であることが好ましい。O含有量は低いほど良く、Oは線材に含有しなくてもよい。O含有量を0.0005%以上、又は0.0010%以上としてもよい。O含有量を0.0045%以下、又は0.0040%以下としてもよい。
(B)線材の組織について
次に、本実施形態に係る線材の金属組織について説明する。なお、以下に説明される線材の金属組織に関する要件は、線材1の表層部11及び中心部12の両方において満たされる必要がある。
線材の表層部及び中心部は、主たる組織はパーライト組織であり、線材の横断面において面積率で45%以下がフェライト組織、非パーライトかつ非フェライト組織が面積率で5%以下であり、パーライト組織中のラメラフェライトの結晶方位の角度差2°以上15°未満となる亜粒界密度ρ1が70/mm≦ρ1≦600/mmであり、全組織でのフェライト結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界密度ρ2が200/mm以上となる金属組織を有する必要がある。なお「主たる組織」とは、金属組織において最も大きな面積率を占める組織を意味する。「面積率」とは、線材の長さ方向に直角な横断面において測定される面積率を意味し、その測定方法は後述される。パーライトの量に関する上述の要件を換言すると、本実施形態に係る線材の表層部及び中心部は、パーライト組織を面積率で50%以上含む。
このような金属組織を表層部及び中心部において有する線材は、引張試験時の絞り値が高く、伸線加工性に優れる。また、このような金属組織を表層部及び中心部において有する線材によれば、これを直径1mm以下の鋼線に伸線加工し、これの引張強度2800MPa以上とした場合に、優れたねじり特性を有する鋼線が得られる。なお、線材の金属組織において、フェライト組織、パーライト組織を除く残部の主たる組織(非パーライトかつ非フェライト組織)はベイナイト、及びマルテンサイト等である。
ここでパーライト組織の粒界について補足説明する。
通常の技術常識においては、パーライトは、オーステナイトから生じる共析反応によってラメラフェライトとラメラセメンタイトが層状に配列したラメラ組織を呈し、その内部には階層的下部組織が形成されていると説明される。大角粒界で囲まれた領域をブロックと称し、そのブロックの中でラメラの配向が同じ領域をコロニーと称している。換言すると、フェライト組織の各粒内にセメンタイト板がいくつかの配向を持ちながら分散した組織がパーライトであると認識されている。
しかし、実際のパーライト組織はそれほど単純ではないと考えられる。図2にパーライト組織を単純化した一例の模式図を示す。図2に示される金属組織においては、旧γ粒界21(旧オーステナイト粒界)を起点として、湾曲した大角粒界22に囲まれたブロックが生成され、そのブロックの中に亜粒界23が形成されている。ブロックの中の結晶方位は多くのランダムな方位に変化しており、図2の組織では亜粒界23を示す鎖線の長さの合計を、亜粒界23の合計長さと認識できる。また、図2の模式図ではブロックの外周等を構成する大角粒界22の長さ(ブロックを囲む太い実線の長さ)の合計を、大角粒界22の長さと認識できる。なお、図2中に、ラメラ組織を構成するラメラセメンタイト31とラメラフェライト32との層状構造について拡大表示しておく。
なお、本実施形態に係る線材の「パーライト組織」は、いわゆる疑似パーライト組織(ラメラセメンタイト31が板状に成長することなく生成されたパーライト組織)を含むものとする。疑似パーライト組織は、SEMで観察した場合にラメラセメンタイト31がブロック内で分断されている様子が認められる点で、通常のパーライト組織とは相違する。しかし本実施形態では、パーライト組織と疑似パーライト組織とを同一のものとして取り扱う。
実際の鋼材ではパーライト組織に加えて他の組織も混在し、図2の組織よりも遙かに複雑な組織になっているので、本実施形態に係る線材では、亜粒界、大角粒界を以下のように定義付けている。パーライト組織中の、隣り合うラメラフェライトの結晶方位の角度差が2°以上15°未満となる境界面を亜粒界と称し、検査視野中のパーライトの単位面積当たりの亜粒界の長さの総計を亜粒界密度<ρ1>と称す。また、全組織での、隣り合うフェライト結晶方位の角度差が15°以上となる境界面を大角粒界と称し、検査視野の単位面積当たりの大角粒界の長さの総計を大角粒界密度<ρ2>と称す。大角粒界の特定に用いられるフェライトには、通常のフェライト組織と、パーライト組織を構成するラメラフェライトとの両方が含まれるものとする。なお、それぞれの測定方法については後述する。
<フェライト組織の面積率、及び非パーライトかつ非フェライト組織の面積率>
線材の横断面におけるフェライト組織の面積率は、線材中心部、表層部ともに45%以下である必要がある。線材中心部で45%超の場合には、フェライトが塊状かつ粗大に析出するために伸線加工性が低下する。また、線材表層部でフェライト組織の面積率が45%超の場合は、伸線加工後のねじり回数が低下する。これは表層部のフェライト部に変形が集中するためと考えられる。なお、フェライト組織の面積率の下限値を特に規定する必要はない。線材の中心部又は表層部において、フェライト組織の面積率が0%であってもよい。線材の中心部又は表層部において、フェライトの面積率を43%以下、40%以下、35%以下、又は30%以下としてもよい。線材の中心部又は表層部において、フェライトの面積率を10%以上、15%以上、20%以上、又は27%以上としてもよい。
また、非フェライトかつ非パーライト組織の面積率は5%以下である必要がある。換言すると、フェライト組織及びパーライト組織の合計の面積率が95%超である必要がある。非フェライトかつ非パーライト組織が5%超となった場合、伸線加工中に非フェライトかつ非パーライト組織を起点としたき裂が形成されやすく伸線加工性が低下する。なお、非フェライトかつ非パーライト組織の面積率の下限値を特に規定する必要はない。線材の中心部又は表層部において、非フェライトかつ非パーライト組織の面積率が0%であってもよい。即ち、フェライト組織及びパーライト組織の合計の面積率が100%であってもよい。非フェライトかつ非パーライト組織の面積率を4%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下(即ち、フェライト組織及びパーライト組織の合計の面積率を96%超、97%超、98%超、又は99%超)としてもよい。非フェライトかつ非パーライト組織の面積率を1%以上、又は2%以上(即ち、フェライト組織及びパーライト組織の合計の面積率を99%未満、又は98%未満)としてもよい。
<パーライト組織中のラメラフェライト結晶方位の角度差2°以上15°未満となる亜粒界の密度ρ1>
線材の中心部及び表層部において、亜粒界密度ρ1(パーライト組織中のラメラフェライトの結晶方位の角度差2°以上15°未満となる亜粒界の密度)は、70/mm〜600/mmである必要がある。このような金属組織を有する線材であることによって、伸線加工後に引張強度2800MPa以上であり、且つねじり特性に優れる鋼線が安定して得られる。線材の中心部及び表層部において、亜粒界密度を70/mm以上とすることにより、伸線加工後の鋼線の強度のばらつきを抑制でき、ねじり試験中の変形の局在化を低減できるため、高強度の鋼線であっても良好なねじり特性を得ることができる。逆に線材の中心部及び表層部において亜粒界密度が70/mm未満であると、伸線加工後に得られる鋼線の引張強度が2800MPa以上ではねじり特性が向上しない。また、パーライト変態温度が600℃未満の場合、前述のようにねじり特性が低下する傾向があり、この時の線材の中心部及び表層部における亜粒界密度が600/mm超であったため、これの上限を600/mmとすることが好ましい。このため、線材の中心部及び表層部において、パーライト組織中のラメラフェライトの結晶方位の角度差2°以上15°未満となる亜粒界の密度は、70/mm〜600/mmの範囲内とする。線材の表層部又は中心部において、亜粒界密度は、好ましくは100/mm以上とし、より好ましくは120/mm以上とする。線材の表層部又は中心部において、亜粒界密度を150/mm以上、又は180/mm以上としてもよい。線材の表層部又は中心部において、亜粒界密度を550/mm以下、500/mm以下、400/mm以下、又は350/mm以下としてもよい。
線材の表層部及び中心部において、亜粒界密度ρ1は、下記式1を満たすことが好ましい。式1における(C)は、線材の化学組成における、単位質量%でのC含有量である。
220×(C)+100<ρ1<220×(C)+300:式1
線材の化学組成におけるC含有量が大きいほど、線材の表層部及び中心部におけるフェライト組織の面積率が小さくなり、パーライト組織の面積率が大きくなる。パーライト組織の面積率が大きくなるほど、セメンタイトの成長距離が大きくなり、パーライト組織中に亜粒界が導入されやすくなると考えられる。そのため本発明者らは、亜粒界密度の好ましい範囲は線材の化学組成におけるC含有量に依存すると考えた。本発明者らの知見によれば、線材の表層部及び中心部において亜粒界密度が上記式1を満たす場合には、線材の捻回値のばらつきが小さくなることにより、ねじり特性が一層向上される。
<鋼材組織中のフェライトの結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界の密度ρ2>
線材の表層部及び中心部において、大角粒界密度ρ2(フェライト結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界の密度)は、200/mm以上である必要がある。大角粒界密度が十分に大きい場合、線材の延性が高く、伸線加工中の粗大なき裂の形成を抑制できるので、伸線加工性が向上する。逆に線材の表層部及び中心部において大角粒界密度が200/mm未満であると、伸線加工性が低下する。このため、線材の表層部及び中心部において、フェライト結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界の密度は、200/mm以上の範囲内とする。線材の表層部又は中心部において、大角粒界密度は、好ましくは230/mm以上とする。線材の表層部又は中心部における大角粒界密度の上限は特に定めないが、大角粒界密度を500/mm以上とすることは製造上困難であるため、線材の表層部又は中心部における大角粒界密度の上限を500/mmとすることが好ましい。線材の表層部又は中心部における大角粒界密度を220/mm以上、250/mm以上、又は280/mm以上としてもよい。線材の表層部又は中心部における大角粒界密度を400/mm以下、380/mm以下、又は350/mm以下としてもよい。
(C)評価方法について
次に、本実施形態に係る線材の金属組織の各条件について、測定方法を説明する。
<組織の面積率>
線材の横断面(すなわち線材の長さ方向に直角な切断面)を鏡面研磨した後、ピクラールで腐食し、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて倍率2000倍で表層部と中心部の任意の位置におけるそれぞれ10箇所を観察し、写真撮影する。1視野あたりの面積は、2.7×10−3mm(縦0.045mm、横0.060mm)とする。
次いで、得られた各写真に透明シート(例えばOHP(Over Head Projector)シート)を重ねる。この状態で、各透明シートにおける「フェライト組織」に色を塗る。次いで、各透明シートにおける「色を塗った領域」の面積率を画像解析ソフトにより求め、その平均値をフェライト組織の面積率の平均値として算出する。このようにしてフェライト面積率を求めることができる。次いで、別の透明シートに「パーライト組織以外、フェライト組織以外である組織と重なる領域」に色を塗り、その面積率を求める。以上の手法によって非パーライトかつ非フェライト組織の面積率を求めることができる。なお、フェライト組織やパーライト組織は等方的な組織であることから、線材の横断面における組織の面積率は、線材の組織の体積率と同じである。パーライト組織の面積率は、フェライト面積率と、非パーライトかつ非フェライト面積率の和を100面積%から引くことで算出できる。
<パーライト組織中の亜粒界密度および全組織中の大角粒界密度>
線材の横断面(すなわち長さ方向に直角な切断面)を鏡面研磨した後、コロイダルシリカで研磨し、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて倍率400倍で線材表層部(表面から深さ150〜400μmの範囲)および中心部において各4視野を観察し、EBSD測定(電子線後方散乱回折法による測定)を行う。1視野あたりの面積は、0.0324mm(縦0.18mm、横0.18mm)とし、測定時のステップは0.3μmとする。
次いで、得られた各測定視野における結果について、2°以上15°未満の亜粒界の持つラインの全長、及び15°以上の大角粒界を持つラインの全長を測定する。たとえば、OIM analysis(OIM:Orientation Imaging Microscopy)を用いることで亜粒界の持つラインの総長さ、および、大角粒界の持つラインの総長さを得ることができる。亜粒界はパーライト組織の部分にのみ存在するので、各測定視野において得られた亜粒界の持つラインの全長を、各測定視野に含まれるパーライト面積で除した値を、各測定視野における亜粒界密度ρ1と定義する。
大角粒界はフェライト組織とパーライト組織の境界にも存在するので、各測定視野において得られた大角粒界の持つラインの全長を、各測定視野の面積で除した値を、各測定視野における大角粒界密度ρ2と定義する。
表層部及び中心部それぞれの解析結果の平均値を、表層部及び中心部のパーライト組織中のフェライト結晶方位の角度差2°以上15°未満の亜粒界密度ρ1、並びに、表層部及び中心部の全組織中のフェライト結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界密度ρ2とする。なお、EBSD結果はノイズに大きく左右されるため、average CI(confidence index)は0.60以上の結果を用いることとし、またCIが0.10以下のものはノイズとして除去することとする。なお、CIの0.10以下の除去は、OIM analysis内で可能である。
上述したように、亜粒界密度ρ1及び大角粒界密度ρ2の値は線材表層部(表面から深さ150〜400μmの範囲)において前述の範囲であるだけでなく、線材中心部においても同様の範囲であることが必要となる。線材中心部での亜粒界密度ρ1が70/mm〜600/mm、大角粒界密度ρ2が200/mm以上の範囲であっても表層部が上述の範囲でない場合や、線材表層部が上述の範囲であっても中心部が上述の範囲でない場合には線材として目的の求める特性が得られない。線材表層部のρ1、ρ2および線材中心部のρ1、ρ2が上述の範囲内であることが確認できれば、線材全体でρ1及びρ2が上述の範囲に入っていると認識できる。
(D)製造方法について
本実施形態に係る線材の製造方法では、線材のねじり特性を向上するために、パーライト変態時の種々の条件を適正化し、組織を制御する。
本実施形態に係る線材の上記要件を満たす線材は、その製造方法によらず、本実施形態に係る線材の効果を得ることが出来るが、例えば、下記に示す製造方法によって、本実施形態に係る線材を製造すればよい。なお、下記の製造プロセスは一例であり、下記以外のプロセスによって化学組成及びその他の要件が本実施形態に係る線材の範囲である線材を得られた場合であっても、その線材が本発明に含まれることはいうまでもない。
まず、上記成分となるように鋼を溶製した後、連続鋳造によって鋼片を製造し、熱間圧延を行う。なお、鋳造後、分塊圧延を行ってもよい。得られた鋼片を熱間圧延する際には、鋼片が1000〜1250℃になるように加熱し、仕上げ温度を900〜1000℃としてφ5.5〜7.0mmに熱間圧延する。
熱間圧延前の鋼片の加熱温度は1000℃以上、1250℃以下とする。鋼片の加熱温度が1000℃未満では熱間圧延の際の反力が上昇し、鋼片の加熱温度が1250℃超では脱炭が進行するからである。
熱間圧延の仕上げ圧延温度は900℃以上とする。仕上げ圧延温度が900℃未満では仕上げ圧延の反力が上昇し形状精度が悪くなるからである。一方で、仕上げ圧延温度は1000℃以下とする。1000℃超で熱間圧延を行うとオーステナイト粒径が大きくなり、パーライト変態後の大角粒界密度が低下するからである。
熱間圧延後には、以下の四段階の冷却を施して、フェライト面積率や亜粒界密度、大角粒界密度を調整する。一次冷却では、早い冷却速度で冷却を行うことでオーステナイトの粒成長を抑え、微細なオーステナイト組織を生成させることを目的とする。二次冷却では、一次冷却時の線材表層部と中心部に存在する温度差を小さくするために除冷を行い、線材表層部から中心部まで均一な温度にすることを目的とする。三次冷却では、線材表層部から中心部までできるだけ均一に冷却でき、かつフェライト変態を抑制できる冷却速度で、狙いのパーライト変態温度まで冷却することを目的とする。四次冷却では、線材表層部から中心部までをできるだけ均一にパーライト変態させるために除冷を行って、亜粒界密度、大角粒界密度を目的の範囲になるようにパーライト変態を進行させることを目的とする。詳細を以下に示す。なお、以下に記載される一次〜四次冷却の平均冷却速度とは、一次〜四次冷却の開始から終了までの線材温度の低下量を、一次〜四次冷却の開始から終了までの時間で割った値である。一次〜四次冷却の到達温度とは、一次〜四次冷却の終了時の線材の温度である。
熱間圧延後には、水冷によって、平均冷却速度50〜200℃/秒の範囲内で、830〜870℃まで一次冷却を行う。なお、一次冷却の開始及び終了とは、冷媒(水)の吹き付けの開始及び終了のことである。
粒成長速度の大きい870℃以上の温度域での平均冷却速度が50℃/秒未満であり、この温度域に存在する時間が長い場合、オーステナイトの粒成長が促進されるので、パーライト変態後には大角粒界密度が低下することになる。一次冷却における平均冷却速度の上限はないが、製造設備の制約上、200℃/秒超の平均冷却速度は困難であるので、200℃/秒以下を一次冷却における平均冷却速度の上限とした。
一次冷却での到達温度が830℃未満の場合、表層部でのみフェライト変態が多量に進行する恐れがあり、表層部のフェライト面積率が増加し、45%以下に制御することが困難になる。そのため、一次冷却での到達温度を830℃以上とする。870℃を超える温度で冷却を停止すると、オーステナイト粒が大きく成長し、パーライト変態後の大角粒界密度が低下する。そのため、一次冷却での到達温度を870℃以下とした。
その後、大気による空冷によって、平均冷却速度5℃/秒未満で、790℃以上820℃以下の範囲内まで二次冷却を行う。なお、二次冷却の開始の時点は、一次冷却における冷媒の吹き付けの終了の時点に等しく、二次冷却の終了の時点は、三次冷却における冷媒の吹き付けの開始の時点に等しい。二次冷却は、一次冷却時に生じる線材の表層部と中心部との温度差を小さくし、線材表層部から中心部までのパーライト変態温度を均一にするための冷却である。
二次冷却において5℃/秒以上の平均冷却速度とされた場合、表層部と中心部との温度差が残存してしまい、パーライト変態後には線材の表層の大角粒界密度と亜粒界密度とを制御できたとしても、線材の中心部での大角粒界密度が低下する。そのため、二次冷却での平均冷却速度は5℃/秒未満とする。
二次冷却の到達温度が790℃未満では、フェライト変態が生じてフェライト面積率が向上する可能性がある。そのため、二次冷却の到達温度は790℃以上とする。一方、820℃超で二次冷却を止めると、線材の表層部と中心部との間のパーライト変態温度までの温度差が大きくなり、三次冷却時に表層部と中心部との間で再度温度差が生じる。そのため、二次冷却の到達温度は820℃以下とした。Siの含有量が多い鋼種では、Ac1温度が高温側に移行するので、二次冷却での到達温度が特に重要となる。
なお、二次冷却時間(二次冷却の開始と終了との間の経過時間)を5秒以上12秒以内とすることが望ましい。12秒超の二次冷却時間をかけると、オーステナイト粒の粒成長が促進されるためである。一方で、5秒以内の二次冷却時間では、線材中の温度差が残存する可能性がある。
その後、衝風冷却によって、平均冷却速度20℃/秒超30℃/秒以下で、600℃以上620℃以下の範囲内まで三次冷却を行う。なお、三次冷却の開始及び終了とは、大気の吹き付けの開始及び終了のことである。三次冷却ではフェライト変態を抑制できる冷却速度で、最適な亜粒界密度、大角粒界密度を得られるパーライト変態温度まで冷却を行う。
三次冷却の平均冷却速度が20℃/秒以下では、フェライト変態が生じてフェライト面積率が過剰となる。そのため、平均冷却速度は20℃/秒超とする。一方で、30℃/秒超の平均冷却速度で三次冷却を施した場合、線材表層部のみが狙いの温度まで冷却され、線材中心部の温度が過剰な状態で四次冷却が開始されてしまう。そのため、平均冷却速度は30℃/秒以下とする。
三次冷却での到達温度が600℃未満の場合、パーライト組織が過剰に高強度化して捻回特性が低下する。そのため、三次冷却の到達温度は600℃以上とする。一方、三次冷却の到達温度が620℃超である場合、パーライト変態温度が高くなり、大角粒界密度と亜粒界密度が低下するとともにパーライト変態後の引張強度も低下する。そのため、三次冷却の到達温度は620℃以下とした。
その後、大気による空冷によって平均冷却速度10℃/秒以下で550℃以下まで四次冷却を行う。なお、四次冷却の開始の時点は、三次冷却における大気の吹き付けの終了の時点に等しい。四次冷却の終了の時点は、空冷を中止した時点、即ち線材に再加熱、又は冷媒の吹き付けが開始された時点である。ただし、線材の温度が550℃以下になるまで空冷を実施した場合、線材の温度が550℃になった時点を四次冷却の終了の時点とみなす。四次冷却では、パーライト変態中の線材断面内の温度差を小さくすることで、表層部から中心部まで均一な大角粒界密度、亜粒界密度を有する線材を得ることを目的とする。
四次冷却における平均冷却速度が10℃/秒超の場合、表層の温度変化が大きく、亜粒界密度が低下する。そのため、四次冷却における平均冷却速度は10℃/秒以下とする。四次冷却における平均冷却速度の下限は限定しないが、線材を放冷した場合の冷却速度は2℃/秒以上となることが通常である。そのため、2℃/秒を四次冷却における平均冷却速度の下限としてもよい。
四次冷却の到達温度が550℃超の場合、パーライト変態が終了しない可能性がある。そのため、四次冷却の到達温度は550℃以下とする。なお、550℃以下の温度域での冷却速度が組織に与える影響は軽微であるので、四次冷却を550℃以下の温度まで実施した後に水冷などの加速冷却を実施してもよい。後述する実施例においては、本発明例は四次冷却により550℃以下まで冷却した後に放冷で室温まで冷却されているが、四次冷却の完了後に他の冷却手段により冷却した場合でも同様の組織が形成される。
(E)任意成分について:
本実施形態の線材は、残部のFeの一部に代えて、必要に応じて、Al,Cr,V,Ti,Nb,B,Ca,Mgからなる群から選択される少なくとも1種または2種以上の元素を含有させてもよい。ただし、これら任意元素を含むことなく本実施形態に係る線材はその課題を解決することが出来るので、これら任意元素の下限値は0%である。以下、任意元素であるAl,Cr,V,Ti,Nb,B,Ca,Mgの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。任意成分についての%は質量%である。
Al:0〜0.050%
本実施形態の線材においてAlは含有させなくても良い。Alは、AlNとなって析出し、フェライト結晶方位の角度差15°以上の大角粒界密度を増加させることができる元素である。効果を確実に得たい場合には0.010%以上のAlを含有させることが好ましい。一方で、Alは、硬質な酸化物系介在物を形成しやすい元素であるため、線材のAl含有量が0.050%を超えると、粗大な酸化物系介在物が著しく形成されやすくなり、ねじり特性の低下が顕著になる。したがって、線材のAlの含有量の上限は0.050%とする。Al含有量の好ましい上限は0.040%以下であり、より好ましい上限は0.035%以下であり、さらに好ましい上限は0.030%以下である。
Cr:0〜1.00%
本実施形態の線材においてCrは含有させなくても良い。Crは、Mnと同様に、鋼の焼入れ性を高めて、鋼を高強度化する元素である。この効果を確実に得るためには、0.05%以上のCrを含有させることが好ましい。一方、Crの含有量が1.00%を超えると、ねじり特性が劣化する。そのため、Crの含有量は1.00%以下である。なお、鋼の焼入れ性を上げる場合、Crは0.10%以上含有させるのが好ましく、0.30%以上含有させれば一層好ましい。Crの上限は、0.90%以下とすることが好ましく、0.80%以下であればより一層好ましい。
V:0〜0.15%
本実施形態の線材においてVは含有させなくても良い。Vは、NやCと結合して、炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成し、それらのピンニング効果によって熱間圧延時にオーステナイト粒を微細化する効果があり、鋼のねじり特性を改善する効果がある。この効果を確実に得るためには0.005%以上のVを含有させることが好ましい。ねじり特性を改善する観点からは、Vの含有量を0.02%以上とするのが好ましく、0.03%以上含有させることが一層好ましい。一方、Vの含有量が0.15%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、鋼塊や鋳片を鋼片に分塊圧延する工程で鋼片に割れが生じるなど鋼の製造性に悪影響を及ぼすので、V含有量は0.15%以下とする。Vの含有量は0.10%以下であることが好ましく、さらには0.07%以下であることが一層好ましい。
Ti:0〜0.050%
本実施形態の線材においてTiは含有させなくても良い。Tiは、NやCと結合して、炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成し、それらのピンニング効果によって熱間圧延時にオーステナイト粒を微細化する効果があり、鋼のねじり特性を改善する効果がある。この効果を確実に得るために、Tiは0.002%以上含有させることが好ましい。ねじり特性を改善する観点から、Tiの含有量を0.005%以上とするのが好ましく、0.010%以上のTiを含有させることが一層好ましい。一方、Tiの含有量が0.050%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、鋼塊や鋳片を鋼片に分塊圧延する工程で鋼片に割れが生じるなど鋼の製造性に悪影響を及ぼす。よって、Tiの含有量は0.050%以下とする。またTiの含有量は0.025%以下であることが一層好ましい。
Nb:0〜0.050%
本実施形態の線材においてNbは含有させなくても良い。Nbは、NやCと結合して、炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成し、それらのピンニング効果によって熱間圧延時にオーステナイト粒を微細化する効果があり、鋼のねじり特性を改善する効果がある。この効果を確実に得るためには、Nbは0.002%以上含有させることが好ましい。ねじり特性を改善する観点から、Nbの含有量を0.003%以上とするのがより好ましく、0.004%以上のNb含有させることが一層好ましい。一方、Nbの含有量が0.050%を超えると、その効果が飽和するだけでなく、鋼塊や鋳片を鋼片に分塊圧延する工程で鋼片に割れが生じるなど鋼の製造性に悪影響を及ぼすので、Nbの含有量は0.050%以下とする。また、Nbの含有量は0.030%以下であることが一層好ましい。
B:0〜0.0040%
本実施形態の線材においてBは含有させなくても良い。Bは、微量含有されることで鋼のフェライト組織を低減する効果があり、効果を確実に得たい場合には0.0001%以上のBを含有させることが好ましい。0.0040%超のBを含有させても、効果が飽和するだけでなく、粗大な窒化物が生成するので、ねじり特性が低下する。したがって、含有させる場合のBの含有量は0.0040%以下とする。パーライト組織の面積率を増やしたい場合には、Bの含有量を0.0004%以上とすることが好ましく、0.0007%以上であればより一層好ましい。なお、ねじり特性を向上させるためのBの含有量は0.0035%以下とすることが好ましく、0.0030%以下であればより一層好ましい。
Ca:0〜0.0050%
本実施形態の線材においてCaは含有させなくても良い。Caは、MnS中に固溶し、MnSを微細に分散する効果がある。MnSを微細に分散させることで、MnSに起因にした伸線加工中の断線を抑制できる。Caによる効果を確実に得るためには、Caは0.0002%以上含有させることが好ましい。より高い効果を得たい場合には、0.0005%以上のCaを含有させれば良い。しかし、Caの含有量が0.0050%を超えると、その効果は飽和する。さらに、Caの含有量が0.0050%を超えると、鋼中の酸素と反応して生成する酸化物が粗大となり、かえって伸線加工性の低下を招く。そのため、含有させる場合の適正なCaの含有量は、0.0050%以下である。Caの含有量は0.0030%以下であることが好ましく、0.0025%以下であれば一層好ましい。
Mg:0〜0.0040%
本実施形態の線材においてMgは含有させなくても良い。Mgは脱酸元素であり、酸化物を生成するが、硫化物も生成することでMnSとの相互関係を有する元素であり、MnSを微細に分散させる効果がある。この効果によりMnSに起因した伸線加工中の断線を抑制できる。Mgによる効果を確実に得るためには、Mgは0.0002%以上含有させることが好ましい。より高い効果を得たい場合には、0.0005%以上のMgを含有させれば良い。しかし、Mgの含有量が0.0040%を超えると、その効果は飽和するし、MgSを大量に生成し、かえって伸線加工性の低下を招く。したがって、含有させる場合の適正なMgの含有量は、0.0040%以下である。Mgの含有量は0.0035%以下であることが好ましく、0.0030%以下であれば一層好ましい。
化学組成の残部は「Fe及び不純物」を含む。「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから鋼材に混入するものを指す。
本実施形態に係る線材の直径は特に限定されないが、現在市場に流通する線材の直径は3.5〜7.0mmとされることが通常であるので、これを本実施形態に係る線材の直径の上下限値としてもよい。線材の直径を3.5mm以上とした場合、線材製造時の熱間圧延の負担を軽減することができて好ましい。線材の直径を7.0mm以下とした場合、線材の伸線加工時の伸線ひずみ量を抑制することが出来るので好ましい。
本発明の別の態様に係る鋼線は、本実施形態に係る線材を伸線加工することによって得られる。鋼線の直径は、用途を考慮すると、0.5〜1.5mmとされることが通常である。本実施形態に係る鋼線は、原材料である本実施形態に係る線材の化学組成、金属組織の構成、亜粒界密度ρ1、及び大角粒界密度ρ2が上述の範囲内とされているので、優れた引張強さ及びねじり特性を有する。
なお、本実施形態に関する鋼線は、歪量が非常に大きい伸線加工を経て製造されるので、その金属組織は著しい変形を受けている。例えば、本実施形態に係る鋼線の断面の拡大写真を見ると、粒界に囲まれた相は著しく潰れており、その種類が判別できない。また、亜粒界及び大角粒界の存在を特定することも著しく困難である。即ち、通常の組織特定方法(例えば、金属組織写真の撮影、及びEBSDによる結晶構造解析など)によって本実施形態に係る鋼線の金属組織、その他構成の特定をすることは極めて困難である。本実施形態に係る鋼線の金属組織をその構造又は特性により直接特定することは不可能であるか、又はおよそ実際的でない。
本発明の別の態様に係る鋼線の製造方法は、本実施形態に係る線材を伸線加工する工程を備える。伸線加工は、最終的に得られる鋼線の直径が0.5〜1.5mmとなるような減面率で実施される。本実施形態に係る線材の化学組成、金属組織の構成、亜粒界密度ρ1、及び大角粒界密度ρ2が上述の範囲内とされているので、これを用いる本実施形態に係る鋼線の製造方法は、断線回数を極めて低い水準に抑制することができ、また、優れた引張強さ及びねじり特性を有する鋼線を得ることが出来る。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
表1、表2に示す化学組成の鋼を溶製し、以下の方法で線材を作製した。なお、表1、表2中の「−」の表記は、当該元素の含有量が不純物レベルであり、実質的に含有されていないと判断できることを示す。表1及び表2に示された鋼の化学組成の残部は鉄及び不純物である。
まず、表1に示す化学組成の鋼Aを転炉によって溶製した後、通常の方法での分塊圧延によって、122mm角のビレットを得た。次に鋼片が1050〜1150℃になるように加熱した後、仕上げ温度900〜1000℃の範囲で、φ6mmに熱間圧延した。
仕上げ圧延後の調整冷却は、表3−1〜表3−3に示された(A1)〜(A21)に示す条件で冷却を行った。
具体的には、(A1)〜(A7)に関しては水冷によって平均冷却速度50〜200℃/秒の範囲内で、830〜870℃に冷却(1次冷却)した後、その後、大気による風冷によって平均冷却速度5℃/秒未満で790℃以上820℃以下の範囲内まで空冷(二次冷却)した。その後、20℃/秒超30℃/秒以下で600〜620℃まで冷却(三次冷却)を施し、550℃以下まで10℃/秒以下で冷却(四次冷却)し、その後、放冷により室温まで冷却を行った。
(A8)〜(A17)に関しては、上記の冷却条件と異なる条件で四種類の調整冷却を行い、線材を得た。なお、表3−1中のアンダーラインが付された値は、本発明に係る線材の製造条件における不適切な値である。
(A18)〜(A21)に関しては、四種類の調整冷却を実施せず、表3−2〜表3−4に示す条件で冷却を行った。なお、これら表における「一次冷却」等の用語は、単に冷却段階を区別するためのものであり、本発明の製造方法に含まれる一次冷却〜四次冷却とは異なる。
具体的には、(A18)に関しては、本発明の製造方法における三次冷却及び四次冷却に代わり、550℃のソルト浴への浸漬を実施した。
(A19)に関しては、上述の熱間圧延終了後の線材に対して、950℃への再加熱及び60秒の温度保持を実施し、この温度保持終了の直後に550℃のソルト浴への浸漬を実施した。
(A20)に関しては、一次冷却を実施後に送風にて冷却を施し、平均1.0℃/秒で680℃まで冷却後に放冷に切り替えて550℃以下まで冷却を施した。
(A21)に関しては、一次冷却を実施後に衝風冷却を施して10℃/秒で700℃まで線材を冷却し、その後空冷にて5℃/秒で550℃以下まで冷却を施した。
また、表2に示す化学組成の鋼a〜zから、表3−1の(A1)と同様の方法で熱間圧延線材を作成した。その後、乾式伸線加工、めっき処理、湿式伸線加工を実施して、線径0.5mmの鋼線を得た。表2においてアンダーラインが付された値は、本発明の望ましい範囲外である。
Figure 2018212327
Figure 2018212327
以上のようにして得られた試験番号A1〜A21および試験番号1〜26の線材について、引張強度、絞り値、フェライト面積率、非パーライトかつ非フェライト面積率、パーライト組織中の亜粒界密度ρ1(パーライト組織中のラメラフェライトの結晶方位の角度差2°以上15°未満となる亜粒界の密度)、大角粒界密度ρ2(観察組織全体においてフェライト結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界の密度)を求めた。なお、各線材のパーライト面積率は、100%からフェライト面積率及び非パーライトかつ非フェライト面積率を除すことによって得られる値である。
それらの結果を以下の表4−1〜表4−3、及び表5−1〜表5−3に示す。表4−1、表4−2、表5−1、及び表5−2中のアンダーラインが付された値は、本発明の範囲外である値である。表4−3及び表5−3中のアンダーラインが付された値は、本発明の合否基準に満たない値である。
線材の表層部及び中心部におけるフェライト組織の面積率、非フェライトかつ非パーライト組織の面積率、亜粒界密度ρ1、大角粒界密度ρ2、直径6mmの線材を直径0.5mmまで伸線した際の断線回数、伸線加工前の線材及び伸線加工後の鋼線の引張強さ(鋼線強度)、並びに伸線加工後の鋼線のねじり特性(ねじり回数、ねじり回数ばらつき、及びデラミネーション有無)は、それぞれ下記に記載する方法によって調査した。
〈1〉線材のフェライト組織の面積率、非フェライトかつ非パーライト組織の面積率:
線材の横断面を鏡面研磨した後、ピクラールで腐食し、FE−SEMを用いて倍率2000倍で線材表層部および中心部における任意の10箇所を観察し、写真撮影した。1視野あたりの面積は、2.7×10−3mm(縦0.045mm、横0.060mm)とする。得られた各写真にOHPシートを重ね、各透明シートにおける「フェライト組織」および「非パーライトかつ非フェライト組織と重なる領域」に色を塗った。次いで、各透明シートにおける「色を塗った領域」の面積率を画像解析ソフトにより求め、その平均値をそれぞれフェライト組織および非パーライトかつ非フェライト組織の面積率の平均値として算出した。
〈2〉線材の亜粒界密度ρ1および大角粒界密度ρ2:
線材の横断面を鏡面研磨した後、コロイダルシリカで研磨し、FE−SEMを用いて倍率400倍で線材表層部と中心部における各4箇所を観察し、TSL(TexSEM Laboratories)社製のEBSD測定装置を用いて解析を行った。測定時の領域は180×180μmとし、ステップは0.3μmとした。次いで、得られた各結果について、OIM analysisを用いて2°以上15°未満の角度差を持つ亜粒界のラインの全長と、15°以上の角度差を持つ大角粒界のラインの全長をそれぞれ測定した。2°以上15°未満の角度差を持つ亜粒界のラインの全長をパーライト面積率の平均値で除することで亜粒界密度を求め、15°以上の角度差を持つ大角粒界のラインの全長を1視野の面積で除することで大角粒界密度を求めた。
〈3〉線材の伸線加工性
伸線加工を50kgの各線材に行い、伸線加工中の断線回数を記録した。なお、断線回数が3回以上の場合、3回目の断線以降の伸線加工を中止した。そして、50kgの線材を直径6.0mmから直径0.5mmまで伸線した際の断線回数が0回の場合に、伸線加工性が良好と評価し、断線回数が1回以上の場合に、伸線加工性が悪いと評価した。なお、伸線加工を中止した線材に関しては、明らかに鋼線の材料として不適切なものであると判断し、その後の評価試験を実施しなかった。評価されなかった項目には、符号「−」を記載した。
〈4〉線材および伸線加工後の鋼線の引張強度:
線材および鋼線を200mm長さに切断し、上下50mmをくさびチャックもしくはエアーチャックで固定し引張試験を行った。得られた最大荷重を断面積で除することで引張強さを算出した。その後、線材の引張試験後のもっとも線径の細くなった箇所の線径を測定し、引張試験前後の断面積の変化量を引張試験前の断面積で除し、100%をかけることで絞り値を算出した。
自動車用タイヤの補強材であるワイヤーに用いられる鋼線は、引張強度が2800MPa以上であることが好ましいため、引張強度2800MPa以上を合格品と評価した。なお、線材の引張強度に関しては特に合否基準を設けなかった。
〈5〉伸線加工後の鋼線のねじり特性:
ねじり試験は、線径(直径)の100倍の長さの鋼線を15rpmで断線するまでねじり、デラミネーションが生じたかどうかをトルク(ねじりに対する抵抗力)曲線で判定し、ねじり回数を測定した。トルク曲線での判定は、断線前に急激にトルクが減少した場合にデラミネーションが生じたと判断する方法により行った。ねじり試験は、各鋼線について10本ずつ行い、1本もデラミネーションが発生せず、10本の鋼線のねじり回数の平均値が23回以上の場合、ねじり特性が良好であると評価した。
また、上述の10回のねじり試験におけるねじり回数のばらつきが小さい場合、ねじり特性が一層良好であると判断することが出来る。そこで、10本の鋼線のねじり回数のばらつき(10本の鋼線のねじり回数の最大値と上記平均値との差、及び10本の鋼線のねじり回数の最小値と上記平均値との差、のうち大きい方)を算出した。ばらつきが3回以下になる鋼線を、ねじり回数ばらつきが良好であると判断した。
ねじり回数の平均値、デラミネーション、及びねじり回数ばらつきの全てが良好と判断された鋼線は、ねじり特性が非常に良好である。ただし、鋼線のねじり回数ばらつきが3回超であったとしても、その他のねじり特性評価に関して良好と判断された鋼線は、その想定される用途に鑑みても、ねじり特性が良好であると言える。
以上それぞれ評価した結果を以下の表にまとめて記載する。
Figure 2018212327
Figure 2018212327
Figure 2018212327
Figure 2018212327
Figure 2018212327
Figure 2018212327
Figure 2018212327
Figure 2018212327
Figure 2018212327
Figure 2018212327
表に示されるように、本発明例であるA1〜A7の試料は、いずれも本発明要件を満足し、かつ鋼材の製造条件が適切であることから、伸線加工後の強度が2800MPa以上で、ねじり回数が23回以上であるとともにデラミネーションが発生しておらず、問題のない線材であった。
これに対して、A8の試料では一次冷却における平均冷却速度が低く、オーステナイト粒径が粗大化したためにρ2が低下し伸線加工時に断線が発生し伸線加工性が悪かった。
A9の試料では一次冷却での到達温度が低いために表層でフェライト面積率が増加しねじり回数が低下した。
A10の試料では一次冷却での到達温度が高くオーステナイト粒径が粗大化したためにρ2が低下し断線が発生した。
A11の試料では二次冷却での時間が長く、オーステナイト粒径が粗大化したためにρ2が低下し断線が発生した。
A12の試料では二次冷却での到達温度が低いために、フェライト面積率が高く、伸線加工性が悪く、鋼線強度、ねじり特性ともに低かった。
A13の試料では三次冷却における平均冷却速度が小さく、フェライト変態が進行し、フェライト面積率が高くなって伸線加工性が悪く、鋼線強度、ねじり特性ともに低くなっている。
A14の試料では、三次冷却の到達温度が高く、高温でパーライト変態してρ1、ρ2共に低く、伸線加工時に断線が発生し、且つ、ねじり特性も悪かった。
A15の試料では三次冷却での到達温度が低く、ρ1が高くなりすぎたので、ねじり特性が悪かった。
A16の試料では四次冷却における平均冷却速度が高く、線材表層部でのρ1が低下しねじり試験時にデラミネーションが発生し、ねじり特性が悪かった。
A17の試料は、四次冷却において線材温度が表に示される温度になった時点で、空冷を中止して衝風冷却を開始する製造条件によって得られた。A17の試料では四次冷却での到達温度が高く、パーライト変態が終了しておらず非パーライトかつ非フェライト面積率が高いために伸線加工性が低下した。
A18の試料では、二次冷却後に線材を550℃のソルト浴に浸漬させたため、線材が550℃まで急速冷却された。その結果、A18ではρ1が高く、ねじり試験時にデラミネーションが発生し、ねじり特性が悪かった。
A19の試料では、線材の再加熱及び温度保持後に、線材を550℃のソルト浴に浸漬させたため、線材が550℃まで急速冷却された。その結果、A19ではρ1が高く、ねじり試験時にデラミネーションが発生し、ねじり特性が悪かった。
A20の試料では、熱間圧延後の冷却速度が遅く、高温でパーライト変態が生じた。パーライト変態温度が高かったので、A20ではρ1、ρ2ともに低く、伸線加工時に断線が発生し、且つ、ねじり特性も悪かった。
A21の試料では、二次冷却後に衝風冷却にて700℃まで線材を冷却しているため、線材の表層部が急速冷却され、表層部のρ1が高くなり、ねじり試験時にデラミネーションが発生し、ねじり特性が悪かった。
また、表に示す結果から、本発明例である試験番号1〜19、及び26の試料では化学組成が本発明の望ましい範囲を満足し、かつ線材の製造条件も適切であることから、伸線加工性が良好で、伸線加工後のねじり特性が良好であるとともに必要な引張強さも有している。
しかし、試験番号20の試料は、Cの含有量が低く、フェライト面積率が大きくなりすぎ、鋼線が強度不足だった。
試験番号21の試料は、Cの含有量が高く、鋼が過剰に硬化したので、伸線加工性が低下し、伸線加工中に断線が発生した。
試験番号22の試料は、Siの含有量が低いためにρ1が低く、ねじり試験時にデラミネーションが発生した。
試験番号23の試料は、Mnの含有量が高過ぎ、非フェライトかつ非パーライト組織が多いために伸線加工時に断線が発生した。
試験番号24の試料は、Siの含有量が低く、ρ1が低く、ねじり試験時にデラミネーションが発生した。
試験番号25の試料は、Mnの含有量が低く、ρ1が低く、ねじり試験時にデラミネーションが発生した。
表に示す結果から、C、Si、Mn、N、P、Sを先に説明した望ましい範囲に規定した線材であって、主たる組織がパーライトであり、フェライト組織が45%以下であり、非フェライトかつ非パーライト組織が5%以下であり、パーライト組織中のラメラフェライトの結晶方位の角度差2°以上15°未満となる亜粒界密度ρ1が70/mm≦ρ1≦600/mmであり、全体でのフェライト結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界密度ρ2が200/mm以上となることを満たす線材であるならば、伸線加工した後に高い引張強さが得られ、かつ伸線加工後のねじり試験時にデラミネーションが発生せずに安定してねじることができる鋼線を製造可能な、伸線加工性が良好である伸線加工用線材を提供できることが分かった。即ち、ワイヤー等の素材として好適な高い強度を有し、更に優れたねじり特性を有する鋼線を、伸線加工中の断線を抑制して安定して製造し得る伸線加工用線材を提供することができた。
1 線材
11 表層部
12 中心部
21 旧γ粒界
22 大角粒界
23 亜粒界
31 ラメラセメンタイト
32 ラメラフェライト
本発明は、線材、及び鋼線の製造方法に関する。
本願は、2017年5月18日に、日本に出願された特願2017−099227号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本発明は、自動車等のタイヤの補強材であるワイヤーや、アルミ送電線などの補強用ワイヤー、PC鋼線、橋梁等に用いられるロープ用ワイヤーなどに使用される高強度鋼線の素材として幅広く用いられる線材に関するものである。また、本発明は、この線材を用いた鋼線の製造方法に関するものである。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、太径のワイヤー等の素材としても好適な、高い強度と優れたねじり特性とを有する鋼線を、伸線加工中の断線を抑制して安定して製造し得る線材を提供することを課題とする。また、本発明は、高い強度と優れたねじり特性とを有する鋼線の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記の通りである。
(1)本発明の一態様に係る線材は、化学組成が、質量%で、C:0.30〜0.75%、Si:0.80〜2.00%、Mn:0.30〜1.00%、N:0.0080%以下、P:0.030%以下、S:0.020%以下、O:0.0070%以下、Al:0〜0.050%、Cr:0〜1.00%、V:0〜0.15%、Ti:0〜0.050%、Nb:0〜0.050%、B:0〜0.0040%、Ca:0〜0.0050%、及びMg:0〜0.0040%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、前記線材の表面から深さ150〜400μmの範囲である表層部と、前記線材の中心軸から前記線材の直径の1/10の範囲である中心部との両方において、主たる組織がパーライト組織であり、前記線材の長さ方向に直角な横断面におけるフェライト組織の面積率が45%以下であり、前記横断面における非パーライトかつ非フェライト組織の面積率が5%以下であり、前記パーライト組織中の、ラメラフェライトの結晶方位の角度差2°以上15°未満となる亜粒界の密度ρ1が70/mm≦ρ1≦600/mmであり、全組織中での、フェライト結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界の密度ρ2が200/mm以上である。
(2)上記(1)に記載の線材では、前記化学組成が、質量%で、Al:0.010〜0.050%を含有してもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の線材では、前記化学組成が、質量%で、Cr:0.05〜1.00%を含有してもよい。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の線材では、前記化学組成が、質量%で、V:0.005〜0.15%、Ti:0.002〜0.050%、及びNb:0.002〜0.050%からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有してもよい。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の線材では、前記化学組成が、質量%で、B:0.0001〜0.0040%を含有してもよい。
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の線材では、前記化学組成が、質量%で、Ca:0.0002〜0.0050%、及びMg:0.0002〜0.0040%からなる群から選ばれる1種又は2種を含有してもよい。
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の線材では、前記線材の前記表層部及び前記中心部において、前記亜粒界の前記密度ρ1が、下記式1を満たしてもよい。
220×(C)+100<ρ1<220×(C)+300:式1
前記式1における(C)は、前記線材の前記化学組成における質量%でのC含有量である。
(8)上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の線材では、前記線材の前記直径が3.5〜7.0mmであってもよい。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の線材は、鋼線の材料として用いられてもよい
10)本発明の別の態様に係る鋼線の製造方法は、上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載の線材を伸線加工して鋼線を得る工程を備え、前記鋼線の直径が0.5〜1.5mmである。
本発明の一態様に係る線材によれば、ワイヤー等の素材として好適な高い強度と優れたねじり特性を有する鋼線を、伸線加工中の断線を抑制して安定して製造でき、産業上極めて有用である。本発明の一態様に係る鋼線の製造方法は、ワイヤーの素材として好適な高い強度と優れたねじり特性を有する鋼線を、伸線加工中の断線を抑制して安定して製造できるので、産業上極めて有用である。

Claims (11)

  1. 線材であって、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.30%〜0.75%、
    Si:0.80〜2.00%、
    Mn:0.30〜1.00%、
    N:0.0080%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.020%以下、
    O:0.0070%以下、
    Al:0〜0.050%、
    Cr:0〜1.00%、
    V:0〜0.15%、
    Ti:0〜0.050%、
    Nb:0〜0.050%、
    B:0〜0.0040%、
    Ca:0〜0.0050%、及び
    Mg:0〜0.0040%
    を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
    前記線材の表面から深さ150〜400μmの範囲である表層部と、前記線材の中心軸から前記線材の直径の1/10の範囲である中心部との両方において、主たる組織がパーライト組織であり、前記線材の長さ方向に直角な横断面におけるフェライト組織の面積率が45%以下であり、前記横断面における非パーライトかつ非フェライト組織の面積率が5%以下であり、前記パーライト組織中の、ラメラフェライトの結晶方位の角度差2°以上15°未満となる亜粒界の密度ρ1が70/mm≦ρ1≦600/mmであり、全組織中での、フェライト結晶方位の角度差15°以上となる大角粒界の密度ρ2が200/mm以上である
    ことを特徴とする線材。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Al:0.010〜0.050%
    を含有することを特徴とする請求項1に記載の線材。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Cr:0.05〜1.00%
    を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の線材。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    V:0.005〜0.15%、
    Ti:0.002〜0.050%、及び
    Nb:0.002〜0.050%
    からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の線材。
  5. 前記化学組成が、質量%で、
    B:0.0001〜0.0040%
    を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の線材。
  6. 前記化学組成が、質量%で、
    Ca:0.0002〜0.0050%、及び
    Mg:0.0002〜0.0040%
    からなる群から選ばれる1種又は2種を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の線材。
  7. 前記線材の前記表層部及び前記中心部において、前記亜粒界の前記密度ρ1が、下記式1を満たすことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の線材。
    220×(C)+100<ρ1<220×(C)+300:式1
    前記式1における(C)は、前記線材の前記化学組成における質量%でのC含有量である。
  8. 前記線材の前記直径が3.5〜7.0mmであることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の線材。
  9. 鋼線の材料として用いられることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の線材。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の線材を伸線加工することによって製造され、
    直径が0.5〜1.5mmである
    ことを特徴とする鋼線。
  11. 請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の線材を伸線加工して鋼線を得る工程を備え、
    前記鋼線の直径が0.5〜1.5mmである
    ことを特徴とする鋼線の製造方法。
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