本発明を走査電子顕微鏡に適用した実施例を説明する。走査電子顕微鏡は、観察対象である試料上に照射電子を走査させ、発生する電子を検出して像形成し、操作者は形成された画像により試料を観察する。図1は、走査電子顕微鏡の概要を示す図である。走査電子顕微鏡は鏡体101、試料室102、制御部103、ディスプレイ104および操作部105を有する。鏡体101及び試料室102は真空ポンプ106により真空が保たれている。鏡体101の内部は高真空に維持され、電子銃111で作られた電子ビームが試料室102のステージ115に戴置された試料116に向けて進行し、その過程で電子ビームはコンデンサレンズ112、対物レンズ113といった電磁レンズによって細く絞りこまれる。偏向コイル114に走査信号を加えることにより、電子ビームは試料表面で走査(スキャン)される。これらの電子ビームを制御する各機構を包括して電子光学系と称する。電子ビームが試料表面に照射されることにより、電子と試料との相互作用により電子が発生する。試料表面から発生する電子には、発生メカニズムによりエネルギーの異なる電子が含まれる。このため、エネルギーの異なる電子のそれぞれを効率的に検出するため、複数の検出器が設けられることもある。図1の例では、主に二次電子を検出する二次電子検出器121、二次電子よりもエネルギーの高い反射電子を主に検出する反射電子検出器122が設けられている。また、画像を形成するのみならず、電子ビームを試料に照射することにより発生する特性X線から元素分析を行うため、EDX(Energy dispersive X-ray spectrometry)検出器123のような検出器を設けてもよい。二次電子検出器121や反射電子検出器122で検出された発生電子情報は制御部103の画像メモリ124に蓄えられ、画像形成され、ディスプレイ104に表示される。制御部103は、操作部105より操作者により設定される観察条件に基づき、走査電子顕微鏡の各機構を制御するとともに、検出器で検出された発生電子情報から画像を形成する。また、操作者による観察条件の設定を容易化するため、制御部103にはスキャンモード記憶部125が設けられている。スキャンモード記憶部125には、複数のあらかじめ定められたスキャンモードが記憶されており、操作者はそれを読み出して観察条件を設定することができる。制御部103は設定された観察条件に基づき、走査電子顕微鏡の電子光学系の動作を制御する。制御部103はパーソナルコンピュータ(PC)のような情報制御機器にて実現される。
図2に、走査電子顕微鏡のディスプレイ104に表示されるユーザインターフェース画面200の一例を示す。操作者が観察条件を調整しながら試料観察を行うため、ユーザインターフェース画面200には、走査電子顕微鏡の観察条件を表示、設定するための条件設定部と観察像を表示する画像表示部とが含まれる。図2の例では、条件設定部として、加速電圧設定部201、倍率設定部202、スキャン速度設定部203、キャプチャ条件設定部204、電子光学条件設定部205が設けられている。電子光学条件設定部205にはプローブ電流モード設定部206とビーム状態設定部207とが含まれている。また、画像表示部には信号選択部215により選択される、走査電子顕微鏡に設けられた検出器から形成される画像(ライブ像)211〜214が表示される。エネルギーの異なる電子ごとの検出信号またはそれらの組み合わせに基づき画像を形成することができ、例えばライブ像211は二次電子(SE)の検出信号に基づき形成される画像、ライブ像213は反射電子(BSE)の検出信号に基づき形成される画像である。操作者は、観察目的により、表示するライブ像の数やライブ像を表示させる検出信号の種類を信号選択部215により選択することができる。
操作者は、加速電圧設定部201、スキャン速度設定部203、プローブ電流モード設定部206等から走査電子顕微鏡の観察条件を設定する。走査電子顕微鏡の観察条件の設定を容易化するため、スキャン速度については複数のモードがあらかじめ設定されており、操作者はあらかじめ設定されたモードの一つを選択することができる。例えば、図2の例ではスキャン速度設定部203には「R1」「S1」等と表示されたボタンが表示されており、それぞれのボタンは、電子ビームが試料表面を走査するスキャン速度の異なるモードに対応している。例えば、操作者は所望の視野領域を探索する場合にR1モード(TVスキャンモード)を選択し、所望の視野領域が見つかったところで、異なるスキャン速度モードに切り替えたり、他のパラメータを調整したりして、ライブ像を所望のコントラストに調整する。また、倍率設定部202により観察像の倍率を調整することもできる。最終的に取得したい画像がディスプレイ上に表示できたところで、画像キャプチャまたは保存を行い、最終画像を取得する。画像キャプチャ時の像解像度とスキャン速度については、キャプチャ条件設定部204から選択設定する。最終画像の解像度はディスプレイに表示されるライブ画像の解像度よりも高いものが求められる。このため、視野領域探索時に用いられる観察スキャンモードとは別にキャプチャスキャンモードが所望の像解像度に応じてあらかじめ設定されている。以上に説明したようなあらかじめ設定された観察スキャン、キャプチャスキャンの各モードは制御部103のスキャンモード記憶部125に記憶されている(図1参照)。
しかしながら、あらかじめ設定されたスキャンモードで適切な画質の画像が得られない場合には、操作者は観察条件の調整を行わなければならない。このような場合、観察条件の調整は操作者の経験に基づくトライアンドエラーに陥りがちである。画像のコントラスト等を調整するには照射電子の条件を設定しなければならないが、関連パラメータが多く、理解が難しいことが一因である。さらに、操作者に照射電子の条件を調整するために必要なパラメータが開示されていない場合もある。
組成Aと組成Bとを含む試料の組成コントラスト像を取得する場合を例に説明する。組成コントラスト像は、試料の原子番号効果で生じる反射電子の検出個数の差異によりコントラストが形成される。異なった観察条件、例えば異なる倍率で撮像された組成コントラスト像同士を相対比較するには、X倍で撮影したときの組成A領域と組成B領域とのコントラストが、Y倍で撮影したときの組成A領域と組成B領域とのコントラストと同一であることが望ましい。しかしながら、画素あたりの入力電子数と発生電子の個数にはおおよその比例関係が成り立つとしても、入力電子数に関連するパラメータは多く、倍率を変更すること自体が画素あたりの入力電子数を変えてしまう。このため、X倍で撮像したときのコントラストをY倍で撮像するときに再現するには、倍率変更に伴う入力電子数の変化を相殺させる何らかの観察条件の変更を加える必要が生じる。
別の例として、絶縁材料等の静電容量の大きい試料を観察する場合を挙げる。所定の観察スキャンモードからキャプチャスキャンモードに切り替えて、高倍率条件下で高解像度のキャプチャ画像を取得しようとしたとする。その結果、静電容量の大きい試料の微小領域に多くの電子が照射された結果としてチャージアップ現象が発生し、観察スキャンモードでは観察されていたコントラストがキャプチャ画像からは消失してしまうこともある。
図3に適切な観察結果(キャプチャ画像)が得られない具体的な例を示す。原画像301はディスプレイ上に表示される生の画像(ライブ像、TV像)のイメージ図であり、画像302〜305は、原画像301を所定のキャプチャスキャンモードで取得した電子顕微鏡像のイメージ図(キャプチャ画像)である。輪郭になだらかな輝度諧調が生じた画像302は、複数フレームの画像を積算して画像生成するときにビーム照射の影響で発生した像ドリフトの影響を受けて生じる。輪郭が歪んだ(流れた)画像303は、電子ビームを比較的長い時間照射したことにより生じたチャージの影響で1フレーム画像を取得する画面の後半に像流れが生じたものである。コントラスト消失画像304は、電子ビームを照射したことにより生じたチャージ等の現象が原因でコントラストが消失したものである。強度が変わった画像305は、観察条件が変わったことで検出電子のS/Nの割合が変化したことにより、濃淡の強度が変わってしまったものである。これらは、原画像301を取得したときの観察条件から別の観察条件に切り替えたことにより、観察領域当たりの照射電子数が変化したことで像ドリフトやチャージアップが生じたことに起因する。一方、光学条件を調整するパラメータには、観察領域当たりの照射電子数に影響を与える多種類のパラメータが存在する。そこで、本実施例の走査電子顕微鏡においては、観察領域当たりの照射電子数を指標として観察条件を調整するアシスト画面を設け、観察条件を設定できるようにする。
観察アシスト画面を使用して観察条件を設定するフローを図10に示す。図10とディスプレイ104に表示される操作画面の画面例を参照しながら、操作者が観察条件を調整、設定するフローについて説明する。まず、操作者は観察アシスト画面を表示させる(S1001)。図4に、観察アシスト画面がディスプレイ104に別ウィンドウの態様で表示された例を示す。走査電子顕微鏡のユーザインターフェース画面200から電子光学条件設定部205のビーム状態ボタン207を押すと、SEMビーム状態を表示する観察アシスト画面401が表示される。観察アシスト画面401を表示するとき、ユーザインターフェース画面200は画像表示部に電子顕微鏡像を非表示にできるようにしてもよい。ライブ像の確認が不要な場合には、ライブ像を表示し続けることで、試料に不要な電子ビームを照射することを避けるためである。
図5に観察アシスト画面401の詳細を示す。観察アシスト画面には、操作者に理解しやすくするため、画像を取得する観察領域を示す観察領域イメージ図501と観察領域に照射される電子ビームを示す電子ビームイメージ図508とを表示している。
観察領域イメージ図501は、1画素を1マスとして図示し、1フレーム視野を鳥瞰図として表現している。1フレーム中のすべての画素を表示することはできないので、画素の繰り返しの一部は省略し、1フレームと1画素のサイズを同時に確認できるようにしている。観察領域イメージ表示は図5のものには限られない。例えば、一部の画素の省略は図のような点線ではなく、省略波線等で表現してもよく、あるいはフレームイメージと分離して、1〜少数の画素イメージを丸枠等で囲んで表現するといったことも考えられる。更に、このイメージ図の配色や線種を変更することでサイズの変化を表現するようにしてもよい。観察領域イメージ図501には、1フレームのサイズ502、1フレームあたりのスキャン時間503、1ラインあたりのスキャン時間504、1画素のサイズ505、1画素あたりのスキャン時間(画素時間=Dwell Time)506が合わせて表示され、観察領域イメージ図501の視認性を補助している。スキャン時間に関する値については、数値だけで表示するのみならず、スキャンする範囲を直感的に理解しやすくするため、図5のように矢印表示を付する等の工夫を行うことが望ましい。また、特にスキャン時間、画素サイズ、積算数といった値は、照射電子数に直接影響を与える数値であるので、領域507にまとめて表示することが望ましい。
電子ビームイメージ図508には電子ビームの照射電子の数や照射電流を模擬して表示し、さらに照射電流値509を表示している。照射電流値509は、電子顕微鏡の鏡体にファラデーカップ等の測定器が設けられていれば実測値を、あるいは、あらかじめ取得しておいた校正値に基づき、当該観察条件での照射電流値を算出して表示する。電子ビームイメージ図508の表示例を図6に示す。電子ビームイメージ図は、照射電子の数や照射電流に応じて色や形を変え、操作者が電子ビームの状態をイメージできるよう補助する。原図601から照射電子が増加した場合、イメージ図602のように照射電子を模擬する白丸の数を増加させる。これに対して、照射電流を高めた場合はイメージ図603のように背景の色を赤濃色にする等して、電子ビームを操作者が視覚的にイメージしやすいように変化させる。高倍率になると照射電子密度が高くなる弊害として、ビーム照射による試料のダメージおよび局所的に生じるコンタミネーションの発生がある。照射電子のイメージを図602や図603のように変化させることによって、ビーム照射によるダメージを試料へ与えることなく、実際の画像取得前に視覚的に確認することが可能になる。基準となる原図601とする観察条件は、操作者が電子ビームの条件を調整しやすいよう、観察ごとに設定できるようにしておくことが望ましい。
イメージ図の近傍にドーズ量510が表示される。操作者は観察条件の調整、設定にあたり、この値を参照できる。ドーズ量510として、図5の例では、1画素あたりの照射電子数、単位長あたりの走査における照射電子数(線密度)、単位面積当たりの照射電子数(面密度)を表示している。これらに代えてこれらに相当する物理量を表示してもよいが、少なくとも観察条件を変えた場合に、1画素あたりの照射電子量の変化が定量的に比較できるよう、操作者が認識できることが重要である。なお、1画素あたりの照射電子数は(照射電流(pA)×画素時間(μs))/e(e:電気素量)で求められる。また、線密度は、1画素あたりの照射電子数/画素サイズで求められる。
また、観察アシスト画面401には、ユーザインターフェース画面200の条件設定部にて走査電子顕微鏡に設定された関連するパラメータを読み取り、関連パラメータ520として表示されている。具体的には、関連パラメータ520には加速電圧設定部201、倍率設定部202、スキャン速度設定部203、電子光学条件設定部205で設定した値が表示されている。
以上説明した通り、走査電子顕微鏡の制御部103はライブ像の照射電子量を算出し、照射電子量に関連するパラメータとともに観察アシスト画面401に表示する(S1002:図10)。これにより、操作者は画像表示部に表示されているライブ像について、ビーム状態を決定するパラメータとその結果としての照射電子量を観察アシスト画面401において一元的に確認することができる。
観察アシスト画面401にはスキャン/キャプチャの選択ボタン523が配置されているので、操作者はいずれかを選択する(S1003)。操作者が観察視野の探索を継続し、通常スキャン条件を調整する場合には「スキャン」を選択し、観察視野を確定しキャプチャスキャン条件の確認、調整を行う場合には「キャプチャ」を選択する。「キャプチャ」を選択した場合には、キャプチャ条件設定部204で設定されたキャプチャスキャンモードの関連パラメータと当該関連パラメータに基づき算出される照射電子量とが表示される(S1004)。
操作者は、観察開始後、観察スキャンモードで、試料位置と観察倍率を変えながら試料上の観察対象視野を探索する。この段階においては、観察像の輝度コントラストを粗くあわせ、視野探しが可能な程度のS/Nでできるだけ速い走査速度で電子を照射して視野探しをする。これに対して、キャプチャ画像を取得するためのキャプチャスキャンでは、操作者は十分なS/Nの画像を取得するため、画素あたりの電子照射時間を長く設定したり、複数フレームの画像を積算させたりする。このため、キャプチャスキャンの設定は、その前段の観察スキャンの設定とは別に設定される。しかし、この切り替えにより、コントラストのつき方が違ったり、視野探し中には見られなかったチャージ等の影響で像ドリフトやハレーションが現れたりすることがあるのは前述の通りである。スキャン/キャプチャの選択ボタン523においていずれかを選択することで、通常スキャン、キャプチャスキャンのいずれのスキャンモードに対しても観察アシスト画面401により1画素あたりの照射電子量を確認することができる。
観察スキャンにおいて、観察条件を調整する場合について説明する。観察アシスト画面401を起動した状態で加速電圧設定部201、倍率設定部202、スキャン速度設定部203、プローブ電流モード設定部206の値を更新する(S1005)と、それに応じて観察アシスト画面401の関連パラメータ520を更新し、ビーム状態に関する情報501〜514を更新させる(S1006)。図5の例では読取ボタン521と計算ボタン522とを示している。ユーザインターフェース画面200の条件設定部の設定値の変更により観察アシスト画面401を自動的に更新させるようにしてもよいし、操作者の指示に応じて観察アシスト画面401を更新するようにしてもよい。例えば、操作者により読取ボタン521が押された際に関連パラメータ520を更新し、計算ボタン522が押された際に更新された関連パラメータ520により情報501〜514を更新する。計算ボタン522が押されたときのみに更新することで、照射電子量を算出する制御部の負荷を軽減することができる。
また、観察アシスト画面401上で、関連パラメータを編集することも可能とする。観察アシスト画面401の関連パラメータ520を編集可能とし、関連パラメータ520を更新して計算ボタン522を押した際は、編集された関連パラメータの内容を用いて、情報501〜514を更新する。図5の例では、画素数、スキャンモードをプルダウンメニューにて編集でき、照射電流量を照射電流入力ボックス511に数値入力できるようにした例である。この機能を用いれば、操作者は走査電子顕微鏡のスキャンモードを実際に変更する前に1画素あたりの照射電子量に関連する情報を確認し、算出された1画素あたりの照射電子量に基づき適切な観察条件を設定することができる。観察条件を決定した後、操作者は観察アシスト画面で設定した観察条件を適用するよう操作部から指示することにより、観察を継続する。
所望のライブ像が得られなければ、関連パラメータを再度更新し、所望のライブ像が得られれば画像キャプチャの条件設定を行うため、選択ボタン523でキャプチャを選択する(S1007、S1003)。これにより、キャプチャ条件設定部204で設定されたキャプチャスキャンモードの関連パラメータと当該関連パラメータに基づき算出される照射電子量とが表示される(S1004)。操作者は観察アシスト画面401に表示されるキャプチャスキャンモードでの1画素あたりの照射電子量と観察スキャンでの1画素あたりの照射電子量との乖離を確認する(S1008)。乖離が小さい場合は条件の調整不要とし、画像キャプチャを行う(S1011)。乖離が大きい場合は、キャプチャ条件設定部204等のキャプチャスキャンに関わる観察条件を調整する(S1009)と、それに応じて観察アシスト画面401の関連パラメータ520を更新し、ビーム状態に関する情報501〜514を更新させる(S1010)。ステップS1009とステップS1010の処理は、それぞれステップS1005とステップS1006の処理と同様であるので、説明は省略する。これにより、観察スキャンでの照射電子量との乖離が小さくなれば、画像キャプチャを実行する(S1011)。
なお、図5の例では、関連パラメータ520として、写真倍率、画面倍率、FOV(Field of View:観察視野サイズ)の少なくともいずれかが表示される。走査電子顕微鏡の写真倍率は従来より像写真を127mm×95mm(4×5写真サイズ)の写真に表示したサイズで倍率を規定していたが、昨今では、画面倍率はディスプレイ104に表示したサイズで倍率表示したり、画像視野の寸法を用いたFOV表示により観察視野の寸法を規定したり、複雑化している。図5に示したように、観察アシスト画面403上にて1画素のサイズ505等と合わせて表示することにより操作者が違いを認識しやすくなる。
図7に、観察アシスト画面の変形例を示す。走査電子顕微鏡で取得した電子顕微鏡像を電子ファイルとして保存する場合、電子顕微鏡像の電子ファイルと紐づけて、電子顕微鏡像取得時の観察条件の設定内容を付帯情報としてテキストファイルデータの形式で保存することがある。観察アシスト画面402に設けた付帯情報取得ボタン701を押すことにより、付帯情報または取得した電子顕微鏡像を選択し、選択した付帯情報から必要なパラメータを取得し、取得した付帯情報を観察アシスト画面上にある関連パラメータ520に反映させるとともに、照射電子量を算出し、情報501〜514を表示する。これにより、操作者は過去に取得した電子顕微鏡像について、取得時の電子ビーム状態やスキャン条件を、後からでもディスプレイ104で視覚的に確認することができる。なお、制御部103以外の情報処理装置に同じプログラムを実行できるようにすれば、制御部103以外の情報処理装置でも実現できる。
また、付帯情報取得ボタン701から付帯情報を選択して取得後、送信ボタン702にてユーザインターフェース画面200の条件設定部に観察条件を送信することができる。これにより、過去の電子顕微鏡像取得時と同じ観察条件を再現することができる。
図8、図9に観察アシスト画面の別の変形例を示す。図8に示した観察アシスト画面403では、表示されたライン走査に関するパラメータ504、フレーム走査に関するパラメータ503、画素時間に関するパラメータ506、画素数502について、観察アシスト画面403からパラメータを編集でき、走査電子顕微鏡の設定を直接変更することができるものとする。操作者は、編集したパラメータのスキャンモードを、観察アシスト画面403中の保存ボタン801により名前をつけて保存することができる。保存したスキャンモードの情報は制御部103のスキャンモード記憶部125にオリジナルスキャンモードとして記憶される。保存したスキャンモードを操作者オリジナルのスキャンモードとして呼び出せるように、標準のスキャン速度設定部203と同じように、オリジナルスキャンモード設定部802をユーザインターフェース画面200に配置する。オリジナルスキャンモード設定部802を配置したユーザインターフェースの一例を図9に示す。
図9では、操作者が編集し生成したスキャンモードと頻繁に使う標準のスキャンモードをスキャンモードリスト901として表示できることが特徴である。これにより一度スキャンモードリストを決定すれば、観察対象や目的に応じて予め保存したスキャンモードを容易に設定することが可能になる。さらに、ルーティン観察時にも操作者は繰り返しスキャン設定を編集する必要がなくなり、スループット良く観察することができる。スキャンモードリストには観察アシスト画面403へ遷移するための観察アシストボタン902(例えば、ビーム状態ボタン)を設けてもよい。
以上、本発明を走査電子顕微鏡に適用した例を説明した。適用対象は、これに限られず、電子線を照射して試料を観察する顕微鏡一般、例えば透過電子顕微鏡、走査型透過電子顕微鏡にも適用可能であり、イオンビームを試料に照射する集束イオンビーム装置(FIB:Focused Ion Beam)にも適用可能なものである。
また、操作画面のディスプレイへの表示方法も実施の形態記載のものに限定されず、さまざまな変形が可能なものである。例えば、観察アシスト画面をユーザインターフェース画面200と別ウィンドウの態様で表示されるようにしたが、ユーザインターフェース画面の一部として同じウィンドウの態様で表示されるようにしてもよい。また、例えば、観察アシスト画面上で関連パラメータを更新した場合、あるいはスキャンとキャプチャとを切り替えたときなどに、新旧の観察アシスト画面の情報を容易に比較できるように、観察アシスト画面を複数開けるようにしたり、観察アシスト画面上に更新前の情報を残して表示したりしてもよい。
本発明を走査電子顕微鏡に適用した実施例を説明する。走査電子顕微鏡は、観察対象である試料上に照射電子を走査させ、発生する電子を検出して像形成し、操作者は形成された画像により試料を観察する。図1は、走査電子顕微鏡の概要を示す図である。走査電子顕微鏡は鏡体101、試料室102、制御部103、ディスプレイ104および操作部105を有する。鏡体101及び試料室102は真空ポンプ106により真空が保たれている。鏡体101の内部は高真空に維持され、電子銃111で作られた電子ビームが試料室102のステージ115に載置された試料116に向けて進行し、その過程で電子ビームはコンデンサレンズ112、対物レンズ113といった電磁レンズによって細く絞りこまれる。偏向コイル114に走査信号を加えることにより、電子ビームは試料表面で走査(スキャン)される。これらの電子ビームを制御する各機構を包括して電子光学系と称する。電子ビームが試料表面に照射されることにより、電子と試料との相互作用により電子が発生する。試料表面から発生する電子には、発生メカニズムによりエネルギーの異なる電子が含まれる。このため、エネルギーの異なる電子のそれぞれを効率的に検出するため、複数の検出器が設けられることもある。図1の例では、主に二次電子を検出する二次電子検出器121、二次電子よりもエネルギーの高い反射電子を主に検出する反射電子検出器122が設けられている。また、画像を形成するのみならず、電子ビームを試料に照射することにより発生する特性X線から元素分析を行うため、EDX(Energy dispersive X-ray spectrometry)検出器123のような検出器を設けてもよい。二次電子検出器121や反射電子検出器122で検出された発生電子情報は制御部103の画像メモリ124に蓄えられ、画像形成され、ディスプレイ104に表示される。制御部103は、操作部105より操作者により設定される観察条件に基づき、走査電子顕微鏡の各機構を制御するとともに、検出器で検出された発生電子情報から画像を形成する。また、操作者による観察条件の設定を容易化するため、制御部103にはスキャンモード記憶部125が設けられている。スキャンモード記憶部125には、複数のあらかじめ定められたスキャンモードが記憶されており、操作者はそれを読み出して観察条件を設定することができる。制御部103は設定された観察条件に基づき、走査電子顕微鏡の電子光学系の動作を制御する。制御部103はパーソナルコンピュータ(PC)のような情報制御機器にて実現される。
なお、図5の例では、関連パラメータ520として、写真倍率、画面倍率、FOV(Field of View:観察視野サイズ)の少なくともいずれかが表示される。走査電子顕微鏡の写真倍率は従来より像写真を127mm×95mm(4×5写真サイズ)の写真に表示したサイズで倍率を規定していたが、昨今では、画面倍率はディスプレイ104に表示したサイズで倍率表示したり、画像視野の寸法を用いたFOV表示により観察視野の寸法を規定したり、複雑化している。図5に示したように、観察アシスト画面401上にて1画素のサイズ505等と合わせて表示することにより操作者が違いを認識しやすくなる。