JPWO2018190179A1 - ポリイミドフィルム、積層体、及びディスプレイ用表面材 - Google Patents
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Abstract
Description
画面が折り畳めるモバイル機器は、折り畳んだ状態で持ち運ばれることが多いため、モバイル機器に搭載されるフレキシブルディスプレイには、長時間折り曲げられた状態が続いても、平坦に戻した時に元通りになることが求められ、フレキシブルディスプレイ用の基材や表面材にも、長時間折り曲げられた状態が続いた後の復元性(以下、静的屈曲耐性という場合がある)が求められる。
従来の透明ポリイミドを用いた樹脂フィルムでは、平坦状態、折り曲げ状態を一定の周期で繰り返す試験において良好な結果を示すものであっても、長時間折り曲げられた状態が続くと、折り癖がつき、平坦に戻り難く、特に高湿度環境下では静的屈曲耐性に劣るという問題がある。
また、特許文献5に記載されたポリイミドフィルムは、透明性に劣るため、ディスプレイ用途や光学用途などの分野に用いることは困難である。
以上のことから、透明性に優れ、高湿度環境下での屈曲耐性を向上した樹脂フィルムが求められている。
また、本開示は、前記樹脂フィルムを有する積層体、及び、前記樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材を提供することを目的とする。
前記ポリイミドが、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、及び(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値であるtanδ曲線において、ピークの頂点を150℃以上の温度領域にのみ有し、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、12以下であり、
湿度膨張係数が、10.0ppm/%RH以下である、ポリイミドフィルムを提供する。
(一般式(1)において、R1はテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、R2はジアミン残基である2価の基を表し、R2の総量のうち、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基の含有割合は50モル%以下である。nは繰り返し単位数を表す。)
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
R2は、ケイ素原子を有しないジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基を含むか、或いは、
R2は、ケイ素原子を有しないジアミン残基、及び、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、R2の総量のうち、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基の含有割合は2.5モル以上50モル%以下である、ポリイミドフィルムを提供する。
また、本開示によれば、前記樹脂フィルムを有する積層体、及び、前記樹脂フィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材を提供することができる。
本開示の1実施態様のポリイミドフィルムは、下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有し、
前記ポリイミドが、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、及び(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値であるtanδ曲線において、ピークの頂点を150℃以上の温度領域にのみ有し、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、12以下であり、
湿度膨張係数が、10.0ppm/%RH以下である、ポリイミドフィルムである。
(一般式(1)において、R1はテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、R2はジアミン残基である2価の基を表し、R2の総量のうち、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基の含有割合は50モル%以下である。nは繰り返し単位数を表す。)
また、前記tanδ曲線で、ピークの頂点を150℃以上の温度領域にのみ有すると、高温環境下、例えば夏の車内などにおいても、熱変形によって屈曲耐性が損なわれることが抑制されるため、高温環境下でも屈曲耐性が向上したものとなる。
また、前記tanδ曲線で、ピークの頂点を150℃以上の温度領域にのみ有すると、引張弾性率が高くなる傾向があり、表面硬度が高くなる傾向がある。
本開示のポリイミドフィルムは、屈曲耐性や表面硬度を向上する点から、前記tanδ曲線で、ピークの頂点を200℃以上の温度領域にのみ有するものであることがより好ましく、220℃以上の温度領域にのみ有するものであることがより更に好ましい。一方、ベーク温度を低減することができる点から、前記tanδ曲線で、ピークの頂点は380℃以下の温度領域に有することが好ましい。
また、本開示のポリイミドフィルムは、中でも、−150℃以上150℃未満の温度領域に、更に、−70℃以上150℃未満の温度領域に、前記tanδ曲線におけるピークの頂点を有しないことが好ましく、更に、100℃以下の温度領域に、前記tanδ曲線におけるピークの頂点を有しないことが好ましく、0℃以下の温度領域に、前記tanδ曲線におけるピークの頂点を有しないことがより好ましい。主鎖に長いシロキサン結合を有するジアミン残基を有する場合や主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基を多量に含有する場合にはこのように低い温度領域に前記tanδ曲線におけるピークの頂点を有する場合があるが、本開示に用いられるケイ素原子含有ジアミン残基は、このように低い温度領域に前記tanδ曲線におけるピークの頂点を有しないような、比較的短いシロキサン結合を比較的少量有するように選択している。そのため、−150℃以上0℃以下の温度領域にガラス転移温度を有するような、主鎖に長いシロキサン結合を有するジアミン残基を有するポリイミドフィルムに比べて、室温での引張弾性率の低下も抑制され、保護フィルムとして十分な表面硬度を維持することができる。
前記tanδ曲線は、動的粘弾性測定によって、温度とtanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の関係から求められるものであり、ピークの極大値が最大であるピークの頂点の温度をガラス転移温度の指標とすることができるものである。動的粘弾性測定は、例えば、動的粘弾性測定装置 RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))によって、測定範囲を−150℃以上490℃以下として、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。また、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして測定することができる。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析する。
なお、温度(横軸)とtanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))(縦軸)の曲線において、ピークとは、tanδの値が0.2以上、好ましくは0.3以上であって極大値である変曲点を有し、且つ、ピークの谷と谷の間であるピーク幅が3℃以上であるものをいい、ノイズ等測定由来の曲線における細かい上下変動については、前記ピークの頂点のピークとして観測しない。
本開示のポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
また、本開示のポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、更に88%以上であることが好ましく、より更に89%以上であることが好ましく、特に90%以上であることが好ましい。
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
本開示のポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、7以下であることがより更に好ましく、5以下であることが特に好ましい。
また、本開示のポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、12以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、7以下であることがより更に好ましく、5以下であることが特に好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出することができる。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの380nm以上780nm以下の間の5nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
なお、本開示において、前記黄色度(YI値)を膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))は、JIS Z8401:1999の規則Bに従い、小数点以下第2位に丸めた値とする。
なお、本開示においてポリイミドフィルムの湿度膨張係数は、以下の方法により測定することができる。
5mm×20mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を十分に乾燥させ、チャック間距離15mm、長辺方向の引張荷重を5gとなるよう試験片をセットする。温度を25℃に固定し、湿度を15%RH、20%RH、50%RHへと変化させ、湿度20%RHと50%RHの試験片の伸び量から湿度1%あたりの平均伸びを計算し、湿度膨張係数とする。なお、計算式は次式の通りである。
湿度膨張係数(ppm/%RH)
=(X×106)/(Y×Z)
X:50%RHの時の試験片長から20%RHの時の試験片長を引いた値
Y:20%RHから50%RHへと変化させた際の湿度の変化量(50−20(%RH))
Z:20%RHの時の試験片長
測定装置としては、理学電機製、水蒸気TMA/S 8227A1を用いることができる。
また、試験片の伸び量は常にモニタリングして、1秒ごとに記録し以下の手順で測定する。
以下の測定において、試験片の長さが一定となるとは、30分間のサンプル長の変化が0.1μm以下であった場合のことをいう。
1.試験片の環境が湿度15%RHで安定し、試験片の長さが一定となり変化しなくなってから、30分以上保持
2.次に、試験片の環境が湿度20%RHで安定し、試験片の長さが一定となり変化しなくなってから、30分以上保持(試験片の長さを測定)
3.引き続いて、試験片の環境が湿度50%RHで安定し、試験片の長さが一定となり変化しなくなってから、30分以上保持(試験片の長さを測定)
4.湿度20%RH時と湿度50%RH時の試験片の長さの差を計算し、1/30して湿度1%あたりの伸び量を算出する
また、ポリイミドフィルムの試験片の厚さは、特に限定はされないが、5μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましく、10μm以上150μm以下の範囲内であることがより好ましく、15μm以上100μm以下の範囲内であることがより更に好ましい。
本発明者らは、樹脂の中でもポリイミドに着目した。ポリイミドは、その化学構造に由来し耐熱性が優れることが知られている。また、ポリイミドフィルムは、内部の分子鎖の配置が一定の秩序構造を形成することが知られており、そのおかげで、室温において、折り曲げ状態から平坦状態への復元性を有し得ると考えられる。
一方で、ポリイミドは、高湿度環境下では、折り曲げ状態からの復元性が悪化しやすく、特にフィルムを長時間折り曲げられた状態が続くと、折り癖がつき、平坦に戻らない場合があることが確認された。高湿度環境下においては、ポリイミドが吸湿することにより、吸収された水分が可塑剤のように作用しフィルムが塑性変形しやすくなるため、屈曲の力を外しても復元しにくくなっていると推察される。
それに対して、本発明者らは、前記特定のポリイミドを含有し、前記特定の特性を有するポリイミドフィルムは、優れた透明性を有し、高湿度環境下においても優れた屈曲耐性を有することを見出した。本開示のポリイミドフィルムは、前記特定のポリイミドが、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、及び(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含むことにより、透明性が向上し、ジアミン残基がケイ素原子を有しないか、ケイ素原子を有する場合は、主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基が、ジアミン残基の総量のうち50モル%以下であって、且つ前記tanδ曲線のピークが特定の温度範囲であることにより、屈曲耐性の悪化が抑制され、更に、ポリイミドフィルムの湿度膨張係数が10.0ppm/%RH以下であることにより、湿度の影響を受け難いため、優れた透明性を有し、高湿度環境下においても優れた屈曲耐性を有すると考えられる。
ケイ素原子を有するジアミン残基の含有量が多すぎる場合や前記tanδ曲線のピークの頂点が150℃未満など低い温度範囲に存在する場合には、ポリイミドフィルム中のポリイミド分子の運動性が高まり塑性変形し易くなって屈曲耐性が悪化し易いと考えられる。ポリイミドフィルムの湿度膨張係数が10.0ppm/%RH超過であると、湿度が20%RH以下のようなドライ環境における屈曲耐性は良好であっても、吸湿による影響が大きいため、高湿度環境下での屈曲耐性が悪化してしまう。湿度膨張係数が大きいポリイミドフィルムは、高温高湿環境下で、体積が膨張し分子鎖間の相互作用が希薄になることで、屈曲形状を取った時に屈曲部が塑性変形をしやすいためであると推察される。
本開示に係るポリイミドフィルムは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有し、前記特定の特性を有するものである。本開示の効果が損なわれない限り、更にその他の成分を含有していても良いし、他の構成を有していてもよい。
本開示に係るポリイミドフィルムは、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有する。
また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
ポリイミドに(i)フッ素原子を含むとポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドとしては、中でも、フッ素原子を含むポリイミドであることが、光透過性を向上し、且つ、表面硬度を向上する点から好ましく用いられる。
前記(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造において、フッ素で置換されていても良いアルキレン基は、高湿度環境下における屈曲耐性を向上する点から、水素原子の40%以上、より好ましくは70%以上、より更に好ましくは90%以上が、フッ素で置換されていることが好ましい。
また、前記アルキレン基は、高湿度環境下における屈曲耐性を向上する点から、炭素数1以上5以下であることが好ましく、炭素数1以上3以下であることがより好ましい。
高湿度環境下における屈曲耐性の点から、R1及びR2がケイ素原子及びフッ素原子のいずれも含まない前記一般式(1)で表される構造を有する繰り返し単位の合計100モル%のうち、R1及びR2がケイ素原子及びフッ素原子のいずれも含まず、且つR1及びR2が有する脂肪族炭化水素基の炭素数の合計が前記上限値を超える繰り返し単位の割合は、10モル%未満であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、0モル%であることがより更に好ましい。
ケイ素原子を有さず、芳香族環を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4’−オキシジフタル酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記R1において、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
ケイ素原子を有さず芳香族環を有するジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン等、及び、前記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンを使用することができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基としては、例えば、下記一般式(A)で表されるジアミンが挙げられる。
(一般式(A)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合であり、R10はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の1価の炭化水素基を表す。R11はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表す。kは0〜200の数である。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記環状のアルキル基としては、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6以上12以下のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R10で表される1価の炭化水素基としては、アラルキル基であっても良く、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭化水素基としては、例えば後述する2価の炭化水素基と前記1価の炭化水素基とをエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、本開示の効果が損なわれない範囲で特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、シクロヘキシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基と環状アルキレン基との組合せの基などを挙げることができる。
前記アリーレン基としては、炭素数6〜12のアリーレン基であることが好ましく、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、更に後述する芳香族環に対する置換基を有していても良い。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、前記2価の炭化水素基同士をエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(−NH−)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
R11で表される2価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、前記R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基と同様であって良い。
主鎖にケイ素原子を数多く有する分子量の大きいジアミン残基を用いると、より少量の添加でもガラス転移温度が低下しやすく、屈曲耐性や表面硬度が悪化する恐れがある。
主鎖にケイ素原子を1個有するジアミンとしては、例えば、前記一般式(A)で表されるジアミンのうち、k=0である下記一般式(A−1)で表されるジアミンが挙げられる。また、主鎖にケイ素原子を2個有するジアミンとしては、例えば、前記一般式(A)で表されるジアミンのうち、k=1である下記一般式(A−2)で表されるジアミンが挙げられる。
(一般式(A−1)及び一般式(A−2)において、Lはそれぞれ独立して、直接結合又は−O−結合であり、R10はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の1価の炭化水素基を表す。R11はそれぞれ独立して、置換基を有していても良く、酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭素数1以上20以下の2価の炭化水素基を表す。複数あるL、R10及びR11は、それぞれ同一であっても異なっていても良い。)
更に、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基の分子量は、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることがより更に好ましく、300以下であることが特に好ましい。
ジアミン残基の分子量は、ジアミンの分子量からアミノ基(−NH2)2個の分子量(32)を減じて算出される。
主鎖にケイ素原子を有するジアミン残基は単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドは、表面硬度と光透過性の点、及び屈曲耐性の点から、前記一般式(1)におけるR1の総量及びR2の総量の合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点、及び屈曲耐性の低下を抑制する点から好ましい。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、酸素との反応性が低いため、ポリイミドの化学構造が変化し難く、酸化によるポリイミドフィルムの劣化が抑制されることが推定される。ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られた分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、後述する好ましいガラス転移温度を示すように、構造に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されない。
平均繰り返し単位数は、通常10〜2000であり、更に15〜1000であることが好ましい。
前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、芳香族環を有しない構造や、ポリアミド構造等が挙げられる。
含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
本開示のポリイミドフィルムは、前記ポリイミドの他に、必要に応じて更に添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
本開示のポリイミドフィルムにおける、前記tanδ曲線、全光線透過率、黄色度及び湿度膨張係数については、前述したのでここでの記載を省略する。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用い、幅15mm×長さ40mmの試験片をポリイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度8mm/分、チャック間距離は20mmとして測定することができる。前記引張弾性率を求める際のポリイミドフィルムは厚みが55μm±5μmであることが好ましい。
なお、本開示のポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2−nz}×dと表すことができる。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。試験機としては、例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
前記ヘイズ値は、JIS K−7105に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
本開示のポリイミドフィルムの厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、強度の点から、1μm以上であることが好ましく、更に5μm以上であることが好ましく、より更に10μm以上であることが好ましい。一方、屈曲耐性の点から、ポリイミドフィルムの厚さは、200μm以下であることが好ましく、更に150μm以下であることが好ましく、より更に100μm以下であることが好ましい。
本開示のポリイミドフィルムの製造方法としては、例えば、第1の製造方法として、
芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、及び(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、下記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程という)と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、イミド化工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
以下、各工程について詳細に説明する。
前記第1の製造方法において調製するポリイミド前駆体樹脂組成物は、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、及び(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、下記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて添加剤等を含有していてもよい。
本開示のポリイミドフィルム乃至ポリイミドを製造するのに適した、本開示のポリイミド前駆体は、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、及び(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、下記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体である。
前記一般式(1’)で表される構造を有するポリイミド前駆体は、前記一般式(1’)のR1におけるテトラカルボン酸残基となるテトラカルボン酸成分と、前記一般式(1’)のR2におけるジアミン残基となるジアミン成分との重合によって得られるポリアミド酸である。
ここで、前記一般式(1’)のR1、R2及びnは、前記ポリイミドにおいて説明した前記一般式(1)のR1、R2及びnと同様のものを用いることができる。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド−d6溶媒7.5mLに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
たとえば、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが溶解された反応液に、主鎖にケイ素原子を有するジアミンの0.5等量のモル比の酸二無水物を投入し反応させることで、酸二無水物の両端に主鎖にケイ素原子を有するジアミンが反応したアミド酸を合成し、そこへ、残りのジアミンを全部、又は一部投入し、酸二無水物を加えてポリアミド酸を重合しても良い。この方法で重合すると、主鎖にケイ素原子を有するジアミンが1つの酸二無水物を介して、連結した形でポリアミド酸の中に導入される。
このような方法でポリアミド酸を重合することは、主鎖にケイ素原子を有するアミド酸の位置関係がある程度特定され、表面硬度を維持しつつ屈曲耐性の優れた膜を得易い点から好ましい。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
また、合成反応により得られたポリイミド前駆体溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良いし、ポリイミド前駆体溶液の溶剤を乾燥させ、別の溶剤に溶解して用いても良い。
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で測定することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物としては、前記ポリイミド前駆体溶液を用いてもよいし、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。前記添加剤としては、例えば、無機粒子、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられ、前述のポリイミドフィルムにおいて説明したものと同様のものを用いることができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
なお、ポリイミド前駆体樹脂組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA−200型)を用いて求めることができる。
前述のように含有水分量1000ppm以下とするには、使用する有機溶剤を脱水したり、水分量が管理されたものを用いた上で、湿度5%以下の環境下で取り扱うことが好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mLとして測定することができる。
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程において、用いられる支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が500ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることが最も好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
前記第1の製造方法においては、加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する。
当該製造方法において、延伸工程を有する場合、イミド化工程は、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体及び延伸工程後の膜中に存在するポリイミド前駆体の両方に対して行っても良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましく、10℃/分以上とすることが更に好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分〜180分、更に、5分〜150分とすることが好ましい。
前記第1の製造方法は、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程を有する場合は、中でも、イミド化後塗膜を延伸する工程を含むことが、ポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体のガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸することが、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上する点から好ましい。
芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、及び(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドと、有機溶剤とを含むポリイミド樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布して、溶剤を乾燥させてポリイミド樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド樹脂塗膜形成工程という)と、を含むポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、及び(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含む、前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドが25℃で有機溶剤に5質量%以上溶解するような溶剤溶解性を有する場合には、当該製造方法を好適に用いることができる。
また、前記第2の製造方法において、前記ポリイミド樹脂組成物の含有水分量1000ppm以下とする方法としては、前記第1の製造方法における前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明した方法と同様の方法を用いることができる。
前記第2の製造方法におけるポリイミド樹脂塗膜形成工程において、乾燥温度としては、常圧下では80℃以上150℃以下とすることが好ましい。減圧下では10℃以上100℃以下の範囲とすることが好ましい。
本開示のポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではなく、従来薄い板ガラス等ガラス製品が用いられていた基材や表面材等の部材として用いることができる。本開示のポリイミドフィルムは、透明性及び屈曲耐性に優れるため、中でも、ディスプレイ用表面材として好適に用いることができ、特に、フレキシブルディスプレイ用の表面材として好適に用いることができ、折り畳み可能なディスプレイ用の表面材としても好適に用いることができる。
また、本開示のポリイミドフィルムは、具体的には例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等に好適に用いることができる。また、本開示のポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
本開示の積層体は、前述した本開示のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体である。
本開示の積層体は、前述した本開示のポリイミドフィルムを用いたものであるため、透明性に優れ、高湿度下での屈曲耐性が向上したものであり、更にハードコート層を有するため、表面硬度がより向上したものである。
本開示の積層体に用いられるポリイミドフィルムとしては、前述した本開示のポリイミドフィルムを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
本開示の積層体に用いられるハードコート層は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。
ラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、1分子中に2〜6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
カチオン重合性化合物とは、カチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が有するカチオン重合性基としては、カチオン重合反応を生じ得る官能基であればよく、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基などが挙げられる。なお、前記カチオン重合性化合物が2個以上のカチオン重合性基を有する場合、これらのカチオン重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましく、ハードコート層の密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物がより好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られたハードコート層をエポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
本開示に用いられるハードコート層が含有する前記ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物は、例えば、前記ラジカル重合性化合物及び前記カチオン重合性化合物の少なくとも1種に、必要に応じて重合開始剤を添加して、公知の方法で重合反応させることにより得ることができる。
本開示に用いられるハードコート層は、前記重合物の他に、必要に応じて、帯電防止剤、防眩剤、防汚剤、硬度を向上させるための無機又は有機微粒子、レべリング剤、各種増感剤等の添加剤を含有していてもよい。
なお、本開示に用いられるハードコート層に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物等は、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、熱分解ガスクロマトグラフ装置(GC-MS)や、重合物の分解物について、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、NMR、元素分析、XPS/ESCA及びTOF−SIMS等の組み合わせを用いて分析することができる。
本開示の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とを有するものであれば特に限定はされず、前記ポリイミドフィルムの一方の面側に前記ハードコート層が積層されたものであってもよいし、前記ポリイミドフィルムの両面に前記ハードコート層が積層されたものであってもよい。また、本開示の積層体は、本開示の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、例えば、前記ポリイミドフィルムと前記ハードコート層との密着性を向上させるためのプライマー層等の他の層を有するものであってもよく、前記ポリイミドフィルムと前記ハードコート層とがプライマー層等の他の層を介して積層されたものであっても良い。また、本開示の積層体は、前記ポリイミドフィルムと、前記ハードコート層とが隣接して位置するものであってもよい。
また、本開示の積層体において、各ハードコート層の厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、カール防止の観点からポリイミドフィルムの両面にハードコート層を形成しても良い。
本開示の積層体は、ハードコート層側表面の鉛筆硬度がH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがより更に好ましい。
本開示の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度の測定方法において、荷重を9.8Nとする以外は同様にして測定することができる。
本開示の積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
また、本開示の積層体は、黄色味の着色が抑制され、光透過性が向上し、ガラス代替材料として好適に用いることができる点から、前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)を膜厚(μm)で除した値(YI値/膜厚(μm))が0.10以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましく、0.03以下であることがより更に好ましい。
本開示の積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本開示の積層体のヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
本開示の積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
本開示の積層体の用途は特に限定されるものではなく、例えば、前述した本開示のポリイミドフィルムの用途と同様の用途に用いることができる。
本開示の積層体の製造方法としては、例えば、
前記本開示のポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む製造方法が挙げられる。
ここで、前記ハードコート層形成用組成物が含有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、重合開始剤及び添加剤については、前記ハードコート層において説明したものと同様のものを用いることができ、溶剤は、公知の溶剤から適宜選択して用いることができる。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
本開示のディスプレイ用表面材は、前述した本開示のポリイミドフィルム又は本開示の積層体である。
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN−メチルピロリドン(NMP)溶液とし、その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行った。ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド前駆体溶液の粘度>
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mLとして測定した。
ポリイミド粉体15mgを、15000mgのN−メチルピロリドン(NMP)に浸漬し、ウォーターバスで60℃に加熱しながら、スターラーを用いて回転速度200rpmで、目視で溶解を確認するまで3〜60時間撹拌することにより、0.1重量%の濃度のNMP溶液を得た。その溶液をシリンジフィルター(孔径:0.45μm)に通じて濾過させ、展開溶媒として、含水量500ppm以下の30mmol%LiBr−NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC−8120、検出器:示差屈折率(RID)検出器、使用カラム:SHODEX製GPC LF−804を2本直列に接続)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.4mL/分、カラム温度37℃、検出器温度37℃の条件で測定を行った。ポリイミドの重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプル(重量平均分子量:364,700、204,000、103,500、44,360,27,500、13,030、6,300、3,070)を基準に測定した標準ポリスチレンに対する換算値とした。溶出時間を検量線と比較し、重量平均分子量を求めた。
ポリイミド溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mLとして測定した。
10cm×10cmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片の四隅と中央の計5点の膜厚を、デジタルリニアゲージ(株式会社尾崎製作所製、型式PDN12 デジタルゲージ)を用いて測定し、測定値の平均をポリイミドフィルムの膜厚とした。
湿度膨張係数は、理学電機製、水蒸気TMA/S 8227A1を用いて測定した。
5mm×20mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を120℃で10分間乾燥させた後、チャック間距離15mm、長辺方向の引張荷重を5gとなるよう試験片をセットした。温度を25℃に固定し、湿度を15%RH、20%RH、50%RHへと変化させ、湿度20%RHと50%RHの試験片の伸び量から湿度1%あたりの平均伸びを計算し、湿度膨張係数とした。なお、計算式は次式の通りである。
湿度膨張係数(ppm/%RH)
=(X×106)/(Y×Z)
X:50%RHの時の試験片長から20%RHの時の試験片長を引いた値
Y:20%RHから50%RHへと変化させた際の湿度の変化量(50−20(%RH))
Z:20%RHの時の試験片長
また、試験片の伸び量は、常にモニタリングして、1秒ごとに記録し、以下の手順で測定した。
以下の測定において、試験片の長さが一定となるとは、30分間の試験長の変化が0.1μm以下であった場合のことをいう。
1.試験片の環境が湿度15%RHで安定し、試験片の長さが一定となり変化しなくなってから、30分以上保持
2.次に、試験片の環境が湿度20%RHで安定し、試験片の長さが一定となり変化しなくなってから、30分以上保持(試験片の長さを測定)
3.引き続いて、試験片の環境が湿度50%RHで安定し、試験片の長さが一定となり変化しなくなってから、30分以上保持(試験片の長さを測定)
4.湿度20%RH時と湿度50%RH時の試験片の長さの差を計算し、1/30して湿度1%あたりの伸び量を算出する
JIS K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
YI値は、JIS K7373−2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、分光測色方法により、補助イルミナントC、2度視野を用いて、250nm以上800nm以下の範囲を1nm間隔で測定される透過率をもとに、XYZ表色系における三刺激値X,Y,Zを求め、そのX,Y,Zの値から以下の式より算出した。
YI=100(1.2769X−1.0592Z)/Y
以下、静的屈曲試験の方法について、図1を参照して説明する。
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片1を長辺の半分の位置で折り曲げ、試験片1の長辺の両端部が厚み6mmの金属片2(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、試験片1の両端部と金属片2との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した。試験片1が固定された金属片2を、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)3a、3bで挟み、試験片1を内径6mmで屈曲した状態で固定した。その際に、金属片2上で試験片1がない部分にダミーの試験片4a、4bを挟み込み、ガラス板3a、3bが平行になるようにテープで固定した。
このようにして屈曲した状態で固定した試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下、又は70℃、20%相対湿度(RH)以下の環境下でそれぞれ24時間静置した後、ガラス板と試験片固定用のテープを外し、試験片にかかる力を解放した。その後、試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後に試験片の内角を測定した。内角が120°以上をA、内角が120°未満をBと評価した。
なお、当該静的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS K7127に準拠し、引張り速度を8mm/分、チャック間距離を20mmとして、25℃における引張弾性率を測定した。引張り試験機は(島津製作所製:オートグラフAG−X 1N、ロードセル:SBL−1KN)を用いた。
実施例1〜3及び比較例1〜3のポリイミドフィルムについて、動的粘弾性測定装置 DVA−225(アイティー計測制御(株))を用い、測定範囲を−70℃以上400℃以下として、変形様式として引張りを選定し、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、静/動力比1.5、最小荷重5cN、歪(E>10e+8)0.08%、サンプル幅を5mm、チャック間距離を15mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の曲線を得て、ピークの頂点の温度を求めた。tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの頂点の温度をガラス転移温度とした。当該測定方法による結果を表1及び図2に示す。
実施例1〜3及び実施例4〜8のポリイミドフィルムについて、動的粘弾性測定装置 RSA−G2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))を用い、測定範囲を−150℃以上490℃以下として、変形様式として引張りを選定し、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))の曲線を得て、ピークの頂点の温度を求めた。装置の測定条件は以下のように設定した。tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの頂点の温度をガラス転移温度とした。ピーク及び変曲点の解析時は、目視評価せず、データを数値化して、数値から解析した。当該測定方法による結果を表2及び表4に示す。
<RSA−G2の測定条件>
(Initial value)
Axial force : 3.0 g
Sensitivity : 1.0 g
Proportional force Mode : Force Tracking
Axial Force > Dynamic Force : 1.5 %
Minimum axial force : 2.0 g
Programmed Extension Below : 0 Pa
(Auto strain)
Mode : Enabled
Strain adjust : 20.0 %
Minimum strain : 0.01 %
Maximum strain : 3.0 %
Minimum force : 1.5 g
Maximum force : 200.0 g
(Test parameters)
Sampling rate : 10pts/s
Strain % : 0.1%
周波数 : Single point
Frequency 1Hz
なお、tanδ曲線を測定するサンプルとしては、23℃±2℃ RH30〜50%の環境下に24時間静置したポリイミドフィルムを10cm角以上にサンプリングしたフィルムのさらに中央部を、剃刀またはメスにて5mm幅にスリットの入った切り出し治具を用いて、幅5mm×長さ50mmに(チャック時にサンプル長が20mmとなるように)切り出した物を用いた。幅の測定はノギスを用いて、位置を変えて3回計測した平均値を記録した。この際、幅測定の一部に平均値の3%以上の変動幅のある場合、そのサンプルは使用しなかった。ポリイミドフィルムの厚みは、前記膜厚測定法で測定した値を用いた。
鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。
5Lのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド2903g、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)16.0g(0.07mol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)14.6g(0.03mol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)400g(1.25mol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)565g(1.27mol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体1に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)は95:5であった。ポリイミド前駆体溶液1(固形分25重量%)の25℃における粘度は95300cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量は186500であった。
前記合成例1の手順で、TFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)が81:19になるように反応を実施し、ポリイミド前駆体溶液2とした。ポリイミド前駆体溶液2(固形分25重量%)の25℃における粘度は10180cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体2の重量平均分子量は109000であった。
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド267.9g、及び、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−[(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2,2−ジイル)ビス(4,1−フェニレンオキシ)]ジアニリン(HFFAPP、和歌山精化工業株式会社製)40.1g(61.3mmol)を入れ、HFFAPPを溶解させた溶液の液温が30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)27.0g(60.8mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体3が溶解したポリイミド前駆体溶液3(固形分20重量%)を合成した。ポリイミド前駆体溶液3(固形分20重量%)の25℃における粘度は5560cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体3の重量平均分子量は310000であった。
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド137.8g、及び、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド(DATA)15.2g(43.9mmol)を入れ、DATAを溶解させた溶液の液温が50℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)18.3g(41.2mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、比較ポリイミド前駆体1が溶解した比較ポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)を合成した。比較ポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)の25℃における粘度は1380cpsであり、GPCによって測定した比較ポリイミド前駆体1の重量平均分子量は168000であった。
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド174.3g、及び、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド(DATA)4.1g(11.8mmol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)2.6g(5.9mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで1時間撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)15.0g(46.8mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)23.9g(53.7mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、比較ポリイミド前駆体2が溶解した比較ポリイミド前駆体溶液2(固形分20重量%)を合成した。比較ポリイミド前駆体2に用いられたTFMBとDATAとのモル比(TFMB:DATA)は80:20であった。比較ポリイミド前駆体溶液2(固形分20重量%)の25℃における粘度は27490cpsであり、GPCによって測定した比較ポリイミド前駆体2の重量平均分子量は175000であった。
500mLのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド174.5g、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)27.9g(0.11mol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)50.5g(0.11mol)を、温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、比較ポリイミド前駆体3が溶解した比較ポリイミド前駆体溶液3(固形分30重量%)を合成した。比較ポリイミド前駆体溶液3(固形分30重量%)の25℃における粘度は4500cpsであり、GPCによって測定した比較ポリイミド前駆体3の重量平均分子量は82000であった。
ポリイミド前駆体溶液1〜3及び比較ポリイミド前駆体溶液1〜3を用い、下記(1)〜(3)の手順を行うことで、表1に示す厚みのポリイミドフィルムをそれぞれ作製した。
(1)各ポリイミド前駆体溶液をガラス上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(2)窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、350℃まで昇温し、1時間保持後、室温まで冷却した。
(3)ガラスより剥離し、各ポリイミドフィルムを得た。
各ポリイミドフィルムについて、前記評価方法を用いて評価した。評価結果を表1に示す。また、一例として、実施例2のポリイミドフィルムのtanδ曲線を図2に示す。なお、実施例2のポリイミドフィルムの測定においては、350℃以上の温度領域では試験片が溶融したため正しい値が得られていない。
それに対して、比較例1〜3のポリイミドフィルムは、高湿度環境下における屈曲耐性が劣っていた。また、比較例1のポリイミドフィルムは、黄色度(YI値)が高く、透明性も劣っていた。
前記合成例1の手順で、TFMBとAprTMOSとのモル比(TFMB:AprTMOS)が97.5:2.5になるように反応を実施し、ポリイミド前駆体溶液4とした。ポリイミド前駆体溶液4(固形分25重量%)の25℃における粘度は48900cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体4の重量平均分子量は156400であった。
実施例1において、ポリイミド前駆体溶液1の代わりに、ポリイミド前駆体溶液4を用いた以外は、実施例1と同様にして、表4に示す厚みのポリイミドフィルムを作製した。
得られたポリイミドフィルムについて、前記評価方法を用いて評価した。評価結果を表4に示す。
(1)ポリイミドの調製(化学イミド化)
1Lのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(466g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(1.31g)を溶解させた溶液を入れ、液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(1.17g)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(65.9g)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(91.7g)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体5が溶解したポリイミド前駆体溶液5(固形分25質量%)を合成した。
窒素雰囲気下で、5Lのセパラブルフラスコに、室温に下げた上記ポリイミド前駆体溶液5(400g)を加えた。そこへ、脱水されたジメチルアセトアミド(165.3g)を加え均一になるまで撹拌した。次に触媒であるピリジン(48.5g、613mmol)と無水酢酸(62.6g、613mol)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液に、酢酸ブチル(235.3g)を加え均一になるまで撹拌した。次にメタノール(1744.5g)を徐々に加え、白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド5(91.0g)を得た。GPCによって測定したポリイミドの重量平均分子量は201269であった。
(2)ポリイミドフィルムの製造
ポリイミド5の粉体を溶剤(ジクロロメタン)に溶かし、固形分14質量%のポリイミド溶液5を作製した。ポリイミド溶液5(固形分14質量%)の25℃における粘度は4290cpsであった。
上述のように得られたポリイミド溶液5を用いて、下記(i)〜(iii)の手順を行うことで、50μm±5μmの厚みのポリイミドフィルムを作製した。
(i)ポリイミド溶液5をガラス板上に塗布し、自然乾燥後、フィルムをガラス板より剥離した。
(ii)フィルムを50℃の循環オーブンで10分乾燥した。
(iii)フィルムを、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、200℃まで昇温し、200℃で1時間保持後、室温まで冷却し、ポリイミドフィルムを得た。
(1)ポリイミドの調製(化学イミド化)
前記実施例5において、ポリイミド前駆体溶液5の代わりに、合成例1と同様に調製したポリイミド前駆体溶液1を用いた以外は、実施例5と同様にして、実施例6のポリイミド6を得た。GPCによって測定したポリイミド6の重量平均分子量を表3に示す。
実施例5において、ポリイミド5の代わりに、ポリイミド6を用い、固形分濃度が表3に示す濃度になるように調整した以外は、実施例5と同様にして、表3に示すポリイミド溶液6を得た。ポリイミド溶液6の25℃における粘度を表3に示す。
実施例5においてポリイミド溶液5を用いる代わりにポリイミド溶液6を用いた以外は、実施例5と同様にして、実施例6のポリイミドフィルムを得た。
(1)ポリイミドの調製(化学イミド化)
5Lのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(250g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(4.14g)を溶解させた溶液を入れ、液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(3.70g)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(21.3g)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(33.3g)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体7が溶解したポリイミド前駆体溶液7(固形分20質量%)を合成した。
窒素雰囲気下で、室温に下げた上記ポリイミド前駆体溶液7に、触媒であるピリジン(26.3g)と無水酢酸(34.0g)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液(350g)を5Lのセパラブルフラスコに入れ、酢酸ブチル(237g)を加え均一になるまで撹拌し、次にメタノール(1761g)を徐々に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド7を得た。GPCによって測定したポリイミド7の重量平均分子量は230000であった。
実施例5において、ポリイミド5の代わりに、ポリイミド7を用い、固形分濃度が表3に示す濃度になるように調整した以外は、実施例5と同様にして、表3に示すポリイミド溶液7を得た。ポリイミド溶液7の25℃における粘度を表3に示す。
実施例5においてポリイミド溶液5を用いる代わりにポリイミド溶液7を用いた以外は、実施例5と同様にして、実施例7のポリイミドフィルムを得た。
(1)ポリイミドの調製(化学イミド化)
1Lのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド(105g)、及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)(11.81g)を溶解させた溶液を入れ、液温30℃に制御されたところへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(10.32g)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで30分撹拌した。そこへ、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(15.14g)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(31.77g)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体8が溶解したポリイミド前駆体溶液8(固形分40質量%)を合成した。
窒素雰囲気下で、室温に下げた上記ポリイミド前駆体溶液8に触媒であるピリジン(0.39g)と無水酢酸(47.7g)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液に酢酸ブチル(362g)を加え均一になるまで撹拌し、次にメタノール(3000g)を徐々に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、10回メタノールで洗浄し、ポリイミド8を得た。GPCによって測定したポリイミドの重量平均分子量は78720であった。
実施例5において、ポリイミド5の代わりに、ポリイミド8を用い、固形分濃度が表3に示す濃度になるように調整した以外は、実施例5と同様にして、表3に示すポリイミド溶液8を得た。ポリイミド溶液8の25℃における粘度を表3に示す。
実施例5においてポリイミド溶液5を用いる代わりにポリイミド溶液8を用いた以外は、実施例5と同様にして、実施例8のポリイミドフィルムを得た。
実施例5〜8のポリイミドフィルムについて、前記評価方法を用いて評価した。評価結果を表4に示す。
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部に対して10質量部の1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF製、イルガキュア184)を添加して、ハードコート層用樹脂組成物を調製した。
実施例1のポリイミドフィルムを10cm×10cmに切り出し、フィルム作製時にガラス板に触れていない側の面に、前記ハードコート層用樹脂組成物を塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cm2の露光量で照射し硬化させ、10μm膜厚の硬化膜であるハードコート層を形成し、積層体を作製した。
Claims (11)
- 下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドを含有し、
前記ポリイミドが、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、及び(ii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造、からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値であるtanδ曲線において、ピークの頂点を150℃以上の温度領域にのみ有し、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、85%以上であり、
JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度が、12以下であり、
湿度膨張係数が、10.0ppm/%RH以下である、ポリイミドフィルム。
- 前記一般式(1)において、R2は、ケイ素原子を有しないジアミン残基、及び、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、R2の総量のうち、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基の含有割合は50モル%以下である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
- 下記静的屈曲試験方法に従って、静的屈曲試験を行った場合に、当該試験で測定される内角が120°以上である、請求項1又は2に記載のポリイミドフィルム。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60℃、90%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。 - 前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミドにおいて、前記一般式(1)中のR1が、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物残基、4,4’−オキシジフタル酸無水物残基、及び、3,4’−オキシジフタル酸無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
- 前記JIS K7373−2006に準拠して算出される黄色度を、膜厚(μm)で除した値が、0.10以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
- 前記一般式(1)において、
R2は、ケイ素原子を有しないジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、主鎖にヘキサフルオロイソプロピリデン骨格を有するジアミン残基を含むか、或いは、
R2は、ケイ素原子を有しないジアミン残基、及び、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基から選ばれる少なくとも1種である2価の基を表し、R2の総量のうち、主鎖にケイ素原子を1個又は2個有するジアミン残基の含有割合は2.5モル以上50モル%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。 - 前記請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とを有する積層体。
- 前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物である、請求項8に記載の積層体。
- 前記請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム、又は、前記請求項8又は9に記載の積層体である、ディスプレイ用表面材。
- フレキシブルディスプレイ用である、請求項10に記載のディスプレイ用表面材。
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