JPWO2018159774A1 - チタン箔またはチタン板の製造方法、ならびにカソード電極 - Google Patents

チタン箔またはチタン板の製造方法、ならびにカソード電極 Download PDF

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Abstract

定電流パルスを用いる溶融塩電解析出法により、ガラス状炭素、黒鉛、MoおよびNiからなるカソード電極の表面にチタン電析膜を形成した後、前記チタン電析膜に外力を与えること、または、前記カソード電極を除去することのいずれか一方または両方を行うことにより、前記チタン電析膜を前記カソード電極から分離してチタン箔またはチタン板を製造する。これにより、カソード電極に電析させたチタン電析膜をカソード電極から、簡便かつ低コストで剥離させることが可能となる。

Description

本発明は、チタン箔またはチタン板の製造方法、ならびにカソード電極に関する。
チタン箔またはチタン板(以下、「チタン板」と総称する。)は、軽量化が求められる自動車、航空機、電池部品、基板、電極材料、耐食フィルター、防食シート、半導体の配線材料、耐食性の機能性材料等に使用されている。
チタン板は、従来、一般的には、チタン鉱石(主成分イルメナイトFeTiO)をアップグレード処理するなどしてTiO純度の高い原料(純度85〜93%の人工ルチルTiO)とし、この原料を塩化して四塩化チタンTiClに転換し、この四塩化チタンを何度も蒸留して高純度TiClを精製した後、クロール法、ハンター法、電解法等により金属チタン(スポンジチタン)を製造した後、溶解、鋳造、分塊し、その後、さらに圧延と焼鈍を繰り返して目的の厚さとすること、または、精製された金属チタンを原料としてスパッタリング等の気相反応により製膜することにより、製造されてきた。
しかし、このように一旦金属チタンとした後に目的の厚さに再加工してチタン板にすることは、工程の多段化、煩雑化と製造コストの著しい上昇を招くため、チタン原料化合物から金属チタンへの還元の際に、箔または薄板に近い形態で直接取り出せることが求められている。
チタンをチタン化合物から直接製造する方法として、溶融塩電解析出法が知られている。特許文献1には、塩化ナトリウムを融解した溶融塩浴にスポンジチタンを添加し、さらに溶融塩浴に四塩化チタンを導入することにより、TiClとTiClを含ませた電解浴からチタンを電解析出させる高純度チタンの製造方法の発明が開示されている。
特許文献2には、塩化物浴からの溶融塩パルス電解法によりステンレス電極にチタン薄膜コーティングを施す発明が開示されている。
特許文献3には、溶融塩電着法において、陰極に回転と才差運動を与えて平滑な表面を有するチタン等の電着物を得る発明が開示されている。
非特許文献1には、ステンレス鋼(SUS304)をカソード電極に用いるとともに塩化物浴にKTiFを添加した電解浴を使用して溶融塩パルス電解を行うことにより、チタン薄膜を製造する方法の発明が開示されている。
非特許文献2には、炭素鋼をカソード電極とし、LiF−NaF−KF浴にKTiFを添加した電解浴からチタンを電解析出させる発明が開示されている。
非特許文献3には、LiCl−KCl−TiCl溶融塩を用い、カソードにAu基板を用いた場合に、平滑なチタン電析膜が得られたことが開示されている。
特開平2−213490号公報 特開平8−142398号公報 特開昭57−104682号公報
魏 大維ら、"溶融塩中のパルス法によるチタン薄膜の電析とその特性"表面技術、Vol.44,No.1,(1993) p.33-38 ROBINら、"Pulse electrodeposition of titanium on carbon steel in the LiF-NaF-KF eutectic melt" J. Appl. Electrochem. 30, (2000) p.239-246 高村ら、"LiCl−KCl−TiCl3溶融塩からのチタニウムの平滑電析" 日本金属学会誌、第60巻、第4号、(1996) p.388-397
しかし、溶融塩電解析出法によりカソード電極に析出させたチタン電析膜は強固に密着しており、簡便に剥がすことができない。このため、溶融塩電解析出法によりTi化合物からチタン板を直接製造することはできても、カソード電極からのチタン電析膜の剥離コストが嵩むため、低コストでチタン板を製造することができない。
なお、溶融塩電解により平滑なチタン析出物が得られるが、特許文献2や非特許文献1に開示されるように、チタン析出物の厚さは、20μm程度もしくはそれ以下の膜厚しか得られていないことが多い。チタン析出物の厚さがこれよりも厚く、さらにカソード電極に機械的操作(摺動、回転等)を加えたり、電解浴の撹拌を行わずに、表面が平滑なチタン析出物を得る技術はこれまで開示されていない。
非特許文献3により開示された例では高価なAuを基板に使うために製造コストが上昇するため、工業プロセスに適用することは難しい。また、非特許文献2に開示されるように、100μm程度の膜厚が得られる。しかし、これらは原料または溶融塩に、毒性が高いフッ化物を含有するため、工業的に利用するには取り扱いが非常に困難である。
本発明の目的は、溶融塩電解析出法によりカソード電極に電析させたチタン電析膜を、カソード電極から簡便かつ低コストで剥離させる基礎技術を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ガラス状炭素、黒鉛、MoまたはNiからなるカソード電極上に析出させたチタン電析膜は、物理的な外力等により簡便かつ低コストで剥離させることができることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。本発明は以下に列記の通りである。
(1)定電流パルスを用いる溶融塩電解析出法によりチタン箔またはチタン板を製造する方法であって、
ガラス状炭素、黒鉛、MoおよびNiから選択される一種以上からなるカソード電極表面にチタン電析膜を形成した後、
前記チタン電析膜に外力を与える工程、および、前記カソード電極の少なくとも一部を除去する工程の一方または両方を行うことにより、前記チタン電析膜を前記カソード電極から分離する、
チタン箔またはチタン板の製造方法。
(2)前記カソード電極の除去は、物理的手段(例えば研削、切削、研磨、イオンミリング、ブラスト等)または化学的手段(例えばエッチング)により行う、
上記(1)のチタン箔またはチタン板の製造方法。
(3)前記チタン電析膜の一部を直接掴み、前記カソード電極から引き剥がすこと、または、前記チタン電析膜の一部に分離部材を接着し、前記分離部材を掴み、前記カソード電極から引き剥がすことにより、前記チタン電析膜を前記カソード電極から分離する、
上記(1)または(2)のチタン箔またはチタン板の製造方法。
(4)前記チタン電析膜と前記カソード電極との界面において、前記カソード電極の一部を除去して前記チタン電析膜の一部に掴み部を形成した後、前記掴み部を起点として前記カソード電極から引き剥がすこと、または、前記掴み部に分離部材を接着した後、前記分離部材を起点として前記カソード電極から引き剥がすことにより、前記カソード電極から前記チタン電析膜を分離する、
上記(1)または(2)のチタン箔またはチタン板の製造方法。
(5)定電流パルスを用いる溶融塩電解析出法によりチタンを電析させて、チタン箔またはチタン板を得るためのカソード電極であって、
前記カソード電極の少なくともチタン電析面が、ガラス状炭素、黒鉛、MoおよびNiから選択される一種以上からなる、
カソード電極。
本発明によれば、溶融塩電解析出法によりカソード電極に電析させたチタン電析膜をカソード電極から、簡便かつ低コストで剥離させる基礎技術を提供することができる。
これにより、チタン箔またはチタン板の製造工程の簡略化と、製造コストの顕著な抑制を図ることができ、チタン箔またはチタン板の利用促進を図ることができる。
図1は、各電解条件で電解した基板を示す写真である。 図2は、Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=0.5,1.0sでの電流遮断前後の電位を示すグラフである。 図3は、Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=0.5〜5.0sでの電流遮断前後の電位を示すグラフである。 図4は、通電オン時間ton=5.0s、通電オフ時間toff=1.7sとして電解を行った後の基板を示す写真である。 図5は、通電オン時間ton=5.0s、通電オフ時間toff=5.0sとして電解を行った後の基板を示す写真である。 図6は、Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.400A/cm、通電オン時間ton=0.5〜2.0sでの電流遮断前後の電位を示すグラフである。 図7は、ガラス状炭素製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=0.5〜5.0sでの電流遮断前後の電位を示すグラフである。 図8は、Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=10.0sでの電位を示すグラフである。 図9は、Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.400A/cm、通電オン時間ton=2.5sでの電位を示すグラフである。 図10は、ガラス状炭素製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=10.0sでの電位を示すグラフである。 図11は、種々の基板上に電析したチタン電析膜の溶融塩浴側の表面を示す写真である。 図12(a)はMo製の#01基板上に電析したチタン電析膜の基板側の表面を示す写真であり、図12(b)はMo製の#01基板上に電析したチタン電析膜の基板側の表面の2次電子像(40倍)である。 図13(a)はNi製の#02基板上に電析したチタン電析膜の基板側の表面を示す写真であり、図13(b)はNi製の#02基板上に電析したチタン電析膜の基板側の表面の2次電子像(40倍)であり、図13(c)は図13(b)の拡大画像(100倍)である。 図14(a)はステンレス鋼製の#01基板上に電析したチタン電析膜の基板側の表面を示す写真であり、図14(b)はステンレス鋼製の#01基板上に電析したチタン電析膜の基板側の表面の反射電子画像(40倍)であり、図14(c)は図14(b)の拡大画像(300倍)である。 図15(a)はガラス状炭素製の#01基板を用いて得られたチタン電析膜の溶融塩浴側の表面を示す写真であり、図15(b)はガラス状炭素製の#01基板を用いて得られたチタン電析膜の基板側の表面を示す写真であり、図15(c)は図15(b)の枠内の2次電子像であり、図15(d)は図15(c)の枠内の拡大2次電子像である。 図16(a)は黒鉛製の#01基板を用いて得られたチタン電析膜の溶融塩浴側の表面を示す写真であり、図16(b)は黒鉛製の#01基板を用いて得られたチタン電析膜の基板側の表面を示す写真であり、図16(c)は図16(b)の枠内の反射電子像であり、図16(d)は図16(c)の枠内の拡大反射電子像である。 図17は、ガラス状炭素製の#01基板および黒鉛製の#01基板から剥がしたチタン電析膜のX線回折分析結果を示すグラフである。 図18は、Mo製の#03基板、Mo製の#01基板、ステンレス鋼(SUS)製の#01基板、Ni製の#02基板それぞれの上に電析したチタン電析膜の浴側表面を示す写真と、チタン電析膜の基板側表面の2次電子画像(40倍)である。 図19は、ガラス状炭素製の#01−1基板、ガラス状炭素製の#01−2基板、黒鉛製の#02基板それぞれの上に電析したチタン電析膜の浴側表面を示す写真と、チタン電析膜の基板側表面の2次電子画像(40倍)である。
本発明を説明する。以降の説明では、チタン箔を製造する場合を例にとるが、電解装置を大規模化すること、または、電解析出を長時間行うことにより、板厚が100μm〜1mm程度のチタン板を製造することも可能である。本発明によって得られるチタン箔またはチタン板の厚さは、30μm〜1mmである。
(1)定電流パルスを用いる溶融塩電解析出法
本発明では、定電流パルスを用いる溶融塩電解析出法により、ガラス状炭素、黒鉛、MoおよびNiから選択される一種以上からなるカソード電極表面にチタン電析膜を形成する。ここで、本明細書における実験では、電極として、10mm幅×50mm長さ程度の短冊状のものを使用した。工業生産上は、幅300〜1000mm、長さ500〜2500mm程度の物を使用することが想定される。特に、生産対象のチタン板に合わせて任意のサイズの電極を使用可能である。この電極の一端には導線が接続されている。電解は、溶融塩にこの電極の他端を10mm程度浸漬した状態で行う。電極は、所定の箇所にねじ止めなどにより固定するための固定部(貫通孔など)を備える。
本発明では、定電流パルスを用いる溶融塩電解法を採用する。溶融塩電解浴には、アルカリ金属の塩化物浴、または、アルカリ金属塩化物と第2族元素の塩化物との混合浴に、還元析出の際のチタン源となるチタンイオンを添加したものを用いることが好ましい。塩化物の一部は、ヨウ化物に置き換えてもよい。そして、アノード電極とカソード電極の間に電流を流し、カソード電極の表面にチタンを析出させる。
本発明で用いる電解浴は、フッ素を含まない。アルカリ金属の塩化物の中では、LiCl,NaCl,KCl,CsClを用いることが好ましい。第2族元素の塩化物の中ではMgCl、CaClを用いることが好ましい。
本発明では、溶融塩電解析出法を用いることにより、クロール法等とは異なり、スポンジチタンを経ずに、チタン原料化合物からチタン箔を直接得られる。このため、溶解、鋳造、分塊、さらに圧延と焼鈍を繰り返す工程の負担を軽減でき、工程の多段化、煩雑化や製造コストの上昇を抑制できる。
また、溶融塩浴が毒性の強いフッ化物を含まないことから、工業的に操業が容易である。
さらに、フッ化物に比べれば、アルカリ金属塩化物は安価であり、特に、NaCl,KClはLiClよりも安価であるのでこの点でも有利である。また、アルカリ金属塩化物および第2族元素の塩化物は、複数の種類の塩化物を混合させて共晶組成付近に混合すると、融点が低下するために好ましい。
例えば、NaCl、KClならば、各々等モル程度に混合すると低融点になる。好ましい範囲はNaCl−30〜70モル%KClであり、さらに好ましい範囲はNaCl−40〜60モル%KClである。
また、MgCl−NaCl−KCl溶融塩ならば、カチオン比でMg:Na:K=50:30:20(モル%)に混合すると低融点になる。好ましい範囲はMg:Na:K=40〜60:20〜40:10〜30である。
チタンの原料は、チタン塩化物を主とすることが好ましい。TiClは溶融塩に対する溶解度が小さいため、特に、TiClを溶解した2価のチタンイオンとすることが好ましい。また、TiClは還元時に必要な電荷数が、4価等の多価のチタンイオンよりも少なくなり、同じ電気量でもチタンの析出量が高くなるので好ましい。
2価のチタンイオンは、TiCl(4価)と金属チタン(0価)を混合することでも得られる。TiClは、現行のチタン製錬の工程でも使用され、蒸留によって不純物を低減できるため、不純物濃度を管理するために有利である。また、チタン源には、塩化物の他にチタンスクラップや、スポンジチタンのような金属チタンを用いることができる。2価チタンイオンは、TiCl(4価)をNa、MgまたはCaで部分還元することでも得られる。
(2)カソード電極
定電流パルスを用いる溶融塩電解析出に用いるカソード電極を、ガラス状炭素、黒鉛、MoおよびNiから選択される一種以上とすることにより、カソード電極上に析出させたチタン電析膜を、物理的な外力等により簡便かつ低コストで剥離させることができる。
この理由は明確ではないが、これらの材料は、電析したチタンと合金化し難いためであると推定される。
本発明において「ガラス状炭素」とは、ガラスとセラミックスの性質を併せ持つ非黒鉛化炭素を意味し、「グラッシーカーボン」とも呼ばれる。導電材料、るつぼ、人口装具の部品等に用いられ、高温度抵抗、高硬度、低密度、低電気抵抗、低摩擦、低熱抵抗、高化学抵抗性、気体や液体の不浸透性等の特徴を有する。
実施例では、ガラス状炭素製の電極として、東海ファインカーボン株式会社から購入した、鏡面仕上げ、2.0mm厚のガラス状炭素板を、表面処理を施さない状態で用いた。
実施例では、黒鉛製の電極として、東海ファインカーボン株式会社から購入した、5.0mm厚の黒鉛板を、表面処理を施さない状態で用いた。
Mo製の電極は、純度99%以上のモリブデンからなる電極を意味する。実施例では、株式会社ジャパンメタルサービスから購入した純度99.95%の0.1mm厚のモリブデン板を、表面処理を施さない状態で用いた。
Ni製の電極は、純度99%以上のニッケルからなる電極を意味する。実施例では、株式会社ジャパンメタルサービスから購入した純度99+%の0.2mm厚のニッケル板を、表面処理を施さない状態で用いた。
ガラス状炭素製または黒鉛製の電極では、治具や薬剤等を用いなくても、外力を与えることにより、電極の表面に形成されたチタン電析膜に容易に剥離することができる。
Mo製の電極では、例えば、ピンセット、ペンチ、プライヤー等の治具、または、硝酸:硫酸:水=1:1:3等の薬剤等を用いることによって、チタン電析膜を剥離することができる。Ni製の電極では、例えば、ピンセット、ペンチ、プライヤー等の治具、または、濃塩酸、希硝酸等の薬剤等を用いることによって、チタン電析膜を剥離することができる。また、Ni製の電極では、再現性の問題が残るが、場合によっては、これらの治具や薬剤等を用いなくても剥離させることができることがある。
ガラス状炭素製またはMo製のカソード電極では、剥離したチタン箔(チタン電析膜)の表面に付着する電極物質の量が極めて少ないために電極物質の除去に要する負荷が小さい。また、剥離したチタン箔(チタン電析膜)の表面の金属光沢が優れており、高い外観品質を得られる。
なお、カソード電極は、全体をガラス状炭素、黒鉛、MoおよびNiから選択される一種以上で構成してもよいし、少なくとも、チタンの電析表面がこれらの材料で構成されておれば、電極本体部に別の材料を用いてもよい。電極本体部としては、例えば、ステンレス鋼板、非ステンレス鋼板、銅など、電極として十分な導電性および強度を有する素材を使用できる。それによって、これらの材料の使用量が減少できて、コストの削減が可能である。また、これらの電極材料は、単独の種類のものを使用することに限らず、複数の種類を組み合わせて使用してもよい。
(3)電解条件の概要
電解は、オン/オフ制御の定電流パルス電流を印加電流として用いて、行う。オン/オフ制御のパルス電流とは、電流値を一定として、還元析出のための電流を一定時間カソード電極に流してチタンをカソード電極上に還元析出させた後に電流を一定時間休止することを繰り返して電流を流すことを意味する。
還元析出のための電流を流し続けると、カソード電極の表面の近傍のチタンイオンは、還元析出により減少する。このとき、カソード電極から離れた沖合から運ばれてくるチタンイオンは、電極の近傍におけるチタンイオンの減少に応じた一定速度で均一に電極の近傍に供給されるとは限らない。このため、カソード電極近傍のチタンイオン濃度が不均一になる場合があり、平滑化を阻害する一因であると考えられる。
これに対し、電解中に電流の休止時間を設けると、この休止時間中に濃度拡散によりチタンイオンの不均一は解消または緩和される。このため、パルス電流を用いることにより、析出界面の周辺のチタンイオン濃度が平均化されて平滑化すると考えられる。
印加電流のパルス幅は、パルス周波数で、0.1〜10Hzであることが好ましく、0.25〜2Hzであることがより好ましい。すなわち、連続して電流を流す通電オン時間tonを0.05〜5sとし、電流を休止する通電オフ時間toffも同様に0.05〜5sとすることが好ましく、より好ましくは、通電オン時間ton=通電オフ時間toff=0.25〜2sである。
一方、カソード電流値は、チタンが電解析出可能な一定以上の定電流量(カソード電流密度)であれば、特に制限されない。
(4)電解条件の一例
以下に、本発明者らが、平滑なチタン電析膜を得られるための電析条件(特にパルス時間)を調査し、パルス時間を決定するために行った実験およびその解析結果を説明する。
まず、各通電オン時間tonにおける平滑なチタン電析膜を得られる通電オフ時間toffと、平滑なチタン電析膜を得られない通電オフ時間toffを調べ、次に、この前提をもとに電流印加中および電流遮断後の電位を測定し、最適な通電オン時間tonおよび通電オフ時間toffを推定した。その後、実際にその電解条件で溶融塩電解析出を行い、上記前提を検証した。
(4−1)実験方法
チタンの電解析出は以下の方法により行った。
溶融塩:MgCl−NaCl−KCl共晶塩(Mg:Na:K=50:30:20/mol%)(5mol%TiCl(カチオン比))
作用極:Mo製,ガラス状炭素製、対極:Ti製、参照極:Ti製
電流密度:−0.200,−0.400A/cm
平滑なチタン電析膜が得られる条件の調査ではMo製の基板を用い、電流密度を−0.200A/cmとし、通電量を181.8C/cm(チタン膜の厚さ:100μm相当)とした。電解後に、作用極に用いた基板は5質量%塩酸中で付着塩のリーチング処理を行った。
また、電流効率は、電解前後の試料の質量差から求めた。電流遮断法では、Mo製の基板とガラス状炭素製の基板を用い、電流密度は−0.200A/cmもしくは−0.400A/cmとし、通電オン時間tonを0.5s→1.0s→1.5s→2.0s→2.5s→3.0s→3.5s→4.0s→4.5s→5.0s→10.0sと替えて測定した。
(4−2)実験結果および検討
図1は、各電解条件で電解した基板を示す写真である。図1に示すように、通電オン時間ton=0.5sでは通電オフ時間toff=0.1sでも平滑なチタン電析膜が得られた。通電オン時間ton=1.0sでは通電オフ時間toff=0.1,0.2sでは平滑なチタン電析膜が得られなかったが、通電オフ時間toff=0.3sでは平滑なチタン電析膜が得られた。以上の条件を勘案して最適な通電オン時間ton,通電オフ時間toffを推測する。
図2は、Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=0.5,1.0sでの電流遮断前後の電位を示すグラフである。ただし、印加開始後最初の点を0sとし、測定は0.05ms毎に行った。
図2のグラフより、平滑なチタン電析膜が得られる条件から、閾値を−0.043Vとし、電流遮断後に電位が閾値を超えるまでに要する時間を通電オフ時間toffとすると平滑なチタン電析膜が得られると仮定した。
図3は、Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=0.5〜5.0sでの電流遮断前後の電位を示すグラフである。また、表1に、各通電オン時間tonにおいて電流遮断後に電位が閾値−0.043Vを超えるまでに要する通電オフ時間toffとそれらの比を示す。
図3のグラフおよび表1に示すように、通電オン時間tonが長くなるほど通電オフ時間toffは長くなり、通電オン時間tonに対する通電オフ時間toffの比も大きくなることがわかる。
ここで、電流遮断後に電位が閾値−0.043Vを超えるまでに要する時間を通電オフ時間toffにするという仮定が正しいか否かを検証するため、Mo製の基板を用い、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=5.0s、通電オフ時間toff=1.7sとして電解を行った。
図4は、通電オン時間ton=5.0s、通電オフ時間toff=1.7sとして電解を行った後の基板を示す写真である。図4から理解されるように、この仮定で通電オフ時間toffを決定しても平滑なチタン電析膜が得られない。
次に、通電オン時間ton=5.0sで平滑なチタン電析膜が得られるか否かを調査するため、Mo製の基板を用い、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=5.0s、通電オフ時間toff=5.0sとして電解を行った。なお、このときは、通電量は545.0C/cm(チタン電析膜の厚さ:300μm相当)とした。
図5は、通電オン時間ton=5.0s、通電オフ時間toff=5.0sとして電解を行った後の基板を示す写真である。図5から理解されるように、通電オフ時間toffを十分に確保すると通電オン時間ton=5.0sであっても平滑なチタン電析膜が得られる。
以上の結果より、電流遮断前後の電位から通電オフ時間toffを決定するための新たな仮定を立てる必要がある。
図6は、Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.400A/cm、通電オン時間ton=0.5〜2.0sでの電流遮断前後の電位を示すグラフである。図7は、ガラス状炭素製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=0.5〜5.0sでの電流遮断前後の電位を示すグラフである。ただし、図6,7のグラフでは、印加開始後最初の点を0sとし、測定点は0.05ms毎とした。
これらについては平滑なチタン電析膜が得られる条件の調査を行っていないが、傾向としては、図2のグラフ(Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=0.5,1.0sでの電流遮断前後の電位)と概ね同じであった。なお、図7のグラフで通電直後の電位に違いが認められるのは、通電オン時間ton=0.5〜2.0sの測定日と、通電オン時間ton=2.5〜5.0sの測定日とが異なるためであると推定される。
図8は、Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=10.0sでの電位を示すグラフである。図9は、Mo製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.400A/cm、通電オン時間ton=2.5sでの電位を示すグラフである。さらに、図10は、ガラス状炭素製の基板を用いた場合の、電流密度=−0.200A/cm、通電オン時間ton=10.0sでの電位を示すグラフである。ただし、図8〜10のグラフでは、印加開始後最初の点を0sとし、測定点は0.05ms毎とした。
図8〜10のグラフから、電位が大きく負に屈曲変化する時間が存在することがわかる。通電オン時間tonとしては、この電位が大きく変化する時間まで(グラフが略直線となる範囲)を最低条件とすることが好ましい。
以上の検討により、
Mo製の基板を用いた場合、下記の(i)および(ii)を満足することが好ましく、ガラス状炭素製の基板を用いた場合、下記の(iii)を満足することが好ましい。
(i)電流密度が−0.200mA/cmである場合に時間tonを5s以下とすること。
(ii)電流密度が−0.400mA/cmである場合に時間tonを1.5s以下とすること。
(iii)電流密度が−0.200mA/cmである場合に時間tonを5s以下とすること。
以上説明した電解条件を採用することにより、平滑なチタン電析膜を作製することが可能になる。ここで、「平滑」とは、電析物の空隙が少なく緻密であり、かつ、表面の凹凸が小さいことをいう。また、「平滑でない」とは、電極表面に突起状またはデンドライト状の電析物が散在し、表面または断面から観察した際に空隙が多いことをいう。
(5)カソード電極からのチタン電析膜の分離
このようにしてチタン電析膜を形成した後、このチタン電析膜に外力を与える工程、および、カソード電極の少なくとも一部を除去する工程の一方または両方を行うことにより、チタン電析膜をカソード電極から分離してチタン箔を製造する。
本発明では、チタン電析膜の一部を直接掴み、電極から引き剥がすこと、または、チタン電析膜の一部に分離部材を接着し、その分離部材を掴み、電極から引き剥がすことにより、チタン電析膜を電極から分離することが好ましい。チタン電析膜の一部とは、チタン電析膜のコーナー、縁など、剥離の起点となりやすい部位である。
また、カソード電極を再利用する必要がない場合は、カソード電極の少なくとも一部を研削、切削、研磨、イオンミリングもしくはブラストといった物理的手段、または、エッチング等の化学的手段によって除去し、チタン電析膜を分離することも例示される。
なお、本発明では、チタン電析膜に外力を与える工程、および、カソード電極の少なくとも一部を除去する工程の一方だけを実施してもよいが、両方を実施するのが好ましい。例えば、チタン電析膜とカソード電極との界面において、カソード電極の一部(たとえば、チタン電析膜のチタン電析膜のコーナー、縁など、剥離の起点となりやすい部位を含む部分)を除去してチタン電析膜の一部に掴み部を形成した後、掴み部を起点としてカソード電極から引き剥がすこと、または、掴み部に分離部材を接着した後、分離部材を起点としてカソード電極から引き剥がすことにより、カソード電極からチタン電析膜を分離してもよい。
分離部材をチタン電析膜に接着するために用いる金属接着剤としては、例えば、セメダイン社製「メタルロックY611黒S」(商品名)というアクリル系接着剤が例示される。
また、カソード電極の除去は、例えば研削、切削、研磨、イオンミリング、ブラスト等の物理的手段、またはエッチング等の化学的手段により行うことが好ましい。
本発明によれば、カソード電極に振動を与えることや溶融塩浴を攪拌することといった物理的作用を併用することなく、カソード電極に平滑なチタン電析膜を簡便に析出させ、カソード電極から確実かつ迅速に分離して、膜厚が100μm〜1mm程度のチタン箔またはチタン板を製造することができる。
本発明により得られたチタン箔に、必要に応じてさらに再加工を施してもよい。これにより、チタン箔の寸法精度および機械的特性をさらに高めることができる。
本発明により、平滑なチタン箔を、溶解、鋳造、分塊、さらに圧延と焼鈍を繰り返す工程を経ることなく、かつカソード電極からのチタン電析膜の剥離コストの上昇を伴うことなく、製造できるため、工程削減や歩留向上による大幅な製造コストの削減を図ることができる。
本発明により製造されるチタン箔またはチタン板の厚さは、100μm〜1mm程度である。「JIS H4600:2012 チタン及びチタン合金−板及び条」では、厚さ0.2mm以上を板としている。
種々の基板上に電析したチタン電析膜の分離の可能性を調査するとともに、チタン電析膜の分析を行った。
(1)実験方法
チタンの電解析出を以下の方法により行った。
溶融塩:MgCl−NaCl−KCl共晶塩(Mg:Na:K=50:30:20/mol%)(5mol%TiCl(カチオン比))
作用極:Mo製,ステンレス鋼(SUS304)製,Fe製,Ti製,Nb製,Ta製,Ni製、対極:Ti製、参照極:Ti製
電流密度:−0.232A/cm
通電量:908.3C/cm(チタン電析膜の厚さ:500μm相当)
パルス幅:通電オン時間ton=通電オフ時間toff=0.5s
電解後、作用極に用いた基板は、5質量%塩酸中で付着塩のリーチング処理を行った。その後、基板とチタン電析膜の境界付近を切断し、この部分からチタン電析膜の分離を行った。
Mo製の基板とSUS304製の基板上に電析したチタン電析膜は、基板の一部を酸(Moでは硫酸:硝酸:水=1:1:3、SUS304では10質量%HCl)でエッチングすることによって、チタン電析膜に外力を与えて基板から剥離させるための把持部を形成し、チタン電析膜の把持部を掴んで基板から剥離して、通電量から計算される厚さが500μm相当のチタン箔とした。
基板から分離したチタン電析膜の基板側表面について、EPMAを用いてSEM観察およびWDS分析(波長分散型X線分光分析)を行った。また、電流効率については電解前後の試料の質量差から求めた。
(2)実験結果および検討
表2に、各種基板の電流効率と分離の可否を示す。また、図11は、種々の基板上に電析したチタン電析膜の浴側表面を示す写真である。
今回試験に供した各種基板のうちで、チタン電析膜を上記手段により分離することができたのは、エッチング後を含めると、Mo製の#01基板と、Ni製の#02基板であった。SUS製の#01基板ではエッチング後にチタン電析膜を一部分離することができたものの、途中で破れてしまった。
図12(a)はMo製の#01基板上に電析したチタン電析膜の基板側表面を示す写真であり、図12(b)はMo製の#01基板上に電析したチタン電析膜の基板側表面の2次電子像(40倍)である。
図13(a)はNi製の#02基板上に電析したチタン電析膜の基板側表面を示す写真であり、図13(b)はNi製の#02基板上に電析したチタン電析膜の基板側表面の2次電子像(40倍)であり、図13(c)は図13(b)の拡大画像(100倍)である。
さらに、図14(a)はSUS製の#01基板上に電析したチタン電析膜の基板側表面を示す写真であり、図14(b)はSUS製の#01基板上に電析したチタン電析膜の基板側表面の反射電子像(40倍)であり、図14(c)は図14(b)の拡大画像(300倍)である。
図12(a)〜図12(b)に示すように、Mo製の#01基板ではチタン電析膜は一様で空隙が少ないが、図13(a)〜図13(c)および図14(a)〜図14(c)に示すように、Ni製の#02基板およびSUS製の#01基板では、空隙や様子の異なる部分があることがわかる。
表3に、図12(b)上の各点部1,2の定量分析結果(原子%)を示し、表4に、図13(c)上の3つの円内の定量分析結果(原子%)を示し、さらに、表5に、図14(c)上の各点部1〜3の定量分析結果(原子%)を示す。
表3に示すように、Mo製の#01基板ではMoは殆ど存在していない。これに対し、表4,5に示すように、Ni製の#02基板およびSUS製の#01基板では、Ni製#02,SUS製#01基板に由来する金属元素が存在する部分が多くあることが分かる。
ガラス状炭素製の基板、および黒鉛製の基板上に電析したチタン電析膜の断面および基板からチタン電析膜の基板側を観察および分析することにより、チタン電析膜への炭素の拡散および固着の様子を調べた。
(1)実験方法
チタンの電解析出を、以下の方法により行った。
溶融塩:MgCl−NaCl−KCl共晶塩(Mg:Na:K=50:30:20/mol%)(5mol%TiCl(カチオン比))
作用極:ガラス状炭素(ガラス状炭素製の#01,02)および黒鉛(黒鉛製の#01,02)、対極:Ti、参照極:Ti
電流密度:−0.232/Acm
通電量:900.5C/cm(チタン電析膜の厚さ:500μm相当)
電解後、作用極に用いた基板は、5質量%塩酸中で付着塩のリーチング処理を行った。その後、ガラス状炭素製の#01と黒鉛製の#01は、チタン膜を基板から引き剥がしてX線回折分析を行った。ガラス状炭素製の#02と黒鉛製の#02は、樹脂埋めを行った後に切断した。
これらの引き剥がされたチタン電析膜の基板側表面および樹脂埋めした基板の断面についてEPMAを用いてSEM観察およびWDS分析(波長分散型X線分光分析)を行った。また、電流効率については電解前後の試料の質量差から求めた。
(2)実験結果および検討
表6に、各基板の実験条件および電流効率を示す。
表6に示すように、電流効率は80%から90%程度であった。
図15(a)はガラス状炭素製の#01基板を用いて得られたチタン電析膜の浴側表面を示す写真であり、図15(b)はガラス状炭素製の#01基板を用いて得られたチタン電析膜の基板側表面を示す写真であり、図15(c)は図15(b)の枠内の2次電子像であり、図15(d)は図15(c)の枠内の拡大2次電子像である。
図15(a)〜図15(d)、特に図15(d)に示すように、引き剥がされたチタン電析膜の基板側表面には、僅かながら炭素(C)が付着していることがわかる。
図16(a)は黒鉛製の#01基板を用いて得られたチタン電析膜の浴側表面を示す写真であり、図16(b)は黒鉛製の#01基板を用いて得られたチタン電析膜の基板側表面を示す写真であり、図16(c)は図16(b)の枠内の反射電子像であり、図16(d)は図16(c)の枠内の拡大反射電子像である。
図16(a)〜図16(d)に示すように、黒鉛基板から剥がしたチタン膜の基板側表面はガラス状炭素基板の場合と比べると凹凸が多く、炭素(C)が多く付着していることがわかる。
図17は、ガラス状炭素製の#01基板および黒鉛製の#01基板から剥がしたチタン電析膜のX線回折分析結果を示すグラフである。
図17のグラフに示すように、ガラス状炭素製の#01基板からはTiのみしか検出されなかった。これに対し、黒鉛製の#01基板からは黒鉛(#00−056−0159)も検出された。TiCは検出されなかった。EPMAの結果と比較すると、ガラス状炭素製の基板では炭素の付着は少ないと考えられる。
実施例2と同じ実験方法により、Mo,SUS,Ti,Nb,Ta,Ni,ガラス状炭素,黒鉛製のカソード電極(基板)にチタン電析膜を形成し、チタン電析膜を手で掴んで剥離できたか、手以外の手段で剥離できたか、さらには基板の剥離面上に、基板に由来した不純物が存在したかを確認した。
結果を、図18および図19に示すとともに、表7にまとめて示す。
図18および図19は、Mo製の#03基板、Mo製の#01基板、ステンレス鋼(SUS)製の#01基板、Ni製の#02基板、ガラス状炭素製の#01−1基板、ガラス状炭素製の#01−2基板、黒鉛製の#02基板それぞれの上に電析したチタン電析膜の浴側表面を示す写真と、チタン電析膜の基板側表面の2次電子像(40倍)である。
図18および図19、ならびに、表7に示すように、Nb、Taではいずれの手段でもチタン電析膜を剥がすことはできなかったが、ガラス状炭素,黒鉛,Ni製の基板ではチタン電析膜を手で掴んで剥離することができた。また、Mo製の基板では手で掴んで剥離することはできなかったが、基板をエッチングすることによりチタン電析膜を得ることができた。
また、ガラス状炭素,黒鉛,Ni,Mo製の基板では、剥離面上の基板からの汚染は実用上問題ないレベルであった。

Claims (5)

  1. 定電流パルスを用いる溶融塩電解析出法によりチタン箔またはチタン板を製造する方法であって、
    ガラス状炭素、黒鉛、MoおよびNiから選択される一種以上からなるカソード電極表面にチタン電析膜を形成した後、
    前記チタン電析膜に外力を与える工程、および、前記カソード電極の少なくとも一部を除去する工程の一方または両方を行うことにより、前記チタン電析膜を前記カソード電極から分離する、
    チタン箔またはチタン板の製造方法。
  2. 前記カソード電極の除去は、物理的手段または化学的手段により行う、
    請求項1に記載のチタン箔またはチタン板の製造方法。
  3. 前記チタン電析膜の一部を直接掴み、前記カソード電極から引き剥がすこと、または、前記チタン電析膜の一部に分離部材を接着し、前記分離部材を掴み、前記カソード電極から引き剥がすことにより、前記チタン電析膜を前記カソード電極から分離する、
    請求項1または2に記載のチタン箔またはチタン板の製造方法。
  4. 前記チタン電析膜と前記カソード電極との界面において、前記カソード電極の一部を除去して前記チタン電析膜の一部に掴み部を形成した後、前記掴み部を起点として前記カソード電極から引き剥がすこと、または、前記掴み部に分離部材を接着した後、前記分離部材を起点として前記カソード電極から引き剥がすことにより、前記カソード電極から前記チタン電析膜を分離する、
    請求項1または2に記載のチタン箔またはチタン板の製造方法。
  5. 定電流パルスを用いる溶融塩電解析出法によりチタンを電析させて、チタン箔またはチタン板を得るためのカソード電極であって、
    前記カソード電極の少なくともチタン電析面が、ガラス状炭素、黒鉛、MoおよびNiから選択される一種以上からなる、
    カソード電極。
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