JP7334095B2 - 錫の電解採取方法 - Google Patents
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Description
錫を含有するアルカリ性の電解液からカソードに錫を電着させる錫の電解採取方法であって、
アノード材質をNiとし、カソード材質をTiとし、このカソードの面粗さRzを5μm~50μmとすることを特徴とする錫の電解採取方法である。
アノード材質をステンレス鋼とし、カソード材質をTiとし、このカソードの表面粗さRzを30μm~50μmとすることを特徴とする錫の電解採取方法である。
金、錫、チタン及びニッケルから選ばれた少なくとも1種の金属、又はそれらを銅の母材にメッキして成るブスバー及びクロスバーの少なくともいずれかを使用することを特徴とする。
実施形態1に係る錫の電解採取方法は、錫を含有するアルカリ性の電解液からカソードに錫を電着させる方法を採用したものである。その上で以下の条件で電解採取を行う。
・アノード材としてNi(例えば、NAS規格 Ni201等)を用いる。
・カソード材としてTi(例えば、JIS H4600 2種等)を用いる。
・カソードの表面粗さRzを5μm~50μmとする。
・金、錫、チタン及びニッケルから選ばれた少なくとも1種の金属、又はそれらを銅の母材にメッキして成るブスバー若しくはクロスバーを使用する。
Tiカソード表面の表面粗さRzが5.0μm未満(Ra<1.0μm)の場合は、カソードと電着錫の密着性が足りず、電着錫が脱落して電解層の底に沈むことや、剥離して電着錫がアノードと接触しショートすることで生産性が著しく低下する。例えば、一般用材に代表される表面粗さNo.2B相当の表面粗さが該当する。
カソードとしてTi板を使用した場合には、電解中に電解で生じたSnがカソードから脱落することがあった。Snが脱落した場合には、Snの回収率が低下し、精製の効率やコストに悪影響を及ぼすことがあった。
本実施形態においては、一定の表面粗さRzを有するものを用いる。具体的には、最大高さである表面粗さRzが5.0μm~50.0μmであるTiアノードを用いる。この範囲に対応する算術平均粗さRaは通常1.0μm~5.0μmである。カソードの少なくとも一部において前記Rzの範囲を満たすことにより、カソード表面の電着錫の密着性が向上し、電着錫の脱落・剥離が抑制される。
カソードの1つの主面の中央に測定点1を設け、この測定点1における、縦方向配置での測定値と横方向配置での測定値との平均値1を得る。同様に、カソードの主面の上下左右であって測定点1から等距離であって測定点1とカソード端部との中間位置にある測定点2~5での平均値2~5を得る。そして、平均値1~5の平均値Aを得る。この平均値Aが前記条件(Rzが5.0μm~50.0μm)でのRzである。そしてこのRzからRaが得られる。
不純物は、得られた金属を熔解することでドロスと呼ばれる酸化物として除去できるため、金属錫は熔解及びドロス除去後の段階でFe品位を50ppm未満とすることができる。同様にCrやTiも熔解及びドロス除去により0.5ppm未満とすることができる。
その際、使用する鍋又は坩堝からのコンタミ(金属錫への不純物拡散)が問題となるため、高純度錫を製造する場合は、Ti又は黒鉛といった材質の鍋や坩堝を選択して、コンタミを発生させない又はコンタミ量が問題にならないようにすることが望ましい。
実施形態2においては、以下の条件で電解採取を行う。
・アノード材としてステンレス鋼(例えば、SUS430板等)を用いる。
・カソード材としてTi(例えば、JIS H4600 2種等)を用いる。
・カソードの表面粗さRzを30μm~50μmとする。
例えば、「錫を含有するアルカリ性の電解液からカソードに錫を電着させる錫の電解採取方法であって、
アノード材質をNiまたはステンレス鋼とし、カソード材質をTiとし、このカソードの(表面粗さRz(μm))/(一主面の面積S(m2))を30μm/m2以上とする錫の電解採取方法」としても良い。
実施例1、2は、実施形態1に対応する。
接液部の面積が縦43cm×横36cmの純Ni板アノード7枚と、縦45cm×横40cmの純Ti板カソード6枚(TKファクトリー社製)とを準備し、純Ti板カソードはドライカップにて粗面加工した。純Ti板カソードの表面粗さを、小形表面粗さ測定機(ミツトヨ社製、サーフテストSJ-210)を用いて測定したところ、Rzが13.4μm(Raが1.6μm)であった。
そして、分取したSn含有苛性ソーダ水溶液を電解槽に供給し、液温63℃、カソード電流密度100A/m2で、7日間電解採取を行った。
得られた金属錫の純度は差数法で99.999%(5N)以上であった。不純物をICP-OESで測定したところ、Ag,Cu,Pb,Zn,Fe,As,Bi,Sb,Cd,Ni,Al,Inのいずれも1ppm未満であった。実施例1、2及び比較例1~3の詳細を後掲の表1、表2に示す。なお、以下の実施例2では、不純物をICP-MASS(ICP質量分析装置)で測定した。
接液部の面積が縦1m×横1mの純Ni板アノード41枚と、縦1m×横1mの純Ti板カソード40枚(三井金属エンジニアリング社製)とを準備し、純Ti板カソードはサンドブラストにて粗面加工した。純Ti板カソードの表面粗さを、小形表面粗さ測定機(ミツトヨ社製、サーフテストSJ-210)を用いて測定したところ、Rzは30~50μm(具体的には41.0μm(Raが5.5μm))であった。
上記以外の内容は、実施例1と同様とした。純Niライニングした5.5m3電解槽に電解液を供給し、液温75℃、カソード電流密度50A/m2で、11日間電解採取を行った。
縦1m×横1mのSUS304板アノードを41枚、縦1m×横1mのSUS430板カソード(東光鉄工社製)を40枚準備し、粗面加工は行わなかった。前記SUS430板カソードは、No.2B(Rz=0.5μm程度)であった。
錫濃度が50g/Lである以外は実施例1と同じSn含有苛性ソーダ水溶液を電解液とした。
電解液を硬質天然ゴム(NR)ライニングした電解槽に供給し、液温75℃、カソード電流密度100A/m2で、12日間電解採取を行った。
この結果、金属錫2.2tを回収した。その際の電流効率は85%であった。
得られた金属錫の純度は差数法で99.986%であった。実施例1と同様のICP-OES測定の結果、特にFe品位が127ppmと高かった。
カソードの材質が比較例1と同じSUS430であることを除き、実施例1と同じSn含有苛性ソーダ水溶液を電解液として電解採取を行った。
この結果、金属錫32kgを回収した。その際の電流効率は80%であった。
得られた金属錫の純度は差数法で99.999%であった。実施例1と同様のICP-OES測定の結果、Fe品位のみ1.3ppmと高かった。
純Tiカソードの粗面加工は行わず、表面粗さがNo.2B(Rz=0.5μm程度)である純Tiカソードを使用したことを除き、実施例1と同じSn含有苛性ソーダ水溶液を電解液として電解採取を行った。
カソード6枚中4枚は電着した金属錫が脱落し、アノードと接触してショートしたため中断した。
実施例3は、実施形態2に対応する。
縦1m×横1mのSUS304板アノードを41枚、縦1m×横1mの純Tiカソード(三井金属エンジニアリング社製)を40枚準備し、粗面加工を行った。前記SUS430板カソードのRzは30μm~50μmの範囲内に設定した。なお、Raは5.5μmであった。それ以外の内容は、実施例1と同様とした。
縦1m×横1mのSUS304板アノードを41枚、縦1m×横1mの純Tiカソード(三井金属エンジニアリング社製)を40枚準備し、粗面加工を行った。但し、前記SUS430板カソードのRzは10μm以上30μm未満の範囲内に設定した。なお、Raは2.5μmであった。それ以外の内容は、実施例1と同様とした。
Claims (3)
- 錫を含有するアルカリ性の電解液からカソードに錫を電着させる錫の電解採取方法であって、
アノード材質をNiとし、カソード材質をTiとし、このカソードの表面粗さRzを5μm~50μmとすることを特徴とする錫の電解採取方法。 - 錫を含有するアルカリ性の電解液からカソードに錫を電着させる錫の電解採取方法であって、
アノード材質をステンレス鋼とし、カソード材質をTiとし、このカソードの表面粗さRzを30μm~50μmとすることを特徴とする錫の電解採取方法。 - 金、錫、チタン及びニッケルから選ばれた少なくとも1種の金属、又はそれらを銅の母材にメッキして成るブスバー及びクロスバーの少なくともいずれかを使用することを特徴とする請求項1または2に記載の錫の電解採取方法。
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