JP4797163B2 - テルル含有粗鉛の電解方法 - Google Patents
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しかしながら、粗鉛からのテルルの除去は、上記のように、陽極鋳造前の粗鉛をハリス法で処理し、さらに電解精製することにより行われており、効率よく、テルル品位の極めて低い高純度鉛、及びビスマス品位が極めて低い高純度鉛を得る方法は、未だ提案されていないのが現状である。
<1> 陽極と、陰極と、珪フッ化鉛及び珪フッ酸を含む電解液とを用いる鉛電解方法において、
テルル(Te)を0.1質量ppm以上含有する粗鉛を前記陽極とし、
前記陽極の粗鉛中のアンチモン(Sb)含有量を、該陽極の粗鉛中のテルル含有量に対し、質量比で30倍以上とすることを特徴とするテルル含有粗鉛の電解精製方法である。
<2> 陽極の粗鉛中のアンチモン含有量を、該陽極の粗鉛中のテルル含有量に対し、質量比で30〜45倍とする前記<1>に記載のテルル含有粗鉛の電解精製方法である。
<3> 陽極の粗鉛中のアンチモン含有量を1.8質量%以上とする前記<1>から<2>のいずれかに記載のテルル含有粗鉛の電解精製方法である。
<4> 陽極の粗鉛中のアンチモン含有量を1.8〜2.4質量%とする前記<1>から<3>のいずれかに記載のテルル含有粗鉛の電解精製方法である。
<5> 陽極が、アンチモンを添加した粗鉛からなる前記<1>から<4>のいずれかに記載のテルル含有粗鉛の電解方法である。
<6> 粗鉛を陽極に鋳造する前に、アンチモン、前記陽極の鋳返し、及びアンチモン含有量が1質量%未満の粗鉛のいずれか添加し、前記粗鉛のアンチモン含有量を調整する請求項<1>から<5>のいずれかに記載のテルル含有粗鉛の電解方法である。
<7> 電解液中のテルル濃度が、0.01mg/L以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載のテルル含有粗鉛の電解方法である。
<8> 電解液中の鉛濃度が50〜100g/L、遊離珪フッ酸濃度が100〜180g/Lである前記<1>から<7>のいずれかに記載のテルル含有粗鉛の電解方法である。
<9> 電気分解により陰極に析出した電着鉛を、ハリス法により精製する前記<1>から<8>のいずれかに記載のテルル含有鉛の電解方法である。
<11> テルルの含有量が0.1質量ppm未満であり、ビスマスの含有量が1質量ppm未満であり、かつ鉛の含有量が99.999質量%以上である前記<10>に記載の電気電子部品用の高純度鉛である。
<12> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のテルル含有粗鉛の電解方法により得られ、テルルの含有量が0.1質量ppm未満であり、かつ、鉛の含有量が99.999質量%以上であることを特徴とする電気電子部品用の高純度鉛である。
<13> テルルの含有量が0.1質量ppm未満であり、ビスマスの含有量が1質量ppm未満であり、かつ鉛の含有量が99.999質量%以上である前記<12>に記載の電気電子部品用の高純度鉛である。
<14> テルルの含有量が、0.01質量ppm未満である前記<10>から<13>のいずれかに記載の電気電子部品用の高純度鉛である。
<15> テルル、鉄、銀、錫、銅、及びアンチモンの含有量の総和が5質量ppm以下である前記<10>から<14>のいずれかに記載の電気電子部品用の高純度鉛である。
<16> 超伝導材料に用いられる前記<10>から<15>のいずれかに記載の電気電子部品用の高純度鉛である。
本発明のテルル含有粗鉛の電解方法は、陽極と、陰極と、珪フッ化鉛及び珪フッ酸を含む電解液とを用い、テルルを0.1質量ppm以上含有する粗鉛を前記陽極とし、前記陽極の粗鉛中のアンチモン含有量を、該陽極の粗鉛中のテルル含有量に対し、質量比で30倍以上とする方法である。
なお、前記質量比とは、前記陽極の粗鉛中のアンチモン含有量(質量%)を分子とし、前記陽極の粗鉛中のテルル含有量(質量%)を分母として求めた値である。
また、前記陽極の粗鉛中のアンチモン含有量は1.8質量%以上であることが好ましい。
図1は、本発明のテルル含有粗鉛の電解方法を、工業的に有利に実施するのに好適な具体例である。
前記溶融鉛受入工程(1)は、原料としての粗鉛(図1中の粗鉛A)を、精製鍋に溶体のまま受け入れ、生成したドロスを除去する工程である。
前記粗鉛Aは、不純物として少なくともテルルを0.01質量%以上含有する粗鉛である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、鉛精鉱から製造された粗鉛であってもよく、各種鉛屑等から再生により得られた粗鉛であってもよい。
前記粗鉛A中に含まれるテルル以外の不純物としては、例えば、アンチモン、ビスマス、銀、銅、及び錫などが挙げられる。
前記錫・銅除去工程(2)は、前記粗鉛Aに含まれる不純物である錫及び銅を、前記脱錫・脱銅鍋中で除去する工程である。
錫は、前記脱錫・脱銅鍋中で前記粗鉛Aを600〜630℃まで加熱し、温度を維持しながら攪拌することにより、錫の酸化物を生成させ、該酸化物をドロス(図1中のドロス(B))として除去するか、揮発させることにより除去することが好ましい。
前記粗鉛Bは、常温で保管されているインゴットとして添加することが好ましい。
前記アンチモン品位調整工程(3)は、前記粗鉛Aに、アンチモン、前記陽極の鋳返し、及びアンチモン含有量が1質量%未満である粗鉛(前記粗鉛B)の少なくともいずれかを添加することにより、前記調合鍋中で、前記粗鉛Aのアンチモン含有量を、前記粗鉛中のテルル含有量に対し、質量比で30倍以上に調整する工程である。前記アンチモン含有量の前記粗鉛中のテルル含有量に対する質量比としては、30〜45倍以上であることが好ましい。
アンチモンは、前記アンチモン品位調整工程(3)以外に、粗鉛の製造工程において添加されてもよい。
なお、アンチモンは、精錬されたものであってもよく、未精錬(例えば、鉛が含まれた状態)のアンチモンであってもよい。
アンチモン含有量を、テルル含有量に対し、質量比で30倍以上に調整してなる前記粗鉛A、及び、アンチモン含有量を1.8質量%以上とした粗鉛Aのいずれかを鋳造してなる陽極を使用することにより、電解時に、前記粗鉛A中のテルルがアンチモンに効率よく固定されるため、テルルの電解液への溶出を抑制することができる。
前記電解工程(5)は、前記陽極鋳造工程(4)により製造された陽極と、電解精製により得られた鉛からなる陰極とを、珪フッ化鉛及び珪フッ酸を含む電解液を循環させた電解槽に懸吊して浸漬し、前記陽極及び前記陰極に直流電流を通電する工程である。
電解工程中の前記電解液の液温としては、30〜40℃が好ましい。
また、前記電解液は、膠等の分散剤が添加されて使用されることが好ましい。
また、電流効率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
前記陽極処理工程(6)は、前記電解工程(5)を経た前記陽極を、スライム剥離槽中でスライムを剥離し、鋳返しとスライムとに分離し、更に分離した前記スライムから残存する電解液を分離回収する工程である。
前記スライムが剥離除去された前記陽極は、鋳返しとして、新たな陽極を製造する際の前記アンチモン品位調整工程(3)において、前記粗鉛Aに添加されることが好ましい。
前記回収電解液処理工程(7)は、前記回収電解液を、洗浄槽中で、前記陽極鋳造工程(4)により製造された陽極と、精製鉛からなる陰極とを用いて電解を行う工程である。電解を行うことにより、前記回収電解液中に含まれるビスマス、銅、アンチモン等の不純物は、前記陰極上に析出する。
電解後の前記陰極は、析出した不純物とともに、新たな陽極を製造する際の前記アンチモン品位調整工程(3)において、前記粗鉛Aに添加されることが好ましい。
電解後の前記回収電解液は、清浄化された電解液として電解液循環槽に送り、前記電解工程(5)で用いられる電解液として使用されることが好ましい。
前記陰極処理工程(8)は、前記電解工程(5)を経て電着鉛が析出した前記陰極を、洗浄し、溶解し、精製した後、高純度鉛、又は新たな前記電解工程(5)において用いられる陰極に鋳造する工程である。
前記その他の工程としては、例えば、前記陽極処理工程(6)で回収された固形分から有価金属を回収する有価金属回収工程等が挙げられる。
前記有価金属を回収する方法としては、例えば、乾式製錬により得られた粗銀を電解精製することにより、銀等を回収する方法等が挙げられる。
本発明の電気電子部品用の高純度鉛は、上述の本発明のテルル含有粗鉛の電解方法により得られ、テルルの含有量が0.1質量ppm未満であり、かつ、鉛の含有量が99.999質量%以上である。更に、他の不純物、例えば、アンチモン、ヒ素、錫の含有量は0.5ppm未満であり、テルル、鉄、銀、錫、銅、及びアンチモンの含有量の総和が5質量ppm以下である。
また、本発明の高純度鉛は、上述の本発明のテルル含有粗鉛の電解方法により得られ、テルルの含有量が0.1質量ppm未満であり、ビスマスの含有量が1質量ppm未満であり、かつ、鉛の含有量が99.999質量%以上であることが好ましい。
さらに、本発明の高純度鉛は、テルルの含有量が0.01質量ppm未満であることがより好ましい。
また、前記高純度鉛の鉛含有量、すなわち純度は、前記不純物含有量の総和から、減算により計算値として求めることができる。
テルルを0.059質量%含有する粗鉛を原料として、図1の工程の流れに従い、粗鉛中のアンチモン含有量を、テルル含有量に対し質量比で30倍以上となるように調整し、陽極を製造した。得られた陽極中の粗鉛のアンチモン含有量は、1.84質量%であり、テルル含有量に対し質量比で31倍であった。
該陽極の粗鉛中の組成を表1に示す。
実施例1において、陰極電流密度を148A/m2とした以外は、実施例1と同様にしてテルル含有粗鉛の電解を行った。
この結果、得られた電着鉛中の不純物含有量は、テルル0.01質量ppm未満(分析限界の下限値以下)、銀0.5質量ppm未満、銅0.8質量ppm、鉄0.7質量ppm未満、ビスマス0.6質量ppm、アンチモン1.1質量ppmであり、鉛の純度は99.999質量%であった。テルル含有量及びビスマス含有量の極めて低い高純度鉛が得られたことがわかった。結果を表1にあわせて示す。
実施例2において、粗鉛中のアンチモン含有量をテルル含有量に対し質量比で30倍以上となるように調整した結果、アンチモン含有量が2.22質量%、テルル含有量に対し質量比で37倍の陽極が得られ、これを用いた以外は、実施例2と同様にしてテルル含有粗鉛の電解を行った。
この結果、得られた電着鉛中の不純物含有量は、テルル0.01質量ppm未満(分析限界の下限値以下)、銀0.5質量ppm未満、銅0.5質量ppm、鉄0.4質量ppm未満、ビスマス3.4質量ppm、アンチモン2質量ppmであり、鉛の純度は99.999質量%であった。テルル含有量の極めて低い高純度鉛が得られたことがわかった。結果を表1にあわせて示す。
実施例2において、粗鉛中のアンチモン含有量をテルル含有量に対し質量比で30倍以上となるように調整した結果、アンチモン含有量が2.46質量%、テルル含有量に対し質量比で41倍の陽極が得られ、これを用いた以外は、実施例2と同様にしてテルル含有粗鉛の電解を行った。
この結果、得られた電着鉛中の不純物含有量は、テルル0.01質量ppm未満(分析限界の下限値以下)、銀0.5質量ppm未満、銅0.9質量ppm、鉄0.2質量ppm未満、ビスマス3.8質量ppm、アンチモン2.9質量ppmであり、鉛の純度は99.999質量%であった。テルル含有量の極めて低い高純度鉛が得られたことがわかった。結果を表1にあわせて示す。
粗鉛中のアンチモン含有量が1.67質量%、テルル含有量に対し質量比で28倍の陽極を用いた以外は、実施例2と同様にしてテルル含有粗鉛の電解を行った得られた電着鉛中のテルル含有量は、0.03質量ppmであった。結果を表1にあわせて示す。
また、前記テルル含有粗鉛の電解方法により得られた高純度鉛は、テルル品位が極めて低いため、高純度鉛原料として好適であり、特に、電気電子部品用、超伝導材料における添加成分として好適である。
Claims (7)
- 陽極と、陰極と、珪フッ化鉛及び珪フッ酸を含む電解液とを用いる鉛電解方法において、
テルル(Te)を0.1質量ppm以上含有する粗鉛を前記陽極とし、
前記陽極の粗鉛中のアンチモン(Sb)含有量を、該陽極の粗鉛中のテルル含有量に対し、質量比で30倍以上とすることを特徴とするテルル含有粗鉛の電解精製方法。 - 陽極の粗鉛中のアンチモン含有量を、該陽極の粗鉛中のテルル含有量に対し、質量比で30〜45倍とする請求項1に記載のテルル含有粗鉛の電解精製方法。
- 陽極の粗鉛中のアンチモン含有量を1.8質量%以上とする請求項1から2のいずれかに記載のテルル含有粗鉛の電解精製方法。
- 陽極の粗鉛中のアンチモン含有量を1.8〜2.4質量%とする請求項1から3のいずれかに記載のテルル含有粗鉛の電解精製方法。
- 陽極が、アンチモンを添加した粗鉛からなる請求項1から4のいずれかに記載のテルル含有粗鉛の電解精製方法。
- テルルの含有量が0.1質量ppm未満であり、かつ、鉛の含有量が99.999質量%以上であることを特徴とする電気電子部品用の高純度鉛。
- テルルの含有量が0.1質量ppm未満であり、ビスマス(Bi)の含有量が1質量ppm未満であり、かつ鉛の含有量が99.999質量%以上である請求項6に記載の電気電子部品用の高純度鉛。
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