JPWO2018139651A1 - 無捲縮短繊維の製造方法、及び得られた無捲縮短繊維を含む湿式不織布 - Google Patents

無捲縮短繊維の製造方法、及び得られた無捲縮短繊維を含む湿式不織布 Download PDF

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Abstract

水中分散性に優れた無捲縮短繊維をより効率的に製造する方法を提供する。紡糸速度600m/分以上で紡糸し、該紡糸速度以上の速度で繊維トウを35mm以下の長さにカットする無捲縮短繊維の製造方法において、下記要件(I)〜(III):(I)紡糸直後の未延伸マルチフィラメントをそのまま、または複数本を束ねて繊維トウとすること;(II)該束ねた繊維トウを収缶することなく連続してカットすること;及び(III)紡糸直後の未延伸マルチフィラメントから繊維トウのカット前までに1か所以上の親水性油剤を付与する工程を有することを具備することを特徴とする無捲縮短繊維の製造方法。

Description

本発明は、無捲縮短繊維の製造方法に関し、さらに詳しくは、水中分散性に優れた無捲縮短繊維の製造方法に関する。
特許文献1に、直接紡糸延伸法により延伸トウを製造し、捲縮付与を行う製造方法が開示されており、その好ましい方法として、捲縮処理後に収缶し、その後カットする方法や、収缶処理後に捲縮、カットを行う方法が採用されている。しかしこのような収缶工程では、工程が一旦停止し生産効率が低下することに加えて、途中のガイド類やローラー類などで糸導が複雑となり、品質不良が起こりやすい。また、原糸糸長のバラツキによる生産終了時の残原糸や、屑扱いのトウが発生しやすく、歩留り面でも問題がある。さらに、紡糸した繊維をトウ等の状態で一旦保管する収缶工程では、工程安定性のため繊維に収束性を付与することが要求され、紡糸段階において収束性の高い紡糸油剤を使用することが必要である。しかしこのような収束性の高い油剤は、最終製品である短繊維の水中分散性を阻害することがある。特に抄紙用の短繊維では、補強効果に優れると共に、水中分散性に優れることが必要であり、従来の製造方法では十分に満足が得られる品質の短繊維は得られていない。
特許文献2には、延伸繊維トウの走行速度が130〜6,000m/分であって、熱処理直後に仕上げ油剤を合成繊維トウに噴霧で付与し、該合成繊維トウに捲縮を付与することを特徴とする合成繊維トウの製造方法が開示されている。また、抄紙用の短繊維においては、抄紙工程での水中分散性を向上させるために、繊維に親水性油剤を付与することに加えて、高い水分保持率とすることが有効であることが知られている。しかしながら、特許文献2に開示された高速走行技術では、水中分散性の性能を維持するに必要な、水、油剤等の高い付着率を付与することは困難である。
特開2002−088607号公報 特開2002−155422号公報
本発明は上記背景のもとになされたもので、水中分散性に優れた無捲縮短繊維をより効率的に製造する方法を提供することにある。
本発明による無捲縮短繊維の製造方法は、紡糸速度600m/分以上で紡糸し、該紡糸速度以上の速度で繊維トウを35mm以下の長さにカットする無捲縮短繊維の製造方法において、下記要件(I)〜(III):
(I)紡糸直後の未延伸マルチフィラメントをそのまま、または複数本を束ねて繊維トウとすること;
(II)上記束ねた繊維トウを収缶することなく連続してカットすること;及び
(III)紡糸直後の未延伸マルチフィラメントから繊維トウのカット前までに1か所以上の親水性油剤を付与する工程を有すること、を具備することを特徴とする。
さらに、上記カットの速度は600〜4,000m/分の範囲にあることが好ましい。また、上記カットは、複数のカッター刃を有し、各カッター刃の間隔がカッター刃の切断面から背面まで同一である短繊維用カッターによってカットする方法であることが好ましい。また、上記繊維トウは1000dtex以上であることが好ましい。また、上記親水性油剤はポリアルキレングリコール誘導体を含む油剤であることが好ましい。
また、上記親水性油剤を付与する工程は、断面視で円弧形をなす湾曲部を含む液体付与装置を用い、上記繊維トウを、該湾曲部に接触させた状態で走行させながら該湾曲部から液状油剤を吐出させて該繊維トウに付与する工程を含むことが好ましい。別法として、上記親水性油剤を付与する工程は、平面部を含み該平面部の一部に開孔領域を設け、該開孔領域に開孔部(液体吐出孔)を有する液体付与装置を用い、上記繊維トウを、該開孔領域の上方及び/又は下方を、該平面部に接触しないように走行させながら該開孔部から液体を吐出させて該繊維トウに付与する工程を含むことが好ましい。
また、上記無捲縮短繊維は未延伸であることが好ましい。さらに、該未延伸短繊維の複屈折率が0.001〜0.100の範囲にあることが好ましい。さらには繊維トウのカット前までの各工程における繊維トウの張力が降伏張力未満であることが好ましい。
本発明はまた、上記方法で得られた未延伸の無捲縮短繊維と、延伸された短繊維を主たる原材料として混合した水分散液を、湿式不織布製造装置によって抄紙し、熱圧加工して得られる不織布を提供する。
本発明によると、水中分散性に優れた無捲縮短繊維をより効率的に製造することができる。
未延伸糸の荷伸曲線における降伏応力(σy)の概念図 液体付与装置の概略図 上向き湾曲部に繊維トウの下側を沿わせる際の糸道、抱き角αを示す、液体付与工程の概略図 下向き湾曲部に繊維トウの上側を沿わせる際の糸道、抱き角αを示す、液体付与工程の概略図 別態様による液体付与装置の概略図 別態様による液体付与装置の平面部で繊維トウの上下を挟んだ工程例の概略図 紡糸、延伸・オーバーフィード、液体付与、カットを連続させた工程例の概略図
本発明による無捲縮短繊維の製造方法は、紡糸速度600m/分以上で紡糸し、該紡糸速度以上の速度で繊維トウを35mm以下の長さにカットする無捲縮短繊維の製造方法において、下記要件(I)〜(III):
(I)紡糸直後の未延伸マルチフィラメントをそのまま、または複数本を束ねて繊維トウとすること;
(II)上記束ねた繊維トウを収缶することなく連続してカットすること;及び
(III)紡糸直後の未延伸マルチフィラメントから繊維トウのカット前までに1か所以上の親水性油剤を付与する工程を有すること、を具備することを特徴とする。
無捲縮短繊維の製造に用いられるポリマーは、紡糸口金から吐出して繊維が成形される合成樹脂からなるポリマーであればよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル系、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系、ポリアミド6やポリアミド66等の脂肪族ポリアミド系、ポリパラフェニレンテレフタラミドやポリメタフェニレンイソフタラミドなどの芳香族ポリアミド系、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリアクリロニトリル系やビニロン、ポリフェニレンスルフィド、等、使用目的に応じて選択することができる。特に抄紙用に適した水中分散性と熱接着性を確保するためには、このような繊維成形性のポリマーとしてポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。
ポリエステル系樹脂の好適例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレートや、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレートのような芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとからなるポリエステル、ポリアルキレンシクロヘキサンジカルボキシレートのような脂環族カルボン酸と脂肪族ジオールとからなるポリエステル、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレートのような芳香族カルボン酸と脂環族ジオールとからなるポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペートのような脂肪族カルボン酸と脂肪族ジオールとからなるポリエステル、等が挙げられる。ポリ乳酸やポリヒドロキシ安息香酸のようなポリヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルを用いてもよい。さらに個別具体的な目的に応じて、酸成分としてイソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、α、β−(4−カルボキシフェノキシ)エタン、4、4−ジカルボキシフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸またはこれらのエステル類を、またジオール成分としてジエチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコール、等を1成分以上共重合させてもよい。さらにペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸、トリメシン酸等の3個以上のカルボン酸成分または水酸基をもつ成分を共重合させて、ポリマー構造に分岐をもたせてもよい。また、上記ポリエステル系樹脂を2種以上組み合わせた混合物を使用してもよい。特に、全繰り返し単位の85モル%以上、好ましくは95モル%以上がエチレンテレフタレートからなるポリエステルであることが好ましい。その際、テレフタル酸成分およびエチレングリコール成分以外の共重合成分としては、テレフタル酸成分に対して15モル%以下の少量の共重合成分を用いることが好ましい。
ポリエステルポリマーを用いる場合、その原料ポリエステルの固有粘度を0.30〜1.50dL/g、さらには0.40〜1.20dL/gの範囲内にすることが好ましい。例えば、一旦チップ形状としたポリマーを、さらに乾燥工程によって固相重合するなどの方法によって、固有粘度を調整することが可能である。さらに、本発明で用いられる繊維成形性のポリマーに、公知の添加剤、例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚剤、抗菌剤、消臭剤、蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等を含有させてもよい。
本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、上記のような繊維成形性ポリマーを溶融または溶解した紡糸液を、複数の吐出孔を有する紡糸口金から吐出し、凝固させて紡糸し、未延伸のマルチフィラメントとする。その際、紡糸速度が600m/分以上の高速紡糸であることが必要である。紡糸速度の上限としては3000m/分以下であることが好ましく、さらには800〜2700m/分、特には900〜2500m/分の範囲の高速紡糸であることが好ましい。また紡糸装置としては、スクリュー式押出機を装備した溶融紡糸装置を用いることが好ましい。
上記紡糸速度が低すぎる場合には、紡糸後の未延伸糸内の分子配向が小さくなる傾向となり、ひいては経時結晶化による脆化が生じやすく、得られる短繊維の物性が低下するおそれがある。このような低物性の短繊維を抄紙分野に採用した場合、そこが欠点となり抄紙した紙の強力が低下し、あるいは各種物性のバラツキの原因となる。逆に紡糸速度が高すぎる場合には、繊維物性は向上する反面、紡糸線上での配向結晶化が促進され、非晶部分が少なくなる傾向となる。このように非晶部分が少ない短繊維を抄紙分野に採用した場合、抄紙後の湿式不織布の接着性能が低下する傾向にある。
本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、紡糸直後の未延伸マルチフィラメントから繊維トウのカット前までに1か所以上の工程において親水性油剤を付与することが必要である。好ましくは紡糸直後からマルチフィラメントを収束するまでと延伸熱処理から繊維トウのカット前までに1箇所以上付与する。
親水性油剤は、ポリアルキレングリコール誘導体であることが好ましく、中でもポリエーテル・ポリエステル共重合体であることが特に好ましい。より具体的には、テレフタル酸および/またはイソフタル酸、低級アルキレングリコール並びにポリアルキレングリコールおよび/またはそのモノエーテルからなる、ポリエーテル・ポリエステル共重合体であることが好ましい。
好ましく用いられる低級アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールを挙げることができる。一方、ポリアルキレングリコールとしては、平均分子量600〜6000のポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体、ポリプロピレングリコールが例示できる。さらにポリアルキレングリコールのモノエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノフェニルエーテル等が挙げられる。なお、該共重合体はテレフタレート単位とイソフタレート単位のモル比が95:5〜40:60の範囲内が水中分散性の点から好ましいが、アルカリ金属塩スルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸等を少量共重合していてもよい。以上の成分からなるポリエーテル・ポリエステル共重合体の平均分子量は、使用するポリアルキレングリコールの分子量にもよるが、通常1000〜20000、好ましくは3000〜15000である。平均分子量が低すぎると水中分散性の向上効果が低下し、一方平均分子量が高すぎると、重合体の乳化分性が低下する。
本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、ポリアルキレングリコール誘導体等の親水性油剤を、水分散液として繊維表面に付着させることが好ましい。親水性油剤は通常、撹拌工程などで容易に水中へ分散させることができる。なお、得られる水性分散液の安定性をより向上させるために、さらに界面活性剤や有機溶媒を少量添加してもよく、またその他の油剤等の各種処理剤を混合使用することも好ましい方法である。親水性油剤の付着方法はスプレー、ローラータッチ(キスロール)、メータリングオイル(孔のあいたセラミックガイドにギアポンプなどで定量の油剤を付与する方法)等の方法を採用することが好ましい。
本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、紡糸口金から吐出した直後の紡糸工程にて、親水性油剤を付与することが好ましい。特に未延伸の無捲縮短繊維の場合が好ましく有効である。
従来は、短繊維を製造する工程で、紡糸後に、収缶する工程があったため、マルチフィラメントがばらける問題があり、収束性の高い油剤を使用しなければならず、その結果、湿式不織布に必要な水中分散性が十分ではなかった。しかしながら、本発明の収缶工程等を省略し、紡糸からカットまでを連続とする製造方法とすることで、収缶時に生じる上記のマルチフィラメントがばらける問題が回避でき、収束性が従来より多少劣りながらも、本発明で使用する親水性油剤の収束性で生産が可能となり、親水性油剤が付与する抄紙時の水中分散性の向上と相俟って、抄紙品位が大きく向上することとなった。
通常このような親水性油剤は最終工程にて付与することが多いが、本発明では短繊維の製造途中での巻き取りや収缶等の途中工程を省略することにより、紡糸油剤としての採用が可能となった。さらには、口金から吐出された溶融ポリマーを冷却固化後、繊維トウを束ねることなく速やかに親水性油剤を付与することが好ましい。処理時間を短くするとともに、繊維表面に均一に親水性油剤を付与することが可能となる。
さらには本発明では、集束される前の未延伸繊維にポリアルキレングリコール誘導体等の親水性油剤を付与する場合、集束した後に付与する従来の場合に比べて、1本1本の繊維表面に有効成分が行き渡りやすくなる。そのため、当該成分が繊維表面に十分に付着し、水中での未分散を大幅に抑制する効果が得られる。
親水性油剤を紡糸油剤として用いる場合、本発明の製造方法では水系のエマルジョンであることが好ましい。ポリアルキレングリコール誘導体のエマルジョン濃度としては、0.5〜3質量%の範囲であることが好ましい。さらには紡糸直後の未延伸繊維に対するエマルジョンの付着量としては、5〜50質量%であることが、特には10〜30質量%の範囲であることが好ましい。
親水性油剤の未延伸繊維もしくは延伸繊維への付着量は、未延伸繊維もしくは延伸繊維の質量を基準として、好ましくは0.1〜3質量%、より好ましくは0.2〜2.5質量%、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%の範囲である。付着量が少なすぎる場合には、後の抄紙工程等での水中への繊維の分散が不十分となる傾向にある。逆に、付着量が多くなりすぎた場合には、繊維間の接着性が阻害される傾向がある。また、抄紙工程循環水への水質負荷を増大させる傾向にある。ここで、紡糸油剤付着量は以下の方法で定義される値である。
付着率=油剤エマルジョン濃度(質量%)×水分率(質量%)/100
本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、上記のように紡糸口金吐出後に親水性油剤を付与した未延伸マルチフィラメントを、そのまま又は複数本を束ねて1000dtex以上の繊維トウとする。一つの紡糸口金からは1000〜50000dtex、特に2000〜20000dtexのマルチフィラメントを吐出することが好ましい。さらに好ましくは、2本〜40本以上、特に3〜30本のマルチフィラメントを束ねて、合糸後に2000〜100000dtex、特に3000〜50000dtexの繊維トウにすることが好ましい。このような短繊維が集合した最終的な繊維トウの総フィラメント数としては、上記の総繊度となるように、50〜10万本、特に100〜9万本の範囲であることが好ましい。
上述の紡糸直後の未延伸繊維の総繊度を小さくしすぎると、油剤成分を繊維表面に付与する場合、より均一に付着させることが容易となるものの、高い生産能力を得るためには多数の口金を使用する必要があり、工業的には不利となる。また、総繊度が大きすぎると、ポリアルキレングリコール誘導体を含む油剤を、繊維表面に均一に付与することが困難な傾向にある。
本発明で得られる無捲縮短繊維を構成する単糸の繊度としては0.001〜100dtex、好ましくは0.1〜30dtexであることが好ましい。特に本発明の製造方法にて得られる無捲縮短繊維を抄紙用として用いる場合、このような単糸繊度であることにより、より効率的な製造が可能となる。単糸繊度が細すぎる場合には、紡糸時の曳糸性が低下する傾向にあり、単糸繊度が太すぎる場合には、紡糸後の冷却が困難となる傾向にある。特に本発明の製造方法にて得られる短繊維を抄紙用として用いる場合に、このような繊度範囲とすることが好ましい。
また、本発明で得られる無捲縮短繊維の断面形状に特に制限は無く、丸断面以外に楕円断面、3〜8葉断面等の多葉断面、3〜8角の多角形断面など異型断面であることも好ましい。また、中実繊維に限られず、中空繊維や複合繊維であることも好ましい。複合繊維である場合の複合の形態としては、芯鞘型、偏心芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型、セグメントパイ型等が例示される。
本発明の製造方法では、紡糸直後にポリアルキレングリコール誘導体を含む油剤が付与された未延伸マルチフィラメントをそのまま又は複数本束ねて繊維トウとし、収缶することなく連続して、表面温度80℃以下、好ましくは70℃以下の乾熱ローラーで予熱処理した後、240℃未満の温度で延伸処理を行うことができる。
このような乾熱ローラーで、低温で予熱処理を施すことで、アルキレングリコール誘導体による熱分解を押え、安定した生産を行うことが可能となる。この段階で高い温度で加熱すると、繊維同士が膠着し、水中分散性が悪化する傾向にあるからである。
次いで、速度の異なる複数の加熱ローラー間で、延伸を実施することができる。この時延伸処理の温度としては、240℃未満、さらには140〜220℃の範囲にコントロールすることが好ましい。未延伸繊維は一対のローラーに2〜10ターン巻き付け、速度を変化させた複数のネルソン型ローラー間で、2〜10段階の延伸をすることが好ましい。延伸倍率としては各ロール対間で1倍より大きく5倍未満であることが好ましく、全体で1.5〜5.0倍の倍率であることが好ましい。さらに、延伸を実施した後、好ましくは140℃以上240℃未満、特に好ましくは、160℃以上220℃未満で熱処理を施すことが好ましい。このような熱処理を行うことにより、最終的に得られる繊維の熱収縮率を適度に抑制することが可能となる。ただしこの温度が高すぎると、繊維同士が膠着しやすい傾向にあり、特に抄紙用に用いた場合には、水中での分散性が不十分になる傾向にある。
本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、繊維トウを紡糸速度以上の速度でカットする。従来は、未延伸もしくは延伸を施した短繊維を製造する場合には、未延伸マルチフィラメントからなる未延伸繊維トウを一旦トウ缶に収缶するなどして保管し、又はクリンプ工程にてその製造速度を低下させるなどしてから、低速度のカット工程に供される。しかし本発明は、収缶、クリンプなどの余分な工程を排除し、連続して繊維トウをカットすることを特徴とする無捲縮短繊維の製造方法である。
本発明にて得られる無捲縮短繊維を抄紙用途に用いる場合、水中分散性に必要なポリアルキレングリコール誘導体、詳しくはポリエーテル・ポリエステル共重合体の水系エマルジョンなどの親水性油剤を付与することが必要であるが、本発明の製造方法では紡糸工程で親水性油剤が付与された場合には、延伸工程その他の工程での油剤付与を省略することができ、連続工程化が容易である。
通常、巻き取り工程や収缶工程を中間工程に入れる場合、紡糸油剤として親水性油剤を用いることが、低摩擦や収束性不足により困難であるが、本発明の製造方法ではその巻き取り工程や収缶工程を省略することにより、紡糸油剤として親水性油剤を用いることが可能となった。
さらに本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、得られる短繊維が無捲縮のため、水中での絡み合いが防止されている。そして捲縮をするためのクリンパー工程が省略されている点からも連続工程化が容易である。
本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、紡糸直後に液体付与された未延伸トウを、紡糸機から、必要に応じて延伸工程を経て、カッター(高速カッター)に投入している。そして連続して加工することにより、工程を短くすることが可能となり、途中のガイド類やローラー類などにおける糸導の傷などによる単糸切れや、単糸またはサブトウ単位での収束不良が発生することによる過長繊維(繊維長が設定より長い)などの発生を減少させることが可能となった。通常の工程では繊維トウの収缶時に、繊維トウが屈曲し(ギアリール)、あるいは屈曲しなくても単糸のサバケやループが生じる(エジェクター)ことがあった。また、収缶する際に、繊維トウ(原糸)がもつれたり、ひきつったり、単糸バラケ(サバケ)が発生することがあった。
ところで本発明の無捲縮短繊維の製造方法は、連続して切断加工するのであるが、その際に紡糸速度以上の速度で、35mm以下の長さにカットするものである。
すなわちカット工程での繊維トウのカット速度は、本発明では紡糸速度以上であって、紡糸速度よりも高速であることが好ましい。具体的には、カット工程での繊維トウのカット速度は、600m/分以上の紡糸速度より高速であり、好ましくは800m/分以上、より好ましくは900m/分以上であり、かつ、好ましくは4,000m/分以下、より好ましくは3,500m/分以下、さらに好ましくは3,000m/分以下、特に好ましくは2700m/分以下の範囲である。
そして本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、例えば、延伸短繊維を製造する場合、延伸、熱処理された延伸繊維トウに、必要に応じて水を付与することが好ましい。水を付与することで、カットした後に繊維が飛散することを抑止することができ、かつ梱包時の嵩を低減することができる。また、抄紙する際の水の繊維間への浸透を促進し、水中分散性を向上させることができる。このときの水分率は、繊維質量を基準に0.5〜35%が好ましく、0.5〜20%とすることがより好ましく、さらには2〜15%、とくには15%未満とすることが好ましい。
さらにはこのとき、紡糸時に付与したアルキレングリコール誘導体の効果を補完するため、延伸処理後、繊維トウのカット前に、アルキレングリコール誘導体を付与することが好ましい。また、必要に応じて界面活性剤等の機能剤を添加してもよい。付与するアルキレングリコール誘導体は、上記紡糸時に使用したものと、同じでも、また、異なっていてもよい。
そして本発明の製造方法では、捲縮を付与せず、高速カッターに供給して、所定の繊維長にカットする。この高速カッターに供給する際には、弛みなどによる過長繊維が発生することを防ぐため、トウテンションをコントロールすることが好ましい。トウテンションをコントロールするには、ダンサーローラーやロードセルによるオートコントロール、高速ワインダーに用いるバランサーなどの公知の技術を適用できる。
また本発明の製造方法のカット長としては35mm以下であるが、特に本発明の製造方法にて得られる短繊維を抄紙用として使用する場合には、その繊維長は1〜30mm以下、さらには1〜20mm、特には2〜10mmの範囲であることが好ましい。
繊維長が長くなると加工速度が速くなった際にもカット頻度が低くなるために加工が容易にはなるものの、繊維同士の絡み合いが起こりやすくなる問題が発生しやすい。特に抄紙分野に用いる場合には、繊維長が30mm以下であることが好ましい。カット長が長くなると、抄紙時、繊維の水中分散性が悪化する傾向にある。繊維長が長くなりすぎると繊維同士が水中で絡みやすくなるため、上限の繊維長は短いことが好ましい。好ましくは20mm以下、特には10mm以下の繊維長さであることが好ましい。一方、繊維長が短すぎる場合には、カッター刃の間隔が小さくなるために、刃間によって形成されるスペースでの製造時の切断抵抗が大きくなるため、繊維が伸ばされ、又は単繊維同士が絡み易くなり、品質の低下につながる傾向にある。例えば、繊維間膠着が発生し、安定した切断が難しくなる傾向にある。また得られる繊維中に繊維塊が多くなる傾向にあり、特に抄紙用途に用いる場合などには、水中への分散性が悪くなる傾向にある。
そしてこのように高速で短い延伸短繊維を得るためには、カットが、複数のカッター刃を有し、各カッター刃の間隔がカッター刃の切断面から背面まで同一又はそれ以上の間隔である短繊維用カッターによってカットする方法であることが好ましい。
なお通常のロータリーカッターは複数のカッター刃を有するものの、カッター刃の間隔はカッター刃の切断面から背面までだんだんと間隔が狭くなっている。カッター刃を配置したロータリー外側に向いて刃が配置されており、繊維トウはそのロータリーの外側に巻き付け、切断された繊維はそのロータリーの中心部から排出される機構となっているためである。このような装置では600m/分以上の加工速度を確保することは非常に困難である。
例えば、実用新案登録第3103190号公報に記載されているような汎用的なロータリーカッターは、繊維トウ(長繊維束)を短繊維にカットする業界においては最も一般的に使用されているものである。この方式では、カッター刃間で形成される扇型の空間において、切断後排出に向けて刃間距離が徐々に狭くなり、カット繊維の排出抵抗が大きくなるために、ローター回転数、すなわちカッター速度(=トウ速度)を上げると、排出不良のためにカッター刃が折れるなどの不具合が発生する。通常このタイプのカッターの限界速度は300m/分以下で使用することが必要であると言われている。
本発明では上記のように、各カッター刃の間隔がカッター刃の切断面から背面まで同一又はそれ以上の間隔である短繊維用カッターを用いることが好ましい(以降、高速カッターと呼ぶことがある)。より具体的には、例えば米国特許第4,577,537号明細書や米国特許第4,528,880号明細書に記載の機構をもった短繊維用カッターを用いることが好ましい。通常のロータリーカッターのような排出抵抗の上昇がなく、600m/分を超えるような速度であっても、繊維トウをカットすることが容易となる。その機構は、カッター刃を放射状に配列するが、切断側が上方に向くようにし、その上方に配置される回転するローターに繊維トウを巻きつけながら、さらに上方に設置した、繊維トウを押し切りするための傾斜リングで徐々に押し切りする方式である。カッター刃の切断面から背面(カット繊維排出側)まで刃間距離は一定であるため、排出抵抗の上昇を抑えることが可能となり、3000m/分以上の高速で繊維トウをカットした場合であっても、刃折れの発生を防止することができる。
このような本発明の製造方法にて得られた無捲縮短繊維は、繊維表面に均一に油剤が付与されており、水中分散性に優れた親水性無捲縮短繊維であって、未分散となりにくく、特に抄紙用に適した短繊維となる。そして本発明の製造方法では、このような無捲縮短繊維を効率的に製造することが可能となるのである。
さらにこの無捲縮短繊維は、湿式不織布等に加工することで、各種の生活資材、産業資材に好適に用いることが可能である。
本発明の無捲縮短繊維の製造方法は、目的に応じて、紡糸後に未延伸、もしくは延伸を施して短繊維を得ることができる。
以下に、本発明の未延伸短繊維のプロセスについて説明する。
未延伸糸の状態を保つためには、全工程においてその工程張力を未延伸糸のネック延伸が起こらない限度に抑えることが必要である。そしてカット前までの各工程における繊維トウの張力が未延伸糸の降伏張力未満であることが好ましい。
中でもカッター工程前後の未延伸糸(繊維トウ)の張力は重要であって、特にはカッター前の未延伸糸(繊維トウ)の張力を、未延伸糸のネック延伸が起こらない限度に抑えることが重要である。好ましくはネック延伸が起こる張力の1%〜95%の張力に調整することが、特には2%〜90%の張力に調整することが好ましい。なおネック延伸の起こる張力は、未延伸糸の荷伸曲線を引っ張り強伸度試験機にてオフラインで測定し、ネック延伸を起こす前の降伏応力を求め、その張力との比較により定めることが可能である。未延伸糸の降伏応力(σy)の概念図を図1に示す。
カッター前張力が小さすぎると、高速カッター内部で繊維トウに弛みが生じ、過長繊維が発生する。逆にカッター前張力が高すぎるとわずかな工程張力の変動によって部分的なネック延伸が始まり、均一な短繊維が得られない。そのような不均一な短繊維では特に抄紙分野に用いた場合に、バインダー性能や繊維径が変動し、接着性能や寸法安定性の低下や、抄紙地合い乱れの原因となる。このようなカッター前張力(トウテンション)をコントロールするには、ダンサーローラーやロードセルによるオートコントロール、高速ワインダーに用いるバランサーや、カッター速度をカッター前供給速度より速くする等の公知の技術を適用することが好ましい。
また本発明の無捲縮短繊維の製造方法にて得られた未延伸の無捲縮短繊維を抄紙分野、特に未延伸バインダー繊維として用いるためには、未延伸短繊維の複屈折率が0.001〜0.100の範囲にあることが好ましい。さらに適正範囲は樹脂により異なるが、例えばポリエステル樹脂を用いた場合には0.005〜0.090、特には0.010〜0.080の範囲であることが好ましい。複屈折率は未延伸繊維の分子の配向を示し、特に紙用途の未延伸バインダー繊維とする場合に、バインダー接着性能や紙強度に大きく影響し、途中工程における接着温度や圧力条件を大きく左右する物性である。
また、上記未延伸の無捲縮短繊維の複屈折率は、紡糸速度や紡糸ドラフト率によって調整することが可能である。抄紙用バインダー繊維として用いる場合には、屈折率をこの範囲に収めるためにも、紡糸速度としては未延伸短繊維の場合は、700〜3000m/分の範囲であることが好ましい。紡糸速度が小さいと、未延伸糸内の分子配向が少ないため、経時結晶化による脆化を生じやすくなり、そこが欠点となって、未延伸短繊維とした場合の紙強力が低下、あるいはバラツキが見られる。また、紡糸速度が大きすぎると紡糸線上で配向結晶化を生じ、非晶部分が支配する抄紙後不織布の接着性能を劣化させることになる。
またこのような本発明の製造方法により得られた上記未延伸の無捲縮短繊維は、特に抄紙用のバインダー繊維として用いる場合、その水分保持率が3〜40質量%であることが好ましい。定かではないが水分保持率が低すぎる場合には、繊維表面に形成された親水性油剤の被膜が、抄紙工程で繊維表面から脱落しにくくなり、接着障害をひき起こして紙強力が低下する傾向にある。一方水分保持率が高すぎる場合には、カット工程にて水の飛散が多くなり安定に繊維を切断することが困難となる。また得られた未延伸繊維の質量が増加し、輸送コストの観点からも不経済となる。
このような本発明の製造方法にて得られた上記未延伸の無捲縮短繊維は、水中分散性と熱接着性に優れた未延伸短繊維であって、特に抄紙バインダー用に適した短繊維となる。そして本発明の製造方法では、このような未延伸短繊維を効率的に製造することが可能となる。
次に、走行する繊維トウに対して液体を付与する方法の一例について説明する。
繊維トウが接触する部位は、断面視で円弧形をなす湾曲部からなる。該湾曲部の一部に開孔領域を設け、該開孔領域に開孔部(液体吐出孔)を有する液体付与装置を用い、該開孔領域に、繊維トウを、抱き角20°より大きく、180°より小さくなるように接触、走行させながら、該開孔部から液体を吐出させ、該繊維トウに付与する。
円弧状をなす湾曲部は、図2、図3、そして図4に例示するように、湾曲部の頂点(図2−g)が上向き(図3)、つまり反重力方向のパターン(湾曲部を繊維トウの下側に接触させる)、または、湾曲部の頂点が下向き(図4)、つまり重力方向のパターン(湾曲部を繊維トウの上側に接触させる)のいずれの向きでも差支えない。
湾曲部の頂点が上向きでも本発明の効果は発揮される。そして、湾曲部の頂点を下向きにした場合には、液体の付与率が高くなる傾向にあり、繊維トウが高速になるほど液体付与の効果が顕著となる。
上記湾曲部は、湾曲部の頂点(図3−g)の接線に対して、本発明の効果に影響しない範囲内で傾きが生じながら繊維トウに接触されても差し支えない。つまり、繊維トウの走行方向が、湾曲部の接線に対して、液体付与に影響が生じない範囲で傾き(ブレ)が生じても差し支えない。
図2、図3(湾曲部が上向きのパターン)で具体的に説明すると、複数の開孔部(図
2−b)を有する湾曲部(図2−a)からなり、開孔部から液体を吐出させた液体付与装置(図2)を使用して行う。湾曲部(図2―a)は、断面視で円弧形をなす曲面からなり、該曲面に沿って所定の抱き角(図3―α)となるように、抱き角調整部(図3―e)にて繊維トウを調整、固定し、繊維トウを開孔領域(図2−c)に面状に接触させることによって行う。このとき、開孔部(図2−b)から液体を吐出することで、繊維トウ内部まで液体を浸透させることができる。
開孔部(図2−b)の形状・形成方法は、プレス打ち抜きによるパンチングプレート形状、穴の開いたワイヤーを巻回した線材巻きによるもの、ワイヤーの織り編みによって形成されたメッシュ状のもの等を適宜選択することができる。特に、穴の開いたワイヤーを巻回した線材巻きによるものが好ましい。
開孔部(図2−b)の孔形状は特に限定されず、円形、楕円形、半円形、三角形、四角形、多角形、線状スリット等を適宜選択することができ、開孔部は複数の孔で形成される。
湾曲部(図2−a)の素材も油剤エマルジョンによる腐食や摩耗に耐える素材を適宜選択すればよく、アルマイト処理を施したアルミ材、ステンレス材(SUS−304、SUS−316等)を例示することができる。吐出した液体により湾曲部表面に液膜が均一に形成されるように、湾曲部を構成する素材に対して、処理を施してもよい。また、接触した際の開孔領域(図2−c)に繊維が取られることを防止するため、梨地加工等の摩擦低減処理を施してもよい。
円弧形の曲率半径(図3−f)は、繊維トウの走行速度にもよるが、好ましくは30〜300mm、より好ましくは50〜200mmとする。30mmより小さいと、抱き角(図3−α)を大きくしても、十分な接触時間を得ることができない。300mmより大きいと、繊維トウの接触面積に対して、開孔領域の面積が大きくなり過ぎるため、効率が低下し、ランニングコストが高くなる。
開孔率は、開孔部の総面積を、開孔領域の面積で除して100を乗じた値と定義すると、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、最も好ましくは1%以下とする。10%より大きくすると、吐出圧力を確保できなくなるとともに、付着斑が発生しやすくなる。
開孔率の下限は、0.01%が好ましく、0.03%がより好ましく、0.05%がさらに好ましい。開孔率が0.01%より小さくなると、液体が均一に付着され難くなる。
また、液体付与装置(図2)は、断面視で円弧状をなす湾曲状とすることで、繊維トウと面状に接触させ、接触時間を確保することができるとともに、繊維トウが、湾曲部に所定の抱き角で押し付けられることで、幅方向に薄く広げられ、同時に開孔部から供給される液体が繊維トウ内部に浸透しやすくなる。円弧形の湾曲部に繊維トウを接触させる際の抱き角は、20°より大きく180°より小さく、好ましくは30°より大きく160°より小さく、より好ましくは30°より大きく150°より小さく、さらに好ましくは50°より大きく150°以下、最も好ましくは50°より大きく130°より小さくする。20°より小さいと、繊維トウが幅方向に十分広がらず、液体を繊維トウ内部に浸透させることができない上、接触時間が不足するため、十分な液体付着率が得られない。180°以上とすると、接触時に繊維が取られて単糸切れが発生しやすくなり、水中に分散させた際に絡みが発生する。
以上、図2、図3の事例で述べたが、図4、つまり湾曲部を下向きにしたパターンにおいても、同様の傾向が言える。
加えて、開孔部から吐出される流速は0.2m/秒以上であることが、高速で走行する繊維トウ内部の単糸に均一に浸透させるのに必要である。液体吐出流速が0.2m/秒未満であると、液体(油剤エマルジョン溶液)が、単糸が密に詰まった繊維トウ内部まで浸透しにくくなり、短繊維の水中分散が不均一となりがちである。好ましい流速の範囲は0.3〜5.0m/秒、更に好ましくは0.7〜3.0m/秒である。
また、繊維トウが液体付与装置の湾曲部に接触させる際の接触時間(秒)は、0.001〜0.05秒、好ましくは0.002〜0.01秒である。0.001秒より短いと十分な油剤付与量を得ることが難しく、0.05秒より長いと、付着量が過大となり、液体の飛散が大きくなる。
本発明では、液体を付与した後、繊維トウが保持する液体を部分的に脱落させ、繊維トウに付着する液体の量を調整するプロセスを含むことが好ましい。調整する手段は特に限定されないが、1対のローラーで一定の把持圧力で繊維トウを把持するニップローラーを例示することができる。ニップローラーで把持する圧力を調整することで、液体の繊維トウに対する付着率をコントロールすることができる。
次に、走行する繊維トウに対して液体を付与する別の方法について説明する。
繊維トウが通過する部位は、平面部からなり、該平面部に開孔部(液体吐出孔)を有する液体付与装置を用い、該開孔領域に、該繊維トウを、接触しないように走行させながら、該開孔部から液体を吐出させ、該繊維トウに付与する。
上記の平面部は、該開孔領域に有する複数の該開孔部(液体吐出孔)(図5−aa)からなり、該開孔部から液体を吐出させた液体付与装置(図5)を使用して行う。該繊維トウを該開孔領域(液体吐出穴がある領域図5−aa)の上側、および/または下側を接触させることなく通過させることによって行う。このとき、該開孔部(図5−aa)から積極的に液体を吐出することで、繊維を損傷することなく繊維トウに液体を付与させることができる。開孔部(図5−aa)の形状・形成方法は、プレス打ち抜きによるパンチングプレート形状、穴の開いたワイヤーを巻回した線材巻きによるもの、ワイヤーの織り編みによって形成されたメッシュ状のもの、または不織布状のもの等を適宜選択することができる。
開孔部の孔形状は特に限定されず、円形、楕円形、半円形、三角形、四角形、多角形、線状スリット等を適宜選択することができ、開孔部は複数の孔で形成される。開孔領域(図5−aa)の素材も油剤エマルジョンによる腐食や摩耗に耐える素材を適宜選択すればよく、アルマイト処理を施したアルミ材、ステンレス材(SUS−304、SUS−316等)を例示することができる。
開孔率は、開孔部の総面積を、開孔領域の面積で除して100を乗じた値と定義すると、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、最も好ましくは1%以下とする。10%より大きくすると、吐出圧力を確保できなくなるとともに、付着斑が発生しやすくなる。開孔率の下限は、0.01%が好ましく、0.03%がより好ましく、0.05%がさらに好ましい。開孔率が0.01%より小さくなると、液体が均一に付着され難くなる。
また、本発明では、液体付与装置(図5)を繊維トウと接触させることなく、繊維トウに液体を付与することができる。繊維の損傷や糸切れが少なく、良好な品質の繊維を得ることができる。
上記液体付与装置の開孔領域、開孔部は、上向きであっても下向きであってもよい。上向き(図6−ff)、下向き(図6−gg)のどちらか一方の液体付与装置を設置してもよいし、上向きと下向きの液体付与装置を併用し、繊維トウを平面部で上下から挟むように設置してもよい(図6)。
上記液体付与装置を、上下で挟むように設置した方が、繊維トウの両面から液体を吐出することで、より均一に液体を付与することができる。
開孔部と走行する繊維トウの距離(h)は、好ましくは5〜200mm、より好ましくは10〜100mmの範囲である。開孔部と繊維トウの距離が5mmより近いと作業性が悪くなる。200mmより離れると吐出された液体が繊維トウに付与しにくくなり、液体の付着効率が悪くなる。
加えて、開孔部から吐出される流速は0.2m/秒以上であることが、高速で走行する繊維トウ内部の単糸に均一に浸透させるのに必要である。液体吐出流速が0.2m/秒未満であると、単糸が密に詰まった繊維トウ内部まで液体(油剤エマルジョン溶液)が浸透しにくくなり、短繊維の水中分散が不均一となりがちである。好ましい流速の範囲は0.3〜5.0m/秒、更に好ましくは0.7〜3.0m/秒である。
また、繊維トウが液体付与装置の開孔領域(図5−aa)を走行する通過時間は、0.001〜0.05秒、好ましくは0.002〜0.01秒である。0.001秒より短いと十分な油剤付与量を得ることが難しく、0.05秒より長いと、付着量が過大となり、液体の飛散が大きくなる。
平面部の面積は、繊維トウの走行速度、繊維トウの幅等の条件により適宜選択できる。開孔領域(図5−aa)の繊維トウの走行方向の長さ(図5−bb)は、上記の通過時間(秒)を確保できるように設定する必要がある。上記液体付与装置を繊維トウの走行方向に複数設置してもよい。その場合の通過時間は、各々の液体付与装置の通過時間を足した時間である。
開孔領域の幅(図5−cc)は、繊維トウの幅(図5−ee)よりも広くする必要がある。開孔領域が繊維トウの幅よりも狭いと繊維トウの幅方向に液体の付着斑が発生しやすくなり好ましくない。
本発明では、液体を付与した後、繊維トウが保持する液体を部分的に脱落させ、繊維トウに付着する液体の量を調整するプロセスを含むことが好ましい。調整する手段は特に限定されないが、1対のローラーで一定の把持圧力で繊維トウを把持するニップローラーを例示することができる。ニップローラーで把持する圧力を調整することで、液体の繊維トウに対する付着率をコントロールすることができる。
短繊維水分率、油剤付着率は、高い方が好ましい。短繊維水分率は、短繊維質量を基準に3〜40%とすることが好ましく、5〜35%がより好ましい。油剤付着率は、繊維質量を基準に0.05〜1.0%とすることが好ましく、0.1〜0.8%がより好ましい。この範囲とすることで、油剤等の機能性の液体を繊維トウ内部まで浸透させることができる。
短繊維を抄紙用に使用する場合は、水、または油剤エマルジョンを付与した後の繊維を、乾燥せずにそのまま梱包することが好ましい。そうすることでカットした後に繊維が飛散することを抑止することができ、かつ梱包時の嵩を低減することができる。また、抄紙する際の水の繊維間への浸透を促進し、水中分散性が向上する。
一般的に、繊維トウに液体を付与する方法としては、液浴中に繊維トウを浸漬する方法、オイリングローラーで付与する方法、シャワーやスプレーで付与する方法等が挙げられる。繊維トウを液浴中に浸漬する方法は、繊維トウが高速走行する条件下においては、液体の飛散が著しく、適用することが困難である。
オイリングローラーのように、ローラー下部に設置された液浴から、回転するローラーの表面に液体をピックアップした後、繊維に接触させて付与する方法では、ローラー表面に形成される液膜の量が制限される。特に、繊維トウが太く、かつ走行速度が速い場合には、十分な液体を付与することができない。また、スプレーやシャワーで付与する方法は、繊維トウの走行速度が速い場合には、液体の付与量に限界がある上、液体が繊維トウの表層部のみに付着するため、繊維トウをニップローラーで把持する等の手段により表層部の液体を繊維トウ内部に浸透させる等の付加的工程が必要となる。さらに、スプレーで液体を噴霧する場合は、粘度の高い液体を付与することができなかったり、使用時間が長くなると噴霧孔が閉塞したりする等の問題がある。
本発明の短繊維の製造方法における液体の付与方法は、繊維トウの高速走行においても、充分に液体を付与することができるため、上記の一般的な液体付与方法の課題を解決することができ、抄紙工程での水中分散性の良好な短繊維を得ることが可能となる。
本発明の無捲縮短繊維の製造方法は、紡糸、液体付与、カットを連続したプロセスで実施する製造方法である。紡糸からカットの間で、目的に応じて、未延伸、もしくは延伸を施して短繊維を得ることができる。
延伸をした場合(図7参照)は物性面において好ましく、主体繊維として有用であり、延伸をしない場合は、未延伸バインダー繊維として有用である。また、本発明の上記主体繊維と上記未延伸バインダーを用いて、湿式不織布を製造することも可能である。
本発明は、紡糸後の未延伸マルチフィラメントの1本、または複数本を収束させた繊維トウを、収缶することなく連続して延伸を施し、必要により連続して油剤等の機能剤を付与し、さらに連続して高速カッターでカットするプロセスで実施する短繊維の製造方法である。このようなプロセスでは、高速で走行し、かつ、繊度の大きい繊維トウに対して、均一に油剤エマルジョンを付与することが必要になるが、上記の液体付与装置(図2、図5)によって、それが可能となる。
通常、短繊維を製造する際には、一旦トウ缶に収缶するなどして保管し、又はクリンプ(捲縮)工程にてその製造速度を低下させるなどしてから、低速度のカット工程に供されることが多い。本発明により連続して加工することにより、工程を短くすることが可能となり、途中のガイド類やローラー類などにおける糸導の傷などによる単糸切れや、単糸またはサブトウ単位での収束不良が発生することによる過長繊維(繊維長が設定より長い)などの発生を減少させることが可能となる。
従来の製造方法では、繊維トウの収缶時に繊維トウが屈曲し(ギアリール)、あるいは屈曲しなくても単糸のサバケやループが生じる(エジェクター)ことがあった。また、収缶する際に、繊維トウ(原糸)がもつれたり、ひきつったり、単糸バラケ(サバケ)が発生することがあった。本発明による連続した製造方法では、このような欠点を低減することが可能となり、得られた短繊維は、単糸長さが均一となる。
本発明の製造方法にて得られた短繊維は、油剤エマルジョン等の液体が繊維に均一に付与された短繊維であって、機能性成分が繊維に均一に付与されており、無捲縮短繊維の場合は、水中分散性に優れ、特に抄紙用に適した短繊維となる。
捲縮短繊維の場合は、機能性の成分が繊維に均一に付与されて斑が小さくなり、品質に優れたものである。そして本発明の製造方法では、このような短繊維を効率的に製造することが可能となるのである。
これらの短繊維は、湿式不織布、乾式不織布等に加工することで、各種の生活資材、産業資材に好適に用いることが可能である。
以下、本発明の別の延伸プロセスについて説明する。
本発明の無捲縮短繊維の製造方法において、紡糸後の未延伸マルチフィラメントの1本、または複数本を収束させた繊維トウを、収缶することなく連続して延伸を施し、その延伸時のローラーの少なくとも1か所の表面温度が120℃以下であり、かつトータル延伸倍率が1.5〜5.5倍で延伸した後、オーバーフィードを施し、そのオーバーフィード時のローラーの少なくとも1か所の表面温度が、140〜240℃で、かつトータルドラフト比が0.88〜0.98でオーバーフィードを施し、連続して、延伸したトウを1〜35mmの長さにカットすることもできる。
より詳細には、未延伸マルチフィラメントを1本、または複数本を収束させて繊維トウとし、続く延伸プロセスでは、延伸用ローラーの表面温度が120℃以下であり、好ましくは100℃以下で延伸することができる。延伸用ローラーの下限は常温以上(15℃〜)が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。そして、連続してオーバーフィードを行うことができる。延伸用ローラーの表面温度が120℃より高い温度では、繊維同士が膠着や延伸時に繊維の溶断が発生する。一方、延伸温度が低い場合は、充分な倍率、均一な延伸ができない場合がある。
延伸は、速度の異なる複数の加熱ローラー間で実施することができる。一対のローラーに2〜10ターン巻き付け、速度を変化させた複数のネルソン型ローラー間で、2〜10段階の範囲のいずれかで延伸をすることができる。
延伸プロセスの延伸倍率としては、各ロール対間で1倍より大きく5.5倍未満であることが好ましく、トータルで、1.5〜5.5倍の延伸倍率であることが好ましい。
尚、上記延伸プロセスは、紡糸後の未延伸マルチフィラメントの1本、または複数本を収束してなる繊維トウを、収缶することなく、連続して延伸プロセスに供給することが好ましい。
さらには、延伸を実施した後、オーバーフィードを行うことができるが、そのローラー表面温度は140℃以上240℃以下、好ましくは160℃以上220℃以下の温度である。このようなローラー表面温度の条件により、最終的に得られる繊維の熱収縮率を適度に抑制することが可能となる。ただしこの温度が高すぎると、繊維同士が膠着しやすい傾向にあり、特に抄紙用に用いた場合には、水中での分散性が不十分となる傾向にある。
延伸と同様に、オーバーフィードは、一対のローラーに2〜10ターン巻き付けることで行うことができる。さらに、この時の熱処理と同時に、ローラー間でオーバーフィードを行うことが必要である。オーバーフィードを行うことで、分子配向を緩和させ、繊維の熱収縮率を抑制するとともに、繊維の初期弾性率を低減することができる。オーバーフィードは、ネルソン型ローラーの上流側の速度を下流側のローラーの速度より速く設定することで行うことができる。すなわち、上流側(紡糸側)のローラー対の周速度V1 m/分、下流側のローラー対の周速度をV2 m/分とすると、V1をV2より大きく設定することである。このとき、V2/V1を「ドラフト比」と定義すると、オーバーフィードは、ドラフト比を、1.00より小さくすること、と言い換えることができる。ここで、オーバーフィードは、1段階で行っても、多段階で行ってもよく、各段階のドラフト比を掛け合わせたものをトータルドラフト比と定義する。トータルドラフト比は0.88〜0.98、好ましくは、0.90〜0.96とする。トータルドラフト比が0.98より大きいと熱収縮率、弾性率が高くなり、抄紙した際の満足な紙物性が得られない。トータルドラフト比が0.88より小さいと、ローラー間で弛みが発生し、上流側ローラー上への繊維の捲き付きや弛んだ繊維が、カッター工程に導入されることに伴う過長繊維の発生等が問題となる。
延伸、オーバーフィードをした後の繊維トウは、カットする前に、冷却を施すことが好ましい。繊維トウの温度が高いままカットすると、繊維末端が融着したり、繊維側面が圧着されたりすることで水中に分散させた際に未分散繊維が発生する。冷却する手段は、特に限定されないが、表面温度が100℃以下のローラー上に巻き付ける繊維トウに、水や水系エマルジョンを付与する、カッターに導入する前に空冷するための距離を確保する等の手段が考えられる。
そして、本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、このような延伸処理を行った繊維トウを連続してカットする(図7参照)。通常、短繊維を製造する際には、一旦トウ缶に収缶するなどして保管し、又はクリンプ(捲縮)工程にてその製造速度を低下させるなどしてから、低速度のカット工程に供されることが多い。しかし、本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、収缶、クリンプなどの余分な工程を排除し、連続して加工することを特徴とする。
さらに本発明の無捲縮短繊維の製造方法では、得られた短繊維の水中での絡み合いが防止されている。そして捲縮をするためのクリンパー工程が省略されている点からも連続工程化が容易となった。
湿式不織布の製造方法の概要を述べる。
本発明の未延伸無捲縮短繊維と延伸無捲縮短繊維を混抄し、熱圧着することで、合成繊維による湿式不織布(合成繊維紙)を得ることができる。
本発明の湿式不織布の構成は、主体繊維として延伸無捲縮短繊維とし、バインダー繊維として未延伸無捲縮短繊維を適用する。上記主体繊維とバインダー繊維の比率(質量%)は、30/70〜80/20である。これらの各繊維比率から外れると不織布としての物性(強度、接着性)が低下することとなる。
未延伸無捲縮短繊維と延伸無捲縮短繊維を、目的とする強伸度や通気度等の物性が達成できる混率で水中に分散し、抄紙前の分散液(スラリー)を得る。なお、必要に応じて、本発明の短繊維以外の天然短繊維(木材パルプ、アバカ、サイザル麻、ケナフ、等)や合成繊維(ビニロン系短繊維、アクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリエステル/共重合ポリエステルやポリプロピレン/変性ポリオレフィン等の芯鞘複合短繊維、等)無機繊維(ガラス繊維など)などの繊維、添加剤や機能材等を目的に応じて水分散液に加え、混抄してもよい。
工業的な連続抄紙方法は、公知の短網抄紙機、長網抄紙機、円編抄紙機、またはその組合せにより、抄紙ネットに分散液を抄き上げて得られた短繊維湿潤ウェブをヤンキードライヤーまたは熱風式多孔筒ドライヤー等の装置で80〜160℃で加熱乾燥し、同時に仮溶融接着を行う。更に、十分な不織布強力を得るため、表面がフラットなカレンダーローラーや表面が凹凸であるエンボスローラー等で熱圧加工を施すことにより、繊維間の少なくとも一部を熱圧着させる。熱圧の温度や圧力は目的の物性によって選択すればよいが、一般的には180〜250℃の温度が選択される。
なお、試験片を得るためには、バッチ式小型抄紙機で十分であり、熊谷理機工業(株)製等の角形シートマシンに水分散液を充填し、混合、撹拌、脱水して湿潤ウェブを得、熱ローラーや熱板、あるいは熱風乾燥器でウェブを加熱乾燥し、後は前述と同様の熱圧加工を行えばよい。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、発明の範囲が本記載によって制限を受けるものではない。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
(1)固有粘度([η])
ポリマーを一定量計量し、35℃のo−クロロフェノールに0.012g/mlの濃度に溶解してから、常法に従って求めた。
(2)繊度(単糸繊度)
高速カッターの刃数を変更して50mmにカットした無捲縮短繊維をサンプリングし、JIS L 1015:2005 8.5.1 A法に記載の方法により測定した。
(3)総繊度
総繊度は、以下の計算式から算出した。
総繊度(dtex)={1錘当たり吐出量(g/分)×紡糸錘数(錘)×10000}/{紡糸速度(m/分)×総延伸倍率(倍)}
(4)複屈折率(Δn)
市販の偏光顕微鏡によって、光源にナトリウムランプを用い、試料をα−ブロムナフタリンに浸漬した状態下でBerekコンペンセータ法からレターデーションを求めて計算した。
(5)水分率(短繊維水分率、カット後水分率)
水分を含んだ約100gの紡糸直後の未延伸糸、工程途中で採取した糸、または、カット綿を120℃の熱風循環式の乾燥機中で絶乾になるまで乾燥する。乾燥前の試料の質量W0 と乾燥後の試料の質量W1から、次式によって求めた。
水分率(%)=[(W0 −W1 )/W1 ]×100
(6)油剤付着率
油剤水系エマルジョン濃度に上記(5)の水分率を乗じた計算値として質量%として示した。
付着率=油剤エマルジョン濃度(%)×水分率(%)/100
(7)水中分散性
1000mLのメスシリンダーに500mLの水道水を入れ、この中に正味0.1gの短繊維を投入する。繊維がメスシリンダーの底に達したならば、メスシリンダーの開口部に蓋をし、上下を両手で持ち、メスシリンダーを1回反転させて繊維を分散させ、次の基準で水中分散性の良否を判定する。
○: 未分散の繊維束がなく、単繊維1本1本が水中にきれいに広がっている状態
△: 未分散の繊維束は殆どない。単繊維同士の絡みが若干認められるが許容範囲
×: 未分散の繊維束が数本以上あり、単繊維同士の絡みも多い状態。
(8)過長繊維
短繊維150gを黒色ビロード板上に置き、少量の綿を取り、ピンセットで広げながら、設定繊維長より長い(場合によっては短い;±2mm以上)繊維を1本ずつ、または集団(束)でサンプリングし、繊維の長さを測定した。
(9)未延伸糸の降伏応力(σy)
高速カッターの刃数を変更して50mmにカットした無捲縮短繊維をサンプリングし、TEXTECHNO社製のFAVIMAT+機を用いて単繊維の未延伸糸の荷伸曲線(Stress Strain Curve)を測定し、ネック延伸に入るまでの極大強力を降伏応力(単位はcN/dtex)とした。
(10)裂断長(紙強力)
未延伸繊維を用いた紙の強力は、JIS P8113に従って引っ張り強さとして測定し、その裂断長を求めた。
(11)融点(Tm)、ガラス転移点(Tg)
TAインスツルメント・ジャパン(株)社製のサーマル・アナリスト2200を使用し、昇温速度20℃/分で測定した。
(12)強度・伸度
高速カッターの刃数を変更して50mmにカットした無捲縮短繊維をサンプリングし、JIS L 1015:2005 8.7.1法に記載の方法により測定した。
(13)10%伸長時応力
高速カッターの刃数を変更して50mmにカットした無捲縮短繊維をサンプリングし、TEXTECHNO社製のFAVIMAT+機を用いて単繊維の未延伸糸の荷伸曲線(Stress Strain Curve)を測定し、10%伸長時の強力を読み取り、10%伸長時応力(単位はcN/dtex)とした。
(14)180℃乾熱収縮率
高速カッターの刃数を変更して50mmにカットした無捲縮短繊維をサンプリングし、180℃の静置式乾燥機において無緊張下で20分間放置した際の、熱処理前後の繊維長の変化率を乾熱収縮率とした。すなわち、(L1−L0)/L0×100%として求められる(L0:熱処理前の繊維長、L1:熱処理後の繊維長)。
[実施例1]
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップを乾燥して300℃で溶融し、孔数が3000の紡糸口金を通して、492g/分で吐出し、1230m/分の速度で引取り、単繊維の繊度が1.3dtex、Δn0.0150の未延伸マルチフィラメント(サブトウ)とした。なお紡糸口金吐出直後に、オイリングローラーで、親水性油剤を付与した。使用した親水性油剤は、テレフタル酸80モル%、イソフタル酸20モル%の酸成分、平均分子量3000のポリエチレングリコール70質量%(共重合質量基準)とエチレングリコールの成分からなる平均分子量約12000のポリエーテル・ポリエステル共重合体の水性分散液をエマルジョンとして、21質量%濃度に調整したものであった(以下、「ポリエーテル・ポリエステル共重合体水溶液」ともいう)。
そして得られた未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を巻き取ることなく、12錘分束ねて4.8万dtexの繊維トウとした。引き続き、高速カッターを用いて、表記載の工程速度にて5mmの未延伸短繊維に無捲縮のまま切断した。なお、カッター前の繊維トウ張力は、0.1cN/dtex(σyの28.6%)であった。カット後の未延伸短繊維の水分率は15質量%であった。
なおここで使用した高速カッターは、カッター刃の切断側が上方に向くように、そして各カッター刃は放射状に配列したものであった。そして、カッター刃の切断側のさらに上方に配置される回転するローターに、未延伸マルチフィラメントから構成される繊維トウを巻きつけ、さらに上方に設置した傾斜リングにより、徐々に押し切りし、繊維トウを切断して短繊維化するものであった。またカッター刃の切断面から背面(カット繊維排出側)まで刃間距離は一定であり、カット中でも、繊維の排出抵抗の上昇はなく、刃折れも発生しなかった。
得られた未延伸短繊維は、無捲縮の延伸短繊維との混抄紙とした。すなわち、まず熊谷理機工業株式会社製の角型シートマシンを使って、本発明の上記の未延伸短繊維40%を、繊度が1.7dtex、繊維長が5mmの延伸熱処理された無捲縮の延伸短繊維60%と、水中で良く攪拌混合して分散させ、大きさが約25cm×約25cmで目付けが約50g/mのシートとした。さらにそのシートを濾紙の間に挟んで、熊谷理機工業株式会社製のKRK高温用回転乾燥機を使って、ドラムの表面温度を140℃とし、ドラムへの接触時間は2分にして、乾燥及び接着熱処理を行った。この熱処理されたシートをJIS P8113に従って紙強力(裂断長)を測定し、本発明の未延伸短繊維が含有する混抄紙とした。
[比較例1]
実施例1と同様に、固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップを乾燥して300℃で溶融し、孔数が3000の紡糸口金を通して、492g/分で吐出し、1230m/分の速度で引取り、単繊維の繊度が1.3dtex、Δn0.0160の未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を得た。但しその後一旦収缶するために、紡糸油剤としては、ラウリルホスフェートカリウム塩90質量%、末端アルキル封鎖ポリエチレングルコール10質量%の混合水性エマルジョンを21質量%に調整したものを、オイリングローラーで付与した。ちなみに実施例1で用いた紡糸油剤を使用した場合には、次の収缶工程での収束性が低すぎ、単糸またはサブトウ単位での収束不良が発生し、最終的な無捲縮短繊維とした時にも過長繊維を多く含むものであった。
紡糸油剤を付与した繊維からなるサブトウを12錘分束ね、計4.8万dtexの未延伸サブトウをトウ缶に収缶した。さらにこれを14缶合糸して、67.2万dtexの繊維トウとし、水洗後、実施例1で紡糸油剤として用いたポリエーテル・ポリエステル共重合体水溶液をこの工程でディップして、100mmのニップローラーに供試して絞り、エマルジョンとして22質量%で付与した。さらにECカッター(ドラム式ロータリーカッター)に供して、繊維長5mmに切断した。カット後のエマルジョン付着量は15質量%であった。
工程条件及び得られた未延伸短繊維等の物性を表1に併せて示した。
[実施例2、比較例2]
実施例1の1230m/分の紡糸速度を表1記載の速度に変更し、その後の工程速度もそれに対応して表1記載の速度に変更した以外は、実施例1と同様にして未延伸短繊維及び混抄紙を得た。但し紡糸速度を300m/分とした比較例2は、抄紙時の乾燥工程にて乾燥機に粘着し、混抄紙を得ることができなかった。工程条件及び得られた未延伸短繊維等の物性を表1に併せて示した。
[実施例3]
実施例1の工程速度を低下させ、カッター前トウ張力を下げて実施例3とした。工程条件及び得られた未延伸短繊維等の物性を表1に併せて示した。
なお、さらに工程速度を低下させカッター前トウ張力を下げたところ、15〜30mmの過長繊維が多量に発生し、その未延伸短繊維を紙に抄紙すると、明らかな欠点となった。さらに工程速度を上げてカッター前トウ張力を強くし、未延伸糸の降伏応力以上の張力とした場合には、ネック延伸が発生し、複屈折率のバラツキが大きな繊維となった。さらにその未延伸短繊維を紙に抄紙すると、紙強力の低い紙しか得られなかった。
[実施例4]
実施例1と同様に、固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップを用い、但し孔数を実施例1の3000から1305に変更した紡糸口金を用い、さらに得られる短繊維の繊度を実施例1に合わせるために、条件を変更して429g/分で吐出し、2530m/分の速度で引取った。得られた単繊維の繊度は1.3dtexであって、Δn0.036の未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を得た。なお、紡糸油剤としては実施例1で用いた平均分子量約12000のポリエーテル・ポリエステル共重合体水性分散液を用い、21質量%の付与を行った。
そして得られた未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を巻き取ることなく、12錘分束ねて2.0万dtexの繊維トウとした。引き続き、実施例1で用いた高速カッターを用いて、5mmの未延伸短繊維に切断した。カット後の未延伸短繊維の水分率は15質量%であった。
得られた未延伸短繊維は、実施例1と同様にして無捲縮延伸短繊維との混抄紙とした。工程条件及び得られた未延伸短繊維等の物性を表1に合わせて示した。
[実施例5]
実施例1のポリエチレンテレフタレートに代えて、ポリエチレンナフタレート(PEN)を用いた。すなわち固有粘度0.51のポリエチレンナフタレートチップを乾燥して310℃で溶融し、孔数が1305の紡糸口金を通して、310g/分で吐出し、1000m/分の速度で引取り、単繊維の繊度が1.1dtex、Δn0.06の未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を得た。なお、紡糸油剤としては実施例1で用いた平均分子量約12000のポリエーテル・ポリエステル共重合体水性分散液を用い、21質量%の付与を行った。
そして得られた未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を巻き取ることなく、12錘分束ねて3.7万dtexの繊維トウとした。引き続き、実施例1で用いた高速カッターを用いて、5mmの未延伸短繊維に切断した。カット後の未延伸短繊維の水分率は15質量%であった。得られた未延伸短繊維は、実施例1と同様にして無捲縮延伸短繊維との混抄紙とした。但し、回転乾燥機のドラム表面温度は160℃とした。工程条件及び得られた未延伸短繊維等の物性を表1に合わせて示した。
Figure 2018139651
[実施例6]
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップ用意した。
別途、テレフタル酸80モル%、イソフタル酸20モル%の酸成分、平均分子量3000のポリエチレングリコール70質量%(共重合質量基準)とエチレングリコールの成分からなる平均分子量約12000のポリエーテル・ポリエステル共重合体の水性分散液(エマルジョン濃度1質量%)をエマルジョン油剤(紡糸油剤)として用意した。
上記のPETチップを乾燥して300℃で溶融し、孔数が1305の紡糸口金を通して、510g/分で吐出し、この口金吐出直後の未延伸マルチフィラメントに対し、エマルジョン油剤をオイリングローラーで、未延伸糸水分率21%となるように付与した後、温度55℃のネルソン型ローラー対1で、750m/分の速度で引取り、未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を得た。
このサブトウを12錘分束ねて約8.2万dtexとし、引き続き表面温度55℃、周速度788m/分のネルソン型のローラー対2に6ターン巻き付けて予熱した後、100℃、周速度2,457m/分のネルソン型ローラー対3に、6ターンさせた。次に、表面温度220℃、周速度2,457m/分のネルソン型ローラー対4に6ターンさせ、表面温度220℃、周速度2.457m/分のネルソン型ローラー対5に6ターンさせ、次いで、表面温度50℃、周速度2,457m/分のネルソン型ローラー対に6ターンさせ、延伸した繊維からなる繊維トウとした(総延伸倍率3.28倍)。
この延伸された繊維トウを、カッター前テンションを0.1cN/dtexとして連続して5mmの長さとなるように切断した。なおカッター前の延伸繊維トウに対して、スプレーで繊維トウの上下から水を噴霧し、カット後の水分率を5質量%とした。この時の工程速度は2,482m/分であった。また、ここで使用した高速カッターは、カッター刃の切断側が上方に向くように、そして各カッター刃は放射状に配列したものであった。そして、カッター刃の切断側のさらに上方に配置される回転するローターに、延伸マルチフィラメントから構成される繊維トウを巻きつけ、さらに上方に設置した傾斜リングにより、徐々に押し切りし、繊維トウを切断して短繊維化するものであった。またカッター刃の切断面から背面(カット繊維排出側)まで刃間距離は一定であり、カット中でも、繊維の排出抵抗の上昇はなく、刃折れも発生しなかった。
得られた無捲縮短繊維は、水分散性に優れ、抄紙用に特に適したものであった。工程条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表2に示した。
湿式不織布の評価用として、実施例6で得られた無捲縮の延伸短繊維と実施例1、および比較例2で得た未延伸短繊維との混抄紙を作製した。
すなわち、まず熊谷理機工業株式会社製の角型シートマシンを使って、上記無捲縮の延伸短繊維60質量%と、実施例1、もしくは比較例2で得た無捲縮の未延伸短繊維40質量%とを、水中で良く攪拌混合して分散させ、大きさが約25cm×約25cmで目付けが約50g/m のシートとした。さらにそのシートを濾紙の間に挟んで、熊谷理機工業株式会社製のKRK高温用回転乾燥機を使って、ドラムの表面温度を140℃とし、ドラムへの接触時間は2分にして、乾燥及び接着熱処理を行った。この熱処理されたシートをJIS P8113に従って引っ張り強さを測定し、本発明の短繊維が含有する混抄紙とした。
実施例1で得た未延伸短繊維との混抄紙の紙強力は0.45kmであった。
比較例2で得た未延伸短繊維との混抄紙は抄紙時の乾燥工程にて乾燥機に粘着し、混抄紙を得ることができなかった。
実施例1との混沙紙は、湿式不織布として十分の接着性を得ることができた。
なお、上記と同様にして、ただし紡糸油剤であるポリエーテル・ポリエステル共重合体の水性分散液の濃度を1%から0.5%に下げて実施したところ、油剤の付与量が少なくなり、繊維表面への油剤の付着が不均一になって、抄紙した際の水分散性が低下する傾向にあったものの、かろうじて抄紙可能であった。
逆に水性分散液の濃度を1%から5%に上げて実施したところ、金属ローラーへの粘着性が出やすい傾向にあり、単糸切れが発生しやすい状況であったものの、かろうじて無捲縮短繊維を得ることができた。
[実施例7]
実施例6と同じ、固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップ用と、平均分子量約12000のポリエーテル・ポリエステル共重合体の水性分散液(エマルジョン濃度1質量%)をエマルジョン油剤(紡糸油剤)として用意した。
上記のPETチップを乾燥して300℃で溶融し、孔数が2504の紡糸口金を通して、330g/分で吐出し、この口金吐出直後の未延伸マルチフィラメントに対し、紡糸油剤をオイリングローラーで、未延伸糸水分率21%となるように付与した後、温度55℃のネルソン型ローラー対1で、635m/分の速度で引取り、未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を得た。
このサブトウを12錘分束ねて約6.2万dtexとし、引き続き表面温度55℃、周速度667m/分のネルソン型のローラー対2に6ターン巻き付けて予熱した後、100℃、周速度2,234m/分のネルソン型ローラー対3に、6ターンさせた。次に、表面温度220℃、周速度2,234m/分のネルソン型ローラー対4に6ターンさせ、表面温度220℃、周速度2.234m/分のネルソン型ローラー対5に6ターンさせ、次いで、表面温度50℃、周速度2.234m/分のネルソン型ローラー対に6ターンさせ、延伸した繊維からなる繊維トウとした(総延伸倍率3.52倍)。
この延伸された繊維トウを、カッター前テンションを0.1cN/dtexとして連続して5mmの長さとなるように、実施例1と同じ高速カッターにて切断した。なおカッター前の延伸繊維トウに対して、スプレーで繊維トウの上下から水を噴霧し、カット後の水分率を3質量%とした。この時の工程速度は2,256m/分であった。カット中でも、繊維の排出抵抗の上昇はなく、刃折れも発生しなかった。
得られた無捲縮短繊維は、水分散性に優れ、抄紙用に特に適したものであった。工程条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表2に併せて示した。
[比較例3]
エマルジョン(紡糸)油剤として、ラウリルホスフェートカリウム塩90質量%、末端アルキル封鎖ポリエチレングルコール10質量%の混合水性エマルジョン(エマルジョン濃度1質量%)を用意した。
このエマルジョン油剤を用いた以外は実施例6と同様にして、無捲縮短繊維を得た。水中分散性に劣り、抄紙用途には不適当であった。工程条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表2に併せて示した。
[比較例4]
比較例1同様に、エマルジョン(紡糸)油剤として、ラウリルホスフェートカリウム塩90質量%、末端アルキル封鎖ポリエチレングルコール10質量%の混合水性エマルジョン(エマルジョン濃度1質量%)を用意した。
さらに仕上げ用油剤として、実施例1で用いた平均分子量約12000のポリエーテル・ポリエステル共重合体の水性分散液を、ただしエマルジョン濃度を1質量%から1.5質量%に変更したエマルジョン油剤を準備した。
上記の紡糸油剤を用い、さらに延伸後に上記の仕上げ油剤を追加して用いた以外は実施例6と同様にして、無捲縮短繊維を得た。なお、仕上げ油剤(エマルジョン濃度1.5質量%)は、延伸した後に、繊維トウの上下からスプレーで水分率5質量%となるよう噴霧処理した。
比較例3よりは水中分散性は向上したものの、抄紙用途には適したものとは言えなかった。工程条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表2に併せて示した。
Figure 2018139651
[実施例8]
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップを、170℃、4時間乾燥した後、287℃で溶融し、孔径0.28mm、孔数が1701の紡糸口金を通して、700g/分で吐出し、ネルソン型ローラー対1で634m/分の速度で引取り、未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を得た。このサブトウ4錘分を収束させて44,164dtexとし、収缶することなく連続して、このサブトウを50℃、周速641m/分のネルソン型ローラー対2に6ターン巻き付けて予熱した後、表面温度88℃、周速1,923m/分のネルソン型ローラー対3に6ターンさせて第1段目の延伸をした。次に、表面温度120℃、周速2,500m/分のネルソン型ローラー対4に6ターンさせて第2段目の延伸をした後、表面温度220℃、周速2,500m/分のネルソン型ローラー対5に6ターンさせて熱処理を行って、次いで、表面温度80℃、周速度2,500m/分のネルソン型ローラー対6に6ターンさせ、総繊度11,200dtexの延伸繊維トウを得た(総延伸倍率3.94倍)。
得られた繊維トウを連続して、図2、3に示す、上向きの半円弧形の曲率半径(図3−f)が61mmからなる湾曲部aにおいて、幅100mm(図2−d)、長さ126mm(液体吐出面積126cm)、開孔率0.5%の複数の開孔(図2−b)を有する開孔領域(図2−c)(ステンレス線材巻き)からなる液体付与装置を用い、テレフタル酸80モル%とイソフタル酸20モル%からなる酸成分と、平均分子量3,000のポリエチレングリコール70質量%とエチレングリコール30質量%からなるジオール成分の構成で得た、平均分子量約12,000のポリエーテル・ポリエステル共重合体の水性分散液(エマルジョン濃度2質量%)であるエマルジョン油剤を、液体付与装置から液体吐出量5.0kg/分(液体吐出流速1.3m/秒)で吐出した円弧形の曲面に抱き角75度(接触長80mm)となるように繊維トウの下側を接触させて、油剤を付与した後、高速カッター(OerlikonNeumag製NMC−H290)で、カット長5mmでカットした。この時の繊維トウのカット速度は、2,500m/分であった。ここで使用した高速カッターは、カッター刃の切断側が上方に向くように、そして各カッター刃は放射状に配列したものであった。そして、カッター刃の切断側のさらに上方に配置される回転するローターに、延伸マルチフィラメントから構成される繊維トウを巻きつけ、さらに上方に設置した傾斜リングにより、徐々に押し切りし、繊維トウを切断して短繊維化するものであった。またカッター刃の切断面から背面(カット繊維排出側)まで刃間距離は一定であり、カット中でも、繊維の排出抵抗の上昇はなく、刃折れも発生しなかった。
高速カット速度にもかかわらず、水中分散性は良好であった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表3に示した。
湿式不織布の評価用として、実施例8で得られた無捲縮の延伸短繊維と実施例1、および比較例2で得た未延伸短繊維との混抄紙を、実施例6に記載の手順で作製した。
実施例1で得た未延伸短繊維との混抄紙の紙強力は0.48kmであった。
比較例2で得た未延伸短繊維との混抄紙は抄紙時の乾燥工程にて乾燥機に粘着し、混抄紙を得ることができなかった。
実施例1との混沙紙は、湿式不織布として十分の接着性を得ることができた。
[実施例9]
液体付与装置の抱き角を150度(接触長160mm、接触時間0.004秒)とする以外は、実施例8と同等とし、短繊維を得た。水中分散性は良好であった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表3に示した。
[実施例10]
液体付与装置の液体吐出面積を126cm(100mm幅×126mm長)から290cm(100mm幅×290mm長)に変更した以外は、実施例9と同等とし、短繊維を得た。この時の液体吐出流速は0.6m/分と減少した。条件及び得られた短繊維の評価結果を表3に示した。短繊維水分率、油剤付着率ともに低めではあるが、水中分散性は良好であった。
[比較例5]
繊維トウの抱き角を10°、接触時間0.0003秒、接触長を11mmとする以外は、実施例8と同等とし、繊維を得た。短繊維水分率、油剤付着率(以降、短繊維水分率および/または油剤付着率のことを液体付与率と呼ぶことがある)が低く、水中分散性が不充分であった。工程条件及び得られた短繊維の評価結果を表3に示した。
[実施例11]
繊維トウの抱き角を40°、接触時間0.001秒、接触長を43mmとする以外は、実施例8と同等とし、短繊維を得た。本発明の抱き角が低い領域ではあるが、水中分散性は良好であった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表3に示した。
[比較例6]
繊維トウの抱き角を180°、接触時間0.005秒、接触長を192mmとする以外は、実施例8と同等とし、繊維を得た。工程条件及び得られた短繊維の評価結果を表3に示した。液体付与装置で発生したと推定される単糸切れにより単繊維同士の絡み(欠点)が多数確認された。
[実施例12]
液体付与装置の液体吐出面積を126cm(100mm幅×126mm長)から290cm(100mm幅×290mm長)に変更し、かつ、液体付与装置から液体吐出量を1.5kg/分(液体吐出流速0.2m/秒)とした以外は、実施例8と同等とし、短繊維を得た。液体吐出流速が低い領域ではあるが、水中分散性は許容の範囲であった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表3に示した。
[比較例7]
液体吐出量を0.6kg/分(液体吐出流速0.07m/秒)とした以外は、実施例12と同等とした。液体付与率が低く、水中分散性が不充分であった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表3に示した。
[実施例13]
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップを、170℃、4時間乾燥した後、287℃で溶融し、孔径0.28mm、孔数が1701の紡糸口金を通して、700g/分で吐出し、ネルソン型ローラー対1で1350m/分の速度で未延伸糸を引き取る以降、このサブトウ4錘分を収束させ、収缶することなく連続して、このサブトウを50℃、周速1362m/分のネルソン型ローラー対2に6ターン巻き付けて予熱した後、表面温度88℃、周速3,037m/分のネルソン型ローラー対3に6ターンさせて第1段目の延伸をした。次に、表面温度120℃、周速3,500m/分のネルソン型ローラー対4に6ターンさせて第2段目の延伸をした後、表面温度220℃、周速3,500m/分のネルソン型ローラー対5に6ターンさせて巻き付けて熱処理を行って、次いで、表面温度80℃、周速度3,500m/分のネルソン型ローラー対6に6ターンさせ、総延伸倍率2.57倍で延伸、及び、熱処理を実施し、総繊度8,000dtexの延伸繊維トウを得た。
得られた繊維トウを連続して、実施例10で使用した液体付与装置(液体吐出面積290cm)を用い、油剤付与装置の抱き角150度(接触長160mm)、液体吐出流速が1.3m/秒になるように液体吐出量を11.0kg/分として、請求項1と同一の油剤エマルジョンを付与した後、高速カッター(OerlikonNeumag製NMC−H290)で、カット長5mmでカットした。この時の繊維トウのカット速度は、3,500m/分であった。高速カット速度にもかかわらず、水中分散性は良好であった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表4に示した。
[実施例14]
ネルソン型ローラー対1〜対6を、ローラー表面温度が常温(20〜40℃)の状態で各ローラー間をそれぞれ1.01倍として、総延伸倍率を1.05倍とし、カッター前速度を660m/分に変更した以外は、実施例11と同様の条件とした。短繊維水分率、油剤付着率ともに高めであるが、水中分散性は良好であった。工程条件及び得られた短繊維の評価結果を表4に示した。
[比較例8]
実施例8と同じ繊維トウ、エマルジョン油剤を用い、直径145mmのゴムローラーからなるオイリングローラーを用いて、オイリングを行った。繊維トウのオイリングローラーへの接触角度を水平面から30°とし、抱き角は100°とした。ローラーの回転方向は、繊維トウの走行方向と同じ(順方向)とし、ローラー回転数を39回転/分に設定した。カット速度が高速のため、液体付与率が低く、水中分散性が不充分であった。工程条件及び得られた短繊維の評価結果を表4に示した。
[実施例15]
図2、4に示す、下向きの半円弧形の曲率半径(図4−f)が61mmからなる湾曲部aにおいて、幅100mm(図2−d)、長さ126mm(液体吐出面積126cm)、開孔率0.5%の複数の開孔(図2−b)を有する開孔領域(図2−c)(ステンレス線材巻き)からなる液体付与装置(以降、下向き円弧形液体付与装置と呼ぶことがある。)に変更した以外は、実施例8と同等とし、短繊維を得た。実施例8と同様に水中分散性は良好であった。但し、液体付与率は、実施例8に比べ高めであった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表4に示した。
[実施例16]
液体付与装置を下向き円弧形液体付与装置に変更した以外は、実施例11と同等とし、短繊維を得た。実施例11と同様に水中分散性は良好であった。但し、液体付与率は、実施例11に比べ高めであった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表4に示した。
[実施例17]
液体付与装置を下向き円弧形液体付与装置に変更した以外は、実施例14と同等とし、短繊維を得た。実施例14と同様に水中分散性は良好であった。但し、液体付与率は、実施例14に比べ高めであった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表4に示した。
[実施例18]
液体付与装置を下向き円弧形液体付与装置に変更し、液体吐出量を5.0kg/分から11.0kg/分(液体吐出流速は0.6m/秒から1.3m/秒に上がる)とした以外は、実施例10と同等とし、短繊維を得た。実施例10と比べ水中分散性は良好であった。そして、液体付与率は、実施例10に比べ高めであった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表4に示した。
[比較例9]
液体付与装置を下向き円弧形液体付与装置に変更した以外は、比較例5と同等とし、短繊維を得た。比較例5と同様に、液体付与率が低く、水中分散性が不充分であった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表4に示した。
[比較例10]
液体付与装置を下向き円弧形液体付与装置に変更した以外は、比較例6と同等とし、短繊維を得た。比較例6と同様に、液体付与装置で発生したと推定される単糸切れにより単繊維同士の絡み(欠点)が多数確認された。条件及び得られた短繊維の評価結果を表4に示した。
Figure 2018139651
Figure 2018139651
[実施例19]
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップを、170℃、4時間乾燥した後、287℃で溶融し、孔径0.28mm、孔数が1701の紡糸口金を通して、700g/分で吐出し、ネルソン型ローラー対1で634m/分の速度で引取り、未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を得た。このサブトウ4錘分を収束させて44,164dtexとし、収缶することなく連続して、このサブトウを50℃、周速641m/分のネルソン型ローラー対2に6ターン巻き付けて予熱した後、表面温度88℃、周速1,923m/分のネルソン型ローラー対3に6ターンさせて第1段目の延伸をした。次に、表面温度120℃、周速2,500m/分のネルソン型ローラー対4に6ターンさせて第2段目の延伸をした後、表面温度220℃、周速2,500m/分のネルソン型ローラー対5に6ターンさせて熱処理を行って、次いで、表面温度80℃、周速度2,500m/分のネルソン型ローラー対6に6ターンさせ、総繊度11,200dtexの延伸繊維トウを得た(総延伸倍率3.94倍)。
得られた繊維トウを連続して、図5に示す、開孔領域(図5−aa)において、繊維トウの走行方向に対して長さ200mm(図5−bb)(通過時間0.05秒)、幅100mm(図5−cc)(液体吐出面積200cm)、開孔率0.5%の複数の開孔を有する開孔領域(図5−aa)(三角孔パンチング)からなる液体付与装置を用い、図6に示すように、走行する繊維トウを上下で挟むように配置した。繊維トウと開孔部の距離は20mmとした。開孔部からテレフタル酸80モル%とイソフタル酸20モル%からなる酸成分と、平均分子量3,000のポリエチレングリコール70質量%とエチレングリコール30質量%からなるジオール成分の構成で得た、平均分子量約12,000のポリエーテル・ポリエステル共重合体の水性分散液(エマルジョン濃度2質量%)であるエマルジョン油剤を、吐出量16.0kg/分(液体吐出流速1.3m/秒)で吐出させ、繊維トウに油剤を付与した後、高速カッター(OerlikonNeumag製NMC−H290)で、カット長5mmでカットした。この時の繊維トウのカット速度は、2,500m/分、液体付与装置の通過時間は0.005秒であった。ここで使用した高速カッターは、カッター刃の切断側が上方に向くように、そして各カッター刃は放射状に配列したものであった。そして、カッター刃の切断側のさらに上方に配置される回転するローターに、延伸マルチフィラメントから構成される繊維トウを巻きつけ、さらに上方に設置した傾斜リングにより、徐々に押し切りし、繊維トウを切断して短繊維化するものであった。またカッター刃の切断面から背面(カット繊維排出側)まで刃間距離は一定であり、カット中でも、繊維の排出抵抗の上昇はなく、刃折れも発生しなかった。
高速カット速度にもかかわらず、水中分散性は良好であった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表5に示した。
湿式不織布の評価用として、実施例19で得られた無捲縮の延伸短繊維と実施例1、および比較例2で得た未延伸短繊維との混抄紙を、実施例6に記載の手順で作製した。
実施例1で得た未延伸短繊維との混抄紙の紙強力は0.48kmであった。
比較例2で得た未延伸短繊維との混抄紙は抄紙時の乾燥工程にて乾燥機に粘着し、混抄紙を得ることができなかった。
実施例1との混沙紙は、湿式不織布として十分の接着性を得ることができた。
[実施例20]
液体吐出量を4.0kg/分(液体吐出流速0.3m/秒)とした以外は、実施例19と同等とし、短繊維を得た。液体吐出流速が低い領域ではあるが、水中分散性は許容の範囲であった。条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表5に示した。
[実施例21]
走行方向開孔領域長さを50mmとし(液体吐出面積50cm、通過時間が0.001秒)、液体吐出量を1.8kg/分(液体吐出流速0.6m/秒)とした以外は、実施例19と同等とし、短繊維を得た。水中分散性は良好であった。条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表5に示した。
[比較例11]
走行方向開孔領域長さを10mmとし(液体吐出面積10cm、通過時間が0.0002秒)、液体吐出量を0.8kg/分(液体吐出流速1.3m/秒)とした以外は、実施例19と同等とし、短繊維を得た。短繊維水分率、油剤付着率ともに低めであり、水中分散性は不良であった。条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表5に示した。
[比較例12]
液体吐出量を0.8kg/分(液体吐出流速0.1m/秒)とした以外は、実施例19と同等とし、短繊維を得た。短繊維水分率、油剤付着率ともに低めであり、水中分散性は不良であった。条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表5に示した。
[実施例22]
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップを、170℃、4時間乾燥した後、287℃で溶融し、孔径0.28mm、孔数が1701の紡糸口金を通して、700g/分で吐出し、ネルソン型ローラー対1で1350m/分の速度で未延伸糸を引き取る以降、このサブトウ4錘分を収束させ、収缶することなく連続して、このサブトウを50℃、周速1362m/分のネルソン型ローラー対2に6ターン巻き付けて予熱した後、表面温度88℃、周速3,037m/分のネルソン型ローラー対3に6ターンさせて第1段目の延伸をした。次に、表面温度120℃、周速3,500m/分のネルソン型ローラー対4に6ターンさせて第2段目の延伸をした後、表面温度220℃、周速3,500m/分のネルソン型ローラー対5に6ターンさせて巻き付けて熱処理を行って、次いで、表面温度80℃、周速度3,500m/分のネルソン型ローラー対6に6ターンさせ、総延伸倍率2.57倍で延伸、及び、熱処理を実施し、総繊度40,400dtexの延伸繊維トウを得た。
得られた繊維トウを連続して、実施例19で使用した液体付与装置(長さ200mm(通過時間0.003秒、)幅100mm(液体吐出面積200cm)、開孔率0.5%。繊維トウ〜開孔部距離20mm)を用い、走行トウ速度3,500m/分とした以外は、実施例19と同等とし、短繊維を得た。高速カット速度にもかかわらず、水中分散性は良好であった。条件及び得られた短繊維の評価結果を表5に示した。
[実施例23]
ネルソン型ローラー対1〜対6を、ローラー表面温度が常温(15〜40℃)の状態で各ローラー間をそれぞれ1.01倍として、総延伸倍率を1.05倍とし、カッター前速度を660m/分に変更した以外は、実施例19と同様の条件とした。開孔部の通過秒数は0.018秒、水中分散性は良好であった。工程条件及び得られた短繊維の評価結果を表5に示した。
[実施例24]
図5に示す液体付与装置において、図6におけるff部を除いてgg部のみの片面から液体を付与し、液体吐出量を8.0kg/分(液体吐出流速0.7m/秒)とした以外は、実施例19と同等とし、短繊維を得た。水中分散性は良好であった。条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表5に示した。
[比較例13]
実施例19と同じ繊維トウ、エマルジョン油剤を用い、直径145mmのゴムローラーからなるオイリングローラーを用いて、オイリングを行った。繊維トウのオイリングローラーへの接触角度を水平面から30°とし、抱き角は100°とした。ローラーの回転方向は、繊維トウの走行方向と同じ(順方向)とし、ローラー回転数を39回転/分に設定した。カット速度が高速のため、液体付与率が低く、水中分散性が不充分であった。工程条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表5に示した。
Figure 2018139651
[実施例25]
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップを、170℃、4時間乾燥した後、300℃で溶融し、孔数が1305の紡糸口金を通して、450g/分で吐出し、この口金吐出直後の未延伸マルチフィラメントに対し、エマルジョン油剤をオイリングローラーで、未延伸糸水分率21%となるように付与した後、ネルソン型ローラー対1で、635m/分の速度で引取り、未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を得た。
このサブトウを12錘分を収束させて85,000dtexとし、収缶することなく連続して、表面温度55℃、周速度666m/分のネルソン型のローラー対2に6ターン巻き付けて予熱した後、100℃、周速度2,232m/分のネルソン型ローラー対3に、6ターンさせた。次に、表面温度220℃、周速度2,188m/分のネルソン型ローラー対4に6ターンさせ、表面温度220℃、周速度2,100m/分のネルソン型ローラー対5に6ターンさせ、次いで、表面温度80℃、周速度2,100m/分のネルソン型ローラー対に6ターンさせ、延伸した繊維からなる繊維トウとした(総延伸倍率3.31倍)。
この延伸された繊維トウを、カッター前テンションを0.1cN/dtexとして連続して5mmの長さとなるように切断した。なおカッター前の延伸繊維トウに対して、スプレーで繊維トウの上下から、テレフタル酸80モル%とイソフタル酸20モル%からなる酸成分と、平均分子量3,000のポリエチレングリコール70質量%とエチレングリコール30質量%からなるジオール成分の構成で得た、平均分子量約12,000のポリエーテル・ポリエステル共重合体の水性分散液(エマルジョン濃度2質量%)であるエマルジョン油剤を噴霧し、カット後の水分率を15質量%とした。この時のカッター速度は2,121m/分であった。また、ここで使用した高速カッターは、カッター刃の切断側が上方に向くように、そして各カッター刃は放射状に配列したものであった。そして、カッター刃の切断側のさらに上方に配置される回転するローターに、延伸マルチフィラメントから構成される繊維トウを巻きつけ、さらに上方に設置した傾斜リングにより、徐々に押し切りし、繊維トウを切断して短繊維化するものであった。また、カッター刃の切断面から背面(カット繊維排出側)まで刃間距離は一定であり、カット中でも、繊維の排出抵抗の上昇はなく、刃折れも発生しなかった。
得られた無捲縮短繊維は、結束状の欠点は観察されず、水分散性に優れ、抄紙用に特に適したものであった。工程条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表6に示した。
湿式不織布の評価用として、実施例25で得られた無捲縮の延伸短繊維と実施例1、および比較例2で得た未延伸短繊維との混抄紙を、実施例6に記載の手順で作製した。
実施例1で得た未延伸短繊維との混抄紙の紙強力は0.44kmであった。
比較例2で得た未延伸短繊維との混抄紙は抄紙時の乾燥工程にて乾燥機に粘着し、混抄紙を得ることができなかった。
実施例1との混沙紙は、湿式不織布として十分の接着性を得ることができた。
[比較例14]
固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(PET)チップを170℃、4時間乾燥した後、300℃で溶融し、孔数が1305の紡糸口金を通して、450g/分で吐出し、この口金吐出直後の未延伸マルチフィラメントに対し、エマルジョン油剤をオイリングローラーで未延伸糸水分率21%となるように付与した後、ネルソン型ローラー対1で635m/分の速度で引取り、未延伸マルチフィラメント(サブトウ)を得た。
このサブトウを12錘分収束させて85,000dtexとし、収缶することなく連続して、表面温度55℃、周速度666m/分のネルソン型のローラー対2に6ターン巻き付けて予熱した後、100℃、周速度2,232m/分のネルソン型ローラー対3に6ターンさせた。次に、表面温度220℃、周速度2,232m/分のネルソン型ローラー対4に6ターンさせ、表面温度220℃、周速度2,232m/分のネルソン型ローラー対5に6ターンさせ、次いで、表面温度220℃、周速度2,232m/分のネルソン型ローラー対6に6ターンさせ、延伸した繊維からなる繊維トウとした(総延伸倍率3.51倍)。
この延伸された繊維トウを、カッター前テンションを0.1cN/dtexとして連続して5mmの長さとなるように切断した。なお、カッター前の延伸繊維トウに対して、スプレーで繊維トウの上下から、テレフタル酸80モル%、イソフタル酸20モル%の酸成分と、平均分子量3,000のポリエチレングリコール70質量%(共重合質量基準)とエチレングリコール30質量%からなるジオール成分の構成で得た、平均分子量約12,000のポリエーテル・ポリエステル共重合体の水性分散液(エマルジョン濃度2質量%)であるエマルジョン油剤を噴霧し、カット後の水分率を15質量%とした。この時のカッター速度は2,254m/分であった。また、ここで使用した高速カッターは、カッター刃の切断側が上方に向くように、そして各カッター刃は放射状に配列したものであった。そして、カッター刃の切断側のさらに上方に配置される回転するローターに、延伸マルチフィラメントから構成される繊維トウを巻きつけ、さらに上方に設置した傾斜リングにより、徐々に押し切りし、繊維トウを切断して短繊維化するものであった。また、カッター刃の切断面から背面(カット繊維排出側)まで刃間距離は一定であり、カット中でも、繊維の排出抵抗の上昇はなく、刃折れも発生しなかった。
得られた無捲縮短繊維は、結束状の欠点が多数認められ、熱収縮率も高く、抄紙用に適したものとは言えなかった。工程条件及び得られた無捲縮短繊維の評価結果を表6に示した。
Figure 2018139651
a.湾曲部
b.開孔部
c.開孔領域
d.幅
e.抱き角調整部
f. 円弧形の曲率半径
g. 湾曲部の頂点
α.抱き角
aa.開孔部、開孔領域(網掛け部)
bb.繊維トウ走行方向の開孔領域長さ
cc.開孔領域幅
dd.繊維トウ
ee.繊維トウ幅
ff.図5と同じ向きの平面部(開孔部が上向き、重力と反対方向)
gg.図5を垂直に180°反転させた向きの平面部(開孔部が下向き、重力方向)
hh.平面部と繊維トウの距離
A.紡糸工程
B.収束
C.延伸、オーバーフィード等の工程
D.液体付与工程
E.カット工程

Claims (11)

  1. 紡糸速度600m/分以上で紡糸し、該紡糸速度以上の速度で繊維トウを35mm以下の長さにカットする無捲縮短繊維の製造方法において、下記要件(I)〜(III):
    (I)紡糸直後の未延伸マルチフィラメントをそのまま、または複数本を束ねて繊維トウとすること;
    (II)該束ねた繊維トウを収缶することなく連続してカットすること;及び
    (III)紡糸直後の未延伸マルチフィラメントから繊維トウのカット前までに1か所以上の親水性油剤を付与する工程を有すること
    を具備することを特徴とする無捲縮短繊維の製造方法。
  2. 前記カットの速度が600〜4,000m/分の範囲にある、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記カットが、複数のカッター刃を有し、各カッター刃の間隔がカッター刃の切断面から背面まで同一である短繊維用カッターによってカットする方法である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記繊維トウが1,000dtex以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記親水性油剤がポリアルキレングリコール誘導体を含む油剤である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記親水性油剤を付与する工程が、断面視で円弧形をなす湾曲部を含む液体付与装置を用い、前記繊維トウを、該湾曲部に接触させた状態で走行させながら該湾曲部から液状油剤を吐出させて該繊維トウに付与する工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記親水性油剤を付与する工程が、平面部を含み該平面部の一部に開孔領域を設け、該開孔領域に開孔部(液体吐出孔)を有する液体付与装置を用い、前記繊維トウを、該開孔領域の上方及び/又は下方を、該平面部に接触しないように走行させながら該開孔部から液体を吐出させて該繊維トウに付与する工程を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 前記無捲縮短繊維が未延伸である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記短繊維の複屈折率が0.001〜0.100の範囲にある、請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記カット前までの各工程における繊維トウの張力が降伏張力未満である、請求項8または9に記載の製造方法。
  11. 請求項8〜10のいずれか1項に記載の製造方法で得られた未延伸の無捲縮短繊維と、延伸された短繊維を主たる原材料として混合した水分散液を、湿式不織布製造装置によって抄紙し、熱圧加工して得られる不織布。
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