JPWO2018135612A1 - グルタチオンを含む粒状肥料 - Google Patents

グルタチオンを含む粒状肥料 Download PDF

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Abstract

グルタチオンの保存安定性が高く、かつ十分な強度を有するグルタチオン含有粒状肥料を提供する。グルタチオンを含む粒状肥料であって、グルタチオンと、鉱物質と、でんぷんとを含み、粒状肥料全量中にでんぷんを12質量%以上含有する。

Description

本発明はグルタチオンを含む粒状肥料に関する。
グルタチオンは、L−システイン、L−グルタミン酸、グリシンの3つのアミノ酸から成るペプチドで、人体だけでなく、他の動物や植物、微生物など多くの生体内に存在し、活性酸素の消去作用、解毒作用、アミノ酸代謝など、生体にとって重要な化合物である。
グルタチオンは生体内で、L−システイン残基のチオール基が還元されたSHの形態である還元型グルタチオン(N−(N−γ−L−グルタミル−L−システイニル)グリシン、以下「GSH」と称することがある)と、2分子のGSHのL−システイン残基のチオール基が酸化されグルタチオン2分子間でジスルフィド結合を形成した形態である酸化型グルタチオン(以下「GSSG」と称することがある)とのいずれかの形態で存在する。
GSSGは肥料、医薬品、化粧品などの分野で有用であることが知られている。
特許文献1には、グルタチオン(特にGSSG)が植物の種子及び花の数を増加させる等、植物の収穫指数を向上させる植物生長調整剤として有用であることが公開されている。
特許文献2には、グルタチオン(GSH又はGSSG)が熱、酸素、光等の影響により品質が低下する性質を有しており、結果として、硫黄の様な不快臭が生じたり、製剤においては含有量の低下等が生じることがあること、並びに、グルタチオンをアルギニンと共存させるとグルタチオンの品質が顕著に低下することが記載されている。そして特許文献2では、グルタチオンとアルギニンと有機酸とを共存させることにより、製剤保存中におけるグルタチオンの分解が抑制され保存安定性が向上することが提案されている。
国際公開WO2008/072602 国際公開WO2009/099132 特開2004−182549号公報 国際公開WO2013/002317
特許文献2ではグルタチオンとアルギニンとを含有する組成物に有機酸を共存させることでグルタチオンの安定性を高める手段が開示されているが、アルギニン及び有機酸を共存させることが必須である。アルギニンは比較的高価であり、より安価な手段によりグルタチオンの保存安定性を高めるという要望を満たすものではなく、また有機酸を添加すると酸性になるため、酸性に弱い植物には好ましくない場合も考えられることから、植物施用時の安定性を高めるという課題を解決できるものではない。さらに、鉱物質を含有する粒状肥料を製造する場合、鉱物質の硬度が高いと十分な強度を得られないことがある。
特許文献3には、バインダーとしてでんぷんを採用することで十分な強度を有する粒状肥料を製造する方法が開示されているが、粒状肥料原料の質量を1としたときの粒状肥料原料に対するでんぷんの添加率が5%を超えると硬くなりすぎて水中崩壊性を害することから、でんぷんの添加率を5%以下とすることが好ましいことが記載されている。しかも特許文献3では、グルタチオンの保存安定性については何ら考慮されておらず、グルタチオンの保存安定性を向上させる技術としては満足できるものではない。
そこで、本発明の課題は、グルタチオンの保存安定性を高め、かつ十分な強度を有するグルタチオン含有粒状肥料を提供することにある。
本発明者らは、グルタチオンと鉱物質と12質量%以上のでんぷんとを含む粒状組成物中では、グルタチオンが安定的に保持され、かつ十分な強度を得ることができるという知見を見出し、本発明を完成するに至った。本発明はかかる新規知見に基づいて完成されたものであり、以下の発明を包含する。
(1)グルタチオン及び/またはその塩を含む粒状肥料であって、グルタチオン及び/またはその塩と、鉱物質と、でんぷんとを含み、でんぷんの含有量が粒状肥料全量中12質量%以上である粒状肥料。
(2)でんぷんの含水量が、5重量%以上30重量%以下であることを特徴とする、(1)に記載の粒状肥料。
(3)でんぷんが、アルファー化でんぷんであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の粒状肥料。
(4)圧縮造粒法、攪拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法及び押出造粒法からなる群から選ばれる1種以上の造粒方法により形成された粒状肥料であることを特徴とする、(1)から(3)のいずれかに記載の粒状肥料。
(5)でんぷんが造粒バインダーとして機能する、(1)から(4)のいずれかに記載の粒状肥料。
(6)グルタチオン及び/またはその塩が酸化型グルタチオン及び/またはその塩である、(1)から(5)のいずれかに記載の粒状肥料。
(7)鉱物質が、クレー、タルク、カオリン、珪藻土、バーミキュライト、モンモリロナイト、ベントナイト、ゼオライト、炭酸カルシウム、パーライト、ジークライト、セリサイト、マイカ、酸性白土、活性白土、軽石、シリカ及びホワイトカーボンからなる群から選ばれる1種以上である、(1)から(6)のいずれかに記載の粒状肥料。
(8)グルタチオン及び/またはその塩の配合量が、粒状肥料の全量に対して0.0001質量%以上48質量%以下であり、鉱物質の配合量が、粒状肥料の全量に対して40質量%以上87.9999質量%以下であり、でんぷんの含有量が59.9999質量%以下である、(1)から(7)のいずれかに記載の粒状肥料。
(9)粒状肥料の水分含有量が10重量%以下である、(1)から(8)のいずれかに記載の粒状肥料。
(10)粒状肥料の最長寸法が0.01〜10mmである、(1)から(9)のいずれかに記載の粒状肥料。
(11)グルタチオン及び/またはその塩と、鉱物質と、でんぷんとの混合物を形成する工程と、
前記混合物から粒子を形成する工程と、
を含む、(1)から(10)のいずれかに記載の粒状肥料の製造方法。
(12)前記混合物から粒子を形成する工程が、圧縮造粒法、攪拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法及び押出造粒法からなる群から選ばれる1種以上の造粒方法により前記混合物から粒子を形成することを含む、(11)に記載の方法。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017−008374号の開示内容を包含する。
本発明により、グルタチオンの保存安定性が高く、かつ十分な強度を有する粒状肥料を得ることができる。
試験2でのGSSG保存安定性を示した図である。
1.粒状肥料
本発明の粒状肥料は、グルタチオンと、鉱物質と、でんぷんとを含む。本発明の粒状肥料中では、グルタチオンが安定に保持され、グルタチオンの分解を促進し得る条件(例えば、加温条件)での保存においてグルタチオンの分解が抑制される。
1−1. グルタチオン
本発明においてグルタチオンは、酸化型グルタチオン(GSSG)であってもよいし、還元型グルタチオン(GSH)であってもよいし、GSSGとGSHとの混合物であってもよい。
GSSGは、GSH(N−(N−γ−L−グルタミル−L−システイニル)グリシン)の2分子がジスルフィド結合を介して結合して形成される物質であり、フリー体は次式で表される。
Figure 2018135612
本発明においてGSSGは、他の物質と結合しておらずイオン化していないフリー体、GSSGと酸又は塩基とで形成される塩、これらの水和物、これらの混合物等の、各種形態のGSSGを包含し得る。
GSSGは、同一のアミノ酸配列からなるnが3のオリゴペプチド鎖の2つが、各々のシステイン残基の側鎖を介してジスルフィド結合により連結しているという特徴的な構造を有する。
本発明においてグルタチオンとしてGSSGを主に含む粒状肥料は、該粒状肥料中でGSSGの含有量がGSHの含有量よりも相対的に多いものを意味しており、実質的にGSHを含まないことがより好ましい。より好ましくは、本発明の粒状肥料中に含まれるGSSGとGSHとの総質量(全てフリー体として換算した質量)に対してGSSGの総質量(フリー体として換算した質量)は、合計で70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
GSSGの塩としてはアンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩等の目的に応じて許容される1種以上の塩であれば特に限定されないが、好ましくはアンモニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩から選択される1種以上の塩である。特許文献4に開示されているようにGSSGの固体状のアンモニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩は低潮解性であり取扱いが容易であるとともに高水溶性であることから特に好ましい。このような塩は、アンモニウムイオン、カルシウムカチオン、及びマグネシウムカチオンから選択される少なくとも1種を生成し得る物質の存在下、GSSGを水及び/又は水可溶性媒体から選択される水性媒体と接触させながら温度30℃以上に加温することにより固体として得ることができる。加温温度は30℃以上であれば特に限定されないが、好ましくは33℃以上、より好ましくは35℃以上、特に好ましくは40℃以上であり、上限は特に限定されないが例えば80℃以下、好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下であり、工業規模での生産においては53〜60℃の範囲が特に好ましい。前記水性媒体は、単独で用いてもよく2種以上を適宜組み合わせてもよいが、水と水可溶性媒体とを組み合わせて用いることが推奨される。この場合、水が酸化型グルタチオンの富溶媒として機能し、水可溶性媒体が貧溶媒として機能する。水可溶性媒体の容量は、水10容量部に対して、例えば、1〜1000容量部程度、好ましくは5〜500容量部程度、さらに好ましくは10〜100容量部程度、特に12〜50容量部程度である。水可溶性媒体としてはアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)等を用いることができる。この方法で得られるGSSG塩としてはGSSGの1アンモニウム塩、GSSGの0.5カルシウム塩又は1カルシウム塩、GSSGの0.5マグネシウム塩又は1マグネシウム塩等が例示できる。
GSHはN−(N−γ−L−グルタミル−L−システイニル)グリシン)とも表記される。本発明においてGSHは、他の物質と結合しておらずイオン化していないフリー体、GSHと酸又は塩基とで形成される塩、これらの水和物、これらの混合物等の、各種形態のGSHを包含し得る。
本発明においてグルタチオンとしてGSHを主に含む粒状肥料は、該粒状肥料中でGSHの含有量がGSSGの含有量よりも相対的に多いものを意味しており、実質的にGSSGを含まないことがより好ましい。より好ましくは、前記粒状肥料中に含まれGSSGとGSHとの総質量(全てフリー体として換算した質量)に対してGSHの総質量(フリー体として換算した質量)は、合計で70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
GSHの塩としてはアンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩等の目的に応じて許容される1種以上の塩であれば特に限定されない。
本発明におけるグルタチオンの配合量は特に限定されず、植物へ与えた時に、植物の種子及び花の数を増加させる等、植物の収穫指数を向上させる効果を得られる範囲で用途に応じて調整することができる。本発明の粒状肥料中でのグルタチオンの配合量としては、該粒状肥料の全量に対して、例えば0.0001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、例えば99質量%以下、好ましくは48質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20%質量以下である。
1−2. 鉱物質
本発明における鉱物質は、粒状肥料を製造する際に担体として用いることができるものであれば特に限定されない。鉱物質としては、例えば、クレー、タルク、カオリン、珪藻土、バーミキュライト、モンモリロナイト、ベントナイト、ゼオライト、炭酸カルシウム、パーライト、ジークライト、セリサイト、マイカ、酸性白土、活性白土、軽石、シリカ、ホワイトカーボン等から選択される少なくとも1種を単体で又は組み合わせて使用することができ、クレー及びタルクの少なくとも1種を単体で又は組み合わせて使用することが特に好ましい。本発明における鉱物質の配合量は特に限定されないが、該粒状肥料の全量に対して例えば40質量%以上、好ましくは50質量%以上、例えば99質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは87.9999質量%以下である。
1−3. でんぷん及びその他バインダー成分
本発明者らは、粒状肥料の原料としてでんぷんを所定量以上配合した場合に、グルタチオンの分解が抑制されると共に、十分な強度の粒状肥料が製造できることを見出した。
本発明における「でんぷん」は、α−グルコースがグリコシド結合で重合したものであって、結合水を包含するものである。結合水とは、他の構成成分と混合されて組成物を製造する前にでんぷん内に見出される水であり、でんぷん内において天然起源であることが見出される水を含む。なお、通常、乾燥プロセスにかけられていないでんぷんは、周囲条件に応じてでんぷんの約5重量%〜約20重量%の結合水を含有する。また、本発明では、一般的に製造および流通し得る態様のでんぷん(粗乾燥物)にもともと含まれる水分も「結合水」として考える。本発明のでんぷんの重量平均分子量は、好ましくは1000以上、5000以上、10000以上であり、より好ましくは25000以上、50000以上、75000以上、100000以上であり、さらに好ましくは200000以上、400000以上、500000以上である。
本発明におけるでんぷんの種類は特に限定されず、例えば、タピオカ、コーン、小麦、ライ麦、馬鈴薯、甘薯、米、サゴ、ワラビ、蓮、葛、緑豆等から選択される少なくとも1種のでんぷんを単体で又は組み合わせて使用することができるが、製品強度を向上させる効果の観点からは、ライ麦でんぷん、タピオカでんぷん、コーンでんぷんおよび馬鈴薯でんぷんが好ましく、コーンでんぷんおよびタピオカでんぷんがより好ましい。グルタチオンの保存安定性を更に高めるためには、アルファー化でんぷんを用いることが特に好ましい。
本発明の粒状肥料におけるでんぷんの配合量は、該粒状肥料原料全量に対して12質量%以上であればよい。なお、本発明の粒状肥料におけるでんぷんの配合量は、粒状肥料が十分な強度を得られる範囲であれば上記範囲である限り特に限定されないが、例えば15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、例えば、99質量%以下、80%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、59.9999質量%以下が特に好ましい。でんぷんはバインダーとしての性質を有しているため、吸湿することにより粘度が高くなる傾向にある。このため、装置付着抑制等、造粒時の操作性を向上させるためには、20質量%以上60質量%以下の範囲で配合されることが好ましい。
本発明におけるでんぷんの含水量は、上記配合量の範囲内である限り特に限定されないが、その含水量が多いほうが好ましく、例えば、5重量%以上であることが好ましく、7重量%以上、12重量%以上、13重量%以上であることがより好ましい。でんぷんの含水量はより好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは17重量%以下である。でんぷんの含水量とは、他の構成成分と混合される前のでんぷんの全重量に対する該でんぷんに含まれる水の重量の割合であり、実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明者らは驚くべきことに、粒状肥料の原料として採用するでんぷんの含水量が多いほど強度が高くなる傾向にあることを見出した。さらに、一般的には、グルタチオンを含有する組成物における水分含有量が多い場合、グルタチオンの分解が促進されることが知られているが、本発明者らは、配合するでんぷんの含水量が多い場合においても、グルタチオンの保存安定性が高いという驚くべき知見を得た。すなわち、でんぷんを配合して製造された粒状肥料は、でんぷんの種類に拘らず、グルタチオンが安定に存在し、かつ十分な強度を有する。
なお、本発明において、でんぷんは主に造粒バインダー(以下、バインダーと称することがある)として機能しており、本発明の粒状肥料では、バインダーとしてでんぷんのみを使用することもできるが、でんぷんと粒状肥料製造時に一般的に採用されるバインダー(例えば、増粘剤、結合剤、水等)とを併せて使用してもよい。粒状肥料製造時に一般的に採用されるバインダーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、アクリル酸系高分子、ポリビニルアルコール、ゼラチン、寒天、アラビアガム、アラビアガム末、キサンタンガム、トランガム、グアーガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、マクロゴール、トラガカントゴム、βグルカン、ペクチン、カゼイン、大豆タンパク、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、リグニンスルホン酸、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、ポリビニルメチルエーテル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、セラック、ロジン、トール油、エステルガム、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリ尿素、ポリアミド、クマロン樹脂、生分解性高分子、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、モンタンワックス、カルナウバロウ、綿ロウ、ミツロウ、羊毛ロウ、高分子の非イオン系界面活性剤、高分子の陰イオン系界面活性剤、高分子の陽イオン系界面活性剤、高分子の両性界面活性剤、アルギン酸(以上は高分子化合物である)、ケイ酸ナトリウム、グリセリン、動植物油、油脂、流動パラフィン、重油、グルコース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、非高分子の非イオン系界面活性剤、非高分子の陰イオン系界面活性剤、非高分子の陽イオン系界面活性剤、非高分子の両性界面活性剤(以上は非高分子化合物である)等が挙げられる。好ましくはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、アラビアガム、キサンタンガム、リグニンスルホン酸、水、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
1−4.その他成分
本発明の粒状肥料に含まれる上記で挙げた以外の成分としては、有機担体、賦形剤、肥料等の成分が挙げられる。
本発明の粒状肥料が含み得る有機担体としては、モミガラ、オガクズ、大豆粉、トウモロコシ茎、植物繊維等の乾燥植物材料、パルプフロック、ホワイトカーボン、活性炭等の有機多孔質担体が挙げられる。
本発明の粒状肥料が含み得る賦形剤としては、乳糖、トレハロース、セルロース等が挙げられる。
本発明の粒状肥料が含みうる肥料成分としてはカリウム、窒素、リン、カルシウム、マグネシウム等の肥料として有用な元素が挙げられる。
本発明の粒状肥料中の水分含有量は、全量に対し10重量%以下であることが好ましい。
2.製法
本発明の粒状肥料を造粒する方法としては、攪拌造粒、転動造粒、流動層造粒、押出造粒、圧縮造粒等、通常の粒状肥料の製造工程で採用されるものにしたがえばよい。好ましくは、グルタチオンと鉱物質とでんぷんとの混合物を形成する混合工程と、前記混合物を粒状化する造粒工程と、を含む方法が挙げられる。造粒工程は必要に応じて整粒工程や、乾燥工程を含むことができる。
ここで、グルタチオンを含有する組成物における水分含有量が多い場合、グルタチオンの分解が促進されて、保存安定性が低下することが知られている。このため、本発明の粒状肥料中の水分は、グルタチオンの保存安定性を向上させる観点からは少ないことが好ましく、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下であることができる。したがって、本発明の粒状肥料の製造工程においては、液体(例えば、水等)の使用量を少なくする、或いは、液体を使用しないことが好ましい。また、本発明の粒状肥料の製造工程において、液体(例えば、水等)を使用する場合には、造粒工程後に、乾燥工程が含まれることが好ましい。本発明の粒状肥料の製造工程において液体(例えば、水等)を使用しない場合には、乾燥工程を省いても、グルタチオンの保存安定性が高い粒状肥料を製造することができる。
上記造粒工程により得られる本発明の粒状肥料の粒子の形状や寸法は特に限定されないが、例えば、施肥時の作業性および省力化の観点から、形状は球形であることが好ましく、寸法は、各粒子の最長寸法として0.01〜10mmであることが好ましく、さらに好ましくは0.05〜6mmであり、特に好ましくは2〜4mmである。
3.粒状肥料の評価試験
3−1. 強度試験
本明細書における試料(粒状肥料)の強度とは圧壊強度を意味しており、試料の圧壊強度はデジタル硬度計(株式会社藤原製作所製)を使用して測定した。測定方法は以下のとおりである。
試料を上皿天秤の上に1個(1粒)乗せ、5mm径の平らな切り口を押し付けて、粒が壊れるときの荷重を読み取り、計10個の前記荷重を測定してその平均値を粒状肥料の圧壊強度(kgf)とした。粒状肥料において輸送時の粉化等を抑制するためには、0.5kg以上の圧壊強度を持つことが好ましい。このため、本発明における「十分な強度」とは、圧壊強度が0.5kg以上であることを意味している。圧壊強度は15kg以下又は10kg以下である場合、土壌中で粒状肥料が崩壊し易いため好ましい。
3−2. 保存安定性試験
本明細書において試料(粒状肥料)におけるグルタチオンの保存安定性は、以下の方法により測定した。
アルミラミネート袋(ラミジップ、AL−9またはAL−D)に試料を入れてヒートシールにて密封した。なお、密封時に袋内は脱気していない。各試料を60℃のインキュベーター内で1ヶ月静置して保存した後、保存後の試料中のグルタチオン量をHPLCにより測定した(検出波長210nm)。試験直前の試料に含有するグルタチオン量に対する、保存後の試料に含有するグルタチオン量の割合を残存率(%)とし、この残存率をグルタチオンの保存安定性の指標とした。
本発明ではグルタチオンの残存率が75%以上や90%以上の粒状肥料を得ることができる。
以下、本発明について具体例を参照して説明する。しかしながら以下の具体例は本発明の範囲を限定するものではない。
<試験1>
酸化型グルタチオン0.6質量部、クレー69.4質量部、造粒バインダー(でんぷん)30質量部からなる原料を用いて、圧縮造粒により造粒物(粒状肥料)を製造し、造粒物の強度を確認した。
酸化型グルタチオンとしては自社製の一アンモニウム塩(GSSG・NH)を用いた。クレーとしては昭和KDE株式会社製NK−300を用いた。また、造粒バインダーとしてのでんぷんは、表1に示すものを使用した。造粒方法は以下の通りである。
合計量100gの上記原料をよく混合し、打錠機(HANDTAB−100、市橋精機社製)を使用し、油圧ポンプ(ENERPAC P142、アプライドパワージャパン社製)により10kNの圧力をかけることにより打錠成型し、造粒物を得た。得られた各造粒物の圧壊強度を、3−1.に記載の強度試験に従って測定した。各造粒物の測定結果を表1に示す。
また、上記各造粒バインダー(でんぷん)の含水量(水分量、重量%)は、赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所)を用いて、各サンプル3g、110℃、15分間の測定条件にて測定した。各造粒バインダーの含水量を表1に示す。
造粒バインダーとしてでんぷんを配合した実施例1〜5の造粒物は、その圧壊強度が0.5kgf以上となった。
さらに、実施例1〜5の結果から、バインダーとして採用するでんぷんの含水量が高くなるほど、造粒物の強度が高くなる傾向にあることが確認された。
Figure 2018135612
<試験2>
表2に示す各組成のグルタチオン含有肥料を圧縮造粒により製造し、造粒可否、圧壊強度、造粒物含水量、および保存安定性を確認した。なお、表2中の数値は、質量部(質量%)で示している。
酸化型グルタチオン及びクレーとしては、上記試験1と同様のものを使用した。タルクとしては日本タルク株式会社製SSSを用いた。硫酸カリウムとしてはSESODA CORPORATION製を用いた。リン酸二水素アンモニウムとしては下関三井化学株式会社製を用いた。でんぷんとしては三和澱粉工業株式会社製タピオカアルファー工業用(以下、タピオカでんぷんと称することがある)、三和澱粉工業株式会社製コーンアルファーY(以下、コーンでんぷん1と称することがある)、三和澱粉工業株式会社製コーンスターチY(以下、コーンでんぷん2と称することがある)を用いた。なお、上記タピオカでんぷん及びコーンでんぷん1は、アルファー化でんぷんである。モンモリロナイトとしてはクニミネ鉱業株式会社製クニピアーF、ベントナイトとしては三立鉱業株式会社製250FA−Bを用いた。リグニンスルホン酸としては日本製紙株式会社製サンエキスP202を用いた。二酸化ケイ素としてはDSL.ジャパン株式会社製を用いた。CMCNaとしては第一工業製薬株式会社製を用いた。なお、造粒は試験1と同様の方法で行い、造粒可否を評価した。造粒可否の評価は、以下の視点で行った。上記造粒法を実施した場合に、問題なく造粒物が得られたものを「A」と評価し、手で持つと直ぐに崩れる、もしくはキャッピング等の打錠障害が生じたものを「B」と評価した。また、各造粒物の圧壊強度を、3−1.に記載の強度試験に従って測定した。各造粒物の測定結果を表2に示す。加えて、各造粒物におけるグルタチオンの保存安定性を、3−2.に記載の保存安定性試験に従って測定した。各造粒物の測定結果を表2及び図1に示す。さらに、各造粒物の含水量の測定結果を表2に示す。各造粒物の含水量(水分量、重量%)は、赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所)を用いて、各サンプル3g、110℃、15分間の測定条件にて測定した。
造粒バインダーとしてでんぷんを配合した実施例6〜8の造粒物、造粒バインダーとしてモンモリロナイトを配合した比較例1の造粒物、および造粒バインダーとして水とCMCNaとを配合した比較例4の造粒物は、その圧壊強度が0.5kgf以上となったのに対し、造粒バインダーとしてベントナイトを配合した比較例2の造粒物および造粒バインダーとしてリグニンスルホン酸を配合した比較例3の造粒物は、測定不能(圧壊強度が0.5kgf未満)であった。
また、造粒バインダーとしてでんぷんを配合した実施例6〜8の造粒物は、造粒バインダーとしてモンモリロナイトを配合した比較例1の造粒物および造粒バインダーとして水とCMCNaとを配合した比較例4の造粒物よりも、造粒物中の水分量(造粒物含水量)が高かったが、GSSGの保存安定性が顕著に向上することが確認された。
さらに、造粒バインダーとしてアルファー化でんぷんを配合した実施例6、7の造粒物は、造粒バインダーとしてアルファー化していないでんぷんを配合した実施例8よりも、GSSG保存安定性が高いことが確認された。
Figure 2018135612
<試験3>
表3に示す各組成のグルタチオン含有肥料を圧縮造粒により製造し、造粒物の強度を確認した。なお、表3中の数値は、質量部(質量%)で示している。
酸化型グルタチオン、クレー、タルク、硫酸カリウム、リン酸二水素アンモニウムは、試験2と同様のものを用いた。コーンでんぷんとしては、試験2のコーンアルファーYと同様のものを用いた。造粒方法は以下の通りである。
合計量5kgの上記原料をヘンシェルミキサー(FM20B型、三井三池製作所製)等により、よく混合し、ブリケットマシン(BGSINO18型、新東工業株式会社製)を使用し、ロール油圧16.5MPa、ロール回転数50Hz、スクリュー回転数20Hz、ロール加圧力25〜35kNの運転条件でブリケット造粒物(板状造粒物)を得た。得られた板状造粒物を1粒1粒に解砕して、造粒物とした。そして、各造粒物の圧壊強度を、3−1.に記載の強度試験に従って測定した。各造粒物の測定結果を表3に示す。
造粒物全体に対するでんぷんの配合量が10質量部である比較例5の造粒物は、その圧壊強度が0.5kgf未満となったのに対し、造粒物全体に対するでんぷんの配合量が15質量部である実施例9の造粒物および造粒物全体に対するでんぷんの配合量が20質量部である実施例10の造粒物は、その圧壊強度が0.5kgf以上となった。
Figure 2018135612
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。

Claims (12)

  1. グルタチオン及び/またはその塩を含む粒状肥料であって、グルタチオン及び/またはその塩と、鉱物質と、でんぷんとを含み、でんぷんの含有量が粒状肥料全量中12質量%以上である粒状肥料。
  2. でんぷんの含水量が、5重量%以上30重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の粒状肥料。
  3. でんぷんが、アルファー化でんぷんであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粒状肥料。
  4. 圧縮造粒法、攪拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法及び押出造粒法からなる群から選ばれる1種以上の造粒方法により形成された粒状肥料であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の粒状肥料。
  5. でんぷんが造粒バインダーとして機能する、請求項1から4のいずれかに記載の粒状肥料。
  6. グルタチオン及び/またはその塩が酸化型グルタチオン及び/またはその塩である、請求項1から5のいずれかに記載の粒状肥料。
  7. 鉱物質が、クレー、タルク、カオリン、珪藻土、バーミキュライト、モンモリロナイト、ベントナイト、ゼオライト、炭酸カルシウム、パーライト、ジークライト、セリサイト、マイカ、酸性白土、活性白土、軽石、シリカ及びホワイトカーボンからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1から6のいずれかに記載の粒状肥料。
  8. グルタチオン及び/またはその塩の配合量が、粒状肥料の全量に対して0.0001質量%以上48質量%以下であり、鉱物質の配合量が、粒状肥料の全量に対して40質量%以上87.9999質量%以下であり、でんぷんの含有量が59.9999質量%以下である、請求項1から7のいずれかに記載の粒状肥料。
  9. 粒状肥料の水分含有量が10重量%以下である、請求項1から8のいずれかに記載の粒状肥料。
  10. 粒状肥料の最長寸法が0.01〜10mmである、請求項1から9のいずれかに記載の粒状肥料。
  11. グルタチオン及び/またはその塩と、鉱物質と、でんぷんとの混合物を形成する工程と、
    前記混合物から粒子を形成する工程と、
    を含む、請求項1から10のいずれかに記載の粒状肥料の製造方法。
  12. 前記混合物から粒子を形成する工程が、圧縮造粒法、攪拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法及び押出造粒法からなる群から選ばれる1種以上の造粒方法により前記混合物から粒子を形成することを含む、請求項11に記載の方法。
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