JPWO2018066474A1 - 記録媒体、記録物および画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、非吸水性基材に対して、ひび割れや折り割れの欠陥が少なく画像の密着性が高い記録物が得られるインクジェット用の記録媒体を提供することを目的とする。上記目的を達成するための本発明は、少なくとも樹脂微粒子を含有する記録層を非吸水性基材上に形成した記録媒体に関する。上記記録層は、乾燥後の膜厚が0.3μm以上、3.0μm以下であり、記録層中には更にグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルのうち何れかを少なくとも含有する。

Description

本発明は、インクジェット用の記録媒体、記録物および画像形成方法に関する。
水および色材を含む、インクジェット法により付与される水性のインク(以下、「インク」または「インクジェットインク」と略記することもある)は、紙などの吸水性の基材への印刷に適しているものの、フィルム等のような非吸水性の基材には密着性が低く、印刷物の耐性が低くなるという問題がある。
特許文献1には、フィルム等のような非吸水性の基材に対して水性のインクを密着させるために、該インクに定着樹脂を含有させることが開示されている。
また、インクジェットインクの付与前に基材に塗布する処理液に、ソルビタン脂肪酸エステルなどを含ませることが知られている。
たとえば、特許文献2では、記録媒体の表面の濡れ性を改善するための処理液に、ソルビタン脂肪酸エステルを含ませてもよいと記載されている。また、特許文献3にも、ソルビタン脂肪酸エステルを含ませた前処理液が記載されている。
特開2010−248357号公報 特開2014−176996号公報 特開2010−30283号公報
しかしながら、特許文献1に記載のように定着樹脂を含有させたインクは、インクジェット法におけるインク射出特性への影響が大きく、また、乾燥によりノズルの目詰りを生じ易いため、頻繁にインクジェットヘッドのメンテナンスを行う等の対応が必要になる。
本発明者らは、予め非吸水性基材に樹脂微粒子を含有する処理液をプレコートした記録媒体に対してインクジェット法で記録することで、インクに含有させる定着樹脂を低減する、あるいは無くすことについて検討を試みた。しかしながら、非吸水性基材では処理液中の樹脂が基材に浸透するアンカー効果がないため、画像の密着性が高まりにくかった。更にはフィルムパッケージなど薄いフィルムでは処理液中の樹脂微粒子により形成される樹脂層が触感や剛性に影響するなど、用途によって記録層の厚みに制限があるが、記録層の厚さが薄い場合に高温または高湿下での保存によるひび割れや折り曲げによる亀裂(以下、折り割れと略記することもある)が生じる課題が見出された。特に、画像の滲みを抑制するために多価金属塩や酸またはカチオン樹脂などの顔料凝集剤を用いた場合に折り割れの課題が顕著であることが判った。特許文献2および3には、基材を処理液でプレコートすることが記載されているものの、上記薄い基材で特有に生じるひび割れや折り割れについては、何ら言及されていない。
そこで本発明の課題は、非吸水性基材に対して、ひび割れや折り割れの欠陥が少なく画像の密着性が得られるインクジェット用の記録媒体または記録物、およびそのような記録物を製造できる画像形成方法を提供することにある。
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
[1]少なくとも樹脂微粒子を含有する記録層を非吸水性基材上に形成した記録媒体であって、乾燥後の該記録層の膜厚が0.3μm以上、3.0μm以下であって、該記録層中に更にグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルのうち何れかを少なくとも含有することを特徴とする記録媒体。
[2]前記記録層中に更に顔料を凝集させる化合物を含有することを特徴とする[1]に記載の記録媒体。
[3]前記顔料を凝集させる化合物が水溶性であることを特徴とする[2]に記載の記録媒体。
[4]前記顔料を凝集させる化合物が多価金属塩または有機酸であることを特徴とする[2]または[3]に記載の記録媒体。
[5]前記グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルの合計した含有量が0.01g/m以上0.5g/m以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の記録媒体。
[6]前記非吸水性基材がプラスチックフィルムであることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の記録媒体。
[7]非吸水性基材に、少なくとも樹脂微粒子および色材が付着している領域(A)と、樹脂微粒子が付着しているが色材を実質的に含有しない領域(B)とを含み、少なくとも該領域(B)には、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルのうち少なくとも何れかが付着している、記録物。
[8]前記グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルの合計した含有量が0.01g/m以上0.5g/m以下であることを特徴とする[7]に記載の記録物。
[9]前記非吸水性基材がプラスチックフィルムである、[7]または[8]に記載の記録物。
[10][1]〜[6]のいずれかに記載の記録媒体に、色材を少なくとも含有するインクを用いてインクジェット記録することを特徴とする画像形成方法。
[11]前記インクが樹脂微粒子を実質的に含有しないことを特徴とする[10]に記載の画像形成方法。
[12]前記非吸水性基材がプラスチックフィルムであることを特徴とする[10]または[11]に記載の画像形成方法。
本発明によれば、非吸水性基材に対してひび割れや折り割れの欠陥がなく画像の密着性が得られるインクジェット用の記録媒体または記録物を提供することができる。
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。
先ず本発明の記録媒体について説明する。
本発明の記録媒体は、少なくとも樹脂微粒子を含有する処理液から形成される記録層が非吸水性基材上に形成されたものであり、ロールコーターなどの方法により上記処理液を塗布した後、熱風や赤外線ヒーターなどを用いて上記処理液を乾燥することにより作成することができる。画像の記録は、前記記録層上に、顔料を少なくとも含有するインクをインクジェット法により付与するインク付与工程と、付与されたインクを乾燥させて記録するインク乾燥工程とにより行うことができる。
本発明の記録媒体は、少なくとも樹脂微粒子を含有する処理液からなる記録層を非吸水性基材上に形成した記録媒体であって、該記録層の乾燥後の膜厚が0.3μm以上、3.0μm以下であって、記録層中に更にグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルのうち何れかを少なくとも含有することを特徴とする。これにより、本発明の記録媒体は、ひび割れや折り割れによる欠陥が少なく良好な密着性を得ることができる効果を有する。
以下に、まず、非吸水性基材上に記録層を形成する方法について詳しく説明し、次いで、記録層上にインクを記録する方法について詳しく説明する。
本発明における非吸水性基材とは、プラスチック、プラスチックフィルム、ガラス、金属など実質的に水を吸収しない基材であれば格別限定されない。特にプラスチックフィルム(以下、フィルムと略記)を基材として用いる場合、熱などによる変形に伴うひび割れが発生じやすく、より効果的に本発明が適用できる。
フィルムを構成する樹脂は格別限定されないが、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド等のようなプラスチックを好ましく挙げることができる。フィルムは、未延伸フィルム又は延伸フィルムの何れであってもよい。また、フィルムの表面は、コロナ処理等の表面処理がなされていてもよい。
処理液塗布工程では、かかる非吸水性基材上に、樹脂微粒子を少なくとも含有する処理液を塗布する。
処理液中の樹脂微粒子を構成する樹脂は格別限定されないが、例えば、ポリウレタン構造を有する樹脂(以下、ポリウレタン樹脂、あるいは、単にウレタン樹脂と略記することもある)、ポリオレフィン構造を有する樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができる。特にポリウレタン構造を有する樹脂を用いることによって、記録層や後のインクジェット法によって印字される画像の密着性とひび割れや折り割れへの耐性を更に向上することができる。
ポリウレタン構造を有する樹脂からなる樹脂微粒子としては、例えば、カチオン性又はノニオン性のポリウレタン樹脂微粒子を好ましく用いることができる。
以下に、カチオン性又はノニオン性のポリウレタン樹脂微粒子の具体例を挙げる。カチオン性のポリウレタン樹脂微粒子としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス620」及び「スーパーフレックス650」(「スーパーフレックス」は同社の登録商標)、三洋化成工業株式会社製の「パーマリンUC−20」(「パーマリン」は同社の登録商標)、大原パラヂウム化学株式会社製の「パラサーフUP−22」などを挙げることができる。ノニオン性のポリウレタン樹脂微粒子としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス500M」及び「スーパーフレックスE−2000」などを挙げることができる。
また、樹脂微粒子として、ポリオレフィン構造を有する樹脂を用いることも好ましい。特にポリウレタン構造を有する樹脂を含む樹脂微粒子と、ポリオレフィン構造を有する樹脂を含む樹脂微粒子を併用することが好ましい。
ポリオレフィン構造を有する樹脂を含む樹脂微粒子としては、例えばポリプロピレン樹脂微粒子等を好ましく挙げることができる。ポリオレフィン構造を有する樹脂を含む樹脂微粒子、特にポリプロピレン樹脂微粒子を用いることによって、ポリエチレンやポリプロピレンなどの疎水的な基材に対する印字画像の密着性を更に向上できる効果が得られる。
ポリオレフィン構造を有する樹脂には、例えば、塩素やカルボキシル基等の極性基が導入されていてもよい。
ポリオレフィン構造を有する樹脂を含む樹脂微粒子として、日本製紙社製の「スーパークロンE−415」(「スーパークロン」は同社の登録商標)(ポリプロピレン樹脂微粒子)、日本製紙社製の「アウローレンAE−301」(「アウローレン」は同社の登録商標)(ポリオレフィン樹脂微粒子)等の市販品を用いることができる。
樹脂微粒子の平均粒子径は、10nm以上10μm以下の範囲であることが好ましく、10nm以上1μm以下の範囲であることがより好ましく、10nm以上500nm以下の範囲であることがさらに好ましく、10nm以上300nm以下の範囲であることがさらに好ましく、10nm以上200nm以下の範囲であることがさらに好ましい。平均粒子径の測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、且つ該粒子径領域を精度よく測定できる。
樹脂微粒子は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
処理液における樹脂微粒子の含有量は、処理液の質量に対して5質量%以上40質量%以下の範囲とすることが好ましく、10質量%以上30質量%以下の範囲とすることが更に好ましい。
本発明の記録層は、更にグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルのうち何れかを少なくとも含有することを特徴とする。これにより、特に高温または高湿下で保存した場合に記録層やインクジェット記録部分と非記録部分の境界で生じるひび割れ、または記録物の折り割れが発生する課題を効果的に抑制することができる。
上記の本発明の効果について、その作用は明確ではないが以下のように推定している。
グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはソルビタン脂肪酸エステルは、樹脂または後述する顔料凝集剤がインクジェット法で付与されたインクに含まれる顔料の近傍へ移行するのを促進し、記録層と顔料の界面強度を高める効果が得られるものと推定される。また、特に記録層に顔料凝集剤を含む場合、記録層の柔軟性が低下して記録層が脆くなる傾向にあるが、前記の化合物が可塑剤的に機能し記録層を柔軟化するものと考えられる。
グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはソルビタン脂肪酸エステルを記録層中に含有させる方法は特に限定されるものでなく、記録層中に含有していればよい。例えば、これらを含む処理液を非吸水性基材に塗布・乾燥する方法、樹脂微粒子を含有する処理液を塗布・乾燥した後にスプレーやインクジェット法によりこれらを含む液体をオーバーコートする方法、プラスチックやフィルム基材中にあらかじめこれらを添加しておいて処理液の塗布・乾燥後に基材中から記録層中へブリードアウトさせる方法などを好適に用いることができる。
グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはソルビタン脂肪酸エステルの合計した好ましい含有量(付量)の範囲は、記録層に平米当たりの質量で0.01g/m以上0.5g/m以下である。本発明の効果を得るためには0.01g/m以上含有することが好ましく、0.5g/m以下とすることでインクジェット記録時のインクの濡れを良好に保つことができるため、均一な画像を形成しやすくなる。グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはソルビタン脂肪酸エステルの合計した好ましい含有量の範囲は、0.01g/m以上0.4/m以下であることが好ましい。
記録層中のグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはソルビタン脂肪酸エステルの含有量は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)で測定することができる。
上記化合物の具体例としては以下のような化合物を挙げることができるがこれに限定されるものではない。グリセリン脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸モノグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリンラウリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンオレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどが挙げられる。
記録層には、後段のインクジェット法により付与されるインクに含有される顔料を凝集させる化合物(以下、顔料凝集剤ともいう)を更に含有させることが好ましい。これにより、特に高速でインクジェット記録する際に生じる滲みを効果的に抑制できる。特に水性のインクジェットインクを用いる場合、水溶性の顔料凝集剤を用いることが好ましく、水溶性であることにより顔料近傍への凝集剤の拡散速度が高まるものと推定している。
一例として、インクに含有される顔料がアニオン性の分散顔料であれば、顔料凝集剤として、例えば、酸又はカチオン性化合物を好ましく用いることができる。
酸は、pH変動によってインク中のアニオン性の分散顔料を凝集することができる。酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、シュウ酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、安息香酸、2−ピロリドン−5−カルボン酸、乳酸、アクリル酸又はその誘導体、メタクリル酸又はその誘導体、アクリルアミド又はその誘導体、スルホン酸誘導体、リン酸又はその誘導体等を好ましく挙げることができる。酸としては、無機酸よりも有機酸を好ましく用いることができる。有機酸を用いることによって、塗布液を構成する樹脂等の他の成分との相溶性を向上でき、更に、塗布液により形成されるコーティング層が乾燥しても塩になりにくいため、透明性に優れる効果も得られる。
カチオン性化合物は、塩析によってインク中のアニオン性の分散顔料を凝集することができる。カチオン性化合物として、例えば、多価金属塩やカチオン性界面活性剤またはカチオン性樹脂等を挙げることができる。多価金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の水溶性の塩を好ましく挙げることができる。カチオン性界面活性剤(陽イオン性界面活性剤ともいう)としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等を好ましく挙げることができる。カチオン性樹脂としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
特に好ましい顔料凝集剤は多価金属塩または有機酸であり、インクが多価金属塩または有機酸を含むことで、インクジェット記録において特に高速での印刷において生じやすい滲みを好適に抑制できる。
顔料凝集剤は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
処理液における顔料凝集剤の含有量(付量)の範囲は格別限定されないが、多価金属塩の場合は0.1g/m以上、20g/m以下が好ましい。滲みを効果的に抑制するためには0.1g/m以上含有することが好ましく、20g/m以下とすることで折り割れを効果的に抑制できる。酸を用いる場合は、インクジェット記録インクに含まれるアニオン成分の中和当量以下に処理液のpHを調整する量の酸を添加する必要がある。アニオン成分がアクリル酸基である場合、処理液に用いる酸の第一解離定数は3.5以下が好ましい。処理液に含まれる酸の量を調整して、処理液のpHを前記酸の第一解離定数未満に調整することにより高速プリント時の滲みを効果的に抑制できる。
記録層中の顔料凝集剤の含有量は、公知の方法で測定することができる。例えば、顔料凝集剤が多価金属塩であるときはICP発光分析で、顔料凝集剤が酸であるときは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で含有量を測定することができる。
処理液は溶媒として、水を含むことが好ましく、他に公知の有機溶媒を含有することができる。溶媒は後段の記録層乾燥工程により除去することができる。
また、処理液には界面活性剤を含有することができる。これにより、各種塗布方法への適合性を高めることができる。上記界面活性剤の例としては、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を好ましく挙げることができる。
陽イオン性界面活性剤の例としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等を好ましく挙げることができる。
両性界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等を好ましく挙げることができる。
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等を好ましく挙げることができる。
記録層中には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他、架橋剤、防黴剤、殺菌剤等、他の成分を適宜配合することができる。
非吸水性基材上への処理液の塗布方法は格別限定されないが、例えば、ローラー塗布法、カーテン塗布法、スプレー塗布法、インクジェット法等を好ましく挙げることができる。
次いで、記録層の乾燥工程では、フィルム基材上に塗布された処理液を乾燥させて記録層を形成する。
処理液乾燥工程では、記録層を、更なる成膜の進行の余地を残した状態(不完全な成膜状態)にとどめることが好ましい。不完全な成膜状態は、樹脂微粒子が残存する状態であるか、または、樹脂微粒子が溶融していたとしても樹脂が完全に混和する前の状態をいう。不完全な成膜状態の記録層は、樹脂ポリマー間の隙間(境界)が比較的多い疎な状態である。
不完全な成膜状態のプレコート層は、樹脂微粒子が溶融し樹脂が完全に混和する条件よりも、低温あるいは短時間の条件で乾燥を行うことにより好適に形成できる。
不完全な成膜状態は、例えば、偏光顕微鏡等を用いることで確認ができる。
処理液の乾燥には、例えば、乾燥炉や熱風送風機等のような非接触加熱型の乾燥装置を用いてもよいし、ホットプレートや熱ローラー等のような接触加熱型の乾燥装置を用いてもよい。
乾燥後の記録層の膜厚は、0.3μm以上、3.0μm以下の範囲である。本発明の効果は、記録層の膜厚が上記条件において顕著に奏される。膜厚が0.3μm以上であることによりひび割れや折り割れを抑制したままインクジェット記録画像の密着性や高速記録時の滲みを抑制することができる。膜厚の上限は限定されるものではないが、3.0μmより厚い場合は課題であるひび割れや折り割れが起きにくく、本願は前記のように記録層の膜厚が薄いことが求められる用途での課題に対する改善方法を提供するものである。例えばフィルム基材を用いる場合、質感が変化することを好適に防止できる点で更に好ましい記録層の膜厚は0.3μm以上2.0μm以下の範囲である。なお、乾燥後とは、偏光顕微鏡等を用いて観察しても、樹脂微粒子が明確には残存せず、これ以上乾燥させても成膜が進行しないと考えられる状態を意味する。
記録層の膜厚は、電子顕微鏡(SEM、TEM等)による断面観察や光干渉膜厚計によって測定することができる。
このようにして形成された本発明の記録媒体の、上記記録層上に、顔料を少なくとも含有するインクをインクジェット法により付与し、付与されたインクを乾燥させてなる記録物は、非吸水性基材に、少なくとも樹脂微粒子および色材が付着している領域(A)と、樹脂微粒子が付着しているが色材を実質的に含有しない領域(B)とを含む。領域(A)は上記インクが付与された領域であり、領域(B)は上記インクが付与されずに上記記録媒体の構成が残された部分である。
このとき、少なくとも領域(B)には、上述したようにして形成された記録層が残されており、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルのうち少なくとも何れかが付着している。
領域(A)は、おそらくは、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはソルビタン脂肪酸エステルによって樹脂または顔料凝集剤がインクに含まれる顔料の近傍へ移行するのを促進されるため、記録層と顔料の界面強度が高まっていると推定される。領域(A)は、上記グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルのうち少なくとも何れかを含んでいてもよいが、上述の移行促進後にこれらの物質が流出等することにより、これらの物質を含まなくてもよい。
次に、記録物を構成するインクについて説明する。インクとしては、色材、特に顔料を好ましく用いることができ、更に有機溶剤及び水を少なくとも含有するものを好ましく用いることができる。
インク中には色材として、例えば、染料、顔料またはこれらの混合物を用いることができる。記録物の耐水性が求められる用途においては顔料を用いることが好ましい。
染料としては、例えば、水溶性染料、分散染料等を挙げることができる。水溶性染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、塩基性染料等を挙げることができる。分散染料としては、例えば、着色ポリマー、着色ワックス等を挙げることができる。
顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、水分散性顔料、溶剤分散性顔料等何れも使用可能であり、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料、あるいは酸化チタンやカーボンブラック等の無機顔料を好ましく用いることができる。これらの顔料は、例えば、顔料分散剤によりインク中に分散させた状態で存在させて使用することができる。
不溶性顔料は格別限定されないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
有機顔料は格別限定されないが、例えば以下のものを好ましく例示できる。
イエロー又はオレンジ等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155等が挙げられる。
マゼンタ又はレッド等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン又はグリーン等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
ブラック等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
また、白色に用いる顔料としては酸化チタンが挙げられる。
インク中における顔料の分散状態の体積平均粒子径は、50nm以上200nm以下の範囲であることが好ましい。これにより、顔料の分散安定性を向上でき、インクの保存安定性を向上できる。顔料の粒子径測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、且つ該粒子径領域を精度よく測定できる。
顔料は、顔料分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物と共に、分散機により分散して用いることができる。
分散機としては、従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等を使用できる。中でもサンドミルによって顔料を分散させると、粒度分布がシャープとなるため好ましい。また、サンドミル分散に使用するビーズの材質は、格別限定されないが、ビーズ破片の生成やイオン成分のコンタミネーションを防止する観点から、ジルコニアまたはジルコンであることが好ましい。さらに、このビーズ径は、0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましい。
インクにおける顔料の含有量は格別限定されないが、例えば、無機顔料については7質量%以上18質量%以下の範囲であることが好ましく、有機顔料については0.5質量%以上7質量%以下の範囲であることが好ましい。
顔料として、アニオン性の分散顔料を用いることは特に好ましいことである。アニオン性の分散顔料としては、例えば、表面にアニオン性基を導入した顔料や、アニオン性基を有する顔料分散剤によって分散された顔料等を挙げることができる。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等を好ましく例示できる。
また、アニオン性基は、アルカリ中和されていることが好ましい。アニオン性基を中和するアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等の金属塩基化合物や、アンモニアや、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等を好ましく挙げることができる。
顔料分散剤としては、酸価を有する高分子分散剤(樹脂分散剤ともいう)を好ましく用いることができる。酸価は格別限定されないが、50mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の範囲であることが好ましい。
顔料分散剤として、例えば、アクリル系分散剤を好ましく用いることができる。アクリル系分散剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸共重合体から選択される一種又は複数種を好適に用いることができる。
アクリル系分散剤は、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸を含む。アクリル系分散剤として、(メタ)アクリル酸の重合体(即ち、ポリ(メタ)アクリル酸)、あるいは必要に応じてスチレンなどの他のモノマー成分を共重合した共重合体(即ち、(メタ)アクリル酸共重合体)を好適に用いることができる。
アクリル系分散剤として、例えば、BASF社製の「ジョンクリル819」(「ジョンクリル」は同社の登録商標)(酸価75mgKOH/g)、「ジョンクリル67」(酸価213mgKOH/g)等の市販品を用いることができる。
顔料分散剤は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
インクに含有させる有機溶剤を含有することが好ましく、例えば水溶性有機溶剤を好ましく用いることができる。
水溶性有機溶剤としては、例えば、1価アルコール類、グリコール類(2価アルコール類)、3価アルコール類、グリコールエーテル類、アセテート類、アミン類、アミド類等を好ましく挙げることができる。
1価アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等を好ましく挙げることができる。
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレンオキサイド基の数が5以上のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、プロピレンオキサイド基の数が4以上のポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、チオジグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール等を好ましく挙げることができる。
3価アルコール類としては、例えば、グリセリン、ヘキサントリオール等を好ましく挙げることができる。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等を好ましく挙げることができる。
アセテート類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート等を好ましく挙げることができる。
アミン類としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等を好ましく挙げることができる。
アミド類としては、例えば、2−ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を好ましく挙げることができる。
これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。特に記録媒体における記録層に含有する樹脂がポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン成分を有する共重合樹脂である場合、インク中に含有する最も多い溶剤はグリコール類であることが好ましく、これにより、必要以上にプレコート層の樹脂を膨潤、溶解することを抑制し、良好な密着性を得ることができる。ここで、インク中に含有する最も多い溶剤というのは、インクが溶剤を複数種含有するのであればインク中で最も配合量(質量ベース)が大きい溶剤を指し、インクが1種の溶剤を単独で含有するのであれば当該溶剤を指す。
インクは、吐出性向上や濡れ性向上のため、界面活性剤を含んでいることが好ましい。界面活性剤は格別限定されず、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等を好ましく挙げることができる。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等を好ましく挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等を好ましく挙げることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等を好ましく挙げることができる。
これらの界面活性剤は1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。インクにおける界面活性剤の含有量は、格別限定されないが、0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲であることが好ましい。
インクには、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を適宜配合することができる。
インクは、プレコート液に関して説明した樹脂微粒子を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、樹脂微粒子の含有量が、インク質量に対して5質量%以下であることを意味する。樹脂微粒子の含有量は、より好ましくはインク質量に対して3質量%以下であり、最も好ましくはインク質量に対して2質量%以下である。これにより、インクジェット法におけるインク射出特性を安定化させ、ノズルの目詰りも良好に防止できる効果が得られる。
インク付与工程では、記録媒体上に顔料を少なくとも含有するインクをインクジェット法により付与する。インク乾燥工程では、記録層上に付与されたインクを乾燥させる。
インクの乾燥には、例えば、乾燥炉や熱風送風機等のような非接触加熱型の乾燥装置を用いてもよいし、ホットプレートや熱ローラー等のような接触加熱型の乾燥装置を用いてもよい。
以上に説明したインクを記録媒体に付与する際に用いるインクジェット法は格別限定されず、インクを装填したインクジェットヘッドを備えるプリンターを用いることができる。具体的には、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドのノズルからインクを液滴として吐出させ、これを記録媒体のプレコート層上に着弾させて印字を行うことができる。
インクジェットヘッドは、オンデマンド方式、コンティニュアス方式の何れであってもよい。インクジェットヘッドの液滴吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン社の登録商標)型等)等、何れの方式を用いてもよい。
特に、電気−機械変換方式に用いられる電気−機械変換素子として圧電素子を用いたインクジェットヘッド(ピエゾ型インクジェットヘッドともいう)が好適である。
非吸水性基材としてフィルムを用いる場合、一般的なフィルムの多くがロール形態で流通していることに鑑みて、シングルパス方式のインクジェット画像形成方法を用いることが好ましい。本発明の効果は、特にシングルパス方式のインクジェット画像形成方法において特に顕著になる。即ち、シングルパス方式のインクジェット画像形成方法を用いた場合、インクの滲みを抑制するために用いる顔料凝集剤により上述したひび割れや折り割れが特に発生し易くなるが、本発明によれば、このような場合においてもひび割れや折り割れの抑制と、高精細な画像形成が両立できる。
シングルパス方式のインクジェット画像形成方法とは、記録媒体が一つのインクジェットヘッドユニットの下を通過した際に、一度の通過でドットの形成されるべきすべての画素にインク滴を付与するものである。
シングルパス方式のインクジェット画像形成方法を達成する手段として、ラインヘッド型のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
ラインヘッド型のインクジェットヘッドとは、印字範囲の幅以上の長さを持つインクジェットヘッドのことを指す。ラインヘッド型のインクジェットヘッドとしては、一つのヘッドで印字範囲の幅以上であるものを用いてもよいし、複数のヘッドを組み合わせて印字範囲の幅以上となるように構成してもよい。
また、複数のヘッドを、互いのノズルが千鳥配列となるように並設して、これらヘッド全体としての解像度を高くすることも好ましい。
本発明の記録媒体、記録物および画像形成方法は、非吸水性基材からなる記録媒体上にインクジェット法で印字する種々の用途に好適に用いることができる。本発明の用途は格別限定されない。用途の具体例としては、例えば、食品や飲料等を包装する包装用フィルム等を好ましく挙げることができる。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
(試験1)
1.記録媒体の形成
(1)処理液の調製
ポリプロピレン樹脂微粒子(固形分濃度24.8質量%、日本製紙社製の「スーパークロンE−415」)17.3質量部、ポリウレタン構造を有するカチオン性樹脂微粒子(固形分濃度30.0質量%、第一工業製薬社製の「スーパーフレックス620」)33.4質量部、ソルビタン脂肪酸エステル(花王株式会社製の「レオドールTW−L120」(「レオドール」は同社の登録商標))0.86質量部、イオン交換水(残部:全量が100質量部となる量)を、撹拌しながら順次添加した後、5.0μmのフィルターによりろ過して処理液を得た。なお、ろ過前後で、実質的な組成変化はなかった。
(2)処理液塗布工程
処理液を非吸水基材である二軸延伸ポリプロピレンフィルム(略称OPPフィルム)(フラムラ化学社製の「太閤ポリプロピレンフィルムFO#50−FOS」)上に、ワイヤーバーを用い湿潤膜厚7μmの条件にて塗布した。
(3)処理液乾燥工程
フィルム基材上に塗布された処理液を、65℃の熱風で乾燥させてプレコート層を形成し、記録媒体とした。
なお、乾燥後のプレコート層表面を電子顕微鏡で観察したところ、樹脂微粒子が完全に成膜した状態ではなく、粒子形状が残った不完全な成膜状態であった。
2.インクの記録
(1)インクの調製
高分子分散剤としてスチレン−アクリル酸共重合体(BASF社製の「ジョンクリル678」、分子量8500、酸価215、)4.5質量%、25%アンモニア水溶液1.25質量%、顔料(DIC社製の「GNKA−SD」;ピグメントブルー15:3)15質量%、残部としてイオン交換水を加えた混合液をプレミックスした後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料の含有量が15質量%のシアン顔料分散体(単に顔料分散体ともいう)を得た。この顔料分散体に含まれる顔料粒子の、動的光散乱法によって測定した平均粒子径は、122nmであった。
得られた顔料分散体29.8質量部、エチレングリコール15.0質量部、プロピレングリコール10.0質量部、シリコン系界面活性剤(信越化学工業製、KF−351A)0.3質量部、イオン交換水(残部)の量により100質量部に調整し、混合撹拌した。十分に撹拌した後、5.0μmのフィルターにより濾過してインク1を得た。なお、濾過前後で実質的な組成変化はなかった。
(2)インク付与工程
ここでは、インクジェットインク付与工程としてシングルパス印字を用いて試験した。
<シングルパス印字(1パス印字)>
コニカミノルタ社製の独立駆動インクジェットヘッド(360dpi、吐出量14pL)2つをノズルが互い違いになるように並設して、720dpi×720dpiの画像をシングルパス方式で印刷できるヘッドモジュールを作成した。
かかるヘッドモジュールを2つ用意し、記録媒体を搬送する搬送ステージの搬送方向に沿って並設した。各ヘッドモジュールは、搬送方向(搬送ステージの移動軸)と交差するように設置した。このようにして、記録媒体を1回パスさせる際に、印字率200%、即ち2色分のインク付量(22.5cc/m)を印刷できるようにした。インクとしては、インク1を用いた。
搬送ステージ上に記録媒体を張付け、60m/min、30m/minおよび5m/minの速度でそれぞれ搬送を行い、記録媒体がヘッド下を通過する際にシングルパス方式で画像を印刷した。
画像として、インク付量22.5cc/mの7cm四方のベタ中にサイズ6ポイントの文字を抜き文字として配置した画像を印刷した。
(3)インク乾燥工程
上記のインクジェット法による印刷後に、記録媒体をホットプレート上に載置し、80℃、15分間乾燥した。
(試験2)
試験1において処理液に用いたソルビタン脂肪酸エステルを、他のソルビタン脂肪酸エステルとして花王株式会社製の「エマゾール O−10V」(「エマゾール」は同社の登録商標)の10%エタノール溶液に変更し、添加量を8.6質量部とした以外は同様にして試験2を行った。
(試験3)
試験1において処理液に用いたソルビタン脂肪酸エステルを、グリセリン脂肪酸エステル(花王株式会社製の「エキセルO−95R」(「エキセル」は同社の登録商標))の10%エタノール溶液に変更し、添加量を8.6質量部とした以外は同様にして試験3を行った。
(試験4)
試験1において処理液に用いたソルビタン脂肪酸エステルを、ポリグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製の「ポエムJ−0081HV」(「ポエム」は同社の登録商標))に変更した以外は同様にして試験4を行った。
(試験5)
試験1において処理液に用いたソルビタン脂肪酸エステルを用いないこと以外は同様にして試験5を行った。
(試験6)
試験1において処理液に、顔料を凝集させる化合物として酢酸カルシウム一水和物を4.3質量部加え、イオン交換水の量を調整して全量を100質量部とした以外は同様にして試験6を行った。
(試験7)
試験6において処理液に用いた酢酸カルシウム一水和物を塩化マグネシウムに変更した以外は同様にして試験7を行った。
(試験8)
試験6において処理液に用いた酢酸カルシウム一水和物をマロン酸に変更した以外は同様にして試験8を行った。
(試験9および10)
試験6および8において、各々処理液に用いたソルビタン脂肪酸エステルを除いた以外同様にして試験9および10を行った。
(試験11〜13)
試験6において処理液に用いたソルビタン脂肪酸エステルの添加量を0.14質量部に変更した以外同様にして試験11を、同様にソルビタン脂肪酸エステルの添加量を2.87質量部に変更した以外は同様にして試験12を、更に同様にしてソルビタン脂肪酸エステルの添加量を7.17質量%に変更した以外は同様にして試験13を行った。
(試験14〜16)
試験11、12および13において処理液に使用したソルビタン脂肪酸エステルを、各々ポリグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製の「ポエムJ−0081HV」)に変更した以外は同様にして試験14、15および16を行った。
(試験17)
試験6の処理液塗布工程で用いたワイヤーバーを変更し、湿潤膜厚を19μmとした以外は同様にして試験17を行った。
(試験18)
試験6の処理液調製において、ポリプロピレン樹脂微粒子の添加量を7.9質量部、ポリウレタン構造を有するカチオン性樹脂微粒子の添加量を15.2質量部に変更した以外は同様にして試験18を行った。
(試験19)
試験6の処理液調製において、ポリプロピレン樹脂微粒子の添加量を4.7質量部、ポリウレタン構造を有するカチオン性樹脂微粒子の添加量を9.1質量部、ソルビタン脂肪酸エステルの添加量を0.29質量部に変更した以外は同様にして試験19を行った。
(試験20〜22)
試験17、18および19において処理液に使用したソルビタン脂肪酸エステルを各々除いた以外は同様にして試験20、21および22を行った。
(試験23)
試験6において処理液に用いたポリプロピレン樹脂微粒子とポリウレタン構造を有するカチオン性樹脂微粒子を用いない以外は同様にして試験23を行った。
<評価方法>
(1)滲み耐性
各試験において搬送速度60m/min、30m/minおよび5m/minの各条件でインクジェット記録した画像の抜き文字部分を観察し、下記の評価基準で滲み耐性を評価した。
[評価基準]
◎:いずれの搬送速度においても滲みが無く、抜き文字の線が何れの部分においても消えていない。
〇:搬送速度60m/minで滲みがあり、抜き文字の一部又は全部が消えているが、搬送速度30m/minおよび5m/minでは滲みが無く、抜き文字の線が何れの部分においても消えていない。
△:搬送速度60m/minおよび30m/minで滲みがあり、抜き文字の一部又は全部が消えているが、搬送速度5m/minでは滲みが無く、抜き文字の線が何れの部分においても消えていない。
×:いずれの搬送速度においても滲みがあり、抜き文字の線の一部又は全部が消えている。
(2)ベタ部均一性
各試験においてインクジェット記録したベタ画像部分の均一性について以下の評価基準で評価した。なお、搬送速度については上記の滲み耐性の評価において最も良好な速度で記録したベタ部を評価した。
[評価基準]
〇:濃度斑や白抜けが見られず良好
△:部分的に濃度斑が見られるが白抜けは見られず実用上問題ないレベル
×:濃度斑と白抜けが見られ実用上問題あり
(3)記録媒体の折り割れ
23℃、55%RHの環境下で、各試験において作成した記録媒体を処理液塗布面が外側になるようにコア外径2インチおよび3インチの紙管に巻き付けた後、処理層を観察して折れ割れの発生を確認した。
[評価基準]
〇:コア外径2インチおよび3インチの紙管のいずれにおいても亀裂の発生無し。
△:コア外径2インチの紙管において割れが発生するが、3インチの紙管では亀裂の発生無し。
×:コア外径2インチおよび3インチの紙管のいずれにおいても亀裂が発生。
(4)記録物のひび割れ耐性
各試験においてインクジェット記録した記録物を25℃80%RHの条件で3日間保存した後、記録面の割れについて目視および顕微鏡観察にて評価した。
[評価基準]
〇:目視および顕微鏡観察にてひび割れが観察されず良好。
△:目視でひび割れは確認できないが、顕微鏡観察で部分的に微小なひび割れが見られる。
×:目視で認識できるひび割れが見られる。
(5)密着性
各試験によってインクジェット記録された画像部分にセロファンテープを圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がしたあとの状態を観察し、下記評価基準で密着性を評価した。
[評価基準]
○:ベタ画像が剥がれず、試験前と変わらない。
△:テープ側にわずかな色移りがあるが、ベタ画像は均一に見える。
×:ベタ画像の一部が剥がれてしまい、まだらになっている。
以上の評価結果を表1に示す。
<評価>
表1より、樹脂微粒子と、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはソルビタン脂肪酸エステルのいずれか(表1ではエステル化合物と略記)を含む処理液を用いた本発明の記録媒体は、屈曲に対する折り割れが良好であり、更にインクジェット記録後の高湿保存に対するひび割れ耐性も良好であることがわかる。特に、顔料凝集剤を更に含有する処理液を用いた試験6、7、8、11〜19において、より高速のインクジェット記録において滲みを抑制できることがわかる。
一方、樹脂微粒子を含有しエステル化合物を含まない処理液を用いた試験5、9、10、20、21および22においては、インクジェット記録後の高湿保存においてインクジェット記録部と非記録部の界面でひび割れが発生しており、特に顔料凝集剤を更に含有する処理液を用いた試験9、10、20、21、22の記録媒体において屈曲により折り割れが発生していた。また、処理液に樹脂微粒子を含まない試験23においてはプリント時の滲みと密着性が劣悪であり、その他の評価はできなかった。
本出願は、2016年10月6日出願の日本国出願番号2016−198095号に基づく優先権を主張する出願であり、当該出願の特許請求の範囲および明細書に記載された内容は本出願に援用される。
本発明によれば、フィルムなどの非吸水性基材に水系のインクを用いてインクジェット法により良質な画像を形成することができる。特に、上記基材がフィルムパッケージなど薄いフィルムであるときも、ひび割れや折り割れが生じにくい画像をインクジェット法により形成することができる。そのため、本発明は、インクジェット法による水系インクを用いた画像形成の適合範囲を広げ、当分野におけるインクジェット法の普及に寄与することが期待される。

Claims (12)

  1. 少なくとも樹脂微粒子を含有する記録層を非吸水性基材上に形成した記録媒体であって、乾燥後の該記録層の膜厚が0.3μm以上、3.0μm以下であって、該記録層中に更にグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルのうち何れかを少なくとも含有することを特徴とする記録媒体。
  2. 前記記録層中に更に顔料を凝集させる化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
  3. 前記顔料を凝集させる化合物が水溶性であることを特徴とする請求項2に記載の記録媒体。
  4. 前記顔料を凝集させる化合物が多価金属塩または有機酸であることを特徴とする請求項2または3に記載の記録媒体。
  5. 前記グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルの合計した含有量が0.01g/m以上0.5g/m以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録媒体。
  6. 前記非吸水性基材がプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録媒体。
  7. 非吸水性基材に、少なくとも樹脂微粒子および色材が付着している領域(A)と、樹脂微粒子が付着しているが色材を実質的に含有しない領域(B)とを含み、少なくとも該領域(B)には、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルのうち少なくとも何れかが付着している、記録物。
  8. 前記グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルの合計した含有量が0.01g/m以上0.5g/m以下であることを特徴とする請求項7に記載の記録物。
  9. 前記非吸水性基材がプラスチックフィルムである、請求項7または8に記載の記録物。
  10. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の記録媒体に、色材を少なくとも含有するインクを用いてインクジェット記録することを特徴とする画像形成方法。
  11. 前記インクが樹脂微粒子を実質的に含有しないことを特徴とする請求項10に記載の画像形成方法。
  12. 前記非吸水性基材がプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項10または11に記載の画像形成方法。
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