JP2019006855A - 記録液セット、画像形成方法、および積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、非吸収性基材上に、滲みが抑制され、ベタ埋まりが良好な画像を形成可能であり、さらには層間密着性の高い積層体の製造に用いることができる、記録液セットを提供することにある。さらに本発明の目的は、当該記録液セットを用いた画像形成方法、および積層体を提供することにある。【解決手段】本発明は、両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有する水性のアンダーコート液、および顔料と、水とを含有する水性のインクジェットインクを含む記録液セットである。更に本発明は、本発明の記録液セットを用いた画像形成方法および積層体にも関する。【選択図】なし
Description
本発明は、記録液セット、画像形成方法、および積層体に関する。
インクジェット画像形成方法は、微細なノズルヘッドからインクの小滴を吐出し、記録媒体に付着させることで印刷を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を高速で印刷可能であることから、小ロットでの多品種の印刷に適している。特に、水および色材を含む、インクジェット用の水性インク(以下、「インク」または「インクジェットインク」と略記することもある)は、安全性などの観点から着目されているものの、滲みや混色、発色の悪さといった問題が、特にフィルム等の非吸収性の基材を用いた際に発生しやすい。
上述のような水性インクの問題を解決するための試みとして、両性樹脂粒子を含むインク受容層を基材上に設けることで、インクの吸収性などを改善したインクジェット記録媒体が特許文献1に記載されている。
また、画像形成前に基材表面に付与することで、インクの基材に対する密着性などを高めるための処理液や、このような処理液と水性インクとを含むインクセットも知られている。例えば、特許文献2には、両性イオン性高分子化合物を含有する処理液と、水性インクとからなるインクセットが記載されている。さらに特許文献3には、疎水性構造単位とアニオン性基を含有する構造単位と、塩基性脂肪族基または塩基性芳香族基を含有する構造単位とを有する水溶性ポリマーを含む水性インクと、水性インクと接触して凝集体を形成し得る凝集剤を含む処理液とを有するインクセットが記載されている。また、水溶性凝集剤と、水溶性両性高分子化合物とを含有するインクジェット記録用処理液が特許文献4に記載されており、水溶性両性高分子化合物と、フッ素界面活性剤またはシリコーン系界面活性剤を含有するインクジェット記録用処理液が特許文献5に記載されている。
上述のような処理液と、水性インクを用いた画像形成方法も知られている。例えば、インクを凝集させる成分を含む処理液を非吸収性基材上に塗布し、そこに定着樹脂を含有するインクを用いて画像形成するインクジェット画像形成方法が特許文献6記載されている。この方法においては、処理液で構成された層によって非吸収性基材上でインクを凝集させることで、画像の耐擦性の向上、およびブリードアウトの抑制を試みている。
特許文献1の記録媒体および特許文献2のインクセットを用いた画像形成においては、基材の表面に、実質的に両性樹脂のみからなるインク受容層を設け、その上にインクを用いて画像を形成する。本発明者らの検討によると、両性樹脂のみからなる層を非吸収性基材上に設けて画像形成を行うと、画像に滲みが認められ、且つベタ埋まりが不十分となる(即ち、ベタ塗りの中に白筋が発生する)ことが判明した。
特許文献3のインクセット、および特許文献6の記録方法で使用する処理液とインク組成物との組み合わせにおいては、顔料凝集剤を含む処理液と、樹脂を含むインクとを使用する。このような顔料凝集剤を含むが、樹脂を含まない処理液を基材上に塗布し、その上からインクで画像形成を行うと、インクは基材に着弾後、急激に凝集するため、ベタ埋まりが不十分になると考えられる。
特許文献4および5に記載の処理液は紙基材に対する画像形成を目的としたものであり、非吸収性基材に対して使用するものではない。よって、これらの処理液を用いて非吸収性基材上に画像形成を行っても、非吸収性基材と処理液との密着性や、さらには画像の上に設置し得る他層(フィルム層など)との層間密着性の向上は不十分であると考えられる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、非吸収性基材上に、滲みが抑制され、ベタ埋まりが良好な画像を形成可能であり、さらには層間密着性の高い積層体の製造に用いることができる、記録液セットを提供することにある。さらに本発明の目的は、当該記録液セットを用いた画像形成方法、および積層体を提供することにある。
本発明の第一は、以下の記録液セットである。
[1] 水性のアンダーコート液および水性のインクジェットインクを含む記録液セットであって、
前記インクジェットインクは、顔料と、水とを含有し、
前記アンダーコート液は、両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有する、記録液セット。
[2] 前記両性樹脂の有するアニオン性官能基が、少なくとも一つのカルボキシル基である、[1]に記載の記録液セット。
[3] 前記両性樹脂が、分散性の粒子である、[1]または[2]に記載の記録液セット。
[4] 前記顔料凝集剤が、酸、カチオン性化合物および金属キレート剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]〜[3]のいずれかに記載の記録液セット。
[5] 前記顔料凝集剤がカチオン性化合物であり、前記カチオン性化合物が多価金属塩である、[4]に記載の記録液セット。
[6] 前記アンダーコート液が、架橋剤をさらに含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の記録液セット。
[7] 前記架橋剤が、エポキシ型架橋剤、イソシアネート型架橋剤、カルボジイミド型架橋剤、またはオキサゾリン型架橋剤であることを特徴とする、[6]に記載の記録液セット。
[8] 前記顔料が無機顔料である、[1]〜[7]のいずれかに記載の記録液セット。
[1] 水性のアンダーコート液および水性のインクジェットインクを含む記録液セットであって、
前記インクジェットインクは、顔料と、水とを含有し、
前記アンダーコート液は、両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有する、記録液セット。
[2] 前記両性樹脂の有するアニオン性官能基が、少なくとも一つのカルボキシル基である、[1]に記載の記録液セット。
[3] 前記両性樹脂が、分散性の粒子である、[1]または[2]に記載の記録液セット。
[4] 前記顔料凝集剤が、酸、カチオン性化合物および金属キレート剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]〜[3]のいずれかに記載の記録液セット。
[5] 前記顔料凝集剤がカチオン性化合物であり、前記カチオン性化合物が多価金属塩である、[4]に記載の記録液セット。
[6] 前記アンダーコート液が、架橋剤をさらに含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の記録液セット。
[7] 前記架橋剤が、エポキシ型架橋剤、イソシアネート型架橋剤、カルボジイミド型架橋剤、またはオキサゾリン型架橋剤であることを特徴とする、[6]に記載の記録液セット。
[8] 前記顔料が無機顔料である、[1]〜[7]のいずれかに記載の記録液セット。
本発明の第二は、以下の画像形成方法である。
[9] 両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を、非吸収性基材上に塗布して、アンダーコート層を形成し、
前記アンダーコート層の表面に接して、顔料と、水とを含有するインクジェットインクを、インクジェット法により付与することを含む、画像形成方法。
[10] 前記インクジェットインクはシングルパス方式で付与される、[9]に記載の画像形成方法。
[11] 前記非吸収性基材がプラスチックフィルムである、[9]または[10]に記載の画像形成方法。
[9] 両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を、非吸収性基材上に塗布して、アンダーコート層を形成し、
前記アンダーコート層の表面に接して、顔料と、水とを含有するインクジェットインクを、インクジェット法により付与することを含む、画像形成方法。
[10] 前記インクジェットインクはシングルパス方式で付与される、[9]に記載の画像形成方法。
[11] 前記非吸収性基材がプラスチックフィルムである、[9]または[10]に記載の画像形成方法。
本発明の第三は、以下の積層体である。
[12] 非吸収性基材と、
前記非吸収性基材上に設けられたアンダーコート層と、
前記アンダーコート層上に設けられたインク層と
を含む積層体であって、
前記アンダーコート層が、両性樹脂と、顔料凝集剤とを含有し、
前記インク層が、顔料を含有する、積層体。
[13] 前記インク層の上に、フィルム層をさらに有する、[12]に記載の積層体。
[12] 非吸収性基材と、
前記非吸収性基材上に設けられたアンダーコート層と、
前記アンダーコート層上に設けられたインク層と
を含む積層体であって、
前記アンダーコート層が、両性樹脂と、顔料凝集剤とを含有し、
前記インク層が、顔料を含有する、積層体。
[13] 前記インク層の上に、フィルム層をさらに有する、[12]に記載の積層体。
本発明によれば、非吸収性基材上に、滲みが抑制され、ベタ埋まりが良好な画像を形成可能であり、さらには層間密着性の高い積層体の製造に用いることができる、記録液セットが提供される。さらに当該記録液セットを用いた画像形成方法、および積層体が提供される。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究を行った結果、顔料と、水とを含有するインク、および両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を含む記録液セットを用いて、フィルムなどの非吸収性基材上に画像形成を行うと、滲みが抑制され、ベタ埋まりが良好な画像が形成可能であることを見出した。また、このような画像形成物においては、非吸収性基材と、アンダーコート液により形成したアンダーコート層と、インクにより形成されたインク層とのそれぞれの間の層間密着性が高く、さらには、インク層の上にフィルム層を設けた場合には、そのフィルム層の密着性までもが高いことを見出した。その理由は明らかではないが、次のように推定される。
従来、非吸収性基材上にアンダーコート層を構成するためのアンダーコート液に含まれる樹脂としては、顔料凝集剤との相溶性などの観点から、カチオン性の樹脂が使用されることが多かった。しかしながら、カチオン性の樹脂は、フィルムなどの非吸収性基材との密着性が低いことが多く、画像の耐擦性が低いことなどが知られていた。一方、アンダーコート液に含まれる樹脂がアニオン性官能基とカチオン性官能基とを有する両性樹脂であると、カチオン性官能基の存在によって顔料凝集剤との相溶性が良好であり、且つ非吸収性基材との密着性も良好であった。具体的には、アンダーコート液中の両性樹脂の官能基、特にアニオン性官能基は、非吸収性基材表面の水酸基等の極性基と相互作用することで、形成されるアンダーコート層と非吸収性基材との密着性を高めると考えられる。
また、アンダーコート液に含まれる両性樹脂は、両性樹脂分子間の相互作用によって、強度の高いアンダーコート層の形成を可能にすると考えられる。
さらに本発明の記録液セットにおいては、アンダーコート液は顔料凝集剤を含んでいる。当該アンダーコート液によって形成されたアンダーコート層においては、両性樹脂と顔料凝集剤との間のクーロン力によって、顔料凝集剤のインク層への拡散が適度に抑制されると考えられる。その結果、アンダーコート層上に着弾したインクは急激に凝集せずに、適度に広がってから凝集するため、ベタ埋まりの良好な画像の形成が可能となる。その一方で、顔料凝集剤と両性樹脂との組み合わせは、シングルパス方式の画像形成、即ち高速画像形成において、滲みの抑制された画像を形成するのに十分なインクへの拡散速度を達成すると考えられる。
以下に、例示的な実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
1.記録液セット
本発明の記録液セットは、水性のアンダーコート液および水性のインクジェットインクを含む記録液セットである。
本発明の記録液セットは、水性のアンダーコート液および水性のインクジェットインクを含む記録液セットである。
初めに、アンダーコート液について説明する。
アンダーコート液は、両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有する。
アンダーコート液に含まれる両性樹脂とは、アニオン性官能基と、カチオン性官能基の両方を有する樹脂であり、アニオン性官能基とカチオン性官能基は、1つの樹脂分子中に少なくとも1つずつ存在すればよい。
両性樹脂の有するアニオン性官能基に特に限定はないが、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等が挙げられる。中でも反応性が高いことから、カルボキシル基が好ましい。
両性樹脂としては公知のものを使用することができ、たとえば、カチオン性モノマーとアニオン性モノマーとを共重合して得られる共重合体、両性イオン性ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。
両性樹脂が共重合体である場合、当該共重合体に含まれるアニオン性官能基を有する構成単位の例としては、不飽和カルボン酸類に由来する構成単位、不飽和スルホン酸類に由来する構成単位、不飽和リン酸類に由来する構成単位等が挙げられる。
また、当該共重合体に含まれる、カチオン性官能基を有する構成単位の例としては、第3級アミノ基を有する単量体に由来する構成単位、第4級アンモニウム塩基を含有する単量体に由来する構成単位、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド類に由来する構成単位、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド類に由来する構成単位等が挙げられる。
これら樹脂の形状に特に限定はなく、水溶性の樹脂でも、水分散性の樹脂でもよい。アンダーコート液の造膜性および定着性の観点から、水分散性である、樹脂粒子が好ましい。
両性樹脂の具体例としては、水分散性の樹脂である、大成ファインケミカル株式会社製のAKWシリーズ等や、水溶性の樹脂である、互応化学工業株式会社製のプラスサイズシリーズ、センカ株式会社製のユニセンスZCAシリーズ、ニットーボーメディカル株式会社製のPAS両性シリーズ等が挙げられる。
樹脂粒子の平均粒子径は、10nm以上10000nm以下の範囲であることが好ましい。
平均粒子径の測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、且つ該粒子径領域を精度よく測定できる。
両性樹脂は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
また、アンダーコート液は、両性樹脂による効果を阻害しない範囲で、他の樹脂、たとえば、アニオン性樹脂やカチオン性樹脂を含んでもよい。両性樹脂以外の樹脂の含有量は、両性樹脂の含有量以下であることが好ましい。
アンダーコート液における両性樹脂の含有量の範囲は格別限定されないが、基材上に形成したアンダーコート層における両性樹脂の付量は、0.5g/m2以上10g/m2以下の範囲とすることが好ましく、0.5g/m2以上3g/m2以下の範囲とすることが更に好ましい。インクセットを用いて作製する積層体を薄膜材料として用いるためには、アンダーコート液の付量は上記範囲内が好ましい。
なお、アンダーコート層中の両性樹脂の付量は、公知の方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で含有量を測定することができる。
アンダーコート液は、記録液セットに含まれるインクが含有する顔料を凝集させることが可能な顔料凝集剤を含有する。
顔料凝集剤としては、特にインクに含まれる顔料がアニオン性の分散顔料である場合、酸、カチオン性化合物、および金属キレート剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を好ましく用いることができる。
酸は、pH変動によってインク中のアニオン性の分散顔料を凝集することができる。酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、シュウ酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、安息香酸、2−ピロリドン−5−カルボン酸、乳酸、アクリル酸又はその誘導体、メタクリル酸又はその誘導体、アクリルアミド又はその誘導体、スルホン酸誘導体、リン酸又はその誘導体等を好ましく挙げることができる。酸としては、無機酸よりも有機酸を好ましく用いることができる。有機酸を用いることによって、アンダーコート液を構成する樹脂等の他の成分との相溶性を向上でき、更に、アンダーコート液により形成されるアンダーコート層が乾燥しても塩になりにくいため、透明性に優れる効果も得られる。
カチオン性化合物は、塩析によってインク中のアニオン性の分散顔料を凝集することができる。カチオン性化合物として、例えば、多価金属塩、およびカチオン性の界面活性剤やポリマー等を挙げることができる。多価金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の水溶性の塩を好ましく挙げることができる。
カチオン性界面活性剤(陽イオン性界面活性剤ともいう)としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等を好ましく挙げることができる。
また、カチオン性ポリマーとしては、1〜4級のアミンを有するポリマー等が挙げられ、例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。また、具体例としては、第一工業製薬株式会社製のカチオマスターシリーズ、センカ株式会社製のユニセンスシリーズ、ニットーボーメディカル株式会社製のポリアリルアミンシリーズが挙げられる。
金属キレート剤としては、金属イオンと配位子(多座配位子)からなる錯体(キレート錯体)を用いることができる。ここで金属イオンとしては、例えば、上述した多価金属塩を構成する金属のイオンを用い、配位子としては、複数の配位座を持つ化合物を用いることができる。複数の配位座を持つ化合物の例は、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2−プロピレンジアミンテトラ酢酸、1−フェニルエチレンジアミンテトラ酢酸、3,3−ジメチルブタン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、1,2,3−トリアミノプロパンヘキサ酢酸、トリメチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロ三酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロパン−1,2−ジアミン、ブタン−1,2−ジアミン、3,3−ジメチルブタン−1,2−ジアミン、1,2,3−トリアミノプロパン、トリメチレンジアミン、テトラリン−2,3−ジアミンテトラ酢酸、デカリン−2,3−テトラ酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、シクロヘキサン−1,3−ジアミンテトラ酢酸、シクロヘキサン−1,4−ジアミンテトラ酢酸、シュウ酸、タイロン、アセチルアセトン等である。
顔料凝集剤として使用可能な金属キレート剤の具体例としては、マツモトファインケミカル株式会社製のZC−126等が挙げられる。
特に好ましい顔料凝集剤は多価金属塩とカチオン性ポリマーである。多価金属塩やカチオン性ポリマーを顔料凝集剤として用いると、顔料凝集剤のインク層への拡散が適切な速度で行われるため、ベタ埋まりが良好で、且つ滲みの抑制された画像形成が可能となる。
顔料凝集剤は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
アンダーコート液における顔料凝集剤の含有量の範囲は格別限定されないが、基材上に形成したアンダーコート層における顔料凝集剤の付量は、以下の範囲内であることが好ましい。例えば、顔料凝集剤として多価金属塩を用いる場合は、0.1g/m2以上、20g/m2以下が好ましい。滲みを効果的に抑制するためには0.1g/m2以上含有することが好ましく、ひび割れを効果的に抑制するためには、20g/m2以下とすることが好ましい。
アンダーコート層中の顔料凝集剤の付量は、公知の方法で測定することができる。例えば、顔料凝集剤が多価金属塩であるときはICP発光分析で、顔料凝集剤が酸であるときは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で含有量を測定することができる。また、顔料凝集剤が金属キレート剤の場合は、例えば、金属元素の含有量を、原子吸光分析法やプラズマ発光分析法など公知の金属分析方法(例えば、特開2006−251179公報に記載の方法)を用いて測定することができる。
アンダーコート液は溶媒として、水を含むことが好ましく、他に公知の有機溶媒を含有することができる。
アンダーコート液は架橋剤をさらに含有してもよい。本発明のアンダーコート液に含まれる両性樹脂はアニオン性官能基を有することから、架橋剤を用いて架橋させることができる。アンダーコート液に架橋剤が含まれると、アンダーコート液中の樹脂分子間の架橋、アンダーコート液中の樹脂と基材との架橋、およびインク中の顔料分散体とアンダーコート液中の樹脂との架橋も行われ得ると考えられる。その結果、アンダーコート液からなるアンダーコート層の強度や耐水性のみならず、後述する積層体における層間密着性も向上すると考えられる。
架橋剤は水溶性である限り特に限定はないが、アンダーコート液に対する溶解性や相溶性の観点から、エポキシ型架橋剤、イソシアネート型架橋剤、カルボジイミド型架橋剤、またはオキサゾリン型架橋剤が好ましい。
アンダーコート液における架橋剤の含有量の範囲は格別限定されないが、0.01質量%以上10質量%以下の範囲とすることが好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、層間密着性の向上に十分であり、さらには過度の架橋による収縮や変形の恐れもない。
また、アンダーコート液は、顔料凝集剤とは異なる化合物を界面活性剤として含有してもよい。これにより、各種塗布方法への適合性を高めることができる。上記界面活性剤の例としては、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を好ましく挙げることができる。
両性界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等を好ましく挙げることができる。
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等を好ましく挙げることができる。
アンダーコート液中には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他、防黴剤、殺菌剤等、他の成分を適宜配合することができる。
次に、本発明の記録液セットに含まれるインクについて説明する。
記録液セットに含まれるインクは、顔料と、水とを含有する。
顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、水分散性顔料、溶剤分散性顔料等何れも使用可能であり、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料、あるいは酸化チタンやカーボンブラック等の無機顔料を好ましく用いることができる。これらの顔料は、例えば、顔料分散剤によりインク中に分散させた状態で存在させて使用することができる。
不溶性顔料は格別限定されないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
顔料は格別限定されないが、例えば以下のものを好ましく例示できる。
イエロー又はオレンジ等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155等が挙げられる。
マゼンタ又はレッド等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアン又はグリーン等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
ブラック等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7(カーボンブラック)等が挙げられる。
また、白色に用いる顔料としては酸化チタンが挙げられる。
本発明の効果、例えば、良好なベタ埋まりと滲み抑制の両立、がより顕著に発揮されることから、使用する顔料として無機顔料が好ましい。
インク中における顔料の分散状態の平均粒子径は、50nm以上200nm以下の範囲であることが好ましい。これにより、顔料の分散安定性を向上でき、インクの保存安定性を向上できる。顔料の粒子径測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、且つ該粒子径領域を精度よく測定できる。
顔料は、たとえば顔料分散剤やその他の所望の添加物と共に、分散機により分散して用いることができる。
分散機としては、従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等を使用できる。中でもサンドミルによって顔料を分散させると、粒度分布がシャープとなるため好ましい。また、サンドミル分散に使用するビーズの材質は、格別限定されないが、ビーズ破片の生成やイオン成分のコンタミネーションを防止する観点から、ジルコニアまたはジルコンであることが好ましい。さらに、このビーズ径は、0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましい。
インクにおける顔料の含有量は格別限定されないが、例えば、無機顔料については7質量%以上18質量%以下の範囲であることが好ましく、有機顔料については0.5質量%以上7質量%以下の範囲であることが好ましい。
顔料として、アニオン性の分散顔料を用いることは特に好ましいことである。アニオン性の分散顔料としては、例えば、表面にアニオン性基を導入した顔料や、アニオン性基を有する顔料分散剤によって分散された顔料等を挙げることができる。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等を好ましく例示できる。
また、アニオン性基は、アルカリ中和されていることが好ましい。アニオン性基を中和するアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等の金属塩基化合物や、アンモニアや、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等を好ましく挙げることができる。
本発明に係るインクは、顔料分散剤を含んでもよい。顔料分散剤として、例えば、アクリル系分散剤を好ましく用いることができる。アクリル系分散剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸共重合体から選択される一種又は複数種を好適に用いることができる。
アクリル系分散剤は、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸を含む。アクリル系分散剤として、(メタ)アクリル酸の重合体(即ち、ポリ(メタ)アクリル酸)、あるいは必要に応じてスチレンなどの他のモノマー成分を共重合した共重合体(即ち、(メタ)アクリル酸共重合体)を好適に用いることができる。
アクリル系分散剤として、例えば、BASF社製の「ジョンクリル819」(「ジョンクリル」は同社の登録商標)(酸価75mgKOH/g)、「ジョンクリル67」(酸価213mgKOH/g)等の市販品を用いることができる。
顔料分散剤は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
本発明に係るインクは、水および所望により水溶性有機溶剤を含有する。水溶性有機溶剤としては、例えば、1価アルコール類、グリコール類(2価アルコール類)、3価アルコール類、グリコールエーテル類、アセテート類、アミン類、アミド類等を好ましく挙げることができる。
1価アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等を好ましく挙げることができる。
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレンオキサイド基の数が5以上のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、プロピレンオキサイド基の数が4以上のポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、チオジグリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール等を好ましく挙げることができる。
3価アルコール類としては、例えば、グリセリン、ヘキサントリオール等を好ましく挙げることができる。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等を好ましく挙げることができる。
アセテート類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート等を好ましく挙げることができる。
アミン類としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等を好ましく挙げることができる。
アミド類としては、例えば、2−ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を好ましく挙げることができる。
これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
インクは、出射性向上や濡れ性向上のため、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤は格別限定されず、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等を好ましく挙げることができる。
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等を好ましく挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等を好ましく挙げることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等を好ましく挙げることができる。
これらの界面活性剤は1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。インクにおける界面活性剤の含有量は、格別限定されないが、0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲であることが好ましい。
インクには、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を適宜配合することができる。
また、出射安定性を高める観点から、インクは高分子微粒子を実質的に含有しないことが好ましい。高分子微粒子とは、例えば、定着樹脂としてインクに添加する水分散性樹脂である。実質的に含まないとは、高分子微粒子の含有量が、インク質量に対して5質量%以下であることを意味する。高分子微粒子の含有量は、より好ましくはインク質量に対して3質量%以下であり、最も好ましくはインク質量に対して2質量%以下である。これにより、インクジェット法による画像形成の際のインクの出射特性を安定化させ、ノズルの目詰りも良好に防止できると考えられる。
2.画像形成方法
本発明の第二の実施形態は、本発明の記録液セットを用いた画像形成方法である。本発明の画像形成方法は、以下の工程を含むものである。
両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を、基材上に塗布して、アンダーコート層を形成する第1工程と、
前記アンダーコート層の表面に接して、顔料と、水とを含有するインクジェットインクを、インクジェット法により付与する第2工程。
本発明の第二の実施形態は、本発明の記録液セットを用いた画像形成方法である。本発明の画像形成方法は、以下の工程を含むものである。
両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を、基材上に塗布して、アンダーコート層を形成する第1工程と、
前記アンダーコート層の表面に接して、顔料と、水とを含有するインクジェットインクを、インクジェット法により付与する第2工程。
第1工程においては、両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を、基材上に塗布して、アンダーコート層を形成する。ここで使用するアンダーコート液は、上記で詳細に説明した本発明の記録液セットに含まれるアンダーコート液である。
アンダーコート液を塗布する非吸収性基材とは、プラスチック、プラスチックフィルム、ガラス、金属など実質的に水を吸収しない基材であれば格別限定されない。特にプラスチックフィルム(以下、フィルムと略記)を基材として用いる場合、熱などによる変形に伴うひび割れが発生じやすく、より効果的に本発明が適用できる。
また、非吸収性基材の表面は、その上に形成するアンダーコート層との密着性を高める観点から、コロナ放電処理やオゾン処理等の表面処理がなされていてもよい。
フィルムを構成する樹脂は格別限定されないが、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド等のようなプラスチックを好ましく挙げることができる。フィルムは、未延伸フィルム又は延伸フィルムの何れであってもよい。非吸収性基材の厚みに特に限定はないが、5μm以上300μm以下が好ましく、特に得られた画像形成物を軟包装材料として使用する上では、フィルムの厚みは50μm以下がより好ましい。
第1工程では、かかる基材上に、アンダーコート液を塗布する。基材上へのアンダーコート液の塗布方法は格別限定されないが、例えば、ローラー塗布法、カーテン塗布法、スプレー塗布法、インクジェット法等を好ましく挙げることができる。
続いて、基材上に塗布されたアンダーコート液を乾燥させてもよい。
アンダーコート液の乾燥には、例えば、乾燥炉や熱風送風機等のような非接触加熱型の乾燥装置を用いてもよいし、ホットプレートや熱ローラー等のような接触加熱型の乾燥装置を用いてもよい。
形成されたアンダーコート層の膜厚に特に限定はないが、0.2μm以上10.0μm以下の範囲であると、本発明の効果は顕著に奏される。好ましい膜厚は0.3μm以上3.0μm以下であり、1.0μm以上3.0μm以下である。膜厚が0.3μm以上であると、カールの発生を抑制しながら、密着性を高めることが可能となり、膜厚が1.0μm以上であると、密着性がより高まる。また、膜厚が3.0μm以下であると、密着性を維持したまま、カールおよび滲みを抑制することが可能となる。例えばフィルム基材を用いる場合、質感が変化することを好適に防止できる点で更に好ましい記録層の膜厚は0.3μm以上2.0μm以下の範囲である。
尚、上記アンダーコート層の膜厚は、電子顕微鏡(SEM、TEM等)による断面観察や光干渉膜厚計によって測定することができる。
第2工程においては、アンダーコート層の表面に接して、顔料と、水とを含有するインクジェットインクを、インクジェット法により付与する。ここで使用するインクは、本発明の記録液セットに含まれるインクである。
アンダーコート層の表面に接して、インクを付与する際に用いるプリンターに特に限定はなく、インクを装填したインクジェットヘッドを備えるプリンターを用いることができる。具体的には、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドのノズルからインクを液滴として吐出させ、これを基材に設けたアンダーコート層上に着弾させて画像を形成することができる。
インクジェットヘッドは、オンデマンド方式、コンティニュアス方式の何れであってもよい。インクジェットヘッドの液滴吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン社の登録商標)型等)等、何れの方式を用いてもよい。
特に、電気−機械変換方式に用いられる電気−機械変換素子として圧電素子を用いたインクジェットヘッド(ピエゾ型インクジェットヘッドともいう)が好適である。
高速印字が可能であることに鑑みて、シングルパス方式のインクジェット画像形成方法を用いることが好ましい。本発明の効果は、特にシングルパス方式のインクジェット画像形成方法において特に顕著になる。具体的には、アンダーコート層上のインクは、画像のベタを埋めるのに適切な程度に広がりながらも、シングルパス方式の高速画像形成において滲みを抑制するのに十分な速度で凝集することが可能である。
シングルパス方式のインクジェット画像形成方法とは、記録媒体が一つのインクジェットヘッドユニットの下を通過した際に、一度の通過でドットの形成されるべきすべての画素にインク滴を付与するものである。
シングルパス方式のインクジェット画像形成方法を達成する手段として、ラインヘッド型のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
ラインヘッド型のインクジェットヘッドとは、印字範囲の幅以上の長さを持つインクジェットヘッドのことを指す。ラインヘッド型のインクジェットヘッドとしては、一つのヘッドで印字範囲の幅以上であるものを用いてもよいし、複数のヘッドを組み合わせて印字範囲の幅以上となるように構成してもよい。
また、複数のヘッドを、互いのノズルが千鳥配列となるように並設して、これらヘッド全体としての解像度を高くすることも好ましい。
その後、アンダーコート層上に付与されたインクジェットインクを乾燥させる。インクの乾燥には、例えば、乾燥炉や熱風送風機等のような非接触加熱型の乾燥装置を用いてもよいし、ホットプレートや熱ローラー等のような接触加熱型の乾燥装置を用いてもよい。
3.積層体
本発明の積層体は、非吸収性基材と、非吸収性基材上に設けられた、両性樹脂と、顔料凝集剤とを含有するアンダーコート層と、アンダーコート層上に設けられた、顔料を含有するインク層とを含む積層体である。本発明の積層体においては、各層間での相互作用などによって、剥離強度の高い積層体となる。具体的には、アンダーコート層に含まれる顔料凝集剤や、所望により含まれる架橋剤、後述する接着剤層中の成分などが他の層に拡散し、非吸収性基材、アンダーコート層、インク層や、さらに上方に設けられるフィルム層や接着剤層などの層間で相互作用して、層間の密着性を高めることができると考えられる。
本発明の積層体は、非吸収性基材と、非吸収性基材上に設けられた、両性樹脂と、顔料凝集剤とを含有するアンダーコート層と、アンダーコート層上に設けられた、顔料を含有するインク層とを含む積層体である。本発明の積層体においては、各層間での相互作用などによって、剥離強度の高い積層体となる。具体的には、アンダーコート層に含まれる顔料凝集剤や、所望により含まれる架橋剤、後述する接着剤層中の成分などが他の層に拡散し、非吸収性基材、アンダーコート層、インク層や、さらに上方に設けられるフィルム層や接着剤層などの層間で相互作用して、層間の密着性を高めることができると考えられる。
本発明の積層体に含まれる非吸収性基材は、本発明の画像形成方法に関連して上記で詳細に説明した非吸収性基材である。
本発明の積層体に含まれるアンダーコート層とインク層は、本発明の記録液セットに含まれるアンダーコート液とインクとをそれぞれ用いて、上述した本発明の画像形成方法などで形成したものである。
本発明の積層体は、上述したインク層の上に、さらにフィルム層を有してもよい。フィルム層とは、インク層の上に直接または接着剤を含む接着剤層を介してインク層に接合した、樹脂フィルムからなる層である。フィルム層を設けることによって、積層体の強度や耐水性を高めたり、インク層を保護することができる。
フィルム層を構成する樹脂材料は、インク層と接合可能である限りに特に限定はなく、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等が挙げられる。これら樹脂材料には、積層体の他の層に影響を与えない限り、添加剤が含まれていてもよい。
フィルム層の形成方法に特に限定はなく、例えば、樹脂溶液または溶融した樹脂を直接インク層上に塗布などの方法によって付与する方法、あるいはフィルム状の樹脂材料(樹脂フィルム)を、接着剤から構成される接着剤層などを介して、積層体のインク層上に接着する方法などが挙げられる。
フィルム層の厚みは、その用途などによっても異なるため特に限定はないが、5μm以上300μm以下が好ましく、特に得られた画像形成物を軟包装材料として使用する上では、フィルムの厚みは50μm以下がより好ましい。
インク層とフィルム層との間の接着剤層を構成する接着剤は、インク層とフィルム層の両方を接着可能である限り特に限定はなく、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、天然ゴム、SBR、NBR、シリコーンゴム等の合成ゴム等が挙げられる。中でもウレタン樹脂は、接触するフィルム層とインク層のみならず、アンダーコート層まで拡散して相互作用することが可能であることから、剥離強度の高い積層体を得るためには好ましい。特に好ましい接着剤は、ウレタン樹脂を用いた二液系の接着剤である。
このような接着剤の具体例としては、三井化学株式会社製のタケラック/タケネートシリーズ、DIC株式会社製のディックドライシリーズ、東洋モートン株式会社製のTMシリーズの接着剤が挙げられる。
接着剤層を介したフィルム層の形成方法としては、ドライラミネーション法、ノンソルベントラミネーション法、押出しラミネート法、ホットメルトラミネーション法等が挙げられる。
ドライラミネーション方法では、積層体のインク層の上に接着剤をグラビアロール方式で塗工して接着剤層を設けた後、そこに樹脂フィルムを重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせる。
ノンソルベントラミネーション法では、積層体のインク層の上に予め室温〜120℃程度に加熱しておいた接着剤を、室温〜120℃程度に加熱したロールコーターなどのロールにより塗布して接着剤層を設けた後、直ちにその表面に樹脂フィルムを貼り合わせる。
押出しラミネート法の場合には、積層体のインク層の上に接着補助剤(アンカーコート剤)として接着剤の有機溶剤溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、室温〜140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行い、接着剤層を設ける。その後、押出し機により溶融させた樹脂材料をラミネートすることにより、フィルム層を有する積層体を得ることができる。溶融させる樹脂材料としては、低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ホットメルトラミネーション法の場合には、加熱溶融したエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ワックス、粘着付与剤などからなるホットメルト接着剤を介して、積層体のインク層表面と、樹脂フィルムとを、直ちにラミネートする。
接着剤層の厚みは、フィルム層を接着するのに十分な厚みである限り特に限定はないが、1μm以上10μm以下が好ましく、積層体を薄膜化する観点からは、5μm以下がより好ましい。
尚フィルム層は、1層でもよいし、複数層存在してもよい。複数のフィルム層が存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
尚、積層体に含まれる各層の厚みは、電子顕微鏡(SEM、TEM等)による断面観察や光干渉膜厚計によって測定することができる。
本発明の記録液セット、インクジェット画像形成方法および積層体は、基材上にインクジェット法で画像形成する種々の用途に好適に用いることができる。本発明の用途は格別限定されない。用途の具体例としては、包装用フィルム等を好ましく挙げることができる。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
1.アンダーコート液の材料
<樹脂>
両性樹脂A: 水溶性両性樹脂(PAS−2351、ニットーボーメディカル株式会社製)
両性樹脂B: 水分散性両性樹脂(溶液重合法により合成した、メタクリル酸メチル45モル%、アクリル酸エチル45モル%、メタクリル酸1モル%、ジメチルアミノエチルメタクリレート9モル%からなる、分子量16000の樹脂)
アニオン性樹脂C: スーパーフレックス210、第一工業製薬株式会社製
カチオン性樹脂D: スーパーフレックス650、第一工業製薬株式会社製
<樹脂>
両性樹脂A: 水溶性両性樹脂(PAS−2351、ニットーボーメディカル株式会社製)
両性樹脂B: 水分散性両性樹脂(溶液重合法により合成した、メタクリル酸メチル45モル%、アクリル酸エチル45モル%、メタクリル酸1モル%、ジメチルアミノエチルメタクリレート9モル%からなる、分子量16000の樹脂)
アニオン性樹脂C: スーパーフレックス210、第一工業製薬株式会社製
カチオン性樹脂D: スーパーフレックス650、第一工業製薬株式会社製
<顔料凝集剤>
顔料凝集剤A: 多価金属塩(酢酸カルシウム)
顔料凝集剤B: 金属キレート剤(オルガチックスZC−126、マツモトファインケミカル社製)
顔料凝集剤C: カチオン性ポリマー(PAS−J−81−L、ニットーボーメディカル株式会社製)
顔料凝集剤A: 多価金属塩(酢酸カルシウム)
顔料凝集剤B: 金属キレート剤(オルガチックスZC−126、マツモトファインケミカル社製)
顔料凝集剤C: カチオン性ポリマー(PAS−J−81−L、ニットーボーメディカル株式会社製)
<架橋剤>
架橋剤A: カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトV−02−L2、日清紡ケミカル株式会社製)
架橋剤B: エポキシ系架橋剤(エポライト400E、共栄社化学株式会社製)
架橋剤C: イソシアネート系架橋剤(デュラネートWB40−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)
架橋剤D: オキサゾリン系架橋剤(エポクロスWS−700、株式会社日本触媒製)
架橋剤A: カルボジイミド系架橋剤(カルボジライトV−02−L2、日清紡ケミカル株式会社製)
架橋剤B: エポキシ系架橋剤(エポライト400E、共栄社化学株式会社製)
架橋剤C: イソシアネート系架橋剤(デュラネートWB40−100、旭化成ケミカルズ株式会社製)
架橋剤D: オキサゾリン系架橋剤(エポクロスWS−700、株式会社日本触媒製)
2.インクの材料
<顔料>
PB15:3: ピグメントブルー15:3(GNKA−SD、DIC株式会社製)
酸化チタン
<顔料>
PB15:3: ピグメントブルー15:3(GNKA−SD、DIC株式会社製)
酸化チタン
<その他の成分>
顔料分散剤: スチレンアクリル共重合体(ジョンクリル819、BASF社製)
溶媒: エチレングリコール
界面活性剤: オルフィンE1010、日信化学工業株式会社製
顔料分散剤: スチレンアクリル共重合体(ジョンクリル819、BASF社製)
溶媒: エチレングリコール
界面活性剤: オルフィンE1010、日信化学工業株式会社製
3.アンダーコート液の調製
<アンダーコート液1(UC1)の調製>
下記に示す各成分を撹拌しながら順次添加した後、5.0μmのフィルターによりろ過してアンダーコート液を得た。
・樹脂B 14質量部
・顔料凝集剤A 4.2質量部
・イオン交換水 全量が100質量部となる量
<アンダーコート液1(UC1)の調製>
下記に示す各成分を撹拌しながら順次添加した後、5.0μmのフィルターによりろ過してアンダーコート液を得た。
・樹脂B 14質量部
・顔料凝集剤A 4.2質量部
・イオン交換水 全量が100質量部となる量
尚、アンダーコート液を調製する際には、混合液中の凝集物や沈殿物について目視で確認し、以下の評価基準に従って顔料凝集剤の相溶性について評価した。
<凝集剤の相溶性>
○: 凝集物および沈殿物の発生なし
×: 凝集物および沈殿物の発生あり
評価結果は表3に示す。
<凝集剤の相溶性>
○: 凝集物および沈殿物の発生なし
×: 凝集物および沈殿物の発生あり
評価結果は表3に示す。
<アンダーコート液2〜11(UC2〜UC11)の調製>
表1に示すように各添加剤の種類と添加量を変更した以外は同様にして、アンダーコート液2〜11をそれぞれ調製した。尚、アンダーコート液2〜11を調製する際には、アンダーコート液1と同様に、顔料凝集剤の相溶性について評価した。評価結果は表3に示す。
表1に示すように各添加剤の種類と添加量を変更した以外は同様にして、アンダーコート液2〜11をそれぞれ調製した。尚、アンダーコート液2〜11を調製する際には、アンダーコート液1と同様に、顔料凝集剤の相溶性について評価した。評価結果は表3に示す。
4.インクの調製
<インク1の調製>
顔料分散剤としてジョンクリル819を10.8質量%、顔料としてPB15:3を18質量%、残部としてイオン交換水を加えた混合液をプレミックスした後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料の含有量が18質量%のシアン顔料分散体を得た。
<インク1の調製>
顔料分散剤としてジョンクリル819を10.8質量%、顔料としてPB15:3を18質量%、残部としてイオン交換水を加えた混合液をプレミックスした後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料の含有量が18質量%のシアン顔料分散体を得た。
顔料含有量が5質量部となるように、得られたシアン顔料分散体を27.8質量部、エチレングリコール20質量部、界面活性剤(オルフィンE1010、日信化学工業株式会社製)1質量部、イオン交換水(残部)の量により100質量部に調整し、混合撹拌した。十分に撹拌した後、5.0μmのフィルターにより濾過して、インク1を得た。
<インク2の調製>
顔料分散剤としてジョンクリル819を10.8質量%、顔料として酸化チタンを18質量%、残部としてイオン交換水を加えた混合液をプレミックスした後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料の含有量が18質量%の白色顔料分散体を得た。
顔料分散剤としてジョンクリル819を10.8質量%、顔料として酸化チタンを18質量%、残部としてイオン交換水を加えた混合液をプレミックスした後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料の含有量が18質量%の白色顔料分散体を得た。
顔料含有量が10質量部となるように、得られた白色顔料分散体を55.6質量部、エチレングリコール20質量部、界面活性剤(オルフィンE1010、日信化学工業株式会社製)1質量部、イオン交換水(残部)の量により100質量部に調整し、混合撹拌した。十分に撹拌した後、5.0μmのフィルターにより濾過して、インク2を得た。
尚、インク1およびインク2の組成を表2にまとめた。
5.積層体の製造
<積層体1の製造>
5−1.アンダーコート層の形成
非吸収性基材として、コロナ処理したポリエステルフィルム(フタラムラ化学社製のFE2001、厚さ25μm)を用意した。用意した非吸収性基材上に、上記で調製したアンダーコート液(UC1)を、固形分付量1.6g/m2となるようにバーコーター#5を用いて塗布した。続いて、塗布したアンダーコート液を70℃で5分間乾燥させて、アンダーコート層を形成した。
<積層体1の製造>
5−1.アンダーコート層の形成
非吸収性基材として、コロナ処理したポリエステルフィルム(フタラムラ化学社製のFE2001、厚さ25μm)を用意した。用意した非吸収性基材上に、上記で調製したアンダーコート液(UC1)を、固形分付量1.6g/m2となるようにバーコーター#5を用いて塗布した。続いて、塗布したアンダーコート液を70℃で5分間乾燥させて、アンダーコート層を形成した。
5−2.インク層の形成
アンダーコート層を形成した非吸収性基材を記録媒体とし、上記で調製したインク1を用い、シングルパス方式(1パス印字)による画像形成を行った。
アンダーコート層を形成した非吸収性基材を記録媒体とし、上記で調製したインク1を用い、シングルパス方式(1パス印字)による画像形成を行った。
コニカミノルタ社製の独立駆動インクジェットヘッド(360dpi、吐出量14pL)2つを、ノズルが互い違いになるように並設して、720dpi×720dpiの画像をシングルパス方式で印刷できるヘッドモジュールを作成した。かかるヘッドモジュールを2つ用意し、記録媒体を搬送する搬送ステージの搬送方向に沿って並設した。各ヘッドモジュールは、搬送方向(搬送ステージの移動軸)と交差するように設置した。このようにして、記録媒体を1回パスさせる際に、印字率200%、即ち2色分のインク付量(22.5cc/m2)を印刷できるようにした。
搬送ステージ上に、アンダーコート層が上になるように記録媒体を張付け、60m/minの速度で搬送を行い、記録媒体がヘッド下を通過する際にシングルパス方式で画像を印刷した。画像として、インク付量22.5cc/m2の7cm四方のベタ中にサイズ6ポイントの文字を抜き文字として配置した画像を印刷した。
インクジェット法による印刷後に、記録媒体をホットプレート上に載置し、80℃、15分間乾燥し、アンダーコート層とインク層とを有する積層体を得た。
得られた積層体のインク層を目視で観察し、ベタ埋まりおよび滲みを以下の評価基準に従って評価した。
<ベタ埋まり>
○: 白筋なくベタが埋まっている
○△: 1〜2本の白筋が見られる
△: 3〜4本の白筋が認められる
○: 白筋なくベタが埋まっている
○△: 1〜2本の白筋が見られる
△: 3〜4本の白筋が認められる
<滲み>
○: 滲みなし
△: わずかに滲みが見られるが、実用レベル
×: 実用的不可能な量の滲みが発生
○: 滲みなし
△: わずかに滲みが見られるが、実用レベル
×: 実用的不可能な量の滲みが発生
いずれの評価結果も、表3に示した。
5−3.フィルム層の形成
接着剤として、二液硬化型エステル系接着剤(タケラックA626、三井化学株式会社製)4部、二液硬化型イソシアネート系架橋剤(タケネートA50、三井化学株式会社製)0.5部、および酢酸エチル4.8部を混合した混合液を調製した。調製した混合液を、上記で得られた積層体のインク層の上に塗工量3.0g/m2で塗工し、接着剤層を得た。
次に、塗工した接着剤の上に、ナイロンフィルム(ON−15、ユニチカ製)を重ねてフィルム層を形成し、積層体1を得た。
接着剤として、二液硬化型エステル系接着剤(タケラックA626、三井化学株式会社製)4部、二液硬化型イソシアネート系架橋剤(タケネートA50、三井化学株式会社製)0.5部、および酢酸エチル4.8部を混合した混合液を調製した。調製した混合液を、上記で得られた積層体のインク層の上に塗工量3.0g/m2で塗工し、接着剤層を得た。
次に、塗工した接着剤の上に、ナイロンフィルム(ON−15、ユニチカ製)を重ねてフィルム層を形成し、積層体1を得た。
<積層体2〜13の製造>
表3に示すようにアンダーコート液とインクを変更した以外は同様にして、積層体2〜13をそれぞれ調製した。
表3に示すようにアンダーコート液とインクを変更した以外は同様にして、積層体2〜13をそれぞれ調製した。
尚、アンダーコート液11は、沈殿物や凝集物が多く含まれており、均一なアンダーコート層が形成できないため、その上のインク層やフィルム層の形成は行わなかった。残りの積層体2〜10、12と13については、インク層を形成した際に、積層体1と同様にベタ埋まりおよび滲みを評価した。評価結果は表3に示す。
<積層体の剥離強度>
上記で製造した積層体1〜10、12と13のそれぞれについて、下記の方法で剥離強度を測定した。
積層体を40℃の恒温槽中に72時間静置し、エージングをおこなった。積層体を常温まで空冷したのち、15mm幅のテープ状に切断し、T型剥離試験を行い、剥離強度を測定した。剥離強度に基づき、以下の評価基準に従って、剥離強度を評価した。
◎: 剥離強度が2N超
○: 剥離強度が1N超、2N以下
△: 剥離強度が0.5以上、1N以下
評価結果は表3に示す。
上記で製造した積層体1〜10、12と13のそれぞれについて、下記の方法で剥離強度を測定した。
積層体を40℃の恒温槽中に72時間静置し、エージングをおこなった。積層体を常温まで空冷したのち、15mm幅のテープ状に切断し、T型剥離試験を行い、剥離強度を測定した。剥離強度に基づき、以下の評価基準に従って、剥離強度を評価した。
◎: 剥離強度が2N超
○: 剥離強度が1N超、2N以下
△: 剥離強度が0.5以上、1N以下
評価結果は表3に示す。
上記表3の結果より、両性樹脂を含むアンダーコート液1〜8においては、顔料凝集剤の相溶性が良好であることがわかる。良好な相溶性は、アンダーコート液に両性樹脂と共にカチオン性樹脂が含まれるアンダーコート液2についても同様であった。
また、アンダーコート液1〜8を用いてアンダーコート層を形成し、その上にインクで画像形成した積層体1〜10においては、ベタ埋まりが良好で、且つ滲みの抑制された画像が得られた。なお、両性樹脂と共にカチオン性樹脂を含むアンダーコート液2と4をそれぞれ用いた積層体2と4においては、実用的なレベルではあるものの、ベタ埋まりが若干低下した。良好なベタ埋まりと滲みの抑制は、顔料凝集剤と両性樹脂との相互作用によって、顔料凝集剤のインク層への拡散が適当なレベルに維持されたためと考えられ、両性樹脂の量が少ない積層体2と4においては、顔料凝集剤と両性樹脂のアニオン性官能基との相互作用が少ないため、ベタ埋まりが若干低下したと考えられる。
また、無機顔料を含むインク2を用いた場合(積層体6と7)も、有機顔料を含むインク1を用いた場合(積層体1〜5、8〜10)と同様の優れた結果が得られた。
さらに積層体1〜10においては、剥離強度が良好であった。顔料分散剤として多価金属塩を用いた積層体1およびカチオン性ポリマーを用いた積層体3の方が、金属キレート剤を用いた積層体2よりも剥離強度が高かった。また、架橋剤を含むアンダーコート液4〜8を用いた積層体4、5、7〜9においては、剥離強度は特に高かった。このような架橋剤による効果は、架橋剤の種類によらず認められた。
一方、樹脂成分としてアニオン性樹脂のみを含むアンダーコート液9では、顔料凝集剤は相溶せず、凝集物および沈殿物の発生が認められた。
また、樹脂成分としてカチオン性樹脂のみを含むアンダーコート液10においては、顔料凝集剤の相溶性は良好であった。しかし、アンダーコート液10を用いた積層体12では、滲みは抑制されたものの、ベタ埋まりが不十分で、白抜けが認められた。これは、アンダーコート層中の顔料凝集剤が急激にインク層へと拡散し、インク滴が十分に広がる前に凝集したためと考えられる。さらに積層体12の剥離強度は低かった。
両性樹脂を含むが、顔料凝集剤を含まないアンダーコート液11を用いた積層体13においては、剥離強度は良好であったが、滲みが発生した。良好な剥離強度は、両性樹脂と非吸収性基材との相互作用によるものと考えられるが、インク中の顔料が凝集しないため、滲みが発生したと考えられる。
本発明によれば、非吸収性基材上に、滲みが抑制され、ベタ埋まりが良好な画像を形成可能であり、さらには層間密着性の高い積層体の製造に用いることができる、記録液セットを提供することができる。さらに、当該記録液セットを用いた画像形成方法、および積層体を提供することができる。そのため、本発明は、インクジェット法による水系インクを用いた画像形成の適合範囲を広げ、当分野におけるインクジェット法の普及に寄与することが期待される。
Claims (13)
- 水性のアンダーコート液および水性のインクジェットインクを含む記録液セットであって、
前記インクジェットインクは、顔料と、水とを含有し、
前記アンダーコート液は、両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有する、記録液セット。 - 前記両性樹脂の有するアニオン性官能基が、少なくとも一つのカルボキシル基である、請求項1に記載の記録液セット。
- 前記両性樹脂が、分散性の粒子である、請求項1または2に記載の記録液セット。
- 前記顔料凝集剤が、酸、カチオン性化合物および金属キレート剤からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録液セット。
- 前記顔料凝集剤がカチオン性化合物であり、前記カチオン性化合物が多価金属塩である、請求項4に記載の記録液セット。
- 前記アンダーコート液が、架橋剤をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の記録液セット。
- 前記架橋剤が、エポキシ型架橋剤、イソシアネート型架橋剤、カルボジイミド型架橋剤、またはオキサゾリン型架橋剤であることを特徴とする、請求項6に記載の記録液セット。
- 前記顔料が無機顔料である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の記録液セット。
- 両性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を、非吸収性基材上に塗布して、アンダーコート層を形成し、
前記アンダーコート層の表面に接して、顔料と、水とを含有するインクジェットインクを、インクジェット法により付与することを含む、画像形成方法。 - 前記インクジェットインクはシングルパス方式で付与される、請求項9に記載の画像形成方法。
- 前記非吸収性基材がプラスチックフィルムである、請求項9または10に記載の画像形成方法。
- 非吸収性基材と、
前記非吸収性基材上に設けられたアンダーコート層と、
前記アンダーコート層上に設けられたインク層と
を含む積層体であって、
前記アンダーコート層が、両性樹脂と、顔料凝集剤とを含有し、
前記インク層が、顔料を含有する、積層体。 - 前記インク層の上に、フィルム層をさらに有する、請求項12に記載の積層体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017121408A JP2019006855A (ja) | 2017-06-21 | 2017-06-21 | 記録液セット、画像形成方法、および積層体 |
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JP2017121408A Pending JP2019006855A (ja) | 2017-06-21 | 2017-06-21 | 記録液セット、画像形成方法、および積層体 |
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JP (1) | JP2019006855A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020069791A (ja) * | 2018-10-26 | 2020-05-07 | 株式会社リコー | 媒体、媒体の製造方法、及び媒体製造装置 |
WO2023114574A1 (en) | 2021-12-14 | 2023-06-22 | Dupont Electronics, Inc. | Inkjet ink and primer fluid set |
-
2017
- 2017-06-21 JP JP2017121408A patent/JP2019006855A/ja active Pending
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