JP7130926B2 - 記録液セット、および画像形成方法 - Google Patents

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本発明は、記録液セット、および画像形成方法に関する。
インクジェット画像形成方法は、微細なノズルヘッドからインクの小滴を吐出し、記録媒体に付着させることで印刷を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度の画像を高速で印刷可能であることから、小ロットでの多品種の印刷を行う包装材などの分野において着目されている。特に、水および色材を含む、インクジェット用の水性インク(以下、「インク」または「インクジェットインク」と略記することもある)は、環境安全性などの観点からも着目されているものの、画像と基材との密着性や、画像とその上に設ける樹脂層との密着性の悪さといった問題が、特にフィルム等の非吸水性の基材を用いた際に発生しやすい。例えば、プラスチックフィルム等の表面に直接印刷して印刷層を設け、その上に接着剤を塗布し、ヒートシールできるシーラントフィルムを貼り合わせるラミネート加工によって得られるラミネートにおいて、上記問題の解決は重要である。基材と印刷層(画像)との密着性のみならず、印刷層とその上のフィルム層との密着性が良好な、ラミネート適性に優れた水性インクを用いることで、上記ラミネートを包装材料として用いたパッケージの製造や、パッケージへの物品の充填等の際に起こり得る層間剥離や、パッケージのヒートシール部からの破裂などを防止することができるためである。
上述のような水性インクの問題を解決するための試みとして、インクに定着樹脂を加えることで、インクと非吸収性基材との密着性を高めることが可能な、ラミネート適性の改善された水性インクジェットインクが特許文献1に記載されている。さらに、特許文献2には、非吸収性基材上に水性ポリウレタン樹脂等を含むインク受理層を設け、当該インク受理層の上に、定着樹脂を含む水性インクジェットインクを用いて画像を形成することで、画像の滲みを抑制し、密着性を高める画像形成方法が記載されている。
また、非吸収性基材と、無機粒子、定着樹脂となるカチオンポリマー、および顔料凝集剤となる多価金属塩を含有するインク受容層とを有するインクジェット記録媒体と、このような記録倍体を用いるインクジェット記録方法が特許文献3に記載されている。この記録媒体は、定着樹脂を含まない水性インクによる画像形成を想定しており、定着樹脂を含まない水性インクによって長時間射出安定性を保ちながら高速印字を達成し、且つ、インク受容層による画質の向上を目的としている。
特開2013-216878号公報 特開2012-250416号公報 特開2009-107256号公報
従来、水性インクのラミネート適性を改善する方法としては、特許文献1や特許文献2に記載されているように、インクに定着樹脂を含ませる方法が一般的である。しかし、定着樹脂を含むインクは、乾燥によるインクの増粘が起こりやすいため、インクジェットヘッドの詰まりなどが生じやすく、高速かつワンパスの印刷方法において、吐出安定性を維持することが困難であった。
また、特許文献2に記載のような、樹脂成分として親水性樹脂のみを含むインク受容層は、ポリエチレンフィルムなどの低極性樹脂とは密着性が低いため、基材が低極性の樹脂フィルムである場合には、層間剥離などの懸念がある。
さらに特許文献3に記載のような、定着樹脂となるカチオンポリマーと顔料凝集剤とを含むインク受容層を設けたインクジェット記録媒体に定着樹脂を含まないインクで画像を形成し、さらにその上に接着層とフィルム層とを設けた場合、画像とその上の層との接着強度および画像そのもの強度が不十分であり、優れたラミネートを得ることは困難であった。
上述した特許文献1~3に記載のインクやインク受容層を用いた画像形成方法では、比較的極性の低いフィルム基材(例えば、OPP)と、比較的極性の高いフィルム基材(PETやナイロン)との両方、即ち、様々なフィルム基材に、同等の密着性を示す画像を形成することは困難であった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、OPP、PETやナイロンといった多様な非吸水性基材上に、高画質の画像を高速で形成することが可能であり、且つ非吸水性基材に対する密着性が高く、ラミネート加工した際には、優れたラミネート適性を有する(即ち、画像と基材との密着性、および画像とその上に設けられた他層との密着性の両方が良好である)画像形成物を得ることができる、記録液セットを提供することにある。さらに本発明の目的は、当該記録液セットを用いた画像形成方法を提供することにある。
本発明の第一は、以下の記録液セットである。
[1] 水性のアンダーコート液および水性のインクジェットインクを含む記録液セットであって、
前記アンダーコート液は、疎水性樹脂と、親水性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有し、
前記インクジェットインクは、顔料と、顔料分散用樹脂と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤と、水とを含有し、
前記インクジェットインクにおいて、
前記界面活性剤のHLB値は5以上15以下であり、
前記水溶性有機溶剤のSP値は25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下であり、
前記顔料分散用樹脂の前記顔料に対する質量比は0.3以上1.0以下である、記録液セット。
[2] 前記インクジェットインクにおける前記水溶性有機溶剤の含有量が、10質量%以上40質量%以下である、[1]に記載の記録液セット。
[3] 前記アンダーコート液において、前記疎水性樹脂と前記親水性樹脂の合計質量に対する前記親水性樹脂の割合が、20質量%以上70質量%以下である、[1]または[2]に記載の記録液セット。
[4] 前記顔料凝集剤が、多価金属塩である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の記録液セット。
本発明の第二は、以下の画像形成方法である。
[5] 疎水性樹脂と、親水性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を、非吸収性基材上に塗布して、アンダーコート層を形成し、
前記アンダーコート層の表面に接して、顔料と、顔料分散用樹脂と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインクを、インクジェット法により付与して、インク層を形成することを含む、画像形成方法であって、
前記インクジェットインクにおいて、
前記界面活性剤のHLB値は5以上15以下であり、
前記水溶性有機溶剤のSP値は25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下であり、
前記顔料分散用樹脂の前記顔料に対する質量比は、0.3以上1.0以下である、画像形成方法。
[6] 前記インク層の表面に接して、樹脂層を形成することをさらに含む、[5]に記載の画像形成方法。
[7] 前記インクジェットインクにおける前記水溶性有機溶剤の含有量が、10質量%以上40質量%以下である、[5]または[6]に記載の画像形成方法。
[8] 前記アンダーコート液において、前記疎水性樹脂と前記親水性樹脂の合計質量に対する前記親水性樹脂の割合が、20質量%以上70質量%以下である、[5]~[7]のいずれか一項に記載の画像形成方法。
[9] 前記顔料凝集剤が、多価金属塩である、[5]~[8]のいずれか一項に記載の画像形成方法。
[10] 前記インクジェットインクはシングルパス方式で付与される、[5]~[9]のいずれか一項に記載の画像形成方法。
OPP、PETやナイロンといった多様な非吸水性基材上に、高画質の画像を高速で形成することが可能であり、且つ非吸水性基材に対する密着性が高く、ラミネート加工した際には、優れたラミネート適性を有する(即ち、画像と基材との密着性、および画像とその上に設けられた他層との密着性の両方が良好である)画像形成物を得ることができる、記録液セットが提供される。さらに、当該記録液セットを用いた画像形成方法が提供される。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意研究を行った結果、疎水性樹脂と、親水性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液、および顔料と、顔料分散用樹脂と、HLB値が5以上15以下の界面活性剤と、SP値が25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下の水溶性有機溶剤と、水とを含有し、当該インク中に存在する顔料分散用樹脂の前記顔料に対する質量比が0.3以上1.0以下であるインクを含む記録液セットを用いて、フィルムなどの非吸水性基材上に画像形成を行うと、非吸水性基材が高極性樹脂(PETやナイロン等)であっても、低極性樹脂(OPP等)であっても、基材との密着性が高く、高画質の画像を高速で形成可能であることを見出した。また、インクの吐出安定性は高く、さらには画像(インク層)の強度も高く、ラミネート加工した際には、優れたラミネート適性を有する(即ち、画像と基材との密着性、および画像とその上に設けられた他層との密着性の両方が良好である)画像形成物が得られることを見出した。その理由は明らかではないが、次のように推定される。
インク中の界面活性剤は、インクの出射性や濡れ性を向上させるために従来から使用されているものであるが、HLB値が15を超える界面活性剤を含むインクを用いた画像形成物においては、層間剥離が生じやすいことが判明した。記録媒体にインクの液滴が着弾すると、着弾したインクに含まれる水が初めに蒸発し、徐々にインク中の水溶性有機溶剤濃度が高まると考えられる。このとき、インクに含まれる界面活性剤のHLB値が15を超えると、界面活性剤は析出し、インク液滴の表面に移動して、インク層表面に界面活性剤の膜が形成される傾向にある。インク層の上に樹脂層を設けた場合には、このような界面活性剤の膜が樹脂層とインク層との密着の妨げとなり、インク層と樹脂層との層間密着性が低下すると考えられる。
一方、本発明のインクセットに含まれるインクは、HLB値が5以上15以下の界面活性剤と、SP値が25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下の水溶性有機溶剤とを含む。このような特定の界面活性剤と特定の水溶性有機溶剤とを組み合わせることで、アンダーコート液によって形成されるアンダーコート層にインクの液滴が着弾し、水分の蒸発によってインク中の水溶性有機溶剤濃度が高まったときにも、界面活性剤は水溶性有機溶剤に溶け込んだ状態を維持することが可能となる。よって、析出した界面活性剤による、インク層表面における膜形成が抑制されて、インク層と、その上に設けられる樹脂層との層間密着性が高まると考えられる。
さらにHLB値が5以上15以下の界面活性剤は、インク中の水溶性有機溶剤に対する溶解性が高すぎないため、インクが基材に着弾した後、インクの表面に界面活性剤の一部が配向することができると考えられる。そのため、少ない界面活性剤量でも、ドットを拡大させることが可能となる。
さらに、当該インク中に含まれる顔料分散用樹脂の顔料に対する質量比は、0.3以上1.0以下である。顔料分散用樹脂の質量比を1.0以下に抑制することによって、顔料をインク中に分散させながらも、乾燥によるインクの増粘を防止し、インクの吐出安定性を確保することが可能となる。
本発明のインクセットは、親水性樹脂と疎水性樹脂の両方を含む、アンダーコート液を含んでいる。アンダーコート液に含まれる親水性樹脂は、アンダーコート層の上に着弾した、特定の界面活性剤と特定の水溶性有機溶剤とを含むインク中に拡散して、インクと相互作用すると考えられる。このような相互作用によって、インク中の樹脂成分が少なくともインク層の強度を高め、さらにはインク層とアンダーコート層との層間密着性を高めることも可能となる。
さらにアンダーコート液は、PETやナイロンなどの高極性樹脂との密着性が良好な親水性樹脂と、OPPなどの低極性樹脂との密着性が良好な疎水性樹脂とを含むことから、非吸水性基材が高極性樹脂であっても、低極性樹脂であっても、密着性の高いアンダーコート層を形成することが可能である。
よって、上述した特定のアンダーコート液と、特定のインクとを組み合わせた本発明の記録セットを用いると、非吸収性基材上に高画質の画像を高速で形成することが可能となり、且つインク層の剥離などの恐れの少ない、層間密着性の高い画像を得ることが可能となる。
以下に、例示的な実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
1.記録液セット
本発明の記録液セットは、水性のアンダーコート液および水性のインクジェットインクを含む記録液セットである。
初めに、アンダーコート液について説明する。
アンダーコート液は、疎水性樹脂と、親水性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有する。
本発明において、疎水性樹脂とは、水に対して疎水的である、即ち、水で容易に膨潤したり、水と容易に混合されない樹脂である。好ましい疎水性樹脂は、オレフィン系樹脂である。当該オレフィン系樹脂は、変性されたものでも、未変性のものでもよいが、併用する親水性樹脂との親和性の観点から、変性されたオレフィン系樹脂がより好ましい。
オレフィン系樹脂の具体例として、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどのα-オレフィンの単独重合体またはこれらの共重合体、および上述したα-オレフィンの単独重合体や共重合体を塩素などによって変性した変性ポリオレフィンが挙げられる。好ましいオレフィン系樹脂は、水系塩素化ポリオレフィンであり、例えば、日本製紙株式会社製のスーパークロンE415やスーパークロンE480を使用することができる。
本発明において親水性樹脂とは、上記疎水性樹脂以外の樹脂であって、水に対する親和性を有するか、又は水で容易に湿潤されるか、水と容易に混合される樹脂である。
親水性樹脂としては、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリオールアクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、アクリルウレタン樹脂などが挙げられる。積層体の形成に使用し得る接着剤や、顔料分散用樹脂との組成が近く、層間の密着性の向上が期待されることから、好ましい親水性樹脂は、ウレタン樹脂およびアクリルウレタン樹脂である。例えば、ウレタン樹脂である第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックス650や、明成化学株式会社製のパスコールJK-870、アクリルウレタン樹脂である大成ファインケミカル株式会社製のWEM-505cを使用することができる。
疎水性樹脂および親水性樹脂は、それぞれ少なくとも1種ずつ含まれていればよい。疎水性樹脂と親水性樹脂の合計質量に対する親水性樹脂の割合は、好ましくは20質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上50質量%以下である。親水性樹脂の割合が上記範囲内であれば、非吸収性基材の極性にかかわらず、基材との密着性が良好なアンダーコート層が嘉永性可能となる。
アンダーコート液における疎水性樹脂および親水性樹脂の合計量の範囲は格別限定されないが、アンダーコート液を用いて基材上に形成したアンダーコート層における樹脂の付量が、0.5g/m以上10g/m以下となる量が好ましく、0.5g/m以上3g/m以下となる量が更に好ましい。記録液セットを用いて作製する画像形成物を薄膜材料として用いるためには、アンダーコート液によって形成されるアンダーコート層における樹脂の付量は上記範囲内が好ましい。
なお、アンダーコート層中の疎水性樹脂および親水性樹脂の付量は、公知の方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で含有量を測定することができる。
アンダーコート液は、記録液セットに含まれるインクが含有する顔料を凝集させることが可能な顔料凝集剤を含有する。
顔料凝集剤としては、特にインクに含まれる顔料がアニオン性の分散顔料である場合、酸、カチオン性化合物、および金属キレート剤からなる群より選ばれる少なくとも一種を好ましく用いることができる。
酸は、pH変動によってインク中のアニオン性の分散顔料を凝集することができる。酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、シュウ酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、安息香酸、2-ピロリドン-5-カルボン酸、乳酸、アクリル酸又はその誘導体、メタクリル酸又はその誘導体、アクリルアミド又はその誘導体、スルホン酸誘導体、リン酸又はその誘導体等を好ましく挙げることができる。酸としては、無機酸よりも有機酸を好ましく用いることができる。有機酸を用いることによって、アンダーコート液を構成する樹脂等の他の成分との相溶性を向上でき、更に、アンダーコート液により形成されるアンダーコート層が乾燥しても塩になりにくいため、透明性に優れる効果も得られる。
カチオン性化合物は、塩析によってインク中のアニオン性の分散顔料を凝集することができる。カチオン性化合物として、例えば、多価金属塩、およびカチオン性の界面活性剤やポリマー等を挙げることができる。多価金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等の水溶性の塩を好ましく挙げることができる。
カチオン性界面活性剤(陽イオン性界面活性剤ともいう)としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等を好ましく挙げることができる。
また、カチオン性ポリマーとしては、1~4級のアミンを有するポリマー等が挙げられ、例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。また、具体例としては、第一工業製薬株式会社製のカチオマスターシリーズ、センカ株式会社製のユニセンスシリーズ、ニットーボーメディカル株式会社製のポリアリルアミンシリーズが挙げられる。
金属キレート剤としては、金属イオンと配位子(多座配位子)からなる錯体(キレート錯体)を用いることができる。ここで金属イオンとしては、例えば、上述した多価金属塩を構成する金属のイオンを用い、配位子としては、複数の配位座を持つ化合物を用いることができる。複数の配位座を持つ化合物の例は、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-プロピレンジアミンテトラ酢酸、1-フェニルエチレンジアミンテトラ酢酸、3,3-ジメチルブタン-1,2-ジアミンテトラ酢酸、1,2,3-トリアミノプロパンヘキサ酢酸、トリメチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロ三酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、プロパン-1,2-ジアミン、ブタン-1,2-ジアミン、3,3-ジメチルブタン-1,2-ジアミン、1,2,3-トリアミノプロパン、トリメチレンジアミン、テトラリン-2,3-ジアミンテトラ酢酸、デカリン-2,3-テトラ酢酸、シクロヘキサン-1,2-ジアミンテトラ酢酸、シクロヘキサン-1,3-ジアミンテトラ酢酸、シクロヘキサン-1,4-ジアミンテトラ酢酸、シュウ酸、タイロン、アセチルアセトン等である。
顔料凝集剤として使用可能な金属キレート剤の具体例としては、マツモトファインケミカル株式会社製のZC-126等が挙げられる。
好ましい顔料凝集剤は多価金属塩である。多価金属塩を顔料凝集剤として用いると、顔料凝集剤のインク層への拡散が適切な速度で行われるため、ベタ埋まりが良好で、且つ滲みの抑制された画像形成が可能となる。
顔料凝集剤は、一種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
アンダーコート液における顔料凝集剤の含有量の範囲は格別限定されないが、基材上に形成したアンダーコート層における顔料凝集剤の付量は、以下の範囲内であることが好ましい。例えば、顔料凝集剤として多価金属塩を用いる場合は、0.1g/m以上、20g/m以下が好ましい。滲みを効果的に抑制するためには0.1g/m以上含有することが好ましく、ひび割れを効果的に抑制するためには、20g/m以下とすることが好ましい。
アンダーコート層中の顔料凝集剤の付量は、公知の方法で測定することができる。例えば、顔料凝集剤が多価金属塩であるときはICP発光分析で、顔料凝集剤が酸であるときは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で含有量を測定することができる。また、顔料凝集剤が金属キレート剤の場合は、例えば、金属元素の含有量を、原子吸光分析法やプラズマ発光分析法など公知の金属分析方法(例えば、特開2006-251179号公報に記載の方法)を用いて測定することができる。
アンダーコート液は溶媒として、水を含むことが好ましく、他に公知の有機溶媒を含有することができる。
また、アンダーコート液は、顔料凝集剤として使用する界面活性剤とは異なる界面活性剤を含有してもよい。これにより、各種塗布方法への適合性を高めることができる。上記界面活性剤の例としては、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等を好ましく挙げることができる。
両性界面活性剤の例としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等を好ましく挙げることができる。
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等を好ましく挙げることができる。
アンダーコート液中には、本発明の効果を損なわない範囲で、架橋剤、防黴剤、殺菌剤等、他の成分を適宜配合することができる。
次に、本発明の記録液セットに含まれるインクについて説明する。
記録液セットに含まれるインクは、顔料と、顔料分散用樹脂と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤と、水とを含有する。
顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、水分散性顔料、溶剤分散性顔料等何れも使用可能であり、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料、あるいは酸化チタンやカーボンブラック等の無機顔料を好ましく用いることができる。これらの顔料は、例えば、顔料分散剤によりインク中に分散させた状態で存在させて使用することができる。
不溶性顔料は格別限定されないが、例えば、アゾ系顔料、アゾメチン系顔料、メチン系顔料、ジフェニルメタン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、インジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、アジン系顔料、オキサジン系顔料、チアジン系顔料、ジオキサジン系顔料、チアゾール系顔料、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が好ましい。
顔料は格別限定されないが、例えば以下のものを好ましく例示できる。
イエローインク又はオレンジインク等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155等が挙げられる。
マゼンタインク又はレッドインク等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
シアンインク又はグリーンインク等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
ブラックインク等に用いる顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7(カーボンブラック)等が挙げられる。
また、白色インクに用いる顔料としては酸化チタンが挙げられる。
インク中における顔料の分散状態の平均粒子径は、50nm以上200nm以下の範囲であることが好ましい。これにより、顔料の分散安定性を向上でき、インクの保存安定性を向上できる。顔料の粒子径測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、且つ該粒子径領域を精度よく測定できる。
顔料は、たとえば顔料分散剤やその他の所望の添加物と共に、分散機により分散して用いることができる。
分散機としては、従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等を使用できる。中でもサンドミルによって顔料を分散させると、粒度分布がシャープとなるため好ましい。また、サンドミル分散に使用するビーズの材質は、格別限定されないが、ビーズ破片の生成やイオン成分のコンタミネーションを防止する観点から、ジルコニアまたはジルコンであることが好ましい。さらに、このビーズ径は、0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましい。
インクにおける顔料の含有量は格別限定されないが、例えば、無機顔料については、インクの全質量に対して7質量%以上18質量%以下の範囲であることが好ましく、有機顔料については、全質量に対して0.5質量%以上7質量%以下の範囲であることが好ましい。
顔料として、アニオン性の分散顔料を用いることは特に好ましい。アニオン性の分散顔料としては、例えば、表面にアニオン性基を導入した顔料や、アニオン性基を有する顔料分散剤によって分散された顔料等を挙げることができる。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基等を好ましく例示できる。
また、アニオン性基は、アルカリ中和されていることが好ましい。アニオン性基を中和するアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム等の金属塩基化合物や、アンモニアや、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミンや、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等を好ましく挙げることができる。
本発明に係るインクは、顔料分散用樹脂を含んでいる。顔料分散用樹脂として、例えば、アクリル系分散剤を好ましく用いることができる。アクリル系分散剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸共重合体から選択される一種又は複数種を好適に用いることができる。
アクリル系分散剤として、(メタ)アクリル酸の重合体(即ち、ポリ(メタ)アクリル酸)、あるいは必要に応じてスチレンなどの他のモノマー成分を共重合した共重合体(即ち、(メタ)アクリル酸共重合体)を好適に用いることができる。
アクリル系分散剤として、例えば、BASF社製の「ジョンクリル819」(「ジョンクリル」は同社の登録商標)(酸価75mgKOH/g)、「ジョンクリル67」(酸価213mgKOH/g)等の市販品を用いることができる。
顔料分散用樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
当該インクに含まれる、顔料分散用樹脂の顔料に対する質量比は、好ましくは0.3以上1.0以下であり、より好ましくは0.3以上0.6以下である。顔料分散用樹脂の質量比が0.3以上であれば、顔料を凝集させずに均一に分散させることができる。また、1.0以下であれば、インクの増粘による吐出安定性の低下を抑制することができる。
尚、当該インクに含まれる樹脂成分は、実質的に顔料分散用樹脂のみであるが、他の樹脂を含んでいてもかまわない。インクに複数の樹脂成分が含まれる場合には、顔料分散用樹脂と他の樹脂との合計量が、顔料に対する質量比として、1.0以下であることが好ましい。樹脂の合計量が顔料に対する質量比として1.0以下であることによって、吐出安定性に優れたインクを得ることが可能となる。
インクは、出射性向上や濡れ性向上のため、HLB値が5以上15以下の界面活性剤を含んでいる。
HLB値とは、Hydrophile-Lipophile-Balance、親水性-親油性-バランスのことであり、化合物の親水性又は親油性の大きさを示す値である。HLB値が小さいほど親油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなる。
本発明に係るHLB値は、以下の計算式によって求めることができる。
HLB=7+11.7Log(Mw/Mo)
式中、Mwは親水基の分子量、Moは親油基の分子量を表し、Mw+Mo=M(化合物の分子量)である。
或いは、グリフィン法によれば、HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量(J.Soc.CosmeticChem.,5(1954),294)として求めることもできる。
インクに含まれる界面活性剤のHLB値は5以上15以下であり、好ましくは7以上13以下である。界面活性剤のHLB値が5以上であると、インクの製造時に界面活性剤を溶解して、均一な水系インクを得ることができる。さらにHLB値が15以下であると、インク中の水溶性有機溶剤の濃度が乾燥により上昇しても、界面活性剤が析出してインク液滴の表面に膜を形成することが少ないため、インク層とその上の樹脂層との層間密着性を高めることができる。
HLB値は5以上15以下である界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン(HLB値:5.1)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB値6.5)、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル(HLB値8.0)、ソルビタンモノラウレート(HLB値:8.6)、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(HLB値9.0)、ポリオキシエチレンセチルエーテル(HLB値:14.2)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート(HLB値15.0)などが挙げられる。
このような界面活性剤の市販品としては、花王株式会社製のアミート302(ポリオキシエチレンアルキルアミン)、レオドールSP-L10(ソルビタンモノラウレート)、エマルゲン220(ポリオキシエチレンセチルエーテル)、日新化学工業社製のオルフィンE1010(アセチレン系界面活性剤、HLB値:13~14)などが挙げられる。
界面活性剤は1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
インクにおける界面活性剤の含有量は、格別限定されないが、0.1質量%以上2.0質量%以下の範囲であることが好ましい。
本発明に係るインクは、水および、SP値が25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下である水溶性有機溶剤をさらに含有する。
SP値とは溶解性パラメーター(Solubility Parameter)の略であり、Fedorの計算方法により求められる数値である。FedorによるSP値の計算方法は、R.F.Fedor;Polymer Engineering Science、14(2)147-154(1974)に記載されている。
水溶性有機溶剤のSP値は、25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下である。水溶性有機溶剤のSP値が上記範囲内にあると、印字後の乾燥過程において有機溶媒が濃縮した際にも界面活性剤はインク中に溶解することができるため、析出した界面活性剤によるインク層表面における膜形成が抑制されて、インク層と、その上に設けられる樹脂層との層間密着性が高まると考えられる。
SP値が25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下である水溶性有機溶剤としては、エチレングリコール(SP値:29.9MPa(1/2))、プロピレングリコール(SP値:30.3MPa(1/2))、ジエチレングリコール(SP値:28.4MPa(1/2))などのグリコール類等を好ましく挙げることができる。
これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
インクにおける当該水溶性有機溶剤の含有量は、インクの全質量に対して、10質量%以上40質量%以下であり、10質量%以上40質量%以下の範囲であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下の範囲であることがより好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が10質量%以上であると、剥離強度の高い画像の形成が可能となり、40質量%以下であれば、インクの液滴が適度に広がってベタの白抜けなどが発生しにくいため、高画質の画像を形成することができる。
また、SP値が25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下の水溶性有機溶剤の効果が損なわれない量で、他の水溶性有機溶剤(即ち、SP値が25MPa(1/2)未満の水溶性有機溶剤や、SP値が32MPa(1/2)を超える水溶性有機溶剤)を含んでいてもよい。このような水溶性有機溶剤が含まれる場合には、水溶性有機溶剤の含有量は、インクの全質量に対して、0質量%超15質量%以下の範囲であることが好ましく、0質量%超10質量%以下の範囲であることがより好ましい。
インクには、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を適宜配合することができる。
2.画像形成方法
本発明の第二の実施形態は、本発明の記録液セットを用いた画像形成方法である。本発明の画像形成方法は、以下の工程を含むものである。
疎水性樹脂と、親水性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を、非吸収性基材上に塗布して、アンダーコート層を形成する第1工程と、
前記アンダーコート層の表面に接して、顔料と、顔料分散用樹脂と、界面活性剤と、有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインクを、インクジェット法により付与する第2工程。
第1工程においては、親水性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を、基材上に塗布して、アンダーコート層を形成する。ここで使用するアンダーコート液は、上記で詳細に説明した本発明の記録液セットに含まれるアンダーコート液である。
アンダーコート液を塗布する非吸水性基材とは、プラスチック、プラスチックフィルム、ガラス、金属など実質的に水を吸収しない基材であれば格別限定されない。特にプラスチックフィルムを非吸水性基材として用いると、本発明の効果は顕著に奏される。
また、非吸水性基材の表面は、その上に形成するアンダーコート層との密着性を高める観点から、コロナ放電処理やオゾン処理等の表面処理がなされていてもよい。
プラスチックフィルムを構成する樹脂は格別限定されないが、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド等のようなプラスチックを好ましく挙げることができ、原料は極性の高い樹脂でも、極性の低い樹脂でもかまわない。プラスチックフィルムは、未延伸フィルム又は延伸フィルムの何れであってもよい。非吸収性基材の厚みに特に限定はないが、5μm以上300μm以下が好ましく、特に得られた画像形成物を軟包装材料として使用する上では、フィルムの厚みは50μm以下がより好ましい。
第1工程では、かかる基材上に、アンダーコート液を塗布する。基材上へのアンダーコート液の塗布方法は格別限定されないが、例えば、ローラー塗布法、カーテン塗布法、スプレー塗布法、インクジェット法等を好ましく挙げることができる。
続いて、基材上に塗布されたアンダーコート液は、完全に乾燥させるか、あるいは半硬化させてもよい。半硬化とは、アンダーコート液が硬化前よりも増粘し、且つ流動性を有する状態である。
アンダーコート液の乾燥には、例えば、乾燥炉や熱風送風機等のような非接触加熱型の乾燥装置を用いてもよいし、ホットプレートや熱ローラー等のような接触加熱型の乾燥装置を用いてもよい。
形成されたアンダーコート層の膜厚に特に限定はないが、0.2μm以上10.0μm以下の範囲であると、本発明の効果は顕著に奏される。好ましい膜厚は0.3μm以上3.0μm以下であり、1.0μm以上3.0μm以下である。膜厚が0.3μm以上であると、カールの発生を抑制しながら、密着性を高めることが可能となり、膜厚が1.0μm以上であると、密着性がより高まる。また、膜厚が3.0μm以下であると、密着性を維持したまま、カールおよび滲みを抑制することが可能となる。例えばフィルム基材を用いる場合、質感が変化することを好適に防止できる点で更に好ましい記録層の膜厚は0.3μm以上2.0μm以下の範囲である。
尚、上記アンダーコート層の膜厚は、電子顕微鏡(SEM、TEM等)による断面観察や光干渉膜厚計によって測定することができる。
第2工程においては、アンダーコート層の表面に接して、顔料と、顔料分散用樹脂と、界面活性剤と、有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインクを、インクジェット法により付与する。ここで使用するインクは、本発明の記録液セットに含まれるインクである。
アンダーコート層の表面に接してインクを付与する際には、インクジェットヘッドを備えるプリンターを用いることができる。具体的には、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドのノズルからインクを液滴として吐出させ、これを基材に設けたアンダーコート層上に着弾させて画像を形成することができる。
インクジェットヘッドは、オンデマンド方式、コンティニュアス方式の何れであってもよい。インクジェットヘッドの液滴吐出方式としては、電気-機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気-熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン社の登録商標)型等)等、何れの方式を用いてもよい。
特に、電気-機械変換方式に用いられる電気-機械変換素子として圧電素子を用いたインクジェットヘッド(ピエゾ型インクジェットヘッドともいう)が好適である。
高速印字が可能であることに鑑みて、シングルパス方式のインクジェット画像形成方法を用いることが好ましい。本発明の効果は、特にシングルパス方式のインクジェット画像形成方法において特に顕著になる。具体的には、アンダーコート層上のインクは、画像のベタを埋めるのに適切な程度に広がりながらも、シングルパス方式の高速画像形成において滲みを抑制するのに十分な速度で凝集することが可能である。
シングルパス方式のインクジェット画像形成方法とは、記録媒体が一つのインクジェットヘッドユニットの下を通過した際に、一度の通過でドットの形成されるべきすべての画素にインク滴を付与するものである。
シングルパス方式のインクジェット画像形成方法を達成する手段として、ラインヘッド型のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
ラインヘッド型のインクジェットヘッドとは、印字範囲の幅以上の長さを持つインクジェットヘッドのことを指す。ラインヘッド型のインクジェットヘッドとしては、一つのヘッドで印字範囲の幅以上であるものを用いてもよいし、複数のヘッドを組み合わせて印字範囲の幅以上となるように構成してもよい。
また、複数のヘッドを、互いのノズルが千鳥配列となるように並設して、これらヘッド全体としての解像度を高くすることも好ましい。
その後、アンダーコート層上に付与されたインクジェットインクを乾燥させる。インクの乾燥には、例えば、乾燥炉や熱風送風機等のような非接触加熱型の乾燥装置を用いてもよいし、ホットプレートや熱ローラー等のような接触加熱型の乾燥装置を用いてもよい。
画像形成方法は、上述した第1および第2の工程に加え、インク層の表面に接して、樹脂層を形成する第3工程を含んでもよい。
第3工程で形成する樹脂層とは、インク層の上に直接または接着剤を含む接着剤層を介してインク層に接合した、樹脂からなる層である。樹脂層を設けることによって、画像の強度や耐水性を高めたり、インク層を保護することができる。また、本発明の記録液セットを用いて形成した画像の上に樹脂層を設けると、インク層の上に界面活性剤の膜が存在しないため、インク層と樹脂層との層間密着性が高まると考えられる。さらに、アンダーコート層に含まれる親水性樹脂等がインク層に拡散し樹脂層と相互作用すると考えられるため、画像の各層の強度が高いだけでなく、層間密着性も高い画像が得られると考えられる。
樹脂層を構成する樹脂は、インク層と接合可能である限りに特に限定はなく、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム等が挙げられる。これら樹脂には、画像の他の層に影響を与えない限り、添加剤が含まれていてもよい。
第3工程でインク層上に樹脂層を形成する方法に特に限定はなく、例えば、樹脂溶液または溶融した樹脂を直接インク層上に塗布などの方法によって付与する方法、あるいはフィルム状の樹脂(樹脂フィルム)を、接着剤から構成される接着剤層などを介して、インク層上に接着する方法などが挙げられる。
樹脂層の厚みは、その用途などによっても異なるため特に限定はないが、5μm以上300μm以下が好ましく、特に得られた画像形成物を軟包装材料として使用する上では、フィルムの厚みは50μm以下がより好ましい。
インク層と樹脂層との間の接着剤層を構成する接着剤は、インク層と樹脂層の両方を接着可能である限り特に限定はなく、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、天然ゴム、SBR、NBR、シリコーンゴム等の合成ゴム等が挙げられる。中でもウレタン樹脂は、アンダーコート層からインク層に拡散した親水性樹脂と相互作用することが可能であることから、接着剤層とインク層との層間強度を高めるためには好ましい。特に好ましい接着剤は、ウレタン樹脂を用いた二液系の接着剤である。
このような接着剤の具体例としては、三井化学株式会社製のタケラック/タケネートシリーズ、DIC株式会社製のディックドライシリーズ、東洋モートン株式会社製のTMシリーズの接着剤が挙げられる。
接着剤層を介した樹脂層の形成方法としては、ドライラミネーション法、ノンソルベントラミネーション法、押出しラミネート法、ホットメルトラミネーション法等が挙げられる。
ドライラミネーション方法では、インク層の上に接着剤をグラビアロール方式で塗工して接着剤層を設けた後、そこに樹脂フィルムを重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせる。
ノンソルベントラミネーション法では、インク層の上に予め室温~120℃程度に加熱しておいた接着剤を、室温~120℃程度に加熱したロールコーターなどのロールにより塗布して接着剤層を設けた後、直ちにその表面に樹脂フィルムを貼り合わせる。
押出しラミネート法の場合には、インク層の上に接着補助剤(アンカーコート剤)として接着剤の有機溶剤溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、室温~140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行い、接着剤層を設ける。その後、押出し機により溶融させた樹脂をラミネートすることにより、樹脂層を有する画像を得ることができる。溶融させる樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ホットメルトラミネーション法の場合には、加熱溶融したエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ワックス、粘着付与剤などからなるホットメルト接着剤を介して、画像のインク層表面と、樹脂フィルムとを、直ちにラミネートする。
接着剤層の厚みは、樹脂層を接着するのに十分な厚みである限り特に限定はないが、1μm以上10μm以下が好ましく、画像形成物を薄膜化する観点からは、5μm以下がより好ましい。
尚、樹脂層は1層でもよいし、複数層存在してもよい。複数の樹脂層が存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。
尚、画像に含まれる各層の厚みは、電子顕微鏡(SEM、TEM等)による断面観察や光干渉膜厚計によって測定することができる。
本発明の記録液セット、およびインクジェット画像形成方法は、基材上にインクジェット法で画像形成する種々の用途に好適に用いることができる。本発明の用途は格別限定されない。用途の具体例としては、包装用フィルム等を好ましく挙げることができる。
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
1.アンダーコート液の材料
<疎水性樹脂>
E415: 塩素化ポリオレフィン(スーパークロンE415、日本製紙株式会社製)
E480: 塩素化ポリオレフィン(スーパークロンE480、日本製紙株式会社製)
<親水性樹脂>
SF650: ウレタン樹脂(スーパーフレックス650、第一工業製薬株式会社製)
JK870: ウレタン樹脂(パースコールJK-870、明成化学株式会社製)
WEM: アクリルウレタン樹脂(WEM-505c、大成ファインケミカル株式会社製)
<顔料凝集剤>
酢酸カルシウム
マロン酸
2.インクの材料
<顔料>
PB15:3: ピグメントブルー15:3(Fastogen Blue FGF、DIC株式会社製)
<顔料分散用樹脂>
J819: スチレンアクリル共重合体(ジョンクリル819、BASF社製)
<界面活性剤>
界面活性剤A: ソルビタンモノオレエート(レオドールSP-O10V、花王株式会社製、HLB値:4.3)
界面活性剤B: ポリオキシエチレンアルキルアミン(アミート302、花王株式会社製、HLB値:5.1)
界面活性剤C: ソルビタンモノラウレート(レオドールSP-L10、花王株式会社製、HLB値:8.6)
界面活性剤D: ポリオキシエチレンセチルエーテル(エマルゲン220、花王株式会社製、HLB値:14.2)
界面活性剤E: ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(レオドールTW-L120、花王株式会社製、HLB値:15.6)
<水溶性有機溶剤>
EG: エチレングリコール(SP値:29.9MPa(1/2)
PG: プロピレングリコール(SP値:30.3MPa(1/2)
Gly: グリセリン(SP値:33MPa(1/2)
dEGMBE: ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値:20.5MPa(1/2)
3.記録液セットの製造
<実施例1>
(1)アンダーコート液の調製
下記に示す各成分を撹拌しながら順次添加した後、5.0μmのフィルターによりろ過してアンダーコート液を得た。
・E415 7.0質量%
・SF650 7.0質量%
・酢酸カルシウム 4.7質量%
・イオン交換水 全量が100質量%となる量
(2)インクの調製
顔料分散用樹脂としてジョンクリル819を5.4質量%、顔料としてPB15:3を18質量%、エチレングリコール20質量部、残部としてイオン交換水を加えた混合液をプレミックスした後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料の含有量が20質量%であり、顔料に対する顔料分散用樹脂の質量比が0.3であるシアン顔料分散体を得た。
上記シアン顔料分散体を用いて、インク中の顔料含有量が5質量%(顔料分散用樹脂量1.5質量%)、界面活性剤Cが1質量%、水溶性有機溶媒としてエチレングリコールが20質量%、残部がイオン交換水となるように調整し、混合撹拌した。十分に撹拌した後、5.0μmのフィルターにより濾過して、インクを得た。
<実施例2~16>
表1および表2に示すように各添加剤の種類と添加量を変更した以外は実施例1と同様にして、アンダーコート液をそれぞれ調製した。さらに、表1および表2に示すように各添加剤の種類と添加量を変更した以外は実施例1と同様にして、インクをそれぞれ調製した。
<比較例1~9>
表3に示すように各添加剤の種類と添加量を変更した以外は実施例1と同様にして、アンダーコート液をそれぞれ調製した。さらに、表3に示すように各添加剤の種類と添加量を変更した以外は実施例1と同様にして、インクをそれぞれ調製した。
Figure 0007130926000001
Figure 0007130926000002
Figure 0007130926000003
4.画像形成
4-1.アンダーコート層の形成
非吸収性基材として、以下のフィルムを用意し、それぞれを用いて画像形成を行った。
PET: 二軸延伸ポリエステルフィルム(25μm厚、東洋紡株式会社製のE-5200、)
Ny: ナイロンフィルム(厚さ15μm厚、ユニチカ(株)製のエンブレム ON)
OPP: 2軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学社製のFOS#60)
用意した非吸収性基材上に、実施例および比較例で調製したアンダーコート液を、固形分付量1.6g/mとなるようにバーコーター#5を用いて塗布した。続いて、塗布したアンダーコート液を70℃で5分間乾燥させて、アンダーコート層を形成した。
4-2.インク層の形成
アンダーコート層を形成した非吸収性基材を記録媒体とし、実施例および比較例で調製したインクを用い、シングルパス方式(1パス印字)による、高速画像形成を行った。
ドロップオンデマンドピエゾ方式のインクジェットヘッド(ノズル数1024(512×2列)、ノズル間隔70.5μm(141μm×2列))を搭載した、ステージ移動型インクジェットプリンタを用いた。記録媒体上にインク液滴体積32pl、記録密度360×360dpiの条件で、ベタ画像中のインクを吐出しないことにより形成される抜き文字(3ポイント、4ポイント、5ポイントの文字)を、ステージの走査速度を線速100m/分または線速50m/分のいずれかにして、1走査により印刷した。同様にして、記録密度360×360dpiの条件で、ベタ画像を、線速50m/分で1走査により印刷した。本明細書でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。なお、インク液滴体積は、記録インク毎に射出電圧を調整することにより制御した。また、インクジェット印刷時の環境は室温25℃で、記録媒体の温度も同様に25℃条件で行った。
4-3.樹脂層の形成
画像を形成した記録媒体の上に、接着剤(タケラックA-969V/タケネートA-5=3/1)を塗付膜厚1.6g/mとなるように塗布した。塗布した接着剤の上に無延伸プロピレン(CPP)フィルムを接着して樹脂層を形成し、画像形成物を得た。
5.評価方法
<剥離強度>
上記で得た画像形成物を40℃の恒温槽中に72時間静置し、エージングをおこなった。画像形成物を常温まで空冷したのち、15mm幅のテープ状に切断し、T型剥離試験を行い、剥離強度を測定した(引張速度:300mm/s、装置:テンシロン万能材料試験機)。剥離強度に基づき、以下の評価基準に従って、剥離強度を評価した。
◎: 剥離強度が1.5N超
○: 剥離強度が1N超、1.5N以下
△: 剥離強度が0.5以上、1N以下
×: 剥離強度が0.5未満
<画質>
アンダーコート層を形成したOPPを記録媒体として、上記の方法で形成した画像の抜き文字について、30cmの距離で認識できる文字サイズを目視で確認した。さらにベタ面における白抜けの有無も目視で観察し、以下の評価基準に従って、画質を評価した。
◎: 3~5ポイントの文字がすべて認識可能であり、かつベタ面にも抜けが無い
〇: 3~5ポイントの文字がすべて認識可能だが、ベタ面に抜けがある
△: 4~5ポイントの文字は認識可能であるが、ベタ面に抜けがある
×: 3~5ポイントの文字のすべてが認識できない。
<吐出安定性>
アンダーコート層を形成したOPPを記録媒体とし、上記と同様のプリンターを用い、インクの吐出安定性を評価した。
記録媒体上に、ステージ走査速度100m/分の条件下で、35×35mmのベタ画像を1走査で形成した。上記画像から5mm間隔をあけた位置にインクジェットヘッドを3分間停止した後、同様にベタ画像を隣接して形成し、それぞれ、5mm間隔で隣接する2つのベタ画像を形成した。
以上のようにして形成した正方形画像を用いて、インクの異常出射による画像の端部の乱れの有無を確認し、下記基準に従って吐出安定性を評価した。
○:ヘッド停止時間3分では、画像の端部に乱れが観察されず、良好なプリント画像が得られた
×:ヘッド停止時間3分で、画像の端部に乱れが観察された
いずれの評価結果も、表4と表5に示した。
Figure 0007130926000004
Figure 0007130926000005
上記表4の実施例1~16の結果より、疎水性樹脂と、親水性樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液、および顔料と、顔料分散用樹脂と、HLB値が5以上15以下である界面活性剤と、SP値が25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下である水溶性有機溶剤と、水とを含有し、インク中に存在する樹脂成分の合計量が、顔料に対する質量比で0.3以上1.0以下であるインクを含む記録液セットを用いて画像形成を行うと、非吸収性基材が高極性樹脂(PET、Ny)であっても、低極性樹脂(OPP)であっても、剥離強度の高い、高画質の画像を高速印字方法で形成することが可能であった。さらにはインクの吐出安定性も高いことがわかる。特にアンダーコート液に含まれる顔料凝集剤が多価金属塩である実施例1~4においては、画質が非常に高かった。また、同様の優れた結果が、水溶性有機溶剤をエチレングリコールからプロピレングリコールに変更した実施例5でも得られた。
アンダーコート液における疎水性樹脂と親水性樹脂の合計質量に対する親水性樹脂の割合が20質量%以上70質量%以下の範囲内である実施例1~8においては、非吸収性基材が高極性樹脂であるPETやナイロンでも、低極性樹脂であるOPPでも、剥離強度の高い(即ち、層間密着性の高い)画像形成物が得られることがわかる。特に、親水性樹脂の割合が20質量%以上50質量%以下の範囲内である実施例1~6と8においてはPET、ナイロンおよびOPPの全てについて、剥離強度が非常に高かった。一方、親水性樹脂の割合が70質量%を超える実施例9では、親水性樹脂の割合が多いため、低極性樹脂であるOPPとの密着性が少し低下し、剥離強度が少し低下した。また、親水性樹脂の割合が20質量%未満である実施例10では、非吸収性基材が高極性樹脂であるPETやナイロンの場合に、剥離強度が少し低下した。
水溶性有機溶剤の含有量が10質量%以上40質量%以下の範囲内である実施例11および12においては、水溶性有機溶剤の含有量が10質量%未満の実施例13と比較して剥離強度が高く、水溶性有機溶剤の含有量が40質量%を超える実施例14と比較して、画質が高かった。
インクに含まれる界面活性剤のHLB値が5以上15以下の範囲内である実施例15と16では、界面活性剤の種類によらず、剥離強度、画質および吐出安定性が高かった。一方、界面活性剤のHLB値が15を超える比較例1の画像においては、高速印字の際に滲みやベタ抜けが発生し、画質が悪かった。また、界面活性剤のHLB値が5未満である比較例2では、界面活性剤がインクに溶解せず、均一なインクが得られなかった。
インクに含まれる水溶性有機溶剤のSP値が25MPa(1/2)未満である比較例3においては、その他の点は同じ実施例14と比較して、剥離強度が少し低下し、画質は悪かった。一方、水溶性有機溶剤のSP値が32MPa(1/2)を超えるである比較例4においては、その他の点は同じ実施例14と比較して、画質は良好で会ったが、剥離強度が低下した。
さらに、アンダーコート液に疎水性樹脂が含まれない比較例5においては、非吸収性基材が低極性樹脂であるOPPのときに剥離強度が低く、アンダーコート液に親水性樹脂が含まれない比較例6においては、非吸収性基材が高極性樹脂であるPETやナイロンのときに剥離強度が低かった。
インクに含まれる顔料分散用樹脂の量が顔料に対して1質量%を超える比較例7においては、吐出安定性が悪かった。これは過剰量の顔料分散用樹脂によってインクが増粘したためと考えられる。一方、インクに含まれる顔料分散用樹脂の量が、顔料に対する質量比で0.3未満である比較例8においては、顔料の分散安定性が低く、均一なインクが得られなかった。
また、アンダーコート液が顔料凝集剤を含まない比較例9においては、インク層における顔料の凝集性が低いため、画質が低下した。
本発明によれば、OPP、PETやナイロンといった多様な非吸水性基材上に、高画質の画像を高速で形成することが可能であり、且つ非吸水性基材に対する密着性が高く、ラミネート加工した際には、優れたラミネート適性を有する(即ち、画像と基材との密着性、および画像とその上に設けられた他層との密着性の両方が良好である)画像形成物を得ることができる、記録液セットを提供することができる。そのため、本発明は、インクジェット法による水系インクを用いた画像形成の適合範囲を広げ、当分野におけるインクジェット法の普及に寄与することが期待される。

Claims (10)

  1. 水性のアンダーコート液および水性のインクジェットインクを含む記録液セットであって、
    前記アンダーコート液は、オレフィン系樹脂(ポリエチレンワックスを除く)と、ウレタン樹脂、ウレタンアクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有し、
    前記インクジェットインクは、顔料と、顔料分散用樹脂と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤と、水とを含有し、
    前記インクジェットインクにおいて、
    前記界面活性剤のHLB値は5以上15以下であり、
    前記水溶性有機溶剤のSP値は25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下であり、
    前記顔料分散用樹脂の前記顔料に対する質量比は0.3以上1.0以下である、記録液セット。
  2. 前記インクジェットインクにおける前記水溶性有機溶剤の含有量が、10質量%以上40質量%以下である、請求項1に記載の記録液セット。
  3. 前記アンダーコート液において、前記オレフィン系樹脂(ポリエチレンワックスを除く)と、前記ウレタン樹脂、前記ウレタンアクリル樹脂、及び前記ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の前記樹脂と、の合計質量に対する前記ウレタン樹脂、前記ウレタンアクリル樹脂、及び前記ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の前記樹脂の割合が、20質量%以上70質量%以下である、請求項1または2に記載の記録液セット。
  4. 前記顔料凝集剤が、多価金属塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載の記録液セット。
  5. オレフィン系樹脂(ポリエチレンワックスを除く)と、ウレタン樹脂、ウレタンアクリル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、顔料凝集剤と、水とを含有するアンダーコート液を、非吸収性基材上に塗布して、アンダーコート層を形成し、
    前記アンダーコート層の表面に接して、顔料と、顔料分散用樹脂と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤と、水とを含有するインクジェットインクを、インクジェット法により付与して、インク層を形成することを含む、画像形成方法であって、
    前記インクジェットインクにおいて、
    前記界面活性剤のHLB値は5以上15以下であり、
    前記水溶性有機溶剤のSP値は25MPa(1/2)以上32MPa(1/2)以下であり、
    前記顔料分散用樹脂の前記顔料に対する質量比は、0.3以上1.0以下である、画像形成方法。
  6. 前記インク層の表面に接して、樹脂層を形成することをさらに含む、請求項5に記載の画像形成方法。
  7. 前記インクジェットインクにおける前記水溶性有機溶剤の含有量が、10質量%以上40質量%以下である、請求項5または6に記載の画像形成方法。
  8. 前記アンダーコート液において、前記オレフィン系樹脂(ポリエチレンワックスを除く)と、前記ウレタン樹脂、前記ウレタンアクリル樹脂、及び前記ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の前記樹脂と、の合計質量に対する前記ウレタン樹脂、前記ウレタンアクリル樹脂、及び前記ポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の前記樹脂の割合が、20質量%以上70質量%以下である、請求項5~7のいずれか一項に記載の画像形成方法。
  9. 前記顔料凝集剤が、多価金属塩である、請求項5~8のいずれか一項に記載の画像形成方法。
  10. 前記インクジェットインクはシングルパス方式で付与される、請求項5~9のいずれか一項に記載の画像形成方法。
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