JP2013158938A - 油性インクジェット印刷方法及びインクセット - Google Patents

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Abstract

【課題】油性インクを用いて印刷した場合、特に、ラインヘッド方式の高速インクジェット印刷装置で300×300dpiのような比較的低解像度で印刷した場合に、高い印刷濃度が得られ、かつ、印刷装置内部のローラーや連続して印刷される印刷用紙のインク汚れを抑制する。
【解決手段】無機粒子、塩化ビニル系樹脂エマルション、及び、水を少なくとも含んでなる塗工処理液で印刷媒体の表面を処理してインク受理層を形成し、該インク受理層に油性インクを用いて印刷する。無機粒子は、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子及びコロイダルシリカからなる群より選ばれた少なくとも1つを使用できる。塗工処理液の塗工量は、無機粒子量換算にて2.0〜6.0g/mである。
【選択図】なし

Description

本発明は、印刷媒体内へのインクの浸透を抑制して裏抜け及び滲みを防止することにより、印刷濃度を向上させるとともにインクの乾燥性にも優れた油性インクジェット印刷方法及び該印刷方法に用いるインクセット及び塗工処理液に関する。
油性インクは、色材と溶媒が一緒に印刷用紙へ浸透し易く、その表面に色材が残りにくいため、印刷装置内部や連続して印刷される印刷用紙へインク汚れが生じにくいという利点がある。また、油性インクは、水性インクと比較して耐水性が良好であるという利点もある。また、油性インクは、溶媒が揮発し難いため、インクジェット印刷に用いた場合、インクノズルのクリーニング回数が少なくて済むといった利点があり、高速印刷、特にラインヘッド方式の高速インクジェット印刷に適している。
その一方で、油性インクは、色材が印刷用紙の表面に残りにくいため、画像の濃度向上が難しく、インクの裏抜けが多く、印刷ドットの滲みが生じ、印刷画像の画質に劣るという欠点があった。
ラインヘッド方式の高速インクジェット印刷においては、低解像度でシャープな画像を形成することが求められ、そのために、インクドットが真円形で高い印刷濃度を有することが求められる。さらに、高速印刷であることから、インクは印字直後に印刷用紙にすばやく吸収されて、フィニッシャー装置などによる後加工工程において印刷装置内部や連続して印刷される印刷用紙へインク汚れを発生させないようにすることが必要とされる。
油性インクを用いたインクジェット印刷において印刷画像の画質を向上する方法として、炭素数8〜18の脂肪族炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレート、アルキルアリール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、アルキルアリール(メタ)アクリルアミド、アルキルスチレン、α−オレフィンなどの化合物を単量体単位として含有する重合体からなるインク受理層に印刷することが提案されている(特許文献1参照)。しかし、このインク受理層は、画像濃度、インク吸収性、画像ムラの向上には効果があるが、印刷装置内部のローラーや連続して印刷される印刷用紙のインク汚れを抑制する効果は持ち合わせていない。
また、他の方法として、特定の平均粒子径、比表面積及び吸油量を有するシリカを50質量%以上含むインク受理層に印刷することが提案されている(特許文献2参照)。しかし、このインク受理層は、印刷ドット径を大きくして高い印刷濃度を得る効果はあるが、印刷装置内部のローラーや連続して印刷される印刷用紙のインク汚れを抑制する効果は持ち合わせていない。
印刷画像濃度が不十分な紙でも、ラインヘッドを備える高速インクジェット印刷装置内の印刷ヘッドよりも前段において紙に塗工処理液を塗工し、インク受理層を形成する工程を設けることによって、高い印刷画像濃度を得る提案もなされている。塗工処理液の塗工量が多い場合は、塗工層のインク吸収可能量が大きくなるため前記した性能が大幅に向上するが、塗工層の紙への定着力が低下し、また印刷用紙の風合いが損なわれ、印刷用紙のコストも上がるという課題がある。この課題を回避するために前処理液の塗工量を少なくした場合、無機粒子自体のインク吸収性を適性にしなければ、印刷画像濃度の向上と、ローラー通過後のインクの再転写汚れの抑制を両立した印刷物が得られない。高速インクジェット印刷装置内では、インク受理層は、印刷される前までに短時間で形成する必要がある半面、当該層の乾燥が不十分であると、油性インクは印字後にインク受理層に吸収されないため、ローラー通過後のインク再転写汚れが生じ、又は印刷画像が滲んでしまうことになる。
印字直後のローラー転写汚れを抑制する方法として、疎水性を有するバインダ樹脂、バインダ樹脂と相溶性のある有機溶剤、親水性多孔質微粒子を含むインクジェットインク受容層形成用インクを塗工することによって、インクの吸収性を速める提案がされている(特許文献3参照)。この提案のインクジェットインク受容層形成用インクに含まれる有機溶媒は揮発性が高いため、前処理液を塗工後、すばやくインク受容層を形成できる一方、臭気の発生や安全性の点から、高速インクジェット印刷装置で使うには不適当である。
また、塩化ビニル-アクリル共重合体樹脂を主体とする、油性インク受容光沢層を形成することによって、印字画像濃度が高く、且つ、インク吸収性を向上させる提案がされている(特許文献4参照)。しかし、この提案は、高揮発性の有機溶剤を溶媒として含有する溶剤インクを対象としており、低揮発性の非極性溶剤を主体とする油性インクを対象としたものではないので、同様の効果は発現しない。
以上従来の提案について概説したが、水を主成分の1つとする塗工処理液を紙に塗工した直後に、インク受理層をすばやく形成し、続いて油性インクにて印字した際に、高い画像濃度を有し、且つ、インクが吸収されることによって、ローラー通過後のインク再転写汚れが抑制されるという提案はこれまでにない。
特開平11−286166号公報 特開2005−96167号公報 特開2004−223762号公報 特開2010−234677号公報
本発明は、油性インクを用いて印刷した場合、特に、ラインヘッド方式の高速インクジェット印刷装置で300×300dpiのような比較的低解像度で印刷した場合に、高い印刷濃度が得られ、かつ、印刷装置内部のローラーや連続して印刷される印刷用紙のインク汚れを抑制する効果も有するインク受理層を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的の下に鋭意研究した結果、無機粒子、及び水のほか、塩化ビニル系樹脂エマルションを少なくとも含んでなる塗工処理液で印刷媒体の表面を処理してインク受理層を形成し、該インク受理層に油性インクを用いて印刷することにより、高い印刷濃度が得られ、かつ、印刷装置内部のローラーや連続して印刷される印刷用紙のインク汚れを抑制することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の一局面によれば、塗工処理液を印刷媒体上へ塗布した後、色材および溶剤を少なくとも含んでなる油性インクにより該印刷媒体上に印刷を行う印刷方法において、前記塗工処理液は、無機粒子、塩化ビニル系樹脂エマルション、及び、水を少なくとも含んでなる油性インク印刷方法が提供される。
また、本発明の他の局面によれば、塗工処理液を印刷媒体上へ塗布した後、油性インクにより該印刷媒体上に印刷を行うために使用するインクセットであって、色材および溶剤を少なくとも含んでなる油性インクと、無機粒子、塩化ビニル系樹脂エマルション、及び、水を少なくとも含んでなる塗工処理液とからなるインクセットが提供される。
また、本発明のさらに他の局面によれば、塗工処理液を印刷媒体上へ塗布した後、油性インクにより該印刷媒体上に印刷を行うために使用する塗工処理液であって、無機粒子、塩化ビニル系樹脂エマルション、及び、水を少なくとも含んでなる油性インク印刷用塗工処理液が提供される。
本発明によれば、塗工処理液に塩化ビニル系樹脂エマルションを用い、無機粒子、塩化ビニル系樹脂エマルション、及び、水を少なくとも含んでなる塗工処理液で印刷媒体を表面処理してインク受理層を形成した後、油性インクで該インク受理層に印刷することとしたので、油性インクの印刷媒体への浸透が抑制され、色材を印刷媒体の表面に残し、インクの滲みを抑制することができ、高い印刷濃度が得られる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
1.油性インク
本発明で使用する油性インクは、溶剤及び色材から主として構成されるが、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
1−1.溶剤
溶剤は、インクの溶媒すなわちビヒクルとして機能するものであれば特に限定されず、揮発性溶剤及び難揮発性溶剤の何れであってもよい。しかしながら、本発明では環境上の観点から、溶剤は、難揮発性溶剤を主体として含有することが好ましい。難揮発性溶剤の沸点は、200℃以上が好ましく、より好ましくは240℃以上である。
溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤の何れの有機溶剤も使用できる。これらは、単独で使用してもよく、または、単一の相を形成する限り、2種以上組み合わせて使用できる。本発明では、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤を組み合わせて使用することが好ましく、20〜80質量%の非極性溶剤と80〜20質量%の極性溶剤とから溶剤を構成することが好ましく、30〜45質量%の非極性溶剤と55〜70質量%の極性溶剤とから溶剤を構成することがより好ましい。
1−1−1.非極性溶剤
非極性有機溶剤としては、ナフテン系、パラフィン系、イソパラフィン系等の炭化水素溶剤を使用でき、具体的には、ドデカンなどの脂肪族飽和炭化水素類、エクソンモービル社製「アイソパー、エクソール」(いずれも商品名)、新日本石油社製「AFソルベント」(商品名)、サン石油社製「サンセン、サンパー」(いずれも商品名)等が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
1−1−2.極性溶剤
極性有機溶剤としては、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、脂肪酸系溶剤、エーテル系溶剤などが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が5以上、好ましくは9以上、より好ましくは12乃至32の高級脂肪酸エステル類が挙げられ、例えば、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸イソノニル、ラウリル酸メチル、ラウリル酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、イソパルミチン酸イソオクチル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルドデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、モノカプリン酸プロピレングリコール、トリ2エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリ2エチルヘキサン酸グリセリルなどが挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が12以上の脂肪族高級アルコール類が挙げられ、具体的には、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールが挙げられる。
脂肪酸系溶剤としては、例えば、1分子中の炭素数が4以上、好ましくは9乃至22の脂肪酸類が挙げられ、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる、
エーテル系溶剤としては、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテルなどのグリコールエーテル類の他、グリコールエーテル類のアセタートなどが挙げられる。
1−2.色材
色材としては、顔料及び染料の何れも使用することができ、単独で使用しても両者を併用してもよい。印刷物の耐候性の点から、色材として顔料を使用することが好ましい。
色材は、油性インキ全量に対して0.01〜20質量%の範囲で含有されることが好ましい。
1−2−1.染料
染料としては、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、ナフトール染料、アゾ染料、金属錯塩染料、アントラキノン染料、キノイミン染料、インジゴ染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、カーボニウム染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、フタロシアニン染料、ペリニン染料などの油溶性染料が挙げられる。これらの染料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
1−2−2.顔料
顔料としては、有機顔料、無機顔料を問わず、印刷の技術分野で一般に用いられているものを使用でき、特に限定されない。具体的には、カーボンブラック、カドミウムレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、酸化クロム、ピリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料などが好適に使用できる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
1−2−3.顔料分散剤
油性インク中における顔料の分散を良好にするために、油性インクに顔料分散剤を添加することが好ましい。本発明で使用できる顔料分散剤としては、顔料を溶剤中に安定して分散させるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が好適に使用され、そのうち、高分子分散剤を使用するのが好ましい。
顔料分散剤の具体例としては、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、22000、24000、28000」(いずれも商品名)、Efka CHEMICALS社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46,47,48,49,4010,4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名)、花王社製「デモールP、EP、ポイズ520、521、530、ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)」(いずれも商品名)、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(高分子ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名)、第一工業製薬社製「ディスコール202、206、OA−202、OA−600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名)等が挙げられる。
上記顔料分散剤のうち、ポリエステル鎖からなる側鎖を複数備える櫛形構造のポリアミド系分散剤が好ましく使用される。ポリエステル鎖からなる側鎖を複数備える櫛形構造のポリアミド系分散剤とは、ポリエチレンイミンのような主鎖に多数の窒素原子を備え、該窒素原子を介してアミド結合した側鎖を複数備える化合物であって、該側鎖がポリエステル鎖であるものをいい、例えば、特開平5−177123号公報に開示されているような、ポリエチレンイミンなどのポリアルキレンイミンからなる主鎖一分子当り3〜80個のポリ(カルボニル―C3〜C6―アルキレンオキシ)鎖がアミド架橋によって側鎖として結合している構造の分散剤が挙げられる。なお、かかる櫛形構造のポリアミド系分散剤としては、上記日本ルーブリゾール社製ソルスパース11200、ソルスパース28000(何れも商品名)が該当する。
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分に上記有機溶剤中に分散可能な量であれば足り、適宜設定できる。
1−3.その他の成分
本発明の油性インクには、インクの性状に悪影響を与えない限り、上記有機溶剤、色材、顔料分散剤以外に、例えば、界面活性剤、定着剤、防腐剤等の他の成分を添加できる。
1−4.油性インクの製造方法
本発明の油性インクは、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。例えば、予め溶剤の一部と顔料の全量を均一に混合させた混合液を調製して分散機にて分散させた後、この分散液に残りの成分を添加してろ過機を通すことにより調製することができる。
2.塗工処理液
本発明で使用する塗工処理液は、無機粒子、塩化ビニル系樹脂エマルション、及び、水を主成分としてなり、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
2−1.無機粒子
無機粒子としては、体質顔料として使用されている無機粒子が使用でき、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナホワイト、水酸化アルミニウム、白土、タルク、クレー、ケイソウ土、カオリン、マイカなどの無機粒子が挙げられ、その他、コロイダルシリカなどを使用することもできる。これらの無機粒子の平均粒子径は、15μm以下であることが必要であり、13μm以下であることが好ましい。平均粒子径が15μmより大きい場合、印刷媒体に対する目止め作用が十分でなく、印刷濃度の向上効果が十分に得られない。また、無機粒子は、比重が0.1〜5.7であることが好ましい。
無機粒子は、塗工処理液全量に対して0.01〜40質量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは、5〜30質量%の範囲である。
2−2.無機粒子の分散剤
無機粒子を塗工処理液中に分散させるために、分散剤を用いることができる。無機粒子の分散剤は、特に限定されない。使用できる分散剤としては、例えば、花王社製「デモールP、EP、ポイズ520、521、530、ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)」(いずれも商品名)、第一工業製薬社製「シャロールDC-303P、DC-902P(第4級アンモニウム塩型高分子界面活性剤)」(いずれも商品名)、等が挙げられる。
2−3.塩化ビニル系樹脂エマルション
塩化ビニル系樹脂エマルションを塗工処理液に含有させることで、他の樹脂を含む塗工処理液の場合よりもさらに塗工処理液を紙に塗工した直後の乾燥時間や成膜時間を短縮でき、これにより印刷後のインク滲みおよびローラー転写汚れを抑制することができる。塩化ビニル系樹脂をエマルション形態とするのは、これによりさらに優れたローラー転写汚れの抑制効果が得られるためである。
塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体のほか、塩化ビニルを50質量%以上含有し、塩化ビニルと共重合し得る他の単量体との共重合体などが挙げられる。この塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、オクチルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、エチレン、プロピレンなどのα‐モノオレフィン類、酢酸ビニルなどが挙げられる。
塩化ビニル系樹脂エマルション中の塩化ビニル系樹脂の粒子径には特に制限がなく、常識的な範囲であれば、印刷後のインク滲みおよびローラー転写汚れの抑制について同様の効果が得られる。また、塩化ビニル系樹脂エマルションのガラス転移温度Tg及び成膜温度MFT(℃)についても特に制限はなく、広範なTg及びMFTを示す塩化ビニル系樹脂エマルションで印刷後のインク滲みおよびローラー転写汚れの抑制について同様の効果が得られる。
使用可能な塩化ビニル系樹脂エマルションとしては、日信化学工業株式会社製、「ビニブラン271、278、603、EML、700、701、711、721」(いずれも商品名)などが挙げられる。
塩化ビニル系樹脂エマルションは、無機粒子量に対して固形分として2〜80質量%の範囲で含有されることが好ましく、さらには2〜40質量%の範囲で含有されることがより好ましい。
塩化ビニル系樹脂エマルションに水溶性樹脂を併用することもできる。このような水溶性樹脂としては、ローラー転写汚れの抑制と、印刷画像濃度向上の観点から、重合度が500以下でけん化度が60mol%以上のポリビニルアルコールなどが挙げられる。ポリビニルアルコールは、重合度及びけん化度が上記範囲内のものであれば特に制限されず、各種メーカーのものを使用することができる。好ましいポリビニルアルコールは、水中に添加して撹拌しながら100℃で30分間溶解させたときに、その粒状感が消え、均一に溶解し、液全体が透明になるものである。重合度が500を超えると、印刷時、印刷装置内部のローラーや連続して印刷される印刷用紙のインク汚れの発生が十分に抑制されない。けん化度が60mol%未満の場合も、印刷時、印刷装置内部のローラーや連続して印刷される印刷用紙のインク汚れの発生が十分に抑制されない。好ましい重合度は180〜500であり、より好ましい重合度は250〜500である。好ましいけん化度は65mol%以上である。
塩化ビニル系樹脂エマルションに水溶性樹脂を併用する場合、水溶性樹脂は、無機粒子量に対して10〜35質量%の範囲で含有されることが好ましい。水溶性樹脂および塩化ビニル系樹脂エマルションは多すぎると、印刷ドットサイズが大きくなり、滲みが生じるため、濃度が低く、画像性が低下する。一方、水溶性樹脂および塩化ビニル系樹脂エマルションの量が少なすぎると、紙の塗膜強度が低下するため、塗工層が剥がれやすくなる。そのため、無機粒子量に対する水溶性樹脂および塩化ビニル系樹脂エマルションの総量は10質量%〜120質量%であることが好ましく、さらには、30〜60質量%の範囲で含有されることがより好ましい。また、水溶性樹脂および塩化ビニル系樹脂エマルションの総量に対する塩化ビニル系樹脂エマルションの量は、固形分として5質量%〜80質量%であることが好ましく、さらには、10〜40質量%の範囲で含有されることがより好ましい。
2−4.水
本発明で使用する塗工処理液の水は、塗工処理液における無機粒子やポリビニルアルコールの分散性に影響を与えない限り、特に制限されず、水道水、イオン交換水等であってよい。
2−5.その他の成分
本発明で使用する塗工処理液には、その性状に悪影響を与えない限り、上記各成分以外に、例えば、界面活性剤、定着剤、防腐剤等の他の成分を添加できる。
2−6.塗工処理液の製造方法
本発明で使用する塗工処理液は、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。水にポリビニルアルコールを溶解した後、これに分散剤を溶解させ、最後に無機粒子を添加して全体を均一になるまで攪拌する方法が適している。
3.印刷方法
本発明において、印刷方法は、油性インクを用いた印刷方法であれば特に限定されないが、インクジェット印刷が好適である。
本発明によれば、インクジェット印刷方法は、塗工処理液を印刷媒体へ塗布した後、油性インクを該印刷媒体上へ吐出させることにより行われる。塗工処理液の印刷媒体への塗布は、刷毛、ローラー、バーコーター、エアナイフコーター等を使用して印刷媒体の表面を均一にコーティングすることによって行ってもよく、または、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの印刷手段によって画像を印刷することで行ってもよい。例えば、インクジェットプリンタを使用し、印刷媒体上へ塗工処理液を吐出した後これに重ねて油性インクを連続的に吐出させることにより印刷を行ってもよい。なお、本発明では、塗工処理液を印刷媒体に塗布した後、塗布された処理液が乾燥する前に油性インクを吐出させてもよく、又は、塗布された処理液が乾燥した後に油性インクを吐出させてもよい。
塗工処理液の塗工量としては、2.0〜6.0g/mとするのが好ましい。塗工処理液の印刷用紙への塗工量を増すと、これに比例して塗工層中の無機粒子量(g/m)が増加することになるが、この無機粒子量が多すぎる場合、印刷ドットの滲みが小さくなりすぎ、解像度300×300dpi程度の印刷の際に、ベタを形成するのに十分なドットサイズにならない。そのため、裏抜けは抑制されるが高濃度の印刷物が得られない。
本発明の印刷方法とりわけインクジェット印刷方法を容易に実施できるように、上記塗工処理液と油性インクを少なくとも含むインクセットを構成して販売すると好都合である。
本発明において、印刷媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシートなどが使用できる。とりわけ、本発明によれば、普通紙に印刷する場合でも、色材が印刷用紙に浸透せずに印刷用紙の表面に留まるので、印字濃度が向上し、裏抜けや滲みが低減し、また、印刷中に印刷装置内部のローラーや連続して印刷される印刷用紙のインク汚れの発生も防止できるという大きなメリットが得られる。
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
製造例1(塗工処理液の作製)
表1に示す各成分を表1に示す割合でプレミックスし、その後、超音波分散機にて1分間分散し、得られた分散液を塗工処理液とした。
Figure 2013158938
尚、表1記載の原材料の詳細は下記のとおりである。
・ミズカシルP-73: 水澤化学工業株式会社製シリカ粒子「ミズカシルP−73(商品名)」
・ミズカシルP-758C: 水澤化学工業株式会社製シリカ粒子「ミズカシルP−758C(商品名)」
・デモールEP: 花王株式会社製「デモールEP」(特殊ポリカルボン酸型高分子界面活性剤)
・JMR−10M: 日本酢ビ・ポバール株式会社製、ポリビニルアルコール「JMR−10M(商品名)」(重合度250、ケン化度65mol%)
・モビニール966A: 日本合成化学株式会社製、スチレン/アクリル系エマルション樹脂
・モビニール7320: 日本合成化学株式会社製、アクリル樹脂エマルション
・モビニール384: 日本合成化学株式会社製、酢酸ビニル樹脂エマルション
・モビニール735: 日本合成化学株式会社製、アクリル樹脂エマルション
・バイロナールMD-1100: 東洋紡績株式会社製、水分散ポリエステル樹脂
・バイロナールMD-1480: 東洋紡績株式会社製、水分散ポリエステル樹脂
・ビニブラン278: 日信化学工業株式会社製、塩化ビニル系樹脂エマルション
・ビニブラン603: 日信化学工業株式会社製、塩化ビニル系樹脂エマルション
・ビニブランEML: 日信化学工業株式会社製、塩化ビニル系樹脂エマルション
・ビニブラン271: 日信化学工業株式会社製、塩化ビニル系樹脂エマルション
・スーパーフレックス150: 第一工業製薬株式会社製、ウレタン樹脂エマルション
・スーパーフレックス170: 第一工業製薬株式会社製、ウレタン樹脂エマルション
・スーパーフレックス300: 第一工業製薬株式会社製、ウレタン樹脂エマルション
・ポリ塩化ビニル: 和光純薬工業製、ポリ塩化ビニル樹脂
・スラウト33: 日本エンバイロケミカル株式会社製、防腐剤
・サーフィノールDF−58: 日信化学工業株式会社製、シリコーン変性消泡剤
以上のうち、防腐剤及び消泡剤を除く各原材料の性状を表2に示す。
Figure 2013158938
製造例2(油性インクの作製)
表2に示す各成分を表2に示す割合でプレミックスし、その後、直径(φ)0.5mmのジルコニアビーズを投入したロッキングミル(株式会社セイワ技研社製)にて60分間分散し、得られた分散液をメンブレンフィルター(開口径3μm)でろ過し、黒色の油性インク1を得た。
Figure 2013158938
MA−11:三菱化学社製「MA−11(商品名)」(カーボンブラック)。
ソルスパース28000:ルーブリゾール社製「ソルスパース28000(商品名)」(顔料分散剤)。
エキセパールM−OL:花王株式会社製「エキセパールM−OL(商品名)」(オレイン酸メチル)。
エキセパールIPM:花王株式会社製「エキセパールIPM(商品名)」(ミリスチン酸イソプロピル)。
ノルマルパラフィンH:新日本石油製「ノルマルパラフィンH(商品名)」(炭化水素溶剤)。
実施例1〜7、比較例1〜11
表3に記載の油性インクを、理想科学工業株式会社製インクジェットプリンタ「ORPHIS HC5500(商品名)」の吐出経路に導入し、印刷用紙として理想科学工業株式会社製普通紙「理想用紙薄口(商品名)」を用い、該印刷用紙の片面全面に表1に記載の塗工処理液を、乾燥後の塗工層中のシリカ粒子量として2.69g/mになるように、自動バーコーターを用いて塗布した。塗工から30秒後又は60秒後に、該印刷用紙の処理表面上に前記油性インクを吐出させ、ベタ画像を印刷した。印刷は、解像度300×300dpiで行った。得られた印刷物を下記方法で測定、評価した。結果を表3及び表4に示す。なお、ベタ印刷の際の1ドット当たりのインク量は、評価項目ごとに変更したので、それぞれの評価項目の説明において後述する。
印刷物の印刷濃度
ベタ画像の印刷は、インク量を36pL/dotにて行った。得られた印刷物を23℃、50%R.H.にて一晩放置した後、光学濃度計(RD920:マクベス社製)を用いてベタ画像(インク量30pL/ドット)の表面の印刷画像濃度(OD値)を測定し、下記基準で評価した。
印刷タイミングを前記塗工処理液塗工から30秒後とした場合の評価基準:
○:OD値が1.25以上
△:OD値が1.20以上1.25未満、
×:OD値が1.20未満。
印刷タイミングを前記塗工処理液塗工から60秒後とした場合の評価基準:
○:OD値が1.30以上
△:OD値が1.25以上1.30未満、
×:OD値が1.25未満。
ロール転写汚れ
ベタ画像の印刷は、インク量を42pL/dotにて行った。得られた印刷物を、印刷後直ちにNBRローラーを通過させ、当該通過方向に沿った印刷物表面のインク再転写汚れの度合いを目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
印刷タイミングを塗工処理液塗工から30秒後、60秒後にした場合の評価基準:
○:汚れが認められない、
△:印刷画像よりも相対的に薄い汚れが認められる、
×:印刷画像がそのまま濃く再転写されている。
Figure 2013158938
表4の実施例の結果から、以下のことがわかる。
本発明の塗工処理液を用いた実施例1〜7では、印刷タイミングを塗工処理液塗工より30秒後とした場合、60秒後とした場合の双方で、十分な印刷濃度が得られると同時にロール転写汚れが抑制されていた。
Figure 2013158938
これに対し、表5の比較例の結果から、以下のことが分かる。塗工処理液を用いなかった比較例1では、印刷濃度が低かった。また、塩化ビニル系樹脂エマルションではなく、スチレン/アクリル系樹脂、アクリル樹脂などの他の種類の樹脂を含む塗工処理液を用いた比較例2〜10では、印刷タイミングを塗工処理液塗工より30秒後とした場合、60秒後とした場合の少なくとも一方で印刷濃度が十分でなく、ロール転写汚れが生じていた。さらに、エマルション形態でない塩化ビニル樹脂を含む塗工処理液を用いた比較例11では、印刷濃度が低く、ロール転写汚れも生じた。
本発明のインクジェット印刷方法及びインクセットは、印刷媒体を塗工処理液で表面処理した後、油性インクをノズルヘッドから吐出して印刷媒体の処理表面に印字できるインクジェットプリンタで簡単に実施することができ、インクジェット印刷の分野で広く利用できる。

Claims (5)

  1. 塗工処理液を印刷媒体上へ塗布した後、色材および溶剤を少なくとも含んでなる油性インクにより該印刷媒体上に印刷を行う印刷方法において、前記塗工処理液は、無機粒子、塩化ビニル系樹脂エマルション、及び、水を少なくとも含んでなる油性インク印刷方法。
  2. 前記無機粒子は、シリカである請求項1に記載の印刷方法。
  3. 前記塗工処理液の塗工量は、無機粒子量換算にて2.0〜6.0g/mである請求項1又は2に記載の印刷方法。
  4. 塗工処理液を印刷媒体上へ塗布した後、油性インクにより該印刷媒体上に印刷を行うために使用するインクセットであって、色材および溶剤を少なくとも含んでなる油性インクと、無機粒子、塩化ビニル系樹脂エマルション、及び、水を少なくとも含んでなる塗工処理液とからなるインクセット。
  5. 無機粒子、塩化ビニル系樹脂エマルション、及び、水を少なくとも含んでなる油性インク印刷用塗工処理液。
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