JP6372674B2 - 前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット - Google Patents

前処理液、及び前記前処理液を含むインキセット Download PDF

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Description

本発明は、前処理液、及び前記前処理液を含むインキセットに関する。
デジタル印刷は、オフセット印刷などの従来の有版印刷とは違い、製版フィルムや製版を必要としないため、コスト削減や高速化が実現可能であり、将来的にも広く普及されることが期待されている。
デジタル印刷の一種であるインクジェット記録方式では、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させることで文字や画像を得る。インクジェット記録方式には、使用する装置の騒音が小さい、操作性がよい、カラー化が容易であるなどの利点があるため、オフィスや家庭において、出力機として広く用いられている。また産業用途においても、インクジェット技術の向上により、デジタル印刷出力機として利用され始めている。
従来、産業用途におけるインクジェット記録方式で用いられるインキは、溶剤インキやUVインキであった。しかし近年、環境面への対応といった点から、水性インキの需要が高まっている。
従来のインクジェット記録方式用(以下、単に「インクジェット用」ともいう)の水性インキは、普通紙や専用紙(例えば、写真光沢紙)を対象としたものであった。すなわち、水を主成分とするとともに、基材に対する濡れ性や乾燥性を制御するため、グリセリンやグリコールなどの水溶性有機溶剤が添加される。これらの液体成分からなるインクジェット用水性インキ(以下、「水性インクジェットインキ」、あるいは単に「インキ」ともいう)を用いて、文字や画像のパターンを上記基材上に印刷すると、液体成分が前記基材中に浸透して乾燥し、定着する。
一方、インクジェット記録方式で使用される基材には、上記した普通紙や専用紙、または上質紙や再生紙のような浸透性の高いものだけでなく、コート紙やアート紙、微塗工紙のような低浸透性のものや、フィルム基材のような非浸透性のものまで種々存在する。これまで、普通紙や専用紙などの浸透性の高い基材、あるいはコート紙やアート紙などの低浸透性の基材に対しては、上記のように水性インクジェットインキを用いて実用可能な印刷画質が実現できている。それに対し、フィルム基材のような非浸透性の基材に対しては、着弾した後のインキ液滴が、基材中に全く浸透しないため、前記浸透による乾燥が起きず、液滴同士で滲みが発生し、印刷画質が損なわれていた。また非浸透性の基材では、インキが全く浸透しないために十分な密着性を得ることが難しく、印刷後の後加工などの際、インキ膜が剥がれてしまい、実用が困難であった。
上記課題に対する方策として、非浸透性の基材に対する前処理液処理が知られている。一般に、水性インクジェットインキ用の前処理液として、前記水性インクジェットインキ中の液体成分を吸収し乾燥性を向上させる層(インキ受容層)を形成するもの(特許文献1〜2参照)と、色材や樹脂など水性インクジェットインキ中に含まれる固体成分を意図的に凝集させることで液滴間のにじみや色ムラを防止し画質を向上させる層(インキ凝集層)を形成するもの(特許文献3〜4参照)の2種類が知られている。
しかしながらインキ受容層の場合、例えば一度に大量のインキを受容する際には、インキ受容層の膨潤に起因する画像のワレ、受容可能量超過によるにじみや色ムラ、受容層へのインキ成分の吸収による濃度低下が発生する可能性がある。また受容層を形成する場合、後述するインキ凝集層の場合よりも、前処理液の塗工膜厚を厚くする必要がある。塗工量が多くなると、前処理液自身の乾燥性が低下し、乾燥性不良などの不具合が生じることが懸念される。上記の通り、フィルム基材のような非浸透性の基材に使用する場合、前処理液も全く浸透しないことから、上記不具合が起こりやすいと考えられる。
一方、インキ凝集層を使用した前処理液の例として、特許文献3には、多価金属塩、(カチオン化)ヒドロキシエチルセルロースを含有し、表面張力を規定した前処理液が記載されている。前記前処理液を使用することで、画像濃度が高く、ブリードがなく、耐擦性に優れた高品位の画像が得られるとされている。しかしながら、上記文献において、前処理液が実際に使用されているのは、低浸透性の基材であるコート紙のみであり、フィルムのような非浸透性の基材に対しては用いられていない。本発明者らがポリオレフィンフィルムやナイロンフィルムに対して評価したが、前記フィルムに対する密着性が不十分であった。
また特許文献4には、色材凝集剤と、ポリオレフィン粒子とを含有する前処理液が開示されており、前記前処理液を使用することで、浸透性の高い基材に対して高画質を実現できることが記載されている。しかしながら上記の通り、上記文献記載の前処理液は、浸透性の高い基材に対するものであり、本発明者らがポリオレフィンフィルムやナイロンフィルムに対して評価したところ、前記フィルムに対する密着性不良や、混色滲みや色ムラといった画像欠陥が確認された。
一般に、前処理液にポリオレフィン樹脂を一定量添加することで、ポリオレフィンフィルムに対する密着性が向上することが知られている。また、前処理液に凝集剤を添加することで、前記前処理液がインキ凝集層を形成し、画像品質を向上できることが知られている。しかしながら上記の例では、ポリオレフィン樹脂を含む前処理液を用いたにも関わらず、ポリオレフィンフィルムに対する密着性に劣っていた。この結果は、ポリオレフィン樹脂と凝集剤とを単純に混合しただけでは、密着性や画像品質に劣る前処理液となってしまうことを示唆するものである。
以上のように、フィルム基材などの非浸透性基材に対する密着性に優れ、混色滲みや色ムラの少ない優れた印刷画質を得ることができる、水性顔料インクジェットインキ用の前処理液は、これまで存在しない状況であった。
特開2000−238422号公報 特開2000−335084号公報 特開2005−074655号公報 特開2016−168782号公報
本発明の目的は、フィルム基材などの非浸透性基材に対する密着性に優れ、混色滲みや色ムラが少なく印刷画質が良好な印刷物を得ることができる、水性顔料インクジェット印刷用の前処理液、及び前記前処理液と水性インクジェットインキとからなるインキセットを提供することにある。
すなわち本発明は、水性顔料インクジェットインキ印刷用のフィルム基材用前処理液であって、
前記前処理液が、ポリオレフィン樹脂粒子(A)(塩素化ポリオレフィン樹脂粒子を含む場合を除く)と、凝集剤(B)と、水と、プロトン性有機溶を含み、
前記ポリオレフィン樹脂粒子(A)が、軟化温度が50〜90℃であり、
前記凝集剤(B)が、25℃における溶解度が5〜55g/100gH2Oである金属塩を含有する、フィルム基材用前処理液に関する。
また本発明は、前記ポリオレフィン樹脂粒子(A)の50%粒子径(D50)が、10〜500nmである、上記前処理液に関する。
また本発明は、前記プロトン性有機溶媒と水との沸点の加重平均値が、90〜130℃である、上記前処理液に関する。

また本発明は、表面張力が、20〜40mN/mである、上記前処理液に関する。
また本発明は、上記前処理液と、顔料、顔料分散樹脂、水溶性有機溶剤、及び、水を含む水性顔料インクジェットインキとからなるインキセットであって、
前記顔料分散樹脂の酸価が、30〜375mgKOH/gであることを特徴とするインキセットに関する。
本発明により、フィルム基材などの非浸透性基材に対する密着性に優れ、混色滲みや色ムラが少なく印刷画質が良好な印刷物を得ることができる、水性顔料インクジェット印刷用の前処理液、及び前記前処理液と水性インクジェットインキとからなるインキセットを提供することが可能となった。
以下に、好ましい形態を上げて、本発明の実施形態(以下、単に「本実施形態」ともいう)である前処理液、及びインキセットについて説明する。
本実施形態の前処理液は、ポリオレフィン樹脂粒子(A)と、凝集剤(B)と、水とを含み、前記ポリオレフィン樹脂粒子(A)が、軟化温度が50〜100℃であり、前記凝集剤(B)が、金属塩またはカチオン性高分子化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含有する。それによって、フィルム基材などの非浸透性基材に対する密着性に優れ、混色滲みや色ムラが少なく印刷画質が良好な印刷物を得ることができる。以下に、本実施形態の前処理液の主要な構成について述べる。
本実施形態の前処理液は、水性インクジェットインキを印刷する前に、基材上に付与されるものであり、前記基材上にインキ凝集層を形成する。前処理液に含まれる金属塩や、一部のカチオン性高分子化合物は、水やプロトン性溶媒の存在下で解離しており、インキ凝集層中には、これら解離したカチオンや、カチオン性高分子化合物中のカチオン基が、高濃度で存在することとなる。このカチオンやカチオン基が、水性インクジェットインキ中に分散された状態で存在する、アニオン電荷を帯びた顔料に対し、アニオン−カチオン間相互作用や吸着平衡移動を引き起こすことで、前記顔料が凝集・析出し、混色を抑制することができる。また、本実施形態の前処理液が乾燥する前に水性インクジェットインキを印刷することもできる。その場合は水性インクジェットインキと前処理液との混合により、顔料の分散平衡が変化することにより、前記顔料を凝集・析出させることができる。
しかしながら上記の凝集剤自体には、フィルム基材に対する密着性がなく、例えば印刷物を指で擦ると容易に剥がれ落ちてしまうなど、十分な密着強度・塗膜耐性を得ることができない。
従来技術でも説明したように、一般に、所望の密着強度や塗膜耐性を発現させるためには、バインダー樹脂が用いられる。また、例えばポリオレフィンフィルムに対する密着性を付与するためには、構造類似性の点から、バインダー樹脂としてポリオレフィン樹脂を用いることが好適とされる。しかしながら本発明者らは、ただ単に両者を混合しただけでは、密着強度のみならず、凝集剤の働きも不十分なものとなってしまうことを見出した。その理由として、フィルム基材の不浸透性の影響が考えられる。すなわち、紙基材の場合は、ある程度、水や水溶性有機溶剤が基材に浸透し、そのことが密着性や乾燥性の向上に寄与すると考えられる。しかしながらフィルム基材を用いた場合、浸透による密着性や乾燥性への寄与が全くない。また前処理液の乾燥がゆっくりと進む過程で、不溶化した凝集剤が、フィルム基材と前処理液との界面に配向してしまい、結果として、密着性の阻害や、顔料の凝集・析出のために機能する凝集剤量の減少につながっていると考えられる。
そこで、本発明者らがフィルム基材上で優れた密着性と印刷画質を両立させるため鋭意検討した結果、上記構成の前処理液とすることで、フィルム基材などの非浸透性基材に対して密着性に優れ、混色滲みや色ムラが少なく印刷画質が良好な印刷物を得ることができることを見出した。
上記構成によって、両特性が両立できる理由は定かではないが、以下のことが考えられる。金属塩やカチオン性高分子化合物は、凝集剤としての機能が強く、少量であっても顔料の凝集・析出に有効である。その一方で前記凝集剤は、水やプロトン性有機溶媒に対する溶解性、及び前記溶媒中での拡散性に優れることから、フィルム基材上で前処理液が乾燥する過程において、前記フィルム基材上に析出しにくいことが考えられる。また本実施形態の前処理液で用いられるポリオレフィン樹脂粒子(A)は、好適な軟化温度を有しており、非常に優れた成膜性を有していると考えられる。そのため、フィルム基材上で前処理液が乾燥する際、凝集剤が不溶化しフィルム基材上に配向する前に、フィルム基材との界面で成膜し、十分な密着性が発現できると考えられる。そしてフィルム基材上でバインダー樹脂が成膜した後、拡散性に優れる凝集剤が、インキ凝集層内で均一化することで、水性インクジェットインキに対して十分な凝集効果を発揮し、優れた印刷画質が得られると考えられる。
以上のように、フィルム基材上で十分な密着性と印刷画質とを両立させるためには、本実施形態の前処理液の構成が必須不可欠である。
続いて以下に、本実施形態の前処理液、及びインキセットを構成する各成分について、詳細に説明する。
<ポリオレフィン樹脂粒子(A)>
本実施形態の前処理液は、ポリオレフィン樹脂粒子(A)を含むことを特徴とする。上記の通り、本実施形態の前処理液で使用されるポリオレフィン樹脂粒子(A)は、好適な軟化温度を有しており、非常に優れた成膜性を有している。
一般に樹脂は、水やプロトン性有機溶媒などの水性媒体中で、溶解した状態(水溶性樹脂)、または、樹脂粒子として分散された状態で存在する。このうち樹脂粒子は、水溶性樹脂に比べて、分子量の大きなものを用いることができる、配合量を増やすことができる、一旦成膜した樹脂層は再溶解しない、といった特徴がある。本実施形態の前処理液において、ポリオレフィン樹脂は非浸透性基材に対する密着性付与に大きく寄与する材料であり、上記の通り、優れた成膜性が必要となる。また分子量が大きいと、後述の変性処理、酸化、ハロゲン化処理などの処理が実施しやすいこともあり、本実施形態の前処理液では、上記のうち樹脂粒子が選択される。
本実施形態の前処理液において、ポリオレフィン樹脂粒子(A)として用いることができる樹脂を例示すると、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂、及び、エチレン、プロピレン、ブチレンのうち2種以上を共重合させたポリオレフィン樹脂が挙げられる。
またポリオレフィン樹脂粒子(A)は、無処理ポリオレフィン樹脂に加え、ポリオレフィン鎖に対してアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アクリロイル基や、その他の高分子鎖を導入した変性ポリオレフィン樹脂;ポリオレフィン鎖の一部を酸化処理した酸化ポリオレフィン樹脂;一部をハロゲンで処理したハロゲン化ポリオレフィン樹脂などであってもよい。
なお上記に示した樹脂は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上のポリオレフィン樹脂粒子(A)を併用してもよい。
ポリオレフィン樹脂粒子(A)は、凝集剤の存在下においてもフィルム基材上で十分な密着性と優れた印刷画質を確保するという観点から、軟化温度が50〜100℃のものを用いることが好ましく、60〜90℃のものを用いることがより好ましく、65〜85℃のものを用いることが特に好ましい。軟化温度が50℃以上であれば、塗膜耐性が十分強いものとなり、軟化温度が100℃以下であれば、成膜させるために必要なエネルギーが少なく、フィルム基材の収縮・変形が起きることがないため、実用品質上好ましい印刷物を得ることができる。なお上記軟化温度は、融点測定器を用いた目視評価により測定することができる。例えば、アズワン社製融点測定器「ATM−01」を用い、あらかじめ成膜させたポリオレフィン樹脂粒子(A)のサンプル約0.1gを熱板上に乗せ、室温から温度を少しずつ上昇させたとき、前記サンプルが溶解した温度を軟化温度とする。
また、ポリオレフィン樹脂粒子(A)の50%粒子径(D50)は、10〜500nmであることが好ましく、30〜400nmであることがより好ましく、50〜300nmであることが特に好ましい。上記の範囲の粒径に収めることにより、樹脂粒子の融着を促進させ、特に優れた成膜性を有するポリオレフィン樹脂粒子(A)となるため、フィルム基材上で特に優れた密着性が得られることから好ましい。なお、上記樹脂粒子の50%粒子径は、例えば粒度分布測定機(日機装社製「マイクロトラックUPA EX−150」)によって測定することができる。
さらに本実施形態の前処理液では、ポリオレフィン樹脂粒子(A)の最低造膜温度(以下MFTとする)も考慮することが好ましい。MFTとは、樹脂微粒子同士が融着し造膜するのに最低必要な温度のことであり、樹脂粒子を使用した前処理液を基材上で乾燥させる際、前記基材をMFT以上の温度に加熱しないと、粒子同士の融着が起こらずに造膜不良を起こしてしまう。一方、前処理液が後述の有機溶剤を含む場合、前記有機溶剤がMFTを下げる助剤として機能することがあり、MFTが常温以下に下がってしまうと、前処理液の印刷安定性が低下してしまう可能性がある。上記観点より、ポリオレフィン樹脂粒子(A)樹脂微粒子のMFTとして、30〜120℃であることが好ましく、40〜110℃であることがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂粒子(A)が酸基を有する場合、その酸価は、1〜200mgKOH/gであることが好ましく、5〜150mgKOH/gであることがより好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子(A)の酸価を上記範囲内に収めることで、本実施形態の前処理液の保存安定性を一層向上させることが可能となる。なお酸価は公知の装置、例えば京都電子工業株式会社製「電位差自動滴定装置AT−610」を用いて、電位差滴定法により測定することができる。
本実施形態の前処理液における、上記ポリオレフィン樹脂粒子(A)の配合量は、前処理液全量に対し固形分換算で0.1〜25重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましく、5〜15重量%であることが特に好ましい。ポリオレフィン樹脂粒子(A)の配合量を上記範囲内に収めることで、フィルム基材上で優れた密着性を発現させることが可能となる。
本実施形態の前処理液に使用されるポリオレフィン樹脂粒子(A)は、公知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。合成方法については、例えば特開平06−256529号公報記載の方法を用いることができる。また市販品について以下に例示すると、住友精化社製ザイクセンAC、A、AC−HW−10、L、NC、N;東洋紡社製ハードレンEH−801、EW−5303、EW−8511、NZ−1004、NZ−1015;日本製紙ケミカル社製アウローレンAE−301、AE−502、スーパークロンE−415、E−480T;ビックケミー社製HORDAMER PE02、PE03、PE34、PE35;ユニチカ社製アローベースSA−1200、SB−1200、SE−1200、SB−1010などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<凝集剤(B)>
本実施形態の前処理液は、凝集剤(B)として、金属塩またはカチオン性高分子化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含む。上記の通り、金属塩やカチオン性高分子化合物は、凝集剤としての機能が強いこと、及び、水やプロトン性有機溶媒に対する溶解性、及び前記溶媒中での拡散性に優れることから、本発明の課題解決には必須の材料である。なお、本実施形態の前処理液では、金属塩またはカチオン性高分子化合物のどちらかを選択して用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。以下、それぞれの凝集剤について詳細に説明する。
<カチオン性高分子化合物>
凝集剤(B)としてカチオン性高分子化合物を選択する場合、インキ中の顔料の分散機能を低下し、かつ、好適な溶解性、拡散性を有するものであれば、任意に用いることができる。また、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記の好適な溶解性に係る指標として、25℃の水100mLに対する溶解度が利用できる。すなわち、25℃の水100mLに対する溶解度が、5g/100mLH2O以上であるカチオン性高分子化合物が、本実施形態の前処理液に好ましく用いられる。
以下、カチオン性高分子化合物の溶解度の評価・判断方法を詳説する。試料は、カチオン性高分子化合物5gと、水100mLとをよく混合することで作製する。なお市販品など、カチオン性高分子化合物が水溶液の状態でしか入手できない場合は、水100mLに対し固形分が5gとなるよう、水を添加または揮発除去し、試料とする。その後、25℃下に24時間静置した試料について、50%粒子径が測定されなければ、前記カチオン性高分子化合物の、25℃の水100mLに対する溶解度が5g/100mLH2O以上であると判断する。なお50%粒子径の測定は、上記ポリオレフィン樹脂粒子(A)の場合と同様に行う。
カチオン性高分子化合物に含まれるカチオン基の例として、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、−NHCONH2基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。またカチオン性高分子化合物中に上記カチオン基を導入するために使用される材料として、例えばビニルアミン、アリルアミン、メチルジアリルアミン、エチレンイミンなどのアミン化合物;アクリルアミド、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミドなどのアミド化合物;ジシアンジアミドなどのシアナミド化合物;エピフルオロヒドリン、エピクロロヒドリン、メチルエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリンなどのエピハロヒドリン化合物;ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾールなどの環状ビニル化合物;アミジン化合物;ピリジニウム塩化合物;イミダゾリウム塩化合物などを挙げることができる。
本実施形態の前処理液において、凝集剤(B)としてカチオン性高分子化合物を用いる場合、前記カチオン性高分子化合物が、ジアリルアミン構造単位、ジアリルアンモニウム構造単位、エピハロヒドリン構造単位から選択される1種類以上の構造単位を含む化合物を用いることが好ましく、少なくともジアリルアンモニウム構造単位を含んでいることがより好ましい。上記の樹脂はいずれも強電解質であり、前処理液中における前記樹脂の溶解安定性が良好であるとともに、インキ中の顔料の分散低下能力に優れている。
中でもジアリルアンモニウム構造単位を含む樹脂は、特に優れた凝集性を発揮し、フィルム基材上で、混色滲みや色ムラが少なく、かつ発色性に優れた印刷物を得ることが可能であるため好ましい。なお入手容易性などの点から、ジアリルアンモニウム構造単位として、ジアリルジメチルアンモニウムまたはジアリルメチルエチルアンモニウムの、塩酸塩または硫酸エチル塩が好適に選択される。
一方、理由は定かではないものの、エピハロヒドリン構造単位を含む樹脂を使用した印刷物は耐水性に優れており、この点からも好適に選択される。なおエピハロヒドリン構造単位を含む樹脂として、エピハロヒドリン変性ポリアミン樹脂、エピハロヒドリン変性ポリアミド樹脂、エピハロヒドリン変性ポリアミドポリアミン樹脂、エピハロヒドリン−アミン共重合体などを挙げることができる。また入手容易性などの点から、エピハロヒドリンとして、エピクロロヒドリンまたはメチルエピクロロヒドリンが好適に選択される。
上記カチオン性高分子化合物は、公知の合成方法により合成品したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。なお、ジアリルアミン構造単位を含む市販品の具体例として、PAS−21CL、PAS−21、PAS−M−1L、PAS−M−1、PAS−M−1A、PAS−92、PAS−92A(ニットーボーメディカル社製);ユニセンスKCA100L、KCA101L(センカ社製)を挙げることができる。またジアリルアンモニウム構造単位を含む樹脂の市販品として、PAS−H−1L、PAS−H−5L、PAS−H−10L、PAS−24、PAS−J−81L、PAS−J−81、PAS−J−41(ニットーボーメディカル社製);ユニセンスFPA100L、FPA101L、FPA102L、FPA1000L、FPA1001L、FPA1002L、FCA1000L、FCA1001L、FCA5000L(センカ社製)を挙げることができる。さらに、ジアリルアミン構造単位、及びジアリルアンモニウム構造単位を共に含む樹脂の市販品として、PAS−880(ニットーボーメディカル社製)を挙げることができる。
また、エピハロヒドリン構造単位を含む市販品の具体例としては、FL−14(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、DK−6810、6853、6885;WS−4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、パピオゲンP−105(センカ社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX−1(田岡化学工業社製)、カチオマスターPD−1、7、30、A、PDT−2、PE−10、PE−30、DT−EH、EPA−SK01、TMHMDA−E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)がある。
本実施形態の前処理液において、凝集剤(B)としてカチオン性高分子化合物を用いる場合、その配合量は、前処理液全量に対し固形分換算で1〜30重量%であることが好ましく、3〜20重量%であることがより好ましく、5〜15重量%であることが特に好ましい。カチオン性高分子化合物の配合量を上記範囲内に収めることで、前処理液の粘度を好適な範囲内に収めることができ、また長期保存した際の保存安定性に優れる前処理液を得ることができる。
<金属塩>
凝集剤(B)として金属塩を選択する場合も、カチオン性高分子化合物の場合と同様に、インキ中の顔料の分散機能を低下し、かつ、好適な溶解性、拡散性を有するものであれば、任意の材料を用いることができる。また、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の前処理液において、好適に用いられる金属塩の溶解度は、25℃の水100mLに対して5〜55g/100mLH2Oであることが好ましく、10〜45g/100mLH2Oであることがより好ましく、15〜40g/100mLH2Oであることが特に好ましい。溶解度が上記範囲内に収まっていると、ポリオレフィン樹脂粒子(A)が成膜する前に不溶化することがないため、密着性と印刷画質を両立できる前処理液を得ることができる。また、金属塩が空気中の水分を吸湿することがないため、フィルム基材上で密着性の低下や乾燥不良を引き起こすことがなく、更に吸湿した水分によって、インキ液滴のドットの混色滲みや色ムラを発生させることもない。
なお、金属塩の場合の溶解度の評価方法は、25℃の水100mLが入った容器に、金属塩を、撹拌しながら少しずつ添加する。容器底に金属塩が残留しない範囲で、溶液中に添加できた金属塩の最大量を、前記金属塩の溶解度とする。
本実施形態の前処理液において、金属塩は、金属イオンと当該金属イオンに結合する陰イオンから構成される金属塩であれば、その種類は特に限定されない。その中でも、顔料と瞬時に相互作用することで、混色滲みを抑制し、色ムラのない鮮明な画像を得ることができる点から、前記金属塩が多価金属塩を含有することが好ましい。また多価金属イオンとして、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Al3+、Fe2+、Fe3+から選択される少なくとも1種を含むことが、顔料だけでなく、樹脂などの固形成分とも相互作用を起こしやすい点から、より好ましい。更にその中でもCa2+、Mg2+、Zn2+、Al3+から選択される多価金属イオンは、イオン化傾向が大きくカチオンを発生しやすいため、凝集効果が大きいという利点を有し、特に好ましく用いられる。さらにCa2+イオンは、イオン半径が小さく、インキ凝集層内、及びインキ液滴中で移動しやすいことから、極めて好ましく選択される。
無機金属塩の具体例として、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また有機金属塩の具体例として、例えば、パントテン酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、酢酸、乳酸などの有機酸の、カルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、亜鉛塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの有機酸金属塩の中でも、水への溶解度、及び、前記インキ中の成分との相互作用の点から、乳酸及び/または酢酸のカルシウム塩がより好ましい。
本実施形態の前処理液における、上記金属塩の含有量は、前処理液全量に対し金属イオンとして0.5〜8重量%であることが好ましく、1〜6.5重量%であることがより好ましく、1.5〜5重量%であることが特に好ましい。金属イオンの含有量を上記範囲内に収めることで、混色滲みや色ムラを抑制しながらも、基材に対する前処理液の濡れ性を確保することができる。また、金属塩に起因する沸点上昇現象が過度に発生することなく、好適な乾燥性を発現できることからも、好適である。なお、前処理液全量に対する金属イオンの含有量は、下記式(1)によって求められる。
式(1):

(金属イオンの含有量)(重量%)=WC×MM÷MC
一般式(1)中、WCは、金属塩の、前処理液全量に対する含有量を表し、MMは、金属塩を構成する金属イオンのイオン量を表し、MCは、金属塩の分子量を表す。
<プロトン性有機溶媒>
本実施形態の前処理液は、上記の凝集剤を十分に溶解させ、ポリオレフィン樹脂粒子(A)の成膜前に不溶化することを防ぐとともに、フィルム基材上に前記前処理液を均一に塗工させるため、更にプロトン性有機溶媒を使用することが好ましい。本実施形態の前処理液に使用できるプロトン性有機溶媒は、プロトン性さえ有していればどのような水溶性有機溶剤でも好適に使用することができるが、好ましくは、アルコール系水溶性有機溶剤、含窒素系水溶性有機溶剤などが挙げられる。
上記でも説明したように、フィルム基材などの非浸透性基材に前処理液を付与した場合、前記基材自体に浸透性が全くないことから、紙基材などの浸透性を有する基材の場合と比べて、前記前処理液中の溶媒は残存しやすい。特に、前処理液に高沸点の水溶性有機溶剤を使用した場合、前記水溶性有機溶剤がいつまでも残存することで、印刷画質・密着性の低下や塗膜耐性の悪化につながる可能性がある。
以上より、本実施形態の前処理液にプロトン性有機溶媒を用いる場合、フィルム基材上での乾燥性、印刷画質や密着性、塗膜耐性の点から、好適な範囲の沸点とすることが好ましい。すなわち、前記前処理液の中に含まれるプロトン性有機溶媒と水との沸点の加重平均値が90〜140℃であることが好ましく、より好ましくは90〜130℃であり、さらに好ましくは90〜120℃であり、特に好ましくは90〜110℃である。なお、上記沸点の加重平均値は、下記式(2)によって求められる。
式(2):

(沸点の加重平均値)(℃)=Σ(BS×100÷WS)
一般式(2)中、BSは、各プロトン性有機溶媒および水の、1気圧下における沸点(℃)を表し、WSは、前記各プロトン性有機溶媒および水の、プロトン性有機溶媒および水全量に対する含有量を表す。
また、本実施形態の前処理液がプロトン性有機溶媒を2種類以上含む場合、各プロトン性有機溶媒の、1気圧下における沸点は70〜250℃であることが好ましく、70〜230℃であることがより好ましく、さらに好ましくは70〜200℃である。各プロトン性有機溶媒の沸点を上記範囲内に収めることで、フィルム基材上に付与した前処理液を乾燥する過程で、プロトン性有機溶媒が残存することなく速やかに乾燥することで、印刷画質や密着性に優れる印刷物が得られる。
本実施形態の前処理液に好適に用いることができるアルコール系水溶性有機溶剤として、具体的な化合物を例示すると、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メトキシー1−ブタノール、3−メトキシー3−メチル−1−ブタノールなどの1価アルコール類;
1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコールなどの2価アルコール(グリコール)類;
グリセリンなどの3価アルコール類;
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールモノアルキルエーテル類;を挙げることができる。また含窒素系水溶性有機溶剤の具体例としては、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノンを挙げることができる。
本実施形態の前処理液がプロトン性有機溶媒を含む場合、その含有量は、凝集剤の溶解性を好適なものとし、フィルム基材上で優れた印刷画質を確保するという観点から、前処理液全量に対して0.1〜20重量%であることが好ましく、0.5〜15重量%であることがより好ましい。特に好ましくは1〜10重量%である。
<界面活性剤>
本実施形態の前処理液は、フィルム基材上に均一に塗布するため、界面活性剤を使用することができる。界面活性剤としては一般にシリコン系、アクリル系、フッ素系、アセチレンジオール系などが挙げられる。ある好ましい実施形態においては、前処理液の表面張力を制御し、フィルム基材上において優れた濡れ性を付与させるという観点から、アセチレンジオール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤を使用することが好ましく、特に好ましくはアセチレンジオール系界面活性剤である。
本実施形態の前処理液で用いられる界面活性剤の含有量は、フィルム基材上での塗工ムラを少なくし均一に塗工させるという観点から、前処理液全量に対して0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜5重量%であることがより好ましい。特に好ましくは0.1〜3重量%である。
また、本実施形態の前処理液の表面張力は、フィルム基材上で十分な濡れ性を有し均一に塗工させるという観点から、20〜45mN/mであることが好ましく、20〜40mN/mであることがより好ましい。特に好ましくは20〜30mN/mである。なお、本実施形態における表面張力とは、25℃の環境下において、Wilhelmy法(プレート法、垂直板法)により測定された表面張力を指す。
本実施形態の前処理液で使用される界面活性剤は、公知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。界面活性剤を市販品から選択する場合、例えばシロキサン系界面活性剤としてBY16−201、FZ−77、FZ−2104、FZ−2110、FZ−2162、F−2123、L−7001、L−7002、SF8427、SF8428、SH3749、SH8400、8032ADDITIVE、SH3773M(東レ・ダウコーニング社製)、Tegoglide410、Tegoglide432、Tegoglide435、Tegoglide440、Tegoglide450、Tegotwin4000、Tegotwin4100、Tegowet250、Tegowet260、Tegowet270、Tegowet280(エボニックデグサ社製)、SAG−002、SAG−503A(日信化学工業社製)、BYK−331、BYK−333、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYKUV3500、BYK−UV3510(ビックケミー社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF355A、KF−615A、KF−640、KF−642、KF−643(信越化学工業社製)などを、
またアセチレン系界面活性剤としてサーフィノール61、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、420、440、465、485、SE、SE−F、ダイノール604、607(エアープロダクツ社製)、オルフィンE1004、E1010、E1020、PD−001、PD−002W、PD−004、PD−005、EXP.4001、EXP.4200、EXP.4123、EXP.4300(日信化学工業社製)などを挙げることができる。上記の界面活性剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<水>
本実施形態の前処理液は、水を必須成分として含む。水は凝集剤の溶解性に優れるうえ、前記凝集剤の拡散性にも優れることから、本発明の課題である、密着性と印刷画質との両立を図るうえでは必須不可欠の材料である。上記特性を好適に発現させるため、本実施形態の前処理液に含まれる水の含有量としては、前処理液全量に対し30〜95重量%の範囲であることが好ましく、40〜90重量%であることがより好ましく、50〜85重量%であることがさらに好ましい。
<その他の材料>
本実施形態の前処理液は、塗工装置に使用される部材へのダメージを抑制し、またインキ凝集層としてのにじみ抑制効果を最大限に発揮し、さらには経時でのpH変動を抑え前処理液としての性能を長期的に維持することなどを目的として、前処理液にpH調整剤を添加することができる。本実施形態では、pH調整能を有する材料を任意に選択することができ、塩基性化させる場合は、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、などのアルカノールアミン;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを使用することができる。
また酸性化させる場合は塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、フマル酸、マロン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸などを使用することができる。
上記のpH調整剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤の配合量としては、前処理液全量に対し0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜4.5重量%であることがより好ましい。pH調整剤は添加量が少なすぎると二酸化炭素の溶解など外部刺激によってすぐにpH変化を起こす一方で、pH調整剤を過剰に含有してしまうと、前処理液中の金属塩の機能を阻害してしまう可能性があることから、その配合量は上記範囲に収めることが好ましい。
<その他の成分>
また本実施形態の前処理液は、所望の物性値とするために、必要に応じて消泡剤、防腐剤などの添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤を使用する場合、その配合量は前処理液全量に対して0.01重量%以上10重量%以下とすることが好ましく、0.01重量%以上5重量%以下とすることがさらに好ましい。過剰に配合してしまうと、前処理液中の凝集剤の機能を阻害してしまう可能性があることから、添加量は上記範囲にすることが好ましい。
<前処理液の製造方法>
上記の成分からなる本実施形態の前処理液は、例えば、ポリオレフィン樹脂粒子(A)、凝集剤(B)、及び、必要に応じて、プロトン性有機溶媒、界面活性剤、pH調整剤や、上記で挙げたような適宜に選択される添加剤成分を加え、撹拌・混合したのち、必要に応じて濾過することで製造される。ただし前処理液の製造方法は上記に限定されるものではない。
<インキセット>
本実施形態の前処理液は、水性インクジェットインキと組み合わせ、インキセットの形態で用いることができる。以下に、本実施形態のインキセットを構成する水性インクジェットインキ(以下、単に「本実施形態の水性インクジェットインキ」ともいう)の構成要素について説明する。
<顔料>
本実施形態の水性インクジェットインキは、耐水性、耐光性、耐候性、耐ガス性などを有する観点に加え、高速印刷において上記の前処理液を使用した際に染料と比較して凝集速度が速く高画質の画像が得られるという観点から、色材として顔料を含む。前記顔料として、公知の有機顔料、無機顔料のいずれも使用することができる。これらの顔料は、インキ全量に対して2重量%以上15重量%以下の範囲で含まれることが好ましく、2.5重量%以上15重量%以下の範囲で含まれることがより好ましく、3重量%以上10重量%以下の範囲で含まれることが特に好ましい。顔料の含有率を2重量%以上にすることで、1パス印刷であっても十分な発色性を得ることができる。また顔料の含有率を15重量%以下とすることで、インキの粘度をインクジェット印刷に適した範囲に収めることができるとともに、インキの長期安定性も良好なまま維持でき、結果として長期の印字安定性を確保することができる。
本実施形態の水性インクジェットインキで使用することができるシアン有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66などが挙げられる。中でも発色性や耐光性に優れる点からC.I.ピグメントブルー15:3及び/または15:4から選択される1種以上が好ましい。
また、マゼンタ有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112、122、146、147、150、185、238、242、254、255、266、269、C.I.ピグメントバイオレッド19、23、29、30、37、40、43、50などが使用できる。中でも発色性や耐光性に優れる点からC.I.ピグメントレッド122、150、185、266、269及び/またはC.I.ピグメントバイオレッド19からなる群から選択される1種以上が好ましい。
また、イエロー有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー10、11、12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213などが使用できる。中でも発色性に優れる点からC.I.ピグメントイエロー13、14、74、120、180、185、213からなる群から選択される1種以上が好ましい。
また、ブラック有機顔料としては、例えば、アニリンブラック、ルモゲンブラック、アゾメチンアゾブラックなどが使用できる。なお、上記のシアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料や、下記のオレンジ顔料、グリーン顔料、ブラウン顔料などの有彩色顔料を複数使用し、ブラック顔料とすることもできる。
本実施形態の水性インクジェットインキには、オレンジ顔料、グリーン顔料、ブラウン顔料などの特色を使用することもできる。具体的には、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、 71、C.I.ピグメントグリーン7、36、43、58、ピグメントブラウン23、25、26などを挙げることができる。
本実施形態の水性インクジェットインキで使用できる無機顔料としては特に限定されないが、例えば黒色顔料としてカーボンブラックや酸化鉄、白色顔料として酸化チタンを挙げることができる。
本実施形態の水性インクジェットインキで使用することができるカーボンブラックとしては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。中でも、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜50nm、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10重量%、pHが2〜10などの特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品として、例えばNo.25、30、33、40、44、45、52、850、900、950、960、970、980、1000、2200B、2300、2350、2600;MA7、MA8、MA77、MA100、MA230(三菱化学株式会社製)、RAVEN760UP、780UP、860UP、900P、1000P、1060UP、1080UP、1255(コロンビアンカーボン社製)、REGAL330R、400R、660R、MOGUL L(キャボット社製)、Nipex160IQ、170IQ、35、75;PrinteX30、35、40、45、55、75、80、85、90、95、300;SpecialBlack350、550;Nerox305、500、505、600、605(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)などがあり、いずれも好ましく使用することができる。
また、白色顔料として好適に用いられる酸化チタンとしては、アナターゼ型、ルチル型のいずれも使用することができるが、印刷物の隠蔽性を上げるためにもルチル型を用いるのが好ましい。また、塩素法、硫酸法などいずれの方法で製造したものでも良いが、塩素法にて製造された酸化チタンを使用した方が、白色度が高いことから好ましい。
本実施形態の水性インクジェットインキで使用することができる酸化チタンの顔料表面は、無機化合物及び/または有機化合物により処理したものを使用することが好ましい。無機化合物の例として、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン、チタンの化合物、及びこれらの水和酸化物を挙げることができる。また有機化合物の例として、多価アルコール、アルカノールアミンまたはその誘導体、高級脂肪酸またはその金属塩、有機金属化合物などを挙げることができるが、中でも多価アルコール、またはその誘導体は酸化チタン表面を高度に疎水化し、分散安定性を向上させることが可能であり、好ましく用いられる。
なお本実施形態の水性インクジェットインキでは、印刷物の色相や発色性を好適な範囲に収めるため、上記の顔料を複数混合して用いることができる。例えば、カーボンブラック顔料を使用したブラックインキに対し、低印字率における色味を改善するため、シアン有機顔料、マゼンタ有機顔料、オレンジ有機顔料、ブラウン有機顔料から選択される1種以上の顔料を少量添加することができる。
<顔料分散樹脂>
上記顔料を水性インクジェットインキ中で安定的に分散保持する方法として、顔料分散樹脂を顔料表面に吸着させ分散する方法、水溶性及び/または水分散性の界面活性剤を顔料表面に吸着させ分散する方法、顔料表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し分散剤や界面活性剤なしでインキ中に分散する方法、自己分散性がある樹脂で顔料を被覆しマイクロカプセル化する方法などを挙げることができる。
本実施形態の水性インクジェットインキは、上記のうち顔料分散樹脂を用いる方法を選択することが好ましい。これは顔料分散樹脂のモノマー組成や分子量を選定・検討することにより、顔料に対する樹脂吸着能や顔料分散樹脂の電荷を容易に調整でき、結果として微細な顔料に対する分散安定性の付与や、前処理液による顔料の分散機能低下能力の制御が可能となるためである。
上記顔料分散樹脂の種類は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂などを使用することができる。中でも、材料選択性の大きさや合成の容易さの点で、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂を使用することが特に好ましい。また上記の顔料分散樹脂は、公知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。
本実施形態の水性インクジェットインキでは、顔料分散樹脂の酸価が30〜375mgKOH/gであることが好ましい。酸価を上記の範囲内に収めることで、上記の前処理液によって、速やかに顔料の分散状態が低下し、基材上に凝集・析出させることができる。また顔料分散樹脂の水に対する溶解性が確保できるうえ、顔料分散樹脂間での相互作用が好適なものとなることで顔料分散体の粘度を抑えることができる点からも好ましい。前処理液に対して好適な凝集性能を発現させ、色ムラや混色滲みの少ない優れた印刷画質を得るという観点から、顔料分散樹脂の酸価は、60〜350mgKOH/gであることが好ましく、80〜325mgKOH/gであることがより好ましい。さらに好ましくは100〜300mgKOH/gである。なお酸価は、上記ポリオレフィン樹脂粒子(A)の酸価の場合と同様に測定することができる。
本実施形態の水性インクジェットインキでは、顔料分散樹脂に炭素数10〜36のアルキル基を導入することが好ましい。これは、アルキル基の炭素数を10〜36とすることにより、顔料分散体の低粘度化と更なる分散安定化、粘度安定化を実現できるためである。なおアルキル基の炭素数として、好ましくは炭素数12〜30であり、さらに好ましくは炭素数18〜24である。またアルキル基は炭素数10〜36の範囲であれば、直鎖であっても分岐していてもいずれも使用することができるが、直鎖状のものが好ましい。直鎖のアルキル基としてはラウリル基(C12)、ミリスチル基(C14)、セチル基(C16)、ステアリル基(C18)、アラキル基(C20)、ベヘニル基(C22)、リグノセリル基(C24)、セロトイル基(C26)、モンタニル基(C28)、メリッシル基(C30)、ドトリアコンタノイル基(C32)、テトラトリアコンタノイル基(C34)、ヘキサトリアコンタノイル基(C36)などが挙げられる。
炭素数10〜36のアルキル鎖を含有する単量体の、顔料分散樹脂中に含まれる含有量は、顔料分散体の低粘度化と印刷物の耐擦性や光沢性とを両立させる観点から5重量%〜60重量%であることが好ましく、10重量%〜55重量%であることがより好ましく、20重量%〜50重量%であることが特に好ましい。
また、顔料に対する吸着能を向上するとともに、前処理液と混合した際に速やかに顔料の分散機能を低下させることができることから、顔料分散樹脂に芳香族基を導入することが特に好ましい。これは、上記の前処理液と水性インクジェットインキを混合した際、前処理液に含まれる金属塩中のカチオン成分と芳香族基を有する顔料分散樹脂との間にカチオン−π相互作用と言われる強固な分子間力が働き、両者が優先的に吸着するためである。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、アニシル基などが挙げられる。中でもフェニル基、トリル基が分散安定性を十分に確保できる面から好ましい。
顔料の分散安定性と前処理液との吸着性能との両立の観点から、芳香環を含有する単量体の含有率は、顔料分散樹脂全量に対し5〜65重量%であることが好ましく、10〜50重量%であることがより好ましい。
なお顔料分散樹脂は、インキへの溶解度を上げるため、樹脂中の酸基を塩基で中和してあることが好ましい。しかしながら過剰に塩基を投入してしまうと、前処理液中に含まれるカチオン成分が中和されてしまい、十分な効果を発揮することができないため、その添加量には注意を払う必要がある。塩基の添加量が過剰かどうかは、例えば顔料分散樹脂の10重量%水溶液を作製し、前記水溶液のpHを測定することにより確認することができる。中でも、前処理液の機能を十分に発現させるために、前記水溶液のpHが7〜11であることが好ましく、7.5〜10.5であることがより好ましい。
上記の、顔料分散樹脂を中和するための塩基としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを挙げることができる。
顔料分散樹脂の分子量は、重量平均分子量が1,000以上100,000以下の範囲内であることが好ましく、5,000以上50,000以下の範囲であることがより好ましい。分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中で安定的に分散し、また水性インクジェットインキに適用した際の粘度調整などが行いやすい。重量平均分子量が1,000以下であると、インキ中に添加されている溶剤に対し分散樹脂が溶解しやすいために、顔料に吸着した樹脂が脱離するため、分散安定性が著しく悪化してしまう。重量平均分子量が100,000以上であると、分散時粘度が高くなると共に、インクジェットヘッドからの吐出安定性が著しく悪化するため、印刷安定性が低下してしまう。
ある好ましい実施形態において、顔料と顔料分散樹脂との重量比率は2/1〜100/1であることが好ましい。顔料分散樹脂の比率を2/1〜100/1とすることで、顔料分散体の粘度を抑え、前記顔料分散体や水性インクジェットインキの粘度安定性・分散安定性が良化するとともに、前処理液と混合した際に速やかな分散機能の低下を引き起こすことができるため好ましい。顔料と顔料分散樹脂の比率としてより好ましくは20/9〜50/1、さらに好ましくは5/2〜25/1であり、最も好ましくは20/7〜20/1である。
<水溶性有機溶剤>
本実施形態の水性インクジェットインキに使用される水溶性有機溶剤は、公知のものを任意に用いることができるが、1気圧下で沸点が180℃以上280℃以下であるグリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤を含有することが好ましい。上記の沸点範囲を満たす水溶性有機溶剤を用いることにより、水性インクジェットインキの濡れ性と乾燥性を好適な範囲に制御することができ、吐出安定性が良好になる上に、前処理液と組み合わせた際、にじみなどの画質欠陥を防止することができる。
なお、上記の1気圧下での沸点は、DSC(示差走査熱量分析)などの熱分析装置を用いることにより測定することができる。
好適に用いられる、1気圧下の沸点が180℃以上280℃以下であるグリコールエーテル系溶剤を例示すると、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテルなどのグリコールジアルキルエーテル類となる。
特に、優れた保湿性と乾燥性を両立することができる点で、上記グリコールエーテル系溶剤の中でも、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテルを選択することが好ましい。
また1気圧下の沸点が180℃以上280℃以下であるアルキルポリオール系溶剤としては、例えば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコールなどを挙げることができる。
中でも、優れた保湿性と乾燥性を両立することができる点で、上記アルキルポリオール系溶剤の中でも1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオールを選択することが好ましい。
本実施形態の水性インクジェットインキで用いられる、上記1気圧下で沸点が180℃以上280℃以下であるグリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤の総量は、水性インクジェットインキ全量に対し5重量%以上50重量%以下であることが好ましい。また、水性インクジェットノズルからの吐出安定性と、前処理液と組み合わせたときに十分な濡れ広がり性と乾燥性を確保するという観点から、前記水溶性有機溶剤の総量が10重量%以上45重量%であることがより好ましく、15重量%以上40重量%以下であることが特に好ましい。水溶性有機溶剤の総量が5重量%を下回るとインクの保湿性が不足し、吐出安定性が損なわれる可能性がある。逆に水溶性有機溶剤の含有量の合計が50重量%よりも多い場合、インキの粘度が高くなりすぎてしまい、吐出安定性を損なう可能性があるため好ましくない。
なお、水性インクジェットインキの保湿性や濡れ性を調整するため、上記1気圧下で沸点が180℃以上280℃以下であるグリコールエーテル系溶剤及び/またはアルキルポリオール系溶剤以外の有機溶剤も、併用することができる。具体的には、前処理液で使用できる水溶性有機溶剤として上記に挙げた、1価アルコール類、3価アルコール類、含窒素系溶剤、複素環化合物などを使用することができる。またこれらの溶剤は単独で使用しても良いし、複数を混合して使用してもよい。
本実施形態の水性インクジェットインキにおける水溶性有機溶剤の総量は、インキの保湿性、乾燥性、濡れ性を両立する観点から、水性インクジェットインキ全量に対し5重量%以上70重量%以下であることが好ましく、10重量%以上60重量%以下であることがより好ましく、15重量%以上50重量%以下であることが特に好ましい。
<バインダー樹脂>
本実施形態の水性インクジェットインキにはバインダー樹脂を加えることが好ましい。バインダー樹脂としては、一般に水溶性樹脂と樹脂微粒子が知られている。このうち樹脂微粒子は水溶性樹脂と比較して高分子量であること、また樹脂微粒子は水性インクジェットインキ粘度を低くすることができ、より多量の樹脂を水性インクジェットインキ中に配合することができることから、印刷物の耐性を高めるのに適している。樹脂微粒子として使用される樹脂の種類としては、アクリル系、スチレンアクリル系、ウレタン系、スチレンブタジエン系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系などが挙げられる。中でも、水性インクジェットインキの安定性、印刷物の耐性の面を考慮するとアクリル系、スチレンアクリル系の樹脂微粒子が好ましく使用される。
ただし、水性インクジェットインキ中のバインダー樹脂が樹脂微粒子である場合は、前記樹脂微粒子の最低造膜温度(MFT)を考慮する必要がある。MFTの低い樹脂微粒子を使用した場合、水性インクジェットインキ中に添加される水溶性有機溶剤によって樹脂微粒子のMFTがさらに低下し、室温であっても樹脂微粒子が融着や凝集を起こす結果、インクジェットヘッドノズルの目詰まりが発生することがあるためである。前記問題を回避するためには、樹脂微粒子を構成する単量体を調整することにより、前記樹脂微粒子のMFTを60℃以上にすることが好ましい。
なお上記MFTは、例えばテスター産業社製MFTテスターによって測定することができる。具体的には、フィルム上にWET膜厚300μmとなるように樹脂微粒子の25重量%水溶液を塗工したのち、温度勾配をかけた状態で上記テスター上に静置し、乾燥後に白い析出物が生じた領域と透明な樹脂膜が形成された領域との境界の温度をMFTとする。
しかしインクジェットプリンターのメンテナンス性能を考慮すれば、本実施形態の水性インクジェットインキでは、バインダー樹脂が水溶性樹脂であることがより好ましい。水溶性樹脂としては、重量平均分子量が8,000以上50,000以下の範囲内であることが好ましく、10,000以上40,000以下の範囲内であることがより好ましい。重量平均分子量を10,000以上とすることで、印刷物の塗膜耐性を良好なものとすることができ、重量平均分子量を50,000以下とすることで、インクジェットヘッドからの吐出安定性に優れたインキを得ることができる。
また、バインダー樹脂に水溶性樹脂を選択する際には酸価も重要であり、酸価が10〜80mgKOH/gであることが好ましく、酸価が20〜50mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が10mgKOH/g未満では、固化した水性インクジェットインキの再溶解性が悪く、樹脂微粒子同様インクジェットヘッドノズル上での目詰まりが発生することで、印刷安定性が著しく低下すること、前処理液と組み合わせた際、アニオン−カチオン間相互作用によるインキの増粘・凝集を引き起こしづらいため、にじみや色ムラを抑制する効果が低下してしまうことから、好ましくない。また酸価が80mgKOH/g以上であると、水性インクジェットインキが固化しても再度溶解することが可能であるものの、印刷物塗膜の耐水性が著しく悪化するため好ましくない。
前記のバインダー樹脂の、水性インクジェットインキ全量中における含有量は、固形分で水性インクジェットインキ全量の1重量%以上20重量%以下の範囲であり、より好ましくは2重量%以上15重量%以下の範囲であり、特に好ましくは3重量%以上10重量%以下の範囲である。
<界面活性剤>
本実施形態の水性インクジェットインキは、表面張力を調整し画質を向上させる目的で界面活性剤を使用することが好ましい。一方で、表面張力が低すぎるとインクジェットヘッドのノズル面が水性インクジェットインキで濡れてしまい、吐出安定性を損なうことから、界面活性剤の種類と量の選択は非常に重要である。最適な濡れ性の確保と、インクジェットノズルからの安定吐出の実現という観点から、シロキサン系、アセチレン系、フッ素系の界面活性剤を使用することが好ましく、シロキサン系、アセチレン系の界面活性剤を使用することが特に好ましい。界面活性剤の添加量としては、水性インクジェットインキ全量に対して、0.01重量%以上5.0重量%以下が好ましく、0.05重量%以上3.0重量%以下がさらに好ましい。
また、水性インクジェットインキが蒸発する過程における濡れ性の制御や、耐擦性や耐溶剤性などの印刷物品質の向上の点で、界面活性剤の分子量も重要である。界面活性剤分子量としては重量平均分子量で1,000以上7,000以下であることが好ましく、1,500以上5,000以下の範囲内であることがより好ましい。1,000以上とすることで印刷基材に対する濡れを制御する効果を高めることができ、また7,000以下とすることで、保存安定性に優れた水性インクジェットインキを得ることができる。
本実施形態の水性インクジェットインキで使用される界面活性剤は、公知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。界面活性剤を市販品から選択する場合、例えばシロキサン系界面活性剤やアセチレン系界面活性剤としては、前処理液で使用できる界面活性剤として上記に挙げたもの、またフッ素系界面活性剤としては、ZonylTBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、Capstone FS−30、FS−31(DuPont社)、PF−151N、PF−154N(オムノバ社製)などを挙げることができる。上記の界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ただし、前処理液層上にインキを付与した際、インキ中に高濃度の多価金属イオンがインキ層に混入することで、インキの表面張力が大きく変動し、混色にじみなどが発生する可能性があることから、インキの表面張力の変動を抑制すべく、界面活性剤は2種以上併用することが好ましい。
水性インクジェットインキに使用する界面活性剤と前処理液に使用する界面活性剤は、同じでも異なっていてもよい。各々異なる界面活性剤を使用する際は、上記のとおり、両者の表面張力に注意したうえで配合量を決定したほうがよい。
<水>
本実施形態の水性インクジェットインキに含まれる水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
本実施形態の水性インクジェットインキに使用することができる水の含有量としては、インキの全重量の20〜90重量%の範囲であることが好ましい。
<その他の成分>
本実施形態の水性インクジェットインキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするためにpH調整剤を添加することができ、pH調整能を有する材料を任意に選択することができる。塩基性化させる場合は、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン;アンモニア水;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などを使用することができる。また酸性化させる場合は塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、フマル酸、マロン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸などを使用することができる。上記のpH調整剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
pH調整剤の配合量は、水性インクジェットインキ全量に対し0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜3重量%であることがより好ましく、0.2〜1.5重量%であることが最も好ましい。上記範囲内に収めることで、空気中の二酸化炭素の溶解などによるpH変化を起こすことなく、また、前処理液とインキとが接触した際に、多価金属イオンによる固形成分凝集効果を阻害することなく、本発明の効果を好適に発現させることができるため、好ましい。
また本実施形態の水性インクジェットインキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、消泡剤、防腐剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤などの添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インキの全重量に対して、0.01重量%以上10重量%以下が好適である。
なお、本実施形態の水性インクジェットインキは重合性モノマーを実質的に含有しないことが好ましい。ここで「実質的に含有しない」とは意図的に添加しないことを表すものであり、水性インクジェットインキを製造・保管する際の微量の混入または発生を除外するものではない。
<水性インクジェットインキのセット>
本実施形態の水性インクジェットインキは単色で使用してもよいが、用途に合わせて複数の色を組み合わせた水性インクジェットインキのセットとして使用することもできる。組み合わせは特に限定されないが、シアン、イエロー、マゼンタの3色を使用することでフルカラーの画像を得ることができる。また、ブラックインキを追加することで黒色感を向上させ、文字などの視認性を上げることができる。さらにオレンジ、グリーンなどの色を追加することで色再現性を向上させることも可能である。白色以外の印刷媒体へ印刷を行う際にはホワイトインキを併用することで鮮明な画像を得ることができる。
<水性インクジェットインキの製造方法>
上記したような成分からなる本実施形態の水性インクジェットインキは、例えば、以下のプロセスを経て製造される。ただし本実施形態の水性インクジェットインキの製造方法は以下に限定されるものではない。
(1)顔料分散体の製造
まず顔料分散樹脂と水とが混合された水性媒体に顔料を添加し、混合攪拌した後、分散機を用いて分散処理を行う。この後、必要に応じて遠心分離や濾過を行い、顔料分散体を得る。
なお分散処理の前に、プレミキシングを行うのが効果的である。プレミキシングは、少なくとも顔料分散樹脂と水とが混合された水性媒体に顔料を加えて行えばよい。このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため、好ましい。
顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機ならいかなるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル及びナノマイザーなどが挙げられる。上記の中でもビーズミルが好ましく使用され、具体的にはスーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミルなどの商品名で市販されている。
顔料のプレミキシング及び分散処理において、顔料分散剤は水のみに分散した場合であっても、有機溶剤と水の混合溶媒に分散した場合であっても良い。
顔料分散体の粒度分布を制御する方法として、上記に挙げた分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの材質を変更すること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、撹拌部材(アジテータ)の形状を変更すること、分散処理時間を長くすること、分散処理後フィルターや遠心分離機などで分級すること、及びこれらの手法の組み合わせが挙げられる。顔料を好適な粒度範囲に収めるためには、上記分散機の粉砕メディアの直径を0.1〜3mmとすることが好ましい。また粉砕メディアの材質として、ガラス、ジルコン、ジルコニア、チタニアが好ましく用いられる。
(2)水性インクジェットインキの調製
次いで、上記顔料分散液に、水溶性有機溶剤、水、及び必要に応じて上記で挙げたバインダー樹脂、界面活性剤やその他の添加剤を加え、撹拌・混合する。
なお、必要に応じて前記混合物を40〜100℃の範囲で加熱しながら撹拌・混合してもよい。ただしバインダー樹脂として樹脂微粒子を使用する際は、加熱温度は前記樹脂微粒子のMFT以下とすることが好ましい。
(3)粗大粒子の除去
上記混合物に含まれる粗大粒子を、濾過分離、遠心分離などの手法により除去し、水性インクジェットインキとする。濾過分離の方法としては、公知の方法を適宜用いることができる。またフィルター開孔径は、粗大粒子、ダストが除去できるものであれば、特に制限されないが、好ましくは0.3〜5μm、より好ましくは0.5〜3μmである。また濾過を行う際は、フィルターは単独種を用いても、複数種を併用してもよい。
<水性インクジェットインキの特性>
本実施形態の水性インクジェットインキは、25℃における粘度を3〜20mPa・sに調整することが好ましい。この粘度領域であれば、特に通常の4〜10KHzの周波数を有するヘッドから10〜70KHzの高周波数のヘッドにおいても安定した吐出特性を示す。特に、25℃における粘度を4〜10mPa・sとすることで、600dpi以上の設計解像度を有するインクジェットヘッドに対して用いても、安定的に吐出させることができる。
なお、上記粘度は常法により測定することができる。具体的にはE型粘度計(東機産業社製TVE25L型粘度計)を用い、インキ1mLを使用して測定することができる。
本実施形態の水性インクジェットインキは、優れた発色性を有する印刷物を得るために、顔料の平均二次粒子径(D50)を40nm〜500nmとすることが好ましく、より好ましくは50nm〜400nmであり、特に好ましくは60nm〜300nmである。平均二次粒子径を上記好適な範囲内に収めるためには、上記のように顔料分散処理工程を制御すればよい。
<印刷物の製造方法>
本実施形態の前処理液と、上記水性インクジェットインキとを組み合わせた、インキセットの実施形態で印刷物を製造する方法として、30m/分以上の速度で搬送される基材上に前処理液を付与したのち、前記前処理液を付与した部分に、水性インクジェットインキを1パス印刷方式により付与する方法が好ましく用いられる。
「1パス印刷方式」とは、停止している基材に対しインクジェットヘッドを一度だけ走査させる、または固定されたインクジェットヘッドの下部に基材を一度だけ通過させる印刷方法であり、印字されたインキの上に再度インキが印字されることがない。1パス印刷方式は、従来のインクジェットヘッドを複数回走査するインクジェット印刷方式(マルチパス印刷方式)に比べて走査回数が少なく、印刷速度を上げることができることから、印刷速度が要求される産業用途に好適とされる。特に近年活発に検討されている、オフセット印刷やグラビア印刷の代替としてのインクジェット印刷を実現するにあたっては、1パス印刷方式であることが好ましい。
一方で、インクジェット印刷をオフセット印刷やグラビア印刷の代替とするためには様々な課題を解決しなければならない。印刷速度に関しては、従来の印刷方式からの代替を図るためには最低でも30m/分以上の高速印刷に対応する必要がある。また印刷物ににじみ、色ムラといった画像欠陥がないことは言うまでもないが、さらに600dpi以上の高い記録解像度において高品質の画像が得られることが必須とされる。「記録解像度」はdpi(DotsPerInch)の単位で表されるものであり、1インチあたりに付与される水性インクジェットインキ液滴の数を表す。なお本明細書中における「記録解像度」は、基材の搬送方向における記録解像度、及び前記基材面内で搬送方向に対し垂直方向(以下、記録幅方向とする)における記録解像度の両方を指すものとする。
以下に、本実施形態のインキセットを用いた印刷物の製造方法について説明する。
<前処理液の付与方法>
本実施形態のインキセットを用いて印刷物を製造する際、好適には、水性インクジェットインキを印刷する前に、30m/分以上の速度で搬送される基材上に前処理液が付与される。基材上への前処理液の付与方法として、インクジェット印刷のように基材に対して非接触で印刷する方式と、基材に対し前処理液を当接させて印刷する方式のどちらを採用してもよい。
近年、ヘッド内ヒーターの採用、ヘッド内流路やノズル構造の最適化などにより、25℃における粘度が100mPa・s程度の液体組成物であっても吐出可能なインクジェットヘッドが開発されており、本実施形態の前処理液をインクジェット印刷方式で基材上に付与しても差し支えない。なお前処理液の付与方法としてインクジェット印刷を採用する場合、非印字部において基材固有の風合いを残すことができる観点から、水性インクジェットインキを付与する部分にのみ、前記前処理液を付与することが好ましい。
一方、インクジェットヘッドを構成する部材へのダメージ防止や、インクジェット印刷適性確保の観点から、本実施形態のインキセットを用いて印刷物を製造する際は、基材に対し前処理液を当接させる印刷方式が好ましく用いられる。前処理液を当接させる印刷方式としては、従来より公知のものを任意に選択することができるが、装置の単純性、均一塗工性、作業効率、経済性などの観点から、ローラ形式を採用することが好ましい。なお「ローラ形式」とは、回転するロールにあらかじめ前処理液を付与したのち、基材に前記前処理液を転写する印刷形式を指す。中でも好ましく用いられるローラ形式の塗工機としては、例えばオフセットグラビアコーター、グラビアコーター、ドクターコーター、バーコーター、ブレードコーター、フレキソコーター、ロールコーターなどがある。
<前処理液付与後の乾燥方法>
本実施形態のインキセットでは、前処理液をフィルム基材に付与したのち、水性インクジェットインキを付与する前に、前記フィルム基材を乾燥させ、基材上の前処理液を乾燥させることが好ましい。また特に、水性インクジェットインキを付与する前に前処理液を完全に乾燥させる、すなわち、前記前処理液の液体成分を完全に除去された状態とすることが好ましい。前処理液が完全に乾燥する前に水性インクジェットインキが付与されると、着弾した水性インクジェットインキのドットが拡散しやすくなり、混色滲みにつながる可能性がある。
本実施形態の前処理液の印刷で用いられる乾燥方法に特に制限はなく、例えば加熱乾燥法、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、マイクロ波乾燥法、ドラム乾燥法などを挙げることができる。上記の乾燥法は単独で用いても、複数を併用してもよい。例えば加熱乾燥法と熱風乾燥法を併用することで、それぞれを単独で使用したときよりも素早く、前処理液を乾燥させることができる。中でも、フィルム基材へのダメージを軽減し効率よく乾燥させるため、熱風乾燥法を用いることが好ましい。
また、基材へのダメージや前処理液中の液体成分の突沸を防止する観点から、上記のうち加熱乾燥法を採用する場合は乾燥温度を35〜100℃とすることが、また熱風乾燥法を採用する場合は熱風温度を50〜250℃とすることが好ましい。
<前処理液付与・乾燥装置>
本実施形態の前処理液付与・乾燥装置は、後述するインクジェット印刷装置に対し、インラインあるいはオフラインで装備されるが、印刷時の利便性の点から、インラインで装備されることが好ましい。
<水性インクジェットインキの付与方法>
上記で説明したとおり、水性インクジェットインキは基材に対し1パス印刷方式により付与される方式が好ましい。なお1パス印刷方式としては、上記のように、停止している基材に対しインクジェットヘッドを一度だけ走査させる方法と、固定されたインクジェットヘッドの下部に基材を一度だけ通過させる方法の2種類があるが、インクジェットヘッドを走査させる場合、前記インクジェットヘッドの動きを加味して吐出タイミングを調整する必要があり、着弾位置のずれが生じやすいことから、本実施形態の水性インクジェットインキを印刷する際は、インクジェットヘッドを固定し基材を走査する方法が好ましく用いられる。その際、基材の搬送速度は30m/分以上とすることが好ましい。特に、前処理液の付与装置をインクジェット印刷装置に対しインラインで設置する場合、前記前処理液の付与装置からインクジェット印刷装置までが連続的に配置され、前処理液が付与された基材がそのままインクジェット印刷部へ搬送されてくることが好ましい。
また上記でも説明したように、本実施形態のインキセットを用いることで、高速かつ600dpi以上の記録解像度であっても高品質の画像を製造することができるが、オフセット印刷やグラビア印刷と同等の画質を有する印刷物を提供できる点から、印刷物の記録解像度は720dpi以上であることが特に好ましい。
<インクジェットヘッド>
1パス印刷方式として、固定されたインクジェットヘッドの下部に基材を一度だけ通過させる方法を採用する場合、記録幅方向における記録解像度は、インクジェットヘッドの設計解像度によって決定される。上記の通り、本実施形態では記録幅方向の記録解像度も600dpi以上であることが好ましいことから、必然的に、インクジェットヘッドの設計解像度としても600dpi以上であることが好ましい。インクジェットヘッドの設計解像度が600dpi以上であれば、1色につき1個のインクジェットヘッドで印刷することができるため、装置の小型化や経済性の観点で好ましい。なお600dpiよりも低い設計解像度のインクジェットヘッドを使用する場合は、1色につき複数のインクジェットヘッドを基材の搬送方向に並べて使用することで、1パス印刷であっても記録幅方向における記録解像度として600dpi以上を実現することができる。
また、基材の搬送方向における印刷解像度は、インクジェットヘッドの設計解像度だけでなく、前記インクジェットヘッドの駆動周波数と印刷速度に依存し、例えば印刷速度を1/2にする、または駆動周波数を2倍にすることで、搬送方向における記録解像度は2倍になる。インクジェットヘッドの設計上、30m/分以上の印刷速度において、搬送方向における印刷解像度として600dpi以上を達成できない場合は、1色につき複数のインクジェットヘッドを基材の搬送方向に並べて使用することで、印刷速度と印刷解像度を両立させることができる。
本実施形態の水性インクジェットインキをインクジェット1パス印刷方式で印刷する際、前記水性インクジェットインキのドロップボリュームは、前記インクジェットヘッドの性能によるところが大きいが、高品質の画像を実現するため1〜30pLの範囲であることが好ましい。また高品質の画像を得るために、ドロップボリュームを変化させることができる階調仕様のインクジェットヘッドを使用することが特に好ましい。
<水性インクジェットインキ印刷後の乾燥方法>
前処理液が付与されたフィルム基材上に水性インクジェットインキを印刷したあと、前記水性インクジェットインキ、及び未乾燥の前処理液を乾燥させるため、前記基材を乾燥させることが好ましい。
<水性インクジェットインキ乾燥装置>
水性インクジェットインキ乾燥装置は、インクジェット印刷装置に対しインラインあるいはオフラインで装備されるが、印刷時の利便性などの点から、インラインで装備されることが好ましい。また、にじみや色ムラ、基材のカールなどを防止するため、乾燥機による熱エネルギーを付与は印刷後30秒以内に付与することが好ましく、20秒以内に付与することがより好ましく、10秒以内に付与することが特に好ましい。
<前処理液、及び水性インクジェットインキの付与量>
本実施形態のインキセットを印刷する際、基材に対する本実施形態の前処理液の塗布量は、1〜25g/m2であることが好ましい。塗布量を上記範囲に収めることで、混色滲み、ワレを抑えるとともに、塗布後のインキ凝集層の乾燥性が良好なものとなり、塗工装置内部への付着や、印刷後の基材を重ねた際の裏移りなどを防止し、タック感(べたつき)のない印刷物を得ることができる。
また本実施形態のインキセットを印刷する際は、前処理液の付与量に対する水性インクジェットインキの付与量の比を0.1以上10以下とすることが好ましい。なお付与量の比としてより好ましくは0.5以上9以下であり、特に好ましくは1以上8以下である。付与量の比を上記範囲に収めることにより、前処理液量が過剰となることで起こる基材の風合いの変化や、水性インクジェットインキ量が過剰となり前処理液の効果が不十分となることで起こるにじみや色ムラが起こることなく、高品質の印刷物を得ることができる。
<印刷速度>
上記のように、本実施形態のインキセットを用いて印刷物を製造する場合、その印刷速度は30m/分以上であることが好ましく、50m/分以上であることがより好ましく、75m/分以上であることがより好ましく、100m/分以上であることが特に好ましい。
<フィルム基材>
本実施形態のインキセットを用いて印刷する際、使用するフィルム基材としては公知のものを任意に用いることができ、例えばポリ塩化ビニルシート、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルムの様なプラスチック基材などが使用できる。上記の基材は印刷媒体の表面が滑らかであっても、凹凸のついたものであっても良いし、透明、半透明、不透明のいずれであっても良い。また、これらの印刷媒体の2種以上を互いに張り合わせたものでも良い。さらに印字面の反対側に剥離粘着層などを設けても良く、また印字後、印字面に粘着層などを設けても良い。また本実施形態のインキセットの印刷で用いられる基材の形状は、ロール状でも枚葉状でもよい。
中でも、前処理液の機能を十分に発現させるために、前記基材がPETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ナイロンフィルムであることが特に好ましい。
<コーティング処理>
本実施形態のインキセットを用いて作製した印刷物は、必要に応じて、印刷面をコーティング処理することができる。前記コーティング処理の具体例として、コーティング用組成物の塗工・印刷;ドライラミネート法、無溶剤ラミネート法、押出しラミネート法、ホットメルトラミネートなどによるラミネーションなどが挙げられ、いずれを選択してもよいし、両者を組み合わせても良い。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態である前処理液、及び前記前処理液を含むインキセットをさらに具体的に説明する。なお、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「重量部」、「重量%」を表す。
<前処理液1の製造例>
下記記載の材料を攪拌しながら1時間混合したのち、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、前処理液1を得た。
・ スーパークロンE−480T (固形分30%) 0.33部
[日本製紙社製ノニオン系塩素化ポリオレフィン樹脂、軟化温度:70℃、D50:70〜80nm]
・硫酸アルミニウム14〜18水和物(Al2(SO43・14〜18H2O) 10部
・イソプロピルアルコール(IPA) 5部
・サーフィノール465(エアープロダクツ社製アセチレン系界面活性剤) 1部
・イオン交換水 83.67部
<前処理液2〜46の製造例>
下表1に記載の材料を使用し、前処理液1と同様の方法により、前処理液2〜46を得た。
表1
なお、表1に記載された材料は、以下の通りである。
・スーパークロンE−480T(固形分=30%)
[日本製紙社製ノニオン系塩素化ポリオレフィン樹脂、軟化温度:70℃、D50:7 0〜80nm]
・スーパークロンE−415(固形分=30%)
[日本製紙社製ノニオン系塩素化ポリオレフィン樹脂、軟化温度:85℃、D50:7 0〜80nm]
・アウローレンAE−301(固形分=30%)
[日本製紙社製ノニオン系非塩素化ポリオレフィン樹脂、軟化温度:70℃、D50: 70〜80nm]
・Hordamer PE03(固形分=40%)
[ビックケミー社製非塩素化ポリエチレン樹脂、軟化温度:95℃、D50:170n m]
・ハードレンNZ−1004(固形分=30%)
[東洋紡社製非塩素化ポリオレフィン樹脂、軟化温度:70℃、D50:120nm]
・ケミパールM−200(固形分=40%)
[三井化学社製非塩素化ポリエチレン樹脂、軟化温度:105℃、D50:6μm]
・AQUACER513(固形分=35%)
[ビックケミー社製非塩素化ポリエチレンワックス、軟化温度:125℃、D50:1 10nm]
・NaCl:塩化ナトリウム [溶解度=35.9g/100ml]
・Na2SO4:硫酸ナトリウム [溶解度=19.5g/100ml]
・NaCOOCH3:酢酸ナトリウム [溶解度=35.9g/100ml]
・NaCO3:炭酸ナトリウム [溶解度=21.5g/100ml]
・KCl:塩化カリウム [溶解度=34.2g/100ml]
・KNO3:硝酸カリウム [溶解度=31.6g/100ml]
・K2SO4:硫酸カリウム [溶解度=11.1g/100ml]
・MgCl2:塩化マグネシウム [溶解度=54.6g/100ml]
・MgSO4:硫酸マグネシウム [溶解度=33.7g/100ml]
・Mg(COOCH32・3H2O:酢酸マグネシウム・3水和物 [溶解度=53. 4g/100ml]
・CaCl2:塩化カルシウム [溶解度=74.5g/100ml]
・Ca(COOCH32・H2O:酢酸カルシウム・1水和物 [溶解度=34.7g /100ml]
・PAC:ポリ塩化アルミニウム [溶解度=45.8g/100ml]
・Al2(SO43・14〜18H2O [溶解度=36.4g/100ml]
・PAS−H−1L(固形分=28%)
[ニットーボーメディカル社製カチオン樹脂水溶液(ジアリルアンモニウム構造単位含 有)]
・PAS−J−81L(固形分=25%)
[ニットーボーメディカル社製カチオン樹脂水溶液(ジアリルアンモニウム構造単位含 有)]
・PAA−U7030(固形分=20%)
[ニットーボーメディカル社製カチオン樹脂水溶液]
・PE−30:カチオマスターPE−30(固形分=53%)
[四日市合成社製カチオン樹脂水溶液(エピクロロヒドリン構造単位含有)]
・P−1000:エポミンP−1000(固形分=30%)
[日本触媒社製ポリエチレンイミン水溶液]
・MZ477(固形分=23%)
[高松油脂社製カチオン系ウレタン樹脂水溶液]
・NS−625XC(固形分=12%)
[高松油脂社製カチオン系アクリル樹脂水溶液]
・マロン酸:和光純薬工業社製
・IPA:イソプロピルアルコール(沸点:82.6℃)
・PG:プロピレングリコール(沸点:188℃)
・BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点:230℃)
・DEG:ジエチレングリコール(沸点:244℃)
・グリセリン(沸点:290℃)
・サーフィノール465:エアープロダクツ社製アセチレンジオール系界面活性剤
<顔料分散樹脂1の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱し、重合性単量体としてスチレン35部、アクリル酸35部、ラウリルメタクリレート30部、および重合開始剤であるV−601(和光純薬製)6部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂1の溶液を得た。さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和し、水を100部添加し、水性化した。その後、100℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去し、固形分が50%になるように調整した。これより、顔料分散樹脂1の固形分50%の水性化溶液を得た。顔料分散樹脂1の重量平均分子量を東ソー社製HLC−8120GPCを用いて測定したところ28000であった。また、顔料分散樹脂1の酸価は272mgKOH/gであった。
<顔料分散樹脂2〜8の製造例>
重合性単量体として表2記載の単量体を使用する以外は顔料分散樹脂1と同様の操作にて顔料分散樹脂2〜8の固形分50%の水性化溶液を得た。
表2
表2に記載された略語は、以下の通りである。
St:スチレン
AA:アクリル酸
LMA:ラウリルメタクリレート
<顔料分散液1C、1M、1Y、1Kの製造例>
トーヨーカラー社製LIONOL BLUE 7358G(C.I.ピグメントブルー15:3)を20部、顔料分散樹脂1の水性化溶液(固形分50%)を20部、水60部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散液1Cを得た。また上記C.I.ピグメントブルー15:3を、以下に示す顔料にそれぞれ置き換える以外は顔料分散液1Cと同様にして、顔料分散液1M、1Y、1Kを得た。
Magenta:クラリアント社製Inkjet Magenta E5B02
(C.I.ピグメントバイオレッド19)
Yellow:トーヨーカラー社製LIONOL YELLOW TT−1405G
(C.I.ピグメントイエロー14)
Black:オリオンエンジニアドカーボンズ社製PrinteX85
(カーボンブラック)
<顔料分散液2〜8(C、M、Y、K)の製造例>
顔料分散樹脂として顔料分散樹脂2〜8の水性化溶液(固形分50%)を使用する以外は、顔料分散液1C、1M、1Y、1Kと同様の方法を用いることで、顔料分散液2〜8(それぞれC、M、Y、K)を得た。なお、顔料分散液の処方を表3に示す。
表3


<バインダー樹脂1(水溶性樹脂)の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱し、重合性単量体としてスチレン25部、メタクリル酸5部、メタクリル酸メチル70部および重合開始剤であるV−601(和光純薬製)6部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂1の溶液を得た。さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和し、水を100部添加し、水性化した。その後、100℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去し、固形分が50%になるように調整した。これより、バインダー樹脂1の固形分50%の水性化溶液を得た。バインダー樹脂1の重量平均分子量を東ソー社製HLC−8120GPCを用いて測定したところ18000であった。またバインダー樹脂1の酸価は32mgKOH/gであった。

<バインダー樹脂2(樹脂微粒子)の製造例>
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬製)0.2部とを仕込み、別途、2−エチルヘキシルアクリレート10部、メチルメタクリレート57部、スチレン30部、ジメチルアクリルアミド2部、メタクリル酸1部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬製)1.8部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1%をさらに加えた。内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液10部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液20部の10%を添加し重合を開始した。反応系内を60℃で5分間保持した後、内温を60℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液の残りを1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。ジエチルアミノエタノールを添加して、pHを8.5とし、さらにイオン交換水で不揮発分を50%に調整して樹脂微粒子水分散体を得た。得られた樹脂微粒子水分散体をバインダー樹脂2とした。バインダー樹脂2の計算上のガラス転移点温度は80℃である。
<インクジェットインキのセット1(CMYK)の製造例>
下記記載の材料をディスパーで撹拌を行いながら混合容器へ順次投入し、十分に均一になるまで撹拌した。その後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行った。また顔料分散液1Cの代わりに、顔料分散液1M、1Y、1Kをそれぞれ使用することにより、C、M、Y、Kの4色からなるインクジェットインキのセット1を得た。
・顔料分散液1C 25部
・バインダー樹脂1(固形分50%) 10部
・1,2−ブタンジオール 20部
・TEGO WET 280 1部
・プロキセルGXL 0.05部
・イオン交換水 43.95部
<インクジェットインキのセット2〜17の製造例>
下表4に記載の材料を使用する以外はインクジェットインキのセット1と同様の方法により、C、M、Y、Kの4色からなるインクジェットインキのセット2〜17を得た。
表4
ただし表4中、インクジェットインキのセット17における、Cabojetの配合量は、C、M、Yは50重量%、Kは25重量%である。
また、表4に記載された材料のうち、表1〜3に記載のない材料は以下の通りである。
・CaboJet:
Cyan:Cabojet250C(キャボット社製自己分散型シアン顔料水溶液 、固形分10%)、
Magenta:Cabojet265M(キャボット社製自己分散型マゼンタ顔 料水溶液、固形分10%)、
Yellow:(Cabojet270)キャボット社製自己分散型イエロー顔料 水溶液、固形分10%)、
Black:Cabojet200(キャボット社製自己分散型カーボンブラック 水溶液、固形分20%)
・1,2−BuD:1,2−ブタンジオール(沸点:192℃)
・1,2−HexD:1,2−ヘキサンジオール(沸点:223℃)
・iPDG:ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(沸点:207℃)
・TEGO WET280(エボニックジャパン社製シリコン系界面活性剤)
・プロキセルGXL:アーチケミカルズ社製1,2−ベンゾイソチアゾール−3−オン 溶液(防腐剤)
実施例1〜61、比較例1〜5について下記の評価を行った。評価結果について表5に示す。
<前処理液を付与した記録媒体の作製例>
上記で作成した前処理液をウェット膜厚4μmで塗工するため、松尾産業株式会社製KコントロールコーターK202、ワイヤーバーNo.0を用いて下記のフィルム基材に前処理液を塗布したのち、前処理液を塗布したフィルムを70℃のエアオーブンにて3分間乾燥させることで、前処理液を付与した記録媒体を作製した。
<評価に使用した基材>
・OPP:三井化学東セロ社製2軸延伸ポリプロピレンフィルム「OPU−1」(厚さ20μm)
・PET:東レ社製ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミラーT60」(厚さ25μm)
・NY:東洋紡社製ナイロンフィルム「ハーデンフィルムN1100」(厚さ15μm)
<評価1:前処理液の塗工適性の評価>
上記の前処理液を付与した記録媒体の作製例に基づき、前処理液を付与した記録媒体を作製し、前処理液がフィルム基材に均一に塗工できているか目視で確認を行った。△以上が実使用上可能領域である。
〇:塗工ムラが全くなくフィルム基材上に均一に塗工できていた
△:塗工ムラが僅かに見られるがフィルム基材上に塗工できていた
×:明らかに塗工ムラが見られ、フィルム基材上に均一塗工できていなかった
<印刷物の作製例>
記録媒体を搬送できるコンベヤの上部にインクジェットヘッドKJ4B−QA(京セラ社製)を設置し、インクジェットインキを充填した。なお上記インクジェットヘッドは設計解像度が600dpi、最大駆動周波数が30kHzであり、前記最大駆動周波数かつ印刷速度75m/分で印刷したとき、記録媒体搬送方向における記録解像度が600dpiとなる。次いで、コンベヤ上に前処理液を付与した記録媒体を固定したのち、前記コンベヤを一定速度で駆動させ、前記インクジェットヘッドの設置部を通過する際に、CMYKの順にインクジェットインキをドロップボリューム12pLで吐出し、印刷を行った。
印刷後、10秒以内に前記印刷物を70℃エアオーブンに入れ3分間乾燥させることで、印刷物を作成した。
<評価2:密着性の評価>
上記の前処理液を付与した記録媒体の作製例に基づき、前処理液を付与した記録媒体を作製した。さらに上記の印刷物の作製例に基づき印字率100%のベタ印刷を各色で行った。印刷後、10秒以内に前記印刷物を70℃エアオーブンに入れ3分間乾燥させることで、ベタ印刷物を作成した。作成した印刷物の表面にニチバン社製セロハンテープ(幅18mmまたは24mm)を指の腹でしっかり貼り、密着状態を確認した後にセロハンテープの先端を持ち、45度の角度を保ちながら瞬間的に引張り剥がす。剥がした後の印刷物の表面及びセロハンテープ面を目視で確認し、密着性を評価した。△以上が実使用上可能領域である。
◎:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が0〜5%
〇:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が5〜10%
△:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が10〜15%
×:セロハンテープの密着面に対する剥離面積が15%より大きかった
<評価3:混色滲みの評価>
上記の評価2と同様の条件で印刷を行い、前処理液を塗工したフィルム基材上に印字率を40〜320%まで諧調を変えた4C(CMYK)印刷物を作製し、印刷部のドット形状について光学顕微鏡を用いて200倍で観察し、混色滲みの評価を行った。評価結果は以下の通りとし、△以上が実使用上可能領域である。
◎:いずれの印字率においても4C印刷部のドットが独立しており、混色滲みが見られ なかった
○:印字率40〜280%の4C印刷部のドットが独立しており、混色滲みが見られな かった
△:印字率40〜240%の4C印刷部のドットが独立しており、混色滲みが見られな かった
×:印字率40〜200%の4C印刷部で明らかに混色滲みが見られた
<評価4:色ムラの評価>
上記の評価2と同様の条件で印刷を行い、前処理液を塗工したフィルム基材上に印字率を40〜320%まで諧調を変えた4C(CMYK)印刷物を作製し、4C(CMYK)印刷物における色ムラの程度を目視観察し、色ムラの評価を行った。評価結果は以下の通りとし、△以上が実使用上可能領域である。
◎:いずれの印字率においても4C印刷部の色ムラが見られなかった
○:印字率40〜280%の4C印刷部の色ムラが見られなかった
△:印字率40〜240%の4C印刷部の色ムラが見られなかった
×:印字率40〜200%の4C印刷部で明らかに色ムラが見られた
<評価5:乾燥性の評価>
上記の評価2と同様の条件で印刷を行い、前処理液を塗工したフィルム基材上に印字率320%の4C(CMYK)印刷物を作製し、印刷後、70℃エアオーブンに入れ各時間乾燥させることで、印刷物を作成した。乾燥させた後の印刷物の表面を指で擦り、印刷物表面の状態を目視観察することで乾燥性の評価を行った。評価結果は以下の通りとし、△以上が実使用上可能領域である。
◎:乾燥時間1分で印刷物が乾燥し、指で擦っても印刷面のインキが取れなかった
〇:乾燥時間1〜2分で印刷物が乾燥し、指で擦っても印刷面のインキが取れなかった
△:乾燥時間2〜3分で印刷物が乾燥し、指で擦っても印刷面のインキが取れなかった
×:乾燥時間2〜3分で印刷物が乾燥せずに、指で擦ると印刷面のインキが取れた
表5
比較例1は、ポリオレフィン樹脂粒子(A)を含まない前処理液の例であり、OPP基材に対する密着性に劣る結果となった。また比較例2は凝集剤(B)を含まない前処理液の例であり、滲みや色ムラに劣る、印刷画質の悪い印刷物が得られた。一方比較例3〜4は、ポリオレフィン樹脂粒子(A)、及び凝集剤(B)を含んでいるものの、前記ポリオレフィン樹脂粒子(A)の軟化温度が100℃より大きい例であり、やはり密着性に劣る結果であった。上記でも説明したように、軟化温度が好適な範囲から外れていることから、ポリオレフィン樹脂粒子(A)の成膜性が悪く、凝集剤(B)の不溶化が先行して発生したためであると考えられる。また比較例5は、凝集剤(B)として有機酸化合物を用いた例であり、密着性や乾燥性に劣る結果となった。詳細な理由は不明であるが、有機酸化合物は、金属塩やカチオン性高分子化合物に対し、ポリオレフィン樹脂粒子(A)の成膜を阻害することが考えられる。
上記比較例に対し、実施例1〜61で用いた前処理液1〜41は、軟化温度が50〜100℃であるポリオレフィン樹脂粒子(A)と、金属塩またはカチオン性高分子化合物から選ばれる凝集剤(B)とを含んでおり、塗工適性、密着性、滲み、色ムラ、乾燥性のいずれの評価についても、良好な結果であった。

Claims (5)

  1. 水性顔料インクジェットインキ印刷用のフィルム基材用前処理液であって、
    前記前処理液が、ポリオレフィン樹脂粒子(A)(塩素化ポリオレフィン樹脂粒子を含む場合を除く)と、凝集剤(B)と、水と、プロトン性有機溶を含み、
    前記ポリオレフィン樹脂粒子(A)が、軟化温度が50〜90℃であり、
    前記凝集剤(B)が、25℃における溶解度が5〜55g/100gH2Oである金属塩を含有する、フィルム基材用前処理液。
  2. 前記ポリオレフィン樹脂粒子(A)の50%粒子径(D50)が、10〜500nmである、請求項1記載のフィルム基材用前処理液。
  3. 前記プロトン性有機溶媒と水との沸点の加重平均値が、90〜130℃である、請求項1または2に記載のフィルム基材用前処理液。
  4. 表面張力が、20〜40mN/mである、請求項1〜3いずれかに記載のフィルム基材用前処理液。
  5. 請求項1〜4いずれか記載のフィルム基材用前処理液と、顔料、顔料分散樹脂、水溶性有機溶剤、及び、水を含む水性顔料インクジェットインキとからなるインキセットであって、
    前記顔料分散樹脂の酸価が、30〜375mgKOH/gであることを特徴とするインキセット。
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