JP2017043727A - インクジェット用水性インク組成物、前処理剤組成物及びインクジェット用印刷媒体 - Google Patents

インクジェット用水性インク組成物、前処理剤組成物及びインクジェット用印刷媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】画像の滲み及びビーディングを改善し、耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性などの定着性に優れたインクジェット用水性インク組成物、前処理剤組成物及びインクジェット用印刷媒体を提供する。【解決手段】本発明にかかるインクジェット用水性インク組成物は、インクジェット用印刷媒体に設けられた前処理層を構成する前処理剤組成物であって、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有するものと共に用いられるインクジェット用水性インク組成物において、アニオン性基を有する少なくとも1種の顔料と、ワックスとを含み、前記ワックスが、融点110℃〜150℃の範囲内であり、平均粒子径30nm〜150nmの範囲内であるポリエチレン系ワックスを含み、前記ポリエチレン系ワックスの含有量が、インクジェット用水性インク組成物の全質量に対し0.5質量%〜10質量%であり、前記ポリエチレン系ワックスに対する前記顔料の質量比が、0.6〜6であることを特徴とする。【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット用水性インク組成物、前処理剤組成物及びインクジェット用印刷媒体に関し、より詳細には、文字等の画像の滲み及びビーディングを改善し、例えば、オフセット印刷と同様に、耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性などの定着性に優れたインクジェット用水性インク組成物、前処理剤組成物及びインクジェット用印刷媒体に関する。
一般の印刷用紙、コート紙、アート紙、ボール紙及び紙器用紙等の印刷媒体の基材に対しては、インクジェット記録方法における印刷の前に、水性インクの滲みを防止する目的で前処理を行うことが知られている。前処理とは、具体的には、前処理剤を塗布し、乾燥する処理のことである。
産業用途でのインクジェット記録方法は、印刷の高速化に伴い インクジェットヘッドを往復運動させて印刷する、いわゆるスキャン方式での印刷方法から、当該インクジェットヘッドを1回の走査で印刷する、いわゆる1パス(シングルパス)方式での印刷方法に一般化している。1パス方式での印刷を可能にするインクジェット印刷装置は、通常、インクジェットヘッドが並べられ、基材幅以上の印刷幅をもつライン上のヘッドユニットを、色の数の分だけ備えた構造を有している。そのため、1パス方式での印刷の場合、短時間で、隣接するノズルから液滴が吐出され印刷することになる。また、1つの色が印刷媒体上に印刷されると、その印刷画像上に、異なる色が高速で印刷される。そのため、一般印刷用のコート紙など、水性インクの浸透性が悪い印刷媒体では、インク・オン・インクで色が滲むという問題がある。
印刷画像における色の滲みの問題に対しては、印刷媒体の基材に、予め前処理剤を塗布し 滲み防止処理を施すことが知られている。しかし、水性インクの浸透性は、印刷媒体の種類やメーカー、製造ロットにより異なる。そのため、浸透性の悪い印刷媒体に対して、多量の水性インクで印刷したり、高速で印刷する場合に、滲みや混色の発生を一層防止することが可能な前処理剤が求められている。また、従来の水性インクや前処理剤を用いても、印刷媒体に印刷された画像の耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性が優れているとはいえず、オフセット印刷物に比べ定着性に劣るという問題もある。
特開平10−119425号 特表2012−509795号
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、画像の滲み及びビーディングを改善し、耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性などの定着性に優れたインクジェット用水性インク組成物、前処理剤組成物及びインクジェット用印刷媒体を提供することにある。
本願発明者等は、前記問題点を解決すべく、インクジェット用水性インク組成物、前処理剤組成物及びインクジェット用印刷媒体について検討した。その結果、下記構成を採用することにより前記の問題点を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係るインクジェット用水性インク組成物は、前記の課題を解決する為に、インクジェット用印刷媒体に設けられた前処理層を構成する前処理剤組成物であって、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有するものと共に用いられるインクジェット用水性インク組成物において、アニオン性基を有する少なくとも1種の顔料と、ワックスとを含み、前記ワックスが、融点110℃〜150℃の範囲内であり、平均粒子径30nm〜150nmの範囲内であるポリエチレン系ワックスを含み、前記ポリエチレン系ワックスの含有量が、インクジェット用水性インク組成物の全質量に対し0.5質量%〜10質量%であり、前記ポリエチレン系ワックスに対する前記顔料の質量比が、0.6〜6であることを特徴とする。
前記の構成によれば、本発明のインクジェット用水性インク組成物(以下、「水性インク組成物」という。)は、基材の少なくとも一方の面に前処理層が設けられたインクジェット用印刷媒体(以下、「印刷媒体」という場合がある。)に対する、インクジェット方式での印刷に用いられるものである。ここで、前処理層は、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有する前処理剤組成物からなる。これらの含有成分のうち、カチオン性ポリマー及び多価金属塩は、印刷媒体に対する水性インク組成物の浸透性を向上させ、印刷画像の滲みの改善に寄与するものである。また、カチオン性澱粉は、印刷媒体に対する水性インク組成物の浸透性及び定着性の一層の向上に寄与するものである。
ここで、本発明の水性インク組成物は、ポリエチレン系ワックスを含有しているので、例えば、1パス(シングルパス)方式でのインクジェット記録方法により印刷しても、印刷画像の耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性を向上させることができる。特に、本発明の水性インク組成物は、カチオン性澱粉を含む前処理層を備えた印刷媒体に印刷して用いるものであり、当該前処理層におけるカチオン量はカチオン性澱粉を含まない場合と比較して増加している。そのため、水性インク組成物が前処理層に付着すると、当該水性インク組成物中の顔料が有するアニオン性基は、より多くのカチオンと反応することができる。その結果、水性インク組成物と印刷媒体との密着性を増大させることができ、テープ剥離性の一層の向上が図れる。
さらに、ポリエチレン系ワックスとしては、融点が110℃〜150℃のものを用いるので、印刷塗膜の表面の擦過による摩擦熱により、当該ポリエチレン系ワックスが熱変形ないし溶融するのを抑制し、耐擦過性が低下するのを防止している。また、ポリエチレン系ワックスとして平均粒子径が30nm〜150nmのものを用いるので、印刷画像に滲みやビーディングが発生するのを低減することができる。
すなわち、本発明のインクジェット用インク組成物は、印刷媒体の前処理層を構成する前処理剤組成物として、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有するものと組み合わせて用いることにより、文字等の画像の滲み及びビーディングを改善し、耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性などの定着性に優れた印刷画像の形成を可能にする。
ここで、前記ポリエチレン系ワックスの含有量は、インクジェット用水性インク組成物の全質量に対し0.5質量%〜10質量%の範囲内である。ポリエチレン系ワックスの含有量を0.5質量%以上にすることにより、印刷画像の塗膜表面にスリップ性を付与することができ、良好な耐摩擦性及びテープ剥離性の維持が図れる。その一方、ポリエチレン系ワックスの含有量を10質量%以下にすることにより、印刷画像における文字等のビーディングの発生を一層低減することができる。また、前記ポリエチレン系ワックスに対する前記顔料の質量比は、0.6〜6である。前記質量比を0.6以上にすることにより、光沢性の低下やノズルの目詰まり、吐出安定性の低下を防止することができる。その一方、前記含有量を6以下にすることにより、十分な耐擦過性を付与することができる。
尚、本発明において、「アニオン性基を有する顔料」とは、顔料粒子の表面にアニオン性基を有する顔料や、アニオン性基を有する樹脂により分散されてなる顔料を含む意味である。
また、本発明に係る前処理剤組成物は、前記の課題を解決する為に、前記に記載のインクジェット用水性インク組成物と共に用いられ、かつ、インクジェット用印刷媒体に設けられた前処理層を構成する前処理剤組成物において、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有し、前記カチオン性ポリマーの含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して5質量%〜30質量%であり、前記多価金属塩の含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して5質量%〜15質量%であり、前記カチオン性澱粉の含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して3質量%〜10質量%であることを特徴とする。
前記の構成によれば、本発明の前処理剤組成物は、インクジェット用印刷媒体に対する前処理に用いられるものであり、インクジェット方式での印刷媒体への印刷の際に、前記水性インク組成物と共に用いられるものである。ここで、水性インク組成物は、前述の通り、ポリエチレン系ワックスを含むものであり、当該ポリエチレン系ワックスは印刷後の塗膜表面にスリップ性を付与し、耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性を向上させ、印刷画像の滲みやビーディングの発生を防止し得るものである。
このような水性インク組成物に対し、本発明の前処理剤組成物は、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有する。カチオン性ポリマー及び多価金属塩は、印刷媒体に対する水性インク組成物の浸透性を向上させ、印刷画像の滲みの改善に寄与するものである。また、カチオン性澱粉は、印刷媒体に対する水性インク組成物の浸透性及び定着性の一層の向上に寄与するものである。そのため、例えば、1パス(シングルパス)方式でのインクジェット記録方法により、高速で印刷したり、あるいは多量のインク量で印刷を行っても、印刷画像に滲みが発生するのを低減し、良好な印刷画像を可能にする。また、前処理層にはカチオン性澱粉が含まれているため、水性インク組成物中の顔料が有するアニオン性基は、より多くのカチオンと反応することができる。その結果、水性インク組成物と印刷媒体との密着性を増大させることができ、テープ剥離性の一層の向上が図れる。
すなわち、本発明の前処理剤組成物は、前記水性インク組成物と共にインクジェット方式での印刷に用いられることにより、文字等の画像の滲み及びビーディングを改善し、耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性などの定着性に優れた印刷画像の形成を可能にする。
前記の構成に於いて、前記カチオン性ポリマーが、水溶性変性ポリアミン樹脂又は第4級アンモニウム塩ポリマーであることが好ましい。
さらに、前記の構成に於いては、前記水溶性変性ポリアミン樹脂が、ジメチルアミンエチレンジアミンエピクロロヒドリンコポリマー、又はジメチルアミンエピクロロヒドリンコポリマーであることが好ましい。
前記の構成に於いては、前記第4級アンモニウム塩ポリマーが、ポリ(2−ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド)であることが好ましい。
また、前記の構成に於いては、前記多価金属塩が、塩化カルシウムであることが好ましい。
また、本発明に係るインクジェット用印刷媒体は、前記の課題を解決する為に、前記に記載のインクジェット用水性インク組成物と共に用いられ、かつ、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられた前処理層とを少なくとも有するインクジェット用印刷媒体において、前記前処理層は、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有する前処理剤組成物からなり、前記カチオン性ポリマーの含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して5質量%〜30質量%であり、前記多価金属塩の含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して5質量%〜15質量%であり、前記カチオン性澱粉の含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して3質量%〜10質量%であることを特徴とする。
前記の構成によれば、本発明の印刷媒体は、インクジェット方式での印刷の際に、前記水性インク組成物と共に用いられるものである。ここで、水性インク組成物は、前述の通り、ポリエチレン系ワックスを含むものであり、当該ポリエチレン系ワックスは印刷後の塗膜表面にスリップ性を付与し、耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性を向上させ、印刷画像の滲みやビーディングの発生を防止し得るものである。
このような水性インク組成物に対し、本発明の印刷媒体の前処理層は、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有する。カチオン性ポリマー及び多価金属塩は、印刷媒体に対する水性インク組成物の浸透性を向上させ、印刷画像の滲みの改善に寄与するものである。また、カチオン性澱粉は、印刷媒体に対する水性インク組成物の浸透性及び定着性の一層の向上に寄与するものである。そのため、例えば、1パス(シングルパス)方式でのインクジェット記録方法により、高速で印刷したり、あるいは多量のインク量で印刷を行っても、印刷画像に滲みが発生するのを低減し、良好な印刷画像を可能にする。また、前処理層にはカチオン性澱粉が含まれているため、水性インク組成物中の顔料が有するアニオン性基は、より多くのカチオンと反応することができる。その結果、水性インク組成物と印刷媒体との密着性を増大させることができ、テープ剥離性の一層の向上が図れる。
すなわち、本発明の印刷媒体は、前記水性インク組成物と共にインクジェット方式での印刷に用いられることにより、文字等の画像の滲み及びビーディングを改善し、耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性などの定着性に優れた印刷画像の形成を可能にする。
本発明のインクジェット用水性インク組成物によれば、融点が110℃〜150℃のポリエチレン系ワックスを含有するので、例えば、オフセット印刷の場合と同等レベルの耐擦過性を付与することができる。また、前記ポリエチレン系ワックスの平均粒子径が30nm〜150nmであるので、印刷画像に滲みやビーディングが発生するのを抑制することができる。一方、本発明の前処理剤組成物によれば、カチオン性ポリマー及び多価金属塩を含有することにより、印刷媒体に対する水性インク組成物の定着性の向上を図ることができる。また、本発明の前処理剤組成物は、カチオン性澱粉を含有することにより、水性インク組成物の速やかな浸透性の向上を図ることができる。その結果、高速で印刷したり、あるいは多量のインク量で印刷を行っても、印刷画像に滲みが発生するのを低減し、良好な印刷画像を可能にする。
すなわち、本発明のインクジェット用水性インク組成物を用いて、本発明の前処理剤組成物からなる前処理層を備えたインクジェット用印刷媒体に、例えば、1パス(シングルパス)方式でのインクジェット記録方法により、高速で印刷したり、あるいは多量の水性インクで印刷を行った場合にも、文字等の画像の滲み及びビーディングを改善し、オフセット印刷と同様に、耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性などの定着性に優れた印刷を可能にする。
(インクジェット用水性インク組成物)
本実施の形態に係るインクジェット用水性インク組成物(以下、「水性インク組成物」という。)は、アニオン性基を有する顔料を少なくとも1種と、ワックスとを含み、主溶媒が水である水性インクである。また、本実施の形態の水性インク組成物はインクジェット記録用として好適に用いられるものである。色材として顔料を用いることから、本実施の形態の水性インク組成物は本来的には、染料を用いたインク組成物と比較して発色性や耐候性、耐水性等の点で優れている。
前記アニオン性基を有する顔料としては、顔料粒子の表面にアニオン性基を有する顔料や、アニオン性基を有する樹脂により分散されてなる顔料が挙げられる。これらは、併用されていてもよい。本実施の形態の顔料がアニオン性基を有することで、後述の前処理層に含まれるカチオン性ポリマー及びカチオン性澱粉におけるカチオン性基と反応させることができ、その結果、水性インク組成物と印刷媒体との密着性を増大させ、テープ剥離性の一層の向上が図れる。
顔料粒子の表面にアニオン性基を有する顔料としては、顔料粒子の表面にアニオン性基を化学的に結合させた、いわゆる自己分散型顔料が挙げられる。また、アニオン性基を有する樹脂により分散されてなる顔料としては、樹脂分散型顔料、カプセル化顔料等が挙げられる。
前記自己分散型顔料とは、例えば、顔料粒子の表面にカルボニル基、カルボキシル基、燐酸基若しくはスルホン基の少なくとも何れか1種の官能基、又はその塩が結合するように表面処理が施されたものである。これにより、顔料に水性媒体に対する自己分散機能を付与することができ、分散安定性を向上させることができる。その結果、インク組成物の保存安定性を良好にすることができる。また、余分な分散剤をインク組成物中に含有させることなく分散安定性が得られる点でも有効である。この様な自己分散型顔料としては、具体的には、例えば、CAB−O−JET(登録商標) 400、450C、465M、470Y、480M(いずれもキャボット・コーポレーション製)が挙げられる。
また、前記樹脂分散型顔料とは、アニオン性基の作用により水性媒体に溶解可能な水溶性樹脂により分散させたものである。前記樹脂分散型顔料に用いられる樹脂分散剤としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記カプセル化顔料とは、顔料粒子を樹脂で被覆したものをいう。このような樹脂としては特に限定されず、例えば、カルボン酸基又はスルホン酸基等のアニオン性基を有する有機高分子類などが挙げられる。
尚、前記顔料粒子としては特に限定されず、有機顔料粒子、無機顔料粒子の何れを用いることもできる。前記有機顔料粒子としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、チオインジゴ系顔料、トリフェニルメタンレーキ系顔料又はオキサジンレーキ系顔料等が挙げられる。より具体的には、黄色の色調を有するものとしては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、16、17、65、74、83、97、138、150、151、155が挙げられる。赤色の色調を有するものとしては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、21、22、23、31、32、37、38、41、48、49、50、51、52、57、58、60、64、83、88、89、90、112、114、122、123、166、188、202、C.I.ピグメントバイオレット19、23が挙げられる。青色の色調を有するものとしては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:3、15:4、16、25、75が挙げられる。緑色の色調を有するものとしては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、36が挙げられる。黒色の色調を有するものとしては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、7が挙げられる。市販されている着色顔料としては、例えばピグメントレッド122、ピグメントバイオレット19(Lansco Colors,Montvale,NJ社、又はBASF Color,Charlotte,NC社、又はClariant Colors,Charlotte,NC社、又はSun Chemical,Cincinnati,OH社から販売されているもの)、ピグメントブルー15:1(Fanwood Chemical,Fanwood,NJ社から販売されているもの)、ピグメントブルー15:3、ピグメント15:4、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー97(BASF Color,Charlotte,NC、又はClariant Colors,Charlotte,NC、又はSun Chemical,Cincinnati,OH社から販売されているもの)が挙げられる。
また、前記無機顔料粒子として、例えば、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては特に限定されず、酸性カーボンブラック、中性カーボンブラック、アルカリ性カーボンブラックが挙げられ、より具体的には、チャンネルブラック、ガスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラックが挙げられる。これらのカーボンブラックのうち、本実施の形態に於いてはチャンネルブラックが好ましい。尚、カーボンブラックの品質は、平均粒径、不透明度、色合い、安定性等の分散液の重要な特性に影響を与える場合がある。
また、前記カーボンブラックとしては市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、Elftex 8、Black Pearls(登録商標。以下、同様。)490、Black Pearls 120、Monarch(登録商標。以下、同様。)120、Monarch 700、Monarch 880、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400、Mogul(登録商標)L、Regal(登録商標。以下、同様。)99R、Regal 250R、Regal 300R、Regal 330R、Regal 400R、Regal 500R、Regal 660R(いずれもCabot社製)等が挙げられる。また、NIPex(登録商標。以下、同様。)150IQ、NIPex 150、Printex(登録商標。以下、同様。)55、Printex 80、Printex 90、Printex A、Printex G、Printex U、Printex V、Printex 140U、Printex 140V、Purex(登録商標)LS35、Corax(登録商標)HP160、Thermal Black N990、NIPex(登録商標)160IQ、NIPex(登録商標)90、Special black 4、Specialblack 4A、Special black 5、Special black 6、Special black 100、Special black 250、Color black FW1、Color black FW2、Color black FW2V、Color black FW18、Color black FW200、Color black S150、Color black S160、又はColor black S170(いずれもDegussa社製)等が挙げられる。また、Raven(登録商標。以下、同様。)780、Raven 5000UII、Raven 1255、Raven 2500U、Raven 3600U、Raven 3500、Raven 7000、Raven 1220、又はRaven 1225(いずれもColumbian社製)等が挙げられる。また、MA8、MA11、MA77、MA100、MA220、MA230、MA600、MCF88、#10B、#20B、#30、#33、#40、#44、#45、#45L、#50、#55、#95、#260、#900、970#、#1000、#2200B、#2300、#2350、#2400B、#2650、#2700、#4000B、又はCF9(いずれも三菱化学株式会社製)等が挙げられる。
前記顔料の水性インク組成物中における含有量は画像濃度に直接影響するものであり、水性インク組成物の保存性や粘度、pH等にも影響を及ぼすものである。従って、顔料の含有量は、これらの点を考慮して適宜設定すればよい。通常は、水性インク組成物の全質量に対し0.5質量%〜10質量%の範囲内であり、1質量%〜8質量%の範囲内が好ましく、3質量%〜6質量%の範囲内であることがより好ましい。顔料の含有量を0.5質量%以上にすることにより、画像濃度の低下を抑制することができる。その一方、顔料の含有量を10質量%以下にすることにより、光沢性の低下やノズルの目詰まり、吐出安定性の低下を防止することができる。
前記ワックスとしては、少なくともポリエチレン系ワックスを含むものを用いる。但し、ビーディングの発生を抑制し、十分な耐擦過性を付与するとの観点からは、前記ワックスは、天然ワックス(例えば、石油系ワックス、植物系ワックス、動植物系ワックス等)等の他のワックスが混合されておらず、ポリエチレン系ワックスのみからなるものが好ましい。
前記ポリエチレン系ワックスは、水性インク組成物中において、微粒子状態(即ち、エマルジョン状態又はサスペンション状態)で含有されていてもよい。ポリエチレン系ワックスを微粒子状態で含有することにより、水性インク組成物の粘度をインクジェット記録方式に於いて適正な範囲に調整しやすくなる。また、良好な保存安定性及び吐出安定性の維持が図れる。ポリエチレン系ワックスは、常法により水に乳化したものが使用される。
前記ポリエチレン系ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、エチレンとメタクリル酸あるいはアクリル酸等のカルボン酸基を有するモノマーからなる共重合体ワックス、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。また、市販品としては、例えば、JONCRYL(登録商標) WAX 26J(BASFジャパン(株)製)、AQUACER(登録商標)513(ビックケミージャパン(株)製)、ケミパール(登録商標)W900、ケミパールWF4KX12(何れも三井化学(株)製)、HYTEC E−6500、HYTEC E−9015、HYTEC E−1000、HYTEC E−4A(何れも東邦化学(株)製)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
ポリエチレン系ワックスの融点としては110℃〜150℃の範囲内であり、好ましくは120℃〜140℃の範囲内である。ポリエチレン系ワックスとして融点が110℃以上のものを用いることにより、印刷塗膜の表面の擦過による摩擦熱によって当該ポリエチレン系ワックスが熱変形ないし溶融し、耐擦過性が低下するのを防止することができる。
前記ポリエチレン系ワックスの平均粒子径(D50)は30nm〜150nmの範囲内であり、好ましくは30nm〜90nmの範囲内である。ポリエチレン系ワックスの平均粒子径を30nm以上にすることにより、優れた耐擦過性を維持しながらビーディングの発生を抑制することができる。尚、平均粒子径の数値範囲の下限値を30nmとしても印刷塗膜の耐擦過性が保持されるのは、ポリエチレン系ワックス粒子の比重が小さいことに起因して、印刷塗膜の表層部分にもポリエチレン系ワックスが存在するためであると推測される。また、ポリエチレン系ワックスの平均粒子径を150nm以下にすることにより、ポリエチレン系ワックスの含有に起因して印刷塗膜表面に生じる凹凸差が大きくなりマット面となるのを抑制することができる。その結果、印刷塗膜の光沢性が低下するのを防止することができる。尚、ポリエチレン系ワックスの平均粒子径(D50)は、マイクロトラックUPA−EX150(商品名、日機装(株)製)を用いて動的光散乱法により測定した値である。
前記顔料とポリエチレン系ワックスの質量比((顔料の質量)/(ポリエチレン系ワックスの質量))は、0.6〜6の範囲であり、好ましくは1〜6、より好ましくは2〜6の範囲内である。前記質量比を0.6以上にすることにより、ビーディングの発生を一層抑制することができる。その一方、前記質量比を6以下にすることにより、印刷画像の耐摩擦性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性が低下し過ぎるのを防止することができる。
本実施の形態の水性インク組成物中には、乾燥促進、インクジェットヘッドの吐出安定性の向上、保湿性の付与等の観点から、湿潤剤(乾燥防止剤)として水溶性有機溶媒が含まれているのが好ましい。前記水溶性有機溶媒としては、例えば、炭素数が2〜10のアルカン若しくはアルケンのジオール、トリオール又はモノアルコール等を用いることができる。これらの水溶性有機溶媒のうち、乾燥性と湿潤性の両立の観点からは、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールが好ましい。また、これらの水溶性有機溶媒は、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
但し、本実施の形態の水性インク組成物中には、グリセリンを実質的に含有しない方が好ましい。これにより、印刷物の乾燥性が低下するのを防止することができる。その結果、種々の記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に於ける、画像の定着性の低下を抑制することができる。
前記水溶性有機溶媒の含有量としては特に限定されず、必要に応じて適宜設定され得る。通常は、水性インク組成物の全質量に対し6質量%〜40質量%の範囲が好ましく、8質量%〜35質量%の範囲内がより好ましく、10質量%〜35質量%の範囲内が特に好ましい。
また、本実施の形態の水性インク組成物中には、グリコールエーテル類が含まれていてもよい。これにより、他の成分の水性インク組成物に対する溶解性を向上させることができる。また、後述の界面活性剤等と比較して、過度な表面張力の低下を引き起こすことなく、記録媒体に対する浸透性の向上が図れる。これにより、非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対しても、濃淡ムラが少ない高精細な画像の記録を可能にする。
前記グリコールエーテル類の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記グリコールエーテル類の含有量は、他の成分の水性インク組成物に対する溶解性、記録媒体に対する濡れ性、浸透性を向上させて濃淡ムラを低減させる効果、水性インク組成物の保存安定性及び吐出安定性の確保等の観点から適宜設定することができる。通常は、水性インク組成物の全質量に対して0.1質量%〜40質量%の範囲内が好ましい。0.1質量%以上にすることにより、水性インク組成物の濡れ性、浸透性、乾燥性が低下するのを防止し、高精細の印刷画像を得ることができる。また、印刷濃度(発色性)の確保も図れる。また、40質量%以下にすることにより、水性インク組成物の粘度が高くなり過ぎるのを防止し、ヘッドノズルの目詰まりの発生を抑制することができる。また、水性インク組成物中での溶解性の低下を防止し、保存安定性の確保が図れる。
また、本実施の形態の水性インク組成物中には、界面活性剤が含まれていてもよい。印刷画像の画質やインクの乾燥時間はインクの記録媒体表面に対する濡れ性及び浸透性に依存する。水性インク組成物中に界面活性剤を添加することにより、当該水性インク組成物の液滴と記録媒体の界面の界面張力を低下させるので、液滴の濡れ性及び浸透性を向上させることができる。その結果、濃淡ムラの少ない高精細の画像を印刷することができる。前記界面活性剤としては特に限定されず、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
前記アセチレングリコール系界面活性剤は、例えば、表面張力及び界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性もほとんどないという特性を有する。従って、アセチレングリコール系界面活性剤を水性インク組成物中に配合することにより、表面張力やヘッドノズル面等のインクと接触するプリンター部材との界面張力を適正に保つことができる。その結果、ヘッドノズルに於ける液滴の吐出安定性を高めることができる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、記録媒体に対して良好な濡れ性を示し、浸透剤としても作用するため、濃淡ムラや滲みが発生するのを低減して高精細の印刷画像を得ることができる。
前記アセチレングリコール系界面活性剤としては特に限定されず、例えば、サーフィノール(登録商標)104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(商品名、いずれもAir Products and Chemicals. Inc.社製)等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
前記アセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、水性インク組成物の全質量に対して、0.2質量%〜3質量%の範囲内であることが好ましく、0.5質量%〜2質量%の範囲内であることがより好ましい。
また、前記シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。より詳細には、BYK−306、307、333、341、345、346、348(商品名、いずれもビックケミージャパン(株)製)等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記シリコーン系界面活性剤の含有量は、水性インク組成物の全質量に対して、0.2質量%〜3質量%の範囲内であることが好ましく、0.5質量%〜2質量%の範囲内であることがより好ましい。
本実施の形態に係る水性インク組成物に於いては、水(主溶媒としての水)を含有する。前記水としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものを用いるのが好ましい。特に、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘ってカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、水の含有量としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
本実施の形態の水性インク組成物において、当該水性インク組成物の液滴を記録媒体に定着させるとの観点からは、バインダーを含有させることができる。これにより、印刷直後の印刷画像の耐傷性及び耐擦過性の向上が図れる。前記バインダーとしては特に限定されず、例えば、アクリル−スチレン、ウレタン、ウレタン−アクリルハイブリッド、ポリエステルのエマルション又は水溶性樹脂等が挙げられる。但し、本実施の形態の水性インク組成物においては、前記バインダーを省略することも可能である。本実施の形態の水性インク組成物は、バインダー樹脂を含有しなくても、記録媒体に対する耐擦過性やテープ剥離性、耐スクラッチ性等の定着性に優れているからである。
更に、本実施の形態の水性インク組成物は、その他の添加剤として、更にpH調整剤、防腐防かび剤、キレート化剤等を含有していてもよい。これらの添加剤の含有量は適宜必要に応じて設定され得る。
前記pH調整剤としては特に限定されず、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
前記防腐防かび剤としては特に限定されず、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。防腐防かび剤の添加により、微生物の発生を抑制し、ノズル詰まりを防止することができる。
前記キレート化剤としては特に限定されず、例えば、エチレンジアミン四酢酸及びそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。キレート化剤の添加によりノズル詰まり等の発生を防止することができる。
(前処理剤組成物)
次に、本実施の形態の前処理剤組成物について、以下に説明する。
本実施の形態の前処理剤組成物は、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有するものであり、インクジェット用印刷媒体(以下、「印刷媒体」という。)の基材表面に対する前処理のために用いられるものである。
前記カチオン性ポリマーは、ポリマーの繰返し単位をなす鎖中に少なくとも1個の陽イオンとなる置換基(カチオン性基)を有するポリマーを意味する。カチオン性ポリマーを含有することにより、水性インク組成物の定着性の向上が図られる。例えば、水性インク組成物に顔料等が含まれている場合、当該顔料がカチオン性ポリマーの作用により早期に水と分離して凝集し、印刷媒体上に早期に定着させることができる。カチオン性ポリマーは、具体的には、例えば、水溶性変性ポリアミン樹脂、第4級アンモニウム塩ポリマー等が挙げられる。
前記水溶性変性ポリアミン樹脂としては特に限定されず、例えば、ジメチルアミンエチレンジアミンエピクロロヒドリンコポリマー、ジメチルアミンエピクロロヒドリンコポリマー等が挙げられる。これらは適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。さらに、水溶性変性ポリアミン樹脂としては市販品を用いることも可能であり、そのような市販品としては、例えば、カチオマスター(登録商標)PE−10、PD−7(商品名、いずれも四日市合成(株)製)等が挙げられる。
また、前記第4級アンモニウム塩ポリマーとしては特に限定されず、例えば、ポリ(2−ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2−ヒドロキシ3−メタクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2−ヒドロキシ3−メタクリロキシプロピルトリエチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2−ヒドロキシ3−アクリロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2−ヒドロキシ3−アクリロキシプロピルトリエチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2−メタクリロキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(2−アクリロキシエチルトリエチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)の塩、ポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)の塩、ポリ(ジエチルアミノエチルアクリレート)の塩、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)の塩、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート)の塩、ポリ(4−ビニルNメチルピリジニウムクロライド)、ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジエチルジアリルアンモニウムクロライド)ポリエチレンイミンハイドロクロライド等が挙げられる。これらは適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。さらに、第4級アンモニウム塩ポリマーとしては市販品を用いることも可能であり、そのような市販品としては、例えば、パピゲオンP−105、パピゲオンP−109、パピゲオンP−271(商品名、いずれもセンカ(株)製)等が挙げられる。
カチオン性ポリマーの含有量は、前処理剤組成物の全質量に対し、5質量%〜30質量%の範囲であり、5質量%〜10質量%の範囲が好ましい。カチオン性ポリマーの含有量を5質量%以上にすることにより、水性インク組成物の定着性の維持が可能になる。
前記多価金属塩は、水性インク組成物の定着性の向上に寄与するものである。多価金属塩は、具体的には、例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、シュウ酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等があげられる。これらは適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。また、これらの多価金属塩のうち、本実施の形態に於いては塩化カルシウムが好ましい。
多価金属塩の含有量は、前処理剤組成物の全質量に対し、5質量%〜15質量%の範囲である、5質量%〜10質量%の範囲が好ましい。多価金属塩の含有量を5質量%以上にすることにより、水性インク組成物の定着性の維持が可能になる。
前記カチオン性澱粉は、水性インク組成物の浸透性及び定着性の向上に寄与するものであり、その粒子表面にカチオンを有する澱粉である。具体的には、例えば、トウモロコシ、小麦、馬鈴薯、タピオカ等の生澱粉に、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩等の塩基性窒素を導入させた澱粉等が挙げられる。これらの塩基性窒素は適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を生澱粉に導入することができる。また、前記のカチオン性澱粉は適宜必要に応じて、単独で又は二種以上を前処理剤組成物中に配合することができる。
カチオン性澱粉の含有量は、前処理剤組成物の全質量に対し、3質量%〜10質量%の範囲であり、5質量%〜10質量%の範囲が好ましい。カチオン性澱粉の含有量を3質量%以上にすることにより、水性インク組成物の浸透速度の維持が可能になる。
本実施の形態の前処理剤組成物に於いては、適宜必要に応じて、他の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、ワックス類、分散剤、流動変性剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、表面サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、滑剤、防腐剤及び香料等が挙げられる。
前記添加剤のうち、前記界面活性剤としては特に限定されず、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。これらの界面活性剤のうち、本実施の形態に於いては、アセチレングリコールが好ましい。
界面活性剤の含有量は、前処理剤組成物の全質量に対し、例えば、1質量%程度であることが好ましい。これにより、塗布媒体としての基材(例えば、コート紙等)への濡れ性を向上させ、塗布性が向上し、より均一に塗布することができる。
本実施の形態の前処理剤組成物には水が用いられるのが好ましい。水としては特に限定されないが、イオン交換水や純水等が好ましい。水の含有量は、例えば、他の含有成分の残部とすることができる。
(インクジェット用印刷媒体)
本実施の形態のインクジェット用印刷媒体(以下、「印刷媒体」という。)は、基材と、当該基材の少なくとも一方の面に設けられた前処理層とを少なくとも有し、インクジェット記録方法に用いられるものである。
前記基材は特に限定されず、例えば一般の印刷用紙、上質紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、再生紙、パライタ紙、キャストコート紙、ボール紙、コンデンサー紙、グラシン紙等の紙類等が挙げられる。本発明に於いては、インクジェット用インク組成物(以下、「インク組成物」という。)の吸収性が低い記録媒体対しても好適に用いることができる。
前処理層は、前記前処理剤組成物からなり、印刷媒体に対する水性インク組成物の定着性及び浸透性を同時に向上させるものである。前処理層は基材の表面及び/又は裏面の全面、又はその一部に設けられていてもよい。
前処理層の(乾燥塗布後の)厚さは1μm〜20μmの範囲内が好ましく、1μm〜5μmの範囲内がより好ましい。厚さを1μm以上にすることにより、水性インク組成物の定着性及び浸透性の付与が図られる。その一方、厚さを20μm以下にすることにより、前処理剤組成物の塗布後の乾燥速度の短縮化が可能になる。
前記前処理層は、前処理剤組成物を含有したコーティング液を基材上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。コーティング液の塗布方法としては特に限定されず、例えば、各種ブレードコータ、ロールコータ、エアーナイフコータ、バーコータ、ロッドコータ、ゲートロールコータ、カーテンコータ、ショートドウェルコータ、グラビアコータ、フレキソグラビアコータ、サイズプレス等の各種装置を用いて行うことができる。
前記コーティング液の基材への塗布量は、形成したい前処理層の厚さに応じて適宜設定される。通常は、固形分換算で0.3cc/m〜6cc/mの範囲が好ましく、0.3cc/m〜1.5cc/mの範囲がより好ましい。塗布量が0.3cc/m未満であると、印刷媒体に十分な定着性と浸透性を付与することができず、良好な印刷画像の画質が得られない場合がある。その一方、塗布量が6cc/mより多いと、印刷媒体にカールが発生し、取り扱い性が低下する場合がある。
前記コーティング液の塗布後の乾燥は特に限定されず、例えば、熱風乾燥や自然乾燥を行うことができる。乾燥条件は、コーティング液の塗布量などに応じて、適宜変更して設定することができる。尚、乾燥後、得られた印刷媒体に対し、その表面の平滑度又は表面強度を高めるために、必要に応じて、カレンダー処理、スーパーカレンダー処理等を行ってもよい。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、下記の実施例に記載されている材料や含有量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらに限定するものではない。
(水性インク組成物)
下記表1に示す配合組成にて、水性インク組成物A〜Jを調製した。各水性インク組成物の調製は、次の操作によって調製した。即ち、表1に示す各材料を容器中に入れて混合し、マグネチックスターラーにて常温で1時間撹拌した。その後、粗大粒径及び異物の除去のために混合液を濾過した。濾過用のフィルターとしては、濾過精度1μmのメンブランフィルターを用いた。これにより、水性インク組成物A〜Jを得た。尚、表1中の数値は全て質量%で表したものである。また、水は水性インク組成物の全量が100質量%となるように添加した。
Figure 2017043727
(前処理剤組成物)
前処理剤組成物は、下記表2に示す材料を用いて調製した。尚、表2中の水溶性変性ポリアミン樹脂としてはジメチルアミンエピクロロヒドリン、カチオン性澱粉としてはDD4280(商品名、星光PMC(株)製)、界面活性剤としてはアセチレングリコール(商品名;オルフィンE1010、日信化学工業(株)製)を用いた。これにより、前処理剤組成物a及びbを得た。
Figure 2017043727
(実施例1〜3)
印刷媒体としては、基材としての印刷用紙(商品名:ニューウルトラH、日本製紙(株)製)に、前処理剤組成物aを用いて前処理を施したものを用いた。前処理は、先ず、フレキソコーター(K303マルチコーター、RK print coat instrument製)を用いて、印刷用紙上に前処理剤組成物aを塗布した。塗布量は固形分換算で1cc/mとした。また、フレキソ版として、線数が100線の格子セルを用いた。その後、塗布層を、加熱温度120℃、加熱時間2minの条件下で加熱乾燥した。これにより、各実施例1〜3に係る印刷媒体を作製した。
次に、前記表1に示す配合組成にて作製した水性インク組成物A〜Cを用いて、それぞれの印刷媒体に対し、1パス方式でのインクジェット印刷を行った。1パス方式での印刷は、インクジェットヘッド(京セラ(株)製)を備えた実験機を用いた。印刷は、ベタ印刷と文字印刷を行った。尚、印刷速度は、25m/minとした。
(比較例1〜5)
比較例1〜5においては、前処理剤組成物として、前記表2に示す通り、カチオン性澱粉を含有しない前処理剤組成物bに変更した。また、水性インク組成物としては、前記表1に示す水性インク組成物A〜Dを用いた。それ以外は、前記実施例1等と同様にして、印刷媒体上に1パス方式でのインクジェット印刷を行った。
(実施例4〜6)
実施例4〜6においては、水性インク組成物として、前記表1に示す水性インク組成物E〜Gに変更した。それ以外は、前記実施例1等と同様にして、印刷媒体上に1パス方式でのインクジェット印刷を行った。
(比較例6〜8)
比較例6〜8においては、水性インク組成物として、前記表1に示す水性インク組成物E〜Gに変更した。また、前処理剤組成物として、前記表2に示す通り、カチオン性澱粉を含有しない前処理剤組成物bに変更した。それ以外は、前記実施例1等と同様にして、印刷媒体上に水性インク組成物を用いた印刷を行った。
(比較例9〜14)
比較例9〜14においては、水性インク組成物として、前記表1に示すとおり、ポリエチレン系ワックスを含有しない水性インク組成物H〜Jに変更した。また、比較例9〜11においては、前処理剤組成物として、前記表2及び表5に示す通り、カチオン性澱粉を含有する前処理剤組成物aに変更し、比較例12〜14においては、カチオン性澱粉を含有しない前処理剤組成物bに変更した。それ以外は、前記実施例1等と同様にして、印刷媒体上に水性インク組成物を用いた印刷を行った。
Figure 2017043727
Figure 2017043727
Figure 2017043727
(耐擦過性)
耐擦過性の評価は、各実施例及び比較例で作製した試料に対して行った。すなわち、学振型摩擦堅牢試験機(安田精機株式会社製)を用いて、前記コート紙の印刷面に摩擦紙(商品名:OKトップコート、王子製紙(株)製)を乗せ、荷重500gにて印刷面を10回擦った。その後、摩擦紙に対する色移りの度合を評価するために、その摩擦面をスキャナ(EPSON GT−X820、セイコーエプソン(株)製)で画像として取り込んだ。スキャン条件は48bitカラー、解像度600dpi、画像補正なしとした。更に、Photoshop(登録商標)を用いて画像の平均化処理を行った。平均化の範囲は15mm×15mmとした。
その後、摩擦紙への色移り度合を数値化するために、摩擦紙に於けるシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のR、G、B値を、0〜255の256段階からそれぞれ測定した(以下、例えば、シアンの色移り部分のR値はCなどと表す。)。また、コート紙の印刷面に擦過していない摩擦紙についても、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のR、G、B値をそれぞれ測定しておいた(以下、例えば、R値はRef.などと表す。)。
シアン顔料を含むインク組成物を用いた印刷物の色移り度合いの計算方法は、次の通りとした。即ち、シアンは(R,G,B)=(0,255,255)で表すことができ、R値が0に近づくほど摩擦紙へのシアンの色移りが濃くなると考えることが出来る。そのため、シアンの色移り度合いは下記式により算出して数値化した。
(シアンの色移り度合い)=Ref.−C
同様に、マゼンタ顔料を含むインク組成物を用いた印刷物の色移り度合いについては、マゼンタを(R,G,B)=(255,0,255)で表すことができ、G値が0に近づくほど摩擦紙へのマゼンタの色移りが濃くなると考えられるので、下記式により算出した。
(マゼンタの色移り度合い)=Ref.−M
また、イエロー顔料を含むインク組成物を用いた印刷物の色移り度合いについては、イエローが(R,G,B)=(255,255,0)で表すことができ、B値が0に近づくほど摩擦紙へのイエローの色移りが濃くなると考えられるので、下記式により算出した。
(イエローの色移り度合い)=Ref.−Y
ブラック顔料を含むインク組成物を用いた印刷物の色移り度合いについては、ブラックが(R,G,B)=(0,0,0)で表すことができ、R、B、G値がそれぞれ0に近づくほど摩擦紙へのブラックの色移りが濃くなると考えられるので、下記式により算出した。
(ブラックの色移り度合い)=Max(Ref.−K、Ref.−K、Ref.−K
ここで、上記式のブラックの色移り度合いは、(Ref.−K)、(Ref.−K)、(Ref.−K)のそれぞれの値のうち、最も大きい値とした。得られた色移り度合の値について、結果を表3〜5に示す。
(テープ剥離性)
テープ剥離性の評価は、各実施例及び比較例で作製した試料に対して行った。すなわち、粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標)No.405、ニチバン(株))を印刷面に貼り付け、その後粘着テープを剥がしたときの印刷面の剥がれやテープへの移り状態を確認することにより、テープ剥離性を評価した。評価基準は以下の通りとした。結果を表3〜5に示す。
○:印刷面の剥がれ・粘着テープへの付着が認められなかった
△:印刷面の剥がれはないが、粘着テープへの付着がわずかに認められた
×:印刷面に剥がれが生じた
(耐スクラッチ性)
耐スクラッチ性は、前記耐擦過性の評価の場合と同様の条件にてコート紙(OKボール、王子製紙(株)製)上にベタ印刷を行った。次に、コート紙の印刷面を爪で擦り、印刷面に傷が付くか否かを確認した。評価基準は以下の通りとした。結果を表3〜5に示す。
○:色材の剥離なし
×:色材の剥離あり
(結果)
表3に示す実験結果から分かる通り、各実施例1〜3とも、耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性が良好であることが確認された。その一方、比較例1、3〜5においては、前処理剤組成物にカチオン性澱粉が含まれていないことから、粘着テープへの付着が確認されたり、印刷面に剥がれが生じ、テープ剥離性が低下することが確認された。また、比較例1及び5では、色材の剥離が認められ、耐スクラッチ性も低下することが確認された。
また、表4に示すとおり、ポリエチレン系ワックスに対する顔料の質量比が約6程度で、かつ、顔料の濃度3、4、6質量%の場合について、それぞれ耐擦過性、テープ剥離性及び耐スクラッチ性の評価をした。その結果、耐擦過性及び耐スクラッチ性については、実施例4〜6及び比較例6〜8において、共に良好であったものの、テープ剥離性について、比較例6〜8においていずれも印刷面に剥がれが生じた。
さらに、表5に示すとおり、比較例9〜14では、ポリエチレン系ワックスを含有しない水性インク組成物を用いて、前処理剤組成物中のカチオン性澱粉の有無による影響について実験を行った。その結果、いずれの場合においても、テープ剥離性及び耐スクラッチ性が低下することが確認された。
尚、各実施例及び比較例の全てにおいて、印刷画像の滲みも観察されず、良好な画質を得ることができた。

Claims (7)

  1. インクジェット用印刷媒体に設けられた前処理層を構成する前処理剤組成物であって、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有するものと共に用いられるインクジェット用水性インク組成物において、
    アニオン性基を有する少なくとも1種の顔料と、ワックスとを含み、
    前記ワックスが、融点110℃〜150℃の範囲内であり、平均粒子径30nm〜150nmの範囲内であるポリエチレン系ワックスを含み、
    前記ポリエチレン系ワックスの含有量が、インクジェット用水性インク組成物の全質量に対し0.5質量%〜10質量%であり、
    前記ポリエチレン系ワックスに対する前記顔料の質量比が、0.6〜6であるインクジェット用水性インク組成物。
  2. 請求項1に記載のインクジェット用水性インク組成物と共に用いられ、かつ、インクジェット用印刷媒体に設けられた前処理層を構成する前処理剤組成物において、
    カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有し、
    前記カチオン性ポリマーの含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して5質量%〜30質量%であり、
    前記多価金属塩の含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して5質量%〜15質量%であり、
    前記カチオン性澱粉の含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して3質量%〜10質量%である前処理剤組成物。
  3. 前記カチオン性ポリマーが、水溶性変性ポリアミン樹脂又は第4級アンモニウム塩ポリマーである請求項2に記載の前処理剤組成物。
  4. 前記水溶性変性ポリアミン樹脂が、ジメチルアミンエチレンジアミンエピクロロヒドリンコポリマー、又はジメチルアミンエピクロロヒドリンコポリマーである請求項3に記載の前処理剤組成物。
  5. 前記第4級アンモニウム塩ポリマーが、ポリ(2−ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド)である請求項3に記載の前処理剤組成物。
  6. 前記多価金属塩が、塩化カルシウムである請求項2〜5の何れか1項に記載の前処理剤組成物。
  7. 請求項1に記載のインクジェット用水性インク組成物と共に用いられ、かつ、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられた前処理層とを少なくとも有するインクジェット用印刷媒体において、
    前記前処理層は、カチオン性ポリマー、多価金属塩及びカチオン性澱粉を少なくとも含有する前処理剤組成物からなり、
    前記カチオン性ポリマーの含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して5質量%〜30質量%であり、
    前記多価金属塩の含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して5質量%〜15質量%であり、
    前記カチオン性澱粉の含有量が、前処理剤組成物の全質量に対して3質量%〜10質量%であるインクジェット用印刷媒体。
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