JPWO2018056455A1 - 超高温殺菌処理した材料を含む原料ミックスを用いた発酵乳の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、従来技術の問題点を解決し、流通時に組織を維持できる程度の硬度を有する発酵乳をより経済的に有利な手段で得ることを課題とする。
本発明は、原料ミックスを高圧で均質化し、脂肪の平均粒径を小さくし発酵することを含む発酵乳の製造方法に関する。とくに本発明は、超高温殺菌処理した材料を用いて発酵乳を製造する方法であって、超高温殺菌処理した材料を含む原料ミックスの脂肪を高圧で均質化し、発酵することを含む、前記方法、ならびに、該方法で製造された発酵乳に関する。
本発明は、原料ミックスを高圧で均質化し、脂肪の平均粒径を小さくし発酵することを含む発酵乳の製造方法に関する。とくに本発明は、超高温殺菌処理した材料を用いて発酵乳を製造する方法であって、超高温殺菌処理した材料を含む原料ミックスの脂肪を高圧で均質化し、発酵することを含む、前記方法、ならびに、該方法で製造された発酵乳に関する。
Description
本発明は、発酵乳の製造方法および該製造方法によって得られる発酵乳に関する。
牛乳などの乳製品では、一般に、超高温殺菌処理(UHT)が行われている。高温殺菌処理(HTST)や低温殺菌処理(LTLT)に比べ、短時間で殺菌を行うことができ、効率がよく、乳タンパク質の加熱変性が少ないとの利点がある。一方、発酵乳用の原料ミックスは、発酵前に加熱殺菌が行われるところ、かかる加熱殺菌は、高温殺菌処理(HTST)で行われていた。原料ミックスを超高温殺菌処理(UHT)のような高温にさらすと、原料ミックス中のタンパク質が変性することから、商品として十分な硬度を有するヨーグルトが得られなかったためである(特許文献1)。ヨーグルトカードの物性は、ホエイタンパク質の熱変性が大きな影響を及ぼすことが知られている(非特許文献1および2)。
これまで、高温短時間殺菌処理を用いる発酵乳の製造方法として、原料ミックスの溶存酸素濃度を低減させてから、原料ミックスを高温短時間殺菌処理した後に、低温で発酵させることによって、流通時に組織を維持できる程度の硬度を有する発酵乳の製造方法が開示されている(特許文献2および3)が、溶存酸素濃度を低減させるための関連設備が必要となり、必ずしも経済的に有利な製造方法とはいえなかった。
A. E. LABROPOULOS et al., "WHEY PROTEIN DENATURATION OF UHT PROCESSED MILK AND ITS EFFECT ON RHEOLOGY OF YOGURT", Journal of Texture Studies 12(3):365-374, 1981.
野口智弘、「ヨーグルト製品の凝固性に対する新しいアプローチ〜脱脂(粉)乳の加熱変性度の影響〜」、畜産の情報国内編(202)、26-29頁、2006年8月。
したがって本発明は、従来技術の問題点を解決し、流通時に組織を維持できる程度の硬度を有する発酵乳をより経済的に有利な手段で得ることを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討する中で、原料ミックスを均質化、とくに高圧で均質化して、原料ミックスの脂肪の平均粒径を小さくすることにより、前記の課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、以下に関する。
[1] 超高温殺菌処理した材料を用いて発酵乳を製造する方法であって、超高温殺菌処理した材料を含む原料ミックスの脂肪を均質化し、発酵することを含む、前記方法。
[2] 超高温殺菌処理した材料が、乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、部分脱脂乳、部分脱脂濃縮乳、部分脱脂粉乳、クリームおよびバターからなる群から選択される1種または2種以上である、前記[1]に記載の方法。
[3] 超高温殺菌処理の温度が、120℃〜150℃である、前記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 原料ミックス中の脂肪の平均粒径が0.8μm以下になるように均質化する、前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法。
[1] 超高温殺菌処理した材料を用いて発酵乳を製造する方法であって、超高温殺菌処理した材料を含む原料ミックスの脂肪を均質化し、発酵することを含む、前記方法。
[2] 超高温殺菌処理した材料が、乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、部分脱脂乳、部分脱脂濃縮乳、部分脱脂粉乳、クリームおよびバターからなる群から選択される1種または2種以上である、前記[1]に記載の方法。
[3] 超高温殺菌処理の温度が、120℃〜150℃である、前記[1]または[2]に記載の方法。
[4] 原料ミックス中の脂肪の平均粒径が0.8μm以下になるように均質化する、前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 原料ミックスを加熱殺菌することをさらに含む、前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 原料ミックスの溶存酸素濃度を低減することをさらに含む、前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 原料ミックスを加熱殺菌する前に、原料ミックスの溶存酸素濃度を低減することを含む、前記[6]に記載の方法。
[8] 原料ミックスを発酵する前に、原料ミックスの溶存酸素濃度を低減することを含む、前記[6]または[7]に記載の方法。
[9] 原料ミックスの発酵が、製品容器内で行われる、前記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の方法で製造された発酵乳。
[11] 発酵乳がセットタイプのヨーグルトである、前記[10]に記載の発酵乳。
[12] 硬度が26g以上である、前記[11]に記載の発酵乳。
[6] 原料ミックスの溶存酸素濃度を低減することをさらに含む、前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 原料ミックスを加熱殺菌する前に、原料ミックスの溶存酸素濃度を低減することを含む、前記[6]に記載の方法。
[8] 原料ミックスを発酵する前に、原料ミックスの溶存酸素濃度を低減することを含む、前記[6]または[7]に記載の方法。
[9] 原料ミックスの発酵が、製品容器内で行われる、前記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の方法で製造された発酵乳。
[11] 発酵乳がセットタイプのヨーグルトである、前記[10]に記載の発酵乳。
[12] 硬度が26g以上である、前記[11]に記載の発酵乳。
本発明は、加熱滅菌処理による不十分な変性(例えば、原料ミックスの低温殺菌処理)や過度の変性(例えば、原料ミックスの超高温殺菌処理や、原料ミックスの一部の材料の超高温殺菌処理)によって、十分なカード強度を得られない場合であっても、発酵乳のカード強度を流通時の振動に耐えられる程度に高めることができる。したがって、原料ミックスや原料ミックスの一部の材料が、63℃〜150℃の熱履歴を有していても、発酵乳のカード強度を流通時の振動に耐えられる程度に高めることができる。
さらに本発明の製造方法によれば、発酵乳の原料ミックスの材料の熱履歴や、原料ミックスの熱履歴を問わず、食感の滑らかさを向上させた発酵乳を提供することができる。
とくに本発明は、超高温殺菌処理した材料を用いて発酵乳を製造した場合に起きるカード強度の低下を、発酵乳に滑らかな食感を与えながら改善することができ、極めて滑らかな食感を有しながら輸送に耐えうるカード強度を持つ発酵乳を提供することができる。さらに本発明は、カード強度を高めるための添加物を必要とすることなく、発酵乳の物性を強化することができる。また本発明は、超高温殺菌処理した原料を発酵乳の製造に幅広く利用することを可能にする。すなわち、従来の製造方法では、一度、超高温(例えば、120℃以上)で加熱殺菌した原料を原料ミックスに用いた場合、その後の熱履歴に拘らず、製造した発酵乳のカード強度は極めて低いものとなるが、本発明によれば、熱履歴に拘らず、超高温殺菌処理した原料を発酵乳の製造において用いることができる。
とくに本発明は、超高温殺菌処理した材料を用いて発酵乳を製造した場合に起きるカード強度の低下を、発酵乳に滑らかな食感を与えながら改善することができ、極めて滑らかな食感を有しながら輸送に耐えうるカード強度を持つ発酵乳を提供することができる。さらに本発明は、カード強度を高めるための添加物を必要とすることなく、発酵乳の物性を強化することができる。また本発明は、超高温殺菌処理した原料を発酵乳の製造に幅広く利用することを可能にする。すなわち、従来の製造方法では、一度、超高温(例えば、120℃以上)で加熱殺菌した原料を原料ミックスに用いた場合、その後の熱履歴に拘らず、製造した発酵乳のカード強度は極めて低いものとなるが、本発明によれば、熱履歴に拘らず、超高温殺菌処理した原料を発酵乳の製造において用いることができる。
また、溶存酸素濃度を低減してから発酵した場合、カードの組織の緻密さ、後味のまろやかさ、風味のクリーミー感、濃厚感、後味のミルク感、滑らかさおよび食べごたえに優れており、風味が良好であり、かつ食感の滑らかさがさらに優れた発酵乳を得ることができる。
本発明は、超高温殺菌処理した材料を用いて発酵乳を製造する方法に関し、超高温殺菌処理した材料を用いて発酵乳を製造する方法であって、超高温殺菌処理した材料を含む原料ミックスの脂肪を均質化し、発酵することを含む。
発酵乳は、乳または乳と同程度の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌または酵母で発酵させて、糊状、液状、固形状にしたもの、もしくは、これらを凍結したものであり、二つのタイプに大別できる。一つは前発酵タイプ、もう一つは後発酵タイプである。前者(前発酵タイプ)は、原料ミックスに所定量のスターター(乳酸菌等)を添加し、流通用の個食容器に詰める前のタンク等を用いて、この原料ミックスを所定の乳酸酸度や所定のpH等に到達するまで発酵させてから冷却した後に、この得られた発酵乳を破砕等して、必要に応じて、果肉や甘味料(糖液等)等を混合してから、流通用の個食容器(紙容器、プラスチック容器、ガラス容器等)に充填したものである。後者(後発酵タイプ)は、原料ミックスに所定量のスターターを添加し、この原料ミックスを流通用の個食容器に充填してから、発酵室等を用いて、この原料ミックスを所定の乳酸酸度や所定のpH等に到達する時間まで発酵させて、プリン状に固化させた後に冷却したものである。前発酵は、果肉入りのソフトタイプのヨーグルトや甘味料入りのドリンクタイプのヨーグルト等の製造に多く用いられる。一方、後発酵は、果肉や甘味料等を含まないハードタイプ(セットタイプ)のヨーグルト等、いわゆるプレーンタイプのヨーグルト等の製造に多く用いられる。
本発明に係る「発酵乳」は、乳等の原料ミックスを乳酸菌または酵母等で発酵させることにより得られる乳製品および加工品であり、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令で定義される「発酵乳」、「乳製品乳酸菌飲料」および「乳酸菌飲料」等を含む。本発明によって製造される発酵乳は、たとえば、ヨーグルトであってもよい。本発明によって製造される発酵乳は、原料ミックスをタンク内等で発酵させてから容器に充填する前発酵タイプのヨーグルト、および原料ミックスを容器に充填してから発酵させる後発酵タイプのヨーグルトのうち、いずれであってもよい。本発明によって製造される発酵乳は、たとえば、プレーンヨーグルト、セットタイプヨーグルト(固形状発酵乳)、ソフトヨーグルト(糊状発酵乳)およびドリンクヨーグルト(液状発酵乳)等であってもよい。本発明の製造方法は、十分な硬さを有する発酵乳を製造することができるため、セットタイプヨーグルトに好適に利用することができる。
本発明に係る「原料ミックス」は、乳、乳成分または乳成分を含む組成物を含むものであって、脂肪を含むものである。乳成分は、たとえば、生乳、牛乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、部分脱脂乳、部分脱脂濃縮乳、部分脱脂粉乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、乳清(ホエイ)、ホエイパウダー、脱塩ホエイ、脱塩ホエイパウダー、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質分離物(WPI)、α−ラクトアルブミン、β−ラクトグロブリン、乳タンパク質濃縮物(MPC)、カゼイン、ナトリウムカゼイネート、カルシウムカゼイネート、クリーム、発酵クリーム、コンパウンドクリーム、クリームパウダー、バター、発酵バター、バターミルク、バターミルクパウダーおよびバターオイル等を含む。原料ミックスは、乳成分を2種以上で含んでもよい。原料ミックスは、さらに、乳成分の他に、たとえば、水、脂質、タンパク質、糖類、香味成分、香料、色素、ミネラル(塩類)、ビタミンおよびその他の食品用添加物等を含んでもよい。原料ミックスは、また、予め加温して溶解したゼラチン液等を含んでもよい。
また、本発明に係る「原料ミックス」には、少なくとも1種類の超高温殺菌処理した材料が含まれており、かかる材料としては、乳、乳成分または乳成分を含む組成物などの乳由来の材料が含まれる。ここで超高温殺菌処理とは、当該分野で超高温殺菌として示されているものであれば、とくに限定されるものではないが、例えば、115℃〜150℃で1〜10秒または120℃〜150℃で1〜5秒間の加熱殺菌を行うことをいう。本発明に係る超高温殺菌処理した材料は、少なくとも1回の115℃以上、好ましくは120℃以上の熱履歴で殺菌されている。超高温殺菌処理可能な材料は、例えば、従来から一般に超高温殺菌されている乳由来の材料であれば、とくに限定されないが、例えば、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、部分脱脂粉乳、脱脂粉乳、全脂濃縮乳、部分脱脂濃縮乳、脱脂濃縮乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳などが挙げられる。また本発明において、原料ミックス中、超高温殺菌処理した材料の含有量は、好ましくは、20%以上、さらに好ましくは、50%以上である。
さらに本発明は、原料ミックスにカード強度を高めるための添加物を添加しなくても、輸送に耐えうるカード強度を備えた発酵乳を提供することができる。カード強度を高めるための添加物としては、食品添加物としての安定剤、ゲル化剤、増粘剤などが挙げられる。本発明においては、上記のカード強度を高めるための添加物を含まない原料ミックスを用いることができる。
本発明においては、超高温殺菌処理した材料を含む原料ミックスを均質化することにより、原料ミックス中の脂肪を均質化することができる。均質化する方法は、とくに限定されないが、たとえば、原料ミックスを加圧して押し出しながら、狭い間隙を通過させる方法や、原料ミックスを減圧して吸引しながら、狭い間隙を通過させる方法を用いることができる。均質化された原料ミックス中の脂肪は、平均粒径が小さくなっている。原料ミックス中の脂肪の平均粒径は、均質化する圧力および流量(流速)を適宜設定することにより調整することができる。均質化された脂肪(脂肪球)の平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置(たとえば、SALD−2200、島津製作所製)によって評価されてもよい。
本発明において原料ミックス中の脂肪の平均粒径は、好ましくは0.8μm以下であり、より好ましくは0.77μm以下であり、さらに好ましくは0.75μm以下であり、さらに好ましくは0.73μm以下であり、さらに好ましくは0.7μm以下であり、さらに好ましくは0.67μm以下であり、さらに好ましくは0.65μm以下である。また本発明において原料ミックス中の脂肪の平均粒径は、好ましくは0.2μm以上であり、より好ましくは0.25μm以上であり、さらに好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.35μm以上であり、さらに好ましくは0.4μm以上である。
さらに本発明において原料ミックス中の脂肪の標準偏差は、好ましくは0.16μm以下であり、より好ましくは0.15μm以下であり、さらに好ましくは0.14μm以下であり、さらに好ましくは0.13μm以下である。そして、本発明の原料ミックスの粒径の標準偏差は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上であり、さらに好ましくは0.08μm以上であり、さらに好ましくは0.1μm以上である。
原料ミックスを均質化する圧力は、所望の原料ミックス中の平均粒径が得られるよう、高圧で均質化する必要があり、好ましくは180kg/cm2以上であり、より好ましくは200kg/cm2以上であり、さらに好ましくは220kg/cm2以上であり、さらに好ましくは240kg/cm2以上であり、さらに好ましくは260kg/cm2以上であり、さらに好ましくは280kg/cm2以上であり、さらに好ましくは300kg/cm2以上である。そして、原料ミックスを均質化する圧力は、好ましくは800kg/cm2以下であり、より好ましくは700kg/cm2以下であり、さらに好ましくは600kg/cm2以下であり、さらに好ましくは550kg/cm2以下である。
圧力は、一段階で与えてもよく、二段階以上の多段階で与えてもよい。例えば、二段階の場合、均質化効率の観点から、一段階目の圧力を相対的に高くし、二段階目の圧力を相対的に低くしておくことが好ましい。具体的には、例えば、80〜790kg/cm2と10〜100kg/cm2との二段階で行うことができ、500kg/cm2と50kg/cm2との二段階で行うのが好ましい。
原料ミックスを均質化する流量は、目的とする均質化が行われれば特に制限はないが、例えば、好ましくは100〜30000kg/hであり、より好ましくは150〜25000kg/hであり、さらに好ましくは200〜20000kg/hであり、さらに好ましくは250〜15000kg/hである。
原料ミックスの均質化は、原料ミックスを調製してから、遅くとも原料ミックスを発酵させる前までに行われていればよく、発酵直前に原料ミックス中の脂肪が所望の平均粒径を有していれば、例えば、加熱殺菌工程や、溶存酸素を低減する工程などの他の工程を組み合わせて、1工程で行われてもよいし、2工程以上で行われてもよい。製造方法を簡略化する等の観点から、原料ミックスの均質化は、好ましくは1工程で行われる。
本発明の発酵乳を製造する方法において、原料ミックスの均質化、原料ミックスの発酵の他に、適宜、原料ミックスの加熱滅菌および/または原料ミックスの溶存酸素の低減を行ってもよい。したがって、原料ミックスの調製の後、発酵の前に、均質化、加熱滅菌、溶存酸素の低減が任意の順に行われてもよい。例えば、原料ミックスの調製、均質化、溶存酸素の低減、加熱滅菌、発酵の順や、原料ミックスの調製、加熱滅菌、均質化、溶存酸素の低減、発酵の順で行うことができる。好ましくは、原料ミックスを加熱殺菌する前に、原料ミックスの溶存酸素濃度を低減を行い、とくに好ましくは、原料ミックスの調製、原料ミックスの均質化、原料ミックスの加熱滅菌、原料ミックスの溶存酸素の低減、発酵の順で行う。
原料ミックスの加熱滅菌は、とくに限定されない。低温殺菌処理(LTLT)、高温殺菌処理(HTST)または超高温殺菌処理(UHT)を用いることができる。したがって、牛乳や乳飲料等と同じ殺菌条件を設定することができることから、原料ミックスの加熱殺菌において、牛乳や乳飲料等の製品と同じ方法および設備を用いることができ、乳業工場の全体において、各種の製品の生産効率を低下させることがなく、また、各種の製品毎に設備を新たに設置する必要もない。
原料ミックスを殺菌する温度は、殺菌可能な温度であれば、とくに限定されないが、典型的には、63℃〜150℃であり、好ましくは、115℃〜150℃である。原料ミックスを高温の115℃〜150℃で処理することで、食感の滑らかさを向上させた発酵乳を得ることができる。また、原料ミックスを殺菌する時間は、殺菌する温度によって、適宜、決定することができ、例えば、1〜1800秒間である。加熱滅菌の温度と時間の組合せは、規格化または汎用されている加熱殺菌条件を選択することができ、例えば、63℃〜65℃で30分間(1800秒間)(LTLT)、72℃〜75℃で15秒間(HTST)、115℃〜150℃で1〜10秒または120℃〜150℃で1〜5秒間(UHT)などとすることができる。
原料ミックスの溶存酸素濃度の低減は、発酵開始時における原料ミックスの溶存酸素濃度が通常よりも低くなるように、たとえば5ppm以下、好ましくは4ppm以下、より好ましくは3ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下、さらに好ましくは1ppm以下となるように処理すればよい。発酵開始時における原料ミックスの溶存酸素濃度を低減することで、乳酸酸度が所定の数値に早く到達するため、発酵時間を短縮することができ、生産効率を向上させることができる。また、溶存酸素濃度を低減しない場合の発酵乳に比べて、発酵乳の組織が緻密でまろやかになる。
原料ミックスの溶存酸素濃度を低減する方法は、原料ミックスに不活性ガスを注入して、原料ミックスの酸素と不活性ガスを置換する方法であってもよいし、原料ミックスを低圧または真空の状態に保持して、原料ミックスを減圧して脱気し、原料ミックスの酸素を除去する方法であってもよい。なお、不活性ガスには、たとえば、N2を用いてもよいし、ヘリウム、ネオン、アルゴンおよびキセノン等の希ガスを用いてもよい。このとき、原料ミックスの溶存酸素濃度を低減する方法は、原料ミックスを加熱(殺菌)する方法において、加熱温度における保持時間を所定値に設定する(幾らか長くする)方法であってもよく、たとえば、原料ミックスの加熱温度が115℃〜150℃の場合、この保持時間を好ましくは5〜60秒間、より好ましくは5〜30秒間、さらに好ましくは5〜10秒間に設定すればよい。このとき、原料ミックスの溶存酸素濃度を低減する工程は、原料ミックスを殺菌する工程と同時に行うことができる。
原料ミックスの発酵は、スターターを添加(接種)して行う。発酵には、任意の乳酸菌、ビフィズス菌および酵母等のスターター等を用いることができる。スターターには、たとえば、ラクトバチルス・ブルガリカス(ブルガリア菌、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(サーモフィラス菌、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)、ラクトバチルス・ラクティス(ラクティス菌、Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・ガッセリ(ガセリ菌、Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・プランタラム(プランタラム菌、Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(カゼイ菌、Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)およびビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)等のように、発酵乳の製造において一般的に用いられる乳酸菌や酵母から選択した1種を単独で用いることもできるし、または2種以上を組合せて用いることもできる。
スターターには、コーデックス規格において、ヨーグルトスターターとして規格化されている等の観点から、好ましくは、ブルガリア菌とサーモフィラス菌の混合スターターをベースとするスターターである。また、実際に得ようとする発酵乳に応じて、ヨーグルトスターターをベースとしながら、ガセリ菌、ビフィズス菌および酵母等を添加してもよい。
スターターの添加量は、発酵乳の製造において一般的に用いられる数量であればよく、例えば、継代培養方式(マザースターター、バルクスターター)により調製されたスターターを使用する場合、原料ミックスに対して、例えば0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.5〜4重量%、さらに好ましくは1〜5重量%、とくに好ましくは1〜3重量%である。継代培養方式(マザースターター、バルクスターター)により調製されたスターター以外のスターター(例えば、直接原料ミックスに接種する、濃縮スターター、凍結濃縮スターター、凍結乾燥スターター)においては、スターターの菌数に応じてその添加量を適宜調整できる。また、スターターの添加方法は、発酵乳の製造において一般に用いられる方法であればよく、たとえば、原料ミックスがタンク内等に溜められた状態で、スターターが無菌的に添加される方法や、原料ミックスが配管内を流れている状態で、スターターがインラインで添加される方法である。
原料ミックスを発酵させる方法は、原料ミックスにスターターを添加した後に、原料ミックスを容器に充填してから、発酵室内で保持する方法であってもよいし、原料ミックスにスターターを添加した後に、原料ミックスをタンク等に充填してから、タンク内等で保持する方法であってもよい。そして、原料ミックスをタンク等に充填してから、タンク内等で保持する方法では、発酵乳がタンク内等で調製されてから、この発酵乳を撹拌した(発酵乳のカードを破砕した)後に、必要に応じて、果肉、野菜、プレパレーション、ソースおよび糖液等を混合し、この発酵乳を容器に充填する方法を追加して、ソフトタイプのヨーグルトを製造してもよい。また、原料ミックスをタンク等に充填してから、タンク内等で保持する方法では、発酵乳がタンク内等で調製されてから、この発酵乳を撹拌し(発酵乳のカードを破砕し)、発酵乳を均質化した(発酵乳のカードを微細化した)後に、必要に応じて、果肉、野菜、プレパレーション、ソースおよび糖液等を混合し、この発酵乳を容器に充填する方法を追加して、ドリンクタイプのヨーグルトを製造してもよい。
原料ミックスを発酵させる条件は、原料ミックスに添加される乳酸菌等の種類および添加量や、実際に得ようとする発酵乳の風味、食感および物性等を考慮して調整されればよい。原料ミックスを発酵させる温度および時間は、目的等から適宜設定することができる。このとき、原料ミックスを発酵させる温度(発酵温度)は、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは33℃以上であり、さらに好ましくは35℃以上であり、最も好ましくは37℃以上である。そして、原料ミックスを発酵させる温度は、好ましくは50℃以下であり、より好ましくは45℃以下であり、さらに好ましくは43℃以下である。原料ミックスを35℃〜40℃で発酵処理することで、食感の滑らかさをより向上させた発酵乳を得ることができ、好ましい。また、原料ミックスを発酵させる時間(発酵時間)は、好ましくは1〜24時間であり、より好ましくは1〜12時間であり、さらに好ましくは2〜8時間であり、さらに好ましくは2〜6時間であり、さらに好ましくは2〜4時間である。
原料ミックスを発酵させる際に、乳酸酸度(酸度)は、組成によって異なるが、無脂乳固形分が8重量%程度であれば、好ましくは0.5%に到達し、より好ましくは0.6%に到達する。また、乳酸酸度(酸度)は、無脂乳固形分が10重量%程度であれば、好ましくは0.6%に到達し、より好ましくは0.7%に到達する。また、乳酸酸度(酸度)は、無脂乳固形分が12重量%程度であれば、好ましくは0.7%に到達し、より好ましくは0.8%に到達する。また、乳酸酸度(酸度)は、無脂乳固形分が14重量%程度であれば、好ましくは0.8%に到達し、より好ましくは1.0%に到達する。また、乳酸酸度(酸度)は、無脂乳固形分が16重量%程度であれば、好ましくは1.0%に到達し、より好ましくは1.1%に到達する。また、乳酸酸度(酸度)は、無脂乳固形分が18重量%程度であれば、好ましくは1.1%に到達し、より好ましくは1.3%に到達する。また、乳酸酸度(酸度)は、無脂乳固形分が20重量%程度であれば、好ましくは1.2%に到達し、より好ましくは1.4%に到達する。
本発明において、原料ミックスの発酵は、製品容器内で行われてもよい。たとえば、原料ミックスを均質化および殺菌してから、原料ミックスにスターターを添加した後に、原料ミックスを容器に充填してもよい。なお、容器には、発酵乳(乳製品)の製造において一般的に用いられる容器であればよく、たとえば、プラスチック製、ガラス製および紙製等の容器であればよい。
本発明は、流通時の振動に耐えられ、輸送中の衝撃等で破砕されない硬度(強度、カードテンション)を有し、かつ、食感の滑らかさに優れた発酵乳を提供できる。
本発明の発酵乳における「硬度」は、カードメーター(たとえば、MAX ME−500、アイテクノエンジニアリング社)において、ヨーグルトナイフの破断点の測定値として評価されてもよく、具体的には、測定温度を5℃〜10℃とし、荷重を100gとして、カードメーターの破断点によって測定して評価されてもよい。
本発明の発酵乳における「硬度」は、カードメーター(たとえば、MAX ME−500、アイテクノエンジニアリング社)において、ヨーグルトナイフの破断点の測定値として評価されてもよく、具体的には、測定温度を5℃〜10℃とし、荷重を100gとして、カードメーターの破断点によって測定して評価されてもよい。
本発明の発酵乳では、硬度が26g以上であればよく、流通時に組織を安定的に維持しながら、輸送中の衝撃等で破砕されることを効果的に抑制している。本発明の発酵乳の硬度は、好ましくは30g以上であり、さらに好ましくは32g以上である。そして、本発明の発酵乳の硬度は、好ましくは100g以下であり、より好ましくは90g以下であり、さらに好ましくは80g以下であり、さらに好ましくは70g以下である。
「食感の滑らかさに優れた」とは、カードの組織が緻密であり、口腔内に入れたときに、舌触りがザラザラしていないことをいう。発酵乳における「食感の滑らかさ」は、カードメーター(たとえば、MAX ME−500、アイテクノエンジニアリング社)において、ヨーグルトナイフの侵入角度の測定値として評価されてもよく、具体的には、測定温度を5℃〜10℃とし、荷重を100gとして、カードメーターの測定曲線において、原点を通る破断点に向けた接線と、破断点の後の時間−荷重曲線との角度によって測定して評価されてもよい。この角度が大きいと、ザラザラした粗い食感を有する発酵乳と評価され、この角度が小さいと、滑らかな食感を有する発酵乳と評価される。
本発明の発酵乳では、ヨーグルトナイフの侵入角度が60度未満であってもよく、流通時に組織を安定的に維持しながら、舌触りの滑らかさを効果的に向上させている。つまり、本発明の発酵乳のヨーグルトナイフの侵入角度は、好ましくは60度未満であり、より好ましくは56度未満であり、さらに好ましくは52度未満であり、さらに好ましくは48度未満である。そして、本発明の発酵乳のヨーグルトナイフの侵入角度は、好ましくは10度以上であり、より好ましくは15度以上であり、さらに好ましくは20度以上であり、さらに好ましくは25度以上である。
発酵乳における「食感の滑らかさ」は、発酵乳(最終製品、中間製品)の撹拌後の平均粒径の測定値として評価されてもよく、発酵乳の撹拌後の平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置(たとえば、SALD−2200、島津製作所)によって測定して評価されてもよい。この撹拌後の粒子径が大きいと、ザラザラした粗い食感を有する発酵乳と評価され、この撹拌後の粒子径が小さいと、滑らかな食感を有する発酵乳と評価される。
本発明の発酵乳では、撹拌後の平均粒径が43μm以下であってもよく、流通組織を安定的に維持しながら、舌触りの滑らかさを効果的に向上させている。つまり、本発明の発酵乳の攪拌後の平均粒径は、好ましくは43μm以下であり、より好ましくは42μm以下であり、さらに好ましくは41μm以下であり、最も好ましくは40μm以下である。
本発明の発酵乳は、ヨーグルトであってもよく、前発酵タイプのヨーグルトおよび後発酵タイプのヨーグルトのうち、いずれであってもよいが、好ましくは、後発酵タイプのヨーグルトである。また、本発明の発酵乳は、プレーンタイプのヨーグルトであってもよく、セットタイプのヨーグルト(固形状発酵乳)、ソフトタイプのヨーグルト(糊状発酵乳)およびドリンクタイプのヨーグルト(液状発酵乳)のうち、いずれであってもよいが、好ましくはプレーンタイプのヨーグルトであって、セットタイプのヨーグルトである。
本発明の発酵乳は、容器詰めされていてもよい。「容器詰めされた」とは、容器(内)に充填され密封されたことをいう。容器は、発酵乳(乳製品)の製造において一般的に用いられる容器であればよく、たとえば、プラスチック製、ガラス製および紙製等の容器であればよい。本発明の発酵乳は、原料ミックス(原料ミックスに乳酸菌のスターター等を添加した後の状態である、発酵乳基材の意味も含む)を容器に充填した後に、原料ミックスを容器内で発酵させたもの(後発酵タイプ)であってもよいし、発酵乳を容器に充填する前に、原料ミックスをタンク内等で発酵させたもの(原料ミックスをタンク内等で発酵させた後に、発酵乳を容器に充填させたもの)(前発酵タイプ)でもよい。
本発明では、原料ミックスおよび/または発酵乳(最終製品および/または中間製品)の無脂乳固形分が好ましくは8重量%以上であり、より好ましくは8.5重量%以上であり、さらに好ましくは9重量%以上であり、さらに好ましくは9.5重量%以上である。そして、原料ミックスおよび/または発酵乳の無脂乳固形分が好ましくは30重量%以下であり、より好ましくは25重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは18重量%以下である。また、本発明では、原料ミックスおよび/または発酵乳の脂肪(脂質)が好ましくは0.5重量%以上であり、より好ましくは1重量%以上であり、さらに好ましくは1.5重量%以上であり、さらに好ましくは2重量%以上であり、さらに好ましくは2.5重量%以上であり、さらに好ましくは3重量%以上であり、さらに好ましくは3.1重量%以上である。そして、原料ミックスおよび/または発酵乳の脂肪(脂質)が好ましくは8重量%以下であり、より好ましくは7重量%以下であり、さらに好ましくは6重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは4.5重量%以下であり、さらに好ましくは4重量%以下であり、さらに好ましくは3.5重量%以下である。
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態について、さらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
〔平均粒径の測定方法〕
原料ミックスの平均粒径および標準偏差は、レーザー回折式の粒度分布測定装置SALD−2200(島津製作所製)を用いて測定した。具体的には、原料ミックスをイオン交換水で希釈し、この回折・散乱の光強度の分布の最大値が35〜75%(絶対値:700〜1500)になるように調整した。そして、粒度分布測定装置用のソフトウェアWingSALD IIを用いて、この光強度の分布を解析し、平均脂肪粒径および標準偏差を求めた。
原料ミックスの平均粒径および標準偏差は、レーザー回折式の粒度分布測定装置SALD−2200(島津製作所製)を用いて測定した。具体的には、原料ミックスをイオン交換水で希釈し、この回折・散乱の光強度の分布の最大値が35〜75%(絶対値:700〜1500)になるように調整した。そして、粒度分布測定装置用のソフトウェアWingSALD IIを用いて、この光強度の分布を解析し、平均脂肪粒径および標準偏差を求めた。
〔発酵乳の硬度の測定方法〕
発酵乳の硬度(強度またはカードテンション)は、カードメーターMAX ME−500(アイテクノエンジニアリング社)を用いて測定した。具体的には、100gの重りを付けたヨーグルトナイフを発酵乳の天面に静置し、発酵乳を継続的に上昇させて、2g/秒程度で加重しながら、この加重の経過時間に合わせて、この加重の測定値を曲線で表現した。このとき、この加重の経過時間(秒)を縦軸、この加重の測定値を横軸とし、縦軸の10gと横軸の4秒を同じ距離として表現した。そして、発酵乳が破断に至った場合、発酵乳の天面からヨーグルトナイフが侵入することで、この時間−荷重曲線に変曲点(破断点)が生じ、この破断に至るまでの加重を硬度(g)の指標とした。
発酵乳の硬度(強度またはカードテンション)は、カードメーターMAX ME−500(アイテクノエンジニアリング社)を用いて測定した。具体的には、100gの重りを付けたヨーグルトナイフを発酵乳の天面に静置し、発酵乳を継続的に上昇させて、2g/秒程度で加重しながら、この加重の経過時間に合わせて、この加重の測定値を曲線で表現した。このとき、この加重の経過時間(秒)を縦軸、この加重の測定値を横軸とし、縦軸の10gと横軸の4秒を同じ距離として表現した。そして、発酵乳が破断に至った場合、発酵乳の天面からヨーグルトナイフが侵入することで、この時間−荷重曲線に変曲点(破断点)が生じ、この破断に至るまでの加重を硬度(g)の指標とした。
<製造例1>
脂肪3.0重量%、無脂乳固形分9.5重量%になるように125℃で殺菌されたクリーム、125℃15秒間でUHT殺菌した脱脂乳より調製した脱脂粉乳、水を混合して、原料ミックス(ヨーグルトミックス)を調製した。調製した原料ミックスを、80℃程度に加温した後に500kg/cm2と50kg/cm2との二段階で均質化処理を行った。次いで、均質化処理した原料ミックスを95℃に加熱殺菌(バッチ式で95℃達温殺菌)した後に、約10℃に冷却した。得られた原料ミックスの平均脂肪粒径は0.58μmであった。
脂肪3.0重量%、無脂乳固形分9.5重量%になるように125℃で殺菌されたクリーム、125℃15秒間でUHT殺菌した脱脂乳より調製した脱脂粉乳、水を混合して、原料ミックス(ヨーグルトミックス)を調製した。調製した原料ミックスを、80℃程度に加温した後に500kg/cm2と50kg/cm2との二段階で均質化処理を行った。次いで、均質化処理した原料ミックスを95℃に加熱殺菌(バッチ式で95℃達温殺菌)した後に、約10℃に冷却した。得られた原料ミックスの平均脂肪粒径は0.58μmであった。
得られた原料ミックスを43℃に加温してから、窒素(N2)を注入し、原料ミックスの溶存酸素濃度(DO)を5ppmに低減した後に、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトLB81から分離したブルガリア菌とサーモフィラス菌)を3重量%で添加(接種)した。その後、プラスチック製カップ容器(100g容量)、および紙製カップ容器(450g容量)へ充填し、発酵室(43℃)で、乳酸酸度が0.70%に到達するまで、約3時間静置してから、冷蔵室(10℃以下)で冷却して、セットタイプヨーグルト(実施例1)を製造した。
<製造例2>
乳脂肪分3.0重量%、無脂乳固形分9.5重量%になるように125℃で殺菌されたクリーム、125℃15秒間でUHT殺菌した脱脂乳より調製した脱脂粉乳、水を混合して、原料ミックス(ヨーグルトミックス)を調製した。調製した原料ミックスを、80℃程度に加温した後に100kg/cm2と50kg/cm2との二段階で均質化処理を行った。次いで、均質化処理した原料ミックスを130℃で2秒間、加熱(殺菌)した後に、約10℃に冷却した。得られた原料ミックスの平均脂肪粒径は0.94μmであった。
乳脂肪分3.0重量%、無脂乳固形分9.5重量%になるように125℃で殺菌されたクリーム、125℃15秒間でUHT殺菌した脱脂乳より調製した脱脂粉乳、水を混合して、原料ミックス(ヨーグルトミックス)を調製した。調製した原料ミックスを、80℃程度に加温した後に100kg/cm2と50kg/cm2との二段階で均質化処理を行った。次いで、均質化処理した原料ミックスを130℃で2秒間、加熱(殺菌)した後に、約10℃に冷却した。得られた原料ミックスの平均脂肪粒径は0.94μmであった。
得られた原料ミックスを43℃に加温してから、窒素(N2)を注入し、原料ミックスの溶存酸素濃度(DO)を5ppmに低減した後に、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトLB81から分離したブルガリア菌とサーモフィラス菌)を3重量%で添加(接種)した。その後、プラスチック製カップ容器(100g容量)へ充填し、発酵室(43℃)で、乳酸酸度が0.70%に到達するまで、約3時間静置してから、冷蔵室(10℃以下)で冷却して、セットタイプヨーグルト(比較例1)を製造した。
得られた実施例1および比較例1のセットタイプヨーグルトのカード強度を測定した。カード強度はネオカードメーターM302(アイテクノエンジニアリング社製)を使用して測定した。
実施例1のカード強度は、比較例1のカード強度(24g)よりも大きく、39gに達していた。この結果から実施例1のヨーグルトは十分に目的の硬度を満たし、商品の流通時の衝撃に耐え得る硬度を有していることが確認できた。
実施例1のカード強度は、比較例1のカード強度(24g)よりも大きく、39gに達していた。この結果から実施例1のヨーグルトは十分に目的の硬度を満たし、商品の流通時の衝撃に耐え得る硬度を有していることが確認できた。
すなわち、本発明のヨーグルトは、原料ミックス中の脂肪の平均粒子径が小さくなることにより、所望の硬度と食感の滑らかさを達成できたものと考えられる。
<製造例3>
生乳を65℃30分の条件で加熱殺菌(低温殺菌)後、350kg/cm2と50kg/cm2との二段階で均質化処理を行った。次いで、約10℃に冷却した。得られた原料ミックスの平均脂肪粒径は0.74μmであった。
生乳を65℃30分の条件で加熱殺菌(低温殺菌)後、350kg/cm2と50kg/cm2との二段階で均質化処理を行った。次いで、約10℃に冷却した。得られた原料ミックスの平均脂肪粒径は0.74μmであった。
得られた原料ミックスを43℃に加温してから、窒素(N2)を注入し、原料ミックスの溶存酸素濃度(DO)を5ppmに低減した後に、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトLB81から分離したブルガリア菌とサーモフィラス菌)を3重量%で添加(接種)した。その後、プラスチック製カップ容器(100g容量)、および紙製カップ容器(450g容量)へ充填し、発酵室(43℃)で、乳酸酸度が0.70%に到達するまで、約3時間静置してから、冷蔵室(10℃以下)で冷却して、セットタイプヨーグルト(参考例1)を製造した。
<製造例4>
乳脂肪分3.0重量%、無脂乳固形分9.5重量%になるように、生乳、125℃15秒間でUHT殺菌した脱脂乳より調製した脱脂粉乳、水を混合して、原料ミックス(ヨーグルトミックス)を調製した。調製した原料ミックスを、80℃程度に加温した後に100kg/cm2と50kg/cm2との二段階で均質化処理を行った。次いで、均質化処理した原料ミックスを95℃に加熱殺菌(バッチ式で95℃達温殺菌)した後に、約10℃に冷却した。得られた原料ミックスの平均脂肪粒径は1.21μmであった。
乳脂肪分3.0重量%、無脂乳固形分9.5重量%になるように、生乳、125℃15秒間でUHT殺菌した脱脂乳より調製した脱脂粉乳、水を混合して、原料ミックス(ヨーグルトミックス)を調製した。調製した原料ミックスを、80℃程度に加温した後に100kg/cm2と50kg/cm2との二段階で均質化処理を行った。次いで、均質化処理した原料ミックスを95℃に加熱殺菌(バッチ式で95℃達温殺菌)した後に、約10℃に冷却した。得られた原料ミックスの平均脂肪粒径は1.21μmであった。
得られた原料ミックスを43℃に加温してから、窒素(N2)を注入し、原料ミックスの溶存酸素濃度(DO)を5ppmに低減した後に、乳酸菌スターター(明治ブルガリアヨーグルトLB81から分離したブルガリア菌とサーモフィラス菌)を3重量%で添加(接種)した。その後、プラスチック製カップ容器(100g容量)へ充填し、発酵室(43℃)で、乳酸酸度が0.70%に到達するまで、約3時間静置してから、冷蔵室(10℃以下)で冷却して、セットタイプヨーグルト(参考比較例1)を製造した。
<試験例1>
参考例1および参考比較例1のセットタイプヨーグルトのカード強度を測定した。カード強度はネオカードメーターM302(アイテクノエンジニアリング社製)を使用して測定した。
参考例1のカード強度は、参考比較例1のカード強度(24g)よりも大きく、55gに達していた。この結果から参考例1のヨーグルトは十分に目的の硬度を満たし、商品の流通時の衝撃に耐え得る硬度を有していることが確認できた。
参考例1および参考比較例1のセットタイプヨーグルトのカード強度を測定した。カード強度はネオカードメーターM302(アイテクノエンジニアリング社製)を使用して測定した。
参考例1のカード強度は、参考比較例1のカード強度(24g)よりも大きく、55gに達していた。この結果から参考例1のヨーグルトは十分に目的の硬度を満たし、商品の流通時の衝撃に耐え得る硬度を有していることが確認できた。
<試験例2>
参考例1と同様に原料ミックスを調製し、溶存酸素濃度(DO)を5ppmに低減してから発酵させて、乳酸酸度が0.70%に到達するまでの発酵時間を測定した(参考例2)。
また、参考例1と同様に原料ミックスを調製し、溶存酸素濃度(DO)を低減せずに発酵させて、乳酸酸度が0.70%に到達するまでの発酵時間を測定した(参考例3)。
結果を表1に示す。
参考例1と同様に原料ミックスを調製し、溶存酸素濃度(DO)を5ppmに低減してから発酵させて、乳酸酸度が0.70%に到達するまでの発酵時間を測定した(参考例2)。
また、参考例1と同様に原料ミックスを調製し、溶存酸素濃度(DO)を低減せずに発酵させて、乳酸酸度が0.70%に到達するまでの発酵時間を測定した(参考例3)。
結果を表1に示す。
発酵前に脱酸素処理を行うことで、発酵時間を短縮できることが確認できた。発酵時間が短いほど、製造における所要時間が短く、生産効率性が高いことを意味する。
本発明は、ヨーグルト等の発酵乳の製造に利用することができ、特にセットタイプのヨーグルトの製造に好適に利用することができる。また本発明は、一般的にヨーグルトの凝固性の観点から利用しにくい超高温殺菌処理した材料について、ヨーグルト等の発酵乳の原料としての利用の途を広げるものである。
Claims (12)
- 超高温殺菌処理した材料を用いて発酵乳を製造する方法であって、超高温殺菌処理した材料を含む原料ミックスの脂肪を均質化し、発酵することを含む、前記方法。
- 超高温殺菌処理した材料が、乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、部分脱脂乳、部分脱脂濃縮乳、部分脱脂粉乳、クリームおよびバターからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1に記載の方法。
- 超高温殺菌処理の温度が、120℃〜150℃である、請求項1または2に記載の方法。
- 原料ミックス中の脂肪の平均粒径が0.8μm以下になるように均質化する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 原料ミックスを加熱殺菌することをさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 原料ミックスの溶存酸素濃度を低減することをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 原料ミックスを加熱殺菌する前に、原料ミックスの溶存酸素濃度を低減することを含む、請求項6に記載の方法。
- 原料ミックスを発酵する前に、原料ミックスの溶存酸素濃度を低減することを含む、請求項6または7に記載の方法。
- 原料ミックスの発酵が、製品容器内で行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法で製造された発酵乳。
- 発酵乳がセットタイプのヨーグルトである、請求項10に記載の発酵乳。
- 硬度が26g以上である、請求項11に記載の発酵乳。
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