JPWO2018051520A1 - 電解コンデンサ用電極部材および電解コンデンサ - Google Patents

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Abstract

電解コンデンサ用電極部材は、電解コンデンサに用いられるものであり、ワイヤー形状を有する。電解コンデンサ用電極部材の外表面は、外側に向けて開口する少なくとも1つ以上の第1凹部(7b)と、少なくとも第1凹部(7b)に開口する少なくとも1つ以上の第2凹部(8a)を含み、円相当径で表す第2凹部(8a)の開口径は、円相当径で表す第1凹部(7b)の開口径よりも小さい。

Description

本発明は、電解コンデンサ用電極部材および電解コンデンサに関する。
コンデンサの静電容量は、電極部材の上に形成された誘電体の表面積に比例する。そこで、電解コンデンサの静電容量を高くするための一手法として、それに用いる電極部材の表面積を大きくすることが従来より行なわれている。その具体的な手法として例えば、電極部材の表面に粗面化処理を行なう、電極部材に焼結体を用いるといったことが挙げられる。
図15は、従来の電解コンデンサを模式的に表した図である。なお、図15においてはセパレータの表示は省略している。図15に示すように、電解コンデンサは、陽極体1と、陽極体1上に形成された誘電体2と、陽極体1とは反対側にて誘電体2に隣接して配置された電解質3と、陽極体1との間に電解質3を挟み込むようにして陽極体1に向かい合うように配置された陰極体5と、電解質3に隣接するように陰極体5上に形成された誘電体4とを備える。
電解コンデンサの静電容量は、陽極体1、誘電体2および電解質3から構成されるコンデンサと、電解質3、誘電体(自然酸化皮膜)4および陰極体5から構成されるコンデンサとを、直列につなげたときの合成容量である。通常、陰極体5には陽極体1と比較して静電容量が十分高いものが用いられる。このため、電解コンデンサの静電容量は、陽極体1、誘電体2および電解質3から構成されるコンデンサの静電容量の値に大きく影響される。
陽極体1の表面をどれだけ複雑な凹凸形状にしたとしても、その上に形成された誘電体2と電解質3とが接していない部分が生じてしまった場合、すなわち、電解質の含浸が十分になされなかった場合には、その分だけ電解コンデンサの静電容量が低くなってしまう。
電解コンデンサの中でも、特に電解質に導電性高分子などの固体電解質を用いた固体電解コンデンサでは、この電解質の含浸性が重要になってくる。
図16は、従来の電解コンデンサ用電極部材における固体電解質の含浸の程度を模式的に表した図である。図16は、図15に示す誘電体2と電解質3との接触状態を主として示している。図16に示すように、陽極体1の表面に微細な凹凸を多数形成することで陽極体1の表面積をいかに大きくしたとしても、その凹凸の大きさが導電性高分子の径と比較して十分に大きくない場合には、電解質としての固体電解質6が誘電体2と接していない部分が広範囲に渡って生じてしまう。すなわち、電解液を含浸したときの静電容量に対する固体電解質を含浸したときの静電容量の割合を表す容量出現率が、低くなってしまう。
そこで、電解コンデンサ用電極部材について、それが箔状や板状のもの対しては、以下のような提案がこれまでになされている。
特開2008−078330号公報(特許文献1)では、エッチングのピット径が小さすぎると固体電解質が十分含浸されず、しかも、大きいものも混在していると不均一になってしまい、電解コンデンサにした時のESRが高くなってしまうという問題があった。それに対して、特許文献1では、少なくとも片面が表面から深さ方向で70μm以上のエッチング層を有し、そのエッチング層は、表面から20μmより深い位置の平面断面を画像解析装置で測定したとき、各測定面において、円形に換算したときのピット径で0.01〜1μmのピット数がその測定面内における全ピット数の70%以上存在する電解コンデンサ用アルミニウム電極板を提案している。
特開平2−288217号公報(特許文献2)では、化学酸化重合による導電性高分子膜とその上に形成した電解重合による導電性高分子膜からなる導電性高分子膜を固体電解質として用いる固体電解コンデンサにおいて、使用する粗面化電極箔によって得られる静電容量が異なるとの問題があった。それに対して、特許文献2では、導電性高分子膜の形成と弁作用金属の粗面化との関係に着目し、化学酸化重合によって導電性高分子膜を形成することが可能な最大ピット深さを見出し、誘電体酸化皮膜を形成した弁作用金属のピット深さが平均16μm以上である粗面化電極箔を提案している。
特開2001−143972号公報(特許文献3)では、箔表面に突起や凹みを付与しただけでは、増大しつつある高静電容量化への要望に応えることができないとの問題があった。それに対して、特許文献3では、表面に円相当径の開口径(d1)が0.1〜5μmの一次凹みが多数形成されたアルミニウム箔であって、その一次凹みのうち、その最大内部径(d2)が開口径(d1)よりも大きく内部が膨らんだ形状で、開口径(d1)/最大内部径(d2)が0.9未満であるという条件を満たすものと、その内部に開口する二次凹みを1個以上有し、かつその二次凹みの少なくとも1個の開口径(d3)が一次凹みの開口径(d1)の1/2以下であるという条件を満たすものとが合計数で20%以上存在する電解コンデンサ電極用アルミニウム箔を提案している。
特開平3−104207号公報(特許文献4)では、従来の直流エッチングと交流エッチングの複合エッチングでは、前段の直流エッチングによるトンネル状のピットの平均開口径が十分に大きくないため、後段の交流エッチングを行なってもトンネル状のピットの内壁面ではほとんどエッチングが進行せず、電極表面部のみを一様に溶解するのみで、所望の拡面効果が得られないとの問題があった。それに対して、特許文献4では、第1の直流エッチングにより1μm未満の開口径を持つピットを形成し、次に第2の直流エッチングによりその開口径を1μmないし4μmに拡大してから、交流エッチングを行なう電解コンデンサ用電極のエッチング方法を提案している。
特開平11−307400号公報(特許文献5)では、固体電解コンデンサ用電極箔の製造方法として、マスキングによりエッチングを行なうエッチング部とエッチングを行なわない未エッチング部とに分離する工程が先に設けられているが、この場合のエッチング部に対するエッチング方法として、直流エッチングを行ない、続いて交流エッチングの電解液中に浸漬して交流エッチングの電流密度を徐々に上昇させ、その後一定電流で交流エッチングを行なうことが提案されている。
以上、容量出現率を中心に、静電容量といった観点で従来技術を俯瞰したが、電解コンデンサに求められる特性は、静電容量だけではない。例えば、実用的なコンデンサでは、誘電体には欠陥があり完全な絶縁物ではないため、コンデンサに直流電圧を印加すると微少ではあるが漏れ電流が発生し、回路に悪影響を及ぼすこともある。そのため、漏れ電流についてはそれを低く抑えるようにとの要求が強く、以下のような提案がこれまでになされている。
特開2008−177199号公報(特許文献6)および特開2008−177200号公報(特許文献7)では、電極部材として箔状のものを用いる場合には、小型化のために電極の幅を細くしても、それに従い電極の見かけ面積に対する端面の面積の割合が大きくなり、エージングにより形成された端面の誘電体の悪影響が顕著なものとなってくる、すなわち、小型化するに従い固体電解コンデンサとしての漏れ電流が大きくなってしまうという問題があった。それに対して、特許文献6および特許文献7では、陽極体としてエッチングされたアルミニウム線を用い、その表面に誘電体を形成したものを渦巻き形状に巻回することが提案されている。
特開昭61−278124号公報(特許文献8)では、アルミニウムを陽極材料とした焼結タイプのコンデンサは、タンタルを陽極材料としたものよりも材料としては安価ではあるが、小型大容量化が困難であるばかりでなく、箔型巻回タイプのアルミニウム電解コンデンサに対するコスト面での有利性も見出せないとの問題があった。それに対して、特許文献8では、陽極体の製造方法として、線状の弁作用金属を連続的に供給し、その表面を粗面化処理して、酸化皮膜を形成することが提案されている。
また、電極部材に用いる材料について、電解コンデンサ用電極部材に関するものではなく、電気二重層コンデンサ集電体に関するものではあるが、以下のような提案がこれまでになされている。
特開2008−060124号公報(特許文献9)では、物理的な粗面化では電極活物質のアンカー効果を十分に得られるだけの凹凸を形成することができず、交流エッチングでは設備コストがかさんでしまうという問題、および、従来化学エッチングの場合には多量のCuを含有させなければならないとされているところ、Cuは耐食性を低下させてしまうため、電気二重層コンデンサ内で電解液による腐食を招いてしまうとの問題があった。それに対して、特許文献9では、質量比で、Niを50〜500ppm含有し、残部が99%以上のアルミニウムと不可避不純物からなる組成を有する電気二重層コンデンサ集電体用アルミニウム箔が提案されている。
特開2008−078330号公報 特開平2−288217号公報 特開2001−143972号公報 特開平3−104207号公報 特開平11−307400号公報 特開2008−177199号公報 特開2008−177200号公報 特開昭61−278124号公報 特開2008−060124号公報
特許文献1は、表面から20μmより深い位置での含浸性を改善することを目的とするものである。具体的には、表面から20μmより深い位置で、静電容量に大きく寄与する微細なピットが所定数形成されている。
しかしながら、表面から20μmの深さの位置までの含浸性については一切触れていない。表面近くではピットとピットが連結して、いたずらに径が大きいピットが形成されるといった記載はあるものの、そのいたずらに大きいとされるピット径について具体的な大きさには触れていない。このことからも、表面から静電容量に大きく寄与する微細なピットが形成されている深さの位置までの含浸性も担保されているのか否かについては、不明である。
特許文献2は、特許文献2の発明者らが実験によって見出した知見に基づくものである。具体的には、化学酸化重合によって導電性高分子膜を形成することができるのは、表面から深さ平均16μmまでであるとの知見にもとづいたものである。この特許文献2では、容量出現率はピットの形状にはあまり関係しないとして、図面にはトンネル状のピットのみが記載されている。しかしながら、上述のように、電解コンデンサの静電容量にピットの形状も寄与するため、高い容量出現率を得るためには、ピットの形状を考慮する必要がある。
特許文献3は、電極部材の表面積を大きくするために、開口径が異なる凹みを組み合わせた粗面化層を開示するものである。特に図面によれば、凹みの断面形状はいずれも略円形となっている。
また、特許文献4および特許文献5のいずれも、電極部材の表面積を大きくするために、直流エッチングによるトンネル状のピットの内部に、交流エッチングによるピットを形成することを開示するものであって、特に特許文献4においては、トンネル状のピットの開口径の好適な範囲を開示している。
しかしながら、特許文献3から特許文献5に開示されている粗面化層・エッチング層の構造は、固体電解質の含浸性まで考慮したものではない。
特許文献1から特許文献5は、いずれも電極部材が箔状や板状のものに関するものであるから、特に小型化した場合に問題になり得る、固体電解コンデンサとしての漏れ電流といった観点も踏まえた上での好適な電極部材を提供するには至っていない。
特許文献6および特許文献7は、電極部材として線状の弁作用金属にエッチングを行なったものを用いることを開示している。
なお、特許文献6および特許文献7では、容量出現率には一切触れられていない。また、アルミニウム線に対して行なうエッチングについても、その具体的な処理方法やエッチング層の具体的な構造については一切触れられていない。
特許文献8は、電極部材として線状の弁作用金属にエッチングを行なう場合に、それに供する線状の弁作用金属の断面形状の一例として円形、半円形、トラック形状、四角形の4種類を図示している。
しかし、特許文献6から特許文献8は、いずれもエッチング層の具体的な構造については何ら開示していないため、容量出現率や静電容量といった観点も踏まえた上での好適な電極部材を提供するには至っていない。また、特許文献8については、線状の弁作用金属の断面形状の差異による影響まで考慮したものではない。
特許文献9では、Niを50〜500ppm含有し、残部が99%以上のアルミニウムと不可避不純物からなる組成を有するアルミニウム箔に対して、もっぱら化学エッチングを行なっているのみである。また、化学エッチングを行なって形成されたエッチング層の具体的な構造については一切触れられていない。
本発明はこのような問題点に鑑みたもので、電解コンデンサの製造に際し、電解質の含浸を十分に行なうことができ、高い容量出現率を得ることができる電解コンデンサ用電極部材、および当該電解コンデンサ用電極部材を備えた電解コンデンサを提供することを目的とするものである。
本発明に基づく電解コンデンサ用電極部材は、電解コンデンサに含まれる電解コンデンサ用電極部材であって、前記電解コンデンサ用電極部材は、ワイヤー形状を有し、前記電解コンデンサ用電極部材の外表面は、外側に向けて開口する少なくとも1つ以上の第1凹部と、少なくとも前記第1凹部に開口する少なくとも1つ以上の第2凹部を含み、円相当径で表す前記第2凹部の開口径は、円相当径で表す前記第1凹部の開口径よりも小さい。
なお、ワイヤー形状とは、線状、棒状、ワイヤー状、繊維状、ひも状、帯状または細長いペレット状を含むものである。なお、ワイヤー形状は、電解コンデンサ用電極部材の軸方向に直交する方向から見た場合に、短軸および長軸を含む形状であることが好ましいが、軸方向に平行な長さ方向における長さと、当該長さ方向に直交する幅方向における幅とが等しい形状であってもよい。
上記本発明に基づく電解コンデンサ用電極部材にあっては、上記外表面は、上記第2凹部に開口する微細な第3凹部をさらに含んでいてもよい。
上記本発明に基づく電解コンデンサ用電極部材にあっては、好ましくは、上記第1凹部のうち、円相当径で表す開口径が1μm以上500μm以下であるもの、および/または、深さが0.5μm以上250μm以下であるものが、1個/mm以上2.0×10個mm以下の密度で存在する。
上記本発明に基づく電解コンデンサ用電極部材にあっては、好ましくは、上記第1凹部が、クレーター形状またはトンネル形状を有する。
上記本発明に基づく電解コンデンサ用電極部材にあっては、好ましくは、上記電解コンデンサ用電極部材の軸方向に垂直な断面形状を巨視的に見た場合に、上記断面形状の周縁が、角張った部分を有さない環状形状となる。
なお、巨視的に見た場合とは、上記電解コンデンサ用電極部材の軸方向に垂直な断面形状を縮小してみた場合に、断面形状の周方向における凹部の開口面の一端側と他端側とが周方向に接続されて見えることにより、開口面が閉じられたように見える縮小率を示し、好ましくは当該縮小率のうち最大の縮小率を示す。
上記本発明に基づく電解コンデンサ用電極部材にあっては、好ましくは、Niを5ppm以上150ppm以下含有するアルミニウム材によって構成されていることが好ましい。
上記本発明に基づく電解コンデンサは、上記の電解コンデンサ用電極部材と、上記電解コンデンサ用電極部材に向かい合うように配置される対向電極部材と、上記電解コンデンサ用電極部材と上記対向部材との間に配置される電解質とを備える。
上記本発明に基づく電解コンデンサにあっては、好ましくは、上記電解質は、導電性高分子を含む固体電解質である。
電解コンデンサの製造に際し、電解質の含浸を十分に行なうことができ、高い容量出現率を得ることができる電解コンデンサ用電極部材、および当該電解コンデンサ用電極部材を備えた電解コンデンサを提供することができる。
本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材の第1例を模式的に示す斜視図である。 本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材の第2例を模式的に示す斜視図である。 本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材の第3例を模式的に示す斜視図である。 本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材をその長さ方向に対して垂直に切断したときの断面形状の一例を示す図である。 本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材の第4例を模式的に示す図である。 本発明の一実施形態による電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向(軸方向)に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。 本発明の第1変形例よる電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向(軸方向)に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。 本発明の第2変形例による電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向(軸方向)に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。 本発明の第3変形例による電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向(軸方向)に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。 本発明の第4変形例による電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向(軸方向)に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。 実施例1に係る電解コンデンサ用電極部材の表層を軸方向に垂直な方向から撮影した、走査型電子顕微鏡の写真である。 実施例1に係る電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向(軸方向)に対して垂直に切断したときの表層近傍を撮影した、走査型電子顕微鏡の写真である。 実施例7に係る電解コンデンサ用電極部材において、直流エッチング後であって、交流エッチング前の状態にて、その長さ方向(軸方向)に対して垂直に切断したときの表層近傍を撮影した、走査型電子顕微鏡の写真である。 実施例7に係る電解コンデンサ用電極部材において、直流エッチング後に交流エッチングを行なった後の状態にて、その長さ方向(軸方向)に対して垂直に切断したときの表層近傍を撮影した、走査型電子顕微鏡の写真である。 従来の電解コンデンサを模式的に表した図である。 従来の電解コンデンサ用電極部材における固体電解質の含浸の程度を模式的に表した図である。
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、以下の説明におけるものは本発明の実施形態の一つにすぎず、本発明はこれらの形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
また、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
1.基材
以下に説明する基材10は、後述の電解コンデンサ用電極部材20(図6等参照)の前駆体である。
基材10をエッチングして基材10の外表面側に後述する多孔質部22を形成することにより、電解コンデンサ用電極部材20を製造することができる。この場合には、基材10は、電解コンデンサ用電極部材20に含まれる後述する芯部21および多孔質部22の双方を構成するものとなる。
また、蒸着および粉体付着等によって基材10の周囲に多孔質部22を形成することによっても、電解コンデンサ用電極部材20を製造することができる。この場合には、基材10は、芯部21を構成するものとなる。
図1は、本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材の第1例を示す斜視図である。図2は、本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材の第2例を模式的に示す斜視図である。図3は、本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材の第3例を模式的に示す斜視図である。図1から図3を参照して、本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材の形状について説明する。
基材10は、線状、棒状、ワイヤー状、繊維状、ひも状、帯状および細長いペレット状等の各種形状を有していてもよい。基材10は、所定の方向に延在しており、軸方向を有する。
基材10の長さ方向(軸方向)における長さと、当該長さ方向に直交する厚さ方向の基材10の太さとの関係は、特に限定されるものではない。
図1から図3に示すように、基材10は、たとえば、略円柱形状を有し、基材10の軸方向に垂直な断面形状は、略円形状を有する。図1に示すように、基材10の太さを示す直径φと長さLとの関係は、φ<Lであってもよい。この場合には、基材10は、細長い形状を有する。また、図2に示すように、基材10の太さを示す直径φと長さLとの関係は、φ=Lであってもよい。さらに、図3に示すように、基材10の太さを示す直径φと長さLとの関係は、φ>Lであってもよい。この場合には、基材10は、扁平なコインのような形状を有する。基材10は、φ<Lの関係を満たすことが好ましい。この場合、電解コンデンサ用電極部材20においても、電解コンデンサ用電極部材の太さを示す直径φと電解コンデンサ用電極の長さLとの関係がφ<Lの関係を満たすことが容易になり、電解コンデンサを製造したときに断面積に対する表面積の割合が多くなって、容量を取りやすくすることができる。また、漏れ電流を更に低く抑えることもできる。
なお、基材10の軸方向に垂直な断面形状は、円形状に限定されない。基材10の上記断面形状は、楕円形状、長円形状、トラック形状、および卵型形状等のオーバル形状であってもよいし、ピーナッツ形状であってもよい。
さらに、基材10の軸方向に垂直な断面形状の周縁は、角張った部分を有さない環状形状を有することが好ましい。当該環状形状には、角部が丸みを帯びた多角形形状、上記オーバル形状、およびピーナッツ形状等が含まれる。
基材10の軸方向に垂直な断面形状の周縁が上記のような形状を有することにより、後述するように、電解コンデンサを製造する際に、電解コンデンサ用電極部材20の表面に沿うよう固体電解質が形成される。これにより、電解コンデンサ用電極部材20と固体電解質との密着性が確保され、高い容量出現率を得ることができる。
図4は、本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材を、その長さ方向に対して垂直に切断したときの断面形状の一例を示す図である。図4を参照して、基材10の断面形状の一例について説明する。
図4に示すように、基材10の軸方向に垂直な断面形状は、たとえば、角部が丸みを帯びた略三角形状を有する。また、基材10は、外側に向けて突出する突起11および内側に向けて窪む窪み12を有する。
突起11は、根元側において、先端側に向かうにつれて突出方向DR1に沿うように湾曲する湾曲部11aを有する。当該湾曲部11aは、内側に凹となるように湾曲する湾曲形状を有する。
窪み部12は、開口縁部側において、底部に向かうにつれて窪み方向DR2に沿うように湾曲する湾曲部12aを有する。当該湾曲部12aは、外側に向けて凸となるように湾曲する湾曲形状を有する。
上記のように、突起11や窪み12が存在していたとしても、これらが上述のような湾曲部11aおよび湾曲部12aを有することにより、電解コンデンサを製造する際に、電解コンデンサ用電極部材20における突起や窪みと固体電解質との密着性を確保することができる。これにより、基材10が突起11および窪み12を有する場合にも、高い容量出現率を得ることができる。
なお、基材10は、その長さ方向に対して垂直に見たときの断面形状が、必ずしも長さ方向に沿って一定である必要はない。
図5は、本発明における電解コンデンサ用電極部材の前駆体である基材の第4例を模式的に示す図である。図5を参照して、基材10の他の形状について説明する。
図5に示すように、長さ方向における一方側の基材10の端部10aは、角部が丸みを帯びた略三角形状を有し、長さ方向における他方側の基材10の端部10bは、角部が丸みを帯びた略四角形状を有している。
このように、基材10は、長さ方向における一方側の端部10aの形状と、長さ方向における他方側の端部10bの形状とが異なるものであってもよい。この場合においても、長さ方向に沿った任意の位置における上記断面形状が、角張った部分を有さない環状形状を有することが好ましい。
また、長さ方向における一方の端部10aと長さ方向における他方の端部10bは必ずしも平面形状に限定されるのではなく、曲面形状、または点によって構成されていてもよい。たとえば、基材10は、全体の形状として、表面が二次曲面になっているラグビーボールのような楕円体状の形状を有していてもよい。
また、後述するように、基材10をエッチングして電解コンデンサ用電極部材20を製造する場合には、基材10の形状と、電解コンデンサ用電極部材20の形状とは、略同様であることが、電解コンデンサ製造工程の簡略化の観点から、好ましい。なお、この場合における基材10および電解コンデンサ用電極部材20の形状とは、基材10および電解コンデンサ用電極部材20のそれぞれを巨視的に見た場合の形状であり、電解コンデンサ用電極部材20においては、その外表面に有する凹部が見えない程度の縮尺率で観察した場合の形状を指す。
基材10の純度および不純物については、従来の電解コンデンサ用電極部材に用いられている基材と同等のものを、本発明においても用いることができる。
基材10を用いて、電解コンデンサ用電極部材20を製造する場合には、後述する第1凹部7a,7b(図6、図7等参照)と第2凹部8a,8b,8c(図6、図8、図10等参照)を形成した後に、その表面に誘電体2を形成する。この際、基材10と誘電体2との密着性などといった観点から、誘電体2は基材10に由来する金属成分を含む酸化物からなることが好ましい。そのため、本発明において好ましくは、アルミニウム、ニオブ、タンタルなどの弁作用金属からなる基材を用いる。より好ましくは、Niを5ppmから150ppm含有するアルミニウム材を、さらに好ましくは、Niを20ppmから100ppm含有するアルミニウム材を、基材として用いる。
後述するように、凹部をエッチングによって形成する場合には、アルミニウム材にNiを添加することでアルミニウムの溶解が促進されて、電解コンデンサ用電極部材20の表層に大きな凹部を形成しやすくなる。Niの含有量が5ppmから150ppmの場合、中でも20ppmから100ppmの場合には、第1凹部として、後述するクレーター状のものを形成するのに特に適している。
なお、このことは、第1凹部として、後述するトンネル状のものを形成する場合には、Niを5ppmから150ppm含有するアルミニウム材はその基材に適していないという趣旨ではない。Niを添加した効果をより得ることができるのが、第1凹部としてクレーター状のものを形成する場合といった趣旨に過ぎない。
2.電解コンデンサ用電極部材
(1)電解コンデンサ用電極部材の形状
図6から図10は、本発明の一実施形態、第1変形例、第2変形例、第3変形例、および第4変形例による電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向(軸方向)に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。
図6から図10に示すように、電解コンデンサ用電極部材20は、芯部21および当該芯部21の周囲に位置する多孔質部22を含む。基材10をエッチングして電解コンデンサ用電極部材20を製造する場合には、多孔質部22は、基材10の粗面化部によって構成されている。
電解コンデンサ用電極部材20の外表面は、外側に向けて開口する少なくとも1つ以上の第1凹部と、少なくとも前記第1凹部に開口する少なくとも1つ以上の第2凹部を含む。なお、凹部の詳細については、後述する。
上述のように、電解コンデンサ用電極部材20は、基材10をエッチングして電解コンデンサ用電極部材20を製造する場合には、巨視的に見た場合に、基材10の形状と略同様の形状を有する。ここで、巨視的に見た場合とは、電解コンデンサ用電極部材20の外表面が有する凹部が見えない程度の縮尺率で観察した場合の形状を指す。
具体的には、電解コンデンサ用電極部材20は、基材10同様に、線状、棒状、ワイヤー状、繊維状、ひも状、帯状または細長いペレット状の各種形状を有する。また、電解コンデンサ用電極部材20は、後述するように、基材10が軸方向と垂直な方向に沿って切断されたものも含まれ、上記各種形状が切断された形状であってもよい。上記各種形状および上記各種形状が切断された形状を総称して、ワイヤー形状と称する。電解コンデンサ用電極部材20は、このようなワイヤー形状を有する。
なお、ワイヤー形状は、基材10の軸方向に直交する方向から見た場合に、短軸および長軸を含む形状であることが好ましいが、軸方向に平行な長さ方向における長さと、当該長さ方向に直交する幅方向における幅とが等しい形状であってもよい。
電解コンデンサ用電極部材20の長さ方向(軸方向)における長さと、当該長さ方向に直交する厚さ方向の電解コンデンサ用電極部材20の太さとの関係は、基材10同様に、特に限定されるものではない。
電解コンデンサ用電極部材20は、巨視的に見た場合に、たとえば、略円柱形状を有していてもよく、この場合において、電解コンデンサ用電極部材20の軸方向に垂直な断面形状は、円形状となる。この場合において、電解コンデンサ用電極部材20の太さを示す直径φと長さLとの関係は、基材10同様に、φ<Lであってもよいし、φ=Lであってもよいし、φ>Lであってもよい。
なお、電解コンデンサ用電極部材20の軸方向に垂直な断面形状は、円形状に限定されない。電解コンデンサ用電極部材20の上記断面形状は、楕円形状、長円形状、トラック形状、および卵型形状等のオーバル形状であってもよいし、ピーナッツ形状であってもよい。
電解コンデンサ用電極部材20の軸方向に垂直な断面形状の周縁は、巨視的に見た場合に、角張った部分を有さない環状形状を有することが好ましい。当該環状形状には、角部が丸みを帯びた多角形形状、上記オーバル形状、およびピーナッツ形状等が含まれる。
電解コンデンサ用電極部材20の軸方向に対して垂直な断面形状が、直角のような丸みをまったく帯びていない角を有している、電解コンデンサ用電極部材20を用いて電解コンデンサを製造することを想定した際に、電解質として導電性高分子等の固体電解質を用いる場合には、電解コンデンサ用電極部材20の直角のような丸みをまったく帯びていない角と固体電解質とが接することができる面積はごくわずかでしかない。
そのため、電解コンデンサ用電極部材20の直角のような丸みをまったく帯びていない角における固体電解質と電解コンデンサ用電極部材20との密着性が悪く、固体電解質が電解コンデンサ用電極部材20から剥離してしまったり、そもそも電解コンデンサ用電極部材20の直角のような丸みをまったく帯びていない角においては固体電解質が重合することができなかったりして、容量出現率の低下を招きかねない。
実施の形態のように、軸方向に垂直な電解コンデンサ用電極部材20の断面形状の周縁が、巨視的に見た場合に、角張った部分を有さない環状形状を有することにより、電解コンデンサ用電極部材20の表面に沿うよう固体電解質が形成される。これにより、電解コンデンサ用電極部材20と固体電解質との密着性が確保され、高い容量出現率を得ることができる。
なお、上述のように基材10が突起11および/または窪み12を有する場合には、電解コンデンサ用電極部材20も突起および/または窪みを有することとなる。電解コンデンサ用電極部材20が突起を有する場合には、基材10と同様に、突起が、根元側において、先端側に向かうにつれて突出方向に沿うように湾曲する湾曲部を有することにより、突起と固体電解質との密着性を確保することができる。また、電解コンデンサ用電極部材20が窪みを有する場合には、基材10と同様に、底部に向かうにつれて窪み方向に沿うように湾曲する湾曲部を有することにより、窪みと固体電質との密着性を確保することができる。これにより、電解コンデンサ用電極部材20が突起および/または窪みを有する場合にも、高い容量出現率を得ることができる。
また、本発明における電解コンデンサ用電極部材の形状は、基材の形状から変更することもできる。例えば、基材の形状としては図1のようにφ<Lである細長いものであったとしても、電解コンデンサを製造する際に切断するなどして、図3のような、電解コンデンサ用電極部材の太さを示す直径φと電解コンデンサ用電極の長さLとの関係がφ>Lである扁平なコインのような形状としたものも、本発明における電解コンデンサ用電極部材に含まれる。電解コンデンサ用電極部材は、φ<Lの関係を満たすことが好ましい。この場合、断面積に対する表面積の割合が多くなって、容量を取りやすくすることができる。また、漏れ電流を更に低く抑えることもできる。
基材10をエッチングすることによって、電解コンデンサ用電極部材20を製造する場合には、アルミニウム材にNiを添加することでアルミニウムの溶解が促進されるため、電解コンデンサ用電極部材20の表層に大きな凹部を形成しやすくなる。そのため、電解コンデンサ用電極部材20もNiを含むことが好ましく、電解コンデンサ用電極部材20のNiの含有量は5ppmから150ppmが適しており、中でも20ppmから100ppmの場合が、特に適している。すなわち、電解コンデンサ用電極部材20は、Niを5ppm以上150ppm以下含有するアルミニウム材によって構成されていることが好ましく、さらに、Ni20ppm以上100ppm以下を含有するアルミニウム材によって構成されていることが好ましい。
(2)凹部の全体構造
本発明における電解コンデンサ用電極部材20は、外表面が少なくとも1つ以上の第1凹部と、少なくとも第1凹部に開口する少なくとも1つ以上の第2凹部を含むものであって、ワイヤー状の基材を用いている。なお、第1凹部とは、電解コンデンサ用電極部材20の外側に向けて開口する凹部であって、電解コンデンサ用電極部材20の表層から深い位置(たとえば芯側)に形成されている凹部と比較して大きいものを言う。さらに、本発明における電解コンデンサ用電極部材20には、第2凹部よりも微細な第3凹部が形成されているものも含まれる。以下、その一例を、図6から図10を用いて説明する。
図6は、本発明の一実施形態による電解コンデンサ用電極部材を、その長さ方向に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。
図6に示すように、一実施形態における電極部材においては、電解コンデンサ用電極部材20の外表面が、第1凹部7bおよび第2凹部8aを含む。
第1凹部7bは、電解コンデンサ用電極部材20の外部に向けて開口しており、開口面7dを有する。第1凹部7bは、トンネル形状を有する。第1凹部7bにおいて、開口面7dの最大の開口径よりも開口面7dから第1凹部7bの底部7b1までの深さの方が長くなっている。
第1凹部7bは、軸心に向かうように延在する。具体的には、たとえば、第1凹部7bは、軸方向に垂直な方向に沿って延在する。なお、第1凹部7bの延在方向は、軸方向に垂直な方向に限定されず、軸方向と捻じれ関係にあるいずれの方向に延在していてもよい。
第2凹部8aは、主として第1凹部7bに開口し、開口面8dを有する。第2凹部8aの一部は、電解コンデンサ用電極部材20の外部に向けて開口している。円相当径で表す第2凹部8aの開口径は、円相当径で表す第1凹部7bの開口径よりも小さい。
第2凹部8aは、略キューブ形状を有する。なお、第2凹部8aの形状を略キューブ状に限定されず、略正三角錐状、および略球体状等であってもよい。ここで、略キューブ状、略正三角錐状、および略球体状とは、必ずしも幾何学的に立方形状、正三角錐形状および球体形状の要件を満たすものに限定されず、当該要件から幅、高さ、奥行きの比率がある程度ずれたものも許容する。
図7は、本発明の第1変形例による電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。
図7に示すように、第1変形例における電解コンデンサ用電極部材20の一例は、図6に示す一実施形態による電解コンデンサ用電極部材20と比較した場合に、電解コンデンサ用電極部材20の外表面に含まれる第1凹部7aおよび第2凹部8aのうち、第1凹部7aの形状が相違する。その他の構成は、ほぼ同様である。
第1凹部7aは、クレーター形状を有する。第1凹部7aにおいて、開口面7dの最大の開口径よりも開口面7dから第1凹部7aの底部7a1までの深さの方が短くなっている。
第2凹部8aは、主として第1凹部7aに開口しており、略キューブ形状を有する。第2凹部8aの一部は、外部に向けて開口している。円相当径で表す第2凹部8aの開口径は、円相当径で表す第1凹部7aの開口径よりも小さくなっている。
図8は、本発明の第2変形例による電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。
図8に示すように、第2変形例における電解コンデンサ用電極部材20の一例は、図6に示す一実施形態による電解コンデンサ用電極部材20と比較した場合に、電解コンデンサ用電極部材20の外表面に含まれる第1凹部7aおよび第2凹部8bの両方の形状が相違する。
第1凹部7aは、クレーター形状を有する。第1凹部7aにおいて、開口面7dの最大の開口径よりも開口面7dから第1凹部7aの底部7a1までの深さの方が短くなっている。
第2凹部8bは、主として第1凹部7aに開口しており、略トンネル形状を有する。第2凹部8bの一部は、外部に向けて開口している。第2凹部8bにおいて、開口面8dの最大の開口径よりも開口面8dから第2凹部8bの底部8b1までの深さの方が長くなっている。円相当径で表す第2凹部8bの開口径は、円相当径で表す第1凹部7aの開口径よりも小さくなっている。
図9は、本発明の第3変形例による電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。
図9に示すように、第3変形例における電解コンデンサ用電極部材20の一例は、図8に示す第2変形例における電解コンデンサ用電極部材20と比較した場合に、基材10の外表面が第3凹部9をさらに含む点において相違する。
第3凹部9は、主として第2凹部8bに開口しており、たとえば略キューブ形状を有する。なお、第3凹部9の形状は、略キューブ形状に限定されず、略正三角錐状、および略球体状等であってもよい。第3凹部9は、第2凹部8bよりも微細に構成されている。円相当径で表す第3凹部9の開口径は、円相当で表す第2凹部8bの開口径よりも小さくなっている。
図10は、本発明の第4変形例による電解コンデンサ用電極部材をその長さ方向に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面形状を、拡大して模式的に表した図である。
図10に示すように、第4変形例による電解コンデンサ用電極部材20は、第3変形例における電解コンデンサ用電極部材20と比較した場合に、第2凹部8cの形状が主として相違する。
第1凹部7aは、クレーター形状を有する。第1凹部7aは、第3変形例における第1凹部7aと比較した場合に、円相当の開口径が大きくなっている。
第2凹部8cは、主として第1凹部7aに開口しており、クレーター形状を有する。第2凹部8cの一部は、外部に向けて開口していてもよい。第2凹部8cにおいて、開口面8dの最大の開口径よりも開口面8dから第2凹部8cの底部8c1までの深さの方が短くなっている。
第3凹部9は、主として第2凹部8cに開口しており、略キューブ形状を有する。第3凹部9の一部は、外部に向けて開口している。第3凹部9は、第2凹部8bよりも微細に構成されている。円相当径で表す第3凹部9の開口径は、円相当で表す第2凹部8bの開口径よりも小さくなっている。
なお、電解コンデンサの使用電圧に応じて電解コンデンサ用電極部材20の表面に形成される誘電体の厚さが変化することに鑑みると、図6および図7に示されるような、第2凹部が略キューブ状や略球体状である一実施形態に係る電解コンデンサ用電極部材20および第1変形例に係る電解コンデンサ用電極部材20、ならびに、図9および図10に示されるような第3凹部が形成されている第3変形例に係る電解コンデンサ用電極部材20および第4変形例に係る電解コンデンサ用電極部材20は、どちらかと言うと使用電圧が比較的低いものに適している。
一方、図8に示されるように、第2凹部がトンネル状であって、略キューブ状や略球体状の第3凹部が形成されていない第2変形例に係る電解コンデンサ用電極部材20は、どちらかと言うと使用電圧が比較的高いものに適している。
(3)第1凹部
第2凹部は第1凹部と比較すると微細であるため、電解コンデンサ用電極部材20の表面積拡大への寄与が大きい。ここで、第2凹部は、略キューブ形状を有するため、これが所定の方向にずれた状態で連通する場合には、連通方向において部分的に狭くなる箇所が生じる。
このため、電解質に導電性高分子等の固体電解質を用いる場合において、外部に向けて開口する微細な(例えば、開口径が1μm未満の)凹部に複数の微細な凹部が連通する部分に電解質を含浸させる場合には、表層からある深さの位置における微細な凹部が電解質で塞がれて、それより深い位置の微細な凹部には電解質が含浸されなくなる。この場合には、容量出現率が低下してしまう。
そこで、本発明のように、外部に開口し、第2凹部よりも開口径が大きい第1凹部を設け、当該第1凹部に第2凹部を開口させることにより、第1凹部の深さに相当する分だけ、電解コンデンサ用電極部材20の表層の近傍での含浸性を確保することができる。さらに、第1凹部内に含浸された電解質は、第1凹部に開口する第2凹部内に入り込み、第2凹部内に十分に充填される。この結果、高い容量出現率を得ることができる。
第1凹部としては、好ましくは、開口径が1μmから500μm、および/または、深さが0.5μmから250μmであるものが、1個/mmから2.0×10個/mmの密度で存在している。
電解質に導電性高分子等の固体電解質を用いる場合、固体電解質の粒径に鑑みて、第1凹部の開口径を1μm以上、さらに好ましくは3μm以上とすることにより、第1凹部内に電解質を充填させることができる。これに伴って、第1凹部に開口する第2凹部にも十分に電解質を充填させることができる。そして、500μm以下、さらに好ましくは20μm以下とすることで、第2凹部も適切な密度をもって形成することができる。
さらに、第1凹部に開口するように第2凹部を設けることにより、第1凹部を設けることなく微細な第2凹部を複数形成した場合に第2凹部が密集した部分が基材10の表層から剥離することを抑制できる。この結果、第2凹部を適切な密度をもって形成することができる。
また、好ましくは、第1凹部の深さは、0.5μmから250μmである。また、より好ましくは、第1凹部の深さは、1.5μmから10μmである。
上述のように、第2凹部と第2凹部とが連なっている部分は、第2凹部の一部と第2凹部の一部とが重なった部分となることが多い。第2凹部は微細であるため、第2凹部とこれに隣り合う第2凹部とが連なっている部分はさらに微細となる。このため、第1凹部を設けることなく、複数の微細な(例えば、開口径が1μm未満の)凹部のみを外部に開口するように設けて、この微細な凹部に電解質を含浸させる場合には、電解質が微細な凹部と微細な凹部とが連なっている部分を塞いでしまうなどして、それより深いところに位置する微細な凹部まで電解質を含浸することができなくなってしまうということが起こりやすくなる。
このため、第2凹部よりも大きい第1凹部に開口するように第2凹部を設けることにより、第1凹部の深さに相当する分だけ、電解質の含浸性を向上させることができる。
一方で、第1凹部の深さを大きくしすぎる場合には、電解コンデンサ用電極部材20の表面積拡大に大きく寄与する微細な凹部を十分な密度をもって形成することが困難になってしまう。
このため、第1凹部の深さを0.5μmから250μm、より好ましくは1.5μmから10μmとすることにより、容量出現率も静電容量も向上させることができる。
さらに、第1凹部の密度を1個/mmから2.0×10個/mm、さらに好ましくは3×10個/mmから150×10個/mmとすることで、電解コンデンサ用電極部材20の表面積に大きく寄与する第2凹部を適切な密度をもって形成することができる。この結果、第2凹部が密集した部分が基材10の表層から剥離されることを抑制することができる。
また、上記密度で形成される第1凹部の各々に第2凹部が設けられることにより、各々の第1凹部内のみならず、電解コンデンサ用電極部材20の全体的にも、第2凹部に万遍なく電解質を充填することができる。
以上のことから、第1凹部に関して、第1開口径が1μmから500μmであり、かつ、密度が1個/mmから2.0×10個/mmの場合には、第1凹部に開口する第2凹部に電解質を十分に充填することができるとともに、電解コンデンサ用電極部材20全体で見た場合にも、第2凹部に電解質を満遍なく充填することができる。このため、当該電解コンデンサ用電極部材20を用いた場合には、より高い容量出現率を得ることができる。
(4)第2凹部
第2凹部は、第1凹部と比較すると微細であり、電解コンデンサ用電極部材20の表面積への寄与が大きい。そのため、第1凹部の内壁に形成された第2凹部は、特にその形状が略キューブ状や略球体状の場合には、さらにその内壁に第2凹部を形成し、これを繰り返して第2凹部を連ねることで、電解コンデンサ用電極部材20の表面積の拡大につながり、高い静電容量を得ることができる。
なお、第2凹部は、必ずしも第1凹部の内壁に形成されているものと、それに連なっているものに限られない。第2凹部は、電解コンデンサ用電極部材20の外部に向けて開口するものであって第1凹部よりも小さいもの、特に開口径が1μm未満のものと、それに連なっているものも含む。
電解コンデンサ用電極部材20の外部に開口するものおよび電解コンデンサ用電極部材20の表層近傍に形成されているものに固体電解質が入り込むことにより、アンカー効果が得られ、電解コンデンサ用電極部材20と固体電解質の密着性を増加させることができる。その結果、固体電解質が電解コンデンサ用電極部材20から脱離してしまうことによる容量出現率の低下を防ぐことができる。
さらに、第2凹部が第1凹部とは反対方向に向かって幾重にも連なっていることで、電解コンデンサ用電極部材20の表面積(より正確には、電解質が接することが可能な、電解コンデンサ用電極部材20の上に形成される誘電体の表面積)が大きくなり、高い静電容量を得ることができる。
また、図10のように、第2凹部8cとしては、第3凹部9より大きいが、第1凹部7aよりかは小さいクレーター状のものもある。すなわち、第1凹部の内壁から、その大きさを小さくしながら第1凹部とは反対方向に向かって連なる凹部も本発明における第2凹部に含まれる。
なお、「その大きさを小さくしながら」というのは、必ずしも連続的に小さくなる場合だけを指すのではない。最深部側における第2凹部の円相当の開口径が、第1凹部に開口している部分における第2凹部の円相当の開口径よりも小さくなっていればよく、第1開口部側から最深部側に至るまでの間に第1凹部に開口している部分における第2凹部の円相当の開口径よりも大きくなる部分が含まれていてもよい。
このように含浸性に寄与するクレーター状の第1凹部とクレーター状の第2凹部が複数連なった構造とすることで、より深いところまで電解質を含浸性することができる。さらに、上記のように凹部の開口側から最深部側にかけて一旦拡径して縮径する第2凹部8cを設けることにより、開口径が一定の状態で深さ方向に延在するように第2凹部を設ける場合と比較して、電解コンデンサ用電極部材20の表面積を大きくすることができる。
好ましくは、円相当径で表した場合の第2凹部の開口径は、50nmから1μmである。
一般的に、電解質に導電性高分子等の固体電解質を用いて固体電解質層を形成する場合には、化学酸化重合や電解重合が従来より行なわれている。しかしながら、化学酸化重合にしても電解重合にしても、重合するにあたって重合液が電解コンデンサ用電極部材20と直接反応する。これにより、電解コンデンサ用電極部材20に化学的ストレスを与えることになり、特に耐電圧が高い領域では十分な特性を得ることができない。
そこで近年では、分散溶液を塗布して乾燥させるといった方法でも、固体電解質層の形成が行われている。このような分散溶液を用いると、電解コンデンサ用電極部材20に化学的ストレスを与えることがないため耐電圧が高いところでも十分な特性を得ることができるとともに、製造プロセスが簡易となるメリットがある。ただし、分散溶液は重合液とは異なり、導電性高分子が分散しているに過ぎないため、導電性高分子の粒径が問題になってくる。
そこで、分散溶液を用いる方法によって、効果的に固体電解質層を形成するためには、固体電解質の粒径に鑑みて、本実施の形態のように、上記第2凹部の開口径が、50nm以上であることが好ましい。
一方、第2凹部は電解コンデンサ用電極部材20の表面積拡大に寄与するものであるから、上記開口径を1μm以下とし、第2凹部1つあたりの空隙部分に上限を設けることにより、その分多くの第2凹部を形成することができる。
(5)第3凹部
略キューブ状や略球体状の第3凹部が形成された電解コンデンサ用電極部材20の一例として、たとえば図9に示すように、クレーター状の第1凹部およびトンネル状の第2凹部が形成された第3変形例に係る電解コンデンサ用電極部材20がある。
最も微細な第3凹部が略キューブ状や略球体状であるから、すでに述べたとおり、この場合の電解コンデンサ用電極部材20は電解コンデンサの使用電圧が比較的低いものに適している。電解コンデンサ用電極部材20の表面積をより大きくするためには、微細な第3凹部を幾重にも連ねることになる。しかし、外部に開口する第3凹部に複数の第3凹部が連通する場合には、第2凹部の形状が略キューブ状や略球体状の場合と同様に、第3凹部と第3凹部とが連なっている部分を電解質がそこを塞いでしまうなどして、それより深いところに位置する第3凹部まで電解質を含浸することができなくなってしまうということが起こりやすくなる。
その一方、第1凹部がクレーター状である場合、クレーターの深さを深くしすぎてしまうと、その分表面積に寄与する微細な凹部を形成することができなくなってしまう。
そこで、電解コンデンサ用電極部材20の表層近傍における容量出現率をクレーター状の第1凹部を形成することで改善し、電解コンデンサ用電極部材20の表層から比較的深い位置における容量出現率はトンネル状の第2凹部を形成することで改善する。その上で、電解コンデンサ用電極部材20の表面積拡大に寄与する第3凹部を形成することで静電容量を高くする。第1凹部、第2凹部、および第3凹部といった3種類の凹部を形成することで、上記のような効果を得ることができる。
第4変形として、上述のように、第1凹部7aも第2凹部8cもクレーター状になっている電解コンデンサ用電極部材20を図10に示すが、図9に示すような第3変形例と同様に、第1凹部7aおよび第2凹部8cはどちらかと言うと含浸性向上に大きく寄与するものであるのに対して、第3凹部9は、電解コンデンサ用電極部材20の表面積拡大に寄与するものである。
(6)凹部の形成方法
本発明における電解コンデンサ用電極部材20の第1凹部、第2凹部および第3凹部等の凹部の形成方法として、例えば、エッチング(直流、交流、ケミカル、スパッタ、プラズマなど)、蒸着および粉体付着(付着後、焼結を行なったものも含む)が挙げられる。
エッチングの場合について、第1凹部、第2凹部および第3凹部をそれぞれ別々の工程によって形成する場合、例えば、塩酸を含む水溶液中における直流エッチング(例えば、トンネル状の第1凹部および第2凹部を形成する場合)、交流エッチング(例えば、クレーター状の第1凹部および第2凹部を形成する場合には、周波数を低くし、微細な略キューブ状や略球体状の第2凹部および第3凹部を形成する場合には、周波数を高くする)またはケミカルエッチング(例えば、第1凹部を形成する場合には、ケミカルエッチングの前処理として、目的とする第1凹部の大きさと同じ大きさの穴を有するマスキングを行なう)を、各凹部の形状に応じて選択することができる。
交流エッチングをする場合には、段階的に、周波数を高くする。具体的には、第1凹部および第2凹部を形成する場合には、2段階に分けて周波数を変化させる。たとえば、第1段階では、0.2〜7Hz、好ましくは0.2〜6Hzで交流エッチングを行ない、第2段階では、3〜120Hz、好ましくは4〜60Hzで交流エッチングを実施する。ただし、第1段階よりも第2段階のほうが、周波数を高く設定するものとする。また、第1凹部、第2凹部および第3凹部を形成する場合には、3段階に分けて周波数を変化させる。たとえば、第1段階では、0.2〜7Hz、好ましくは0.2〜6Hzで交流エッチングを行ない、第2段階では、1〜20Hz、好ましくは2〜15Hzで交流エッチングを行ない、第3段階では、3〜120Hz、好ましくは4〜60Hzで交流エッチングを行なう。ただし、第1段階よりも第2段階のほうが、第2段階よりも第3段階のほうが、それぞれ周波数を高く設定するものとする。なお、第1凹部を形成する前に、基材表面の脱脂を目的としてアルカリ処理または酸処理を行なうこともできる。
また例えば、エッチングによって形成される個々のピットの大きさは小さくても、それらが結合して1つの大きなピットを形成したり、それらが連なって結ばれた間に存在する基材の一部が基材本体から脱離したりすることで大きなピットを形成することがある。そこで、本発明における電解コンデンサ用電極部材20においても、いずれも塩酸を含む水溶液中におけるエッチングによって形成される個々のピットは第2凹部の大きさと同じであるが、基材の表層において第2凹部と第2凹部が結合した結果、第2凹部よりも大きい第1凹部を、第2凹部とともに形成することができる。
このような形成方法は、第1凹部の形状をクレーター状とする場合に特に好ましいが、直流エッチング、交流エッチングおよびケミカルエッチングのいずれによっても行なうことができる。
また、第3凹部まで形成する場合も同様に、基材の表層において第3凹部と第3凹部が結合した結果、第1凹部や第2凹部が形成されることもあるが、そのようにして凹部が形成されたものも、本発明における電解コンデンサ用電極部材20に含まれる。
なお、凹部を形成する間、ずっと同一の条件で行なわなければならないというものではなく、凹部の形成の進行度合いに応じて適宜条件を変更することも、本発明における電解コンデンサ用電極部材20の製造方法に含まれる。また、その条件を変更する際、例えば交流エッチングと交流エッチングとの間に、凹部を直接形成するものではないエッチング以外の工程を行なうことも、本発明における電解コンデンサ用電極部材20の製造方法に含まれる。
また、このような方法で本発明における電解コンデンサ用電極部材20を形成する場合には、Niを添加することでアルミニウムの溶解が促進される。このため、基材として、Niを5ppmから150ppm含有するアルミニウム材を用いるのが好ましい。
また、塩酸を含む水溶液中等でのエッチング以外に、イオンを基材表面に衝突させるスパッタエッチングや電子ビームを用いたプラズマエッチングなどの物理的方法や、小さな粒子を衝突させるブラスト加工などの機械的方法で行なうものも、本発明における電解コンデンサ用電極部材20の製造方法に含まれる。
また、蒸着および粉体付着(焼結を含む)の場合については、例えば、基材の表層近傍では、蒸着粒子や粉体(焼結可能粒子を含む)を空隙が少なくなるよう密に配置し、蒸着層や粉体付着層(焼結層を含む)が目的の厚さに近づいたら、空隙が大きいものも並存するように条件を変更して配置することで、複数の種類の大きさが異なる凹部を形成することができる。
なお、電解コンデンサ製造工程の簡略化の観点から、蒸着および粉体付着(焼結を含む)よりもエッチング、特に塩酸を含む水溶液中等でのエッチングが好ましい。
3.電解コンデンサ
本発明における電解コンデンサは、上記電解コンデンサ用電極部材と、上記電解コンデンサ用電極部材に向い合うように配置される対向電極部材と、上記電解コンデンサ用電極部材と上記対向電極部材との間に配置される電解質とを備える。好ましくは、電解質は、導電性高分子を含む固体電解質である。
具体的には、本発明における電解コンデンサは、陽極体として本実施の形態に係る電解コンデンサ用電極部材が用いられている点を除いて図15に示す電解コンデンサとほぼ同様の構成を有する。
より具体的には、陽極体と、陽極体上に形成された誘電体と、陽極体とは反対側にて誘電体に隣接して配置された電解質と、陽極体との間に電解質を挟み込むようにして陽極体1に向かい合うように配置された対向電極部材としての陰極体とを備える。
(1)誘電体
本発明における電解コンデンサ用電極部材20を陽極体として用いる場合には、その表面に誘電体皮膜を形成する。その方法として例えば、硼酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム等の水溶液中での陽極酸化が挙げられる。
(2)電解質
電解コンデンサには、電解質が液体状のもの(駆動用電解液)と固体状のもの(固体電解質)と二種類あるが、本発明における電解コンデンサ用電極部材20はいずれのタイプの電解コンデンサにも用いることができる。そして、本発明における電解コンデンサにおいては、駆動用電解液も固体電解質も、従来より電解コンデンサに用いられているものを用いることができる。
例えば、駆動用電解液では、ポリエチレングリコール、γ-ブチロラクトン等を溶媒とするものが、固体電解質のうち導電性高分子として、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、またはその誘導体等が、それぞれ例として挙げられる。
(3)陰極体
本発明における電解コンデンサ用電極部材20を陽極体として用いる場合において、陰極体としては、電解質が駆動用電解液の場合には、陽極体が箔状に構成される場合に電解コンデンサに使用される陰極と同じ構成を有する陰極箔を用いることができる。一方、電解質が固体電解質の場合には、陰極体としては、駆動用電解液を用いると同様に陰極箔を用いることもできるし、例えばカーボン層と銀ペースト層の積層体なども用いることができる。
(4)その他の電解コンデンサの主要材料
陽極体と陰極体の間に挟むセパレータ、陽極体に接続する陽極端子、陰極体に接続する陰極端子、アルミケースおよび封口ゴムは、従来より電解コンデンサに用いられているものを用いることができる。
(5)電解コンデンサの製造方法
本発明における電解コンデンサ用電極部材20を陽極体とし、電解質に駆動用電解液を用いる場合について、その製造方法の一例を説明する。
陽極体の表面に陽極酸化によって誘電体を形成し、陽極端子をレーザ溶接等によって誘電体が形成された陽極体に接続する。表面に誘電体が形成された陽極体に、セパレータ、および陰極端子が接続された陰極箔を順次巻き付ける。巻付後の陽極体および陰極箔に電解質としての駆動用電解液を含浸する。駆動用電解液を含浸後の陽極体および陰極箔をアルミケースに収容し、アルミケースの開口部を封口ゴムで封止する。
本発明における電解コンデンサ用電極部材20を陽極体とし、電解質に固体電解質を用いる場合について、その製造方法の他の一例を説明する。
陽極体の表面に陽極酸化によって誘電体を形成し、陽極端子をレーザ溶接等によって誘電体が形成された陽極体に接続する。表面に誘電体が形成された陽極体に、セパレータおよび陰極端子が接続された陰極箔を順次巻き付ける。
次いで、巻付後の陽極体と陰極箔との間に固体電解質としての導電性高分子層を形成する。導電性高分子層は、高分子の前駆体である単量体とドーパントおよび酸化剤とからなる反応溶液を交互に塗布して重合反応させる化学酸化重合や、反応溶液内で電気化学的に重合反応を行なう電解重合や、予め導電性が発現している導電性高分子が任意の溶媒中に溶解ないし分散している溶液を塗布して行なう方法などによって形成することができる。また、これらの方法を組み合わせることによっても導電性高分子を形成することができる。
組み合わせる場合の一例として、電解コンデンサ用電極部材20に与える化学的ストレスに鑑みて、まず分散溶液を用いる方法による層を形成した後に、化学酸化重合や電解重合を行なう。なお、分散溶液としては、例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)分散液などが市販されている。そして、導電性高分子が形成された陽極体および陰極箔をアルミケースに収容し、アルミケースの開口部を封口ゴムで封止する。
また、別の製造方法の例についても説明する。陽極体の表面に陽極酸化によって誘電体を形成する。次いで、該陽極体の一端側において陽極体を覆うように陰極部を設けるために、陽極体の一端側と他端側との間の部分に絶縁帯を形成する。これにより、陽極体は、一端側において陰極部が形成される陰極部形成領域と、他端側において露出する陽極体露出部とに分けられる。
絶縁帯を形成する方法としては、基材の表層及び表面積拡大層の内部に絶縁物を形成する方法や、表面積拡大層を除去して絶縁物を形成する方法などが挙げられる。
次いで、陰極部形成領域において、誘電体上に固体電解質層を形成したのち、固体電解質層の上に、カーボン層、および銀ペースト層を順に形成する。カーボン層および銀ペースト層によって陰極部が形成される。
次いで、導電性接着剤等で銀ペースト層に陰極端子を接続する。また、陽極体露出部を陽極端子に接続する。各端子材は、たとえば金属片や金属リード材、プリント配線板のパターンなどが挙げられ、レーザ溶接、抵抗溶接、超音波溶接などで接続することも可能であるし、導電性樹脂や導電性接着剤、金属めっきなどを各端子材とすることも可能である。
次いで、樹脂を含む封止材でモールド成型する。なお、この別の製造方法の例による場合において、カーボン層と銀ペースト層からなる陰極体を介して陽極体を並列に並べたもの、さらにそれを複数個積層したものも、本発明における電解コンデンサに含まれる。
4.評価方法
(1)第1凹部および第2凹部の構造
第1凹部および第2凹部が形成された電解コンデンサ用電極部材20の表層を、走査型電子顕微鏡もしくはマイクロスコープで観察して、画像を取得する。
画像解析ソフトを用いて、必要に応じて、取得した画像に2値化処理を行なってから、観察視野の各凹部の円相当径を求める。0.5μmから250μmの範囲に入っている凹部の個数とそれ以外の凹部の個数を求め、mmあたりに換算する。
第1凹部および第2凹部が形成された電解コンデンサ用電極部材20を、その長さ方向に対して垂直に切断し、そのときの表層近傍の断面を、走査型電子顕微鏡で観察する。この断面写真での開口径は必ずしも円形になっているわけではないが、円相当径で表す開口径が略0.5μmから250μmの範囲に入っている凹部の深さを計測する。
(2)静電容量および容量出現率
測定周波数120HzのLCRメーターにて、導電性高分子の溶液に浸漬する前の状態の電解コンデンサ用電極部材20の静電容量を、陽極酸化の際に用いた水溶液に応じて、アジピン酸アンモニウム水溶液中またはホウ酸アンモニウム水溶液中にて測定する。そして、測定周波数120HzのLCRメーターにて、製造されたコンデンサの静電容量を測定する。水溶液中での電解コンデンサ用電極部材20の静電容量とコンデンサの静電容量から、容量出現率を求める。
(3)漏れ電流
固体電解コンデンサに定格電圧を1分間印加後の電流値を測定する。次の式1から、漏れ電流を求める。
漏れ電流=定格電圧1分間印加後の電流値(μA)/(120Hzで測定したコンデンサの静電容量(μF)・定格電圧(V))・・・(式1)
以下、本発明の実施例及び比較例によって本発明の詳細な説明を行なうが、これにより本発明が実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)凹部が形成される前の状態における基材として、以下のものを用いた。
(I)形状:長さ方向に対して垂直な断面形状が円形である、円柱状。
(II)成分:Niを含有しない、純度99.99%のアルミニウム材。
(III)直径:0.2mm。
(IV)長さ:1.0mm。
(2)基材表面の脱脂を目的とした酸処理を行なってから、塩酸4.5wt%と硫酸0.9wt%と塩化アルミニウム2.0wt%を含有する水溶液中にて、凹部が形成されている層の厚さが約65μmになるように、電流密度:280mA/cm、電流波形(半波):三角波の条件で交流エッチングを行なった。なお、周波数を2段階で変化させることとし、前段1Hz、後段60Hzにそれぞれ設定した。また、液温度は、前段45℃、後段35℃にそれぞれ設定した。交流エッチングが終わったら、次に塩素イオン除去を目的とした酸処理を行なった。これにより、電解コンデンサ用電極部材20(陽極体)を準備した。
(3)アジピン酸アンモニウム水溶液中にて、電圧3Vを電解コンデンサ用電極部材20に印加して、電解コンデンサ用電極部材20を陽極酸化した。
(4)陽極酸化によって誘電体(酸化被膜)が形成された電解コンデンサ用電極部材20に、セパレータおよび電解コンデンサ用陰極箔を順次巻き付けた。
(5)巻付後の電解コンデンサ用電極部材20および陰極箔を市販のSIGMA‐ALDRICH社製、PEDOT/PSS 1.0wt.% in HO,high‐conductivity grade Orgacon(登録商標) HIL−1005(製品番号:768642)に浸漬して、乾燥した。これを所望の回数繰り返し、電解コンデンサ用電極部材20と陰極箔との間に固体電解質層を形成した。
(6)固体電解質層が形成された電解コンデンサ用電極部材20および陰極箔をアルミケースに収容し、アルミケースの開口部を封口ゴムで封止した。
(実施例2)
交流エッチングの周波数を3段階で変化させることとし、前段1Hz、中段10Hz、後段60Hzにそれぞれ設定するとともに、液温度を前段および中段45℃、後段35℃になるようにそれぞれ設定したことを除いては、実施例1と同様に電解コンデンサ用電極部材20および電解コンデンサを作製した。
(実施例3)
交流エッチングの周波数を3段階に変化させたが、最初の周波数を実施例1の5分の1である0.2Hzにしたことを除いては、実施例2と同様に電解コンデンサ用電極部材20および電解コンデンサを作製した。
(実施例4)
交流エッチングの周波数を3段階に変化させたが、最初の周波数が実施例1の5倍である5Hzにしたことを除いては、実施例2と同様に電解コンデンサ用電極部材20および電解コンデンサを作製した。
(実施例5)
凹部が形成される前の状態における基材として、長さ方向に対して垂直な断面形状が正方形で、その一辺の長さが0.16mmである角柱状のものを用いたことを除いては、実施例2と同様に電解コンデンサ用電極部材20および電解コンデンサを作製した。
(実施例6)
基材に、Niを50ppm含有する純度99.99%のアルミニウム材を用いたことを除いては、実施例2と同様に電解コンデンサ用電極部材20および電解コンデンサを作製した。
(比較例1)
交流エッチングの周波数を60Hzに、液温度を45℃にそれぞれ固定したことを除いては、実施例1と同様に電解コンデンサ用電極部材20および電解コンデンサを作製した。
(実施例7)
(1)凹部を形成する前の状態における基材として、以下のものを用いた。
(I)形状:長さ方向に対して垂直な断面形状が円形である、円柱状。
(II)成分:Niを含有しない、純度99.99%のアルミニウム材。
(III)直径:0.8mm。
(IV)長さ:3.0mm。
(2)基材表面の脱脂を目的とした酸処理を行なってから、塩酸1.8wt%と硫酸23wt%と硫酸アルミニウム15wt%を含有する水溶液中にて、電流密度50mA/cm、電気量3C/cm、液温度72℃の条件で直流エッチングを行なった。更に、直流エッチングで形成されたトンネル状の第1凹部を拡大する目的で、硝酸1.0wt%と硝酸アルミニウム12wt%を含有する水溶液中にて、液温度75℃で10分間ケミカルエッチングを行なった。次いで、塩酸4.5wt%と硫酸0.9wt%と塩化アルミニウム2.0wt%を含有する水溶液中にて、液温度:35℃、電流密度:280mA/cm、周波数:60Hz、電流波形(半波):三角波の条件で交流エッチングを行なった。交流エッチングを行なってから、塩素イオン除去を目的とした酸処理を行なった。これにより、電解コンデンサ用電極部材20を準備した。
(3)ホウ酸アンモニウム水溶液中にて、電圧200Vを電解コンデンサ用電極部材20に印加して、電解コンデンサ用電極部材20を陽極酸化した。
(4)陽極酸化によって誘電体(酸化被膜)が形成された電解コンデンサ用電極部材20に、セパレータおよび電解コンデンサ用陰極箔を順次巻き付けた。
(5)巻付後の電解コンデンサ用電極部材20および陰極箔を市販のSIGMA‐ALDRICH社製、PEDOT/PSS 1.0wt.% in HO,high‐conductivity grade Orgacon(登録商標) HIL−1005(製品番号:768642)に浸漬して、乾燥した。これを所望の回数繰り返し電解コンデンサ用電極部材20と陰極箔との間に固体電解質層を形成した。
(6)固体電解質層が形成された電解コンデンサ用電極部材20および陰極箔をアルミケースに収容し、アルミケースの開口部を封口ゴムで封止した。
(比較例2)
直流エッチングおよびケミカルエッチングは行なわずに、交流エッチングのみ行なったことを除いては、実施例7と同様に電解コンデンサ用電極部材20および電解コンデンサを作製した。
実施例1から7および比較例1から2について、凹部の構造を表1に、陽極酸化後、導電性高分子溶液浸漬前の電解コンデンサ用電極部材20の水溶液中における静電容量、容量出現率およびコンデンサの漏れ電流を表2に示す。
なお、表1における各単位は、開口径および深さは「μm」、密度は「×10個/mm」とする。
また、表2の静電容量については、実施例1から6は比較例1の値を100としたときの値、実施例7は比較例2の値を100としたときの値とする。容量出現率については「%」とする。漏れ電流については「μA/(μF・V)」とする。
実施例1の陽極酸化処理前の電解コンデンサ用電極部材20の表層を、軸方向に垂直な方向から走査型電子顕微鏡で観察したところ、図11のような写真が得られた。電解コンデンサ用電極部材20の表層には、約5μmから約10μmのオーダーの開口径を有するクレーター状の第1凹部7aが多数形成されていた。また、クレーター状の第1凹部7aの内壁が凹凸になっていた。すなわち、クレーター状の第1凹部7aの内壁に開口する第2凹部が多数形成されていた。また、電解コンデンサ用電極部材20の表層には、約5μmから約10μmのオーダーには及ばない凹部も形成されていた。すなわち、電解コンデンサ用電極部材20の表層には、外部に開口する第2凹部も形成されていた。
実施例1の陽極酸化処理前の電解コンデンサ用電極部材20を、その長さ方向に対して垂直に切断したときの表層近傍の断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図12のような写真が得られた。実施例1においては、電解コンデンサ用電極部材20の表層近傍には、約10μmのオーダーの開口径を有するクレーター状の第1凹部7aが形成されるともに、それよりも小さい凹部8aが多数形成されていた。
実施例7において、直流エッチング後であって、交流エッチング前の状態にて、その長さ方向に対して垂直に切断したときの電解コンデンサ用電極部材20の表層近傍を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図13のような写真が得られた。実施例7においては、電解コンデンサ用電極部材20の表層近傍に約10μmのオーダーの開口径を有するクレーター状の第1凹部7aが形成されるともに、約2μmのオーダーの開口径を有するトンネル状の第2凹部8bの形成が観察された。
実施例7において、直流エッチングに加えて交流エッチングを行なった陽極酸化処理前の電解コンデンサ用電極部材20を、その長さ方向に対して垂直に切断したときの表層近傍を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図14のような写真が得られた。電解コンデンサ用電極部材20の表層近傍には、約10μmのオーダーの開口径を有するクレーター状の第1凹部7a、約2μmのオーダーの開口径を有するトンネル状の第2凹部8bが形成されていた。加えて、トンネル状の第2凹部8bの内壁、クレーター状の第1凹部7aの内壁に第2凹部8bよりも微細な第3凹部9が形成されるとともに、外部に開口する第3凹部が形成されていた。
実施例1から6と比較例1を、実施例7と比較例2をそれぞれ比較すると、いずれにおいても、実施例は比較例よりも漏れ電流が抑制されるとともに、容量出現率が高くなっていた。ここで、実施例と比較例の相違は、第1凹部が形成されているか否かであって、微細な凹部は、実施例も比較例も略同様に形成されている。従って、これらの比較より、電解コンデンサの使用電圧にかかわらず、電解コンデンサ用電極部材20の表層が、微細な凹部とは別の大きな開口径を有する第1凹部を含むことにより、漏れ電流を抑制しつつ、容量出現率を向上できることが実験的にも確認されたと言える。
実施例1と実施例2を比較すると、実施例2のほうが、容量出現率がより高くなっている。このため、クレーター状の第1凹部の内壁に、もっぱら電解コンデンサ用電極部材20の表面積拡大に寄与する微細な凹部を形成するよりも、まず第1凹部よりも小さなクレーター状の第2凹部を形成し、それからさらに微細な凹部を形成したほうが、より高い容量出現率が得られることが確認された。
実施例2から4の間では、容量出現率は略同等になっていることがわかる。従って、第1凹部の開口径は1μmから50μm、第1凹部の深さは0.5μmから25μmにおいて、同等の容量出現率が得られることが確認された。
実施例2と実施例5を比較すると、容量出現率は、実施例2のほうが高くなっている。ところで、実施例2および実施例5のいずれにおいても、巨視的に見た場合における電解コンデンサ用電極部材20の長さ方向に対して垂直な断面形状は、基材の長さ方向に対して垂直な断面形状と同じとなる。実施例2における基材の上記断面形状は、円形であり、実施例5における基材の上記断面形状は、正方形である。そうすると、巨視的に見た場合に、実施例2では、電解コンデンサ用電極部材20の上記断面形状が円形となり、実施例5では、電解コンデンサ用電極部材20の上記断面形状が正方形となる。従って、円形のほうが、正方形のような角があるものよりも、より高い容量出現率が得られることが確認された。すなわち、巨視的に見た場合に、軸方向における電解コンデンサ用電極部材20の断面形状が、角張った部分を有さない環状形状を有することにより、より高い容量出現率が得られることが確認された。
実施例2と実施例6は、いずれも第1凹部はクレーター状であるが、その開口径も深さも、実施例6のほうが大きくなっている。このため、クレーター状の第1凹部を形成する場合には、Niを意図的に含有させた基材を用いたほうが、形成しやすいことが確認された。
なお、比較例1および比較例2においては、その他の条件が実施例とほぼ同様であり、交流エッチングの周波数を固定した場合に、漏れ電流が大きくなる結果となったが、交流エッチングの周波数を固定した場合であっても、電流密度、温度および水溶液の組成等を適宜変更して、実施の形態に記載のような第1凹部および第2凹部を形成することにより、実施例同様に、容量出現率を向上させつつ、漏れ電流を抑制することができる。
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
本発明は、高い容量出現率が求められる電解コンデンサ、特に固体電解コンデンサを製造するために利用することができる。なお、本発明によって製造される電解コンデンサは、その用途等において特に限定されるものではなく、例えば、ノイズを減衰させるフィルタに用いることもできる。
1 陽極体、2 誘電体、3 電解質、4 誘電体、5 陰極体、6 固体電解質、7a,7b 第1凹部、8a,8b,8c 第2凹部、9 第3凹部、10 基材、11 突起、11a 湾曲部、12 窪み、12a 湾曲部、20 電解コンデンサ用電極部材、21 芯部、22 多孔質部。

Claims (8)

  1. 電解コンデンサに含まれる電解コンデンサ用電極部材であって、
    前記電解コンデンサ用電極部材は、ワイヤー形状を有し、
    前記電解コンデンサ用電極部材の外表面は、外側に向けて開口する少なくとも1つ以上の第1凹部と、少なくとも前記第1凹部に開口する少なくとも1つ以上の第2凹部を含み、
    円相当径で表す前記第2凹部の開口径は、円相当径で表す前記第1凹部の開口径よりも小さい、電解コンデンサ用電極部材。
  2. 前記外表面は、前記第2凹部に開口する微細な第3凹部をさらに含む、請求項1に記載の電解コンデンサ用電極部材。
  3. 前記第1凹部のうち、円相当径で表す開口径が1μm以上500μm以下であるもの、および/または、深さが0.5μm以上250μm以下であるものが、1個/mm以上2.0×10個mm以下の密度で存在する、請求項1または2に記載の電解コンデンサ用電極部材。
  4. 前記第1凹部が、クレーター形状またはトンネル形状を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電極部材。
  5. 前記電解コンデンサ用電極部材の軸方向に垂直な断面形状を巨視的に見た場合に、前記断面形状の周縁が、角張った部分を有さない環状形状となる、請求項1から4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電極部材。
  6. Niを5ppm以上150ppm以下含有するアルミニウム材によって構成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電極部材。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の電解コンデンサ用電極部材と、
    前記電解コンデンサ用電極部材に向かい合うように配置される対向電極部材と、
    前記電解コンデンサ用電極部材と前記対向電極部材との間に配置される電解質とを備える、電解コンデンサ。
  8. 前記電解質は、導電性高分子を含む固体電解質である、請求項7に記載の電解コンデンサ。
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