JP7033812B1 - 電解コンデンサ用の電極箔、および電解コンデンサ - Google Patents

電解コンデンサ用の電極箔、および電解コンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】単位体積あたりの静電容量の高い電解コンデンサ用の電極箔および電解コンデンサを提供する。【解決手段】電解コンデンサ用の電極箔10は、長手方向に延在する電極箔であり、かつ、長手方向に直交する幅方向を有する。電極箔は、電極箔の表面に拡面部14を備える。拡面部には、幅方向に対して斜めの方向に割れCが形成されている。割れは、互いに交差する複数の割れを含み、V字状に形成されており、割れの領域を含む拡面部に更に誘電体皮膜が形成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、電解コンデンサ用の電極箔、および電解コンデンサに関する。
従来と同一サイズのコンデンサケースを用いてコンデンサの静電容量をより高くするためには、単位体積当たりの静電容量を高くすることが必要である。電極箔の観点からは、投影面積当たりの静電容量を従来と同一として箔厚をより薄くすることや、箔厚を従来と同一として投影面積当たりの静電容量をより高くすることが必要である。しかし、ただ単に箔厚を薄くするということは、電極箔のうち拡面部(粗面化処理または拡面処理された部分)が形成されていない部分である芯部の厚さをただ薄くすることに他ならず、強度の低下は免れない。また電極箔の表面を海綿状構造の拡面部として形成した場合、投影面積当たりの静電容量を高くするため微細なピットを高密度に形成すると、電極箔が硬く脆くなって、コンデンサ製造時の加工性が悪化してしまうという強度面での問題が生じる。
そこで、この強度面での問題を解決すべく、投影面積当たりの静電容量を従来と同一として箔厚をより厚くすることが一般的に行われている。あるいは、国際公開第2017/171028号は、電極箔の表面の拡面部に幅方向の分断部を延在させることも行われていることを開示している(特許文献1の請求項1、段落0033、図5)。更に、電極箔そのものの観点からではなく、電解液の含浸性の観点からによるものであるが、特開2013-153024号公報は、電極箔の粗面化された表面に長手方向に対して斜めに、レーザ加工によって溝を形成することも行われていることを開示している(特許文献2の請求項1、段落0050、0052、図9、11)。
国際公開第2017/171028号 特開2013-153024号公報
しかしながら、一般的に行われている、投影面積当たりの静電容量を従来と同一として箔厚をより厚くする方法では、箔厚を厚くした分、単位体積あたりの静電容量は従来より低くなってしまう。
国際公開第2017/171028号に開示されている方法では、電極箔の表面の拡面部に分断部を形成すると、応力が分散し、引張破断伸びが向上する。この場合、セパレータを介して陽極箔と陰極箔とを巻回する際、ところどころに折れ曲がりが生じるのを抑制して、滑らかに巻回することができる。
しかし、分断部を形成することで引張最大荷重が低下してしまう(課題1)。また、箔厚を従来と同一で投影面積当たりの静電容量を従来より高くするために拡面部の厚みを増やすことでも引張最大荷重は低下してしまう(課題2)。そのため、厚みを増やした拡面部を形成した後に分断部を形成すると、引張最大荷重が更に低下してしまう。特にコンデンサメーカにおいて張力をかけて高速でスリットを行う際には、電極箔に破断が生じてしまう危険性がある。この場合、投影面積当たりの静電容量を従来より高くすることは難しいから、単位体積当たりの静電容量を従来より高くすることも難しい。
特開2013-153024号公報に開示されている方法では、電極箔の表面にレーザ加工により溝が形成されている。この場合、電解液の浸漬時には溝を伝ってセパレータ全体に電解液が含浸されやすくなり、陽極箔と陰極箔との間に十分に電解液を保持させることができ、含浸性を向上させることができる。
しかし、溝を形成する方向にかかわらず、レーザ加工によって粗面化された表面の一部が電極箔から削り取られてしまう。そのため、投影面積当たりの静電容量の低下は免れず、結果、単位体積当たりの静電容量の低下も免れない。
また、コンデンサなどの電子部品の小型化ニーズがより一層高まっていることから、それに応じて、電極箔は単位体積あたりの静電容量を増大させるため、拡面部構造の微細化および均一化が進んでいる。それに伴い、拡面部自体が硬く脆くなっている。その結果、静電容量に寄与しない残存芯厚を既存の電極箔より厚く残す必要がある。つまり、拡面部のみの単位体積当たりの静電容量を増大させても、箔全体で見た場合の改善効果が得られにくくなっている。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、機械的強度を確保しつつ単位体積あたりの静電容量の高い電極箔を提供することである。本発明の更に別の目的は、前記電極箔を用いた電解コンデンサを提供することである。
本発明の課題を解決するための手段の一例は、電解コンデンサ用の電極箔であって、前記電極箔が、長手方向に延在する電極箔であり、かつ、前記長手方向に直交する幅方向を有し、前記電極箔が、前記電極箔の表面に拡面部を備え、前記拡面部に、前記幅方向に対して斜めの方向に割れが形成されている、電極箔である。
1つの態様においては、前記斜めの方向が、前記幅方向に対して12°以上80°以下の角度を有してもよい。
もう1つの態様においては、前記斜めの方向が、前記幅方向に対して25°以上80°以下の角度を有してもよい。
もう1つの態様においては、前記斜めの方向が、前記幅方向に対して12°以上55°以下の角度を有してもよい。
もう1つの態様においては、前記斜めの方向が、前記幅方向に対して25°以上55°以下の角度を有してもよい。
もう1つの態様においては、前記割れが互いに交差する複数の割れを含んでもよい。
もう1つの態様においては、前記割れがV字状に形成されていてもよい。
もう1つの態様においては、前記割れの領域を含む前記拡面部に更に誘電体皮膜が形成されていてもよい。
本発明の課題を解決するための手段の別の例は、前記電極箔が、陰極箔または陽極箔として用いられている、電解コンデンサである。
本発明によれば、機械的強度を確保しつつ単位体積あたりの静電容量の高い電極箔あるいは前記電極箔を用いた電解コンデンサを提供することができる。
本発明の電極箔の芯部、拡面部、及び割れを示した断面写真である。 拡面部に割れが形成されていない従来の電極箔の表面写真である。 拡面部に割れが形成されている本発明の電極箔の表面写真である。 割れの角度を計測する際の説明図である。 拡面部に割れが形成されている本発明の別の実施形態の電極箔の表面模式図である。 拡面部に割れが形成されている本発明の更に別の実施形態の電極箔の表面模式図である。 拡面部に割れが形成されている本発明の更に別の実施形態の電極箔の表面模式図である。 拡面部に割れが形成されていない化成箔(比較例1)を陽極箔として用いたコンデンサ素子の断面写真である。 拡面部に割れが形成されている化成箔(実施例2)を陽極箔として用いたコンデンサ素子の断面写真である。 拡面部に割れが形成されている化成箔(実施例5)を陽極箔として用いたコンデンサ素子の断面写真である。 拡面部に割れが形成されている化成箔(実施例8)を陽極箔として用いたコンデンサ素子の断面写真である。 実験1における、割れ角度ごと(実施例2~7および比較例2)の電極箔の単位体積あたりの静電容量を示したグラフである。 実験1における、割れ角度ごと(実施例2~7および比較例2)の引張破断伸びを示したグラフである。 実験1における、割れ角度ごと(実施例2~7および比較例2)のコンデンサ素子径(最大値)を示したグラフである。
以下、本発明の電解コンデンサ用の電極箔および電解コンデンサについて図面を参照して説明する。なお、図面は本発明の説明のために用いられるものであり、本発明は図面の内容に限定されない。
<電極箔>
図1は、本発明の一実施形態における電極箔10の断面写真である。電極箔10は、電極箔の表面に拡面部14を備える。図1に示された実施形態においては、電極箔10の裏面に更なる拡面部16が形成されている。
電極箔10は、長手方向に延在する電極箔であり、かつ、長手方向に直交する幅方向を有する。長手方向に延在する電極箔は、典型的には長尺状の電極箔であり、より典型的には長方形の電極箔である。長手方向は、長尺状の電極箔の場合には、長尺状に延在する辺の方向とすることができる。あるいは、長手方向は、長方形の電極箔の場合には、長方形の長辺の方向または短辺の方向に直交する方向とすることができる。幅方向は、前記長手方向に直交する方向である。あるいは、後述の実施形態に示されているように、電極箔上に縦方向の筋が形成されている場合には、長手方向を、電極箔に形成された縦方向の筋の方向としてもよい。すなわち、長手方向に直交する幅方向を、電極箔に形成された縦方向の筋の方向に直交する方向としてもよい。電極箔は、長方形、矩形、台形、または長手方向を設定することのできる他の任意の形状とすることができる。なお、本発明の電極箔は正方形を含み、この場合の長手方向は、電極箔の対向する2辺に平行な方向とこれに直交する方向のいずれか一方とすることができる。
電極箔10は、コンデンサの陰極箔及び陽極箔として好適に用いられる。電極箔10は、誘電体皮膜(化成皮膜とも言う)を形成しない陰極箔(以下、陰極未化成箔と言う)として用いることも出来る。電極箔10は、誘電体皮膜を形成した陰極箔(以下、陰極化成箔と言う)として用いることも出来る。電極箔10は、誘電体皮膜を形成した陽極箔(以下、陽極化成箔と言う)として用いることも出来る。誘電体皮膜形成前の陽極箔(以下、陽極未化成箔と言う)も、本発明の電極箔に含まれる。電極箔10は、アルミニウム、ニオブ、タンタル等の弁金属材料から形成することができる。特に、電極箔10はアルミニウムから形成するのが好ましい。
<芯部>
芯部12は、電極箔10のうち拡面部14が形成されていない部分である。別言すれば、芯部12は、電極箔10のうち深さ方向に割れが無く中実な層状部分に相当する。電極箔の断面写真である図1を見ると、芯部12と拡面部14の境界は完全な直線ではなく凹凸になっている。そのため、三次元で見た場合には、芯部12と拡面部14との境界では双方が入り組んだ構造になっている。
芯部12の厚みは特に限定されないが、例えば10μm以上50μm以下である。芯部12の厚みは、必要な静電容量や強度によって任意に設計され得る。
<拡面部>
拡面部14は、電極箔10の表面に形成されている層状の部分である。拡面部14は、通常、アルミ電解コンデンサ用として使用される純度のアルミ箔を基材として、塩化物イオンを含む電解液中で電気化学的又は化学的にエッチング処理することで形成される。エッチング後、付着している塩化物イオンなどを除去するために、酸洗浄などの後処理が行われてよい。拡面部14は、海綿状、トンネル状、または、トンネル状と海綿状とが組み合わさった構造をとり得る。
電極箔10が陰極化成箔または陽極箔として用いられる場合は、割れCの領域を含む拡面部14に誘電体皮膜が形成される。
拡面部14の厚みは特に限定されないが、例えば5μm以上150μm以下である。拡面部14の厚みは、必要な静電容量や強度によって任意に設計され得る。
拡面部14と芯部12とは、同一の材料から形成することができ、または別の材料から形成することができる。拡面部14と芯部12とを、同一の材料から形成すると、拡面部中の空隙が電極箔表面の開口部まで連なった形状とすることができ、別の材料から形成した場合に拡面部中の空隙が単独で閉じた状態となることを回避できる。その結果、コンデンサ形成後においても、電極箔中に誘電体皮膜が形成されていない表面が残っているということがない。また、コンデンサ使用時にそのような表面が露出した場合のLC(漏れ電流)の増大やショート不良などを回避することができる。拡面部14と芯部12とを、同一の材料から形成すると、拡面部中に残存している材料がもともと一体であったため、少なくとも誘電体皮膜形成前においてはすべて残存芯と界面がない状態で接続する。したがって、別の材料から形成した場合に、残存芯と拡面部界面および拡面部中の材料同士の界面(例えば蒸着法であれば蒸着粒子同士の界面)に存在する酸化物の層が形成され、コンデンサの抵抗成分が増大し、および密着性が小さいことにより拡面部の強度が低下すること(拡面部の崩壊)を回避できる。
<更なる拡面部>
図1に示された実施形態においては、電極箔10の裏面に更なる拡面部16が形成されている。更なる拡面部16は、拡面部14と同様に構成することができる。また、厚みの範囲についても、拡面部14と同様であるが、拡面部14と更なる拡面部16はほぼ同じ厚さとする構成が好ましい。図1に示された実施形態においては、更なる拡面部16にも割れCが形成されている。そのため、例えば巻回型コンデンサにおいて、巻回時にどちらの面が外周になっても、新たに発生する割れをより効果的に抑制でき、コンデンサのLCを拡面部14のみに割れを形成した場合よりさらに低減できる。これは、割れが形成された面がコンデンサ巻回時に内周側に面した場合、割れが片面にしか形成されていない電極箔では、割れが両面に形成された電極箔より新たな割れが多く形成されると考えられるためである。特に陽極化成箔においては、コンデンサの形態に加工した時点で、誘電体皮膜が形成されていない部分の面積が大きいほど、コンデンサのLCも大きくなる傾向がある。なお、LC低減の観点からは、拡面部を電極箔の両面に形成するとともに割れをそれぞれの拡面部に形成する構成が最も好ましく、拡面部を電極箔の両面に形成するとともに割れを一方の拡面部だけに形成する構成が好ましい。また本発明は、更なる拡面部16に割れが無い構成を含む。
<割れ>
割れCは、拡面部14に、電極箔10の長手方向に直交する幅方向に対して斜めの方向に形成されている(図3、4を参照)。電極箔10の長手方向は、例えば図4の図面上で見て略上下方向である。電極箔10の長手方向に直交する幅方向は、例えば図4の図面上で見て略左右方向である。図4の電極箔10上の縦方向の筋は、電極箔10の長手方向と実質的に平行である。この場合、長手方向を、電極箔に形成された縦方向の筋の方向としてもよい。すなわち、長手方向に直交する幅方向を、電極箔に形成された縦方向の筋の方向に直交する方向としてもよい。
割れCは、拡面部14に押圧力を加えることにより、裂け目を入れることにより、またはひびを入れることにより、形成することができる。好ましくは、割れCは、拡面部14に押圧力を加えることにより形成される。なお、本発明は、割れCが拡面部14に引張力を加えて裂け目を入れることにより形成されるものを含む。また本発明は、割れCが拡面部14に温度変化または湿度変化を加えてひびを入れることにより形成されるものを含む。割れCは、上記形成方法の組み合わせにより形成してもよい。
割れCは、例えばレーザまたは掘削などの加工により形成された溝(以下、単に溝と言う)とは明確に区別される。割れCと溝とは、顕微鏡により観察した画像を目視することにより区別してもよい。あるいは、割れCと溝とは、割れCと溝の形成方法の違いにより区別してもよい。あるいは、割れCと溝とは、割れCと溝の静電容量の違いにより区別してもよい。例えばレーザ加工により形成された溝は、レーザ加工によって拡面部の一部が電極箔から削り取られてしまい、投影面積あるいは単位体積当たりの静電容量の低下は免れない。そのため、割れCと溝とは、投影単位面積あるいは単位体積当たりの静電容量の点でも明確に区別される。
一般的に、金属を圧延加工して圧延箔を製造する際、金属箔表面は圧延時に触れる圧延ロールの形状を転写した形になる。圧延ロール表面には、しばしばロール幅方向に対して垂直方向に筋が入っている。その筋が箔の表面に転写されることで、箔の表面に縦方向の筋が観察される。この場合、原材料である金属箔の表面には、箔の長手方向と実質的に平行な筋が形成されることになる。縦方向の筋は、圧延ロール表面の形状を単に転写したものである。この場合、例えば圧延ロール上で凸状(山状)であれば凹状(谷状)となる。以上から、電極箔に形成された縦方向の筋は、割れCと明確に区別することができる。
割れCの幅は、例えば0μmを超えて10μm以下であるが、特にこれに限定されない。また複数の割れC同士の間隔は、例えば10μm以上1000μm以下であるが、特にこれに限定されない。割れCの深さは、芯部12を分断しない範囲で特に限定されないが、例えば拡面部の厚みの80%以上100%以下である。割れCの深さは、拡面部14を分断し芯部12に到達する深さであるのが好ましい。すべての割れCで深さは統一されなくてもよい。
なお、割れCは電極箔10の拡面部14と更なる拡面部16の両方に形成してもよい。
斜めの方向は、幅方向に対して12°以上80°以下、好ましくは25°以上80°以下、より好ましくは50°以上80°以下の角度を有する。この場合、芯部の厚さも拡面部の厚さも変えることなく、電極箔の静電容量の大幅な低下を防ぎつつ、引張最大荷重を高くすることができる。そのため、強度を維持しつつ芯部の厚さをより薄くする、または拡面部の厚さをより厚くすることが可能となる。こうして、電極箔の単位体積当たりの静電容量を更に高くすることができる。
巻回型コンデンサ素子の素子径または電極箔の引張破断伸びに着目する実施形態においては、斜めの方向は、幅方向に対して、12°以上80°以下、好ましくは12°以上55°以下、より好ましくは12°以上30°以下の角度を有する。この場合、素子巻回時の箔の折れ曲がりを抑制して滑らかに巻回することができ、素子巻回時の加工性改善効果を十分得ることができる。その結果、巻回型コンデンサ素子の素子径(最大値)を小さくすることができ、巻回型コンデンサのサイズを小さくすることができる。
電極箔の単位体積当たりの静電容量と巻回型コンデンサ素子の素子径の両方について同時に着目する実施形態、すなわち、巻回型コンデンサ用途に着目する実施形態について説明する。この実施形態おいては、斜めの方向は、幅方向に対して、12°以上80°以下、好ましくは25°以上55°以下、より好ましくは40°以上55°以下の角度を有する。この場合、単位体積当たりの静電容量を更に高くすることができる効果と巻回型コンデンサのサイズを小さくすることができる効果の両方について、一定以上の効果を得ることができる。そのため、同一のケースサイズにおける巻回型コンデンサの静電容量を高くすることができる。
なお、積層型コンデンサでは、巻回型コンデンサとは異なり、素子径を考慮する必要がない。そのため、積層型コンデンサ用途に着目する実施形態における斜めの方向は、電極箔の単位体積当たりの静電容量の場合と同じとなる。すなわち、斜めの方向は、幅方向に対して、12°以上80°以下、好ましくは25°以上80°以下、より好ましくは50°以上80°以下の角度を有する。
前記各実施形態内において、ある好ましい角度の範囲の上端または下端は、他の好ましい角度の範囲の下端または上端と、任意に組み合わせることができ、あるいは任意に交換することができる。
複数の割れCは、互いに平行に一方向のみに形成してもよいし、互いに交差する方向に形成してもよい。なお、本願において「平行」という用語は、複数の割れCがそれぞれ有する斜めの方向の角度が同じである、幾何学上の平行であることの意味を含み、更に複数の割れCが、例えば電極箔10の左上から右下の方向に揃って向かうように、巨視的に見た場合に概ね平行になっていることの意味をも含む。また、本願において「交差」とは、少なくとも2つの割れCが互いにX字状または十字状に重なり合うことを意味する。
割れCを一方向のみに形成した場合は、所望の効果(引張最大荷重は維持しつつ静電容量密度の改善)が十分に得られる。割れCを互いに交差する方向に形成した場合は、箔サイズを大きくした場合の箔の変形の方向をより均一にすることができ、生産ライン上での箔搬送をより有利に行うことができる。
更に別の実施形態では、互いに交差する方向に形成する場合と異なり、電極箔20の拡面部24において左上から右下の方向に向かう割れCLと右上から左下の方向に向かう割れCRの両方の割れCL、CRを、各方向において互いに平行に形成するが、両方の割れCL、CRが交わるところから先には割れを意図的には形成しない、いわゆるV字状に形成してもよい(図5を参照)。すなわち、電極箔20の拡面部24において左上から右下の方向に向かう複数の割れCLを互いに平行に形成し、右上から左下の方向に向かう複数の割れCRを互いに平行に形成し、両方の割れCL、CRが交わるところで終了するように、電極箔20を上面視で見てV字状の割れを形成してもよい。
また、V字状に形成する場合は、V字状における両方の割れCL、CRが交わるところの位置は、電極箔20の幅方向の真ん中であっても真ん中でなくてもいずれでもよく、好ましくは真ん中である。V字状における両方の割れCL、CRが交わるところの位置は真ん中であるほうが、また、2つの斜めの方向の角度は同じであるほうが、それぞれ幅方向の左右でより均等に割れの効果を得ることができる。従って、V字状に形成する場合、より好ましくは、V字状における両方の割れCL、CRが交わるところの位置が真ん中であり、かつ、2つの斜めの方向の角度は同じである。
割れCL、CRをV字状に形成した場合には、互いに交差する方向に形成する場合より、生産ラインを短くすることができる。これは、互いに交差する方向に形成する場合には、一方向ずつ割れの形成を行う必要がある、すなわち2工程が必要となるところ、V字状に形成する場合には、割れCL、CRの形成に用いる丸棒等の表面の形状を工夫することで、1工程で済むためである。V字状の割れCL、CRを形成するためには、例えばV字状に対応する凸形状を設けた丸棒を用いることができる。
互いに交差する方向に形成する場合とV字状に形成する場合は2つの斜めの方向に割れを形成することになるが、その2つの斜めの方向の角度は、同じであっても異なっていてもいずれでもよく、好ましくは同じである。ただし、2つの斜めの方向の角度が異なる場合は、それぞれ前記各実施形態内においては、少なくともどちらか一方の角度が上記した好ましい角度の範囲に含まれ、好ましくは、いずれの角度も上記した好ましい角度の範囲に含まれるものとする。
図6は、拡面部34に割れCL1、CR1が形成されている本発明の更に別の実施形態の電極箔30の表面模式図である。図6においては、電極箔30の拡面部34上に上面視で見て左上から右下への割れCL1が約30°で形成され、右上から左下への割れCR1が約65°で形成されて、割れCL1と割れCR1が互いに交差している。この実施形態では、割れCL1の間隔と割れCR1の間隔は互いに異なっている。割れCL1と割れCR1を形成するためには、例えば、拡面部34が形成された電極箔30に互いに異なる角度で丸棒を押し付ける際、互いに異なる径を有する2つの丸棒を用いることができる。
図7は、拡面部44に割れCL2、CR2が形成されている本発明の更に別の実施形態の電極箔40の表面模式図である。図7においては、電極箔40の拡面部44上に上面視で見て左上から右下への割れCL2が約30°で形成され、右上から左下への割れCR2が約65°で形成されて、割れCL2と割れCR2が交わるところで終了している。この実施形態では、割れCL2の間隔と割れCR2の間隔は互いに異なっている。具体的には、割れCL2の間隔と割れCR2の間隔は、それぞれの割れの方向に対する垂直方向で見た場合に互いに異なっている。ただし、電極箔40の製造ラインの進行方向と一致する、図7の下から上の方向で見た場合には、割れCL2の間隔と割れCR2の間隔は、いずれも割れCL2と割れCR2の交点の間隔と等しい。割れCL2と割れCR2を形成するためには、例えば、図7のCL2とCR2で形成されるV字状に対応する凸形状を設けた丸棒を用いることができる。
<巻回型コンデンサ素子>
コンデンサのうち、巻回型のものは、陽極箔と陰極箔の間にセパレータを挟み、巻芯を巻き軸としてそれらを巻き取ることでコンデンサ素子を形成することができる。
<巻回型コンデンサ>
巻回型コンデンサ素子は、電解質、導電性高分子、又は電解質と導電性高分子の両方に含浸され、有底筒状の外装ケースに収納され、陽極端子及び陰極端子を引き出して封口体で封止され、エージング処理されることで、巻回型コンデンサを形成することができる。
<積層型コンデンサ>
コンデンサのうち、積層型のものは、陽極化成箔、固体電解質、および陰極体を備える。固体電解質としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフランまたはポリアニリンなどの導電性高分子を含む固体電解質を用いることができる。陰極体としては、カーボン層と銀ペースト層との積層体などを用いることができる。
以下、本発明に係る電極箔の特性について、比較例および実施例を用いて検証した実験について説明する。まず、電極箔の各特性の評価方法について説明する。なお、各実験および評価方法は、本発明を説明するための例であり、本発明を何ら限定するものではない。
<評価方法>
(1)静電容量
電子情報技術産業協会(JEITA)規格EIAJ RC-2364Aに基づいて、アジピン酸アンモニウム水溶液中で静電容量を測定する。
(2)引張強度
電子情報技術産業協会(JEITA)規格EIAJ RC-2364Aに基づいて、電極箔を10mm幅にスリットした後、引張試験を行い、引張最大荷重及び引張破断伸びを測定する。
(3)顕微鏡写真
未化成箔の表面を観察する。化成箔を陽極箔とし、従来から用いられているセパレータを介して当該化成箔と従来から用いられている陰極箔とを巻回したコンデンサ素子の断面を観察する。
(4)割れ角度
1.本実施形態においては、図4によく示されるように、割れ角度Tの定義を、0.5mm以上一定方向に連続した割れQに沿った角度測定用の直線Sと、電極箔に形成された縦方向の筋の方向に直交する方向を幅方向としたときの幅方向に水平な直線P(以下「基準線」とする)との角度のうち、鋭角のものの絶対値とする。
2.連続した割れQは、顕微鏡で倍率100倍にて撮影した電極箔の表面写真において、幅100μm×長さ500μmの枠の範囲Rに連続してはみ出ずに入る割れとする。
3.角度測定用の直線Sは、任意に選択した連続した割れQについて、上記枠の短辺と連続した割れQとが交差する2点を結ぶ直線とする。
4.本実施形態に示された割れ角度Tは、任意に選出した3個の連続した割れについて、それぞれ割れ角度を計測し、それらを平均したものである。
5.なお、本実施形態における割れ角度Tは、本明細書における斜めの方向が幅方向に対して有する角度に相当する。
(5)コンデンサ素子径
顕微鏡で撮影したコンデンサ素子の断面写真において、素子径の最大値を測定する。具体的には、素子に外接する円のうち、最も小さい円(写真中の円。例えば、図8における一点鎖線の円および図9~11における二点鎖線の円)の直径を測定する。
<実験1>:陽極化成箔における斜め割りによる効果の確認(化成箔について斜め割り有無による強度比較、及び強度をそろえた際の割れ角度の好ましい範囲の確認)
本実験1においては、実施例1~8、比較例1、および比較例2の10種類の陽極化成箔を用いて、上記の各特性について検証した。なお、実施例2~8の引張最大荷重が比較例2と同程度になるように調整した。同様に、実施例2~7については拡面部の厚さを、実施例8については箔厚を調整した。
〔実施例1〕
115μmのアルミニウム原箔を用いて、箔の表裏両面に、各面に形成される拡面部の厚さがほぼ同じになるように低圧箔用の交流エッチングを行い、合計厚さ70μmの拡面部を形成した。具体的には、液温35℃、4.5wt%の塩酸、0.9wt%の硫酸および2.0wt%の塩化アルミニウムを含むエッチング液を用い、電流密度280mA/cm2、電流波形に三角波(半波)を用いてエッチングを行った。エッチング処理の時間は、拡面部の厚みに応じて変化させた。エッチング処理を施した箔には、低圧箔用の後処理を行った。具体的には、液温60°、10wt%の硝酸を含む後処理液に2分間浸漬した。その後、箔の幅方向に対して右斜め45°の角度を成す方向に直径3mmの丸棒を押し付けた。次いで、左斜め45°の角度を成す方向に同じ丸棒を押し付けて、互いに交差するように斜め方向の割れを入れた。その後、160Vの化成電圧で化成処理を施し、陽極化成箔を作製した。
〔実施例2〕
実施例2の陽極化成箔は、合計厚さ97μmの拡面部を形成し、割れを右斜め80°の角度および左斜め80°の角度にいれることを除いて、実施例1と同様に作製した。
〔実施例3〕
実施例3の陽極化成箔は、合計厚さ93μmの拡面部を形成し、割れを右斜め65°の角度および左斜め65°の角度にいれることを除いて、実施例1と同様に作製した。
〔実施例4〕
実施例4の陽極化成箔は、合計厚さ90μmの拡面部を形成し、割れを右斜め53°の角度および左斜め53°の角度にいれることを除いて、実施例1と同様に作製した。
〔実施例5〕
実施例5の陽極化成箔は、合計厚さ88μmの拡面部を形成し、割れを右斜め45°の角度および左斜め45°の角度にいれることを除いて、実施例1と同様に作製した。
〔実施例6〕
実施例6の陽極化成箔は、合計厚さ82μmの拡面部を形成し、割れを右斜め26°の角度および左斜め26°の角度にいれることを除いて、実施例1と同様に作製した。
〔実施例7〕
実施例7の陽極化成箔は、合計厚さ77μmの拡面部を形成し、割れを右斜め12°の角度および左斜め12°の角度にいれることを除いて、実施例1と同様に作製した。
〔実施例8〕
実施例8の陽極化成箔は、100μmのアルミニウム原箔を用いることを除いて、実施例1と同様に作製した。
〔比較例1〕
比較例1の陽極化成箔は、後処理の後に割れを入れなかったことを除いて、実施例1と同様に作製した。
〔比較例2〕
比較例2の陽極化成箔は、後処理の後、箔の幅方向に丸棒を押し付けて割れを入れたことを除いて、実施例1と同様に作製した。
実施例1~8、比較例1、および比較例2の電極箔に関して、静電容量、引張最大荷重、および引張破断伸びの測定を行った。また、その電極箔を陽極箔に用いた電解コンデンサの素子巻きを行い、その素子径の測定を行った。
実施例1~8、比較例1、および比較例2の箔厚、芯厚、割れ角度、静電容量、引張最大荷重、引張破断伸び、素子径最大値、および素子巻回時の箔の折れ曲がり抑制効果について、表1に示す。また、引張最大荷重が同程度になるようにしたときの割れ角度の影響について、電極箔の単位体積あたりの静電容量については図12に、電極箔の引張破断伸びについては図13に、コンデンサ素子径については図14に、それぞれ示す。なお、箔の幅方向または横方向というのは、割れ角度0°を意味する。
Figure 0007033812000002
表1に示すように、実施例1の陽極化成箔においては、比較例2に対して同じ箔厚で十分大きな引張最大荷重が得られた。実施例2~8の陽極化成箔においては、比較例2に対して同じ引張最大荷重で高い静電容量が得られた。実施例8の陽極化成箔においては、比較例1および比較例2に対して小さい箔厚で、同程度の静電容量が得られた。つまり、実施例2~8は、比較例1、2に比べて共に高い静電容量密度の陽極化成箔が得られた。
いずれの実施例の箔においても、引張破断伸びは比較例1よりも大きかった。コンデンサ素子径最大値は比較例1に対して十分小さいことが確認できた。
上記の結果から、陽極化成箔について、拡面部の形成後であって誘電体皮膜の形成前に斜めに割れを形成することで、割れ無しのものと比較して引張破断伸びを大きくし、横割れ(割れ角度0°)のものと比較して引張最大荷重を大きくできることが分かった。また、割れ角度が12°以上80°以下、好ましくは12°以上65°以下となるように割れを形成することで、割れなしのものと比較して引張破断伸びを大きくし、横割れのものと比較して同等の引張最大荷重を維持しつつ、単位体積あたりの静電容量の高い陽極化成箔が得られることが分かった。
また、引張最大荷重が同程度になるように拡面部の厚さを調整した実施例2~7及び比較例2に関する図12より、電極箔の単位体積あたりの静電容量は、割れ角度が大きくなるにつれ高くなることが分かった。従って、電極箔の単位体積あたりの静電容量を高くするには、割れ角度は、12°以上80°以下、好ましくは25°以上80°以下、より好ましくは50°以上80°以下である。
また、同じく図13より、電極箔の引張破断伸びは、割れ角度が小さくなるにつれ低下を抑制することができることが分かった。そして、同じく図14より、コンデンサ素子径(最大値)は、割れ角度が小さくなるにつれ増大を抑制することができることが分かった。すなわち、コンデンサ素子径(最大値)には引張破断伸びが影響を及ぼしていることが分かった。従って、巻回型コンデンサのサイズが大きくなるのを抑制するためには、割れ角度は、12°以上80°以下、好ましくは12°以上55°以下、より好ましくは12°以上30°以下である。
また、図12および図14より、電極箔の単位体積当たりの静電容量と巻回型コンデンサ素子の素子径はトレードオフの関係にあることが分かった。従って、割れ角度を、12°以上80°以下、好ましくは25°以上55°以下、より好ましくは40°以上55°以下とすることで、単位体積当たりの静電容量を更に高くすることができる効果と巻回型コンデンサのサイズを小さくすることができる効果の両方について一定以上の効果を得ることができる。すなわち、同一のケースサイズにおける巻回型コンデンサの静電容量を高くすることができる。
なお、上記検討は化成の電極箔を代表するものとして陽極化成箔を用いて検討を行ったが、陰極化成箔についても同様の効果が得られる。
なお、本実験および以下の実験においては、互いに斜めの方向に割れが交差するように形成したが、斜めの方向が交差しない態様においても、また、割れをV字状に形成する態様においても、同等の効果が得られた。
本発明による電極箔を、割れを形成していない箔と比較すると、引張最大荷重は低下している。そのため、引張最大荷重を主眼に置いた場合の効果では、割れ無しが良いようにも見える。しかし、実際には割れ無しの引張最大荷重は、拡面部と残存芯両方の荷重を表しているため、コンデンサ形成までのハンドリングにおいて一概に引張最大荷重が大きいほうが好ましいとは言えない場合もある。例えば、引張破断伸びで比較すると、80°の角度で割れを形成したものにおいても、割れを形成していない箔よりも大きくなっており、かつ素子径も3%程度小さくすることが出来ている。
一方、本発明の手法と拡面部に横方向に割れを形成したものを比較すると、本発明の手法において引張最大荷重が大きくなっている。引張破断伸びを比較すると、本発明の場合は横割れを形成した場合より小さくなっているが、箔を巻回して素子を形成する際ところどころに折れ曲がりが発生することを抑える効果は十分得られる。以上のように、割れの方向によらず、割れを形成した電極箔においては、割れを形成していない電極箔よりも引張最大荷重は小さいものの、同等以上の加工性が得られる。具体的には、スリット時に破断しにくい、また、巻回時にところどころに折れ曲がりが発生することがなく、素子径を小さくできる。また、特に斜め方向に割れを形成した場合、横方向に割れを形成した電極箔と比較し、同等の残存芯厚で引張最大荷重を大きくすることができる。そのため、強度を維持しつつ残存芯をさらに薄く設計でき、単位体積当たりの静電容量を増加させることが出来る。
<実験2>:陰極未化成箔における斜め割りによる効果の確認(未化成箔について箔厚をそろえた際の効果の比較)
本実験2においては、実施例9、実施例10及び比較例3、比較例4の4種類の陰極未化成箔を用いて、各特性について検証した。
〔実施例9〕
50μmのアルミニウム原箔を用いて、箔の表裏両面に、各面に形成される拡面部の厚さがほぼ同じになるように陰極箔用の交流エッチングを行い、合計厚さ30μmの拡面部を形成した。具体的には、液温45℃、4.5wt%の塩酸、0.9wt%の硫酸および2.0wt%の塩化アルミニウムを含むエッチング液を用い、電流密度500mA/cm2、電流波形に三角波(半波)を用いてエッチングを行った。エッチング処理の時間は、目標とする拡面部の厚みに応じて適宜調整した。エッチング処理を施した箔には、陰極箔用の後処理を行った。具体的には、液温60°、10wt%の硝酸を含む後処理液に1分間浸漬した。その後、箔の幅方向に対して右斜め45°の角度を成す方向に、直径3mmの丸棒を押し付けた。次いで、左斜め45°の角度を成す方向に同じ丸棒を押し付けて、互いに交差するように斜め方向の割れを入れ、陰極未化成箔を作製した。
〔実施例10〕
実施例10の陰極未化成箔は、拡面部の合計厚さを35μmとすることを除いて、実施例9と同様に作製した。
〔比較例3〕
比較例3の陰極未化成箔は、拡面部の合計厚さを30μmとし、後処理の後に割れを入れなかったことを除いて、実施例9と同様に作製した。
〔比較例4〕
比較例4の陰極未化成箔は、後処理の後、箔の幅方向に丸棒を押し付けて割れを入れたことを除いて、実施例9と同様に作製した。
実施例9、実施例10、比較例3、および比較例4の箔厚、芯厚、割れ角度、静電容量、引張最大荷重、および引張破断伸びについて、表2に示す。
Figure 0007033812000003
表2に示すように、実施例9の陰極未化成箔においては、比較例3および比較例4と比較して同じ箔厚および同程度の静電容量で、比較例3に対して大きい引張破断伸びが得られた。また、比較例4に対して大きい引張最大荷重が得られた。実施例10の陰極未化成箔においては、比較例3および比較例4と比較して同じ箔厚で、高い静電容量が得られた。引張最大荷重は比較例4と同程度で、引張破断伸びは比較例3よりも大きかった。
上記の結果から、化成皮膜を形成していない電極箔においても、斜め45°方向に交差させた割れを形成することで、機械的強度を確保しつつ単位体積あたりの静電容量の高い電極箔が得られることが分かった。なお、上記検討は未化成の電極箔を代表するものとして陰極未化成箔を用いて検討を行ったが、陽極未化成箔についても同様の効果が得られる。
本発明によれば、拡面部に、幅方向に対して斜めの方向に割れを入れることで、割れの形成に伴う引張最大荷重の低下を抑制しつつ、単位体積あたりの静電容量の高い電極箔を提供することができる。この割れを入れる場合において、幅方向に対して斜めの方向に割れを入れることで、幅方向に沿って割れを入れたものより引張最大荷重を十分高くすることができる。そのため、芯部の厚さをより薄くする、または、拡面部の厚さをより厚くすることが可能となり、単位体積当たりの静電容量を更に高くすることができる。例えば、張力をかけて高速でスリットを行う際、引張最大荷重はスリット性との関連性が強いとされる。そのため、幅方向に対して斜めの方向に割れを入れることにより、電極箔に破断が発生してしまう可能性を幅方向に割れを入れたときと同程度に抑制した上で、単位体積当たりの静電容量を幅方向に割れを入れたときより高くすることができる。
また、一般に拡面部に割れを入れることで、芯部の変形できる箇所が増え、引張破断伸びが向上する。そのため、幅方向に対して垂直の方向(箔の長辺の方向)にコンデンサ素子を巻回する際、ところどころに折れ曲がりが発生することが抑制される。従って、巻回型コンデンサの素子径(最大値)を小さくすることができ、巻回型コンデンサのサイズを小さくすることができる。本発明の効果は、巻回型コンデンサに当てはまるから、巻回型コンデンサ用の電極箔として有用である。
また、誘電体皮膜を形成するために化成処理を行うことでも、電極箔が硬く脆くなることが知られている。しかしながら、本発明の効果は、拡面部に割れを入れた後、化成処理を行わなかった場合だけでなく、更に化成処理を行って、割れの領域を含む前記拡面部に誘電体皮膜を形成した場合においても、得ることができる。
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明に限定されず、特許請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10、20、30、40 電極箔
12 芯部
14、24、34、44 拡面部
16 更なる拡面部
C、CL、CR、CL1、CR1、CL2、CR2 割れ

Claims (7)

  1. 電解コンデンサ用の電極箔であって、
    前記電極箔が、長手方向に延在する電極箔であり、かつ、前記長手方向に直交する幅方向を有し、
    前記電極箔が、前記電極箔の表面に拡面部を備え、
    前記拡面部に、前記幅方向に対して斜めの方向に割れが形成されており、
    前記芯部の厚みが10μm以上33μm以下であり、
    前記拡面部の合計厚さが70μm以上300μm以下であり、
    前記拡面部において一方向に向かう複数の前記割れが互いに平行に形成され、前記一方向とは別の方向に向かう別の複数の前記割れが互いに平行に形成され、
    前記複数の前記割れと前記別の複数の前記割れが互いに交わるところで終了するようになっていて、
    前記複数の前記割れと前記別の複数の前記割れとでV字状を形成する、電極箔。
  2. 前記斜めの方向が、前記幅方向に対して12°以上80°以下の角度を有する、請求項1に記載の電極箔。
  3. 前記斜めの方向が、前記幅方向に対して25°以上80°以下の角度を有する、請求項1に記載の電極箔。
  4. 前記斜めの方向が、前記幅方向に対して12°以上55°以下の角度を有する、請求項1に記載の電極箔。
  5. 前記斜めの方向が、前記幅方向に対して25°以上55°以下の角度を有する、請求項1に記載の電極箔。
  6. 前記割れの領域を含む前記拡面部に更に誘電体皮膜が形成されている、請求項1からのいずれか1項に記載の電極箔。
  7. 請求項1からのいずれか1項に記載の電極箔が、陰極箔または陽極箔として用いられている、電解コンデンサ。
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