JPWO2017154851A1 - 固体電解質組成物、固体電解質含有シートおよび全固体二次電池、ならびに固体電解質組成物、固体電解質含有シートおよび全固体二次電池の製造方法 - Google Patents
固体電解質組成物、固体電解質含有シートおよび全固体二次電池、ならびに固体電解質組成物、固体電解質含有シートおよび全固体二次電池の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
かかる状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質および正極のすべてが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性ないし信頼性を大きく改善することができ、また長寿命化も可能になるとされる。さらに、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、電気自動車や大型蓄電池等への応用が期待されている。
(1)周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、アニオン重合性官能基を有する化合物とを含有する固体電解質組成物。
(2)アニオン重合性官能基を有する化合物が下記一般式(1a)または(1b)で表される(1)に記載の固体電解質組成物。
(3)アニオン重合性官能基を有する化合物が下記条件を満たす(2)に記載の固体電解質組成物。
(条件)
R1〜R3が各々独立にニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6、フルオロ基で置換されたアルキル基、または、ニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたアリール基であり、R4が*−C(=O)OR7−、*−C(=O)R8−、フルオロ基で置換されたアルキレン基、または、ニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたアリーレン基である。R5およびR6は各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基であり、R7およびR8は各々独立に単結合、アルキレン基またはアリーレン基である。*は、R3およびR4が結合する炭素原子との結合部位を示す。
(4)アニオン重合性官能基を有する化合物が、アニオン重合性官能基を1分子中に2つ以上有する(1)〜(3)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(5)アニオン重合性官能基を有する化合物の分子量が100以上1,000以下である(1)〜(4)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(6)固体電解質組成物中の全固形分に対するアニオン重合性官能基を有する化合物の含有量が2質量%未満である(1)〜(5)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(7)分散媒体を含有する(1)〜(6)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(8)活物質を含有する(1)〜(7)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(9)粒子分散剤を含有する(1)〜(8)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(10)無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である(1)〜(9)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
(11)無機固体電解質を分散媒体の存在下で分散して、スラリー化する工程と、
得られたスラリーに、アニオン重合性官能基を有する化合物を加える工程とを含む固体電解質組成物の製造方法。
(12)周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、無機固体電解質と結合する下記一般式(2A)または(2B)で表される繰り返し単位を有するアニオン重合体とを含有する固体電解質含有シート。
R11AおよびR12A、R13BおよびR14Bは、それぞれ連結して環を形成していてもよい。
(13) (1)〜(10)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を基材上に塗布し、塗膜を形成する工程と、
上記塗膜をアニオン重合の進行により硬化させる工程とを含む固体電解質含有シートの製造方法。
(14)周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質を分散媒体の存在下で分散して、スラリー化する工程と、
得られたスラリーを基材上に塗布し、塗膜を形成する工程と、
形成した塗膜上に、アニオン重合性官能基を有する化合物の溶液を塗布して含浸させ、シートを形成する工程と、
形成したシートをアニオン重合の進行により硬化させる工程とを含む固体電解質含有シートの製造方法。
(15)負極活物質層、固体電解質層および正極活物質層をこの順に有してなる全固体二次電池であって、
上記の負極活物質層、固体電解質層および正極活物質層のうち少なくとも1層が、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、無機固体電解質と結合する下記一般式(2A)または(2B)で表される繰り返し単位を有するアニオン重合体とを含有する全固体二次電池。
R11AおよびR12A、R13BおよびR14Bは、それぞれ連結して環を形成していてもよい。
(16)一般式(2A)または(2B)で表される繰り返し単位中、シアノ基を含有する繰り返し単位の含有割合が30質量%超である(15)に記載の全固体二次電池。
(17) (13)または(14)に記載の固体電解質含有シートの製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
本明細書において、単に「アクリル」又は「(メタ)アクリル」と記載するときは、メタアクリル及び/又はアクリルを意味する。また、単に「アクリロイル」又は「(メタ)アクリロイル」と記載するときは、メタアクリロイル及び/又はアクリロイルを意味する。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基および連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時もしくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
また、本発明の製造方法によれば、本発明の、固体電解質組成物、固体電解質含有シート及び全固体二次電池それぞれを好適に製造することができる。
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族または第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、アニオン重合性官能基を有する化合物とを含む。以下、その好ましい実施形態について説明する。
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質を含有する。
無機固体電解質の固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導度材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液やポリマー中でカチオン及びアニオンが解離又は遊離している無機電解質塩(LiPF6、LiBF4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオンの伝導性を有するものであれば、特に限定されず、電子伝導性を有さないものが一般的である。本発明の全固体二次電池がリチウムイオン電池の場合、無機固体電解質は、リチウムイオンのイオン伝導度を有することが好ましい。
上記無機固体電解質は、全固体二次電池に通常使用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質と(ii)酸化物系無機固体電解質が代表例として挙げられる。本発明において、活物質と無機固体電解質との間により良好な界面を形成することができ、アニオン重合性官能基を有する化合物に対する良好なアニオン重合開始剤として作用する観点から、硫化物系無機固体電解質が好ましく用いられる。
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオン伝導度を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導度を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
例えば下記式(1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導無機固体電解質が挙げられ、好ましい。
Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。中でも、B、Sn、Si、Al又はGeが好ましく、Sn、Al又はGeがより好ましい。
Aは、I、Br、Cl又はFを示し、I又はBrが好ましく、Iが特に好ましい。
L、M及びAは、それぞれ、上記元素の1種又は2種以上とすることができる。
a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜1:1:2〜12:0〜5を満たす。a1はさらに、1〜9が好ましく、1.5〜4がより好ましい。b1は0〜0.5が好ましい。d1はさらに、3〜7が好ましく、3.25〜4.5がより好ましい。e1はさらに、0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、[1]硫化リチウム(Li2S)と硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))、[2]硫化リチウムと単体燐及び単体硫黄の少なくとも一方、又は[3]硫化リチウムと硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))と単体燐及び単体硫黄の少なくとも一方、の反応により製造することができる。
中でも、Li2S−P2S5、LGPS(Li10GeP2S12)およびLi2S−P2S5−SiS2等が好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオン伝導度を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10−6S/cm以上であることが好ましく、5×10−6S/cm以上であることがより好ましく、1×10−5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(Li3PO4); リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON; LiPOD1(D1は、好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuから選ばれる1種以上の元素である。)等が挙げられる。
さらに、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C及びGaから選ばれる1種以上の元素である。)等も好ましく用いることができる。
その中でも、LLT、LixbLaybZrzbMbb mbOnb(Mbb、xb、yb、zb、mb及びnb上記の通りである。)、LLZ、Li3BO3、Li3BO3−Li2SO4およびLixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadPmdOnd(xd、yd、zd、ad、md及びndは上記の通りである。)が好ましく、LLZ、LLT、LAGP(Li1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3)およびLATP([Li1.4Ti2Si0.4P2.6O12]−AlPO4)がより好ましい。
また、固体電解質組成物中の無機固体電解質の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。
ただし、正極活物質又は負極活物質を含有する場合、固体電解質組成物中の無機固体電解質の含有量は、正極活物質又は負極活物質と無機固体電解質との合計含有量が上記範囲であることが好ましい。
なお、本明細書において固形分とは、窒素雰囲気下170℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発ないし蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒体以外の成分を指す。
無機固体電解質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物は、アニオン重合性官能基を有する化合物を含有する。
アニオン重合性とは、アニオンを重合開始種として、アニオンによる付加反応を介してモノマー単位が連続的に結合を形成する性質をいう。
一般的に、ビニルモノマーのラジカル重合性、アニオン重合性およびカチオン重合性は、ビニル基に結合している置換基の共鳴安定化および極性の効果によって決まることが知られている。Q−eスキームはこのことを経験的なパラメータとして定量化している。Qはモノマーの共役効果(共鳴安定化の程度)、eはモノマーの極性効果を示す。Q−eスキームによれば、Q値が2.0以上であり、かつe値が0.8以上であるモノマーが、アニオン重合性を発現しやすい。なかでも、Q値が4.0以上であり、かつe値が0.9以上であるモノマーがよりアニオン重合性を発現しやすい。現実的な上限値は、Q値が15以下であり、かつe値が4.0以下である。
具体的には、本発明に用いられるアニオン重合性官能基を有する化合物は、下記条件1または2を満たすことがより好ましく、後述の一般式(1a)または(1b)で表されることがさらに好ましい。このような構造を有することで、無機固体電解質に含まれる金属カチオンの対アニオンが、アニオン重合性官能基の有する二重結合に付加しやすく、その後、アニオン重合により成長が進行し、ポリマーや架橋構造が形成される。上記反応の結果、本発明に用いられるアニオン重合性官能基は無機固体電解質と直接共有結合を形成しているため、本発明の固体電解質組成物を用いて作製した全固体二次電池は、優れた結着性およびサイクル特性を示す。
(条件1):下記一般式(1A)で表される、アニオン重合性官能基を有する化合物。
(条件2):アニオン重合性官能基として、下記一般式(1B)で表される基を有する化合物。
R1AおよびR2A、R3BおよびR4Bは、それぞれ連結して環を形成していてもよい。
その態様としては、例えば、化合物中に上記一般式(1B)で表される基を1つ以上有する単官能化合物および2つ以上有する多官能化合物が挙げられる。また、別の態様としては、ポリマー主鎖及び/又は側鎖に上記一般式(1B)で表される基を有するポリマーが挙げられる。合成上の観点からは、ポリマー側鎖に上記一般式(1B)で表される基を有するポリマーが好ましく挙げられる。ここで、ポリマーは本発明の効果を奏する限りどのような構造であってもよく、例えば、ランダム、交互、ブロックおよびグラフトのいずれの共重合体でもよい。また、ポリマー鎖は炭素−炭素結合に限らず、アミド結合、エステル結合、ウレタン結合およびウレア結合等を有していてもよい。
R1A、R2AおよびR3Bにおける1価の電子求引性基は、固体電解質組成物を取り扱う際の安定性と、固体電解質組成物を塗布した際の硬化性との両立の観点から、各々独立に、ニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6、フルオロ基で置換されたアルキル基、ならびに、ニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたアリール基のいずれかが好ましい。ここで、R5およびR6は、各々独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。
1価の電子求引性基ならびにR5およびR6における置換基としては、後述の置換基Pの記載を好ましく適用することができる。1価の電子求引性基ならびにR5およびR6における置換基のより好ましい炭素数等を以下に示す。
具体的には、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、1,1−ジフルオロエチル、1,2−ジフルオロエチルおよびペンタフルオロエチルが挙げられる。
ニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたアリール基において、置換基の数は、特に限定されず、1個以上で、置換される前のアリール基が有する水素原子数以下であることが好ましく、1〜5個がより好ましい。アリール基を構成する炭素数としては、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜12が特に好ましい。置換基位置番号は、フェニル基においては2位、4位及び/又は6位が好ましく、4位がより好ましい。なかでも、ニトロ基、シアノ基およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたアリール基が好ましく、ニトロ基、シアノ基およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたフェニル基が好ましい。
具体的には、例えば、2−ニトロフェニル、2−シアノフェニル、2−フルオロフェニル、4−ニトロフェニル、4−シアノフェニル、4−フルオロフェニル、2,4−ジフルオロフェニル、2,4−ジニトロフェニル、2,4−ジシアノフェニル、2,4,6−トリフルオロフェニルおよび1−フルオロ−2−ナフチルが挙げられる。
アリール基としては、炭素数6〜18が好ましく、炭素数6〜14がより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。具体的には、例えば、フェニル、トリルおよびナフチルが挙げられる。アリール基は無置換アリール基および置換アリール基のいずれでもよいが、置換アリール基としては、上述のフルオロ基で置換されたアリール基が好ましく挙げられる。
R5およびR6はアルキル基がさらに好ましく、下記官能基群Iから選択される少なくとも1種の官能基で置換されたアルキル基であることが特に好ましい。
<官能基群I>
ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基、酸無水物基、エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシ基、カルボニル基、3環以上の環構造を有する基、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合、イミド結合、イソシアヌレート結合。
また、酸無水物基とは、ジカルボン酸の酸無水物から得られる基(少なくとも1つの水素原子を結合手「−」に置き換えた基)を意味する。
スルホン酸基はそのエステルや塩でもよい。エステルの場合、炭素数は1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6が特に好ましい。
リン酸基はそのエステルや塩でもよい。エステルの場合、炭素数は1〜24が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜6が特に好ましい。
その他の官能基については、後述の置換基Pの好ましい記載を適用することができる。
なお、上記官能基は、置換基として存在しても、連結基として存在していてもよい。例えば、アミノ基は2価のイミノ基または3価の窒素原子として存在してもよい。
3環以上の環構造を有する基は、コレステロール環構造を有する基、または芳香族基が3つ以上縮環した構造を有する基が好ましく、コレステロール残基またはピレニル基がより好ましい。
R4Bにおける2価の電子求引性基は、*−C(=O)OR7−、*−C(=O)R8−、フルオロ基で置換されたアルキレン基、ならびに、ニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたアリーレン基のいずれかが好ましい。ここで、R5およびR6は、上述の1価の電子求引性基におけるR5およびR6と同義であり、R7およびR8は、各々独立に単結合、アルキレン基またはアリーレン基を示す。*は、R3BおよびR4Bが結合する炭素原子との結合部位を示す。
R4Bにおける2価の電子求引性基としては、後述の置換基Pにおける1つの水素原子を結合手「−」に置き換えた、R3BおよびR4Bが結合する炭素原子との結合部位が電子求引性である2価の基の記載を好ましく適用することができる。R4Bにおける2価の電子求引性基のより好ましい炭素数等を以下に示す。
具体的には、例えば、フルオロメチレン、ジフルオロメチレン、フルオロエチレン、1,1−ジフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレンおよびテトラフルオロエチレンが挙げられる。
ニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたアリーレン基において、置換基の数は、特に限定されず、1個以上で、置換される前のアリーレン基が有する水素原子数以下であることが好ましく、1〜4個がより好ましい。アリーレン基を構成する炭素数としては、6〜18が好ましく、6〜14がより好ましく、6〜12が特に好ましい。置換基位置番号としては、フェニレン基においては、R3BおよびR4Bが結合する炭素原子と結合する遊離原子価炭素の番号を1とすると、2位、4位及び6位の少なくともいずれかに置換基を有することが好ましく、2位および4位の少なくともいずれかに置換基を有することがより好ましい。なかでも、ニトロ基、シアノ基およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたアリーレン基が好ましく、ニトロ基、シアノ基およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたフェニレン基が好ましい。
具体的には、例えば、2−ニトロ−1,3(または1,4)−フェニレン、2−シアノ−1,3(または1,4)−フェニレン、2−フルオロ−1,3(または1,4)−フェニレン、4−ニトロ−1,3(または1,2)−フェニレン、4−シアノ−1,3(または1,2)−フェニレン、4−フルオロ−1,3(または1,2)−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジニトロ−1,4−フェニレン、2,3−ジシアノ−1,4−フェニレンおよび1−フルオロ−ナフタレン−2,6−ジイルが挙げられる。
アリーレン基としては、炭素数6〜18が好ましく、炭素数6〜14がより好ましく、炭素数6〜12が特に好ましい。具体的には、例えば、フェニレン、トリレンおよびナフタレンジイルが挙げられる。アリーレン基は無置換アリーレン基および置換アリーレン基のいずれでもよいが、置換アリーレン基としては、上述のフルオロ基で置換されたアリーレン基が好ましく挙げられる。
R8としては、単結合またはアルキレン基が好ましい。
また、R3Bは1価の電子求引性基であることが好ましく、特に好ましいR3BおよびR4Bの組み合わせは、R3Bがシアノ基、トリフルオロメチル基および−C(=O)OR5のいずれかであり、R4Bが*−C(=O)OR7−である。
このような置換基の組み合わせを有するアニオン重合性官能基を有する化合物は、固体電解質組成物を取り扱う際の安定性と、固体電解質組成物を塗布した際の硬化性とを両立することができる。
Raは、水素原子、アルキル基または−C(=O)Rcが好ましく、アルキル基または−C(=O)Rcがより好ましい。RbおよびRcは下記官能基群IIから選択される少なくとも1種の官能基で置換されたアルキル基であることが好ましい。
<官能基群II>
ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基、酸無水物基、エポキシ基、オキセタニル基、アルコキシ基、カルボニル基、3環以上の環構造を有する基、アミド結合、ウレア結合、ウレタン結合、イミド結合、イソシアヌレート結合。
上記官能基群IIにおける官能基の詳細は、上述の官能基群Iにおける記載を好ましく適用することができる。
mは0〜10の整数が好ましく、0〜4の整数がより好ましい。
Xは2〜60価の有機基が好ましく、3〜12価の有機基がより好ましい。
なお、下記一般式(Q−1)〜(Q−38)におけるYならびに下記一般式(H−1)〜(H−3)および(P−1)〜(P〜8)におけるRは、任意の連結基であり、R4またはRaとの結合部位を示す。
任意の連結基とは、例えば、単結合、アルキレン基(炭素数は1〜18が好ましく、1〜10がより好ましい。)、−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−および−S−が挙げられ、単結合、アルキレン基または−O−が好ましい。
下記一般式中におけるa〜fは繰り返し数を表し、各々独立に、2〜20が好ましく、3〜10がより好ましい。
置換基Pとしては、下記のものが挙げられる。
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等、ただし本明細書においてアルキル基というときには通常シクロアルキル基を含む意味である。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、アラルキル基(好ましくは炭素数7〜23のアラルキル基、例えば、ベンジル、フェネチル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、好ましくは、環構成原子として酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選択される少なくとも1つを有する5又は6員環のヘテロ環基が好ましく、例えば、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル、ピロリドン基等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等、ただし本明細書においてアルコキシ基というときには通常アリーロイル基を含む意味である。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、3−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20のスルファモイル基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル等)、アリーロイル基(好ましくは炭素原子数7〜23のアリーロイル基、例えば、ベンゾイル等、ただし本明細書においてアシル基というときには通常アリーロイル基を含む意味である。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ等)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素原子数7〜23のアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ等、ただし本明細書においてアシルオキシ基というときには通常アリーロイルオキシ基を含む意味である。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルファニル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルスルファニル基、例えば、メチルスルファニル、エチルスルファニル、イソプロピルスルファニル、ベンジルスルファニル等)、アリールスルファニル基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールスルファニル基、例えば、フェニルスルファニル、1−ナフチルスルファニル、3−メチルフェニルスルファニル、4−メトキシフェニルスルファニル等)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素原子数6〜22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素原子数6〜42のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシシリル基、例えば、モノメトキシシリル、ジメトキシシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アリールオキシシリル基(好ましくは炭素原子数6〜42のアリールオキシシリル基、例えば、トリフェニルオキシシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスホリル基、例えば、−OP(=O)(RP)2)、ホスホニル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスホニル基、例えば、−P(=O)(RP)2)、ホスフィニル基(好ましくは炭素原子数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(RP)2)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルイミノ基((メタ)アクリルアミド基)、ヒドロキシ基、スルファニル基、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
また、これらの置換基Pで挙げた各基は、上記の置換基Pがさらに置換していてもよい。
化合物、置換基および連結基等がアルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルケニレン基、アルキニル基および/またはアルキニレン基等を含むとき、これらは環状でも鎖状でもよく、また直鎖でも分岐していてもよく、上記のように置換されていても無置換でもよい。
例えば、ヒドロキシ基とカルボキシ基の反応からエステル結合、アミノ基とカルボキシ基の反応からアミド結合、メルカプト基とカルボキシ基の反応からチオエステル結合を形成することにより、一般式(1b)で表されるアニオン重合性官能基を有する化合物が得られる。
ハロゲン原子(Cl、Br、I)、−OTsおよび−OMs等の脱離基に対しては、ヒドロキシ基、アミノ基およびメルカプト基を反応させることで、それぞれ、エーテル結合、アミド結合、チオエーテル結合を形成させ、一般式(1b)で表されるアニオン重合性官能基を有する化合物が得られる。
アニオン重合性官能基として、上記一般式(1B)で表されるアニオン重合性官能基を有する化合物も、上記一般式(1b)で表されるアニオン重合性官能基を有する化合物と同様の方法により合成することができる。
アニオン重合性官能基を有する化合物が繰返し単位を有する場合には、分子量とは質量平均分子量を意味する。質量平均分子量は、例えば、GPCを用いて測定することができる。
また、本発明の固体電解質組成物は、後述する他の機能性添加剤を含有してもよい。
本発明の固体電解質組成物は、粒子分散剤を含有することも好ましい。
粒子分散剤とは、正極活物質または負極活物質と、化学的結合または物理的吸着により表面に偏在化している有機化合物で、反応性不飽和結合を有していることが好ましい。粒子分散剤を添加することで、無機固体電解質および電極活物質のいずれかの濃度が高い場合にも凝集を抑制し、均一な電極層及び/又は固体電解質層を形成することができ、全固体二次電池の出力向上に効果を奏する。
また、本発明に用いられるアニオン重合性官能基を有する化合物と、アニオン付加が可能な反応性不飽和結合を有する粒子分散剤とを併用することも、無機固体電解質と活物質間の結着性をより高めることができるため好ましい。これは、粒子分散剤におけるアニオン付加が可能な反応性不飽和結合が、アニオン重合性官能基を有する化合物の成長末端に付加して共有結合を形成することで、無機固体電解質と活物質間が、アニオン重合体を介して共有結合で連結されるためと考えられる。
官能基群(A):酸性基(例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基)、塩基性窒素原子を有する基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、シアノ基、スルファニル基、ヒドロキシ基および3環以上の縮環炭化水素基(例えば、ピレニル基)
なお、オリゴマーの場合には、分子量とは質量平均分子量を意味する。質量平均分子量は、例えば、GPCを用いて測定することができる。
粒子分散剤の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸(2−ピレニル)メチル、エリトリトールテトラアクリレートのカルボン酸部分変性体(アクリレート3置換、カルボン酸1置換体)およびジペンタエリトリトールヘキサメタクリレートのカルボン酸部分変性体(メタクリレート4置換、カルボン酸2置換体)が挙げられ、好ましい。
固体電解質組成物中における含有量は、固体電解質組成物スラリーの分散安定性の観点から、固形分100質量%において、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることが特に好ましい。また、イオン伝導度を阻害しにくい観点から、上記含有量の上限としては、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、バインダーを含有することも好ましい。
本発明で使用するバインダーは、有機ポリマーであれば特に限定されない。
本発明に用いることができるバインダーは、通常、電池材料の正極または負極用結着剤として用いられるバインダーが好ましく、特に制限はなく、例えば、以下に述べる樹脂からなるバインダーが好ましい。
炭化水素系熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(ブタジエン−アクリロニトリル共重合体とも称す。)、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸イソプロピル、ポリ(メタ)アクリル酸イソブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル、ポリ(メタ)アクリル酸ドデシル、ポリ(メタ)アクリル酸ステアリル、ポリ(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ベンジル、ポリ(メタ)アクリル酸グリシジル、ポリ(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、およびこれらの樹脂を構成するモノマーの共重合体などが挙げられる。
またそのほかのビニル系モノマーとの共重合体も好適に用いられる。例えば(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体および(メタ)アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−スチレン共重合体などが挙げられる。
重縮合系ポリマーはハードセグメント部位とソフトセグメント部位を有することが好ましい。ハードセグメント部位は分子間水素結合を形成しうる部位を示し、ソフトセグメント部位は一般的にガラス転移温度(Tg)が室温(25±5℃)以下で分子量が400以上の柔軟な部位を示す。
これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
測定室内の雰囲気:窒素(50mL/min)
昇温速度:5℃/min
測定開始温度:−100℃
測定終了温度:200℃
試料パン:アルミニウム製パン
測定試料の質量:5mg
Tgの算定:DSCチャートの下降開始点と下降終了点の中間温度の小数点以下を四捨五入することでTgを算定する。
また、上記バインダーを構成するポリマーは、晶析させて乾燥させてもよく、ポリマー溶液をそのまま用いてもよい。金属系触媒(ウレタン化、ポリエステル化触媒=スズ、チタン、ビスマス)は少ない方が好ましい。重合時に少なくするか、晶析で触媒を除くことで、共重合体中の金属濃度を、100ppm(質量基準)以下とすることが好ましい。
本発明において、ポリマーの分子量は、特に断らない限り、質量平均分子量を意味する。
本発明では、バインダーの質量に対する、無機固体電解質と必要により含有させる電極活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+電極活物質の質量)/バインダーの質量]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率はさらに500〜2がより好ましく、100〜10がさらに好ましい。
ここで、「ポリマー粒子」とは、後述の分散媒体に添加しても完全に溶解せず、粒子状のまま分散媒体に分散し、0.01μm超の平均粒子径を示すものを指す。
また、既存のポリマーを機械的に破砕する方法またはポリマー液を再沈殿によって微粒子状にする方法を用いてもよい。
ポリマー粒子を任意の溶媒(固体電解質組成物の調製に用いる分散媒体。例えば、ヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、得られた体積平均粒子径を平均粒子径とする。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製して測定し、その平均値を採用する。
なお、作製された全固体二次電池からの測定は、例えば、電池を分解し電極を剥がした後、その電極材料について上記ポリマー粒子の平均粒子径の測定方法に準じてその測定を行い、あらかじめ測定していたポリマー粒子以外の粒子の平均粒子径の測定値を排除することにより行うことができる。
本発明の固体電解質組成物は、分散媒体を含有することが好ましい。
分散媒体は、固体電解質組成物に含まれる各成分を分散させるものであればよく、例えば、各種の有機溶媒が挙げられる。分散媒体の具体例としては下記のものが挙げられる。
アルコール化合物溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
エーテル化合物溶媒としては、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジアルキルエーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン(1,2−、1,3−及び1,4−の各異性体を含む)等)が挙げられる。
アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
アミノ化合物溶媒としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。
芳香族化合物溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどが挙げられる。
脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げられる。
ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸ブチル、ペンタン酸ブチルなどが挙げられる。
非水系分散媒体としては、上記芳香族化合物溶媒、脂肪族化合物溶媒等が挙げられる。
上記分散媒体は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物には、周期律表第1族又は第2族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有してもよい。活物質としては、以下に説明するが、正極活物質及び負極活物質が挙げられ、正極活物質である遷移金属酸化物、又は、負極活物質である金属酸化物が好ましい。
本発明において、活物質(正極活物質、負極活物質)を含有する固体電解質組成物を、電極層用組成物(正極層用組成物、負極層用組成物)ということがある。
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物や、硫黄などのLiと複合化できる元素などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、CuおよびVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、PまたはBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Maの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物および(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8およびLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4およびLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類ならびにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩およびLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4およびLi2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO、NMC又はNMCがより好ましい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入および放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、酸化錫等の金属酸化物、酸化ケイ素、金属複合酸化物、リチウム単体およびリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、並びに、Sn、SiおよびIn等のリチウムと合金形成可能な金属等が挙げられる。中でも、炭素質材料又はリチウム複合酸化物が信頼性の点から好ましく用いられる。また、金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵および放出可能であることが好ましい。その材料は、特には制限されないが、構成成分としてチタン及び/又はリチウムを含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
また、正極活物質及び/又は負極活物質を含む電極表面は硫黄やリン等で表面処理されていてもよい。
本発明の固体電解質組成物は、活物質の電子導電性を向上させる等のために用いられる導電助剤を適宜必要に応じて含有してもよい。導電助剤としては、一般的な導電助剤を用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛および人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよびファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維およびカーボンナノチューブなどの炭素繊維類ならびにグラフェンおよびフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅およびニッケルなどの金属粉または金属繊維でも良く、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンおよびポリフェニレン誘導体などの導電性高分子を用いてもよい。またこれらの内1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
本発明の固体電解質組成物が導電助剤を含む場合、固体電解質組成物中の導電助剤の含有量は、0〜10質量%が好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、リチウム塩(支持電解質)を含有することも好ましい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が特に制限なく好ましく用いられ、例えば、上記バインダー粒子で説明したリチウム塩が挙げられる。
このリチウム塩は、上記バインダー粒子(バインダー粒子を形成する上記ポリマー)に内包されていない(固体電解質層組成物中に例えば単独で存在している)点で、バインダー粒子に内包されているリチウム塩とは異なる。
リチウム塩の含有量は、固体電解質100質量部に対して、0質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
本発明の固体電解質組成物の製造方法は、無機固体電解質を分散媒体の存在下で分散して、スラリー化する工程(a1)と、得られたスラリーにアニオン重合性官能基を有する化合物を加える工程(b1)とを含む。
工程(a1)におけるスラリー化は、各種の混合機を用いて無機固体電解質と分散媒体とを混合することにより行うことができる。混合装置としては、特に限定されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、プラネタリミキサ―、ブレードミキサ―、ロールミル、ニーダーおよびディスクミルが挙げられる。混合条件は特に制限されないが、例えば、ボールミルを用いた場合、150〜700rpm(rotation per minute)で1時間〜24時間混合することが好ましい。
混合条件は、アニオン重合の進行によりアニオン重合性官能基を有する化合物が硬化しない限り、特に制限されないが、例えば、ボールミルを用いた場合、50〜200rpm(rotation per minute)で1分〜30分混合することが好ましい。
粒子分散剤等のその他の成分を含有する固体電解質組成物を調製する場合には、工程(b1)の前に無機固体電解質および分散媒体に添加および混合しておくことが好ましく、工程(a1)で無機固体電解質と共に分散しておくことがより好ましい。
活物質を含有する固体電解質組成物を調製する場合には、工程(a1)の後、得られたスラリーに添加および混合することが好ましく、工程(b1)でアニオン重合性官能基を有する化合物と共に混合することがより好ましい。
調製した固体電解質組成物の保存は、アニオン重合の進行による硬化が生じない限り特に制限されるものではないが、調製後、35℃以下(25℃以下がより好ましく、5℃未満がさらに好ましい)で保存することが好ましい。また、調製後1ヶ月(5℃保存)以内に、固体電解質含有シートの作製及び/又は全固体二次電池の作製に用いることが好ましい。
本発明に用いられるアニオン重合性官能基を有する化合物は、無機固体電解質及び/又は活物質の表面(好ましくは固体粒子表面)に存在するアニオン性官能基をアニオン重合開始種とするアニオン重合の進行により、ポリマー(以下、アニオン重合体とも称す。)を形成する。
無機固体電解質の場合、硫化物系であれば、例えば、Li3PS4におけるPS4 3−が、また、Li7P3S11におけるP3S11 7−がアニオン重合開始種となりうり、酸化物系であれば、例えば、Li7La3Zr2O12(LLT)における(La3Zr2O12)7−が、また、Li5La3Ta2O12(LLZ)における(La3Ta2O12)5−がアニオン重合開始種となりうる。このようなアニオン重合開始段階を経ることで無機固体電解質とアニオン重合体の間には共有結合が形成され、より強固な結着性を発現する。無機固体電解質と、あらかじめ高分子量化したポリマーを添加した場合には無機固体電解質とポリマーの間に結合が形成されないため高い結着性は発現できない。
アニオン重合開始剤は、アニオンを発生しうるものであれば特に限定されない。強いアニオン重合開始剤としては、たとえば、カリウム、アルキル(アリール)カリウム、ナトリウム、アルキル(アリール)ナトリウム、リチウム、アルキル(アリール)リチウム、グリニャール試薬、ジアルキル(アリール)マグネシウム、トリアルキル(アリール)アルミニウム、ジアルキル亜鉛、アルコキシ(アリールオキシ)カリウム、アルコキシ(アリールオキシ)ナトリウム、アルコキシ(アリールオキシ)リチウム、アルキルチオ(アリールチオ)カリウム、アルキルチオ(アリールチオ)ナトリウムおよびアルキルチオ(アリールチオ)リチウムが挙げられる。弱いアニオン重合開始剤としては、ピリジン類、アミン類、カルボン酸類、カルボン酸金属塩、チオカルボン酸金属塩およびアルキルチオールおよび水などがあげられる。
添加量としては、アニオン重合性官能基を有する化合物に対して0.1モル%〜10モル%が好ましく、より好ましくは1モル%〜3モル%である。
R11AおよびR12A、R13BおよびR14Bは、それぞれ連結して環を形成していてもよい。
Zは下記一般式(2b−z)で表される基を表す。Ra1は水素原子または有機基を示し、X1はm1+n1価の連結基を示し、m1は0〜10の整数、n1は2〜10の整数である。
また、上記一般式(2b)におけるn1、m1およびX1は、前述の一般式(1b)におけるn、mおよびXと同義である。
アニオン重合性官能基を有する化合物の重合条件は、アニオン重合で常用される条件を用いることができる。例えば、アニオン重合を完了させる観点からは、反応温度は50℃〜180℃が好ましく、80℃〜150℃がより好ましく、反応時間は5分〜3時間が好ましく、10分〜1時間がより好ましい。
本発明の固体電解質含有シートは、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、前述の、無機固体電解質と結合する、特定の繰り返し単位を有するアニオン重合体とを含有する。
上記一般式(1B)で表されるアニオン重合性官能基を2つ以上有する化合物または1分子中に2以上のアニオン重合性基を有する一般式(1b)で表されるアニオン重合性官能基を有する化合物からは、アニオン重合反応の進行により、架橋された網目状構造を有する上記一般式(2B)または一般式(2b)で表される繰り返し単位を有するアニオン重合体が形成される。
ここで、シアノ基を含有する繰り返し単位とは、一般式(2A)におけるR11A及び/またはR12Aがシアノ基を有する繰り返し単位、一般式(2B)におけるR13B及び/またはR14Bにシアノ基を有する繰り返し単位、一般式(2a)におけるR11及び/またはR12がシアノ基を有する繰り返し単位、ならびに、一般式(2b−z)におけるR13及び/またはR14にシアノ基を有する繰り返し単位を意味する。
また、本発明の固体電解質含有シートは、前述のその他の機能性添加剤を含有してもよい。
本発明の固体電解質含有シートは、全固体二次電池に好適に用いることができ、その用途に応じて種々の態様を含む。例えば、固体電解質層に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用固体電解質シートともいう)、電極又は電極と固体電解質層との積層体に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用電極シート)等が挙げられる。本発明において、これら各種のシートをまとめて全固体二次電池用シートということがある。
全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、固体電解質層と保護層とを基材上に、この順で有するシートが挙げられる。
基材としては、固体電解質層を支持できるものであれば特に限定されず、上記集電体で説明した材料、有機材料および無機材料等のシート体(板状体)等が挙げられる。有機材料としては、各種ポリマー等が挙げられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびセルロース等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ガラスおよびセラミック等が挙げられる。
このシートは、本発明の固体電解質組成物を基材上(他の層を介していてもよい)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層を形成することにより、得られる。
ここで、本発明の固体電解質組成物は、上記の方法によって、調製できる。
電極シートを構成する各層の構成および層厚は、後述の、本発明の全固体二次電池において説明する各層の構成および層厚と同じである。
電極シートは、本発明の、活物質を含有する固体電解質組成物を金属箔上に製膜(塗布乾燥)して、金属箔上に活物質層を形成することにより、得られる。活物質を含有する固体電解質組成物を調製する方法は、活物質を用いること以外は、上記固体電解質組成物を調製する方法と同じである。
本発明の固体電解質組成物で形成された活物質層及び/又は固体電解質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、アニオン重合性官能基を有する化合物をアニオン重合体に読み替える以外は、固体電解質組成物の固形分におけるものと同じである。
本発明の全固体二次電池は、正極と、この正極に対向する負極と、正極及び負極の間の固体電解質層とを有する。正極は、正極集電体上に正極活物質層を有する。負極は、負極集電体上に負極活物質層を有する。
負極活物質層、正極活物質層及び固体電解質層の少なくとも1つの層は、本発明の固体電解質組成物で形成されることが好ましい。中でも、負極活物質層および/または正極活物質層が本発明の固体電解質組成物で形成されることがより好ましく、正極活物質層が本発明の固体電解質組成物で形成されることがさらに好ましい。
固体電解質組成物で形成された活物質層および/または固体電解質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、固体電解質組成物の固形分におけるものと同じである。
以下に、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
全固体二次電池10においては、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層のいずれかが本発明の固体電解質組成物で形成されている。
すなわち、固体電解質層3が本発明の固体電解質組成物で形成されている場合、固体電解質層3は、無機固体電解質とアニオン重合体とを含む。固体電解質層は、通常、正極活物質及び/又は負極活物質を含まない。固体電解質層3中では、無機固体電解質に末端で化学結合したアニオン重合体が、無機固体電解質および隣接する活物質層中に含まれる活物質等の固体粒子の間に存在していると考えられる。そのため、固体粒子間の界面抵抗が低減され、結着性が高くなっている。
正極活物質層4及び/又は負極活物質層2が本発明の固体電解質組成物で形成されている場合、正極活物質層4及び負極活物質層2は、それぞれ、正極活物質又は負極活物質を含み、さらに、無機固体電解質とアニオン重合体とを含む。活物質層が無機固体電解質を含有するとイオン伝導度を向上させることができる。活物質層中には、固体粒子間等に、無機固体電解質に末端で化学結合したアニオン重合体が存在していると考えられる。そのため、固体粒子間の界面抵抗が低減され、結着性が高くなっている。
正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2が含有する無機固体電解質及びアニオン重合体は、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、正極活物質層及び負極活物質層のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質層又は電極活物質層と称することがある。また、正極活物質及び負極活物質のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質又は電極活物質と称することがある。
その作用、メカニズムは定かではなく推定ではあるが、次のように、考えられる。
すなわち、無機固体電解質等の固体粒子表面に存在するアニオン性官能基がアニオン重合開始種として作用することで、固体粒子とアニオン重合性官能基を有する化合物との間に共有結合が形成された活性種が生成すると考えられる。その後、固体粒子間に分散されたアニオン重合性官能基を有する化合物が活性種と反応し、アニオン重合が進行することで、アニオン重合体が形成されると考えられる。形成されたアニオン重合体は、無機固体電解質等の固体粒子表面と末端で化学結合し、固体粒子間の隙間を埋めるように存在しているため、固体粒子間の強固な結着性を発現すると考えられる。このため、あらかじめ高分子量化されたポリマーに固体粒子を分散させた場合、および、ラジカル重合性モノマーと固体粒子を含有する組成物のラジカル重合を進行させることによりラジカル重合ポリマーを形成する場合に比べて、本発明の全固体二次電池は高い結着性を示すと考えられる。
また、充放電の繰返しに対しても、無機固体電解質等の固体粒子表面とアニオン重合体との間に形成された共有結合により、固体粒子間の接触が維持され、固体粒子間の界面抵抗の上昇が抑制されると考えられる。このため、本発明の全固体二次電池は優れたサイクル特性を示すと考えられる。特に、充放電により膨張収縮する活物質の粒子を含む場合に、固体粒子間の界面抵抗の上昇がより効果的に抑制され、全固体二次電池はより優れたサイクル特性を示すと考えられる。
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケルおよびチタンなどの他に、アルミニウムまたはステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウムおよびアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケルおよびチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金またはステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金およびステンレス鋼がより好ましい。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
上記の各層を配置して全固体二次電池の基本構造を作製することができる。用途によってはこのまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためにはさらに適当な筐体に封入して用いる。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金およびステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
本発明においては、無機固体電解質とアニオン重合性官能基を有する化合物とを含有する塗膜を、アニオン重合の進行により硬化させることで、無機固体電解質とアニオン重合体とを含有する固体電解質含有シートが形成される。このアニオン重合体は、ポリマー末端にアニオン重合開始剤として作用する無機固体電解質が結合している。
i)第1の態様
本発明の固体電解質組成物を基材上に塗布し、塗膜を形成する工程(1α)と、
形成した塗膜をアニオン重合の進行により硬化させる工程(1β)とを含む固体電解質含有シートの製造方法。
ii)第2の態様
無機固体電解質を分散媒体の存在下で分散しスラリー化する工程(2γ)と、
得られたスラリーを基材上に塗布し、塗膜を形成する工程(2δ)と、
形成した塗膜上に、アニオン重合性官能基を有する化合物の溶液を塗布して含浸させ、シートを形成する工程(2α)と、
形成したシートをアニオン重合の進行により硬化させる工程(2β)とを含む固体電解質含有シートの製造方法。
以下、上記各工程について、詳述する。
ここで、硬化とは、アニオン重合が十分に進行することにより、ゲル状から硬化物へと硬化されることを意味する。
加熱によりアニオン重合を進行させる場合、温度は50℃〜180℃が好ましく、80℃〜150℃がより好ましく、加熱時間は5分〜3時間が好ましく、10分〜1時間がより好ましい。この加熱工程により、アニオン重合の進行と同時に塗膜及び/又はシートが乾燥され、分散媒体等の溶媒成分が除去された固体電解質含有シートが得られる。室温によりアニオン重合を進行させる場合等には、別途、分散媒体等の溶媒成分を除去する工程が必要となる。
第2の態様は、工程(2γ)および(2δ)で形成された無機固体電解質粒子間の隙間にアニオン重合性官能基を有する化合物を含浸させ、接触させた後にアニオン重合の進行により硬化させる製造方法である。この態様により、活物質及び/又は無機固体電解質が接している無機接触界面には影響を及ぼさず、固体電解質含有シートにもともと含まれる空隙(活物質及び/又は無機固体電解質が存在していない空間)のみを埋めることができるので、イオン伝導を阻害することなく強固な結着性を発揮することができる。
スラリー中における無機固体電解質の含有量は、50〜95質量%が好ましく、5〜90質量%がより好ましく、60〜90質量%がさらに好ましい。
工程(2γ)においては、無機固体電解質以外の成分として、上述の活物質、粒子分散剤およびバインダー等(ただし、アニオン重合性官能基を有する化合物を除く)の成分を分散媒体の存在下でスラリー化することも好ましい。この場合、スラリー中における各成分の含有量は、上述の固体電解質組成物中における含有量を好ましく適用することができる。また、スラリー調整の工程については、上記固体電解組成物の調製の記載を適用することができる。すなわち、工程(2γ)で得られるスラリーがアニオン重合性官能基を有する化合物を含有する場合には、工程(2γ)は、上記固体電解組成物の調製における工程(a1)と工程(b1)とを含む。
工程(2δ)で形成する塗膜の厚みは、特に制限されないが、工程(2α)で溶液を含浸させる段階で、20μm〜500μmとなるように調整することが好ましい。
工程(2α)におけるアニオン重合性官能基を有する化合物の溶液とは、少なくともアニオン重合性官能基を有する化合物が溶媒に溶解した溶液である。溶媒としては、アニオン重合性官能基を有する化合物を溶解する限り、特に制限されないが、上述の固体電解質組成物で記載した分散媒体を好ましく適用することができる。なお、アニオン重合性官能基を有する化合物以外の成分として、活物質、粒子分散剤およびバインダー等の成分を含有していてもよい。
工程(2α)におけるアニオン重合性官能基を有する化合物の溶液の濃度は、工程(2γ)および(2δ)で形成された無機固体電解質粒子間の隙間に含浸させることができる限り制限されないが、1質量%〜10質量%であることが好ましい。
全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートの製造は、上記固体電解質含有シートの製造方法により行うことができる。
すなわち、本発明の固体電解質組成物が活物質を含有する場合には、上記工程(1α)及び工程(2δ)においては、基材ではなく集電体上に塗布することが好ましい。この場合には、固体電解質層と活物質層を含有するシートである全固体二次電池用電極シートを作製することができる。
また、全固体二次電池の製造は、上記固体電解質含有シートの製造方法を含む以外は、常法によって行うことができる。具体的には、全固体二次電池及び全固体二次電池用電極シートは、本発明の固体電解質組成物等を用いて、上記の各層を形成することにより、製造できる。なお、正極活物質層、固体電解質層および負極活物質層のいずれかの層が、上記固体電解質含有シートの製造方法により作製されればよく、その他の層は、本発明でない固体電解質組成物を用いて、常法により作製されてもよい。以下詳述する。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用材料(正極層用組成物)として、正極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。さらに、固体電解質層の上に、負極用材料(負極層用組成物)として、負極活物質を含有する固体電解質組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。さらに、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
固体電解質組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布およびバーコート塗布が挙げられる。
このとき、固体電解質組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒体を除去し、固体状態にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性を得ることができる。
また、塗布した固体電解質組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒体をあらかじめ乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒体が残存している状態で行ってもよい。
なお、各組成物は同時に塗布しても良いし、塗布乾燥プレスを同時および/または逐次行っても良い。別々の基材に塗布した後に、転写により積層してもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に限定はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオおよびバックアップ電源が挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラおよび医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。さらに、各種軍需用または宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
無機固体電解質とは、上述した、ポリエチレンオキサイド等の高分子化合物をイオン伝導媒体とする電解質(高分子電解質)とは区別されるものであり、無機化合物がイオン伝導媒体となるものである。具体例としては、上記のLi−P−S系ガラス、LLTおよびLLZが挙げられる。無機固体電解質は、それ自体が陽イオン(Liイオン)を放出するものではなく、イオンの輸送機能を示すものである。これに対して、電解液ないし固体電解質層に添加して陽イオン(Liイオン)を放出するイオンの供給源となる材料を電解質と呼ぶことがあるが、上記のイオン輸送材料としての電解質と区別するときにはこれを「電解質塩」又は「支持電解質」と呼ぶ。電解質塩としては例えばLiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)が挙げられる。
本発明において「組成物」というときには、2種以上の成分が均一に混合された混合物を意味する。ただし、実質的に均一性が維持されていればよく、所望の効果を奏する範囲で、一部において凝集や偏在が生じていてもよい。また、特に固体電解質組成物というときには、基本的に固体電解質層等を形成するための材料となる組成物(典型的にはペースト状)を指し、上記組成物を硬化して形成した電解質層等はこれに含まれないものとする。
アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(Li2S、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g及び五硫化二リン(P2S5、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、メノウ製乳鉢に投入し、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。Li2S及びP2S5の混合比は、モル比でLi2S:P2S5=75:25とした。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記の硫化リチウムと五硫化二リンの混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を完全に密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名、フリッチュ社製)に容器をセットし、温度25℃で、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行うことで、黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−Sガラス、LPSと表記することがある。)6.20gを得た。
<固体電解質組成物の調製例>
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、無機固体電解質9.0g、分散媒体18gを投入した後に、フリッチュ社製遊星ボールミルP−7に容器をセットし、回転数300rpmで2時間混合した。これに添加剤0.36gを加え、さらに回転数150rpmで5分間混合を続け、各固体電解質組成物S−1〜S−10、T−1およびT−2を調製した。
なお、固体電解質組成物が活物質を含有する場合は、添加剤の投入と同じタイミングで活物質を投入して混合し、固体電解質組成物を調製した。
また、固体電解質組成物T−2は、活物質の投入と同じタイミングでパーヘキシルD(熱ラジカル重合開始剤、日油(株)社製)0.036g(表中には記載せず)を投入して混合し、固体電解質組成物を調製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、無機固体電解質9.0g、粒子分散剤0.18g、分散媒体18gを投入した後に、フリッチュ社製遊星ボールミルP−7に容器をセットし、回転数300rpmで2時間混合した。これに添加剤0.36gを加え、さらに回転数150rpmで5分間混合を続け、各固体電解質組成物S−11およびS−12を調製した。
なお、活物質は、添加剤の投入と同じタイミングで投入して混合し、固体電解質組成物を調製した。
LLT:Li0.5La0.5TiO3(豊島製作所社製)
LPS:上記で合成したLi−P−S系ガラス
LLZ:Li7La3Zr2O12
LCO:LiCoO2(コバルト酸リチウム)
NCA:LiNi0.85Co0.10Al0.05O2(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム)
B−1:2−シアノアクリル酸エチル
B−2:2−トリフルオロメチルアクリル酸ブチル
B−3:2−メチレンマロン酸ジエチル
B−4:ビス(2−トリフルオロメチルアクリル酸)−1,4−ブタンジイル
E−1:アクリル酸
E−2:アクリル酸(2−ピレニル)メチル
ポリブタジエン−アクリロニトリル共重合体:日本ゼオン社製、共重合比(質量比)(ブタジエン:アクリロニトリル=71.0:29.0)、Mw120,000、なお表では「共重合体」を省略して記載している。
「−」:成分を含有していないことを示す。
*1:アニオン重合性官能基を有する化合物、バインダーおよびラジカル重合性モノマーを添加剤として記載する。
*2:2種の添加剤を括弧に記載の質量比で添加。
1)通常の塗布方法
上記で調製した固体電解質組成物を集電体であるステンレス鋼(SUS)箔上に塗工した。
表2に記載の温度および時間で重合(硬化処理)を行うことで、固体電解質組成物を硬化し、120℃で10分加熱することで固体電解質組成物を乾燥し、固体電解質含有層とSUS箔の積層構造を有する各固体電解質含有シートNo.101〜112、c11およびc12を作製した。ここで、固体電解質含有層の厚みは200μm、SUS箔の厚みは20μmであった。
上記で調製した固体電解質組成物1.8gをSUS箔上に塗工した。その後、室温下で1時間静置して塗膜を乾燥させ、厚み200μmの塗膜を形成した。
引き続き、上記で得られた塗膜上に、2−シアノアクリル酸エチル0.38gのトルエン溶液(5質量%希釈液)を塗工し、含浸させ、表2に記載の温度および時間でアニオン重合(硬化処理)を進行させることで組成物を硬化し、各塗膜を乾燥させた。これにより、固体電解質含有層とSUS箔の積層構造を有する各固体電解質含有シートNo.113および114を作製した。ここで、固体電解質含有層の厚みは210μm、SUS箔の厚みは20μmであった。
得られた固体電解質含有シートについて180°ピール強度試験(JIS Z0237−2009)を行った。
固体電解質含有シートの固体電解質組成物が硬化された面に粘着テープ(幅24mm、長さ300mm)(商品名:セロテープ(登録商標)CT−24、ニチバン社製)を貼り付けた。テープの端を把持して180°に折り返して固体電解質含有シートから25mmはがした後、下記試験機に設置した下側の治具にその粘着テープをはがした部分の固体電解質含有シートの片端を固定し、上側の治具に粘着テープを固定した。
300mm/分の負荷速度で試験を実施した。測定開始後25mm粘着テープを引き剥がした後、固体電解質含有シートから引きはがされた25mmの粘着テープについて、長さ0.05mmごとの粘着力測定値を平均し、引きはがし粘着力の値(平均ピール強度(N))とした。
平均ピール強度を下記評価基準により評価した。なお、平均ピール強度が高いほど結着力が高いことを示す。評価「B」以上が本試験の合格レベルである。
ピール強度は標準タイプデジタルフォースゲージZTS−5Nと、縦型電動計測スタンドMX2シリーズ(いずれも商品名、イマダ社製)を組み合わせて行った。
A:2.0N以上
B:1.0N以上2.0N未満
C:0.5N以上1.0N未満
D:0.5N未満
*1:シアノ基含有ポリマーを用いているため、硬化処理は行っていない。
*2:ラジカル重合による硬化処理の温度および時間
これに対して、比較の為の固体電解質含有シートNo.c11は、あらかじめ重合体であるシアノ基含有ポリマーを含有する比較の固体電解質組成物T−1を用いて作製したシートであり、特定のアニオン重合体を含有しない。この固体電解質含有シートNo.c11は、密着力が低く、結着性が十分ではなかった。シアノ基含有ポリマーの分散性が低く、無機固体電解質とポリマーとの間に化学結合が形成されていないためと考えられる。また、比較の為の固体電解質含有シートNo.c12は、ラジカル重合性モノマーを含有する比較の固体電解質組成物T−2を用いて作製したシートであり、特定のアニオン重合体を含有しない。この固体電解質含有シートNo.c12は、密着力が低く、結着性が十分ではなかった。無機固体電解質とラジカル重合体との間に化学結合が形成されていないためと考えられる。また、本発明の固体電解質含有シートの製造方法によらないで作製した固体電解質含有シートNo.c11およびc12は、結着性が劣っていた。
上記で作製した各固体電解質含有シートを直径14.5mmの円板状に切り出して電極とし、固体電解質層として上記で合成したLi−P−S系ガラス、対極としてLiホイルを組み込み、160MPaで加圧した。得られた全固体二次電池用シートをスペーサーとワッシャーを組み込んだステンレス製の2032型コインケースに入れて、各全固体二次電池No.201〜210、c21およびc22を作製した。
上記で作製した全固体二次電池のサイクル特性を、東洋システム社製の充放電評価装置「TOSCAT−3000(商品名)」により測定した。充電は電流密度0.1mA/cm2で電池電圧が3.6Vに達するまで行った。放電は電流密度0.1mA/cm2で電池電圧が2.5Vに達するまで行った。上記条件で3サイクル充放電を繰り返すことで初期化を行った。
初期化後の各全固体二次電池について、電流密度0.2mA/cm2で電池電圧が4.2Vに達するまで充電し、次いで、電流密度0.2mA/cm2で電池電圧が2.5Vに達するまで放電した。この充放電を1サイクルとして、充放電を繰り返した。
この充放電サイクルにおいて、初期化後1サイクル目の放電容量を100としたときの、放電容量が80未満に達した際のサイクル数を、以下の基準で評価した。なお、評価「C」以上が本試験の合格レベルである。
A:30回以上
B:20回以上30回未満
C:10回以上20回未満
D:10回未満
*1:二層塗布方法により作製したことを示す。
これに対して、比較の為の全固体二次電池No.c21は、あらかじめ重合体であるシアノ基含有ポリマーを含有する比較の固体電解質組成物T−1を用いて、特定のアニオン重合体を含有しない正極層を形成した。この全固体二次電池No.c21は、サイクル特性が十分ではなかった。シアノ基含有ポリマーの分散性が低く、無機固体電解質とポリマーとの間に化学結合が形成されていないためと考えられる。比較の為の全固体二次電池No.c21は、ラジカル重合性モノマーを含有する比較の固体電解質組成物T−2を用いて、特定のアニオン重合体を含有しない正極層を形成した。この全固体二次電池No.c22は、サイクル特性が十分ではなかった。無機固体電解質とラジカル重合体との間に化学結合が形成されていないためと考えられる。また、本発明の固体電解質含有シートの製造方法を介しないで製造した、比較の為の全固体二次電池No.c21およびc22は、サイクル特性が十分でなかった。
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 コインケース
12 全固体二次電池用シート
13 サイクル特性測定用セル(コイン電池)
無機固体電解質と、無機固体電解質と結合する下記一般式(2A)または(2B)で表される繰り返し単位を有するアニオン重合体とを含有する固体電解質含有シート。
[0012]
[化2]
[0013]
上記式中、R11AおよびR12Aは各々独立に1価の電子求引性基を示し、R13Bは1価の電子求引性基または−R14B−*2を示し、R14Bは、R13BおよびR14Bが結合する炭素原子との結合部位が電子求引性である、2価の電子求引性基を示す。*2は結合手を示す。
R11AおよびR12A、R13BおよびR14Bは、それぞれ連結して環を形成していてもよい。
(13)(1)〜(10)のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を基材上に塗布し、塗膜を形成する工程と、
上記塗膜をアニオン重合の進行により硬化させる工程とを含む固体電解質含有シートの製造方法。
(14)周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質を分散媒体の存在下で分散して、スラリー化する工程と、
得られたスラリーを基材上に塗布し、塗膜を形成する工程と、
形成した塗膜上に、アニオン重合性官能基を有する化合物の溶液を塗布して含浸させ、シートを形成する工程と、
形成したシートを、無機固体電解質表面のアニオン性官能基を重合開始種とするアニオン重合の進行により硬化させる工程とを含む固体電解質含有シートの製造方法。
(15)負極活物質層、固体電解質層および正極活物質層をこの順に有してなる全固体二次電池であって、
上記の負極活物質層、固体電解質層および正極活物質層のうち少なくとも
Claims (17)
- 周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、アニオン重合性官能基を有する化合物とを含有する固体電解質組成物。
- 前記アニオン重合性官能基を有する化合物が下記条件を満たす請求項2に記載の固体電解質組成物。
(条件)
前記R1〜R3が各々独立にニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6、フルオロ基で置換されたアルキル基、または、ニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたアリール基であり、前記R4が*−C(=O)OR7−、*−C(=O)R8−、フルオロ基で置換されたアルキレン基、または、ニトロ基、シアノ基、−C(=O)OR5、−C(=O)R6およびフルオロ基の少なくともいずれかで置換されたアリーレン基である。前記のR5およびR6は各々独立に水素原子、アルキル基またはアリール基であり、前記のR7およびR8は各々独立に単結合、アルキレン基またはアリーレン基である。*は、R3およびR4が結合する炭素原子との結合部位を示す。 - 前記アニオン重合性官能基を有する化合物が、前記アニオン重合性官能基を1分子中に2つ以上有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記アニオン重合性官能基を有する化合物の分子量が100以上1,000以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記固体電解質組成物中の全固形分に対する前記アニオン重合性官能基を有する化合物の含有量が2質量%未満である請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 分散媒体を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 活物質を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 粒子分散剤を含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記無機固体電解質が硫化物系無機固体電解質である請求項1〜9のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 無機固体電解質を分散媒体の存在下で分散して、スラリー化する工程と、
得られたスラリーに、アニオン重合性官能基を有する化合物を加える工程とを含む固体電解質組成物の製造方法。 - 請求項1〜10のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を基材上に塗布し、塗膜を形成する工程と、
前記塗膜をアニオン重合の進行により硬化させる工程とを含む固体電解質含有シートの製造方法。 - 周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質を分散媒体の存在下で分散して、スラリー化する工程と、
得られたスラリーを基材上に塗布し、塗膜を形成する工程と、
形成した塗膜上に、アニオン重合性官能基を有する化合物の溶液を塗布して含浸させ、シートを形成する工程と、
形成したシートをアニオン重合の進行により硬化させる工程とを含む固体電解質含有シートの製造方法。 - 負極活物質層、固体電解質層および正極活物質層をこの順に有してなる全固体二次電池であって、
前記の負極活物質層、固体電解質層および正極活物質層のうち少なくとも1層が、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、前記無機固体電解質と結合する下記一般式(2A)または(2B)で表される繰り返し単位を有するアニオン重合体とを含有する、全固体二次電池。
R11AおよびR12A、R13BおよびR14Bは、それぞれ連結して環を形成していてもよい。 - 前記一般式(2A)または(2B)で表される繰り返し単位中、シアノ基を含有する繰り返し単位の含有割合が30質量%超である請求項15に記載の全固体二次電池。
- 請求項13または14に記載の固体電解質含有シートの製造方法を介して、全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
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