JPWO2017056598A1 - 親水性多層膜及びその製造方法、並びに、撮像システム - Google Patents

親水性多層膜及びその製造方法、並びに、撮像システム Download PDF

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Abstract

基板の表面に設けた親水性多層膜において、親水性多層膜は、基板側から順に屈折率の異なる少なくとも2種類の層がそれぞれ少なくとも1層以上積層された多層膜層と、多層膜層の表面に設けられた親水性薄膜層とを有する。多層膜層は、1層以上の光触媒層を有し、光触媒層のうちの1層は親水性薄膜層と隣接して設けられる。親水性薄膜層は、親水性多層膜の表面と光触媒層との隣接面との間に延びる隙間を有した柱状構造であり、多層膜層に含まれる1層以上の光触媒層は、厚み方向に対して傾斜を有した隙間を含む斜方柱状構造を有する。

Description

本発明は、基板の表面に設けられる親水性多層膜及びその製造方法、並びに、撮像システムに関する。
屋外で使用されるレンズや窓ガラス等の部材には、反射防止機能といった光学機能の他、雨の日に部材表面を濡らした雨水が汚れを浮かして取り除く、いわゆるセルフクリーニング機能を有することが望まれている。このため、特許文献1に記載の構造体では、多孔性のSiO層の上にTiO層が形成され、SiO層は二次元的に広がるSiO粒子の単層又は該単層が積層した複層から形成されている。当該構造体の構成によれば、上層のTiO層によりセルフクリーニング機能を保持しつつ、下層の多孔性SiO層によって反射防止機能を発現させる。また、特許文献2に記載の反射防止フィルターでも、防汚性能を長期間維持するために、酸化チタンや酸化亜鉛、酸化鉄、酸化タングステン等といった半導体光触媒が反射防止膜の上に被着されている。
日本国特開2007−187785号公報 日本国特開平8−220305号公報
田丸 博、外2名、"セルフクリーニング機能を有する屋外用反射防止フィルム"、Vol.59 No.1(2011年03月号)、パナソニック電工技報、[online]、[平成27年9月24日検索]、インターネット<URL:http://www.panasonic.com/jp/corporate/technology-design/ptj/pdf/591_11.pdf>
上記説明した特許文献1や特許文献2等のように酸化チタン等の光触媒を最表層に形成すると、当該光触媒の高い屈折率のために十分な低反射特性を得ることができず、また、夜間には親水性が発現しないといった問題がある。一方、非特許文献1に記載の屋外用反射防止フィルムでは、低屈折率層を最表層に、その下層にTiO等の高屈折率材料である光触媒層を積層すると共に、最表層を多孔質構造としている。最表層に低屈折率層、その下層に高屈折率層を配することで反射防止効果が得られ、最表層を多孔質構造とすることで親水性は得られるが、光触媒層の酸化分解活性は、多孔質構造の低屈折層によって大部分遮られた状態で利用される。このため、光触媒による十分なセルフクリーニング機能を実現するためには、光触媒層自体の効果をできるだけ高める必要があり効率的ではない。また、最表面を強く拭くと、多孔質構造が破壊されることがあり、耐摩耗性の観点で実用性に課題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、高い耐摩耗性を維持しつつ、高い親水性と効率的なセルフクリーニング機能を両立することのできる親水性多層膜及びその製造方法、並びに、撮像システムを提供することを目的とする。
本発明の一態様の親水性多層膜は、基板の表面に設けた親水性多層膜において、上記親水性多層膜は、上記基板側から順に屈折率の異なる少なくとも2種類の層がそれぞれ少なくとも1層以上積層された多層膜層と、上記多層膜層の表面に設けられた親水性薄膜層と、を有し、上記多層膜層は、1層以上の光触媒層を有し、上記光触媒層のうちの1層は上記親水性薄膜層と隣接して設けられ、上記親水性薄膜層は、上記親水性多層膜の表面と上記光触媒層との隣接面との間に延びる隙間を有した柱状構造であり、上記多層膜層に含まれる1層以上の上記光触媒層は、厚み方向に対して傾斜を有した隙間を含む斜方柱状構造を有する。
本発明の一態様の撮像システムは、外気と接する面に反射防止膜としての上記親水性多層膜を有する。
本発明の一態様の親水性多層膜の製造方法は、基板の表面に、上記基板側から順に屈折率の異なる少なくとも2種類の層がそれぞれ少なくとも1層以上積層された多層膜層と、上記多層膜層の表面に設けられた親水性薄膜層と、を有し、上記多層膜層は、1層以上の光触媒層を有し、上記光触媒層のうちの1層が上記親水性薄膜層と隣接して設けられた親水性多層膜の製造方法であって、上記多層膜層に含まれる1層以上の上記光触媒層を、斜め蒸着によって成膜する。
本発明によれば、高い耐摩耗性を維持しつつ、高い親水性と効率的なセルフクリーニング機能を両立可能な親水性多層膜及びその製造方法、並びに、撮像システムを提供することができる。
本発明の一実施に係る親水性多層膜の概略構成の一例を示す断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る親水性多層膜の断面を拡大撮影した電子顕微鏡画像である。 本発明の一実施形態に係る親水性多層膜の概略構成の他の例を示す断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る親水性多層膜の概略構成の他の例を示す断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る親水性多層膜の概略構成の他の例を示す断面模式図である。 本発明の一実施形態に係る親水性多層膜の概略構成の他の例を示す断面模式図である。 実施例1〜6及び比較例1における基板及び親水性多層膜の層構成、各層の材料及び膜厚[nm]、並びに、各実施例及び比較例1の平均反射率、親水性及び耐摩耗性を示す表である。 実施例7〜10及び比較例1における基板及び親水性多層膜の層構成、各層の材料及び膜厚[nm]、並びに、各実施例及び比較例1の平均反射率、親水性及び耐摩耗性を示す表である。 実施例11〜12及び比較例2における基板及び親水性多層膜の層構成、各層の材料及び膜厚[nm]、並びに、各実施例及び比較例2の平均反射率、親水性及び耐摩耗性を示す表である。 実施例13〜14及び比較例2における基板及び親水性多層膜の層構成、各層の材料及び膜厚[nm]、並びに、各実施例及び比較例2の平均反射率、親水性及び耐摩耗性を示す表である。 実施例15〜16及び比較例3における基板及び親水性多層膜の層構成、各層の材料及び膜厚[nm]、並びに、各実施例及び比較例1の平均反射率、親水性及び耐摩耗性を示す表である。 実施例1〜3及び比較例1で基板10として用いられる「D 263 T」における波長と屈折率との関係を示すグラフである。 実施例4〜6で基板10として用いられる「FD110」における波長と屈折率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る親水性多層膜の概略構成の一例を示す断面模式図である。また、図2は、本発明の一実施形態に係る親水性多層膜の断面を拡大撮影した電子顕微鏡画像である。
図1に示すように、一実施形態の親水性多層膜100は、透明な基板10の表面に形成される。基板10は、ガラスやプラスチック等によって形成され、平板、凹レンズ、凸レンズなど主として光学装置において用いられる光学素子や窓ガラスを構成する。親水性多層膜100は、基板10側から順に屈折率の異なる少なくとも2種類の層がそれぞれ少なくとも1層以上積層された多層膜層101と、多層膜層101の表面に設けられた親水性薄膜層103とを有する。
図1に示す多層膜層101は、低屈折率を有する層111及び高屈折率を有する層113(113s)が交互に積層された6層構成である。低屈折率を有する層111の材料は、シリコン酸化物、シリコン酸窒化物、ガリウム酸化物、アルミニウム酸化物、ランタン酸化物、ランタンフッ化物、マグネシウムフッ化物、水素化シリコン酸化物、窒化シリコン酸化物などである。図1及び図2には、酸化シリコン(SiO)を例示している。一方、高屈折率を有する層113(113s)の材料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化タングステン等といった、光触媒活性を有する金属酸化物である。図1及び図2には、酸化チタン(TiO)を例示している。なお、低屈折率を有する層111の屈折率は、高屈折率を有する層113の材料が有する屈折率よりも低い屈折率をいう。以下、高屈折率を有する層113(113s)を「光触媒層」という。基板10とは逆側の多層膜層101の最表層は、この光触媒層113である。
親水性薄膜層103は、多層膜層101の表面に成膜され、親水性多層膜100の最表層を構成する。親水性薄膜層103の材料は、シリコン酸化物といった、親水性を有する金属酸化物であり、光触媒層113の屈折率よりも低い屈折率を有する。図1及び図2には、酸化シリコン(SiO)を例示している。
このように、基板10上には、低屈折率を有する層111と高屈折率を有する光触媒層113(113s)とが交互に積層された多層膜層101が形成され、多層膜層101の最表層には光触媒層113(113s)が形成され、この光触媒層113の上層には、低屈折率の親水性薄膜層103が形成される。したがって、多層膜層101及び親水性薄膜層103が積層された親水性多層膜100は、反射防止膜、反射膜、ハーフミラー膜及びバンドパスフィルタ膜のいずれかの光学機能を有する。反射防止膜として構成される親水性多層膜100は、例えば撮像システムのレンズに設けられる。
親水性多層膜100を構成する多層膜層101及び親水性薄膜層103は、真空蒸着等の気相成膜法を用いて成膜される。特に、多層膜層101に含まれる1層以上の光触媒層113及び親水性薄膜層103のうちの少なくとも1層は、基板10を傾けた状態で行う斜め蒸着によって成膜する。このとき、蒸着材料は、蒸着時の基板10の傾き角度に応じた角度に傾斜して堆積する。その結果、斜め蒸着によって成膜された層は斜方柱状構造となり、当該層の厚み方向に対して斜め方向に林立した微小な柱状構造体の間には隙間が形成される。また、斜方柱状構造を有する層の親水性多層膜100の表面側の面、すなわち、基板10とは逆側の面は、柱状構造体による凹凸形状を有する。したがって、斜方柱状構造を有する層の上に形成される層は、基板10に対してほぼ直角な方向から材料粒子が蒸着して成膜されるが、蒸着材料は凸部の上に堆積するため、柱状構造を有する。柱状構造を有する層においても、当該層の厚み方向に対して直立した柱状構造体の間には隙間が形成される。なお、多層膜層101の斜方柱状構造を有する層より基板10側の層は、等方的で稠密な層(いわゆるベタ層)である。
斜方柱状構造を有する層における隙間の傾斜角度は、基板10と平行な面に対して10度〜85度の範囲の値であり、より好ましくは、30度〜85度の範囲の値である。例えば傾斜角度が30度〜45度であれば、斜方柱状構造を有する層の上層において90%〜96%の密度で柱状構造体が形成され、傾斜角度が45度〜85度であれば、斜方柱状構造を有する層の上層において80%〜90%の密度で柱状構造体が形成される。
図1及び図2に示した例では、多層膜層101の表面(基板10とは逆側の面)側から数えて第1層を構成する光触媒層113sが斜め蒸着によって斜方柱状構造を有し、斜方柱状構造を有するこの光触媒層113sの上に形成される親水性薄膜層103は柱状構造を有する。なお、図3に示すように、多層膜層101の表面(基板10とは逆側の面)側から数えて第3層を構成する光触媒層113sが斜め蒸着によって形成され斜方柱状構造を有する場合、斜方柱状構造を有するこの光触媒層113sの上に形成される多層膜層101の第2層及び第1層、並びに、親水性薄膜層103は柱状構造を有する。同様に、図4に示すように、多層膜層101の表面(基板10とは逆側の面)側から数えて第5層を構成する光触媒層113sが斜め蒸着によって形成され斜方柱状構造を有する場合、斜方柱状構造を有するこの光触媒層113sの上に形成される多層膜層101の第4層〜第1層、並びに、親水性薄膜層103は柱状構造を有する。また、図5に示すように、多層膜層101の表面(基板10とは逆側の面)側から数えて第5層、第3層及び第1層を構成する各光触媒層113sが斜め蒸着によって形成され斜方柱状構造を有する場合、斜方柱状構造を有するこれら光触媒層113sの上に形成される多層膜層101の第4層及び第2層、並びに、親水性薄膜層103は柱状構造を有する。
以上により、本実施形態では、多層膜層101に含まれる光触媒層113(113s)のうちの少なくとも1層は斜め蒸着によって成膜され、斜め蒸着によって成膜された光触媒層113sは、微小な柱状構造体が当該層の厚み方向に対して斜め方向に林立した斜方柱状構造を有する。斜方柱状構造を有する光触媒層113sの表面側(基板10とは逆側)の面は、柱状構造体による凹凸形状を有する。したがって、斜方柱状構造を有する光触媒層113sの上に形成される層は、蒸着材料が凸部の上に堆積するために、柱状構造を有する。柱状構造を有する層では、当該層の厚み方向に対して直立した柱状構造体の間に隙間が形成されているため、親水性薄膜層103を含む柱状構造を有する層は、毛細血管現象による高い親水性を有する。また、多層膜層101に含まれる光触媒層113sの光触媒作用によって発生した電子は、柱状構造又は斜方柱状構造を有する層の内部に形成された隙間を移動して、この電子が親水性多層膜100の表面で活性酸素又はヒドロキシルラジカル(OHラジカル)の生成に寄与する。こうして生成された活性酸素又はOHラジカルが親水性多層膜100の表面に付着した有機物(汚れ)を酸化分解することによって、セルフクリーニングが行われる。本実施形態では、光触媒層113sの光触媒作用によって発生した電子が移動する層内部の隙間は、親水性多層膜100の表面まで通じた略直線状の経路であるため、電子は効率的に親水性多層膜100の表面まで移動することができる。したがって、親水性多層膜100の表面に付着した有機物の酸化分解(セルフクリーニング)が効率良く行われる。このように、親水性多層膜100における高い親水性と効率的なセルフクリーニング機能を両立することができる。
なお、図6に示すように、斜方柱状構造を有する光触媒層113sの上に形成する親水性薄膜層103又は多層膜層101の他の層を、斜め蒸着によって成膜しても良い。この場合は、斜方柱状構造を有する光触媒層113sの上に形成される親水性薄膜層103も斜方柱状構造を有する。斜方柱状構造を有する親水性薄膜層103では、当該層の厚み方向に対して斜め方向に林立した柱状構造体の間に隙間が形成されているため、親水性薄膜層103を含む斜方柱状構造を有する層は、毛細血管現象による高い親水性を有する。また、多層膜層101に含まれる光触媒層113sの光触媒作用によって発生した電子は、斜め柱状構造を有する層の内部に形成された隙間を移動するが、当該隙間は親水性多層膜100の表面まで通じた略直線状の経路であるため、電子は効率的に親水性多層膜100の表面まで移動することができる。したがって、親水性多層膜100の表面に付着した有機物の酸化分解(セルフクリーニング)が効率良く行われる。このように、図6に示した構成であっても、親水性多層膜100における高い親水性と効率的なセルフクリーニング機能を両立することができる。
以下、本発明の実施例を説明すると共に、本発明の構成及び効果についてより詳細に説明する。
[実施例1〜6及び比較例1]
図7は、実施例1〜6及び比較例1における基板10及び親水性多層膜100の層構成、各層の材料及び膜厚[nm]、並びに、各実施例及び比較例1の平均反射率、親水性及び耐摩耗性を示す表である。なお、平均反射率は、400[nm]〜700[nm]の波長範囲の反射率を1[nm]間隔で測定した値の合計を反射点数で割った値である。親水性多層膜100が反射防止膜である場合、平均反射率は実用上0.5[%]以下であることが望ましい。また、親水性は、ワックス試験(ワックス塗布→洗浄→UV(ultraviolet)光照射)を実施した後の水の接触角[deg]であり、実用上は10[deg]以下であることが望ましい。また、耐摩耗性は、市販のタワシを用いたこすり試験(加重100[g/cm2])を実施した際の膜剥がれの有無を示す。耐摩耗性の結果を示す「A」は、100回こすっても膜剥がれが生じなかったことを示し、「B」は、50回こすると膜剥がれが生じたことを示す。
実施例1〜3及び比較例1では、基板10として屈折率(波長550[nm])が1.52527と低い「D 263 T」(SCHOTT社製)を用いる。図12に、実施例1〜3及び比較例1で基板10として用いられる「D 263 T」における波長と屈折率との関係を示す。また、実施例4〜6では、基板10として屈折率が1.79123と高い「FD110」(HOYA社製)を用いる。図13に、実施例4〜6で基板10として用いられる「FD110」における波長と屈折率との関係を示す。実施例1〜6及び比較例1では、基板10の上に6層(実施例3のみ4層)の多層膜層101を積層し、更に親水性薄膜層103を親水性多層膜100の最表層として積層した。比較例1における多層膜層は、斜め蒸着によって成膜されていないため、いわゆるベタ膜である。したがって、その上層に形成される親水性薄膜層もベタ膜である。一方、実施例1〜6では、多層膜層101の第1層は、斜め蒸着によって成膜されるため、斜方柱状構造を有する。図7では、斜方柱状構造を有した多層膜層101の第1層の膜厚を示す数値が二重線で囲まれている。多層膜層101の第1層が斜方柱状構造を有するため、その上層に形成される親水性薄膜層103は柱状構造を有する。
図7に示すように、比較例1では、平均反射率は0.18[%]と0.5[%]以下であるため反射防止機能は十分であるが、親水性を示す接触角が15.2[deg]と高い。一方、実施例1〜6では、平均反射率はどれも0.5[%]以下であり、親水性を示す接触角はどれも10[deg]以下である。更に、実施例1〜6は、100回こすっても膜剥がれが生じない程の高い耐摩耗性を有する。このように、実施例1〜6の親水性多層膜100は、高い親水性を有した耐摩耗性の高い反射防止膜であり、更に、多層膜層101の第1層が斜方柱状構造を有し、その上層に形成される親水性薄膜層103は柱状構造を有するため、効率的なセルフクリーニング機能を実現できる。
[実施例7〜10及び比較例1]
図8は、実施例7〜10及び比較例1における基板10及び親水性多層膜100の層構成、各層の材料及び膜厚[nm]、並びに、各実施例及び比較例1の平均反射率、親水性及び耐摩耗性を示す表である。実施例7〜8及び比較例1では、基板10として低屈折率部材の「D 263 T」(SCHOTT社製)を用い、実施例9〜10では、基板10として高屈折率部材の「FD110」(HOYA社製)を用いる。実施例7〜10及び比較例1では、基板10の上に6層(実施例8のみ4層)の多層膜層101を積層し、更に親水性薄膜層103を親水性多層膜100の最表層として積層した。比較例1における多層膜層は、斜め蒸着によって成膜されていないため、いわゆるベタ膜である。したがって、その上層に形成される親水性薄膜層もベタ膜である。一方、実施例7〜10では、多層膜層101の第3層は、斜め蒸着によって成膜されるため、斜方柱状構造を有する。図8には、斜方柱状構造を有した多層膜層101の第3層の膜厚を示す数値が二重線で囲まれている。多層膜層101の第3層が斜方柱状構造を有するため、その上層に形成される多層膜層101の第2層及び第1層、並びに、親水性薄膜層103は柱状構造を有する。
図8に示すように、比較例1では、平均反射率は0.18[%]と0.5[%]以下であるため反射防止機能は十分であるが、親水性を示す接触角が15.2[deg]と高い。一方、実施例7〜10では、平均反射率はどれも0.5[%]以下であり、親水性を示す接触角はどれも10[deg]以下である。更に、実施例7〜10は、100回こすっても膜剥がれが生じない程の高い耐摩耗性を有する。このように、実施例7〜10の親水性多層膜100は、高い親水性を有した耐摩耗性の高い反射防止膜であり、更に、多層膜層101の第3層が斜方柱状構造を有し、その上層に形成される多層膜層101の第2層及び第1層、並びに、親水性薄膜層103は柱状構造を有するため、効率的なセルフクリーニング機能を実現できる。
[実施例11〜12及び比較例2]
図9は、実施例11〜12及び比較例2における基板10及び親水性多層膜100の層構成、各層の材料及び膜厚[nm]、並びに、各実施例及び比較例2の平均反射率、親水性及び耐摩耗性を示す表である。実施例11〜12及び比較例2では、基板10として高屈折率部材の「FD110」(HOYA社製)を用いる。また、実施例11〜12及び比較例2では、基板10の上に6層の多層膜層101を積層し、更に親水性薄膜層103を親水性多層膜100の最表層として積層した。比較例2における多層膜層は、斜め蒸着によって成膜されていないため、いわゆるベタ膜である。したがって、その上層に形成される親水性薄膜層もベタ膜である。一方、実施例11〜12では、多層膜層101の第5層は、斜め蒸着によって成膜されるため、斜方柱状構造を有する。図9には、斜方柱状構造を有した多層膜層101の第5層の膜厚を示す数値が二重線で囲まれている。多層膜層101の第5層が斜方柱状構造を有するため、その上層に形成される多層膜層101の第4層〜第1層及び親水性薄膜層103は柱状構造を有する。
図9に示すように、比較例2では、平均反射率は0.24[%]と0.5[%]以下であるため反射防止機能は十分であるが、親水性を示す接触角が16.6[deg]と高い。一方、実施例11〜12では、平均反射率はどれも0.5[%]以下であり、親水性を示す接触角はどれも10[deg]以下である。更に、実施例11〜12は、100回こすっても膜剥がれが生じない程の高い耐摩耗性を有する。このように、実施例11〜12の親水性多層膜100は、高い親水性を有した耐摩耗性の高い反射防止膜であり、更に、多層膜層101の第5層が斜方柱状構造を有し、その上層に形成される多層膜層101の第4層〜第1層及び親水性薄膜層103は柱状構造を有するため、効率的なセルフクリーニング機能を実現できる。
[実施例13〜14及び比較例2]
図10は、実施例13〜14及び比較例2における基板10及び親水性多層膜100の層構成、各層の材料及び膜厚[nm]、並びに、各実施例及び比較例2の平均反射率、親水性及び耐摩耗性を示す表である。実施例13〜14及び比較例2では、基板10として高屈折率部材の「FD110」(HOYA社製)を用いる。また、実施例13〜14及び比較例2では、基板10の上に6層の多層膜層101を積層し、更に親水性薄膜層103を親水性多層膜100の最表層として積層した。比較例2における多層膜層は、斜め蒸着によって成膜されていないため、いわゆるベタ膜である。したがって、その上層に形成される親水性薄膜層もベタ膜である。一方、実施例13〜14では、多層膜層101の第5層、第3層及び第1層は、斜め蒸着によって成膜されるため、斜方柱状構造を有する。図10には、斜方柱状構造を有した多層膜層101の第5層、第3層及び第1層の膜厚を示す数値が二重線で囲まれている。多層膜層101の第5層、第3層及び第1層が斜方柱状構造を有するため、その上層に形成される多層膜層101の第4層及び第2層、並びに、親水性薄膜層103は柱状構造を有する。
図10に示すように、比較例2では、平均反射率は0.24[%]と0.5[%]以下であるため反射防止機能は十分であるが、親水性を示す接触角が16.6[deg]と高い。一方、実施例13〜14では、平均反射率はどれも0.5[%]以下であり、親水性を示す接触角はどれも10[deg]以下である。更に、実施例13〜14は、100回こすっても膜剥がれが生じない程の高い耐摩耗性を有する。このように、実施例13〜14の親水性多層膜100は、高い親水性を有した耐摩耗性の高い反射防止膜であり、更に、多層膜層101の第5層、第3層及び第1層が斜方柱状構造を有し、その上層に形成される多層膜層101の第4層及び第2層、並びに、親水性薄膜層103は柱状構造を有するため、効率的なセルフクリーニング機能を実現できる。
[実施例15〜16及び比較例3]
図11は、実施例15〜16及び比較例3における基板10及び親水性多層膜100の層構成、各層の材料及び膜厚[nm]、並びに、各実施例及び比較例1の平均反射率、親水性及び耐摩耗性を示す表である。実施例15及び比較例3では、基板10として低屈折率部材の「D 263 T」(SCHOTT社製)を用い、実施例16では、基板10として高屈折率部材の「FD110」(HOYA社製)を用いる。実施例15及び比較例3では、基板10の上に4層の多層膜層101を積層し、実施例16では、基板10の上に6層の多層膜層101を積層し、更に親水性薄膜層103を親水性多層膜100の最表層として積層した。比較例3における多層膜層は、斜め蒸着によって成膜されていないため、いわゆるベタ膜である。したがって、その上層に形成される親水性薄膜層もベタ膜である。一方、実施例15〜16では、多層膜層101の第1層及び親水性薄膜層103の双方は、斜め蒸着によって成膜されるため、斜方柱状構造を有する。図11には、斜方柱状構造を有した多層膜層101の第1層の膜厚を示す数値及び親水性薄膜層103の膜厚を示す数値が二重線で囲まれている。
図11に示すように、比較例3では、平均反射率は0.38[%]と0.5[%]以下であるため反射防止機能は十分であるが、親水性を示す接触角が15.2[deg]と高い。一方、実施例15〜16では、平均反射率はどれも0.5[%]以下であり、親水性を示す接触角はどれも10[deg]以下である。更に、実施例15〜16は、50回こすると膜剥がれが生じる程の耐摩耗性を有する。このように、実施例15〜16の親水性多層膜100は、高い親水性を有した耐摩耗性が実用的な反射防止膜であり、更に、多層膜層101の第1層及び親水性薄膜層103が共に斜方柱状構造を有するため、効率的なセルフクリーニング機能を実現できる。
以上説明したとおり、本明細書に開示された親水性多層膜は、基板の表面に設けた親水性多層膜において、上記親水性多層膜は、上記基板側から順に屈折率の異なる少なくとも2種類の層がそれぞれ少なくとも1層以上積層された多層膜層と、上記多層膜層の表面に設けられた親水性薄膜層と、を有し、上記多層膜層は、1層以上の光触媒層を有し、上記光触媒層のうちの1層は上記親水性薄膜層と隣接して設けられ、上記親水性薄膜層は、上記親水性多層膜の表面と上記光触媒層との隣接面との間に延びる隙間を有した柱状構造であり、上記多層膜層に含まれる1層以上の上記光触媒層は、厚み方向に対して傾斜を有した隙間を含む斜方柱状構造を有する。
また、上記親水性薄膜層は上記柱状構造であり、上記多層膜層に含まれる少なくとも1層の上記光触媒層は、上記斜方柱状構造を有する。
また、上記親水性薄膜層及び上記多層膜層に含まれる少なくとも1層の上記光触媒層は、上記斜方柱状構造を有する。
また、上記傾斜の角度は、上記基板と平行な面に対して10度〜85度の範囲の値である。
また、上記斜方柱状構造を有する上記光触媒層の上記親水性多層膜の表面側の面は凹凸形状を有する。
また、上記親水性薄膜層が酸化シリコンで構成され、上記光触媒層が酸化チタンで構成されている。
また、上記多層膜層には、酸化チタンで構成された層と、酸化シリコンで構成された層とが交互に積層されている。
また、上記親水性多層膜は、反射防止膜、反射膜、ハーフミラー膜及びバンドパスフィルタ膜のいずれかの光学機能を有する。
また、本明細書に開示された撮像システムは、外気と接する面に反射防止膜としての上記親水性多層膜を有する。
また、本明細書に開示された親水性多層膜の製造方法は、基板の表面に、上記基板側から順に屈折率の異なる少なくとも2種類の層がそれぞれ少なくとも1層以上積層された多層膜層と、上記多層膜層の表面に設けられた親水性薄膜層と、を有し、上記多層膜層は、1層以上の光触媒層を有し、上記光触媒層のうちの1層が上記親水性薄膜層と隣接して設けられた親水性多層膜の製造方法であって、上記多層膜層に含まれる1層以上の上記光触媒層を、斜め蒸着によって成膜する。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2015年9月29日出願の日本特許出願(特願2015-192236)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
10 基板
100 親水性多層膜
101 多層膜層
103 親水性薄膜層
111 低屈折率を有する層
113,113s 光触媒層(高屈折率を有する層)

Claims (10)

  1. 基板の表面に設けた親水性多層膜において、前記親水性多層膜は、前記基板側から順に屈折率の異なる少なくとも2種類の層がそれぞれ少なくとも1層以上積層された多層膜層と、前記多層膜層の表面に設けられた親水性薄膜層と、を有し、
    前記多層膜層は、1層以上の光触媒層を有し、前記光触媒層のうちの1層は前記親水性薄膜層と隣接して設けられ、
    前記親水性薄膜層は、前記親水性多層膜の表面と前記光触媒層との隣接面との間に延びる隙間を有した柱状構造であり、
    前記多層膜層に含まれる1層以上の前記光触媒層は、厚み方向に対して傾斜を有した隙間を含む斜方柱状構造を有する、
    親水性多層膜。
  2. 請求項1に記載の親水性多層膜であって、
    前記親水性薄膜層は前記柱状構造であり、
    前記多層膜層に含まれる少なくとも1層の前記光触媒層は、前記斜方柱状構造を有する、親水性多層膜。
  3. 請求項1に記載の親水性多層膜であって、
    前記親水性薄膜層及び前記多層膜層に含まれる少なくとも1層の前記光触媒層は、前記斜方柱状構造を有する、親水性多層膜。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の親水性多層膜であって、
    前記傾斜の角度は、前記基板と平行な面に対して10度〜85度の範囲の値である、親水性多層膜。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の親水性多層膜であって、
    前記斜方柱状構造を有する前記光触媒層の前記親水性多層膜の表面側の面は凹凸形状を有する、親水性多層膜。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の親水性多層膜であって、
    前記親水性薄膜層が酸化シリコンで構成され、前記光触媒層が酸化チタンで構成された、親水性多層膜。
  7. 請求項6に記載の親水性多層膜であって、
    前記多層膜層には、酸化チタンで構成された層と、酸化シリコンで構成された層とが交互に積層されている、親水性多層膜。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の前記親水性多層膜は、反射防止膜、反射膜、ハーフミラー膜及びバンドパスフィルタ膜のいずれかの光学機能を有する親水性多層膜。
  9. 外気と接する面に請求項8に記載の反射防止膜を有する撮像システム。
  10. 基板の表面に、前記基板側から順に屈折率の異なる少なくとも2種類の層がそれぞれ少なくとも1層以上積層された多層膜層と、前記多層膜層の表面に設けられた親水性薄膜層と、を有し、
    前記多層膜層は、1層以上の光触媒層を有し、前記光触媒層のうちの1層が前記親水性薄膜層と隣接して設けられた親水性多層膜の製造方法であって、
    前記多層膜層に含まれる1層以上の前記光触媒層を、斜め蒸着によって成膜する、親水性多層膜の製造方法。
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