JP7335556B2 - 光学素子の製造方法及び光学素子 - Google Patents

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Description

本発明は、多層膜を成膜した光学素子の製造方法及び当該方法で製造した光学素子に関する。
例えば車両の運転支援のため、車両に車載カメラを搭載することが行われている。より具体的には、車両の後方や側方を撮像するカメラを自動車の車体に搭載し、このカメラによって撮像された映像を運転者が視認可能な位置に表示することによって死角を減らし、これにより安全運転に貢献できる。
ところで、車載カメラは車外に取り付けられる場合が多く、そのレンズ上に水滴や泥等の汚れがしばしば付着する。レンズに付着した水滴や汚れの度合によっては、カメラで撮像された画像が不鮮明となるおそれがある。そこで、レンズの物体側面に光触媒物質を塗布することで、紫外線の照射により表面に付着した有機物質を洗浄する技術が開発されている。例えば車載カメラに搭載される撮像レンズの物体側面に、光触媒効果を有するTiナノ粒子を塗布することが考えられる。
特許文献1では、光触媒性粒子の光触媒性能を損なうことなく、セルフクリーニング性を有する反射率を低減した膜を形成した反射防止性を有する反射防止物品が開示されている。特許文献1の反射防止物品は、透明基材の一方の面に、樹脂からなる微細凹凸層と、SiOからなる無機層と、TiOからなる光触媒層とを備え、光触媒層の表面が微細凹凸を有している。
ところで、車載カメラに搭載される撮像レンズ等においては、過酷な環境下で使用されるため、十分な耐環境性能が要求される。より具体的には、車両の走行に伴う衝撃や風圧、走行により跳ね上げられた砂塵により、露出した撮像レンズの光学面が傷損や浸食を受ける可能性がある。さらには、潮風に含まれる塩水、酸性雨、洗車等の際に使用される洗剤やワックス等の薬剤等により表面劣化や変質を生ずるおそれがある。
しかしながら、特許文献1の反射防止物品では、上述のように車載カメラ用のレンズにおいて要求されている光触媒効果、塩水耐性、親水性、低反射特性、及び耐傷性の機能をすべて達成するものとなっていない。具体的には、特許文献1の反射防止物品では、TiO層が一番上に設けられており、光触媒効果を有し、このTiO層をモスアイ構造とすることで反射率を低下させているものの、耐塩水性や親水性が弱いものとなっている。また、特許文献1の反射防止物品は、擦りによってその構造が崩れるおそれがあり、耐傷性も低い。
特開2014-71323号公報
本発明は、超親水性及び光触媒効果を両立でき、かつ塩水耐性も有する光学素子の製造方法及び当該方法で製造された光学素子を提供することを目的とする。
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した光学素子の製造方法は、光透過性を有する基板に2層以上の多層膜を成膜した光学素子の製造方法であって、多層膜は、少なくとも1層の低屈折率層と、少なくとも1層の高屈折率層とを有し、基板から最も遠い最上層として塩水噴霧耐性と超親水性とを有する低屈折率層を形成する最上層形成工程と、最上層の下に、機能層として光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする高屈折率層を形成する機能層形成工程と、最上層形成工程後、最上層の表面に金属マスクを成膜するマスク形成工程と、最上層において機能層の表面を露出させる複数の通孔をエッチングによって形成する通孔形成工程と、を備える。ここで、低屈折率層とは、屈折率が1.7以下である層を意味する。高屈折率層とは、屈折率が1.9以上である層を意味する。また、塩水噴霧耐性を有するとは、後述する塩水噴霧試験後、膜厚減少値が20nm以下であることを意味する。また、超親水性を有するとは、光学素子上の水滴10μlの接触角が15°以下になることを意味する。なお、上記において、説明の都合上、最上層形成工程、機能層形成工程の順に記載しているが、実際には、機能層形成工程の後に最上層形成工程が行われる。
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した光学素子は、上述の光学素子の製造方法で製造され、最上層に島状通孔構造を有する。
本実施形態にかかる光学素子の断面を模式的に示す図である。 図2Aは、粒子状の金属マスクを形成して作製した光学素子の断面を模式的に示す図であり、図2Bは、島状の金属マスクを形成して作製した光学素子の断面を模式的に示す図であり、図2Cは、図2Bの最上層の表面のSEM画像であり、図2Dは、ポーラス状の金属マスクを形成して作製した光学素子の断面を模式的に示す図である。 光学素子の製造方法を説明する図である。 図4A~4Cは、光学素子の製造方法のうち粒子状の金属マスクを形成して通孔を形成する工程を説明する概念図であり、図4Dは、島状の金属マスクを形成した例を説明する概念図であり、図4Eは、ポーラス状の金属マスクを形成した例を説明する概念図である。 図5Aは、粒子状の金属マスクを形成した試料のSEM画像であり、図5Bは、図5Aの試料をエッチングして通孔を形成した状態を示すSEM画像であり、図5Cは、島状の金属マスクを形成した試料のSEM画像であり、図5Dは、ポーラス状の金属マスクを形成した試料のSEM画像である。 図6A~6Cは、最上層が島状に加工された光学素子のSEM画像を段階的に拡大した図である。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかる光学素子の断面を模式的に示す図である。図1に示す光学素子100は、光透過性を有する基板であるガラス基材(ガラス基板)GL上に低屈折率層Lと高屈折率層Hとが交互に積層された構造の多層膜MCを有するものである。低屈折率層Lとは、屈折率が1.7以下である層を意味する。高屈折率層Hとは、屈折率が1.9以上である層を意味する。ガラス基材GLは、平板に限らず、レンズを含むものとすることができる。ただし、ガラス基材GLに高屈折率層Hが接していてもよい。このような光学素子100は、車載用レンズや通信用レンズとして用いることができる。また、図1において、ガラス基材GLと機能層20との間に位置する層を、高屈折率層や低屈折率層の代わりに、中間屈折率層の等価膜として置換してもよい。
図1において、ガラス基材GLから最も遠い最上層10が低屈折率層Lであり、最上層10の下に設けられた高屈折率層H、本実施形態の場合、最上層10に隣接した高屈折率層Hが光触媒機能を有する金属酸化物の機能層20である。比較的強度が高い低屈折率層Lを最上層10とすることで、耐傷性を向上できる。また、機能層20は、最上層10を通じて又は介してUV光で励起した活性酸素を用いて光触媒機能を発揮するため、最上層10にできるだけ近い位置に置くことが好ましい。最上層10に隣接して機能層20を設けることで、例えば光触媒機能を有効に発揮できる。また、機能層20として、光触媒効果、光活性効果を持つ金属酸化物を用いることで、表面有機物を除去し最上層10の超親水性を維持できる。機能層20には、例えば、TiO等を用いる。TiOを用いた機能層20は、IAD(イオンアシストデポジション(Ion Assisted Deposition)(以下、IADという))を用いて成膜すると光触媒効果が高まる。
「光触媒機能」とは、太陽光や人工光が入射することにより強力な酸化力が生じ、接触してくる有機化合物や細菌等の有害物質を有効に除去することや、親水作用により、水滴が表面にとどまることを防ぎ、また、油性等の汚れが定着せずに水等で洗浄されること等のセルフクリーニング機能をいい、例えば二酸化チタンが持つ機能である。なお、「最上層に隣接する」とは、最上層10と機能層20とが密着している場合の他、最上層10と機能層20との間に、その機能の発現を妨げないとみなせる層(例えば20nm以下の層)を設ける場合も含む。
図2A~2Dに示すように、最上層10の低屈折率層Lは、隣接する高屈折率層Hとなる機能層20に光触媒機能を発現させるための複数の通孔30を有している。詳細は後述するが、通孔30は、ドライエッチングで形成される。最上層10の低屈折率層Lの表面積に対する複数の通孔30の横断面の総面積(光学素子100を上から見たときの通孔30の総面積)の割合(以下、通孔密度又は膜抜け落ち率という)は、例えば後述する島状の金属マスク50を用いて通孔30を形成した場合、膜抜け落ち率は50%程度となる。また、通孔30の横断面は、ランダムな形状を有している。
また、本実施形態の光学素子100は望ましくは以下の条件式を満たす。
10nm≦TL≦350nm … (1)
50nm≦Tcat≦700nm … (2)
ここで、
TL:最上層10の膜厚
Tcat:最上層10に隣接した高屈折率層H又は機能層20の膜厚
条件式(1)の値が上限以下であると、最上層10に設けた複数の通孔30を通じてUV光で励起した活性酸素をやり取りすることにより光触媒効果を発揮できる。一方、条件式(1)の値が下限以上であると、最上層10の超親水機能を保持しやすく、かつ強固な最上膜を形成できるため十分な耐傷性を確保できる。なお、光学素子100は、以下の式を満たすことが好ましい。
50nm≦TL≦250nm … (1’)
条件式(1’)の範囲であれば、反射率を2%以内に抑えやすい。また、条件式(1’)の値が上限以下であると、機能層20の光触媒機能を機能層20の最表面に発現しやすくなる。
条件式(2)の値が下限以上であると、機能層20の膜厚を確保できるため十分な光触媒効果を期待できる。一方、機能層20の厚さが増大すればするほど光触媒効果を期待できるが、その代わり多層膜に要求される所望の分光特性を得にくくなるため、条件式(2)の値は上限以下とすることが望ましい。なお、光学素子100は、以下の式を満たすことが好ましい。
50nm≦Tcat≦600nm … (2’)
最上層10に隣接した高屈折率層H又は機能層20は、Tiを主成分とする酸化物(例えばTiO)から形成されている。TiO等のTi酸化物は光触媒効果が非常に高いものとなっている。特に、アナターゼ型のTiOは、光触媒効果が高いため機能層20の材料として望ましい。
最上層10は塩水噴霧耐性及び超親水性を有する層であり、例えば主にSiOから形成されている。塩水噴霧耐性を有するとは、後述する塩水噴霧試験後、膜厚減少値が20nm以下であることを意味する。また、超親水性を有するとは、光学素子100上の水滴10μlの接触角が15°以下になることを意味する。なお、最上層10において、SiOは90%以上含有されていることが好ましい。夜間や屋外等ではUV光が入射しにくく、Tiを主成分とする酸化物では親水効果が低下するが、かかる場合でも最上層10をSiOから形成することで超親水効果を発揮でき、また、耐傷性もより高められる。最上層10にSiOを用いる場合、成膜後に500℃で2時間の加熱処理を施すことで、耐傷性が向上する。
なお、最上層10はSiOとAlとの混合物(ただし、SiOの組成比が90重量%以上)から形成されてもよい。これにより夜間や屋外等でも親水効果を発揮でき、また、SiOとAlとの混合物とすることで耐傷性もより高められる。最上層10にSiOとAlとの混合物を用いる場合、成膜後に200℃以上で2時間の加熱処理を施すことで、耐傷性が向上する。なお、最上層10の一部又は全部を成膜する際にIAD法を用いると好ましい。これにより、耐傷性が向上する。
多層膜MCの各層は蒸着法で成膜されており、各層のうちいずれかの層はIAD法で成膜されていると好ましい。IAD法による成膜で耐傷性をより向上できる。
特に、最上層10は、IAD法、化学気相成長(CVD)法、スパッター法等で成膜される。
最上層10である低屈折率層Lの膜密度は、98%以上となっている。ここで、膜密度は、空間充填密度を意味する。最上層10の低屈折率層Lの膜密度を98%以上とすることで、塩水に対する耐性(つまり、塩水噴霧耐性)をより向上させることができる。
光学素子100は以下の条件式を満たすと好ましい。
1.35≦NL≦1.55 … (3)
ここで、
NL:低屈折率層Lの材料のd線での屈折率
条件式(3)を満たすことで、所望の光学特性を有する光学素子100を得ることができる。ここで、d線とは波長587.56nmの波長の光をいう。低屈折率層Lの素材として、d線での屈折率が1.48であるSiOや、d線での屈折率が1.385であるMgFを用いることができる。
光学素子100は以下の条件式を満たすと好ましい。
1.6≦Ns≦2.2 … (4)
ここで、
Ns:ガラス基材GLのd線での屈折率
光学設計上、ガラス基材GLのd線での屈折率として条件式(4)を満たすことで、コンパクトな構成とした上で光学素子100の光学性能を高めることができる。条件式(4)を満たすガラス基材GLに本実施形態の多層膜MCを成膜することで、外界に対して露出するレンズ等に用いることができ、優れた耐環境性能と光学性能とを両立することができる。
以下、図3等を参照しつつ、光学素子100の製造方法について説明する。まず、ガラス基材(ガラス基板)GL上に多層膜MCとしての低屈折率層Lと高屈折率層Hとを交互に積層する(多層膜形成工程:ステップS11)。ただし、ステップS11においては、多層膜MCのうち最上層10と機能層20とを除いた層を形成する。つまり、機能層20の下側に隣接する低屈折率層Lまで形成する。多層膜MCは、各種の蒸着法、IAD法、スパッター法等を用いて形成する。なお、光学素子100の構成に応じて、ステップS11での多層膜MCの形成を省略してもよい。
次に、ステップS11で形成した多層膜上に、機能層20となる高屈折率層Hを形成する(機能層形成工程:ステップS12)。機能層20としての高屈折率層Hは、各種の蒸着法、IAD法、スパッター法等を用いて形成する。機能層20としての高屈折率層Hは、光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする材料(具体的には、TiO等のTiを主成分とする酸化物)で形成する。光触媒効果が強いアナターゼ型のTiOを得る場合、IAD法又はスパッター法を用いて、200℃以上の温度で成膜することが望ましい。
次に、機能層20上に最上層10となる低屈折率層Lを形成する(最上層形成工程:ステップS13)。最上層10としての低屈折率層Lは、IAD法、CVD法、スパッター法のいずれかを用いて形成する。最上層10としての低屈折率層Lは、SiOや、SiOとAlとの混合物等で形成する。塩水噴霧耐性を強化するため、最上層10は、膜密度が98%以上となる条件で形成される。膜密度98%以上の最上層10を得るために、IAD法又はスパッター法を用いて、200℃以上の温度で成膜することが望ましい。以上により、ガラス基材GL上に多層膜MCを形成した中間体(最上層10に通孔30が形成されていないもの)40が形成される。
最上層形成工程後、最上層10の表面10aに金属マスク50を成膜する(マスク形成工程:ステップS14)。図4A及び図5Aに示すように、金属マスク50は、最上層10の表面10aに粒子状に形成される。これにより、最上層10にナノサイズの金属マスク50を形成することができる。なお、図4D及び図5Cに示すように、金属マスク50を島状に形成してもよい。また、図4E及び図5Dに示すように、金属マスク50をポーラス状に形成してもよい。金属マスク50は、金属部50aと、露出部50bとで構成される。金属マスク50の膜厚は、1nm以上30nm以下となっている。成膜条件にもよるが、例えば蒸着法を用いて膜厚を2nmとなるように金属マスク50を成膜すると、金属マスク50は粒子状になりやすい。また、例えば蒸着法を用いて膜厚を12nm~15nmとなるように金属マスク50を成膜すると、金属マスク50は島状になりやすい。さらに、例えばスパッター法を用いて膜厚を10nmとなるように成膜すると、金属マスク50はポーラス状になりやすい。金属を上記範囲の厚さに薄く成膜することで、粒子状、島状、又はポーラス状の最適な金属マスク50を容易に形成することができる。金属マスク50は、例えばAgやAl等で形成される。
次に、最上層10の低屈折率層Lに複数の通孔30を形成する(通孔形成工程:ステップS15)。図4B及び図5Bに示すように、エッチングには、不図示のエッチング装置を用いたドライエッチングを用いる。また、上述の多層膜MCの成膜や金属マスク50の成膜に用いた成膜装置を用いてもよい。通孔形成工程において、最上層10の材料、具体的にはSiOと反応するガスを用いて複数の通孔を形成する。この場合、金属マスク50に損傷を与えず、最上層10のSiOを削ることができる。エッチングガスとしては、例えばCHF、CF、SF等を用いる。これにより、最上層10において機能層20の表面を露出させる複数の通孔30が形成される。つまり、金属マスク50の露出部50bに対応する最上層10がエッチングされて通孔30が形成され、部分的に機能層20の表面が露出した状態となる。
通孔形成工程後、図4Cに示すように、金属マスク50を除去する(マスク除去工程:ステップS16)。具体的には、金属マスク50は、酢酸等を用いたウェットエッチングによって除去される。また、金属マスク50は、例えばArやOをエッチングガスとして用いたドライエッチングによって除去してもよい。金属マスク50のエッチングをドライエッチングを用いて行えば、多層膜MCの形成から金属マスク50のエッチングまでの一連の工程を同じ成膜装置内で行うことができる。
以上の工程により、最上層10に複数の通孔30を有する光学素子100を得ることができる。
上記光学素子の製造方法によれば、最上層10を成膜後、機能層20に光触媒機能を発現させるための複数の通孔30を形成することにより、超親水性と光触媒機能とを両立させることができる。通孔30は、機能層20に光触媒機能を発現させる程度の大きさであり、ユーザーに視認されることがなく、かつ塩水に対する耐性も有する。
機能層20は光触媒機能を発現するが、高屈折率層Hであるため、光学素子100の反射防止特性を維持するためには、機能層20の上に低屈折率層Lである最上層10を設ける必要がある。そのため、最上層10の密度が高い場合、機能層20の光触媒機能が発現されなくなるという問題がある。一方、最上層10の膜密度を低くすると、最上層10の耐塩水性や耐傷性が低くなるという問題がある。本実施形態にかかる光学素子100のように、最上層10に複数の通孔30を設けることにより、反射防止特性、超親水性、及び耐傷性を保ちつつ、機能層20の光触媒機能を発現させることができる。
このように、光学素子100は、反射防止特性を有する耐塩水性及び対傷性に優れた多層膜を有し、超親水性及び光触媒効果を発揮することができ、車載用レンズや通信用レンズ、或いは建材に好適に用いられる。
(実施例)
(1)最上層の通孔の形成条件と光学素子の評価
以下、本実施形態に係る光学素子100の具体的な実施例について説明する。以下の実施例及び比較例の多層膜を形成するうえで、成膜装置(BES-1300)(株式会社シンクロン製)を用い、IADのイオン源としてNIS-175を用いた。
ガラス基材上に、蒸着法又はIAD法にて9層の多層膜を370℃加熱で形成して試料を作製した。より具体的には、表1に示すように、ガラス基材TAFD5G(HOYA株式会社製:屈折率1.835)上に、SiOを用いた低屈折率層、OA600(キヤノンオプトロン株式会社製の素材)を用いた高屈折率層、TiOを用いた機能層を表1に示す順序で積層して成膜した。最上層としてはSiO、MgF、又はL5(メルク株式会社製)を用いた。表1に、各層の成膜処方及び膜構成(ガラス基材(ガラス基板)に接する層を1層目とする)を示す。ここでは各膜厚(d(nm))を一定とし、各膜の成膜速度RATE(Å/SEC)も一定とした。
Figure 0007335556000001
表1中のOA600は、Ta、TiO、Tiの混合物であり、その具体的な組成は表2に示す通り、酸化タンタルを主成分とする。
Figure 0007335556000002
表1中のL5は、SiO、Alの混合物であり、その具体的な組成は表3に示す通りである。
Figure 0007335556000003
表1の屈折率は、多層膜MCの各層を単層で成膜し、後述する反射防止特性評価の際に用いる手法で反射率測定を行うことで算出している。薄膜計算ソフト(Essential Macleod)(シグマ光機株式会社)を用いて、実測した反射率データに対してフィットするように屈折率を調整することで得られた膜の屈折率を特定している。
成膜処方は表1に示す通りであるが、最上層の通孔の形成条件を変更して、実施例1~11(試料1~11)及び比較例1~3(試料12~14)の試料を作製し、以下の試験に供した。最上層の膜密度は、塩水噴霧耐性を持たせるため、98%以上とした。なお、比較例3の試料14については、最上層を設けず、機能層全体が露出したものを作製した。それぞれ加熱温度は370℃、開始真空度は3.00E-03Pa(3.00×10-3Pa)とした。
ここで、「APC」は、Auto Pressure Controlの略で分圧を調整したことを意味し、「SCCM」は、standard cc/minの略であり、1気圧(大気圧1013hPa)、0℃で1分間あたりに何cc流れたかを示す単位である。
以下、表4に最上層の通孔の形成条件が異なる試料1~13の評価結果(「たわし擦り」(耐傷性評価)については試料14も含む)を示す。
Figure 0007335556000004
「光触媒効果」については、20℃80%の環境下において、ペンで色づけした試料に対してUV照射で積算20J照射し、ペンの色変化を段階的に評価した。具体的には、ペンとしてThe visualiser(inkintelligent社製)を用いた。ここで、色変化度が大のもの(又は色が消える)は光触媒効果が十分にあるとして評価を符号○とし、色変化度が中のもの(又は色が薄くなる)は光触媒効果が残っているとして評価を符号△とし、色変化度が極小のもの(又は色が消えない)は光触媒効果がないとして評価を符号×とした。
「塩水耐性」については、塩乾湿複合サイクル試験機(CYP-90)(スガ試験機株式会社製)を用いて、塩水噴霧試験を行って評価した。試験は、以下の工程(a)~(c)を1サイクルとし、8サイクル実施した。
(a)35℃±2℃の噴霧層内温度にて、25±2℃の塩水濃度5%の溶剤(NaCl、MgCl、CaCl、濃度(重量比)5%±1%)を試料に2時間噴霧する。
(b)噴霧終了後、40℃±2℃、95%RHの環境下に試料を22時間放置する。
(c)工程(a)及び(b)を4回繰り返した後、常温(20℃±15℃)及び常湿(45%RH~85%RH)の環境下に試料を72時間放置する。
上記試験後、試料の分光特性に変化がない(反射率変化が2%未満)場合、評価を符号○とし、反射率変化が4%未満である場合、評価を符号△とし、反射率変化が4%以上である場合、評価を符号×とした。
「接触角」(超親水性評価)については、接触角測定器(G-1)(エルマ株式会社製)を用いて、試料に水滴を10μl滴下し、その接触角を測定した。接触角が15°以下であれば超親水性を有すると評価できる。
「反射率」(反射防止特性評価)については、反射率測定機(USPM-RUIII)(オリンパス株式会社製)を用いて、波長域420nm~670nmの最大反射率で試料の反射率を評価した。ここで、反射率が5%以下である場合、反射防止特性を有すると判断し、反射率が5%超過である場合、反射防止特性を有さないと判断した。
「たわし擦り」(耐傷性評価)については、亀の子たわしを用いて、2Kgの荷重で250回往復擦り試験を行った。ここで、試料の反射率変化が2%未満である場合、評価を符号○とし、反射率変化が2%以上である場合、評価を符号×とした。
表4に示すように、金属マスクの厚みを1nm以上30nm以下とすることにより、光触媒効果、塩水耐性、超親水性、反射防止特性、及び耐傷性の評価が良好となった。また、光学素子に最上層を設けることにより、たわし擦り試験の結果が良好であり、光学素子が耐傷性を有することがわかる。なお、比較例1において、金属マスクの厚みを31nmとすると、通孔が機能層の表面まで到達せず光触媒機能が十分に発揮されないため、光触媒効果の評価が不良となった。また、比較例2において、金属マスクの厚みが薄く、金属マスクの露出部が多くなり、最上層の通孔密度が高くなりすぎるため、超親水性と反射率の評価が不良となった。
(2)光学素子のSEM画像
図6A~6Cに、光学素子のSEM画像を示す。図6Bは、図6Aの画像を拡大した図であり、図6Cは、図6Bの画像をさらに拡大した図である。
本実施例において、金属マスクは、スパッター法を用いてAgで形成した。本試料において、TiO層の厚みを282.2nmとし、SiO層の厚みを87.2nmとし、Ag層の厚みを10nmとした。通孔形成工程において、最上層のSiOを90秒ドライエッチングした。エッチングガスには、CHFを用いた。通孔形成工程後、マスク除去工程を行った。
図6C等に示すように、通孔形成工程により、最上層に深い孔が形成され、孔の面積も増加した。また、上述の実施例と同様に、光触媒機能の評価を行った結果、本試料の光触媒機能は維持されていた。つまり、通孔が機能層の表面まで到達して機能層の表面が露出しており、光触媒機能を発揮しているといえる。
以上では、具体的な実施形態としての光学素子及びその製造方法について説明したが、本発明に係る光学素子の製造方法等は、上記のものには限られない。例えば、上記実施形態において、金属マスク50をAgやAlで形成したが、粒子状、島状、又はポーラス状の薄膜を形成できるものであれば、他の金属で形成してもよい。
また、上記実施形態において、最上層10や機能層20の膜厚は、条件式(1)及び(2)の範囲に限らず、反射防止等の光学設計に応じて適宜変更することができる。
また、上記実施形態において、多層膜MCは、可視域の光、近赤外域の光のいずれか1つ以上を反射する金属膜又は誘電体多層膜を有してもよい。この場合、光学素子は、反射特性を有するものとなる。ここでの「反射特性」とは、可視域又は近赤外域において光の反射率が70%以上であり、望ましくは85%以上であることをいう。金属膜を用いる場合、Ag、Au、Cr、Al、Cu、及びNiのいずれかを主成分とすると好ましい。これらを適宜用いることで、使用可能域や反射率を任意に調整できる。「主成分とする」とは、当該元素の含有量が51重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは100重量%であることを意味する。
また、上記実施形態において、高屈折率層Hのうち少なくとも1層は、Ti,Ta、Hf、Zr、及びNbのいずれかを主成分とする特定材料から形成されてもよい。耐酸性向上に効果のある物質として、特にTi,Ta、Hf、Zr、及びNbの酸化物がある。「主成分とする」とは、当該元素の含有量が51重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%、さらに好ましくは100重量%であることを意味する。多層膜にTa、Hf、Zr、及びNbを主成分とする素材を用い適切な膜厚を設けることで十分な耐酸性を有するため、酸に弱いガラス基材GLにも設けることができる。

Claims (5)

  1. 光透過性を有する基板に2層以上の多層膜を成膜した光学素子の製造方法であって、
    前記多層膜は、少なくとも1層の低屈折率層と、少なくとも1層の高屈折率層とを有し、
    前記基板から最も遠い低屈折率層は、塩水噴霧耐性と超親水性とを有し、
    前記基板から最も遠い低屈折率層となる最上層一様に形成する最上層形成工程と、
    前記最上層の下に、機能層として光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする前記高屈折率層を形成する機能層形成工程と、
    前記最上層形成工程後、前記最上層の表面にランダムな形状及び配置の要素からなる島状の金属マスクを成膜するマスク形成工程と、
    前記金属マスクを用いたエッチングにより、前記最上層において前記機能層の表面を露出させ前記金属マスクを反転したランダムな島状通孔構造を形成する通孔形成工程と、
    を備え、
    前記最上層形成工程で形成される前記最上層としての屈折率層の膜密度は、98%以上であり、
    前記金属マスクの膜厚は、1nm以上30nm以下である、
    光学素子の製造方法。
  2. 前記最上層は、主にSiOで形成される、請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記通孔形成工程において、SiOと反応するガスを用いて孔を形成する、請求項2に記載の光学素子の製造方法。
  4. 前記通孔形成工程後、前記金属マスクを除去するマスク除去工程をさらに備える、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
  5. 前記金属マスクは、Agで形成される、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の光学素子の製造方法。
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