本発明のポリイミドフィルムは、無色透明である可溶性ポリイミドを含有するポリイミドフィルムであって、分子内に芳香環を有する有機系添加剤を0.1〜40質量%の範囲内で含有することを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記有機系添加剤として、ポリエステル、糖エステル及びイミド系化合物から選択される化合物を含有することが、湿度環境が変化した際の寸法変化の改善効果が大きく、好ましい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、少なくとも前記無色透明である可溶性ポリイミドと前記有機系添加剤を低沸点溶媒に溶解してドープを調製し、当該ドープを用いて溶液流延製膜方法によって製膜することが、有機系添加剤の分解・ブリードアウトを抑制する観点から好ましい製造方法である。また、前記低沸点溶媒がジクロロメタンであることが、前記効果を高める観点からより好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは、フレキシブルプリント基板、フレキシブルディスプレイ用基板、フレキシブルディスプレイ用前面板、LED照明装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置に好適に具備される。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪本発明のポリイミドフィルムの概要≫
本発明のポリイミドフィルムは、無色透明である可溶性ポリイミドを含有するポリイミドフィルムであって、分子内に芳香環を1つ以上有する有機系添加剤を0.1〜40質量%の範囲内で含有することを特徴とする。当該有機系添加剤の好ましい添加量は、5〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。有機系添加剤の添加量が0.1質量%未満では、本発明の湿度環境変動によるソリの発生を抑制する効果が不十分であり、40質量%を超えるとポリイミドとの相溶性が低下し、透明度の低下やソリ抑制の効果が不十分になる。
ここで、本発明でいう「無色透明」とは、前記可溶性ポリイミドを用いてポリイミドフィルムを形成したときに、フィルムの全光線透過率、イエローインデックス値(YI値)が下記に挙げる条件を満たすときに「無色透明」であると定義する。
(全光線透過率)
本発明に係るポリイミドをジクロロメタンに1〜30質量%の範囲の固形分濃度で溶液にして、乾燥膜厚50μmになるように流延し、剥離後140℃30分乾燥してサンプルを作製する。
フィルム試料の全光線透過率は、23℃・55RHの空調室で24時間調湿した試料1枚をJIS K−7375:2008に従って、23℃・55RHの環境下、ヘイズメーター(NDH2000型、日本電色工業(株)製)又は分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製U−3300)等を使用して測定する。
本発明のポリイミドフィルムは、可視光領域(光波長400〜700nmの範囲)における全光線透過率が80%以上であるときに「透明」といい、当該全光線透過率は本発明のポリイミドフィルムを表示装置や有機エレクトロルミネッセンス素子に具備する観点から、85%以上であることがより好ましい。
従来ポリイミドフィルムは、耐熱性に優れるが高い芳香環密度により、茶色又は黄色に色を呈し可視光線領域での透過率が低く、透明性が要求される分野に用いることは困難であった。したがって、透明性が要求される分野においては、着色の程度を表すYI値(イエローインデックス:黄色味の指数)が一定の値以下であることが必要であり、厚さ50μmのサンプルにおいて、4.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.3〜2.0の範囲内であり、特に好ましくは0.3〜1.6の範囲内である。当該YI値の範囲を満たすときに、「無色」であるという。前記YI値の範囲を達成するには、後述する特定の構造を有するポリイミド及びポリイミドフィルムの製造方法を採用することが好ましい。
前記イエローインデックス値は、JIS K−7103に定められているフィルムのYI(イエローインデックス:黄色味の指数)に従って求めることができる。
具体的なイエローインデックス値の測定方法としては、上記厚さ50μmのサンプルを作製し、(株)日立ハイテクノロジーズの分光光度計U−3300と附属の彩度計算プログラム等を用いて、JIS Z8701に定められている光源色の三刺激値X、Y、Zを求め、下式に従ってイエローインデックス値を求める。
イエローインデックス値(YI値)=100(1.28X−1.06Z)/Y
さらに「可溶性ポリイミド」とは、25℃において、ジクロロメタン100gに対して1g以上溶解可能であるポリイミドをいう。
<本発明のポリイミドフィルムの構成>
以下、本発明のポリイミドフィルムに用いることのできる、無色透明である可溶性ポリイミド及び分子内に芳香環を有する有機系添加剤について説明する。
〔1〕無色透明である可溶性ポリイミド
本発明に好ましく用いることのできる無色透明である可溶性ポリイミドとして、以下の材料を用いることが好ましい。
〔1.1〕ポリイミド1:フルオレン骨格を有するポリイミド
本発明のポリイミドフィルムは、ポリイミド特有の着色を改善するのに、フルオレン骨格を有するポリアミド酸又はポリイミドを含有することが好ましい。フルオレン骨格を有するポリアミド酸又はポリイミドは、ジアミン又はその誘導体と酸無水物又はその誘導体とから形成され、当該ジアミン又は酸無水物のいずれか一方がフルオレン骨格を有する化合物である。
なお、本発明でいうフルオレン骨格とは、以下の構造をいう。
市販のポリイミドフィルムは、分子間又は分子内の電荷移動相互作用に由来する可視光領域の吸収により、黄色から褐色に着色しているという問題がある。また、上記フィルムは、フィルム状に成形するのに、高温での熱処理を要するなど、プロセス負荷が高く成形性が低いという問題がある。具体的には、上記フィルムを形成するポリイミドは有機溶媒に対する溶解性が低く、ポリイミドをそのまま用いてフィルムを形成することが難しい。そのため、前記ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸の有機溶媒溶液を用い、支持体への流延などによりフィルム状の塗膜とした後、該塗膜を400℃程度の高温で熱処理することにより、塗膜中のポリアミド酸をイミド化し、ポリイミドからなるフィルムを得る必要がある。したがって着色が強いという問題があった。
本発明では、フルオレン骨格を有するポリアミド酸又はポリイミドを用いることによって、前記着色の問題を改善することができる。
本発明に用いることのできるポリイミド又はポリアミド酸としては、特に、下記一般式(1.1)で表される繰り返し単位を有するポリイミド(以下、ポリイミド(A)と称する。)又は下記一般式(1.2)で表される繰り返し単位を有するポリアミド酸(以下、ポリアミド酸(A′)と称する。)が好ましい。
一般式(1.1)及び(1.2)中、Rは、芳香族炭化水素環若しくは芳香族複素環、又は、炭素数4〜39の4価の脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基である。Φは、炭素数2〜39の2価の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらの組み合わせからなる基であって、結合基として、−O−、−SO2−、−CO−、−CH2−、−C(CH3)2−、−OSi(CH3)2−、−C2H4O−及び−S−からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を含有していても良い。
Rで表される芳香族炭化水素環としては、例えば、フルオレン環、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
また同様に、Rで表される芳香族複素環としては、例えば、シロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、チエノチオフェン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、ジベンゾシロール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾチオフェン環やジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わった環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、アクリジン環、ベンゾキノリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ジベンゾカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジチエノベンゼン環等が挙げられる。
Rで表される炭素数4〜39の4価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブタン−1,1,4,4−トリイル基、オクタン−1,1,8,8−トリイル基、デカン−1,1,10,10−トリイル基等の基が挙げられる。
また、Rで表される炭素数4〜39の4価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタン−1,2,3,4−テトライル基、シクロペンタン−1,2,4,5−テトライル基、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトライル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトライル基、3,3′,4,4′−ジシクロヘキシルテトライル基、3,6−ジメチルシクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基、3,6−ジフェニルシクロヘキサン−1,2,4,5−テトライル基等の基が挙げられる。
Φで表される上記結合基を有する又は有さない炭素数2〜39の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
上記構造式において、nは、繰り返し単位の数を表し、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。また、Xは、炭素数1〜3のアルカンジイル基、つまり、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基であり、メチレン基が好ましい。
Φで表される上記結合基を有する又は有さない炭素数2〜39の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
Φで表される上記結合基を有する又は有さない炭素数2〜39の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
Φで表される脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基の組み合わせからなる基としては、例えば、下記構造式で表される基が挙げられる。
Φで表される基としては、結合基を有する炭素数2〜39の2価の芳香族炭化水素基、又は該芳香族炭化水素基と脂肪族炭化水素基の組み合わせであることが好ましく、特に、以下の構造式で表される基が好ましい。
ポリアミド酸(A′)は、上記のとおり、ポリイミド(A)のイミド結合の一部が解離した構造に当たり、ポリアミド酸(A′)の詳細説明はポリイミド(A)に対応させて考えることができるため、以下、代表的にポリイミド(A)について詳細に説明する。
前記一般式(1.1)で表される繰り返し単位は、全ての繰り返し単位に対して好ましくは10〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、更に好ましくは80〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。また、ポリイミド(A)1分子中の一般式(1.1)の繰り返し単位の個数は、10〜2000、好ましくは20〜200であり、この範囲において、更にガラス転移温度が230〜350℃であることが好ましく、250〜330℃であることがより好ましい。
ポリイミド(A)は、ジアミン又はその誘導体と、酸無水物又はその誘導体から形成され、当該ジアミン又は酸無水物のいずれか一方がフルオレン骨格を有する化合物である。
フルオレン骨格を有するポリイミド(A)中には、当該ジアミン又はその誘導体、又は酸無水物又はその誘導体由来のフルオレン骨格を50モル%以下含有することが好ましく、着色を低減する効果を発現するために、より好ましくは20〜50モル%の範囲内であり、30〜50モル%の範囲内がさらに好ましい。
本発明に用いられる酸無水物のうち、フルオレン骨格を有しない酸無水物としてはカルボン酸無水物であり、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸の誘導体であることが好ましく、例えば、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸エステル類、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。なお、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸又はその誘導体のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
ここで、誘導体とは、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸に変化しうる化合物であり、例えば、脂肪族テトラカルボン酸二無水物の場合、当該無水物に代えて2つのカルボキシ基を有する化合物、これら2つのカルボキシ基の中の片方又は両方がエステル化されたエステル化物である化合物、又はこれら2つのカルボキシ基の中の片方又は両方がクロル化された酸クロライド等が好適に用いられる。
このようなアシル化合物を用いることにより、高い耐熱性と優れた光学特性とを有し、着色(黄変)の少ないフィルムを得ることができる。
脂肪族テトラカルボン酸としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸エステル類としては、例えば、上記脂肪族テトラカルボン酸のモノアルキルエステル、ジアルキルエステル、トリアルキルエステル、テトラアルキルエステルが挙げられる。脂環式テトラカルボン酸エステル類としては、例えば、上記脂環式テトラカルボン酸のモノアルキルエステル、ジアルキルエステル、トリアルキルエステル、テトラアルキルエステルが挙げられる。なお、アルキル基部位は、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜3のアルキル基であることがより好ましい。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。特に好ましくは、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である。一般に、脂肪族ジアミンを構成成分とするポリイミドは、中間生成物であるポリアミド酸とジアミンが強固な塩を形成するため、高分子量化するためには塩の溶解性が比較的高い溶媒(例えばクレゾール、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等)を用いることが好ましい。ところが、脂肪族ジアミンを構成成分とするポリイミドでも、1,2,4,5−シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物を構成成分としている場合には、ポリアミド酸とジアミンの塩は比較的弱い結合で結ばれているので、高分子量化が容易で、フレキシブルなフィルムが得られ易い。
他にも、例えば、4,4′−ビフタル酸無水物、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4′−オキシジフタル酸無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(ピグメントレッド224)1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物トリシクロ[6.4.0.02,7]ドデカン−1,8:2,7−テトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。
芳香族、脂肪族若しくは脂環式テトラカルボン酸又はその誘導体は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。また、ポリイミドの溶媒可溶性、フィルムのフレキシビリティ、熱圧着性、透明性を損なわない範囲で、他のテトラカルボン酸又はその誘導体(特に二無水物)を併用しても良い。
かかる他のテトラカルボン酸又はその誘導体としては、例えば、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン等の芳香族系テトラカルボン酸及びこれらの誘導体(特に二無水物);エチレンテトラカルボン酸等の炭素数1〜3の脂肪族テトラカルボン酸及びこれらの誘導体(特に二無水物)等が挙げられる。
本発明に用いられる酸無水物のうち、フルオレン骨格を有する酸無水物としては、例えば、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−2−フェニルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−2−フェニルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−2−メチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−2−メチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−エチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−3−エチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−2−エチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−2−エチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−プロピルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−3−プロピルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−2−プロピルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−2−プロピルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−ブチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−3−ブチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−2−ブチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−2−ブチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−t−ブチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−3−t−ブチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−2−t−ブチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−2−t−ブチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、等を挙げることができる。これらの芳香族ビス(エーテル酸無水物)化合物のうち、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−2−フェニルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン酸二無水物、9,9−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)−2−メチルフェニル〕フルオレン酸二無水物等を挙げることができる。
中でも、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、又は9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物を用いることが、耐熱性、透明性の観点で好ましい。
ジアミン又はその誘導体としては、例えば、芳香族ジアミン又はイソシアン酸エステル等が好ましく、芳香族ジアミンが好ましい。
前述のとおり、本発明に用いられるフルオレン骨格を有するポリアミド酸又はポリイミドは、ジアミン又はその誘導体と、酸無水物又はその誘導体から形成され、当該ジアミン又は酸無水物のいずれか一方がフルオレン骨格を有する化合物である。フルオレン骨格を有するジアミン又はその誘導体である場合は、フルオレン骨格を有する芳香族ジアミン又はイソシアン酸エステルであることが好ましい。
本発明に用いられるジアミン又はその誘導体のうち、フルオレン骨格を有しないジアミン又はその誘導体としては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン又はこれらの混合物のいずれでも良く、芳香族ジアミンであることがフィルムの白化を抑制できる観点から、好ましい。
なお、本発明において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香族環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、その他の置換基(例えば、ハロゲン原子、スルホニル基、カルボニル基、酸素原子等。)を含んでいても良い。「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香族炭化水素基、その他の置換基(例えば、ハロゲン原子、スルホニル基、カルボニル基、酸素原子等。)を含んでいても良い。
芳香族ジアミンの例としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノビフェニル、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(2−メチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−メチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、α,α′−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(3−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(3−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)4−メチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)ノルボルナン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)アダマンタン、1,1−ビス(2−メチル−4−アミノフェニル)アダマンタン、1,1−ビス(2,6−ジメチル−4−アミノフェニル)アダマンタン、1,4−フェニレンジアミン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3−アミノベンジルアミン、2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、ビス(2−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−エチレンジアニリン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4′−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−イソプロピル)ベンゼン、1,3−ビス(2−アミノ−イソプロピル)ベンゼン、イソフォロンジアミン、ノルボルナンジアミン、シロキサンジアミン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,3−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,2−ビス(4,4′−ジアミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4′−ジアミノメチルシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
ジアミン誘導体であるイソシアン酸エステルとしては、例えば、上記芳香族又は脂肪族ジアミンとホスゲンを反応させて得られるジイソシアネートが挙げられる。
また、他のジアミン誘導体としては、ジアミノジシラン類も挙げられ、例えば上記芳香族又は脂肪族ジアミンとクロロトリメチルシランを反応させて得られるトリメチルシリル化した芳香族又は脂肪族ジアミンが挙げられる。
以上のジアミン及びその誘導体は任意に混合して用いても良いが、それらの中におけるジアミンの量が50〜100モル%となることが好ましく、80〜100モル%となることがより好ましい。
本発明に用いられるジアミン又はその誘導体のうち、フルオレン骨格を有するジアミン又はその誘導体としては、芳香族ジアミンであることが好ましく、例えば、9,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−エチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−i−プロピルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−t−ブチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフロオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−4−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−5−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−6−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、
9,9−ビス〔4−(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−メチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−フェニルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、
9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−メチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−エチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−n−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−i−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−t−ブチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−メチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−メチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−メチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−メチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−エチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−エチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−エチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−エチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−n−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−n−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−n−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−n−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−i−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−i−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−i−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−i−プロピルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−t−ブチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−t−ブチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−t−ブチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−t−ブチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、
9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−エチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3−エチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3−エチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3−エチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3−エチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−エチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−トリフルオロメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3,5−ジエチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3,5−ジエチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3,5−ジエチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3,5−ジエチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3,5−ジエチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3,5−ジエチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3,5−ジ−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3,5−ジ−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3,5−ジ−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3,5−ジ−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3,5−ジ−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3,5−ジ−n−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3,5−ジ−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3,5−ジ−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3,5−ジ−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3,5−ジ−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3,5−ジ−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3,5−ジ−i−プロピルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3,5−ジ−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3,5−ジ−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3,5−ジ−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3,5−ジ−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3,5−ジ−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3,5−ジ−t−ブチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル〕フルオレン、
9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−メチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−メチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−メチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−メチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−3−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(2−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−2−メチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−4−メチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−5−メチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−6−メチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−2−エチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−4−エチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−5−エチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−6−エチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−2−n−プロピルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−4−n−プロピルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−5−n−プロピルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−6−n−プロピルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−2−i−プロピルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−4−i−プロピルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−5−i−プロピルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−6−i−プロピルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−2−t−ブチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−4−t−ブチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−5−t−ブチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−6−t−ブチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−5−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン、9,9−ビス〔4−(3−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−3−メチルフェニル〕フルオレン等が挙げられる。
本発明に用いられるフルオレン骨格を有するポリアミド酸又はポリイミドは、ジアミン又はその誘導体と、酸無水物又はその誘導体として、前記ジアミンが、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ3−メチルフェニル)フルオレン又は9,9−ビス(3−フルオロ−4−アミノフェニル)フルオレンのいずれかであることが好ましく、前記酸無水物が、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物又は9,9−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン酸二無水物のいずれかであることが非着色性、白化及び折り曲げ耐性を向上する観点から、好ましい。
ポリアミド酸は、適当な溶媒中で、前記テトラカルボン酸類の少なくとも1種類と、前記ジアミン類の少なくとも1種類を重合反応させることにより得られる。
また、ポリアミド酸エステルは、前記テトラカルボン酸二無水物を、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール等のアルコールを用いて開環することによりジエステル化し、得られたジエステルを適当な溶媒中で前記ジアミン化合物と反応させることにより得ることができる。更に、ポリアミド酸エステルは、上記のように得られたポリアミド酸のカルボン酸基を、上記のようなアルコールと反応させることによりエステル化することによっても得ることができる。
前記テトラカルボン酸二無水物と、前記ジアミン化合物との反応は、従来知られている条件で行うことができる。テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の添加順序や添加方法には特に限定はない。例えば、溶媒にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを順に投入し、適切な温度で撹拌することにより、ポリアミド酸を得ることができる。
ジアミン化合物の量は、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、通常0.8モル以上、好ましくは1モル以上である。一方、通常1.2モル以下、好ましくは1.1モル以下である。ジアミン化合物の量をこのような範囲とすることにより、得られるポリアミド酸の収率が向上し得る。
溶媒中のテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の濃度は、反応条件やポリアミド酸溶液の粘度に応じて適宜設定する。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との合計の質量は、特段の制限はないが、全溶液量に対し、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、一方、通常70質量%以下、好ましくは30質量%以下である。反応基質の量をこのような範囲とすることにより、低コストで収率良くポリアミド酸を得ることができる。
反応温度は、特段の制限はないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上であり、一方、通常100℃以下、好ましくは80℃以下である。反応時間は、特段の制限はないが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上であり、一方、通常100時間以下、好ましくは24時間以下である。このような条件で反応を行うことにより、低コストで収率良くポリアミド酸を得ることができる。
この反応で用いられる重合溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等の炭化水素系溶媒;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びフルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及びメトキシベンゼン等のエーテル系溶媒;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の非プロトン系極性溶媒;ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン及びイソキノリン等の複素環系溶媒;フェノール及びクレゾールのようなフェノール系溶媒、等が挙げられるが、特に限定されるものではない。重合溶媒としては、1種のみを用いることもできるし、2種類以上の溶媒を混合して用いることもできる。
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加して重合反応を制御しても良い。
ポリイミドは、ポリアミド酸溶液を流延したフィルムに対して加熱処理を行うか、閉環触媒を混合したポリアミド酸溶液を支持体上に流延してイミド化させるか、又は溶液中でポリアミド酸を閉環してイミド化したものを溶液流延、乾燥することにより得られる。閉環触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン及びイソキノリン、ピリジン、ピコリン等の複素環式第3級アミン等が挙げられるが、複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも1種のアミンを使用することが好ましい。ポリアミド酸に対する閉環触媒の含有量は、閉環触媒の含有量(モル)/ポリアミド酸の含有量(モル)が、0.5〜8.0となる範囲が好ましい。
上記のようにして構成されるポリアミド酸又はポリイミドは、フィルムを形成する観点から、重量平均分子量30000〜1000000のものを用いることが好ましい。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によるポリエチレングリコール換算の値のことをいう。
また、閉環したポリイミドを、貧溶媒などを用いて再沈殿、精製して固体にしてから溶媒に溶解し流延乾燥して製膜を行っても良い。
この方法によれば、重合溶剤と流延する溶剤とを異なる種類とすることが可能となり、それぞれに最適な溶剤を選択することで、ポリイミドフィルムの性能をより引き出すことが可能になる。
例えば、ポリアミド酸を高分子量化させるためにジメチルアセドアミドを用いて重合、閉環し、メタノールを用いて固体化、乾燥したのちにジクロロメタンで添加剤を入れた溶液化してから流延、乾燥することで、高分子量化と低温乾燥が可能となる。
また、溶剤としてジクロロメタンを使う場合、他の溶剤と組み合わせて使用することができる。テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γブチロラクトン、エタノール、メタノール、ブタノール、イロプロパノールなど、適宜補助溶剤を使用することもできる。
また、ポリアミド酸は、流延時においてイミド化されていても良く、流延時のイミド化率としては10〜100%であることが好ましい。ここで、イミド化率としては、1H−NMRスペクトルからカルボキシ基残量を測定し、イミド化率を求めることができる。
〔1.2〕ポリイミド2
本発明のポリイミドフィルムに好ましく用いることのできる無色透明なポリイミド2(以下、ポリイミド共重合体ともいう。)としては、(A)4,4′−オキシジフタル酸二無水物及び/又は、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物と、(B)下記一般式(2.1)〜(2.3)で表される一種以上のジアミン及び/又はジイソシアネートと、を共重合してなるものであることが好ましい。
(式中、Xはアミノ基又はイソシアネート基、R
1〜R
8は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜4のアルケニル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基であり、R
1〜R
8のうち少なくとも一つは水素原子ではない。)
上記ポリイミド共重合体は、従来のポリイミドと比較して耐熱性、透明性及び耐熱黄変性に優れ、また、貯蔵安定性、機械的強度にも優れているという利点も有している。
ポリイミド共重合体の末端基は、アミン末端でないことが好ましい。アミン末端としないことにより、ポリイミド共重合体の末端基がアミノ基である場合にイミドカルボニル基と相互作用して電荷移動錯体を形成しやすくなる、という点を回避できる。また、アミノ基は酸化を受けやすく、経時的な酸化によって発色団を形成し透明性や耐熱黄変性を低下させる、という点を回避することもできる。
具体的には、以下に示す方法により、上記ポリイミド共重合体の末端基をアミン末端でない状態にすることができる。
ポリイミド共重合体の末端基は、合成時の酸二無水物とジアミン及び/又はジイソシアネートのどちらか一方を過剰に用いることによって、酸無水物基とアミノ基を任意に選ぶことができる。
末端基を酸無水物末端とした場合には、その後の処理をおこなわず酸無水物末端のままでも良く、加水分解させてジカルボン酸としても良い。また、炭素数が4以下のアルコールを用いてエステルとしても良い。さらに、単官能のアミン化合物及び/又はイソシアネート化合物を用いて末端を封止してもよい。ここで用いるアミン化合物及び/又はイソシアネート化合物としては、単官能の第一級アミン化合物及び/又はイソシアネート化合物であれば、特に制限はなく用いることができる。例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、トリメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニリン、トリエチルアニリン、アミノフェノール、メトキシアニリン、アミノ安息香酸、ビフェニルアミン、ナフチルアミン、シクロヘキシルアミン、フェニルイソシアナート、キシリレンイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、メチルフェニルイソシアネート、トリフルオロメチルフェニルイソシアネート等を挙げることができる。
また、末端基をアミン末端とした場合には、単官能の酸無水物によって、末端アミノ基を封止することで、アミノ基が末端に残ることを回避できる。ここで用いる酸無水物としては、加水分解した際にジカルボン酸又はトリカルボン酸となる単官能の酸無水物であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、マレイン酸無水物、メチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、コハク酸無水物、ノルボルネンジカルボン酸無水物、4‐(フェニルエチニル)フタル酸無水物、4‐エチニルフタル酸無水物、フタル酸無水物、メチルフタル酸無水物、ジメチルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ナフタレンジカルボン酸無水物、7‐オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン‐2,3‐ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−オキサトリシクロ[5.2.2.02,6]ウンデカン−3,5−ジオン、オクタヒドロ−1,3−ジオキソイソベンゾフラン−5−カルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ジメチルシクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,2,3,6‐テトラヒドロフタル酸無水物、メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等を挙げることができる。
(B)成分としては、一般式(2.1)又は(2.2)中のR1〜R4のうち2個がエチル基であり、残り2個がメチル基と水素原子であるジエチルトルエンジアミン(DETDA)が好ましい。また、一般式(2.3)中のR5〜R8のうち炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
これらの単環又は二環の原材料を用いることにより、ポリイミド共重合体主鎖中のイミド基濃度を上げることができ、かつ、アミノ基のオルト位に嵩高い置換基を導入することによって分子間相互作用を弱めることで電荷移動錯体の形成を阻害し、透明性と溶媒可溶性を両立させることができる。
前記ポリイミド共重合体を共重合するに当たっては、前記(A)と前記(B)成分に加えて、(C)第2の酸二無水物、及び/又は(D)第2のジアミン及び/又はジイソシアネート、を共重合してなるものであってもよい。
(C)第2の酸二無水物としては、従来ポリイミドの製造に用いられてきた酸二無水物であれば特に制限はなく用いることができる。例えば、一般芳香族系酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2′,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2′,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,4′−オキシジフタル酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、3,3′−オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3′,4′−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−2,3,3′,4′−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−2,3,2′,3′−テトラカルボン酸二無水物、4,4′−[イソプロピリデンビス[(1,4−フェニレン)オキシ]]ジフタル酸二無水物、5,5′−イソプロピリデンビス(フタル酸無水物)、3,5′−イソプロピリデンビス(フタル酸無水物)、3,3′−イソプロピリデンビス(フタル酸無水物)、4,4′−(1,4−フェニレンビスオキシ)ビスフタル酸二無水物、4,4′−(1,3−フェニレンビスオキシ)ビスフタル酸二無水物、5,5′−[オキシビス(4,1−フェニレンオキシ)]ビスフタル酸二無水物、5,5′−[スルホニルビス(4,1−フェニレンオキシ)]ビスフタル酸二無水物等を挙げることができる。また、含ケイ素系酸二無水物としては、4,4′−(ジメチルシリレン)ビス(フタル酸)1,2:1′,2′−二無水物、4,4′−(メチルエチルシリレン)ビス(フタル酸)1,2:1′,2′−二無水物、4,4′−[フェニル(メチル)シリレン]ビスフタル酸1,2:1′,2′−二無水物、4,4′−ジフェニルシリレンビスフタル酸1,2:1′,2′−二無水物等を挙げることができる。含フッ素系酸二無水物としては、4,4′−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、3,4′−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、3,3′−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4′−[2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデンビス[(1,4−フェニレン)オキシ]]ジフタル酸二無水物等を挙げることができる。フルオレンカルド構造系酸二無水物としては、5,5′−[9H−フルオレン−9,9−ジイルビス(4,1−フェニレンオキシ)]ビス(イソベンゾフラン−1,3−ジオン)、5,5′−[9H−フルオレン−9,9−ジイルビス(1,1′−ビフェニル−5,2−ジイルオキシ)]ビス(イソベンゾフラン−1,3−ジオン)等を挙げることができる。エステル系酸二無水物としては、エチレングリコール−ビス(トリメリテート無水物)、1,4−フェニレンビス(トリメリテート無水物)1,3−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、1,2−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、ビス(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソイソベンゾフラン−5−カルボン酸)−2−アセトキシプロパン−1,3−ジイル、5,5′−[エチレンビス(オキシ)]ビス(イソベンゾフラン−1,3−ジオン)、ビス(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸)オキシビス(メチレンオキシメチレン)、4,4′−[イソプロピリデンビス(4,1−フェニレンオキシカルボニル)]ビスフタル酸二無水物等を挙げることができる。
脂肪族系酸二無水物としては、1,1′−ビシクロヘキサン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、1,1′−ビシクロヘキサン−2,3,3′,4′−テトラカルボン酸二無水物、1,1′−ビシクロヘキサン−2,3,2′3′−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸−2,3:5,6−二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸−2,3:5,6−二無水物、ヘキサデカヒドロ−3a,11a−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3,4−ジイル)フェナントロ[9,10−c]フラン−1,3−ジオン等を挙げることができる。
脂肪族エステル系酸二無水物としては、ビス(1,3−ジオキソ−1,3,3a,4,5,6,7,7a−オクタヒドロイソベンゾフラン−5−カルボン酸)ビフェニル−4,4′−ジイル、ビス(1,3−ジオキソ−1,3,3a,4,5,6,7,7a−オクタヒドロイソベンゾフラン−5−カルボン酸)1,4−フェニレン、ビス(1,3−ジオキソ−1,3,3a,4,5,6,7,7a−オクタヒドロイソベンゾフラン−5−カルボン酸)−2−メチル−1,4−フェニレン等を挙げることができる。この中で、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸−2,3:5,6−二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、4,4′−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、が耐熱性、溶媒可溶性及び入手容易性の観点から好ましい。
なお、(C)第2の酸二無水物としては、一種で用いてもよいが、二種以上の酸二無水物を混合して用いてもよく、(C)第2の酸二無水物の量としては、(A)成分1モルに対して2モル以下が好ましい。
この場合、(D)第2のジアミン及び/又はジイソシアネートとしては、通常、ポリイミド共重合体の製造に用いられるものを用いることができる。
上記(B)成分と同一のもの以外に、例えば、(D)第2のジアミン及び/又はジイソシアネートとして、下記一般式(2.4)〜(2.21)
(式中、Xはそれぞれ独立して−NH
2、−NCO、−CH
2NH
2、−CH
2NCOを、R
1〜R
8はそれぞれ独立して、H、C=1〜4のアルキル基、C=1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、又はアリール基、R
9〜R
12はそれぞれ独立してC=1〜4のアルキル基又はアリール基をYはそれぞれ独立して、
R
21及びR
22はそれぞれ独立してH、C=1〜4のアルキル基、C=2〜4のアルケニル基、C=1〜4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はトリフルオロメチル基である)で表される群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
なお、(D)第2のジアミン及び/又はジイソシアネートとして、上記(B)成分と異なるものを用いる場合は、その量は、(B)成分1モルに対して2モル以下が好ましい。
ポリイミド共重合体は、(A)成分と(B)成分とを共重合させて得られる。また、(A)成分と(B)成分とを共重合させて、まず、重量平均分子量が700〜80000程度のポリイミド共重合体ユニットとし、得られたポリイミド共重合体ユニットに対して、(C)第2の酸二無水物、及び/又は(D)第2のジアミン及び/又はジイソシアネート、を共重合させてもよい。
本発明のポリイミド共重合体においては、重量平均分子量は20000〜200000が好ましく、35000〜150000がより好ましい。ポリイミド共重合体の重量平均分子量が上記範囲内であると、取り扱い性に優れる。
前記透明ポリイミド共重合体の製造方法は、150〜200℃の温度範囲で1〜200時間の範囲で熱的に脱水閉環する熱イミド化法、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン又はキノリン等の脱水剤を用いる化学イミド化法等の公知のいずれの方法を用いてもよい。
〔1.3〕ポリイミド3:脂環式ポリイミド
本発明に係るポリイミドとして、下記式(3.1)又は(3.2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含むポリイミド3:脂環式ポリイミドであることが好ましい。
上記脂環式ポリイミドは、下記一般式(3.3)で表される、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロアルカノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン類を用いて製造される脂環式テトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとを重合させて得られる。
(式中、R
1、R
2、R
3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を表す。)
このような一般式(3.3)で表される5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロアルカノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン類(簡単に、ビス(スピロノルボルネン)類ともいう。)からテトラカルボン酸二無水物を製造し、これを用いて脂環式ポリイミドを製造した場合に、十分に高度な耐熱性を示す脂環式ポリイミドが得られる理由は、その構造中にポリイミドの耐熱性を向上させ得ることが可能であり且つ重合反応を阻害しない極性基であるケトン基を有し、しかも、その構造上、ケトン基含有ノルボルネンのケトンに隣接する炭素原子に活性なα水素が残存していないため、一般式(3.1)で表されるビス(スピロノルボルネン)類は化学的に十分に安定な構造を有するものとなり、これを用いてポリイミドを製造した場合に、より高度な耐熱性が達成されるものと推察される。
前記一般式(3.3)中のR1としては、ポリイミドを製造した際により高度な耐熱性が得られるという観点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、中でも、原料の入手が容易であることや精製がより容易であるという観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、式中の複数のR1は精製の容易さ等の観点から、同一のものであることが特に好ましい。
また、前記一般式(3.3)中のnは0〜12の整数を表す。nの値が前記上限を超えると、前記一般式(3.3)で表されるビス(スピロノルボルネン)類の精製が困難になる。また、このような一般式(3.1)中のnの数値範囲の上限値は、よりビス(スピロノルボルネン)類の精製が容易となるといった観点から、5であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。また、一般式(3.3)中のnの数値範囲の下限値は、原料の安定性の観点から、1であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。一般式(3.3)中のnとしては、2又は3の整数であることが特に好ましい。
また、一般式(3.3)中のR2、R3として選択され得る炭素数1〜10のアルキル基は、R1として選択され得る炭素数1〜10のアルキル基と同様のものである。このようなR2、R3として選択され得る置換基としては、精製の容易さの観点から、上記置換基の中でも、水素原子、炭素数1〜10(より好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3)のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。
一般式(3.3)で表されるビス(スピロノルボルネン)類としては、具体的には、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン(別名「5−ノルボルネン−2−スピロ−2′−シクロペンタノン−5′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン」)、メチル−5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α′−スピロ−2′′−(メチル−5′′−ノルボルネン)、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロヘキサノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン(別名「5−ノルボルネン−2−スピロ−2′−シクロヘキサノン−6′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン」)、メチル−5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロヘキサノン−α′−スピロ−2′′−(メチル−5′′−ノルボルネン)、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロプロパノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロブタノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロヘプタノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロオクタノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロノナノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロデカノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロウンデカノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロドデカノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロトリデカノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロテトラデカノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロペンタデカノン−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−(メチルシクロペンタノン)−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−(メチルシクロヘキサノン)−α′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネン等が挙げられる。
また、このようなビス(スピロノルボルネン)類を用いて、ポリイミドの原料化合物として好適な酸二無水物を製造する方法は特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、1994年に発行されたMacromolecules(27巻)の1117頁に記載されている方法を利用することができる。
芳香族ジアミンとしては、特に制限されるものではなく、前記〔1.1〕項で挙げた芳香族ジアミンを好ましく用いることができる。
一般式(3.3)で表されるビス(スピロノルボルネン)類を用いて製造される脂環式テトラカルボン酸二無水物と、前記芳香族ジアミンを用いて、公知の重合反応によって脂環式ポリイミドを得ることができる。
上記のようにして合成される脂環式ポリイミドは、フィルムを形成する観点から、重量平均分子量は30000〜1000000であることが好ましい。
〔1.4〕ポリイミド4:フッ素系ポリイミド
一般に、ポリイミドは、原料である酸無水物とジアミンとを重合して得られ、下記の一般式(4.1)で表すことができる。
式(4.1)中、Ar1は酸無水物残基である4価の有機基を表し、Ar2はジアミン残基である2価の有機基を表す。耐熱性の観点から、Ar1、Ar2の少なくとも一方は、芳香族残基であることが望ましい。
本発明に係るポリイミドは、ポリイミド4:フッ素系ポリイミドであることが好ましい。ここで、フッ素系ポリイミドとは、ポリイミド構造中にフッ素原子を有するポリイミドを指し、具体的には、ポリイミド原料である酸無水物とジアミンの少なくとも一方の成分においてフッ素含有基を有するものである。このようなフッ素系ポリイミドとしては、例えば、前記の一般式(4.1)で表されるもののうち、式中のAr1が4価の有機基であり、Ar2が下記一般式(4.2)又は(4.3)で表される2価の有機基で表されるものが挙げられる。
上記一般式(4.2)又は(4.3)におけるR1〜R8は、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5までのアルキル基もしくはアルコキシ基、又はフッ素置換炭化水素基である。また、一般式(4.2)において、R1〜R4のうちの少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基である。また、一般式(4.3)において、R1〜R8のうちの少なくとも1つはフッ素原子又はフッ素置換炭化水素基である。このうち、R1〜R8の好適な具体的としては、−H、−CH3、−OCH3、−F、−CF3等が挙げられる。式(4.2)又は(4.3)において、少なくとも1つの置換基は、−F又はCF3であることが好ましい。
フッ素系ポリイミドを形成する際の一般式(4.1)中のAr1の具体例としては、以下のような4価の酸無水物残基が挙げられる。
一般式(4.1)におけるAr2を与える具体的なジアミン残基として好ましいものとしては、以下のものが挙げられる。
本発明に係るフッ素系ポリイミドにおいて、下記の式(4.4)〜(4.9)で表される構造単位のどちらか一方を繰り返し単位として有するポリイミドであることが、透明性と剥離性の他、熱膨張性が低く寸法安定性に優れることからより好ましい。
上記フッ素系ポリイミドは、ポリアミド酸をイミド化して得ることができる。ここで、ポリアミド酸の樹脂溶液は、原料であるジアミンと酸二無水物とを実質的に等モル使用し、有機溶媒中で反応させることによって得ること好ましい。より具体的には、ポリアミド酸の樹脂溶液は、窒素気流下でN,N−ジメチルアセトアミド等の有機極性溶媒にジアミンを溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物を加えて、室温で5時間程度反応させることにより得ることができる。塗工時の膜厚均一化と得られるポリイミドフィルムの機械強度の観点から、得られたポリアミド酸の重量平均分子量は、10000〜300000であることが好ましい。
〔1.5〕ポリイミド5
本発明に係るポリイミドは、ポリイミド5として下記ポリアミド酸組成物を含有することが好ましい。
ポリアミド酸組成物は、 窒素非含有芳香族ジアミン化合物:51モル%以上、99モル%以下、及び窒素含有芳香族ジアミン化合物:1モル%以上、49モル%以下を含むジアミン成分と、芳香族テトラカルボン酸化合物を重合させることによって得られるポリアミド酸を含有するポリアミド酸組成物である。
前記ジアミン成分として窒素非含有芳香族ジアミン化合物と窒素含有芳香族ジアミン化合物とを併用し、窒素含有芳香族ジアミン化合物の量が1モル%以上、49モル%以下の範囲であることによって、得られるポリイミド及びそれを用いたポリイミドフィルムにおいて高弾性と柔軟性を両立させ高い機械強度を実現することができ、好ましい。
上記ポリアミド酸組成物に含有されるポリアミド酸は、窒素非含有芳香族ジアミン化合物:51モル%以上、99モル%以下、及び窒素含有芳香族ジアミン化合物:1モル%以上、49モル%以下を含むジアミン成分と、酸成分としての芳香族テトラカルボン酸化合物を重合させることによって得られる。
前記ポリアミド酸を重合する際に使用されるジアミン成分は高弾性と柔軟性とを両立させ機械強度に優れ、重合時において溶解性の低い窒素含有芳香族ジアミン化合物の溶け残りを抑制するという観点から、窒素非含有芳香族ジアミン化合物:51モル%以上、99モル%以下、及び窒素含有芳香族ジアミン化合物:1モル%以上、49モル%以下を含むことが好ましい。
ジアミン成分中における窒素含有芳香族ジアミン化合物の量は、高弾性と柔軟性とを両立させ機械強度により優れ、重合時において溶解性の低い窒素含有芳香族ジアミン化合物の溶け残りを抑制するという観点から、1モル%以上、49モル%以下であるのが好ましく、さらには1モル%以上、30モル%以下であることが好ましく、さらには1モル%以上、20モル%以下、さらには1モル%以上、20モル%未満であることが好ましい。
ジアミン成分は、窒素含有芳香族ジアミン化合物として、5,4′−ジアミノ−2−フェニルベンゾイミダゾール(DAPBI)を例とするジアミノフェニルベンゾイミダゾール類や、2,5−ジアミノピリジン(DAPY)を例とするジアミノピリジン類などが挙げられるが、それらに限定されるものではなく、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
この窒素含有芳香族ジアミン化合物の導入によって、その剛直な分子構造がポリイミドの高強度化に寄与するとともに、ポリアミド酸のイミド化時に窒素含有芳香環が触媒として作用することでポリイミドのイミド化率を向上させる結果、ポリイミドの機械強度が向上するものと考えられる。
ジアミン成分中における窒素非含有芳香族ジアミン化合物の量は、上記と同様の理由から、51モル%以上、99モル%未満であるのが好ましく、さらには70モル%以上、99モル%以下であることが好ましく、さらには、80モル%以上、99モル%以下であることが好ましく、さらには、80モル%超、99モル%以下であることが好ましい。
窒素非含有芳香族ジアミン化合物としては、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、p−フェニレンジアミン(PDA)、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンなどが例として挙げられるが、それらに限定されるものではなく、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアミド酸を重合する際に使用される酸成分としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、脂環式テトラカルボン酸二無水物などが例として挙げられるが、それらに限定されるものではなく、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記ポリアミド酸組成物はさらに溶媒を含有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。当該ポリアミド酸組成物が含有することができる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド及びジメチルスルホンなどが挙げられ、これらを単独又は混合して使用するのが好ましい。
なお、窒素含有芳香族ジアミン化合物が上記溶媒への溶解性が低い場合は、溶解性を高めるために反応液を50℃以下に加熱しても良い。
前記窒素含有芳香族ジアミン化合物が、イミダゾール環又はピリジン環を有する芳香族ジアミン化合物で、5,4′−ジアミノ−2−フェニルベンゾイミダゾール(DAPBI)及び2,5−ジアミノピリジン(DAPY)からなる群から選択される少なくとも一つ、前記窒素非含有芳香族ジアミン化合物がp−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル及び3,4′−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選択される少なくとも一つであるポリアミド酸又はポリアミド酸組成物が好ましい。
さらに、前記芳香族テトラカルボン酸化合物が、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)及び3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)からなる群から選択される少なくとも一つであるポリアミド酸、又はポリアミド酸組成物が好ましい。
前記ポリアミド酸組成物はその製造について、窒素非含有芳香族ジアミン化合物:51モル%以上、99モル%以下、及び窒素含有芳香族ジアミン化合物:1モル%以上、49モル%以下を含むジアミン成分と、酸成分としての芳香族テトラカルボン酸化合物を重合させること以外は特に制限されない。
ポリアミド酸組成物を製造する際さらに溶媒を用いるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。例えば、溶媒中で酸成分(芳香族テトラカルボン酸類成分)とジアミン成分(芳香族ジアミン成分)とを添加し(酸成分とジアミン成分とはほぼ等モルとなる量で使用することができる。)、これらを混合して混合物とし、混合物を重合することで得られる。混合物は必要に応じて後述する添加剤をさらに含有することができる。
混合物を重合させる条件は特に制限されない。例えば、上記に示した溶媒に、窒素非含有芳香族ジアミン化合物及び窒素含有芳香族ジアミン化合物を含むジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸化合物を添加して得られた混合物を、常温〜50℃の条件下において、大気圧中で撹拌し反応させて、ポリアミド酸の溶液(ポリアミド酸組成物)を製造する方法が挙げられる。
上記製造方法で得られるポリアミド酸(共重合ポリアミド酸)は溶媒中に10〜30質量%の割合(濃度)で調製するのが好ましい。
ポリアミド酸組成物に含有されるポリアミド酸は、その分子構造について特に制限されない。例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体が挙げられる。
また、ポリアミド酸組成物に含有されるポリアミド酸はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明に用いられるポリアミド酸組成物はさらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、ポリアミド酸を環化させてポリイミドにするために使用される、脱水剤、触媒が挙げられる。
脱水剤としては、例えば、無水酢酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸無水物等の芳香族酸無水物等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用するのが好ましい。
また触媒としては、ピリジン、ピコリン、キノリン、イミダゾール等の複素環式第3級アミン類、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン類、N,N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用するのが好ましい。
ポリアミド酸組成物は、例えば溶媒を除去及びイミド化してフィルムを形成することができる。フィルムを形成する方法は特に制限されず、本発明のポリイミドフィルムの製造方法が好適に採用できる。
〔2〕有機系添加剤
本発明のポリイミドフィルムは、無色透明である可溶性ポリイミドを含有するポリイミドフィルムであって、分子内に芳香環を1つ以上有する有機系添加剤を0.1〜40質量%の範囲内で含有することが特徴である。当該有機系添加剤が分子内に芳香環を1つ以上有することで、前記可用性ポリイミドとの相溶性に優れる。前記有機系添加剤は、ポリエステル、糖エステル及びイミド系化合物から選択される化合物であることが、湿度環境が変化した際の寸法変化の改善効果が大きく、好ましい。当該有機系添加剤の分子量は、相溶性の観点から、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、500〜2000の範囲内であることが特に好ましい。
〔2.1〕ポリエステル
本発明に用いることのできるポリエステルは、下記一般式(I)の構造を有する化合物であることが好ましい。
一般式(I)において、Bは、炭素数2〜6の直鎖又は分岐のアルキレン基又はシクロアルキレン基を表し、Aは、炭素数6〜14の芳香環、又は、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基を表し、Xは、水素原子又は炭素数6〜14の芳香環を含むモノカルボン酸残基を表し、nは、1以上の自然数を表す。
一般式(I)で表されるポリエステル化合物は、芳香環(炭素数6〜14)又は直鎖もしくは分岐のアルキレン基もしくはシクロアルキレン基(ともに炭素数2〜6)を有するジカルボン酸と、炭素数2〜6の直鎖又は分岐のアルキレンジオール又はシクロアルキレンジオールとの交互共重合により得られる交互共重合体である。芳香族ジカルボン酸と、直鎖又は分岐のアルキレン基又はシクロアルキレン基を有するジカルボン酸とは、それぞれ単独で用いても、混合物として用いても構わないが、セルロースアシレートとの相溶性の点から、少なくとも芳香族ジカルボン酸が10%以上含まれることが好ましい。また、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸で両末端を封止してもよい。
芳香環(炭素数6〜14)を有するジカルボン酸、つまり、炭素数6〜16の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸、2,2′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、等が挙げられる。その中でも好ましくは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸である。
直鎖又は分岐のアルキレン基又はシクロアルキレン基(炭素数2〜6)を有するジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、等が挙げられる。その中でも好ましくは、コハク酸、アジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
また、炭素数が2〜6の直鎖又は分岐のアルキレンジオール又はシクロアルキレンジオールとしては、例えば、エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。その中でも、好ましくはエタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールである。
中でも、Aが置換基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環であることが、Tg低下能に優れるという観点から好ましい。ここで、ベンゼン環、ナフタレン環又はビフェニル環が有しうる「置換基」とは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、又は炭素数1〜6のアルコキシ基である。
ポリエステル化合物の両末端を封止する、芳香環(炭素数6〜14)を有するモノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、オルトトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸、ジメチル安息香酸、パラメトキシ安息香酸が挙げられる。その中でも好ましくは安息香酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸である。
芳香族ポリエステル化合物は、常法により上述したジカルボン酸とアルキレンジオール又はシクロアルキレンジオールとのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、又はこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によって容易に合成することができる。さらに、上述した芳香族モノカルボン酸を加えることで、両末端が封止されたポリエステル化合物を合成することができる。
以下に、本発明において用いられうる芳香族ポリエステル化合物を例示する。
〔2.2〕糖エステル
本発明のポリイミドフィルムに、有機系添加剤として下記一般式(II)で表される糖エステルを含有することが好ましい。
一般式(II)において、Gは、単糖類又は二糖類の残基を表し、R2は、脂肪族基又は芳香族基を表し、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、lは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R2)基の数の合計であり、3≦m+l≦8であり、l≠0である。
一般式(II)で表される構造を有する化合物は、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R2)基の数(l)が固定された単一種の化合物として単離することは困難であり、式中のm、lの異なる成分が数種類混合された化合物となることが知られている。したがって、ヒドロキシ基の数(m)、−(O−C(=O)−R2)基の数(l)が各々変化した混合物としての性能が重要であり、本発明のポリイミドフィルムの場合、一般式(II)で表される構造を有し、かつm=0の成分とm>0の成分との混合比率が45:55〜0:100である化合物が好ましい。さらに性能的、コスト的により好ましくはm=0の成分とm>0の成分との混合比率が10:90〜0.1:99.9の範囲である。なお、上記のm=0の成分とm>0の成分は、常法により高速液体クロマトグラフィによって測定することが可能である。
上記一般式(II)において、Gは単糖類又は二糖類の残基を表す。単糖類の具体例としては、例えばアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどが挙げられる。
以下に、一般式(II)で表される、単糖類残基を有する化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
二糖類の具体例としては、たとえば、トレハロース、スクロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、イソトレハロースなどが挙げられる。
以下に、一般式(II)で表される、二糖類残基を有する化合物の構造例を示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
一般式(II)において、R2は、脂肪族基又は芳香族基を表す。ここで、脂肪族基及び芳香族基はそれぞれ独立に置換基を有していてもよい。
また、一般式(II)において、mは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合しているヒドロキシ基の数の合計であり、lは、単糖類又は二糖類の残基に直接結合している−(O−C(=O)−R2)基の数の合計である。そして、3≦m+l≦8であることが必要であり、4≦m+l≦8であることが好ましい。また、l≠0である。なお、lが2以上である場合、−(O−C(=O)−R2)基は互いに同じでもよいし異なっていてもよい。
R2の定義における脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素数1〜25のものが好ましく、1〜20のものがより好ましく、2〜15のものが特に好ましい。脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシルなどが挙げられる。
また、R2の定義における芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよく、より好ましくは芳香族炭化水素基である。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン、トリアジン、キノリンが特に好ましい。
次に、一般式(II)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
(合成例:一般式(II)で表される化合物の合成例)
撹拌装置、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管を備えた四頭コルベンに、ショ糖34.2g(0.1モル)、無水安息香酸180.8g(0.8モル)、ピリジン379.7g(4.8モル)を仕込み、撹拌下に窒素ガス導入管から窒素ガスをバブリングさせながら昇温し、70℃で5時間エステル化反応を行った。次に、コルベン内を4×102Pa以下に減圧し、60℃で過剰のピリジンを留去した後に、コルベン内を1.3×10Pa以下に減圧し、120℃まで昇温させ、無水安息香酸、生成した安息香酸の大部分を留去した。そして、次にトルエン1L、0.5質量%の炭酸ナトリウム水溶液300gを添加し、50℃で30分間撹拌後、静置して、トルエン層を分取した。最後に、分取したトルエン層に水100gを添加し、常温で30分間水洗後、トルエン層を分取し、減圧下(4×102Pa以下)、60℃でトルエンを留去させ、化合物A−1、A−2、A−3、A−4及びA−5の混合物を得た。得られた混合物をHPLC及びLC−MASSで解析したところ、A−1が7質量%、A−2が58質量%、A−3が23質量%、A−4が9質量%、A−5が3質量%であった。なお、得られた混合物の一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、それぞれ純度100%のA−1、A−2、A−3、A−4及びA−5を得た。
また、本発明に用いられる糖エステルは、好ましい例として、下記一般式(III)で表される構造を有する糖エステルが挙げられる。
一般式(III) (OH)p−G−(L1−R11)q(O−R12)r
一般式(III)中、Gは糖残基を表し、L1は−O−、−CO−、−NR13−のいずれか一つを表し、R11は水素原子又は一価の置換基を表し、R12はエステル結合で結合した一価の置換基を表す。p、q及びrはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、p+q+rは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシ基の数と等しい。前記糖残基とは、単糖又は多糖由来の構造である。
前記単糖又は2〜4多糖類の例としては、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、フルクトース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、トレハロース、イソトレハロース、ネオトレハロース、トレハロサミン、コウジビオース、ニゲロース、マルトース、マルチトール、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、ラクトサミン、ラクチトール、ラクツロース、メリビオース、プリメベロース、ルチノース、シラビオース、スクロース、スクラロース、ツラノース、ビシアノース、セロトリオース、カコトリオース、ゲンチアノース、イソマルトトリオース、イソパノース、マルトトリオース、マンニノトリオース、メレジトース、パノース、プランテオース、ラフィノース、ソラトリオース、ウンベリフェロース、リコテトラオース、マルトテトラオース、スタキオース、バルトペンタオース、ベルバルコース、マルトヘキサオース、キシリトール、ソルビトールなどを挙げることができる。
好ましくは、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、スクラロース、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましくは、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロースであり、特に好ましくは、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、スクロース、キシリトール、ソルビトールである。
前記Gの好ましい範囲は、前記糖残基の好ましい範囲と同様である。
前記L1は、−O−又はCO−であることが好ましく、−O−であることがより好ましい。前記L1が−O−である場合は、エーテル結合又はエステル結合由来の連結基であることが特に好ましく、エステル結合由来の連結基であることがより特に好ましい。
また、前記L1が複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
R11及びR12の少なくとも一方は芳香環を有する。
特に、前記L1が−O−である場合(すなわち前記糖エステル中のヒドロキシ基にR11、R12が置換している場合)、前記R11、R12及びR13は置換又は無置換のアシル基、置換又は無置換のアリール基、又は、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアミノ基の中から選択されることが好ましく、置換又は無置換のアシル基、置換又は無置換のアルキル基、又は置換又は無置換のアリール基であることがより好ましく、無置換のアシル基、置換又は無置換のアルキル基、又は、無置換のアリール基であることが特に好ましい。
また、前記R11、R12及びR13がそれぞれ複数ある場合は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記pは0以上の整数を表し、好ましい範囲は後述する単糖ユニット当たりのヒドロキシ基の数の好ましい範囲と同様である。
前記rは前記Gに含まれるピラノース構造単位又はフラノース構造単位の数よりも大きい数を表すことが好ましい。
前記qは0であることが好ましい。
また、p+q+rは前記Gが環状アセタール構造の無置換の糖類であると仮定した場合のヒドロキシ基の数と等しいため、前記p、q及びrの上限値は前記Gの構造に応じて一意に決定される。
前記糖エステルの入手方法としては、市販品として(株)東京化成製、アルドリッチ製等から商業的に入手可能であり、もしくは市販の炭水化物に対して既知のエステル誘導体化法(例えば、特開平8−245678号公報に記載の方法)を行うことにより合成可能である。
前記糖エステルは、数平均分子量が、好ましくは200〜3500、より好ましくは200〜3000、特に好ましくは250〜2000の範囲が好適である。
以下に、本発明で好ましく用いることができる前記糖エステルの具体例を挙げるが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
以下の構造式中、Rはそれぞれ独立に任意の置換基を表し、複数のRは同一であっても、異なっていてもよい。
前記糖エステルは、主成分であるポリイミドに対し2質量%以上25質量%未満含有することが、好ましく、5〜20質量%含有することがより好ましく、5〜15質量%含有することが特に好ましい。
〔2.3〕多価アルコールエステル
本発明に好ましく用いられる多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルとからなるものであり、分子内に芳香環を有する。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される。
式中、R11はn価の有機基を表し、nは2以上の正の整数を表し、OH基はアルコール性及び/又はフェノール性ヒドロキシ基を表す。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基又はエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、又はそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、ポリイミドとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
〔2.4〕フルオレン系ポリエステル
本発明のポリイミドフィルムは、フルオレン系ジカルボン酸成分とジオール成分とを重合成分とするフルオレン系ポリエステルを含有することも好ましい。
(フルオレン系ジカルボン酸成分)
フルオレン系ジカルボン酸成分としては、フルオレン系ジカルボン酸(フルオレン骨格を有するジカルボン酸)及びそのエステル形成性誘導体が含まれる。なお、エステル形成性誘導体としては、例えば、エステル{例えば、アルキルエステル[例えば、メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル(例えば、C1−4アルキルエステル、特にC1−2アルキルエステル]など}、酸ハライド(酸クロライドなど)、酸無水物などが挙げられる。エステル形成性誘導体は、モノエステル(ハーフエステル)又はジエステルであってもよい。フルオレン系ジカルボン酸成分は、ポリエステル樹脂の製造方法に応じて選択できるが、溶融重合法では、フルオレン骨格を有するジカルボン酸、フルオレン骨格を有するジカルボン酸エステルなどを使用する場合が多い。
フルオレン系ジカルボン酸としては、フルオレンを構成する2つのベンゼン環に2つのカルボキシ基含有基が置換した化合物[例えば、フルオレンジカルボン酸(例えば、2,7−ジカルボキシフルオレンなど)]であってもよいが、通常、フルオレンの9位に2つのカルボキシ基含有基が置換した化合物であってもよい。このような化合物としては、例えば、9−ジカルボキシアルキルフルオレン[例えば、9−(1,2−ジカルボキシエチル)フルオレンなど]、ジ(9−カルボキシアルキルフルオレニル)アルカン[例えば、ジ(9−カルボキシエチル−9−フルオレニル)メタン、1,2−ジ(9−カルボキシエチル−9−フルオレニル)エタンなど]などであってもよく、特に、下記一般式(1a)及び(1b)で表される化合物を好適に使用できる。
(式中、X
1a,X
1bは、同一又は異なって、二価の炭化水素基、R
1はカルボキシ基でない置換基、nは0〜4の整数、kは0〜4の整数を表す。)
上記式(1a)(1b)において、基X
1a,X
1bで表される二価の炭化水素基として、脂肪族炭化水素基{例えば、アルキレン基(又はアルキリデン基、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、テトラメチレン基、1,2−ブタンジイル基、エチルエチレン基、ブタン−2−イリデン基、1,2−ジメチルエチレン基、ペンタメチレン基、ペンタン−2,3−ジイル基などのC
1−8アルキレン基、好ましくはエチレン基、プロピレン基、1,2−ブタンジイル基などのC
2−4アルキレン基)、シクロアルキレン基(例えば、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、メチルシクロへキシレン基、シクロへプチレン基などのC
5−10シクロアルキレン基、好ましくはC
5−8シクロアルキレン基、さらに好ましくはC
5−6シクロC
2−4アルキレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−シクロアルキレン基又はシクロアルキレン−アルキレン基、例えば、メチレン−シクロへキシレン基、エチレン−シクロへキシレン基、エチレン−メチルシクロへキシレン基、エチリデン−シクロへキシレン基などのC
1−6アルキレン−C
5−10シクロアルキレン基(好ましくはC
1−4アルキレン−C
5−8シクロアルキレン基)などの脂環式炭化水素基、ビ又はトリシクロアルキレン基(ノルボルナン−ジイル基など)などの橋架環式炭化水素基など]など}、芳香族炭化水素基{例えば、アリーレン基(フェニレン基、ナフタレンジイル基などのC
6−10アリーレン基)、アルキレン(又はアルキリデン)−アリーレン基[又はアリーレン−アルキレン基、例えば、メチレン−フェニレン基、エチレン−フェニレン基、エチレン−メチルフェニレン基、エチリデンフェニレン基などのC
1−6アルキレン−C
6−20アリーレン基(好ましくはC
1−4アルキレン−C
6−10アリーレン基、好ましくはC
1−2アルキレン−フェニレン基)などの芳香脂肪族炭化水素基など]、フェニルエチレン基などのC
6−10アリールC
2−4アルキレン基など}が例示できる。なお、アルキレン−シクロアルキレン基及びアルキレン−アリーレン基とは、−Ra−Rb−(式中、Raは、式(1a)(1b)においてカルボキシ基又はフルオレンの9位に結合したアルキレン基、Rbはシクロアルキレン基又はアリーレン基を表す)で表される基を表す。なお、2つの基X
1aは、同一又は異なる基であってもよい。
これらのうち、二価の脂肪族炭化水素基、特に、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましい。X1a及びX1bで表されるアルキレン基は、直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−エチルエチレン基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などのC1−8アルキレン基が例示できる。好ましいアルキレン基は直鎖状又は分岐鎖状C1−6アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、2−メチルプロパン−1,3−ジイル基などのC1−4アルキレン基)である。
アルキレン基の置換基としては、例えば、アリール基(フェニル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基など)などが例示できる。
X1aは直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基)である場合が多く、X1bは直鎖状又は分岐鎖状C1−3アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基)である場合が多い。置換基を有するアルキレン基X1aは、例えば、1−フェニルエチレン基、1−フェニルプロパン−1,2−ジイル基などであってもよい。
係数nは0〜4の整数から選択でき、通常、0〜2、好ましくは0又は1であってもよい。
前記式(1a)(1b)において、基R1としては、カルボキシ基でない置換基であればよく、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]、アシル基(例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、ペンチルカルボニルなどのアルキルカルボニル基)などが挙げられ、特に、アルキル基などである場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−12アルキル基(例えば、C1−8アルキル基、特にメチル基などのC1−4アルキル基)などが例示できる。なお、kが複数(2〜4)である場合、複数の基R1は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、異なるベンゼン環に置換した基R1は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、基R1の結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2及び7位などが挙げられる。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、2つの置換数kは、同一又は異なっていてもよい。
代表的なフルオレン系ジカルボン酸成分としては、前記式(1a)において、X1aが二価の脂肪族炭化水素基である化合物、例えば、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(1−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(1−カルボキシプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルプロピル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシブチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシ−1−メチルブチル)フルオレン、9,9−ビス(5−カルボキシペンチル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC1−6アルキル)フルオレンなど]、9,9−ビス(カルボキシシクロアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシシクロヘキシル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC5−8シクロアルキル)フルオレンなど]などが挙げられる。
式(1a)で表される好ましい化合物は、X1aがC2−6アルキレン基である化合物、例えば、9,9−ビス(2−カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC2−6アルキル)フルオレン、及びこれらのエステル形成性誘導体などを含む。前記式(1b)で表される好ましい化合物は、n=0であり、かつX1bがC1−6アルキレン基である化合物、例えば、9−(1−カルボキシ−2−カルボキシエチル)フルオレン、n=1であり、かつX1bがC1−6アルキレン基である化合物、例えば、9−(2−カルボキシ−3−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9−(カルボキシ−カルボキシC2−6アルキル)フルオレン、及びこれらのエステル形成性誘導体などを含む。フルオレン系ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
これらのうち、好ましいフルオレン系ジカルボン酸成分には、式(1a)で表される化合物、例えば、9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(カルボキシエチル)フルオレン、9,9−ビス(2−カルボキシプロピル)フルオレンなどの9,9−ビス(カルボキシC2−4アルキル)フルオレン、特に9,9−ビス(カルボキシエチル)フルオレン]及びそのエステル形成性誘導体から選択された少なくとも1種(9,9−ビス(カルボキシアルキル)フルオレン成分)などが含まれる。
なお、ジカルボン酸成分全体に対するフルオレン系ジカルボン酸成分の割合は、例えば、10モル%以上(例えば、20モル%以上)、好ましくは30モル%以上(例えば、40モル%以上)、さらに好ましくは50モル%以上(例えば、60モル%以上)であってもよく、70モル%以上(例えば、80モル%以上)であってもよい。
(他のジカルボン酸成分)
ジカルボン酸成分は、フルオレン系ジカルボン酸成分のみで構成してもよく、他のジカルボン酸成分を含んでいてもよい。
他のジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、芳香族ジカルボン酸成分等が挙げられる。これらのうち、脂環族ジカルボン酸成分は、耐熱性の観点からも好適である。さらに、芳香族ジカルボン酸成分は、屈折率や耐熱性の観点から好適である。なお、芳香族ジカルボン酸成分は、通常、複屈折を上昇させやすい場合が多いが、フルオレン系ジカルボン酸成分(さらには後述のジオール成分)と組み合わせることで、低複屈折化できるため、好適である。
脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アルカンジカルボン酸成分[例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、これらのエステル形成性誘導体(前記誘導体など)などのC2−12アルカンジカルボン酸成分など]などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸、好ましくは、C5−8シクロアルカン−ジカルボン酸など)、ビ又はトリシクロアルカンジカルボン酸(例えば、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸などのビ又はトリC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸)、これらのエステル形成性誘導体(前記誘導体など)などが挙げられる。脂環族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
芳香族ジカルボン酸成分(非フルオレン系芳香族ジカルボン酸成分)としては、アレーンジカルボン酸、例えば、単環式芳香族ジカルボン酸成分、多環式芳香族ジカルボン酸成分(非フルオレン系多環式芳香族ジカルボン酸成分)に大別できる。
単環式芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アルキルイソフタル酸(例えば、4−メチルイソフタル酸などのC1−4アルキルテレフタル酸)などのC6−10アレーンジカルボン酸、これらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。単環式芳香族ジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
(ジオール成分)
ジオール成分としては、特に限定されず、脂肪族ジオール(又は脂肪族ジオール成分)、脂環族ジオール(又は脂環族ジオール成分)、芳香族ジオール(又は芳香族ジオール成分)などのいずれであってもよい。脂肪族ジオールや脂環族ジオールは、特に、複屈折調整機能の観点から好適に使用できる。また、脂環族ジオールは、耐熱性の観点からも好適である。さらに、芳香族ジオールは、屈折率や耐熱性の観点から好適である。
脂肪族ジオール(鎖状脂肪族ジオール)としては、例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−6アルカンジオール、さらに好ましくはC2−4アルカンジオール)、ポリアルカンジオール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ又はトリC2−4アルカンジオールなど)などの飽和脂肪族ジオール(特に、エチレングリコール、1,2−ブタンジオールなど)が挙げられる。脂肪族ジオールは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
脂環族ジオールとしては、例えば、シクロアルカンジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオールなどのC4−10シクロアルカンジオール、好ましくはC5−8シクロアルカンジオール)、架橋(橋架環式)シクロアルカンジオール(例えば、ノルボルナンジオール、アダマンタンジオールなどのビ又はトリシクロアルカンジオール)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン[例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C4−10シクロアルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC1−3アルキル)C5−8シクロアルカン、さらに好ましくはジ(ヒドロキシC1−2アルキル)C5−6シクロアルカンなど]、ジ(ヒドロキシアルキル)架橋(橋架環式)シクロアルカン[例えば、トリシクロデカンジメタノール(トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール)、アダマンタンジメタノール、ノルボルナンジメタノールなどのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)ビ又はトリC4−10シクロアルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC1−3アルキル)ビ又はトリC5−10シクロアルカン、さらに好ましくはジ(ヒドロキシC1−2アルキル)ビ又はトリC6−10シクロアルカン]、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体(後述の化合物など)の水添物{例えば、ジ(ヒドロキシシクロアルキル)アルカン[例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンなどのジ(ヒドロキシC4−10シクロアルキル)C1−10アルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC5−8シクロアルキル)C1−4アルカンなど]など}、ヘテロシクロアルカン骨格を有するジオール{例えば、オキサモノ又はポリシクロアルカンジオール(イソソルビドなど)、オキサスピロ環骨格を有するジオール[例えば、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのジ(ヒドロキシアルキル)オキサスピロアルカン(例えば、ジ(ヒドロキシC1−10アルキル)テトラオキサスピロアルカン、好ましくはジ(ヒドロキシC1−6アルキル)テトラオキサスピロアルカン)など]}などが挙げられる。
脂環族ジオールの中でも、シクロアルカンジオール(例えば、C5−8シクロアルカンジオールなど)、ジ(ヒドロキシアルキル)シクロアルカン[例えば、ジ(ヒドロキシC1−3アルキル)C5−8シクロアルカン]、ジ(ヒドロキシアルキル)架橋シクロアルカン[例えば、ジ(ヒドロキシC1−3アルキル)ビ又はトリC5−10シクロアルカン]、ジ(ヒドロキシシクロアルキル)アルカン[例えば、ジ(ヒドロキシC5−8シクロアルキル)C1−4アルカン]、ジ(ヒドロキシアルキル)オキサスピロアルカン[例えば、ジ(ヒドロキシC1−6アルキル)テトラオキサスピロアルカン]などが好ましい。
脂環族ジオールは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
芳香族ジオールとしては、例えば、ジヒドロキシアレーン(ハイドロキノン、レゾルシノールなど)、ビスフェノール類{ビフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類[例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールAなどのビス(ヒドロキシフェニル)C1−10アルカン]、ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類;9,9−(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類など]など}、芳香脂肪族ジオール{例えば、ジ(ヒドロキシアルキル)アレーン[例えば、ベンゼンジメタノール(1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノールなど)などのジ(ヒドロキシC1−4アルキル)C6−10アレーン;9,9−ビス(ヒドロキシアルキル)フルオレン(例えば、9,9−ビス(3−ヒドロキシプロピル)フルオレンなど)など]、ジ(9−ヒドロキシアルキルフルオレニル)アルカン[例えば、ジ[9−(3−ヒドロキシプロピル)−9−フルオレニル)メタン、1,2−ジ[9−(3−ヒドロキシプロピル)−9−フルオレニル]エタンなど]など]、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加体[例えば、2,2−ジ[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン(ビスフェノールA1モルに対して2モルのエチレンオキサイドが付加した付加体)などの前記例示のビスフェノール類のC2−4アルキレンオキサイド付加体など]、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類など}が挙げられる。芳香族ジオールは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
前記ポリエステルの重量平均分子量は、500〜10000の範囲から選択でき、例えば、500〜8000、好ましくは500〜5000、さらに好ましくは1000〜5000程度であってもよく、通常1000〜4000の範囲であることが好ましい。
なお、前記ポリエステルは、慣用の方法により製造できる。例えば、前記ポリエステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分(B)とを反応(重合又は縮合)させることにより製造できる。重合方法(製造方法)としては、使用するジカルボン酸成分の種類などに応じて適宜選択でき、慣用の方法、例えば、溶融重合法(ジカルボン酸成分とジオール成分とを溶融混合下で重合させる方法)、溶液重合法、界面重合法などが例示できる。
〔2.5〕イミド系化合物
本発明のポリイミドフィルムは、下記イミド系化合物を含有することも好ましい。
〔2.5.1〕ナフタレンイミド
本発明に好ましいナフタレンイミドは、下記一般式(5.1)及び一般式(5.2)の構造を有する化合物である。
(式中、Rは、H、C
1−40アルキル基、C
2−40アルケニル基、C
1−40ハロアルキル基、及び1〜4個の環状部分から独立して選択される。
C1−40アルキル基、C2−40アルケニル基及びC1−40ハロアルキル基の各々は、ハロゲン(フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード)、−CN、NO2、OH、−NH2、−NH(C1−20アルキル)、−N(C1−20アルキル)2、−S(O)2OH、−CHO、−C(O)−C1−20アルキル、−C(O)OH、−C(O)−OC1−20アルキル、−C(O)NH2、−C(O)NH−C1−20アルキル、−C(O)N(C1−20アルキル)2、−OC1−20アルキル、−SiH3、−SiH(C1−20アルキル)2、−SiH2(C1−20アルキル)及び−Si(C1−20アルキル)3から独立して選択される1〜10個の置換基で場合により置換されてよく;
C1−40アルキル基、C2−40アルケニル基及びC1−40ハロアルキル基の各々は、任意のリンカーを介してイミド窒素原子に共有結合してよく;かつ1〜4個の環状部分の各々は、同一又は異なってよく、任意のリンカーを介して互いに又はイミド窒素に共有結合してよく、ハロゲン、オキソ、−CN、NO2、OH、=C(CN)2、−NH2、−NH(C1−20アルキル)、−N(C1−20アルキル)2、−S(O)2OH、−CHO、−C(O)OH、−C(O)−C1−20アルキル、−C(O)−OC1−20アルキル、−C(O)NH2、−C(O)NH−C1−20アルキル、−C(O)N(C1−20アルキル)2、−SiH3、−SiH(C1−20アルキル)2、−SiH2(C1−20アルキル)、−Si(C1−20アルキル)3、−O−C1−20アルキル、−O−C1−20アルケニル、−O−C1−20ハロアルキル、C1−20アルキル基、C1−20アルケニル基及びC1−20ハロアルキル基から独立して選択される1〜5個の置換基で場合により置換されてよい。
〔2.5.2〕スチレン−マレイミド共重合体及びスチレン−アクリロニトリル系共重合体
本発明のポリイミドフィルムは、スチレン−マレイミド共重合体又はスチレン−アクリロニトリル系共重合体を含有することが好ましい。
スチレン−マレイミド系共重合体の構成比率は、スチレン系単量体単位45〜70質量%、マレイミド系単量体単位30〜55質量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位0〜5質量%であり、好ましくは、スチレン系単量体単位50〜60質量%、マレイミド系単量体単位35〜50質量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位0〜2.5質量%である。
スチレン系単量体単位が45質量%以上、又は、マレイミド系単量体単位が55質量%以下であれば、溶融粘度が高くなり過ぎず、本発明に係るポリイミドとの溶解性を良好に保つことができる。
また、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位は、任意配合成分である。スチレン−マレイミド系共重合体中に不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位を配合することにより、相溶性が向上する場合がある。不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位が5質量%以下であれば、熱安定性を良好に保つことができる。
スチレン系単量体は、スチレン、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられ、これらの中でも特に相溶性の観点からスチレンが好ましい。また、これらのスチレン系単量体は2種以上の混合であってもよい。
マレイミド系単量体としては、特に限定せず、任意の公知のマレイミド系単量体を用いることができるが、入手の容易性、耐熱付与効果などの観点からは、例えば、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−アルキルマレイミド、及びN−フェニルマレイミド、N−クロルフェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミド、N−トリブロモフェニルマレイミド等のN−アリールマレイミド等のマレイミド系単量体が挙げられ、これらの中でも耐熱付与効果の観点から特にN−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが好ましい。また、これらのマレイミド系単量体は2種以上の混合であってもよい。
不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の無水物が挙げられ、スチレン−アクリロニトリル系共重合体(B)との相溶性の観点から、特にマレイン酸無水物が好ましい。また、これらの不飽和ジカルボン酸無水物単量体は2種以上の混合であってもよい。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体の構成比率は、スチレン系単量体単位70〜84質量%とアクリロニトリル系単量体単位16〜30質量%、好ましくはスチレン系単量体72〜82質量%とアクリロニトリル系単量体18〜28質量%である。
スチレン−アクリロニトリル系共重合体のスチレン系単量体としては、特に限定せず、任意の公知のスチレン系単量体を用いることができるが、入手の容易性、本実施形態のスチレン−マレイミド系共重合体との相溶性などの観点からスチレン、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられ、これらの中でも特に相溶性の観点からスチレンが好ましい。また、これらのスチレン系単量体は2種以上の混合であってもよい。
アクリロニトリル系単量体としては、特に限定せず、任意の公知のアクリロニトリル系単量体を用いることができるが、入手の容易性、相溶性などの観点からアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらの中では特に相溶性の観点からアクリロニトリルが好ましい。また、これらのアクリロニトリル系単量体は2種以上の混合であってもよい。
スチレン−マレイミド共重合体及びスチレン−アクリロニトリル系共重合体の製造法としては、公知の手法が採用でき、例えば、スチレン系単量体、マレイミド系単量体単位
不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位、アクリロニトリル系単量体及び共重合可能なビニル単量体からなる単量体混合物を共重合させる方法が挙げられる。また、重合の様式は、公知の重合方法が利用できる。その中でもフィルムの透明性の観点から塊状重合又は溶液重合であることが好ましく、さらに好ましくは塊状重合である。
前記共重合可能なビニル系単量体単位、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等の単量体単位が挙げられる。
〔2.5.3〕その他イミド系化合物
その他イミド系化合物として本発明に好ましく用いられる化合物の具体例は以下のとおりである。
N−エトキシカルボニルフタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、ヘキサヒドロフタルイミド、N−イソプロピルフタルイミド、N−メチルフタルイミド、メチル3,4,6−トリ−O−アセチル−2−デオキシ−2−フタルイミド−1−チオ−Beta−D−グルコピラノシド、4−メトキシフェニル4−O−アセチル−3,6−ジ−O−ベンジル−2−デオキシ−2−フタルイミド−Beta−D−グルコピラノシド、N−アセチルフタルイミド、N−ベンジルフタルイミド、N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フタルイミド、N−ブチルフタルイミド、N−カルボベンゾキシオキシスクシンイミド、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド、フタルイミドマロン酸ジエチル、(フタルイミドメチル)ホスホン酸ジエチル、エトスクシミド、N−エチルスクシンイミド、N−[(9H−フルオレン−9−イルメトキシ)カルボニルオキシ]スクシンイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−メチルスクシンイミド等。
〔2.6〕その他有機系添加剤
本発明のポリイミドフィルムに好ましく用いることのできる、その他の有機系添加剤は以下の化合物を例示することができる。
〔2.6.1〕2個以上の脂環式炭化水素基又は非芳香族ヘテロ環基が連結した末端にベンゼン環を有し、該ベンゼン環に特定の置換基を有する化合物
下記化合物は、良好な波長分散性を示し、ブリードアウト耐性が良好な有機系添加剤である。
〔2.6.2〕下記一般式(6.1)及び一般式(6.2)の構造を有する化合物
一般式(6.1)及び一般式(6.2)の構造を有する化合物は、リターデーションの調整も可能であり、好適に用いることができる。
一般式(6.1)及び一般式(6.2)における、X1及びX2は炭素原子もしくは窒素原子を表し、互いに異なっていても同一でもよい。つまり、X1及びX2を含む環は、フェニル環、ピリジン環、又はピリミジン環である。
一般式(6.1)及び一般式(6.2)におけるL1、L2及びL3は、それぞれ独立して、単なる結合手、アルキレン基、−COO−,−NR2−,−OCO−,−OCOO−,−O−、−S−、−NHCO−,−CONH−から選ばれる2価の連結基を表す。化合物の溶解性の観点から、L1、L2及びL3は、それぞれ、単なる結合手、−COO−,−NR2−,−NHCO−,−CONH−が好ましく;単なる結合手、−NR2−,−NHCO−,−CONH−がさらに好ましい。R2は、水素原子又は置換基であり、水素原子又はアルキル基(炭素数1〜10)であることが好ましい。
一般式(6.1)において、A,B及びCは、それぞれ独立して、芳香環もしくは芳香族ヘテロ環を表し;芳香環もしくは芳香族ヘテロ環は、5員環又は6員環であることが好ましい。芳香環の例には、フェニル環、ナフチル環などが含まれる。芳香族ヘテロ環の例には、ピリジル環、ピリミジル環、オキサゾリル環、チアゾリル環、オキサジアゾリル環、チアジアゾリル環、イミダゾリル環、カルバゾリル環、インドリル環などが含まれる。A,B及びCは、フェニル環、ピリジル環、オキサジアゾリル環が好ましく、フェニル環、オキサジアゾリル環がさらに好ましい。
一般式(6.2)におけるX3〜X8は炭素原子もしくは窒素原子を表し、互いに異なっていても同一でもよい。つまり、X3及びX4を含む環、X5及びX6を含む環、X7及びX8を含む環は、それぞれフェニル環、ピリジン環又はピリミジン環である。
前記一般式(6.1)及び一般式(6.2)におけるR1は置換基を表す。前記一般式(6.1)及び一般式(6.2)におけるR1は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。A〜Cのそれぞれに、複数のR1が結合していてもよく、それらは互いに同一でも異なっていても良い。A〜Cが有するR1の好ましい数は、1〜3である。
R1が表す置換基の例には、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ピリミジル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、イミダゾリル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−メチル−3−プロペニル基、3−ペンテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、4−ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、スチリル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等)、アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基等)、アリールスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、ホスホノ基、アシル基(例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ブチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、シアノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、シロキシ基、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホン酸基又はその塩、アミノカルボニルオキシ基、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基等)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、イミド基、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メト(キシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、カルバメート基(例えば、メチルカルバメート基、フェニルカルバメート基)、アルキルオキシフェニル基(例えば、メトキシフェニル基等)、アシルオキシフェニル基(例えば、アセチルオキシフェニル基等)、チオウレイド基、カルボキシ基、カルボン酸の塩、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基などが含まれる。
R1が表す置換基は、さらに同様の基でさらに複数置換されていてもよく、隣り合う置換基同士が結合して環を形成してもよい。
R1の好ましい例には、炭素数4以下のアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバメート基、カーボネート基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基が好ましく;炭素数4以下のアルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバメート基、アミノ基がさらに好ましく;炭素数4以下のアルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバメート基、カーボネート基が特に好ましい。
一般式(6.1)及び一般式(6.2)におけるR1の置換位置は、特に制限されない。
以下に前記一般式(6.1)及び前記一般式(6.2)で表される化合物の具体例を挙げる。
〔2.6.3〕シルセスキオキサン
本発明では、下記シルセスキオキサンを好適に用いることができる。
(A)1分子中にSi−H基を2個以上有する、分子量が100〜10000のシルセスキオキサン。
(B)1分子中にアルケニルを2個以上有する、分子量が100〜10000のシリコーン及び/又はシルセスキオキサン。
(C)1分子中にエポキシ又はオキセタニルを1個以上と、炭素数が2〜18のアルケニルとを有する化合物
(A)で表される化合物が一般式(a−1)〜一般式(a−7)からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、(B)で表される化合物が一般式(b−1)及び一般式(b−2)からなる群から選ばれる少なくとも一種であり、(C)で表される化合物が一般式(c−1)、一般式(c−2)及び一般式(c−3)からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
一般式(a−1)〜一般式(a−7)において、
Rは炭素数1〜45のアルキル、炭素数4〜8のシクロアルキル、炭素数6〜14のアリール及び炭素数7〜24のアリールアルキルから独立して選択される基であり;炭素数1〜45のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして隣接しない任意の−CH2−は、−O−又はCH=CH−で置き換えられてもよく;アリール及びアリールアルキル中のベンゼン環において、任意の水素はハロゲン又は炭素数1〜10のアルキルで置き換えられてもよく、この炭素数1〜10のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、そして隣接しない任意の−CH2−は−O−又はCH=CH−で置き換えられてもよく;アリールアルキル中のアルキレンの炭素数は1〜10であり、そして隣接しない任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく;
R1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びフェニルから独立して選択される基であり;
R3は炭素数1〜4のアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びフェニルから独立して選択される基であり;
Xは、各化合物1分子中、少なくとも2個は水素であり、残りは、炭素数1〜4のアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びフェニルから独立して選択される基であり;nは0〜100の整数であり、mは3〜10の整数である。
一般式(b−1)、(b−2)において、
R及びR1は上記式(a−1)から(a−6)におけるR及びR1と同様に定義される基であり、R4は炭素数1〜4のアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びフェニルから独立して選択される基であり、Yはビニル及びアリルから独立して選択される基であり、nは0〜100の整数である。
一般式(c−1)、(c−2)、及び(c−3)において、R5及びR6のうち、一方は、炭素数2〜10のアルケニルであり、このアルケニルにおける1つの−CH2−は−O−又は1,4−フェニレンで置き換えられてもよく、他方は水素又は炭素数1〜6のアルキルである。
式中、R4はメチル又はフェニルから独立して選択され、nは0〜100の整数を表す。
(C)で表される化合物が、式(c−1−1)、式(c−2−1)、式(c−3−1)、及び(c−3−2)からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
一般式(7)で表される構造を有する化合物も好ましく用いることができる。
一般式(7)中のR30は−OSiR41 3、−OSiR42 3をそれぞれ独立にあらわす。R41はアルキル基又は水素原子をそれぞれ独立にあらわす。R42は付加反応性の官能基又はアルキル基をそれぞれ独立にあらわす。
R30は、具体的には下記2つの有機基のいずれかであることが好ましい。
〔2.6.4〕セルロースナノファイバー
本発明のポリイミドフィルムは、下記セルロースナノファイバーを用いることも好ましい。
(セルロースファイバーの製造方法)
セルロースファイバーは、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物(単に、フルオレン骨格を有する化合物という場合がある。)を用いて、セルロース含有成分(例えば、セルロース(又はセルロースの繊維集合体)及び非結晶成分を含むセルロース含有成分)からセルロース(又は非結晶成分が除去されたセルロース又はセルロース繊維)を製造する。このような方法は、通常、セルロース含有成分と9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物とを混合(通常加熱混合)する混合工程と、この工程を経て得られた混合物から、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物を分離する分離工程とを含んでいる。なお、このような方法では、通常、ファイバー状のセルロース(又は繊維の形態のセルロース)が得られる。
(セルロース含有成分)
セルロース含有成分は、セルロース(又はセルロースの繊維集合体又は結晶性セルロース)を含んでいればよく、セルロース(又は結晶性セルロース)と非結晶性成分を含んでいてもよい。セルロース含有成分は、セルロース(結晶性セルロース)を、セルロース繊維(セルロースミクロフィブリル)の集合体(又は凝集体)の形態で含んでいてもよい。このような集合体又は凝集体の繊維径(二次繊維径)は、例えば、マイクロメータオーダー(例えば、1〜100μm、好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜30μm程度)であってもよい。本発明では、このような繊維集合体を弛緩する(又はほぐす)ことにより、後述するように、ナノメートルオーダーのセルロース繊維(すなわち、セルロースナノファイバー)を得ることもできる。
非結晶成分としては、例えば、リグニン、ヘミセルロース、非結晶セルロース(又は不定形セルロース)などが挙げられる。特に、セルロース含有成分(非結晶性成分を含むセルロース含有成分)は、リグノセルロース(リグニン含有セルロース)であってもよい。本発明では、選択的に非結晶性成分を可溶化又は抽出しつつ、セルロース骨格を弛緩できるため、このような非結晶成分を含むセルロース含有成分であっても、効率よくセルロース(セルロースファイバー)を得ることができる。このような非結晶成分を含むセルロース含有成分を使用すると、セルロース(微結晶セルロースなど)を使用しなくても、木材などからそのまま結晶性セルロースを得ることができるため、工業的、プロセス的、さらにはコスト的に極めて有利である。
リグノセルロースは、セルロースとリグニンとで構成されている。なお、リグニンは、植物の維管束細胞壁成分として存在する無定形高分子であり、フェニルプロパン系の構成単位を含む縮合体である。このようなリグノセルロース(リグニンを含有する物質)としては、木材、草本類などが挙げられる。木材は、針葉樹と広葉樹とに大別され、針葉樹としては、マツ、スギ、ヒノキ、イチイ、イヌガヤなどが挙げられる。広葉樹としては、シイ、サクラ、柿などが挙げられる。草本類としては、ケナフ、ワラ、バガス、亜麻、マニラ麻、黄麻、楮などが挙げられる。針葉樹に含まれるリグニン(針葉樹リグニン)は、グアイアシルプロパン構造を有していてもよく、広葉樹に含まれるリグニン(広葉樹リグニン)は、グアイアシルプロパン構造及びシリンギルプロパン構造を有していてもよく、草本類に含まれるリグニン(草本類リグニン)は、グアイアシルプロパン構造、シリンギルプロパン構造、及びp−ヒドロキシフェニルプロパン構造を有していてもよい。なお、メトキシ基の含量は、針葉樹リグニンで14〜17質量%程度、広葉樹リグニンで20〜23質量%程度、草本類リグニンで14〜15質量%程度であってもよい。
木材は、間伐材などであってもよく、木材の破砕物、例えば、木粉、木材チップ、単板くずなどの形態で利用でき、廃材(建築廃材など)などを利用してもよい。
セルロース含有成分としては、パルプ(例えば、木材パルプ、竹パルプ、ワラパルプ、バガスパルプ、木綿パルプ、亜麻パルプ、麻パルプ、楮パルプ、三椏パルプ、コットンパルプなど)も利用できる。さらに、リグノセルロースとして、パルプから調製される紙(抄紙やボードなど)、古紙などのパルプ含有成形体も利用できる。なお、パルプでは、製法によっては、ほとんどのリグニンやヘミセルロースが除去されている場合があるが、このようなパルプにおいても、通常、非結晶セルロースが残存しており、この非結晶セルロース(又は不定形セルロース)が、セルロース(結晶性セルロース)間に存在して強固に結合している。
代表的なセルロース含有成分(リグノセルロース)としては、例えば、木材(例えば、針葉樹及び広葉樹から選択された少なくとも1種)、草本類、パルプ、パルプ含有成形体などが利用できる。リグノセルロースは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
なお、木粉などの廃材(建築廃材など)を再利用すると、リグノセルロースを有効に利用できる。リグノセルロースの破砕物(木粉など)のサイズは特に制限されないが、効率よく製造するため、平均径が0.01〜1mm、好ましくは0.02〜0.5mm、さらに好ましくは0.03〜0.1mm程度であってもよい。
また、本発明では、セルロース含有成分として、セルロースを主成分とするセルロース含有成分[又は非結晶成分(リグニンやヘミセルロース)のほとんどが除去されたセルロース]を用いてもよい。このようなセルロース含有成分としては、特に限定されず、パルプ(特に、化学パルプなど)、微結晶セルロースなどが挙げられる。
セルロース含有成分(非結晶成分を含むセルロース含有成分)において、非結晶成分(例えば、リグニン、ヘミセルロース、非結晶セルロースなど)の割合は、その種類にもよるが、例えば、1〜90質量%、好ましくは3〜80質量%、さらに好ましくは5〜70質量%程度であってもよい。特に、パルプにおいて、非結晶成分(非結晶セルロースなど)の割合は、1〜40質量%、好ましくは1.5〜30質量%、さらに好ましくは2〜25質量%程度であってもよい。
なお、セルロースを主成分とするセルロース含有成分において、非結晶成分(又は不純物)の割合は、例えば、セルロース含有成分全体の20質量%以下(例えば、0.01〜15質量%)、好ましくは10質量%以下(例えば、0.05〜7質量%)、さらに好ましくは5質量%以下(例えば、0.1〜3質量%)であってもよい。
特に、リグノセルロースにおいて、セルロースとリグニンとの割合は、特に限定されないが、例えば、前者/後者(質量比)=99/1〜20/80、好ましくは95/5〜30/70、さらに好ましくは90/10〜40/60程度であってもよい。なお、リグノセルロースにおいて、リグニンの割合は、例えば、1〜50質量%、好ましくは5〜45質量%、さらに好ましくは5〜40質量%程度であってもよい。
なお、リグノセルロースは、非結晶成分としてリグニンを含んでいるが、通常、リグニンに加えて、ヘミセルロース、不定形セルロースを含んでいてもよい。本発明では、リグニンだけでなく、ヘミセルロースなどもまたフルオレン骨格を有する化合物により可溶化又は溶解され、セルロース含有成分から効率よく分離可能である。
リグノセルロースにおいて、セルロースとヘミセルロースとの割合は、前者/後者(質量比)=99/1〜20/80、好ましくは95/5〜30/70、さらに好ましくは90/10〜40/60程度であってもよい。なお、リグノセルロースにおいて、ヘミセルロースの割合は、例えば、1〜50質量%、好ましくは5〜45質量%、さらに好ましくは10〜40質量%程度であってもよい。
なお、リグノセルロースにおいて、非結晶成分(例えば、リグニン及びヘミセルロース)の割合は、5〜90質量%、好ましくは10〜80質量%、さらに好ましくは20〜70質量%、特に30〜60質量%程度であってもよい。
なお、セルロース含有成分において、セルロース含量は、例えば、30質量%以上(例えば、30〜99.9質量%)、好ましくは35質量%以上(例えば、38〜99.95質量%)程度であってもよい。
また、前記のように、セルロースを主成分とするセルロース含有成分において、セルロースの割合は、例えば、セルロース含有成分全体の80質量%以上(例えば、85〜99.9質量%)、好ましくは90質量%以上(例えば、93〜99.95質量%)、さらに好ましくは95質量%以上(例えば、97〜99.9質量%)であってもよい。
セルロース含有成分(リグノセルロースなど)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(フルオレン骨格を有する化合物)
フルオレン骨格を有する化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格(例えば、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格、9,9−ビスナフチルフルオレン骨格)を有する限り特に限定されないが、通常、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレン[例えば、9,9−ビス(カルボキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレンなどの官能基(例えば、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基など)を有するフルオレン骨格を有する化合物を好適に使用できる。
代表的なフルオレン骨格を有する化合物には、下記一般式(8)で表される化合物が含まれる。
(式中、環Zは芳香族炭化水素環を示し、R
1は置換基を示し、Xはヘテロ原子含有官能基を示し、R
2はアルキレン基を示し、R
3は置換基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは1以上の整数、pは0以上の整数である。)
上記一般式(8)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、縮合多環式炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン、ナフタレンなどのC
8−20縮合二環式炭化水素環、好ましくはC
10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合2乃至4環式炭化水素環]などが挙げられ、ベンゼン環又はナフタレン環であるのが好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する環Zの置換位置は、特に限定されない。例えば、環Zがナフタレン環の場合、フルオレンの9位に置換する環Zに対応する基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよい。
前記一般式(8)において、基R1で表される置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などが挙げられ、特に、ハロゲン原子、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基R1は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基R1は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基R1の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
前記式(8)において、ヘテロ原子含有官能基としては、例えば、酸素、イオウ及び窒素原子から選択された少なくとも一種を有する官能基などが例示できる。このような官能基に含まれるヘテロ原子の数は、特に制限されないが、通常、1〜3個、好ましくは1又は2個であってもよい。前記官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、エポキシ含有基(グリシジルオキシ基など)、カルボキシ基などの酸素原子含有官能基;メルカプト基などのイオウ原子含有官能基;アミノ基又はN−一置換アミノ基[例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基などのN−モノアルキルアミノ基(N−モノC1−4アルキルアミノ基など)、ヒドロキシエチルアミノ基などのN−モノヒドロキシアルキルアミノ基(N−モノヒドロキシC1−4アルキルアミノ基など)など]などの窒素原子含有官能基などが例示できる。好ましいXには、ヒドロキシ基、メルカプト基、エポキシ含有基(グリシジルオキシ基など)、アミノ基又はN−一置換アミノ基などが挙げられ、特に、ヒドロキシ基が好ましい。なお、Xは異なるZにおいて同一又は異なる基であってもよく、また、同一の環Zにおいて同一又は異なる基であってもよい。
また、前記一般式(8)において、基R2で表されるアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、C2−10アルキレン基(例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブタン−1,2−ジイル基、ヘキシレン基などのC2−6アルキレン基)などが例示でき、C2−4アルキレン基(特に、エチレン基、プロピレン基などのC2−3アルキレン基)が好ましく、特にエチレン基であってもよい。なお、R2は、同一の又は異なるアルキレン基であってもよい(すなわち、mが複数である場合、R2は同一又は異なっていてもよい)。すなわち、mが2以上の場合、ポリアルコキシ(ポリオキシアルキレン)基[−(OR2)m−]は、同一のオキシアルキレン基で構成されていてもよく、複数のオキシアルキレン基(例えば、オキシエチレン基とオキシプロピレン基など)で構成されていてもよい。通常、R2は同一のベンゼン環において、同一のアルキレン基であってもよい。
オキシアルキレン基(OR2)の数(付加モル数)mは、例えば、0〜15(例えば、1〜10)程度の範囲から選択でき、例えば、0〜8(例えば、0〜7)、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜5(例えば、0〜3)、特に1であってもよい。また、mは2つの環Zにおいて異なっていてもよく、同一の環Zにおいて異なっていてもよい。例えば、同一の環Zにおいて、mが0である基−Xと、mが1以上である基−[(OR2)m−X]とを有していてもよい。なお、前記一般式(8)において、基−[(OR2)m−X]の置換数nは、環Zの種類にもよるが、例えば、1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3、特に1〜2であってもよい。
また、前記一般式(8)において、基R3で表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基、さらに好ましくはC1−6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−14アリール基、好ましくはC6−10アリール基、さらに好ましくはC6−8アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC1−12アルコキシ基、好ましくはC1−8アルコキシ基、さらに好ましくはC1−6アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などの基−OR4[式中、R4は炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を表す。];アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などのC1−20アルキルチオ基、好ましくはC1−8アルキルチオ基、さらに好ましくはC1−6アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロヘキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)などの基−SR4(式中、R4は前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;メルカプト基;カルボキシ基;アミノ基;カルバモイル基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など);スルホニル基;これらの置換基同士が結合した置換基[例えば、アルコキシアリール基(例えば、メトキシフェニル基などのC1−4アルコキシC6−10アリール基)、アルコキシカルボニルアリール基(例えば、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニルC6−10アリール基など)]などが挙げられる。
これらのうち、代表的には、基R3は、炭化水素基、−OR4(式中、R4は炭化水素基を表す。)、−SR4(式中、R4は前記と同じ。)、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などであってもよい。
好ましい基R3としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。特に、R3は、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであるのが好ましい。
また、好ましい置換数pは、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。異なる環Zにおいて、置換数pは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。また、同一の環Zにおいて、pが複数(2以上)である場合、基R3は互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。さらに、2つの環Zにおいて、基R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。
なお、前記一般式(8)において、n+pの値は、環Zの種類にもよるが、例えば、1〜6、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3程度であってもよい。
代表的な前記一般式(8)で表される化合物には、環Zがベンゼン環又はナフタレン環、Xがヒロキシル基、メルカプト基、カルボキシ基、グリシジルオキシ基又はアミノ基(特にヒドロキシ基)、R2がC2−6アルキレン基(特にC2−4アルキレン基)、mが0〜10(例えば、0〜6)、nが1〜3である化合物などが挙げられる。
代表的な前記一般式(8)で表される化合物としては、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなど9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−アルキルフェニル)フルオレン;9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシ−アリールフェニル)フルオレン;9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[(ヒドロキシアルコキシ)フェニル]フルオレン;9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[(ヒドロキシアルコキシ)−アルキルフェニル]フルオレン;9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[(ヒドロキシアルコキシ)−アリールフェニル]フルオレン;これらの化合物に対応し、環Zがナフタレン環に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス[(ヒドロキシアルコキシ)ナフチル]フルオレンなどの前記式(1)においてXがヒドロキシ基である化合物;これらの化合物に対応し、Xがメルカプト基、カルボキシ基、グリシジル基又はアミノ基に置換した化合物などが含まれる。
フルオレン骨格を有する化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
なお、前記一般式(8)で表される化合物は、市販品を利用してもよく、慣用の方法[例えば、酸触媒(硫酸、塩酸など)及びチオール類(メルカプトカルボン酸など)の存在下、フルオレノン類とフェノール類とを反応させる方法]により合成してもよい。
(混合工程)
混合工程では、セルロース含有成分(リグノセルロースなど)と、フルオレン骨格を有する化合物とを混合する。このような混合により、フルオレン骨格を有する化合物が、セルロース含有成分中に浸透してセルロースを分解することなくセルロースファイバーの集結体を弛緩するためか、ファイバー状のセルロース(セルロースファイバー、特にセルロースナノファイバー)が形成される。特に、セルロース含有成分として、リグノセルロースのような非結晶成分を含むセルロース含有成分を使用すると、フルオレン骨格を有する化合物により、非結晶成分(例えば、リグニン及びヘミセルロース)が選択的に可溶化(又は溶解)又は抽出されるとともに、セルロースファイバーの集結体が弛緩される。なお、非結晶成分は、その一部又は全部が、非結晶成分の分解物の形態でフルオレン骨格を有する化合物に抽出される場合が多い。リグニンなどの非結晶成分が可溶化又は抽出される理由は定かではないが、フルオレン骨格を有する化合物が、セルロースの不定形構造に浸透して非結晶成分と反応しつつ非結晶成分を分解するものと考えられる。
混合において、セルロース含有成分とフルオレン骨格を有する化合物との割合(混合割合)は、セルロース含有成分中の非結晶成分の割合などにもよるが、例えば、前者/後者(質量比)=99/1〜1/99(例えば、95/5〜5/95)、好ましくは93/7〜7/93(例えば、90/10〜10/90)、さらに好ましくは85/15〜5/95(例えば、80/20〜6/94)、特に75/25〜5/95(例えば、70/30〜7/93)程度であってもよく、通常70/30〜10/90程度であってもよい。
なお、混合工程では、本発明の効果を害しない範囲であれば、フルオレン骨格を有する化合物に加えて、セルロース含有成分の可溶化を促進させるための可溶化助剤を併用してもよい。可溶化助剤成分としては、ヒドロキシ化合物、窒素含有環式ケトン、アミド類、スルホキシド類などが使用でき、これらの成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
ヒドロキシ化合物は、多価アルコール及びフェノール類から選択された少なくとも一種で構成されていてもよい。多価アルコールとしては、2価アルコール[例えば、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリC2−5アルキレングリコールなど)など];3価以上のポリオール[例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなど]が例示できる。フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ビスフェノール(ビスフェノールA,Sなど)などが例示できる。ヒドロキシ化合物は、反応系又は加熱処理系において、反応性であってもよく非反応性であってもよい。
窒素含有環式ケトンとしては、N−メチル−2−ピロリドンなどが例示でき、アミド類としては、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが例示できる。スルホキシド類としては、ジメチルスルホキシドなどが例示できる。これらの成分は反応系又は加熱処理系において、非反応性であってもよく反応性であってもよい。
これらの可溶化助剤成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい可溶化助剤成分としては、フェノール類、多価アルコール(例えば、二価又は三価アルコール)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、特にグリセリンなどの多価アルコールが好ましい。
なお、可溶化助剤成分の沸点は、例えば、150℃以上(例えば、150〜300℃)、好ましくは160〜298℃、さらに好ましくは170〜296℃(例えば、180〜295℃)程度であってもよい。
可溶化助剤を使用する場合、フルオレン骨格を有する化合物と、可溶化助剤成分との割合は、例えば、前者/後者(質量比)=99/1〜20/80、好ましくは98/2〜50/50(例えば、97/3〜55/45)、さらに好ましくは96/4〜60/40(例えば、95/5〜65/35)程度であってもよい。
また、混合は、本発明の効果を害しない範囲であれば、酸触媒の存在下で行ってもよい。酸触媒を使用すると、可溶化を効率よく進行させることができる場合がある。酸触媒(又は酸成分)としては、例えば、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸など)、有機酸[例えば、カルボン酸(ギ酸、酢酸などの脂肪族カルボン酸)、ヒドロキシカルボン酸(例えば、シュウ酸、酒石酸、クエン酸など)、スルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸など)など]、ルイス酸(例えば、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化亜鉛など)などが例示できる。これらの酸触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの酸触媒のうち、硫酸などの無機酸が好ましい。
酸触媒を使用する場合、酸触媒の使用割合は、フルオレン骨格を有する化合物100質量部に対して、例えば、0.005〜10質量部、好ましくは0.01〜8質量部、さらに好ましくは0.05〜5質量部程度であってもよい。
なお、反応条件によっては、セルロースそのものを分解させる場合があるので、酸触媒の種類や混合条件に応じて、酸触媒の使用には注意を要する。そのため、本発明では、酸触媒を使用することなく反応させてもよい。
また、混合は、必要に応じて、溶媒(後述の溶媒など)の存在下で行ってもよい。
混合は、フルオレン骨格を有する化合物の性状(例えば、液状であるか固体状であるか)や、混合時の圧力などに応じて選択できるが、通常、加温下(又は加熱下)で行ってもよい。加熱温度としては、例えば、100〜300℃(例えば、120〜250℃)、好ましくは150〜300℃(例えば、160〜300℃)、さらに好ましくは165〜270℃(例えば、165〜250℃)、特に170〜250℃程度であってもよい。加熱混合は、不活性ガス雰囲気中、又は空気中で、減圧下、常圧又は加圧下(例えば、0.05〜15MPa程度の圧力下)で行うことができる。
なお、混合は、通常、フルオレン骨格を有する化合物が液状となる状態で行う場合が多い。
混合時間又は加熱時間(加熱混合時間)は、混合温度(又は反応温度)などに応じて選択でき、例えば、10分以上(例えば、20分〜24時間)、好ましくは30分以上(例えば、40分〜12時間)程度であってもよい。
混合(又は加熱混合)を行うための装置の種類は、特に制限されず、反応釜などのバッチ式反応装置であってもよく、連続反応装置であってもよい。特に、押出機を利用すると、セルロース含有成分を解繊しつつ、非結晶成分を効率よく可溶化できる。なお、装置は、開放型の装置ではなく、通常、密閉可能な装置が利用される。
(分離工程)
上記混合工程を経て、セルロース含有成分中のセルロースファイバー集結体が弛緩され、セルロースファイバーが形成されるが、分離工程では、このような混合工程後の混合物から、少なくともフルオレン骨格を有する化合物を分離し、セルロース(セルロースファイバー)を得る。なお、セルロース含有成分が非結晶成分を含む場合、フルオレン骨格を有する化合物とともに非結晶成分が分離される。非結晶成分は、リグニンなどとしてそのまま、又はさらに分解された分解物として分離されてもよい。
すなわち、前記のように、セルロース含有成分として、リグニン、不定形セルロース、ヘミセルロースなどの非結晶成分を含むセルロース含有成分(リグノセルロースなど)を用いた場合、このような非結晶成分は、フルオレン骨格を有する化合物に可溶化又は抽出され、前記混合物中に含まれている。なお、このような非結晶成分は、混合工程を経て、その一部又は全部が、分解された分解物の形態で混合物中に含まれている場合が多い。すなわち、混合物中には、セルロース(セルロースファイバー)と、フルオレン骨格を有する化合物と、フルオレン骨格を有する化合物に抽出された非結晶成分[通常、少なくとも非結晶成分の分解物(例えば、リグニン分解物、ヘミセルロース分解物など)]とが含まれている。そして、このような非結晶成分は、フルオレン骨格を有する化合物に溶解した(又は抽出された)状態で混合物に含まれている場合が多い。そのため、このような混合物の分離工程では、フルオレン骨格を有する化合物とともに、前記混合工程において可溶化又は抽出された非結晶成分(例えば、リグニンを含む非結晶成分)を分離してもよい。
分離方法としては、特に限定されず、慣用の方法を利用できる。例えば、前記混合物を、適当な溶媒(例えば、フルオレン骨格を有する化合物を溶解可能な溶媒)で洗浄(又は抽出)することにより、混合物からフルオレン骨格を有する化合物を分離してもよい。
また、抽出された非結晶成分を含む混合物では、濾過などにより、フルオレン骨格を有する化合物と、このフルオレン骨格を有する化合物に抽出された(又は溶解した)非結晶成分とをそのまま液状成分などとして分離してもよく、前記と同様に、適当な溶媒(例えば、フルオレン骨格を有する化合物、非結晶成分のいずれも溶解可能な溶媒)で洗浄して、フルオレン骨格を有する化合物と、非結晶成分とを混合物から分離してもよい。
代表的には、混合物を、溶媒で洗浄することにより、フルオレン骨格を有する化合物(及び非結晶成分)を溶出又は抽出し、混合物から分離してもよい。
溶媒の種類は、フルオレン骨格を有する化合物を溶解可能であれば特に限定されず、炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素など)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル類(例えば、エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトンなどのジアルキルケトン)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、カルビトール類(メチルカルビトールなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類など)、アミド類(ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、ニトリル類(アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。
これらの溶媒のうち、アルコール類(特に、メタノール)、環状エーテル類(特に、1,4−ジオキサン)、ニトリル類などが好ましい。また、溶媒は、水との混合溶媒であってもよい。
なお、分離工程では、さらに、慣用の方法(例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段)を利用してもよい。
なお、前記分離工程において、フルオレン骨格を有する化合物や非結晶成分は分離されるが、後述するように、フルオレン骨格を有する化合物や非結晶成分の一部を分離することなくセルロースファイバーに残存させてもよい。
また、分離工程において分離されたフルオレン骨格を有する化合物は回収することができ、回収されたフルオレン骨格を有する化合物は、再度混合工程で使用してもよい。例えば、フルオレン骨格を有する化合物と、抽出された非結晶成分とを含む混合物から、慣用の精製方法を利用して、フルオレン骨格を有する化合物を回収してもよい。
上記のようにして、混合物から、フルオレン骨格を有する化合物、さらには、非結晶成分及び/又はその分解物が分離され、セルロースが得られる。なお、セルロースは、通常、原料としてのセルロース含有成分中のセルロースの形態を反映して、ファイバー状のセルロース(セルロースファイバー)として得られる。なお、セルロースは、少なくともファイバー状のセルロースを含んでいる場合が多いが、その一部が、粉粒状などの形態で含まれていてもよい。
このようなセルロースファイバーは、さらに、慣用の方法(例えば、濾過、濃縮などの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段)を利用して精製してもよい。
(解繊工程)
上記分離工程によりセルロースファイバーが形成される。本発明の方法では、必ずしも必要ではないが、より一層セルロースファイバーを弛緩させるため、分離工程後、さらに、分離工程を経て得られたセルロースファイバー(粗セルロースファイバー)を解繊する解繊工程を含んでいてもよい。
解繊工程において、解繊は、通常、セルロースファイバー(又はセルロース)を溶媒中で解繊処理することにより行うことができる。溶媒としては、前記例示の溶媒と同様の溶媒の他、水などが挙げられる。解繊は、通常、セルロースを溶解しない(又はほとんど溶解しない)溶媒(又はセルロースに対する貧溶媒)にセルロースファイバーを分散させて行ってもよい。代表的な溶媒(分散媒)は、水である。
解繊方法(解繊処理)としては、セルロースをさらに弛緩させることができる方法であれば特に限定されないが、例えば、機械的処理[例えば、ホモジナイザー、ミル(ビーズミル、ボールミルなど)、ミキサー、グラインダー、ペイントシェーカなどの分散メディアを用いた解繊処理]、超音波処理などが挙げられる。解繊処理は、単独で又は2種以上組み合わせて行ってもよい。
(セルロースファイバー)
上記のようにしてセルロースが得られる。そして、このようなセルロースは、前記のように、通常、ファイバー[又はファイバー(繊維)状のセルロース)]の形態である。
前記フルオレン骨格を有する化合物によりセルロース構造を弛緩させて(さらには非結晶成分を抽出する)ので、比較的低次構造を反映したセルロースファイバー(又は繊維状のセルロース)が得られる。例えば、セルロースファイバーの平均繊維径は、0.5nm〜1μm、好ましくは1〜500nm、さらに好ましくは2〜100nm(例えば、3〜50nm)程度であってもよい。また、セルロースファイバーの平均繊維長は、10nm〜100μm、好ましくは50nm〜80μm、さらに好ましくは100nm〜50μm程度であってもよい。
通常、本発明の方法では、繊維径がナノメータサイズ(又はナノメータオーダ)のセルロースファイバー、すなわち、セルロースナノファイバーが得られる場合が多い。
本発明では、前記のように分離工程においてフルオレン骨格を有する化合物が除去されており、高品質で高結晶性のセルロースファイバーが得られるが、このような成分の一部が残存する形態でセルロースファイバーに含まれていてもよい。このような残存するフルオレン骨格を有する化合物は、セルロースに含まれるヒドロキシ基を修飾するなどによりセルロースファイバーに含まれており、セルロースファイバーの疎水性や耐熱性などを向上させる成分として作用する。そのため、セルロースファイバーは、フルオレン骨格を有する化合物を含んでいるのが好ましい。なお、セルロースファイバーにおけるフルオレン骨格を有する化合物の割合は、例えば、0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.05〜5質量%(例えば、0.1〜3質量%)程度であってもよい。
また、セルロースファイバーには、同様に、非結晶成分(例えば、リグニン、ヘミセルロース、これらの分解物)の一部が、セルロースファイバーに残存していてもよい。例えば、リグニンやその分解物は、セルロースファイバーの耐熱性を向上させたり、セルロースファイバーのポリイミドに対する分散性(セルロースファイバーとポリイミドとの親和性)を向上できる場合がある。なお、セルロースファイバーにおける非結晶成分及び/又はその分解物(例えば、リグニン分解物など)の割合は、例えば、0.001〜20質量%、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.05〜5質量%(例えば、0.1〜3質量%)程度であってもよい。
なお、セルロースファイバーは、用途に応じて慣用の方法で処理することにより、所望の形状又は形態(例えば、粉粒状などの非繊維状の形態)とすることもできる。
また、セルロースファイバー(又はセルロース)は、誘導体化してもよい。誘導体化により、誘導体化されたセルロースの繊維が得られる。このようなセルロースの誘導体としては、後述の複合材料の用途などに応じて適宜選択でき、例えば、エステル化されたセルロース[又はセルロースエステル、例えば、アシル化されたセルロース(例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースC2−4アシレート、ラウロイル化されたセルロース、ステアロイル化されたセルロース、ベンゾイル化されたセルロースなど)など]、エーテル化されたセルロース[又はセルロースエーテル、例えば、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロースなどのC1−4アルキルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシC2−4アルキルセルロース)、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロースなど)など]、シアノエチル化されたセルロースなどの他、カップリング剤(例えば、シランカップリング剤など)で処理されたセルロースなどが挙げられる。
なお、誘導体化されたセルロースは、慣用の方法で得ることができる。例えば、アシル化されたセルロース(セルロースファイバー)は、セルロース(セルロースファイバー)とアシル化剤(例えば、無水酢酸など)とを反応させることにより得ることができる。
(樹脂組成物又は複合材料)
前記セルロース(特に、セルロースナノファイバーなどのセルロースファイバー)又はその誘導体(例えば、セルロースエステルファイバーなど)は、ポリイミドと混合することにより、高強度、高耐熱性などの優れた特性を有する樹脂組成物(複合材料)を形成できる。なお、セルロース(セルロースファイバー)を誘導体化することにより、樹脂などに対する分散性が向上する場合がある。
また、当該セルロース(セルロースファイバーなど)又はその誘導体は、フルオレン骨格(例えば、9,9−ビスアリールフルオレン骨格)を有するポリイミドに対する親和性に優れており、このような樹脂との複合材料を好適に形成してもよい。
〔2.6.4〕波長350〜400nmの範囲に吸収極大を有する化合物
本発明のポリイミドフィルムは、波長350〜400nmの範囲に吸収極大を有する化合物を含有することも好ましく、特に波長370nmでの透過率が10%以下である化合物であることが好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。
例えば、市販のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
また、以下に示す化合物Uを用いることも好ましい。
(化合物U)
化合物Uは波長350〜400nmの範囲に吸収極大を有する。化合物Uとしては、メロシアニン系、ベンゾジチオール系、ベンゾオキサゾール系のいずれかから選ばれる光吸収剤等を好適に用いることができる。具体的には、特開2010−70478号公報、特表2009−519993号公報等に記載された光吸収剤を参考にすることができる。特開2009−67973号公報の段落0019〜0046に記載の光吸収剤、及び特開2009−292753号公報の段落0014〜0024に記載の光吸収剤も好ましい。また、下記一般式(9.1)で表される化合物は本発明に用いられる光吸収剤として特に好ましい。
[R
1、R
2、R
3及びR
4は、互いに独立して水素原子又は1価の置換基を表す。
R
5及びR
6は、互いに独立して水素原子又は1価の置換基を表す。X
1、X
2、X
3及びX
4は、互いに独立してヘテロ原子を表す。]
一般式(9.1)で表される化合物については、特開2009−209343号公報の[0020]〜[0097]に記載されており、本発明においても同様であるが、本発明においては、一般式(9.1)で表される化合物が炭素数8以上の直鎖アルキル基を有さないことが好ましい。
一般式(9.1)において、R1、R2、R3及びR4が1価の置換基を表す場合、1価の置換基としては、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基が好ましく、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基がより好ましく、シアノ基、アルコキシカルボニル基が更に好ましい。R1〜R4の炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
一般式(9.1)において、R5及びR6が1価の置換基を表す場合、1価の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ニトロ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、スルホ基、アルキルチオ基、アリールチオ基が好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシ基、アシルオキシ基がより好ましく、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基が更に好ましい。R5及びR6の炭素数は1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。
一般式(1)において、X1、X2、X3及びX4が表すヘテロ原子としては、ホウ素原子、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子、硫黄原子、セレン原子、テルル原子が好ましく、窒素原子、酸素原子、硫黄原子がより好ましく、窒素原子、硫黄原子がさらに好ましく、硫黄原子が特に好ましい。
一般式(9.1)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、一般式(9.1)で表される化合物は下記具体例に限定されるものではない。
また、化合物Uとしては、下記一般式(9.2)で表される化合物も好ましい。
(Y
41及びY
42はそれぞれ独立して水素原子、又は1価の置換基を表す。V
41及びV
42はそれぞれ独立して水素原子又は1価の置換基を表す。)
一般式(9.2)で表される化合物については、特開2009−096972号公報の[0037]〜[0062]に記載されており、本発明においても同様であるが、本発明においては、一般式(9.2)で表される化合物が炭素数8以上の直鎖アルキル基を有さないことが好ましい。
一般式(9.2)において、Y41及びY42の一方がシアノ基であり、他方は置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、置換若しくは無置換のヘテロ環カルボニル基、置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、又は、置換若しくは無置換のアリールスルホニル基であることが好ましく、Y41及びY42の一方がシアノ基であり、他方が置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、又は、置換もしくは無置換のヘテロ環カルボニル基であることがより好ましく、一方がシアノ基であり他方が、置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、又は置換もしくは無置換のアリールカルボニル基であることが更に好ましい。
一般式(9.2)において、V41及びV42が1価の置換基を表す場合、1価の置換基としては、ハロゲン原子、メルカプト基、シアノ基、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルキルアミノカルボニルオキシ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルホニルアミノ基、アミノ基、置換アミノ基、アンモニウム基、ヒドラジノ基、ウレイド基、イミド基、アルキルもしくはアリールチオ基、無置換もしくは置換アルケニルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、無置換アルキル基、置換アルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基が好ましく、シアノ基、アシル基、アシルオキシ基、アルキルアミノカルボニルオキシ基がより好ましく、アシルオキシ基、アルキルアミノカルボニルオキシ基が更に好ましい。Y41及びY42の炭素数は1〜18が好ましく、1〜10がより好ましい。
一般式(9.2)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、一般式(9.2)で表される化合物は下記具体例に限定されるものではない。
化合物Uは波長350〜400nmの範囲に吸収極大を有し、かつ400nmより長波長域のモル吸光係数が1000以下であることが好ましい。400nmより長波長域に吸収を有さないことにより、より黄色味の少ないフィルムを得ることができる。
また、下記式(9.3)及び一般式(9.4)で表される構造を有する化合物も好適である。
一般式(9.4)において、R1、R2は炭素数1〜20のアルキル基、又はアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を表す。
〔2.6.5〕フィルム硬度を向上する化合物
本発明のポリイミドフィルムは、フィルムの硬度を向上する下記一般式(10.1)で表される構造を有する化合物Vを含有することが好ましい。
一般式(10.1)中、R11、R13、及びR15は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基又は炭素数6〜20の芳香族基を表す。ただし、R11、R13、及びR15の中に、合計3個以上の環構造を有する。
上記R11、R13、及びR15として採用しうる上記炭素数1〜20のアルキル基は、その炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましく、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。
上記R11、R13、及びR15として採用しうる上記炭素数3〜20のシクロアルキル基は、その炭素数が3〜10であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。当該シクロアルキル基の具体例として、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられ、シクロヘキシル基が特に好ましい。
上記R11、R13、及びR15として採用しうる上記炭素数2〜20のアルケニル基は、その炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
上記R11、R13、及びR15として採用しうる上記6〜20の芳香族基は、芳香族炭化水素基であっても芳香族複素環基であってもよいが、芳香族炭化水素基であることが好ましい。当該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
R11、R13、及びR15は置換基を有してもよいが、当該置換基としては、特に制限なく、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10で、例えばメチル、エチル、イソプロピルt−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、ビニ、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エチニ、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシ等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニル、1−ナフチル、4メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましは炭素数0〜20のヘテロ環基で、環構成ヘテロ原子が酸素原子、窒素原子、硫黄原子がましく、5又は6員環でベンゼン環やヘテロ環で縮環していてもよく、該環が飽和環、飽和環、芳香環であってもよく、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリ、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26で、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、炭素数は20以下が好ましく、例えば、アセチル、ピバロイル、アクリロイル、メタクロロイル、ベンゾイル、ニコチノイル等)、アリーロイルアルキル基、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20で、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20で、例えば、フェニルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル等)、アミノ基(アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含み、好ましくは炭素数0〜20で、例えば、アミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ、1−ピロリジニル、ピペリジノ、モルホニル等)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数0〜20で、例えば、N,N−ジメチルスルホンアミド、N−フェニルスルホンアミド等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20で、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20で、例えば、アセチルアミノ、アクリロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチンアミド等)、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基又はハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。
R11、R13、及びR15が有しうる上記置換基は、さらに上記置換基を有していてもよい。
ここで、R11、R13、及びR15の各基が有してもよい上記の置換基のうち、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アシル基が好ましい。
一般式(I)で表される化合物のうち、好ましい化合物を列挙すると以下の通りである。
・R11、R13、及びR15のいずれか1つがアラルキル基である化合物
なお、アラルキル基はアルキル基にアリール基が置換した化合物であり、アラルキル基のなかでも、アルキル基に1個又は2個のアリール基が置換したもの(2個のアリール基が置換した場合、同一炭素原子に置換していることが好ましい。)が好ましい。さらに、アルキル基にアリール基とアシル基(好ましくはアリーロイル基)が置換したものも好ましい。
・R11、R13、及びR15のいずれか1つが、シクロアルキル基を含む基で、好ましくは、シクロアルキル基を含む基がシクロアルキル基である化合物
上記「R11、R13、及びR15の中に、合計3個以上の環構造を有する」における環構造には、R11、R13、又はR15の基本骨格そのものが環構造をとる場合の他、R11、R13、又はR15が有する置換基が環構造を有する形態も含まれる。
上記環構造としては、環状飽和炭化水素構造又は芳香環構造(芳香族炭化水素構造又は芳香族複素環構造)が好ましい。また、縮環構造であってもよい。
上記環構造が環状飽和炭化水素構造である場合、当該環状飽和炭化水素構造は炭素数3〜20シクロアルキル基として存在することが好ましい。より具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基として存在することがより好ましく、シクロヘキシル基として存在することが特に好ましい。
また、上記環構造が芳香環構造である場合、芳香族炭化水素構造であることが好ましい。当該芳香族炭化水素構造は、炭素数6〜20のアリール基として存在することが好ましい。より具体的には、フェニル基、ナフチル基として存在することがより好ましく、フェニル基として存在することが特に好ましい。
一般式(10.1)で表される化合物は、製膜時の溶解安定性の観点から、R11、R13、及びR15が、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましい。また、R11、R13、及びR15が、それぞれ1個以上の環構造を有することがより好ましく、それぞれ環構造を1個有するのがさらに好ましい。
より好ましくは、上記一般式(10.1)で表される化合物は、下記一般式(10.1−a)で表される。
一般式(10.1−a)中、L1〜L3は各々独立に、単結合又は炭素数1以上の2価の連結基を表す。Ar1〜Ar3は各々独立に、炭素数6〜20のアリール基を表す。
一般式(10.1−a)中、L1〜L3は各々独立に、単結合又は炭素数1以上の2価の連結基を表す。上記L1〜L3は単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基であることがより好ましく、単結合、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましく、単結合又はメチレン基であることが特に好ましい。溶解安定性を考慮すると、L1〜L3のうちの少なくとも一つは炭素数1〜6のアルキレン基であることが好ましい。前記2価の連結基は置換基を有していてもよく、当該置換基は、前述のR11、R13、及びR15が有しうる置換基と同義である。
一般式(10.1−a)中、Ar1〜Ar3は各々独立に、炭素数6〜20のアリール基を表し、好ましくはフェニル基、ナフチル基であり、フェニル基がさらに好ましい。Ar1〜Ar3は置換基を有してもよく、当該置換基は、前述のR11、R13、及びR15が有しうる置換基と同義である。Ar1〜Ar3は置換基を有さないか、又は置換基を有する場合には、当該置換基は環構造を有さないことが好ましい。
一般式(10.1)又は(10.1−a)で表される化合物の分子量は250〜1200であることが好ましく、300〜800であることがより好ましく、350〜600であることが特に好ましい。分子量が250以上であればフィルムから揮散しにくいため好ましく、1200以下であればヘイズが低くなるため好ましい。
以下に、一般式(10.1)又は(10.1−a)で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。下記例示化合物中、Meはメチル基を表す。
上記一般式(10.1)で表される化合物は、尿素誘導体とマロン酸誘導体とを縮合させるバルビツール酸の合成法を用いて合成できることが知られている。N上に置換基を2つ有するバルビツール酸は、N,N′二置換型尿素とマロン酸クロリドを加熱するか、マロン酸と無水酢酸などの活性化剤とを組合わせて加熱することにより得られ、例えば、Journal of the American Chemical Society、第61巻、1015頁(1939年)、Journal of Medicinal Chemistry、第54巻、2409頁(2011年)、Tetrahedron Letters、第40巻、8029頁(1999年)、WO2007/150011号公報などに記載の方法を好ましく用いることができる。
また、縮合に用いるマロン酸は、無置換のものでも置換基を有するものでもよく、R15に相当する置換基を有するマロン酸を用いれば、バルビツール酸を構築することにより一般式(I)で表される化合物を合成することができる。また、無置換のマロン酸と尿素誘導体を縮合させると5位が無置換のバルビツール酸が得られるので、これを修飾することにより一般式(10.1)で表される化合物を合成してもよい。
なお、一般式(10.1)で表される化合物の合成法は上記に限定されるものではない。
一般式(10.1)で表される化合物のポリイミドフィルム中の含有量は特に限定されないが、フィルム中の樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜15質量部であることがより好ましく、0.3〜10質量部であることが特に好ましい。
添加量が0.1質量部以上であれば、透湿度を効果的に下げることができ、20質量部以下であれば、ヘイズを低くすることができるため好ましい。
本発明のポリイミドフィルムは下記一般式(10.2)で表される化合物を用いることも好ましい。
(一般式(10.2)中、R21〜R27及びR29〜R31は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R28は、水素原子又は非共役置換基を表し、X21及びX22は、それぞれ独立に、単結合又は脂肪族連結基であり、L21は、単結合、−N(R32)−又は−C(R33)(R34)−を表し、R32〜R34は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。)
R21〜R27及びR29〜R30は、それぞれ、水素原子又は置換基を表し、水素原子又は非共役置換基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基がより好ましく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、フッ素原子及び/又は塩素原子で置換されたアルキル基、無置換のアルキル基、アルコキシ基がさらに好ましく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、フッ素原子及び/又は塩素原子で置換された、炭素数1〜3のアルキル基、無置換の炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基がよりさらに好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
R28は、水素原子又は非共役置換基である。本発明における、非共役置換基とは、共役性基を有さない置換基をいう。共役性基としては、カルボニル基、イミノ基、ビニル基、シアノ基、ニトロ基、芳香族基等が挙げられる。R28は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基が好ましく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、フッ素原子及び/又は塩素原子で置換されたアルキル基、無置換のアルキル基、アルコキシ基がより好ましく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、フッ素原子及び/又は塩素原子で置換された、炭素数1〜3のアルキル基、無置換の炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
R31は、水素原子又は置換基を表し、水素原子又は非共役置換基であることが好ましい。R31は、水素原子、アルコール基、アルキル基、がより好ましく、水素原子、炭素数1〜3の1級アルコール基、炭素数1〜5のアルキル基が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。
X21及びX22は、それぞれ、単結合又は脂肪族連結基である。
脂肪族連結基とは、炭素原子を必須とし、非芳香族性の基をいう。具体的には、脂肪族炭化水素基(例えば、アルキレン基、アルキニレン基、又は、アルケニレン基)、又は、脂肪族炭化水素基と他の基の組み合わせからなる基が例示され、脂肪族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基と、−O−、−C(=O)−及び−S−の少なくとも1種の組み合わせからなる基が例示される。より好ましくは、アルキレン基、又は、アルキレン基と−O−の組み合わせからなる基であり、さらに好ましくはアルキレン基であり、特に好ましくは無置換のアルキレン基である。脂肪族連結基が有する炭素数は、1〜3が好ましい。
L21は、単結合、−N(R32)−又は−C(R33)(R34)−を表し、R32〜R34は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。
R32は、水素原子又は置換基を表し、水素原子又は非共役置換基であることが好ましい。R32は、水素原子、アルコール基、アルキル基、下記一般式(10.3)で表される基が好ましく、水素原子、炭素数1〜3の1級アルコール基、炭素数1〜5のアルキル基、下記一般式(10.3)で表される基がより好ましく、水素原子、下記一般式(10.3)で表される基がさらに好ましく、下記一般式(10.3)で表される基が特に好ましい。
R33及びR34は、それぞれ、水素原子又は置換基を表し、水素原子又は非共役置換基であることが好ましい。
R33及びR34は、それぞれ、水素原子、アルコール基、アルキル基、ヒドロキシ基、下記一般式(10.4)で表される基、下記一般式(10.5)で表される基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜3の1級アルコール基、炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、下記一般式(10.4)で表される基、下記一般式(10.5)で表される基がさらに好ましい。
(一般式(10.4)中、R
26、R
27及びR
29〜R
31は、それぞれ、水素原子又は置換基を表し、R
28は、水素原子又は非共役置換基を表し、X
22は、単結合又は脂肪族連結基を表す。)
(一般式(10.5)中、R
21〜R
25は、それぞれ、水素原子又は置換基を表し、X
21は、単結合又は脂肪族連結基を表す。)
(一般式(10.3)中、R
26、R
27、R
29、及びR
30は、それぞれ、水素原子又は置換基を表し、R
28は、水素原子又は非共役置換基を表す。)
一般式(10.4)におけるR
26〜R
31及びX
22は、それぞれ、一般式(10.2)におけるR
26〜R
31及びX
22と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(10.5)におけるR21〜R25及びX21は、それぞれ、一般式(10.2)におけるR21〜R25及びX21と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(10.3)におけるR26〜R30は、それぞれ、それぞれ、一般式(10.2)におけるR26〜R30と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(10.2)で表される化合物の分子量は250〜600であることが好ましく、350〜500であることがより好ましい。
以下に本発明で好ましく用いられる一般式(10.2)で表される化合物を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
〔2.6.6〕酸化防止剤
本発明のポリイミドフィルムは、酸化防止剤を含有することもできる。酸化防止剤は劣化防止剤とも称される。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
市販の酸化防止剤としてはBASFジャパン社製Irganox1076などが挙げられる。
これらの化合物の添加量は、ポリイミドフィルムに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
〔3〕その他添加剤
〔3.1〕微粒子
本発明のポリイミドフィルムには、取扱性を向上させるため、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などのマット剤を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるため、好ましい。
微粒子の1次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、さらに好ましくは、5〜16nmであり、特に好ましくは、5〜12nmである。
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の2次粒子を形成してポリイミドに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmであり、さらに好ましくは0.2〜0.6μmである。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の1次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、1次平均粒子径とする。
〔4〕本発明のポリイミドフィルムの製造方法
本発明のポリイミドフィルムの製造方法の具体例について以下説明する。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、上述のポリアミド酸又はポリイミドを、溶媒に溶解してドープを調製する工程(ドープ調製工程)と、前記ドープを支持体上に流延して流延膜を形成する工程(流延工程)と、支持体上で流延膜から溶媒を蒸発させる工程(溶媒蒸発工程)、流延膜を支持体から剥離する工程(剥離工程)、得られたフィルムを乾燥させる工程(第1乾燥工程)、フィルムを延伸する工程(延伸工程)、延伸後のフィルムを更に乾燥させる工程(第2乾燥工程)、得られたポリイミドフィルムを巻き取る工程(巻取り工程)、さらに必要であればフィルムを加熱処理してイミド化させる工程(加熱工程)等により行われることが好ましい。
以上の工程を図をもって説明する。
図1は、本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程、乾燥工程及び巻取り工程の一例を模式的に示した図である。
分散機によって溶媒とマット剤を分散させた微粒子分散液は仕込み釜41から濾過器44を通過しストック釜42にストックされる。一方主ドープであるシクロオレフィン樹脂は溶媒とともに溶解釜1にて溶解され、適宜ストック釜42に保管されているマット剤が添加されて混合され主ドープを形成する。得られた主ドープは、濾過器3、ストック釜4から濾過器6によって濾過され、合流管20によって添加剤が添加されて、混合機21で混合されて加圧ダイ30に液送される。
一方、添加剤(例えば紫外線吸収剤、酸化防止剤など)は、溶媒に溶解され、添加剤仕込み釜10から濾過器12を通過してストック釜13にストックされる。その後、濾過器15を通して導管16を経由して合流管20、混合機21によって主ドープと混合される。
加圧ダイ30に液送された主ドープは、金属ベルト状の支持体31上に流延されてウェブ32を形成し、所定の乾燥後剥離位置33で剥離されフィルムを得る。剥離されたウェブ32は、第1乾燥装置34にて多数の搬送ローラーに通しながら、所定の残留溶媒量になるまで乾燥された後、延伸装置35によって長手方向又は幅手方向に延伸される。延伸後、第2乾燥装置36によって所定の残留溶媒量になるまで、搬送ローラーに通しながら乾燥し、巻取り装置37によって、ロール状に巻取られる。
以下、各工程について具体的に説明する。
〔4.1〕ドープ調製工程
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、少なくとも前記無色透明である可溶性ポリイミドと前記有機系添加剤を低沸点溶媒に溶解してドープを調製し、当該ドープを用いて溶液流延製膜方法によって製膜することが好ましい。
前記低沸点溶媒は、沸点80℃以下の低沸点溶媒を主溶媒として用いることが好ましい。ここで「主溶媒として用いる」とは、混合溶媒であれば、本発明に係る前記低沸点溶媒を溶媒全体量に対して55質量%以上を用いることをいい、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上用いることである。もちろん単独使用であれば100質量%となる。
前記低沸点溶媒は、前記無色透明である可溶性ポリイミドと前記有機系添加剤及びその他の添加剤を同時に溶解するものであればよく、例えば、塩素系溶媒としては、ジクロロメタン、非塩素系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができる。
中でも沸点80℃以下の低沸点溶媒としては、上記溶媒のなかで、ジクロロメタン(40℃)、酢酸エチル(77℃)、メチルエチルケトン(79℃)、テトラヒドロフラン(66℃)、アセトン(56.5℃)、及び1,3−ジオキソラン(75℃)の中から選択される少なくとも1種を主溶媒として含有することが好ましい(括弧内はそれぞれ沸点を表す。)。
また、混合溶媒の場合に含有される溶媒としては、本発明に係るポリイミド及び有機系添加剤を溶解し得るものであれば、本発明の効果を阻害しない範囲で用いることができ、上記挙げた溶媒以外として、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシド、m−クレゾール、フェノール、p−クロルフェノール、2−クロル−4−ヒドロキシトルエン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジオキサン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、シクロペンタノン、イプシロンカプロラクタム、クロロホルム等が使用可能であり、2種以上を併用しても良い。また、これらの溶媒と併せて、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の貧溶媒を、本発明に係るポリイミド及び有機系添加剤が析出しない程度に使用しても良い。
また、アルコール系溶媒を用いることもできる。当該アルコール系溶媒が、メタノール、エタノール及びブタノールから選択されることが、剥離性を改善し、高速度流延を可能にする観点から好ましい。中でもメタノール又はエタノールを用いることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になる。
ポリイミド、有機系添加剤、その他の化合物の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、セルロースアシレートフィルムの製造に係る特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載されている高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
調製したドープは、送液ポンプ等により濾過器に導いて濾過する。例えば、ドープの主たる溶剤がジクロロメタンの場合、当該ジクロロメタンの1気圧における沸点+5℃以上の温度で当該ドープを濾過することにより、ドープ中のゲル状異物を取り除くことができる。好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。
また、多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。
返材とは、例えばポリイミドフィルムを細かく粉砕した物で、ポリイミドフィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでフィルムの規定値を越えたポリイミドフィルム原反が使用される。
また、ドープ調製に用いられる樹脂の原料としては、あらかじめポリイミド及びその他の化合物などをペレット化したものも、好ましく用いることができる。
〔4.2〕流延膜形成工程
調製したドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通してダイスに送液し、無限に移送する無端の支持体、例えば、ステンレスベルト又は回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、ダイスからドープを流延する。
流延(キャスト)における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、支持体としては、ステンレススティールベルト又は鋳物で表面をめっき仕上げしたドラム、又はステンレスベルト若しくはステンレス鋼ベルト等の金属支持体が好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mの範囲、好ましくは1.5〜3mの範囲、更に好ましくは2〜2.8mの範囲とすることができる。なお、支持体は、金属製でなくとも良い。
金属支持体の走行速度は特に制限されないが、通常は5m/分以上であり、好ましくは10〜180m/分、特に好ましくは80〜150m/分である。金属支持体の走行速度は、高速であるほど、同伴ガスが発生しやすくなり、外乱による膜厚ムラの発生が顕著になる。
金属支持体の走行速度は、金属支持体外表面の移動速度である。
金属支持体の表面温度は特に制限されないが、通常は0℃以上、好ましくは20〜60℃であり、より好ましくは20〜25℃である。
ダイスは、幅方向に対する垂直断面において、吐出口に向かうに従い次第に細くなる形状を有している。ダイスは通常、具体的には、下部の走行方向で下流側と上流側とにテーパー面を有し、当該テーパー面の間に吐出口がスリット形状で形成されている。ダイスは金属からなるものが好ましく使用され、具体例として、例えば、ステンレス、チタン等が挙げられる。本発明において、厚さが異なるフィルムを製造するとき、スリット間隙の異なるダイスに変更する必要はない。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイを用いることが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。厚さが異なるフィルムを連続的に製造する場合であっても、ダイスの吐出量は略一定の値に維持されるので、加圧ダイを用いる場合、押し出し圧力、せん断速度等の条件もまた略一定の値に維持される。また、製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して積層しても良い。
ダイスからのドープの吐出量は好ましくは200〜720g/m2であり、より好ましくは400〜650g/m2である。本発明において、厚さが異なるフィルムを連続的に製造する場合であっても、ダイスからのドープ吐出量は上記範囲内で略一定の値に維持されることが好ましい。当該吐出量が200g/m2以上であると、流延膜が振動及び風等の外乱の影響を受けにくくなるので、膜厚ムラを十分に防止することができる。当該吐出量が720g/m2以下であると、収縮が過度に起きにくく、収縮による膜厚ムラが発生しないので、膜厚ムラを十分に防止できる。
〔4.3〕溶媒蒸発工程
溶媒蒸発工程は、金属支持体上で行われ、流延膜を金属支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる予備乾燥工程である。
溶媒を蒸発させるには、例えば、乾燥機により流延膜側及び金属支持体裏側から加熱風を吹き付ける方法、金属支持体の裏面から加熱液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等を挙げることができる。それらを適宜選択して組み合わせる方法も好ましい。金属支持体の表面温度は全体が同じであっても良いし、位置によって異なっていても良い。加熱風の温度は10〜80℃が好ましい。
金属支持体を加熱する方法においては、温度が高い方が流延膜の乾燥速度を速くできるため好ましいが、余り高すぎると流延膜が発泡したり、平面性が劣化したりする場合があるため10〜30℃で行うことが好ましい。
溶媒蒸発工程においては、流延膜の剥離性及び剥離後の搬送性の観点から、残留溶媒量が10〜150質量%になるまで、流延膜を乾燥することが好ましい。
本発明において、残留溶媒量は下記の式で表すことができる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mは流延膜(フィルム)の所定の時点での質量、NはMのものを200℃で3時間乾燥させた時の質量である。特に、溶媒蒸発工程において達成された残留溶媒量を算出するときのMは剥離工程直前の流延膜の質量である。
〔4.4〕剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発した流延膜を、剥離位置で剥離する。
金属支持体と流延膜とを剥離する際の剥離張力は、通常、60〜400N/mの範囲内であるが、剥離の際に皺が入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
本発明においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜60℃の範囲内とするのが好ましく、10〜40℃の範囲内がより好ましく、15〜40℃の範囲内とするのが最も好ましい。
剥離されたフィルムは、延伸工程に直接送られても良いし、所望の残留溶媒量を達成するように第1乾燥工程に送られた後に延伸工程に送られても良い。本発明においては、延伸工程での安定搬送の観点から、剥離工程後、フィルムは、第1乾燥工程及び延伸工程に順次送られることが好ましい。
〔4.5〕第1乾燥工程
第1乾燥工程は、フィルムを加熱し、溶媒を更に蒸発させる乾燥工程である。乾燥手段は特に制限されず、例えば、熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等を用いることができる。簡便さの観点からは、千鳥状に配置したローラーでフィルムを搬送しながら、熱風等で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は、残留溶媒量及び搬送における伸縮率等を考慮して、30〜200℃の範囲が好ましい。
〔4.6〕延伸工程
金属支持体から剥離されたフィルムを延伸することで、フィルムの膜厚や平坦性、配向性等を制御することができる。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法においては、長手方向及び/又は幅手方向に延伸することが好ましい。
延伸操作は多段階に分割して実施しても良い。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行っても良いし、段階的に実施しても良い。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
すなわち、例えば、次のような延伸ステップも可能である:
・長手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
・幅手方向に延伸→幅手方向に延伸→長手方向に延伸→長手方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮する場合も含まれる。
延伸開始時の残留溶媒量は2〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
当該残留溶媒量は、2質量%以上であれば、膜厚偏差が小さくなり、平面性の観点から好ましく、10質量%以内であれば、表面の凹凸が減り、平面性が向上し好ましい。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法においては、延伸後の膜厚が所望の範囲になるように長手方向及び/又は幅手方向に、好ましくは幅手方向に延伸しても良い。フィルムのガラス転移点(Tg)のうち最も低いTgをTgL、最も高いTgをTgHとしたときに、(TgL−200℃)〜(TgH+50℃)の温度範囲で延伸することが好ましい。上記温度範囲で延伸すると、延伸応力を低下できるのでヘイズが低くなる。また、破断の発生を抑制し、平面性、フィルム自身の着色性に優れたポリイミドフィルムが得られる。延伸温度は、(TgL−150℃)〜(TgH+40℃)の範囲で行うことがより好ましい。
本発明に係るポリイミドフィルムの製造方法では、支持体から剥離された自己支持性を有するフィルムを、延伸ローラーで走行速度を規制することにより長手方向に延伸することができる。長手方向の延伸倍率は、30〜250℃の温度範囲で1.03〜2.00倍が好ましく、より好ましくは1.10〜1.80倍、更に好ましくは1.20〜1.60倍である。
幅手方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全処理又は一部の処理を幅方向にクリップ又はピンでフィルムの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる。)、中でも、クリップを用いるテンター方式が好ましく用いられる。
長手方向に延伸されたフィルム又は未延伸のフィルムは、クリップに幅方向両端部を把持された状態にてテンターへ導入され、テンタークリップとともに走行しながら、幅方向へ延伸されることが好ましい。幅方向の延伸倍率は、特に限定されないが、30〜300℃の温度範囲で1.03〜2.00倍が好ましく、より好ましくは1.10〜1.80倍、更に好ましくは1.20〜1.60倍である。
幅手方向への延伸に際し、フィルム幅手方向に50〜1000%/minの延伸速度で延伸することが、フィルムの平面性を向上する観点から、好ましい。
延伸速度は50%/min以上であれば、平面性が向上し、またフィルムを高速で処理することができるため、生産適性の観点で好ましく、1000%/min以内であれば、フィルムが破断することなく処理することができ、好ましい。
より好ましい延伸速度は、100〜500%/minの範囲内である。延伸速度は下記式によって定義される。
延伸速度(%/min)=[(d1/d2)−1]×100(%)/t
(上記式において、d1は延伸後の樹脂フィルムの前記延伸方向の幅寸法であり、d2は延伸前の樹脂フィルムの前記延伸方向の幅寸法であり、tは延伸に要する時間(min)である。)
延伸工程では、通常、延伸した後、保持・緩和が行われる。すなわち、本工程は、フィルムを延伸する延伸段階、フィルムを延伸状態で保持する保持段階及びフィルムを延伸した方向に緩和する緩和段階をこれらの順序で行うことが好ましい。保持段階では、延伸段階で達成された延伸倍率での延伸を、延伸段階における延伸温度で保持する。緩和段階では、延伸段階における延伸を保持段階で保持した後、延伸のための張力を解除することによって、延伸を緩和する。緩和段階は、延伸段階における延伸温度以下で行えば良い。
〔4.7〕第2乾燥工程
次いで、延伸後のフィルムを加熱して乾燥させる。熱風等によりフィルムを加熱する場合、使用済みの熱風(溶媒を含んだエアーや濡れ込みエアー)を排気できるノズルを設置して、使用済み熱風の混入を防ぐ手段も好ましく用いられる。熱風温度は、40〜350℃の範囲がより好ましい。また、乾燥時間は5秒〜30分程度が好ましく、10秒〜15分がより好ましい。
また、加熱乾燥手段は熱風に制限されず、例えば、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等を用いることができる。簡便さの観点からは、千鳥状に配置したローラーでフィルムを搬送しながら、熱風等で乾燥を行うことが好ましい。乾燥温度は残留溶媒量、搬送における伸縮率等を考慮して、40〜350℃の範囲がより好ましい。
第2乾燥工程においては、残留溶媒量が0.5質量%以下になるまで、フィルムを乾燥することが好ましい。
〔4.8〕巻取り工程
巻取り工程は、得られたフィルムを巻き取って室温まで冷却する工程である。巻取り機は、一般的に使用されているもので良く、例えば、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻取り方法で巻き取ることができる。
フィルムの厚さは特に制限されず、例えば、1〜200μm、特に1〜50μmであることが好ましい。
巻取り工程においては、延伸搬送したときにテンタークリップ等で挟み込んだフィルムの両端をスリット加工しても良い。スリットした端部は、返材として再利用することが好ましい。ここで、返材とは、フィルムに成形したもののうち、何らかの理由で原料として再利用される部分のことを指し、上記スリットされた端部(耳部ともいう。)や、製造の繰り出し・終端に位置するフィルムの全幅部分、更には、傷やスジ等の外観上の問題で製品として不適合なフィルム等が挙げられる。スリットしたフィルム端部は、1〜30mm幅に細かく断裁された後、溶剤に溶解させて再利用する。
成形されたフィルムのうち返材として再利用される部分の比は、10〜90質量%が好ましく、より好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%である。
製膜工程の途中又は最終的に発生する返材の量により投入量は若干変わるが、通常、ドープ中の全固形分に対する返材の混合率は10〜50質量%程度であり、好ましくは、15〜40質量%程度である。返材の混合率は、できるだけ一定量とすることが生産安定上好ましい。
上述した溶媒蒸発工程から巻取り工程までの各工程は、空気雰囲気下で行っても良いし、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。また、各工程、特に乾燥工程や延伸工程は、雰囲気における溶媒の爆発限界濃度を考慮して行う。
〔4.9〕加熱工程
上記巻取り工程後に、ポリマー鎖分子内及びポリマー鎖分子間でのイミド化を進行させて機械的特性を向上させるべく、上記第2乾燥工程で乾燥したフィルムを更に熱処理する加熱工程を行う。
また、ポリイミド(イミド化率100%)を用いてドープを調製した場合や、上記第2乾燥工程を行うことによりフィルムのイミド化率が100%となった場合であっても、フィルムの残留応力を緩和させる目的で、加熱工程を行う。
なお、上記第2乾燥工程が、加熱工程を兼ねるものであっても良い。
加熱手段は、例えば、熱風、電気ヒーター、マイクロ波等の公知の手段を用いて行われる。電気ヒーターとしては、上記した赤外線ヒーターを用いることができる。
加熱処理条件は、フィルムL*値が30〜55となるようにヒーター出力及び熱風温度等を調整し、最終的な処理条件が200〜450℃の温度範囲内で、30秒〜1時間の範囲で適宜行うのが好ましい。これにより、ポリイミドフィルムの寸法安定性を向上させることができる。加熱工程において、フィルムを急激に加熱すると表面欠点が増加する等の不具合が生じるため、加熱方法は適宜選択することが好ましい。また、加熱工程は、低酸素雰囲気下で行うことが好ましい。
第二乾燥工程及び加熱工程における加熱温度は450℃を超えると、加熱に必要なエネルギーが非常に大きくなることから製造コストが高くなり、更に、環境負荷が増大するため、当該加熱温度は450℃以下にすることが好適である。
なお、巻取り工程後であって、加熱工程の前又は後に、ポリイミドフィルムの幅方向端部をスリットする工程や、ポリイミドフィルムが帯電していた場合にはこれを除電する工程等を更に行うものとしても良い。
〔5〕ポリイミドフィルムの物性
〔5.1〕フィルム長、幅、膜厚
本発明のポリイミドフィルムは、長尺であることが好ましく、具体的には、100〜10000m程度の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、本発明のポリイミドフィルムの幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4m以上であり、特に1.4〜4mであることが好ましい。
フィルムの膜厚は、フレキシブルプリント基板としての強度と透明性の観点から、1〜200μmの範囲内であることが好ましい。膜厚が1μm以上であれば、一定以上のフィルム強度を発現させることができる。膜厚が200μm以下であれば、プリント基板としてフレキシブルである。特に、1〜50μmであることが好ましい。
〔5.2〕ヘイズ
本発明のポリイミドフィルムは、厚さ50μmのサンプルを作製し、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましく、0.3%未満であることがさらに好ましい。ヘイズを1%未満とすることにより、光学用途のフィルムとして、種々なデバイスに適用の幅が広がるという利点がある。
ヘイズは、23℃・55RHの空調室で24時間調湿した試料1枚をJIS K−7136に従って、ヘイズメーター(NDH2000型、日本電色工業(株)製)を使用して測定する。
〔6〕フレキシブルプリント基板、フレキシブルディスプレイ用基板及びフレキシブルディスプレイ用前面板
本発明のフレキシブルプリント基板は、本発明のポリイミドフィルムをベースフィルムとし、これに接着剤を介して金属箔を圧着することによって得られる。ここで用いられる接着剤としては、例えば、アクリル系、ポリイミド系及びエポキシ系接着剤等が挙げられる。
また、接着剤を介してポリイミドフィルムと熱圧着される金属箔は、コスト低減の観点から銅箔であることが好ましいが、アルミニウム、金、銀、アルミニウム、ニッケル、錫等、他の金属箔でも良い。
また、本発明のポリイミドフィルムは、フレキシブルディスプレイ用基板、フレキシブルディスプレイ用前面板としても好適であり、有機エレクトロルミネッセンス表示素子の基板や前面板に適用し、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に具備することも好ましい。
〔7〕LED照明装置
本発明のLED照明装置としては、本発明のポリイミドフィルムを用いてなるものであれば、特に制限されるものではない。
具体的には、LED照明装置は、本発明のポリイミドフィルムを用いた金属部を有するフレキシブルプリント基板を準備する工程、当該基板上にLEDチップを固定する工程、金属部を被覆するように、バリアー層用塗布組成物を塗布して、バリアー層を形成する工程、LEDチップを被覆するように透明樹脂及び蛍光体粒子を含む波長変換層用組成物を塗布し、波長変換層を形成する工程等によって形成される。
〔8〕有機エレクトロルミネッセンス表示装置
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、本発明のポリイミドフィルム、前記フレキシブルディスプレイ用基材、又は前記フレキシブルディスプレイ用前面板を具備していることが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013−157634号公報、特開2013−168552号公報、特開2013−177361号公報、特開2013−187211号公報、特開2013−191644号公報、特開2013−191804号公報、特開2013−225678号公報、特開2013−235994号公報、特開2013−243234号公報、特開2013−243236号公報、特開2013−242366号公報、特開2013−243371号公報、特開2013−245179号公報、特開2014−003249号公報、特開2014−003299号公報、特開2014−013910号公報、特開2014−017493号公報、特開2014−017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
実施例1
<ポリイミド>
実施例に用いるポリイミドを以下の手順で準備した。
〈ポリイミドA〉
ステンレススチール製錨型撹拌機、窒素導入管、ディーン・スターク装置を取り付けた500mLのセパラブル4つ口フラスコに4,4′−オキシジフタル酸無水物(ODPA)56.11g(0.18モル)、DETDA32.09g(0.18モル)、ガンマブチロラクトン(GBL)326.87g、ピリジン2.85g、トルエン33gを仕込み、反応系内を窒素置換した。窒素気流下80℃にて30分間撹拌することによりODPAを溶解させ、その後180℃まで昇温して6時間加熱撹拌をおこなった。
反応中に生成する水はトルエン、ピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応終了後、室温まで冷却し、20質量%濃度のポリイミド溶液を得た。得られたポリイミドの構造は、下記の式のとおりである。このポリイミド溶液にイソプロパノールを投入し撹拌後に冷却してポリイミドの固体を得た。この固体を洗浄、乾燥後にジクロロメタンに溶解し、さらに、ジオキソランをジクロロメタンの1質量%を加え、製膜用のポリイミド溶液を作製した。
(式中、R1〜R3は一つがメチル基、二つがエチル基である。)
〈ポリイミドB〉
実施例1と同様の装置にODPA46.80g(0.15モル)、4,4′−ジアミノ−3,3′,5,5′−テトラメチルジフェニルメタン38.16g(0.15モル)、GBL147.67g、ピリジン2.39g、トルエン50gを仕込み、反応系内を窒素置換した。窒素気流下80℃にて30分間撹拌することによりODPAを溶解させ、その後180℃まで昇温して7時間加熱撹拌行った。
反応中に生成する水はトルエン、ピリジンとの共沸混合物として反応系外へ除いた。反応終了後、120℃まで冷却したところでGBL100gを添加することにより、25質量%濃度のポリイミド溶液を得た。得られたポリイミドの構造は、下記の式のとおりである。このポリイミド溶液にイソプロパノールを投入し撹拌後に冷却してポリイミドの固体を得た。この固体を洗浄、乾燥後にジクロロメタンに溶解し、さらに、ジオキソランをジクロロメタンの1質量%を加え、製膜用のポリイミド溶液を作製した。
〈ポリイミドC〉
5−ノルボルネン−2−スピロ−2′−シクロペンタノン−5′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネンを用い、1994年に発行されたMacromolecules(27巻)の1117頁に記載の方法に従って、テトラカルボン酸二無水物を製造した。このようにしてテトラカルボン酸二無水物を製造した結果、全収率88%で、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α′−スピロ−2′′−ノルボルナン−5,5′′,6,6′′−テトラカルボン酸二無水物を得た。
次に、30mlの三口フラスコをヒートガンで加熱乾燥させた。そして、十分に乾燥させた前記三口フラスコに、先ず、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(固体)を0.200g(1.00mmol)入れた後、ジメチルアセトアミドを2.7g添加し、攪拌することにより、前記固体を溶解させて溶解液を得た。次いで、前記溶解液に、前述のようにして得られたノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α′−スピロ−2′′−ノルボルナン−5,5′′,6,6′′−テトラカルボン酸二無水物を0.384g(1.00mmol)を添加し、前記三口フラスコ内の雰囲気を窒素雰囲気とした後、窒素雰囲気下、室温(25℃)で12時間攪拌し、下記構造のポリイミドを含有する反応液を得た。このポリイミド溶液にイソプロパノールを投入し撹拌後に冷却してポリイミドの固体を得た。この固体を洗浄、乾燥後にジクロロメタンに溶解し、さらに、ジオキソランをジクロロメタンの1質量%を加え、製膜用のポリイミド溶液を作製した。
〈ポリイミドD〉
5−ノルボルネン−2−スピロ−2′−シクロヘキサノン−6′−スピロ−2′′−5′′−ノルボルネンを用い、1994年発行のMacromolecules(27巻)の1117頁に記載の方法に従って、テトラカルボン酸二無水物を製造した。このようにしてテトラカルボン酸二無水物を製造した結果、全収率87%で、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロヘキサノン−α′−スピロ−2′′−ノルボルナン−5,5′′,6,6′′−テトラカルボン酸二無水物を得た。
次に、30mlの三口フラスコをヒートガンで加熱乾燥させた。そして、十分に乾燥させた前記三口フラスコに、先ず、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(固体)を0.200g(1.00mmol)入れた後、ジメチルアセトアミドを2.7g添加し、攪拌することにより、前記固体を溶解させて溶解液を得た。次いで、前記溶解液に、前述のようにして得られたノルボルナン−2−スピロ−α−シクロヘキサノン−α′−スピロ−2′′−ノルボルナン−5,5′′,6,6′′−テトラカルボン酸二無水物を0.398g(1.00mmol)を添加し、前記三口フラスコ内の雰囲気を窒素雰囲気とした後、窒素雰囲気下、室温(25℃)で12時間攪拌し、下記構造のポリイミドを含有する反応液を得た。このポリイミド溶液にイソプロパノールを投入し撹拌後に冷却してポリイミドの固体を得た。この固体を洗浄、乾燥後にジクロロメタンに溶解し、さらに、ジオキソランをジクロロメタンの1質量%を加え、製膜用のポリイミド溶液を作製した。
〈ポリイミドE〉
(ポリイミド前駆体の重合)
反応容器としてステンレス製セパラブルフラスコを備え、該セパラブルフラスコ内の撹拌装置として2枚のパドル翼を備え、冷却装置を備えた反応装置を用いてポリアミド酸を製造した。重合反応中は水分の混入を防ぐ為に塩化カルシウム管を通過させて脱水を行った窒素ガスを0.05L/minで流して重合反応を行った。
上記セパラブルフラスコに、重合溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)223.5gを仕込み、これに、ジアミンとして下記例示化合物であるジアミン1を40.0g(0.125モル)溶解する。この溶液に、酸無水物として例示化合物である酸無水物1を55.5g(0.125モル)添加・撹拌して完全に溶解させた。この反応溶液におけるジアミン1と酸無水物6の仕込み濃度は、全反応液に対して30質量%となっている。
(ポリイミドへの化学イミド化)
上記溶液にDMACを加え固形分濃度を15質量%とし、イミド化促進剤としてピリジン(pkBH+;5.17)を60g(イミド化促進剤/ポリアミド酸中アミド基のモル比=3)添加して、完全に分散させる。分散させた溶液中に無水酢酸を1分間に1gの速度で30.6g(脱水剤/ポリアミド酸中アミド基のモル比=1.2)を添加してさらに30分間撹拌した。撹拌後に内部温度を50℃に上昇させて5時間過熱撹拌を行った。
(ポリイミドの抽出)
得られた溶液をメタノールに加え、目的ポリイミド粉末を沈殿させた。得られた白色沈殿をメタノールで十分洗浄後、乾燥装置を用い50℃に加熱乾燥して、ポリイミドEとして取り出した。ポリイミドEは、重量平均分子量:203000、イミド化率:100%であった。
〈ポリイミドF〉
ポリイミドEの調製において、下記例示化合物であるジアミン2及び酸無水物2を用いた以外は同様にして、ポリイミドFを調製した。
〈ポリイミドG〉
ポリイミドEの調製において、下記例示化合物であるジアミン3及び酸無水物3を用いた以外は同様にして、ポリイミドGを調製した。
〈ポリイミドH〉
乾燥窒素ガス導入管、冷却器、トルエンを満たしたDean−Stark凝集器、攪拌機を備えた4口フラスコに、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(酸無水物4)(ダイキン工業社製)25.59g(57.6mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(134g)に加え、窒素気流下、室温で攪拌した。
それに4,4′−ジアミノ−2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(ジアミン4)(ダイキン工業社製)19.2g(60mmol)を加え、80℃で6時間加熱攪拌した。その後、外温を190℃まで加熱して、イミド化に伴って発生する水をトルエンと共に共沸留去した。6時間加熱、還流、攪拌を続けたところ、水の発生は認められなくなった。引き続きトルエンを留去しながら7時間加熱し、さらにトルエン留去後にメタノールを投入して再沈殿し、固形分を乾燥後にジクロロメタン溶液にしてポリイミド溶液を調製した。
<全光線透過率、YI値、可溶性評価>
(全光線透過率)
上記ポリイミドA〜Hをジクロロメタンに8質量%の固形分で溶液にして、乾燥膜厚50μmになるように流延し、剥離後140℃30分乾燥してサンプルフィルム試料を作製した。
フィルム試料の全光線透過率は、23℃・55RHの空調室で24時間調湿した試料1枚をJIS K−7375に従って、(株)日立ハイテクノロジーズの分光光度計U−3300を用いて可視光領域(400〜700nmの範囲)の透過率を測定し、平均値とした。
(YI値)
イエローインデックス値は、JIS K−7103に定められているフィルムのYI(イエローインデックス:黄色味の指数)に従って求めた。
イエローインデックス値の測定方法としては、上記厚さ50μmのサンプルを作製し、(株)日立ハイテクノロジーの分光光度計U−3300と附属の彩度計算プログラム等を用いて、JIS Z8701に定められている光源色の三刺激値X、Y、Zを求め、下式に従ってイエローインデックス値を求めた。
イエローインデックス値(YI値)=100(1.28X−1.06Z)/Y
(可溶性評価)
上記ポリイミドA〜Hは、25℃において、ジクロロメタン100gに対して1g以上溶解可能であり、可溶性であることを確認した。
(飽和含水率)
上記ポリイミドA〜Hの飽和含水率として、26℃の純水に24時間サンプルフィルム試料を浸漬させて飽和含水率を測定した。飽和含水率は、試験片の質量変化,すなわち、初期質量と水にさらした後の質量の差を測定して求め,初期質量の百分率として表す。
飽和含水率の測定は、マイクロ波オンライン水分計(マルカム製)を用いてJIS−K7209にしたがって行った。
以上の結果を下記表4に示す。
<有機系添加剤>
実施例に用いる有機系添加剤は、下記のとおりである。
ポリエステル1:一般式(I)で表されるポリエステル、例示化合物(19)
ポリエステル2:一般式(I)で表されるポリエステル、例示化合物(15)
糖エステル1:一般式(II)で表される糖エステル、例示化合物a2、スクロースベンゾエート、置換度7
糖エステル2:一般式(III)で表される化合物、例示化合物101
フルオレン系ポリエステル:下記手順にて合成した。
(合成)
9,9−ジ(2−メトキシカルボニルエチル)フルオレン(9,9−ジ(2−カルボキシエチル)フルオレン又はフルオレン−9,9−ジプロピオン酸のジメチルエステル、以下、FDPMという。特開2005−89422号公報の実施例1のアクリル酸t−ブチルをアクリル酸メチル(37.9g(0.44モル))に変更したこと以外は同様にして合成したもの)1.00モル、エチレングリコール(以下、EGという)3.0モル、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物2×10−4モル及び酢酸カルシウム・1水和物8×10−4モルを加え撹拌しながら徐々に加熱溶融し、230℃まで昇温した後、トリメチルホスフェート14×10−4モル、酸化ゲルマニウム20×10−4モルを加え、270℃、0.13kPa以下に到達するまで徐々に昇温、減圧しながらエチレングリコールを除去した。所定の撹拌トルクに到達後、内容物を反応器から取り出し、ポリエステル樹脂のペレットを得た。
得られたペレットを、NMRにより分析したところ、ポリエステル樹脂に導入されたジカルボン酸成分の100モル%がFDPM由来であり、ポリエステル樹脂に導入されたジオール成分の100モル%がEG由来であった。
得られたポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは4000、ガラス転移温度Tgは71.7℃、屈折率は1.6005、アッベ数は26.2、吸水率は0.22%であった。
イミド系化合物:一般式(5.2)で表されるナフタレンイミド化合物。RはHを表す。
波長350〜400nmの範囲に吸収極大を有する化合物:BASFジャパン(株)製チヌビン928(表中、Ti928と表記。)
ヒンダードフェノール系光安定剤(HALS):BASFジャパン(株)製チヌビン144(表中、Ti144と表記。)
比較化合物:綜研化学(株)製アクトフロー1001(アクリルポリマー)
<ポリイミドフィルム101の作製>
〈ドープの調製〉
下記組成の主ドープを調製した。まず、加圧溶解タンクにジクロロメタン(沸点40℃)を添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクに、上記調製したポリイミドAを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、残りの成分を添加し、撹拌して溶解させて、主ドープを調製した。
〈主ドープの組成〉
ジクロロメタン 350質量部
ポリイミドA 100質量部
マット剤(アエロジル R812、日本アエロジル(株)製)
0.5質量部
〈流延工程〉
次いで、無端ベルト流延装置を用い、ドープを温度30℃、1500mm幅でステンレスベルト支持体上に均一に流延した。ステンレスベルトの温度は30℃に制御した。
〈剥離工程〉
ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)したフィルム中の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力180N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。
〈延伸工程〉
剥離したポリイミドフィルムを、200℃の熱をかけながらクリップ式テンターを用いて幅方向に1.50倍延伸した。延伸開始時の残留溶媒量は20質量%であった。
〈乾燥工程〉
延伸したフィルムを、搬送張力100N/m、乾燥時間15分間として、残留溶媒量が0.1質量%未満となる乾燥温度で乾燥させ、乾燥膜厚50μmのフィルムを得た。得られたフィルムを巻き取って、ポリイミドフィルム101を得た。
<ポリイミドフィルム102の作製>
上記ポリイミドフィルム101の作製において、比較化合物である綜研化学(株)製アクトフロー1001を用いて、下記主ドープを調製した以外は同様にして、ポリイミドフィルム102を作製した。
〈主ドープの組成〉
ジクロロメタン 350質量部
ポリイミドA 90質量部
アクトフロー1001(綜研化学(株)製) 10質量部
マット剤(アエロジル R812、日本アエロジル(株)製)
0.5質量部
<ポリイミドフィルム103の作製>
上記ポリイミドフィルム101の作製において、本発明に係る有機系添加剤であるポリエステル1を用いて、下記主ドープを調製した以外は同様にして、ポリイミドフィルム103を作製した。
〈主ドープの組成〉
ジクロロメタン 350質量部
ポリイミドA 90質量部
ポリエステル1 10質量部
マット剤(アエロジル R812、日本アエロジル(株)製)
0.5質量部
<ポリイミドフィルム104〜148の作製>
上記ポリイミドフィルム103の作製において、本発明に係るポリイミドの種類及び有機系添加剤であるポリエステル1、ポリエステル2、糖エステル1、糖エステル2、フルオレン系ポリエステル、イミド系化合物、Ti928及びTi144とそれらの添加量を表5及び表6に示したように変化させた以外は同様にして、ポリイミドフィルム104〜148を作製した。なお、上記有機系添加剤は、用いるポリイミドとの合計量をいずれも100質量部とし、表中の添加量は質量部を表す。また、比較例はポリイミドフィルム101の作製と同様にポリイミドB〜Hを単独で用いたポリイミドフィルムである。
≪評価≫
作製したポリイミドフィルム101〜148を用いて、積層体のソリ量(カール度合い)を以下のモデル実験によって評価した。
(積層体の作製方法及びソリ量の測定)
50μmのポリイミドフィルムを8cm角にカットし、23℃・55%RHの環境下で 24時間調湿したポリイミドフィルムとPETフィルム(厚さ50μm)を粘着剤((東レダウコーニング社製感圧接着剤、厚さ25μm)貼合して積層体を作製し、23℃・55%RH、24時間調湿の状態に対して、26℃・90%RH、24時間調湿後のソリ量を測定した。
ソリ量は、上記積層体を5cm角にカットしたサンプルを,カール面を上に向けて、端面の一方を接地して、ここをゼロ点とし、ゼロ点ともう一方の端面との距離を測定しソリ量とした。
以上、ポリイミドフィルムの構成と上記ソリ量の評価結果を、表5及び表6に示した。
表5及び表6の結果から、本発明の無色透明である可用性ポリイミドに有機系添加剤を加えたポリイミドフィルムは、ソリ量が比較例に対して格段に小さく、湿度環境変動によるソリの発生が抑制されたポリイミドフィルムであることが分かった。
実施例2
上記作製したポリイミドフィルム101〜148を用いて以下のようにしてフレキシブルプリント基板を作製した。
ポリイミドフィルムの片面に、巻き出し機、スパッタリング装置、巻取り機から構成されるスパッタリング設備を用いて直流スパッタリング法により、平均厚さ230Åの20質量%Crのクロム−ニッケル合金層を金属薄膜として形成した。更に、同様にして、金属薄膜の上に平均厚さ1000Åの銅薄膜を形成した。
次に、銅薄膜の上に電気銅めっき法により、厚さ9μmの銅層を設けて金属化ポリイミドフィルムを得た。用いた銅めっき浴は、銅濃度23g/Lの硫酸銅めっき浴であり、めっき時の浴温は27℃とした。また、めっき槽は、複数のめっき槽を連結させた複数構造槽とし、巻き出し機と巻取り機とにより片面に金属層が設けられたポリイミドフィルムが連続的に各槽に浸漬されるように搬送しながら電気めっきを行った。搬送速度は、75m/hとし、めっき槽の平均陰極電流密度を1.0〜2.5A/dm2に調整して銅めっきを施した。
次に、この金属被覆ポリイミドフィルムを用いて配線間隔30μm、全配線幅が15000μmのCOF(Chip on film)をサブトラクティブ法で作製した。これにICチップを搭載し、ICチップ表面の電極と配線のリード部とをワイヤボンディング装置を用いて400℃にて0.5秒間のボンディング処理条件でワイヤボンディングを施した。このときにインナーリード部に生じたリードとポリイミドフィルムとの接合不良の割合は0.0001%であった。
上記作製したフレキシブルプリント基板を用いて、恒温恒湿器(エスペック社製PL−4)の内を60℃に設定して、MIT試験機を設置した。
恒温槽内を60℃に設定して、荷重500g、屈折角135°、屈折サイクル175cpm、屈折部局率半径0.38mmの条件下、通電試験により回路破断による通電状態切れまでの回数を測定したところ、本発明のポリイミドフィルム103〜148は5000回以上の折り曲げ回数でも通電状態切れの発生がなく、かつ折り曲げ試験後のカール発生も小さく、優れたフレキシブルプリント基板であることが分かった。
なお、比較例であるポリイミドフィルム101、102、105、110、117、127、128、135、140、143、及び146は、折り曲げ試験中にカールが発生し、途中で通電状態切れも発生した。
実施例3
次いで、特開2014−22508号公報記載のLED照明の作製方法を参考にして、上記作製したフレキシブルプリント基板を用いて、LED照明に実装した。
上記作製した各LED照明を、室温(約25℃)で、2.5mA/cm2の定電流条件下で発光させ、発光開始直後の正面発光の輝度(cd/m2)を、分光放射輝度計C154S−2000(コニカミノルタ社製)を用いて測定したところ、本発明のポリイミドフィルムを実装したLED照明は、いずれも正面輝度が1000(cd/m2)以上であった。
以上から、本発明の構成のポリイミドフィルムは透明度が高く、それを実装したLED照明装置は正面輝度に優れることが分かった。
実施例4
実施例1で作製したポリイミドフィルム101〜148を用いて、片側の面上に下記ハードコート層を設けてハードコート層付きポリイミドフィルム101HC〜148HCを作製した。
<ハードコート層の作製>
下記ハードコート層塗布組成物1を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層塗布液を調製し、ダイコータにより塗布し、70℃で乾燥後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、紫外線ランプを用い照射部の照度が300mW/cm2、照射量を0.3J/cm2として塗布層を硬化させ、さらに加熱処理ゾーンにおいて、130℃で5分間、搬送力300N/mで加熱処理し、ドライ膜厚7μmのハードコート層を形成した。
(ハードコート層組成物1)
下記材料を攪拌、混合しハードコート層塗布組成物1とした。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 20.0質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50.0質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 30.0質量部
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 30.0質量部
イルガキュア184(BASFジャパン(株)製) 5.0質量部
フッ素−シロキサングラフトポリマーI(35質量%)
5.0質量部
シーホスターKEP−50(粉体のシリカ粒子、平均粒径0.47〜0.
61μm、日本触媒(株)製) 24.3質量部
プロピレングリコールモノメチルエー 20質量部
酢酸メチル 40質量部
メチルエチルケトン 60質量部
(フッ素−シロキサングラフトポリマーIの調製)
以下、フッ素−シロキサングラフトポリマーIの調整に用いた素材の市販品名を示す。
ラジカル重合性フッ素樹脂(FA):セフラルコートCF−803(ヒドロキシ(ヒドロキシ基)価60、数平均分子量15000;セントラル硝子(株)製)
片末端ラジカル重合性ポリシロキサン(B):サイラプレーンFM−0721(数平均分子量5000;チッソ(株)製)
ラジカル重合開始剤:パーブチルO(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート;日本油脂(株)製)
硬化剤:スミジュールN3200(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマー;住化バイエルウレタン(株)製)
(ラジカル重合性フッ素樹脂(FA)の合成)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、セフラルコートCF−803(1554質量部)、キシレン(233質量部)、及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(6.3質量部)を入れ、乾燥窒素雰囲気下で80℃に加熱した。80℃で2時間反応し、サンプリング物の赤外吸収スペクトルによりイソシアネートの吸収が消失したことを確認した後、反応混合物を取り出し、ウレタン結合を介して50質量%のラジカル重合性フッ素樹脂(FA)を得た。
(フッ素−シロキサングラフトポリマーIの調製)
機械式撹拌装置、温度計、コンデンサー及び乾燥窒素ガス導入口を備えたガラス製反応器に、上記合成したラジカル重合性フッ素樹脂(FA)(26.1質量部)、キシレン(19.5質量部)、酢酸n−ブチル(16.3質量部)、メチルメタクリレート(2.4質量部)、n−ブチルメタクリレート(1.8質量部)、ラウリルメタクリレート(1.8質量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(1.8質量部)、FM−0721(5.2質量部)、及びパーブチルO(0.1質量部)を入れ、窒素雰囲気中で90℃まで加熱した後、90℃で2時間保持した。パーブチルO(0.1部)を追加し、さらに90℃で5時間保持することによって、重量平均分子量が171000である35質量%フッ素−シロキサングラフトポリマーIの溶液を得た。
<有機EL表示装置の作製>
上記作製した、ポリイミドフィルム101〜148及びハードコート層付きポリイミドフィルム101HC〜148HCを用いて、下記構成により、有機EL表示装置101〜148を作製した。
(円偏光板の作製)
〔偏光子の作製〕
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光子を得た。
〔円偏光板の作製〕
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と下記λ/4位相差フィルムと、裏面側(視認側)には下記保護フィルムを長手方向で合わせるようにロール・トゥ・ロールで貼り合わせて円偏光板を作製した。
工程1:λ/4位相差フィルムと延伸した保護フィルム1を60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した。
工程2:前記偏光子を固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き取り、これを工程1で処理したλ/4位相差フィルムの上にのせて配置した。
工程4:工程3で積層したλ/4位相差フィルムと偏光子と保護フィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子とλ/4位相差フィルムと保護フィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、円偏光板を作製した。
λ/4位相差フィルム:特開2013−101229号公報段落〔0277〕〜〔0287〕に記載の方法で作製した。
保護フィルム:コニカミノルタタック KC4UY(コニカミノルタ(株)製)
〔有機エレクトロルミネッセンス表示装置の作製〕
ポリイミドフィルム101〜148及びハードコート層付きポリイミドフィルム101HC〜148HCを用いて、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置を作製した。
(有機EL表示素子の作製)〕
透明基板として実施例1で作製したポリイミドフィルム101〜148を用いて、その上にクロムからなる反射電極、反射電極上に金属電極(陽極)としてITO(スズドープ酸化インジウム)用いて金属電極を形成し、有機発光層として、陽極上に正孔輸送層としてポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)をスパッタリング法で厚さ80nmで形成し、次いで正孔輸送層上にシャドーマスクを用いて、RGBそれぞれの発光層R、G、Bを100nmの膜厚で形成した。赤色発光層Rとしては、ホストとしてトリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム(Alq3)と発光性化合物[4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran](DCM)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。緑色発光層Gとしては、ホストとしてAlq3と、発光性化合物クマリン6(3−(2−ベンゾチアゾリル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン)とを共蒸着(質量比99:1)して100nmの厚さで形成した。青色発光層Bとしては、ホストとしてBAlqと発光性化合物Peryleneとを共蒸着(質量比90:10)して厚さ100nmで形成した。
さらに、有機発光層上に電子が効率的に注入できるような仕事関数の低い第1の陰極としてカルシウムを真空蒸着法により4nmの厚さで成膜し、第1の陰極上に第2の陰極としてアルミニウムを2nmの厚さで形成した。ここで、第2の陰極として用いたアルミニウムはその上に形成される透明導電膜をスパッタリング法により成膜する際に、第1の陰極であるカルシウムが化学的変質をすることを防ぐ役割がある。以上のようにして、有機発光層を得た。次に、陰極上にスパッタリング法によって透明導電膜を80nmの厚さで成膜し透明電極とした。ここで透明導電膜としてはITOを用いた。さらに、透明電極上にCVD法によって窒化珪素を200nm成膜することで、絶縁膜とし、有機EL素子ユニットを作製した。
次に、ガスバリアーフィルムとして、厚さ20μmのガスバリアー層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、このガスバリアーフィルムの片面に、封止層6として熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ25μmで付与した封止ユニットを作製した。
次に、90℃で0.1MPaの減圧条件下で、透明基板〜絶縁層まで形成した有機EL素子ユニットと封止ユニットとに押圧をかけて5分間保持した。続いて、積層体を大気圧環境に戻し、さらに90℃で30分間加熱して接着剤を硬化させて、有機EL表示デバイスを作製した。
上記作製した有機EL表示デバイスの発光面積は1296mm×784mmであった。また、この有機EL表示デバイスに6Vの直流電圧を印加した際の正面輝度は1200cd/m2であった。正面輝度の測定は、コニカミノルタセンシング社製分光放射輝度計CS−1000を用いて、2°視野角正面輝度を、発光面からの法線に分光放射輝度計の光軸が一致するようにして、可視光波長430〜480nmの範囲を測定し、積分強度をとった。
〔有機EL表示装置101〜148の作製〕
上記作製した有機EL表示デバイスに、前記作製したλ/4位相差フィルム、偏光子及び保護フィルムを搭載した円偏光板を積層し、さらにその上層として前記作製したハードコート層付きポリイミドフィルム101HC〜148HCをハードコート層が最表層となるように接着層を介して前面板として積層し、有機EL表示装置101〜148をそれぞれ作製した。
作製した有機EL表示装置を26℃・90%RH、24時間調湿したところ、本発明のポリイミドフィルム103、104、106〜109、111〜116、118〜126、129〜134、136〜139、141、142、144、145、147及び148、及びハードコート層付きポリイミドフィルム103HC、104HC、106HC〜109HC、111HC〜116HC、118HC〜126HC、129HC〜134HC、136HC〜139HC、141HC、142HC、144HC、145HC、147HC及び148HCを用いた表示装置はソリもなく平面性に優れていたが、比較例の表示装置101、102、105、110、117、127、128、135、140、143、及び146は、ソリが発生しており表示装置に歪みがみられた。