JPWO2016027674A1 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
Description
本発明のトナーは、結着樹脂及び着色剤を含む着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する。
以下、本発明に用いられる着色樹脂粒子の製造方法、当該製造方法により得られる着色樹脂粒子、当該着色樹脂粒子を用いたトナーの製造方法及び当該製造方法により得られる本発明のトナーについて、順に説明する。
一般に、着色樹脂粒子の製造方法は、粉砕法等の乾式法、並びに乳化重合凝集法、懸濁重合法、及び溶解懸濁法等の湿式法に大別され、画像再現性等の印字特性に優れたトナーが得られ易いことから湿式法が好ましい。湿式法の中でも、ミクロンオーダーで比較的小さい粒径分布を持つトナーを得やすいことから、乳化重合凝集法、及び懸濁重合法等の重合法が好ましく、重合法の中でも懸濁重合法がより好ましい。
(A−1)重合性単量体組成物の調製工程
まず、重合性単量体及び着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合し、重合性単量体組成物の調製を行う。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いる。
本発明では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜2質量部の割合で用いることが望ましい。
ブラック着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、並びに酸化鉄亜鉛、及び酸化鉄ニッケル等の磁性粉等を用いることができる。
離型剤は、エステルワックス及び炭化水素系ワックスの少なくともいずれか1つを含有することが好ましい。これらのワックスを離型剤として使用することにより、低温定着性と保存性とのバランスを好適にすることができる。
本発明において離型剤として好適に用いられるエステルワックスは、多官能エステルワックスがより好適であり、例えば、ペンタエリスリトールテトラパルミネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のペンタエリスリトールエステル化合物;ヘキサグリセリンテトラベヘネートテトラパルミネート、ヘキサグリセリンオクタベヘネート、ペンタグリセリンヘプタベヘネート、テトラグリセリンヘキサベヘネート、トリグリセリンペンタベヘネート、ジグリセリンテトラベヘネート、グリセリントリベヘネート等のグリセリンエステル化合物;ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミネート等のジペンタエリスリトールエステル化合物;等が挙げられ、中でもジペンタエリスリトールエステル化合物が好ましく、また、ジペンタエリスリトールヘキサミリステートがより好ましい。
炭化水素系ワックスの数平均分子量は、300〜800であることが好ましく、400〜600であることがより好ましい。また、JIS K2235 5.4で測定される炭化水素系ワックスの針入度は、1〜10であることが好ましく、2〜7であることがより好ましい。
離型剤は、上述した1種又は2種以上のワックスを組み合わせて用いてもよい。
上記離型剤は、モノビニル単量体100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部用いられ、更に好ましくは1〜20質量部用いられる。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができることから、正帯電性又は負帯電性の帯電制御樹脂が好ましく、さらに、正帯電性トナーを得る観点からは、正帯電性の帯電制御樹脂がより好ましく用いられる。
正帯電性の帯電制御剤としては、ニグロシン染料、4級アンモニウム塩、トリアミノトリフェニルメタン化合物及びイミダゾール化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのポリアミン樹脂、並びに4級アンモニウム基含有共重合体、及び4級アンモニウム塩基含有共重合体等が挙げられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、及びFe等の金属を含有するアゾ染料、サリチル酸金属化合物及びアルキルサリチル酸金属化合物、並びに、好ましく用いられる帯電制御樹脂としてのスルホン酸基含有共重合体、スルホン酸塩基含有共重合体、カルボン酸基含有共重合体及びカルボン酸塩基含有共重合体等が挙げられる。
本発明では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.03〜8質量部の割合で用いることが望ましい。帯電制御剤の添加量が、0.01質量部未満の場合にはカブリが発生することがある。一方、帯電制御剤の添加量が10質量部を超える場合には印字汚れが発生することがある。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、N,N’−ジオクタデシル−N,N’−ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部の割合で用いることが望ましい。
本発明では、少なくとも重合性単量体及び着色剤を含む重合性単量体組成物を、好ましくは分散安定化剤を含む水系媒体中に分散させ、重合開始剤を添加した後、重合性単量体組成物の液滴形成を行うことが好ましい。液滴形成の方法は特に限定されないが、例えば、(インライン型)乳化分散機(太平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化分散機(プライミクス株式会社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行う。
上記(A−2)のようにして、液滴形成を行い、得られた水系分散媒体を加熱し、重合を開始し、着色樹脂粒子の水分散液を形成する。
重合性単量体組成物の重合温度は、好ましくは50℃以上であり、更に好ましくは60〜95℃である。また、重合の反応時間は好ましくは1〜20時間であり、更に好ましくは2〜15時間である。
着色樹脂粒子が分散している水系分散媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)と重合開始剤を添加し、重合することでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
重合により得られた着色樹脂粒子の水分散液は、重合終了後に、常法に従い、ろ過、分散安定化剤の除去を行う洗浄、脱水、及び乾燥の操作が、必要に応じて数回繰り返されることが好ましい。
粉砕法を採用して着色樹脂粒子を製造する場合、以下のようなプロセスにより行われる。
まず、結着樹脂及び着色剤、さらに必要に応じて添加される帯電制御剤等のその他の添加物を混合機、例えば、ボールミル、V型混合機、FMミキサー(:商品名、日本コークス工業社製)、高速ディゾルバ、インターナルミキサー等を用いて混合する。次に、上記により得られた混合物を、加圧ニーダー、二軸押出混練機、ローラ等を用いて加熱しながら混練する。得られた混練物を、ハンマーミル、カッターミル、ローラミル等の粉砕機を用いて、粗粉砕する。更に、ジェットミル、高速回転式粉砕機等の粉砕機を用いて微粉砕した後、風力分級機、気流式分級機等の分級機により、所望の粒径に分級して粉砕法による着色樹脂粒子を得る。
上述の(A)懸濁重合法、又は(B)粉砕法等の製造方法により、着色樹脂粒子が得られる。
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
上述した着色樹脂粒子は、外添剤と共に混合攪拌することにより、着色樹脂粒子の表面に、外添剤を均一かつ好適に付着添加(外添)させる。なお、1成分トナーは、さらにキャリア粒子と共に混合攪拌して2成分トナーとしてもよい。
本発明におけるシリカ微粒子の高温高湿放置後疎水化度とは、シリカ微粒子を所定の温度条件下かつ所定の湿度条件下に十分な時間放置した後の疎水化度のことである。ここでいう「所定の温度条件」及び「所定の湿度条件」とは、シリカ微粒子表面における疎水化度が変化し始める温度条件及び湿度条件を指し、本発明では温度50℃及び相対湿度80%を指す。また、ここでいう「十分な時間」とは、上記所定の温度条件下において変化し始めた疎水化度が定常状態となるまでに十分な時間を指し、本発明では30時間である。
トナーの初期特性(例えば低温定着性や耐熱保存性等)が良好である場合であっても、使用中のトナーや、使用後に現像器内に残されたトナーの特性が、必ずしも上記初期特性と同程度となるとは限らない。それは、季節や天気などによってトナーの印字条件(温度や湿度など)は変動するものであるし、使用後の現像器内にトナーが放置される環境も日によって異なるためである。トナーはいかなる印字条件や放置環境下においても長期的に安定したトナー特性を発揮することが求められており、トナーの高温高湿放置後疎水化度はそのようなトナーの長期安定性に関わるパラメータの1つである。
シリカ微粒子の疎水化度は、シリカ微粒子の製造方法や、使用された表面処理剤の種類及び添加量等によって異なる。シリカ微粒子の中には疎水化度が温度や湿度に依存して変化するものもあり、特に高温高湿条件下においては、シリカ微粒子表面の化学構造の変化や使用された表面処理剤の変質等が生じやすく、その影響で該シリカ微粒子表面に水が吸着し、シリカ微粒子の疎水化度が低下することがある。本発明者は、外添剤として、高温高湿放置後疎水化度が15%〜49%の範囲内となるシリカ微粒子を特定量使用することにより、低温定着性と耐熱保存性のバランスに優れ、搬送量安定性及び印字耐久性も良好であり、且つ高温高湿環境下でカブリの発生が少ないトナーとなることを見出し、本発明を完成させた。
高温高湿放置後の疎水化度(%)={メタノール滴下量[mL]/(100[mL]+メタノール滴下量[mL])}×100
ここでいう「搬送量安定性」とは、現像器から搬送されるトナー量(搬送量)が経時的に安定であるトナー特性を指す。トナーは経時的に凝集することはあっても、その反対に経時的な微細化は稀であるため、搬送量はトナー特性の経時変化につれて増加するのが通常である。
搬送量の測定方法の例は以下の通りである。まず、所定の枚数の印字が終了した後、常温常湿(N/N)環境下(例えば、23℃、50%の環境下)にてプリンターを用いて白ベタ印字を行う。次に、2枚目の白ベタ印字を途中で停止させた後、現像ロール上に付着したトナーについて、吸引式帯電量測定装置(例えば、トレックジャパン社製、商品名:210HS−2A)を用いて、吸引されたトナー質量、及び吸引面積を測定する。吸引されたトナー質量、及び吸引面積に基づき、下記計算式1及び2から現像ロール上の搬送量(mg/cm2)を算出する。
計算式1:現像ロール上の面積(cm2)=(吸引痕の半径(cm))2×π×吸引痕の数
計算式2:現像ロール上の搬送量(mg/cm2)=捕集されたトナー質量(mg)/現像ロール上の面積(cm2)
計算式3:搬送量安定性=耐久印字後搬送量/基準搬送量
通常、耐久印字後搬送量は基準搬送量以上となるため、搬送量安定性は1以上の値となる。搬送量安定性の値が1に近いほど、多枚数印字後にも搬送量が変動せず、経時的に安定したトナー特性を示すものといえる。一方、搬送量安定性の値が大きいほど、多枚数印字後にトナー搬送量が増えすぎることを示し、トナー特性が経時的に不安定であることを示す。このように、搬送量安定性はトナー特性の経時変化の指標の1つとなる。
計算式3a:搬送量安定性(中期)=中期搬送量/初期搬送量
計算式3b:搬送量安定性(末期)=末期搬送量/初期搬送量
上述したように搬送量は経時的に増加するため、通常、末期搬送量、中期搬送量、初期搬送量の順に多くなる。したがって、通常、搬送量安定性(末期)は搬送量安定性(中期)より高い値となる。
搬送量安定性(中期)は、印字中期の段階においてトナー特性の経時変化を示す指標となる。具体的に、搬送量安定性(中期)の値が2.0以上である場合には、トナー搬送量が初期と比較して2倍以上に増加していることから、その印字環境下においてトナー特性が安定して維持できないことが明らかであり、印字を打ち切ってもよいといえる。
一方、搬送量安定性(末期)は、印字末期の段階においてトナー特性の経時変化を示す指標となる。具体的に、搬送量安定性(末期)の値が2.5以上である場合には、トナー搬送量が初期と比較して2.5倍以上に増加していることから、これ以上多くの枚数の印字が困難であることを示す。
以上の通り、搬送量安定性(中期)及び搬送量安定性(末期)は、特にトナーの印字耐久性に密接にかかわる指標といえる。
シリカ微粒子の高温高湿放置前後での疎水化度変化量が5%未満である場合には、特に搬送量安定性が損なわれ、印字耐久性が低下するおそれがある。また、当該疎水化度変化量が28%を超える場合には、高温高湿環境下におけるトナーのカブリが生じやすくなるおそれがある。
当該疎水化度変化量は、8%〜25%であることがより好ましく、10%〜20%であることがさらに好ましい。当該疎水化度変化量が印字性能に影響を与える理由は定かではないが、シリカ微粒子表面の化学構造が影響しているものと考えられる。
シリカ系微粒子分散液からシリカ微粒子を製造する方法としては、例えば次の(1)〜(4)の方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
高温高湿放置後疎水化度を15%〜49%の範囲内に調整するという観点からは、アミノアルキル基を有するカップリング剤をシリカ微粒子に対して0.1〜1.0質量%用いることが好ましい。
高温高湿放置後疎水化度を15%〜49%の範囲内に調整するという観点からは、シラザンをシリカ微粒子に対して4.0〜5.0質量%用いることが好ましい。
シリカ微粒子の含有量が0.5質量部未満の場合には、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、トナーの印字性能、特に耐熱保存性、印字耐久性、及び搬送量安定性に悪影響を及ぼす。一方、シリカ微粒子の含有量が3.0質量部を超える場合には、トナー粒子の表面から、当該シリカ微粒子が遊離し易くなり、遊離した外添剤が現像装置内の部材に付着する結果、トナーの印字性能、特に低温定着性、印字耐久性、及び搬送量安定性に悪影響を及ぼすおそれがあり、また、高温高湿環境下においてカブリが生じやすくなる。
シリカ微粒子の個数平均一次粒径は、70〜400nmであることが好ましく、100〜300nmであることがより好ましい。
脂肪酸金属塩粒子の個数平均一次粒径は、500〜1,500nmであることが好ましく、800〜1,000nmであることがより好ましい。
シリカ微粒子Bの個数平均一次粒径が7nm未満である場合には、着色樹脂粒子の表面から内部に、当該シリカ微粒子Bが埋没し易くなり、印字枚数が多い場合、トナー粒子に流動性を十分に付与させることができず、印字性能に悪影響が及ぶ。一方、シリカ微粒子Bの個数平均一次粒径が49nmを超える場合には、トナー粒子の表面に対して、当該無機微粒子Bが占める割合(被覆率)が低下するため、トナー粒子に流動性を十分に付与させることができない。
シリカ微粒子Bの個数平均一次粒径は、10〜40nmであることが好ましく、12〜30nmであることがより好ましい。
シリカ微粒子Bの含有量が0.1質量部未満の場合、外添剤としての機能を十分に発揮させることができず、流動性が低下したり、保存性や耐久性が低下したりする。一方、シリカ微粒子Bの含有量が2.0質量部を超える場合、トナー粒子の表面から、当該シリカ微粒子Bが遊離し易くなり、高温高湿環境下での帯電性が低下してカブリが発生する。
外添剤の総添加量は、着色樹脂粒子100質量部に対して1.70〜3.50質量部であることがより好ましく、2.00〜3.00質量部であることがさらに好ましい。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
[製造例1]
1−1.珪酸液の調製
4.7%濃度の珪酸ナトリウム(3号水硝子)の14,000gを限外モジュール(旭化成(株)製、SIP−1013)に通液し濾水を回収し精製水硝子を得た。この精製水硝子のシリカ濃度が5%になるように純水を添加した。そして、このシリカ濃度5%の水硝子13,000gを強酸性陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、SK1BH)2.2Lに空間速度3.1で通液させることで珪酸液13,300gを得た。得られた珪酸液のシリカ濃度は4.7%であった。
珪酸ナトリウム(3号水硝子、SiO2濃度:24.68%)67.2gに純水839.5gを添加してシリカ濃度1.8%の希釈水硝子を調製した。ついでシリカ濃度4.7%の珪酸液6.3gを添加して攪拌した後、79℃に昇温した。この温度のまま79℃で30分間保持し、さらにシリカ濃度4.7%の珪酸液6162.9gを22時間かけて添加した。添加終了後さらに79℃のままで1時間保ち、その後室温まで冷却した。得られたシリカゾルを、限外濾過膜(旭化成(株)製、SIP−1013)を用いてシリカ濃度が12%になるまで濃縮した。ついでロータリーエバポレーターで20%まで濃縮した。
こうして得られたシリカゾル(Z10)について、SEM観察により100個の粒子を観察したところ、平均粒径100nmのシリカゾル(シリカゾルa)であることが確認できた。
珪酸液の調整時と同様の方法でシリカゾルaを陽イオン交換樹脂に通液させた後、乾燥させ、シリカ微粒子aを得た。
さらにシリカ微粒子aを容器に入れ、当該容器に少量の水を加えた後、密封し50℃で20時間放置した。次いで、放冷した後、室温で疎水化剤としてヘキサメチルジシラザン4.6%、正帯電化剤として3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.4%を添加し、50℃で48時間放置した。その後、開放下、100℃で16時間乾燥させた粒子の平均粒径が100nm、高温高湿放置前疎水化度48%、高温高湿放置後疎水化度35%(疎水化度変化量13%)のシリカ微粒子1を得た。
製造例1において、ヘキサメチルジシラザン及び3−アミノプロピルトリエトキシシランの添加量を下記表1に示す通りに変えたこと以外は、製造例1と同様にしてシリカ微粒子2〜5及び7を得た。また、製造例1において、下記表1に示す通りにヘキサメチルジシラザンの添加量を変え、かつ3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.4%を3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.5%に替えたこと以外は、製造例1と同様にしてシリカ微粒子6を得た。
上記シリカ微粒子1〜7、及びHDKH05TA(製品名、WACKER社製;以下、シリカ微粒子8と称する場合がある。)について、物性を調べた。詳細は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
まず、シリカ微粒子を温度23℃、相対湿度50%の環境に30時間放置した。次いで、23℃の測定温度条件下で、純水100mLの水面上に、シリカ微粒子の粉体1gを浮遊させた。次に、水を静かに攪拌しながら水中にメタノールをビュレットにより少しずつ滴下した。水面上の粉体が全て水中に没した時点でのメタノール滴下量を下記式に代入することにより、高温高湿放置前の疎水化度を算出した。
高温高湿放置前の疎水化度(%)={メタノール滴下量[mL]/(100[mL]+メタノール滴下量[mL])}×100
シリカ微粒子を、まず、温度23℃、相対湿度50%の環境に30時間放置した後、温度50℃、相対湿度80%の環境に30時間放置した。
以下、上記疎水化度の測定方法と同様に滴定を行い、高温高湿放置後の疎水化度を算出した。
[実施例1]
重合性単量体としてスチレン75部及びn−ブチルアクリレート25部、ブラック着色剤としてカーボンブラック(三菱化学社製、商品名:#25B)7部を、分散機(シンマルエンタープライゼス、商品名:ダイノミル)を用いて分散させて、重合性単量体混合物を得た。
上記重合性単量体混合物に、帯電制御剤として帯電制御樹脂(4級アンモニウム基含有スチレンアクリル樹脂)2.8部、離型剤として脂肪酸エステルワックス5部、パラフィンワックス5部、マクロモノマーとしてポリメタクリル酸エステルマクロモノマー(東亜合成化学工業社製、商品名:AA6)0.3部、架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.6部、及び分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.5部を添加し、混合及び溶解して、重合性単量体組成物を調製した。
実施例1において、外添剤を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして実施例2〜8、及び比較例1〜5のトナーを得た。
上記実施例1〜8及び比較例1〜5のトナー、並びにトナーに使用した着色樹脂粒子について、特性を調べた。詳細は以下の通りである。評価結果を表2に示す。
着色樹脂粒子について、体積平均粒径(Dv)、個数平均粒径(Dn)及び粒径分布(Dv/Dn)を調べた。
測定試料(着色樹脂粒子)を約0.1g秤量し、ビーカーに取り、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸水溶液(富士フイルム社製、商品名:ドライウエル)0.1mLを加えた。そのビーカーへ、更にアイソトンIIを10〜30mL加え、20W(Watt)の超音波分散機で3分間分散させた後、粒径測定機(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)を用いて、アパーチャー径;100μm、媒体;アイソトンII、測定粒子個数;100,000個の条件下で、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)を測定し、粒径分布(Dv/Dn)を算出した。
得られた着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は7.8μm、個数平均粒径(Dn)は6.9μm、粒径分布(Dv/Dn)は1.13であった。
得られた着色樹脂粒子について、平均円形度を調べた。
容器中に、予めイオン交換水10mLを入れ、その中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸)0.02gを加え、更に測定試料(着色樹脂粒子)0.02gを加え、超音波分散機で60W(Watt)、3分間分散処理を行った。測定時の着色樹脂粒子濃度が3,000〜10,000個/μLとなるように調整し、0.4μm以上の円相当径の着色樹脂粒子1,000〜10,000個についてフロー式粒子像分析装置(シスメックス社製、商品名:FPIA−2100)を用いて測定した。測定値から平均円形度を求めた。
円形度は下記計算式4に示され、平均円形度は、その平均をとったものである。
計算式4:(円形度)=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
得られた着色樹脂粒子の平均円形度は0.988であった。
市販の非磁性一成分現像方式のブリンターの定着ロール部の温度を変化できるように改造したプリンターを用いて、定着試験を行った。定着試験は、黒ベタ(印字濃度100%)を印字して、改造プリンターの定着ロールの温度を5℃ずつ変化させて、それぞれの温度でのトナーの定着率を測定し、温度−定着率の関係を求めて行った。定着率は、黒ベタ(印字濃度100%)の印字領域においてテープ剥離を行い、テープ剥離前後の画像濃度の比率から計算した。すなわち、テープ剥離前の画像濃度をID(前)、テープ剥離後の画像濃度をID(後)とすると、定着率は、下記計算式5により算出できる。
計算式5:定着率(%)=(ID(後)/ID(前))×100
トナー10gを密閉可能な容器(ポリエチレン製、容量100mL)に入れて、密閉した後、当該容器を55℃の温度に保持した恒温水槽の中に沈めた。8時間経過した後、恒温水槽から当該容器を取り出し、容器内のトナーを42メッシュの篩上へ置いた。この際、容器内でのトナーの凝集構造を破壊しないように、容器内からトナーを静かに取り出し、注意深く篩上に移して置くようにした。トナーを置いた篩を、粉体測定機(ホソカワミクロン社製、商品名:パウダテスタPT−R)を用いて、振幅1mmの条件で、30秒間振動させた後、篩上に残留したトナーの質量を測定し、凝集トナーの質量とした。なお、1サンプルにつき上記測定を3回行い、その平均値を保存性の指標とした。
上記実施例1〜8及び比較例1〜5のトナーについて、印字特性を調べた。詳細は以下の通りである。評価結果を表2に示す。
印字耐久性試験には、市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(印刷スピード:A4サイズ20枚/分)を用い、現像装置のトナーカートリッジに、トナーを充填した後、印字用紙をセットした。
常温常湿(N/N)環境下(温度:23℃、湿度:50%)で、24時間放置した後、同環境下にて、5%印字濃度で15,000枚まで連続印刷を行った。
500枚毎に、黒ベタ印字(印字濃度100%)を行い、反射式画像濃度計(マクベス社製、商品名:RD918)を用いて黒ベタ画像の印字濃度を測定した。さらに、その後、白ベタ印字(印字濃度0%)を行い、白ベタ印字の途中でプリンターを停止させ、現像後の感光体上における非画像部のトナーを、粘着テープ(住友スリーエム社製、商品名:スコッチメンディングテープ810−3−18)に付着させた後、剥ぎ取り、それを印字用紙に貼り付けた。次に、その粘着テープを貼り付けた印字用紙の白色度(B)を、白色度計(日本電色社製、商品名:ND−1)で測定し、同様にして、未使用の粘着テープだけを印字用紙に貼り付け、その白色度(A)を測定し、この白色度の差(B−A)をカブリ値とした。この値が小さいほど、カブリが少なく良好であることを示す。
印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が3以下の画質を維持できる連続印刷枚数を調べた。尚、本試験において、当該連続印刷枚数が10,000枚以上であることが、トナーに求められる印字耐久性である。
尚、表1中、「15000<」とあるのは、15,000枚の時点においても、印字濃度が1.3以上で、且つカブリ値が3以下の画質を維持できたことを示す。
(i)初期搬送量(M/A)測定
上記印字耐久性試験中、500枚の試験が終了した後、23℃、50%の環境下にてプリンター(印刷速度:40ppm)を用い、白ベタ印字を行い、次いで、2枚目の白ベタ印字を途中で停止させた後、現像ロール上に付着したトナーについて、吸引式帯電量測定装置(トレックジャパン社製、商品名:210HS−2A)を用いて、吸引されたトナー質量、及び吸引面積を測定した。
吸引されたトナー質量、及び吸引面積に基づき、下記計算式1及び2から現像ロール上の初期搬送量(mg/cm2)を算出した。
計算式1:現像ロール上の面積(cm2)=(吸引痕の半径(cm))2×π×吸引痕の数
計算式2:現像ロール上の搬送量(mg/cm2)=捕集されたトナー質量(mg)/現像ロール上の面積(cm2)
(i)と同様にして、印字耐久性試験の6,000枚終了後の現像ロール上の搬送量を算出し、これを中期搬送量(mg/cm2)とした。また、(i)と同様にして、印字耐久性試験の12,000枚終了後、又はカブリが発生した枚数での現像ロール上の搬送量を算出し、これを末期搬送量(mg/cm2)とした。
(iii)搬送量安定性の算出
(i)及び(ii)の測定結果から、下記計算式3a及び3bにより、中期及び末期の搬送安定性を算出した。
計算式3a:搬送量安定性(中期)=中期搬送量/初期搬送量
計算式3b:搬送量安定性(末期)=末期搬送量/初期搬送量
尚、本試験において、中期の搬送量安定性が2.0以下、末期の搬送量安定性が2.5以下であることが、トナーに求められる搬送量安定性である。
上記印字耐久性試験で使用した非磁性一成分現像方式のプリンターを用いて、評価対象のトナーを温度35℃、湿度80%の高温高湿(H/H)環境下に一昼夜放置した後、上記印字耐久性試験と同様にして、1枚目に白ベタ印字を行い、HHカブリを測定した。
尚、本試験において、当該カブリ値が2.0以下であることが、トナーに求められる高温高湿環境下におけるカブリ特性である。
以下、表2を参照しながら、トナーの評価結果について検討する。
表2より、比較例1のトナーに使用されたシリカ微粒子6に係る高温高湿放置後疎水化度は51%であり、シリカ微粒子6の添加量は1.5質量部である。
表2より、比較例1のトナーは、最低定着温度が145℃であり、凝集トナーの平均質量が0.2gであり、HHカブリの値は0.3であるため、少なくとも低温定着性、耐熱保存性、及び高温高湿(H/H)環境下におけるカブリの問題は見られない。
しかし、比較例1のトナーの印字耐久性の評価枚数は10,000枚と少なく、搬送量安定性(中期)の値は2.12と高い。なお、比較例1においては、搬送量安定性(中期)に既に劣るため、搬送量安定性(末期)の評価を行っていない。以上の結果は、シリカ微粒子の高温高湿放置後疎水化度が高すぎる場合は搬送安定性に優れず、その結果印字耐久性に劣ることを示す。
表2より、比較例3のトナーは、最低定着温度が150℃であり、凝集トナーの平均質量が0.1gであり、HHカブリの値は0.2であるため、少なくとも低温定着性、耐熱保存性、及び高温高湿(H/H)環境下におけるカブリの問題は見られない。
しかし、比較例3のトナーの印字耐久性の評価枚数は8,000枚と少なく、搬送量安定性(中期)の値は2.32と高い。なお、比較例3においては、搬送量安定性(中期)に既に劣るため、搬送量安定性(末期)の評価を行っていない。以上の結果は、シリカ微粒子の高温高湿放置後疎水化度を比較例1よりもさらに高くした場合、印字耐久性及び搬送安定性がさらに悪化することを示す。
表2より、比較例2のトナーは、最低定着温度が145℃であり、凝集トナーの平均質量が0.1gであり、印字耐久性の評価枚数は15,000枚を超え、搬送量安定性(中期)の値は1.08であり、搬送量安定性(末期)の値は1.22である。したがって、比較例2のトナーについて、少なくとも低温定着性、耐熱保存性、印字耐久性、及び搬送量安定性の問題は見られない。
しかし、比較例2のトナーのHHカブリの値は4.1と高い。これは、シリカ微粒子7の高温高湿放置後疎水化度が低すぎることにより、高温高湿(H/H)環境下において経時的に吸湿量が増した結果、カブリが生じたためと考えられる。
表2より、比較例4のトナーは、凝集トナーの平均質量が0.2gであり、搬送量安定性(中期)の値は1.25である。したがって、比較例4のトナーについて、少なくとも耐熱保存性、及び中期の搬送量安定性に問題は見られない。
しかし、比較例4のトナーの最低定着温度は160℃と高く、印字耐久性の評価枚数は11,000枚と少なく、HHカブリの値は6.9と高い。この最低定着温度の値及びHHカブリの値は、いずれも、今回評価したトナー中最も高い。なお、比較例4においては、搬送量が急激に増加し、10,000枚印刷の時点で印刷が困難となったため、搬送量安定性(末期)の評価を行っていない。以上の結果は、シリカ微粒子を3.0質量部よりも多く加えた場合、低温定着性が悪化することを示す。また、以上の結果は、外添剤量が多すぎる場合、トナー搬送量の不安定化及び帯電量の低下が引き起こされ、搬送量安定性や高温高湿(H/H)環境下におけるカブリの発生につながることを示す。
表2より、比較例5のトナーの最低定着温度は130℃である。したがって、比較例5のトナーについて、少なくとも低温定着性に問題は見られない。
しかし、比較例5のトナーにおける凝集トナーの平均質量は10.2gと多く、印字耐久性の評価枚数は7,000枚と少なく、搬送量安定性(中期)の値は2.02と高く、HHカブリの値は2.9と高い。比較例5の凝集トナーの平均質量は、今回評価したトナー中最も多い。また、比較例5の印字耐久性の評価枚数は、今回評価したトナー中最も少ない。なお、比較例5においては、搬送量安定性(中期)に既に劣るため、搬送量安定性(末期)の評価を行っていない。以上の結果は、シリカ微粒子を0.5質量部よりも少なく加えた場合、耐熱保存性が悪化し、印字耐久性に劣ることを示す。また、以上の結果は、外添剤量が少なすぎる場合、トナー搬送量の不安定化及び帯電量の低下が引き起こされ、搬送量安定性や高温高湿(H/H)環境下におけるカブリの発生につながることを示す。
表2より、実施例1〜8のトナーは、最低定着温度が150℃以下と低く、凝集トナーの平均質量が2.5g以下と少なく、印字耐久性の評価枚数が12,000枚以上と多く、搬送量安定性(中期)の値が1.50以下と低く、搬送量安定性(末期)の値が2.28以下と低く、HHカブリの値は2.0以下と低い。
したがって、外添剤として、高温高湿放置後疎水化度が15%〜49%であるシリカ微粒子を0.5質量部〜3.0質量部含む本発明のトナーは、低温定着性と耐熱保存性のバランスに優れ、搬送量安定性及び印字耐久性も良好であり、且つ高温高湿環境下でカブリの発生が少ないことが分かる。特に、疎水化度変化量が5〜28%の範囲にある場合、高温高湿環境下でのカブリの発生が効果的に抑えられることが分かる。
Claims (6)
- 結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、
前記着色樹脂粒子100質量部に対して、前記外添剤として、高温高湿放置後疎水化度が15%〜49%であるシリカ微粒子を0.5質量部〜3.0質量部含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー。 - 前記シリカ微粒子の高温高湿放置前後での疎水化度変化量が5%〜28%であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記シリカ微粒子の個数平均一次粒径が50nm〜500nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記外添剤として、さらに個数平均一次粒径が100〜2,000nmの脂肪酸金属塩粒子を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記着色樹脂粒子100質量部に対して、前記外添剤の総添加量が1.40質量部〜4.00質量部であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記着色樹脂粒子が正帯電性を示し、かつ、
前記シリカ微粒子も正帯電性を示すよう表面処理が行われていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
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