本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の露光装置(基板処理装置)の全体構成を示す図である。第1実施形態の基板処理装置は、基板Pに露光処理を施す露光装置EXであり、露光装置EXは、露光後の基板Pに各種処理を施してデバイスを製造するデバイス製造システム1に組み込まれている。先ず、デバイス製造システム1について説明する。
<デバイス製造システム>
デバイス製造システム1は、デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレーを製造するライン(フレキシブル・ディスプレー製造ライン)である。フレキシブル・ディスプレーとしては、例えば有機ELディスプレー等がある。このデバイス製造システム1は、可撓性(フレキシブル)の長尺の基板Pをロール状に巻回した図示しない供給用ロールから、該基板Pが送り出され、送り出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、処理後の基板Pを可撓性のデバイスとして図示しない回収用ロールに巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式となっている。第1実施形態のデバイス製造システム1では、フィルム状のシートである基板Pが供給用ロールから送り出され、供給用ロールから送り出された基板Pが、順次、プロセス装置U1、露光装置EX、プロセス装置U2を経て、回収用ロールに巻き取られるまでの例を示している。ここで、デバイス製造システム1の処理対象となる基板Pについて説明する。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂のうち1または2以上を含んでいる。
基板Pは、例えば、基板Pに施される各種処理において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することが望ましい。熱膨張係数は、例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって、プロセス温度等に応じた閾値よりも小さく設定されていてもよい。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
このように構成された基板Pは、ロール状に巻回されることで供給用ロールとなり、この供給用ロールが、デバイス製造システム1に装着される。供給用ロールが装着されたデバイス製造システム1は、デバイスを製造するための各種の処理を、供給用ロールから長尺方向に送り出される基板Pに対して繰り返し実行する。このため、処理後の基板P上には、複数の電子デバイス(表示パネル、プリント基板等)用のパターンが長尺方向に一定の間隔で連なった状態で形成される。つまり、供給用ロールから送り出される基板Pは、多面取り用の基板となっている。なお、基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの、或いは、表面に精密パターニングのための微細な隔壁構造(インプリント法で形成した凹凸構造)を形成したものでもよい。
処理後の基板Pは、ロール状に巻回されることで回収用ロールとして回収される。回収用ロールは、図示しないダイシング装置に装着される。回収用ロールが装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを、デバイス毎に分割(ダイシング)することで、複数個のデバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
引き続き、図1を参照し、デバイス製造システム1について説明する。デバイス製造システム1は、プロセス装置U1と、露光装置EXと、プロセス装置U2とを備える。なお、図1では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっている。X方向は、水平面内において、プロセス装置U1から露光装置EXを経てプロセス装置U2へ向かう方向である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向となっている。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(鉛直方向)であり、XY面は露光装置EXが設置される製造ラインの設置面Eと平行とする。
プロセス装置U1は、露光装置EXで露光処理される基板Pに対して前工程の処理(前処理)を行う。プロセス装置U1は、前処理を行った基板Pを露光装置EXへ向けて送る。このとき、露光装置EXへ送られる基板Pは、その表面に感光性機能層(光感応層)が形成された基板(感光基板)Pとなっている。
ここで、感光性機能層は、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジストであるが、現像処理不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング材(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元材等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング材を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質されるため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)を選択塗布し、パターン層を形成する。感光性機能層として、感光性還元材を用いる場合は、基板上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈するため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。
露光装置EXは、プロセス装置U1から供給された基板Pに対して、例えばディスプレーパネル用の各種回路または各種配線等のパターンを描画している。詳細は後述するが、この露光装置EXは、複数の描画ユニットUW1〜UW5の各々から基板Pに向けて投射される描画ビームLBの各々を所定の走査方向に走査することで得られる複数の描画ラインLL1〜LL5によって、基板Pに所定のパターンを露光する。
プロセス装置U2は、露光装置EXで露光処理された基板Pを受け入れて、基板Pに対して後工程の処理(後処理)を行う。プロセス装置U2は、基板Pの感光性機能層がフォトレジストである場合は、基板Pのガラス転移温度以下でのポストベーク処理、現像処理、洗浄処理、乾燥処理等を行なう。また、基板Pの感光性機能層が感光性メッキ還元材である場合、プロセス装置U2は無電解メッキ処理、洗浄処理、乾燥処理等を行なう。さらに、基板Pの感光性機能層が感光性シランカップリング材である場合、プロセス装置U2は基板P上の親液性となった部分への液状インクの選択的な塗布処理、乾燥処理等を行なう。このようなプロセス装置U2を経ることによって、基板P上にデバイスのパターン層が形成される。
<露光装置(基板処理装置)>
続いて、図1から図10を参照して、露光装置EXについて説明する。図2は、図1の露光装置の主要部の配置を示す斜視図である。図3は、基板上でのアライメント顕微鏡と描画ラインとの配置関係を示す図である。図4は、図1の露光装置の回転ドラム及び描画装置(描画ユニット)の構成を示す図である。図5は、図1の露光装置の主要部の配置を示す平面図である。図6は、図1の露光装置の分岐光学系の構成を示す斜視図である。図7は、図1の露光装置の複数の描画ユニット内の走査器の配置関係を示す図である。図8は、走査器の反射面の倒れによる描画ラインのずれを解消する為の光学構成を説明する図である。図9は、基板上でのアライメント顕微鏡と描画ラインとエンコーダヘッドとの配置関係を示す斜視図である。図10は、図1の露光装置の回転ドラムの表面構造の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、露光装置EXは、マスクを用いない露光装置、いわゆるマスクレス方式の描画露光装置であり、本実施形態では、基板Pを搬送方向(長尺方向)に一定の速度で連続搬送しながら、描画ビームLBのスポット光を所定の走査方向(基板Pの幅方向)に高速走査することで、基板Pの表面に描画を行って、基板P上に所定のパターンを形成するラスタースキャン方式の直描露光装置である。
図1に示すように、露光装置EXは、描画装置11と、基板搬送機構12と、アライメント顕微鏡AM1,AM2と、制御部16とを備えている。描画装置11は、複数の描画ユニットUW1〜UW5を備えている。そして、描画装置11は、基板搬送機構12の一部でもある円筒状の回転ドラムDRの外周面の上方に密着支持された状態で搬送される基板Pの一部分に、複数の描画ユニットUW1〜UW5によって、所定のパターンを描画する。基板搬送機構12は、前工程のプロセス装置U1から搬送される基板Pを、後工程のプロセス装置U2に所定の速度で搬送している。アライメント顕微鏡AM1,AM2は、基板P上に描画すべきパターンと基板Pとを相対的に位置合せ(アライメント)するために、基板Pに予め形成されたアライメントマーク等を検出する。コンピュータ、マイコン、CPU、FPGA等を含む制御部16は、露光装置EXの各部を制御し、各部に処理を実行させる。制御部16は、デバイス製造システム1を制御する上位の制御装置の一部または全部であってもよい。また、制御部16は、上位の制御装置に制御される。上位の制御装置とは、例えば製造ラインを管理するホストコンピュータ等の別の装置であってもよい。
また、図2に示すように、露光装置EXは、描画装置11及び基板搬送機構12の少なくとも一部(回転ドラムDR等)を支持する装置フレーム13を備え、その装置フレーム13には、回転ドラムDRの回転角度位置や回転速度、回転軸方向の変位等を検出する回転位置検出機構(図4及び図9に示すエンコーダヘッド等)と、図1(又は図3、図9)に示すアライメント顕微鏡AM1,AM2等が取り付けられる。さらに、露光装置EX内には、描画ビームLBとしての紫外レーザ光(パルス光)を射出する光源装置CNTが、図4、図5に示すように設けられている。この露光装置EXは、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを、描画装置11を構成する複数の描画ユニットUW1〜UW5の各々にほぼ均等な光量(照度)で分配する。
図1に示すように、露光装置EXは、温調チャンバーEVC内に格納されている。温調チャンバーEVCは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1,SU2を介して製造工場の設置面(床面)Eに設置される。防振ユニットSU1,SU2は、設置面E上に設けられており、設置面Eからの振動を低減する。温調チャンバーEVCは、内部を所定の温度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制している。
露光装置EXの基板搬送機構12は、基板Pの搬送方向の上流側から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラDR4、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラム)DR、テンション調整ローラRT2、駆動ローラDR6、及び駆動ローラDR7を有している。
エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置U1から搬送される基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置U1から送られる基板Pの幅方向の端部(エッジ)位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲に収まるように、基板Pを幅方向に微動させて、基板Pの幅方向における位置を修正する。
ニップ方式の駆動ローラDR4は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを搬送方向の下流側に送り出すことで、基板Pを回転ドラムDRへ向けて搬送する。回転ドラムDRは、基板P上でパターン露光される部分を、Y方向に延びる回転中心線(回転軸)AX2から一定半径の円筒状の外周面に密着させて支持しつつ、回転中心線AX2の回りに回転することで、基板Pを長尺方向に搬送する。
このような回転ドラムDRを回転中心線AX2の回りに回転させるために、回転ドラムDRの両側には回転中心線AX2と同軸のシャフト部Sf2が設けられ、シャフト部Sf2は図2に示すように装置フレーム13にベアリングを介して軸支される。このシャフト部Sf2には、不図示の駆動源(モータや減速ギア機構等)からの回転トルクが与えられる。なお、回転中心線AX2を含んでYZ面と平行な面を、中心面p3とする。
2組のテンション調整ローラRT1,RT2は、回転ドラムDRに巻き付けられて支持される基板Pに、所定のテンションを与えている。2組のニップ式の駆動ローラDR6,DR7は、基板Pの搬送方向に所定の間隔を空けて配置されており、露光後の基板Pに所定のたるみ(あそび)DLを与えている。駆動ローラDR6は、搬送される基板Pの上流側を挟持して回転し、駆動ローラDR7は、搬送される基板Pの下流側を挟持して回転することで、基板Pをプロセス装置U2へ向けて搬送する。このとき、基板Pは、たるみDLが与えられているため、駆動ローラDR6よりも搬送方向の下流側において生ずる基板Pの搬送速度の変動を吸収でき、搬送速度の変動による基板Pへの露光処理の影響を縁切りすることができる。
従って、基板搬送機構12は、プロセス装置U1から搬送されてきた基板Pを、エッジポジションローラEPCによって幅方向における位置を調整する。基板搬送機構12は、幅方向の位置が調整された基板Pを、駆動ローラDR4によりテンション調整ローラRT1に搬送し、テンション調整ローラRT1を通過した基板Pを、回転ドラムDRに搬送する。基板搬送機構12は、回転ドラムDRを回転させることで、回転ドラムDRに支持される基板Pを、テンション調整ローラRT2へ向けて搬送する。基板搬送機構12は、テンション調整ローラRT2に搬送された基板Pを、駆動ローラDR6に搬送し、駆動ローラDR6に搬送された基板Pを、駆動ローラDR7に搬送する。そして、基板搬送機構12は、駆動ローラDR6及び駆動ローラDR7により、基板PにたるみDLを与えながら、基板Pをプロセス装置U2へ向けて搬送する。
再び図2を参照して、露光装置EXの装置フレーム13について説明する。図2では、X方向、Y方向及びZ方向が直交する直交座標系となっており、図1と同様の直交座標系となっている。
図2に示すように、装置フレーム13は、Z方向の下方側から順に、本体フレーム21と、支持機構である三点座22と、第1光学定盤23と、移動機構24と、第2光学定盤25とを有している。本体フレーム21は、防振ユニットSU1,SU2を介して設置面E上に設置される部分である。本体フレーム21は、回転ドラムDR及びテンション調整ローラRT1(不図示),RT2を回転可能に軸支(支持)している。第1光学定盤23は、回転ドラムDRの鉛直方向の上方側に設けられ、三点座22を介して本体フレーム21に設置されている。三点座22は、第1光学定盤23を3つの支持点で支持しており、各支持点におけるZ方向の位置(高さ位置)を調整可能となっている。このため、三点座22は、水平面に対する第1光学定盤23の盤面の傾きを所定の傾きに調整できる。なお、装置フレーム13の組み立て時において、本体フレーム21と三点座22との間は、XY面内において、X方向及びY方向に位置調整可能となっている。一方で、装置フレーム13の組み立て後において、本体フレーム21と三点座22との間はXY面内では固定された状態(リジットな状態)となる。
第2光学定盤25は、第1光学定盤23の鉛直方向の上方側に設けられ、移動機構24を介して第1光学定盤23に設置されている。第2光学定盤25は、その盤面が第1光学定盤23の盤面と平行になっている。第2光学定盤25には、描画装置11の複数の描画ユニットUW1〜UW5が設置される。移動機構24は、第1光学定盤23及び第2光学定盤25のそれぞれの盤面を平行に保った状態で、鉛直方向に延びる所定の回転軸Iを中心に、第1光学定盤23に対して第2光学定盤25を精密に微小回転させることができる。その回転範囲は、例えば基準位置に対して±数百ミリラジアン程度であり、1〜数ミリラジアンの分解能で角度設定ができるような構造となっている。また、移動機構24は、第1光学定盤23及び第2光学定盤25のそれぞれの盤面を平行に保った状態で、第1光学定盤23に対して第2光学定盤25をX方向及びY方向の少なくとも一方に精密に微小にシフト移動させる機構も備え、回転軸Iを基準位置からX方向又はY方向にμmオーダーの分解能で微小変位させることができる。この回転軸Iは、基準位置において、中心面p3内で鉛直方向に延在するとともに、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの表面(円周面に倣って湾曲した描画面)内の所定点(基板Pの幅方向の中点)を通っている(図3参照)。このような移動機構24によって、第1光学定盤23に対して第2光学定盤25を回転またはシフト移動させることで、回転ドラムDR、或いは回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pに対する複数の描画ユニットUW1〜UW5の位置を一体的に調整することができる。
続いて、図5を参照して、光源装置CNTについて説明する。光源装置CNTは、装置フレーム13の本体フレーム21上に設置されている。光源装置CNTは、基板Pに投射される描画ビームLBとしてのレーザ光を射出する。光源装置CNTは、基板P上の感光性機能層の露光に適した所定の波長域の光であって、光活性作用の強い紫外域の光を射出する光源を有する。光源としては、例えば、YAGの第三高調波レーザ光(波長355nm)で、連続発振、または数KHz〜数百MHz程度でパルス発振するレーザ光源が利用できる。
光源装置CNTは、レーザ光発生部CU1及び波長変換部CU2を備えている。レーザ光発生部CU1は、レーザ光源OSC、ファイバーアンプFB1,FB2を備えている。レーザ光発生部CU1は、基本波レーザ光Lsを出射する。ファイバーアンプFB1,FB2は、基本波レーザ光Lsを光ファイバーにより増幅する。レーザ光発生部CU1は、増幅された基本波レーザ光Lrを波長変換部CU2に入射させる。波長変換部CU2には、波長変換光学素子、ダイクロイックミラーや偏光ビームスプリッタ、プリズム等が設けられ、これらの光(波長)選択部品を用いることによって第三高調波レーザである波長355nmのレーザ光(描画ビームLB)を取り出している。その際、種光を発生するレーザ光源OSCをシステムクロック等と同期してパルス点灯させることによって、光源装置CNTは、波長355nmの描画ビームLBを数KHz〜数百MHz程度のパルス光として発生する。尚、この種のファイバーアンプを用いた場合、レーザ光源OSCのパルス駆動の態様により、最終的に出力されるレーザ光(LrやLB)の1パルスの発光時間をピコ秒オーダーにすることができる。
尚、光源としては、例えば、紫外域の輝線(g線、h線、i線等)を有する水銀ランプ等のランプ光源、波長450nm以下の紫外域に発振ピークを有するレーザーダイオード、発光ダイオード(LED)等の固体光源、または遠紫外光(DUV光)を発振するKrFエキシマレーザ光(波長248nm)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、XeClエキシマレーザ(波長308nm)等の気体レーザ光源が利用できる。
ここで、光源装置CNTから射出された描画ビームLBは、後述するように、各描画ユニットUW1〜UW5内に設けられる偏光ビームスプリッタPBSを介して基板Pに投射される。一般に、偏光ビームスプリッタPBSは、S偏光の直線偏光となる光束を反射し、P偏光の直線偏光となる光束を透過する。このため、光源装置CNTでは、偏光ビームスプリッタPBSに入射する描画ビームLBが直線偏光(S偏光)の光束となるレーザ光を射出することが好ましい。また、レーザ光は、エネルギー密度が高いため、基板Pに投射される光束の照度を適切に確保することができる。
次に、露光装置EXの描画装置11について、図3も参照して説明する。描画装置11は、複数の描画ユニットUW1〜UW5を用いた、いわゆるマルチビーム型の描画装置11となっている。この描画装置11は、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを複数に分岐させ、分岐させた複数の描画ビームLBを、図3のような基板P上の複数(第1実施形態では例えば5つ)の描画ラインLL1〜LL5に沿ってそれぞれ微小なスポット光(数μm径)に集光して走査させている。そして、描画装置11は、複数の描画ラインLL1〜LL5の各々によって基板P上に描画されるパターン同士を、基板Pの幅方向に継ぎ合わせている。先ず、図3を参照して、描画装置11により複数の描画ビームLBを走査することで基板P上に形成される複数の描画ラインLL1〜LL5(スポット光の走査軌跡)について説明する。
図3に示すように、複数の描画ラインLL1〜LL5は、中心面p3を挟んで回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。回転方向の上流側の基板P上には、奇数番の第1描画ラインLL1、第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5が、Y軸と平行に配置される。回転方向の下流側の基板P上には、偶数番の第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4がY軸と平行に配置される。
各描画ラインLL1〜LL5は、基板Pの幅方向(Y方向)、つまり回転ドラムDRの回転中心線AX2に沿ってほぼ平行に形成されており、幅方向における基板Pの長さよりも短くなっている。より厳密には、各描画ラインLL1〜LL5は、基板搬送機構12により基準速度で基板Pを搬送したときに、複数の描画ラインLL1〜LL5により得られるパターンの継ぎ誤差が最小となるように、回転ドラムDRの回転中心線AX2が延びる方向(軸方向または幅方向)に対し、所定の角度分だけ傾けられてもよい。
奇数番の第1描画ラインLL1、第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5は、回転ドラムDRの中心線AX2方向に、所定の間隔を空けて配置されている。また、偶数番の第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4は、回転ドラムDRの中心線AX2方向に、所定の間隔を空けて配置されている。このとき、第2描画ラインLL2は、中心線AX2方向において、第1描画ラインLL1と第3描画ラインLL3との間に配置される。同様に、第3描画ラインLL3は、中心線AX2方向において、第2描画ラインLL2と第4描画ラインLL4との間に配置される。第4描画ラインLL4は、中心線AX2方向において、第3描画ラインLL3と第5描画ラインLL5との間に配置される。そして、第1〜第5描画ラインLL1〜LL5は、基板P上に描画される露光領域A7の幅方向(軸方向)の全幅をカバーするように、配置されている。
奇数番の第1描画ラインLL1、第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5に沿って走査される描画ビームLBのスポット光の走査方向は、一次元の方向となっており、同じ方向となっている。また、偶数番の第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4に沿って走査される描画ビームLBのスポット光の走査方向は、一次元の方向となっており、同じ方向となっている。このとき、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5に沿って走査される描画ビームLBのスポット光の走査方向(+Y方向)と、偶数番の描画ラインLL2,LL4に沿って走査される描画ビームLBのスポット光の走査方向(−Y方向)とは、図3中の矢印で示すように逆方向となっている。これは、描画ユニットUW1〜UW5の各々を同一構成とし、奇数番の描画ユニットと偶数番の描画ユニットとをXY面内で180°回転させて向い合せて配置すると共に、各描画ユニットUW1〜UW5に設けられるビーム走査器としての回転ポリゴンミラーを同一方向に回転させた為である。このため、基板Pの搬送方向からみて、奇数番の描画ラインLL3,LL5の描画開始位置と、偶数番の描画ラインLL2,LL4の描画開始位置とは、Y方向に関してスポット光の径寸法以下の誤差で隣接(若しくは一致)し、同様に、奇数番の描画ラインLL1,LL3の描画終了位置と、偶数番の描画ラインLL2,LL4の描画終了位置とは、Y方向に関してスポット光の径寸法以下の誤差で隣接(若しくは一致)している。
以上説明したように、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5の各々は、基板P上で回転ドラムDRの回転中心線AX2とほぼ平行になるように、基板Pの幅方向に一列に配置されている。そして偶数番の描画ラインLL2,LL4の各々は、基板P上で回転ドラムDRの回転中心線AX2とほぼ平行になるように、基板Pの幅方向に一列に配置されている。
次に、図4から図7を参照して、描画装置11について説明する。描画装置11は、上記した複数の描画ユニットUW1〜UW5と、光源装置CNTからの描画ビームLBを分岐して描画ユニットUW1〜UW5に導く分岐光学系SLと、キャリブレーションを行うためのキャリブレーション検出系31とを有する。
分岐光学系SLは、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを複数に分岐し、分岐した複数の描画ビームLBを複数の描画ユニットUW1〜UW5へ向けてそれぞれ導いている。分岐光学系SLは、光源装置CNTから射出された描画ビームLBを2つに分岐する第1光学系41と、第1光学系41により分岐された一方の描画ビームLBが入射する第2光学系42と、第1光学系41により分岐された他方の描画ビームLBが入射する第3光学系43とを有する。また、分岐光学系SLの第1光学系41には、描画ビームLBの進行軸と直交する面内で描画ビームLBを2次元的に横シフトさせるビームシフター機構44が設けられ、分岐光学系SLの第3光学系43には、描画ビームLBを2次元的に横シフトさせるビームシフター機構45が設けられている。分岐光学系SLは、光源装置CNT側の一部が本体フレーム21に設置される一方で、描画ユニットUW1〜UW5側の他の一部が第2光学定盤25に設置されている。
第1光学系41は、1/2波長板51と、偏光ミラー(偏光ビームスプリッタ)52と、ビームディフューザ53と、第1反射ミラー54と、第1リレーレンズ55と、第2リレーレンズ56と、ビームシフター機構44と、第2反射ミラー57と、第3反射ミラー58と、第4反射ミラー59と、第1ビームスプリッタ60とを有する。尚、図4、図5ではそれら各部材の配置関係が判り難いので、図6の斜視図も参照して説明する。
図6に示すように、光源装置CNTから+X方向に射出された描画ビームLBは、1/2波長板51に入射する。1/2波長板51は、描画ビームLBの入射面内において回転可能となっている。1/2波長板51に入射した描画ビームLBは、その偏光方向が、1/2波長板51の回転位置(角度)に応じた所定の偏光方向となる。1/2波長板51を通過した描画ビームLBは、偏光ミラー52に入射する。偏光ミラー52は、描画ビームLBに含まれる所定の偏光方向の光成分を透過する一方で、それ以外の偏光方向の光成分を+Y方向に反射する。このため、偏光ミラー52で反射される描画ビームLBの強度は、1/2波長板51及び偏光ミラー52の協働によって、1/2波長板51の回転位置に応じて調整することができる。
偏光ミラー52を透過した描画ビームLBの一部(不要な光成分)は、ビームディフューザ(光トラップ)53に照射される。ビームディフューザ53は、入射してきた描画ビームLBの一部の光成分を吸収し、その光成分が外部へ漏れることを抑制している。さらに、描画ビームLBが通る各種光学系の調整作業の際に、レーザパワーが最大のままではパワーが強すぎて危険であるため、ビームディフューザ53が描画ビームLBの多くの光成分を吸収するように、1/2波長板51の回転位置(角度)を変えて、描画ユニットUW1〜UW5に向かう描画ビームLBのパワーを大幅に減衰させる為にも使用される。
偏光ミラー52で+Y方向に反射された描画ビームLBは、第1反射ミラー54により+X方向に反射され、第1リレーレンズ55及び第2リレーレンズ56を介してビームシフター機構44に入射し、第2反射ミラー57に達する。
第1リレーレンズ55は、光源装置CNTからの描画ビームLB(ほぼ平行光束)を収斂してビームウェストを形成し、第2リレーレンズ56は収斂後に発散する描画ビームLBを再び平行光束にする。
ビームシフター機構44は、図6に示すように、描画ビームLBの進行方向(+X方向)に沿って配置される2枚の平行平面板(石英)を含み、その平行平面板の一方はY軸と平行な軸回りに傾斜可能に設けられ、他方の平行平面板はZ軸と平行な軸回りに傾斜可能に設けられる。各平行平面板の傾斜角度に応じて、描画ビームLBはZY面内で横シフトしてビームシフター機構44から射出する。
その後、描画ビームLBは、第2反射ミラー57により−Y方向に反射されて、第3反射ミラー58に達し、第3反射ミラー58により−Z方向に反射されて、第4反射ミラー59に達する。第4反射ミラー59によって描画ビームLBは、+Y方向に反射されて、第1ビームスプリッタ60に入射する。第1ビームスプリッタ60は、描画ビームLBの一部の光量成分を−X方向に反射して第2光学系42に導くと共に、描画ビームLBの残りの光量成分を第3光学系43に導く。本実施形態の場合、第2光学系42に導かれる描画ビームLBは、その先で3つの描画ユニットUW1,UW3,UW5に分配され、第3光学系43に導かれる描画ビームLBは、その先で2つの描画ユニットUW2,UW4に分配される。その為、第1ビームスプリッタ60は、光分割面での反射率と透過率の比を3:2(反射率60%、透過率40%)とするのが望ましいが、必ずしもその必要はなく、1:1であっても構わない。
ここで、第3反射ミラー58と第4反射ミラー59とは、移動機構24の回転軸I上において所定の間隔を空けて設けられている。即ち、第3反射ミラー58で反射して第4反射ミラー59に向かう描画ビームLB(平行光束)の中心線が、回転軸Iと一致する(同軸となる)ように設定される。
また、第3反射ミラー58を含む光源装置CNTまでの構成(図4のZ方向の上方側において二点鎖線で囲んだ部分)は、本体フレーム21側に設置される一方で、第4反射ミラー59を含む複数の描画ユニットUW1〜UW5までの構成(図4のZ方向の下方側において二点鎖線で囲んだ部分)は、第2光学定盤25側に設置される。このため、移動機構24により第1光学定盤23と第2光学定盤25が相対回転しても、回転軸Iと同軸に描画ビームLBが通るように第3反射ミラー58と第4反射ミラー59とが設けられているため、第4反射ミラー59から第1ビームスプリッタ60に至る描画ビームLBの光路は変更されることがない。よって、移動機構24により第1光学定盤23に対して第2光学定盤25が回転しても、本体フレーム21側に設置された光源装置CNTから射出される描画ビームLBを、第2光学定盤25側に設置された複数の描画ユニットUW1〜UW5へ好適に安定して案内することが可能となる。
第2光学系42は、第1光学系41の第1ビームスプリッタ60で分岐された一方の描画ビームLBを、後述する奇数番の描画ユニットUW1,UW3,UW5へ向けて分岐して導いている。第2光学系42は、第5反射ミラー61と、第2ビームスプリッタ62と、第3ビームスプリッタ63と、第6反射ミラー64とを有する。
第1光学系41の第1ビームスプリッタ60で−X方向に反射された描画ビームLBは、第5反射ミラー61により−Y方向に反射されて、第2ビームスプリッタ62に入射する。第2ビームスプリッタ62に入射した描画ビームLBは、その一部が−Z方向に反射されて、奇数番の1つの描画ユニットUW5に導かれる(図5参照)。第2ビームスプリッタ62を透過した描画ビームLBは、第3ビームスプリッタ63に入射する。第3ビームスプリッタ63に入射した描画ビームLBは、その一部が−Z方向に反射されて、奇数番の1つの描画ユニットUW3に導かれる(図5参照)。そして第3ビームスプリッタ63を透過した描画ビームLBの一部は、第6反射ミラー64により−Z方向に反射されて、奇数番の1つの描画ユニットUW1に導かれる(図5参照)。なお、第2光学系42において、奇数番の描画ユニットUW1,UW3,UW5に照射される描画ビームLBは、−Z方向に対して僅かに斜めとなっている。
また、描画ビームLBのパワーを有効利用する為に、第2ビームスプリッタ62の反射率と透過率の比を1:2、第3ビームスプリッタ63の反射率と透過率の比を1:1に近づけるのが良い。
一方、第3光学系43は、第1光学系41の第1ビームスプリッタ60で分岐された他方の描画ビームLBを、後述する偶数番の描画ユニットUW2,UW4へ向けて分岐して導いている。第3光学系43は、第7反射ミラー71と、ビームシフター機構45と、第8反射ミラー72と、第4ビームスプリッタ73と、第9反射ミラー74とを有する。
第1光学系41の第1ビームスプリッタ60で+Y方向に透過した描画ビームLBは、第7反射ミラー71により+X方向に反射されて、ビームシフター機構45を透過して第8反射ミラー72に入射する。ビームシフター機構45は、ビームシフター機構44と同様の傾斜可能な2枚の平行平面板(石英)で構成され、第8反射ミラー72に向けて+X方向に進む描画ビームLBをZY面内で横シフトさせる。
第8反射ミラー72により−Y方向に反射された描画ビームLBは、第4ビームスプリッタ73に入射する。第4ビームスプリッタ73に照射された描画ビームLBは、その一部が−Z方向に反射されて、偶数番の1つの描画ユニットUW4に導かれる(図5参照)。第4ビームスプリッタ73を透過した描画ビームLBは、第9反射ミラー74により−Z方向に反射されて、偶数番の1つの描画ユニットUW2に導かれる。なお、第3光学系43においても、偶数番の描画ユニットUW2,UW4に照射される描画ビームLBは、−Z方向に対して僅かに斜めとなっている。
このように、分岐光学系SLでは、複数の描画ユニットUW1〜UW5へ向けて、光源装置CNTからの描画ビームLBを複数に分岐させている。このとき、第1ビームスプリッタ60、第2ビームスプリッタ62、第3ビームスプリッタ63及び第4ビームスプリッタ73は、複数の描画ユニットUW1〜UW5に照射される描画ビームLBのビーム強度が同じ強度となるように、その反射率(透過率)を、描画ビームLBの分岐数に応じて適切な反射率としている。
ところで、ビームシフター機構44は、第2リレーレンズ56と第2反射ミラー57との間に配置されている。ビームシフター機構44は、基板P上に形成される描画ラインLL1〜LL5の全ての位置を、基板Pの描画面内においてμmオーダーで微調整することができる。
また、ビームシフター機構45は、基板P上に形成される描画ラインLL1〜LL5のうち、偶数番の第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4を、基板Pの描画面内においてμmオーダーで微調整することができる。
さらに、図4、図5及び図7を参照して、複数の描画ユニットUW1〜UW5について説明する。図4(及び図1)に示すように、複数の描画ユニットUW1〜UW5は、中心面p3を挟んで回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。複数の描画ユニットUW1〜UW5は、中心面p3を挟んで、第1,第3,第5描画ラインLL1,LL3,LL5が配置される側(図5の−X方向側)に、第1描画ユニットUW1、第3描画ユニットUW3及び第5描画ユニットUW5が配置される。第1描画ユニットUW1、第3描画ユニットUW3及び第5描画ユニットUW5は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。また、複数の描画ユニットUW1〜UW5は、中心面p3を挟んで、第2,第4描画ラインLL2,LL4が配置される側(図5の+X方向側)に、第2描画ユニットUW2及び第4描画ユニットUW4が配置される。第2描画ユニットUW2及び第4描画ユニットUW4は、Y方向に所定の間隔を空けて配置される。このとき、先の図2、又は図5に示すように、第2描画ユニットUW2は、Y方向において、第1描画ユニットUW1と第3描画ユニットUW3との間に位置している。同様に、第3描画ユニットUW3は、Y方向において、第2描画ユニットUW2と第4描画ユニットUW4との間に位置している。第4描画ユニットUW4は、Y方向において、第3描画ユニットUW3と第5描画ユニットUW5との間に位置している。また、図4に示すように、第1描画ユニットUW1、第3描画ユニットUW3及び第5描画ユニットUW5と、第2描画ユニットUW2及び第4描画ユニットUW4とは、Y方向からみて中心面p3を中心に対称に配置されている。
次に、図4を参照して、各描画ユニットUW1〜UW5内の光学系の構成について説明する。なお、各描画ユニットUW1〜UW5は、同様の構成となっているため、第1描画ユニットUW1(以下、単に描画ユニットUW1という)を例に説明する。
図4に示す描画ユニットUW1は、描画ラインLL1(第1描画ラインLL1)に沿って描画ビームLBのスポット光を走査すべく、光偏向器81と、偏光ビームスプリッタPBSと、1/4波長板82と、走査器83と、折り曲げミラー84と、f−θレンズ系85と、シリンドリカルレンズ86を含むY倍率補正用光学部材(レンズ群)86Bとを備える。また、偏向ビームスプリッタPBSに隣接して、キャリブレーション検出系31が設けられている。
光偏向器81は、例えば、音響光学素子(AOM:Acousto Optic Modulator)が用いられている。AOMは、内部に超音波(高周波信号)によって回折格子を生成するか否かによって、入射した描画ビームの1次回折光を所定の回折角方向に発生させるON状態と、一次回折光を発生させないOFF状態とにスイッチングする光スイッチング素子である。
図1に示した制御部16は、光偏向器81をON/OFFにスイッチングすることで、描画ビームLBの基板Pへの投射/非投射を高速に切り替える。具体的に、光偏向器81には、分岐光学系SLで分配された描画ビームLBの1つが、リレーレンズ91を介して、−Z方向に対して僅かに傾斜して照射される。光偏向器81が、OFFにスイッチングされると、描画ビームLBが傾斜した状態で直進し、光偏向器81を通過した先に設けられる遮光板92により遮光される。一方で、光偏向器81が、ONにスイッチングされると、描画ビームLB(1次回折光)が−Z方向に偏向されて、光偏向器81を通過し、光偏向器81のZ方向上に設けられる偏光ビームスプリッタPBSに照射される。このため、光偏向器81がONにスイッチングされると、描画ビームLBのスポット光が基板Pに投射され、光偏向器81がOFFにスイッチングされると、描画ビームLBのスポット光は基板Pに投射されない。
尚、AOMは、リレーレンズ91によって収斂される描画ビームLBのビームウェストの位置に配置されるので、光偏向器81から射出する描画ビームLB(1次回折光)は発散する。その為、光偏向器81の後に、発散する描画ビームLBを平行光束に戻すリレーレンズ93が設けられる。
偏光ビームスプリッタPBSは、光偏向器81からリレーレンズ93を介して照射された描画ビームLBを反射する。偏光ビームスプリッタPBSを射出した描画ビームLBは、1/4波長板82、走査器83(回転ポリゴンミラー)、折り曲げミラー84、f−θレンズ系85、Y倍率補正用光学部材86B、及びシリンドリカルレンズ86の順に進み、基板P上に走査スポット光として集光される。
一方で、偏光ビームスプリッタPBSは、偏光ビームスプリッタPBSと走査器83との間に設けられる1/4波長板82と協働して、基板P又はその下の回転ドラムDRの外周面に投射された描画ビームLBの反射光が、Y倍率補正用光学部材86B、シリンドリカルレンズ86、f−θレンズ系85、折り曲げミラー84、走査器83の順に逆進してくるので、その反射光を透過させることができる。つまり、光偏向器81から偏光ビームスプリッタPBSに照射される描画ビームLBは、S偏光の直線偏光となるレーザ光であり、偏光ビームスプリッタPBSにより反射される。また、偏光ビームスプリッタPBSにより反射された描画ビームLBは、1/4波長板82、走査器83、折り曲げミラー84、f−θレンズ系85、Y倍率補正用光学部材86B、シリンドリカルレンズ86を通過して基板Pに照射され、基板P上に集光される描画ビームLBのスポット光は円偏光になっている。基板P(又は回転ドラムDRの外周面)からの反射光は、描画ビームLBの送光路を逆進し、1/4波長板82を再び通過することで、P偏光の直線偏光となるレーザ光となる。このため、基板P(又は回転ドラムDR)から偏光ビームスプリッタPBSに達する反射光は、偏光ビームスプリッタPBSを透過し、リレーレンズ94を介してキャリブレーション検出系31の光電センサー31Csに照射される。
このように、偏光向ビームスプリッタPBSは、走査器83を含む走査光学系と、キャリブレーション検出系31との間に配置される光分割器である。キャリブレーション検出系31は、描画ビームLBの基板Pへの送光光学系の多く一部を共用するため、容易かつコンパクトな光学系となる。
図4及び図7に示すように、走査器83は、反射ミラー96と、回転ポリゴンミラー(回転多面鏡)97と、原点検出器98とを有する。1/4波長板82を通過した描画ビームLB(平行光束)は、シリンドリカルレンズ95を介して反射ミラー96によりXY面内で反射され、回転ポリゴンミラー97に照射される。回転ポリゴンミラー97は、Z方向に延びる回転軸97aと、回転軸97a周りに形成される複数の反射面97bとを含んで構成されている。回転ポリゴンミラー97は、回転軸97aを中心に所定の回転方向に回転させることで、反射面97bに照射される描画ビームLB(光偏向器81で強度変調されたビーム)の反射角をXY面内で連続的に変化させ、これにより、反射した描画ビームLBが、折り曲げミラー84、f−θレンズ系85、第2のシリンドリカルレンズ86(及びY倍率補正用光学部材86B)によってスポット光に集光され、基板P上の描画ラインLL1(同様にLL2〜LL5)に沿って走査する。原点検出器98は、基板Pの描画ラインLL1(同様にLL2〜LL5)に沿って走査する描画ビームLBの原点を検出している。原点検出器98は、各反射面97bで反射する描画ビームLBを挟んで、反射ミラー96の反対側に配置されている。
図7では、説明を簡単にする為、原点検出器98は光電検出器のみを図示したが、実際は、描画ビームLBが投射される回転ポリゴンミラー97の反射面97bに向けて検出用ビームを投射するLEDや半導体レーザ等の検出用光源が設けられ、原点検出器98は、その検出用ビームの反射面97bでの反射光を細いスリットを介して光電検出する。
これによって、原点検出器98は、基板P上の描画ラインLL1(LL2〜LL5)の描画開始位置にスポット光が照射されるタイミングに対して常に一定時間だけ手前で、原点を表わすパルス信号を出力するように設定されている。
走査器83から折り曲げミラー84に照射された描画ビームLBは、折り曲げミラー84により−Z方向に反射され、f−θレンズ系85、シリンドリカルレンズ86(及びY倍率補正用光学部材86B)に入射する。
ところで、回転ポリゴンミラー97の各反射面97bが、回転軸97aの中心線と厳密に平行でなく、僅かに傾いている(面倒れしている)と、基板P上に投射されるスポット光による描画ライン(LL1〜LL5)は、反射面97b毎に基板P上でX方向にぶれることになる。そこで、図8を用いて、2つのシリンドリカルレンズ95、86を設けたことによって、回転ポリゴンミラー97の各反射面97bの面倒れに対して、描画ラインLL1〜LL5のX方向へのぶれを低減又は解消できることを説明する。
図8の左側は、シリンドリカルレンズ95、走査器83、f−θレンズ系85、シリンドリカルレンズ86の光路をXY平面に展開した様子を示し、図8の右側は、その光路をXZ平面内に展開した様子を示す。基本的な光学配置として、回転ポリゴンミラー97の描画ビームLBが照射される反射面97bは、f-θレンズ系85の入射瞳位置(前側焦点位置)になるように配置される。これによって、回転ポリゴンミラー97の回転角θp/2に対して、f−θレンズ系85に入射する描画ビームLBの入射角はθpとなり、その入射角θpに比例して基板P(被照射面)上に投射されるスポット光の像高位置が決定する。また、反射面97bをf−θレンズ系85の前側焦点位置にすることで、基板Pに投射される描画ビームLBは描画ライン上のどの位置でもテレセントリックな状態(スポット光となる描画ビームの主光線が常にf−θレンズ系85の光軸AXfと平行な状態)となる。
図8に示すように、2つのシリンドリカルレンズ95、86は、回転ポリゴンミラー97の回転軸97aと垂直な面(XY面)内では、何れも屈折力(パワー)がゼロの平行平板ガラスとして機能し、回転軸97aが延びるZ方向(XZ面内)では一定の正の屈折力を有する凸レンズとして機能する。第1のシリンドリカルレンズ95に入射する描画ビームLB(ほぼ平行光束)の断面形状は数mm程度の円形であるが、シリンドリカルレンズ95のXZ面内での焦点位置を、反射ミラー96を介して回転ポリゴンミラー97の反射面97b上に設定すると、XY面内では数mmのビーム幅を有し、Z方向には収斂したスリット状のスポット光が、反射面97b上に回転方向に延びて集光する。
回転ポリゴンミラー97の反射面97bで反射した描画ビームLBは、XY面内では平行光束であるが、XZ面内(回転軸97aが延びる方向)では、発散光束となってf−θレンズ系85に入射する。その為、f−θレンズ系85を射出した直後の描画ビームLBは、XZ面内(回転軸97aが延びる方向)では、ほぼ平行光束となっているが、第2のシリンドリカルレンズ86の作用によって、XZ面内、即ち基板P上では描画ラインLL1〜LL5が延びる方向と直交した基板Pの搬送方向に関しても、スポット光に集光される。その結果、基板P上の各描画ライン上には、円形の小さなスポット光が投射される。
シリンドリカルレンズ86を設けることによって、図8の右側に示すように、XZ面内では、回転ポリゴンミラー97の反射面97bと基板P(被照射面)とを光学的に像共役関係に設定することができる。そのため、回転ポリゴンミラー97の各反射面97bが、描画ビームLBの走査方向と直交する非走査方向(回転軸97aが延びる方向)に対して倒れ誤差を持ったとしても、基板P上の描画ライン(LL1〜LL5)の位置は、スポット光の非走査方向(基板Pの搬送方向)にぶれることがない。このように、回転ポリゴンミラー97の前と後にシリンドリカルレンズ95、86を設けることによって、非走査方向に対するポリゴン反射面の面倒れ補正光学系を構成することができる。
ここで、図7に示すように、複数の描画ユニットUW1〜UW5の各走査器83は中心面p3に対して対称な構成となっている。複数の走査器83は、描画ユニットUW1,UW3,UW5に対応する3つの走査器83が、回転ドラムDRの回転方向の上流側(図7の−X方向側)に配置され、描画ユニットUW2,UW4に対応する2つの走査器83が、回転ドラムDRの回転方向の下流側(図7の+X方向側)に配置されている。そして、上流側の3つの走査器83と、下流側の2つの走査器83とは、中心面p3を挟んで、対向して配置されている。このように、上流側の3つの走査器83と、下流側の2つの走査器83とは、回転軸I(Z軸)を中心に180°回転した配置関係となっている。このため、上流側の3つの回転ポリゴンミラー97が、例えば左回りに回転しながら、回転ポリゴンミラー97に描画ビームLBが照射されると、回転ポリゴンミラー97により反射された描画ビームLBは、描画開始位置から描画終了位置へ向けて所定の走査方向(例えば図7の+Y方向)に走査される。一方で、下流側の2つの回転ポリゴンミラー97が左回りに回転しながら、回転ポリゴンミラー97に描画ビームLBが照射されると、回転ポリゴンミラー97により反射された描画ビームLBは、描画開始位置から描画終了位置へ向けて、上流側の3つの回転ポリゴンミラー97とは逆となる走査方向(例えば図7の−Y方向)に走査される。
ここで、図4のXZ面内でみたとき、奇数番の描画ユニットUW1,UW3,UW5から基板Pに達する描画ビームLBの軸線は、設置方位線Le1と一致した方向になっている。つまり、設置方位線Le1は、XZ面内において、奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。同様に、図4のXZ面内でみたとき、偶数番の描画ユニットUW2,UW4から基板Pに達する描画ビームLBの軸線は、設置方位線Le2と一致した方向になっている。つまり、設置方位線Le2は、XZ面内において、偶数番の描画ラインLL2,LL4と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。このため、基板Pにスポット光となって投射される描画ビームLBの各進行方向(主光線)は、いずれも回転ドラムDRの回転中心線AX2に向かうように設定されている。
Y倍率補正用光学部材86Bは、f−θレンズ系85と基板Pとの間に配置されている。Y倍率補正用光学部材86Bは、各描画ユニットUW1〜UW5によって形成される描画ラインLL1〜LL5を、Y方向において、等方的に微少量だけ拡大または縮小させることができる。
具体的には、描画ラインLL1〜LL5の各々をカバーする一定厚みの透過性の平行平面板(石英)を描画ラインが延びる方向に関して機械的に湾曲(ベンディング)させて描画ラインのY方向の倍率(走査長)を可変にする機構、或いは、凸レンズ、凹レンズ、凸レンズの3群のレンズ系の一部を光軸方向に移動させて描画ラインのY方向の倍率(走査長)を可変にする機構等が使える。
このように構成された描画装置11は、制御部16により各部が制御されることで、基板P上に所定のパターンが描画される。つまり、制御部16は、基板Pに投射される描画ビームLBが走査方向へ走査している期間中、基板Pに描画すべきパターンのCAD情報に基づいて、光偏向器81をON/OFF変調することによって描画ビームLBを偏向し、基板Pの光感応層上にパターンを描画していく。また、制御部16は、描画ラインLL1に沿って走査する描画ビームLBの走査方向と、回転ドラムDRの回転による基板Pの搬送方向の移動とを同期させることで、露光領域A7中の描画ラインLL1に対応した部分に所定のパターンを描画する。
次に、図3と共に図9を参照して、アライメント顕微鏡AM1,AM2について説明する。アライメント顕微鏡AM1,AM2は、基板P上に予め形成されたアライメントマーク、または回転ドラムDR上に形成された基準マークや基準パターン等を検出する。以下、基板Pのアライメントマーク及び回転ドラムDRの基準マークや基準パターンを、単にマークと称す。アライメント顕微鏡AM1,AM2は、基板Pと基板P上に描画される所定のパターンとを位置合せ(アライメント)したり、回転ドラムDRと描画装置11とをキャリブレーションしたりするために用いられる。
アライメント顕微鏡AM1,AM2は、描画装置11で形成される描画ラインLL1〜LL5よりも、回転ドラムDRの回転方向(基板Pの搬送方向)の上流側に設けられている。また、アライメント顕微鏡AM1は、アライメント顕微鏡AM2に比して回転ドラムDRの回転方向の上流側に配置されている。
アライメント顕微鏡AM1,AM2は、照明光を基板Pまたは回転ドラムDRに投射すると共に、マークで発生した光を入射する検出プローブとしての対物レンズ系GA(図9では代表してアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GA4として示す)、対物レンズ系GAを介して受光したマークの像(明視野像、暗視野像、蛍光像等)を2次元CCD、CMOS等で撮像する撮像系GD(図9では代表してアライメント顕微鏡AM2の撮像系GD4として示す)等で構成される。なお、アライメント用の照明光は、基板P上の光感応層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば波長500〜800nm程度の光である。
アライメント顕微鏡AM1は、Y方向(基板Pの幅方向)に一列に並んで複数(例えば3つ)設けられる。同様に、アライメント顕微鏡AM2は、Y方向(基板Pの幅方向)に一列に並んで複数(例えば3つ)設けられる。つまり、アライメント顕微鏡AM1,AM2は、計6つ設けられている。
図3では、判り易くするため、6つのアライメント顕微鏡AM1,AM2の各対物レンズ系GAのうち、3つのアライメント顕微鏡AM1の各対物レンズ系GA1〜GA3の配置を示す。3つのアライメント顕微鏡AM1の各対物レンズ系GA1〜GA3による基板P(または回転ドラムDRの外周面)上の観察領域(検出位置)Vw1〜Vw3は、図3に示すように、回転中心線AX2と平行なY方向に、所定の間隔で配置される。図9に示すように、各観察領域Vw1〜Vw3の中心を通る各対物レンズ系GA1〜GA3の光軸La1〜La3は、いずれもXZ面と平行となっている。同様に、3つのアライメント顕微鏡AM2の各対物レンズ系GAによる基板P(または回転ドラムDRの外周面)上の観察領域Vw4〜Vw6は、図3に示すように、回転中心線AX2と平行なY方向に、所定の間隔で配置される。図9に示すように、各観察領域Vw4〜Vw6の中心を通る各対物レンズ系GAの光軸La4〜La6も、いずれもXZ面と平行となっている。そして、観察領域Vw1〜Vw3と、観察領域Vw4〜Vw6とは、回転ドラムDRの回転方向に、所定の間隔で配置される。
このアライメント顕微鏡AM1,AM2によるマークの観察領域Vw1〜Vw6は、基板Pや回転ドラムDR上で、例えば、500〜200μm角程度の範囲に設定される。ここで、アライメント顕微鏡AM1の光軸La1〜La3、即ち、対物レンズ系GAの光軸La1〜La3は、回転中心線AX2から回転ドラムDRの径方向に延びる設置方位線Le3と同じ方向に設定される。このように、設置方位線Le3は、図9のXZ面内でみたとき、アライメント顕微鏡AM1の観察領域Vw1〜Vw3と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。同様に、アライメント顕微鏡AM2の光軸La4〜La6、即ち、対物レンズ系GAの光軸La4〜La6は、回転中心線AX2から回転ドラムDRの径方向に延びる設置方位線Le4と同じ方向に設定される。このように、設置方位線Le4は、図9のXZ面内でみたとき、アライメント顕微鏡AM2の観察領域Vw4〜Vw6と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。このとき、アライメント顕微鏡AM1は、アライメント顕微鏡AM2に比して回転ドラムDRの回転方向の上流側に配置されていることから、中心面p3と設置方位線Le3とがなす角度は、中心面p3と設置方位線Le4とがなす角度に比して大きくなっている。
基板P上には、図3に示すように、5つの描画ラインLL1〜LL5の各々によって描画される露光領域A7が、X方向に所定の間隔を空けて配置される。基板P上の露光領域A7の周囲には、位置合せのための複数のアライメントマークKs1〜Ks3(以下、マークと略称する)が、例えば十字状に形成されている。
図3において、マークKs1は、露光領域A7の−Y側の周辺領域に、X方向に一定の間隔で設けられ、マークKs3は、露光領域A7の+Y側の周辺領域に、X方向に一定の間隔で設けられる。さらに、マークKs2は、X方向に隣り合う2つの露光領域A7の間の余白領域において、Y方向の中央に設けられる。
そして、マークKs1は、アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GA1の観察領域Vw1内、及びアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GAの観察領域Vw4内で、基板Pが送られている間、順次捕捉されるように形成される。また、マークKs3は、アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GA3の観察領域Vw3内、及びアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GAの観察領域Vw6内で、基板Pが送られている間、順次捕捉されるように形成される。さらに、マークKs2は、それぞれ、アライメント顕微鏡AM1の対物レンズ系GA2の観察領域Vw2内、及びアライメント顕微鏡AM2の対物レンズ系GAの観察領域Vw5内で、基板Pが送られている間、順次捕捉されるように形成される。
このため、3つのアライメント顕微鏡AM1,AM2のうち、回転ドラムDRのY方向の両側のアライメント顕微鏡AM1,AM2は、基板Pの幅方向の両側に形成されたマークKs1,Ks3を常時観察または検出することができる。また、3つのアライメント顕微鏡AM1,AM2のうち、回転ドラムDRのY方向の中央のアライメント顕微鏡AM1,AM2は、基板P上に描画される露光領域A7同士の間の余白部等に形成されるマークKs2を常時観察または検出することができる。
ここで、露光装置EXは、いわゆるマルチビーム型の描画装置であるため、複数の描画ユニットUW1〜UW5の各描画ラインLL1〜LL5によって、基板P上に描画される複数のパターン同士を、Y方向に好適に継ぎ合わるべく、複数の描画ユニットUW1〜UW5による継ぎ精度を許容範囲内に抑えるためのキャリブレーションが必要となる。また、複数の描画ユニットUW1〜UW5の各描画ラインLL1〜LL5に対するアライメント顕微鏡AM1,AM2の観察領域Vw1〜Vw6の相対的な位置関係は、ベースライン管理によって精密に求められている必要がある。そのベースライン管理のためにも、キャリブレーションが必要となる。
複数の描画ユニットUW1〜UW5による継ぎ精度を確認するためのキャリブレーション、アライメント顕微鏡AM1,AM2のベースライン管理のためのキャリブレーションでは、基板Pを支持する回転ドラムDRの外周面の少なくとも一部に、基準マークや基準パターンを設ける必要がある。そこで、図10に示すように、露光装置EXでは、外周面に基準マークや基準パターンを設けた回転ドラムDRを用いている。
回転ドラムDRは、その外周面の両端側に、後述する回転位置検出機構14の一部を構成するスケール部GPa,GPbが図3、図9と同様に形成されている。また、回転ドラムDRは、スケール部GPa,GPbの内側に、凹状の溝、若しくは凸状のリムによる狭い幅の規制帯CLa,CLbが全周に渡って刻設されている。基板PのY方向の幅は、その2本の規制帯CLa,CLbのY方向の間隔よりも小さく設定され、基板Pは回転ドラムDRの外周面のうち、規制帯CLa,CLbで挟まれた内側の領域に密着して支持される。
回転ドラムDRは、規制帯CLa,CLbで挟まれた外周面に、回転中心線AX2に対して+45度で傾いた複数の線パターンRL1(ラインパターン)と、回転中心線AX2に対して−45度で傾いた複数の線パターンRL2(ラインパターン)とを、一定のピッチ(周期)Pf1,Pf2で繰り返し刻設したメッシュ状の基準パターン(基準マークとしても利用可能)RMPが設けられる。なお、線パターンRL1及び線パターンRL2の幅はLWである。
基準パターンRMPは、基板Pと回転ドラムDRの外周面とが接触する部分において、摩擦力や基板Pの張力等の変化が生じないように、全面均一な、斜めパターン(斜格子状パターン)としている。なお、線パターンRL1、RL2は、必ずしも斜め45度である必要はなく、線パターンRL1をY軸と平行にし、線パターンRL2をX軸と平行にした縦横のメッシュ状パターンとしてもよい。さらに、線パターンRL1、RL2を90度で交差させる必要はなく、隣接する2本の線パターンRL1と、隣接する2本の線パターンRL2とで囲まれた矩形領域が、正方形(または長方形)以外の菱形になるような角度で、線パターンRL1,RL2を交差させてもよい。
次に、図3、図4及び図9を参照して、回転位置検出機構14について説明する。図9に示すように、回転位置検出機構14は、回転ドラムDRの回転位置を光学的に検出するものであり、例えばロータリーエンコーダ等を用いたエンコーダシステムが適用されている。回転位置検出機構14は、回転ドラムDRの両端部に設けられるスケール部GPa,GPbと、スケール部GPa,GPbの各々と対向する複数のエンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4とを有する移動計測装置である。図4及び図9では、スケール部GPaに対向した4つのエンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4だけが示されているが、スケール部GPbにも同様のエンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4が対向して配置される。回転位置検出機構14は、回転ドラムDRの両端部の振れ(回転中心線AX2が延びるY方向の微少変位)を検知可能な変位計YN1,YN2,YN3,YN4を有している。
スケール部GPa,GPbの目盛は、回転ドラムDRの外周面の周方向の全体に亘って環状にそれぞれ形成されている。スケール部GPa,GPbは、回転ドラムDRの外周面の周方向に一定のピッチ(例えば20μm)で凹状または凸状の格子線を刻設した回折格子であり、インクリメンタル型スケールとして構成される。このため、スケール部GPa,GPbは、回転中心線AX2周りに回転ドラムDRと一体に回転する。
基板Pは、回転ドラムDRの両端のスケール部GPa,GPbを避けた内側、つまり、規制帯CLa,CLbの内側に巻き付けられるように構成される。厳密な配置関係を必要とする場合、スケール部GPa,GPbの外周面と、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの部分の外周面とが同一面(中心線AX2から同一半径)になるように設定する。そのためには、スケール部GPa,GPbの外周面を、回転ドラムDRの基板巻き付け用の外周面に対して、径方向に基板Pの厚み分だけ高くしておけばよい。このため、回転ドラムDRに形成されるスケール部GPa,GPbの外周面を、基板Pの外周面とほぼ同一の半径に設定することができる。そのため、エンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4は、回転ドラムDRに巻き付けられた基板P上の描画面と同じ径方向位置でスケール部GPa,GPbを検出することができ、計測位置と処理位置とが回転系の径方向に異なることで生ずるアッベ誤差を小さくすることができる。
エンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4は、回転中心線AX2からみてスケール部GPa,GPbの周囲にそれぞれ配置されており、回転ドラムDRの周方向において異なる位置となっている。このエンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4は、制御部16に接続されている。エンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4は、スケール部GPa,GPbに向けて計測用の光ビームを投射し、その反射光束(回折光)を光電検出することにより、スケール部GPa,GPbの周方向の位置変化に応じた検出信号(例えば、90度の位相差を持った2相信号)を制御部16に出力する。制御部16は、その検出信号を不図示のカウンター回路で内挿補間してデジタル処理することにより、回転ドラムDRの角度変化、即ち、その外周面の周方向の位置変化をサブミクロンの分解能で計測することができる。制御部16は、回転ドラムDRの角度変化から、基板Pの搬送速度も計測することができる。
また、図4及び図9に示すように、エンコーダヘッドEN1は、設置方位線Le1上に配置される。設置方位線Le1は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN1による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb)上への投射領域(読取位置)と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le1は、XZ面内において、描画ラインLL1,LL3,LL5と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN1の読取位置と回転中心線AX2とを結ぶ線と、描画ラインLL1,LL3,LL5と回転中心線AX2とを結ぶ線とは、同じ方位線となっている。
同様に、図4及び図9に示すように、エンコーダヘッドEN2は、設置方位線Le2上に配置される。設置方位線Le2は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN2による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb)上への投射領域(読取位置)と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le2は、XZ面内において、描画ラインLL2,LL4と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN2の読取位置と回転中心線AX2とを結ぶ線と、描画ラインLL2,LL4と回転中心線AX2とを結ぶ線とは、同じ方位線となっている。
また、図4及び図9に示すように、エンコーダヘッドEN3は、設置方位線Le3上に配置される。設置方位線Le3は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN3による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb)上への投射領域(読取位置)と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le3は、XZ面内において、アライメント顕微鏡AM1による基板Pの観察領域Vw1〜Vw3と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN3の読取位置と回転中心線AX2とを結ぶ線と、アライメント顕微鏡AM1の観察領域Vw1〜Vw3と回転中心線AX2とを結ぶ線とは、XZ面内でみると、同じ方位線となっている。
同様に、図4及び図9に示すように、エンコーダヘッドEN4は、設置方位線Le4上に配置される。設置方位線Le4は、XZ面内において、エンコーダヘッドEN4による計測用光ビームのスケール部GPa(GPb)上への投射領域(読取位置)と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。また、上記したように、設置方位線Le4は、XZ面内において、アライメント顕微鏡AM2による基板Pの観察領域Vw4〜Vw6と、回転中心線AX2とを結ぶ線となっている。以上から、エンコーダヘッドEN4の読取位置と回転中心線AX2とを結ぶ線と、アライメント顕微鏡AM2の観察領域Vw4〜Vw6と回転中心線AX2とを結ぶ線とは、XZ面内でみると、同じ方位線となっている。
エンコーダヘッドEN1,EN2,EN3,EN4の設置方位(回転中心線AX2を中心としたXZ面内での角度方向)を設置方位線Le1,Le2,Le3,Le4で表す場合、図4に示すように、設置方位線Le1,Le2が、中心面p3に対して角度±θ°になるように、複数の描画ユニットUW1〜UW5及びエンコーダヘッドEN1,EN2が配置される。設置方位線Le1と設置方位線Le2とは、エンコーダヘッドEN1とエンコーダヘッドEN2とがスケール部GPa(GPb)の目盛の周囲に空間的に非干渉状態で設置される。
変位計YN1,YN2,YN3,YN4は、回転中心線AX2からみてスケール部GPaまたはGPbの周囲にそれぞれ配置されており、回転ドラムDRの周方向において異なる位置となっている。この変位計YN1,YN2,YN3,YN4は、制御部16に接続されている。
変位計YN1,YN2,YN3,YN4は、回転ドラムDRに巻き付けられた基板P上の描画面と出来るだけ径方向に近い位置で変位を検出することで、アッベ誤差を小さくすることができる。変位計YN1,YN2,YN3,YN4は、回転ドラムDRの両端部の一方に向けて計測用の光ビームを投射し、その反射光束(或いは回折光)を光電検出することにより、回転ドラムDRの両端部のY方向(基板Pの幅方向)の位置変化に応じた検出信号を制御部16に出力する。制御部16は、その検出信号を不図示の計測回路(カウンター回路や内挿補間回路等)によってデジタル処理することにより、回転ドラムDR(及び基板P)のY方向の変位変化をサブミクロンの分解能で計測することができる。制御部16は、回転ドラムDRの両端部の一方の変化から、回転ドラムDRの振れ回りも計測することができる。
変位計YN1,YN2,YN3,YN4は、4つのうち1つあればよいが、回転ドラムDRの振れ回り等の計測の為には、4つのうち3つ以上あれば、回転ドラムDRの両端部の一方の面の動き(動的な傾き変化等)を把握することができる。なお、制御部16がアライメント顕微鏡AM1,AM2によって基板P上のマークやパターン(或いは回転ドラムDR上のマーク等)を定常的に計測できる場合、変位計YN1,YN2,YN3,YN4は、省略しても良い。
ここで、制御部16は、エンコーダヘッドEN1,EN2によってスケール部(回転ドラムDR)GPa,GPbの回転角度位置を検出し、検出した回転角度位置に基づいて、奇数番及び偶数番の描画ユニットUW1〜UW5による描画を行っている。つまり、制御部16は、基板Pに投射される描画ビームLBが走査方向へ走査している期間中、基板Pに描画すべきパターンのCAD情報に基づいて、光偏向器81をON/OFF変調するが、光偏向器81によるON/OFF変調のタイミングを、検出した回転角度位置に基づいて行うことで、基板Pの光感応層上にパターンを精度よく描画することができる。
また、制御部16は、アライメント顕微鏡AM1,AM2により基板P上のアライメントマークKs1〜Ks3が検出されたときの、エンコーダヘッドEN3,EN4によって検出されるスケール部GPa,GPb(回転ドラムDR)の回転角度位置を記憶することにより、基板P上のアライメントマークKs1〜Ks3の位置と回転ドラムDRの回転角度位置との対応関係を求めることができる。同様に、制御部16は、アライメント顕微鏡AM1,AM2により回転ドラムDR上の基準パターンRMPが検出されたときの、エンコーダヘッドEN3,EN4によって検出されるスケール部GPa,GPb(回転ドラムDR)の回転角度位置を記憶することにより、回転ドラムDR上の基準パターンRMPの位置と回転ドラムDRの回転角度位置との対応関係を求めることができる。このように、アライメント顕微鏡AM1,AM2は、観察領域Vw1〜Vw6内で、マークをサンプリングした瞬間の回転ドラムDRの回転角度位置(または周方向位置)を精密に計測することができる。そして、露光装置EXでは、この計測結果に基づいて、基板Pと基板P上に描画される所定のパターンとを位置合せ(アライメント)したり、回転ドラムDRと描画装置11とをキャリブレーションしたりする。
なお、実際のサンプリングは、エンコーダヘッドEN3,EN4によって計測される回転ドラムDRの回転角度位置が、予め大まかに判明している基板P上のマークや回転ドラムDR上の基準パターンの位置に対応した角度位置になったときに、アライメント顕微鏡AM1,AM2の各撮像系GDから出力される画像情報を高速に画像メモリ等に書き込むことによって行なわれる。すなわち、エンコーダヘッドEN3,EN4で計測される回転ドラムDRの回転角度位置をトリガーにして、各撮像系GDから出力される画像情報をサンプリングしている。これとは別に、一定周波数のクロック信号の各パルスに応答して、エンコーダヘッドEN3,EN4で計測される回転ドラムDRの回転角度位置(カウンタ計測値)と、各撮像系GDから出力される画像情報とを同時にサンプリングする方法もある。
また、基板P上のマークや回転ドラムDR上の基準パターンRMPは、観察領域Vw1〜Vw6に対して一方向に移動している為、各撮像系GDから出力される画像情報のサンプリングに当たっては、CCDやCMOSの撮像素子としてシャッタースピードが速いものを使うことが望ましい。これに伴って、観察領域Vw1〜Vw6を照明する照明光の輝度を上げる必要もあり、アライメント顕微鏡AM1,AM2の照明光源として、ストロボライトや高輝度LED等を使うことが考えられる。
図11は、基板上での描画ラインと描画パターンとの位置関係を示す説明図である。描画ユニットUW1〜UW5は、描画ラインLL1〜LL5に沿って描画ビームLBのスポット光を走査することで、パターンPT1〜PT5を描画する。描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置OC1〜OC5が、パターンPT1〜PT5の描画始端PTaになる。描画ラインLL1〜LL5の描画終了位置EC1〜EC5が、パターンPT1〜PT5の描画終端PTbになる。
パターンPT1の描画始端PTa、描画終端PTbのうち描画終端PTbがパターンPT2の描画終端PTbと継ぎ合う。同様に、パターンPT2の描画始端PTaがパターンPT3の描画始端PTaと継ぎ合い、パターンPT3の描画終端PTbがパターンPT4の描画終端PTbと継ぎ合い、パターンPT4の描画始端PTaがパターンPT5の描画始端PTaと継ぎ合う。このように、基板P上に描画されるパターンPT1〜PT5同士が基板Pの長尺方向への移動に伴って基板Pの幅方向に継ぎ合わされ、大きな露光領域A7の全体にデバイスパターンが描画される。
図12は、描画ビームのスポット光と描画ラインとの関係を示す説明図である。描画ユニットUW1〜UW5のうち、代表して描画ユニットUW1及びUW2の描画ラインLL1及びLL2を説明する。描画ユニットUW3〜UW5の描画ラインLL3〜LL5についても同様であるので説明を省略する。回転ポリゴンミラー97の等速回転によって、描画ビームLBのビームスポット光SPが基板P上の描画ラインLL1及びLL2に沿って、描画開始位置OC1,OC2から描画終了位置EC1,EC2までの描画ラインの長さLBLだけ走査される。
通常、直描露光方式では、装置として露光可能な最小サイズのパターンを描画する場合も、複数のスポット光SPによる多重露光(多重書き)によって、高精度で安定したパターン描画を実現している。図12に示すように、描画ラインLL1及びLL2上において、スポット光SPの実効的な直径をXsとすると、描画ビームLBがパルス光であることから、1つのパルス光(ピコ秒オーダーの発光時間)によって生成されるスポット光SPと、次の1つのパルス光によって生成されるスポット光SPとは、直径Xsの約1/2の距離CXsでY方向(主走査方向)に重畳するように走査されている。
また、各描画ラインLL1,LL2に沿ったスポット光SPの主走査と同時に、基板Pは一定速度で+X方向に搬送されているため、各描画ラインLL1,LL2は基板P上をX方向に一定ピッチで移動(副走査)する。そのピッチも、ここではスポット光SPの直径Xsの約1/2の距離CXsに設定されるものとするが、それに限られるものではない。これにより、副走査の方向(X方向)についても、直径Xsの1/2(或いはそれ以外の重畳距離でも良い)の距離CXsでX方向に隣接するスポット光SP同士が重畳して露光される。さらに、描画ラインLL1の描画終了位置EC1で撃たれるビームスポット光SPと、描画ラインLL2の描画終了位置EC2で撃たれるビームスポット光SPとが、基板Pの長尺方向への移動(即ち副走査)に伴って基板Pの幅方向(Y方向)に重畳距離CXsで継ぎ合わされるように、描画ラインLL1の描画開始位置OC1と描画終了位置EC1、及び、描画ラインLL2の描画開始位置OC2と描画終了位置EC2が設定される。
一例として、ビームスポット光SPの実効的な直径Xsを4μmとすると、スポット光SPの2行×2列(主走査と副走査の両方向に重畳して並ぶ計4つのスポット光)で占有される面積、若しくは3行×3列(主走査と副走査の両方向に重畳して並ぶ計9つのスポット光)で占有される面積を最小寸法とするようなパターン、すなわち、最小寸法が6μm〜8μm程度の線幅のパターンを良好に露光することができる。また、回転ポリゴンミラー97の反射面97bを10面とし、回転軸97a周りの回転ポリゴンミラー97の回転速度を1万rpm以上とすると、回転ポリゴンミラー97による描画ライン(LL1〜LL5)上でのスポット光SP(描画ビームLB)の走査回数(走査周波数Fmsとする)は、1666.66・・・Hz以上にできる。これは、基板P上に1秒当たりの搬送方向(X方向)に1666本以上の描画ライン分のパターンが描画できることを意味する。このことから、基板Pの1秒当たりの搬送距離(搬送速度)を遅くすると、副走査の方向(X方向)に関するスポット光同士の重畳距離CXsが、スポット光の直径Xsの1/2以下の値、例えば1/3、1/4、1/5、・・・に設定することができ、その場合、スポット光の描画ラインに沿った複数回の走査に渡って同じ描画パターンを露光することで、基板Pの感光層に与える露光量を増大させることができる。
また、回転ドラムDRの回転駆動による基板Pの搬送速度が、5mm/s程度である場合、図12に示した描画ラインLL1(LL2〜LL5も同様)のX方向(基板Pの搬送方向)のピッチ(距離CXs)を約3μm程度とすることができる。
本実施形態の場合、主走査方向(Y方向)に関するパターン描画の分解能Rは、スポット光SPの実効的な直径Xsと走査周波数Fmsと共に、光偏向器81を構成する音響光学素子(AOM)のON/OFFの最小スイッチング時間によって決まってくる。音響光学素子(AOM)として、最高応答周波数Fss=50MHzのものを使うと、ON状態とOFF状態の各時間を20nS程度にすることができる。さらに、回転ポリゴンミラー97の1つの反射面97bによる描画ビームLBの実効走査期間(描画ラインの長さLBL分のスポット光の走査)は、1つの反射面97bの回転角度分の1/3程度であることから、描画ラインの長さLBLを30mmとした場合、光偏向器81のスイッチング時間に依存して決まる分解能Rは、R=LBL/(1/3)/(1/Fms)×(1/Fss)≒3μmとなる。
この関係式から、パターン描画の分解能Rを向上させるため、例えば光偏向器81の音響光学素子(AOM)として、最高応答周波数Fssが100MHzのものを使い、ON/OFFのスイッチング時間を10nsecにする。これにより、分解能Rは、半分の1.5μmになる。この場合、回転ドラムDRの回転による基板Pの搬送速度を半分にする。分解能Rを向上させる他の方法としては、例えば回転ポリゴンミラー97の回転速度を上げてもよい。
一般にフォトリソで使用されているレジストには、レジスト感度Srとして概ね30mj/cm2程度のものが使われる。光学系の透過率ΔTsを0.5(50%)、回転ポリゴンミラー97の1つの反射面97b中での実効走査期間を1/3程度、描画ラインの長さLBLを30mm、描画ユニットUW1〜UW5の数Nuwを5、回転ドラムDRによる基板Pの搬送速度Vpを5mm/s(300mm/min)とすると、光源装置CNTの必要レーザーパワーPwは、次式のように見積もれる。
Pw=30/60×3×30×5/0.5/(1/3)=1350mW
仮に、描画ユニットを7つにした場合、光源装置CNTの必要レーザーパワーPwは、次式で見積もれる。
Pw=30/60×3×30×7/0.5/(1/3)=1890mW
例えば、レジスト感度が80mj/cm2程度であれば、同じスピードで露光するためには、ビーム出力として3〜5W程度の光源装置CNTが必要である。そのようなハイパワーな光源を用意する代わりに、回転ドラムDRの回転による基板Pの搬送速度Vpを初期値の5mm/sに対して30/80に低下させれば、ビーム出力として1.4〜1.9W程度の光源装置で露光することも可能になる。
また、描画ラインの長さLBLを30mmとし、仮にビームスポット光SPのスポット直径Xsと、光偏向器81の音響光学素子(AOM)による光スイッチングで決まる分解能(ビーム位置を指定する最小グリッドで、1画素に相当)Xgとが等しく、3μmとした場合、10面の回転ポリゴンミラー97の回転速度を1万rpmとしたときの回転ポリゴンミラー97の1回転の時間は3/500秒、回転ポリゴンミラー97の1つの反射面97bによる実効走査期間を1つの反射面97bの回転角度分の1/3とすると、1つの反射面97bによる実効的な走査時間Ts(秒)は、(3/500)×(1/10)×(1/3)で求まり、Ts=1/5000(秒)となる。これより、光源装置CNTがパルスレーザである場合のパルス発光周波数Fzは、Fz=LBL/(Ts・Xs)で求められ、Fz=50MHzが最低周波数となる。よって、実施形態では、周波数50MHz以上のパルスレーザを出力する光源装置CNTが必要となる。このことから、光源装置CNTのパルス発光周波数Fzは、好ましくは光偏向器81の音響光学素子(AOM)の最高応答周波数Fss(例えば50MHz)の2倍以上(例えば100MHz)が良い。
さらに、光偏向器81の音響光学素子(AOM)をON状態/OFF状態に切り替える駆動信号は、音響光学素子(AOM)がON状態からOFF状態に遷移する間、又はOFF状態からON状態に遷移する間にパルス発光が生じないように、光源装置CNTをパルス発光周波数Fzで発振させるクロック信号と同期させるような制御にするのが良い。
次に、ビームスポット光SPのスポット直径Xsと光源装置CNTのパルス発光周波数Fzの関係を、ビーム形状(重畳する2つのスポット光SPの強度分布)の観点から、図13のグラフを用いて説明する。図13の横軸は、描画ラインに沿ったY方向、又は基板Pの搬送方向に沿ったX方向におけるスポット光SPの描画位置、若しくはスポット光SPの寸法を表し、縦軸は、単独のスポット光SPのピーク強度を1.0に規格化した相対的な強度値を表す。なお、ここでは、単独のスポット光SPの強度分布をJ1とし、ガウス分布と仮定して説明する。
図13において、単独のスポット光SPの強度分布J1は、ピーク強度に対して1/e2の強度で3μmの直径をもつものとする。強度分布J2〜J6は、そのようなスポット光SPの2パルス分を、主走査方向又は副走査方向に位置をずらして照射したときに基板P上で得られる積算の強度分布(プロファイル)のシミュレーション結果を表し、それぞれ位置のずらし量(間隔距離)を異ならせたものである。
図13のグラフにおいて、強度分布J5は、2パルス分のスポット光SPが直径3μmと同じ間隔距離だけずれている場合を示し、強度分布J4は、2パルス分のスポット光SPの間隔距離が2.25μmの場合、強度分布J3は、2パルス分のスポット光SPの間隔距離が1.5μmの場合を示す。この強度分布J3〜J5の変化から明らかなように、強度分布J5では、直径3μmのスポット光SPが3μm間隔で照射されるような条件の場合、積算されたプロファイルは、2つのスポット光の各々の中心位置で最も高いコブ状となり、2つのスポット光の中点の位置では、規格化強度が0.3程度しか得られない。これに対して、直径3μmのスポット光SPが1.5μm間隔で照射されるような条件の場合、積算されたプロファイルは、プロファイルに目立ったコブ状の分布がなく、2つのスポット光の中点の位置を挟んでほぼフラットになっている。
また、図13において、強度分布J2は、2パルス分のスポット光SPの間隔距離を0.75μmにした場合の積算プロファイルを示し、強度分布J6は、間隔距離を、単独のスポット光SPの強度分布J1の半値全幅(FWHM)である1.78μmに設定した場合の積算プロファイルを示す。
このように、スポット光SPの直径Xsと同じ間隔よりも短い間隔距離CXsで2つのスポット光が照射されるようなパルス発振の条件の場合、2つのコブ状の分布が顕著に現われやすいので、露光時に強度ムラ(描画精度の劣化)とならないような最適な間隔距離に設定するのが望ましい。図13の強度分布J3又はJ6のように、単一のスポット光SPの直径Xsの半分程度(例えば40〜60%)の間隔距離CXsで重畳させていくのが良い。そのような最適な間隔距離CXsは、主走査方向に関しては、光源装置CNTのパルス発光周波数Fzと、描画ラインに沿ったスポット光SPの走査速度或いは走査時間Ts(回転ポリゴンミラー97の回転速度)の少なくとも一方を調整することで設定でき、副走査方向に関しては、描画ラインの走査周波数Fms(回転ポリゴンミラー97の回転速度)と基板PのX方向の移動速度との少なくとも一方を調整することで設定できる。
例えば、回転ポリゴンミラー97の回転速度の絶対値(スポット光の走査時間Ts)を高精度に調整できない場合は、光源装置CNTのパルス発光周波数Fzを微調整することで、主走査方向に関するスポット光SPの間隔距離CXsとスポット光の直径Xs(寸法)との比率を最適な範囲に調整できる。
このように、2つのスポット光SPを走査方向に重畳させる場合、即ち、Xs>CXsとする場合、光源装置CNTは、パルス発光周波数Fzを、Fz>LBL/(Ts・Xs)の関係であって、Fz=LBL/(Ts・CXs)の関係を満たすように設定されている。例えば、光源装置CNTのパルス発光周波数Fzが100MHzの場合、回転ポリゴンミラー97を10面として1万rpmで回転させると、1/e2、又は半値全幅(FWHM)で規定されるスポット光の実効的な直径Xsを3μmとして、各描画ユニットUW1〜UW5からのパルスレーザビーム(スポット光)を、各描画ラインLL1〜LL5上で直径Xsの約半分の1.5μmの間隔(CXs)で照射することができる。これによって、パターン描画時の露光量の均一性が向上し、微細なパターンでも描画データに従った忠実な露光像(レジスト像)が得られ、高精度な描画が達成できる。
更に、音響光学素子(AOM)の光スイッチング速度で定まる分解能(応答周波数Fss)とパルスレーザ光源の光源装置CNTのパルス発振周波数Fzとは、hを任意の整数とすると、位置若しくは時間に換算して整数倍の関係、すなわち、Fz=h・Fssの関係である必要がある。これは、音響光学素子(AOM)の光スイッチングのタイミングによって、パルス光源装置CNTからパルスビームが発光されている最中にON/OFFを行わないようにするためである。
第1実施形態の露光装置EXでは、ファイバーアンプFB1,FB2と波長変換部CU2の波長変換素子とを組み合わせたパルス光源装置CNTを用いているので、紫外波長域(400〜300nm)で、このような高い発振周波数を持つパルス光が容易に得られる。
なお、音響光学素子(AOM)による光スイッチングは、描画すべきパターンを、例えば3μm×3μmの画素単位に分割し、各画素単位毎にパルスビームのスポット光を照射するか否かを「0」、「1」で表したビット列(描画データ)に基づいて行われる。描画ラインの長さLBLが30mmの場合、スポット光の1回の走査中の画素数は1万画素となり、音響光学素子(AOM)は走査時間Tsの間に1万画素分のビット列をスイッチングする応答性(応答周波数Fss)を備えている。一方で、主走査方向の隣り合うスポット光同士は、例えば、直径Xsの1/2程度だけ重畳するようにパルス発振周波数Fzが設定される。このことから、先の関係式、Fz=h・Fssにおいて、整数hが2以上、即ちFz>Fssになるように、パルス発振周波数Fzと音響光学素子(AOM)の光スイッチングの応答周波数Fssとの関係が設定されるのが良い。
次に、露光装置EXの描画装置11の調整方法について説明する。図14は、第1実施形態の露光装置の調整方法に関するフローチャートである。図15は、回転ドラムの基準パターンと、描画ラインとの関係を模式的に示す説明図である。図16は、回転ドラムの基準パターンからの反射光を明視野で受光する光電センサーから出力される信号を模式的に示す説明図である。制御部16は、複数の描画ユニットUW1〜UW5の位置関係を把握するキャリブレーションのため、図15に示すように、回転ドラムDRを回転する。回転ドラムDRは、描画ビームLBが透過できる程度に透光性のある基板Pを搬送してもよい。
上述したように、基準パターンRMPは、回転ドラムDRの外周面と一体である。図15に示すように、基準パターンRMPのうち、任意の基準パターンRMP1は、回転ドラムDRの外周面の移動に伴って移動する。このため、基準パターンRMP1は、描画ラインLL1,LL3,LL5を通過した後、描画ラインLL2,LL4を通過する。例えば、制御部16は、同じ基準パターンRMP1が描画ラインLL1,LL3,LL5を通過した場合、描画ユニットUW1,UW3,UW5の描画ビームLBを走査させる。そして、制御部16は、同じ基準パターンRMP1が描画ラインLL2,LL4を通過した場合、描画ユニットUW2,UW4の描画ビームLBを走査させる(ステップS1)。このため、基準パターンRMP1は、描画ユニットUW1〜UW5の位置関係を把握するための基準となる。
上述したキャリブレーション検出系31の光電センサー31Cs(図4)は、f−θレンズ系85と、走査器83を含む走査光学系とを介して、基準パターンRMP1からの反射光を検出する。光電センサー31Csは、制御部16に接続されており、制御部16が光電センサー31Csの検出信号を検出する(ステップS2)。例えば、描画ユニットUW1〜UW5は、描画ラインLL1〜LL5毎に、複数の描画ビームLBの各々を所定の走査方向に、複数列走査する。
例えば、図16に示すように、描画ユニットUW1〜UW5は、描画ビームLBを描画開始位置OC1から、上述した回転ドラムDRの回転中心線AX2に沿った方向(Y方向)に描画ラインの長さLBL(図12参照)だけ第1列走査SC1を行う。次に、描画ユニットUW1〜UW5は、描画ビームLBを描画開始位置OC1から、上述した回転ドラムDRの回転中心線AX2に沿った方向(Y方向)に描画ラインの長さLBL(図12参照)だけ第2列走査SC2を行う。次に、描画ユニットUW1〜UW5は、描画ビームLBを描画開始位置OC1から、上述した回転ドラムDRの回転中心線AX2に沿った方向(Y方向)に描画ラインの長さLBL(図12参照)だけ第3列走査SC3を行う。
回転ドラムDRは、回転中心線AX2の回りに回転するので、第1列走査SC1,第2列走査SC2及び第3列走査SC3の基準パターンRMP1上でのX方向の位置は、ΔP1,ΔP2だけ異なる。なお、制御部16は、回転ドラムDRを静止させた状態で第1列走査SC1に沿った描画ビームLBの走査を行い、その後、ΔP1分だけ回転ドラムDRを回転させて静止し、第2列走査SC2に沿った描画ビームLBの走査、再び回転ドラムDRをΔP2だけ回転させて静止し、第3列走査SC3に沿った描画ビームLBの走査、の順で各部を動作させるシーケンスであってもよい。
上述したように、基準パターンRMPは、回転ドラムDRの外周面に形成される互いに交差する2本の線パターンRL1,RL2の交点部Cr1,Cr2が、上述した描画ラインの長さLBLよりも小さく設定されている。このため、第1列走査SC1,第2列走査SC2及び第3列走査SC3の描画ビームLBが投射されると、描画ビームLBが少なくとも交点部Cr1,Cr2に照射される。線パターンRL1,RL2は、回転ドラムDRの表面に凹凸として形成されている。回転ドラムDRの表面の凹凸の段差量を特定の条件にしておくと、描画ビームLBが線パターンRL1、RL2に投射されて発生する反射光は、部分的に反射強度に差を生じる。例えば、図16に示すように、線パターンRL1,RL2が回転ドラムDRの表面の凹部である場合、描画ビームLBが線パターンRL1,RL2に投射されると、線パターンRL1、RL2で反射する反射光が光電センサー31Csに明視野で受光される。
制御部16は、光電センサー31Csからの出力信号に基づいて、基準パターンRMPのエッジ位置psclを検出する。例えば、制御部16は、第1列走査SC1の際に光電センサー31Csから得られた出力信号に基づいて、第1列走査位置データDsc1と、基準パターンRMPのエッジ位置psclのセンター値mpsclとを記憶する。
次に、制御部16は、第2列走査SC2の際に光電センサー31Csから得られた出力信号に基づいて、第2列走査位置データDsc2と、基準パターンRMPのエッジ位置psclのセンター値mpsclとを記憶する。そして制御部16は、第3列走査SC3の際に光電センサー31Csから得られた出力信号に基づいて、第3列走査位置データDsc3と、基準パターンRMPのエッジ位置psclのセンター値mpsclとを記憶する。
制御部16は、第1列走査位置データDsc1,第2列走査位置データDsc2及び第3列走査位置データDsc3と、複数の基準パターンRMPのエッジ位置psclのセンター値mpsclとから、互いに交差する2本の線パターンRL1,RL2の交点部Cr1、Cr2の座標位置を演算によって求める。その結果、制御部16は、互いに交差する2本の線パターンRL1,RL2の交点部Cr1、Cr2と描画開始位置OC1との関係も演算することができる。他の描画ユニットUW2〜5についても同様に、制御部16は、互いに交差する2本の線パターンRL1,RL2の交点部Cr1,Cr2と描画開始位置OC2〜OC5(図11参照)との関係も演算することができる。なお、上述したセンター値mpsclは、光電センサー31Csから出力される信号のピーク値から求めてもよい。
以上、線パターンRL1,RL2で反射する反射光を光電センサー31Csが明視野で受光する場合について、説明したが、光電センサー31Csは、線パターンRL1、RL2で反射する反射光を暗視野で受光してもよい。図17は、回転ドラムの基準パターンからの反射光を暗視野で受光する光電センサーを模式的に示す説明図である。図18は、回転ドラムの基準パターンからの反射光を暗視野で受光する光電センサーから出力される信号を模式的に示す説明図である。図17で示すように、キャリブレーション検出系31は、リレーレンズ94と光電センサー31Csとの間に、輪帯状の光透過部を有する遮光部材31fを配置している。このため、光電センサー31Csは、線パターンRL1,RL2で反射する反射光のうちのエッジ散乱光または回折光を受光する。例えば、図18に示すように、線パターンRL1,RL2が回転ドラムDRの表面の凹部である場合、描画ビームLBが線パターンRL1,RL2に投射されると、光電センサー31Csは線パターンRL1,RL2で反射する反射光を暗視野で受光する。
制御部16は、光電センサー31Csから出力される信号に基づいて、基準パターンRMPのエッジ位置pscdlを検出する。例えば、制御部16は、第1列走査SC1の際に光電センサー31Csから得られた出力信号に基づいて、第1列走査位置データDsc1と、基準パターンRMPのエッジ位置pscdlのセンター値mpscdlとを記憶する。次に、制御部16は、第2列走査SC2の際に光電センサー31Csから得られた出力信号に基づいて、第2列走査位置データDsc2と、基準パターンRMPのエッジ位置pscdlのセンター値mpscdlとを記憶する。制御部16は、第3列走査SC3の際に光電センサー31Csから得られた出力信号に基づいて、第3列走査位置データDsc3と、基準パターンRMPのエッジ位置pscdlのセンター値mpscdlとを記憶する。
制御部16は、第1列走査位置データDsc1,第2列走査位置データDsc2及び第3列走査位置データDsc3と、複数の基準パターンRMPのエッジ位置pscdlのセンター値mpscdlとから、互いに交差する2本の線パターンRL1,RL2の交点部Cr1,Cr2を演算によって求める。その結果、制御部16は、互いに交差する2本の線パターンRL1,RL2の交点部Cr1,Cr2の座標位置と描画開始位置OC1との関係を演算によって求める。
他の描画ユニットUW2〜5についても同様に、制御部16は、互いに交差する2本の線パターンRL1,RL2の交点部Cr1,Cr2と描画開始位置OC2〜OC5との関係も演算することができる。このように、線パターンRL1,RL2で反射する反射光を光電センサー31Csが暗視野で受光する場合、複数の基準パターンRMPのエッジ位置pscdlの精度を高めることができる。
図14に示すように、制御部16は、ステップS2で検出した検出信号から、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)を求める(ステップS3)。図19は、回転ドラムの基準パターン同士の位置関係を模式的に示す説明図である。図20は、複数の描画ラインの相対的な位置関係を模式的に示す説明図である。上述したように、奇数番の第1描画ラインLL1,第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5が配置され、図19に示すように、第1描画ラインLL1,第3描画ラインLL3及び第5描画ラインLL5毎に、検知される交点部Cr1間の基準距離PLは、制御部16が予め記憶している。同様に、第2描画ラインLL2及び第4描画ラインLL4毎に、検知される交点部Cr1間の基準距離PLも、制御部16が予め記憶している。また、第2描画ラインLL2及び第3描画ラインLL3毎に、検知される交点部Cr1間の基準距離ΔPLも、制御部16が予め記憶している。さらに、また、第4描画ラインLL4及び第5描画ラインLL5毎に、検知される交点部Cr1間の基準距離ΔPLも、制御部16が予め記憶している。
例えば、図20に示すように、制御部16は、第1描画ラインLL1の描画開始位置OC1は原点検出器98(図7参照)からの信号に基づいて、位置関係を把握できているので、交点部Cr1と描画開始位置OC1との距離BL1を求めることができる。また、制御部16は、第3描画ラインLL3の描画開始位置OC3が原点検出器98で位置を検出できているので、交点部Cr1と描画開始位置OC3との距離BL3を求めることができる。このため、制御部16は、距離BL1,距離BL3及び基準距離PLに基づいて、描画開始位置OC1と、描画開始位置OC3との位置関係を求め、描画ラインLL1、LL3に沿って走査する描画ビームLBの原点間の原点間距離ΔOC13を記憶することができる。同様に、制御部16は、第5描画ラインLL5の描画開始位置OC5が原点検出器98で位置を検出できているので、交点部Cr1と描画開始位置OC5との距離BL5を求めることができる。このため、制御部16は、距離BL3,距離BL5及び基準距離PLに基づいて、描画開始位置OC3と、描画開始位置OC5との位置関係を求め、描画ラインLL3,LL5に沿って走査する描画ビームLBの原点間の原点間距離ΔOC35を記憶することができる。
制御部16は、第2描画ラインLL2の描画開始位置OC2が原点検出器98で位置を検出できているので、交点部Cr1と描画開始位置OC2との距離BL2を求めることができる。また、制御部16は、第4描画ラインLL4の描画開始位置OC4が原点検出器98で位置を検出できているので、交点部Cr1と描画開始位置OC4との距離BL4を求めることができる。このため、制御部16は、距離BL2,距離BL4及び基準距離PLに基づいて、描画開始位置OC2と、描画開始位置OC4との位置関係を求め、描画ラインLL2,LL4に沿って走査する描画ビームLBの原点間の原点間距離ΔOC24を記憶することができる。
また、制御部16は、描画開始位置OC1と、描画開始位置OC2とが、上述した同じ基準パターンRMP1を介して求めた位置であるので、容易に描画ラインLL1,LL2に沿って走査する描画ビームLBの原点間の原点間距離ΔOC12を記憶することができる。以上説明したように、露光装置EXは、複数の描画ユニットUW1〜UW5の個々の原点(描画開始点)の相互の位置関係を求めることができる。
また、制御部16は、第2描画ラインLL2及び第3描画ラインLL3において検知される交点部Cr1間の基準距離ΔPLから、描画開始位置OC2と、描画開始位置OC3とが継ぎ合う誤差を検出することができる。さらに、また、第4描画ラインLL4及び第5描画ラインLL5において検知される交点部Cr1間の基準距離ΔPLから、描画開始位置OC4と、描画開始位置OC5とが継ぎ合う誤差を検出することができる。
各描画ラインLL1〜LL5の描画開始位置OC1〜OC5から描画終了位置EC1〜EC5までの間に2つの交点部Cr1,Cr2を検出するようにする。これにより、描画開始位置OC1〜OC5から描画終了位置EC1〜EC5までの走査方向を検出することができる。その結果、制御部16は、各描画ラインLL1〜LL5が中心線AX2に沿う方向(Y方向)に対する角度誤差を検出することができる。
制御部16は、上述した基準パターンRMP1に対し、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)を求める。基準パターンRMP1を含む基準パターンRMPは、一定のピッチ(周期)Pf1,Pf2で繰り返し刻設したメッシュ状の基準パターンである。このため、制御部16が各ピッチPf1,Pf2で繰り返す基準パターンRMPに対し、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)を求め、複数の描画ラインLL1〜LL5の相対的な位置関係の偏差に関わる情報を演算する。その結果、制御部16は、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)の精度をより高めることができる。
次に図14に示すように、制御部16は、描画状態を調整する処理を行う(ステップS4)。制御部16は、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)及びエンコーダヘッドEN1,EN2によって検出されるスケール部(回転ドラムDR)GPa,GPbの回転角度位置に基づいて、奇数番及び偶数番の描画ユニットUW1〜UW5による描画位置を調整する。エンコーダヘッドEN1,EN2は、上述したスケール部(回転ドラムDR)GPa,GPbに基づいて、基板Pの送り量を検出することができる。
図21は、先の図12と同様に、基板の単位時間当たりの移動距離と、移動距離内に含まれる描画ラインの本数との関係を模式的に示す説明図である。図21に示すように、エンコーダヘッドEN1,EN2は、基板Pの単位時間当たりの移動距離ΔXを検出し、記憶することができる。なお、上述したアライメント顕微鏡AM1,AM2によって、複数のアライメントマークKs1〜Ks3を逐次検出して、移動距離ΔXを求めて記憶するようにしてもよい。
基板Pの単位時間当たりの移動距離ΔXにおいて、描画ユニットUW1による複数の描画ラインLL1は、ビームスポット光SPのビームラインSPL1,SPL2及びSPL3で描画され、各々のビームスポット光SPのスポット直径Xsの約1/2でX方向(及びY方向)に重畳するように走査されている。同様に、描画ラインLL1の描画終端PTb側のビームスポット光SPと、描画ラインLL2の描画終端PTb側のビームスポット光SPとは、基板Pの長尺方向への移動に伴って基板Pの幅方向に重畳距離CXsで継ぎ合わされることになる。
例えば、回転ドラムDRが上下すると、奇数番及び偶数番の描画ユニットUW1〜UW5によるX方向の描画位置にずれが生じ、例えばX方向の倍率のずれになる可能性がある。制御部16は、回転ドラムDRが搬送する基板Pの搬送速度(移動速度)を遅くすると、ビームラインSPL1,SPL2及びSPL3のX方向の間隔距離CXsが小さくなり、X方向の描画倍率を小さくするように調整できる。逆に、回転ドラムDRが搬送する基板Pの搬送速度(移動速度)を速くすると、ビームラインSPL1,SPL2及びSPL3のX方向の間隔距離CXsが大きくなり、X方向の描画倍率を大きくするように調整できる。以上、描画ラインLL1について、図21を参照して説明したが、他の描画ラインLL2〜LL5についても同様である。制御部16は、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)及びエンコーダヘッドEN1,EN2によってスケール部(回転ドラムDR)GPa,GPbの検出した回転角度位置に基づいて、基板Pの長尺の方向における、基板Pの単位時間当たりの移動距離ΔXと、該移動距離内に含まれるビームラインSPL1,SPL2及びSPL3の本数との関係を変更することができる。このため、制御部16は、奇数番及び偶数番の描画ユニットUW1〜UW5によるX方向の描画位置を調整することができる。
図22は、パルス光源のシステムクロックと同期して発光するパルス光を模式的に説明する説明図である。以下、描画ラインLL2について、図21も参照して説明するが、描画ラインLL1,LL3〜LL5についても同様である。光源装置CNTは、システムクロックSQとしてのパルス信号wpと同期してビームスポット光SPを撃つことができる。システムクロックSQの周波数Fzを変えることで、パルス信号wpのパルス間隔Δwp(=1/Fz)が変わる。その時間的なパルス間隔Δwpは、描画ラインLL2上では、パルス毎のスポット光SPの主走査方向の間隔距離CXsに対応している。制御部16は、描画ビームLBのビームスポット光SPを基板P上の描画ラインLL2に沿って描画ラインの長さLBLだけ走査させている。
制御部16は、描画ビームLBが描画ラインLL2に沿って走査している間に、システムクロックSQの周期を部分的に変更して、パルス間隔Δwpを、描画ラインLL2中の任意の位置で増減させる機能を備えている。例えば、本来のシステムクロックSQが100MHzである場合、制御部16は、描画ラインの長さLBLだけ走査する間に一定の時間間隔(周期)で部分的にシステムクロックSQを、例えば101MHz(或いは99MHz)にする。その結果、描画ラインの長さLBLにおけるビームスポット光SPの数が増減する。換言すると、制御部16は、描画ラインの長さLBLだけ走査する間に、所定回(1以上)の周期間隔でシステムクロックSQのデューティを部分的に増減する。これにより、パルス間隔Δwpの変化分だけ光源CNTが発生させるビームスポット光SPの間隔が変化し、ビームスポット光SP同士の重畳距離CXsが変化する。そして、Y方向の描画始端PTaと描画終端PTbとの距離がみかけ上、伸縮する。
一例を説明すると、描画ラインの長さLBLが30mmである場合、それを11等分し、約3mmの描画長(周期間隔)毎に1ヶ所だけシステムクロックSQのパルス間隔Δwpを増減させる。パルス間隔Δwpの増減量は、図13で説明したように、隣り合う2つのスポット光SPの間隔距離CXsの変化に伴う積算プロファイル(強度分布)の大きな悪化を招かない範囲、例えば基準の間隔距離CSxをスポット光の直径Xs(3μm)の50%としたら、それに対して±15%くらいに設定される。パルス間隔Δwpの増減が+10%(間隔距離CSxがスポット光の直径Xsの60%)だとすると、長さLBLの描画ライン中の離散的な10か所の各々で、1パルス分のスポット光が直径Xsの10%分だけ主走査方向に延びるように位置ずれする。その結果、描画後の描画ラインの長さLBLは、30mmに対して3μmだけ延びることになる。これは、基板P上に描画されるパターンがY方向に0.01%(100ppm)拡大されることを意味する。これによって、基板PがY方向に伸縮している場合でも、それに対応して描画パターンをY方向に伸縮させて露光することができる。
パルス間隔Δwpを増減する位置を、例えば、描画ラインLL1〜LL5の1回の走査ごとに、例えばシステムクロックSQの100パルス毎、200パルス毎、・・・というように任意の値にプリセットできる構成とする。このようにすると、描画パターンの主走査方向(Y方向)の伸縮量を比較的大きな範囲で変えられることになり、基板Pの伸縮や変形に対応して、動的に倍率補正をかけられる。従って、本実施形態の露光装置EXの制御部16には、システムクロックSQの発生回路が含まれ、その発生回路は、パルス間隔Δwpが一定の原クロック信号をシステムクロックSQとして発生するクロック発振部と、システムクロックSQのクロックパルス数をプリセットされた値分だけカウントしたら、システムクロックSQの次の1クロックパルスが発生するまでの時間を直前のパルス間隔Δwpに対して増減させるタイムシフト部とを有する。なお、描画ライン(長さLBL)中で、システムクロックSQのパルス間隔Δwpを増減させる部分の個数は、描画すべきパターンのY方向の倍率補正比(ppm)によって概ね決まるが、最も少ない場合、長さLBLに対応したスポット光SPの走査時間Ts中の少なくとも1ヶ所であっても良い。
図23は、システムクロックSQのパルス間隔Δwpを部分的に可変にするクロック発生回路の一例を示す。図23において、クロック発振部200からは、システムクロックSQと同じ周波数の基本クロック信号CKLが出力される。基本クロック信号CKLは、基本クロック信号CKLのパルス毎に所定の遅延時間Tdを付加することでシステムクロックSQを生成する遅延回路202と、基本クロック信号CKLの周波数を、例えば20逓倍した逓倍クロック信号CKsを出力する逓倍回路204とに印加される。
遅延回路202は、内部に逓倍クロック信号CKsのパルス数を所定値ΔNsまで計数するカウンターを有する。そのカウンターが所定値ΔNsを計数している時間が遅延時間Tdに相当する。所定値ΔNsは、プリセット回路206によってセットされる。プリセット回路206は、所定値ΔNsの初期値となる標準値Ns0を内部に備えており、外部(メインCPU等)からプリセット値Dsb(遅延時間Tdの変化分ΔTdに対応した値)が送られてくると、新しい所定値ΔNsを、直前の所定値ΔNs+Dsbに書き換える。
その書き換えは、遅延回路202から出力されるシステムクロックSQのパルスを計数するカウンタ回路208からの完了パルス信号bに応答して行われる。カウンタ回路208は、プリセット値DsaまでシステムクロックSQのパルス数を計数して完了パルス信号bを出力したら、計数値を零リセットして再びシステムクロックSQのパルス数を計数することを繰り返す構成を備える。プリセット値Dsaは、描画ラインの長さLBLをN等分したときの1つの長さLBL/Nに対応したスポット光のパルス数Nckであるが、必ずしも長さLBL/Nに対応している必要はなく任意の値であって良い。なお、以上の遅延回路202、プリセット回路206、カウンタ回路208によってタイムシフト部が構成される。
図24は、図23の回路構成における各部の信号の時間遷移を示すタイミングチャートである。プリセット回路206には、初期値となる標準値Ns0がセットされ、遅延回路202に印加される所定値ΔNsは標準値Ns0になっているものとする。カウンタ回路208が設定されたパルス数Nckまで計数する前、即ち完了パルス信号bが発生する前の状態では、プリセット回路206からの所定値ΔNsはNs0であり、遅延回路202は、図24のように、基本クロック信号CKLの各パルスの立ち上がりから逓倍クロック信号CKsのパルス数を所定値ΔNsまで計数し、その計数完了と同時にシステムクロックSQとして1つのパルスwpを出力する。従って、基本クロック信号CKLのパルスの立ち上がりから、システムクロックSQの対応するパルスwpの立ち上がりまでの遅延時間Td1は、逓倍クロック信号CKsのパルスを所定値ΔNs分だけ計数する時間に相当する。
図24において、基本クロック信号CKLのパルスCKnに対応して遅延時間Td1後に発生したシステムクロックSQのパルスwpによって、カウンタ回路208がプリセット値Dsa(パルス数Nck)分だけカウントアップしたとすると、カウンタ回路208は完了パルス信号bを出力し、それに応答して、プリセット回路206は、新たな所定値ΔNsを、〔直前の所定値ΔNs+Dsb〕に書き換える。プリセット値Dsbは、図22に示したパルス間隔Δwpの変化量(ΔTd)に対応した数値であり、図24では、負の値としてセットされるが、正の値でも同様である。従って、基本クロック信号CKLのパルスCKnの次のパルスCKn+1が発生する前に、遅延回路202には、標準値Ns0で設定される遅延時間Td1よりもΔTdだけ短い遅延時間Td2に対応した所定値ΔNsが設定される。
これにより、基本クロック信号CKLのパルスCKn+1に応答して発生するシステムクロックSQのパルスwp’と、直前のパルスwpとのパルス間隔Δwp’は、それ以前のパルス間隔Δwpよりも短くなる。パルスwp’の発生後は、カウンタ回路208がパルス数Nck分のシステムクロックSQを計数するまで、完了パルス信号bが発生しないので、遅延回路202に設定される所定値ΔNsは遅延時間Td2に対応した値のままであり、次に完了パルス信号bが発生するまで、システムクロックSQは基本クロック信号CKLに対して一律に遅延時間Td2だけ遅延した状態で出力される。従って、基本クロック信号CKLの周波数Fzで決まるパルス間隔Δwpと、タイムシフトにより補正されたパルス間隔Δwp’の比βは、
β=Δwp’/Δwp=1±(ΔTd/Δwp)〔但し、ΔTd<Δwp〕
となり、描画ラインに沿って描画されるパターンの幅方向の寸法は、β>1のときは描画データで規定される設計値よりも拡大され、β<1のとき(図24の場合)は設計値よりも縮小される。
以上の図23の回路構成では、完了パルス信号bの発生直後に作られるシステムクロックSQの1つのパルスwpのパルス間隔Δwpを時間ΔTdだけ変化させることが、システムクロックSQのパルス数Nck分の計数ごとに繰り返し実行される。なお、図23の回路構成の場合、プリセット回路206が内部に記憶している標準値Ns0を20とし、外部から設定されるプリセット値Dsbをゼロとすると、完了パルス信号bの発生の有無にかかわらず、所定値ΔNsは20のまま(Y方向の描画倍率補正をしない状態)である。また、逓倍クロック信号CKsの周波数が基本クロック信号CKLの周波数の20倍としたことから、所定値ΔNsを20とした場合、プリセット値Dsbを+1(又は−1)にセットすると、所定値ΔNsは、完了パルス信号bの発生のたびに、20,21,22,・・・(又は20,19,18・・・)と増加(又は減少)するように書き換えられる。さらに、逓倍クロック信号CKsの1パルス分が、標準のパルス間隔Δwp(パルス間隔距離CXs)の1/20(5%)に相当するので、プリセット値Dsbを±1変えると、2つの連続したスポット光の重畳の度合いを5%単位で変えられる。
以上のように、このようにパルス間隔Δwpが部分的に増減されたシステムクロックSQに応答してパルスレーザの光源装置CNTから出力されるパルスビームは、描画ユニットUW1〜UW5の各々に共通に供給されるので、描画ラインLL1〜LL5の各々で描画されるパターンはY方向に同じ比率で伸縮される。従って、図12(又は図11)で説明したように、Y方向に隣り合う描画ライン間での継ぎ精度を維持する為に、描画ラインLL1〜LL5の各々の描画開始位置OC1〜OC5(又は描画終了位置EC1〜EC5)がY方向にシフトするように、描画タイミングが補正される。
システムクロックSQのパルス間隔Δwpを部分的に可変にする回路構成の例は、図23、図24のように遅延時間Td1,Td2をデジタル的に可変する方式以外に、アナログ的に可変するような構成であっても良い。また、カウンタ回路208がプリセット値Dsb(パルス数Nck)までシステムクロックSQを計数する度に補正される1ヶ所のパルス間隔Δwp’が、標準的なパルス間隔Δwpに対して、例えば1%といった僅かな値だけ増減するような構成としても良い。その場合、描画ラインの長さLBLに沿ったスポット光の1回の走査中に、標準的なパルス間隔Δwpをパルス間隔Δwp’に補正する箇所の数を、必要な倍率補正量に従って変えれば良い。例えば、補正する箇所の数を100にすると、1回のスポット光の走査で描画されるパターンのY方向の寸法は、パルス間隔Δwp分だけ増減する。
さらに、図4中に示した光偏向器(AOM)81のON/OFFのスイッチングは、描画データとして送出されるシリアルなビット列(ビット値「0」又は「1」の並び)に応答して行われるが、そのビット値の送出は、パルス間隔Δwpが部分的に増減されたシステムクロックSQのパルス信号wp(図24)と同期するようにしても良い。具体的には、1つのパルス信号wpが発生して次のパルス信号wpが発生するまでの間に、1つのビット値を光偏向器(AOM)81のドライブ回路に送出し、そのビット値が例えば「1」であって、1つ前のビット値が「0」だったときは、光偏向器(AOM)81をOFF状態からON状態にスイッチすればよい。
ところで、制御部16は、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)及び回転ドラムDRの両端部の振れを検知可能な変位計YN1,YN2,YN3,YN4の検出した情報に基づいて、回転ドラムDRの振れ回りによって生じたY方向の誤差を相殺するように、奇数番及び偶数番の描画ユニットUW1〜UW5によるY方向の描画位置を調整することができる。また、制御部16は、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)及び回転ドラムDRの両端部の振れを検知可能な変位計YN1,YN2,YN3,YN4の検出した情報に基づいて、回転ドラムDRの振れ回りによって生じたY方向の誤差を相殺するように、奇数番及び偶数番の描画ユニットUW1〜UW5によるY方向の長さ(描画ラインの長さLBL)を変更することができる。
また、制御部16は、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)及びアライメント顕微鏡AM1,AM2により検出された情報に基づいて、基板PのX方向またはY方向の誤差を相殺するように、奇数番及び偶数番の描画ユニットUW1〜UW5によるX方向またはY方向の描画位置を調整することができる。
第1実施形態の露光装置EXは、上述したように複数の描画ユニットUW1〜UW5の各々からの描画ビームLBによって、基板P上に形成される複数の描画ラインLL1〜LL5を含む描画面内の所定点である回転軸Iを中心として、前記描画面内で第1光学定盤23に対して第2光学定盤25をシフト移動させるシフト補正機構としての移動機構24を含む。複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)により、複数の描画ラインLL1〜LL5の全体がX方向及びY方向の少なくとも1つに対して誤差を有している場合、制御部16は、誤差を相殺するシフト量となるように、移動機構24の駆動部に対し駆動制御を行って、第2光学定盤25をX方向及びY方向の少なくとも一方にシフト移動させることができる。
第2光学定盤25をX方向及びY方向の少なくとも一方にシフト移動させると、そのシフト量だけ、図6に示す第4反射ミラー59がX方向又はY方向に変位する。特に第4反射ミラー59のY方向の変位は、第3反射ミラー58からくる描画ビームLBを+Y方向に反射させる際に、Z方向にシフト移動させてしまう。そこで、第1光学系41中のビームシフター機構44によって、そのZ方向へのシフト移動を補正する。これによって、第4反射ミラー59以降の第2光学系42及び第3光学系43に対しては、ビームLBが正しい光路を通るように維持される。
また、第1実施形態の露光装置EXにおいて、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)により、複数の描画ラインLL1〜LL5がX方向及びY方向の少なくとも1つに対して誤差を有している場合、制御部16は、誤差を相殺するシフト量となるように、ビームシフター機構44に対し駆動制御を行って、基板P上に形成される描画ラインLL1〜LL5をX方向やY方向に微少シフトさせることができる。
さらに、第1実施形態の露光装置EXにおいて、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)により、複数の描画ラインLL1〜LL5のうち奇数番または偶数番の描画ラインが、X方向及びY方向の少なくとも1つに対して誤差を有している場合、制御部16は、誤差を相殺するシフト量となるように、ビームシフター機構45に対し駆動制御を行って、基板P上に形成される偶数番の描画ラインLL2,LL4をX方向やY方向に微少シフトさせ、基板P上に形成される奇数番の描画ラインLL1,LL3,LL5との相対的な位置関係を微少に調整することができる。
また、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)及び変位計YN1,YN2,YN3,YN4またはアライメント顕微鏡AM1,AM2により検出された情報に基づいて、制御部16は、描画ユニットUW1〜UW5のY倍率を調整することもできる。例えば、f−θレンズ系85が含むテレセントリックf−θレンズの像高が入射角に比例する。このため、描画ユニットUW1のY倍率だけを調整する場合、制御部16は、調整情報(キャリブレーション情報)及び変位計YN1,YN2,YN3,YN4またはアライメント顕微鏡AM1,AM2により検出された情報に基づいて、個別にf−θレンズ系85の焦点距離fを調整することでY倍率を調整することができる。このような調整機構には、例えば、倍率補正のためのベンディングプレート、テレセントリックf−θレンズの倍率補正機構、シフト調整のためのハービング(傾斜可能な平行平板ガラス)のいずれか1以上を組み合わせてもよい。また一定の回転速度で回転している回転ポリゴンミラー97の回転速度を僅かに可変することで、システムクロックSQに同期して描画される各スポット光SP(パルス光)の間隔距離CXsを僅かに変える(隣り合うスポット光同士の重畳量を僅かにずらす)ことができ、結果的にY倍率を調整することも可能である。
第1実施形態の露光装置EXは、上述したように複数の描画ユニットUW1〜UW5の各々からの描画ビームLBによって、基板P上に形成される複数の描画ラインLL1〜LL5を含む描画面内の所定点である回転軸Iを中心として、前記描画面内で第1光学定盤23に対して第2光学定盤25を回転させる回転機構としての移動機構24を含む。複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)により、複数の描画ラインLL1〜LL5がY方向に対して角度誤差を有している場合、制御部16は、角度誤差を相殺する回転量となるように、移動機構24の駆動部に対し駆動制御を行って、第2光学定盤25を回転させることができる。
また、各描画ユニットUW1〜UW5を個別に回転補正する必要が生じた場合には、図8に示したf−θレンズ系85と第2のシリンドリカルレンズ86を光軸AXfの回りに微小量回転させることで、各描画ラインLL1〜LL5を基板P上で個別に微少に回転する(傾ける)ことが可能である。回転ポリゴンミラー97によって走査されるビームLBは、非走査方向に関してシリンドリカルレンズ86の母線に沿って結像(集光)されるため、シリンドリカルレンズ86の光軸AXf回りの回転により、各描画ラインLL1〜LL5を回転(傾斜)させることが可能となるのである。
第1実施形態の露光装置EXは、上述したステップS4の制御装置による描画位置の調整の処理の少なくとも1つを処理すればよい。また、第1実施形態の露光装置EXは、上述したステップS4の制御装置による描画位置の調整の処理を組み合わせて、処理してもよい。
以上説明した基板処理装置の調整方法により、第1実施形態の露光装置EXでは、基板Pの幅方向(Y方向)に隣接するパターンPT1〜PT5同士の継ぎ誤差を抑制するための試験露光が不要、若しくはその回数が激減される。このため、第1実施形態の露光装置EXは、試験露光、乾燥及び現像工程、露光結果の確認作業等の時間をかけたキャリブレーション作業が短縮できる。そして、第1実施形態の露光装置EXは、試験露光によってフィードバックする回数分の基板Pの無駄を抑制することができる。第1実施形態の露光装置EXは、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)を早期に取得することができる。第1実施形態の露光装置EXは、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)に基づいて、予め補正を行うことにより、X方向またはY方向における、シフト、回転、倍率等の各成分を容易に補正することが可能である。そして、第1実施形態の露光装置EXは、基板P上に重ね合わせ露光をする精度を高めることができる。
なお、第1実施形態の露光装置EXは、光偏向器81が音響光学素子を含み、描画ビームLBを回転ポリゴンミラー97によってスポット走査する例を説明したが、スポット走査以外にDMD(Digital Micro mirror Device)またはSLM(Spatial light modulator:空間光変調器)を使ってパターンを描画する方式であってもよい。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の露光装置EXについて説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と重複する記載を避けるべく、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付して説明する。
第2実施形態の露光装置EXにおいて、キャリブレーション検出系31の光電センサー31Csは、基準パターン(基準マークとしても利用可能)RMPではなく、基板P上にあるアライメントマークKs1〜Ks3の反射光(散乱光)を検出する。アライメントマークKs1〜Ks3は、複数の描画ユニットUW1〜UW5の各描画ラインLL1〜LL5のいずれかを通るY方向の基板P上の位置に配置されている。描画ビームLBのスポット光SPがアライメントマークKs1〜Ks3を走査すると、アライメントマークKs1〜Ks3で反射する散乱光が光電センサー31Csに明視野または暗視野で受光される。
制御部16は、光電センサー31Csから出力される信号に基づいて、アライメントマークKs1〜Ks3のエッジ位置を検出する。そして、第1実施形態と同様に、制御部16は、光電センサー31Csで検出した検出信号から、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)を求めることができる。
また、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置誤差に対応する調整情報(キャリブレーション情報)及びアライメント顕微鏡AM1,AM2により検出された情報に基づいて、制御部16は、基板PのX方向またはY方向の誤差を相殺するように、奇数番及び偶数番の描画ユニットUW1〜UW5によるX方向またはY方向の描画位置を調整することができる。描画ビームLBのスポット光SPがアライメントマークKs1〜Ks3に投射されると、アライメントマークKs1〜Ks3の上の感光層が感光し、その後のプロセスでアライメントマークKs1〜Ks3が潰れる可能性がある。アライメントマークKs1〜Ks3を複数列設けておき、アライメント顕微鏡AM1,AM2は、露光で潰れなかった、アライメントマークKs1〜Ks3を読み取ることが好ましい。
このため、第2実施形態の露光装置EXは、露光で潰れても良いアライメントマークKs1〜Ks3の近傍は、描画ビームLBのスポット光SPで走査し、露光で潰したくないアライメントマークKs1〜Ks3の近傍はスポット光SPが照射されないように、光偏向器(AOM)81をON/OFFするデータを、パターン描画用データ中に含ませておくことができる。これによって、描画ビームLBで露光しながら、キャリブレーション情報をほぼリアルタイムに取得し、かつアライメントマークKs1〜Ks3(基板Pの位置)を読み取ることもできる。
第2実施形態の露光装置EXは、第1実施形態の露光装置EXと同様に、継ぎ誤差を抑制するための試験露光が不要、若しくはその回数が激減される。それに加えて第2実施形態の露光装置EXでは、基板Pにパターン露光しながら、複数の描画ラインLL1〜LL5の配置状態または相互の配置関係等の誤差情報を計測して、それに対応する調整情報(キャリブレーション情報)を早期(ほぼリアルタイム)に取得することができる。従って、第2実施形態の露光装置EXでは、早期に計測される誤差情報、或いは調整情報(キャリブレーション情報)に基づいて、デバイスパターンを露光しながら、所定の精度を保つような補正や調整を逐次行うことができ、マルチ描画ヘッド方式で問題であった、X方向またはY方向におけるシフト誤差、回転誤差、倍率誤差等の各誤差成分を勘案した描画ユニット間の継ぎ精度の低下を容易に抑えることが可能である。これによって、第2実施形態の露光装置EXは、基板P上に重ね合わせ露光をする際の重ね精度を高い状態に維持することができる。
<デバイス製造方法>
次に、図25を参照して、デバイス製造方法について説明する。図25は、各実施形態のデバイス製造方法を示すフローチャートである。
図25に示すデバイス製造方法では、先ず、例えば有機EL等の自発光素子による表示パネルの機能・性能設計を行い、必要な回路パターンや配線パターンをCAD等で設計する(ステップS201)。また、表示パネルの基材となる可撓性の基板P(樹脂フィルム、金属箔膜、プラスチック等)が巻かれた供給用ロールを準備しておく(ステップS202)。なお、このステップS202にて用意しておくロール状の基板Pは、必要に応じてその表面を改質したもの、下地層(例えばインプリント方式による微小凹凸)を事前形成したもの、光感応性の機能膜や透明膜(絶縁材料)を予めラミネートしたもの、でもよい。
次いで、基板P上に表示パネルデバイスを構成する電極や配線、絶縁膜、TFT(薄膜半導体)等によって構成されるバックプレーン層を形成すると共に、そのバックプレーンに積層されるように、有機EL等の自発光素子による発光層(表示画素部)が形成される(ステップS203)。このステップS203には、先の各実施形態で説明した露光装置EXが用いられ、フォトレジスト層を露光して現像する従来のフォトリソグラフィ工程、フォトレジストの代わりに感光性シランカップリング材を塗布した基板Pをパターン露光して表面を親撥水性に改質してパターンを形成する露光工程、光感応性の触媒層をパターン露光して選択的なメッキ還元性を付与し、無電解メッキ法によって金属膜のパターン(配線、電極等)を形成する湿式工程、或いは、銀ナノ粒子を含有した導電性インク等によってパターンを描画する印刷工程、等による処理も含まれる。
次いで、ロール方式で長尺の基板P上に連続的に製造される表示パネルデバイス毎に、基板Pをダイシングしたり、各表示パネルデバイスの表面に、保護フィルム(耐環境バリア層)やカラーフィルターシート等を貼り合わせたりして、デバイスを組み立てる(ステップS204)。次いで、表示パネルデバイスが正常に機能するか、所望の性能や特性を満たしているかの検査工程が行なわれる(ステップS205)。以上のようにして、表示パネル(フレキシブル・ディスプレー)を製造することができる。なお、フレキシブルな長尺のシート基板に作成される電子デバイスは表示パネルに限られず、自動車や電車等に搭載される各種の電子部品間の接続の為のハーネス(配線束)としてのフレキシブル配線網であっても良い。