本発明の態様に係るパターン描画装置およびパターン露光装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下に詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
図1は、ロール・ツー・ロール方式の基板処理装置(パターン露光装置)の全体的な構成を正面側から見た斜視図である。図1の基板処理装置による処理は、チャンバーCBで囲まれた露光部本体(露光装置、描画装置)EX内で、電子デバイス用のパターンをシート基板P(以下単に基板Pと呼ぶこともある)の表面のレジスト層や感光性シランカップリング層、或いは紫外線硬化樹脂の膜等の感光層(感光性機能層)に露光することである。図1において、基板処理装置の全体が設置される工場の床面と平行な面を直交座標系XYZのXY面とし、XY面と垂直なZ方向を重力方向とする。感光層が塗布されてプリベイク(予備加熱)された長尺のフレキシブルなシート基板Pは、供給ロールFRに巻かれた状態で、供給ロール装着部EPC1から-Y方向に突出した回転軸に装着される。供給ロール装着部EPC1は、巻出し/巻取り部10の-X側の側面に設けられ、全体として±Y方向に微動できるように構成される。供給ロールFRから引き出されたシート基板Pは、巻出し/巻取り部10のXZ平面と平行な側面に取付けられたエッジセンサーEps1、Y軸と平行な回転軸を有する複数のローラ、および、テンション付与とテンション計測を行うテンションローラRT1を介して、+X方向に隣り合ったクリーナー部11に取付けられたクリーニングローラCUR1に送られる。クリーニングローラCUR1は、外周面が粘着性を持つように加工されて、シート基板Pの表面と裏面との各々と接触して回転することで、シート基板Pの表裏面に付着した微粒子や異物を除去する2本のローラで構成される。
クリーナー部11のクリーニングローラCUR1を通ったシート基板Pは、張力調整部12のXZ面から-Y方向に突出して設けられるニップローラNR1と、テンションローラRT2とを介して、露光部本体EXのチャンバーCBの側壁にY方向にスロット状に延びて形成された開口部CP1を通って、露光部本体EX内に搬入される。シート基板Pの感光層が形成された面は、開口部CP1を通る際に上向き(+Z方向)になっている。露光部本体EX内で露光処理されたシート基板Pは、開口部CP1の-Z側であって、チャンバーCBの側壁にY方向にスロット状に延びて形成された開口部CP2を通って搬出される。その際、シート基板Pの感光層が形成された面は、下向きになっている。開口部CP2を通って搬出されるシート基板Pは、張力調整部12のXZ面から-Y方向に突出して設けられるテンションローラRT3とニップローラNR2とを介して、-X方向に隣り合ったクリーナー部11のクリーニングローラCUR2に送られる。クリーニングローラCUR2は、クリーニングローラCUR1と同様に構成される。
クリーナー部11のクリーニングローラCUR2を通ったシート基板Pは、巻出し/巻取り部10のXZ面と平行な側面の下段部に取付けられたテンションローラRT4、エッジセンサーEps2、および、Y軸と平行な回転軸を有する複数のローラを介して、回収ロールRRで巻き取られる。回収ロールRRは、巻出し/巻取り部10の-X側の側面の下部に設けられ、全体として±Y方向に微動できるように構成される回収ロール装着部EPC2の回転軸に装着される。回収ロールRRは、シート基板Pの感光層が外周面側に向くようにシート基板Pを巻き上げる。このように、図1の基板処理装置では、供給ロールFRから引き出されて回収ロールRRで巻き取られるまで、シート基板Pの表面(被処理面)の幅方向(長尺方向と直交した短尺方向)が常にY方向になるような状態でシート基板Pを長尺方向に搬送している。さらに、図1の基板処理装置の構成においては、供給ロールFRと回収ロールRRとを巻出し/巻取り部10にZ方向に並べて配置したので、ロール交換の作業が簡便になる。なお、図1中において、クリーナー部11のクリーニングローラCUR1、CUR2を通った後のシート基板P、或いはニップローラNR1、NR2を通った後のシート基板Pには、数千~数キロボルト程度の静電気が帯電することがある。その為、シート基板Pの搬送路の適当な位置に、帯電した静電気を中和させるイオナイザーを設けたり、搬送ローラの一部やローラ周囲に除電機能(放電用の電極部やブラシ等)を設けたりするのが良い。
本実施の形態では、基板処理装置の単体がロール・ツー・ロール方式でシート基板Pに露光処理を施す構成とするが、シート基板Pの表面に感光層を塗布する塗布部と乾燥部とを、供給ロールFRと露光部本体EXとの間に設けたり、露光処理後のシート基板Pに現像処理やメッキ処理等の湿式処理を施す湿式処理部と乾燥部とを、露光部本体EXと回収ロールRRの間に設けたりしてもよい。なお、供給ロール装着部EPC1と回収ロール装着部EPC2の各々には、シート基板Pの被処理面を保護するための保護シートが巻かれたロールを装着するための回転軸が、供給ロールFRや回収ロールRRの回転軸と平行に設置されている。
供給ロール装着部EPC1は、供給ロールFRに所定の回転トルクを与えるサーボモータやギアボックス(減速器)を備えており、そのサーボモータは、テンションローラRT1で計測されるテンション量に基づいて搬送機構の制御ユニットによってサーボ制御される。同様に回収ロール装着部EPC2は、回収ロールRRに所定の回転トルクを与えるサーボモータやギアボックス(減速器)を備えており、そのサーボモータはテンションローラRT4で計測されるテンション量に基づいて搬送機構の制御ユニットによってサーボ制御される。さらに、シート基板Pの一方の端部(エッジ部)のY方向の変位を計測するエッジセンサーEps1からの計測情報は、供給ロール装着部EPC1(および供給ロールFR)を±Y方向に移動させるサーボモータの駆動制御部に送られ、エッジセンサーEps1を通って露光部本体EXに向かうシート基板PのY方向の位置ずれを常に所定の許容範囲内に抑える。同様に、シート基板Pの一方の端部(エッジ部)のY方向の変位を計測するエッジセンサーEps2からの計測情報は、回収ロール装着部EPC2(および回収ロールRR)を±Y方向に移動させるサーボモータの駆動制御部に送られ、エッジセンサーEps2を通るシート基板PのY方向の位置ずれに応じて回収ロールRRをY方向に移動させることで、シート基板Pの巻きムラを抑えている。
図1に示した搬送機構を構成する巻出し/巻取り部10、クリーナー部11、張力調整部12の各々の-Y方向側には、X方向に延びて工場床面に設置される段部13が設けられる。この段部13は、その上に作業者が上がって調整作業や保守作業を行えるように、Y方向に数十cmの幅を持たせてある。また、段部13の内部には、各種の電気配線、空調気体用の配管、冷却液体用の配管等の付帯設備が収納されている。段部13の-Y方向側には、電源ユニット14と、露光用ビームを発生するレーザ光源を制御するレーザ制御ユニット15と、レーザ光源、パターン描画用のポリゴンミラー、および、ビームスイッチング用の光学変調器等の発熱部を冷却するための冷却液(クーラント)を循環させるチラーユニット16と、露光部本体EXのチャンバーCB内に温調された気体を供給する空調ユニット17等とが配置される。
以上の構成において、張力調整部12に取付けられたニップローラNR1とテンションローラRT2によって、露光部本体EXの上流側のシート基板Pには、長尺方向(搬送方向)に略一定のテンションが付与される。テンションローラRT2は、テンション計測部(センサー)を備え、計測したテンション量が指令された値になるように、サーボモータによって図1中で±Z方向に移動可能となっている。ニップローラNR1は、2本の平行なローラを一定の押圧力で対峙させ、その間でシート基板Pを挟持しつつ、一方のローラをサーボモータで回転駆動させることで、ニップローラNR1の上流側と下流側とでシート基板Pに付与されるテンションを分断することができる。ニップローラNR1の一方のローラのサーボモータによる回転駆動により、シート基板Pの搬送速度をアクティブに制御することができ、例えば、ニップローラNR1のサーボモータの回転を停止状態(速度ゼロ)にサーボロックすると、シート基板PをニップローラNR1の位置に係止(係留)することができる。
同様に、張力調整部12に取付けられたニップローラNR2とテンションローラRT3によって、露光部本体EXの下流側のシート基板Pには、長尺方向(搬送方向)に略一定のテンションが付与される。テンションローラRT3は、テンション計測部(センサー)を備え、計測したテンション量が指令された値になるように、サーボモータによって図1中で±Z方向に移動可能となっている。ニップローラNR2は、ニップローラNR1と同様にサーボモータによってアクティブに回転制御されるため、ニップローラNR2の上流側と下流側とでシート基板Pに付与されるテンションを分断することができる。ニップローラNR2のサーボモータの回転を停止状態(速度ゼロ)にサーボロックすることで、シート基板PはニップローラNR2の位置に係止(係留)されることになる。
さらに本実施の形態では、供給ロールFRを回転駆動するサーボモータと、ニップローラNR1を回転駆動するサーボモータとを、テンションローラRT1で計測されるテンション量に応じて同期制御することで、供給ロールFRからニップローラNR1までの搬送経路において、シート基板Pに所定のテンションが与えられる。同様に、回収ロールRRを回転駆動するサーボモータと、ニップローラNR2を回転駆動するサーボモータとを、テンションローラRT4で計測されるテンション量に応じて同期制御することで、ニップローラNR2から回収ロールRRからまでの搬送経路において、シート基板Pに所定のテンションが与えられる。なお、図1に示した供給ロールFRや回収ロールRR、及び巻出し/巻取り部10、クリーナー部11、張力調整部12の各種ローラは、シート基板Pを搬送路に沿って通したり(通紙)、搬送路から取り外したりすることを容易にするため、片持ち方式のローラ(ロール)となっている。しかしながら、扱うシート基板Pの幅(短尺方向の寸法)が大きい場合(例えば1メートル以上の場合)には、両持ち方式のローラ(ロール)とすることによって、各種ローラ間の平行性を安定に維持することができる。
〔パターン描画装置EX〕
次に、図2の斜視図を参照して露光部本体(以下、パターン描画装置とも呼ぶ)EXの全体構成を説明する。図2における直交座標系XYZは、先の図1の座標系XYZと同じに設定される。従って特に断わりのない限り、直交座標系XYZのZ方向を重力方向として説明する。
パターン描画装置EXは、可撓性のシート基板P(以下、単に基板Pとも呼ぶ)に露光処理を施して、電子デバイスを製造するデバイス製造システムで使われる。デバイス製造システムは、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイ、フィルム状のタッチパネル、液晶表示パネル用のフィルム状のカラーフィルター、フレキシブル配線、または、フレキシブル・センサなどを製造する製造ラインが構築された製造システムである。フレキシブル電子デバイスの一例として、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイなどの表示パネルやウェアラブルセンサシート等がある。シート基板Pは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼などの金属または合金からなる箔(フォイル)などが用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、シート基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、デバイス製造システムやパターン描画装置EXの搬送路を通る際に、シート基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。シート基板Pの母材として、厚みが25μm~200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などのフィルムが使われる。
シート基板Pは、デバイス製造システム内で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質を選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または酸化ケイ素などでもよい。また、シート基板Pは、フロート法などで製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルムや箔などを貼り合わせた積層体であってもよい。
また、セルロースナノファイバー(CNF)を含有した数百μm以下の厚みのフィルム(以下、CNFシート基板とも呼ぶ)は、PET等のフィルムに比べて高温(例えば200℃程度)の処理にも耐え、CNFの含有率を高めることで線熱膨張係数を銅やアルミニウム程度にすることができる。従って、CNFシート基板は、銅による配線パターンを形成して電子部品(半導体素子、抵抗器、コンデンサ等)を実装したり、高温処理が必要とされる薄膜トランジスタ(TFT)を直接形成したりしてフレキシブル電子デバイスを製造する場合の基板としても適している。特に、電子デバイスを製造する場合、湿式処理の後には乾燥加熱処理が必要であるが、その際に耐熱性が高く、低伸縮性であることから、長尺のシート基板を連続して複数の処理装置に通すロール・ツー・ロール方式の製造ラインの構築が容易になり、生産性の向上が期待できる。
ところで、シート基板Pの可撓性(flexibility)とは、シート基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、そのシート基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、シート基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、または、湿度などの環境などに応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、デバイス製造システム(パターン描画装置EX)内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラムなどの搬送方向転換用の部材にシート基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、シート基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲といえる。パターン描画装置EXに送られてくるシート基板Pには、前工程の処理によって、その表面に感光性機能層(光感応層)が形成されている。
その感光性機能層は、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジスト(液状またはドライフィルム状)であるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤などがある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、シート基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅などの導電性ナノ粒子を含有するインク)または半導体材料を含有した液体などを選択塗布することで、薄膜トランジスタ(TFT)などを構成する電極、半導体、絶縁、或いは接続用の配線となるパターン層を形成することができる。なお、感光性機能層は、紫外波長域(250~400nm程度)に感度を有するものであれば、その他のもの、例えば紫外線硬化樹脂を薄膜状に塗布した層であっても良い。
感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、シート基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、シート基板Pを直ちにパラジウムイオンなどを含む無電解メッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にしてもよい。その場合、パターン描画装置EXへ送られるシート基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)などの金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものとするのがよい。
パターン描画装置EXは、前工程のプロセス装置から搬送されてきたシート基板Pを後工程のプロセス装置(単一の処理部または複数の処理部を含む)に向けて所定の速度で搬送しつつ、シート基板Pに対して露光処理(パターン描画)を行う。パターン描画装置EXは、シート基板Pの表面(感光性機能層の表面、すなわち、感光面)に、電子デバイス用のパターン(例えば、電子デバイスを構成する配線パターン、TFTの電極や配線などのパターン)に応じた光パターンを照射する。これにより、感光性機能層に前記パターンに対応した潜像(改質部)が形成される。
図2に示すように、本実施の形態におけるパターン描画装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるスポット走査方式の露光装置(描画装置)である。描画装置EXは、副走査のために基板Pを支持して長尺方向に搬送する回転ドラムDRと、回転ドラムDRで円筒面状に支持された基板Pの部分ごとにパターン露光を行う複数(ここでは6個)の描画ユニットUn(U1~U6)とを備え、複数の描画ユニットUn(U1~U6)の各々は、光源装置LSから射出される露光用のパルス状のビームLB(パルスビーム)のスポット光を、基板Pの被照射面(感光面)上で所定の走査方向(Y方向)にポリゴンミラー(走査部材)PMで1次元に走査(主走査)しつつ、スポット光の強度をパターンデータ(描画データ、パターン情報)に応じて高速に変調(オン/オフ)する。これにより、基板Pの被照射面に電子デバイス、回路または配線などの所定のパターンに応じた光パターンが描画露光される。つまり、基板Pの副走査とスポット光の主走査とで、スポット光が基板Pの被照射面(感光性機能層の表面)上で相対的に2次元走査されて、基板Pの被照射面に所定のパターンが描画露光される。なお、基板Pは、回転ドラムDRの回転によって長尺方向に指令された速度で搬送されるので、描画装置EXによってパターンが描画される被露光領域は、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられることになる。この被露光領域に電子デバイスが形成されるので、被露光領域はデバイス形成領域でもある。
図2に示すように、回転ドラムDRは、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有する。回転ドラムDRのY方向の両端には中心軸AXoと同軸にシャフトが設けられ、回転ドラムDRは、そのシャフトによって描画装置EX内の支持部材(本体フレーム部)にベアリングを介して軸支される。シャフトは、モータ30(後の図3参照)の回転軸と同軸に結合される。回転ドラムDRは、この外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に円筒面状に湾曲させて支持しつつ(巻き付けつつ)、中心軸AXoを中心に回転して基板Pを長尺方向に搬送する。回転ドラムDRは、複数の描画ユニットUn(U1~U6)の各々からの走査ビーム(スポット光)が投射される基板P上の領域(スポット光による描画ラインSL1~SL6を含む部分)をその外周面で支持する。回転ドラムDRは、電子デバイスが形成される面(感光面が形成された側の面)とは反対側の面(裏面)側から基板Pを支持(密着保持)する。
光源装置(パルス光源装置)LSは、パルス状のビーム(パルスビーム、パルス光、レーザ)LBを発生して射出する。このビームLBは、シート基板Pの感光層に対する感度を有し、240~400nm程度の紫外波長帯域にピーク波長を有する紫外線光である。光源装置LSは、ここでは不図示の描画制御装置200(後の図3参照)の制御にしたがって、周波数(発振周波数、所定周波数)Faでパルス状に発光するビームLBを射出する。この光源装置LSは、赤外波長域のパルス光を発生する半導体レーザ素子、ファイバー増幅器、および、増幅された赤外波長域のパルス光を355nmの紫外波長のパルス光に変換する波長変換素子(高調波発生素子)などで構成されるファイバーアンプレーザ光源とする。このように光源装置LSを構成することで、発振周波数Faが数百MHzで、1パルス光の発光時間が数十ピコ秒以下の高輝度な紫外線のパルス光が得られる。なお、光源装置LSから射出されるビームLBは、そのビーム径が1mm程度、若しくはそれ以下の細い平行光束になっているものとする。光源装置LSをファイバーアンプレーザ光源とし、描画データを構成する画素の状態(論理値で「0」か「1」)に応じてビームLBのパルス発生を高速にオン/オフする構成については、例えば、国際公開第2015/166910号パンフレットに開示されている。
光源装置LSから射出されるビームLBは、複数のスイッチング素子としての選択用光学素子(選択用光学部材)OSn(OS1~OS6)と、複数の反射ミラーM1~M12と、複数の選択ミラーIMn(IM1~IM6)と、吸収体TR等で構成されるビーム切換部を介して、描画ユニットUn(U1~U6)の各々に選択的(択一的)に供給される。選択用光学素子OSn(OS1~OS6)は、ビームLBに対して透過性を有するものであり、超音波信号(RF電力)で駆動されて、入射したビームLBの1次回折光(主回折ビーム)を描画用のビームLBnとして所定の角度で偏向して射出する音響光学変調素子(音響光学偏向素子)(AOM:Acousto-Optic Modulator)で構成される。複数の選択用光学素子OSnおよび複数の選択ミラーIMn(第1の偏向部材)は、複数の描画ユニットUnの各々に対応して設けられている。例えば、選択用光学素子OS1と選択ミラーIM1は、描画ユニットU1に対応して設けられ、同様に、選択用光学素子OS2~OS6および選択ミラーIM2~IM6は、それぞれ描画ユニットU2~U6に対応して設けられている。
光源装置LSからビームLBは、反射ミラーM1~M12によってその光路がXY面と平行な面内でつづらおり状に曲げられつつ、選択用光学素子OS5、OS6、OS3、OS4、OS1、OS2の順に透過して、吸収体TRまで導かれる。以下、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)がいずれもオフ状態(超音波信号が印加されずに、1次回折光が発生していない状態)の場合で詳述する。なお、図2では図示を省略したが、反射ミラーM1から吸収体TRまでのビーム光路中には複数のレンズ(光学素子)が設けられ、この複数のレンズは、ビームLBを平行光束から収斂したり、収斂後に発散するビームLBを平行光束に戻したりする。その構成は後で図5を用いて説明する。
図2において、光源装置LSからのビームLBは、X軸と平行に-X方向に進んで反射ミラーM1に入射する。反射ミラーM1で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM2に入射する。反射ミラーM2で+X方向に反射されたビームLBは、選択用光学素子OS5を直線的に透過して反射ミラーM3に至る。反射ミラーM3で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM4に入射する。反射ミラーM4で-X方向に反射されたビームLBは、選択用光学素子OS6を直線的に透過して反射ミラーM5に至る。反射ミラーM5で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM6に入射する。反射ミラーM6で+X方向に反射されたビームLBは、選択用光学素子OS3を直線的に透過して反射ミラーM7に至る。反射ミラーM7で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM8に入射する。反射ミラーM8で-X方向に反射されたビームLBは、選択用光学素子OS4を直線的に透過して反射ミラーM9に至る。反射ミラーM9で-Y方向に反射されたビームLBは反射ミラーM10に入射する。反射ミラーM10で+X方向に反射されたビームLBは、選択用光学素子OS1を直線的に透過して反射ミラーM11に至る。反射ミラーM11で-Y方向に反射されたビームLBは、反射ミラーM12に入射する。反射ミラーM12で-X方向に反射したビームLBは、選択用光学素子OS2を直線的に透過して吸収体TRに導かれる。この吸収体TRは、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)がいずれもオフ状態のときに、ほとんど減衰することなく透過してくる光源装置LSからの高輝度のビームLBが外部に漏れることを防止するための光トラップである。
各選択用光学素子OSnは、超音波信号(高周波信号)が印加されると、入射したビーム(0次光)LBを、高周波の周波数に応じた回折角で回折させた1次回折光(主回折ビーム)を射出ビーム(描画用のビームLBn)として発生させるものである。したがって、選択用光学素子OS1から1次回折光として射出されるビームがLB1となり、同様に選択用光学素子OS2~OS6から1次回折光として射出されるビームがLB2~LB6となる。このように、各選択用光学素子OSn(OS1~OS6)は、光源装置LSからのビームLBの光路を偏向する機能を奏する。本実施の形態では、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)がオン状態となって1次回折光としてのビームLBn(LB1~LB6)を発生している状態のことを、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)が光源装置LSからのビームLBを偏向(又は選択)した状態として説明する。但し、実際の音響光学変調素子は、1次回折光の最大の発生効率が0次光の70~80%程度であるため、選択用光学素子OSnの各々で偏向されたビームLBn(LB1~LB6)は、元のビームLBの強度より低下している。また、本実施の形態では、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)のうちの選択された1つだけが一定時間だけオン状態(偏向状態)となるように、描画制御装置200(図3参照)によって制御される。選択された1つの選択用光学素子OSnがオン状態のとき、その選択用光学素子OSnで回折されずに直進する0次光(0次回折ビーム)が20%程度残存するが、それは最終的に吸収体TRによって吸収される。
選択用光学素子OSnの各々は、偏向された1次回折光である描画用のビームLBn(LB1~LB6)を、入射するビームLBに対して-Z方向に偏向するように設置される。選択用光学素子OSnの各々で偏向されたビームLBn(LB1~LB6)は、選択用光学素子OSnの各々から所定距離だけ離れた位置に設けられた選択ミラーIMn(IM1~IM6)に投射される。各選択ミラーIMnは、入射したビームLBn(LB1~LB6)を-Z方向に反射することで、ビームLBn(LB1~LB6)をそれぞれ対応する描画ユニットUn(U1~U6)に導く。
各選択用光学素子OSnの構成、機能、作用などは互いに同一のものを用いるものとする。複数の選択用光学素子OSnの各々は、描画制御装置200(図3参照)からの駆動信号(超音波信号)のオン/オフにしたがって、入射したビームLBを回折させた回折光(ビームLBn)の発生をオン/オフする。例えば、選択用光学素子OS5は、駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフ状態のとき、入射した光源装置LSからのビームLBを偏向(回折)させずに透過する。したがって、選択用光学素子OS5を透過したビームLBは、反射ミラーM3に入射する。一方、選択用光学素子OS5がオン状態のとき、入射したビームLBを偏向(回折)させて選択ミラーIM5に向かわせる。つまり、この駆動信号のオン/オフによって選択用光学素子OS5によるスイッチング(ビーム選択)動作が制御される。このようにして、各選択用光学素子OSnのスイッチング動作により、光源装置LSからのビームLBをいずれか1つの描画ユニットUnに導くことができ、且つ、ビームLBnが入射する描画ユニットUnを切り換えることができる。このように、複数の選択用光学素子OSnを光源装置LSからのビームLBが順番に通るように直列(シリアル)に配置して、対応する描画ユニットUnに時分割でビームLBnを供給する構成については、国際公開第2015/166910号パンフレットに開示されている。
ビーム切換部を構成する選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々が一定時間だけオン状態となる順番は、例えば、OS1→OS2→OS3→OS4→OS5→OS6→OS1→・・・のように、予め定められている。この順番は、描画ユニットUn(U1~U6)の各々に設定されるスポット光による走査開始タイミングの順番によって定められる。すなわち、本実施の形態では、6つの描画ユニットU1~U6の各々に設けられるポリゴンミラーPMの回転速度の同期と共に、回転角度の位相も同期させることで、描画ユニットU1~U6のうちのいずれか1つにおけるポリゴンミラーの1つの反射面が、基板P上で1回のスポット走査を行うように、時分割に切り替えることができる。そのため、描画ユニットUnの各々のポリゴンミラーPMの回転角度の位相が所定の関係で同期した状態であれば、描画ユニットUnのスポット走査の順番はどの様なものであってもよい。図2の構成では、基板Pの搬送方向(回転ドラムDRの外周面が周方向に移動する方向)の上流側に3つの描画ユニットU1、U3、U5がY方向に並べて配置され、基板Pの搬送方向の下流側に3つの描画ユニットU2、U4、U6がY方向に並べて配置される。
この場合、基板Pへのパターン描画は、上流側の奇数番の描画ユニットU1、U3、U5から開始され、基板Pが一定長送られたら、下流側の偶数番の描画ユニットU2、U4、U6もパターン描画を開始することになるので、描画ユニットUnのスポット走査の順番を、U1→U3→U5→U2→U4→U6→U1→・・・に設定することができる。そのため、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々が一定時間だけオン状態となる順番は、OS1→OS3→OS5→OS2→OS4→OS6→OS1→・・・のように定められる。なお、描画すべきパターンがない描画ユニットUnに対応した選択用光学素子OSnがオン状態となる順番のときであっても、その選択用光学素子OSnのオン/オフの切り替え制御を描画データに基づいて行うことによって、その選択用光学素子OSnは強制的にオフ状態に維持されるので、その描画ユニットUnによるスポット走査は行われない。
図2に示すように、描画ユニットU1~U6の各々には、入射してきたビームLB1~LB6を主走査するためのポリゴンミラーPMが設けられる。本実施の形態では、各描画ユニットUnのポリゴンミラーPMの各々が、同一の回転速度で精密に回転しつつ、互いに一定の回転角度位相を保つように同期制御される。これによって、描画ユニットU1~U6の各々から基板Pに投射されるビームLB1~LB6の各々の主走査のタイミング(スポット光SPの主走査期間)を、互いに重複しないように設定することができる。したがって、ビーム切換部に設けられた選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々のオン/オフの切り替えを、6つのポリゴンミラーPMの各々の回転角度位置に同期して制御することで、光源装置LSからのビームLBを複数の描画ユニットUnの各々に時分割で振り分けた効率的な露光処理ができる。
6つのポリゴンミラーPMの各々の回転角度の位相合わせと、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々のオン/オフの切り替えタイミングとの同期制御については、国際公開第2015/166910号パンフレットに開示されているが、8面のポリゴンミラーPMの場合、走査効率として、1つの反射面分の回転角度(45度)のうちの1/3程度が、基板P上でのスポット光SPの1走査に対応するので、6つのポリゴンミラーPMを相対的に15度ずつ回転角度の位相をずらして回転させると共に、各ポリゴンミラーPMが8つの反射面を一面飛ばしでビームLBnを走査するように選択用光学素子OSn(OS1~OS6)の各々のオン/オフの切り替えが制御される。このように、ポリゴンミラーPMの反射面を1面飛ばしで使った描画方式についても、国際公開第2015/166910号パンフレットに開示されている。
図2に示すように、描画装置EXは、同一構成の複数の描画ユニットUn(U1~U6)を配列した、いわゆるマルチヘッド型の直描露光装置となっている。描画ユニットUnの各々は、回転ドラムDRの外周面(円周面)で支持されている基板PのY方向に区画された部分領域ごとにパターンを描画する。各描画ユニットUn(U1~U6)は、ビーム切換部からのビームLBnを基板P上(基板Pの被照射面上)に投射しつつ、基板P上でビームLBnを集光(収斂)する。これにより、基板P上に投射されるビームLBn(LB1~LB6)はスポット光となる。また、各描画ユニットUnのポリゴンミラーPMの回転によって、基板P上に投射されるビームLBn(LB1~LB6)のスポット光は主走査方向(Y方向)に走査される。このスポット光の走査によって、基板P上に、1ライン分のパターンの描画のための直線的な描画ライン(走査ライン)SLn(なお、n=1、2、・・・、6)が規定される。描画ラインSLnは、ビームLBnのスポット光の基板P上における走査軌跡でもある。
描画ユニットU1は、スポット光を描画ラインSL1に沿って走査し、同様に、描画ユニットU2~U6は、スポット光を描画ラインSL2~SL6に沿って走査する。図2に示すように、複数の描画ユニットUn(U1~U6)の描画ラインSLn(SL1~SL6)は、回転ドラムDRの中心軸AXoを含みYZ面と平行な中心面pccを挟んで、回転ドラムDRの周方向に2列に千鳥配列で配置される。奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5は、中心面pccに対して基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)の基板Pの被照射面上に位置し、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6は、中心面に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板Pの被照射面上に位置し、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。そのため、複数の描画ユニットUn(U1~U6)も、中心面pccを挟んで基板Pの搬送方向に2列に千鳥配列で配置され、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5と、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6とは、XZ平面内でみると、中心面pccに対して対称に設けられている。
X方向(基板Pの搬送方向、或いは副走査方向)に関しては、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5と偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6とが互いに離間しているが、Y方向(基板Pの幅方向、主走査方向)に関しては互いに分離することなく継ぎ合わされるように設定されている。描画ラインSL1~SL6は、基板Pの幅方向、つまり、回転ドラムDRの中心軸AXoと略並行となっている。なお、描画ラインSLnをY方向に継ぎ合わせるとは、Y方向に隣り合った描画ラインSLnの各々で描画されるパターンが基板P上でY方向に継ぎ合わされるように、描画ラインSLnの端部同士のY方向の位置を隣接または一部重複させるような関係にすることを意味する。描画ラインSLnの端部同士を重複させる場合は、例えば、各描画ラインSLnの長さに対して、描画開始点、または描画終了点を含んでY方向に数%以下の範囲で重複させるとよい。
このように、複数の描画ユニットUn(U1~U6)は、全部で基板P上の露光領域の幅方向の寸法をカバーするように、Y方向の走査領域(主走査範囲の区画)を分担している。例えば、1つの描画ユニットUnによるY方向の主走査範囲(描画ラインSLnの長さ)を30~60mm程度とすると、計6個の描画ユニットU1~U6をY方向に配置することによって、描画可能な露光領域(パターン形成領域)のY方向の幅を180~360mm程度まで広げられる。なお、各描画ラインSLn(SL1~SL6)の長さ(描画範囲の長さ)は、原則として同一とする。つまり、描画ラインSL1~SL6の各々に沿って走査されるビームLBnのスポット光の走査距離も、原則として同一とする。
本実施の形態の場合、光源装置LSからのビームLBが、数十ピコ秒以下(発振周波数Faの周期Tfに対して1/10以下)の発光時間のパルス光である為、主走査の間に描画ラインSLn上に投射されるスポット光は、ビームLBの発振周波数Fa(例えば、400MHz)に応じて離散的になる。そのため、ビームLBの1パルス光によって投射されるスポット光と次の1パルス光によって投射されるスポット光とを、主走査方向にオーバーラップさせる必要がある。そのオーバーラップの量は、スポット光の実効的なサイズφ、スポット光の走査速度(主走査の速度)Vs、および、ビームLBの発振周波数Faによって設定される。スポット光の実効的なサイズ(直径)φは、スポット光SPの強度分布がガウス分布で近似される場合、スポット光SPのピーク強度の1/e2(または半値全幅の1/2)の強度となる幅寸法で決まる。本実施の形態では、実効的なサイズ(寸法)φに対して、スポット光がφ×1/2程度でオーバーラップするように、スポット光の走査速度Vs(ポリゴンミラーPMの回転速度)および発振周波数Faが設定される。したがって、パルス状のスポット光の主走査方向に沿った投射間隔はφ/2となる。そのため、副走査方向(描画ラインSLnと交差した方向)に関しても、描画ラインSLnに沿ったスポット光の1回の走査と、次の走査との間で、基板Pがスポット光の実効的なサイズφの略1/2の距離だけ移動するように設定することが望ましい。さらに、Y方向に隣り合う描画ラインSLnを主走査方向に継ぐ場合も、φ/2だけオーバーラップさせることが望ましい。本実施の形態では、スポット光の基板P上での実効的なサイズ(寸法)φを、描画データ上で設定される1画素の寸法と同程度の2~4μmとする。
各描画ユニットUn(U1~U6)は、XZ平面内でみたとき、各ビームLBnが回転ドラムDRの中心軸AXoに向かって進むように設定される。これにより、各描画ユニットUn(U1~U6)から基板Pに向かって進むビームLBnの光路(ビーム主光線)は、XZ平面において、基板Pの被照射面の法線と平行となる。また、各描画ユニットUn(U1~U6)から描画ラインSLn(SL1~SL6)に照射されるビームLBnは、円筒面状に湾曲した基板Pの表面の描画ラインSLnでの接平面に対して、常に垂直となるように基板Pに向けて投射される。すなわち、スポット光の主走査方向に関して、基板Pに投射されるビームLBn(LB1~LB6)はテレセントリックな状態で走査される。
図2に示す描画ユニット(ビーム走査装置)Unは、同一構成となっていることから、図2中の描画ユニットU1についてのみ簡単に説明する。描画ユニットU1の詳細構成は後で図4を参照して説明する。描画ユニットU1は、反射ミラーM20~M24、ポリゴンミラーPM、および、fθレンズ系(描画用走査レンズ)FTを少なくとも備えている。なお、図2では図示していないが、ビームLB1の進行方向からみて、ポリゴンミラーPMの手前には第1シリンドリカルレンズCYa(図4参照)が配置され、fθレンズ系(f-θレンズ系)FTの後に第2シリンドリカルレンズCYb(図4参照)が設けられている。第1シリンドリカルレンズCYaと第2シリンドリカルレンズCYbにより、ポリゴンミラーPMの各反射面RPの倒れ誤差によるスポット光(描画ラインSL1)の副走査方向への位置変動が補正される。
選択ミラーIM1で-Z方向に反射されたビームLB1は、描画ユニットU1内に設けられる反射ミラーM20に入射し、反射ミラーM20で反射したビームLB1は、-X方向に進んで反射ミラーM21に入射する。反射ミラーM21で-Z方向に反射したビームLB1は、反射ミラーM22に入射し、反射ミラーM22で反射したビームLB1は、+X方向に進んで反射ミラーM23に入射する。反射ミラーM23は、入射したビームLB1がポリゴンミラーPMの反射面RPに向かうように、XY平面と平行な面内でビームLB1を折り曲げる。
ポリゴンミラーPMは、入射したビームLB1を、fθレンズ系FTに向けて+X方向側に反射する。ポリゴンミラーPMは、ビームLB1のスポット光を基板Pの被照射面上で走査するために、入射したビームLB1をXY平面と平行な面内で1次元に偏向(反射)する。具体的には、ポリゴンミラー(回転多面鏡、走査部材)PMは、Z軸方向に延びる回転軸AXpと、回転軸AXpの周りに回転軸AXpと平行に形成された複数の反射面RP(本実施の形態では反射面RPの数Npを8とする)とを有する回転多面鏡である。回転軸AXpを中心にこのポリゴンミラーPMを所定の回転方向に回転させることで反射面に照射されるパルス状のビームLB1の反射角を連続的に変化させることができる。これにより、1つの反射面RPによってビームLB1が偏向され、基板Pの被照射面上に照射されるビームLB1のスポット光を主走査方向(基板Pの幅方向、Y方向)に沿って走査することができる。このため、ポリゴンミラーPMの1回転で、基板Pの被照射面上の描画ラインSL1に沿ったスポット光の走査回数は、最大で反射面RPの数と同じ8回となる。ポリゴンミラーPMの反射面を1面飛ばしで使った場合は、ポリゴンミラーPMの1回転で基板Pの被照射面上にスポット光が走査される回数は4回になる。
fθレンズ系(走査系レンズ、走査用光学系)FTは、ポリゴンミラーPMによって反射されたビームLB1を、反射ミラーM24に投射するテレセントリック系のスキャンレンズである。fθレンズ系FTを透過したビームLB1は、反射ミラーM24(及び、図4で説明する第2シリンドリカルレンズCYb)を介してスポット光となって基板P上に集光される。このとき、反射ミラーM24は、XZ平面に関して、ビームLB1が回転ドラムDRの中心軸AXoに向かって進むように、ビームLB1を基板Pに向けて反射する。ビームLB1のfθレンズ系FTへの入射角θ(fθレンズ系FTの光軸からの偏角)は、ポリゴンミラーPMの回転角(θ/2)に応じて変わる。fθレンズ系FTは、反射ミラーM24を介して、その入射角θに比例した基板Pの被照射面上の像高位置にビームLB1を投射する。fθレンズ系FTの焦点距離をfoとし、像高位置をyoとすると、fθレンズ系FTは、yo=fo×θ、の関係(歪曲収差)を満たすように設計されている。したがって、このfθレンズ系FTによって、ビームLB1をY方向に正確に等速で走査することが可能になる。なお、fθレンズ系FTに入射するビームLB1がポリゴンミラーPMによって1次元に偏向される面(XY面と平行)は、fθレンズ系FTの光軸を含む面となる。
〔回転ドラムDRの制御系とアライメント系〕
図3は、図2に示した回転ドラムDRの回転角度位置を計測するエンコーダ計測系と、基板Pに形成されたアライメント用のマークパターンの位置を検出するマーク検出系(アライメント系)との概略的な構成を示す。図3において、回転ドラムDRには中心軸AXoと同軸にY方向に延びたシャフトSftが設けられ、このシャフトSftはモータ30の回転軸と同軸に結合されている。回転ドラムDRのY方向の端部側にはシャフトSft(中心軸AXo)と同軸に、円盤状または円環状のスケール部材ESDが固定され、回転ドラムDRと共にXZ面内で回転する。スケール部材ESDの中心軸AXoと平行な外周面には、その周方向に沿って一定ピッチ(例えば20μm程度)で格子状の目盛が刻設されている。図3では、スケール部材ESDの直径を回転ドラムDRの外周面の直径よりも小さく示したが、スケール部材ESDの中心軸AXoからの半径は、回転ドラムの外周面の半径に対して±5%程度の範囲内で揃えておくのが良い。なお、図3においても、中心軸AXoを含むYZ面と平行な面が中心面pccである。
図3のように、回転ドラムDRをXZ面内で見た場合(Y方向から見た場合)、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の各々から投射されるビームLB1、LB3、LB5は、中心面pccに対して角度-θuだけ傾くように設定され、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6の各々から投射されるビームLB2、LB4、LB6は、中心面pccに対して角度+θuだけ傾くように設定される。角度θuは10°~20°程度に設定される。回転ドラムDRに巻き付けられて搬送される基板Pの進行方向に関して奇数番のビームLB1(LB3、LB5)の上流側には、基板Pに形成された十字状のアライメントマーク(或いは回転ドラムDRの外周面に形成された基準マーク)の位置を検出する為のアライメント系AMSが設けられる。アライメント系AMSの対物レンズOBLは基板P上で200~500μm角程度の検出視野(検出領域)を有し、アライメント系AMSは検出領域内に現れるマークの像を高速シャッタースピードで撮像するCCD又はCMOSによる撮像素子を備える。撮像素子で撮像(キャプチャー)されたマークの像を含む画像信号は、アライメント計測系500によって画像解析され、撮像されたマーク像の中心位置と検出領域内の基準位置(中心点)との相対的な2次元(主走査方向と副走査方向)の位置ずれ量に関する情報が生成される。なお、対物レンズOBLの光軸の延長線は、所定の誤差範囲内で回転ドラムDRの中心軸AXoと交差するように配置される。
さらに、スケール部材ESDの周囲には、その外周面と対向するように、目盛の移動を読み取るための3つのエンコーダヘッド(読取ヘッド、検出ヘッド)EH1、EH2、EH3が設けられる。XZ面内において、エンコーダヘッドEH1は中心軸AXoから見たとき対物レンズOBLの検出領域と同じ方位となるように設定され、エンコーダヘッドEH2は中心軸AXoから見たとき奇数番のビームLB1(LB3、LB5)の投射位置(描画ラインSL1、SL3、SL5)と同じ方位となるように設定され、エンコーダヘッドEH3は中心軸AXoから見たとき偶数番のビームLB2(LB4、LB6)の投射位置(描画ラインSL2、SL4、SL6)と同じ方位となるように設定される。エンコーダヘッドEH1、EH2、EH3の各々は、スケール部材ESDの目盛の周方向の移動に応じて周期的にレベル変化すると共に90度の位相差を有する2相信号をカウンタ回路部502に出力する。カウンタ回路部502は、エンコーダヘッドEH1からの2相信号に基づいて、目盛の移動量(位置変化)をサブミクロン(例えば0.2μm)の分解能でデジタル計数した計測値CV1をアライメント計測系500に出力する。アライメント計測系500は、アライメント系AMSの撮像素子が検出領域内でマークの像を画像キャプチャーした瞬間の計測値CV1をラッチして記憶すると共に、画像解析によって求められるマーク像の相対的な位置ずれ量とラッチした計測値CV1とに基づいて、基板P上のマークの位置を回転ドラムDRの回転角度位置(計測値CV1の値)としてサブミクロンの精度で対応付けて算出した位置情報Damを描画制御装置200に出力する。
同様に、カウンタ回路部502は、エンコーダヘッドEH2とEH3の各々からの2相信号に基づいて、目盛の移動量(位置変化)をサブミクロン(例えば0.2μm)の分解能でデジタル計数した計測値CV2、CV3を描画制御装置200に出力する。描画制御装置200は、計測値CV2に基づいて、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5による副走査方向の描画位置(タイミング)を制御し、計測値CV3に基づいて、偶数番の描画ユニットU2、U4、U6による副走査方向の描画位置(タイミング)を制御する。さらに、カウンタ回路部502で計数される計測値CV1~CV3のうちの少なくとも1つ、又は少なくとも2つの平均値に基づいて、モータ30の回転速度を精密にサーボ制御する駆動回路部504が設けられる。なお、カウンタ回路部502内には、エンコーダ計測システムにおける固有の誤差(スケール部材ESDの偏心誤差、真円度誤差、目盛のピッチ誤差等)をスケール部材ESDの一周に渡って事前に計測して補正する為の補正マップが記憶されており、計測値CV1、CV2、CV3は、その補正マップでリアルタイムに補正された状態で、アライメント計測系500や描画制御装置200に出力される。
〔描画ユニットUn内の光学構成〕
次に、図4を参照して描画ユニットUn(U1~U6)の光学的な構成について説明するが、ここでも代表して描画ユニットU1の構成を説明する。図4に示すように、描画ユニットU1内には、ビームLB1の入射位置から被照射面(基板P)までのビームLB1の進行方向に沿って、反射ミラーM20、反射ミラーM20a、偏光ビームスプリッタBS1、反射ミラーM21、反射ミラーM22、第1のシリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM23、ポリゴンミラーPM、fθレンズ系FT、反射ミラーM24、第2のシリンドリカルレンズCYbが一体となるようにユニットフレーム内に設けられる。ユニットフレームは装置本体から単独に取り外せるように構成される。さらに描画ユニットU1内には、反射ミラーM20で-X方向に反射されて反射ミラーM20aに向かうビームLB1の光路中に、2つのレンズBe1、Be2によるビームエキスパンダ系BEが設けられる。このビームエキスパンダ系BEは、入射してくるビームLB1(直径が1mm以下)の断面の直径を数mm(一例としては8mm)程度に拡大した平行光束に変換する。ビームエキスパンダ系BEで拡大されたビームLB1は、反射ミラーM20aで-Y方向に反射された後、偏光ビームスプリッタBS1に入射する。ビームLB1は、偏光ビームスプリッタBS1で-X方向に効率的に反射されるような直線偏光に設定されている。
偏光ビームスプリッタBS1で反射されたビームLB1は、反射ミラーM21と反射ミラーM22との間に配置された円形開口を有する絞りFAPによって、ビームLB1の強度プロファイル上の周辺部(例えば裾野の1/e2以下の強度部分)がカットされる。反射ミラーM22で+X方向に反射されたビームLB1は、1/4波長板QWによって円偏光に変換された後、第1のシリンドリカルレンズCYaに入射する。さらに、描画ユニットU1内には、描画ユニットU1の描画開始可能タイミング(スポット光の走査開始タイミング)を検出するために、ポリゴンミラーPMの各反射面RPの角度位置を検知する原点センサ(原点検出器)としてのビーム送光系60aとビーム受光系60bとが設けられる。また、描画ユニットU1内には、基板Pの被照射面(または回転ドラムDRの表面)で反射したビームLB1の反射光を、fθレンズ系FT、ポリゴンミラーPM、および、偏光ビームスプリッタBS1等を介して検出するためのレンズ系G10と光検出器(光電センサ)DToが設けられる。
描画ユニットU1に入射するビームLB1は、Z軸と平行な軸線AX1に沿って-Z方向に進み、XY平面に対して45°傾いた反射ミラーM20に入射する。反射ミラーM20で反射したビームLB1は、反射ミラーM20からビームエキスパンダ系BEを通って-X方向に離れた反射ミラーM20aに向けて進む。反射ミラーM20aは、YZ平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLBnを偏光ビームスプリッタBS1に向けて-Y方向に反射する。偏光ビームスプリッタBS1の偏光分離面はYZ平面に対して45°傾いて配置され、P偏光のビームを反射し、P偏光と直交する方向に偏光した直線偏光(S偏光)のビームを透過する。描画ユニットU1に入射するビームLB1をP偏光のビームとすると、偏光ビームスプリッタBS1は、反射ミラーM20aからのビームLB1を-X方向に反射して反射ミラーM21側に導く。反射ミラーM21はXY平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を反射ミラーM21から絞りFAPを介して-Z方向に離れた反射ミラーM22に向けて-Z方向に反射する。反射ミラーM22は、XY平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を反射ミラーM23に向けて+X方向に反射する。反射ミラーM22で反射したビームLB1は、λ/4波長板QWと第1のシリンドリカルレンズCYaを介して反射ミラーM23に入射する。反射ミラーM23は、入射したビームLB1をポリゴンミラーPMに向けて反射する。
ポリゴンミラーPMは、入射したビームLB1をX軸と平行な光軸AXfを有するfθレンズ系FTに向けて+X方向側に反射する。ポリゴンミラーPMは、ビームLB1のスポット光SPを基板Pの被照射面上で走査するために、入射したビームLB1をXY平面と平行な面内で1次元に偏向(反射)する。ポリゴンミラーPMは、Z軸方向に延びる回転軸AXpの周りに形成された複数の反射面(本実施の形態では正八角形の各辺)を有し、回転軸AXpと同軸の回転モータRMによって回転される。回転モータRMは、描画制御装置200(図3)に設けられるポリゴン回転制御部によって、一定の回転速度(例えば、3万~4万rpm程度)で回転する。先に説明したように、描画ラインSLn(SL1~SL6)の実効的な長さ(例えば、50mm)は、このポリゴンミラーPMによってスポット光SPを走査することができる最大走査長(例えば、52mm)以下の長さに設定されており、初期設定(設計上)では、最大走査長の中央に描画ラインSLnの中心点(fθレンズ系FTの光軸AXfが通る点)が設定されている。
第1のシリンドリカルレンズCYaは、ポリゴンミラーPMによる主走査方向(回転方向)と直交する副走査方向(Z方向)に関して、入射したビームLB1をポリゴンミラーPMの反射面上に収斂する。つまり、シリンドリカルレンズCYaは、ビームLB1をポリゴンミラーPMの反射面上でXY平面と平行な方向に延びたスリット状(長楕円状)に収斂する。母線がY方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYaと、後述のシリンドリカルレンズCYbとによって、ポリゴンミラーPMの反射面がZ軸(回転軸AXp)と平行な状態から傾いた場合であっても、基板Pの被照射面上に照射されるビームLB1(描画ラインSL1)の照射位置が副走査方向にずれることを抑制できる。
ビームLBnのfθレンズ系FTへの入射角θ(光軸AXfに対する角度)は、ポリゴンミラーPMの回転角(θ/2)に応じて変わる。ビームLBnのfθレンズ系FTへの入射角θが0度のとき、fθレンズ系FTに入射したビームLBnは、光軸AXf上に沿って進む。fθレンズ系FTからのビームLBnは、反射ミラーM24で-Z方向に反射され、シリンドリカルレンズCYbを介して基板Pに向けて投射される。fθレンズ系FTおよび母線がY方向と平行なシリンドリカルレンズCYb、さらにはビームエキスパンダ系BEの作用によって、基板P上に投射されるビームLB1は基板Pの被照射面上で直径数μm程度(例えば、2~3μm)の微小なスポット光SPに収斂される。以上のように、描画ユニットU1に入射したビームLB1は、XZ平面内でみたとき、反射ミラーM20から基板Pまでコの字状にクランクした光路に沿って折り曲げられ、-Z方向に進んで基板Pに投射される。
図4に示した軸線AX1は、反射ミラーM20に入射するビームLB1の中心線を延長したものであるが、この軸線AX1は、反射ミラーM24で-Z方向に折り曲げられたfθレンズ系FTの光軸AXfと同軸になるように配置される。このように配置することによって、描画ユニットU1の全体(反射ミラーM20~第2のシリンドリカルレンズCYb)を軸線AX1の回りに微少回転させることができ、描画ラインSL1のXY面内での微小な傾きを高精度に調整することができる。以上の描画ユニットU1の構成は、他の描画ユニットU2~U6の各々についても同じに構成される。これによって、6つの描画ユニットU1~U6の各々がビームLB1~LB6の各スポット光SPを主走査方向(Y方向)に一次元に走査しつつ、基板Pを長尺方向に搬送することによって、基板Pの被照射面がスポット光SPによって相対的に2次元走査され、基板P上には描画ラインSL1~SL6の各々で描画されるパターンがY方向に継ぎ合わされた状態で露光される。
一例として、描画ラインSLn(SL1~SL6)の実効的な走査長LTを50mm、スポット光SPの実効的な直径φを4μm、光源装置LSからのビームLBのパルス発光の発振周波数Faを400MHzとし、描画ラインSLn(主走査方向)に沿ってスポット光SPが直径φの1/2ずつオーバーラップするようにパルス発光させる場合、スポット光SPのパルス発光の主走査方向の間隔は基板P上で2μmとなり、これは発振周波数Faの周期Tf(=1/Fa)である2.5nS(1/400MHz)に対応する。また、この場合、描画データ上で規定される画素サイズPxyは、基板P上で4μm角に設定され、1画素は主走査方向と副走査方向の各々に関してスポット光SPの2パルス分で露光される。したがって、スポット光SPの主走査方向の走査速度Vspと発振周波数Faは、Vsp=(φ/2)/Tf=(φ/2)・Faの関係になるように設定される。一方、走査速度Vspは、ポリゴンミラーPMの回転速度VR(rpm)と、実効的な走査長LTと、ポリゴンミラーPMの反射面の数Np(=8)と、ポリゴンミラーPMの1つの反射面RPによる走査効率1/αとに基づいて、以下のように定められる。
Vsp=(8・α・VR・LT)/60〔mm/秒〕 ・・・ 式1
したがって、発振周波数Fa(周期Tf)と回転速度VR(rpm)とは、以下の関係になるように設定される。
(φ/2)/Tf=(8・α・VR・LT)/60 ・・・ 式2
以上のことから、発振周波数Faを400MHz(Tf=2.5nS)、スポット光SPの直径φを4μmとしたとき、発振周波数Faから規定される走査速度Vspは、0.8μm/nS(=2μm/2.5nS)となる。この走査速度Vspに対応させるためには、走査効率1/αを0.3(α≒3.33)、走査長LTを50mmとしたとき、式2の関係から、8面のポリゴンミラーPMの回転速度VRを36000rpmに設定すればよい。なお、この場合の走査速度Vsp(0.8μm/nS)は、時速に換算すると2880Km/hである。また、本実施の形態では、ビームLBnの2パルス分を主走査方向と副走査方向の各々に関して、スポット光SPの直径φの1/2だけオーバーラップさせて1画素とするが、露光量(DOSE量)を高める為に、スポット光SPの直径φの2/3だけオーバーラップさせた3パルス分、又はスポット光SPの直径φの3/4だけオーバーラップさせた4パルス分を1画素とするように設定しても良い。従って、1画素当りのスポット光SPのパルス数をNspとすると、先の式2の関係式は、一般化して以下の式3のように表せる。
(φ/Nsp)/Tf=(Np・α・VR・LT)/60 ・・・ 式3
この式3の関係を満たす為に容易に調整できるパラメータは、光源装置LSの発振周波数Fa(周期Tf)とポリゴンミラーPMの回転速度VRである。
ところで、図4に示す原点センサを構成するビーム受光系60bは、ポリゴンミラーPMの反射面RPの回転角度位置が、反射面RPによる描画用のビームLBnのスポット光SPの走査が開始可能とされる直前の所定位置(規定角度位置、原点角度位置)にきた瞬間に波形変化する原点信号(同期信号、タイミング信号とも呼ばれる)SZnを発生する。ポリゴンミラーPMは、8つの反射面RPを有するので、ビーム受光系60bは、ポリゴンミラーPMの1回転中に8回の原点信号SZn(8回の波形変化)を出力することになる。原点信号SZnは、描画制御装置200に送られ、原点信号SZnが発生してから、所定の遅延時間だけ経過した後にスポット光SPの描画ラインSLnに沿った描画が開始される。
〔ビーム切換部内のリレー光学系〕
図5は、選択用光学素子OSn(OS1~OS6)および選択ミラーIMn(IM1~IM6)回りの具体的な構成を示す図であるが、ここでは説明を簡単にする為、図2中に示したビーム切換部のうちで、光源装置LSからのビームLBを最後に入射する選択用光学素子OS2と、その1つ手前の選択用光学素子OS1との回りの構成を代表して示す。選択用光学素子OS1には、光源装置LSから射出されるビームLBが、例えば直径1mm以下の微小な径(第1の径)の平行光束としてブラッグ回折の条件を満たすように入射する。高周波信号(超音波信号)である駆動信号DF1が入力されていない期間(駆動信号DF1がオフ)では、入射したビームLBが選択用光学素子OS1で回折されずにそのまま透過する。透過したビームLBは、その光路上に光軸AXaに沿って設けられた集光レンズGaおよびコリメートレンズGbを透過して、後段の選択用光学素子OS2に入射する。このとき選択用光学素子OS1を通って集光レンズGaおよびコリメートレンズGbを通過するビームLBは、光軸AXaと同軸になっている。集光レンズGaは、選択用光学素子OS1を透過したビームLB(平行光束)を、集光レンズGaとコリメートレンズGbとの間に位置する面Psの位置でビームウェストとなるように集光する。コリメートレンズGbは、面Psの位置から発散するビームLBを平行光束にする。コリメートレンズGbによって平行光束にされたビームLBの径は第1の径となる。なお、集光レンズGaやコリメートレンズGbは、以降、単にレンズ(レンズ部材)Ga、Gb又はレンズ(レンズ部材)Ga、Gbと呼称することがあるが、単レンズであっても2枚以上のレンズの貼合せレンズであっても良い。
ここで、集光レンズGaの後側焦点位置とコリメートレンズGbの前側焦点位置とは、所定の許容範囲内で面Psと一致しており、集光レンズGaの前側焦点位置は選択用光学素子OS1内の回折点と所定の許容範囲内で一致するように配置され、コリメートレンズGbの後側焦点位置は選択用光学素子OS2内の回折点と所定の許容範囲内で一致するように配置される。従って、集光レンズGaとコリメートレンズGbは、選択用光学素子OS1内の回折点(ビームの偏向領域)と選択用光学素子OS2内の回折点(ビームの偏向領域)とを、光学的に共役な関係にする等倍のレリー光学系(倒立結像系)として機能する。そのため、面Psの位置にはレリー光学系(レンズGa、Gb)の瞳面が形成される。
一方、駆動信号DF1が選択用光学素子OS1に印加されるオン状態の期間では、ブラッグ回折の条件で入射したビームLBは選択用光学素子OS1によって回折されたビームLB1(1次回折光、主回折ビーム)と、回折されなかった0次のビームLB1zとに分かれる。ブラッグ回折の条件を満たすようにビームLBの選択用光学素子OS1への入射角度を設定すると、0次のビームLB1zに対して、回折角が例えば正方向の+1次回折ビームLB1のみが強く発生し、負方向の-1次回折ビーム(LB1’)や、他の2次回折ビーム等は理論上ではほとんど発生しない。その為、ブラッグ回折の条件を満たす場合、入射するビームLBの強度を100%とし、選択用光学素子OS1の透過率による低下を無視したとき、回折されたビームLB1の強度は最大で70~80%程度であり、残りの30~20%程度が0次のビームLB1zの強度となる。0次のビームLB1zは、集光レンズGaとコリメートレンズGbによるリレー光学系を通り、さらに後段の選択用光学素子OS2を透過して吸収体TRで吸収される。高周波の駆動信号DF1の周波数に応じた回折角で-Z方向に偏向されたビームLB1(平行光束)は、集光レンズGaを透過して、面Ps上に設けられた選択ミラーIM1に向かう。集光レンズGaの前側焦点位置が選択用光学素子OS1内の回折点と光学的に共役であるので、集光レンズGaから選択ミラーIM1に向かうビームLB1は、光軸AXaから偏心した位置を光軸AXaと平行に進み、面Psの位置でビームウェストとなるように集光(収斂)される。そのビームウェストの位置は、描画ユニットU1を介して基板P上に投射されるスポット光SPと光学的に共役になるように設定されている。
選択ミラーIM1の反射面を面Psの位置又はその近傍を配置することによって、選択用光学素子OS1で偏向(回折)されたビームLB1は、選択ミラーIM1で-Z方向に反射され、コリメートレンズ(レンズ、レンズ部材)Gcを介して軸線AX1(先の図4参照)に沿って描画ユニットU1に入射する。コリメートレンズGcは、集光レンズGaによって収斂/発散されたビームLB1を、コリメートレンズGcの光軸(軸線AX1)と同軸の平行光束にする。コリメートレンズGcによって平行光束にされたビームLB1の径は第1の径とほぼ同じになる。集光レンズGaの後側焦点とコリメートレンズGcの前側焦点とは、所定の許容範囲内で、選択ミラーIM1の反射面またはその近傍に配置される。
以上のように、集光レンズGaの前側焦点位置と選択用光学素子OS1内の回折点とを光学的に共役し、集光レンズGaの後側焦点位置である面Psに選択ミラーIM1を配置すると、選択用光学素子OS1で回折されたビームLB1(主回折ビーム)がビームウェストとなる位置で、確実に選択(スイッチング)することができる。他の選択用光学素子OS3~OS6の間、すなわち、選択用光学素子OS5とOS6の間、選択用光学素子OS6とOS3の間、選択用光学素子OS3とOS4の間、及び選択用光学素子OS4とOS1の間においても、同様の集光レンズGaとコリメートレンズGbとで構成される等倍のリレー光学系(倒立結像系)が設けられる。
しかしながら、選択用光学素子OS1が理想的なブラッグ回折の条件から外れた状態で動作すると、理論上は発生しない-1次回折ビームLB1’が漏れ光として発生する。-1次回折ビームLB1’(平行光束)は、選択用光学素子OS1において0次のビームLB1zに関して主回折ビームLB1と対称的な回折角(偏向角)で発生して集光レンズGaに入射し、面Psでビームウェストとなって収斂する。面Ps上で、-1次回折ビームLB1’の集光点は、0次のビームLB1zの集光点を挟んで主回折ビームLB1の集光点と対称に位置する。選択ミラーIM1は主回折ビームLB1のみを反射するので、他の0次のビームLB1zと-1次回折ビームLB1’は、そのままコリメートレンズGbに入射し、オフ状態となっている後段の選択用光学素子OS2に入射することになる。-1次回折ビームLB1’は選択用光学素子OS2をそのまま透過することになるが、その際の入射角度(出射角度)は選択用光学素子OS2がオン状態になったときの回折角(偏向角)と等しくなっている。そのため、選択用光学素子OS2をそのまま透過した-1次回折ビームLB1’(漏れ光、迷光)は、選択用光学素子OS2の後段の集光レンズGaで収斂されて、後段の選択ミラーIM2で反射されて、描画ユニットU2に入射することになる。
従って、選択用光学素子OS1がオン状態となって描画ユニットU1がスポット光SPの走査によってパターン描画するとき、同じ描画データで強度変調された-1次回折ビームLB1’(副回折ビーム)が同時に描画ユニットU2に入射することになる。このとき、描画ユニットU2のポリゴンミラーPMの反射面の1つが、入射してきたノイズ光としての-1次回折ビームLB1’(副回折ビーム)をfθレンズ系FTに向けて反射させる角度範囲になっていた場合、描画ラインSL2上に本来のパターンと異なるパターン(ノイズパターン)を描画するようにスポット光SPが走査されることになる。-1次回折ビームLB1’の強度(光量)は、描画ユニットU2で走査される本来のビームLB2(+1次回折ビーム)の強度に対して低いものの、シート基板P上の感光層に対して余分の露光量が与えられる状態、すなわち、ノイズパターンによる被り露光状態になり、最終的にシート基板P上に描画されるパターンの品質が大きく悪化する。また、描画ユニットU1がパターン描画する期間中に、描画ユニットU2に入射してくるノイズ光(-1次回折ビームLB1’)が、描画ユニットU2のfθレンズ系FTに入射しないようなポリゴンミラーPMの反射面の角度範囲であったとしても、ポリゴンミラーPMの反射面で反射されたノイズ光は、描画ユニットU2内の他の部材やfθレンズ系FTの鏡筒(金物)等に照射され得るので、そこから発生する散乱光等が迷光となってfθレンズ系FTに入射することもある。そこで、本実施の形態では、図5に示すように、選択用光学素子OS1で発生した-1次回折ビームLB1’(ノイズ光となる副回折ビーム)の後段の選択用光学素子OS2への入射を阻止する為に、阻止光学部材としての反射ミラーIM1’を面Psの位置に配置する。
反射ミラーIM1’は、選択ミラーIM1と同じものを光軸AXa(0次のビームLB1zビーム)の周りに180°回転させて配置される。反射ミラーIM1’は、面Psの位置でビームウェストとなった-1次回折ビームLB1’を後段の選択用光学素子OS2に入射させないように遮蔽するものであり、ノイズパターンによる被り露光を防止する為には、阻止光学部材として単なる遮光部材(ナイフエッジ)であっても良い。また、遮光部材(遮光板)は、-1次回折ビームLB1’を完全に遮光しなくても、実質的な影響が無い程度、例えば1/100~1/1000程度に-1次回折ビームLB1’の強度を減衰させるものであっても良い。本実施の形態では、反射ミラーIM1’を設けて、リレー光学系(レンズGa、Gb)の光路から-1次回折ビームLB1’(ノイズ光)のみを遮光(遮断)させるだけでなく、分岐させて光電センサDT1に向けて反射させ、-1次回折ビームLB1’(ノイズ光)を光電検出する構成にする。光電センサDT1から出力される光電信号Sm1は、-1次回折ビームLB1’(ノイズ光)の強度変化に対応するので、選択用光学素子OS1の変動(回折効率の変動等)をモニターできる。他の選択用光学素子OS5と選択用光学素子OS6の間のリレー光学系(Ga、Gb)中、選択用光学素子OS6と選択用光学素子OS3の間のリレー光学系(Ga、Gb)中、選択用光学素子OS3と選択用光学素子OS4の間のリレー光学系(Ga、Gb)中、選択用光学素子OS4と選択用光学素子OS1の間のリレー光学系(Ga、Gb)中、及び選択用光学素子OS2の後の位置(瞳面)の各々にも、同様に反射ミラーIM5’、IM6’、IM3’、IM4’、IM2’と、光電センサDT5、DT6、DT3、DT4、DT2とが設けられる。なお、以下の説明では、選択用光学素子OS1~OS6からノイズ光として発生する-1次回折ビームLB1’~LB6’を総称してLBn’、反射ミラーIM1’~IM6’(第2の偏向部材)を総称してIMn’、光電センサDT1~DT6を総称してDTn、そして光電センサDTnの各からの光電信号Sm1~Sm6を総称してSmnとする。
次に図6、図7を参照して、選択用光学素子OSnの回折動作について説明する。図6に示すように、選択用光学素子OSnは、入射するビームLBを回折する為の結晶体(或いは石英)AOGと、結晶体AOGの一辺に接着されて、RF電力(駆動信号DFn)によって結晶体AOG内に周期的な屈折率分布(透過型の位相回折格子)を生成させる為の超音波振動子VDとで構成される。ここで、入射するビームLBの軸線、主回折ビームLBnの軸線、及び、ノイズ光としての-1次回折ビームLBn’の軸線を含む平面内に含まれ、且つ結晶体AOG内に生成される回折格子の周期方向と直交する軸線をLgaとする。入射するビームLBの軸線と軸線Lgaとの成す角度θBを、結晶体AOGの屈折率、ビームLBの波長、振動周波数等によって決まる特定の角度にすると、ブラッグ回折の状態になって、結晶体AOGからは1つの主回折ビームLBnのみが発生する。ブラッグ回折の条件となる角度θBのことをブラッグ角とも呼ぶ。そのため、結晶体AOGは、入射面Pinと射出面Poutとが互いに平行になると共に、軸線Lgaと垂直ではなくブラッグ角θBで入射するビームLBと垂直になるように形成される。これにより、選択用光学素子OSnを透過するビームLB、又は0次のビームLBnzは、結晶体AOGによって横シフトされることなく直進する。しかしながら、結晶体AOGの温度変化、RF電力(駆動信号DFn)の周波数変化、入射するビームLBのブラッグ角θBからの僅かな角度変化、環境温度や気圧の変化等の影響により、理想的なブラッグ回折の条件から外れてくると、ノイズ光としての-1次回折ビームLBn’(副回折ビーム)が発生する。-1次回折ビームLBn’は、0次のビームLBnzに対する主回折ビームLBnの回折角+Δθdと対称な回折角-Δθdで発生する。
図7は、選択用光学素子OSn(結晶体AOG)から射出する回折光(0次光も含む)の強度配分の一例を示すグラフであり、縦軸は入射したビームLBを1(100%)としたときに射出する0次のビームLBnz、+1次回折ビーム(主回折ビーム)LBn、-1次回折ビームLBn’の強度の比率を表す。なお、ここでは2次以上の回折ビームは発生しないものとする。選択用光学素子OSnにRF電力が印加されていないオフ状態のとき、+1次回折ビームLBnと-1次回折ビームLBn’は発生せず、0次のビームLBnzのみが高い比率、例えば入射したビームLBの強度に対して、選択用光学素子OSn(結晶体AOG)の透過率ηを掛けた比率(例えば約98%)で発生する。選択用光学素子OSnにRF電力が印加されたオン状態のときは、RF電力の大きさ(駆動信号DFnの振幅)に応じた効率βで、+1次回折ビームLBnが発生する。結晶体AOGの物性によっても異なるが、効率βは最大で80%程度であり、透過率ηを考慮する+1次回折ビームLBnの強度はビームLBの強度に対して最大で約78%になる。従って、オン状態の時に回折されなかった0次の回折ビームLBnzの強度は、残りの約20%になる。しかしながら、ノイズ光としての-1次回折ビームLBn’が発生すると、それに伴って、+1次回折ビームLBnと0次の回折ビームLBnzの各強度の比率は理想的な状態(カタログ値)から低下する。
本実施の形態では、阻止光学部材(反射ミラーIM1’)によってノイズ光として発生する-1次回折ビームLBn’(副回折ビーム)の後段の描画ユニットUnへの伝搬を阻止(遮光)しつつ、-1次回折ビームLBn’の強度を図5で示した光電センサDTnで検出することによって、選択用光学素子OSnの回折効率βの変動をモニターし、最終的にシート基板Pに投射されるビームLBn(+1次回折ビーム)の強度変動が特定できる。そのため、基板Pに描画されるパターンの適正露光量からの誤差を推定して補正することができる。
〔描画制御系〕
次に、本実施の形態の描画ユニットU1~U6の各々によるパターン描画の制御、及びスポット光SPの強度や露光量を調整する為の制御を行う描画制御系の概略構成を、図8を用いて説明する。図8は、図2に示した光源装置LSからのビームLBを描画ユニットU1~U6の各々に選択的に供給するビーム切換部(選択用光学素子OS1~OS6、反射ミラーM1~M12、選択ミラーIM1~IM6、レリー光学系等を含む)の模式的な配置を示すと共に、光源装置LS、描画制御装置(描画制御部)200、及び光量計測部202の接続関係を示す。描画制御装置(描画制御部)200は、図4に示した描画ユニットU1~U6の各々のビーム受光系60bからの原点信号SZ1~SZ6を入力して、各描画ユニットUnのパターン描画のタイミングを決定すると共に、選択用光学素子OS1~OS6の各々に振幅調整(電力調整)された駆動信号DF1~DF6を出力する。図2で説明したように、光源装置LSからのビームLBは、反射ミラーM1、M2で反射されて、選択用光学素子OS5、OS6、OS3、OS4、OS1、OS2を順に通った後、図2に示した吸収体TRに入射するが、図8では、光路中の反射ミラーM1、M7、M8のみを示し、選択用光学素子OS2と吸収体TRとの間に反射ミラーM13を設ける。反射ミラーM13は、選択用光学素子OS2を通って選択ミラーIM2で反射されなかった0次回折ビームを吸収体TRに向けて反射する。ビーム切換部に含まれる反射ミラーM1~M13や選択ミラーIM1~IM6は、描画ユニットUn内の反射ミラーM20~M24と同様のレーザミラーであり、ビームLBの波長355nmにおいて僅かながら透過率(例えば1%以下)を有している。
図8に示すように、反射ミラーM1の裏面側には、光源装置LSから射出したビームLBの強度(光量)を検出する光電センサDTaが設けられ、反射ミラーM13の裏面側には、全ての選択用光学素子OS1~OS6がオフ状態のときに透過してくるビームLB自体、またはオン状態の選択用光学素子OSnで回折されなかったビームLBの0次回折ビームLBnzを検出する光電センサDTbが設けられる。光電センサDTa、DTbは、PINフォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード(APD)、金属-半導体-金属(MSM)フォトダイオードのいずれかで構成される。光電センサDTaから出力される光電信号Saは、光源装置LSから射出されるビームLBの元の強度(光量)をモニターする為に光量計測部202に送られ、光電センサDTbから出力される光電信号Sbは、6つの選択用光学素子OS1~OS6の透過率の変動や回折効率の変動をモニターする為に光量計測部202に送られる。なお、図8では選択用光学素子OS4のみがオン状態になったときの様子を示し、選択用光学素子OS4で回折された光源装置LSからのビームLBの+1次回折ビームがビームLB4として描画ユニットU4に供給される。
さらに、図5で説明したように、光軸AXaに関して選択ミラーIM1~IM6の各々と対称的に設けられる反射ミラーIM1’~IM6’の各々で反射されるノイズ光としての-1次回折ビームLB1’~LB6’は、それぞれ光電センサDT1~DT6によって受光される。光電センサDT1~DT6の各々から出力される光電信号Sm1~Sm6は、選択用光学素子OS1~OS6の各々の回折効率の変動等をモニターする為に光量計測部202に送られる。光電センサDT1~DT6も、光電センサDTa、DTbと同様にPINフォトダイオード、アバランシェ・フォトダイオード(APD)、MSMフォトダイオードのいずれかで構成される。
〔光源装置LS〕
光源装置LSは、図9に示すようなファイバーアンプレーザ光源(光増幅器と波長変換素子によって紫外パルス光を発生するレーザ光源)とする。図9のファイバーアンプレーザ光源(LS)の構成は、例えば国際公開第2015/166910号パンフレットに詳しく開示されているので、ここでは簡単に説明する。図9において、光源装置LSは、ビームLBを周波数Faでパルス発光させる為のクロック信号LTCを生成する信号発生部120aを含む制御回路120と、クロック信号LTCに応答して赤外波長域でパルス発光する2種類の種光S1、S2を生成する種光発生部135とを含む。種光発生部135は、DFB半導体レーザ素子130、132、レンズGLa、GLb、偏光ビームスプリッタ134等を含み、DFB半導体レーザ素子130は、クロック信号LTC(例えば、400MHz)に応答してピーク強度が大きく峻鋭、若しくは尖鋭なパルス状の種光S1を発生し、DFB半導体レーザ素子132は、クロック信号LTCに応答してピーク強度が小さく緩慢(時間的にブロード)なパルス状の種光S2を発生する。種光S1と種光S2は発光タイミングが同期(一致)していると共に、ともに1パルス当たりのエネルギー(ピーク強度×発光時間)が略同一となるように設定される。さらにDFB半導体レーザ素子130が発生する種光S1の偏光状態はS偏光に設定され、DFB半導体レーザ素子132が発生する種光S2の偏光状態はP偏光に設定される。偏光ビームスプリッタ134は、DFB半導体レーザ素子130からのS偏光の種光S1を透過させて電気光学素子(ポッケルスセル、カーセル等によるEO素子)136に導くと共に、DFB半導体レーザ素子132からのP偏光の種光S2を反射させて電気光学素子136に導く。
電気光学素子136は、図8の描画制御装置200から送られてくる描画データ(スポット光SPの1走査中に描画される画素数分に対応した描画ビット列データ)SDn(nは描画ユニットU1~U6のいずれかに対応した数)に応じて、2種類の種光S1、S2の偏光状態を駆動回路136aにより高速に切り換える。駆動回路136aに入力される描画ビット列データSDnの1画素分の論理情報がL(「0」)状態のとき、電気光学素子136は種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ138に導き、描画ビット列データSDnの1画素分の論理情報がH(「1」)状態のとき、電気光学素子136は入射した種光S1、S2の偏光方向を90度回転させて偏光ビームスプリッタ138に導く。従って、電気光学素子136は、描画ビット列データSDnの画素の論理情報がH状態(「1」)のときは、S偏光の種光S1をP偏光の種光S1に変換し、P偏光の種光S2をS偏光の種光S2に変換する。偏光ビームスプリッタ138は、P偏光の光を透過してレンズGLcを介してコンバイナ144に導き、S偏光の光を反射させて吸収体140に導くものである。偏光ビームスプリッタ138を透過する種光(S1とS2のいずれか一方)を種光ビームLseとする。光ファイバー142aを通ってコンバイナ144に導かれる励起光源142からの励起光(ポンプ光、チャージ光)は、偏光ビームスプリッタ138から射出してくる種光ビームLseと合成されて、ファイバー光増幅器146に入射する。
ファイバー光増幅器146にドープされているレーザ媒質を励起光で励起することにより、ファイバー光増幅器146内を通る間に種光ビームLseが増幅される。増幅された種光ビームLseは、ファイバー光増幅器146の射出端146aから所定の発散角を伴って放射され、レンズGLdを通って第1の波長変換光学素子148に集光するように入射する。第1の波長変換光学素子148は、第2高調波発生(Second Harmonic Generation:SHG)によって、入射した種光ビームLse(波長λ)に対して、波長がλの1/2の第2高調波を生成する。種光ビームLseの第2高調波(波長λ/2)と元の種光ビームLse(波長λ)とは、レンズGLeを介して第2の波長変換光学素子150に集光するように入射する。第2の波長変換光学素子150は、第2高調波(波長λ/2)と種光ビームLse(波長λ)との和周波発生(Sum Frequency Generation:SFG)により、波長がλの1/3の第3高調波を発生する。この第3高調波が、370mm以下の波長帯域(例えば、355nm)にピーク波長を有する紫外パルス光(ビームLB)となる。第2の波長変換光学素子150から発生するビームLB(発散光束)は、レンズGLeによって、ビーム径が1mm程度の平行光束に変換されて光源装置LSから射出する。
駆動回路136aに印加される描画ビット列データSDnの1画素分の論理情報がL(「0」)の場合(当該画素を露光しない非描画状態のとき)、電気光学素子136は入射した種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ138に導く。そのため、コンバイナ144に入射する種光ビームLseは種光S2由来のものとなる。ファイバー光増幅器146は、そのようなピーク強度が低く、時間的にブロードな鈍った特性の種光S2に対する増幅効率が低いため、光源装置LSから射出されるP偏光のビームLBは、露光に必要なエネルギーまで増幅されないパルス光となる。このような種光S2由来で生成されるビームLBのエネルギーは極めて低く、基板Pに照射されるスポット光SPの強度は極めて低レベルとなる。このように、光源装置LSからは非描画状態のときも、微弱ではあるが紫外パルス光のビームLBが射出し続けるので、そのような非描画状態のときに射出されるビームLBを、オフ・ビーム(オフ・パルス光)とも呼ぶ。
一方、駆動回路136aに印加される描画ビット列データSDnの1画素分の論理情報がH(「1」)の場合(当該画素を露光する描画状態のとき)、電気光学素子136は入射した種光S1、S2の偏光状態を変えて偏光ビームスプリッタ138に導く。そのため、コンバイナ144に入射する種光ビームLseは種光S1由来のものとなる。種光S1由来の種光ビームLseの発光プロファイルは、ピーク強度が大きく尖鋭なので、種光ビームLseはファイバー光増幅器146によって効率的に増幅され、光源装置LSから出力されるP偏光のビームLBは基板Pの露光に必要なエネルギーを持つ。描画状態のときに光源装置LSから出力されるビームLBは、非描画状態のときに射出されるオフ・ビーム(オフ・パルス光)と区別するために、オン・ビーム(オン・パルス光)とも呼ぶ。このように、光源装置LSとしてのファイバーアンプレーザ光源内に、2種類の種光S1、S2のいずれか一方を描画用光変調器としての電気光学素子136で選択してから光増幅することにより、ファイバーアンプレーザ光源を、描画データ(SDn)に応答して高速にバースト発光する紫外パルス光源とすることができる。
ところで、図9の信号発生部120aからのクロック信号LTCは、図8に示すように、描画制御装置200と光量計測部202にも供給される。描画制御装置200は、描画ユニットU1~U6の各々からの原点信号SZ1~SZ6を入力して、描画ユニットU1~U6の各々のポリゴンミラーPMの回転速度を一致させると共に、その回転角度位置(回転の位相)を互いに所定の関係とするようにポリゴンミラーPMの回転を同期制御する。光源装置LSと描画制御装置200とは、光源装置LS内の制御回路120に接続されるインターフェイスバス(シリアルバスでも良い)SJを介して、各種の制御情報(コマンドやパラメータ)をやり取りする。描画制御装置200は、原点信号SZ1~SZ6に基づいて、描画ユニットU1~U6の各々のスポット光SPによる描画ラインSL1~SL6で描画すべき描画ビット列データSDnを記憶するメモリを含む。さらに描画制御装置200には、メモリに記憶された描画ビット列データSDnの1画素分のデータ(1ビット)をビームLBの何パルス分で描画するかが予め設定されている。例えば、1画素をビームLBの2パルス(主走査方向と副走査方向との各々に2つのスポット光SP)で描画すると設定されている場合、描画ビット列データSDnのデータは、クロック信号TLCの2クロックパルス毎に1画素分(1ビット)ずつ読み出されて、図9の駆動回路136aに印加される。
〔描画制御装置200内のドライブモジュール〕
さらに描画制御装置200内には、選択用光学素子(AOM)OS1~OS6の各々に駆動信号DF1~DF6を供給するドライブモジュール(回路)が設けられている。図10は、そのドライブモジュールの構成の一例を説明するブロック図である。図10において、ドライブモジュールには、描画ユニットU1~U6の各々からの原点信号SZ1~SZ6に応答して、選択用光学素子OS1~OS6のうちのいずれか1つをオン状態にする為のスイッチ信号LP1~LP6を生成すると共に、駆動信号DF1~DF6の各々の強度(高周波信号の振幅)を所定の調整可能範囲のどこに設定するかを制御する強度調整制御部250が設けられる。選択用光学素子OS1~OS6の各々に駆動信号DF1~DF6を印加する6つの高周波アンプ回路251a~251fの各々には、信号源RFから一定の基準周波数(例えば、数十MHz~100MHz)の高周波信号が共通に印加され、高周波アンプ回路251a~251fは、それぞれスイッチ信号LP1~LP6に応答して、駆動信号DF1~DF6を選択用光学素子OS1~OS6に印加する状態と印加しない状態とに切り換える。さらに、高周波アンプ回路251a~251fの各々は、ゲイン設定回路252a~252fで生成された設定信号Pw1~Pw6を入力して、駆動信号DF1~DF6の各々の強度(振幅、ゲイン)を調整する。設定すべき駆動信号DF1~DF6の各々の強度は、図9に示した光量計測部202内のCPU、或いは描画制御装置200内のCPUによって演算される。その演算の元となる情報は、図8で説明した光電センサDTa、DTbからの光電信号Sa、Sbと、ノイズ光(-1次回折ビームLBn’)を受光する光電センサDT1~DT6からの光電信号Sm1~Sm6である。
選択用光学素子(AOM)OSnの各々に供給される駆動信号DFnの高周波電力(RF電力)と、回折効率β(入射したビームLBの強度に対する+1次回折ビームLBnの強度の比率)は、一例として図11のような特性を持っている。図11において、横軸はAOMに投入されるRF電力(駆動信号DFnの振幅)を表し、縦軸はブラッグ回折で使われるAOMの+1次回折ビームの回折効率β(%)を表している。図11のように、AOMの回折効率βは、RF電力の増加にともなって最大の回折効率βmaxに達し、それ以上にRF電力を増加させても回折効率βが減少する特性を持つ。従って、選択用光学素子OS1~OS6の各々の回折効率の調整(駆動信号DFnの振幅設定)は、最大の回折効率βmaxを考慮して行われる。図10に示した強度調整制御部250は、図11のような特性に基づいて、駆動信号DFnの振幅変化と、選択用光学素子OSnの回折効率βの変化(及びその回折効率βの変化から推定される+1次回折ビームとしてのビームLBnの強度変化)との相関関係を予め求めて、テーブル又は関数式で記憶している。
〔光量計測部202〕
次に、図8に示した光量計測部202の構成を図12の回路ブロック図に基づいて説明する。光量計測部202は、ビーム切換部の選択用光学素子OS1~OS6の各々の後段に設けられている光電センサDT1~DT6の各々からの光電信号Sm1~Sm6を増幅するアンプ回路220a~220f、光電センサDTa、DTbの各々からの光電信号Sa、Sbを増幅するアンプ回路225a、225b、増幅された光電信号Sm1~Sm6のうちのいずれか1つを選択してサンプルホールド(S/H)回路222に送出するマルチプレクサ回路221、増幅された光電信号Sa、Sbのうちのいずれか1つを選択してサンプルホールド(S/H)回路227に送出するマルチプレクサ回路226、S/H回路222、227からの信号レベル(積分値、又はピーク値)をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換(ADC)回路223、228、及び、計測動作、計測結果の収集、描画制御装置200とのデータ通信等を統括的に制御するマイクロ・プロセッサ(MPU)224を含む。プロセッサ(MPU)224は、光源装置LSで生成されたクロック信号LTCに基づいて、S/H回路222、227とADC回路223、228に対して、それぞれの動作タイミングを指令する制御信号CS1を送出すると共に、マルチプレクサ回路221、226に対して選択動作のタイミングを指令する制御信号CS2を送出する。
〔描画動作例〕
以上の図2~図12の構成によって、各描画ユニットUn(U1~U6)は、図8の描画制御装置200に記憶されている描画データ(SDn)に基づいて、電子デバイス用のパターンを描画する。その際の描画ユニットUnの描画動作の一例を、図13のタイムチャートを用いて簡単に説明する。図13において、描画ユニットUn内の原点センサ(図4のビーム受光系60b)からの原点信号SZnは、例えばポリゴンミラーPMの8つの反射面RPのうちの1つの反射面RPaと次の反射面RPbの各々に対応して、原点パルスSZna、SZnbを発生する。原点パルスSZna、SZnbは、ポリゴンミラーPMの回転速度に対応してポリゴンミラーPMが45°回転する時間間隔TPabで発生する。原点信号SZnには、ポリゴンミラーPMが1回転する間、図13に示す原点パルスSZna、SZnbに続けて時間間隔TPabで発生する6つの原点パルスSZnc~SZnhが含まれる。先に説明したように、ポリゴンミラーPMの1つの反射面RPによる走査効率1/αを1/3とした場合、図10に示した強度調整制御部250から出力されるスイッチ信号LPn(LP1~LP6)は、図13に示すように、原点信号SZnの1つの原点パルスSZnaの発生時から所定の遅延時間ΔTaが経過してから、選択用光学素子OSnをオン状態にすべく「L」から「H」に切り替わり、原点パルスSZnaの発生から時間TPab/3の経過直前に「H」から「L」に切り替わる。
他の原点パルスSZnb~SZnhの各々に関しても同様に、遅延時間ΔTb~ΔThの経過後に、スイッチ信号LPn(LP1~LP6)は「L」から「H」に切り替わり、原点パルスSZnb~SZnhの各々の発生から時間TPab/3の経過直前に「H」から「L」に切り替わる。但し、図2に示したように1つの光源装置LSからのビームLBを6つの描画ユニットU1~U6のいずれか1つに供給するようにスイッチングする場合、1つの描画ユニットUnは、ポリゴンミラーPMの8つの反射面RPの1面置きにビームLBnを走査するように制御される。その為、連続して発生する8つの原点パルスSZna~SZnhのうち、1つ飛びに発生する、例えば4つの原点パルスSZna、SZnc、SZne、SZngの各々に応答して、スイッチ信号LPn(LP1~LP6)は「L」から「H」に切り替わり、時間TPab/3の経過直前に「H」から「L」に切り替わる。
図13に示すように、スイッチ信号LPnが「H」になる時間TPab/3の間、描画ビット列データSDnに応答して強度変調されたスポット光SP(ビームLBn)が描画ラインSLnに沿って1回走査される。描画ビット列データSDnは、1画素を1ビットで表すビットシリアル信号として描画制御装置200から図9の光源装置LS内の駆動回路136aに印加される。図13において、一例として示す描画ビット列データSDnの波形部分Wfsのように、描画ビット列データSDnと光源装置LSからのクロック信号LTCとは、描画制御装置200によって1画素分がクロック信号LTCの2クロックパルスに対応するように制御される。ここで、描画ビット列データSDn中の1ビットが「0」の画素をOff画素、ハッチングした「1」の画素をOn画素とすると、光源装置LSは、Off画素に対してはビームLBnの2パルス分(クロック信号LTCの2つのクロックパルス分)を極めて小さい強度のオフ・パルス光の状態で出力し、On画素に対してはビームLBの2パルス分を大きい強度のオン・パルス光の状態で出力する。
以上のような描画動作が行われている間、図8(図12)に示した光量計測部202は、6つの選択用光学素子OSnのうちでオン状態になっている1つの選択用光学素子OSnに対応した1つの光電センサDTnからの光電信号Smnを、マルチプレクサ回路221で選択して、発生するノイズ光(-1次回折ビームLBn’)の強度を計測して記憶する。この計測は、スポット光SPが描画ラインSLnに沿って少なくとも1回走査される間に実行されるが、基板P上の所定のパターン描画領域(被露光領域)内にパターン描画している間中、スポット光SPの走査毎(ポリゴンミラーPMの連続した反射面RP毎、或いは1面飛ばしの反射面RP毎)に連続して行う必要はない。例えば、基板Pが副走査方向に所定距離(一例として5~10mm)だけ進む毎に、その時点でオン状態となってビームLBn(+1次回折ビーム)を発生する選択用光学素子OSnを順次特定して、選択用光学素子OSn(描画ユニットUn)の各々に対応したノイズ光(-1次回折ビームLBn’)の強度を計測する。
光量計測部202のプロセッサ(MPU)224は、適正露光量が得られるように選択用光学素子OSnの各々の駆動信号DFnの振幅を調整した初期状態(キャリブレーション時の状態)のときに予め計測しておいたノイズ光(-1次回折ビームLBn’)の強度の計測結果と、パターン描画動作中に計測されたノイズ光(-1次回折ビームLBn’)の強度の計測結果とを比較し、許容範囲以上の差が生じている場合は、そのような差を発生した選択用光学素子OSnが何らかの原因で変動したものと推定する。先の図7のグラフで説明したように、ノイズ光(-1次回折ビームLBn’)の強度が増大したと言うことは、相対的に描画用のビームLBn(+1次回折ビームLBn)の強度が低下したことを意味する。逆に、ノイズ光(-1次回折ビームLBn’)の強度が低下した場合は、相対的に描画用のビームLBn(+1次回折ビームLBn)の強度が増大したことを意味する。そこで、光量計測部202のプロセッサ(MPU)224、或いは描画制御装置200のCPUは、計測したノイズ光(-1次回折ビームLBn’)の強度変化に応じた描画用のビームLBn(+1次回折ビームLBn)の強度変化を、図11のRF電力と回折効率βの関係特性も参照して推定する。
推定された描画用のビームLBn(+1次回折ビームLBn)の強度変化が許容範囲から外れる傾向を示したとき、描画制御装置200のCPUは、図10に示した強度調整制御部250に、強度調整すべき描画用のビームLBn(+1次回折ビームLBn)を選択している選択用光学素子OSnに対する駆動信号DFnの電力(振幅)を調整(増加又は減少)するような設定信号Pwnを、対応するゲイン設定回路252a~252fから高周波アンプ回路251a~251fに送出する。以上の計測動作と調整動作は、描画ユニットUnが何らかのパターンを基板P上に描画露光している間の適当なタイミング、例えば一定の時間間隔毎、又は副走査方向に基板Pが一定距離だけ移動する毎に逐次行われる。しかしながら、計測動作のタイミングのときに描画すべき画素が全てOff画素であったり、描画ラインSLn中のOn画素の数が極めて少なかったりした場合、図12に示した光量計測部202は、ノイズ光(-1次回折ビームLBn’)の強度を全く計測できなかったり、計測値の信頼性が著しく低下したりする。そのような場合は、予め描画データ(SDn)の中から、1走査中にOn画素となる密度が高い描画ビット列データのアドレス値、或いは主走査方向にOn画素が多数並ぶような画素列の副走査方向の位置を特定し、そのアドレス値、或いは副走査方向の画素列の位置になったら、上記の計測動作や調整動作を行うようにしても良い。
以上、本実施の形態では、光源装置LSからのビームLBの光路に沿って2つ以上の選択用光学素子(AOM)OSnを直列(シリアル)に配置し、それらの選択用光学素子OSnの結晶体(回折媒体)が光学的に互いに共役となるようにリレー光学系(レンズGa、Gb)を設けた構成で、上流側の選択用光学素子OSnをオン状態にして、光源装置LSからのビームLBのブラッグ回折により描画用のビームLBn(+1次回折ビームLBn)を生成する際、上流側の選択用光学素子OSnで発生し得るノイズ光としての-1次回折ビームLBn’は、下流側の選択用光学素子OSnに入射しないように、リレー光学系内の瞳面又はその近傍の瞳空間に配置した遮光部材としての反射ミラーIMn’によって遮蔽される。リレー光学系内の瞳面では、上流側の選択用光学素子OSnをそのまま透過した0次回折ビームLBnz、及び回折された描画用のビームLBn(+1次回折ビームLBn)とノイズ光としての-1次回折ビームLBn’の各々がビームウェストとなって空間的に分離して分布する為、不要な-1次回折ビームLBn’を確実にカットすることができる。その為、ノイズ光としての-1次回折ビームLBn’が、下流側の選択用光学素子OSnを通って下流側の描画ユニットUnに入射することが防止されるので、基板P上の意図しない部分に低い露光量で別のパターンが描画されるゴースト露光(被り露光)の現象が無くなり、描画品質の劣化が抑えられる。さらに本実施の形態では、選択用光学素子OSnの回折効率の変動(ブラッグ回折条件からの変動)等により生じる描画用のビームLBn(+1次回折ビームLBn)の強度(光量)変化を自動的に補正する強度調整制御の為に、パターン描画時にはノイズ光となる-1次回折ビームLBn’を活用することができ、描画用のビームLBn(+1次回折ビームLBn)の強度を計測する為に、描画用のビームLBnの光路中に振幅分割タイプの光学部材(低い透過率を有する反射ミラー、低い反射率を有するガラスや石英の板)や、波面分割タイプの光学部材(偏光ビームスプリッタ等)を設ける必要性が無くなり、描画用のビームLBnの光量ロスを低減できる。さらに、ロール・ツー・ロール方式で長尺のシート基板Pに対して電子デバイス用のパターンを描画する際、熱的な変動を受けやすい選択用光学素子(AOM)を用いたとしても、長時間に渡って適正露光量の下で安定した露光が行われので、露光量の過不足によるパターン品質の低下を抑えられ、歩留まりが向上する。
〔変形例1〕
図14は、図5に示した第1の実施の形態のビーム切換部の光学配置において、描画用のビームLBnを反射する選択ミラーIMnと、ノイズ光としての-1次回折ビームLBn’ (副回折ビーム)を反射する反射ミラーIMn’とを一体化した場合の変形例を示す斜視図である。図14において、中心に円形開口FPhが形成された支持円板FPは、金属、セラミックス、又は紫外線遮蔽ガラス等の遮光性の材料で構成される。支持円板FPは、図5に示したリレー光学系(レンズGa、Gb)のほぼ中央の面Psを瞳面とすると、その位置から僅かに光軸AXaの方向にずれた位置の瞳空間に設置される。選択ミラーIMnと反射ミラーIMn’は、円形開口FPhを挟んで、光軸AXaの回りに180°回転させた状態で、支持円板FPの表面に固着される。選択ミラーIMnと反射ミラーIMn’の配置関係は、0次回折ビームLBnzの光軸AXaに対する描画用のビームLBn(+1次回折ビームLBn)とノイズ光としての-1次回折ビームLBn’との空間的な分離状態に合せるように、支持円板FP上で位置決めされ、一体化される。選択ミラーIMnと反射ミラーIMn’を備えた支持円板FPは、図14中のZ方向、Y方向、X方向の各々に微動できるように、光学定盤(ビーム切換部の各種光学部材や光学素子を取付ける本体フレームの一部)上に取付けられる。
装置の組立時やメンテナンス時には、支持円板FPの位置を微調整して、選択ミラーIMnで反射した描画用のビームLBnが、図4に示した描画ユニットUnのビームLBの入射軸線AX1と正確に同軸となるように設定される。また、図14の支持円板FPの+Z方向を少し延設した部分に、反射ミラーIMn’で反射したノイズ光としての-1次回折ビームLBn’を受光する光電センサDTn(図5参照)を固着しても良い。なお、図14の変形例において、支持円板FPは遮光性の材料としたが、ビームLBの波長域において高い透過率を示す透過性の材料、例えば石英板としても良い。その場合、図14のように、ビームLBや0次回折ビームLBnzを通す円形開口FPhは設けなくても良い。
[第2の実施の形態]
図15A、図15Bは、第2の実施の形態によるビーム切換部の光学構成を示す。第1の実施の形態におけるビーム切換部は、図5に示したように、光源装置LSからのビームLBを直列に通すように配置される複数の選択用光学素子OSnの各々を、光学的に共役な関係にする為に、各選択用光学素子OSnの間にレンズGa、Gbによるリレー光学系(倒立結像系)を設けた。第2の実施の形態では、複数の選択用光学素子OSnの各々を共役関係(結像関係)にする為のリレー光学系を、正立正像の結像系に変更する。すなわち、上流側(前段)の選択用光学素子OSnと下流側(後段)の選択用光学素子OSnとの間の光路中に、前段と後段の選択用光学素子OSnの各々と共役関係となる中間像面を形成する。
図15Aは、先の図5に対応して、ビーム切換部の最終段の選択用光学素子OS2と、その1つ手前の選択用光学素子OS1との間の光学構成を示し、本実施の形態では、ビームLBの送光路に沿って、選択用光学素子OS1とOS2の間に4つのレンズ(レンズ部材)Ga、Gd、Ge、Gbを並べた2回リレー光学系(正立結像系)が設けられる。図15Aにおいて、オン状態となっている選択用光学素子OS1、レンズGa、選択ミラーIM1、レンズGcの配置は、図5の構成と同じである。但し、説明の都合上、レンズGaの前側と後側の各焦点距離はfaで等しいものとし、選択用光学素子OS1で発生する描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB1、0次回折ビームLB1z、及び、ノイズ光としての-1次回折ビームLB1’の各々がビームウェストとなる面(選択用光学素子OS1を物面としたときの瞳面)をPs1とする。選択用光学素子OS1がオン状態のとき、0次回折ビームLB1zとノイズ光としての-1次回折ビームLB1’は、リレー光学系の光軸と同軸に配置されるレンズGdに入射する。レンズGdの前側及び後側の焦点距離をfdとしたとき、面Ps1はレンズGdの前側焦点距離Fdの位置に設定される。そのため、レンズGdの後側焦点距離fdの位置の面Ps2は、選択用光学素子OS1と光学的に共役な面(倒立の結像面)となり、0次回折ビームLB1zと-1次回折ビームLB1’が共に平行光束となって交差する。なお、選択ミラー(反射部材)IM1は、レンズGaとレンズGdの間の面Ps1を含む瞳空間に配置される。
面Ps2を通った0次回折ビームLB1zと-1次回折ビームLB1’は、前側及び後側の焦点距離がfeのレンズGeに入射する。レンズGeの焦点距離feは、レンズGdの焦点距離fdと等しく設定される。レンズGeの前側焦点距離feの位置に面Ps2を設定すると、0次回折ビームLB1zと-1次回折ビームLB1’の各々は、互いに光軸と平行な状態となって後側焦点距離feの位置の面Ps3でビームウェストになるように収斂される。レンズGd、Geを同じものとすると、面Ps3は面Ps1と光学的に共役な関係(倒立の結像関係)になっており、面Ps3上での-1次回折ビームLB1’の位置と0次回折ビームLB1zの位置(光軸上)との関係は、面Ps1上での位置関係を光軸回りに180°回転させたものとなる。面Ps3を通った0次回折ビームLB1zと-1次回折ビームLB1’は、前側及び後側の焦点距離がfbのレンズGbに入射する。レンズGbの焦点距離fbは、レンズGaの焦点距離faと等しく設定される。レンズGbの前側焦点距離fbの位置に面Ps3を設定し、後側焦点距離fbの位置に次段(最終段)の選択用光学素子OS2を設定すると、0次回折ビームLB1zと-1次回折ビームLB1’の各々は、共に平行光束となり、次段の選択用光学素子OS2中で交差するように入射する。
次段の選択用光学素子OS2はオフ状態なので、選択用光学素子OS2に入射した0次回折ビームLB1zと-1次回折ビームLB1’は、図15Bに示すように、そのまま透過してレンズGa(前側及び後側焦点距離fa)に入射する。次段の選択用光学素子OS2に入射するノイズ光としての-1次回折ビームLB1’は、先の図5の構成の場合と比べると、0次回折ビームLB1zの軸線(光軸)に対する角度が、選択用光学素子OS2の回折方向(格子のピッチ方向)に関して反転している。その為、選択用光学素子OS2を直進してレンズGaで収斂される-1次回折ビームLB1’は、光軸(0次回折ビームLB1z)に関して選択ミラーIM2と反対側の空間を通って面Ps1でビームウェストとなる。従って、前段の選択用光学素子OS1がオン状態のときにノイズ光としての-1次回折ビームLB1’が発生して後段の選択用光学素子OS2に入射したとしても、選択ミラーIM2には入射しないことになる。
以上のように、本実施の形態では、光源装置LSからのビームLBの光路に沿って相前後して配置される2つの選択用光学素子OSnを互いに共役関係にする為のリレー光学系を正立正像の結像系にすること、すなわち、倒立結像のリレー光学系を2段設けることによって、前段の選択用光学素子OSnで発生したノイズ光としての-1次回折ビームLB1’が後段の選択ミラーIMn(描画ユニットUn)に入射することが防止される。図15Aに示したレンズGa、Gd、Ge、Gbによる2回リレー光学系(正立結像系)は、図2に示したビーム切換部の選択用光学素子OS5とOS6の間、選択用光学素子OS6とOS3の間、選択用光学素子OS3とOS4の間、及び選択用光学素子OS4とOS1の間にも同様に設けられる。なお、図15Aにおいて、レンズGaの焦点距離faとレンズGbの焦点距離fbとを等しくし、レンズGdの焦点距離fdとレンズGeの焦点距離feとを等しくした場合、焦点距離fa(fb)=焦点距離fd(fe)としても良いし、焦点距離fa(fb)>焦点距離fd(fe)としても良い。焦点距離fa(fb)>焦点距離fd(fe)とした場合、レンズGaとレンズGdによる1段目のリレー光学系は、選択用光学素子OS1の位置を物面として面Ps2を像面とする縮小率fd/faの倒立結像系として機能し、レンズGeとレンズGbによる2段目のリレー光学系は、面Ps2を中間像面として選択用光学素子OS2の位置を再結像面とする拡大率fa/fdの倒立結像系として機能する。従って、レンズGa、Gd、Ge、Gbによる2段のリレー光学系の全体の結像倍率は等倍である。
以上、本実施の形態では、いずれか1つの選択用光学素子OSnがオン状態のときに発生するノイズ光としての-1次回折ビームLBn’(及び0次回折ビームLBnz)は、描画用のビーム(+1次回折ビーム)LBnを反射(分岐)させる選択ミラーIMnを避けた光路に沿って最終的には吸収体TR(図2参照)に達する。そこで、図15Bに示すように、最終段の選択用光学素子OS2とレンズGaとを通って、面Ps1に達する-1次回折ビームLBn’を受光する光電センサDTcを設け、その光電信号Scに基づいて、0次回折ビームLBnzと-1次回折ビームLBn’の強度比の変化等を計測して、選択用光学素子OSnの変動による描画用のビームLBnの強度変化を推定する。なお、図15B中の光電センサDTbは、先の図8に示したものと同じであり、0次回折ビームLBnzを受光して、その強度に応じた光電信号Sbを出力する。図16は、光電センサDTb、DTcからの光電信号Sb、Sc、及び先の図8に示した光電センサDTaからの光電信号Saに基づいて、0次回折ビームLBnzの強度やノイズ光としての-1次回折ビームLBn’の強度変化を計測する光量計測部202’の回路ブロック図である。光量計測部202’は、先の図12に示した光量計測部202の代わりに設けられる。図8に示した構成では、選択用光学素子OSnの各々で発生するノイズ光としての-1次回折ビームLBn’の強度を、それぞれ個別の光電センサDT1~DT6で受光したが、本実施の形態では、6つの選択用光学素子OSnのうちのいずれか1つが択一的にオン状態となる点を利用して、1つの光電センサDTcによって、時系列的(時分割的)に6つの選択用光学素子OSnからのノイズ光としての-1次回折ビームLBn’を受光する。その為、図8に示した第1の実施の形態による光量計測のように、6つの光電センサDT1~DT6の各々の初期の感度差や経時変化による感度バラツキ等をキャリブレーションしておく必要が無い。
図16の光量計測部202’は、図12の構成と同様に、光電センサDTa、DTbの各々からの光電信号Sa、Sbを増幅するアンプ回路225a、225b、光電センサDTcからの光電信号Scを増幅するアンプ回路220g、増幅された光電信号Sa、Sb、Scのうちのいずれか1つを選択してサンプルホールド(S/H)回路222に送出するマルチプレクサ回路226、S/H回路222からの信号レベル(積分値、又はピーク値)をデジタル値に変換するアナログ/デジタル変換(ADC)回路223、及び、計測動作、計測結果の収集、描画制御装置200とのデータ通信等を統括的に制御するマイクロ・プロセッサ(MPU)224を含む。プロセッサ(MPU)224は、光源装置LSで生成されたクロック信号LTCに基づいて、S/H回路222とADC回路223に対して、それぞれの動作タイミングを指令する制御信号CS1を送出すると共に、マルチプレクサ回路226に対して選択動作のタイミングを指令する制御信号CS2を送出する。
先の図6、図7で説明したように、選択用光学素子OSnとしてのAOMをブラッグ回折の条件で用いる場合、選択用光学素子OSnがオン状態のときの描画用のビーム(+1次回折ビーム)LBn、0次回折ビームLBnz、及び、ノイズ光として発生し得る-1次回折ビームLBn'の強度比率は、図11に示した選択用光学素子OSnへのRF電力の大きさに応じて変化するが、ブラッグ回折の条件からのずれ(誤差)によっても変化し得る。光源装置LSからのビームLBの光量(エネルギー)から選択用光学素子OSnの結晶体での光量損失(吸収)分を差し引いた残りの光量は、描画用のビーム(+1次回折ビーム)LBnの光量、0次回折ビームLBnzの光量、及びノイズ光として発生し得る-1次回折ビームLBn'の光量として分配されるはずである。ブラッグ回折の条件は、入射するビームLBの波長λo、ビームLBがAOM結晶体内で音響波に曝される長さ(サウンドコラム長さ)Lc、RF電力(駆動信号DFn)の周波数Fc、結晶体の屈折率nc、結晶体中の超音波の速度vcで定まる係数Qが、4π以上になる場合とされている。
Q=2π・λo・Lc・Fc2/nc・vc2 ≧4π
さらに図6で説明したブラッグ角θBは、θB=λo・Fc/2・vc2 で定められる。これらの諸元から、ブラッグ回折の条件をずらす主な要因として、結晶体の温度変化による屈折率ncや超音波の速度vcの変化が考えられる。或いは、従来の技術に記載されている熱レンズ効果を呈するような結晶体自体の温度による変形も考えられる。いずれにしても、ブラッグ回折の条件がずれてくると、図11に示した回折効率特性が変化し、全体的に効率が落ちるような特性(最大効率の低下、効率とRF電力の比例関係の変化等)に変わる。
そこで、本実施の形態では、光電センサDTcによってノイズ光となる-1次回折ビームLBn’(副回折ビーム)を、パターン描画中のOn画素(オン・パルス光)のタイミングで受光し、その強度(光量)を図16の光量計測部202’で適当なインターバルで逐次計測する。初期設定として、描画ユニットU1~U6の各々からの描画用のビームLB1~LB6の強度が、目標とされる強度に対して許容範囲(例えば±2~5%以内)に調整されて、適正露光量でパターン描画できる状態のときに、基板P上の実デバイス用のパターンを描画しない余白部にダミーパターン等を描画し、その際に、オン状態となった選択用光学素子OSnの各々で発生したノイズ光としての-1次回折ビームLBn'と0次回折ビームLBnzとの各強度(ピーク値又は積分値)を光電センサDTc、DTbにより計測して、プロセッサ(MPU)224に初期値として記憶しておく。実デバイス用のパターンの描画が開始されたら、プロセッサ(MPU)224は適当なインターバルで、On画素を描画する際のオン・パルス光の発光(クロック信号LTC)に同期して、選択用光学素子OSnの各々で発生したノイズ光としての-1次回折ビームLBn'の強度(ピーク値又は積分値)を光電センサDTcにより計測し、その実測値と記憶した初期値とを逐次比較する。プロセッサ(MPU)224は、実測値と初期値との差が許容範囲内であれば、選択用光学素子OSnが初期値の計測時の状態から変動していないと判断する。プロセッサ(MPU)224が、所定のインターバルで逐次計測される実測値と初期値との差が許容範囲から外れる傾向を示している、或いは許容範囲から逸脱したと判断した選択用光学素子OSnが現れた場合、プロセッサ(MPU)224は、その選択用光学素子OSnの駆動信号DFnの振幅(RF電力)を調整するような情報を、描画制御装置200の強度調整制御部250(図10参照)に送出する。
記憶した-1次回折ビームLBn'の強度(ピーク値又は積分値)の初期値は、装置(特にビーム切換部)の光学的な調整や、電気的な調整が良好であれば、一般的には極めて小さい値であるが、選択用光学素子OSnのオン状態の頻度が高ければ、温度上昇による変動によって、-1次回折ビームLBn'の強度(ピーク値又は積分値)の実測値は、徐々に大きくなる可能性がある。その際、プロセッサ(MPU)224は、オン状態となっている選択用光学素子OSnから発生する0次回折ビームLBnzの強度の光電センサDTbにより計測される実測値と、0次回折ビームLBnzの強度の初期値とを比較して、0次回折ビームLBnzの強度が殆ど変化していない場合、或いは0次回折ビームLBnzの強度が初期値から増大している場合は、ノイズ光としての-1次回折ビームLBn'の強度や0次回折ビームLBnzの強度が増加した分だけ、描画用のビーム(+1次回折ビーム)LBnの強度が減衰したと判断し、該当する選択用光学素子OSnの駆動信号DFnの振幅(RF電力)を調整する情報を、描画制御装置200の強度調整制御部250(図10参照)に送出する。また、ノイズ光としての-1次回折ビームLBn'の強度の実測値が初期値から増大した分に対応して、0次回折ビームLBnzの強度の実測値が初期値から低下することも起こり得るが、その場合、プロセッサ(MPU)224は、描画用のビーム(+1次回折ビーム)LBnの強度が初期状態から殆ど変化していないと判断する。なお、その際、光電センサDTaで検出される光源装置LSからのビームLBのオン・パルス光の強度も併せて実測し、その初期値と比較して、ビーム切換部に入射する直前のビームLBの強度変動の有無を確認するのが良い。
以上、本実施の形態によると、ロール・ツー・ロール方式で長尺のシート基板Pに対して電子デバイス用のパターンを描画する際、熱的な変動を受けやすい選択用光学素子(AOM)を用いたとしても、長時間に渡って適正露光量の下で安定した露光が行われので、露光量の過不足によるパターン品質の低下を抑えられ、歩留まりが向上する。本実施の形態によれば、光源装置LSからのビームLBを複数の描画ユニットUn(U1~U6)のいずれか1つに選択的に供給するために、光源装置LSからのビームLBを順番に通すように配置され、電気的な制御によってビームLBを回折させた描画用のビーム(主回折ビーム)LBn(LB1~LB6)を、対応する描画ユニットUn(U1~U6)に向けるための複数の選択用光学素子(音響光学偏向素子)OSn(OS1~OS6)と、複数の選択用光学素子OSnのうちビームLBの光路に沿った前段の選択用光学素子OSn(例えばOS1)と後段の選択用光学素子OSn(例えばOS2)とを、正立の結像状態で共役関係にするリレー光学系(レンズGa、Gb、Gd、Ge)とを設けることによって、主回折ビームLBnに対して角度をもって前段の選択用光学素子OSn(例えばOS1)から発生するノイズ光としての-1次回折ビーム(副回折ビーム)LBn’が、後段の選択用光学素子OSn(例えばOS2)を透過したとしても、後段の描画ユニットUn(例えばU2)に向かうことが阻止される。すなわち、本実施の形態では、前段の選択用光学素子OSnと後段の選択用光学素子OSnとを正立の結像状態で共役関係にするリレー光学系(レンズGa、Gb、Gd、Ge)が、阻止光学部材として機能する。
[変形例]
図17は、第2の実施の形態の図15Bの光学構成の変形例を示す。図17において、図15B中の部材と同じものには同じ符号を付し、その詳細説明は省略する。本変形例では、ビーム切換部の最終段の選択用光学素子OS2の後のレンズGaによって収斂される0次回折ビームLBnzとノイズ光としての-1次回折ビームLBn’(副回折ビーム)を、CCD又はCMOSの撮像素子IMSで受光し、撮像面上に形成される0次回折ビームLBnzによるスポット光と、-1次回折ビームLBn’によるスポット光との基準位置からの変位、又はその2つのスポット光の相対的な位置関係の変動を画像解析によって計測する。これにより、オン状態となっている選択用光学素子OSnの変動の有無を推定することができると共に、0次回折ビームLBnzによるスポット光の基準位置からの偏差により、光源装置LSからの射出されるビームLB自体の横ずれ(シフト)誤差や射出角度の誤差、或いは光源装置LSから最終段の選択用光学素子OS2に至る各種の光学部品や光学素子の変動に起因したビーム光路の軸ずれの有無がモニターできる。
図17では、撮像素子IMSの撮像面を面Ps1から一定の距離だけ離した位置に配置するが、その一定の距離は、0次回折ビームLBnzによるスポット光と-1次回折ビームLBn’によるスポット光とが撮像面上で分離して撮像される範囲であれば良い。また、撮像素子IMSによるスポット光の観察と、0次回折ビームLBnzと-1次回折ビームLBn’の強度計測とを共に行う場合は、図17の撮像素子IMSの位置にビームスプリッタを設け、ビームスプリッタを透過した0次回折ビームLBnzと-1次回折ビームLBn’の各スポット光を撮像素子IMSで撮像し、ビームスプリッタで反射された0次回折ビームLBnzと-1次回折ビームLBn’を図15Bに示した光電センサDTb、DTcで受光するようにしても良い。
[第3の実施の形態]
図18は、第3の実施の形態によるビーム切換部の一部の光学構成を示す斜視図であり、本実施の形態では、光源装置LSからのビームLBの送光路に沿って直列(タンデム)に配置される複数の選択用光学素子OSnの間に設けられるリレー光学系を、第1の実施の形態と同様に倒立結像系とした場合でも、前段の選択用光学素子OSnで発生して後段の選択用光学素子OSnを通ったノイズ光としての-1次回折ビームLBn’(副回折ビーム)が、後段の選択ミラーIMnに入射しないように、相前後する選択用光学素子OSnの設置方向(回折方向)を180°回転させて配置する。図18は、先の図5と対応して、最終段の選択用光学素子OS2と、その1つ手前の選択用光学素子OS1との間の光学構成を示し、図18中の各部材のうち、図5中の部材と同じ機能の部材には同じ符号を付してある。また、図18では、光源装置LSからのビームLBが選択用光学素子OS1に入射する際の進行方向をX方向とし、重力方向をZ方向、X方向とZ方向の各々と垂直な方向をY方向とする。従って、図18において、XY面は、ビーム切換部の各光学部材(選択用光学素子、反射ミラー、レンズ等)が取り付けられる支持定盤の支持面と平行になる。
先の第1の実施の形態では、選択用光学素子OSnによるビームLBの回折方向がZ方向(-Z方向)になるように各選択用光学素子OSnを縦向きに配置したが、本実施の形態では、ビームLBの回折方向がXY面と平行な面内になるように選択用光学素子OSn(OS1、OS2)を横向きに配置する。さらに、ビームLBの光路に沿って相前後して配置される2つの選択用光学素子OS1と選択用光学素子OS2は、等倍の倒立結像系としてのリレー光学系(レンズGa、Gb)の光軸AXaの周りに互いに180°回転させて配置される。すなわち、前段の選択用光学素子(音響光学偏向部材)OS1と後段の選択用光学素子(音響光学偏向部材)OS2とは、それぞれのブラッグ回折の方向(描画用のビームLB2、LB1の回折方向)がリレー光学系(Ga、Gb)の光軸AXaを中心に軸対称な関係になるように配置される。その為、図18のように、オン状態となった選択用光学素子OS1から発生する描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB1は、0次回折ビームLB1z(光軸AXa)に対して-Y方向に偏向されてレンズGaに入射し、選択用光学素子OS1から発生するノイズ光としての-1次回折ビームLB1’は、0次回折ビームLB1z(光軸AXa)に対して+Y方向に偏向されてレンズGaに入射する。レンズGaの後側焦点距離の位置(図5中の面Ps)、又はその近傍の瞳空間に配置される選択ミラー(反射部材)IM1は、0次回折ビームLB1z(光軸AXa)に対して-Y方向に配置されて、描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB1を-Y方向に反射させた後、反射ミラーMcによって-Z方向に折り曲げてレンズGcに入射させる。
レンズGaを通った0次回折ビームLB1zと-1次回折ビームLB1’は、光軸AXaと平行に進んでレンズGbに入射し、後段(最終段)のオフ状態の選択用光学素子OS2に交差するように入射する。選択用光学素子OS2がオン状態になったときに発生する描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB2は、0次回折ビームLB2z(光軸AXa)に対して+Y方向に偏向される。その為、後段のレンズGaの後に配置される選択ミラーIM2は、0次回折ビームLB2z(光軸AXa)に対して+Y方向に配置される。オン状態の選択用光学素子OS1から発生した-1次回折ビームLB1’は、後段のレンズGaによって0次回折ビームLB1z(光軸AXa)に対して-Y方向にシフトされるので、後段の選択ミラーIM2に入射することなく+X方向に進む。
以上の構成において、最終段の選択用光学素子OS2による描画用のビームLB2の回折方向が+Y方向、前段の選択用光学素子OS1による描画用のビームLB1の回折方向が-Y方向に設定されるので、便宜上、選択用光学素子OS2の回折方向を+Y方向、選択用光学素子OS1の回折方向を-Y方向とする。その場合、他の選択用光学素子OS3~OS6の回折方向も、ビームLBの光路に沿った順番で交互に+Y方向と-Y方向に変えられる。具体的には、選択用光学素子OS1の1つ手前の選択用光学素子OS4の回折方向は+Y方向に設定され、選択用光学素子OS4の1つ手前の選択用光学素子OS3の回折方向は-Y方向に設定され、選択用光学素子OS3の1つ手前の選択用光学素子OS6の回折方向は+Y方向に設定され、選択用光学素子OS6の1つ手前(最前段)の選択用光学素子OS5の回折方向は-Y方向に設定される。このように、リレー光学系(倒立結像系)で互いに共役関係に設定される複数の選択用光学素子OSnの各々の回折方向を、ビームLBの進行方向に沿って交互に180°回転させることにより、第2の実施の形態と同様に、前段の選択用光学素子OSnで発生したノイズ光としての-1次回折ビームLBn’が、後段の選択用光学素子OSnを透過したとしても、後段の選択ミラーIMnに入射することが阻止される。なお、本実施の形態においても、先の図15Bで示した光電センサDTb、DTcや、図17に示した撮像素子IMSを同様に配置することができる。
以上、本実施の形態では、描画用のビーム(主回折ビーム)LBnに対して角度をもって前段の選択用光学素子OSn(例えばOS1)から発生するノイズ光としての-1次回折ビーム(副回折ビーム)LBn’が、後段の選択用光学素子OSn(例えばOS2)を透過したとしても、後段の描画ユニットUn(例えばU2)に向かうことが阻止される。すなわち、本実施の形態では、ビームLBの光路に沿って相前後して配置される前段の選択用光学素子OSnと後段の選択用光学素子OSnとを、光軸AXaの回りにねじれの関係(180°回転)で配置するので、倒立の結像状態で共役関係にするリレー光学系(レンズGa、Gb)が阻止光学部材(阻止部材)として機能することになる。
[第4の実施の形態]
図19は、第4の実施の形態によるビーム切換部の一部の光学構成を示すであり、本実施の形態では、第1の実施の形態の図5と同様に、相前後して配置される2つの選択用光学素子OSnの間に、レンズGa、Gbによる1段のリレー光学系(倒立結像系)が設けられる。図19では、前段の選択用光学素子OS1と、その後のレンズGaの図示を省略し、レンズGaの後側焦点距離の位置の面Psに配置される選択ミラーIM1から、後段の選択用光学素子OS2までの光路を示す。本実施の形態では、レンズGbと後段の選択用光学素子OS2との間に、台形状のプリズム(イメージローテータ)PMRが設けられる。なお、レンズGbの前側焦点距離の位置は面Psと一致し、後段の選択用光学素子OS2はレンズGbの後側焦点距離の位置に設置される。
図19のプリズムPMRは、光軸AXaに対して傾いた入射面PMRaと、光軸AXaと垂直な面に関して入射面PMRsと対称的な角度で傾いた出射面PMRcと、台形の底辺となる位置に形成される反射面PMRbとを有し、プリズムPMRの光軸AXaと垂直な断面内の形状は、四角形(又は正方形)になっている。レンズGbから平行光束に変換されて射出する0次回折ビームLB1z(又はビームLB)は、光軸AXaと同軸にプリズムPMRの傾いた入射面PMRaに入射した後、プリズムPMR内では底辺を成す反射面PMRbに向かい、反射面PMRbで正規反射された後、プリズムPMRの傾いた出射面PMRcに向かう。プリズムPMRの出射面PMRcから射出する0次回折ビームLB1z(又はビームLB)は、光軸AXaと同軸になるように屈折され、後段の選択用光学素子OS2に入射する。すなわち、プリズムPMRは、入射面PMRaに入射する0次回折ビームLB1z(又はビームLB)と、出射面PMRcから射出する0次回折ビームLB1z(又はビームLB)とが同軸になるように、入射面PMRaと出射面PMRcの傾き角度、光軸AXaと交差する入射面PMRa上の交点と出射面PMRc上の交点との光軸AXa方向の長さ、及び光軸AXaと平行な反射面PMRbと光軸AXaとの間隔等が、プリズムPMRの屈折率に応じて設定される。
以上のような構成で、光軸AXaから偏心した位置を光軸AXaと平行に進んでレンズGbに入射したノイズ光としての-1次回折ビームLB1’(副回折ビーム)は、レンズGbによって平行光束に変換された後、プリズムPMRの入射面PMRa、反射面PMRb、出射面PMRcを順番に通って、後段の選択用光学素子OS2に向かう。その際、選択用光学素子OS2を透過する前段の選択用光学素子OS1からの-1次回折ビームLB1’は、選択用光学素子OS2がオン状態のときに生成される描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB2の回折角とは逆極性の角度で進むため、選択用光学素子OS2の後の選択ミラーIM2に入射しないことになる。このように、後段の選択用光学素子OS2に入射する各ビームの振る舞いは、先の図15に示した第2の実施の形態による2段のリレー光学系(正立結像系)を用いた場合と同じである。従って、本実施の形態では、リレー光学系を構成するレンズ(レンズ部材)としては、レンズGa、Gbの2枚だけであっても、リレー光学系(レンズGb)と後段の選択用光学素子OS2との間に、イメージローテータとしてのプリズムPMRを設けることで、前段の選択用光学素子と後段の選択用光学素子とを、互いに等倍の正立の結像関係に設定できる。
なお、プリズムPMRを図19の状態から光軸AXaの回りにθr°だけ傾ける(回転させる)と、後段の選択用光学素子OS2中に結像される前段の選択用光学素子OS1の回折部分の像は、2・θr°だけ回転する。しかしながら、後段の選択用光学素子OSnに入射する前段の選択用光学素子OSnからのノイズ光としての-1次回折ビームLBn’を、後段の選択用光学素子OSnの後の選択ミラーIMnに入射させないようにする為の光軸Axa回り(X軸回り)の回転角度範囲は大きく取れる為、プリズムPMRの光軸AXa回りの角度設定精度はラフで構わない。但し、プリズムPMRの入射面PMRaに入射する0次回折ビームLBnz(又はビームLB)と、出射面PMRcから射出する0次回折ビームLBnz(又はビームLB)とが精密に同軸となるように、プリズムPMRのZ方向(反射面PMRbの法線方向)の位置誤差、Y軸回りの傾き誤差(反射面PMRbの光軸AXaとの平行度の誤差)は、可能な限り小さくしておく必要がある。
〔変形例〕
図20は、図19に示したプリズムPMRによるイメージローテータの変形例を示す図であり、本変形例では、Y軸と平行であって光軸AXaに対して傾いた2つの反射面M40a、M40bを有する三角ミラーM40と、Z軸と垂直でXY面と平行な反射面を有する平面ミラーM41とを一体的に保持したイメージローテータが用いられる。三角ミラーM40の反射面M40a、M40bの頂点は、XZ面内で平面ミラーM41の反射面の中央を通る法線L41上に位置し、頂角θmは鈍角(例えば110°以上)に設定される。光軸AXaと同軸にレンズGbに入射した0次回折ビームLB1zは、直径が1mm以下の平行光束となって三角ミラーM40に向かい、反射面M40aで反射された後、平面ミラーM41で反射されて、三角ミラーM40の反射面M40b上の光軸AXaが通る位置に入射する。反射面M40bで反射した0次回折ビームLB1zは、再び光軸AXaと同軸になって後段の選択用光学素子OS2に入射する。レンズGbから反射面M40a、平面ミラーM41、反射面M40bを通って選択用光学素子OS2に至るビームの光路長は、レンズGbの後側焦点距離になるように設定される。
一方、前段の選択用光学素子OS1で発生したノイズ光としての-1次回折ビームLB1’(副回折ビーム)は、レンズGbの光軸AXaの上側(+Z方向側)を透過した後に平行光束になると共に、光軸AXaの方向に向けて屈折(偏向)されて、三角ミラーM40の反射面M40aに向かう。反射面M40aで反射された-1次回折ビームLB1’は、0次回折ビームLB1zに対して角度をもって平面ミラーM41に入射する。-1次回折ビームLB1’の平面ミラーM41上の入射位置は、0次回折ビームLB1zの入射位置に対して、僅かに-X方向にずれていると共に、平面ミラーM41への-1次回折ビームLB1’の入射角は、0次回折ビームLB1zの入射角よりも僅かに大きくなっている。平面ミラーM41で反射した-1次回折ビームLB1’は、三角ミラーM40の反射面M40b上の光軸AXaが通る位置から僅かに-Z方向にずれた位置に入射し、反射面M40bで反射されて後段の選択用光学素子OS2に入射する。反射面M40bからの-1次回折ビームLB1’は、選択用光学素子OS2中で0次回折ビームLB1zと交差する。このとき、-1次回折ビームLB1’は、イメージローテータとしての三角ミラーM40と平面ミラーM41とによって、光軸AXaに対して-Z方向側から+Z方向側に傾いて選択用光学素子OS2に入射する。その為、選択用光学素子OS2を透過した-1次回折ビームLB1’は、その後のレンズGaを通ったとしても、先の図15A、図15B、図18で示した構成と同様に後段の選択ミラーIM2からずれた光路を通り、後段の描画ユニットU2への入射が阻止される。
以上の第4の実施の形態、及びその変形例によれば、ビームLBの光路に沿った前段の選択用光学素子OSn(例えばOS1)と後段の選択用光学素子OSn(例えばOS2)とを共役関係にするリレー光学系としてのレンズGa、Gbとイメージローテータとにより、前段の選択用光学素子OSn(例えばOS1)から発生するノイズ光としての-1次回折ビーム(副回折ビーム)LBn’が、後段の選択用光学素子OSn(例えばOS2)を透過したとしても、後段の描画ユニットUn(例えばU2)に向かわないように阻止する阻止光学部材が構成される。
[第5の実施の形態]
図21は、第5の実施の形態によるビーム切換部の全体構成をXY面内で見た図であり、ここでは、2つの光源装置LS1、LS2を設け、第1の光源装置LS1は3つの描画ユニットU5、U6、U3のいずれか1つにビームLBを選択に供給する為に使われ、第2の光源装置LS2は残りの3つの描画ユニットU4、U1、U2のいずれか1つにビームLBを選択に供給する為に使われる。光源装置LS1、LS2は、他の反射ミラーMa1~Ma6、Mb1~Mb6、選択用光学素子OS1~OS6、選択ミラーIM1~IM6、リレー光学系としてのレンズGa、Gb、吸収体TR1、TR2等と共に、光学定盤(ベースフレーム)OBFに取り付けられている。光学定盤OBFの内部には、温調用の液体(クーラント)を流す為の配管が張り巡らせてあり、発熱源となる光源装置LS1、LS2や選択用光学素子OS1~OS6等からの熱によって、他の光学部品が温められたり、光学定盤OBFが熱変形したりすることが抑制される。なお、図21において、選択ミラーIMnの各々の位置に対応して配置され、選択用光学素子OSnの各々でノイズ光として発生する-1次回折ビームLBn’(副回折ビーム)を反射、又は遮蔽する阻止光学部材(図5に示した反射ミラーIMn’やナイフエッジ等)は図示を省略してある。
以下、選択用光学素子OS1~OS6の各々をオフ状態にして光源装置LS1、LS2からビームLBを発生させた場合を想定して、図21の光学構成やビーム光路について説明を行う。光源装置LS1から+X方向に射出されるビームLB(平行光束)は、反射ミラーMa1で-Y方向に反射された後、反射ミラーMa2よって-X方向に反射されて、初段の選択用光学素子OS5に入射する。選択用光学素子OS5を透過したビームLB、或いは選択用光学素子OS5がオン状態の時に発生する描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB5、0次回折ビームLB5z、ノイズ光としての-1次回折ビームLB5’は、リレー光学系(倒立結像系)となる一方のレンズGaに入射する。描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB5は、レンズGaの後側焦点距離の位置の面Psに配置される選択ミラーIM5で-Z方向に反射され、光学定盤OBFに形成された開口部を通って描画ユニットU5に送られる。レンズGaを透過した選択用光学素子OS5からのビームLBは、レンズGbを透過後に、反射ミラーMa3、Ma4で反射されて+X方向に進み、2段目の選択用光学素子OS6に入射する。
選択用光学素子OS6で回折される描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB6は、レンズGaの後側焦点距離の位置の面Psに配置される選択ミラーIM6で-Z方向に反射され、光学定盤OBFに形成された開口部を通って描画ユニットU6に送られる。同様にして、レンズGaを透過した選択用光学素子OS6からのビームLBは、レンズGbを透過後に、反射ミラーMa5、Ma6で反射されて-X方向に進み、3段目の選択用光学素子OS3に入射する。選択用光学素子OS3で回折される描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB3は、レンズGaの後側焦点距離の位置の面Psに配置される選択ミラーIM3で-Z方向に反射され、光学定盤OBFに形成された開口部を通って描画ユニットU3に送られる。選択用光学素子OS3を透過したビームLB、又は0次回折ビームLBnzは、選択用光学素子OS3の後のリレー光学系のレンズGbを通って吸収体TR1に達する。
また、光源装置LS2から-X方向に射出されるビームLB(平行光束)は、反射ミラーMb1で+Y方向に反射された後、反射ミラーMb2よって+X方向に反射されて、初段の選択用光学素子OS2に入射する。選択用光学素子OS2を透過したビームLB、或いは選択用光学素子OS2がオン状態の時に発生する描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB2、0次回折ビームLB2z、ノイズ光としての-1次回折ビームLB2’は、リレー光学系(倒立結像系)となる一方のレンズGaに入射する。描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB2は、レンズGaの後側焦点距離の位置の面Psに配置される選択ミラーIM2で-Z方向に反射され、光学定盤OBFに形成された開口部を通って描画ユニットU2に送られる。レンズGaを透過した選択用光学素子OS2からのビームLBは、レンズGbを透過後に、反射ミラーMb3、Mb4で反射されて-X方向に進み、2段目の選択用光学素子OS1に入射する。
選択用光学素子OS1で回折される描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB1は、レンズGaの後側焦点距離の位置の面Psに配置される選択ミラーIM1で-Z方向に反射され、光学定盤OBFに形成された開口部を通って描画ユニットU1に送られる。同様にして、レンズGaを透過した選択用光学素子OS1からのビームLBは、レンズGbを透過後に、反射ミラーMb5、Mb6で反射されて+X方向に進み、3段目の選択用光学素子OS4に入射する。選択用光学素子OS4で回折される描画用のビーム(+1次回折ビーム)LB4は、レンズGaの後側焦点距離の位置の面Psに配置される選択ミラーIM4で-Z方向に反射され、光学定盤OBFに形成された開口部を通って描画ユニットU4に送られる。選択用光学素子OS4を透過したビームLB、又は0次回折ビームLBnzは、選択用光学素子OS4の後のリレー光学系のレンズGbを通って吸収体TR2に達する。
以上の図21の構成によるビーム切換部によっても、先の第1~第4の各実施の形態と同様に、選択用光学素子(AOM)OS1~OS6の各々で発生するノイズ光としての-1次回折ビームLBn’が、後段の描画ユニットUnに入射することが遮蔽(素子)され、描画されるパターンの品質劣化が防げる。
さらに、本実施の形態では、発熱源となる選択用光学素子OS1~OS6を光学定盤OBF上で個別に温調するローカル空調機構TSWが設けられる。このローカル空調機構TSWは、先の図2に示したビーム切換部中の選択用光学素子OS1~OS6に対しても同様に適用可能である。図22はローカル空調機構TSWの構成を示す斜視図であり、ここでは、Y軸と平行な方向に並ぶ偶数番の選択用光学素子OS2、OS4、OS6をまとめて空調(冷却)する空調機構TSWを示す。空調機構TSWは、光学定盤OBF上で偶数番の選択用光学素子OS2、OS4、OS6を囲むように長方形状に立設された隔壁部TSWa~TSWdと、選択用光学素子OS2、OS4、OS6の各々に側方から温調気体を吹き付ける為の噴出ノズルADNと、隔壁部TSWa~TSWdで囲まれた空間内の気体を排気する排気ポートETB等で構成される。なお、隔壁部TSWa~TSWdの上には、不図示であるがXY面と平行に天板が設けられ、隔壁部TSWa~TSWdで囲まれた空間内の気体の上方への流れが防止される。図22において、YZ面と平行な隔壁部TSWa、TSWbの各々には、選択用光学素子OS2、OS4、OS6の各々を通るビームLBや、選択用光学素子OS2、OS4、OS6の各々から発生する描画用のビームLBn、0次回折ビームLBnz、-1次回折ビームLBn’を通す為の開口部THaが形成される。また、Y方向に関して、選択用光学素子OS2とOS4の間、及び選択用光学素子OS4とOS6の間には、図21に示したように、レンズGbからのビームLB(又は0次回折ビームLBnz)が通るので、その光路を遮らないように、隔壁部TSWa、TSWbの各々には開口部THbが設けられる。隔壁部TSWaとTSWbの間には開口部THbを結ぶようなパイプTBが設けられ、開口部THbを通るビームはパイプTBの内部を通る。
以上の構成において、ローカル空調機構TSWの外側の空間には、全体温調機構で温度調整された気体がビーム切換部の全体に渡って流れるように送風される。その気体は、開口部THbを介してパイプTBの内部にも流通する。そのため、パイプTBの内部を通るビームLB(又は0次回折ビームLBnz)は、ローカル空調機構TSW内の温度の気体に曝されることが無い。また、ローカル空調機構TSWの空間内に配置された噴出ノズルADNから+Y方向に噴出される冷却気体は、選択用光学素子OS2、OS4、OS6の各々に吹き付けられた後、XZ面と平行な隔壁部TSWdに向けて流れ、排気ポートETBを介して排気される。全体温調機構からの送風の流量(送風圧)、噴出ノズルADNからの冷却気体の流量(送風圧)、及び、排気ポートETBでの排気流量(風圧)を適当なバランスに調整することにより、ローカル空調機構TSWの周囲の気体が開口部THaを介して空調機構TSW内に流入し、排気ポートETBを介して排気されるようなフローが得られる。従って、選択用光学素子OS2、OS4、OS6の発熱で温められた空調機構TSW内の気体は、開口部THaからほとんど流れ出すことなく、排気ポートETBを介して排気される。
奇数番の選択用光学素子OS1、OS3、OS5の各々に対しても、図22と同じ同様に、隔壁部TSWa~TSWd、噴出ノズルADN、排気ポートETB、開口部THa、THb、及びパイプTB等を有するローカル空調機構TSWが設けられる。以上のように、発熱源となり得る選択用光学素子OS1~OS6に対して、ローカル空調(局所空調)を行うことにより、選択用光学素子OS1~OS6の温度上昇による回折効率の変動(ブラッグ回折の条件からの変動)が抑制され、描画ユニットU1~U6の各々から基板Pに投射されるビームLBnの強度変動を長期的に小さく抑えることができる。さらに、図6に示したように、選択用光学素子OSnは、結晶体AOGの一辺に超音波振動子VDを接着剤で接合した構成であるが、接着剤によっては硬化した後も脱ガス(アウトガス)を発生することがある。その脱ガスは波長355nmのビームLBと反応して、結晶体AOGのビームLBが通る表面部分(図6中の入射面Pin、射出面Pout)に曇りを発生させることがある。図22のようなローカル空調機構TSWを設けることにより、接着剤から脱ガスが発生しても、排気ポートETBから外部に排出されるため、結晶体AOGの表面のビームLBが照射される部分の曇りが防止され、選択用光学素子OSnの透過率が短期間に低下することが防げる。
[第6の実施の形態]
図23は、第6の実施の形態によるビーム切換部の一部の光学構成を示す図であり、ここでは、先の図5の光学構成に対応させて、上流側の選択用光学素子OS1から下流側の選択用光学素子OS2までの光路を代表的に示す。本実施の形態では、選択用光学素子OSnを、回折により偏向する音響光学変調素子(AOM)に替えて、光源装置LSからのビームLBの偏光状態を切り替える電気光学素子(EO素子)とし、EO素子を通ったビームLB(直径1mm以下の平行光束)を偏光分離する偏光ビームスプリッタPBMn(PBM1~PBM6)を設ける。図23において、前段の選択用光学素子OS1は、駆動電圧DE1による直流電界が印加されたときに、ポッケルス効果やカー効果によって、入射した直線偏光のビームLBの偏光方向を90°回転させる。選択用光学素子OS1の直後には、偏光ビームスプリッタPBM1が配置され、選択用光学素子OS1に直流電界が印加されていないオフ状態のとき、選択用光学素子OS1を通ったビームLBは、そのまま偏光ビームスプリッタPBM1を透過して、リレー光学系のレンズGa、Gbを通って後段の選択用光学素子OS2に入射する。選択用光学素子OS1に直流電界が印加されているオン状態のとき、選択用光学素子OS1を通ったビームLBは偏光方向が90°回転させられるので、偏光ビームスプリッタPBM1に入射したビームLBは偏光分離面で反射され、描画ユニットU1に平行光束の状態で供給される。レンズGa、Gbによるリレー光学系は、前段の選択用光学素子OS1と後段の選択用光学素子OS2とを互いに共役関係にする。
ここで、選択用光学素子OS1に入射するビームLBの偏光方向を横方向(Y方向)としたとき、選択用光学素子OS1がオン状態になると、偏光ビームスプリッタPBM1に入射するビームLBの偏光方向は縦方向(Z方向)となり、偏光分離面でほぼ100%反射される。しかしながら、偏光分離面の光学特性に起因した消光比により、縦方向に偏光されたビームLBの一部(例えば、0.5~1%)が、偏光ビームスプリッタPBM1(偏光分離面)をそのまま透過したノイズ光成分NB1として生じることがある。そのノイズ光成分NB1は、リレー光学系(レンズGa、Gb)の光軸AXaと同軸に進み、後段の選択用光学素子OS2を透過して、後段の偏光ビームスプリッタPBM2に入射する。ノイズ光成分NB1は縦方向に偏光しているので、偏光ビームスプリッタPBM2の偏光分離面で効率的に反射されることになり、後段の描画ユニットU2に入射することになる。
そこで、本実施の形態では、前段の選択用光学素子OS1をオン状態にして、ビームLBを描画ユニットU1に供給するとき、同じタイミングで後段の選択用光学素子OS2に駆動電圧DE2による直流電界を印加してオン状態にする。それによって、前段の偏光ビームスプリッタPBM1を抜けてきたノイズ光成分NB1は、縦方向の偏光から横方向の偏光に変換されて、後段の偏光ビームスプリッタPBM2に入射する。横方向の偏光となったノイズ光成分NB1は、偏光ビームスプリッタPBM2の偏光分離面で効率的に透過され、反射される成分は消光比に応じて、入射したノイズ光成分NB1の一部(例えば、0.5~1%)の光量に減衰する。このように、前段の選択用光学素子OS1と後段の選択用光学素子OS2を同時に同じ時間だけオン状態とすると、最終的に描画ユニットU2に向かうノイズ光成分NB1の強度は、元のビームLBの強度に比べて、2つの偏光ビームスプリッタPBM1、PBM2の消光比の積で決まる値、例えば、0.005~0.01%程度に低減されることになる。従って、前段の偏光ビームスプリッタPBM1から抜けてくるノイズ光成分NB1は、後段の偏光ビームスプリッタPBM2を介して後段の描画ユニットU2に入射したとしても、極めて減衰した強度となるため、描画されるパターンの品質劣化が抑えられる。
また、本実施の形態では、前段の偏光ビームスプリッタPBM1から抜けてくるノイズ光成分NB1は、ほぼそのままの強度で後段の偏光ビームスプリッタPBM2を透過してくるので、先の図17で示したように、後段の偏光ビームスプリッタPBM2を透過したノイズ光成分NB1を撮像素子IMSで撮像することによって、光源装置LSからのビームLBのY方向やZ方向のシフト変動を、描画動作中でもモニターすることができる。
[その他の変形例1]
以上の第1~第6の実施の形態では、先の図8~図10で説明したように、描画ユニットUnの各々から基板Pに投射される描画用のビームLBnは、図8に示した描画制御装置200で生成される描画データ(描画ビット列データ)SDnに応答して、図9に示した光源装置LSから出力される元のビームLBをオン・パルス光とオフ・パルス光とに切替えることで、描画すべきパターンに応じて強度変調されている。その為、ビーム切換部の6つの選択用光学素子OSnの各々は、描画ユニットUnの各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置に同期して、図13で説明したよう描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの走査時間(図13の時間TPab/3に相当)の間だけ順番にオン状態に切り替わるだけであった。しかしながら、選択用光学素子OSnのオフ状態とオン状態との間の遷移時間が十分に短い(応答性が高い)場合には、描画用のビームLBを描画データSDnに応答して強度変調するための変調部材として選択用光学素子OSnを用いても良い。
その場合、図10に示した強度調整制御部250から出力される6つのスイッチ信号LP1~LP6(図13参照)と、描画ユニットUnの各々に対応して個別に生成される描画データSD1~SD6とを入力する6つのANDゲート回路(論理積回路)を設け、そのANDゲート回路の出力を高周波アンプ回路251a~251fに印加して、駆動信号DF1~DF6の各々のOn/Offをスイッチする。その際、光源装置LSから射出されるビームLBは、クロック信号LTC(周波数Fa)に応答したオン・パルス光のみになるようにしても良い。このように、図2、図5、図15A、図15B、図18、図21の各々に示した選択用光学素子OSnは、光源装置LSからのビームLBを選択された1つの描画ユニットUnに描画用のビームLBnとして時分割に供給する為のスイッチング機能と、描画用のビームLBnを描画データSDn(画素情報)に基づいて強度変調する変調機能とに兼用させることができる。選択用光学素子OSnにスイッチング機能と変調機能とを持たせた場合も、例えば、前段の選択用光学素子OS1からは、描画データSD1で強度変調されたノイズ光としての-1次回折ビームLB1’が発生する可能性があることに変わりはない。さらに、選択用光学素子OSnにスイッチング機能と変調機能とを持たせる場合、光源装置LSは必ずしもパルス発光するレーザ光源である必要はなく、紫外波長域(波長200~400nm)でレーザ光を連続発光するレーザ光源に替えることができる。
[その他の変形例2]
また、上記の各実施の形態では、ポリゴンミラーPMを用いて描画用のビームLBnのスポット光SPを基板P上で主走査方向に高速走査しつつ、基板Pを副走査方向に移動させる直描方式の描画ユニットUnを使ったが、ポリゴンミラーPMは往復揺動するガルバノミラーに替えても良い。さらに、光源装置LSからのビームLBを時分割に振分けてパターン露光を行う露光装置であれば、直列に配置された複数の選択用光学素子OSnとリレー光学系とを有するビーム切換部を利用することができる。例えば、多数の可変マイクロミラーを有する空間光変調器(SLMやDMD)によって変調された光パターン分布を基板Pに投影する為の投影コラム(描画ユニット)を複数備え、複数の投影コラムのいずれか1つが選択的に光パターン分布を基板Pに投影するように、光源装置からビームを各空間光変調器に時分割で供給するマスクレス露光装置であれば、複数の選択用光学素子OSnとリレー光学系とを有するビーム切換部を利用することができる。この場合、前段の選択用光学素子OSnがオン状態となって対応する投影コラムの空間光変調器に描画用のビーム(+1次回折ビーム)LBnを供給している露光期間中、すなわち、描画すべきパターンに応じて空間光変調器で強度分布が変調された光ビームを基板Pに投射している期間中、前段の選択用光学素子OSnで発生した-1次回折ビームLBn’がノイズ光となって後段の選択用光学素子OSnを介して後段の投影コラムの空間光変調器に供給される可能性がある。それによって、後段の投影コラムによるゴースト露光(被り露光)の現象が生じることがあるが、各実施の形態のように、リレー光学系の瞳空間中でノイズ光となる-1次回折ビームLBn’を遮蔽又は減衰させたり、リレー光学系を正立の結像系にしたりすることで、容易にノイズ光によるゴースト露光の発生を防止できる。