特許文献1に係る櫛は、櫛歯の長さが極端に短いため、櫛歯間に収まる毛髪量が少なくなり、それに伴い形成される逆毛の量も限られるので、ボリューム感を出すには何度も逆毛を形成する手順を繰り替えす必要が生じ手間がかかると共に、また、一部の毛髪が毛玉的に小さく部分的に丸まり、全体として均等にボリューム感のある逆毛を形成しにくいという問題がある。さらに、特許文献1に係る櫛で、逆毛を形成するには歯底に毛髪を押し当てることになるが、特許文献1に係る櫛では歯底の深さが一定であるため、セット対象の毛髪が均一に歯底に当たり、毛髪に対して強く櫛を押し当てないと、逆毛のセットに適したテンション(櫛を毛髪に押し当てることで得られるテンション)が得にくいという問題もある。
特許文献2に係る櫛については、逆毛のセットを行う際、バックコームによるボリューム感の持続性を高めるため、第1の櫛歯と第2の櫛歯の両方を使用する必要があるため、通常の櫛を用いる場合と大幅に使い方が異なるので、各櫛歯(第1の櫛歯および第2の櫛歯)の使い方に特別な技術が要求されるという問題がある。
また一般に、逆毛のセットで効率良く逆毛を立たせるには、毛先から根元側へ櫛で毛髪を梳く際、毛髪の櫛に対する引っ掛かり(櫛で引っ張られる度合、毛髪にかかるテンション、櫛と毛髪の抵抗等に相当)の度合を、毛髪を傷めない(毛の表面を傷つけない)程度の範囲で、適度に大きくすることが重要となる。上述した特許文献3〜8に係る各櫛を仮に、逆毛のセットに転用したとしても、逆毛のセットに必要な所要量の毛髪に対して適度な引っ掛かりを得られない、又は引っ掛かりすぎて毛髪を傷める等の問題が生じる。
たとえば、特許文献3に係る櫛は、染色用に毛束を取り分けるために、通常の櫛に比べて各櫛歯間の隙間が大きくしてあるため、逆毛のセットの際、櫛歯間の抵抗が少なくなり、櫛歯間での毛髪が引っ掛かりにくいので適度なテンションが得られないと共に、ダイレクトに櫛歯間の歯底に毛髪は引っ掛かるので、歯底のエッジで毛髪を傷めやすい。また、特許文献4に係る櫛では、浅い切込みを有する歯において毛髪が浅い切り込みから抜けやすいので、浅い切り込みで十分な量の毛髪を逆毛にセットできないと共に、浅い切り込みと通常の歯底では深さの差が大きすぎるので、均等間のある逆毛をセットしにくい。このような特許文献4に係る櫛での問題は、特許文献5に係る櫛も、広い幅の先端側の歯底と櫛本体側の歯底で深さの差が大きすぎる構成であることから同様に生じる。ので、は、でも、背の低い歯の上部に設けられた歯先から毛髪は抜けやすいので、逆毛のセットを効率良く行えない。
特許文献6に係る櫛は、日本の伝統的な黄楊櫛(つげの木で作った櫛)であり、そもそも逆毛のセットに使用することは考慮されていない上、無理矢理使用したとしても、太い歯の群では太い歯同士の間隔が大きいため、毛髪が引っ掛かりにくく良好に逆毛をセットできないと共に、各箇所のエッジが鋭いので毛髪を傷めやすい。また、特許文献7に係る櫛は、歯の根元側の大きな一つの突起部が邪魔になって、逆毛を立たせにくい。さらに、特許文献8に係る櫛は、長い第1の歯と、短い第1の歯とでは、長手方向の中央箇所以外で、歯間の歯底深さが同一であることから、歯底に引っ掛かる毛髪のテンションも一様となり、均等感のある逆毛を形成しにくいという問題がある。なお、合成樹脂製の櫛で品質の良好でない製品では、櫛歯の外周にバリが突出するものがあり、このようなバリの突出した櫛を用いると、毛髪が引っ掛かりやすくなり、逆毛を立てやすいことが実務的に知られているが、バリは薄く鋭い外周を有することから、このようなバリにより毛髪が必要以上に傷つけられる問題がある。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、櫛歯の突設方向の途中に段差部を設けることで、逆毛セットの際の毛髪の引っ掛かり箇所を新たに生じさせ、毛髪をできるだけ傷つけることなく、逆毛セットに必要な適度のテンションを得られやすくした櫛を提供することを目的とする。
また、本発明は、櫛歯の先端側から段差部へ至る範囲の部分、又は段差部から根元側へ至る範囲の部分をテーパー状にすることにより、櫛歯自体の外周も毛髪の抵抗になりやすい形状にして、逆毛セットに必要な適度のテンションを得られやすくした櫛を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、各櫛歯の先端高さ、又は各歯底の深さを相違させることで、各毛髪の引っ掛かり具合を分散させて、均等なボリューム感のある逆毛を形成しやすくした櫛を提供することを目的とする。
さらにまた、本発明は、段差部を形成していない櫛歯を追加的に配列することで、複数列の櫛歯により毛髪の引っ掛かり箇所を増すようにした櫛を提供することを目的とする。
そして、本発明は、歯底の形状も工夫することで、歯底により毛髪を出来るだけ傷つけないようにした上で、従来より強いテンションを得られやすくした櫛を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明に係る櫛は、長手方向を有する櫛本体から突設した複数本の櫛歯が配列してある櫛において、前記櫛歯は、突設方向の途中に段差部を形成しており、前記櫛歯における先端側から前記段差部へ至る第一範囲部は、前記段差部から根元側へ至る第二範囲部に比べて、前記櫛歯の突設方向に直交する方向の寸法を小さくしてあることを特徴とする。
また、本発明に係る櫛は、前記段差部が、隣接する櫛歯間で表出するように形成してあることを特徴とする。
さらに、本発明に係る櫛は、前記段差部が、前記櫛本体の幅方向に応じた方向から前記櫛歯が見られた場合に、前記櫛歯の外周に表出するように形成してあることを特徴とする。
さらにまた、本発明に係る櫛は、前記段差部が、前記櫛歯の根元側へ広がるように前記突設方向に対して斜めに形成してあることを特徴とする。
本発明に係る櫛は、前記第一範囲部が、前記先端側から前記段差部へ広がるようにテーパー状に形成してあることを特徴とする。
また、本発明に係る櫛は、前記第二範囲部が、前記段差部から前記根元側へ広がるようにテーパー状に形成してあることを特徴とする。
さらに、本発明に係る櫛は、前記複数本の櫛歯の中で、連続して隣接する3本以上の各櫛歯の先端高さを、それぞれ相違させてあることを特徴とする。
さらにまた、本発明に係る櫛は、前記複数本の櫛歯の中で、連続して隣接する櫛歯間の3箇所以上の各歯底は、底深さをそれぞれ相違させてあることを特徴とする。
本発明に係る櫛は、前記段差部が形成された複数本の櫛歯の配列と平行に、段差部が形成されていない複数本の櫛歯が配列してあり、前記段差部が形成されていない各櫛歯の間隔は、前記段差部が形成された各櫛歯の間隔に比べて広くしてあることを特徴とする。
また、本発明に係る櫛は、前記段差部が形成された複数本の櫛歯の配列と平行で且つ前記配列の両側に、段差部が形成されていない複数本の櫛歯がそれぞれ配列してあり、前記段差部が形成されていない各櫛歯の間隔は、前記段差部が形成された各櫛歯の間隔に比べて広くしてあり、前記段差部が形成された複数本の櫛歯の中のいずれかは両側を、前記段差部が形成されていない複数本の櫛歯の中のいずれかにより挟まれるようにしてあることを特徴とする。
本発明に係る櫛は、前記段差部が形成されていない櫛歯が、前記段差部が形成された櫛歯に比べて長くしてあることを特徴とする。
また、本発明に係る櫛は、前記段差部が形成された櫛歯が、前記段差部が形成されていない櫛歯に比べて長くしてあることを特徴とする。
さらに、本発明に係る櫛は、前記段差部が形成された複数本の櫛歯の中の一部が、前記段差部が形成されていない櫛歯に比べて長くしてあり、前記段差部が形成された複数本の櫛歯の中の他部は、前記段差部が形成されていない櫛歯に比べて短くしてあることを特徴とする。
さらにまた、本発明に係る櫛は、前記段差部が形成された櫛歯に係る歯底が、前記櫛本体の幅方向における中央箇所で凸となるように形成してあることを特徴とする。
本発明にあっては、櫛歯に段差部を形成すると共に、櫛歯における先端側から段差部へ至る第一範囲部を、段差部より根元側へ至る第二範囲部に比べて、櫛歯の突設方向に直交する方向の寸法が小さくなるようにしたので、櫛歯の先端から根元へ至る途中で段差部が櫛歯の外周で表出するようになる。そのため、逆毛のセットを行う際、櫛により梳かれる毛髪に対して段差部が引っ掛かり箇所となり、この段差部で所要の抵抗感を得られ、櫛全体として従来の櫛に比べて毛髪にかかるテンションを大きくでき、逆毛を立てやすくなる。
本発明にあっては、隣接する櫛歯間で段差部が表出するので、櫛歯間の間隔の寸法が、表出する段差部の存在によって段階的に変化するので、逆毛のセットにおいて毛髪が櫛歯間に入り込む際、毛髪に対する抵抗も変化し、それにより毛髪の引っ掛かり度合いも増えて、所要のテンションを得やすくなる。
また、本発明にあっては、櫛本体の幅方向に応じた方向から櫛歯が見られた場合に、櫛歯の外周に表出するように段差部が形成してあるので、逆毛セットの際、櫛本体の幅方向へ櫛歯の外周に沿って流れた毛髪が段差部に接触するようになるので、櫛で梳く際の毛髪に対する抵抗を高めて、所要のテンションを得やすくなる。
本発明にあっては、段差部が突設方向に対して斜めに形成してあるので、毛髪が段差部に強く引っ掛かって、毛髪を傷めてしまうこと、又は毛髪を切断してしまうような事態の発生が回避され、さらに、ある程度以上のテンションがかかれば、斜めに形成した段差部から毛髪が抜け落ちて歯底へ向かうように誘導でき、毛髪をいたわりながら逆毛を形成できるようになる。
また、本発明にあっては、櫛歯の先端側から段差部へ至る第一範囲部又は段差部から根元側へ至る第二範囲部をテーパー状に形成したので、ストレート形状の櫛歯に比べて、毛髪が触れる櫛歯自体の外周でも毛髪に対する抵抗が強くなり、逆毛セットに必要な適度のテンションを得やすくなる。
本発明にあっては、連続して隣接する3本以上の各櫛歯の先端高さを相違させたので、逆毛のセット時に櫛を歯先から毛髪へ差し込むと、毛髪が歯先に触れる時期に違いが生じ、歯先が他と比べて凹となる箇所ほど、歯先が他と比べて凸となる箇所に対して、櫛歯が毛髪に触れるのが遅れるため、歯先が凹の箇所における毛髪部分は相対的に抵抗が少なくなる。その結果、各歯先における毛髪に対する抵抗が分散され、逆毛のセットの際、一部の毛髪が毛玉的になりにくくなり、毛髪が密集することなく均等的に散らばった逆毛を形成しやすくなる。なお、本発明で、先端高さが相違するのを、連続して隣接する3本以上の櫛歯に限定したのは、隣接する2本の櫛歯であれば、歯先による抵抗が分散される程度が十分でないためである。
本発明にあっては、連続して隣接する櫛歯間の3箇所以上の歯底を異なる底深さにしたので、逆毛のセットの際、毛髪が歯底に触れる時期に違いが生じ、毛髪の歯底に引っ掛かる程度が、歯底ごとに異なるようになる。すなわち、他より凸状の歯底箇所に引っ掛かる毛髪部分は、飛び出ているため強く引っ掛かるようになる。その結果、毛髪の櫛の歯底に引っ掛かる程度について、部分的に強弱の差が生じ、引っ掛かる程度が強い毛髪部分を中心に逆毛のセットに好適なテンションが得られ、容易に逆毛をセットできるようになる。また、歯底は3箇所以上の異なる底深さであるので、中間的な底深さの歯底に引っ掛かる毛髪は、中間的な程度のテンションが得られ、最も凸状の歯底箇所と、最も凹状の歯底箇所における引っ掛かり程度の強弱の差を緩和して、引っ掛かり程度の強弱の差による毛髪の絡まりの発生を抑えて、逆毛のセット時にスムーズに櫛を動かしやすくなる。
本発明にあっては、段差部が形成された複数本の櫛歯による配列と平行に、段差部が形成されていない複数本の櫛歯が並べたので、段差部を形成した櫛歯の列と、段差部が形成されていない櫛歯の列との間でも、毛髪が入り込み、毛髪に対する抵抗を増すことができると共に、それぞれの列における各櫛歯間の間隔が相違させたので、引っ掛かり度合いを分散させられるようになる。
本発明にあっては、段差部が形成された複数本の櫛歯の列の両側に、段差部が形成されていない複数本の櫛歯が配列したので、段差部を形成した櫛歯の列と、段差部が形成されていない櫛歯の列との間にも毛髪が入り込み、毛髪に対する抵抗をさらに増すことができると共に、それぞれの列における各櫛歯間の間隔が相違させたので、引っ掛かり度合いを分散させられるようになる。
本発明にあっては、段差部が形成されていない櫛歯を、段差部が形成されている櫛歯に比べて長く形成したので、段差部が形成されていない櫛歯の先端は、段差部が形成されている櫛歯の先端より高く位置するようになる。そのため、段差部が形成されていない櫛歯は、櫛歯間の間隔が広いことから、段差部が形成されていない櫛歯の先端部分を、髪の分け目の形成、大まかな整髪などの用途に向いた荒歯として使用できるようになり、櫛の使い勝手を広められる。
本発明にあっては、段差部が形成された櫛歯を、段差部が形成されていない櫛歯に比べて長く形成したので、段差部が形成された櫛歯の先端は、段差部が形成されていない櫛歯の先端より高く位置するようになる。そのため、段差部が形成された櫛歯は、櫛歯間の間隔が狭いことから、段差部が形成された櫛歯の先端部分を、いわゆる密歯として、形成した逆毛の表面を撫で付けることに使うことができ、逆毛形成に用いた櫛を、そのまま逆毛表面の撫で付け作業にまで使うことができ、逆毛形成から逆毛表面整髪に至る一連の手順を一つの櫛でスムーズに進めることが可能となる。
本発明にあっては、段差部が形成された複数本の櫛歯の中の一部を、段差部が形成されていない櫛歯に比べて長くすると共に、段差部が形成された複数本の櫛歯の中の他部を、段差部が形成されていない櫛歯に比べて短くしたので、いわゆる密歯として用いることができる範囲と、いわゆる荒歯として用いることができる範囲を具備するようになる。その結果、一本の櫛で、密歯に適した用途と、荒歯に適した用途に対応できるようになり、逆毛形成及び整髪に係る一連の手順を一段とスムーズに行える。
本発明にあっては、段差部が形成された櫛歯に係る歯底を、櫛本体の幅方向における中央箇所で凸となるように形成したので、歯底に引っ掛かる毛髪は、凸となる中央箇所で線接触又は点接触的に歯底と接触することになり、毛髪の歯底に対する接触圧が高まり、歯底での引っ掛かり度合いを一段と高めて、逆毛を形成しやすくなると共に、歯底のエッジ等により毛髪を傷めることも低減できるようになる。
本発明にあっては、櫛歯の外周へ表出するように段差部を形成したので、逆毛セットの際、櫛により梳かれる毛髪を段差部で引っ掛けて、所要の抵抗感を得ることができ、櫛全体として従来の櫛に比べて毛髪にかかるテンションを大きくでき、逆毛セットを良好に行える。
本発明にあっては、段差部が突設方向に対して斜めに形成してあるので、毛髪が段差部に強く引っ掛かって毛髪が傷つくことを回避でき、また、或る程度以上のテンションがかかれば、斜めに形成した段差部から抜け落ちて、歯底へ向かうように誘導して毛髪をいたわりながら逆毛を形成できる。
本発明にあっては、櫛歯の先端側から段差部へ至る第一範囲部又は段差部から根元側へ至る第二範囲部をテーパー状に形成したので、ストレート形状の櫛歯に比べて、毛髪が触れる櫛歯自体の外周でも毛髪に対する抵抗を強くでき、逆毛セットに必要な適度のテンションを得ることができる。
本発明にあっては、各櫛歯の先端高さを相違させたので、各歯先における毛髪に対する抵抗を分散でき、逆毛セットの際、一部の毛髪が毛玉的になるのを防止でき、毛髪が密集することなく均等的に散らばった逆毛を形成できる。
本発明にあっては、各歯底を異なる底深さにしたので、逆毛のセットの際、毛髪の歯底箇所に引っ掛かる程度が、歯底箇所ごとに異なるようにでき、逆毛セットに必要な適度のテンションを生じさせて逆毛を均等にセットできる。
本発明にあっては、段差部が形成された複数本の櫛歯の列と平行に、段差部が形成されていない複数本の櫛歯が配列したので、毛髪に対する抵抗を増すことができる上、それぞれの列における各櫛歯間の間隔が相違させたので、引っ掛かり度合いを分散させて、逆毛セットを行いやすくできる。
本発明にあっては、段差部が形成されていない櫛歯を、段差部が形成されている櫛歯に比べて長く形成したので、段差部が形成されていない櫛歯の先端部分を荒歯的に使用でき、櫛の使い勝手を広められる。
本発明にあっては、段差部が形成された櫛歯を、段差部が形成されていない櫛歯に比べて長く形成したので、段差部が形成された櫛歯の先端部分を密歯的に使用でき、櫛の使い勝手を広められる。
本発明にあっては、段差部が形成された複数本の櫛歯の中の一部を、段差部が形成されていない櫛歯に比べて長くすると共に、段差部が形成された複数本の櫛歯の中の他部を、段差部が形成されていない櫛歯に比べて短くしたので、一部の範囲を密歯的に用いることができると共に他部の範囲を荒歯的に用いることができ、逆毛の用途に加えて櫛を他用途に使うことができる。
本発明にあっては、段差部が形成された櫛歯に係る歯底を、櫛本体の幅方向における中央箇所で凸となるように形成したので、歯底に引っ掛かる毛髪を、凸となる中央箇所で線接触又は点接触的に歯底と接触させて、毛髪の歯底に対する接触圧を高めることができ、それにより、歯底での引っ掛かり度合いを一層、高めて逆毛を形成しやすくできる。
図1〜3は、本発明の実施形態に係る櫛1の全体的な外観を示す概略図である。本実施形態の櫛1は、棒状の把持部4を櫛本体2から突出させた形状のテールコームと称されるタイプであり、本実施形態では合成樹脂で成形している。櫛1は図1、3等に示すように、中櫛歯20の列の両側に外櫛歯7、8をそれぞれ平行に配列した計三列の櫛歯を設けると共に、中櫛歯20等を特徴的な形状にして、逆毛を形成しやすくしたものになっている。以下、本実施形態の櫛1について詳しく説明する。なお、図1中のX軸は、複数本の外櫛歯7、8及び中櫛歯20を突設した櫛本体2の長手方向(棒状の把持部4の長手方向とも同方向)に平行な軸であり、Y軸は、櫛本体2の幅方向に平行な軸(上記X軸に直交する方向の軸)であり、Z軸は、中櫛歯20の突設方向に平行な軸(上記X軸及びY軸の両方に直交する方向の軸)である。これらX軸、Y軸、及びZ軸の各方向(X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向)は、他の図においても同様である。
櫛本体2は、X軸方向に延出する棒状部分における先端部2a及び後端部2bのそれぞれより、爪状の櫛保護部5a、5bをZ軸方向へ突設しており、これら櫛保護部5a、5bは、X軸方向に配列された複数本の外櫛歯7、8及び中櫛歯20を挟み込むように位置して、各櫛歯7、8、20を保護する役目を担っている。また、櫛本体2は、棒状部分に一方の側面2cから他方の側面2dへ貫通(Y軸方向へ貫通)する貫通孔6を、X軸方向へ所定の間隔をあけて複数形成している。これらの貫通孔6は、X軸方向を長軸とした楕円形状であり、孔周囲箇所に、楕円状に窪ませたザグリ部を形成している。
さらに、櫛本体2は、後端部2bに三角形的な形状の連結部3を形成して、棒状の把持部4と櫛本体2とを繋ぐようにしている。連結部3は、X軸方向へ延出する溝状の凹部3aを形成すると共に、その凹部3aとZ軸方向へ間隔をあけて、雨滴形状の貫通穴3b、3cを形成している。連結部3は、これら凹部3a、及び貫通穴3b、3cを形成することで、連結部3自体の剛性を低下させて、連結部3を撓みやすくしており、それにより美容師・理容師等のユーザが櫛1を使用する際に、把持部4及び櫛本体2を把持するような持ち方で力を入れると、連結部3が撓んで湾曲して、櫛全体が手になじむようにしている。
さらにまた、櫛本体2は、図3に示すように、両方の側面2c、2dを凹凸形状の湾曲面にして(凹状の各箇所に貫通孔6が位置する)、ユーザが指で櫛本体2の側面2c、2dを把持するような持ち方をする際に対して、指先の滑り止めとして凹凸形状の湾曲面が機能するようにしている。同様な理由に、櫛本体2は、背面2e(各櫛歯7、8、20が位置する側と反対側の面)も凹凸形状の湾曲面にすると共に、櫛本体2と連なる連結部3の周囲、及び把持部4の周囲も凹凸形状にしてすべり止め機能を発揮できるようにしている。
また、櫛本体2は、上面2fよりピン状の櫛歯7、8を複数突設し、図5に示すように、各櫛歯7、8の間隔を寸法P(ピッチ寸法P)に設定している。なお、ピッチ寸法Pの数値例としては、約3mm〜8mm程度の範囲が考えられ、逆毛を形成しやすくする点では約5mm前後に設定することが好適となる。さらに、櫛本体2は、図4に示すように、中櫛歯20を設けた別体の中櫛歯部材10を嵌め込む長溝状のスロット部2gを、櫛本体2の幅方向の中央箇所でX軸方向へ延出するように形成している。スロット部2gは、後端側に、中櫛歯部材10を係止するための係止突起2hを突設している。なお、図4に示す櫛本体2は、図3に示すA−A線における断面の形状を表している。
図4に示すように、中櫛歯部材10は全体が板状の部材になっており、長板状のベース部11より複数本の中櫛歯20を突設したものになっている。ベース部11は、一端部11cから他端部11dにかけて、複数の楕円穴12(楕円穴12はベース部11を貫通)を所定の間隔をあけて形成しており、これらの楕円穴12は、中櫛歯部材10が櫛本体2のスロット部2gに取り付けられた際、櫛本体2の貫通孔6と位置が一致して、両者はそれぞれ連通するようになっている。貫通孔6は、楕円穴12と連通することで通気性が確保されることになり、美容師・理容師等のユーザが、櫛本体2の側面2c(又は他方の側面2d)に指をあてがうような持ち方をすれば、側面2c(又は他方の側面2d)の凹凸形状の湾曲面により、指先が凹箇所の貫通孔6へ案内され、側面2c(又は他方の側面2d)にあてがった状態の指先を、貫通孔6を通じて外気に触れさせることができ、水分・薬液等で指先が濡れていても指先を乾きやすくすることができ、濡れた指先で櫛が滑りやすくなる状況を改善できる。
また、中櫛歯部材10のベース部11は、複数の長溝部13を、各楕円穴12の上方に計三カ所形成して、中櫛歯部材10が櫛本体2のスロット部2gに入り込みやすくしている。さらに、中櫛歯部材10は、他端部11dに係止凹部11eを形成しており、この係止凹部11eへは、中櫛歯部材10を櫛本体2のスロット部2gに嵌め込んだ際、スロット部2gの係止突起2hが係合し、中櫛歯部材10の抜け止めとして機能する。なお、中櫛歯部材10のベース部11における背面11aと反対側の中櫛歯20を突設する上部11bの面は、後述するように、中櫛歯20における櫛歯間の歯底の底深さを相違させたことで、ジグザグ形状になっている。
図6は、中櫛歯部材10が有する複数本の中櫛歯20の詳細を示している。本実施形態の中櫛歯20は、先端高さの異なる計3パターンの第1中櫛歯30、第2中櫛歯40、及び第3中櫛歯50を含んでいる。連続して順次隣接する第1中櫛歯30、第2中櫛歯40、及び第3中櫛歯50は一つのグループ単位として櫛歯群を構成し、中櫛歯20は、このような櫛歯群を、X軸方向に沿って複数並べた集合体となっている。なお、図6は、Y軸方向に沿った方向(櫛本体2の側面2cが正面図となる方向)から見た中櫛歯20を示している。
第1中櫛歯30、第2中櫛歯40、及び第3中櫛歯50において、最も先端位置が高いのは第3中櫛歯50であり、二番目に先端位置が高いのが第2中櫛歯40であり(第2中櫛歯40は、その先端40aが、第3中櫛歯50の先端50aより高さ寸法h2だけ低い)、最も先端位置が低いのが第1中櫛歯30になっている(第1中櫛歯30は、その先端30aが第2中櫛歯40の先端40aより高さ寸法h1だけ低い)。高さ寸法h1、h2の数値例としては、約1mm〜3mmの範囲が考えられ、約1mm程度が均等感のある逆毛を形成しやすく好適である。
なお、図5に示すように、中櫛歯部材10が櫛本体2に嵌め込まれた状態では、最も先端位置が高い第3中櫛歯50であっても、外櫛歯7(外櫛歯8)より高さ寸法H(外櫛歯7の先端7aから第3中櫛歯50の先端50aまでの寸法)だけ低くなっており、そのため、外櫛歯7(外櫛歯8)は中櫛歯20より長く、その先端側から高さ寸法Hの範囲には、中櫛歯20(第1中櫛歯30、第2中櫛歯40、及び第3中櫛歯50)が存在しないので、櫛1は、外櫛歯7(外櫛歯8)を、その先端側から高さ寸法Hの範囲においてピッチ寸法Pの荒歯として用いることが可能となっており、髪の分け目の形成、大まかな整髪等に使うことができる。なお、高さ寸法Hの数値例としては約3mm〜10mmの範囲が考えられ、5mm前後が使いやすく好適である。
また、図6に示すように、第1中櫛歯30は、その長手方向となる突設方向(Z軸方向)の途中に段差部32を形成している。段差部32は、根元側(突設元となるベース部11側)へ厚み寸法(X軸方向に沿った寸法)が広がるように、その外周辺が斜めに形成されており、その結果、段差部32は全体として、台形状になっている。このようなY軸方向に沿った方向(櫛本体2の側面2cが正面図となる方向)から見た段差部32の斜めの外周辺は、隣接する第2中櫛歯40との間(櫛歯間)で表出するようになっている。
さらに、第1中櫛歯30は、先端30aから段差部32の上端32aに至る範囲を第一範囲部31にすると共に、段差部32の下端32bから根元30b(ベース部11の上部11bの突設基部)に至る範囲を第二範囲部33としている。第一範囲部31は、先端30aから段差部32へX軸方向に沿った厚み寸法(第1中櫛歯30の突設方向に直交する方向の寸法)が広がるようにテーパー形状になっており、詳しくは、先端30a側の厚み寸法をw1、段差部32の上端32a側の厚み寸法をw2とした場合、w1<w2の関係が成立するにしている。同様に、第二範囲部33は、段差部32の下端32bから根元30bへX軸方向に沿った厚み寸法が広がるようにテーパー形状になっており、詳しくは、段差部32の下端32bの厚み寸法をw3、根元30b側の厚み寸法をw4とした場合、w3<w4の関係が成立するようにしている(w4の数値例は約0.8mm〜2.0mmの範囲が考えられる)。なお、段差部32は、上述したように全体が台形状であることから、第一範囲部31に係る下側の厚み寸法w2は、第二範囲部33に係る上側の厚み寸法w3に比べて小さくなっている(w2<w3)。
第2中櫛歯40及び第3中櫛歯50は段差部等について、上述した第1中櫛歯30と基本的に同等の構成になっており、突設方向(Z軸方向)の途中に台形状の段差部42、52を形成し、先端40a、50aから段差部42、52の上端42a、52aに至る範囲をテーパー形状の第一範囲部41、51にすると共に、段差部42、52の下端42b、52bから根元40b、50bに至る範囲をテーパー形状の第二範囲部43、53としている。なお、各中櫛歯30、40、50は上述したように各先端30a、40a、50aの高さをそれぞれ相異させているが、各中櫛歯30、40、50における段差部32、42、52の高さは揃えている。
隣接する各中櫛歯30、40、50の間隔(ピッチ寸法)は、本実施形態では同寸法にしており、具体的には第1中櫛歯30と第2中櫛歯40のピッチ寸法をp1、第2中櫛歯40と第3中櫛歯50のピッチ寸法をp2、第3中櫛歯50と次の櫛歯群を構成する第1中櫛歯30のピッチ寸法をp3とした場合、p1=p2=p3の関係になっている。各中櫛歯30、40、50の間隔がp1=p2=p3であっても、各中櫛歯30、40、50が上述した形状であるため、各櫛歯間の隙間寸法は、各中櫛歯30、40、50の突設方向(Z軸方向)における各所で変化するようになっている。なお、具体的なp1、p2、p3の数値例としては、約0.7mm〜2mmの範囲が考えられ、約1mm前後が逆毛を形成しやすく好適である。
図6に示すように、例えば、第3中櫛歯50と次の櫛歯群を構成する第1中櫛歯30の間の隙間は、第1中櫛歯30における先端でw5という隙間寸法であるが、第一範囲部31、51がテーパー形状であることから、段差部52の上端52aにおける隙間寸法w6は、隙間寸法w5より狭まっている(w6<w5)。また、段差部52の下端52bにおける隙間寸法は、段差部32、52がそれぞれ台形状であることから、隙間寸法w7<隙間寸法w6の関係が成立するように狭まっており、さらに、根元50bにおける隙間寸法は、第二範囲部33、53がテーパー形状であることから、隙間寸法w8<隙間寸法w7の関係が成立するように、更に狭まっている。なお、隙間寸法w6の数値例としては、約0.8mm〜1.2mmの範囲が考えられ、隙間寸法w7の数値例としては、約0.3mm〜0.7mmの範囲が考えられる。以上のように、第3中櫛歯50と次の櫛歯群を構成する第1中櫛歯30の間の隙間は、歯底へ行くほど隙間寸法は狭まっており、しかも、途中に台形状の段差部32、52が存在することで、一律に隙間寸法が狭くなるのではなく、段差部32、52に応じた箇所で一旦、急に隙間寸法が狭くなるので、第3中櫛歯50と第1中櫛歯30との間に、毛髪が入り込んだ際に抵抗となって所要のテンションが得られる。このような櫛歯間の隙間寸法の変化の具合は、第1中櫛歯30と第2中櫛歯40の間の隙間、及び第2中櫛歯40と第3中櫛歯50の間の隙間でもそれぞれ同等になっている。
また、連続して隣接する各中櫛歯30、40、50における各櫛歯間の隙間の歯底の底深さも、上述した先端高さと同様に、それぞれ相違させてある。例えば、第3中櫛歯50と次の櫛歯群を構成する第1中櫛歯30の間の隙間における第1歯底25が最も深い位置に形成されたものとなっており、二番目に深い位置に形成されるのは第1中櫛歯30と第2中櫛歯40の間の隙間における第2歯底26であり、最も深い第1歯底25に対して高さ寸法h3だけ高く位置し、最も浅い位置に形成されるのは第2中櫛歯40と第3中櫛歯50の間の隙間における第3歯底27であり、二番目に深い第2歯底26に対して高さ寸法h4だけ高く位置している。なお、高さ寸法h3、h4の数値例は上述した高さ寸法h1、h2と同程度である。
図7は、図6におけるB−B線の断面を示しており、櫛本体2の先端側から第1中櫛歯30が見られた状態を表す(X軸方向に沿った方向から見られた図)。この方向から見られた場合でも、第1中櫛歯30は、突設方向(Z軸方向)の途中の外周に段差部32を表出するようにしており、図7に示す方向で見られた場合も、図6に示す場合と同様に、根元側へ幅寸法(Y軸方向に沿った寸法)が広がるように、その外周辺が斜めに形成されている(図7に示す方向から見られた場合の段差部32も台形状に形成されている)。
また、第1中櫛歯30は、先端30aから段差部32の上端32aに至る第一範囲部31について、図7に示す方向で見られた場合もテーパー形状となるように形成すると共に、段差部32の下端32bから根元30bの側へ至る第二範囲部33についても、図7に示す方向で見られた場合についてテーパー形状となるように形成している。このような形状により、図7に示す方向で見られた場合における第1中櫛歯30の先端30a側の幅寸法をw10、段差部32の上端32a側の幅寸法をw11とした場合、w11>w10の関係が成立しており、第2範囲部33は、段差部32の下端32bの幅寸法をw12(w12>w11)、根元側の幅寸法をw13とした場合、w13>w12の関係が成立する(w13の数値例としては約1.5mm〜2.5mmの範囲が考えられる)。第1中櫛歯30の上述した図7に示す方向で見られた場合の形状は、第2中櫛歯40及び第3中櫛歯50においても、それぞれ同等である。なお、図7では、段差部が形成されていない外櫛歯7、8を二点鎖線で示しているが、外櫛歯7、8は、上述した中櫛歯20(第1中櫛歯30、第2中櫛歯40、及び第3中櫛歯50)と所定の隙間をあけた箇所に位置する。
さらに、図7に示すように、第3中櫛歯50と第1中櫛歯30の間の隙間における第1歯底25は、全体が山形状になっており、詳しくは櫛本体2の幅方向(Y軸方向)における中央箇所25aで最も突出するように湾曲した凸形状で形成されると共に、両側箇所25b、25cは湾曲した凹形状で窪むように形成されている。第1歯底25の上述した形状は、他の第2歯底26及び第3歯底27でも同様である。このように各歯底25〜27は、各所を湾曲した外周形状にすることで、中櫛歯部材10のベース部11における上部11bの角に、第1歯底25に引っ掛かる毛髪が触れにくいようにして、逆毛セットの際、必要以上に毛髪を傷めないようにしている。
図1〜3、5は、上述した中櫛歯20を設けた中櫛歯部材10のベース部11を、櫛本体2のスロット部2gに嵌め込んだ状態を示している。このように嵌め込むことで、中櫛歯部材10のベース部11は櫛本体2と一体的となり、そのため、中櫛歯部材10の中櫛歯20も櫛本体2から突設した状態となり、中櫛歯20の配列と外櫛歯7、8の配列はX軸方向に沿って平行となる(図3参照)。なお、中櫛歯部材10が櫛本体2に嵌め込まれて一体的となった状態では、図5等に示すように、中櫛歯20において最も深い位置に形成される第1歯底25が、櫛本体2の上面2fよりZ軸方向において高くなるように配置され、それにより逆毛セットの際、最も深い位置の第1歯底25でも確実に毛髪と触れてテンションがかけられるようにしている。
また、段差部が形成されていない外櫛歯7、8おける各櫛歯間の間隔(図5に示すピッチ寸法P)と、図6に示す中櫛歯20における各櫛歯間の間隔(ピッチ寸法p1、p2、p3)が異なり、外櫛歯7、8に係るピッチ寸法Pは、中櫛歯20に係るピッチ寸法p1、p2、p3より広く(P>p1、p2、p3)、また、両者のピッチ寸法の相違する度合いにより、中櫛歯部材10を櫛本体2に嵌め込むと、複数の中櫛歯20の中のいずれかにおいては、両側が外櫛歯7、8のいずれかにより挟まれた状態になっている。例えば、図5においては、櫛1の先端側となる櫛保護部5aから(図5中の左から)数えて二番目の第1中櫛歯30、及び三番目の第2中櫛歯40が、外櫛歯7(8)により挟まれた状態になっている。
次に、上述した構成の櫛1を用いて、図19に示すように逆毛をセットする際の状況を説明していく。まず、頭髪から取り出して立ち上げた一定量の毛髪束に櫛1を差し込むと、外櫛歯7、8及び中櫛歯20における各櫛歯間に毛髪が入り込む。
図9は、中櫛歯20(第1中櫛歯30、第2中櫛歯40、及び第3中櫛歯50)における各櫛歯間に毛髪Hrが入り込んでいく状況を示している。なお、図9に示す毛髪Hrは、切断面的な形状を円で表している。
櫛1が毛髪束に差し込まれる際には、第1中櫛歯30、第2中櫛歯40、及び第3中櫛歯50の各先端30a、40a、50aに毛髪Hrは触れることになるが、上述したように各先端30a、40a、50aの高さが異なるので、最も高い位置の第3中櫛歯50の先端50aが毛髪Hrへ最初に触れやすい状況となり、各中櫛歯30、40、50ごとに先端30a、40a、50aへ触れる状況(時期)が異なり、各中櫛歯30、40、50への接触状況が分散され、それにより、形成される逆毛が均等的になり、逆毛の中に毛玉的な部分が発生しにくくなる。
次に、毛髪Hrが各中櫛歯20、30、50の間に入り込む状況を見ると、先端間での間隔は、歯底間での間隔に比べて、上述したように第1範囲部31、41、51がテーパー形状になっていることから、かなり広くなっており、それゆえスムーズに各毛髪Hrは櫛歯間に入り込みやすくなっている。
櫛歯間に入り込んだ毛髪Hrの中で、各中櫛歯20、30、50に沿って入り込むものは、テーパー形状の第一範囲部31、41、51に沿って移動することになるので、一定の抵抗感が得られる。また、第一範囲部31、41、51に沿って移動してきた毛髪Hrは次に、段差部32、42、52へと移動することになるが、段差部32、42、52と第一範囲部31、41、51では角度が異なるため、段差部32、42、52の範囲へ入る際に大きな抵抗感を得られ、逆毛のセットに必要なテンションを得られる。さらに、段差部32、42、52は上述したように台形状であることから、段差部32、42、52に沿って移動する毛髪Hrに対しても、上述したテーパー形状の第一範囲部31、41、51における抵抗感より強い抵抗感が得られる。
さらにまた、段差部32、42、52に沿って移動してきた毛髪Hrは次に、第二範囲部33、43、53の方へ向かうことになるが、第二範囲部33、43、53における櫛歯間の間隔は、上述した先端30a、40a、50aにおける間隔より狭くなっているので、間隔が狭くなることでの圧迫による抵抗感が得られる。第二範囲部33、43、53もテーパー形状であることから、第二範囲部33、43、53に沿って歯底方向へ移動する毛髪Hrに対して一定の抵抗感が得られると共に、第二範囲部33、43、53における櫛歯間の間隔寸法は歯底方向へいくにつれて狭くなることから、狭くなる寸法により毛髪Hrの密集度が高まることに基づく抵抗感も得られる。さらに、各歯底25、26、27へと移動してきた毛髪Hrが増えてくると、各歯底箇所にも毛髪Hrが堆積して密集度が高まることにより、抵抗感も得られるようになる。ただし、第二範囲部33、43、53における櫛歯間に毛髪Hrが堆積される度合いは、上述したように各歯底25、26、27の深さが異なることから、それぞれ相違した状況となり、それに伴い、第二範囲部33、43、53における櫛歯間での抵抗感は、それぞれバラつきが生じ、それにより、形成される逆毛が均等的になり、逆毛の中に毛玉的な部分が発生しにくくなる。
また、図10は、第1歯底25における毛髪Hr4の接触状況を示し、上述したように第1歯底25は、中央箇所25aで最も凸となるように突出すると共に、両側箇所25b、25cは窪んだ形状であることから、第1歯底25まで入り込んだ毛髪Hr4は、突出する中央箇所25aで第1歯底25と主に接触するようになる。そのため、毛髪Hr4は面接触ではなく、線接触又は点接触的な状況で第1歯底25と接触し、面接触に比べて接触面積が小さくなるので接触圧を高めることができ、第1歯底25に接触する毛髪Hr4に対して強いテンションをかけることができる。また、中央箇所25aは、湾曲した形状で突出するため、テンションがかかった毛髪を傷めることはなく、さらに、両側箇所25b、25cを窪ませて、ベース部11の上部両角で毛髪Hr4を傷めることがないようにしている。このような第1歯底25における毛髪に対する状況は、他の第2歯底26及び第3歯底27でも同様となる。
なお、図10に示すように、第1中櫛歯30は、X軸方向に沿った方向から見た場合でも、図9に示すY軸方向に沿った方向から見た場合と同様に、その外周形状が、第一範囲部31及び第二範囲部33がテーパー形状になっていると共に、段差部32が台形状になっていることから、第1中櫛歯30に触れて歯底方向へ移動する毛髪に対し、所定の抵抗感を得ることができる。また、X軸方向に沿った方向から見た場合は、第1中櫛歯30の両側に外櫛歯7、8が位置することから、第1中櫛歯30と外櫛歯7との間の隙間、又は第1中櫛歯30と外櫛歯8との間の隙間に入り込んだ隙間においても、第1中櫛歯30が上述した形状であることから、歯底へいくに従い隙間の幅寸法が狭くなるので、第1中櫛歯30と外櫛歯7、8との間の隙間でも所定の抵抗感を得られる。このような第1中櫛歯30と外櫛歯7、8との間の隙間における状況は、第2中櫛歯40と外櫛歯7、8との間の隙間、又は第3中櫛歯50と外櫛歯7、8との間の隙間における状況でも同様となる。
さらに、図8は、中櫛歯20と外櫛歯7、8とを横断するように毛髪Hr1〜3が入り込む状況を示している。図8における毛髪Hr1は、Y軸方向に沿って外櫛歯7、8の図8中における右側へ入り込んだ状況を示し、この場合は、外櫛歯7、8に対して、X軸方向で右隣に位置する中櫛歯20との間で直線的に毛髪Hr1は挟まれた状態となり、また、毛髪Hr2は、Y軸方向に沿った方向で中櫛歯20の両側に外櫛歯7、8が位置する場所に入り込んだため、中櫛歯20により毛髪Hr2は屈曲させられて挟まれた状態となり、それにより強い抵抗感を得られる。そしてまた、外櫛歯7、8の間に中櫛歯20が存在しない状況でも、X軸方向で中櫛歯20が外櫛歯7、8に隣接する箇所に位置することで、毛髪Hr3が屈折する状況も生じるので、この場合も所定の抵抗感を得られる。
以上に説明したように、本実施形態に係る櫛1は、各所で所定の抵抗感が生じる形状等の工夫を施しているので、逆毛セットの際、櫛1全体として適度なテンションを得ることができ、逆毛を形成しやすくなる。さらに、本実施形態の櫛1は、中櫛歯20の先端高さ及び歯底の深さを3パターンで相違させることで、抵抗感にバラつきが生じるようにしているので、抵抗感が集中して逆毛の中に毛玉のように毛髪が丸まった箇所が生じるのを防いだ上で、均等的な逆毛を形成することができる。また、適度なテンションを確保しても、毛髪がエッジのような鋭い箇所で傷づけられること、段差部32、42、52は外周が開放された形状であることから、段差部32、42、52で毛髪が引っ掛かり傷ついたり千切れてしまうような事態も生じない。なお、本発明に係る櫛は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例が考えられる。
例えば、図6に関して、上記では中櫛歯20における隣接する各中櫛歯30、40、50のピッチ寸法p1、p2、p3は全て同じと説明したが、それぞれの寸法を相違させることも可能である。例えば、各ピッチ寸法の関係をp1<p2<p3として、第1中櫛歯30と第2中櫛歯40のピッチ寸法p1を最も狭くし、第2中櫛歯40と第3中櫛歯50のピッチ寸法をp2を二番目に狭くし、第3中櫛歯50と次の櫛歯群を構成する第1中櫛歯30のピッチ寸法p3を最も広く設定してもよい。このように各ピッチ寸法を相違させることで、逆毛形成の際、最も狭いピッチ寸法p1の櫛歯間における抵抗感が最も大きくなり、次にピッチ寸法p2の櫛歯間の抵抗感が大きくなり、ピッチ寸法p3の櫛歯間の抵抗感は他より小さくなり、中櫛歯20全体としては櫛歯間のピッチ寸法の相違により抵抗感が適度に分散され、均等感のある逆毛を形成することに役立つ。なお、ピッチ寸法の相違のさせ方としては、p1<p2<p3以外に、p1>p2>p3とすることも可能であり、この場合は上述した場合と逆順に各櫛歯間の抵抗感が相違することになる。
また、中櫛歯20の形状については、図6に示すY軸方向に沿った方向で中櫛歯20(第1中櫛歯30)を見た場合の段差部32と、図7に示すX軸方向に沿った方向で中櫛歯20(第1中櫛歯30)を見た場合の段差部32は、Z軸方向に沿った方向(中櫛歯20の突設方向)において同位置で形成するようにして、各方向での段差部32が連続して一体的なものであると説明したが、図6に示す方向での段差部32(第1段差部)と、図7に示す方向での段差部32(第2段差部)とは、Z軸方向に沿った方向で異なる箇所に設けて、それぞれが別個に独立したものとして、それぞれ中櫛歯(第1中櫛歯30)の外周に表出するようにしてもよい。このようにすることで、図6に示すY軸方向に沿った方向と、図7に示すX軸方向に沿った方向で、各方向における段差部(第1段差部と第2段差部)による抵抗がZ軸方向で異なった箇所で生じるにようになり、多段階で毛髪束に対する抵抗を得られる。さらに、各段差部32は、図6に示すY軸方向に沿った方向で中櫛歯20(第1中櫛歯30)を見た場合、又は図7に示すX軸方向に沿った方向で中櫛歯20(第1中櫛歯30)を見た場合のいずれか一方の場合でのみ櫛歯外周に表出するように形成し、櫛歯形状の簡易化を図っても良い。
図11(a)は、変形例の中櫛歯(第1中櫛歯130、第2中櫛歯140、第3中櫛歯150)を示し、これらの中櫛歯130、140、150は、図6に示す中櫛歯20に比べて、先端130a、140a、150a側の第一範囲部131、141、150、及び根元130b、140b、150b側の第二範囲部133、143、153をテーパー形状にしておらず、それぞれ厚み寸法(X軸方向に平行な方向)を一定にすると共に、段差部132、142、153の外周辺に係る斜めの角度を一層傾けた(Z軸に対する角度が大きくなるように傾けた)ことが特徴になっている。
第一範囲部131、141、150の厚み寸法を一定にすることで、段差部132、142、153の突出の度合いが増し、毛髪束に櫛を差し込む際、第一範囲部131、141、150に沿って移動する毛髪に対する段差部132、142、153による抵抗度合いを高められるメリットがある。また、第二範囲部133、143、153の厚み寸法を一定にすることで、各櫛歯間に入り込んだ毛髪をスムーズに、各中櫛歯130、140、150の根元130b、140b、150b側の歯底125、126、127へ導くことができ、各歯底125、126、127により生じるテンションを得られやすくしている。
なお、図11(a)に示す各範囲部の厚み寸法を一定にすることは、第一範囲部131、141、150又は第二範囲部133、143、153いずれか一方のみに適用することも可能であり、例えば、先端130a、140a、150a側の第一範囲部131、141、150は図11(a)に示すように、厚み寸法を一定にする一方、第二範囲部133、143、153は図6に示すようにテーパー形状にしてもよく、あるいは、それとは逆に、第一範囲部131、141、151は図6に示すようにテーパー形状にして、第2範囲部133、143、153は図11(a)に示すように厚み寸法を一定にしてもよい。
図11(b)は上述した図11(a)に関連した変形例の中櫛歯(第1中櫛歯130)を示し、X軸方向に沿った方向で見られた場合も、図11(a)のY軸方向に沿った方向で見られた場合と同様に、先端130a側の第一範囲部131及び根元130b側の第二範囲部133をテーパー形状にしておらず、厚み寸法を一定にした形状を表している。このように図11(b)に示す方向でも厚み寸法を一定にすることで、図11(a)で説明した内容と同様のメリットが得られる。また、図11(b)では、第一範囲部131及び第二範囲部133の両方について厚み寸法が一定の場合を示したが、上述した図11(a)の場合と同様に、第一範囲部131又は第二範囲部133のいずれか一方をテーパー形状にすることも可能である。なお、図11(a)(b)に関する上述した内容は、他の中櫛歯である第2中櫛歯140及び第3中櫛歯150にも勿論、適用可能である。
図12(a)は、Y軸方向に沿った方向で見られた場合のさらに別の変形例の中櫛歯(第1中櫛歯230)を示し、複数の段差部232、235を設けた場合の形状を表している。すなわち、第1中櫛歯230は、先端230a側から根元230b側へ順に第一範囲部231、第1段差部232、第二範囲部236、第2段差部235、及び第三範囲部233を設けたものになっている。この変形例では二つの段差部(第1段差部232及び第2段差部235)を設けたので、図6、11に示した場合に比べて、段差部で得られる抵抗を二倍にできるメリットがある。図12(a)では二つの段差部232、235を設ける例を示したが、三つ以上の段差部を設けることも可能である。また、図12(a)では、各範囲部231、233、236の全てについて厚み寸法が一定の場合を示したが、上述した図11(a)の場合と同様に、各範囲部231、233、236のいずれか一つ又はいずれか二つをテーパー形状にすることも可能である。なお、図12(a)に関する上述した内容は、他の中櫛歯である第2、第3中櫛歯にも適用可能である。
図12(b)は上述した図12(a)に関連した変形例の中櫛歯(第1中櫛歯230)を示し、X軸方向に沿った方向で見られた場合も、図12(a)のY軸方向に沿った方向で見られた場合と同様に、二つの段差部(第1段差部232及び第2段差部235)を設けた形状を示し、この場合も段差部で得られる抵抗を二倍にできるメリットがある。なお、図12(b)に示す場合も、上述した図12(a)で説明した事項を同様に適用することが可能である。
図13(a)〜(c)は中櫛歯の先端高さの各種変形例を示している。図13(a)は、櫛歯群に含まれる先端高さの異なる中櫛歯の数を、図6等に示す三本にするのではなく、四本にした例を表している。すなわち、図13(a)の例は、最も低い位置の先端20Aを有する中櫛歯、三番目に高い位置の先端20Bを有する中櫛歯、二番目に高い位置の先端20Cを有する中櫛歯、及び最も高い位置の先端20Dを有する中櫛歯の計四本を一つの櫛歯群に含ませて、このような櫛歯群をX軸方向の矢印が示す方向へ複数順次並べて配列している。このように先端高さの異なる計四本の中櫛歯で櫛歯群を構成することにより、先端高さが異なることで生じる抵抗感の差を更に分散させることができ、均等間のある逆毛を一層形成しやすくなる。また、図13(a)では、計四本の中櫛歯で一つの櫛歯群を形成する例を説明したが、計五本以上の中櫛歯で一つの櫛歯群を形成することも勿論可能であり、このように櫛歯群を構成する先端高さの異なる中櫛歯の本数を増加させれば、抵抗感の差を一段と分散させられる。なお、図13(a)に示す場合においても、上述した図11、12等で説明した変形例の適用が可能である。
図13(b)は、図6等に示す場合に比べて、先端高さの異なる各中櫛歯の配列順を逆にした変形例を示している。すなわち、図13(b)の例は、図中左から最も高い位置の先端20Cを有する中櫛歯、二番目に高い位置の先端20Bを有する中櫛歯、最も低い位置の先端20Aを有する中櫛歯を一つの櫛歯群に含ませて、このような櫛歯群をX軸方向の矢印が示す方向へ複数順次並べて配列している。このような配列では、X軸方向において棒状の把持部が設けられる側と逆の側となる櫛先端側の抵抗を全般に強くすることができ好適となる。すなわち、櫛先端側(櫛本体の先端側と同意)は、把持部から離れた側となるので一般にユーザの把持力が伝わりにくくなるが、図13(b)に示すような配列順にすることで、櫛先端側の抵抗を大きくすれば、実際の使用場面では櫛全体の抵抗感を櫛先端側でも良好に感じられ、逆毛セットの際、櫛全体に均等的なテンションが感じられ、逆毛のセット時に良好なフィーリングが得られる。なお、図13(b)に示す場合でも、上述した図13(a)で説明したように先端高さの異なる四本以上の中櫛歯で櫛歯群を構成する例を適用可能であり、さらには、上述した図11、12等で説明した変形例の適用も可能である。
図13(c)は、図6等に示す場合に比べて、先端高さの異なる各中櫛歯の配列順をランダムにした変形例を示している。すなわち、図13(c)の例は、最も低い位置の先端20Aを有する中櫛歯、二番目に高い位置の先端20Bを有する中櫛歯、及び最も高い位置の先端20Cを有する中櫛歯を有するが、これらの各中櫛歯が並ぶ順をランダム(不規則)にしたことが特徴になっている。このように先端高さの配列順をランダムにすることで、毛髪が各中櫛歯の先端20A、20B、20Cに触れることで生じる抵抗もランダムとなり、それにより櫛全体で得られる抵抗感を、より均等にできるメリットがある。なお、図13(c)に示す場合でも、上述した図13(a)で説明したように先端高さの異なる四本以上の中櫛歯を用いる例を適用可能であり、さらには、上述した図11、12等で説明した変形例の適用も可能である。なお、中櫛歯の構造(仕様)を簡易にする場合には、中櫛歯の先端高さを同一にしてもよく、この場合は、外櫛歯を荒歯的に使いやすくするには、最も低い位置に先端20A又は二番目に高い位置の先端20Bに先端高さを揃えることが好ましい。
図14(a)〜(c)は、上述した図13(a)〜(c)で示した中櫛歯の先端高さの各種変形例と同等の考え方に基づき、複数の中櫛歯による櫛歯間の歯底深さ各種変形例を示している。図14(a)は、図13(a)に対応し、歯底深さを相違させた各中櫛歯間の歯底の数を四箇所にした例を示している。すなわち、図14(a)の例は、最も深い位置の歯底29A、二番目に深い歯底29B、三番目に深い歯底29C、及び最も浅い歯底29Dが形成されるようにして、このような各歯底の並びがX軸方向の矢印が示す方向へ順次続くように配列している。このように四箇所で異なる歯底深さを順次繰り返す構成にすることで、各歯底29A〜29Dで生じるテンションを更に分散させることができ、均等間のある逆毛を形成しやすくなる。また、図14(a)でも、図13(a)の場合と同様に、計五箇所以上で歯底深さが相違する歯底を形成することも勿論可能であり、さらに上述した各歯底を形成する各櫛歯に対しては図11、12等で説明した変形例の適用も可能である。
図14(b)は、図13(b)と同等の考え方にコンセプトに基づき、歯底深さを相違させた各歯底の順序を図6に示す場合と逆に配列させた例を示している。それにより図14(b)においても、櫛先端側(櫛本体の先端側)の抵抗を大きくでき、実際の使用場面では櫛全体の抵抗感を櫛先端側でも良好に感じることができ好適となる。なお、図14(b)に示す場合でも、上述した図14(a)で説明したように歯底深さが四箇所以上で異なるようにした例を適用でき、さらには、上述した図11、12等で説明した変形例の適用も可能である。
図14(c)は、図13(c)と同等の考え方に基づき、歯底深さの相違する各歯底が並ぶ順序をランダムにした例を示している。それにより図14(c)においても、各歯底29A〜29Cで生じるテンションを分散させて、均等間のある逆毛を形成しやすくなる。なお、図14(c)に示す場合でも、上述した図14(a)で説明したように歯底深さが四箇所以上で異なるようにした例を適用でき、さらには、上述した図11、12等で説明した変形例の適用も可能である。
なお、上述した図14(a)〜(c)に示す変形例等において、各歯底29A〜29Cの形状は、図7に示すようにY軸方向における中央箇所を凸にした形状にすることが好適であるが、歯底で得られるテンションを分散させる場合などには、いずれかの歯底を図7に示す形状ではなく、フラットな形状にすることも可能である。このようにいずかの歯底をフラットな形状にすることは本発明に係る櫛全体に適用可能であり、その場合は、複数の歯底が存在する中で、複数に一つの割合でフラットな形状にすることがテンションの分散化を図る上で好適となる。また、中櫛歯間の歯底の構造(仕様)を簡易にする場合には、各歯底深さを同一にしてもよく、この場合は、逆毛を形成しやすくする観点で、二番目に深い歯底29B又は最も深い29Aに深さを揃えることが好ましい(このような歯底形状の例は、図1等に示す櫛1にも勿論、適用可能である)。
図15、16は、櫛歯の配列数を、図3に示す場合と相違させた各例を示している。図15(a)は櫛歯の配列数を計四列にした櫛を示す変形例であり、櫛本体2′の一方の側面2c′と反対側の側面2d′の側に、中櫛歯20′を有する中櫛歯部材10′を櫛本体2′へ新たに嵌め込むようにしたことが特徴であり、それにより一方の側面2c′から他方の側面2d′へ向けて、外櫛歯7、中櫛歯20、外櫛歯8、中櫛歯20′の計四列で各櫛歯の配列を形成している。図15(a)に示す例では、図3に示す場合に比べて、中櫛歯20′による配列が追加された構成になっており、上述した中櫛歯により得られるテンションの程度を倍にできることがメリットになる。
図15(b)は櫛歯の配列数を計五列にした櫛を示す変形例であり、図15(a)に示す例に比べて、櫛本体2″の一方の側面2c″と反対側となる側面2d″の側に、外櫛歯9の配列を更に設けたことが特徴になっている。このように図15(b)に示す例では、外櫛歯7、8、9が計三列存在するので、図8に示すように毛髪が各外櫛歯7〜9及び中櫛歯20、20′に絡んで抵抗となる度合いを増加できるメリットがある。なお、四列以上の櫛歯の配列を設ける場合は、外櫛歯7(外櫛歯8)の列と中櫛歯20の列が、Y軸方向で交互に配置されるようにすることが、図8に示すような毛髪の絡み具合を生じさせる上で好適となる。
図16(a)は櫛歯の配列数を計二列にした櫛を示す変形例であり、図3に示す場合に比べて、櫛本体102の一方の側面102cと反対側の側面102dの側には外櫛歯を設けず、中櫛歯部材10のよる中櫛歯20が配置されたことが特徴になっている。図16(a)に示す例では、図3に示す場合に比べて、構造を簡易化できる上で、一方の側面102c側には外櫛歯7が存在するので、図8に示すような毛髪が各外櫛歯及び中櫛歯に絡んで抵抗となる状況を依然として生じさせることができると共に、一列で存在する外櫛歯7を荒歯的に用いる用途にも対応できる。
図16(b)は櫛歯の配列数を一列にした櫛を示す変形例であり、図3に示す場合に比べて、櫛本体202の一方の側面202cの側に位置する外櫛歯、及び反対側の側面202dの側に位置する外櫛歯を省略して中櫛歯部材10のよる中櫛歯20のみを残した構成にしたことが特徴になっている。この図16(b)に示す例では、図3に示す場合に比べて、構造を非常に簡易化できるので、複雑な形状の中櫛歯20を櫛本体52と一体で成形しやすくなるというメリットが生じる(合成樹脂等による一体成形が容易になる。勿論、図16(b)以外の例でも合成樹脂等による櫛全体の一体成形は、技術的には可能である)。なお、上述した図15、16に示した中櫛歯20(図15(a)で示す中櫛歯20′も含む)のいずれに対しても、上述した各変形例の構成を適用できる。
図17は、外櫛歯の変形例を示し、外櫛歯107、108をそれぞれ中櫛歯330の方へ傾けて突設させた例を示す。このように外櫛歯107、108を傾けることで、中櫛歯330と各外櫛歯107、108の間隔が、図7に示す場合に比べて狭くなり、中櫛歯330と各外櫛歯107、108の間隔における毛髪に対する抵抗感を増加させやすくなる。なお、図17では中櫛歯330としては、第一範囲部331をテーパー形状にすると共に、段差部332より下方の第二範囲部333をストレート形状にした例を示したが、上述した他の形状の中櫛歯を用いることも可能であり、また、図17では、図7に示す歯底25(中央箇所25aを凸にした歯底形状)を表したが、上述したように歯底におけるテンションが強すぎる場合は、歯底25の上面をフラット気味の形状にしてもよい。
図18は、本発明に係る構造を、図1に示す棒状の把持部4を有しない構成の櫛350に適用した例を示している。このように把持部を有しない櫛350であっても、櫛本体352の両側からZ軸方向へ突設する両端の櫛保護部355a、355bの間に、図16(a)に示すように、一列の中櫛歯20を櫛本体352から突設させることが可能であり、この一列の中櫛歯20により、上述した各メリットを生じさせることができる。なお、中櫛歯20は、上述したように中櫛歯部材10に設けて、櫛本体352に取り付ける構成にすること、又は櫛本体352と一体成形することのいずれも可能である。さらに、図18に示す把持部を有しない櫛350でも、上述した複数列からなる櫛歯を構成すること、また上述した各種変形例を適用することが可能である。
図19は、中櫛歯と外櫛歯の長さの関係が、図5に示す場合と逆になっている変形例の櫛400を示している。櫛本体402の上面402fより突設するピン状の複数本の外櫛歯407(408)は、櫛本体402の先端よりZ軸方向へ突出する櫛保護部405aより短くなっている。一方、中櫛歯部材410に設けられた複数本の中櫛歯420(中櫛歯430、440、450で構成)は、図5、6等に示す各中櫛歯20(中櫛歯30、40、50)と同様に段差部432、442、452を形成しているが、各先端を櫛保護部405aと同等にして、外櫛歯407(408)に比べて全長を長くしている。そのため、各中櫛歯20の先端(例えば、図19中に示す中櫛歯440の先端440a)は、外櫛歯407の先端407aに対して高さ寸法H′だけ、先端位置を高くしている。なお、中櫛歯間の各歯底425、426、427は、図5、6等に示す各歯底25、26、27と同様にしている。また、図19は変形例の櫛400の一部を示しているが、図19に示されていない範囲においても、中櫛歯420と、外櫛歯407(408)の関係は図19に示す内容と同等になっている。
このような図19に示す変形例の櫛400は、中櫛歯420が、図5、6等に示す櫛1と同様に段差部432、442、452、及び底深さの相違する歯底425、426、427を形成しているので、容易に均等感のある逆毛を形成できる上、形成した逆毛の表面をなでつけて整える際には、外櫛歯407より長い各中櫛歯420の先端を密歯的に使うことができ、一本の櫛400で、逆毛形成及び逆毛表面のなでつけ(整髪)の両方を行える点にメリットがある。なお、逆毛表面のなでつけ(整髪)は、表面のみを整えるだけなので、この整髪で使われる櫛歯の先端部分は、ごく短い寸法範囲に留まり、そのため図19中に示す高さ寸法H′の数値例としては約1mm〜10mmの範囲が考えられ、一般的には1mm〜3mm程度もあれば、十分に逆毛表面のなでつけ(整髪)を行うのに十分である。
また、逆毛表面のなでつけ(整髪)を行う観点から、中櫛歯420の各先端は同一高さにしておくことが好適であり、そのため、上述した各変形例の中で、図13(a)〜(c)に示す先端高さ以外の変形例であれば、図19に示す櫛400にも適用可能であり、また、図18に示す把持部を有しないタイプにも図19に示す変形例の構成は勿論適用できる。
図20は、中櫛歯と外櫛歯の長さの関係について、図5に示す場合と、図19に示す場合とを組み合わせた構成の変形例の櫛500を示している。すなわち、櫛500は、櫛本体502の長手方向(X軸方向)の両側に設けた櫛保護部505a、505bに囲まれた範囲において、先端側となる櫛保護部505a寄りの第1範囲500aを、図19に示す構成と同等にすると共に、把持部504側となる櫛保護部505b寄りの第2範囲500bを、図5に示す構成と同等にしている。
具体的に、櫛500における複数本の中櫛歯の中で第1範囲500aに位置する中櫛歯520は、図19に示す中櫛歯420と同等の構成になっており、外櫛歯507(508)に比べて長く形成されており、一方、第2範囲500bに位置する中櫛歯620は、図5に示す中櫛歯20と同等の構成になっており、外櫛歯517(518)に比べて短く形成されている。なお、第1範囲500aに位置する外櫛歯507(508)は、図19に示す外櫛歯407(408)と同様に、櫛保護部505aより短く形成されており、一方、第2範囲500bに位置する外櫛歯517(518)は、図5等に示す外櫛歯7(8)と同様に、櫛保護部505a(505b)と同等の長さに形成されている。また、第1範囲500aの中櫛歯520と、第2範囲500bの中櫛歯620は、共に同一の中櫛歯部材510に設けられている。変形例の櫛500は、上述した箇所以外は、図1等に示す櫛1と同等の構成になっている。
このような図20に示す変形例の櫛500は、第1範囲500aが図19と同等の構成であることから、第1範囲500aの中櫛歯520の先端部分を密歯として逆毛表面のなでつけ(整髪)に用いることができ、また、第2範囲500bの中櫛歯620及び外櫛歯517(518)を中心にして効率的に均等感のある逆毛を形成できる上、さらに、第2範囲500bの外櫛歯517(518)の先端部分を荒歯として用いることもでき、一本の櫛500を多様に使うことができる点で、変形例の櫛500はメリットがある。なお、櫛500においては、第1範囲500aに対しては、図19で説明した場合と同等の変形例の適用が可能であり、第1範囲500bに対しては、上述した各種変形例の適用が可能であり、また、図18に示す把持部を有しないタイプにも図20に示す変形例の構成は適用できる。
たとえば、特許文献3に係る櫛は、染色用に毛束を取り分けるために、通常の櫛に比べて各櫛歯間の隙間が大きくしてあるため、逆毛のセットの際、櫛歯間の抵抗が少なくなり、櫛歯間での毛髪が引っ掛かりにくいので適度なテンションが得られないと共に、ダイレクトに櫛歯間の歯底に毛髪は引っ掛かるので、歯底のエッジで毛髪を傷めやすい。また、特許文献4に係る櫛では、浅い切込みを有する歯において毛髪が浅い切り込みから抜けやすいので、浅い切り込みで十分な量の毛髪を逆毛にセットできないと共に、浅い切り込みと通常の歯底では深さの差が大きすぎるので、均等感のある逆毛をセットしにくい。このような特許文献4に係る櫛での問題は、特許文献5に係る櫛も、広い幅の先端側の歯底と櫛本体側の歯底で深さの差が大きすぎる構成であることから同様に生じ、背の低い歯の上部に設けられた歯先から毛髪は抜けやすいので、逆毛のセットを効率良く行えない。
なお、図10に示すように、第1中櫛歯30は、X軸方向に沿った方向から見た場合でも、図9に示すY軸方向に沿った方向から見た場合と同様に、その外周形状が、第一範囲部31及び第二範囲部33がテーパー形状になっていると共に、段差部32が台形状になっていることから、第1中櫛歯30に触れて歯底方向へ移動する毛髪に対し、所定の抵抗感を得ることができる。また、X軸方向に沿った方向から見た場合は、第1中櫛歯30の両側に外櫛歯7、8が位置することから、第1中櫛歯30と外櫛歯7との間の隙間、又は第1中櫛歯30と外櫛歯8との間の隙間に入り込んでも、第1中櫛歯30が上述した形状であることから、歯底へいくに従い隙間の幅寸法が狭くなるので、第1中櫛歯30と外櫛歯7、8との間の隙間でも所定の抵抗感を得られる。このような第1中櫛歯30と外櫛歯7、8との間の隙間における状況は、第2中櫛歯40と外櫛歯7、8との間の隙間、又は第3中櫛歯50と外櫛歯7、8との間の隙間における状況でも同様となる。
図11(a)は、変形例の中櫛歯(第1中櫛歯130、第2中櫛歯140、第3中櫛歯150)を示し、これらの中櫛歯130、140、150は、図6に示す中櫛歯20に比べて、先端130a、140a、150a側の第一範囲部131、141、151、及び根元130b、140b、150b側の第二範囲部133、143、153をテーパー形状にしておらず、それぞれ厚み寸法(X軸方向に平行な方向)を一定にすると共に、段差部132、142、152の外周辺に係る斜めの角度を一層傾けた(Z軸に対する角度が大きくなるように傾けた)ことが特徴になっている。
図19は、中櫛歯と外櫛歯の長さの関係が、図5に示す場合と逆になっている変形例の櫛400を示している。櫛本体402の上面402fより突設するピン状の複数本の外櫛歯407(408)は、櫛本体402の先端よりZ軸方向へ突出する櫛保護部405aより短くなっている。一方、中櫛歯部材410に設けられた複数本の中櫛歯420(中櫛歯430、440、450で構成)は、図5、6等に示す各中櫛歯20(中櫛歯30、40、50)と同様に段差部432、442、452を形成しているが、各先端を櫛保護部405aと同等にして、外櫛歯407(408)に比べて全長を長くしている。そのため、各中櫛歯420の先端(例えば、図19中に示す中櫛歯440の先端440a)は、外櫛歯407の先端407aに対して高さ寸法H′だけ、先端位置を高くしている。なお、中櫛歯間の各歯底425、426、427は、図5、6等に示す各歯底25、26、27と同様にしている。また、図19は変形例の櫛400の一部を示しているが、図19に示されていない範囲においても、中櫛歯420と、外櫛歯407(408)の関係は図19に示す内容と同等になっている。
このような図20に示す変形例の櫛500は、第1範囲500aが図19と同等の構成であることから、第1範囲500aの中櫛歯520の先端部分を密歯として逆毛表面のなでつけ(整髪)に用いることができ、また、第2範囲500bの中櫛歯620及び外櫛歯517(518)を中心にして効率的に均等感のある逆毛を形成できる上、さらに、第2範囲500bの外櫛歯517(518)の先端部分を荒歯として用いることもでき、一本の櫛500を多様に使うことができる点で、変形例の櫛500はメリットがある。なお、櫛500においては、第1範囲500aに対しては、図19で説明した場合と同等の変形例の適用が可能であり、第2範囲500bに対しては、上述した各種変形例の適用が可能であり、また、図18に示す把持部を有しないタイプにも図20に示す変形例の構成は適用できる。