以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<位相差フィルム>
本実施形態の位相差フィルム(以下、セルロースエーテルフィルムともいう場合がある)は、セルロースエーテル誘導体と、負の固有複屈折を有する化合物とを含む。なお、本明細書において「位相差フィルム」とは、透過する光に対して位相差を付与する特定の光学的機能を有する光学フィルムを意味しており、所定の光の波長に対して、実質的に波長の1/4の面内位相差を与え、直線偏光を円偏光に変換したり、または、円偏光を直線偏光に変換する機能を有するフィルムを特に、「λ/4位相差フィルム」という。
λ/4位相差フィルムは、可視光の波長の広い範囲において直線偏光をほぼ完全な円偏光に変換するために、可視光の波長の範囲において概ね波長の1/4の位相差を有する広帯域λ/4位相差フィルムであることが好ましい。なお、本明細書において、「可視光の波長の範囲において概ね1/4の位相差」とは、波長400nm以上700nm以下の領域において、長波長ほど位相差値が大きい逆波長分散特性を備えることをいう。
本実施形態の位相差フィルムにおけるRoおよびRthは、それぞれ以下の式で定義される。
式1:Ro=(nx−ny)×d(nm)
式2:Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
(式1、式2中、nxは位相差フィルムの面内方向において屈折率が最大になる遅相軸方向xにおける屈折率を表し、nyは位相差フィルムの面内方向において前記遅相軸方向xと直交する方向yにおける屈折率を表し、nzは位相差フィルムの厚み方向zにおける屈折率を表し、d(nm)は、位相差フィルムの厚みを表す。)
また、RoおよびRthは、自動複屈折率計を用いて測定することができる。自動複屈折率計としては、例えば、Axometric社製のAxoScan、王子計測機器(株)製のKOBRA−21ADH等が挙げられる。具体的には、以下の方法で測定することができる。
1)位相差フィルムを、23℃55%RHで調湿する。調湿後の位相差フィルムの、450nm、550nmおよび650nmにおける平均屈折率を、アッベ屈折計と分光光源を用いて測定する。また、光学フィルムの厚みを、膜厚計を用いて測定する。
2)調湿後の位相差フィルムに、フィルム表面の法線と平行に、測定波長450nm、550nmまたは650nmの光を入射させたときの面内方向の位相差Ro450、Ro550またはRo650を、Axometric社製のAxoScanにて測定する。位相差フィルムの面内の遅相軸も同時に、Axometric社製のAxoScanにより確認することができる。
3)Axometric社製のAxoScanにより、位相差フィルムの面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、位相差フィルムの表面の法線に対してφの角度(入射角(φ))から測定波長450nm、550nmまたは650nmの光を入射させたときの位相差R(φ)をそれぞれ測定する。位相差R(φ)の測定は、φが0°〜50°の範囲で、10°毎に6点行うことができる。
4)各波長(λ)にて測定されたRoおよびR(φ)と、前述の平均屈折率と膜厚とから、Axometric社製のAxoScanにより、nx、nyおよびnzを算出する。そして、上記式に基づいて、測定波長450nm、550nmまたは650nmでの厚み方向の位相差Rth450、Rth550またはRth650を、それぞれ算出する。さらに、得られたRo450とRo550とから、Ro450/Ro550を算出することができる。そして、得られたRo550とRo650とから、Ro550/Ro650を算出することができる。
ここで、波長450nmにおけるλ/4位相差フィルムの面内位相差をRo450とし、波長550nmにおけるλ/4位相差フィルムの面内位相差をRo550とする場合において、本実施形態の位相差フィルムは、Ro550が115nm以上160nm以下であり、Ro550に対するRo450の比率(Ro450/Ro550)が、0.72以上0.94以下であることを特徴とする。
Ro550は、115nm以上160nm以下であればよく、好ましくは、125nm以上155nm以下である。Ro550が115nm以上160nm以下の範囲を超える場合、波長550nmにおける位相差が概ね1/4波長とならず、このようなフィルムを用いて円偏光板を作製してたとえば有機ELディスプレイに適用した場合に、室内照明の映り込みなどが大きくなり、明所では黒色が表現できなくなる場合がある。
Ro550に対するRo450の比率(Ro450/Ro550)は、0.72以上0.94以下であればよく、好ましくは、0.84以上0.92以下である。Ro450/Ro550が0.72以上0.94以下の範囲を超える場合(Ro450/Ro550が0.72未満である場合及びRo450/Ro550が0.94を超える場合)、位相差が適度な逆波長分散特性を示さず、たとえば、円偏光板を作製した場合に色相変化や湿度環境による色相変動を起こす傾向がある。
なお、一般に、面内位相差(たとえば、Ro550)は、フィルムの膜厚dを大きくすることにより高くすることが可能である。しかしながら、フィルムの膜厚を大きくする場合、有機ELディスプレイ等の画像表示装置の厚みが増大したり、透過率が低下して光取出し効率が低下するという問題がある。しかしながら、本実施形態の位相差フィルムによれば、セルロースエーテル誘導体と、負の固有複屈折を有する化合物とを含有させることにより、膜厚を後述するように薄くした場合であっても、優れた位相差発現性を備える位相差フィルムが作製される。
本実施形態の位相差フィルムは、波長320nm以上400nm以下における透過率が89%以上である。なお、波長320nm以上400nm以下における透過率とは、波長が320nm以上400nm以下の電磁波を、位相差フィルムに照射した際の透過率のことである。透過率は、90%以上であることがより好ましい。透過率の上限は、特に限定されないが、現実的には95%程度である。すなわち、波長320nm以上400nm以下における透過率は、89%以上であり、90%以上95%以下であることが好ましい。本実施形態の位相差フィルムは、紫外波長に相当する上記波長範囲において、優れた透過性を有するため、後述する偏光子と貼り合わせて円偏光板を作製する際に、活性エネルギー線硬化性接着剤(UV接着剤)を使用することができる。具体的には、UV接着剤を、位相差フィルムと偏光子との間に介在させた状態で、位相差フィルム側からUV光を照射する。位相差フィルムは、UV光を良好に透過させるため、UV光は、位相差フィルムと偏光子との間に介在されたUV接着剤に到達し、該UV接着剤を硬化させる。その結果、位相差フィルムと偏光子とは接着される。透過率により表される優れた透明性を達成するためには、UV光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。また、製膜時のフィルム接触部(冷却ローラ、カレンダーローラ、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ローラなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
前記位相差フィルムは、その面内遅相軸と、その長尺方向とがなす角度、すなわち、面内配向角が、15°以上85°以下であることが好ましく、30°以上60°以下であることがより好ましく、35°以上55°以下であることがさらに好ましく、40°以上50°以下であることが最も好ましい。面内配向角が上記範囲にあると、ロール体から巻き出され、長尺方向に対して斜め方向に遅相軸を有する位相差フィルムと、ロール体から巻き出され、長尺方向に平行な透過軸を有する偏光子フィルムとを、互いに長尺方向同士が重なるように、ロール・トゥ・ロールで貼り合わせることで、円偏光板を容易に製造することができる。それにより、フィルムのカットロスが少なく生産上有利である。
次に、本実施形態の位相差フィルムの構成成分について説明する。
位相差フィルムは、主たる成分となる樹脂成分(セルロースエーテル誘導体)と、添加剤成分(上記樹脂成分以外の成分、負の固有複屈折を有する化合物等を含む)とから構成される。
(セルロースエーテル誘導体)
位相差フィルムは、主たる成分として、セルロースエーテル誘導体を含む。セルロースエーテル誘導体は、正の固有複屈折を有する。なお、本明細書において、「主たる成分」とは、位相差フィルムを構成する樹脂成分において55質量%以上含まれる成分をいう。また、「正の固有複屈折を有する」とは、一般的に分子の配向方向に対して屈折率が大きくなる特性を有することをいい、本実施形態においては、延伸時に延伸方向と同方向に屈折率が大きくなるような位相差を発現し得る性質をいう。
本実施形態で使用されるセルロースエーテル誘導体は、セルロースの水酸基が炭素数4以下のアルコキシ基で置換されたものであることが好ましい。具体的には、セルロースの水酸基がメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のいずれかまたは複数のアルコキシ基によって置換されている。特に、セルロースの水酸基が、メトキシ基とエトキシ基の単独あるいは複数のアルコキシ基によって置換されたものが好ましく、中でも好ましくはエトキシ置換度(DSet)が1.8以上2.8以下、より好ましくはDSetが1.8以上2.5以下を満たすエチルセルロースを好適に用いることができる。
なお、本明細書において、DSetは、セルロース分子中の2,3,6位に存在する3個の水酸基が平均してどれだけエトキシ化されているかを表し、たとえば、置換度が3のときはすべての水酸基がエトキシ化されていることを示す。それぞれの位置の置換度は均等でもよく、いずれかの位置に偏っていてもよい。エーテル置換度は、ASTM D4794−94に記載の方法にて定量することができる。
置換度が1.8を下回ると単独で溶解する溶剤の種類が限定される上に、フィルムの吸水率が大きくなり、寸法安定性が低下する傾向がある。また、置換度が2.8を超えても溶解する溶剤の種類が限定されるばかりでなく、樹脂自体が高価になる傾向にある。
セルロースエーテル誘導体は、それ自体既知の方法で製造することができる。たとえば、セルロースを強苛性ソーダ溶液で処理してアルカリセルロースとし、これをメチルクロリドやエチルクロリドと反応させることによってエーテル化することによって製造することができる。
セルロースエーテル誘導体の重量平均分子量は、好ましくは10万から40万であり、より好ましくは13万から30万であり、さらに好ましくは15万から25万である。分子量が40万よりも大きい場合、溶剤に対する溶解度が低下するだけでなく、得られる溶液の粘度が高くなりすぎて、溶剤キャスト法に適さず、熱成形を困難にし、フィルムの透明性が低下する等の問題を生じる傾向がある。一方、分子量が10万よりも小さい場合、得られるフィルムの機械的強度が低下する傾向がある。
セルロースエーテル誘導体としては、単一の原料から製造されるセルロースエーテル誘導体を用いてもよいし、原料の異なるセルロースエーテル誘導体を2種以上組み合わせて用いてもよい。
(負の固有複屈折を有する化合物)
本実施形態の位相差フィルムは、負の固有複屈折を有する化合物を含有することを特徴とする。負の固有複屈折を有する化合物を添加することにより、得られるフィルムの位相差が、適切に調整されつつ、逆波長分散特性がさらに付与される。なお、本明細書において「負の固有複屈折を有する化合物」とは、分子が一軸性をもって配向したときに、光学的に負の一軸性を示す特性を有する化合物をいう。そのため、たとえば、負の固有複屈折を有する化合物が樹脂に含有される場合において、分子が一軸性の配向をとって形成された層に光が入射するとき、配向方向の光の屈折率は、配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなる。
負の固有複屈折を有する化合物としては、特に限定されず、負の固有複屈折を示す公知の化合物を用いることができる。このような化合物としては、たとえば、特開2010−46834号公報の段落[0036]〜[0092]に記載の化合物などを用いることができる。
具体的には、負の固有複屈折を有する化合物としては、負の固有複屈折を有する重合体などを用いることができる。
負の固有複屈折を有する重合体としては、特定の環状構造(芳香環や複素芳香環などの円盤状の環)を側鎖に有する重合体(たとえば、ポリスチレン、ポリ(4−ヒドロキシ)スチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のスチレン系重合体や、ポリビニルピリジン、9,9−ビスフェニルフルオレン含有の共重合体など)、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系重合体、セルロースエステル(複屈折が正であるものを除く)、ポリエステル(複屈折が正であるものを除く)、アクリロニトリル系重合体、アルコキシシリル系重合体あるいはこれらの多元(二元系、三元系等)共重合ポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、共重合体であるときはブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。
本実施形態において、負の固有複屈折を有する重合体は、重量平均分子量が800以上20000以下のオリゴマーであることが好ましく、重量平均分子量が1500以上15000以下のオリゴマーであることがより好ましい。なお、本明細書において、「オリゴマー」とは、比較的少数(たとえば、モノマーが200個以下)のモノマーが結合した重合体のことをいう。負の固有複屈折を有する重合体の重量平均分子量が800以上20000以下の場合、得られる位相差フィルムの耐久性が優れる。また、重量平均分子量が800以上20000以下の場合、負の固有複屈折を有する重合体と、セルロースエーテル誘導体との相溶性が優れ、波長320nm以上400nm以下における透過率が高くなりやすい。
このようなオリゴマーとしては、特に限定されず、たとえば、スチレン誘導体構造を含むオリゴマー、マレイミド誘導体構造を含むオリゴマー、アクリロニトリル系オリゴマー、ポリメチルメタクリレート系オリゴマーが挙げられる。
スチレン誘導体構造を含むオリゴマーとしては、スチレン誘導体を繰り返し単位として含むオリゴマーであることが好ましい。このようなオリゴマーとしては、スチレンあるいはスチレン誘導体の単独重合オリゴマー;スチレン、あるいはスチレン誘導体と他のモノマーとの共重合オリゴマー;およびこれらのオリゴマーの混合物に大別することができる。スチレン、あるいはその誘導体の単独重合オリゴマーとしては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、o−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシルスチレン、p−フェニルスチレンおよび2,5−ジクロロスチレンの単独重合オリゴマーを挙げることができる。
スチレンあるいはスチレン誘導体と他のモノマーとの共重合オリゴマーとしては、たとえば、スチレン/アクリロニトリル共重合オリゴマー、スチレン/メタクリロニトリル共重合オリゴマー、スチレン/メタクリル酸メチル共重合オリゴマー、スチレン/メタクリル酸エチル共重合オリゴマー、スチレン/α−クロロアクリロニトリル共重合オリゴマー、スチレン/アクリル酸メチル共重合オリゴマー、スチレン/アクリル酸エチル共重合オリゴマー、スチレン/アクリル酸ブチル共重合オリゴマー、スチレン/アクリル酸共重合オリゴマー、スチレン/メタクリル酸共重合オリゴマー、スチレン/ブタジエン共重合オリゴマー、スチレン/イソプレン共重合オリゴマー、スチレン/無水マレイン酸共重合オリゴマー、スチレン/イタコン酸共重合オリゴマー、スチレン/ビニルカルバゾール共重合オリゴマー、スチレン/N−フェニルアクリルアミド共重合オリゴマー、スチレン/ビニルピリジン共重合オリゴマー、スチレン/ビニルナフタレン共重合オリゴマー、α−メチルスチレン/アクリロニトリル共重合オリゴマー、α−メチルスチレン/メタクリロニトリル共重合オリゴマー、α−メチルスチレン/酢酸ビニル共重合オリゴマー、スチレン/α−メチルスチレン/アクリロニトリル共重合オリゴマー、スチレン/α−メチルスチレン/メチルメタクリレート共重合オリゴマー、スチレン/スチレン誘導体共重合オリゴマー、スチレン/アクリロイルモルホリン共重合オリゴマー、およびα−メチルスチレン/アクリロイルモルホリン共重合オリゴマーを挙げることができる。
マレイミド誘導体構造を含むオリゴマーとしては、マレイミド誘導体を繰り返し単位として含むオリゴマーであることが好ましい。このようなオリゴマーとしては、マレイミドあるいはマレイミド誘導体の単独重合オリゴマー;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルチオマレイミドなどの単独重合オリゴマーを挙げることができる。
マレイミド誘導体と他のモノマーとの共重合オリゴマーとしては、たとえば、N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/メタクリロニトリル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/メタクリル酸メチル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/メタクリル酸エチル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/α−クロロアクリロニトリル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/アクリル酸メチル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/アクリル酸エチル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/アクリル酸ブチル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/アクリル酸共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/メタクリル酸共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/ブタジエン共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/イソプレン共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/無水マレイン酸共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/イタコン酸共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/ビニルカルバゾール共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/N−フェニルアクリルアミド共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/ビニルピリジン共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/ビニルナフタレン共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/アクリロニトリル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/メタクリロニトリル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/アクリロイルモルホリン共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/酢酸ビニル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/スチレン/アクリロニトリル共重合オリゴマー、N−フェニルマレイミド/アクリロイルモルホリン共重合オリゴマーを挙げることができる。
これらのオリゴマーのうち、特に相溶性の観点からスチレン誘導体とアクリロイルモルホリンとの共重合オリゴマーが好ましい。また、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
位相差フィルムにおける負の固有複屈折を有する化合物の含有量としては、5質量%以上25質量%以下の範囲内であることが好ましく、7質量%以上23質量%以下の範囲内であることがより好ましく、8質量%以上20質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。負の固有複屈折を有する化合物の含有量を5質量%以上25質量%以下とすることにより、内部ヘイズが低くて透明性が高い位相差フィルムが得られやすい。
<その他の添加剤>
本実施形態の位相差フィルムは、上記した主たる成分以外に、その他の添加剤として各種添加剤を含有することができる。
ドープ中に添加することのできる添加剤としては、たとえば、可塑剤、相溶剤、リン系難燃剤、マット剤、酸化防止剤、帯電防止剤、劣化防止剤、剥離助剤、界面活性剤、染料、微粒子等が挙げられる。本実施形態において、微粒子以外の添加剤については、セルロースエーテル溶液の調製時に添加してもよいし、微粒子分散液の調製時に添加してもよい。画像表示装置に使用する偏光板には耐熱耐湿性を付与する可塑剤、酸化防止剤等を添加することが好ましい。
(可塑剤)
本実施形態の位相差フィルムには、添加剤として、組成物の流動性や柔軟性を向上する目的で、各種可塑剤を併用することができる。可塑剤としては、たとえば、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等が挙げられる。用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
(糖エステル化合物)
本実施形態の位相差フィルムでは、相溶剤として糖エステル化合物を含有してもよい。糖エステル化合物としては、ピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1〜12個有し、その構造のヒドロキシ基のすべてまたは一部がエステル化された、セルロースエステルを除くエステル化合物糖エステル化合物を挙げることができる。
糖エステル化合物としては特に限定されず、ピラノース構造またはフラノース構造を有する化合物(糖類)としては、たとえば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース、ケストースなどが挙げられる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなどが挙げられる。これらの中で、特に、ピラノース構造とフラノース構造の双方を有する化合物が好ましい。具体的には、たとえば、スクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、特にスクロースが好ましい。
上述したピラノース構造またはフラノース構造を有する化合物(糖)のヒドロキシ基のすべてまたは一部をエステル化するために用いられるモノカルボン酸としては特に限定されず、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等が1種または2種以上を混合して用いられる。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、たとえば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸;ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
好ましい脂環族モノカルボン酸としては、たとえば、酢酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体が挙げられる。
好ましい芳香族モノカルボン酸としては、たとえば、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体が挙げられ、より具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸が挙げられる。これらの中でも特に安息香酸が好ましい。
本実施形態の位相差フィルムでは、位相差値の変動を抑制して表示品位を安定化する観点から、上記した糖エステル化合物は、位相差フィルム100質量%に対して、1質量%以上30質量%以下の範囲内で含まれることが好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲内で含まれることがより好ましい。1質量%以上30質量%以下の範囲内であれば、上記の優れた効果を奏するとともに、ブリードアウトなども抑制され得る。
(リン系難燃剤)
位相差フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いてもよい。リン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種または2種以上の混合物を挙げることができる。具体的には、たとえば、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
(マット剤(微粒子))
本実施形態の位相差フィルムは、微粒子を含有していてもよい。微粒子は、無機化合物または有機化合物からなる。無機化合物としては、たとえば、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムなどが挙げられる。有機化合物としては、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、あるいはポリフッ化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物、懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物などが挙げられる。
微粒子は、得られるフィルムのヘイズを低く維持しうる点から、好ましくは、珪素を含む化合物(好ましくは二酸化珪素)で構成されうる。二酸化珪素の微粒子としては、たとえば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)などが挙げられる。
酸化ジルコニウムの微粒子としては、たとえば、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)などが挙げられる。
高分子微粒子としては、たとえば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂および(メタ)アクリル樹脂などが挙げられ、好ましくはシリコーン樹脂であり、より好ましくは三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂である。このようなシリコーン樹脂としては、たとえば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120および同240(以上、東芝シリコーン(株)製)などが挙げられる。
これら微粒子の中でも、アエロジル200V、アエロジルR972Vが、位相差フィルムのヘイズを低く保ちながら、フィルム表面の滑り性を高めうるため、特に好ましい。
微粒子の一次粒子の平均粒径は、好ましくは5〜400nmであり、より好ましくは10〜300nmである。微粒子は、主に粒径0.05〜0.3μmの二次凝集体を形成していてもよい。微粒子の平均粒径が100〜400nmであれば、凝集せずに一次粒子として存在しうる。
本実施形態の位相差フィルムでは、少なくとも一方の面の動摩擦係数が0.2〜1.0となるように、微粒子を含有させることが好ましい。微粒子の含有量は、熱可塑性樹脂に対して0.01〜1質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
また、本実施形態の位相差フィルムは、微粒子の分散性を高めるためなどから、分散剤をさらに含有してもよい。分散剤としては、たとえば、アミン系分散剤およびカルボキシル基含有高分子分散剤から選ばれる1種もしくは2種以上が挙げられる。
アミン系分散剤は、アルキルアミンまたはポリカルボン酸のアミン塩であることが好ましく、その具体例としては、ポリエステル酸、ポリエーテルエステル酸、脂肪酸、脂肪酸アミド、ポリカルボン酸、アルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどをアミン化した化合物が挙げられる。アミン塩としては、たとえば、アミドアミン塩、脂肪族アミン塩、芳香族アミン塩、アルカノールアミン塩、多価アミン塩等が挙げられる。
アミン系分散剤の具体例としては、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリプロピルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミンなどが挙げられる。市販品の例としては、ソルスパーズシリーズ(ルーブリゾール社製)、アジスパーシリーズ(味の素(株)製)、BYKシリーズ(ビックケミー社製)、EFKAシリーズ(EFKA社製)などが挙げられる。
カルボキシル基含有高分子分散剤としては、ポリカルボン酸またはその塩であることが好ましく、たとえば、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウムなどが挙げられる。より具体例には、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム共重合体、ポリマレイン酸、ポリマレイン酸アンモニウム、ポリマレイン酸ナトリウム等が挙げられる。
アミン系分散剤やカルボキシル基含有高分子分散剤は、溶剤成分に溶解させて用いてもよいし、市販されているものでもよい。
分散剤の含有量は、分散剤の種類などにもよるが、微粒子に対して0.2質量%以上であることが好ましい。分散剤の含有量が、微粒子に対して0.2質量%未満であると、微粒子の分散性を充分には高めることができない可能性がある。
本実施形態の位相差フィルムは、界面活性剤などをさらに含有する場合、分散剤の微粒子表面への吸着が、界面活性剤よりも生じにくく、微粒子同士を容易に再凝集させることがある。分散剤は高価であるため、その含有量はできるだけ少ないことが好ましい。一方、分散剤の含有量が少なすぎると、微粒子の濡れ不良や、分散安定性の低下を生じやすい。そのため、本実施形態の位相差フィルムが界面活性剤などをさらに含有する場合の分散剤の含有量は、微粒子10重量部に対して0.05〜10重量部程度としうる。
(その他)
さらに、位相差フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、位相差フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
(有機溶媒)
本実施形態では、セルロースエーテル誘導体を溶解してセルロースエーテル溶液あるいはドープを調製するために、有機溶媒を使用することができる。有機溶媒としては、主に、塩素系有機溶媒と非塩素系有機溶媒を使用することができる。
塩素系有機溶媒としては、メチレンクロライド(塩化メチレン)を挙げることができる。また、非塩素系有機溶媒としては、たとえば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができる。昨今の環境問題の観点から、非塩素系有機溶媒が好ましく使用される。
これらの有機溶媒を、セルロースエーテル誘導体に対して使用する場合には、常温での溶解方法、高温溶解方法、冷却溶解方法、高圧溶解方法等の公知の溶解方法により、不溶解物を少なくすることが好ましい。セルロースエーテル誘導体に対しては、メチレンクロライドを用いることもできるが、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを用いることが好ましく、その中でも、特に酢酸メチルが好ましい。
本明細書において、上記セルロースエーテル誘導体に対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で多量に使用する有機溶媒を、主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
本実施形態の位相差フィルムの製膜に用いられるドープには、上記有機溶媒の他に、1質量%以上40質量%以下の範囲内で、炭素数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらのアルコールは、ドープを金属支持体上に流延した後、有機溶媒の蒸発が開始され、アルコール成分の相対比率が高くなると、ドープ膜(ウェブ)がゲル化し、ウェブを丈夫にし、金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として作用させることができ、これらのアルコールの割合が低い時には、非塩素系有機溶媒のセルロースエーテル誘導体の溶解を促進する役割もある。
炭素数が1〜4の範囲内にあるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点が比較的低く、乾燥性がよい等の観点から、エタノールが好ましい。
ドープ中のセルロースエーテル誘導体の濃度は10質量%以上35質量%以下の範囲内であることが好ましく、ドープ粘度は100Pa・s以上500Pa・s以下の範囲内に調整することが、面品質の優れたフィルムが得られる観点から好ましい。
<位相差フィルムの物理特性>
本実施形態の位相差フィルムは、上記した波長320以上400nm以下における透過率以外に、たとえば以下の物理特性を備える。なお、以下の物理特性は例示であり、本実施形態の位相差フィルムは、以下の物理特性を備えるフィルムに限定されない。
(膜厚および幅)
位相差フィルムの膜厚としては特に限定されず、たとえば10μm以上250μm以下の範囲内とすることができる。本実施形態の位相差フィルムは、セルロースエーテル誘導体と、負の固有複屈折を有する化合物とを含有することにより、膜厚を従来のように大きくしなくても、位相差発現性を高くすることができる。たとえばフィルムの膜厚を20μm以上100μm以下としてもよく、より薄く20μm以上80μm以下としてもよく、さらに薄く20μm以上50μm以下としても充分に優れた位相差発現性、逆波長分散特性を示す。
位相差フィルムの幅としては特に限定されず、1m以上4m以下の範囲内とすることができ、好ましくは1.4m以上4m以下の範囲内とすることができ、より好ましくは1.6m以上3m以下とすることができる。位相差フィルムの幅を4m以下とすることにより、搬送安定性を確保することができる。
<位相差フィルムの製造方法>
次に、上記した位相差フィルムの製造方法を説明する。
本実施形態の位相差フィルムは、公知の方法に従って製膜することができる。以下、代表的な溶液流延法および溶融流延法について説明する。
(溶液流延法)
本実施形態の位相差フィルムは、溶液流延法によって製造することができる。溶液流延法では、セルロースエーテル誘導体等の熱可塑性樹脂(以下、単にセルロースエーテルともいう)および添加剤等(負の固有複屈折を有する化合物を含む)を有機溶媒に加熱溶解させてドープを調製する工程、調製したドープをベルト状またはドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、剥離したウェブを延伸または収縮する工程、さらに乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程等が含まれる。
(ドープ調製工程)
ドープ調整工程において、ドープ中のセルロースエーテルは、濃度が高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷は低減できて好ましいが、セルロースエーテルの濃度が高過ぎると濾過時の負荷が増大し、濾過精度が悪くなる。そのため、これらを両立する濃度としては、10質量%以上35質量%以下の範囲内であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下の範囲内であることがより好ましい。
また、ドープ中の負の固有複屈折を有する化合物の濃度としては、0.5質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましく、0.6質量%以上9質量%以下の範囲内であることがより好ましい。負の固有複屈折を有する化合物の濃度がこのような範囲内であれば、負の固有複屈折を有する化合物は、ドープ中において、セルロースエーテル誘導体と相溶性が優れるため、均一なドープが得られる。その結果、このような均一なドープを用いて製膜して得られる位相差フィルムは、波長320nm以上400nm以下における透過率が大きくなりやすい。中でも、負の固有複屈折を有する化合物の重量平均分子量が800以上20000以下である場合には、特にセルロースエーテル誘導体との相溶性が優れる。その結果、ドープがより均一となり、得られる位相差フィルムの波長320nm以上400nm以下における透過率が大きくなりやすい。
(流延工程)
流延(キャスト)工程において、使用する金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、ステンレススティールベルト、または鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は1m以上4m以下の範囲とすることが好ましい。流延工程の金属支持体の表面温度は−50℃以上であって、溶剤が沸騰して発泡しない温度の範囲で適宜設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるが、過度に高すぎるとウェブが発泡し、平面性が劣化する場合がある。好ましい金属支持体の表面温度は0℃以上100℃以下であり、より好ましくは5℃以上30℃以下である。また、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することできる。金属支持体の温度を制御する方法は特に限定されず、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法を採用することができる。温水を用いる方法は、熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる方法では、溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡を防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度および乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
λ/4位相差フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体からウェブを剥離する際の残留溶媒量は10質量%以上150質量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上40質量%以下または60質量%以上130質量%以下の範囲内であり、さらに好ましくは、20質量%以上30質量%以下または70質量%以上120質量%以下の範囲内である。
なお、本明細書において残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
(式中、Mはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量で、Nはウェブまたはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料を115℃で1時間の加熱した後の質量である)
(乾燥工程)
乾燥工程においては、ウェブを金属支持体より剥離してさらに乾燥し、残留溶媒量を1.0質量%以下にすることが好ましく、0.01質量%以下にすることがより好ましい。
乾燥工程では、一般にローラ乾燥方式、たとえば、上下に配置した多数のローラにウェブを交互に通し乾燥させる方式や、テンター方式でウェブを搬送させながら乾燥する方式が採用される。
(延伸工程)
本実施形態の位相差フィルムは、上記のとおり、波長550nmで測定した面内位相差Ro550が115nm以上160nm以下であることが好ましい。このような位相差は、フィルムを延伸することによって付与し得る。
延伸方法は、特に限定されず、たとえば、複数のローラに周速差をつけ、その間でローラ周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法を単独または組み合わせて採用することができる。すなわち、製膜方向に対して横方向に延伸しても、縦方向に延伸しても、両方向に延伸してもよく、さらに両方向に延伸する場合は同時延伸であっても、逐次延伸であってもよい。なお、いわゆるテンター方式の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性を減少させることができるので好ましい。
延伸工程としては、通常、幅手方向(TD方向)に延伸し、搬送方向(MD方向)に収縮する場合が多いが、収縮させる際、斜め方向に搬送させると主鎖方向を合わせ易くなるため、位相差発現効果はさらに大きい。収縮率は搬送させる角度によって決めることができる。
図1は、斜め延伸における収縮倍率を説明する模式図である。図1において、セルロースアシレートフィルムFを参照符号112の方向に斜め延伸する際に、搬送方向である長軸M1が、斜め屈曲することでM2に収縮する。
このとき、収縮率(%)は、
収縮率(%)=((M1−M2)/M1)×100
で表される。屈曲角度をθとすると、
M2=M1×sin(π−θ)
となり、収縮率は、
収縮率(%)=(1−sin(π−θ))×100
で表される。
図1において、参照符号111は延伸方向であり、参照符号113は搬送方向(MD方向)であり、参照符号114は遅相軸を示している。
円偏光板の生産性を考慮すると、本実施形態のλ/4位相差フィルムは、搬送方向に対する配向角が45°±2°であることが、偏光フィルムとのロール・トゥ・ロールでの貼合が可能となり好ましい。
(斜め延伸装置による延伸)
次いで、45°の方向に延伸する斜め延伸方法について、さらに説明する。本実施形態の位相差フィルムの製造方法において、延伸するセルロースエーテルフィルムに斜め方向の配向を付与する方法として、斜め延伸装置を用いることが好ましい。
本実施形態に適用可能な斜め延伸装置としては、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、フィルムの配向軸をフィルム幅方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚さやリタデーションを制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。
図2は、本実施形態のλ/4位相差フィルムの製造に適用可能な斜め延伸装置のレールパターンの一例を示した概略図である。なお、ここに示す図は一例であって、本実施形態で適用可能な延伸装置はこれに限定されるものではない。
一般的に、斜め延伸装置においては、図2に示されるように、長尺のフィルム原反の繰出方向D1は、延伸後の延伸フィルムの巻取方向D2と異なっており、繰出角度θiを成している。繰出し角度θiは0°を超え90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができる。なお、本明細書において、長尺とは、フィルムの幅に対し、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍もしくはそれ以上の長さを有するものをいう。
長尺のフィルム原反は、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)において、その両端を左右の把持具(テンター)によって把持され、把持具の走行に伴い走行される。斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で、フィルムの進行方向(繰出方向D1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具Ci、Coは、左右非対称なレールRi、Ro上を走行し、延伸終了時の位置(図中Bの位置)で、把持したフィルムを解放する。
このとき、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で相対していた左右の把持具は、左右非対称なレールRi、Ro上を走行するにつれて、Ri側を走行する把持具CiがRo側を走行する把持具Coに対して進行する位置関係となる。
すなわち、斜め延伸装置入口(フィルムの把持具による把持開始位置)Aで、フィルムの繰出方向D1に対して略垂直な方向に相対していた把持具Ci、Coが、フィルムの延伸終了時の位置Bにある状態で、該把持具Ci、Coを結んだ直線がフィルムの巻取方向D2と略直交する方向に対して角度θLだけ傾斜している。
以上の方法に従って、フィルム原反が、配向角がθLとなるように斜め延伸され、位相差フィルムが得られることとなる。ここで略垂直とは、90±1°の範囲にあることを示す。
より詳細には、本実施形態の製造方法では、上記で説明した斜め延伸可能な延伸装置を用いて斜め延伸を行うことが好ましい。この延伸装置は、フィルム原反を、延伸可能な任意の温度に加熱し、斜め延伸することができる。この延伸装置は、加熱ゾーンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。延伸装置の入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、加熱ゾーン内にフィルムを導き、延伸装置の出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、延伸装置の出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
なお、延伸装置のレールパターンは左右で非対称な形状となっており、製造すべき長尺延伸フィルムに与える配向角θ、延伸倍率等に応じて、そのレールパターンは手動または自動で調整できる。本実施形態の製造方法で用いられる斜め延伸装置では、各レール部およびレール連結部の位置を自由に設定し、レールパターンを任意に変更できることが好ましい(図2中の○部は連結部の一例である)。
本実施形態において、延伸装置の把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。把持具の走行速度は適宜選択できるが、通常、1〜100m/分である。左右一対の把持具の走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸装置の出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸装置の出口においてシワや寄りが発生するため、左右の把持具の速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。一般的な延伸装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モーターの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本実施形態で述べる速度差には該当しない。
本実施形態の延伸装置において、特にフィルムの搬送が斜めになる箇所には、把持具の軌跡を規制するレールにしばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、あるいは局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が曲線を描くようにすることが好ましい。
本実施形態において、長尺フィルム原反は斜め延伸装置入口(図中Aの位置)において、その両端を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で、フィルム進行方向(繰出方向D1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具は、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーンを有する加熱ゾーンを通過する。
予熱ゾーンとは、加熱ゾーン入口部において、両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。
延伸ゾーンとは、両端を把持した把持具の間隔が開きだし、所定の間隔になるまでの区間をさす。延伸ゾーンでは、上記のような斜め延伸が行われるが、必要に応じて斜め延伸前後において縦方向あるいは横方向の延伸を行ってもよい。斜め延伸の場合、屈曲時に遅相軸とは垂直の方向であるMD方向(進相軸方向)への収縮を伴う。
本実施形態のλ/4位相差フィルムにおいて、延伸処理に続いて、収縮処理を施すことにより、マトリックス樹脂であるセルロースエーテルの主鎖からずれた添加剤(たとえば、負の固有複屈折を有する化合物)を回転させ、添加剤の主軸をマトリックス樹脂であるセルロースエーテルの主鎖に合わせることができる。その結果、波長分散の傾きを急峻にすることができる。
熱固定ゾーンとは、延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、両端の把持具が互いに平行を保ったまま走行する区間をさす。熱固定ゾーンを通過した後に、ゾーン内の温度がフィルムを構成する熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg以下に設定される区間(冷却ゾーン)を通過してもよい。このとき、冷却によるフィルムの縮みを考慮して、予め対向する把持具間隔を狭めるようなレールパターンとしてもよい。
各ゾーンの温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンではTg〜Tg+30℃の範囲内で、延伸ゾーンではTg〜Tg+30℃の範囲内で、冷却ゾーンではTg−30℃〜Tgの範囲内で設定することが好ましい。
なお、幅方向の厚さムラを制御するために、延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差を付けてもよい。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけるには、温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅方向で差を付けるように調整する方法や、ヒーターを幅方向に並べて加熱制御するなどの公知の手法を用いることができる。
予熱ゾーン、延伸ゾーンおよび熱固定ゾーンの長さは適宜選択でき、延伸ゾーンの長さに対して、予熱ゾーンの長さは通常100〜150%の範囲内であり、熱固定ゾーンの長さは通常50〜100%の範囲内である。
延伸工程における延伸倍率(W/Wo)は、好ましくは1.3〜3.0の範囲内であり、より好ましくは1.5〜2.8の範囲内である。延伸倍率がこの範囲にあると幅方向厚さムラを小さくすることができる。斜め延伸装置の延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差を付けると幅方向厚さムラをさらに改善することが可能になる。なお、Woは延伸前のフィルムの幅、Wは延伸後のフィルムの幅を表す。
本実施形態において適用可能な斜め延伸方法としては、上記図2に示した方法のほかに、図3の(a)〜(c)、図4の(a)および(b)に示す延伸方法を挙げることができる。
図3は、本実施形態の位相差フィルムを製造する方法(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図であり、一旦ロール状に巻き取られた長尺フィルム原反を繰り出して斜め延伸するパターンを示す。図4は、本実施形態の位相差フィルムを製造する方法(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図であり、長尺フィルム原反を巻き取ることなく連続的に斜め延伸工程を行うパターンを示す。
図3および図4において、参照符号15は斜め延伸装置、参照符号16はフィルム繰り出し装置、参照符号17は搬送方向変更装置、参照符号18は巻き取り装置、参照符号19は製膜装置を示している。それぞれの図において、同じものを示す参照符号については省略している場合がある。
フィルム繰り出し装置16は、斜め延伸装置入口に対して所定角度でフィルムを送り出せるように、スライドおよび旋回可能となっているか、スライド可能となっており搬送方向変更装置17により斜め延伸装置入口にフィルムを送り出せるようになっていることが好ましい。図3(a)〜(c)は、フィルム繰り出し装置16および搬送方向変更装置17の配置をそれぞれ変更したパターンを示している。図4(a)および(b)は、製膜装置19により製膜されたフィルムを直接延伸装置に繰り出すパターンを示している。フィルム繰り出し装置16および搬送方向変更装置17をこのような構成とすることにより、より製造装置全体の幅を狭くすることが可能となるほか、フィルムの送り出し位置および角度を細かく制御することが可能となり、フィルムの厚み、光学値のバラツキが小さい長尺延伸フィルムを得ることが可能となる。また、フィルム繰り出し装置16および搬送方向変更装置17を移動可能とすることにより、左右のクリップのフィルムへの噛込み不良を有効に防止することができる。
巻き取り装置18は、斜め延伸装置出口に対して所定角度でフィルムを引き取れるように配置することにより、フィルムの引き取り位置および角度を細かく制御することが可能となる。その結果、フィルムの厚み、光学値のバラツキが小さい長尺延伸フィルムが得られる。そのため、フィルムのシワの発生を有効に防止することができるとともに、フィルムの巻き取り性が向上するため、フィルムを長尺で巻き取ることが可能となる。本実施形態において、延伸後のフィルムの引取り張力T(N/m)は、100N/m<T<300N/m、好ましくは150N/m<T<250N/mの範囲内で調整することが好ましい。
(溶融製膜法)
上記した位相差フィルムは、溶融製膜法によって製膜してもよい。溶融製膜法は、樹脂および可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を呈する温度まで加熱溶融し、その後、流動性の熱可塑性樹脂を含む溶融物を流延する成形方法である。
加熱溶融する成形法は、たとえば、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類することができる。これらの成形法の中では、機械的強度および表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。
溶融押出し法に用いる複数の原材料は、通常、予め混錬してペレット化しておくことが好ましい。ペレット化は、公知の方法で行うことができ、たとえば、乾燥セルロースエーテルや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し、1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押し出し、水冷または空冷し、カッティングすることで得ることができる。
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよく、あるいはそれぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。なお、微粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
ペレット化に用いる押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないように、ペレット化可能でなるべく低温で加工する方式が好ましい。たとえば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーに投入して押出し機に供給し、加熱溶融した後、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを1軸タイプや2軸タイプの押出し機を用いて、押し出す際の溶融温度を200℃以上300℃以下の範囲内とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過して異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラと弾性タッチローラとでフィルムをニップし、冷却ローラ上で固化させる。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下で行って、酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体が複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し、接触箇所を焼結して一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量とにより密度を変え、濾過精度を調整することができる。
可塑剤や微粒子などの添加剤は、予め樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するためには、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
冷却ローラと弾性タッチローラとでフィルムをニップする際のタッチローラ側のフィルム温度は、フィルムのTg以上(Tg+110℃)以下の範囲内とすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有する弾性タッチローラとしては、公知の弾性タッチローラを使用することができる。弾性タッチローラは、挟圧回転体ともいい、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
上記のようにして得られたフィルムは、冷却ローラに接する工程を通過した後、延伸操作により延伸および収縮処理を施すことができる。延伸および収縮する方法は、上記のような公知のローラ延伸装置や斜め延伸装置などを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg以上(Tg+60℃)以下の温度範囲で行われることが好ましい。
巻き取る前に、製品の幅になるよう端部をスリットして裁ち落としたり、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
上記した位相差フィルムは、遅相軸と、後述する偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層することにより、円偏光板とすることができる。なお、本明細書において、「実質的に45°」とは、40°以上50°以下の範囲内であることをいう。
上記した位相差フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度とは、41°以上49°以下の範囲内であることが好ましく、42°以上48°以下の範囲内であることがより好ましく、43°以上47°以下の範囲内であることがさらに好ましく、44°以上46°以下の範囲内であることが特に好ましい。
<円偏光板>
本実施形態の円偏光板は、長尺状の保護フィルム、長尺状の偏光子および長尺状の上記した位相差フィルムをこの順に有する長尺ロールを断裁して作製される。この際、円偏光板は、活性エネルギー線硬化性接着剤により、上記した位相差フィルムと偏光子とが接着される。そのため、得られる円偏光板は、たとえば水糊で接着する場合と比較して、乾燥させる必要がなく、また、耐水性が優れる。さらに、このような円偏光板を構成する位相差フィルムは、逆波長分散特性が優れるため、広帯域において実質的にλ/4の位相差を示すλ/4位相差フィルムとして機能する。その結果、該円偏光板を使用した有機ELディスプレイは、外光反射が抑制され、明所コントラストや黒色再現性が優れる。
また、本実施形態の円偏光板は、遅相軸の角度(すなわち配向角θ)を長手方向に対して「実質的に45°」となるように調整した上記位相差フィルムを用いることにより、一貫した製造ラインにより接着剤層の形成および偏光子(偏光膜)と位相差フィルム板との貼り合わせがロール・トゥ・ロールで可能となる。具体的には、偏光膜を延伸して作製する工程を終えた後、続いて行われる乾燥工程中または乾燥工程後に、偏光膜と位相差フィルムとを貼合する工程を組み込むことでき、それぞれを連続的に供給することができ、かつ、貼合後もロール状態で巻き取ることにより、次工程に一貫した製造ラインでつなげることができる。なお、偏光膜と位相差フィルムとを貼合する際に、同時に保護膜もロール状態で供給し、連続的に貼合することもできる。性能および生産効率の観点からは、偏光膜に位相差フィルムと保護膜とを同時に貼合する方が好ましい。すなわち、偏光膜を延伸して作製する工程を終えた後、続いて行われる乾燥工程中または乾燥工程後に、両側の面にそれぞれ保護膜と位相差フィルムを接着剤により貼合し、ロール状態の円偏光板を得ることも可能である。
<活性エネルギー線硬化性接着剤>
接着剤としては、活性エネルギー線硬化性接着剤を使用することができる。このような活性エネルギー線硬化性接着剤を使用することにより、得られる位相差フィルムの透湿性を制御することができる。また、上記のとおり、本実施形態の位相差フィルムは、波長320nm以上400nm以下におけるフィルムの透過率が89%以上である。そのため、たとえば活性エネルギー線硬化性接着剤であるUV接着剤を位相差フィルムと偏光子との間に介在させた後にUV光を照射することにより、照射されたUV光は、位相差フィルムを透過し、UV接着剤を硬化させる。その結果、位相差フィルムと偏光子とは接着される。
本実施形態では、活性エネルギー線硬化性接着剤としては、カチオン重合性化合物(α)、光カチオン重合開始剤(β)、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(γ)、およびナフタレン系光増感助剤(δ)を含有するものが好ましく使用される。
(カチオン重合性化合物(α))
カチオン重合性化合物(α)は、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の主成分であり、重合硬化により接着力を与える。カチオン重合性化合物(α)は、カチオン重合により硬化する化合物であれば特に限定されず、たとえば、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を使用することができる。このようなエポキシ化合物としては、分子内に芳香環を有する芳香族エポキシ化合物、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個が脂環式環に結合している脂環式エポキシ化合物、分子内に芳香環を有さず、エポキシ基とそれが結合する2個の炭素原子を含む環(通常はオキシラン環)の一方の炭素原子が別の脂肪族炭素原子に結合している脂肪族エポキシ化合物等がある。本実施形態において使用される活性エネルギー線硬化性接着剤は、カチオン重合性化合物(α)として、特に芳香環を含まないエポキシ樹脂、脂環式エポキシ化合物を主成分とするものが好ましい。脂環式エポキシ化合物を主成分とするカチオン重合性化合物を用いることにより、貯蔵弾性率の高い硬化物を与え、その硬化物(接着剤層)を介して位相差フィルムと偏光子とが接着された偏光板において、偏光子が割れにくくなる。
脂環式エポキシ化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個が脂環式環に結合している。なお、本明細書において、脂環式環に結合しているエポキシ基とは、以下の一般式(ep)に示されるように、エポキシ基(−O−)の2本の結合手が脂環式環を構成する2個の炭素原子(通常は隣り合う炭素原子)にそれぞれ直接結合していることをいう。下記一般式(ep)において、mは2〜5の整数を表す。
一般式(ep)における(CH2)m中の水素原子を1個または複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合した化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。脂環式環を構成する水素は、メチル基やエチル基のように、直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。中でも、エポキシシクロペンタン環(上記式(ep)においてm=3のもの)や、エポキシシクロヘキサン環(上記式(ep)においてm=4のもの)を有する化合物が好ましい。
脂環式エポキシ化合物のなかでも、入手が容易で硬化物の貯蔵弾性率を高める効果が大きいことから、下記化合物(ep−1)〜(ep−11)のいずれかがさらに好ましい。
上記式中、R3〜R24は、各々独立に水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、R1〜R24がアルキル基の場合、脂環式環に結合する位置は1位〜6位の任意の位置である。炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖でもよく、分岐を有していてもよく、脂環式環を有していてもよい。Y8は、酸素原子または炭素原子数1〜20のアルカンジイル基を表す。Y1〜Y7は、各々独立に直鎖でもよく、分岐を有していてもよく、脂環式環を有していてもよい炭素数1〜20のアルカンジイル基を表す。n、p、qおよびrは、各々独立に0〜20の数を表す。
上記式(ep−1)〜(ep−11)で示される化合物のうち、式(ep−2)で示される脂環式ジエポキシ化合物が、入手が容易なので好ましい。式(ep−2)の脂環式ジエポキシ化合物は、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール(そのシクロヘキサン環に炭素数1〜6のアルキル基が結合していてもよい)と、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸(そのシクロヘキサン環に炭素数1〜6のアルキル基が結合していてもよい)とのエステル化合物である。このようなエステル化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(式(ep−2)において、R5=R6=H、n=0である化合物)、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート(式(ep−2)において、R5=6−メチル、R6=6−メチル、n=0である化合物)等が挙げられる。
また、脂環式エポキシ化合物に、脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用することが好ましい。脂環式エポキシ化合物を主成分とし、これに脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用したものをカチオン重合性化合物とすれば、硬化物の高い貯蔵弾性率を保持しながら、偏光子と位相差フィルムとの密着性を一層高めることができる。なお、ここでいう脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂とは、分子内にエポキシ基とそれが結合する2個の炭素原子を含む環(通常はオキシラン環)の一方の炭素原子が別の脂肪族炭素原子に結合している化合物をいう。このような化合物としては、たとえば、多価アルコール(フェノール)のポリグリシジルエーテルを挙げることができる。なかでも、入手が容易で偏光子と位相差フィルムとの密着性を高める効果が大きいことから、下記一般式(ge)で示されるジグリシジルエーテル化合物が好ましい。
上記式中、Xは直接結合、メチレン基、炭素数1〜4のアルキリデン基、脂環式炭化水素基、O、S、SO2、SS、SO、CO、OCOまたは下記式(ge−1)〜(ge−3)で表される3種の置換基からなる群から選ばれる置換基を表し、アルキリデン基はハロゲン原子で置換されていてもよい。
式(ge−1)において、R25およびR26は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜10のアルキル基またはアルコキシ基により置換されてもよいフェニル基あるいは炭素数1〜10のアルキル基またはアルコキシ基により置換されてもよい炭素数3〜10のシクロアルキル基を表し、R25およびR26は互いに連結して環を形成してもよい。
式(ge−2)において、AおよびDは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数7〜20のアリールアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜20の複素環基またはハロゲン原子を表し、当該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基中のメチレン基は、不飽和結合、−O−またはS−で中断されていてもよい。aは0〜4の数を表し、dは0〜4の数を表す。
一般式(ge)で表されるジグリシジルエーテル化合物としては、たとえば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ樹脂;脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;アルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられ、なかでも、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテルが好ましい。
上記の脂肪族多価アルコールとしては、たとえば、炭素数2〜20の範囲内のものが挙げられる。より具体的には、たとえばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等の脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の三価以上のポリオールが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物と脂環式エポキシ基とを実質的に有さないエポキシ樹脂を併用する場合、両者の配合割合は、カチオン重合性化合物全体の量を基準に、脂環式エポキシ化合物を50質量%以上95質量%以下、そして脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を5質量%以上とするのが好ましい。脂環式エポキシ化合物をカチオン重合性化合物全体中で50質量%以上配合することにより、硬化物の80℃における貯蔵弾性率が1000MPa以上になり、このような硬化物(接着剤層)を介して偏光子と位相差フィルムとが接着された偏光板において、偏光子が割れにくくなる。また、脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を、カチオン重合性化合物全体に対して5質量%以上配合することにより、偏光子と位相差フィルムとの密着性が向上する。脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂の量は、カチオン重合性化合物が脂環式エポキシ化合物との二成分系である場合には、カチオン重合性化合物全体の量を基準に50質量%まで許容されるが、その量が余りにも多くなると、硬化物の貯蔵弾性率が低下し、偏光子が割れやすくなるので、カチオン重合性化合物全体の量を基準に45質量%以下とするのが好ましい。
本実施形態の活性エネルギー線硬化性接着剤を構成するカチオン重合性化合物(α)として、以上説明したような脂環式エポキシ化合物および脂環式エポキシ基を実質的に有さないエポキシ樹脂を併用する場合、それぞれが上述した量となる範囲において、これらに加えて、他のカチオン重合性化合物を含んでいてもよい。他のカチオン重合性化合物としては、式(ep−1)〜(ep−11)および一般式(ge)以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
式(ep−1)〜(ep−11)および式(ge)以外のエポキシ化合物には、式(ep−1)〜(ep−11)以外の分子内に少なくとも1個の脂環式環に結合するエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物、式(ge)以外の脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有する脂肪族エポキシ化合物、分子内に芳香環とエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物における芳香環が水素化されている水素化エポキシ化合物等がある。
式(ep−1)〜(ep−11)以外の分子内に少なくとも1個の脂環式環に結合するエポキシ基を有する脂環式エポキシ化合物の例として、4−ビニルシクロヘキセンジエポキシドや1,2:8,9−ジエポキシリモネンのようなビニルシクロヘキセン類のジエポキシド等がある。
一般式(ge)以外の脂肪族炭素原子に結合するオキシラン環を有する脂肪族エポキシ化合物の例として、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル等がある。
分子内に芳香環とエポキシ基を有する芳香族エポキシ化合物としては、分子内に少なくとも2個のフェノール性ヒドロキシ基(水酸基)を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物のグリシジルエーテルを挙げることができる。その具体例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル等がある。
芳香族エポキシ化合物における芳香環が水素化されている水素化エポキシ化合物は、上記の芳香族エポキシ化合物の原料である分子内に少なくとも2個のフェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族ポリヒドロキシ化合物を、触媒の存在下、加圧下で選択的に水素化反応を行って、得られた水素化ポリヒドロキシ化合物をグリシジルエーテル化して得ることができる。その具体例としては、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
これら式(ep−1)〜(ep−11)および一般式(ge)以外のエポキシ化合物のうち、脂環式環に結合するエポキシ基を有し、先に定義した脂環式エポキシ化合物に分類される化合物を配合する場合は、式(ep−1)〜(ep−11)で示される脂環式エポキシ化合物との和が、カチオン重合性化合物の合計量を基準に95質量%を超えない範囲で用いられることが好ましい。
また、任意のカチオン重合性化合物となり得るオキセタン化合物は、分子内に4員環エーテル(オキセタニル基)を有する化合物である。その具体例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、1,3−ビス〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ〕ベンゼン、オキセタニルシルセスキオキサン、オキセタニルシリケート等が挙げられる。
オキセタン化合物の配合量としては、カチオン重合性化合物全体の量を基準に30質量%以下の割合で配合することが好ましい。この範囲で配合することにより、エポキシ化合物だけをカチオン重合性化合物として用いる場合に比べて、硬化性が向上し得る。
(光カチオン重合開始剤(β))
本実施形態では、以上のようなカチオン重合性化合物(α)を、活性エネルギー線の照射によってカチオン重合させて硬化させ、接着剤層を形成することから、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物には、光カチオン重合開始剤(β)を配合することが好ましい。
光カチオン重合開始剤(β)は、可視光線、紫外線、X線、電子線のような活性エネルギー線の照射によって、カチオン種またはルイス酸を発生させ、カチオン重合性化合物(α)の重合反応を開始するものである。光カチオン重合開始剤は、光で触媒的に作用するため、カチオン重合性化合物(α)に混合しても保存安定性や作業性が優れる。活性エネルギー線の照射によりカチオン種やルイス酸を生じる化合物として、たとえば、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩や芳香族スルホニウム塩のようなオニウム塩;鉄−アレン錯体等を挙げることができる。
芳香族ジアゾニウム塩としては、たとえば、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボレート等が挙げられる。
芳香族ヨードニウム塩としては、たとえば、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4−ノニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
芳香族スルホニウム塩としては、たとえば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4′−ビス〔ジフェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、4,4′−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルホニオ〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンヘキサフルオロアンチモネート、7−〔ジ(p−トルイル)スルホニオ〕−2−イソプロピルチオキサントンテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−フェニルカルボニル−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロホスフェート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジフェニルスルホニオ−ジフェニルスルフィドヘキサフルオロアンチモネート、4−(p−tert−ブチルフェニルカルボニル)−4′−ジ(p−トルイル)スルホニオ−ジフェニルスルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
鉄−アレン錯体としては、たとえば、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロアンチモネート、クメン−シクロペンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、キシレン−シクロペンタジエニル鉄(II)トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタナイド等が挙げられる。
これらの光カチオン重合開始剤(β)は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも特に芳香族スルホニウム塩は、300nm付近の波長領域でも紫外線吸収特性を有することから、硬化性に優れ、良好な機械強度や接着強度を有する硬化物を与えることができ、好ましく用いられる。
光カチオン重合開始剤(β)の配合量は、カチオン重合性化合物(α)全体100質量部に対して1質量部以上10質量部以下の範囲内とすることが好ましく、2質量部以上6質量部以下の範囲内とするのがより好ましい。カチオン重合性化合物(α)100質量部あたり光カチオン重合開始剤を1質量部以上配合することにより、カチオン重合性化合物(α)を充分に硬化させることができ、得られる偏光板に高い機械強度と接着強度を与えることができる。一方、10質量部を超えると、硬化物中のイオン性物質が増加することで硬化物の吸湿性が高くなり、偏光板の耐久性能を低下させる可能性がある。
(光増感剤(γ))
本実施形態の活性エネルギー線硬化性接着剤は、以上のようなエポキシ化合物を含むカチオン重合性化合物(α)および光カチオン重合開始剤(β)に加えて、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(γ)を含有する。上記光カチオン重合開始剤(β)は、300nm付近またはそれより短い波長に極大吸収を示し、その付近の波長の光に感応して、カチオン種またはルイス酸を発生させ、カチオン重合性化合物(α)のカチオン重合を開始させるが、それよりも長い波長の光にも感応するように、380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤(γ)が配合される。
このような光増感剤(γ)としては、下記一般式(at)で示されるアントラセン系化合物が好ましく用いられる。
式中、R
5およびR
6は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基または炭素数2〜12のアルコキシアルキル基を表す。R
7は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
一般式(at)で示されるアントラセン系化合物の具体例としては、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジイソプロポキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジペンチルオキシアントラセン、9,10−ジヘキシルオキシアントラセン、9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−エトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ブトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(3−ブトキシプロポキシ)アントラセン、2−メチルまたは2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−メチルまたは2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−メチルまたは2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−メチルまたは2−エチル−9,10−ジイソプロポキシアントラセン、2−メチルまたは2−エチル−9,10−ジブトキシアントラセン、2−メチルまたは2−エチル−9,10−ジペンチルオキシアントラセン、2−メチルまたは2−エチル−9,10−ジヘキシルオキシアントラセン等が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性接着剤に上記のような光増感剤(γ)を配合することにより、それを配合しない場合に比べて、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化性が向上する。活性エネルギー線硬化性接着剤を構成するカチオン重合性化合物(α)の100質量部に対する光増感剤(γ)の配合量を、0.1質量部以上とすることにより、硬化性が向上する。一方、光増感剤(γ)の配合量が多くなると、低温保管時に析出する等の問題が生じる可能性があることから、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対して2質量部以下の配合量とすることが好ましい。偏光板のニュートラルグレーを維持する観点から、偏光子と位相差フィルムとの接着性が適度に保たれる範囲で、光増感剤(γ)の配合量を少なくするほうが好ましい。たとえば、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対し、光増感剤(γ)の量を0.1質量部以上0.5質量部以下、さらには0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲とするのが好ましい。
(光増感助剤(δ))
本実施形態の活性エネルギー線硬化性接着剤は、上述したエポキシ化合物を含むカチオン重合性化合物(α)、光カチオン重合開始剤(β)および光増感剤(γ)に加えて、下記一般式(nf)で示される光増感助剤(δ)(以下、ナフタレン系光増感助剤(δ)ともいう)を含有することができる。
式中、R
1およびR
2はそれぞれ、炭素数1〜6のアルキル基である。
ナフタレン系光増感助剤(δ)の具体例としては、1,4−ジメトキシナフタレン、1−エトキシ−4−メトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジプロポキシナフタレン、1,4−ジブトキシナフタレン等が挙げられる。
本実施形態に係る活性エネルギー線硬化性接着剤において、ナフタレン系光増感助剤(δ)を配合することにより、それを配合しない場合に比べて、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化性が向上する。活性エネルギー線硬化性接着剤を構成するカチオン重合性化合物(α)の100質量部に対するナフタレン系光増感助剤(δ)の配合量を0.1質量部以上とすることにより、硬化性が向上する効果が発現する。一方、ナフタレン系光増感助剤(δ)の配合量が多くなると、低温保管時に析出する等の問題を生じる傾向があることから、カチオン重合性化合物(α)100質量部に対して10質量部以下の配合量とすることが好ましく、5質量部以下の配合量とすることがより好ましい。
さらに、本実施形態の活性エネルギー線硬化性接着剤には、本実施形態の位相差フィルムの効果を損なわない限り、任意成分である他の成分として、添加剤成分を含有させることができる。添加剤成分としては、上記した光カチオン重合開始剤(β)および光増感剤(γ)のほか、光増感剤(γ)以外の光増感剤、熱カチオン重合開始剤、ポリオール類、イオントラップ剤、酸化防止剤、光安定剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、色素、有機溶剤等を配合することができる。
添加剤成分を含有させる場合、添加剤成分の使用量は、上記したカチオン重合性化合物(α)の100質量部に対して1000質量部以下であることが好ましい。使用量が1000質量部以下である場合、活性エネルギー線硬化性接着剤の必須成分であるカチオン重合性化合物(α)、光カチオン重合開始剤(β)、光増感剤(γ)および光増感助剤(δ)の組み合わせによる、保存安定性の向上、変色防止、硬化速度の向上、良好な接着性の確保という効果を良好に発揮させることができる。
本実施形態の活性エネルギー線硬化性接着剤の好ましい例としては、活性エネルギー線硬化性接着剤の硬化性成分として、ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマーが挙げられる。は、アミド基を形成する窒素原子(N)に結合する置換基は、少なくとも1つのヒドロキシ基を有していればよく、2つ以上を有していてもよい。ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマーは、単官能または二官能以上のいずれであってもよい。また、ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマーは、1種を選択し、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマーは、低水分率の偏光子や、透湿度の低い材料を用いた位相差フィルムに対しても、良好な接着性を示す。たとえば、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシエチル)−(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、N,N′−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド等のN−置換アミド系モノマーは、良好な接着性を示す。これらの中でも、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリアミドは、アクリアミド基および/またはメタクリアミド基を意味する。
硬化性成分として、ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマーに加えて他のモノマーを含有することができる。硬化性成分として用いることができる他のモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物などが挙げられる。これら硬化性成分として用いられる他のモノマーは、単官能または二官能以上のいずれも用いることができる。これら硬化性成分は、1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
硬化性成分として用いられる他のモノマーとしては、たとえば、ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマー以外のN−置換アミド系モノマーが好ましく用いられる。当該N−置換アミド系モノマーは、下記一般式(N)で表される。
一般式(N)
CH2=C(R1)−CONR2(R3)
上記一般式(N)において、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は水素原子またはメルカプト基、アミノ基もしくは第4級アンモニウム基を有してもよい炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、R3は水素原子または炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。ただし、R2、R3が同時に水素原子の場合を除く。また、R2、R3は、結合して、酸素原子を含んでもよい5員環または6員環を形成してもよい。
上記一般式(N)において、R2またはR3における炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等が挙げられ、アミノ基を有するアルキル基としては、アミノメチル基、アミノエチル基等が挙げられる。また、R2およびR3が、結合して、酸素原子を含んでもよい5員環または6員環を形成する場合には、窒素を有する複素環を有する。当該複素環としては、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環等が挙げられる。
前記N−置換アミド系モノマーの具体例としては、たとえば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−N−プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカアプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。また、複素環を有する複素環含有モノマーとしては、たとえば、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等が挙げられる。これらN−置換アミド系モノマーは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
硬化性成分として、ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマーと、前記一般式(N)で表される、N−置換アミド系モノマーを組み合わせて用いる場合には、耐久性、塗工性、接着性の点から、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドおよびN−アクリロイルモルホリンの組み合わせが好適である。また、当該組み合わせの場合、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドおよびN−アクリロイルモルホリンの合計量に対するN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドの割合は、40質量%以上であることが、良好な接着性を得るうえで好ましい。N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドおよびN−アクリロイルモルホリンの合計量に対するN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドの割合は、40質量%以上95質量%以下がより好ましく、60質量%以上90質量%以下がさらに好ましい。
また、硬化性成分として、ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマーに併用できるモノマーとしては、上記の他に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物として、たとえば、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートや、各種の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。これらのなかでも、エポキシ(メタ)アクリレート、特に、芳香環およびヒドロキ基を有する単官能の(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
芳香環およびヒドロキ基を有する単官能の(メタ)アクリレートは、芳香環およびヒドロキシ基を有する、各種の単官能の(メタ)アクリレートを用いることができる。ヒドロキシ基は、芳香環の置換基として存在してもよいが、芳香環と(メタ)アクリレートとを結合する有機基(炭化水素基、特に、アルキレン基に結合したもの)として存在するものが好ましい。
前記芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートとしては、たとえば、芳香環を有する単官能のエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物が挙げられる。芳香環を有する単官能のエポキシ化合物としては、たとえば、フェニルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルポリエチレングリコールグリシジルエーテル等が挙げられる。芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートの、具体例としては、たとえば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルポリエチレングリコールプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、カルボキシ基モノマーが挙げられる。カルボキシ基モノマーも接着性の点で好ましい。カルボキシ基モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。これらのなかでもアクリル酸が好ましい。
上記の他、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素数は1〜12のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどが挙げられる。また、(メタ)アクリルアミド;マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマーなどの窒素含有モノマーが挙げられる。
上記硬化性成分の他、二官能以上の硬化性成分を用いることができる。二官能以上の硬化性成分としては、二官能以上の(メタ)アクリレート、特に、二官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。二官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートは、多官能のエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる。多官能のエポキシ化合物は、各種のものを例示できる。多官能のエポキシ化合物としては、たとえば、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
芳香族エポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂のようなノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ樹脂などが挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、前記芳香族エポキシ樹脂の水添物、シクロヘキサン系、シクロヘキシルメチルエステル系、シシクロヘキシルメチルエーテル系、スピロ系、トリシクロデカン系等のエポキシ樹脂が挙げられる。
脂肪族エポキシ樹脂としては、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルが挙げられる。これらの例としては、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコールやプロピレングリコール、グリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、通常30g/当量以上3000g/当量以下、好ましくは50g/当量以上1500g/当量以下の範囲である。
前記二官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートは、脂肪族エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。特に、二官能の脂肪族エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。
活性エネルギー線硬化性接着剤における、硬化性成分としては、ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマーを用いるが、これと併用するモノマーとしては前記一般式(1)で表されるN−置換アミド系モノマーが好ましい。なお、硬化性成分として、芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートを併用する場合には、N−置換アミド系モノマーは、ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマーに対し、0質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下の範囲内にするのがさらに好ましい。
併用するモノマーにエポキシ系化合物を用いる場合は、N−置換アミド系モノマーは、ヒドロキシ基を有するN−置換アミド系モノマーに対し、0質量%以上50質量%以下の範囲内にすることが好ましく、1質量%以上30質量%以下の範囲内にすることがより好ましく、5質量%以上15質量%以下の範囲内にすることがさらに好ましい。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、硬化性成分を含むが、前記成分に加えて、必要であれば適宜添加剤を添加してもよい。活性エネルギー線硬化性接着剤は、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。前記接着剤を電子線硬化型で用いる場合には、前記接着剤には光重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、紫外線硬化型で用いる場合には、光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤の使用量は、硬化性成分100質量部あたり、通常0.1質量部以上10質量部以下程度、好ましくは、0.5質量部以上3質量部以下の範囲である。
添加剤の例としては、カルボニル化合物などで代表される電子線による硬化速度や硬化感度が上がる増感剤、シランカップリング剤やエチレンオキシドで代表される接着促進剤、位相差フィルムとの濡れ性を向上させる添加剤、アクリロキシ基化合物や炭化水素系(天然、合成樹脂)などに代表され、機械的強度や加工性などを向上させる添加剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤(金属化合物フィラー以外)、可塑剤、レベリング剤、発泡抑制剤、帯電防止割などが挙げられる。また、オキセタン類やポリオール類などが含有されてもよい。
<円偏光板の製造方法>
円偏光板は、活性エネルギー線硬化性接着剤を用いて、偏光子の一方の面に、本実施形態の位相差フィルムを貼り合せることにより製造することができる。位相差フィルムの両面で接着性が異なる場合は、接着性の良いほうに貼り合わせるのが好ましい。以下、活性エネルギー線硬化性接着剤を用いた円偏光板の製造方法の一例を説明する。
円偏光板は、偏光子と位相差フィルムとの接着面のうち、少なくとも一方に、下記の活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布して接着剤層を形成する接着剤塗布工程と、当該接着剤層を介して偏光子と位相差フィルムとを接着し、貼り合せる貼合工程と、当該接着剤層を介して偏光子と位相差フィルムとが接着された状態で接着剤層を硬化させる硬化工程とを含む製造方法によって製造することができる。また、位相差フィルムの偏光子を接着する面を易接着処理する前処理工程があってもよい。
(前処理工程)
前処理工程では、偏光子と接着する位相差フィルムの表面が易接着処理される。偏光子の両面にそれぞれ位相差フィルムおよび保護フィルムが接着される場合は、位相差フィルムおよび保護フィルムのそれぞれに対し易接着処理が行われる。次の接着剤塗布工程では、易接着処理された表面が偏光子との貼合面として扱われるので、位相差フィルムの両表面のうち、活性エネルギー線硬化性接着剤と貼合する面に、易接着処理を施す。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
(接着剤塗布工程)
接着剤塗布工程では、偏光子と位相差フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記活性エネルギー線硬化性接着剤が塗布される。偏光子または位相差フィルムの表面に直接、活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特に限定されない。たとえば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の湿式塗布方式を利用することができる。また、偏光子と位相差フィルムの間に、活性エネルギー線硬化性接着剤を流延させたのち、ローラ等で加圧して均一に押し広げる方法も利用することができる。
(貼合工程)
上記の方法により活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布した後は、貼合工程で処理される。この貼合工程では、たとえば、先の塗布工程で偏光子の表面に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布した場合、そこに位相差フィルムが重ね合わされる。先の塗布工程で位相差フィルムの表面に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子と位相差フィルムの間に活性エネルギー線硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と位相差フィルムとが重ね合わされる。偏光子の両面に位相差フィルムおよび保護フィルムを接着する場合であって、両面とも活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、活性エネルギー線硬化性接着剤を介して位相差フィルムおよび保護フィルムが重ね合わされる。そして通常は、この状態で両面(偏光子の片面に位相差フィルムを重ね合わせた場合は、偏光子側と位相差フィルム側、また偏光子の両面に位相差フィルムおよび保護フィルムを重ね合わせた場合は、その両面の位相差フィルムおよび保護フィルム側)からローラ等で挟んで加圧することになる。ローラの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるローラは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(硬化工程)
硬化工程では、未硬化の活性エネルギー線硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、カチオン重合性化合物(たとえば、エポキシ化合物やオキセタン化合物)やラジカル重合性化合物(たとえば、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物等)を含む活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化させ、活性エネルギー線硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子と位相差フィルム、あるいは偏光子と位相差フィルムとを接着させる。偏光子の片面に位相差フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側または位相差フィルム側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面に位相差フィルムおよび保護フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ活性エネルギー線硬化性接着剤を介して位相差フィルムおよび保護フィルムを重ね合わせた状態で、活性エネルギー線を照射し、両面の活性エネルギー線硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
硬化に適用される活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができるが、取扱いが容易で硬化速度も充分であることから、一般には電子線や紫外線が好ましく用いられる。
電子線の照射条件は、活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。たとえば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV以上300kV以下の範囲内であり、より好ましくは10kV以上250kV以下の範囲内である。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて電子線が跳ね返り、位相差フィルムや偏光子にダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5〜100kGyの範囲内、さらに好ましくは10kGy以上75kGy以下の範囲内である。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、位相差フィルムや偏光子にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない可能性がある。
紫外線の照射条件は、活性エネルギー線硬化性接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。紫外線の照射量は積算光量で50mJ/cm2以上1500mJ/cm2以下の範囲内であることが好ましく、100mJ/cm2以上500mJ/cm2以下の範囲内であるのがさらに好ましい。
このような製造方法を連続ラインで行う場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1m/分以上500m/分以下の範囲内であり、より好ましくは5m/分以上300m/分以下、さらに好ましくは10m/分以上100m/分以下の範囲内である。ライン速度が遅すぎる場合は、生産性が乏しい、または位相差フィルムへのダメージが大きすぎ、耐久性試験などに耐え得る偏光板が作製できない傾向がある。一方、ライン速度が速やすぎる場合は、接着剤の硬化が不充分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
以上のようにして得られた偏光板において、接着剤層の厚さは、特に限定されないが、通常0.01μm以上10μm以下の範囲内であり、好ましくは0.5μm以上5μm以下の範囲内である。
以上、本実施形態の円偏光板は、活性エネルギー線硬化性接着剤により、位相差フィルムと偏光子とが接着されている。そのため、たとえば水糊を用いて位相差フィルムと偏光子とを接着する場合と比較して、接着後に乾燥させる必要がなく、また、耐水性が優れる。
<有機ELディスプレイ>
本実施形態の有機ELディスプレイは、上記円偏光板を用いて作製される。より詳細には、本実施形態の有機ELディスプレイは、上記位相差フィルムを用いた円偏光板と、有機EL素子とを備える。有機ELディスプレイの画面サイズは特に限定されず、20インチ以上とすることができる。
図5は、本実施形態の有機ELディスプレイの構成の概略図である。なお、図5に示される有機ELディスプレイ100の構成は一例であり、本実施形態の有機ELディスプレイの構成は、何ら限定されるものではない。
図5に示されるように、ガラスやポリイミド等を用いた透明基板1上に順に金属電極2、TFT(薄膜トランジスタ)3、有機発光層4、透明電極(ITO(酸化インジウムスズ)等)5、絶縁層6、封止層7およびフィルム8(省略可)を有する有機EL素子200上に、偏光子10を上記した位相差フィルム9と保護フィルム11とによって挟持した上記した円偏光板300を設けて、有機ELディスプレイ100を構成する。保護フィルム11には硬化層12が積層されていることが好ましい。硬化層12は、有機ELディスプレイの表面のキズを防止するだけではなく、円偏光板による反りを防止する効果を有する。さらに、硬化層上には、反射防止層13を有していてもよい。上記有機EL素子自体の厚さは1μm程度である。
一般に、有機ELディスプレイは、透明基板上に金属電極と有機発光層と透明電極とを順に積層して発光体である素子(有機EL素子)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、たとえばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機ELディスプレイは、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。再結合のメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機ELディスプレイにおいては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要であり、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極が陽極として好ましく用いられる。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常はMg−Ag、Al−Liなどの金属電極が陰極として用いられる。
上記した位相差フィルムを有する円偏光板は、画面サイズが20インチ以上、すなわち対角線距離が50.8cm以上の大型画面からなる有機ELディスプレイに適用することができる。
このような構成の有機ELディスプレイにおいて、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。そのため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機ELディスプレイの表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機EL素子を含む有機ELディスプレイにおいて、透明電極の表面側(視認側)に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
位相差フィルムおよび偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差フィルムを1/4位相差フィルムで構成し、かつ偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
すなわち、この有機ELディスプレイに入射する外部光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過し、この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差フィルムがλ/4位相差フィルムでしかも偏光板と位相差フィルムとの偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差フィルムにおいて再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。したがって、本実施形態の有機ELディスプレイによれば、外光反射が抑制され、明所コントラストや黒色再現性が優れる。
本明細書は、上述したように、様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を纏める。
本発明の一局面は、セルロースエーテル誘導体と、負の固有複屈折を有する化合物とを含み、波長320nm以上400nm以下における透過率が89%以上であり、波長550nmにおける面内位相差Ro550が115nm以上160nm以下であり、Ro550に対する波長450nmにおける面内位相差Ro450の比率(Ro450/Ro550)が0.72以上0.94以下である位相差フィルムである。
本発明の一局面に係る位相差フィルムは、セルロースエーテル誘導体を含むため、位相差が発現されやすく、かつ、高湿環境下における光学値(位相差)の変動が小さい位相差フィルムが得られる。また、位相差フィルムは、負の固有複屈折を有する化合物を含むため、逆波長分散特性が付与される。そして、このような負の固有複屈折を有する化合物は、セルロースエーテル誘導体との共存下において、波長320nm以上400nm以下における透過率を低下させにくい。そのため、得られる位相差フィルムは、波長320nm以上400nm以下における透過率が高く、UV光を良好に透過する。その結果、位相差フィルムは、UV光を照射することにより、光官能性基を持つ接着剤(活性エネルギー線硬化性の接着剤)により偏光子と接着することができる。さらに、位相差フィルムは、逆波長分散特性が優れるため、広帯域において実質的にλ/4の位相差を示すλ/4位相差フィルムとして、たとえば有機ELディスプレイに用いられる円偏光板に好適に用いることができる。
前記位相差フィルムにおいて、前記負の固有複屈折を有する化合物は、重量平均分子量が800以上20000以下の重合体であることが好ましい。
このような重量平均分子量を有する負の固有複屈折を有する重合体は、セルロースエーテル誘導体との相溶性が良い。そのため、得られる位相差フィルムは、波長320nm以上400nm以下における透過率が高くなりやすい。その結果、位相差フィルムは、UV光を照射することにより、活性エネルギー線硬化性の接着剤により偏光子と良好に接着することができる。
前記位相差フィルムにおいて、前記重合体は、スチレン誘導体構造を含むオリゴマー、マレイミド誘導体構造を含むオリゴマー、アクリロニトリル系オリゴマーおよびポリメチルメタクリレート系オリゴマーからなる群から選択される少なくとも1以上のオリゴマーであることが好ましい。
これらオリゴマーは、セルロースエーテル誘導体との相溶性が優れる。そのため、得られる位相差フィルムは、波長320nm以上400nm以下における透過率が高くなりやすい。その結果、位相差フィルムは、UV光を照射することにより、活性エネルギー線硬化性の接着剤により偏光子とより良好に接着することができる。
また、本発明の他の一局面は、上記位相差フィルムと、偏光子とが、活性エネルギー線硬化性接着剤で接着された円偏光板である。
本発明の他の一局面に係る円偏光板は、活性エネルギー線硬化性の接着剤により、位相差フィルムと偏光子とが接着されている。そのため、たとえば水糊で接着する場合と比較して、乾燥させる必要がなく、また、耐水性が優れる。さらに、円偏光板を構成する位相差フィルムは、逆波長分散特性が優れるため、広帯域において実質的にλ/4の位相差を示すλ/4位相差フィルムとして機能する。その結果、該円偏光板を使用した有機ELディスプレイは、外光反射が抑制され、明所コントラストや黒色再現性が優れる。
また、本発明の他の一局面は、上記円偏光板を備える画像表示装置である。
本発明の他の一局面に係る画像表示装置(有機ELディスプレイを含む)は、上記円偏光板を備えるため、外光反射が抑制され、明所コントラストや黒色再現性が優れる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表すものとする。
使用した原料を以下に示す。
<樹脂成分>
(セルロースエーテル誘導体1)
市販のエチルセルロース、総置換度2.35、重量平均分子量160000
(セルロースエーテル誘導体2)
市販のエチルセルロース、総置換度2.6、重量平均分子量180000
(セルロースエーテル誘導体3)
市販のエチルセルロース、総置換度2.4、重量平均分子量190000
(セルロースエステル誘導体)
アセチル基で置換されたジアセチルセルロース、総置換度2.2、重量平均分子量150000
<添加剤>
(負の固有複屈折を有する化合物1)
反応器中に、スチレン1.0質量部、アクリロイルモルホリン2.0質量部、トルエン10質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.05質量部を添加し、80℃に加熱した。重合終了後、多量のヘキサン中に反応溶液を投入し、共重合オリゴマーを分離し、濾過、洗浄、乾燥工程を経て化合物を得た。この共重合体は、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析により、重量平均分子量は9000であると確認した。また、NMRスペクトルから、この化合物は、スチレンとアクリロイルモルホリンの共重合体であり、かつ組成は略、スチレン:アクリロイルモルホリン=40:60であった。
(負の固有複屈折を有する化合物2)
反応器中に、スチレン1.0質量部、アクリロイルモルホリン2.0質量部、トルエン10質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.02質量部を添加し、80℃に加熱した。重合終了後、多量のヘキサン中に反応溶液を投入し、共重合オリゴマーを分離し、濾過、洗浄、乾燥工程を経て化合物を得た。この共重合オリゴマーは、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析により、重量平均分子量は2000であると確認した。NMRスペクトルから、この化合物は、スチレンとアクリロイルモルホリンの共重合体であり、かつ組成は略、スチレン:アクリロイルモルホリン=70:30であった。
(負の固有複屈折を有する化合物3)
反応器中に、スチレン1.0質量部、アクリロイルモルホリン2.0質量部、トルエン10質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.06質量部を添加し、80℃に加熱した。重合終了後、多量のヘキサン中に反応溶液を投入し、共重合オリゴマーを分離し、濾過、洗浄、乾燥工程を経て化合物を得た。この共重合体は、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析により、重量平均分子量は15000であると確認した。また、NMRスペクトルから、この化合物は、スチレンとアクリロイルモルホリンの共重合体であり、かつ組成は略、スチレン:アクリロイルモルホリン=30:70であった。
(負の固有複屈折を有する化合物4)
反応器中に、スチレン1.5質量部、アクリロイルモルホリン1.5質量部、トルエン10質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.04質量部を添加し、80℃に加熱した。重合終了後、多量のヘキサン中に反応溶液を投入し、共重合オリゴマーを分離し、濾過、洗浄、乾燥工程を経て化合物を得た。この共重合オリゴマーは、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析により、重量平均分子量は25000であると確認した。NMRスペクトルから、この化合物は、スチレンとアクリロイルモルホリンの共重合体であり、かつ組成は略、スチレン:アクリロイルモルホリン=50:50であった。
(負の固有複屈折を有する化合物5)
反応器中に、N−フェニルマレイミド1.0質量部、アクリロイルモルホリン2.0質量部、トルエン10質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.01質量部を添加し、80℃に加熱した。重合終了後、多量のヘキサン中に反応溶液を投入し、共重合オリゴマーを分離し、濾過、洗浄、乾燥工程を経て化合物を得た。この化合物は、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析により、重量平均分子量は20000であると確認した。NMRスペクトルから、この化合物は、N−フェニルマレイミドとアクリロイルモルホリンの共重合体であり、かつ組成は略、N−フェニルマレイミド:アクリロイルモルホリン=40:60であった。
(負の固有複屈折を有する化合物6)
反応器中に、p−アセトキシスチレン0.6質量部、アクリロイルモルホリン1.0質量部、トルエン10質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.05質量部を添加し、80℃に加熱した。重合終了後多量のヘキサン中に反応溶液を投入し、共重合オリゴマーを分離し、濾過、洗浄、乾燥工程を経て化合物を得た。この化合物は、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析により、重量平均分子量は4000であると確認した。また、NMRスペクトルから、この化合物は、p−アセトキシスチレンとアクリロイルモルホリンの共重合オリゴマーであり、かつ組成は略、p−アセトキシスチレン:アクリロイルモルホリン=30:70であった。
(負の固有複屈折を有する化合物7)
ポリスチレン(Sigma-Aldrich Japan G.K.社製 重量平均分子量800)
(負の固有複屈折を有する化合物8)
特開2008−107767号公報に記載の方法を用いて合成した。得られた化合物の化学式を以下に示す。
(負の固有複屈折を有する化合物9)
反応器中に、4−ビニルビフェニル1.0質量部、アクリロイルモルホリン2.0質量部、トルエン10質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.05質量部を添加し、80℃に加熱した。重合終了後多量のヘキサン中に反応溶液を投入し、共重合オリゴマーを分離し、濾過、洗浄、乾燥工程を経て化合物を得た。この共重合体は、標準ポリスチレンを基準とするGPC分析により、重量平均分子量は9000であると確認した。また、NMRスペクトルから、この化合物は、4−ビニルビフェニルとアクリロイルモルホリンの共重合体であり、かつ組成は略、4−ビニルビフェニル:アクリロイルモルホリン=40:60であった。
(実施例1)
<位相差フィルム1の作製>
(微粒子分散液の調製)
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリン分散機を用いて分散を行い、微粒子分散液を調製した。
(微粒子添加液の調製)
溶解タンクにメチレンクロライドを50質量部入れ、メチレンクロライドを充分に攪拌しながら上記調製した微粒子分散液の50質量部をゆっくりと添加した。さらに、二次粒子の粒径が、0.01μm以上1.0μm以下程度になるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過して、微粒子添加液を調製した。
(ドープの調製)
まず、加圧溶解タンクに、有機溶媒としてメチレンクロライドとエタノールとを、以下に示す量を添加した。有機溶媒の入った加圧溶解タンクに、セルロースエーテル誘導体1を攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープを調製した。次いで、負の固有複屈折を有する化合物1および上記調製した微粒子添加液を以下の割合で、主溶解釜に投入し、密閉した後、攪拌しながら溶解してドープ液を調製した。
〈ドープの組成〉
メチレンクロライド 466質量部
エタノール 41質量部
セルロースエーテル誘導体1 100質量部
負の固有複屈折を有する化合物1 15質量部
微粒子添加液 1質量部
(製膜)
上記のとおり調製したドープを、ステンレスベルト支持体上で、流延し、フィルム中の残留溶媒量が75質量%になるまで溶媒を蒸発させた後、剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上からフィルムを剥離した。
剥離したフィルムを、145℃で加熱しながら延伸装置を用いて、幅手方向(TD方向)にのみ1%の延伸倍率で一軸延伸し、搬送方向(MD方向)には収縮しないように搬送張力を調整した。延伸開始時の残留溶媒は8質量%であった。次いで、乾燥ゾーンを多数のローラを介して搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は105℃で、搬送張力は100N/mとした。以上のようにして、ロール状に巻き回した樹脂フィルム原反を作製した。
(延伸工程)
この樹脂フィルム原反から、樹脂フィルムを巻き出して、その樹脂フィルムを、図2に記載の構成からなる斜め延伸装置を用いて、延伸温度を150℃、延伸倍率を1.8倍とし、配向角が45°となるように屈曲角度θと収縮率とを調整して斜め延伸した。そうすることによって、フィルムの厚みが40μmのλ/4位相差フィルム1を作製した。
(実施例2〜10および比較例1〜4)
<位相差フィルム2〜14の作製>
樹脂成分および添加剤を表1にしたがって選択した以外は、位相差フィルム1と同様の方法により位相差フィルム2〜14を作製した。
<位相差フィルムの各特性値の測定>
(透過率の測定)
分光光度計V−7100(日本分光(株)製)を用いて、波長320nm以上400nm以下におけるフィルムの透過率を測定した。透過率が最低となる波長における透過率を表1に示す。
(面内位相差Ro550、Ro550に対するRo450の比率Ro450/Ro550の測定)
上記のとおり作製した位相差フィルム1〜14について、23℃、55%RH環境下で、Axometrics社製のAxoscanを用いて、450nm、550nmの波長での面内位相差Ro450、Ro550を測定するとともに、Ro450/Ro550を算出した。配向角についても、Axometrics社製のAxoscanを用いて測定した。結果を表1に示す。
(耐久位相差変動)
上記のとおり作製した位相差フィルム1〜14を23℃、55%RHにて5時間調湿した後、同環境で測定した波長550nmにおける面内位相差Ro値を測定しこれをRo55%(550)とし、同じフィルムを続けて純水に24時間浸した後、フィルムが水を含んだ状態のままガラス板に挟んで測定したRo値を求め、これをRoH2O(550)とし、下記の式より変化率ΔRo(550)(%)を求めた。
ΔRo(550)(%)=|Ro55%(550)−RoH2O(550)|/Ro55%(550)
さらに、調湿後の試料を再度23℃55%RHの環境にて測定を行い、この変動が可逆変動であることを確認した。この値が小さい方が、湿度変動に対して安定であることを示す。耐久位相差変動は以下の基準で評価した。
◎:ΔRo(550)(%)が6%以内であった。
○:ΔRo(550)(%)が6%より大きく10%以下であった。
×:ΔRo(550)(%)10%より大きかった。
(耐久ブリードアウト)
上記のとおり作製した位相差フィルム1〜14を80℃、90%RHの高温高湿雰囲気下に100時間放置後、ブリードアウトを評価した。フィルムの表面を目視観察することによりブリードアウトの有無を評価した。
○:フィルム表面にブリードアウトが全くなかった。
△:フィルム表面に部分的なブリードアウトがかすかに分かるが、使用には全く問題ないレベルであった。
×:フィルム表面にブリードアウトがはっきりと認められた。
<円偏光板の作製>
(偏光子の作製)
厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5gおよび水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらにヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5gおよび水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ10μmの偏光子を得た。
(活性エネルギー線硬化性接着剤液の調製:カチオン重合型)
以下の各成分を混合した後、脱泡して、活性エネルギー線硬化性接着剤液を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 45質量部
エポリードGT−301
(ダイセル化学(株)製、脂環式エポキシ樹脂) 40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン 0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン 2.0質量部
(偏光板1の作製)
まず、保護フィルムとして、KC6UAフィルム(コニカミノルタ(株)製)を準備し、上記調製した活性エネルギー線硬化性接着剤液を、マイクログラビアコーター(グラビアローラ:#300、回転速度140%/ライン速)を用いて、厚さ5μmになるように塗工して活性エネルギー線硬化性接着剤の層を形成した。次いで、上記作製した位相差フィルム1に、上記調製した活性エネルギー線硬化性接着剤液を、上記と同様に、厚さ5μmとなるように塗工し、活性エネルギー線硬化性接着剤の層とした。KC6UAフィルムの上に形成された活性エネルギー線硬化性接着剤の層と、位相差フィルム1の上に形成された活性エネルギー線硬化性接着剤の層との間に、上記作製したポリビニルアルコール−ヨウ素系の偏光子を配置し、ローラ機で貼合し、KC6UA/活性エネルギー線硬化性接着剤/偏光子/活性エネルギー線硬化性接着剤/位相差フィルム1が積層された積層物を得た。その際に、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸が45°になるようにローラ機で貼合した。この積層物の両面側から、電子線を照射して、偏光板1を作製した。ライン速度は20m/分、加速電圧は250kV、照射線量は20kGyとした。
[偏光版1の評価]
作製した偏光板を5cm×5cmの大きさの正方形に断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下に24時間放置し、その後、角の部分から偏光子とフィルムの界面で剥がした。この作業を1種類のサンプルについて10枚の偏光板で行い、偏光子とフィルムとの間で剥がれが見られた偏光板の枚数を数えた。偏光子の密着性は、○レベル以上であることが好ましい。
○:10枚とも完全に剥がれなかった。
×:1枚以上で、剥離が観察された。
[有機ELディスプレイ1の作製]
(有機ELセルの作製)
3mm厚の50インチ(127cm)用無アルカリガラスを用いて、特開2010−20925号公報の実施例に記載されている方法に準じて、同公報の図8に記載された構成からなる有機ELセルを作製した。
(有機ELディスプレイ1の作製)
上記のとおり作製した偏光板1の位相差フィルムの表面に接着剤を塗工した後、有機ELセルの視認側に貼合することで有機ELディスプレイ1を作製した。
[有機ELディスプレイ1の評価]
上記のとおり作製した有機ELディスプレイ1について、以下の評価を行った。
<黒色再現性>
23℃、55%RHの環境で、有機ELディスプレイ1の最表面から5cm高い位置での照度が1000Lxとなる条件下で、有機ELディスプレイ1に黒画像を表示した。次いで、表示した黒画像について、有機ELディスプレイ1の正面位置(面法線に対し0°)と、面法線に対し40°の斜め角度からの黒画像の視認性を、一般モニター10人により以下の基準に従って評価した。△以上であれば、実用上問題ないと判断した。
◎:8人以上のモニターが、表示された画像が黒であると判定した。
○:6人以上のモニターが、表示された画像が黒であると判定した。
×:5人以下のモニターが、表示された画像が黒であると判定した。
[偏光板2〜14]
偏光板1の作製において、光学フィルム1を光学フィルム2〜14に変更した以外は同様にして、偏光板2〜14を作製した。
[有機ELディスプレイ2〜12]
有機ELディスプレイ1の作製において、偏光板1を偏光板2〜12に変更した以外は同様にして、有機ELディスプレイ2〜12を作製した。次いで、実施例1と同様の方法で有機ELディスプレイの評価を行った。なお、偏光板13、14は、偏光子との接着性が悪かったため、有機ELディスプレイを作製できなかった。
表1に示されるように、実施例1〜10において作製した本発明の位相差フィルム(位相差フィルム1〜10)は、波長320nm以上400nm以下における透過率が高く、UV光を照射して偏光子と接着させることにより円偏光板を作製できることが判った。また、本発明の位相差フィルムは、位相差変動が小さく、ブリードアウトが少なかったため、高湿環境下でも優れた逆波長分散特性を示すことが判った。また、得られた円偏光板は、密着性が良好であった。さらに、得られた有機ELディスプレイは、黒色再現性がよいことが判った。また、比較例1において作製した位相差フィルム11は、位相差変動が大きかった。比較例2において作製した位相差フィルム12は、位相差が適度な逆波長分散特性を示さず、黒色再現性の結果が悪くなった。比較例3において作製した位相差フィルム13は、波長320nm以上400nm以下における透過率が低く、ブリードアウトが多かった。また、位相差フィルム13は、透過率が低かったため、円偏光板の作製が不可能であった。比較例4において作製した位相差フィルム14は、波長320nm以上400nm以下における透過率が低く、円偏光板の作製が不可能であった。