JP4750982B2 - 位相差フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光学特性に優れた、新規な光学フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的に反射型TFT液晶表示装置に見られるように、近年、位相差フィルムは液晶表示装置に広く使用されている。位相差フィルムとしては、一般に、ポリカーボネートフィルムが使用されている。
【0003】
位相差フィルムの用途はさらに広がっており、それにつれてより高度な機能が要求されてきている。それら要求のうち特に重要なものとして、位相差の波長依存性が小さいことが要求されている。この位相差の波長依存性は、Re(441.6)/Re(514.5)で定義され、ここで、Re(441.6)は、波長441.6nmの単色光で測定したフィルムの位相差を表し、Re(514.5)は、波長514.5nmの単色光で測定したフィルムの位相差を表す。
【0004】
一方、1/4波長板や1/2波長板として使用される用途では、フィルムは、可視光の各波長に対してすべて1/4波長あるいは1/2波長に相当する位相差を有することが望ましい。しかし、ポリカーボネート位相差フィルムでは、波長依存性が大きく、波長の異なる偏光が受ける位相差の程度がそれぞれ異なる。そのため、このような波長依存性の大きい位相差フィルムを使った反射型TFT液晶表示装置で黒表示をする場合、バックライトからの光を完全に遮光することができないため、コントラストや階調表示の低下を招いてしまう。
【0005】
これに対して、例えば、特開平5−27118号公報、特開平5−27119号公報、特開平5−100114号公報および特開平10−68816号公報では、2枚の位相差フィルムを所定の角度で貼合することによりポリカーボネートフィルムでも波長依存性の小さな位相差フィルムができるとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した方法をポリカーボネート位相差フィルムに適用した場合、次のような問題点がある。ポリカーボネートはもともと位相差が生じ易いため、位相差フィルムを製造する際の延伸工程において、張力のわずかな振れにより位相差のバラツキが生じやすい。さらにこのような位相差フィルムを貼合する場合、貼合時の張力により所望する位相差がずれてしまうばかりでなく、貼合後の偏光板の収縮等により、位相差が変化してしまう。
【0007】
また、前記の様に複数枚の位相差フィルムを所定の角度で貼合し、ポリカーボネートの見かけ上の波長依存性を小さくしてもなお、十分に補償する事が出来ず、所望のコントラストを得ることが出来ないという課題を有する。
【0008】
そのため、特開2001−124925や特開2001−126311号公報、特開平8−075921号公報、特開平2−042441号公報、特開平4−245202号公報などに開示されているような環状ポリオレフィン系高分子を用いることは、位相差フィルムの波長依存性を小さくすることが出来るため好ましい構成である。しかし、粘着剤を用いて偏光フィルムやガラスと貼合する際、粘着剤との親和性が不十分で長期耐久性試験下で剥離や微小発泡が生じやすい他、配向複屈折が小さいため位相差を付与しにくく、必要とする位相差フィルム厚が厚くなり、また、特開平5−157911号公報に開示されているような3次元配向などの特殊な位相差フィルムを得ることが困難である。また、位相差フィルムは高度にフィルム厚を制御する必要があるため、一般的には溶剤キャスト法によりフィルム化されるが、該オレフィン系高分子は使用できる溶剤が限られており、特にトルエンやキシレンなどの溶剤を用いた場合、沸点が高いため生産性に劣るなど、ポリカーボネートとは別の種々の課題を有している。
【0009】
従って、本発明は、位相差の波長依存性が小さく、応力による位相差ズレが小さく、しかも位相差を付与しやすい新たな透明フィルム、および、それを用いた位相差フィルムの提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者等は、鋭意研究した結果、特定の構造を有するセルロース誘導体が所期の目的を達成できることを見いだし、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、セルロースの水酸基がエーテル基で置換されたセルロース誘導体を含有するフィルムであって、該セルロース誘導体のエーテル置換度が、0.1から3.0であることを特徴とする透明フィルムに関する。
【0012】
本発明のさらに他の側面によれば、550nmの単色光に対して位相差が0nmから2000nmであることを特徴とする透明フィルムが提供される。
【0013】
さらにまた、本発明によれば、本発明の透明フィルムと偏光板が積層されて一体化された楕円偏光板もしくは円偏光板を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の透明フィルムは、セルロースの水酸基がエーテル基で置換されたセルロース誘導体を含有し、該セルロース誘導体のエーテル置換度が、0.1から3.0であることを特徴とする。
【0015】
該セルロース誘導体のエーテル置換基は−ORで表すことができる。R基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、シアノエチル基、カルボキシメチル基などの置換または非置換アルキル基、ベンジル基などの置換または非置換アラルキル基、フェニル基などの置換または非置換アリール基などである。より好ましくは、カルボキシル基の様な解離性置換基を有していない置換または非置換アルキル基や、置換または非置換アラルキル基、置換または非置換アリール基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、シアノエチル基などの、炭素数が1から10である置換または非置換アルキル基や、置換または非置換ベンジル基である。炭素数2以上のアルキル基や、ベンジル基は、含水率の小さな透明フィルムを得ることができ、使用時の環境に対して安定であり、特に好ましい。
【0016】
これらエーテル置換基は、単独の置換基を有していてもよいが、複数の置換基を有していてもかまわない。
【0017】
セルロースは置換可能な水酸基を繰り返し単位に3個有するが、本発明における該セルロース誘導体のエーテル置換度は、0.1から3である。セルロース置換度は希硫酸で加水分解した後、遊離したアルコールを定量する等の公知の方法により測定することが出来る。好ましい置換度は2〜3であり、より好ましくは、2.3〜2.9、更に好ましくは2.4〜2.8である。置換度が少ないと該セルロース誘導体を溶解できる溶剤が少なくなるとともに、熱成形が困難になり、溶剤キャスト法によるフィルム化や延伸による位相差付与が困難になる。また、得られたフィルムの吸水率が大きくなり、寸法安定性などに好ましくない影響を及ぼす。一方、不要に置換度を上げることは溶剤に対する溶解性が低下するほか、セルロース誘導体が高価になり好ましくない。
【0018】
該セルロース誘導体は、エーテル基以外のその他の置換基を有していてもかまわない。このような置換基の例としては、アセテートやプロピオネート、ブチレートなどのエステル基である。
【0019】
該セルロース誘導体の好ましい数平均分子量は5千から10万であり、より好ましくは1万から7万、更に好ましくは2万から6万である。不必要に高い分子量は、溶剤に対する溶解度を低下させる他、得られた溶液の粘度が大きすぎ溶剤キャスト法に適さない他、熱成形を困難にするなどの問題を生じる。一方、あまりに低い分子量は、得られたフィルムの機械的強度を低下させるので好ましくない。該セルロース誘導体フィルムの耐熱性は、熱機械分析法(TMA)による熱軟化温度にて評価することができる。一般には90℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以上180℃以下、更に好ましくは120℃以上160℃以下である。
【0020】
本発明透明フィルムを構成する該セルロース誘導体は、一種類であってもかまわないが、必用に応じ、複数種の該セルロース誘導体を用いたり、別の高分子との2種以上のブレンド体であってもかまわない。このような、別の高分子としては、セルロースアセテートやセルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどのセルロースエステル誘導体、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース混合エステル誘導体、などを好適に用いることが出来る。特に、特定の置換度を有するセルロースアセテートやセルロースアセテートプロピオネートとのブレンド体は、全光線透過率が85%以上、好ましくは90%以上を有するブレンドフィルムを得ることができ、また、得られた位相差フィルムの波長依存性をブレンド比率により連続的に変えることができるため好ましい。好ましいエステル基の置換度は、2.0以上3.0以下であり、より好ましくは、2.5以上2.95以下であり、更に好ましくは、2.7以上2.9以下である。また、好ましいブレンド比率は必要とする波長依存性など得られるフィルムの特性により決定されるが、一般的には、エーテル基で置換されたセルロース誘導体が10重量%以上90重量%以下であり、エステル基で置換されたセルロースエステル誘導体が90重量%〜10重量%である。
【0021】
エーテル基で置換されたセルロース誘導体は、それ自体既知の方法で製造することができ、例えばセルロースを強苛性ソーダ溶液で処理してアルカリセルロースとし、塩化エチルなどのハロゲン化アルキルを用いてエーテル化する事により製造することができる。
【0022】
本発明に関わるフィルムは、溶融押出し法、インフレーション法などの溶融成形法や溶液流延法など、公知のフィルム化方法により得ることができる。フィルム化方法は特に限定されない。前述したような2種以上のブレンド体のフィルム化に際し、2種以上の樹脂を単に混合してフィルム化してもかまわないし、予め両樹脂を熱溶融混練しペレットなどに成形の後、フィルム化に供してもかまわない。フィルム化に先立ち、用いる樹脂やペレットを予備乾燥しておくことはフィルムの発泡など、欠陥を防ぐ上で有用である。本発明フィルムは加工時の分子配向による位相差が出にくいという特徴を有しているため、溶融成形法によるフィルム化も、好ましい方法である。溶融成形法でフィルムを成形する場合、Tダイ法やインフレーション法などの溶融押し出し法や、カレンダー法、熱プレス法、射出成型法など、公知の方法を採用できるが、良好な厚み精度を有する幅広のフィルムを得やすいと言う点で、Tダイを用いた溶融押出法が好ましい。また、極めて均一な厚み精度を有するフィルムを得ることができるという点で、厚みばらつきを低減するためには、溶液流延法が特に好ましい方法である。溶液流延法により、ダイライン等の欠陥が無く、また、フィルム厚みバラツキが5%以下、好ましくは、1%以下と小さく、位相差の小さい、光学的に等方なフィルムを容易に得ることができる。
【0023】
該セルロース誘導体はフィルム化時に水分が存在すると、得られるフィルムの強度に好ましくない影響を及ぼすため、フィルム化に用いる樹脂やペレット・溶剤などを事前に乾燥しておくことは特に好ましい。
【0024】
溶液流延法に用いることのできる溶剤は、公知の溶剤から選択される。塩化メチレンやトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤は樹脂材料を溶解しやすく、また沸点も低いため好適な溶剤の一つである。また、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド等の極性の高い非ハロゲン系の溶剤も用いることができる。さらに、トルエン、キシレンやアニソール等の芳香族系や、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフランやピラン等の環状エーテル系、メチルエチルケトン等のケトン系、酢酸エチルやプロピオン酸エチルなどのエステル系、エタノールやエチルセルソルブ等のアルコール系の溶剤も使用可能である。また、セルロース誘導体に対して良溶剤同志、あるいは非溶剤および又は貧溶剤と良溶剤を組み合わせ、相互に混合して用い、溶剤の蒸発速度を制御することも、表面性の優れたフィルムを得るためには好ましい方法である。特に、ケトン系やエステル系の溶剤にアルコール系溶剤を併用した場合、該セルロース誘導体は広い範囲で良好な溶解性を示す。これら溶剤の選択は、引っ張り強度など、得られるフィルムの機械的な特性に影響を及ぼすため、溶剤の種類、混合比は得られるフィルムの機械的特性を考慮に入れながら決める必要がある。特に好ましい溶剤としては、塩化メチレンなどのハロゲン系溶剤や、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、酢酸エチルなどの脂肪族エステル系溶剤、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤であり、または、これらとブチルアルコールなどの、炭素数が4以上のアルコールとの混合溶剤である。
【0025】
溶液流延法によりフィルム化する場合、本発明のセルロース誘導体を前記溶剤に溶解したのち、支持体に流延し、乾燥してフィルムとする。溶解液の好ましい粘度は10ポイズ以上50ポイズ以下であり、より好ましくは15ポイズ以上30ポイズ以下である。好ましい支持体としては、ステンレス鋼のエンドレスベルトや、ポリイミドフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のようなフィルムを用いることができる。
【0026】
本発明フィルムは、支持体に担持されたまま、乾燥を行うことも可能であるが、必要に応じて、予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥は、一般には、フロート法や、テンターあるいはロール搬送法が利用できる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルム両端を支えているピンあるいはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡縮制御を行う必要がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のためのテンションは原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい特徴を有する。従って、フィルムの乾燥は、ロール搬送法によることが最も好ましい。また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないよう、湿度を低く保った雰囲気中で乾燥することは、機械的強度と透明度の高い本発明フィルムを得るには有効な方法である。
【0027】
本発明フィルムの厚みは、10μmから300μmであり、好ましくは20μmから200μm、より好ましくは30μmから100μmである。表面粗さRaで表したフィルムの表面粗度は、好ましくは、100nm以下であり、より好ましくは、20nm以下である。
【0028】
フィルムの光線透過率は、85%以上が好ましく、より好ましくは、90%以上である。また、フィルムのへーズは2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。また、フィルムの位相差は、20nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である。フィルムの面内位相差のみならず、厚み方向の位相差を制御することも、特にフィルム位相差の視野角依存性を低減するためには重要である。フィルム厚み方向の位相差は、フィルム面内の最大屈折率をnx、nxと直交する方向の屈折率をny、フィルム厚み方向の屈折率をnz、フィルムの厚みをdとしたとき、下記式(I)で表される。
【0029】
|(nx+ny)/2−nz)|×d (I)
本発明フィルムはポリカーボネートなどと比較し位相差を発現しにくい為、厚み方向の位相差も小さいフィルムを得ることができる。好ましい厚み方向の位相差は、200nm以下であり、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは20nm以下である。必要により、乾燥条件を適当に選択することにより、すなわち、フィルムの残溶剤量が20%以下、好ましくは10%以下まで支持体上にフィルムを保持して乾燥することにより、フィルムの面内位相差を小さく保ったまま、厚み方向の位相差を大きくすることも可能である。このような方法により、厚み方向の位相差が100nm以上、好ましくは200nm以上を有するフィルムを得ることができる。
【0030】
本発明フィルムは、そのまま、あるいは各種加工を行い、光学的等方フィルム、位相差フィルム、偏光保護フィルム用として、液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に好適に用いることができる。また、本発明フィルム上に反射防止層やアンチグレア・ハードコートなどのコーティングを行うことも可能である。
【0031】
位相差フィルムを得るためには、上記で得られたフィルムを公知の延伸方法により少なくとも一軸延伸して配向処理を行い、均一な位相差を付与することができる。フィルムを延伸して位相差フィルムとした場合、ポリカーボネートから成る位相差フィルムより、位相差の測定波長依存性が小さい位相差フィルムを得ることができる。延伸方法としては、一軸や二軸の熱延伸法を採用することができる。本発明の光学フィルムは、延伸時に位相差が発現しにくく、従来のポリカーボネートと異なり、大きな延伸倍率を取る必要があるため、縦一軸延伸が好ましい。また、得られた位相差フィルムの光学的な一軸性が重要となる場合は、自由端縦一軸延伸が特に好ましい延伸方法である。また、特開平5−157911号公報に示されるような特殊な二軸延伸を施し、フィルムの三次元での屈折率を制御することも可能である。位相差を付与するに際しても、配向による位相差が発現しにくい為、フィルム面内での位相差バラツキが小さいフィルムを得ることができるという特徴を有する。
【0032】
位相差フィルムの位相差は10nmを超え2000nmまでの間で、目的に応じて選択することができる。位相差は、フィルム厚み、延伸温度や延伸倍率を制御することにより所望の値にすることができる。一般には、延伸倍率は1.05倍から3倍であり、延伸温度は、ガラス転移温度Tgに対して、(Tg−30)℃から(Tg+30)℃までの範囲で選択される。特に好ましい延伸温度は、(Tg−20)℃から(Tg+20)℃までの範囲である。この温度範囲とすることにより、延伸時のフィルム白化を防止でき、また、得られた位相差フィルムの位相差バラツキを小さくすることができる。
【0033】
本発明の位相差フィルムをSTN液晶表示装置の色補償用に用いる場合には、その位相差は、一般的には、300nmから2000nmまでの範囲で選択される。また、本発明の位相差フィルムをλ/2波長板として用いる場合は、その位相差は、一般的には、200nmから400nmの範囲で選択される。λ/2波長板としてのより好ましい位相差は、230nmから300nmの範囲から選択される。本発明の位相差フィルムをλ/4波長板として用いる場合は、その位相差は、一般的には、90nmから200nmまでの範囲で選択される。λ/4波長板としてのより好ましい位相差は、100nmから180nmの範囲から選択される。
【0034】
本発明に関わるこのような位相差フィルムは、公知のポリカーボネートからなる位相差フィルムと比較し、位相差の測定波長依存性が小さい位相差フィルムを得ることができ、反射TFT液晶表示装置用などに好適に用いることができる。また、応力により位相差が変化しにくいという特徴を有しているため、偏光板と貼合して用いた場合、偏光板の変形応力により位相差が変化しにくく、特に、大画面液晶表示装置用に好適である。
【0035】
位相差の波長依存性は、Re(441.6)/Re(514.5)で定義され、ここで、Re(441.6)は、波長441.6nmの単色光で測定したフィルムの位相差を表し、Re(514.5)は、波長514.5nmの単色光で測定したフィルムの位相差を表す。ポリカーボネート系位相差フィルムの場合、Re(441.6)/Re(514.5)は1.06であるのに対し、本発明位相差フィルムは、エーテル置換基の種類と置換度にも依存するが、一般的には1.04以下、好ましくは1.03以下、より好ましくは1.02以下である。波長依存性の下限は限定されないが、一般には、0.8以上である。本発明位相差フィルムを用いることにより、ポリカーボネート系位相差フィルムと比較し、特に、反射型のTFTやSTN液晶表示装置用やタッチパネルなどの反射防止用に用いる場合、色つきの少なく高いコントラストを示す表示像を与えることができる。
【0036】
また、本発明位相差フィルムは、本発明位相差フィルム同志、または、他の位相差フィルムとともに、複数枚の位相差フィルムを用い、特開平5−27118号公報、特開平5−27119号公報、特開平5−100114号公報および特開平10−68816号公報で開示されているように、各位相差フィルムを所定の角度で貼合することにより、更に、位相差の波長依存性を小さくすることも可能である。
【0037】
本発明の位相差フィルムは、公知のヨウ素系あるいは染料系の偏光板と粘着剤を介して積層貼合することができる。積層する際、用途によって偏光板の偏光軸と位相差フィルムの遅相軸とを、特定の角度に保って積層することが必要である。本発明の位相差フィルムを1/4波長板とし、これを偏光板と積層貼合して円偏光板として用いることができる。その場合、一般には、偏光板の偏光軸と位相差フィルムの遅相軸は実質的に45°の相対角度を保ち積層される。また、本発明の位相差フィルムを、偏光板を構成する偏光子保護フィルムとして用いて積層してもかまわない。さらに、本発明の位相差フィルムをSTN液晶表示装置の色補償板とし、これを偏光板と積層貼合することにより楕円偏光板として用いることができる。
【0038】
またフィルム化の際に、必要に応じて少量の可塑剤や熱安定剤、紫外線安定剤等の添加剤を加えても良い。特に得られたフィルムが脆い場合、延伸などの加工特性を改善する目的で可塑剤を加えることは有効である。
【0039】
好ましい可塑剤を例示すると、フタル酸系可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−n−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−n−デシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−ドデシル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸エステル系可塑剤としては、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシル、脂肪族多塩基酸系可塑剤としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ヘキシル、アジピン酸ジ−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸メトキシエチル、o−アセチルクエン酸トリブチル、o−アセチルクエン酸トリエチル、リン酸エステル系可塑剤としては、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸ジフェニルエチル、リン酸トリクレジール、エポキシ系可塑剤としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化トール油脂肪酸−2−エチルヘキシル、脂肪酸エステル系可塑剤としては、ステアリン酸ブチル、オレイン酸ブチル、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸メチル、ステアリン酸ブトキシエチル、オレイン酸メトキシエチル、酢酸2−(p−tert−ブチルフェノキシエチル)、多価アルコールエステル系可塑剤としては、ブチルフタリルブチルグリコレート、グリセロールトリブチレート、トリエチレングリコールジペラルゴネート、アルコール系可塑剤としては、2−(p−tert−アミルフェノキシ)エタノール、2−(p−tert−ブチルフェノキシ)エタノール、ジアミルフェノキシエタノール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、脂肪酸系可塑剤としては、オレイン酸、リシノール酸、ステアリン酸、アミド系可塑剤としては、アジピン酸ビスジブチルアミド、ラウリン酸ジブチルアミド、ジエチルジフェニル尿素、p−トルエンスルホンアミド、エチル−p−トルエンスルホンアミド、高分子系可塑剤としては、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール安息香酸エステル、エステル基を含有する高分子化合物(アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等の2塩基酸と1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール等の重縮合物)等が挙げられる。また、鉱物油や植物油も用いることができる。これら可塑剤の中でも、芳香族基を含まない可塑剤、例えばアジピン酸ジ−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、エポキシ化大豆油、エポキシ化トール油脂肪酸−2−エチルヘキシル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸ブチル、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸メチル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、あるいはエステル基を含有する高分子化合物(アジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸と1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール等の重縮合物)等の可塑剤が好ましい。
【0040】
これらの可塑剤は、可視領域短波長側に吸収を示さず、位相差の波長依存性に悪影響を与えないため、特に好ましい添加剤である。これら可塑剤は本発明のフィルム100重量部に対して2〜20重量部添加される。20重量部を超えると、連続的にロールフィルムを延伸する際の位相差の安定性が損なわれるおそれがあるため、好ましくない。
【0041】
また、フィルムの滑り性を改善する目的でフィラーを含有させても良い。フィラーとして、無機または有機の微粒子を用いることができる。無機微粒子の例としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物微粒子、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩微粒子、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、およびリン酸カルシウムなどを用いることが出来る。有機微粒子としては、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、架橋スチレン系樹脂などの樹脂微粒子を用いることができる。
【0042】
本発明フィルムに紫外線吸収剤を含有させることにより本発明フィルムの耐候性を向上する他、本発明フィルムを用いる液晶表示装置の耐久性も改善することができ実用上好ましい。紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−t−ブチルフェノール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどのトリアジン系紫外線吸収剤、オクタベンゾン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げられ、また、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系光安定剤やビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤も使用できる。
【0043】
本発明フィルムは、通常その表面エネルギーが50dyne/cm以下の値を示す。フィルムの表面エネルギーは、公知の方法にて測定することができる。その詳細は、D.K.Owens,Journal of Applied Polymer Science,vol13,1741頁(1969年)などに、記載されている。このような、低い表面エネルギーを示す表面に接着剤や粘着剤を介して他のフィルムやガラスを貼合した場合、十分な接着強度や粘着強度を得ることができず、容易に剥離してしまう。また、初期強度は得られたとしても、長期の使用により環境条件の遅速はあっても接着強度あるいは粘着強度が低下することにより剥離しやすくなるという問題点がある。上記フィルムをコロナ放電処理や火花処理などの電気的処理、低圧または常圧下でのプラズマ処理、オゾンの存在下または非存在下での紫外線照射処理、クロム酸等による酸処理、火焔処理、シラン系やチタン系などのプライマー処理などの公知の表面活性化処理を行うことにより、容易に50dyne/cmを安定的に超える、本発明フィルムとすることができる。
【0044】
コロナ放電処理の程度は、下記式(II)で表される放電量で制御する事ができる。
【0045】
H=P/(LS×M) (II)
ここで、Hは放電量、Pは高周波電力(W)、LSはフィルムの通過速度(m/min)、Mは放電幅(m)である。好ましいコロナ放電処理の条件としては、10〜500W・min/m2である。生産性を考慮すると、放電量のより好ましい上限は、300W・min/m2であり、更に好ましくは、100W・min/m2である。また、好ましいプラズマ処理としては、雰囲気ガスとして水素、炭酸ガス、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素などの単一あるいは混合ガス中での常圧プラズマ処理である。一般には、雰囲気ガスとしては、窒素やヘリウムやアルゴンなどの不活性ガス中に、酸素や空気・炭酸ガスなどの活性ガスの1種または2種以上を1容量%〜20容量%混合して用いることが好ましい。また、本発明に関わるフィルムは、酸性溶液中に晒すことにより表面エネルギーを大きくすることができるという特徴を有する。好ましくは、酸成分として、硫酸や塩酸等を用い、溶剤として、水またはメチルアルコールやエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類を用い、これらを単一あるいは混合溶液として用い、フィルム表面と必要により加温下で接触反応させることにより、フィルムの表面エネルギーを大きくすることができる。
【0046】
このようにして得られた表面エネルギーの高いフィルムは、粘着剤や接着剤との親和性が高くなり、他のフィルムやガラスと積層した場合、剥離強度が大きく、高温高湿下においても剥離強度が大きいという特徴を有する。好ましい表面エネルギーの値は、用いる接着剤や粘着剤の種類によって異なるが、一般的には50dyne/cm以上80dyne/cm以下であり、より好ましくは55dyne/cm以上70dyne/cm以下である。表面エネルギーの値は、処理方法や処理条件を適当に選択することにより調整することができる。
【0047】
また、本発明透明フィルムの表面には、必要に応じ反射防止層やアンチグレア層、ハードコート層などのコーティング層を単独または積層して形成することができる。該コーティング層は厚み0.1μmから10μm、好ましくは1μmから5μmの範囲で形成する事が好ましい。
【0048】
好ましいコーティング層を例示すると、有機系コーティング層としては、メラミン樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アルキド樹脂系、含フッソ系樹脂系であり、また有機−シリコーン複合系としては、ポリエステルポリオールやエーテル化メチロールメラミンにアルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの部分加水分解物を配合したものが挙げられる。また、アミノシランやエポキシシランの部分加水分解物、シランカップリング剤とアルキルトリアルコキシシラン・テトラアルコキシシランの部分加水分解物、コロイダルシリカとアルキルトリアルコキシシランの加水分解物等のシリコーン系材料も好適に用いることができる。これらコーティング層を形成する塗液の溶剤としては、メチルエチルケトンなどのケトン類、メタノールなどのアルコール類、エチルセルソルブなどのセルソルブ類、トルエンなどの芳香族炭化水素類、ジオキサンなどの環状エーテル類、など、公知の溶剤を好適に用いることができる。本発明透明フィルムとコーティング層の良好な接着性を得るために、これら溶剤を単独あるいは混合して用いることができる。好適な塗液の濃度は1重量%から10重量%である。
【0049】
これらコーティング材料を本発明透明フィルムの片面または両面にコーティング後、そのまま乾燥することにより被膜を得ることができるが、特に熱硬化により耐溶剤性被膜を有するフィルムを得ることが好ましい。この時、低温硬化型の触媒を同時に用いることは、好ましくないフィルムの熱変性を抑制するために好ましい方法である。また多官能アクリレート等のモノマーやオリゴマーに光増感剤を添加し、紫外線や電子線により得られる硬化層も好適に用いることが出来る。該コーティング層には、必要により、各種フィラーを添加することができる。フィラーを添加したコーティング層を設けることにより、外光の正反射を押さえギラツキ感の少ない表面(アンチグレア層)を得ることができる。
【0050】
好ましいフィラーとしては、ポリメタクリル酸エステル系やポリアクリル酸エステル系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ジビニルベンゼン系、ベンゾグアナミン系、有機シリコーン系等の有機系フィラーあるいはシリカやアルミナ、酸化チタン等の無機系フィラーが使用可能である。一方、フィラーの添加により液晶表示装置などの表示部位に用いた場合、表示像のギラツキ感を与える事があり、フィラー形状、コーティング剤やコーティング条件の最適化により、 JIS K 7105の6.6記載の方法で0.125mmの光学くしを用いて測定した透過像像鮮明度を80%以上にすることが望ましい。
【0051】
本発明透明フィルムの好ましい用途は、光学等方フィルムであり、他の好ましい用途は、位相差フィルムである。特に、本発明透明フィルムからなる位相差フィルムは、位相差の波長依存性が小さいため、反射型液晶表示装置用やλ/4板として好適に用いることができる。光学等方フィルムは、更に、各種用途に応用される。このような好ましい用途の一つは、プラスチック液晶表示装置や抵抗膜式タッチパネルの電極基板であり、他の好ましい用途は、偏光子保護フィルムである。本発明の透明フィルムを偏光子保護フィルムとして使用する場合、延伸されたポリビニルアルコールのフィルムにヨウ素や染料を含有させた偏光子に適当な接着剤を用いて貼合し、偏光板とすることが出来る。接着剤の種類にも依存するが、表面処理を施した本発明フィルムは、ポリビニルアルコールとの接着強度を、5×106N/m2以上、好ましくは20×106N/m2以上とすることが可能である。特に、本発明フィルムは、適度な水蒸気透過率を有するため、ポリビニルアルコール系の水系接着剤も好適に用いることができる。また、他の好ましい用途は、記録媒体用の支持基板あるいは記録層の保護フィルムである。これらの詳細については、日経マイクロデバイス(日本経済新聞社発行)2000年7月17日号155頁に記載されている。
【0052】
【実施例】
実施例および比較例に示される各物性値の測定方法を以下に示す。
【0053】
<熱変形温度>
TMAを用い、幅5mm、長さ10mmのフィルムに5gの加重をかけフィルム引っ張りモードで加熱温度と変形量の関係を求め、JIS K7196−1991記載の軟化温度の求め方に準じて、熱変形温度を求めた。
【0054】
<Re値の測定>
オーク製作所(株)の顕微偏光分光光度計(TFM−120AFT)を用い、550nmの波長におけるRe値を回転検光子法で測定した。
【0055】
<波長依存性の測定>
オーク製作所(株)の顕微偏光分光光度計(TFM−120AFT)を用い、441.6nmおよび514.5nmの波長における各Re値を回転検光子法で測定し、それぞれの値の比、Re(441.6)/Re(514.5)を求めた。
【0056】
<光線透過率の測定方法>
JIS K7105−1981の5.5記載の方法により測定した。
【0057】
<ヘイズの測定方法>
JIS K7105−1981の6.4記載の方法により測定した。
【0058】
<光弾性係数>
フィルムの複屈折は顕微偏光分光光度計(オーク製作所製 TFM−120AFT−PC)により514.5nmの測定波長を用いて測定した。光軸方向に幅1cmの短冊に切断したフィルムの一方を固定し、他方に50g、100g、150gの加重をかけ、単位応力による複屈折率の変化量を算出した。
【0059】
以下実施例により本発明を説明する。
【0060】
実施例1
エトキシ基の置換度が2.45、数平均分子量が3万であるエチルセルロースをトルエンを溶媒として固形分濃度が15重量%になるように溶解し、ガラス板上に敷いた二軸延伸PETフィルム上に流延し室温で15分放置した。その後ガラス板ごと70℃にて15分乾燥の後、フィルムを剥し、4片固定治具に挟んで、100℃で10分間、さらに120℃で30分間乾燥を行って厚さ43μmのフィルムを得た。このフィルムの位相差は3nm、光線透過率は92%、ヘイズは0.3%であった。TMAを用いて測定したフィルムの熱変形温度は129℃であった。
【0061】
このフィルムから30cm×10cmのサンプルフィルムを切り取り、延伸試験装置(東洋精機製作所、X4HD−HT)を用いて延伸速度10cm/分、延伸倍率1.2倍、延伸温度125℃の条件でサンプルフィルムの長手方向へ自由端縦一軸で延伸し、厚さ40μm、リターデーション142.8nmの位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの波長依存性を評価するためにRe(441.6)/Re(514.5)を計算したところ1.013であった。また、この位相差フィルムの光弾性係数は11×10-13cm2/dyneであった。
【0062】
実施例2
実施例1と同様にして得られた厚さ40μmのフィルムを用い、30cm×10cmのサンプルフィルムを切り取り、実施例1と同様の装置と延伸速度で、延伸倍率1.4倍、延伸温度125℃の条件でサンプルフィルムの長手方向へ自由端縦一軸で延伸し、厚さ30μm、リターデーション260nmの位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの波長依存性を評価するためにRe(441.6)/Re(514.5)を計算したところ、1.015であった。
【0063】
実施例3
エトキシ基の置換度が2.55で、数平均分子量が8万であるエチルセルロースを用い実施例1と同様にして厚さ30μmのフィルム得た。得られたフィルムから、30cm×10cmのサンプルフィルムを切り取り、実施例1と同様の装置と延伸速度で、延伸倍率1.15倍、延伸温度135℃の条件でサンプルフィルムの長手方向へ自由端縦一軸で延伸し、厚さ26μm、リターデーション114nmの位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの波長依存性を評価するためにRe(441.6)/Re(514.5)を計算したところ、1.026であった。
【0064】
比較例1
ビスフェノール成分としてビスフェノールAからなるポリカーボネート(帝人化成株式会社 C−1400、ガラス転移温度149℃)を塩化メチレン溶液に濃度15重量%になるように溶解し、ガラス板上に流延し室温で60分放置後フィルムを剥し、4片固定治具に挟んで、100℃で10分間、さらに120℃で10分間乾燥を行って厚さ約65μmのフィルムを得た。このフィルムの位相差は21nm、光線透過率は90%、ヘイズは0.3%であった。
【0065】
このフィルムから30cm×10cmのサンプルフィルムを切り取り、延伸試験装置(東洋精機製作所、X4HD−HT)を用いて延伸速度10cm/分、延伸倍率1.1倍、延伸温度150℃の条件で延伸し、厚さ61μm、リターデーション250nmの位相差フィルムを得た。この位相差フィルムの波長依存性を評価するためにRe(441.6)/Re(514.5)を計算したところ、1.064であった。また、このフィルムの光弾性係数は61×10-13cm2/dyneであった。
【0066】
実施例4
実施例1で得られた位相差フィルムにコロナ処理を行ったところ、コロナ処理面の塗れ性は57dyne/cmであった。アクリル系粘着剤を用い、偏光板の偏光軸とコロナ処理済み位相差フィルムの遅相軸を45°に配し積層貼合し円偏光板を得た。この円偏光板を温度40℃、湿度95%の湿熱環境下に長期放置しても、偏光板と位相差フィルムとの界面で剥離は認められなかった。
【0067】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の光学フィルムは、位相差の波長依存性が小さく、張力による位相差ズレが小さい位相差フィルムが提供される。さらに、本発明の位相差フィルムを、反射型TFT液晶表示装置の構成フィルムとして用いると、コントラストや色純度の高い表示像を得ることができる。
Claims (6)
- セルロースの水酸基がエーテル基で置換されたセルロース誘導体を含有する透明フィルムであって、
セルロース誘導体のエーテル置換度が2から3.0であり、
透明フィルムが少なくとも一軸方向に延伸されており、
透明フィルムの位相差が550nmの単色光に対して10nmを超え2000nmまでの範囲であることを特徴とする位相差フィルム。 - エーテル基がアルキルエーテル基および/またはアラルキルエーテル基であることを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
- 透明フィルムの位相差が550nmの単色光に対して300nmから2000nmまでの範囲であり、STN液晶表示装置の色補償用に用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の位相差フィルム。
- 透明フィルムの位相差が550nmの単色光に対して200nmから400nmまでの範囲であり、λ/2波長板として用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の位相差フィルム。
- 透明フィルムの位相差が550nmの単色光に対して90nmから200nmまでの範囲であり、λ/4波長板として用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の位相差フィルム。
- 請求項1から5のいずれかに記載の少なくとも一枚の位相差フィルムと、偏光板が積層一体化されていることを特徴とする円または楕円偏光板。
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