JP4180300B2 - 位相差フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は優れた光学的特性を有し、高温下における耐久性に優れた液晶表示装置などに使用される位相差フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、位相差フィルムはSTN方式やTFT等の液晶表示装置に広く使用され、色補償、視野角拡大等の問題を解決するために用いられている。従来、位相差フィルムとしてはその透明性、耐熱性といった特徴からポリカーボネートからなるフィルムを延伸配向させたものが主に用いられてきた。例えば、特開平6−82624号公報、特開平7−52270号公報には、高いガラス転移温度を有するポリカーボネートフィルムが記載されている。しかし、ポリカーボネートからなるフィルムは光弾性係数が90×10-12m2/Nと大きく、わずかな応力により位相差が大きく変化するため、組立時や環境変化によって生じたわずかな応力でも位相差が変化してしまい、液晶ディスプレイの画面の均一性や安定性に問題があった。
【0003】
光弾性係数が小さい素材として、特開平4−36120号公報、特開平4−2108号公報、特開平7−287122号公報に開示されているようなノルボルネン系樹脂からなるフィルムがあげられる。しかし、ノルボルネン系樹脂を用いた場合、光弾性係数が小さいため、位相差が発現しにくく、延伸して位相差フィルムを作製する場合、必要とする位相差フィルム厚が厚くなり、極端に大きな延伸倍率を必要とし、均一な位相差値を有するフィルムを得ることが難しいという問題を抱えている。
【0004】
低光弾性係数だけでなく、位相差の波長依存性が小さいことも位相差フィルムに要求されている。この位相差の波長依存性は、Re(441.6)/Re(514.5)で定義され、ここで、Re(441.6)は、波長441.6nmの単色光で測定したフィルムの位相差を表し、Re(514.5)は、波長514.5nmの単色光で測定したフィルムの位相差を表す。
【0005】
前述のポリカーボネート位相差フィルムでは、波長依存性が大きく、ある波長に対して1/4の位相差を有する位相差フィルムとし、直線偏光を円偏光に或いは円偏光を直線偏光に変換するようにしても、他の波長においては円偏光や直線偏光になるべきところが楕円偏光になる等、偏光に対する作用の程度が異なるため、この位相差フィルムを用いて反射型TFT液晶表示装置で黒表示をする場合、バックライトからの光を完全に遮光することができず、コントラストや階調表示の低下を招いてしまう。また、特開2000−137116号公報、特開2001−253971号公報に開示されているようなトリアセチルセルロース位相差フィルムも、位相差の波長依存性が大きく、Re(441.6)/Re(514.5)の絶対値は1からかけ離れている。また、トリアセチルセルロースを用いたフィルムは位相差が発現しにくいため、求める位相差が大きい場合にはフィルムを厚くしなければならないという問題点もある。
【0006】
これに対して、光弾性係数が小さく、かつ位相差の波長依存性も小さい、セルロース誘導体を用いた位相差フィルムに関する出願を行っているが、セルロース誘導体の酸化に対する耐久性を更に向上させ、酸化による劣化が、位相差フィルムの位相差値の低下を引き起こし難くする必要が生じていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は前述した従来の位相差フィルムの問題点を解消し、高温環境下での耐久性、耐熱性、透明性に優れた位相差フィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、位相差の波長依存性と光弾性係数が共に小さい位相差フィルムであり、さらに高温環境下での耐久性、耐熱性に優れた位相差フィルムを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、(A)セルロース誘導体、および(B)劣化防止剤を含有するフィルムで、フィルムの位相差が550nmの単色光に対して5nmから2000nmであり、441.6nmの単色光に対する位相差(Re(441.6))と514.5nmの単色光に対する位相差(Re(514.5))の比Re(441.6)/Re(514.5)が0.98から1.02である位相差フィルムを提供するものである。
【0010】
セルロース誘導体(A)のセルロースの水酸基はエトキシル基で置換され、その置換度が1.9から2.5であることが好ましく、また、劣化防止剤(B)は、りん酸エステル化合物、フェノール誘導体、エポキシ系化合物およびアミン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0011】
また、本発明の位相差フィルムは、好ましくは、少なくとも一軸方向に延伸倍率1.01から4.0に延伸して得られるものである。
【0012】
また、一つの実施態様において、本発明の位相差フィルムは光弾性係数が5.0×10-12m2/N以上20.0×10-12m2/N以下である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の位相差フィルムは、少なくとも(A)セルロース誘導体、および(B)劣化防止剤から構成される。
【0014】
本発明の位相差フィルムをSTN液晶表示装置の色補償用に用いる場合には、その位相差値は、一般的には300nmから2000nmまでの範囲で選択される。また、本発明の位相差フィルムをλ/2波長板として用いる場合は、その位相差値は、一般的には200nmから400nmの範囲で選択される。λ/2波長板としてのより好ましい位相差値は、230nmから300nmの範囲から選択される。本発明の位相差フィルムをλ/4波長板として用いる場合は、その位相差値は、一般的には90nmから200nmの範囲で選択される。λ/4波長板としてのより好ましい位相差値は、100nmから180nmの範囲から選択される。また、5〜100nmの位相差の値のフィルムは、低位相差の特徴を活かして、偏光子保護フィルムとして用いたり、また、延伸前の所謂原反フィルムとして用いられる。
【0015】
本発明の位相差フィルムの位相差の波長依存性は、Re(441.6)/Re(514.5)で定義される。ここで、Re(441.6)は波長441.6nmの単色光で測定したフィルムの位相差を表し、Re(514.5)は波長514.5nmの単色光で測定したフィルムの位相差を表す。ポリカーボネート系位相差フィルムの場合、Re(441.6)/Re(514.5)は1.06であるのに対し、本発明位相差フィルムは、0.98から1.02、好ましくは0.99から1.01とすることが出来る。本発明の位相差フィルムを用いることにより、ポリカーボネート系位相差フィルムと比較し、特に反射型のTFTやSTN液晶表示装置用やタッチパネルなどの反射防止用に用いる場合、色つきの少なく高いコントラストを示す表示像を与えることができる。
【0016】
また、本発明の位相差フィルムは、本発明のフィルム同士、または他の位相差フィルムとともに複数枚の位相差フィルムを用い、特開平5−27118号公報、特開平5−27119号公報、特開平5−100114号公報および特開平10−68816号公報で開示されているように、各位相差フィルムを所定の角度で貼合することにより、更に位相差の波長依存性を小さくすることも可能である。
【0017】
本発明に用いられるセルロース誘導体(A)の水酸基はエトキシル基で置換されたものであり、その好ましい置換度は1.9以上2.5以下であり、より好ましくは2.2以上2.5以下である。セルロース置換度は希硫酸で加水分解した後、遊離したアルコールを定量する等の公知の方法により測定することが出来る。セルロースは置換可能な水酸基を繰り返し単位に3個有しており、全てが置換されたものの置換度は3であるが、過度にエトキシル基で置換されたセルロース誘導体(A)は、強度と柔軟性が失われ、熱可塑性もなくなり、更に相溶性が極端に低下するため好ましくない。また、置換度が極端に低いとセルロース誘導体(A)を単独で溶解できる溶剤が少なくなるとともに、熱変形が困難になり、溶剤キャスト法によるフィルム化や延伸による位相差付与が困難になる。また、得られたフィルムの吸水率が大きくなり、寸法安定性などに好ましくない影響を及ぼす。一方、置換度が高すぎる場合には溶剤に対する溶解性が再び制限されるばかりかセルロース誘導体が高価になり好ましくない。
【0018】
セルロース誘導体(A)は高温、紫外線等によって酸化による劣化を生じ、位相差フィルムの位相差値の低下やフィルムの透明性の低下を引き起こすため、劣化防止剤を加える必要がある。劣化防止剤(B)は酸化による劣化を抑制する酸化防止剤や、高温下での安定性を付与する熱安定剤、さらに紫外線による劣化を防止する紫外線吸収剤が用いられる。また、塩素化した樹脂類や可塑剤に対して、分解により発生する遊離酸を吸収させる酸吸収剤を用いるのも好ましい。
【0019】
劣化防止剤(B)としては、りん酸エステル化合物、フェノール誘導体、エポキシ系化合物、アミン誘導体などが挙げられる。具体的には、りん酸エステル化合物としてトリクレジルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスファイト等、フェノール誘導体としてはオクチルフェノール、ペンタフェノン、ジアミルフェノール等、アミン誘導体としてジフェニルアミン等を用いるのが好ましい。
【0020】
劣化防止剤(B)の添加量は、セルロース誘導体(A)100重量部に対して、0.01から3.0重量部であることが好ましく、0.05から2.0重量部であることがさらに好ましい。添加量が1重量部以上でもその効果はほとんど上がらず、逆にフィルム表面への滲み出しが認められたり、透明性が上昇する場合がある。また、添加量が0.01重量部未満であると、劣化防止剤の効果はほとんど認められない。
【0021】
セルロース誘導体(A)の数平均分子量は、好ましくは22000から100000であり、より好ましくは30000から80000、更に好ましくは35000から65000である。不必要に高い分子量は、溶剤に対する溶解度を低下させるほか、得られた溶液の粘度が高過ぎ溶剤キャスト法に適さない他、熱成形を困難にし、フィルムの透明性を低くするなどの問題を生じる。一方、あまりに低い分子量は、得られたフィルムの機械的強度を低下させるので好ましくない。
【0022】
セルロース誘導体(A)は、セルロースに水酸化ナトリウムを加えてアルカリセルロースを調製し、塩化エチルを用いてエーテル化するといった既知の方法により製造できる。
【0023】
本発明の位相差フィルムは、セルロース誘導体(A)として置換度が異なる2種類以上のセルロース誘導体(A)の混合物を用いてもよい。但し、最大の置換度を有するセルロース誘導体(A)と、最小の置換度を有するセルロース誘導体(A)との置換度の差が0.1から0.3である方が好ましい。その場合、セルロース誘導体(A)の混合物全体の平均置換度は2.2から2.5であることが好ましく、より好ましくは2.3から2.4である。
【0024】
本発明の位相差フィルムには、セルロース誘導体(A)以外の樹脂成分としてセルロース誘導体(A)以外のセルロースエーテル誘導体、セルロース混合エステル誘導体が含有されていてもよい。特に、特定の置換度を有するセルロースアセテートやセルロースアセテートプロピオネートとのブレンド体は、全光線透過率が85%以上、好ましくは90%以上を有するブレンドフィルムを得ることができ、また、得られた位相差フィルムの波長依存性をブレンド比率により連続的に変えることができるため好ましい。
【0025】
セルロース誘導体(A)のフィルムのガラス転移温度(Tg)は、熱機械分析法(TMA)による熱軟化温度にて評価することができる。一般には90℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以上180℃以下、更に好ましくは120℃以上160℃以下である。上記範囲よりもTgが小さいと十分な耐熱性が得られず、一方この範囲より大きいと成形加工性が著しく低下してしまい好ましくない。2種類以上のセルロース誘導体(A)の混合物では、その組成比を変える事によりTgを上記温度範囲内とすることで、耐熱性と成形加工性に優れたフィルムを得ることができる。
【0026】
さらに、本発明の位相差フィルムの機械的物性を改良するために可塑剤を加えることも有効である。
【0027】
可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル化合物、トリクレジルフォスフェート、トリブチルフォスフェート等のりん酸エステル化合物、ブチルフタリルブチルグリコレート等のグリコール誘導体、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル化合物が挙げられる。また鉱物油や植物油も用いることができる。
【0028】
可塑剤の添加量は、セルロース誘導体(A)100重量部に対して0.5から20重量部であることが好ましく、1から15重量部であることがさらに好ましい。不要に添加量が多いと、フィルムのTgを下げてしまい、延伸等の加工性を低下させてしまう。また、添加量が上記範囲より少なすぎると、可塑剤の効果はほとんど認められない。
【0029】
本発明にかかわるフィルムは、公知の溶融押し出し法、溶液流延法等により製造できる。本発明フィルムに極めて均一な厚み精度が必要な場合には、膜厚ムラの低減のために溶液流延法がより好ましく用いられる。溶液流延法はセルロース誘導体(A)を有機溶剤に溶解した溶液を用いてフィルムを製造する。この方法に用いることのできる溶剤は、塩化メチレンやトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール等の低分子量脂肪族アルコール類であり、これらは沸点も低いため好適な溶剤の一つである。さらに、酢酸エチルやプロピオン酸エチルなどのエステル系、トルエン、キシレンやアニソール等の芳香族系、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系の溶剤も用いることができる。また、必要に応じて二種類以上の有機溶剤を混合することで、フィルムの引張強度、柔軟性、および靭性を調節することができる。
【0030】
溶液流延法によりフィルム化する場合、セルロース誘導体(A)を前記溶剤に溶解した後、支持体に流延し、乾燥してフィルムとする。溶解液の好ましい粘度は10ポイズから50ポイズであり、より好ましくは15ポイズから30ポイズである。好ましい支持体としては、ステンレス鋼のエンドレスベルトや、ポリイミドフィルム、ニ軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のようなフィルムを用いることができる。
【0031】
本発明フィルムは、支持体に担持されたまま、乾燥を行うことも可能であるが、必要に応じて、予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥は、一般にはフロート法や、テンターあるいはロール搬送法が利用できる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルムの両端を支えているピンあるいはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡散制御を行う必要がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のためのテンションは原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい特徴を有する。従って、フィルムの乾燥は、ロール搬送法によることが最も好ましい。また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないように、湿度を低く保った雰囲気中で乾燥することは、機械的強度と透明度の高い本発明フィルムを得るために有効な方法である。
【0032】
本発明フィルムの厚みは、5μmから200μmであり、好ましくは20μmから150μm、より好ましくは30μmから100μmである。
【0033】
フィルムのヘイズは2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。また、フィルムの光線透過率は85%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。
【0034】
本発明の位相差フィルムは、公知の延伸方法で延伸する事で分子が配向し、一定のレターデーション(位相差)値を持つ位相差フィルムが得られる。レターデーションは延伸前のフィルムの厚さ、延伸温度、および延伸倍率で制御することができる。その際の好ましい延伸方法は一軸延伸である。一軸延伸には縦、横延伸があるが、得られた位相差フィルムの光学的な一軸性が重要である場合は、自由端縦一軸延伸が特に好ましい延伸方法である。
【0035】
延伸温度は一般には樹脂のTgに対して、(Tg−30)〜(Tg+50)℃、好ましくは(Tg±20)℃、より好ましくは(Tg−10)〜(Tg+20)℃である。温度が高すぎる場合、配向の緩和により期待された配向度が得られなく、配向制御が困難になり、温度が低すぎる場合には均一に配向させることが困難になるため好ましくない。また、適切な延伸倍率は1.01倍から4.0倍である。
【0036】
本発明に関わるこのような位相差フィルムは、応力により位相差が変化しにくい、つまり光弾性係数が小さいことが要求される。光弾性係数の高い位相差フィルムでは、偏光板と貼合して用いた場合、偏光フィルムの収縮等による応力により位相差が変化してしまい、位相差ムラによるコントラストやカラーバランスの低下を引き起こしやすいという問題がある。
【0037】
本発明の位相差フィルムの光弾性係数は小さく、20.0×10-12m2/N以下、好ましくは15.0×10-12m2/N以下である。位相差フィルムに加工されたフィルムの光弾性係数は小さいほど好ましいが、光弾性係数が小さい素材は延伸しても位相差が出にくい傾向にあるため5.0×10-12m2/N以上が好ましい。光弾性係数の大きいポリカーボネート系位相差フィルムと比較すると、本発明のフィルムは光弾性係数が小さく、応力による位相差変化が小さいという特徴を有しており、反射TFT液晶表示装置用としてだけでなく、大画面液晶表示装置用にも好適である。
【0038】
一般に、ポリカーボネートフィルムのように光弾性係数が大きいフィルムは位相差の付与が容易である。他方、光弾性係数が小さい特開平4−36120号公報、特開平4−2108号公報、特開平7−287122号公報に開示されているようなノルボルネン系樹脂からなるフィルムは位相差の付与が困難である。しかし、本発明の位相差フィルムは、位相差の発現が容易であり、延伸前のフィルムが厚く、低い延伸倍率でも非常に高い位相差値を得ることができる。
【0039】
本発明の位相差フィルムは、そのまま、あるいは各種加工を行い、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルム用として、液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に用いることができる。その中でも、位相差の波長依存性が低く、光弾性係数が小さいといった特徴から、そのまま位相差フィルムとして反射型液晶表示装置に用いた場合に、特に好適に使用することができる。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明がこれらによって制限されるものではない。
【0041】
実施例および比較例に示される各物性値の測定方法を以下に示す。
【0042】
<試験方法>
実施例、及び比較例1〜2で得られた位相差フィルムを評価サイズ50mm×50mmの正方形に切りだし、その試験片に対して耐久評価試験を行った。試験条件は80℃dryで1000時間まで観測し、試験前後での位相差変化により、高温下での耐久性を評価した。
【0043】
<Re値の測定>
オーク測定(株)の顕微偏光分光光度計(TFM−120AFT)を用い、514.5nmの波長におけるRe値を回転検光子法で測定した。
【0044】
<波長依存性の測定>
オーク測定(株)の顕微偏光分光光度計(TFM−120AFT)を用い、441.6nmおよび514.5nmの波長における各Re値を回転検光子法で測定し、それぞれの値の比、Re(441.6)/Re(514.5)を求めた。
【0045】
<光線透過率の測定方法>
JIS K7105−1981の5.5記載の方法により測定した。
【0046】
<ヘイズの測定方法>
JIS K7105−1981の6.4記載の方法により測定した。
【0047】
<光弾性係数>
フィルムの複屈折は顕微偏光分光光度計(オーク製作所製 TFM−120AFT)により514.5nmの測定波長を用いて測定した。光軸方向に幅1cmの短冊に切断したフィルムの一方を固定し、他方に500gの加重をかけ、単位応力による複屈折率の変化量を算出した。
【0048】
(実施例1)
セルロース誘導体(A)として平均置換度が2.3、数平均分子量が51000であるセルロース誘導体(A)を10重量%、劣化防止剤(B)としてジアミルフェノールをセルロース誘導体(A)に対して1重量%を塩化メチレンに溶解しドープを調製した。このドープをガラス板上に敷いた二軸延伸PETフィルム上に流延し室温で3分放置した。その後、フィルムを剥がし、4片固定治具に挟んで、80℃で2分間、100℃で2分間乾燥を行って厚さ44μmの透明フィルムを得た。この透明フィルムのヘイズは0.2%、全光線透過率は93.7%であった。
【0049】
この透明フィルムから15cm×9cmのサンプルフィルムを切り取り、延伸試験装置(東洋精機製作所、X4HD−HT)を用いて延伸速度30cm/分、延伸温度140℃、延伸倍率1.14倍の条件でサンプルフィルムの長手方向へ自由端縦一軸延伸で延伸し、厚さ45μmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長依存性を計算したところ、Re(441.6)/Re(514.5)は1.01であり、光弾性係数は11.0×10-12m2/Nであった。
【0050】
(実施例2)
実施例1で使用したセルロース誘導体(A)を10重量%、劣化防止剤(B)としてトリクレジルフォスフェートとジアミルフェノールの7対3の混合物をセルロース誘導体(A)に対して1重量%を塩化メチレンに溶解しドープを調製した。このドープを用い、実施例1と同様にして厚さ37μmの透明フィルムを得た。この透明フィルムを、実施例1と同様の延伸条件にて延伸し、厚さ40μmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長依存性を計算したところ、Re(441.6)/Re(514.5)は1.01であり、光弾性係数は11.0×10-12m2/Nであった。
【0051】
(実施例3)
実施例1で使用したセルロース誘導体(A)を10重量%、劣化防止剤(B)としてトリフェニルフォスファイトをセルロース誘導体(A)に対して1重量%を塩化メチレンに溶解しドープを調製した。このドープを用い、実施例1と同様にして厚さ41μmの透明フィルムを得た。この透明フィルムを、実施例1と同様の延伸条件にて延伸し、厚さ39μmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長依存性を計算したところ、Re(441.6)/Re(514.5)は1.01であり、光弾性係数は11.0×10-12m2/Nであった。
【0052】
(実施例4)
実施例1で使用したセルロース誘導体(A)を10重量%、劣化防止剤(B)としてトリフェニルフォスファイトとジアミルフェノールをセルロース誘導体(A)に対してそれぞれ1重量%を塩化メチレンに溶解しドープを調製した。このドープを用い、実施例1と同様にして厚さ35μmの透明フィルムを得た。この透明フィルムを、実施例1と同様の延伸条件にて延伸し、厚さ39μmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長依存性を計算したところ、Re(441.6)/Re(514.5)は1.01であり、光弾性係数は11.0×10-12m2/Nであった。
【0053】
(比較例1)
実施例1において使用したセルロース誘導体(A)を単独で製膜し、厚さ38μmの透明フィルムを得た。この透明フィルムを延伸倍率を1.07倍とした以外は実施例1と同様の条件で延伸を行い、厚さ38μmの位相差フィルムを得た。
【0054】
(比較例2)
比較例1と同様にして得られた厚さ37μmのフィルムを用い、延伸倍率を1.19倍とした以外は実施例1と同様の条件で延伸を行い、厚さ37μmの位相差フィルムを得た。
【0055】
(比較例3)
置換度が2.53のトリアセチルセルロースを13重量%を塩化メチレン/メタノール(重量比9/1)に溶解しドープを調製した。このドープをガラス板上に敷いた二軸延伸PETフィルム上に流延し室温で3分放置した。その後、フィルムを剥がし、4片固定治具に挟んで、45℃で5分間、100℃で10分間乾燥を行って、厚さ100μmの透明フィルムを得た。
【0056】
この透明フィルムを、延伸温度180℃にて延伸を試みたが、フィルムは全く伸びず、延伸されなかった。
【0057】
(比較例4)
置換度が2.66のトリアセチルセルロースを13重量%、可塑剤としてフタル酸ジブチルをトリアセチルセルロースに対して3重量%を塩化メチレン/メタノール(重量比9/1)に溶解しドープを調製した。このドープを用い、比較例3と同様にして、透明フィルムを得た。
【0058】
この透明フィルムを、延伸倍率1.5倍、延伸温度170℃にて延伸し、厚さ100μm、波長514.5nmでの位相差が68.8nmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長依存性を計算したところ、Re(441.6)/Re(514.5)は0.74であった。
(比較例5)
置換度が2.73のトリアセチルセルロースを13重量%、可塑剤としてフタル酸ジブチルをトリアセチルセルロースに対して3重量%を塩化メチレン/メタノール(重量比9/1)に溶解しドープを調製した。このドープを用い、比較例3と同様にして、透明フィルムを得た。
【0059】
この透明フィルムを、延伸倍率1.3倍、延伸温度170℃にて延伸し、波長514.5nmでの位相差が25.8nmの位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムの波長依存性を計算したところ、Re(441.6)/Re(514.5)は0.66であった。
【0060】
【表1】
【0061】
表1から明らかなように、実施例1〜4で得られた位相差フィルムは、比較例1〜2で得られた位相差フィルムに比べて、80℃dryの条件下での位相差変化が極めて少なく、高温環境下での耐熱性に優れたものである事がわかる。
【0062】
【発明の効果】
以上述べたように本発明のフィルムは、位相差の波長依存性が小さく、光弾性係数が小さいために応力による位相差ズレが小さいにもかかわらず、位相差が付与しやすい位相差フィルムであり、さらに高温環境下での耐久性、耐熱性に優れた位相差フィルムが提供される。また、本発明の位相差フィルムを反射型TFT液晶表示装置の構成フィルムとして用いると、コントラストや色純度の高い表示像を得ることができる。
Claims (1)
- (A)セルロース誘導体、および(B)劣化防止剤を含有するフィルムで、フィルムの位相差が550nmの単色光に対して5nmから2000nmであり、441.6nmの単色光に対する位相差(Re(441.6))と514.5nmの単色光に対する位相差(Re(514.5))の比Re(441.6)/Re(514.5)が0.98から1.02であって、セルロース誘導体(A)のセルロースの水酸基がエトキシル基で置換され、その置換度が1.9から2.5である位相差フィルム。
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