JP2004157300A - 光学異方性フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】液型液晶表示装置において、視野角向上という特徴が発揮され、かつ安価に製造可能な光学異方性フィルムを提供する。
【解決手段】面内の遅相軸方向の屈折率をnx、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたとき、Δnh=nx−ny≦3.0×10−4 および Δnv=(nx+ny)/2−nz≧3.0×10−3 を満たし、かつ、光弾性係数が5×10−12m2/N以上20×10−12m2/N以下である光学異方性フィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】面内の遅相軸方向の屈折率をnx、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたとき、Δnh=nx−ny≦3.0×10−4 および Δnv=(nx+ny)/2−nz≧3.0×10−3 を満たし、かつ、光弾性係数が5×10−12m2/N以上20×10−12m2/N以下である光学異方性フィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は優れた光学的特性を有し、かつ安価に製造可能な光学異方性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性高分子フィルムによる各種光学異方性フィルムは、防眩材料として、また、液晶表示装置における位相差補償板としてその用途が広がっている。高分子フィルムの位相差板としては、各種の高分子フィルムを一軸延伸することによって製造する方法が知られているが、一般には固有複屈折性の大きいポリカーボネート系樹脂を一軸延伸したものが用いられている。
【0003】
しかしながら、大画面化、軽量化、広視野角化、高コントラスト、色再現性等、液晶表示装置に対する要求も多様化しており、それに伴って光学補償フィルムに要求される特性も多様化している。その一例として、正面位相差が小さく、厚み方向位相差が大きいという特徴を有する光学異方性フィルムは、液晶表示装置の広視野角化等を目的とする光学補償フィルムとして用いられている。
【0004】
このような光学異方性フィルムは通常の一軸延伸による製法では達成できず、ポリカーボネート等の複屈折の大きい樹脂からなるフィルムを二軸延伸することにより得ることができる(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、ポリカーボネートのように複屈折の大きい樹脂からなるフィルムは光弾性係数が大きく、わずかな応力により位相差が大きく変化するため、組立時や環境変化によって生じたわずかな応力でも位相差が変化してしまい、液晶ディスプレイの画面の均一性や安定性に問題があった。
【0005】
このような課題を解決するために、ノルボルネン系樹脂のように光弾性係数が小さい素材からなる二軸延伸フィルムが開発されている(例えば特許文献2参照。)。しかし、光弾性係数の小さい高分子材料を光学異方性フィルムに用いた場合、位相差が発現しにくいため、光学補償に必要な厚み位相差を得るためには、複数枚の二軸延伸フィルムを積層する必要があった。
【0006】
また、二酢酸セルロースからなる光学異方性フィルム(例えば特許文献3参照)は、二軸延伸等の外部応力による配向を付与することなく大きな厚み方向位相差を発現するとされている。しかし、このようなフィルムの光学異方性は、光学補償フィルムとして用いるには十分ではない。そのため、フィルム厚を厚くするか、複数枚のフィルムを積層して使用する必要があり、生産性およびコスト面に問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平6−337313号公報
【0008】
【特許文献2】特開2002−148437号公報
【0009】
【特許文献3】特開2001−27707号報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明が解決しようとする課題は、液晶表示装置において、色補償や視野角拡大という特徴が発揮され、かつ安価に製造可能な光学異方性フィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたとき、Δnh=nx−ny≦3.0×10−4 および Δnv=(nx+ny)/2−nz≧3.0×10−3 を満たし、かつ、光弾性係数が5×10−12m2/N以上20×10−12m2/N以下であり、高分子化合物からなる光学異方性フィルムを提供するものである。
【0012】
上記を達成しうる光学異方性フィルム用の高分子化合物としては、セルロース誘導体が好適である。特に、セルロースの水酸基をエトキシル基で置換したものであり、その置換度が1.9から2.9であるエチルセルロースは、正面位相差が小さく、かつ、厚み方向位相差が大きく、さらに適度な光弾性係数を有するため該セルロース誘導体として好適に用いることができる。また、劣化防止剤として、りん酸エステル化合物、フェノール誘導体、エポキシ系化合物およびアミン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の光学異方性フィルムに用いられる高分子化合物としては、セルロース誘導体が好ましい。セルロース誘導体の中でも、水酸基がエトキシル基で置換されたものであり、置換度が1.9以上2.9以下であるものが好ましく、置換度が2.2以上2.8以下であるものがさらに好ましい。
【0014】
セルロース置換度は希硫酸で加水分解した後、遊離したアルコールを定量する等の公知の方法により測定することが出来る。セルロースは置換可能な水酸基を繰り返し単位に3個有するが、過度にエトキシル基で置換されたセルロース誘導体は、強度と柔軟性が失われ、熱可塑性もなくなり、更に相溶性が極端に低下する傾向にある。また、置換度が極端に低いとセルロース誘導体を単独で溶解できる溶剤が少なくなるとともに、熱変形が困難になり、溶剤キャスト法によるフィルム化や延伸による位相差付与が困難になる。また、得られたフィルムの吸水率が大きくなり、寸法安定性が低下する傾向がある。一方、置換度が高すぎる場合には溶剤に対する溶解性が再び制限されるばかりかセルロース誘導体が高価になる傾向がある。
【0015】
セルロース誘導体は高温、紫外線等によって酸化による劣化を生じ、透明フィルムの位相差値の低下やフィルムの透明性の低下を引き起こすため、劣化防止剤を加えることが好ましい。劣化防止剤は酸化による劣化を抑制する酸化防止剤や、高温下での安定性を付与する熱安定剤、さらに紫外線による劣化を防止する紫外線吸収剤が用いられる。また、塩素化した樹脂類や可塑剤に対して、分解により発生する遊離酸を吸収させる酸吸収剤を用いるのも好ましい。
【0016】
劣化防止剤としては、りん酸エステル化合物、フェノール誘導体、エポキシ系化合物、アミン誘導体などが挙げられる。具体的には、りん酸エステル化合物としてトリクレジルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスファイト等、フェノール誘導体としてはオクチルフェノール、ペンタフェノン、ジアミルフェノール等、アミン誘導体としてジフェニルアミン等を用いるのが好ましい。
【0017】
劣化防止剤の添加量は、セルロース誘導体100重量部に対して、0.01から3.0重量部であることが好ましく、0.05から2.0重量部であることがさらに好ましい。添加量が1重量部以上でもその効果はほとんど上がらず、逆にフィルム表面への滲み出しが認められたり、透明性が減少する場合がある。また、添加量が0.01重量%未満であると、劣化防止剤の効果はほとんど認められない。
【0018】
セルロース誘導体の数平均分子量は、好ましくは22000から100000であり、より好ましくは30000から80000、更に好ましくは35000から65000である。不必要に高い分子量は、溶剤に対する溶解度を低下させるほか、得られた溶液の粘度が高過ぎ溶剤キャスト法に適さない他、熱成形を困難にし、フィルムの透明性を低くするなどの問題を生じる。一方、あまりに低い分子量は、得られたフィルムの機械的強度を低下させる傾向がある。
【0019】
セルロース誘導体は、セルロースに水酸化ナトリウムを加えてアルカリセルロースを調製し、塩化エチルを用いてエーテル化するといった既知の方法により製造できる。
【0020】
本発明の光学異方性フィルムに用いる高分子化合物としては、置換度が異なる2種類以上のセルロース誘導体の混合物を用いてもよい。また、セルロース誘導体の置換度が上昇するほどΔnhおよびΔnvが小さくなる傾向がある。すなわち、置換度の異なるセルロース誘導体のブレンド比率を変化させることによって、得られる光学異方性フィルムのΔnhおよびΔnvを連続的に変えることができる。但し、最大の置換度を有するセルロース誘導体と、最小の置換度を有するセルロース誘導体との置換度の差が0.1から0.5であることが好ましい。その場合、セルロース誘導体の混合物全体の平均置換度は1.9から2.9であることが好ましく、より好ましくは2.2から2.8である。
【0021】
本発明の光学異方性フィルムには、エチルセルロース以外のセルロースエーテル、セルロースエステル等が含有されていてもよい。特に、特定の置換度を有するセルロースアセテートやセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートとのブレンド体は、全光線透過率が85%以上、好ましくは90%以上を有するブレンドフィルムを得ることができ、また、得られた光学異方性フィルムのΔnhおよびΔnvをブレンド比率により連続的に変えることができるため好ましい。
【0022】
セルロース誘導体フィルムのガラス転移温度(Tg)は、熱機械分析法(TMA)による熱軟化温度にて評価することができる。一般には90℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以上180℃以下、更に好ましくは120℃以上160℃以下である。上記範囲よりもTgが小さいと十分な耐熱性が得られず、一方この範囲より大きいと成形加工性が著しく低下してしまう傾向がある。2種類以上のセルロース誘導体の混合物では、その組成比を変える事によりTgを上記温度範囲内とすることで、耐熱性と成形加工性に優れたフィルムを得ることができる。
【0023】
さらに、本発明の光学異方性フィルムの機械的物性を改良するために可塑剤を加えることも有効である。可塑剤としては、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル化合物、トリクレシルフォスフェート、トリブチルフォスフェート等のりん酸エステル化合物、ブチルフタリルブチルグリコレート等のグリコール誘導体、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル化合物が挙げられる。また鉱物油や植物油も用いることができる。
【0024】
可塑剤の添加量は、セルロース誘導体100重量部に対して0.5から20重量部であることが好ましく、1から15重量部であることがさらに好ましい。不必要に添加量が多いと、フィルムのTgを下げてしまい、耐熱性の低下を招いてしまう傾向がある。また、添加量が上記範囲より少なすぎると、可塑剤の効果はほとんど認められない。
【0025】
本発明にかかわるフィルムは、公知の溶融押し出し法、溶液流延法等により製造できる。本発明フィルムに極めて均一な厚み精度が必要な場合には、膜厚ムラの低減のために溶液流延法がより好ましく用いられる。溶液流延法はセルロース誘導体を有機溶剤に溶解した溶液を用いてフィルムを製造する。この方法に用いることのできる溶剤は、塩化メチレンやトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール等の低分子量脂肪族アルコール類であり、これらは沸点も低いため好適な溶剤の一つである。さらに、酢酸エチルやプロピオン酸エチルなどのエステル系、トルエン、キシレンやアニソール等の芳香族系、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系の溶剤も用いることができる。また、必要に応じて二種類以上の有機溶剤を混合することで、フィルムの引張強度、柔軟性、および靭性を調節することができる。
【0026】
溶液流延法によりフィルム化する場合、セルロース誘導体を前記溶剤に溶解した後、支持体に流延し、乾燥してフィルムとする。溶解液の好ましい粘度は10ポイズ以から50ポイズであり、より好ましくは15ポイズから30ポイズである。好ましい支持体としては、ステンレス鋼のエンドレスベルトや、ポリイミドフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のようなフィルムを用いることができる。
【0027】
本発明フィルムは、支持体に担持されたまま、乾燥を行うことも可能であるが、必要に応じて、予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥は、一般にはフロート法や、テンターあるいはロール搬送法が利用できる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルムの両端を支えているピンあるいはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡散制御を行う必要がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のためのテンションは原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい特徴を有する。従って、フィルムの乾燥は、ロール搬送法によることが最も好ましい。また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないように、湿度を低く保った雰囲気中で乾燥することは、機械的強度と透明度の高い本発明フィルムを得るために有効な方法である。
【0028】
本発明フィルムの厚みは、5μmから200μmであり、好ましくは10μmから100μm、より好ましくは20μmから70μmである。
【0029】
フィルムのヘイズは2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。また、フィルムの光線透過率は85%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。
【0030】
本発明の光学異方性フィルムの光弾性係数は小さく、20.0×10−12m2/N以下、好ましくは15.0×10−12m2/N以下である。光学異方性フィルムに加工されたフィルムの光弾性係数は小さいほど好ましいが、光弾性係数が小さい素材は延伸しても位相差が出にくい傾向にあるため5.0×10−12m2/N以上が好ましい。光弾性係数の大きいポリカーボネート系フィルムと比較すると、本発明のフィルムは光弾性係数が小さく、応力による位相差変化が小さいという特徴を有しており、大画面液晶表示装置用にも好適に用いることができる。
【0031】
一般に、ポリカーボネートフィルムのように光弾性係数が大きいフィルムは位相差の付与が容易であるが、組立時や環境変化によって生じたわずかな応力でも位相差が変化してしまうため、大画面液晶表示装置には好ましくない。他方、光弾性係数が小さいノルボルネン系樹脂からなるフィルムは位相差の付与が困難であり、必要とする位相差を得るには、複数枚を貼合して用いる必要があるため、高コスト化を招いてしまう。また、二軸延伸によりΔnvを大きくしようとするとΔnhを小さく保つことが困難であり、生じた正面位相差により、液晶表示装置で着色を起こしてしまうという問題がある。さらに、二軸延伸によりΔnvを大きくした場合、面内均一性に欠け、大型画面表示装置に用いるには、テンターのレール開き角度を調整するといった特殊な方法で延伸を行う必要があった。
【0032】
本発明に用いるセルロース誘導体は平面配向性が大きいため、二軸延伸等の外部応力による配向を付与せずに、必要とするΔnhおよびΔnvを得ることができる。必要とされるΔnvの値は3.0×10−3以上であり、用いる液晶表示装置に適した値に調整することができる。Δnvを大きくするためには、置換度の低いセルロース誘導体を用いればよく、Δnvを小さくするためには、置換度の高いセルロース誘導体を用いればよい。また、該セルロース誘導体と相溶性を有する他のセルロース誘導体を混合することによってもΔnvを小さくすることができる。さらに、(Tg−20)℃以上でフィルムを乾燥し、分子鎖の配向を緩和させることによってもΔnvを小さくすることができる。さらに、Δnvの値が同じでも、フィルムの厚みを連続的に変化させることによって、厚み方向位相差を調整することも可能である。Δnhは0に近いことが好ましいが、溶融押し出し法、溶液流延法によってフィルムを製造する場合、フィルムの流れ方向に応力が加わるため、Δnhを0にすることは実質的に不可能である。本発明の光学異方性フィルムのΔnhは3.0×10−4以下であり、好ましくは1.0×10−4以下である。
【0033】
本発明の光学異方性フィルムは、そのまま、あるいは各種加工を行い、液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に用いることができる。その中でも、フィルムの正面位相差が小さく、厚み方向位相差が大きいため、液晶表示装置の視野角拡大を目的とした光学補償フィルムとして好適に用いることができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明がこれらによって制限されるものではない。
【0035】
実施例および比較例に示される各物性値の測定方法を以下に示す。
【0036】
<ΔnhおよびΔnvの測定>
王子計測機器社製自動複屈折計KOBRA21ADHを用い、平行ニコル回転法により、測定波長590nmにおけるフィルムの正面位相差および、遅相軸を回転軸として40度回転させた際の位相差を測定した。フィルムの厚みおよび平均屈折率から、装置付属のプログラムによりnx,ny,nzを求め、これを元にΔnhおよびΔnhを算出した。
【0037】
<光弾性係数の測定方法>
光軸方向に幅5cmの短冊に切断したフィルムサンプルの正面位相差を顕微偏光分光光度計(オーク製作所製 TFM−120AFT)により514.5nmの測定波長を用いて測定した。同じサンプルの長さ方向に500gの加重をかけて正面位相差を測定し、単位応力による複屈折率の変化量を算出した。
【0038】
<光線透過率の測定方法>
JIS K7105−1981の5.5記載の方法により測定した。
【0039】
<ヘイズの測定方法>
JIS K7105−1981の6.4記載の方法により測定した。
【0040】
(実施例1)
平均置換度が2.3、数平均分子量が51000であるエチルセルロース10重部、劣化防止剤としてジアミルフェノール0.1重量部、塩化メチレン90重量部のドープを調製した。このドープをガラス板上に敷いた二軸延伸PETフィルム上に流延し室温で3分放置した後、PETフィルムごと4片固定治具に挟んで、80℃で2分間、100℃で2分間乾燥を行って厚さ31μm、平均屈折率1.47のフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0041】
(実施例2)
平均置換度が2.5、数平均分子量が47000であるエチルセルロース12重量部、トルエン70重量部、エタノール18重量部、劣化防止剤としてジアミルフェノール0.12重量部のドープを作成した。このドープをガラス板上に敷いた二軸延伸PETフィルム上に流延し室温で15分放置した後、PETフィルムごと80℃で5分間、100℃で5分間乾燥を行って厚さ35μm、平均屈折率1.47のフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0042】
(実施例3)
平均置換度が2,6、数平均分子量が70000であるエチルセルロースを用いた以外は実施例2と同様にして、厚さ40μm、平均屈折率1.47のフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0043】
(実施例4)
平均置換度が2.3、数平均分子量が51000であるエチルセルロース7重部、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマン・ケミカル社製「テナイトプロピオネート360A−40009」)4重量部、劣化防止剤としてジアミルフェノール0.1重量部、塩化メチレン89重量部のドープを調製した。このドープ用い、実施例1と同様にして、厚さ50μm、平均屈折率は1.47のフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0044】
(実施例5)
平均置換度が2.3、数平均分子量が51000であるエチルセルロース7重部、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマン・ケミカル社製「CAP482−20」)3重量部、劣化防止剤としてジアミルフェノール0.1重量部、塩化メチレン90重量部のドープを調製した。このドープ用い、実施例1と同様にして、厚さ45μm、平均屈折率は1.47のフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0045】
(比較例1)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトC−1400」)20重量部、塩化メチレン80重量部量部のドープを用い、実施例1と同様にして、厚み66μm、平均屈折率は1.58のフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0046】
(比較例2)
比較例1で得られたフィルムを160℃にて、縦方向に1.10倍延伸した後、横方向に1.09倍延伸して、厚み57μm、平均屈折率1.58のフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0047】
(比較例3)
ノルボルネン系樹脂(JSR(株)製「アートンF」)20重量部、塩化メチレン80重量部のドープを用い、実施例1と同様にして厚み100μmの透明フィルムを得た。得られたフィルムを180℃にて縦方向に1.25倍延伸した後、横方向に1.20倍延伸し、厚み80μm、平均屈折率1.51のフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0048】
(比較例4)
二酢酸セルロース(ダイセル化学(株)製「酢酸セルロースLM80」)10重量部、可塑剤としてフタル酸ジブチル0.3重量部、塩化メチレン81重量部、エチルアルコール9重量部のドープを用い、実施例1と同様にして厚み85μm、平均屈折率1.48の透明フィルムを得た。
【0049】
【表1】
表1から明らかなように、実施例1から実施例5のように、用いるセルロース誘導体の種類および組成比を変更することで、Δnhを低く保ったまま、Δnvを連続的に変化させることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の光学異方性フィルムは、正面位相差が小さく、厚み方向位相差が大きく、かつ、光弾性係数が小さいために応力による位相差ズレが小さい光学異方性フィルムである。また、二軸延伸などの応力による配向の付与を必要としないため、安価に製造可能であり、かつ、面内均一性に優れている。本発明の光学異方性フィルムを液晶表示装置に用いると、広い視野角の範囲において、コントラストや色純度の高い表示像を得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は優れた光学的特性を有し、かつ安価に製造可能な光学異方性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性高分子フィルムによる各種光学異方性フィルムは、防眩材料として、また、液晶表示装置における位相差補償板としてその用途が広がっている。高分子フィルムの位相差板としては、各種の高分子フィルムを一軸延伸することによって製造する方法が知られているが、一般には固有複屈折性の大きいポリカーボネート系樹脂を一軸延伸したものが用いられている。
【0003】
しかしながら、大画面化、軽量化、広視野角化、高コントラスト、色再現性等、液晶表示装置に対する要求も多様化しており、それに伴って光学補償フィルムに要求される特性も多様化している。その一例として、正面位相差が小さく、厚み方向位相差が大きいという特徴を有する光学異方性フィルムは、液晶表示装置の広視野角化等を目的とする光学補償フィルムとして用いられている。
【0004】
このような光学異方性フィルムは通常の一軸延伸による製法では達成できず、ポリカーボネート等の複屈折の大きい樹脂からなるフィルムを二軸延伸することにより得ることができる(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、ポリカーボネートのように複屈折の大きい樹脂からなるフィルムは光弾性係数が大きく、わずかな応力により位相差が大きく変化するため、組立時や環境変化によって生じたわずかな応力でも位相差が変化してしまい、液晶ディスプレイの画面の均一性や安定性に問題があった。
【0005】
このような課題を解決するために、ノルボルネン系樹脂のように光弾性係数が小さい素材からなる二軸延伸フィルムが開発されている(例えば特許文献2参照。)。しかし、光弾性係数の小さい高分子材料を光学異方性フィルムに用いた場合、位相差が発現しにくいため、光学補償に必要な厚み位相差を得るためには、複数枚の二軸延伸フィルムを積層する必要があった。
【0006】
また、二酢酸セルロースからなる光学異方性フィルム(例えば特許文献3参照)は、二軸延伸等の外部応力による配向を付与することなく大きな厚み方向位相差を発現するとされている。しかし、このようなフィルムの光学異方性は、光学補償フィルムとして用いるには十分ではない。そのため、フィルム厚を厚くするか、複数枚のフィルムを積層して使用する必要があり、生産性およびコスト面に問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平6−337313号公報
【0008】
【特許文献2】特開2002−148437号公報
【0009】
【特許文献3】特開2001−27707号報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明が解決しようとする課題は、液晶表示装置において、色補償や視野角拡大という特徴が発揮され、かつ安価に製造可能な光学異方性フィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたとき、Δnh=nx−ny≦3.0×10−4 および Δnv=(nx+ny)/2−nz≧3.0×10−3 を満たし、かつ、光弾性係数が5×10−12m2/N以上20×10−12m2/N以下であり、高分子化合物からなる光学異方性フィルムを提供するものである。
【0012】
上記を達成しうる光学異方性フィルム用の高分子化合物としては、セルロース誘導体が好適である。特に、セルロースの水酸基をエトキシル基で置換したものであり、その置換度が1.9から2.9であるエチルセルロースは、正面位相差が小さく、かつ、厚み方向位相差が大きく、さらに適度な光弾性係数を有するため該セルロース誘導体として好適に用いることができる。また、劣化防止剤として、りん酸エステル化合物、フェノール誘導体、エポキシ系化合物およびアミン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の光学異方性フィルムに用いられる高分子化合物としては、セルロース誘導体が好ましい。セルロース誘導体の中でも、水酸基がエトキシル基で置換されたものであり、置換度が1.9以上2.9以下であるものが好ましく、置換度が2.2以上2.8以下であるものがさらに好ましい。
【0014】
セルロース置換度は希硫酸で加水分解した後、遊離したアルコールを定量する等の公知の方法により測定することが出来る。セルロースは置換可能な水酸基を繰り返し単位に3個有するが、過度にエトキシル基で置換されたセルロース誘導体は、強度と柔軟性が失われ、熱可塑性もなくなり、更に相溶性が極端に低下する傾向にある。また、置換度が極端に低いとセルロース誘導体を単独で溶解できる溶剤が少なくなるとともに、熱変形が困難になり、溶剤キャスト法によるフィルム化や延伸による位相差付与が困難になる。また、得られたフィルムの吸水率が大きくなり、寸法安定性が低下する傾向がある。一方、置換度が高すぎる場合には溶剤に対する溶解性が再び制限されるばかりかセルロース誘導体が高価になる傾向がある。
【0015】
セルロース誘導体は高温、紫外線等によって酸化による劣化を生じ、透明フィルムの位相差値の低下やフィルムの透明性の低下を引き起こすため、劣化防止剤を加えることが好ましい。劣化防止剤は酸化による劣化を抑制する酸化防止剤や、高温下での安定性を付与する熱安定剤、さらに紫外線による劣化を防止する紫外線吸収剤が用いられる。また、塩素化した樹脂類や可塑剤に対して、分解により発生する遊離酸を吸収させる酸吸収剤を用いるのも好ましい。
【0016】
劣化防止剤としては、りん酸エステル化合物、フェノール誘導体、エポキシ系化合物、アミン誘導体などが挙げられる。具体的には、りん酸エステル化合物としてトリクレジルフォスフェート、ジフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリフェニルフォスファイト等、フェノール誘導体としてはオクチルフェノール、ペンタフェノン、ジアミルフェノール等、アミン誘導体としてジフェニルアミン等を用いるのが好ましい。
【0017】
劣化防止剤の添加量は、セルロース誘導体100重量部に対して、0.01から3.0重量部であることが好ましく、0.05から2.0重量部であることがさらに好ましい。添加量が1重量部以上でもその効果はほとんど上がらず、逆にフィルム表面への滲み出しが認められたり、透明性が減少する場合がある。また、添加量が0.01重量%未満であると、劣化防止剤の効果はほとんど認められない。
【0018】
セルロース誘導体の数平均分子量は、好ましくは22000から100000であり、より好ましくは30000から80000、更に好ましくは35000から65000である。不必要に高い分子量は、溶剤に対する溶解度を低下させるほか、得られた溶液の粘度が高過ぎ溶剤キャスト法に適さない他、熱成形を困難にし、フィルムの透明性を低くするなどの問題を生じる。一方、あまりに低い分子量は、得られたフィルムの機械的強度を低下させる傾向がある。
【0019】
セルロース誘導体は、セルロースに水酸化ナトリウムを加えてアルカリセルロースを調製し、塩化エチルを用いてエーテル化するといった既知の方法により製造できる。
【0020】
本発明の光学異方性フィルムに用いる高分子化合物としては、置換度が異なる2種類以上のセルロース誘導体の混合物を用いてもよい。また、セルロース誘導体の置換度が上昇するほどΔnhおよびΔnvが小さくなる傾向がある。すなわち、置換度の異なるセルロース誘導体のブレンド比率を変化させることによって、得られる光学異方性フィルムのΔnhおよびΔnvを連続的に変えることができる。但し、最大の置換度を有するセルロース誘導体と、最小の置換度を有するセルロース誘導体との置換度の差が0.1から0.5であることが好ましい。その場合、セルロース誘導体の混合物全体の平均置換度は1.9から2.9であることが好ましく、より好ましくは2.2から2.8である。
【0021】
本発明の光学異方性フィルムには、エチルセルロース以外のセルロースエーテル、セルロースエステル等が含有されていてもよい。特に、特定の置換度を有するセルロースアセテートやセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートとのブレンド体は、全光線透過率が85%以上、好ましくは90%以上を有するブレンドフィルムを得ることができ、また、得られた光学異方性フィルムのΔnhおよびΔnvをブレンド比率により連続的に変えることができるため好ましい。
【0022】
セルロース誘導体フィルムのガラス転移温度(Tg)は、熱機械分析法(TMA)による熱軟化温度にて評価することができる。一般には90℃以上200℃以下が好ましく、より好ましくは110℃以上180℃以下、更に好ましくは120℃以上160℃以下である。上記範囲よりもTgが小さいと十分な耐熱性が得られず、一方この範囲より大きいと成形加工性が著しく低下してしまう傾向がある。2種類以上のセルロース誘導体の混合物では、その組成比を変える事によりTgを上記温度範囲内とすることで、耐熱性と成形加工性に優れたフィルムを得ることができる。
【0023】
さらに、本発明の光学異方性フィルムの機械的物性を改良するために可塑剤を加えることも有効である。可塑剤としては、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル化合物、トリクレシルフォスフェート、トリブチルフォスフェート等のりん酸エステル化合物、ブチルフタリルブチルグリコレート等のグリコール誘導体、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル化合物が挙げられる。また鉱物油や植物油も用いることができる。
【0024】
可塑剤の添加量は、セルロース誘導体100重量部に対して0.5から20重量部であることが好ましく、1から15重量部であることがさらに好ましい。不必要に添加量が多いと、フィルムのTgを下げてしまい、耐熱性の低下を招いてしまう傾向がある。また、添加量が上記範囲より少なすぎると、可塑剤の効果はほとんど認められない。
【0025】
本発明にかかわるフィルムは、公知の溶融押し出し法、溶液流延法等により製造できる。本発明フィルムに極めて均一な厚み精度が必要な場合には、膜厚ムラの低減のために溶液流延法がより好ましく用いられる。溶液流延法はセルロース誘導体を有機溶剤に溶解した溶液を用いてフィルムを製造する。この方法に用いることのできる溶剤は、塩化メチレンやトリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール等の低分子量脂肪族アルコール類であり、これらは沸点も低いため好適な溶剤の一つである。さらに、酢酸エチルやプロピオン酸エチルなどのエステル系、トルエン、キシレンやアニソール等の芳香族系、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル系の溶剤も用いることができる。また、必要に応じて二種類以上の有機溶剤を混合することで、フィルムの引張強度、柔軟性、および靭性を調節することができる。
【0026】
溶液流延法によりフィルム化する場合、セルロース誘導体を前記溶剤に溶解した後、支持体に流延し、乾燥してフィルムとする。溶解液の好ましい粘度は10ポイズ以から50ポイズであり、より好ましくは15ポイズから30ポイズである。好ましい支持体としては、ステンレス鋼のエンドレスベルトや、ポリイミドフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等のようなフィルムを用いることができる。
【0027】
本発明フィルムは、支持体に担持されたまま、乾燥を行うことも可能であるが、必要に応じて、予備乾燥したフィルムを支持体から剥離し、さらに乾燥することもできる。フィルムの乾燥は、一般にはフロート法や、テンターあるいはロール搬送法が利用できる。フロート法の場合、フィルム自体が複雑な応力を受け、光学的特性の不均一が生じやすい。また、テンター法の場合、フィルムの両端を支えているピンあるいはクリップの距離により、溶剤乾燥に伴うフィルムの幅収縮と自重を支えるための張力を均衡させる必要があり、複雑な幅の拡散制御を行う必要がある。一方、ロール搬送法の場合、安定なフィルム搬送のためのテンションは原則的にフィルムの流れ方向(MD方向)にかかるため、応力の方向を一定にしやすい特徴を有する。従って、フィルムの乾燥は、ロール搬送法によることが最も好ましい。また、溶剤の乾燥時にフィルムが水分を吸収しないように、湿度を低く保った雰囲気中で乾燥することは、機械的強度と透明度の高い本発明フィルムを得るために有効な方法である。
【0028】
本発明フィルムの厚みは、5μmから200μmであり、好ましくは10μmから100μm、より好ましくは20μmから70μmである。
【0029】
フィルムのヘイズは2%以下が好ましく、より好ましくは1%以下である。また、フィルムの光線透過率は85%以上が好ましく、より好ましくは90%以上である。
【0030】
本発明の光学異方性フィルムの光弾性係数は小さく、20.0×10−12m2/N以下、好ましくは15.0×10−12m2/N以下である。光学異方性フィルムに加工されたフィルムの光弾性係数は小さいほど好ましいが、光弾性係数が小さい素材は延伸しても位相差が出にくい傾向にあるため5.0×10−12m2/N以上が好ましい。光弾性係数の大きいポリカーボネート系フィルムと比較すると、本発明のフィルムは光弾性係数が小さく、応力による位相差変化が小さいという特徴を有しており、大画面液晶表示装置用にも好適に用いることができる。
【0031】
一般に、ポリカーボネートフィルムのように光弾性係数が大きいフィルムは位相差の付与が容易であるが、組立時や環境変化によって生じたわずかな応力でも位相差が変化してしまうため、大画面液晶表示装置には好ましくない。他方、光弾性係数が小さいノルボルネン系樹脂からなるフィルムは位相差の付与が困難であり、必要とする位相差を得るには、複数枚を貼合して用いる必要があるため、高コスト化を招いてしまう。また、二軸延伸によりΔnvを大きくしようとするとΔnhを小さく保つことが困難であり、生じた正面位相差により、液晶表示装置で着色を起こしてしまうという問題がある。さらに、二軸延伸によりΔnvを大きくした場合、面内均一性に欠け、大型画面表示装置に用いるには、テンターのレール開き角度を調整するといった特殊な方法で延伸を行う必要があった。
【0032】
本発明に用いるセルロース誘導体は平面配向性が大きいため、二軸延伸等の外部応力による配向を付与せずに、必要とするΔnhおよびΔnvを得ることができる。必要とされるΔnvの値は3.0×10−3以上であり、用いる液晶表示装置に適した値に調整することができる。Δnvを大きくするためには、置換度の低いセルロース誘導体を用いればよく、Δnvを小さくするためには、置換度の高いセルロース誘導体を用いればよい。また、該セルロース誘導体と相溶性を有する他のセルロース誘導体を混合することによってもΔnvを小さくすることができる。さらに、(Tg−20)℃以上でフィルムを乾燥し、分子鎖の配向を緩和させることによってもΔnvを小さくすることができる。さらに、Δnvの値が同じでも、フィルムの厚みを連続的に変化させることによって、厚み方向位相差を調整することも可能である。Δnhは0に近いことが好ましいが、溶融押し出し法、溶液流延法によってフィルムを製造する場合、フィルムの流れ方向に応力が加わるため、Δnhを0にすることは実質的に不可能である。本発明の光学異方性フィルムのΔnhは3.0×10−4以下であり、好ましくは1.0×10−4以下である。
【0033】
本発明の光学異方性フィルムは、そのまま、あるいは各種加工を行い、液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に用いることができる。その中でも、フィルムの正面位相差が小さく、厚み方向位相差が大きいため、液晶表示装置の視野角拡大を目的とした光学補償フィルムとして好適に用いることができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明がこれらによって制限されるものではない。
【0035】
実施例および比較例に示される各物性値の測定方法を以下に示す。
【0036】
<ΔnhおよびΔnvの測定>
王子計測機器社製自動複屈折計KOBRA21ADHを用い、平行ニコル回転法により、測定波長590nmにおけるフィルムの正面位相差および、遅相軸を回転軸として40度回転させた際の位相差を測定した。フィルムの厚みおよび平均屈折率から、装置付属のプログラムによりnx,ny,nzを求め、これを元にΔnhおよびΔnhを算出した。
【0037】
<光弾性係数の測定方法>
光軸方向に幅5cmの短冊に切断したフィルムサンプルの正面位相差を顕微偏光分光光度計(オーク製作所製 TFM−120AFT)により514.5nmの測定波長を用いて測定した。同じサンプルの長さ方向に500gの加重をかけて正面位相差を測定し、単位応力による複屈折率の変化量を算出した。
【0038】
<光線透過率の測定方法>
JIS K7105−1981の5.5記載の方法により測定した。
【0039】
<ヘイズの測定方法>
JIS K7105−1981の6.4記載の方法により測定した。
【0040】
(実施例1)
平均置換度が2.3、数平均分子量が51000であるエチルセルロース10重部、劣化防止剤としてジアミルフェノール0.1重量部、塩化メチレン90重量部のドープを調製した。このドープをガラス板上に敷いた二軸延伸PETフィルム上に流延し室温で3分放置した後、PETフィルムごと4片固定治具に挟んで、80℃で2分間、100℃で2分間乾燥を行って厚さ31μm、平均屈折率1.47のフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0041】
(実施例2)
平均置換度が2.5、数平均分子量が47000であるエチルセルロース12重量部、トルエン70重量部、エタノール18重量部、劣化防止剤としてジアミルフェノール0.12重量部のドープを作成した。このドープをガラス板上に敷いた二軸延伸PETフィルム上に流延し室温で15分放置した後、PETフィルムごと80℃で5分間、100℃で5分間乾燥を行って厚さ35μm、平均屈折率1.47のフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0042】
(実施例3)
平均置換度が2,6、数平均分子量が70000であるエチルセルロースを用いた以外は実施例2と同様にして、厚さ40μm、平均屈折率1.47のフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0043】
(実施例4)
平均置換度が2.3、数平均分子量が51000であるエチルセルロース7重部、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマン・ケミカル社製「テナイトプロピオネート360A−40009」)4重量部、劣化防止剤としてジアミルフェノール0.1重量部、塩化メチレン89重量部のドープを調製した。このドープ用い、実施例1と同様にして、厚さ50μm、平均屈折率は1.47のフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0044】
(実施例5)
平均置換度が2.3、数平均分子量が51000であるエチルセルロース7重部、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマン・ケミカル社製「CAP482−20」)3重量部、劣化防止剤としてジアミルフェノール0.1重量部、塩化メチレン90重量部のドープを調製した。このドープ用い、実施例1と同様にして、厚さ45μm、平均屈折率は1.47のフィルムを得た。このフィルムの特性を表1に示す。
【0045】
(比較例1)
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製「パンライトC−1400」)20重量部、塩化メチレン80重量部量部のドープを用い、実施例1と同様にして、厚み66μm、平均屈折率は1.58のフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0046】
(比較例2)
比較例1で得られたフィルムを160℃にて、縦方向に1.10倍延伸した後、横方向に1.09倍延伸して、厚み57μm、平均屈折率1.58のフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0047】
(比較例3)
ノルボルネン系樹脂(JSR(株)製「アートンF」)20重量部、塩化メチレン80重量部のドープを用い、実施例1と同様にして厚み100μmの透明フィルムを得た。得られたフィルムを180℃にて縦方向に1.25倍延伸した後、横方向に1.20倍延伸し、厚み80μm、平均屈折率1.51のフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0048】
(比較例4)
二酢酸セルロース(ダイセル化学(株)製「酢酸セルロースLM80」)10重量部、可塑剤としてフタル酸ジブチル0.3重量部、塩化メチレン81重量部、エチルアルコール9重量部のドープを用い、実施例1と同様にして厚み85μm、平均屈折率1.48の透明フィルムを得た。
【0049】
【表1】
表1から明らかなように、実施例1から実施例5のように、用いるセルロース誘導体の種類および組成比を変更することで、Δnhを低く保ったまま、Δnvを連続的に変化させることができる。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の光学異方性フィルムは、正面位相差が小さく、厚み方向位相差が大きく、かつ、光弾性係数が小さいために応力による位相差ズレが小さい光学異方性フィルムである。また、二軸延伸などの応力による配向の付与を必要としないため、安価に製造可能であり、かつ、面内均一性に優れている。本発明の光学異方性フィルムを液晶表示装置に用いると、広い視野角の範囲において、コントラストや色純度の高い表示像を得ることができる。
Claims (4)
- フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたとき、Δnh=nx−ny≦3.0×10−4 および Δnv=(nx+ny)/2−nz≧3.0×10−3 を満たし、かつ、光弾性係数が5×10−12m2/N以上、20×10−12m2/N以下であることを特徴とする、高分子からなる光学異方性フィルム。
- 高分子としてセルロース誘導体を1から100重量部含有する請求項1記載の光学異方性フィルム。
- セルロース誘導体が、セルロースの水酸基をエトキシル基で置換したものであり、その置換度が1.9から2.9である請求項2記載の光学異方性フィルム。
- 劣化防止剤として、りん酸エステル化合物、フェノール誘導体、エポキシ系化合物およびアミン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項2または請求項3記載の光学異方性フィルム
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