JPWO2014050795A1 - 水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子 - Google Patents

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Abstract

本発明は、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、塗膜としたときにボイド及び凹凸等の不均一性が発生せず、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能な水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子、並びに、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を用いた水系分散液を提供する。本発明は、水系分散液の分散質として用いられる水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子であって、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂からなり、体積平均粒子径が10nm〜100μm、かつ、体積粒子径分布のCV値が40%以下である水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子である。

Description

本発明は、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、塗膜としたときにボイド及び凹凸等の不均一性が発生せず、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能な水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を用いた水系分散液、並びに、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の製造方法に関する。
ポリビニルアセタール樹脂は、金属処理のウォッシュプライマー、各種塗料、接着剤、樹脂加工剤及びセラミックスバインダー等に多目的に用いられており、近年では電子材料へと用途が拡大している。これらの用途に対してポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、ポリビニルアセタール樹脂は一旦有機溶剤に溶解した状態で、または水系分散液の状態で使用される。
一方、近年では、環境汚染や人体への有毒性および使用時の危険性等の理由から、有機溶剤を含有する系の代わりに、水を主成分とする系に交換する試みが増加し、その結果、ポリビニルアセタール水系分散液の重要性がますます増加している。
このようなポリビニルアセタール樹脂からなる微粒子は、沈殿法を用いたポリビニルアルコールのアセタール化反応を行うことによって作製されている。しかしながら、このような方法で得られた微粒子状のポリビニルアセタール樹脂は、水を主成分とする分散媒に分散させようとしても、大きな塊状の凝集体を発生したり、わずかな時間静置しただけで微粒子が沈降したりするという問題があった。また、一度沈降してしまうと、撹拌等によって簡単に再分散できず、分散状態を長期間維持することは極めて困難であった。そのため、ポリビニルアセタール樹脂は、有機溶剤に溶解してバインダー樹脂として使用することが一般的であり、ポリビニルアセタール樹脂からなる微粒子の水系分散液として使用することは困難であった。
上記のような問題に対して、水系媒体への分散性が改良されたポリビニルアセタール樹脂の水系分散液組成物として、例えば、RS−3120(ソルーシア社製)等が一般に用いられていた。
しかしながら、従来のポリビニルアセタール樹脂の水系分散液組成物は、オレイン酸カリウム又はオレイン酸ナトリウム等の分散剤を使用しており、分散液のpHは約9でアルカリ性となっている。従って、分散液のpHが中性に近くなると、分散剤の分散効果が低下して、ポリビニルアセタール樹脂が沈殿するという問題があった。特に、添加される化合物の酸性度が強い場合は、化合物を添加した近傍のpHが低くなるため、水系分散液全体のpHが中性に近くなる前に沈殿を生じるという問題もあった。
一方で、中性でも安定した分散性を示すポリビニルアセタール樹脂の水系分散液組成物としては、例えば、特許文献1に、分散剤にポリオキシエチレントリデシルエーテル類、ポリオキシエチレンオレイルエーテル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート類、ラウリル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの分散剤を用いるポリビニルアセタール樹脂の水系分散液組成物が開示されている。
しかしながら、このような分散剤を用いた場合でも、水を主成分とする液体媒体中での分散性は充分ではないという問題があった。また、多量の分散剤を含んでいるために乾燥後に得られる被膜の機械的性質が低下するという問題もあった。
また、ポリマーからなる微粒子は、艶消し剤、ブロッキング防止剤、クロマトグラフィー用坦体、薬剤用坦体、粉体塗料、ギャップ調整材、電子写真用トナー、電気粘性流体、化粧品等に広く用いられている。このような用途に使用されるポリマー微粒子としては、粒子径が小さく、粒子径分布が狭いものが要求され、また、特に塗料やトナー等の用途では、塗膜を形成した際のボイド及び凹凸等の不均一性が発生しないことが求められている。
従来、このような用途に使用されるポリマー微粒子としては、エマルジョン重合法、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法等の「重合造粒法」により得られる微粒子が用いられてきた。しかしながら、エマルジョン重合法、懸濁重合法により得られるポリマー微粒子は、粒子径範囲が限定され、かつ、粒子径分布がブロードなものとなっていた。また、シード重合法および分散重合法により得られる樹脂粒子は、シャープな粒子径分布を有するものの、非常に高価なものとなっていた。
一方で、ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールを原料としたアルデヒドによるアセタール反応から製造させるものであるが、上述した「重合造粒法」で、ポリビニルアセタール樹脂からなる微粒子を製造することは極めて困難であった。
また、沈殿法を用いて、ポリビニルアルコールのアセタール化反応を行うことで、ポリビニルアセタール樹脂からなる微粒子を製造することが行われているが、このような方法で得られた微粒子は、小さな一次粒子が合着した集合体からなり、球状の微粒子を得ることはできていなかった。
これに対して、特許文献2には、ポリビニルアルコールとのイオン交換反応によってゲル化する性質を持つ水溶性高分子及びアルデヒド類を混合してなる水溶液を、酸性溶液中に滴下し、ポリビニルアルコールとアルデヒド類との反応により液滴を凝固させる多孔性球状粒子が記載されている。しかしながら、このような方法で製造された粒子は球状を有しているが、多孔質体となっているために上述した用途には適さないものであった。また、生成される粒子の粒子径も大きいものとなっていた。
特許第4849791号公報 特開平10−204204号公報
本発明は、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、塗膜としたときにボイド及び凹凸等の不均一性が発生せず、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能な水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を用いた水系分散液、並びに、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、水系分散液の分散質として用いられる水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子であって、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂からなり、体積平均粒子径が10nm〜100μm、かつ、体積粒子径分布のCV値が40%以下である水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子である。
以下、本発明を詳述する。
本発明者は、特定の官能基を有するポリビニルアセタール樹脂からなり、かつ、体積平均粒子径及び体積平均粒子径のCV値が所定の範囲内であるポリビニルアセタール微粒子は、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、仮に沈殿が生じた場合でも、容易に再分散できることを見出した。
また、このようなポリビニルアセタール微粒子から得られる水系分散液は、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂からなる。
上記イオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、及び、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。なかでも、カルボキシル基、スルホン酸基、それらの塩がより好ましく、スルホン酸基、その塩であることが特に好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂中のイオン性官能基の含有量は0.01〜1mmol/gであることが好ましい。上記イオン性官能基の含有量が0.01mmol/g未満であると、微粒子の分散性が低下したり、塗膜としたときにボイドが発生する場合や凹凸等の不均一性が発生し、1mmol/gを超えると、被膜とした際に機械的性質が低下する場合がある。より好ましくは0.02〜0.5mmol/gである。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、単独アルデヒド、混合アルデヒドのいずれを用いる場合でも、全アセタール化度で40〜80モル%の範囲が好ましい。全アセタール化度が40モル%未満では得られるポリアセタール樹脂が水溶性となり、水系分散液を形成することができない。全アセタール化度が80モル%を超えると、疎水性が強くなりすぎて安定した分散液を得ることが困難となる。より好ましくは55〜75モル%である。
特に、上記ポリビニルアセタール樹脂としては、重合度200〜5000、ケン化度が80モル%以上のポリビニルアルコールをアセタール化することで得られるものが好ましい。上記重合度およびケン化度のポリビニルアセタール樹脂は、水系分散液の調整、得られる水系分散液組成物の塗工性、乾燥時の製膜性に優れ、形成された塗膜の強度や柔軟性も優れたものとなる。
上記重合度が200未満であると、被膜とした際に機械的強度が低くなり、重合度が5000を超えると、アセタール化反応の際に溶液粘度が異常に高くなってアセタール化反応が困難になる。重合度は800〜4500であることがより好ましい。
また、上記ケン化度が80モル%より小さいと、水への溶解性が悪くなるためアセタール化反応が困難になり、また、水酸基量が少ないためアセタール化反応自体が困難となる。特に、ケン化度85モル%以上とすることがより好ましい。
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、塩酸等の酸触媒の存在下で上記ポリビニルアルコールの水溶液に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えばホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド又はブチルアルデヒドが、生産性と特性バランス等の点で好適である。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記イオン性官能基の存在形態については、ポリビニルアセタール樹脂構造中に直接存在していてもよく、グラフト鎖を含むポリビニルアセタール樹脂(以下、単にグラフト共重合体ともいう)のグラフト鎖に存在していてもよい。
なかでも、イオン性官能基がグラフト鎖に存在する場合は、ポリマーの主鎖骨格はポリビニルアセタールのまま維持されるため、ポリビニルアセタール樹脂本来の優れた機械的性質を低下させることが無く、被膜とした際に高い機械的性質を発現させることができる。また、導入したイオン性官能基に変質等が生じることを防止することができる。
一方、イオン性官能基がポリビニルアセタール樹脂構造中に直接存在している場合は、ポリマーの主鎖を構成する炭素にイオン性官能基が結合した鎖状分子構造であることが好ましい。この場合、ポリマーの主鎖を構成する炭素と、イオン性官能基とが所定の構造を介して結合していることがより好ましい。
イオン性官能基は特定の構造を介してポリマー主鎖骨格に結合していることで、水を主成分とする分散媒中において優れた分散安定性を実現することができる。また、分散媒を乾燥させた後に高い機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができる。
上記特定の構造としては、炭化水素からなる基が好ましく、特に、炭素数1以上のアルキレン基、炭素数5以上の環状アルキレン基、炭素数6以上のアリール基等が好ましい。
上記炭素数の上限値は特に限定されないが、炭素数200以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂が、ポリマーの主鎖を構成する炭素にイオン性官能基が結合した鎖状分子構造である場合、下記一般式(1)に示す構造単位を有することが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂が下記一般式(1)に示す構造単位を有することで、本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を、水を主成分とする分散媒中に添加した場合に優れた分散安定性を発揮させることができる。また、分散媒を乾燥させた後に高い機械的強度と柔軟性を有する膜を形成することができる。
Figure 2014050795
式(1)中、Cはポリマー主鎖の炭素原子を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1以上のアルキレン基を表し、Rはイオン性官能基を表す。
イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂が、上記一般式(1)に示す構造単位を有することで、得られる水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、水を含有する分散媒中において非常に優れた分散安定性を発揮することができるとともに、仮に沈殿が生じた場合でも、容易に再分散することが可能となる。
これは、上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるイオン性官能基が、上記一般式(1)中のRを介してポリマー主鎖に結合しているために、該イオン性官能基の運動性が高まり、水を主成分とする分散媒に分散させた場合に、微粒子表面に存在するイオン性官能基が分散媒の方向に向くように再配置する。これにより、水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子と分散媒との親和性が向上するためであると考えられる。
また、上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂が、上記一般式(1)で表される構造単位を有することによって、分散媒を乾燥させた後の膜は、高い機械的強度、及び、柔軟性を有するものとなる。これは、分散媒が乾燥した後に、イオン性官能基が微粒子表面から微粒子内部へと移動することで、微粒子同士の接合が強固に行われるためであると考えられる。
上記Rとしては特に水素原子が好ましい。
上記Rとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基等が挙げられる。なかでも、上記Rはメチレン基であることが好ましい。
上記Rは、ヘテロ原子を有する置換基によって置換された構造であってもよい。上記置換基としては、エステル基、エーテル基、スルフィド基、アミド基、アミン基、スルホキシド基、ケトン基、水酸基等が挙げられる。
上記ポリビニルアセタール樹脂構造中にイオン性官能基が直接存在するポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコール原料にアルデヒドを反応させアセタール化する方法、ポリビニルアセタール樹脂を作製した後、該ポリビニルアセタール樹脂の官能基に対して反応性を有する別の官能基及びイオン性官能基を持った化合物と反応させる方法等が挙げられる。
上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコールを作製する方法としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステルモノマーと、下記一般式(2)に示す構造を有するモノマーとを共重合化させた後、得られた共重合樹脂のエステル部位をアルカリ又は酸によりケン化する方法が挙げられる。
Figure 2014050795
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1以上のアルキレン基を表し、Rはイオン性官能基を表す。
上記一般式(2)に示す構造を有するモノマーとしては特に限定されず、例えば、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、9−デセン酸等のカルボキシル基と重合性官能基を有するもの、アリルスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸等のスルホン酸基と重合性官能基を有するもの、N,N−ジエチルアリルアミン等のアミノ基と重合性官能基を有するもの、およびこれらの塩等が挙げられる。
なかでも、アリルスルホン酸及びその塩を用いた場合、水を主成分とした分散媒中における優れた分散安定性と、分散媒を乾燥させた後の高い機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができるため好適である。特に、アリルスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記Rとしては特に水素原子が好ましい。
上記Rとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基等が挙げられる。なかでも、上記Rはメチレン基であることが好ましい。
上記Rは、ヘテロ原子を有する置換基によって置換された構造であってもよい。上記置換基としては、エステル基、エーテル基、スルフィド基、アミド基、アミン基、スルホキシド基、ケトン基、水酸基等が挙げられる。
上記ポリビニルアセタール樹脂中の上記一般式(1)に示す構造単位の含有量は、上記ポリビニルアセタール樹脂中のイオン性官能基の含有量が上記適性範囲となるように調整することが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂中のイオン性官能基の含有量を上記範囲内とすることで、水系分散液の分散質として用いた場合に、分散液中での水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の分散安定性が向上するとともに、得られる膜の強度、及び、柔軟性を両立させることができる。
上記グラフト共重合体を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記イオン性官能基を含む重合性単量体を、ポリビニルアセタールが存在する環境下において水素引き抜き性重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法等が挙げられる。
上記重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の従来公知の重合方法が挙げられる。
上記溶液重合に用いる溶媒は特に限定されず、例えば、酢酸エチル、トルエン、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及び、これらの混合溶媒等が挙げられる。
上記水素引き抜き性重合開始剤としては特に限定されないが、t−ブチルパーオキシ系の過酸化物が好ましく、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシ、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーヘキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシネオペンタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボネート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート等を用いることができる。
上記グラフト共重合体のグラフト鎖は、(メタ)アクリル系モノマーの重合体からなることが好ましい。これにより、上記イオン性官能基を効率よくポリビニルアセタール樹脂に導入することができる。そのため、本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、水を主成分とした分散媒中でも高い分散安定性を発揮することができる。
具体的には、イオン性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いてグラフト鎖を形成することが好ましい。
上記イオン性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フェニル(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、2−ソジウムスルホエチル(メタ)アクリレート、2−ポタシウムスルホエチル(メタ)アクリレート、3−ソジウムスルホプロピル(メタ)アクリレート、3−ポタシウムスルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記イオン性官能基を含む重合性単量体がグラフトしたポリビニルアセタール樹脂中のグラフト率(グラフト共重合体中のポリビニルアセタールからなるユニットに対するイオン性官能基を含む重合性単量体からなるユニットの比率)は、上記ポリビニルアセタール樹脂中のイオン性官能基の含有量が上記適性範囲となれば特に限定されないが、0.001〜100重量%が好ましい。上記範囲内とすることで、水系分散液の分散質として用いた場合に、得られる膜の強度、及び、柔軟性を両立することができる。好ましいグラフト率は、0.1〜15重量%である。
なお、本発明において、「グラフト率」とは、グラフト共重合体中のポリビニルアセタールからなるユニットに対するイオン性官能基を含む重合性単量体からなるユニットの比率を表し、例えば、以下の方法により評価することができる。得られた樹脂溶液を110℃で1時間乾燥させた後、メタノールに溶解させ、該メタノール溶液を水に滴下添加した後に、遠心分離操作によって不溶分と可溶分とに分離する。この際得られた不溶分をグラフト共重合体とする。得られたグラフト共重合体について、NMRによりポリビニルアセタールからなるユニットとイオン性官能基を含む重合性単量体からなるユニットの重量を換算し、下記式(3)を用いて算出することができる。
Figure 2014050795
また、上記のイオン性官能基をグラフト鎖に存在させるポリビニルアセタール樹脂とする場合には、上記イオン性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーに加えて、他の(メタ)アクリル系モノマーを同時に用いてもよい。
上記他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステル、単官能(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、単官能(メタ)アクリル酸アリールエステル等を用いることができる。
上記単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記単官能(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記単官能(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を総称するものであり、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称するものとする。
上記グラフト共重合体中の他の(メタ)アクリル系モノマーのグラフト率(グラフト共重合体中のポリビニルアセタールからなるユニットに対する他の(メタ)アクリル系ポリマーからなるユニットの比率)は、用途に応じて設計されるため、特に限定されないが、900重量%以下であることが好ましい。上記範囲内とすることで、水系分散液の分散質として用いた場合に、得られる膜の強度、及び、柔軟性を両立することができる。
なお、本発明において、「他の(メタ)アクリル系モノマーのグラフト率」とは、グラフト共重合体中のポリビニルアセタールからなるユニットに対する他の(メタ)アクリル系ポリマーからなるユニットの比率を表し、例えば、以下の方法により評価することができる。得られた樹脂溶液を110℃で1時間乾燥させた後、キシレンに溶解させ、不溶分と可溶分とに分離し、不溶分をグラフト共重合体とする。得られたグラフト共重合体について、NMRによりポリビニルアセタールからなるユニットと他の(メタ)アクリル系ポリマーからなるユニットの重量を換算し、下記式(4)を用いて算出することができる。
Figure 2014050795
上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂の分子量としては特に制限は無いが、数平均分子量(Mn)が10,000〜400,000で、重量平均分子量(Mw)が20,000〜800,000で、これらの比(Mw/Mn)が2.0〜40であることが好ましい。Mn、Mw、Mw/Mnがこのような範囲であると、水系分散液の分散質として用いた場合に、得られる膜の強度、及び、柔軟性を両立することができる。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、体積平均粒子径の下限が10nm、上限が100μmである。体積平均粒子径が10nm未満であると、実質的に作製することが困難であり、100μmを超えると分散液中での微粒子の沈降速度が速くなり、安定な分散液を得ることができなくなる。上記体積平均粒子径の好ましい下限は20nm、好ましい上限は50μm、より好ましい下限は30nm、より好ましい上限は30μm、更に好ましい下限は50nm、更に好ましい上限は10μmである。
なお、上記水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置等を用いて測定することができる。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の体積平均粒子径は、CV値の上限が40%である。CV値が40%を超えると、大きな粒子径を持った微粒子が存在することとなり、該大粒径粒子が沈降することによって安定な分散液を得ることができなくなる。また、ポリビニルアセタール微粒子を湿式塗工や湿式噴霧によって基材上に配置し、その後の微粒子の溶融等で塗膜を形成した際には、空気の巻き込みが発生し、形成した膜にボイドが発生したり、粒子径の不均一性によって膜表面の凹凸等の不均一性が発生したりすることとなる。
上記CV値の好ましい上限は35%、より好ましい上限は30%、更に好ましい上限は20%である。なお、CV値は、標準偏差を体積平均粒子径で割った値の百分率(%)で示される数値である。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、平均真球度が0.9以上であることが好ましい。これにより、ポリビニルアセタール微粒子を湿式塗工や湿式噴霧によって基材上に配置し、その後の微粒子の溶融等で塗膜を形成した際には、空気の巻き込みが抑えられるためにボイドが発生しにくく、また、膜表面の凹凸等の不均一性が発生しないことから、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができる。平均真球度が0.9未満であると、上記膜を形成する際に空気の巻き込みが発生し、形成した膜にボイドが発生したり、膜表面の凹凸等の不均一性が発生したりすることがある。より好ましくは0.95以上である。更に好ましくは0.98以上である。
なお、真球度(短径/長径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された電子顕微鏡写真を画像解析装置を用いて、解析処理することにより測定することができ、平均真球度は、電子顕微鏡写真中において任意に選ばれた例えば100個の微粒子について、目視で短径と長径を決定し、真球度の平均値を求めることにより算出することができる。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を製造する方法としては特に限定されず、例えば、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を得た後、上記ポリビニルアセタール樹脂を粒子化することで製造することができる。
上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を得る方法としては、例えば、上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコール原料にアルデヒドを反応させアセタール化する方法、ポリビニルアセタール樹脂を作製した後、該ポリビニルアセタール樹脂の官能基に対して反応性を有する別の官能基を持った化合物と反応させる方法、水素引き抜き性重合開始剤を用いてポリビニルアセタール樹脂に上記イオン性官能基を含む重合性単量体をグラフトさせる方法等が挙げられる。
なかでも、ポリビニルアセタール樹脂本来の優れた機械的性質を低下させることが無く、被膜とした際に高い機械的性質を発現させることができ、また、導入した官能基の変質等が発生しないためにグラフトさせる方法が特に好ましい。
また、イオン性官能基がポリビニルアセタール樹脂構造中に直接存在している場合には、イオン性官能基を上記特定の構造を介してポリマー主鎖骨格に結合させることで、水を主成分とした分散媒中における優れた分散安定性と、分散媒を乾燥させた後の高い機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができる。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂を粒子化する方法としては、上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解した後、水を少量ずつ添加し、加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法や、大量の水に上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂が溶解した溶液を添加した後に必要に応じて加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を該イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度以上で加熱してニーダー等で混練しながら、加熱加圧下で水を少量ずつ添加して混練する方法等が挙げられる。なかでも、本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の体積平均粒子径を制御しやすく、体積平均粒子径のCV値を小さくすることができることから、上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解した後、水を少量ずつ添加し、加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法、または大量の水に上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂が溶解した溶液を添加した後に必要に応じて加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法が好適である。
特に、上記イオン性官能基がポリビニルアセタール樹脂構造中に直接存在しているポリビニルアセタール樹脂を上述の方法で粒子化した場合、体積平均粒子径が1μm以下の比較的小さな粒子径を有する水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子が得られ、かつ、体積平均粒子径のCV値を小さくすることができる。また、上記イオン性官能基がグラフト鎖に存在するポリビニルアセタール樹脂を上述の方法で粒子化した場合、体積平均粒子径が100nm以上の比較的大きな粒子径を有する水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子が得られ、かつ、体積平均粒子径のCV値を小さくすることができる。
特に、本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を製造する方法としては、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を作製する工程を行った後、上記ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解する工程、及び、水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を析出させる工程を行うことが好ましい。
このような方法を用いることで、上記水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を析出させる工程において水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子が均一に発生し、また、微粒子同士の合着が起こりにくくなるために、体積粒子径分布が狭く、平均真球度の高い球状微粒子を得ることができる。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解する工程を行うことで、粒子径の精密制御が可能であり、高い平均真球度を有する微粒子を得ることができる。
上記有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルや、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール等が挙げられる。
また、上記有機溶剤に加えて、水を添加してもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解する工程におけるポリビニルアセタール樹脂の濃度は0.1〜20重量%とすることが好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂の濃度が0.1重量%未満であると、有機溶剤や水を除去するために長時間を要することとなり、水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の生産性が低下する場合がある。
上記ポリビニルアセタール樹脂の濃度が20重量%を超えると、ポリビニルアセタール溶液の粘度が高くなり、溶解が均一にできなくなるために得られる水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の体積粒子径分布が広くなり目的の範囲とすることができなくなる場合がある。
より好ましくは0.3〜15重量%の範囲である。
本発明では、次いで、水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を析出させる工程を行う。
具体的には、加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法や、遠心分離法によって有機溶剤を除去する方法等が挙げられる。
また、水を添加する場合は、水についても同時に除去することが好ましい。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、通常、水を含有する分散媒中に分散した水系分散液として用いられる。このような水系分散液もまた、本発明の1つである。
本発明の水系分散液に使用される分散媒としては、水を含有すれば良く、水と有機溶剤との混合溶剤であっても良い。有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤が多すぎると水系分散液の保存安定性が低下するため、分散媒中の有機溶剤の含有量は40重量%以下が好ましい。より好ましくは30重量%以下である。
本発明の水系分散液における水の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して40〜1000重量部である。水の量が少なすぎると固形分濃度が高くなりすぎて、分散性が低下したり、ポリビニルアセタール樹脂の水系分散液の粘度が高くなりすぎて塗工性が低下したりする。多すぎると固形分濃度が少なくなるために塗工後に得られる皮膜が不均一となる場合がある。
なお、本発明の水系分散液は、充分な分散安定性を有しているが、得られる被膜の機械的性質を劣化させない範囲で、分散剤を別途添加しても良い。
本発明の水系分散液は、可塑剤を含有していてもよい。上記可塑剤を含むことによって、得られる皮膜の柔軟性をより良いものとすることができる。上記可塑剤としては特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂と相溶性を示すものであることが好ましく、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸ジエステル、ジオクチルアジペート等のアジピン酸ジエステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、トリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート等のアルキレングリコールジエステル等が挙げられる。なかでも、揮発性が低く、シートの柔軟性を保ちやすいことから、DOP、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートが好適である。
上記水系分散液中の可塑剤は、ポリビニルアセタール微粒子に含浸されていることが好ましい。可塑剤がポリビニルアセタール微粒子に含浸されていることで、分散媒を乾燥させた後の皮膜の可塑剤分布ムラが無くなり、高い機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができる。可塑剤のポリビニルアセタール微粒子への含浸は、可塑剤を添加した水分散液を目視により確認し、可塑剤による液滴が観測されないことによって確認することができる。
ポリビニルアセタール微粒子に含浸される可塑剤は、特に限定されないが、ポリビニルアセタール微粒子と可塑剤の合計を100重量%とした場合、1〜50重量%を例示することが出来る。
より好ましくは、2〜25重量%であり、特に好ましくは、5〜15重量%である。
上記可塑剤を含浸したポリビニルアセタール微粒子を作製する方法としては、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液に上記可塑剤を添加し、水系分散液と可塑剤の混合液を強撹拌することによって得ることができる。
本発明によれば、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、塗膜としたときにボイド及び凹凸等の不均一性が発生せず、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能な水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を用いた水系分散液、並びに、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の製造方法が得られる。
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度65.0モル%、水酸基量33.8モル%、アセチル基量1.2モル%)25重量部と、2−ソジウムスルホエチルメタクリレート1重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールおよび2−ソジウムスルホエチルメタクリレートを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をNMR(日本電子社製、JNM−ECA400)で測定し、樹脂中に含まれるアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率およびイオン性官能基量を測定した。得られた結果を表1に示した。また、得られた樹脂について、カラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定した。得られた重量平均分子量を表1に示した。
次いで、得られたポリビニルアセタール樹脂10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、溶解液を水300重量部に滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでメタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例2)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度65.0モル%、水酸基量33.8モル%、アセチル基量1.2モル%)25重量部と、メタクリル酸1重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、メタクリル酸がグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例3)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度65.0モル%、水酸基量33.8モル%、アセチル基量1.2モル%)25重量部と、ジメチルアミノエチルメタクリレート1重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、ジメチルアミノエチルアクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例4)
2−ソジウムスルホエチルメタクリレートの添加量を0.1重量部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例5)
2−ソジウムスルホエチルメタクリレートの添加量を5重量部に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例6)
ポリビニルアセタール樹脂を重合度300、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例7)
ポリビニルアセタール樹脂を重合度3300、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例8)
重合度800、ケン化度99モル%であり、共重合体としてのアクリル酸を0.7モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は68モル%、水酸基量は30.3モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例9)
ポリビニルアセタール樹脂を重合度1700、ブチラール化度48.0モル%、アセトアセタール化度24モル%、水酸基量27.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例10)
重合度800、ケン化度99モル%であり、共重合体としてのアリルスルホン酸ナトリウムを1モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール系樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例11)
重合度800、ケン化度99モル%であり、共重合体としてのアリルスルホン酸ナトリウムを0.5モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール系樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例12)
重合度800、ケン化度99モル%であり、共重合体としての2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウムを1モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール系樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例13)
重合度800、ケン化度99.5モル%であり、共重合体としてのビニルスルホン酸を0.5モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール系樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67.5モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例14)
実施例10で得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液に、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)をポリビニルアセタール微粒子に対して10重量%となるように添加した。次いで、分散液を1時間撹拌し、可塑剤を含む水系分散液を作製した。作製した可塑剤を含む水系分散液を目視により確認したところ、可塑剤による液滴は観測されず、可塑剤はポリビニルアセタール微粒子に含浸されていることが確認された。
(実施例15)
実施例10で得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液に、可塑剤としてジオクチルフタレート(DOP)をポリビニルアセタール微粒子に対して7重量%となるように添加した。次いで、分散液を1時間撹拌し、可塑剤を含む水系分散液を作製した。作製した可塑剤を含む水系分散液を目視により確認したところ、可塑剤による液滴は観測されず、可塑剤はポリビニルアセタール微粒子に含浸されていることが確認された。
(比較例1)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%)10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、溶解液を水300重量部に滴下添加した。次いで、液温を30度に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生し微粒子が分散した水系分散液は得られなかった。
(比較例2)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%)10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、次いで、分散剤としてのオレイン酸カリウムをポリビニルアセタール樹脂に対して10重量%となるよう添加し、得られた溶解液を水300重量部に滴下添加した。次いで液温を30度に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでメタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、ポリビニルアセタール粒子が分散した水系分散液を作製した。
(比較例3)
2−ソジウムスルホエチルメタクリレートを2−ヒドロキシエチルメタクリレートに変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、溶解液を水300重量部に滴下添加した。次いで、液温を30度に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生し微粒子が分散した水系分散液は得られなかった。
(比較例4)
重合度800、ケン化度99モル%であり、共重合体としてのメタクリル酸シクロヘキシルを1モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール系樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を実施例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
次いで、得られた樹脂10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、溶解液を水300重量部に滴下添加し、液温を30度に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生し微粒子が分散した水系分散液は得られなかった。
(評価方法)
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子、及び、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液の性能を以下の方法で評価した。結果を表1に示した。
(1)粒子径の測定
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子の体積平均粒子径及び体積粒子径分布をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、LA−950)を用いて測定した。
(2)平均真球度の測定
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子の平均真球度を走査電子顕微鏡による観察を行うことで実施した。平均真球度の算出には、電子顕微鏡写真中において任意に選ばれた100個のポリビニルアセタール樹脂微粒子について個々の微粒子の真球度をイメージアナライザーによる画像解析を行うことで測定し、それらの平均値を算出することによって評価した。
(3)分散性評価
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を24時間放置し、以下の基準でポリビニルアセタール微粒子の分散性を評価した。
◎:沈降物がなく、完全に分散していた。
○:ごく一部の沈降物が見られたが、概ね分散していた。
×:全てが沈降していた。
(4)再分散性評価
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液について、遠心分離機によってポリビニルアセタール微粒子を沈降させた後、撹拌によって微粒子が再分散可能かを以下の基準で評価した。
◎:撹拌時間10分未満で完全に分散した。
○:撹拌時間10分以上、1時間以内で完全に分散した。
×:分散しなかった。
(5)皮膜均一性評価
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液をPETフィルム上に塗布し、80℃で60分、次いで160℃で15分乾燥させることでPETに積層されたポリビニルアセタールフィルムを得た。得られたポリビニルアセタールフィルムをPETから剥がし、顕微鏡により観察し、以下の基準で皮膜均一性を評価した。
◎:ボイド及び凹凸が全く見られなかった。
○:ボイドは見られなかったが凹凸が見られた。
×:ボイド及び凹凸が見られた。
(6)被膜強度
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液をPETフィルム上に塗布し、80℃で60分、次いで160℃で15分乾燥させることでPETに積層された厚み30μmのポリビニルアセタールフィルムを得た。得られたポリビニルアセタールフィルムをPETから剥がし、ポリビニルアセタールフィルムの引っ張り試験を行い、破断応力及び伸度について測定した。
Figure 2014050795
(実施例16)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、原料ポリビニルアセタール樹脂(重合度1000、ブチラール化度66.0モル%、水酸基量33.0モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部と、2−ソジウムスルホエチルメタクリレート0.5重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールおよび2−ソジウムスルホエチルメタクリレートを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂に含まれるイオン性官能基の量をNMR(日本電子社製、JNM−ECA400)により測定したところ、0.05mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂中に含まれるアセタール化度、アセチル基量、水酸基量およびグラフト率をNMRで測定した。得られた結果を表1に示した。また、得られた樹脂について、カラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定した。得られた重量平均分子量を表2に示した。
次いで、得られたポリビニルアセタール樹脂5重量部をメタノール100重量部に溶解させ、溶解液に水10重量部を滴下添加した。次いで、液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノール及び水を揮発させて、ポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
(実施例17)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度1000、ブチラール化度66.0モル%、水酸基量33.0モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部と、メタクリル酸0.5重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、メタクリル酸がグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0.15mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を実施例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
(実施例18)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度65.0モル%、水酸基量33.8モル%、アセチル基量1.2モル%)25重量部と、ジメチルアミノエチルメタクリレート0.5重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、ジメチルアミノエチルアクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0.1mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を実施例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
(実施例19)
得られたポリビニルアセタール樹脂15重量部をメタノール100重量部に溶解させた以外は実施例16と同様の操作を行い、ポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
(実施例20)
得られたポリビニルアセタール樹脂0.5重量部をメタノール100重量部に溶解させた以外は実施例16と同様の操作を行い、ポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
(実施例21)
原料ポリビニルアセタール樹脂を、重合度300、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更し、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートの量を4重量部とした以外は実施例16と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0.4mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を実施例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
(実施例22)
原料ポリビニルアセタール樹脂を、重合度3300、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更し、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートの量を2重量部とした以外は実施例16と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0.2mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を実施例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
(実施例23)
重合度1000、ケン化度99モル%であり、共重合体としてのアクリル酸を0.7モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67.6モル%、水酸基量は30.7モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/gであった。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
(実施例24)
原料ポリビニルアセタール樹脂を、重合度1000、ブチラール化度48.0モル%、アセトアセタール化度24モル%、水酸基量27.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更した以外は実施例16と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られた樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0.1mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を実施例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
(比較例5)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%)10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、作製した溶液に水10重量部を滴下添加した。
次いで、液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノール及び水を揮発させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生しポリビニルアセタール樹脂微粒子は得られなかった。
(比較例6)
2−ソジウムスルホエチルメタクリレートを2−ヒドロキシエチルメタクリレートに変更した以外は実施例16と同様の操作を行い、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を実施例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂5重量部をメタノール100重量部に溶解させ、溶解液に水10重量部を滴下添加した。次いで、液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノール及び水を揮発させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生し微粒子が分散した水系分散液は得られなかった。
(比較例7)
重合度1000、ケン化度99モル%であるポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ブチラール化度68モル%、水酸基量31モル%、アセチル基量1モル%であるポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
(評価方法)
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子の性能を以下の方法で評価した。結果を表2に示した。
(1)粒子径の測定
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子の体積平均粒子径及び体積粒子径分布をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、LA−950)を用いて測定した。
(2)平均真球度の測定
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子の平均真球度を走査電子顕微鏡による観察を行うことで実施した。平均真球度の算出には、電子顕微鏡写真中において任意に選ばれた100個のポリビニルアセタール樹脂微粒子について個々の微粒子の真球度をイメージアナライザーによる画像解析を行うことで測定し、それらの平均値を算出することによって評価した。
(3)水分散性評価
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子1重量部を水9重量部に添加した後、超音波を照射しポリビニルアセタール樹脂微粒子が分散した水系分散液を作製した。本分散液を24時間放置し、以下の基準でポリビニルアセタール微粒子の分散性を評価した。
◎:沈降物がなく、完全に分散していた。
○:ごく一部の沈降物が見られたが、概ね分散していた。
×:全てが沈降していた。
(4)再分散性評価
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液について、遠心分離機によってポリビニルアセタール微粒子を沈降させた後、撹拌によって微粒子が再分散可能かを以下の基準で評価した。
◎:撹拌時間10分未満で完全に分散した。
○:撹拌時間10分以上、1時間以内で完全に分散した。
×:分散しなかった。
(5)皮膜均一性評価
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液をPETフィルム上に塗布し、80℃で60分、次いで160℃で15分乾燥させることでPETに積層されたポリビニルアセタールフィルムを得た。得られたポリビニルアセタールフィルムをPETから剥がし、顕微鏡により観察し、以下の基準で皮膜均一性を評価した。
◎:ボイド及び凹凸が全く見られなかった。
○:ボイドは見られなかったが凹凸が見られた。
×:ボイド及び凹凸が見られた。
(6)被膜強度
得られたポリビニルアセタールフィルムをPETから剥がし、ポリビニルアセタールフィルムの引っ張り試験を行い、破断応力及び伸度について測定した。
Figure 2014050795
本発明によれば、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、塗膜としたときにボイド及び凹凸等の不均一性が発生せず、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能な水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を用いた水系分散液、並びに、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の製造方法を提供することができる。
本発明は、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、塗膜としたときにボイド及び凹凸等の不均一性が発生せず、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能な水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を用いた水系分散液、並びに、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の製造方法に関する。
ポリビニルアセタール樹脂は、金属処理のウォッシュプライマー、各種塗料、接着剤、樹脂加工剤及びセラミックスバインダー等に多目的に用いられており、近年では電子材料へと用途が拡大している。これらの用途に対してポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、ポリビニルアセタール樹脂は一旦有機溶剤に溶解した状態で、または水系分散液の状態で使用される。
一方、近年では、環境汚染や人体への有毒性および使用時の危険性等の理由から、有機溶剤を含有する系の代わりに、水を主成分とする系に交換する試みが増加し、その結果、ポリビニルアセタール水系分散液の重要性がますます増加している。
このようなポリビニルアセタール樹脂からなる微粒子は、沈殿法を用いたポリビニルアルコールのアセタール化反応を行うことによって作製されている。しかしながら、このような方法で得られた微粒子状のポリビニルアセタール樹脂は、水を主成分とする分散媒に分散させようとしても、大きな塊状の凝集体を発生したり、わずかな時間静置しただけで微粒子が沈降したりするという問題があった。また、一度沈降してしまうと、撹拌等によって簡単に再分散できず、分散状態を長期間維持することは極めて困難であった。そのため、ポリビニルアセタール樹脂は、有機溶剤に溶解してバインダー樹脂として使用することが一般的であり、ポリビニルアセタール樹脂からなる微粒子の水系分散液として使用することは困難であった。
上記のような問題に対して、水系媒体への分散性が改良されたポリビニルアセタール樹脂の水系分散液組成物として、例えば、RS−3120(ソルーシア社製)等が一般に用いられていた。
しかしながら、従来のポリビニルアセタール樹脂の水系分散液組成物は、オレイン酸カリウム又はオレイン酸ナトリウム等の分散剤を使用しており、分散液のpHは約9でアルカリ性となっている。従って、分散液のpHが中性に近くなると、分散剤の分散効果が低下して、ポリビニルアセタール樹脂が沈殿するという問題があった。特に、添加される化合物の酸性度が強い場合は、化合物を添加した近傍のpHが低くなるため、水系分散液全体のpHが中性に近くなる前に沈殿を生じるという問題もあった。
一方で、中性でも安定した分散性を示すポリビニルアセタール樹脂の水系分散液組成物としては、例えば、特許文献1に、分散剤にポリオキシエチレントリデシルエーテル類、ポリオキシエチレンオレイルエーテル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート類、ラウリル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの分散剤を用いるポリビニルアセタール樹脂の水系分散液組成物が開示されている。
しかしながら、このような分散剤を用いた場合でも、水を主成分とする液体媒体中での分散性は充分ではないという問題があった。また、多量の分散剤を含んでいるために乾燥後に得られる被膜の機械的性質が低下するという問題もあった。
また、ポリマーからなる微粒子は、艶消し剤、ブロッキング防止剤、クロマトグラフィー用坦体、薬剤用坦体、粉体塗料、ギャップ調整材、電子写真用トナー、電気粘性流体、化粧品等に広く用いられている。このような用途に使用されるポリマー微粒子としては、粒子径が小さく、粒子径分布が狭いものが要求され、また、特に塗料やトナー等の用途では、塗膜を形成した際のボイド及び凹凸等の不均一性が発生しないことが求められている。
従来、このような用途に使用されるポリマー微粒子としては、エマルジョン重合法、懸濁重合法、シード重合法、分散重合法等の「重合造粒法」により得られる微粒子が用いられてきた。しかしながら、エマルジョン重合法、懸濁重合法により得られるポリマー微粒子は、粒子径範囲が限定され、かつ、粒子径分布がブロードなものとなっていた。また、シード重合法および分散重合法により得られる樹脂粒子は、シャープな粒子径分布を有するものの、非常に高価なものとなっていた。
一方で、ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールを原料としたアルデヒドによるアセタール反応から製造させるものであるが、上述した「重合造粒法」で、ポリビニルアセタール樹脂からなる微粒子を製造することは極めて困難であった。
また、沈殿法を用いて、ポリビニルアルコールのアセタール化反応を行うことで、ポリビニルアセタール樹脂からなる微粒子を製造することが行われているが、このような方法で得られた微粒子は、小さな一次粒子が合着した集合体からなり、球状の微粒子を得ることはできていなかった。
これに対して、特許文献2には、ポリビニルアルコールとのイオン交換反応によってゲル化する性質を持つ水溶性高分子及びアルデヒド類を混合してなる水溶液を、酸性溶液中に滴下し、ポリビニルアルコールとアルデヒド類との反応により液滴を凝固させる多孔性球状粒子が記載されている。しかしながら、このような方法で製造された粒子は球状を有しているが、多孔質体となっているために上述した用途には適さないものであった。また、生成される粒子の粒子径も大きいものとなっていた。
特許第4849791号公報 特開平10−204204号公報
本発明は、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、塗膜としたときにボイド及び凹凸等の不均一性が発生せず、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能な水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を用いた水系分散液、並びに、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、水系分散液の分散質として用いられる水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子であって、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂からなり、体積平均粒子径が10nm〜100μm、かつ、体積粒子径分布のCV値が40%以下であり、前記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリマーの主鎖を構成する炭素にイオン性官能基が結合した鎖状分子構造を有し、かつ、下記一般式(1)に示す構造単位を有する水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子である。
Figure 2014050795
式(1)中、Cはポリマー主鎖の炭素原子を表し、R は水素原子を表し、R はメチレン基を表し、R はスルホン酸基又はスルホン酸基の塩を表す。
以下、本発明を詳述する。
本発明者は、特定の官能基を有するポリビニルアセタール樹脂からなり、かつ、体積平均粒子径及び体積平均粒子径のCV値が所定の範囲内であるポリビニルアセタール微粒子は、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、仮に沈殿が生じた場合でも、容易に再分散できることを見出した。
また、このようなポリビニルアセタール微粒子から得られる水系分散液は、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂からなる。
上記イオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、及び、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。なかでも、カルボキシル基、スルホン酸基、それらの塩がより好ましく、スルホン酸基、その塩であることが特に好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂中のイオン性官能基の含有量は0.01〜1mmol/gであることが好ましい。上記イオン性官能基の含有量が0.01mmol/g未満であると、微粒子の分散性が低下したり、塗膜としたときにボイドが発生する場合や凹凸等の不均一性が発生し、1mmol/gを超えると、被膜とした際に機械的性質が低下する場合がある。より好ましくは0.02〜0.5mmol/gである。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、単独アルデヒド、混合アルデヒドのいずれを用いる場合でも、全アセタール化度で40〜80モル%の範囲が好ましい。全アセタール化度が40モル%未満では得られるポリアセタール樹脂が水溶性となり、水系分散液を形成することができない。全アセタール化度が80モル%を超えると、疎水性が強くなりすぎて安定した分散液を得ることが困難となる。より好ましくは55〜75モル%である。
特に、上記ポリビニルアセタール樹脂としては、重合度200〜5000、ケン化度が80モル%以上のポリビニルアルコールをアセタール化することで得られるものが好ましい。上記重合度およびケン化度のポリビニルアセタール樹脂は、水系分散液の調整、得られる水系分散液組成物の塗工性、乾燥時の製膜性に優れ、形成された塗膜の強度や柔軟性も優れたものとなる。
上記重合度が200未満であると、被膜とした際に機械的強度が低くなり、重合度が5000を超えると、アセタール化反応の際に溶液粘度が異常に高くなってアセタール化反応が困難になる。重合度は800〜4500であることがより好ましい。
また、上記ケン化度が80モル%より小さいと、水への溶解性が悪くなるためアセタール化反応が困難になり、また、水酸基量が少ないためアセタール化反応自体が困難となる。特に、ケン化度85モル%以上とすることがより好ましい。
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、塩酸等の酸触媒の存在下で上記ポリビニルアルコールの水溶液に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えばホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド又はブチルアルデヒドが、生産性と特性バランス等の点で好適である。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記イオン性官能基の存在形態については、ポリビニルアセタール樹脂構造中に直接存在していてもよく、グラフト鎖を含むポリビニルアセタール樹脂(以下、単にグラフト共重合体ともいう)のグラフト鎖に存在していてもよい。
なかでも、イオン性官能基がグラフト鎖に存在する場合は、ポリマーの主鎖骨格はポリビニルアセタールのまま維持されるため、ポリビニルアセタール樹脂本来の優れた機械的性質を低下させることが無く、被膜とした際に高い機械的性質を発現させることができる。また、導入したイオン性官能基に変質等が生じることを防止することができる。
一方、イオン性官能基がポリビニルアセタール樹脂構造中に直接存在している場合は、ポリマーの主鎖を構成する炭素にイオン性官能基が結合した鎖状分子構造であることが好ましい。この場合、ポリマーの主鎖を構成する炭素と、イオン性官能基とが所定の構造を介して結合していることがより好ましい。
イオン性官能基は特定の構造を介してポリマー主鎖骨格に結合していることで、水を主成分とする分散媒中において優れた分散安定性を実現することができる。また、分散媒を乾燥させた後に高い機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができる。
上記特定の構造としては、炭化水素からなる基が好ましく、特に、炭素数1以上のアルキレン基、炭素数5以上の環状アルキレン基、炭素数6以上のアリール基等が好ましい。
上記炭素数の上限値は特に限定されないが、炭素数200以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂が、ポリマーの主鎖を構成する炭素にイオン性官能基が結合した鎖状分子構造である場合、下記一般式(1)に示す構造単位を有することが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂が下記一般式(1)に示す構造単位を有することで、本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を、水を主成分とする分散媒中に添加した場合に優れた分散安定性を発揮させることができる。また、分散媒を乾燥させた後に高い機械的強度と柔軟性を有する膜を形成することができる。
Figure 2014050795
式(1)中、Cはポリマー主鎖の炭素原子を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1以上のアルキレン基を表し、Rはイオン性官能基を表す。
イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂が、上記一般式(1)に示す構造単位を有することで、得られる水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、水を含有する分散媒中において非常に優れた分散安定性を発揮することができるとともに、仮に沈殿が生じた場合でも、容易に再分散することが可能となる。
これは、上記ポリビニルアセタール樹脂に含まれるイオン性官能基が、上記一般式(1)中のRを介してポリマー主鎖に結合しているために、該イオン性官能基の運動性が高まり、水を主成分とする分散媒に分散させた場合に、微粒子表面に存在するイオン性官能基が分散媒の方向に向くように再配置する。これにより、水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子と分散媒との親和性が向上するためであると考えられる。
また、上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂が、上記一般式(1)で表される構造単位を有することによって、分散媒を乾燥させた後の膜は、高い機械的強度、及び、柔軟性を有するものとなる。これは、分散媒が乾燥した後に、イオン性官能基が微粒子表面から微粒子内部へと移動することで、微粒子同士の接合が強固に行われるためであると考えられる。
上記Rとしては特に水素原子が好ましい。
上記Rとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基等が挙げられる。なかでも、上記Rはメチレン基であることが好ましい。
上記Rは、ヘテロ原子を有する置換基によって置換された構造であってもよい。上記置換基としては、エステル基、エーテル基、スルフィド基、アミド基、アミン基、スルホキシド基、ケトン基、水酸基等が挙げられる。
上記ポリビニルアセタール樹脂構造中にイオン性官能基が直接存在するポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコール原料にアルデヒドを反応させアセタール化する方法、ポリビニルアセタール樹脂を作製した後、該ポリビニルアセタール樹脂の官能基に対して反応性を有する別の官能基及びイオン性官能基を持った化合物と反応させる方法等が挙げられる。
上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコールを作製する方法としては、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステルモノマーと、下記一般式(2)に示す構造を有するモノマーとを共重合化させた後、得られた共重合樹脂のエステル部位をアルカリ又は酸によりケン化する方法が挙げられる。
Figure 2014050795
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1以上のアルキレン基を表し、Rはイオン性官能基を表す。
上記一般式(2)に示す構造を有するモノマーとしては特に限定されず、例えば、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、9−デセン酸等のカルボキシル基と重合性官能基を有するもの、アリルスルホン酸、2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパンスルホン酸等のスルホン酸基と重合性官能基を有するもの、N,N−ジエチルアリルアミン等のアミノ基と重合性官能基を有するもの、およびこれらの塩等が挙げられる。
なかでも、アリルスルホン酸及びその塩を用いた場合、水を主成分とした分散媒中における優れた分散安定性と、分散媒を乾燥させた後の高い機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができるため好適である。特に、アリルスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
これらのモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記Rとしては特に水素原子が好ましい。
上記Rとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基等が挙げられる。なかでも、上記Rはメチレン基であることが好ましい。
上記Rは、ヘテロ原子を有する置換基によって置換された構造であってもよい。上記置換基としては、エステル基、エーテル基、スルフィド基、アミド基、アミン基、スルホキシド基、ケトン基、水酸基等が挙げられる。
上記ポリビニルアセタール樹脂中の上記一般式(1)に示す構造単位の含有量は、上記ポリビニルアセタール樹脂中のイオン性官能基の含有量が上記適性範囲となるように調整することが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂中のイオン性官能基の含有量を上記範囲内とすることで、水系分散液の分散質として用いた場合に、分散液中での水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の分散安定性が向上するとともに、得られる膜の強度、及び、柔軟性を両立させることができる。
上記グラフト共重合体を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記イオン性官能基を含む重合性単量体を、ポリビニルアセタールが存在する環境下において水素引き抜き性重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法等が挙げられる。
上記重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の従来公知の重合方法が挙げられる。
上記溶液重合に用いる溶媒は特に限定されず、例えば、酢酸エチル、トルエン、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及び、これらの混合溶媒等が挙げられる。
上記水素引き抜き性重合開始剤としては特に限定されないが、t−ブチルパーオキシ系の過酸化物が好ましく、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシ、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーヘキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、t−ブチルパーオキシネオペンタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボネート、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート等を用いることができる。
上記グラフト共重合体のグラフト鎖は、(メタ)アクリル系モノマーの重合体からなることが好ましい。これにより、上記イオン性官能基を効率よくポリビニルアセタール樹脂に導入することができる。そのため、本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、水を主成分とした分散媒中でも高い分散安定性を発揮することができる。
具体的には、イオン性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いてグラフト鎖を形成することが好ましい。
上記イオン性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フェニル(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、2−ソジウムスルホエチル(メタ)アクリレート、2−ポタシウムスルホエチル(メタ)アクリレート、3−ソジウムスルホプロピル(メタ)アクリレート、3−ポタシウムスルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記イオン性官能基を含む重合性単量体がグラフトしたポリビニルアセタール樹脂中のグラフト率(グラフト共重合体中のポリビニルアセタールからなるユニットに対するイオン性官能基を含む重合性単量体からなるユニットの比率)は、上記ポリビニルアセタール樹脂中のイオン性官能基の含有量が上記適性範囲となれば特に限定されないが、0.001〜100重量%が好ましい。上記範囲内とすることで、水系分散液の分散質として用いた場合に、得られる膜の強度、及び、柔軟性を両立することができる。好ましいグラフト率は、0.1〜15重量%である。
なお、本発明において、「グラフト率」とは、グラフト共重合体中のポリビニルアセタールからなるユニットに対するイオン性官能基を含む重合性単量体からなるユニットの比率を表し、例えば、以下の方法により評価することができる。得られた樹脂溶液を110℃で1時間乾燥させた後、メタノールに溶解させ、該メタノール溶液を水に滴下添加した後に、遠心分離操作によって不溶分と可溶分とに分離する。この際得られた不溶分をグラフト共重合体とする。得られたグラフト共重合体について、NMRによりポリビニルアセタールからなるユニットとイオン性官能基を含む重合性単量体からなるユニットの重量を換算し、下記式(3)を用いて算出することができる。
Figure 2014050795
また、上記のイオン性官能基をグラフト鎖に存在させるポリビニルアセタール樹脂とする場合には、上記イオン性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーに加えて、他の(メタ)アクリル系モノマーを同時に用いてもよい。
上記他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステル、単官能(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、単官能(メタ)アクリル酸アリールエステル等を用いることができる。
上記単官能(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記単官能(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記単官能(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を総称するものであり、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称するものとする。
上記グラフト共重合体中の他の(メタ)アクリル系モノマーのグラフト率(グラフト共重合体中のポリビニルアセタールからなるユニットに対する他の(メタ)アクリル系ポリマーからなるユニットの比率)は、用途に応じて設計されるため、特に限定されないが、900重量%以下であることが好ましい。上記範囲内とすることで、水系分散液の分散質として用いた場合に、得られる膜の強度、及び、柔軟性を両立することができる。
なお、本発明において、「他の(メタ)アクリル系モノマーのグラフト率」とは、グラフト共重合体中のポリビニルアセタールからなるユニットに対する他の(メタ)アクリル系ポリマーからなるユニットの比率を表し、例えば、以下の方法により評価することができる。得られた樹脂溶液を110℃で1時間乾燥させた後、キシレンに溶解させ、不溶分と可溶分とに分離し、不溶分をグラフト共重合体とする。得られたグラフト共重合体について、NMRによりポリビニルアセタールからなるユニットと他の(メタ)アクリル系ポリマーからなるユニットの重量を換算し、下記式(4)を用いて算出することができる。
Figure 2014050795
上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂の分子量としては特に制限は無いが、数平均分子量(Mn)が10,000〜400,000で、重量平均分子量(Mw)が20,000〜800,000で、これらの比(Mw/Mn)が2.0〜40であることが好ましい。Mn、Mw、Mw/Mnがこのような範囲であると、水系分散液の分散質として用いた場合に、得られる膜の強度、及び、柔軟性を両立することができる。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、体積平均粒子径の下限が10nm、上限が100μmである。体積平均粒子径が10nm未満であると、実質的に作製することが困難であり、100μmを超えると分散液中での微粒子の沈降速度が速くなり、安定な分散液を得ることができなくなる。上記体積平均粒子径の好ましい下限は20nm、好ましい上限は50μm、より好ましい下限は30nm、より好ましい上限は30μm、更に好ましい下限は50nm、更に好ましい上限は10μmである。
なお、上記水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置等を用いて測定することができる。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の体積平均粒子径は、CV値の上限が40%である。CV値が40%を超えると、大きな粒子径を持った微粒子が存在することとなり、該大粒径粒子が沈降することによって安定な分散液を得ることができなくなる。また、ポリビニルアセタール微粒子を湿式塗工や湿式噴霧によって基材上に配置し、その後の微粒子の溶融等で塗膜を形成した際には、空気の巻き込みが発生し、形成した膜にボイドが発生したり、粒子径の不均一性によって膜表面の凹凸等の不均一性が発生したりすることとなる。
上記CV値の好ましい上限は35%、より好ましい上限は30%、更に好ましい上限は20%である。なお、CV値は、標準偏差を体積平均粒子径で割った値の百分率(%)で示される数値である。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、平均真球度が0.9以上であることが好ましい。これにより、ポリビニルアセタール微粒子を湿式塗工や湿式噴霧によって基材上に配置し、その後の微粒子の溶融等で塗膜を形成した際には、空気の巻き込みが抑えられるためにボイドが発生しにくく、また、膜表面の凹凸等の不均一性が発生しないことから、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができる。平均真球度が0.9未満であると、上記膜を形成する際に空気の巻き込みが発生し、形成した膜にボイドが発生したり、膜表面の凹凸等の不均一性が発生したりすることがある。より好ましくは0.95以上である。更に好ましくは0.98以上である。
なお、真球度(短径/長径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影された電子顕微鏡写真を画像解析装置を用いて、解析処理することにより測定することができ、平均真球度は、電子顕微鏡写真中において任意に選ばれた例えば100個の微粒子について、目視で短径と長径を決定し、真球度の平均値を求めることにより算出することができる。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を製造する方法としては特に限定されず、例えば、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を得た後、上記ポリビニルアセタール樹脂を粒子化することで製造することができる。
上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を得る方法としては、例えば、上記イオン性官能基を有する変性ポリビニルアルコール原料にアルデヒドを反応させアセタール化する方法、ポリビニルアセタール樹脂を作製した後、該ポリビニルアセタール樹脂の官能基に対して反応性を有する別の官能基を持った化合物と反応させる方法、水素引き抜き性重合開始剤を用いてポリビニルアセタール樹脂に上記イオン性官能基を含む重合性単量体をグラフトさせる方法等が挙げられる。
なかでも、ポリビニルアセタール樹脂本来の優れた機械的性質を低下させることが無く、被膜とした際に高い機械的性質を発現させることができ、また、導入した官能基の変質等が発生しないためにグラフトさせる方法が特に好ましい。
また、イオン性官能基がポリビニルアセタール樹脂構造中に直接存在している場合には、イオン性官能基を上記特定の構造を介してポリマー主鎖骨格に結合させることで、水を主成分とした分散媒中における優れた分散安定性と、分散媒を乾燥させた後の高い機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができる。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂を粒子化する方法としては、上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解した後、水を少量ずつ添加し、加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法や、大量の水に上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂が溶解した溶液を添加した後に必要に応じて加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を該イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度以上で加熱してニーダー等で混練しながら、加熱加圧下で水を少量ずつ添加して混練する方法等が挙げられる。なかでも、本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の体積平均粒子径を制御しやすく、体積平均粒子径のCV値を小さくすることができることから、上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解した後、水を少量ずつ添加し、加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法、または大量の水に上記イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂が溶解した溶液を添加した後に必要に応じて加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法が好適である。
特に、上記イオン性官能基がポリビニルアセタール樹脂構造中に直接存在しているポリビニルアセタール樹脂を上述の方法で粒子化した場合、体積平均粒子径が1μm以下の比較的小さな粒子径を有する水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子が得られ、かつ、体積平均粒子径のCV値を小さくすることができる。また、上記イオン性官能基がグラフト鎖に存在するポリビニルアセタール樹脂を上述の方法で粒子化した場合、体積平均粒子径が100nm以上の比較的大きな粒子径を有する水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子が得られ、かつ、体積平均粒子径のCV値を小さくすることができる。
特に、本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を製造する方法としては、イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を作製する工程を行った後、上記ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解する工程、及び、水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を析出させる工程を行うことが好ましい。
このような方法を用いることで、上記水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を析出させる工程において水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子が均一に発生し、また、微粒子同士の合着が起こりにくくなるために、体積粒子径分布が狭く、平均真球度の高い球状微粒子を得ることができる。
また、上記ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解する工程を行うことで、粒子径の精密制御が可能であり、高い平均真球度を有する微粒子を得ることができる。
上記有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチルや、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール等が挙げられる。
また、上記有機溶剤に加えて、水を添加してもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解する工程におけるポリビニルアセタール樹脂の濃度は0.1〜20重量%とすることが好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂の濃度が0.1重量%未満であると、有機溶剤や水を除去するために長時間を要することとなり、水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の生産性が低下する場合がある。
上記ポリビニルアセタール樹脂の濃度が20重量%を超えると、ポリビニルアセタール溶液の粘度が高くなり、溶解が均一にできなくなるために得られる水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の体積粒子径分布が広くなり目的の範囲とすることができなくなる場合がある。
より好ましくは0.3〜15重量%の範囲である。
本発明では、次いで、水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を析出させる工程を行う。
具体的には、加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法や、遠心分離法によって有機溶剤を除去する方法等が挙げられる。
また、水を添加する場合は、水についても同時に除去することが好ましい。
本発明の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子は、通常、水を含有する分散媒中に分散した水系分散液として用いられる。このような水系分散液もまた、本発明の1つである。
本発明の水系分散液に使用される分散媒としては、水を含有すれば良く、水と有機溶剤との混合溶剤であっても良い。有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤が多すぎると水系分散液の保存安定性が低下するため、分散媒中の有機溶剤の含有量は40重量%以下が好ましい。より好ましくは30重量%以下である。
本発明の水系分散液における水の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して40〜1000重量部である。水の量が少なすぎると固形分濃度が高くなりすぎて、分散性が低下したり、ポリビニルアセタール樹脂の水系分散液の粘度が高くなりすぎて塗工性が低下したりする。多すぎると固形分濃度が少なくなるために塗工後に得られる皮膜が不均一となる場合がある。
なお、本発明の水系分散液は、充分な分散安定性を有しているが、得られる被膜の機械的性質を劣化させない範囲で、分散剤を別途添加しても良い。
本発明の水系分散液は、可塑剤を含有していてもよい。上記可塑剤を含むことによって、得られる皮膜の柔軟性をより良いものとすることができる。上記可塑剤としては特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂と相溶性を示すものであることが好ましく、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸ジエステル、ジオクチルアジペート等のアジピン酸ジエステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート、トリエチレングリコール−ジ−ヘプタノエート等のアルキレングリコールジエステル等が挙げられる。なかでも、揮発性が低く、シートの柔軟性を保ちやすいことから、DOP、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートが好適である。
上記水系分散液中の可塑剤は、ポリビニルアセタール微粒子に含浸されていることが好ましい。可塑剤がポリビニルアセタール微粒子に含浸されていることで、分散媒を乾燥させた後の皮膜の可塑剤分布ムラが無くなり、高い機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができる。可塑剤のポリビニルアセタール微粒子への含浸は、可塑剤を添加した水分散液を目視により確認し、可塑剤による液滴が観測されないことによって確認することができる。
ポリビニルアセタール微粒子に含浸される可塑剤は、特に限定されないが、ポリビニルアセタール微粒子と可塑剤の合計を100重量%とした場合、1〜50重量%を例示することが出来る。
より好ましくは、2〜25重量%であり、特に好ましくは、5〜15重量%である。
上記可塑剤を含浸したポリビニルアセタール微粒子を作製する方法としては、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液に上記可塑剤を添加し、水系分散液と可塑剤の混合液を強撹拌することによって得ることができる。
本発明によれば、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、塗膜としたときにボイド及び凹凸等の不均一性が発生せず、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能な水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を用いた水系分散液、並びに、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の製造方法が得られる。
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
参考例1)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度65.0モル%、水酸基量33.8モル%、アセチル基量1.2モル%)25重量部と、2−ソジウムスルホエチルメタクリレート1重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールおよび2−ソジウムスルホエチルメタクリレートを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂をNMR(日本電子社製、JNM−ECA400)で測定し、樹脂中に含まれるアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率およびイオン性官能基量を測定した。得られた結果を表1に示した。また、得られた樹脂について、カラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定した。得られた重量平均分子量を表1に示した。
次いで、得られたポリビニルアセタール樹脂10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、溶解液を水300重量部に滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでメタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
参考例2)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度65.0モル%、水酸基量33.8モル%、アセチル基量1.2モル%)25重量部と、メタクリル酸1重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、メタクリル酸がグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
参考例3)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度65.0モル%、水酸基量33.8モル%、アセチル基量1.2モル%)25重量部と、ジメチルアミノエチルメタクリレート1重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、ジメチルアミノエチルアクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
参考例4)
2−ソジウムスルホエチルメタクリレートの添加量を0.1重量部に変更した以外は参考例1と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
参考例5)
2−ソジウムスルホエチルメタクリレートの添加量を5重量部に変更した以外は参考例1と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
参考例6)
ポリビニルアセタール樹脂を重合度300、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更した以外は参考例1と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
参考例7)
ポリビニルアセタール樹脂を重合度3300、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更した以外は参考例1と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
参考例8)
重合度800、ケン化度99モル%であり、共重合体としてのアクリル酸を0.7モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は68モル%、水酸基量は30.3モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
参考例9)
ポリビニルアセタール樹脂を重合度1700、ブチラール化度48.0モル%、アセトアセタール化度24モル%、水酸基量27.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更した以外は参考例1と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂からなるポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例10)
重合度800、ケン化度99モル%であり、共重合体としてのアリルスルホン酸ナトリウムを1モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール系樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.2mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例11)
重合度800、ケン化度99モル%であり、共重合体としてのアリルスルホン酸ナトリウムを0.5モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール系樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
参考例12)
重合度800、ケン化度99モル%であり、共重合体としての2−メチル−2−プロペン−1−スルホン酸ナトリウムを1モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール系樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
参考例13)
重合度800、ケン化度99.5モル%であり、共重合体としてのビニルスルホン酸を0.5モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール系樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67.5モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を作製した。
(実施例14)
実施例10で得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液に、可塑剤としてトリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)をポリビニルアセタール微粒子に対して10重量%となるように添加した。次いで、分散液を1時間撹拌し、可塑剤を含む水系分散液を作製した。作製した可塑剤を含む水系分散液を目視により確認したところ、可塑剤による液滴は観測されず、可塑剤はポリビニルアセタール微粒子に含浸されていることが確認された。
(実施例15)
実施例10で得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液に、可塑剤としてジオクチルフタレート(DOP)をポリビニルアセタール微粒子に対して7重量%となるように添加した。次いで、分散液を1時間撹拌し、可塑剤を含む水系分散液を作製した。作製した可塑剤を含む水系分散液を目視により確認したところ、可塑剤による液滴は観測されず、可塑剤はポリビニルアセタール微粒子に含浸されていることが確認された。
(比較例1)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%)10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、溶解液を水300重量部に滴下添加した。次いで、液温を30度に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生し微粒子が分散した水系分散液は得られなかった。
(比較例2)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%)10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、次いで、分散剤としてのオレイン酸カリウムをポリビニルアセタール樹脂に対して10重量%となるよう添加し、得られた溶解液を水300重量部に滴下添加した。次いで液温を30度に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでメタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、ポリビニルアセタール粒子が分散した水系分散液を作製した。
(比較例3)
2−ソジウムスルホエチルメタクリレートを2−ヒドロキシエチルメタクリレートに変更した以外は参考例1と同様の操作を行い、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率、イオン性官能基の量および重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、溶解液を水300重量部に滴下添加した。次いで、液温を30度に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生し微粒子が分散した水系分散液は得られなかった。
(比較例4)
重合度800、ケン化度99モル%であり、共重合体としてのメタクリル酸シクロヘキシルを1モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール系樹脂についてNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67モル%、水酸基量は31モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0mmol/gであった。また、得られた樹脂の重量平均分子量を参考例1と同様の方法で測定した結果を表1に示した。
次いで、得られた樹脂10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、溶解液を水300重量部に滴下添加し、液温を30度に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生し微粒子が分散した水系分散液は得られなかった。
(評価方法)
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子、及び、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液の性能を以下の方法で評価した。結果を表1に示した。
(1)粒子径の測定
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子の体積平均粒子径及び体積粒子径分布をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、LA−950)を用いて測定した。
(2)平均真球度の測定
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子の平均真球度を走査電子顕微鏡による観察を行うことで実施した。平均真球度の算出には、電子顕微鏡写真中において任意に選ばれた100個のポリビニルアセタール樹脂微粒子について個々の微粒子の真球度をイメージアナライザーによる画像解析を行うことで測定し、それらの平均値を算出することによって評価した。
(3)分散性評価
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液を24時間放置し、以下の基準でポリビニルアセタール微粒子の分散性を評価した。
◎:沈降物がなく、完全に分散していた。
○:ごく一部の沈降物が見られたが、概ね分散していた。
×:全てが沈降していた。
(4)再分散性評価
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液について、遠心分離機によってポリビニルアセタール微粒子を沈降させた後、撹拌によって微粒子が再分散可能かを以下の基準で評価した。
◎:撹拌時間10分未満で完全に分散した。
○:撹拌時間10分以上、1時間以内で完全に分散した。
×:分散しなかった。
(5)皮膜均一性評価
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液をPETフィルム上に塗布し、80℃で60分、次いで160℃で15分乾燥させることでPETに積層されたポリビニルアセタールフィルムを得た。得られたポリビニルアセタールフィルムをPETから剥がし、顕微鏡により観察し、以下の基準で皮膜均一性を評価した。
◎:ボイド及び凹凸が全く見られなかった。
○:ボイドは見られなかったが凹凸が見られた。
×:ボイド及び凹凸が見られた。
(6)被膜強度
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液をPETフィルム上に塗布し、80℃で60分、次いで160℃で15分乾燥させることでPETに積層された厚み30μmのポリビニルアセタールフィルムを得た。得られたポリビニルアセタールフィルムをPETから剥がし、ポリビニルアセタールフィルムの引っ張り試験を行い、破断応力及び伸度について測定した。
Figure 2014050795
参考例16)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、原料ポリビニルアセタール樹脂(重合度1000、ブチラール化度66.0モル%、水酸基量33.0モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部と、2−ソジウムスルホエチルメタクリレート0.5重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールおよび2−ソジウムスルホエチルメタクリレートを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂に含まれるイオン性官能基の量をNMR(日本電子社製、JNM−ECA400)により測定したところ、0.05mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂中に含まれるアセタール化度、アセチル基量、水酸基量およびグラフト率をNMRで測定した。得られた結果を表に示した。また、得られた樹脂について、カラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定した。得られた重量平均分子量を表2に示した。
次いで、得られたポリビニルアセタール樹脂5重量部をメタノール100重量部に溶解させ、溶解液に水10重量部を滴下添加した。次いで、液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノール及び水を揮発させて、ポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
参考例17)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度1000、ブチラール化度66.0モル%、水酸基量33.0モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部と、メタクリル酸0.5重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、メタクリル酸がグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0.15mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を参考例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
参考例18)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度65.0モル%、水酸基量33.8モル%、アセチル基量1.2モル%)25重量部と、ジメチルアミノエチルメタクリレート0.5重量部と、ジメチルスルホキシド100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部のジメチルスルホキシドで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に3時間かけて滴下添加した。その後、さらに85℃にて3時間反応させた。反応液を冷却後、水への沈殿を3回行ってから充分乾燥し、ジメチルアミノエチルアクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0.1mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を参考例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
参考例19)
得られたポリビニルアセタール樹脂15重量部をメタノール100重量部に溶解させた以外は参考例16と同様の操作を行い、ポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
参考例20)
得られたポリビニルアセタール樹脂0.5重量部をメタノール100重量部に溶解させた以外は参考例16と同様の操作を行い、ポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
参考例21)
原料ポリビニルアセタール樹脂を、重合度300、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更し、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートの量を4重量部とした以外は参考例16と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0.4mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を参考例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
参考例22)
原料ポリビニルアセタール樹脂を、重合度3300、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更し、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートの量を2重量部とした以外は参考例16と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0.2mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を参考例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
参考例23)
重合度1000、ケン化度99モル%であり、共重合体としてのアクリル酸を0.7モル%有するポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂をNMRを用いて測定を行ったところ、ブチラール化度は67.6モル%、水酸基量は30.7モル%、アセチル基量は1モル%、樹脂中に含まれるイオン性官能基の量は0.1mmol/gであった。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
参考例24)
原料ポリビニルアセタール樹脂を、重合度1000、ブチラール化度48.0モル%、アセトアセタール化度24モル%、水酸基量27.0モル%、アセチル基量1.0モル%のポリビニルアセタール樹脂に変更した以外は参考例16と同様の操作を行い、2−ソジウムスルホエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られた樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0.1mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を参考例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、参考例16と同様の操作によりポリビニルアセタール樹脂微粒子を作製した。
(比較例5)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%)10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、作製した溶液に水10重量部を滴下添加した。
次いで、液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノール及び水を揮発させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生しポリビニルアセタール樹脂微粒子は得られなかった。
(比較例6)
2−ソジウムスルホエチルメタクリレートを2−ヒドロキシエチルメタクリレートに変更した以外は参考例16と同様の操作を行い、2−ヒドロキシエチルメタクリレートがグラフトしたポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた樹脂中に含まれるイオン性官能基の量をNMRにより測定したところ、0mmol/gであった。また、得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量、グラフト率および重量平均分子量を参考例16と同様の方法で測定した結果を表2に示した。
得られたポリビニルアセタール樹脂5重量部をメタノール100重量部に溶解させ、溶解液に水10重量部を滴下添加した。次いで、液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノール及び水を揮発させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生し微粒子が分散した水系分散液は得られなかった。
(比較例7)
重合度1000、ケン化度99モル%であるポリビニルアルコール100重量部を純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸80重量部を添加した後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド70重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
その後、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ブチラール化度68モル%、水酸基量31モル%、アセチル基量1モル%であるポリビニルアセタール樹脂粉末を得た。
(評価方法)
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子の性能を以下の方法で評価した。結果を表2に示した。
(1)粒子径の測定
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子の体積平均粒子径及び体積粒子径分布をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、LA−950)を用いて測定した。
(2)平均真球度の測定
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子の平均真球度を走査電子顕微鏡による観察を行うことで実施した。平均真球度の算出には、電子顕微鏡写真中において任意に選ばれた100個のポリビニルアセタール樹脂微粒子について個々の微粒子の真球度をイメージアナライザーによる画像解析を行うことで測定し、それらの平均値を算出することによって評価した。
(3)水分散性評価
得られたポリビニルアセタール樹脂微粒子1重量部を水9重量部に添加した後、超音波を照射しポリビニルアセタール樹脂微粒子が分散した水系分散液を作製した。本分散液を24時間放置し、以下の基準でポリビニルアセタール微粒子の分散性を評価した。
◎:沈降物がなく、完全に分散していた。
○:ごく一部の沈降物が見られたが、概ね分散していた。
×:全てが沈降していた。
(4)再分散性評価
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液について、遠心分離機によってポリビニルアセタール微粒子を沈降させた後、撹拌によって微粒子が再分散可能かを以下の基準で評価した。
◎:撹拌時間10分未満で完全に分散した。
○:撹拌時間10分以上、1時間以内で完全に分散した。
×:分散しなかった。
(5)皮膜均一性評価
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水系分散液をPETフィルム上に塗布し、80℃で60分、次いで160℃で15分乾燥させることでPETに積層されたポリビニルアセタールフィルムを得た。得られたポリビニルアセタールフィルムをPETから剥がし、顕微鏡により観察し、以下の基準で皮膜均一性を評価した。
◎:ボイド及び凹凸が全く見られなかった。
○:ボイドは見られなかったが凹凸が見られた。
×:ボイド及び凹凸が見られた。
(6)被膜強度
得られたポリビニルアセタールフィルムをPETから剥がし、ポリビニルアセタールフィルムの引っ張り試験を行い、破断応力及び伸度について測定した。
Figure 2014050795
本発明によれば、水を含有する分散媒に対する分散安定性に優れるとともに、塗膜としたときにボイド及び凹凸等の不均一性が発生せず、充分な機械的強度、及び、柔軟性を有する膜を作製することが可能な水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を用いた水系分散液、並びに、該水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の製造方法を提供することができる。

Claims (14)

  1. 水系分散液の分散質として用いられる水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子であって、
    イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂からなり、体積平均粒子径が10nm〜100μm、かつ、体積粒子径分布のCV値が40%以下である
    ことを特徴とする水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子。
  2. ポリビニルアセタール微粒子の平均真球度が0.9以上であることを特徴とする請求項1記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子。
  3. イオン性官能基は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、及び、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項1又は2記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子。
  4. イオン性官能基は、スルホン酸基又はスルホン酸基の塩であることを特徴とする請求項3記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子。
  5. ポリビニルアセタール樹脂は、イオン性官能基を有するグラフト鎖を含むグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子。
  6. グラフト鎖は、(メタ)アクリル系モノマーの重合体からなることを特徴とする請求項5記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子。
  7. ポリビニルアセタール樹脂は、ポリマーの主鎖を構成する炭素にイオン性官能基が結合した鎖状分子構造を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子。
  8. ポリビニルアセタール樹脂は、下記一般式(1)に示す構造単位を有することを特徴とする請求項7記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子。
    Figure 2014050795
    式(1)中、Cはポリマー主鎖の炭素原子を表し、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1以上のアルキレン基を表し、Rはイオン性官能基を表す。
  9. が水素原子、Rがメチレン基、Rがスルホン酸基又はスルホン酸基の塩であることを特徴とする請求項8記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子。
  10. ポリビニルアセタール樹脂のイオン性官能基の含有量が0.01〜1mmol/gであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子。
  11. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を、水を含有する分散媒中に分散してなることを特徴とする水系分散液。
  12. 更に、可塑剤を含有することを特徴とする請求項11記載の水系分散液。
  13. 可塑剤はポリビニルアセタール微粒子中に含浸されていることを特徴とする請求項12記載の水系分散液。
  14. 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子を製造する方法であって、
    イオン性官能基を有するポリビニルアセタール樹脂を作製する工程を行った後、前記ポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解する工程、及び、ポリビニルアセタール微粒子を析出させる工程を有することを特徴とする水系分散液用ポリビニルアセタール微粒子の製造方法。
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