JP2016074821A - 重合体微粒子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】重合時のモノマー濃度が高い条件下においても、粒度分布が狭く、2〜3μm以下程度の小さな平均粒子径を有する、粒子径の揃った、高品質の重合体微粒子を、重合体微粒子間の凝集等を生ずることなく、円滑に製造する方法を提供する。
【解決手段】分散安定剤の存在下に、ビニル単量体を、該ビニル単量体及び該分散安定剤を溶解するが、生成する重合体を溶解しない親水性溶媒中で重合する工程を備える、重合体微粒子を製造する方法であって、
上記分散安定剤が、分子鎖の途中にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有するマクロモノマーを含有するものであり、
上記マクロモノマーが、1分子当り平均して1.4〜2.5個のエチレン性不飽和基を有し、且つ、その分子量分布が2.0以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、重合体微粒子の製造方法に関する。より詳細には、分散重合法によって、粒度分布が狭くて粒径の均一なミクロンサイズの重合体微粒子を、特定の分散安定剤を使用して、円滑に生産性よく製造する方法に関する。
ビニル単量体を、分散安定剤の存在下に、ビニル単量体を溶解するが、生成する重合体を実質的に溶解しない溶媒中で重合して重合体を製造する分散重合法によれば、比較的狭い粒度分布を有する、ミクロンサイズの重合体微粒子が得られることが知られている。
分散重合法では、重合溶媒として、親水性溶媒又は非親水性溶媒が用いられる。親水性溶媒中で分散重合を行う際には、従来、分散安定剤として、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール及びポリアクリル酸等の高分子分散安定剤が用いられている。また、ポリエチレンオキシド鎖の末端にラジカル重合性官能基を有するマクロモノマーを分散安定剤として用いて分散重合する方法が知られている(特許文献1)。
しかしながら、上記分散重合技術では、目的とする粒子径及び粒度分布を有する重合体微粒子を製造するのに、比較的多量の分散安定剤を使用する必要がある。また、それに伴って得られる重合体微粒子には、分散安定剤が多く残留し、重合体微粒子の性能に悪影響を及ぼし易い。しかも、分散安定剤による分散安定化が不十分で、生成した重合体微粒子間に凝集が生じ易い。更に、上記した従来の分散重合技術では、重合により生成した重合体微粒子間での凝集を防止するために、ビニル単量体の濃度を低くして重合を行う必要があるため、生産性が低い。
重合時の凝集防止に効果的な分散安定剤として、本発明者らは、カルボキシル基を有し、かつ、ポリマー末端にビニリデン型の不飽和結合を有するマクロモノマーを開示している(特許文献2)。さらに、円滑な分散重合に有効な分散安定剤として、分子鎖の途中にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有するマクロモノマーを含む分散安定剤(特許文献3)、並びに、分子鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有し、かつ分子鎖の途中にカルボキシル基を有するマクロモノマーを開示している(特許文献4)。
特開平9−157307号公報 特開2004−149569号公報 国際公開2010/047287号パンフレット 国際公開2010/047305号パンフレット
粒度分布が狭くて均一な粒径を有する、ミクロンサイズの重合体微粒子は、光拡散剤、アンチグレア剤(艶消し剤)、アンチブロッキング剤、スペーサ等の用途に使用されており、近年、上記したいずれの用途においても高精細化への対応が求められている。それに伴って、粒子径のより小さい重合体微粒子が必要となるケースが多くなっている。特許文献2に記載された分散安定剤(マクロモノマー)を用いた場合には、得られる重合体微粒子の粒子径が2〜3μmよりも大きくなり易く、粒子径のより小さな重合体微粒子を得るためには、分散安定剤(マクロモノマー)の使用量を多くする必要があり、得られる重合体微粒子の性能の低下防止、コスト上昇の抑制等の点から改善の余地があることが判明した。
また、特許文献3及び4に記載された分散安定剤は、親水性溶媒中での分散重合反応において優れた分散安定化効果を発揮し、少量の使用でも粒子径が小さく、かつ粒度分布が狭い重合体微粒子を安定に製造することができる。
しかしながら、生産性のさらなる向上等の目的から、より高いモノマー濃度条件下の重合について検討したところ、モノマー濃度が20重量%を超えるような条件下では、重合が不安定化する傾向が見られることが判明した。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、重合時のモノマー濃度が高い条件下においても、粒度分布が狭く、2〜3μm以下程度の小さな平均粒子径を有する、粒子径の揃った、高品質の重合体微粒子を、重合体微粒子間の凝集等を生ずることなく、円滑に製造する方法を提供することである。
更に、本発明の目的は、分散安定剤の多用による重合体微粒子への悪影響を防止しながら、低コストで、円滑に、単分散性に優れる、高品質な微細な重合体微粒子を円滑に生産性よく製造する方法を提供することである。
また、本発明の目的は、上記した優れた特性を有する、分散重合による重合体微粒子を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、分子鎖の途中にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するマクロモノマーであって、特定範囲のエチレン性不飽和基数及び分子量分布を有するものを分散安定剤として使用した場合に、モノマー濃度の高い条件下であっても、粒度分布が狭くて、均一なサイズの重合体微粒子を、重合体微粒子間の凝集等を生ずることなく、円滑に製造できることを見出した。また、この場合、分散安定剤として当該マクロモノマーをごく少量使用するだけでよいため、洗浄等により過剰な分散安定剤を除去する必要がなく、より高い生産性、より低いコストで、物性及び取り扱い性に優れた重合体微粒子を製造できることも見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に示される。
1.分散安定剤の存在下に、ビニル単量体を、該ビニル単量体及び該分散安定剤を溶解するが、生成する重合体を溶解しない親水性溶媒中で重合する工程を備える、重合体微粒子を製造する方法であって、
上記分散安定剤が、分子鎖の途中にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有するマクロモノマーを含有するものであり、
上記マクロモノマーが、1分子当り平均して1.4〜2.5個のエチレン性不飽和基を有し、且つ、その分子量分布が2.0以下である、
ことを特徴とする重合体微粒子の製造方法。
2.上記マクロモノマーが、(メタ)アクリロイル基を含む上記1.に記載の重合体微粒子の製造方法。
3.上記マクロモノマーの数平均分子量が、1000〜10000g/molである上記1.又は2.に記載の重合体微粒子の製造方法。
4.上記マクロモノマーにおけるカルボキシル基の含有量の平均値が、0.1〜9.0meq/gである上記1.〜3.のいずれかに記載の重合体微粒子の製造方法。
5.上記1.〜4.のいずれかの製造方法で得られた重合体微粒子であって、
体積平均粒子径が0.7〜3.0μmであり、
体積平均粒子径(dv)/数平均粒子径(dn)が1.2以下であり、
粒子径0.1μm以上の重合体微粒子1000個当りの副生小粒子の数が500個以下である、
ることを特徴とする重合体微粒子。
本発明の方法によれば、反応系における、特定のマクロモノマーの極めて優れた分散安定化性能により、モノマー濃度が20重量%を超えるような高モノマー濃度条件下においても、粒子径が小さく、且つ、粒子径のばらつきが小さい重合体微粒子を効率よく製造することができる。そして、マクロモノマーのごく少量の使用で、粒度分布が狭くて、均一なサイズを有する、極めて微細な重合体微粒子を、重合体微粒子間の凝集等を生ずることなく、良好な分散安定性を維持しながら、円滑に、生産性よく、低コストで製造することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
「マクロモノマー」に含まれるカルボキシル基は、−COOH及び/又は−COO-を意味する。
また、重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、後述する〔実施例〕における条件下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
本発明は、分散重合法を利用した、第1重合工程を備える方法によって、重合体微粒子を製造する方法である。より詳細には、本発明では、分子鎖の途中にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有するマクロモノマーであって、1分子当り平均して1.4〜2.5個のエチレン性不飽和基を有し、且つ、その分子量分布が2.0以下であるマクロモノマーを含有する分散安定剤の存在下に、ビニル単量体を、このビニル単量体及びこの分散安定剤を溶解するが、生成する重合体を溶解しない親水性溶媒中で重合する工程(第1重合工程)を備える、重合体微粒子の製造方法である。本発明においては、第1重合工程の後、必要に応じて、加水分解工程、分離工程、精製工程、他の重合工程等を行ってもよい。
本発明に係る第1重合工程では、重合溶媒として、親水性溶媒を用いるので、この工程により生成した重合体からなる微粒子は、親水性溶媒を含む重合溶媒中に分散している。
本発明では、重合溶媒として、親水性溶媒を用いる。上記親水性溶媒は、後述するビニル単量体及び分散安定剤を溶解するが、生成する重合体を溶解しない化合物であれば、特に限定されない。この親水性溶媒としては、親水性の有機溶媒(水を含有しない親水性有機溶媒)、又は、親水性の有機溶媒と水との混合溶媒が用いられる。その際に、親水性の有機溶媒としては、20℃での水への溶解度が5g/100ml以上であるものが好ましく用いられる。
上記した親水性の有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のモノアルコール類;エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコール類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。親水性の有機溶媒は、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記第1重合工程において、親水性溶媒は、重合に使用するビニル単量体の種類、生成する重合体の種類等に応じて、上記した親水性の有機溶媒の中から、適切に選択して使用する。
そのうちでも、親水性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが、好ましい。これらのアルコールを用いることにより、特定のマクロモノマーを含む分散安定剤の分散安定化作用を有効に発揮させて、粒子径の小さな重合体微粒子を安定に製造することができる。
本発明に係る第1重合工程では、親水性溶媒中で、特定のマクロモノマーを含む分散安定剤の存在下に、ビニル単量体の分散重合を行うことにより、疎水性溶媒中で重合した場合に比べて、重合安定性を良好に維持しながら、生成する重合体微粒子の粒子径、粒度分布、分子量等を容易に且つ円滑に制御することができる。
本発明では、親水性溶媒は、好ましくは、水とアルコールとを含む混合溶媒であり、そのうちでも、水と、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールから選ばれた少なくとも1種とからなる混合溶媒がより好ましい。親水性溶媒として、水と上記したアルコールとの混合溶媒を用いる場合、ビニル単量体の種類、組成等に応じて、水とアルコールとの混合比率を調整することで、生成する重合体微粒子の粒子径、粒度分布、分子量等を容易にコントロールすることができる。また、引火、爆発等の危険性を低減することができ、環境への負荷も小さい。
特に、親水性溶媒として、水とメタノールとの混合溶媒、そのうち、水:メタノールの質量比が10:90〜50:50、更には20:80〜40:60である混合溶媒を用いると、粒子径がより小さくて且つ粒度分布の狭い重合体微粒子を円滑に製造することがで
きるので、一層好ましい。
尚、第1重合工程において用いる親水性溶媒は、その一部を、20℃での水への溶解度が5g/100ml未満の疎水性溶媒に置き換えて使用してもよい。この場合、疎水性溶媒の割合は、溶媒の全量に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。疎水性溶媒の含有割合が30質量%を超える場合、生成粒子の粒度分布が広くなったり、第1重合工程において、凝集物が生成する場合がある。
本発明に係る第1重合工程では、ビニル単量体の分散重合時の分散安定剤として、分子鎖の途中にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する特定のマクロモノマー(以下、「マクロモノマー(Ma)」ともいう)を含む分散安定剤を使用する。この分散安定剤におけるマクロモノマー(Ma)の含有割合は、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%である。マクロモノマー(Ma)の含有量が少なすぎると、本発明の効果が十分に得られない場合がある。
また、上記分散安定剤は、他の重合体を含んでもよい。即ち、上記分散安定剤は、マクロモノマー(Ma)及び他の重合体からなる重合体組成物(重合体からなる混合物)とすることができる。上記分散安定剤が他の重合体を含む場合、マクロモノマー(Ma)の含有割合は、全重合体に対して、好ましくは10〜100質量%、より好ましくは30〜100質量%である。
他の重合体としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、ピロリドン基、モルホリン基等の官能基を有する重合体等が挙げられる。
尚、上記分散安定剤は、マクロモノマー(Ma)又は重合体組成物と、ビニル単量体の分散重合を阻害しない添加剤と、からなるものであってもよい。
上記マクロモノマー(Ma)は、分子鎖の途中にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する重合体である。尚、このマクロモノマー(Ma)において、含まれるカルボキシル基及びエチレン性不飽和基は、マクロモノマー(Ma)を構成している分子鎖(重合体鎖)の末端ではなくて、分子鎖(重合体鎖)の途中の位置に少なくとも結合(存在)している。
マクロモノマー(Ma)に含まれる、エチレン性不飽和基を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、スチリル基等を挙げることができる。尚、マクロモノマー(Ma)は、これらの基の1種又は2種以上を有することができる。また、エチレン性不飽和基を、分子鎖の途中及び末端の両方に存在するマクロモノマーを、上記マクロモノマー(Ma)として用いることもできる。
エチレン性不飽和基を有する基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。分子鎖の途中にカルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(Ma)を用いると、ビニル単量体の反応性及び分散安定化性能を向上させることができる。そして、マクロモノマー(Ma)を含む分散安定剤のより少量の使用で、粒度分布が狭くて、均一なサイズの、微細な重合体微粒子を、重合体微粒子間の凝集等を生ずることなく安定に製造することができる。
また、上記マクロモノマー(Ma)に含まれるエチレン性不飽和基は、マクロモノマー(Ma)の分子鎖の途中に直接結合していてもよいし、マクロモノマー(Ma)の分子鎖の途中に所定の結合基を介して懸垂状態で結合してもよい。更には、これら2つの結合形式が混在していてもよい。
マクロモノマー(Ma)に含まれる、エチレン性不飽和基を有する基の数は、1分子当り平均して1.4〜2.5個であり、好ましくは1.6〜2.2個、より好ましくは1.6〜2.0個である。エチレン性不飽和基の含有量が上記範囲にあれば、分散安定剤の効果が十分に発揮される。
エチレン性不飽和基の含有量が少なすぎると、分散安定化性能が低くなり、重合が不安定になりやすい。また得られた重合体粒子に凝集物が混在する恐れがある。
一方、エチレン性不飽和基の含有量が多すぎると、ビニル単量体を分散重合して得られる重合体微粒子の粒度分布が広くなり、サイズが不揃いになり易い。
一方、上記マクロモノマー(Ma)に含まれるカルボキシル基は、少なくとも、分子鎖の途中に存在し、分子鎖の途中及び末端の両方に存在してもよい。また、このカルボキシル基は、マクロモノマー(Ma)の分子鎖の途中に直接結合していてもよいし、マクロモノマー(Ma)の分子鎖の途中に所定の結合基を介して懸垂状態で結合してもよい。更には、これら2つの結合形式が混在していてもよい。
本発明では、マクロモノマー(Ma)の分子鎖の途中に含まれるカルボキシル基の含有量は特に制限されるものではないが、マクロモノマー(Ma)1gにつき好ましくは0.1〜9.0meqであり、より好ましくは0.3〜5.0meqであり、さらに好ましくは0.5〜2.5meqである。カルボキシル基の含有量が0.1meq/g以上であれば良好な分散安定性を示し、9.0meq/g以下であれば小粒子の副生が抑制され、粒度分布が狭く、サイズの揃った重合体微粒子が得られる傾向がある。
マクロモノマー(Ma)が分子鎖の途中に有するカルボキシル基は、塩基によって中和されていることが好ましい。カルボキシル基は、中和によって親水性溶媒中でカルボキシルアニオンに解離して、静電反発作用を生じ、それによって、マクロモノマー(Ma)を含む分散安定剤の分散安定化性能が一層向上して、より少量の分散安定剤で重合体微粒子間の凝集を抑制することが可能となり、より安定に重合体微粒子を製造することが可能となる。
カルボキシル基の中和剤としては、重合体微粒子製造後の除去が容易であること等から、アンモニア及び/又は低沸点アミン化合物が好ましく用いられる。
マクロモノマー(Ma)は、鎖状の分子構造を有する鎖状重合体であることが、分散安定化効果が高いこと、製造が容易であること、取り扱い易いこと等の観点から好ましい。マクロモノマー(Ma)が鎖状重合体である場合、その鎖状構造としては、直鎖状、分岐鎖状、星形、櫛形等のいずれであってもよく、そのうちでも、直鎖状であるか又はほぼ直鎖状であることが、マクロモノマー(Ma)の分散安定化性能、製造の容易性、取り扱い易さ等の点から好ましい。
上記マクロモノマー(Ma)としては、分子鎖の途中にカルボキシル基を有する重合体(A)のカルボキシル基の一部に、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、「化合物(α)」という)を付加反応させて得られたマクロモノマー(以下、「マクロモノマー(Ma1)」という)が好ましい。このマクロモノマー(Ma1)は、構造設計の自由度が高く、第1重合工程における分散化安定性能に優れる。
また、マクロモノマー(Ma)の数平均分子量(Mn)は、分散安定化性能、取り扱い性、製造の容易性等の点から、好ましくは1,000〜10,000であり、より好ましくは2,000〜5,000である。
また、マクロモノマー(Ma)の分子量分布、すなわち、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)は、小粒子の副生を抑える観点から2.0以下とする必要があり、好ましくは1.9以下であり、より好ましくは1.8以下である。
マクロモノマー(Ma)の製造方法は、特に限定されない。例えば、マクロモノマー(Ma)がマクロモノマー(Ma1)である場合、前駆体としての、分子鎖の途中にカルボキシル基を有する重合体(A)と、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(α)とを反応させればよい。
上記重合体(A)において、カルボキシル基は、重合体(A)の分子鎖の途中に直接結合していてもよいし、重合体(A)の分子鎖の途中に所定の結合基を介して懸垂状態で結合してもよいし、上記2つの結合形態が混在していてもよい。
また、上記重合体(A)は、分子鎖の途中にカルボキシル基を有する、鎖状の分子構造をなす重合体であることが好ましい。
上記重合体(A)の製造方法は、特に限定されないが、カルボキシル基を有するビニル単量体の単独重合又は共重合、及び、カルボキシル基を有するビニル単量体とその他のビニル単量体との共重合が、重合体の分子量、組成等の設計の自由度が大きく、分散安定剤としてより高性能のマクロモノマー(Ma1)を得ることができる点から、好ましい。
重合体(A)の製造に用いるカルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸のマイケル付加反応生成物である2量体以上のオリゴマー;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体(A)を製造するためにカルボキシル基を有するビニル単量体と共重合させ得る他のビニル単量体としては、カルボキシル基を持たないビニル単量体が使用できる。この単量体は、親水性単量体であってよいし、疎水性単量体であってもよい。そのうち、疎水性のビニル単量体が好ましい。疎水性のビニル単量体に由来する構造単位を有する重合体(A)中のカルボキシル基の一部に、上記化合物(α)を付加反応させると、得られるマクロモノマー(Ma1)による分散安定化性能をより優れたものとすることができる。
カルボキシル基を有するビニル単量体と共重合させ得る疎水性のビニル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸パーフロロアルキル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、α−メチルアクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;酢酸ビニル等のカルボン酸のビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の不飽和ハロゲン化合物;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類等を挙げることができる。これらの化合物は、単
独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
上記重合体(A)としては、カルボキシル基を有するビニル単量体及び疎水性のビニル単量体の共重合体が好ましい。特に、カルボキシル基を有するビニル単量体及び疎水性ビニル単量体の共重合割合が、質量比で、好ましくは95:5〜10:90、更に好ましくは80:20〜20:80である、カルボキシル基を有する共重合体が、好ましい。この共重合体を用いると、分散安定化性能に優れるマクロモノマー(Ma1)が円滑に得られる。具体的な共重合体としては、カルボキシル基を有するビニル単量体として、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を用い、他の単量体として、(メタ)アクリル酸エステル及びスチレンから選ばれる1種以上の疎水性ビニル単量体を用いた共重合体が挙げられる。この共重合体は、分散安定化性能、得られる重合体微粒子の物性等の点から好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等の、(メタ)アクリル酸の脂肪族低級アルコールエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の、(メタ)アクリル酸の脂環族アルコールエステル、等が好ましい。特に(メタ)アクリル酸の脂肪族低級アルコールエステルが分散安定化効果に優れるマクロモノマー(Ma1)を生成する点から好ましく用いられる。
重合体(A)に含まれるカルボキシル基当量(重合体(A)1g当たりのカルボキシル基のモル数)は、好ましくは0.1〜9.0meq/gであり、より好ましくは1.0〜4.0meq/gである。
また、重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜5,000である。上記数平均分子量(Mn)を有する重合体(A)を用いることにより、分散安定化性能、取り扱い性、得られる重合体微粒子の物性等に優れるマクロモノマー(Ma1)を形成することができる。
重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.9以下であり、さらに好ましくは1.8以下である。上記(Mw/Mn)を有する重合体(A)を用いることにより、重合体微粒子を製造する際に小粒子の副生を抑制することが可能なマクロモノマー(Ma1)を形成することができる。
重合体(A)の製造に当たっては、分子量調整剤を用いてもよく、分子量調整剤としては、例えば、チオグリコール酸オクチル、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプト化合物を挙げることができる。
重合体(A)を得るための重合法としては、乳化重合法が好ましい。乳化重合法は、重合速度が大きく、重合体における組成分布を狭くすることができる。そして、重合体(A)がサブミクロンサイズの微粒子として得られるため、重合体(A)への化合物(α)の付加反応を極めて短時間で完結することができる。
重合体(A)を得るための乳化重合は、カルボキシル基を有するビニル単量体を単独で用いるか、またはカルボキシル基を有するビニル単量体と他のビニル単量体を用いて、水中又は水性媒体中で従来汎用の乳化重合と同様の方法、重合条件等を採用して実施することができる。他のビニル単量体として、上記疎水性ビニル単量体を使用することが乳化重合を安定に実施できる点から好ましい。乳化重合に当たっては、重合体微粒子を製造するための第1重合工程(分散重合)で用いるのと同様の後記する有機過酸化物、アゾ系化合物、過硫酸系化合物等の重合開始剤(重合触媒)を用いることができる。また、必要に応じて、乳化剤を用いてもよい。重合開始剤切片による安定化効果により乳化剤を用いることなく、安定に乳化重合を行うことができる点から、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸系化合物を開始剤とすることがより好ましい。
また、化合物(α)は、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物である。
化合物(α)が有するエチレン性不飽和基を含む基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、イソプロペニル基、スチリル基等を挙げることができる。そのうちでも、反応性及び分散安定化効果の高いマクロモノマー(Ma1)が得られる点から、化合物(α)が(メタ)アクリロイル基を含むことが好ましい。
化合物(α)の好ましい具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体(A)に、エポキシ基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(α)を反応させると、重合体(A)の分子鎖の途中に存在するカルボキシル基の一部に、化合物(α)中のエポキシ基が付加されて、重合体(A)の分子鎖の途中にエチレン性不飽和基が導入されたマクロモノマー(Ma1)が得られる。即ち、分子鎖の途中にカルボキシル基と共にエチレン性不飽和基を有するマクロモノマー(Ma1)が生成される。尚、反応系には、マクロモノマー(Ma1)と、未反応の重合体(A)とが存在する場合があり、通常、共存する。本発明においては、これらの重合体からなる混合物を分散安定剤として用いることができる。
上記重合体(A)を乳化重合により製造した場合、重合体(A)への化合物(α)の付加反応は、重合体(A)の微粒子分散液を用いて行うことができる。重合体(A)を製造した後、その分散状態(サスペンジョン状態)を維持したままで、重合体(A)の分散液に化合物(α)を添加して行うことが、好ましい。これにより、重合体(A)の粒子内で付加反応が進行するため、極めて反応速度が速く、しかも化合物(α)と水との副反応が抑制される。また、使用する溶媒が水であり、コスト、環境の面、更に分散重合段階で他の有機溶媒を持ち込むことがない点でも好ましい。
重合体(A)への化合物(α)の付加反応に際して、化合物(α)の付加反応量は、重合体(A)1モルに対して、好ましくは1.6〜2.2モル(即ち、1.6〜2.2当量)、より好ましくは1.6〜2.0モル(1.6〜2.0当量)である。尚、重合体(A)のモル数は、実際に使用した重合体(A)の質量を、重合体(A)の数平均分子量(Mn)で除す(割る)ことにより求めることができる。
即ち、重合体(A)1モルに対する化合物(α)の付加モル数は、マクロモノマー(Ma1)の、1分子当たり(ポリマー鎖1本当たり)のエチレン性不飽和基の平均導入率(f値)を意味する。尚、実際には、重合体(A)1分子当たりの化合物(α)の付加反応量は、分布を有し、化合物(α)が付加反応していない未反応の重合体(A)も存在し、組成物を構成することになる。
得られたマクロモノマー(Ma1)を含有する重合体組成物(重合体からなる混合物)において、マクロモノマー(Ma1)を含む重合体全体における、重合体1分子当たりのエチレン性不飽和基の含有量の平均は1.4〜2.5個であり、好ましくは1.6〜2.2個、より好ましくは1.6〜2.0個である。
尚、上記分散安定剤を、この重合体組成物又はマクロモノマー(Ma)を用いて調製する場合、上記のように、更に他の重合体を配合してもよい。この場合、分散安定剤に含まれる重合体全体に対して算出された、重合体1分子当たりのエチレン性不飽和基の含有量の平均は1.4〜2.5個であり、好ましくは1.6〜2.2個、より好ましくは1.6〜2.0個である。エチレン性不飽和基の含有量が上記範囲にあれば、分散安定剤の効果が十分に発揮される。
エチレン性不飽和基の含有量が少なすぎると、分散安定化性能が低くなり、得られる重合体微粒子の物性の低下等が生じ易くなる。
一方、エチレン性不飽和基の含有量が多すぎると、ビニル単量体を分散重合して得られる重合体微粒子の粒度分布が広くなり、サイズが不揃いになり易い。
また、重合体(A)に化合物(α)を反応させて得られた、マクロモノマー(Ma1)を含有する重合体組成物においては、マクロモノマー(Ma1)を含む重合体全体のカルボキシル基の含有量の平均値D(単位:meq/g)は、重合体(A)への化合物(α)の付加率に基づいて、以下の数式(1)から求められる。
D=(X−Z)/(100+Y) (1)
式中、
X=重合体(A)のカルボキシル基量(meq/g)×100
=重合体(A)100質量部当たりのカルボキシル基量(meq)
Y={重合体(A)100質量部当たりの化合物(α)の仕込み量}×{重合体(A)への化合物(α)の反応率}
Z={Y/化合物(α)の分子量}×1000
=重合体(A)100質量部に付加した化合物(α)の量(meq)
である。
重合体(A)への化合物(α)の付加反応に当たっては、付加反応速度を大きくするために、触媒として、3級アミン化合物、4級アンモニウム塩化合物、ホスフィン化合物等を使用することができる。特に、トリエチルアミン等の3級アミン化合物は、重合体(A)が有するカルボキシル基の中和剤としての役割も果たすため、好ましく用いられる。特に、水媒体中で付加反応を実施する場合には、化合物(α)が水と付加反応する副反応が低減されることから、触媒を用いることがより好ましい。
重合体(A)が有するカルボキシル基の一部に、化合物(α)を付加反応させて得られるマクロモノマー(Ma1)中に残存するカルボキシル基は、上記したように塩基によって中和することによって、分散安定剤としての性能を一層向上させることができる。
反応条件は、限定されるものではないが、重合体(A)への化合物(α)の付加反応は、重合体(A)の溶液又は分散液に、化合物(α)を添加して、通常、50℃〜120℃に加熱することによって行われる。
重合体(A)への化合物(α)への付加反応により得られる、マクロモノマー(Ma1)を含む重合体組成物は、極めて優れた分散安定化性能を有する。即ち、上記マクロモノマー(Ma)を含む分散安定剤の存在下に、親水性溶媒を含む重合溶媒中でビニル単量体を分散重合することによって、マクロモノマー(Ma)の分子鎖の途中に有するエチレン性不飽和基が、ビニル単量体と共重合して、ビニル単量体の重合により生成した重合体微粒子に極めて高い分散安定性を付与することができる。かかる高い分散安定性は、エチレン性不飽和基がマクロモノマー(Ma)の分子鎖の途中に位置すること、更にマクロモノマー(Ma)がその分子鎖の途中にカルボキシル基をも有していることによって達成されるものである。
次に、第1重合工程において、重合体微粒子を製造するためのビニル単量体について、説明する。
上記ビニル単量体としては、重合前は親水性溶媒に溶解するが、重合後は親水性溶媒に溶解しないビニル単量体が使用可能である。
分散重合に使用するビニル単量体は、親水性溶媒の種類や組成等によって、適宜、選択されるが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;加水分解性シリル基を有するビニル単量体等が挙げられる。これらの単量体は、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの単量体は、得られる重合体微粒子の性能が優れる点から、好ましい。
ビニル単量体として好ましく用いられる上記した(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸の脂環基含有エステル;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の(メタ)アクリル酸の複素環基含有エステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸のアルコキシアルキルエステル;ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の(メタ)アクリル酸の多価アルコールエステル;(メタ)アクリル酸アリル等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記した加水分解性シリル基を有するビニル単量体としては、加水分解性シリル基を少なくとも1個有するビニル単量体であれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル等のシリル基含有アクリル酸エステル類;メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有メタクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
そのうちでも、加水分解性シリル基を有するビニル単量体としては、加水分解性シリル基含有アクリル酸エステル、及び、加水分解性シリル基含有メタクリル酸エステルが好ましく、特にメタクリル酸トリエトキシシリルプロピル(トリメトキシシリルプロピルメタクリレート)等が好ましい。
生成する重合体微粒子間の凝集を防止しながら、分散重合を円滑に行って、粒度分布の狭い、均一なサイズの、物性、取り扱い性等に優れる重合体微粒子を得るためには、上記ビニル単量体は、(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。この(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、重合体微粒子の製造に用いるビニル単量体の全質量に基づいて、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。その際の(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜12のアルキルエステル又は炭素数3〜12のシクロアルキルエステルが好ましい。特に、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルが、得られる重合体微粒子の性能が優れる点から好ましく用いられる。
重合体微粒子の製造に当たって、エチレン性不飽和基(ビニル基)を2個以上有する多官能ビニル単量体及び/又は加水分解性シリル基を有するビニル単量体、を使用すると、耐熱性や耐溶剤性に優れる重合体微粒子を製造することができる。
上記ビニル単量体が多官能ビニル単量体を含む場合、第1重合工程において、架橋した重合体からなる微粒子を製造することができる。
また、上記ビニル単量体が加水分解性シリル基を有するビニル系単量体を含む場合、第1重合工程において、シロキサン架橋による架橋重合体からなる微粒子を含むことがあるが、通常、未架橋の重合体(加水分解性シリル基を有する重合体)からなる微粒子が製造される。この第1重合工程の後、後述するような加水分解工程を行うことにより、架橋された重合体からなる微粒子を得ることができる。
得られた微粒子が、架橋された重合体からなるものであると、メチルエチルケトン等の有機溶剤に対して、溶解若しくは形態変化が少ない、又は、ない。従って、架橋された重合体からなる微粒子は、耐溶剤性や耐熱性が要求される用途において、好適に使用することができる。
第1重合工程において、エチレン性不飽和基を2個以上有する多官能ビニル単量体を使用すると、重合の進行とともに架橋反応も進行する。そのため、多官能ビニル単量体の割合が多いと、重合体微粒子が凝集しやすくなる。多官能ビニル単量体を用いて架橋した重合体微粒子を製造する場合は、多官能ビニル単量体の使用割合を、重合体微粒子の製造に用いるビニル単量体の全量に対して0.5〜10質量%とすることが好ましい。
多官能ビニル単量体としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の(メタ)アクリル酸の多価アルコールエステル、(メタ)アクリル酸アリル等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
そのうちでも、分散重合時における重合体微粒子間の凝集の抑制が容易である点から、(メタ)アクリル酸アリルが好ましい。
第1重合工程において、加水分解性のシリル基を有するビニル単量体を用いる場合は、分散重合時に反応液のpHを中性付近に保つことで重合時の架橋反応を抑制することができる。そして、重合後に、酸触媒又は塩基性触媒を添加して、未架橋の重合体微粒子中に存在する加水分解性シリル基の加水分解−縮合−シロキサンの形成反応を行わせることで、架橋した重合体微粒子を得ることができる。触媒としては、アンモニア、トリエチルアミン等の低沸点塩基性化合物が好ましい。これらの化合物を用いると、加水分解縮合反応後に除去が容易である。
加水分解性シリル基を有するビニル単量体を用いて架橋した重合体微粒子を製造する場合、加水分解性シリル基を有するビニル単量体の使用割合は、ビニル単量体の全量に対して、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%である。
加水分解性シリル基を有するビニル単量体としては、上記で挙げた化合物を、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
第1重合工程においては、マクロモノマー(Ma)を含む分散安定剤の存在下に、ビニル単量体を親水性溶媒中で分散重合する。
重合方法としては、ビニル単量体を一括して反応器に仕込んで分散重合する回分重合法、ビニル単量体を分割して反応器に仕込んで分散重合する分割重合法、ビニル単量体を反応器に連続的に添加して分散重合する連続添加重合法(半回分重合法)等が挙げられる。重合熱の制御が必要な場合には、連続添加重合法を採用することが好ましい。
ビニル単量体を分散重合して重合体微粒子を製造する際の、マクロモノマー(Ma)を含む分散安定剤(固形分)の使用量は、分散重合に用いるビニル単量体の全量に対して、好ましくは0.2〜10質量%、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。マクロモノマー(Ma)を含む分散安定剤の使用量が少なすぎると、重合時の安定性が低下して生成した重合体の凝集等が生じ易くなる。一方、分散安定剤の使用量が多すぎると、生成する重合体微粒子の粒度分布が広くなって、サイズが不揃いになり易い。
ビニル単量体の分散重合時における親水性溶媒の使用量は、ビニル単量体の全量に対して、好ましくは1〜50質量倍、より好ましくは2〜10質量倍である。親水性溶媒の使用量が少なすぎると、分散重合時の重合安定性が不良となる場合があり、粒度分布が広くなり易い。一方、親水性溶媒の使用量が多すぎると、重合体微粒子の収率が低下し、生産性が悪くなり易い。
ビニル単量体を分散重合する際の重合開始剤としては、ラジカル重合において、通常、用いられている重合開始剤を使用することができ、特に制限されない。そのうちでも親水性溶媒に溶解するラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。本発明で用い得るラジカル重合開始剤としては、例えば、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)(V−501)等のアゾ系化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸系化合物等を挙げることができる。上記重合開始剤は、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシピバレート、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が、粒度分布狭い重合体微粒子を生産性よく製造できる点から好ましく用いられる。
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、製造する重合体微粒子の分子量、使用する重合開始剤の分解温度等を考慮して適宜決めることができる。一般的には、ビニル単量体の合計100質量部に対して、重合開始剤を0.1〜40質量部の量で使用することが好ましく、1〜10質量部の量で使用することがより好ましい。重合開始剤の使用量が少なすぎると、重合体微粒子の収率が低くなり易く、一方、重合開始剤の使用量が多すぎると、重合速度が大きくなりすぎて、分散重合を安定に行いにくくなる。
第1重合工程において、分散重合時の重合温度は、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは45℃〜70℃である。重合温度が低すぎると、ビニル単量体の重合速度が低くなって重合体微粒子を生産性よく製造できにくくなり、一方重合温度が高すぎると、生成した重合体微粒子間の凝集等が生じ易く、また重合体微粒子の粒度分布が広くなる。
本発明では、生成する重合体微粒子の分散安定性をより向上させ、粒度分布をより狭くするため、重合体微粒子に磁性、導電性を付与するため、もしくは重合体微粒子を着色するために、他の添加剤をマクロモノマー(Ma)よりなる分散安定剤と併用してもよい。他の添加剤としては、例えば、コバルト、鉄、アルミニウム等の金属やこれらの合金、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル等の金属酸化物からなる微粉体;カーボンブラックニグロシン染料、アニリンブルー等の顔料、染料類;高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等の陰イオン界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等の非イオン界面活性剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の高極性高分子化合物等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を用いることができる。
分散重合により生成した重合体微粒子は、親水性溶媒中に分散させたままで重合体微粒子の分散液の状態で使用してもよいし、親水性溶媒から分離回収して使用してもよい。
重合体微粒子を親水性溶媒から分離回収する方法としては、例えば、沈降分離法、遠心分離法、デカンテーション法等を採用することができ、更に必要に応じて洗浄、乾燥を行う。
本発明における第1重合工程においては、重合の開始とともに、生成した重合体が親水性溶媒に溶解せずに、次々に析出凝集する。その際にマクロモノマー(Ma)とビニル単量体の共重合により極めて分散安定化効果の高いグラフトポリマーも同時に効率よく生成するため、重合の極初期段階でより多くの安定粒子が形成される。更にビニル単量体の重合が進行する段階においては、初期に形成された安定粒子が重合の進行とともに成長する速度に合わせて、上記グラフトポリマー(マクロモノマー(Ma)とビニル単量体の共重合により生成)が主に成長粒子表面で生成する。そのため、粒子間の凝集、及び新粒子の発生が高度に抑制される。そして、モノマー濃度の高い条件下であっても、極めて単分散性に優れる、粒度分布の狭い重合体微粒子を再現性よく、安定に且つ簡便に製造することができる。また、本発明では、マクロモノマー(Ma)の効果により、従来の分散安定剤を使用した場合に比べ、より小さな(より多くの)初期安定化粒子を形成することが可能である。そして、その成長を安定に進行させることができるため、より小さく且つ単分散性に優れた重合体微粒子を製造することが可能となる。
第1重合工程により得られた重合体微粒子は、架橋処理等を行わずにそのままで使用しもよいし、必要に応じて更に架橋処理等を施してから使用してもよいし、或いは新たな官能基を導入する等の処理を施してもよい。
特に、上記重合体微粒子が、架橋されていない重合体微粒子である場合に、この重合体微粒子をシード粒子として用い、更に反応に供することができる。例えば、当該シード粒子に、多官能ビニル単量体を含むビニル単量体を吸収させた後、重合させることができる(第2重合工程)。この第2重合工程によって、耐熱性、耐薬品性、強度、耐溶剤性等の向上した架橋した重合体微粒子を得ることができる。
上記多官能ビニル単量体としては、重合性に優れる多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アリル化合物、多官能プロペニル化合物、ジビニルベンゼン等が好ましく用いられる。これらの化合物は、1種のみを用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性体のトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうち、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが、シード粒子への吸収が容易であること、更に架橋密度を高くすることが可能であること、及び重合安定性に優れる等の点から好ましく用いられる。
第1重合工程により得られた重合体微粒子からなるシード粒子に吸収させて重合させるビニル単量体は、上記した多官能ビニル単量体と共に単官能ビニル単量体を含有するビニル単量体混合物であることが、シード粒子へのビニル単量体の吸収及び重合安定性が良好になる点から好ましい。その際の単官能ビニル単量体としては、シード粒子(分散重合により得られる重合体微粒子)の製造に用いたビニル単量体と同じか又は近似したビニル単量体を用いることが、シード粒子の膨潤が良好に行われ、それによってシード粒子へのビニル単量体混合物の吸収を促進させて、架橋が十分になされた架橋した重合体微粒子が得られる点から好ましい。
第2重合工程において、第1重合工程により得られた重合体微粒子をシード粒子として用いることにより、架橋した重合体微粒子を製造する場合、シード粒子、及び、架橋性単量体を含むビニル単量体(ビニル単量体混合物)の使用割合は、シード粒子1質量部に対して、ビニル単量体(ビニル単量体混合物)が0.5〜10質量部であることが好ましく、0.7〜5質量部であることがより好ましい。その際に、ビニル単量体混合物の全質量に基づいて、多官能ビニル単量体の割合を3〜95質量%、特に5〜75質量%にすることが好ましい。
上記した本発明の分散重合で得られる重合体微粒子は、架橋していない重合体微粒子及び架橋した重合体微粒子のいずれの場合にも、一般に、その体積平均粒子径(dv)が10μm以下程度、好ましくは0.7〜3.0μmであって、極めて微小な粒子状をなし、しかも体積平均粒子径を数平均粒子径で除した(dv)/(dn)で表される値が1.2以下であって粒度分布が狭く、均一なサイズを有している。
本発明で得られる重合体微粒子では、その体積平均粒子径(dv)が1.0〜2.5μmであることが好ましく、1.0〜2.0μmであることがより好ましい。また、(dv)/(dn)が1.1以下であることが好ましく、本発明の方法により当該重合体微粒子を円滑に製造することができる。
ここで、本明細書における重合体微粒子の体積平均粒子径(dv)は、走査型電子顕微鏡を使用して重合体微粒子を写真撮影した粒子像に基づいて算出される体積平均粒子径(dv)であり、その詳細な算出方法は、以下の実施例に記載するとおりである。
本発明の分散重合法により得られる重合体微粒子は、ミクロンサイズの極めて微小な粒子径を有し、しかも粒度分布が狭くて均一なサイズを有し、単分散性で粒子間の凝集がなく、また架橋した重合体微粒子では耐熱性、耐薬品性、強度等にも優れている。従って、それらの特性を活かして、液晶表示用スペーサ、液晶表示用光拡散フィルム、拡散板等の光拡散剤、導電性微粒子、カラム用充填剤、診断薬用の担体等をはじめとして、種々の用途に好適に使用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
1.物性の評価方法
以下の例において、重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)、重合体(A)への化合物(α)の付加率、重合安定性、重合体微粒子の体積平均粒子径(dv)、数平均粒子径(dn)及び副生小粒子量の測定方法又は評価方法は、以下のとおりである。
1−1.重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で重合体(A)等の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。
具体的には、GPC装置として、東ソー社製「HLC−8220GPC」(型式名)を使用し、カラムとして、「TSK−GEL MULTIPORE HXL−M」(商品名)を4本使用して測定した。重合体をテトラヒドロフラン(THF)に溶解して濃度0.2重量%の溶液を調製した後、当該溶液100μLを、カラムに注入し、溶離液にTHF、カラム温度40℃、溶離液(THF)の流速1.0mL/分にて測定を行った。測定結果を、標準ポリスチレンにて作成した検量線を用いて解析し、ポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めた。
重合体(A)を測定する場合、その分散液より揮発分を除去して重合体(A)を単離した後、重合体(A)をテトラヒドロフランに溶解させ、得られた溶液(濃度5mg/ml)を用いた。
マクロモノマー(MM)を含む重合体組成物(重合体からなる混合物)を測定する場合、以下の方法で測定した。分散液を適量の塩酸を用いて酸性とした後、揮発分を除去した。次いで、不揮発分を回収して、水で洗浄した。その後、水を除去して、マクロモノマー(MM)を含む全重合体をテトラヒドロフランに溶解させ、得られた溶液(濃度5mg/ml)を用いた。
1−2.重合体(A)への化合物(α)の付加率
ガスクロマトグラフィー(GC)により、化合物(α)の残存量、副反応物生成量を測定して、重合体(A)への化合物(α)の付加率を求めた。尚、以下の製造例1〜12では、化合物(α)としてグリシジルメタクリレートを使用した。
具体的には、GC装置として島津製作所社製「GC−2014」を使用し、FID検出器、及びカラムとしてVarian社製CP−Wax 52CB(60m)を使用して、反応液を蒸留水にて希釈し、内部標準物質としてメチルセロソルブアセテートを添加したものをサンプルとして、キャリアーガスとしてヘリウムを用い、カラム温度を50℃から200℃まで10℃/分で昇温させて測定を行った。内部標準物質(メチルセロソルブアセテート)、グリシジルメタクリレート、及びグリシジルメタクリレートの水付加物のピーク面積より、未反応で残存しているグリシジルメタクリレート量及びグリシジルメタクリレートの水付加物量を定量した。グリシジルメタクリレートの水付加率は水付加により消費されたグリシジルメタクリレート量を全グリシジルメタクリレート量で除算して求めた。また重合体(A)へのグリシジルメタクリレートの付加率は、グリシジルメタクリレートの全使用量から残存グリシジルメタクリレート量及び水付加により消費されたグリシジルメタクリレート量を差し引き、グリシジルメタクリレートの全使用量で除算して求めた。
1−3.重合安定性の評価
重合により得られた重合体微粒子の分散液を反応器から取り出した後、反応器の内部及び攪拌翼への重合体の付着量を目視により観察し、下記の評価基準に従って重合安定性の評価を行った。また、反応器から取り出した重合体微粒子の分散液を、200目ポリネット(目開き:114μm)で濾過し、ポリネット上に残留している凝集物について、乾燥後の重量を測定し、仕込み全量に対する凝集物量を測定した。
[重合安定性の評価基準]
○:反応器の内部、撹拌翼共に凝集は見られない
△:反応器の内部又は撹拌翼に直径1cm未満の凝集物が存在する
×:反応器の内部又は撹拌翼に直径1cm以上の凝集物が存在する
1−4.重合体微粒子の体積平均粒子径(dv)及び数平均粒子径(dn)
反応器から取り出した重合体微粒子の分散液を一部取り出し、メタノールを加えて5wt%となるよう調整し、十分に振り混ぜて、サンプルを均一分散させた。レーザー回折散乱式粒度分布計(日機装製、MT−3000)を用いて、超音波10分照射後に粒度分布測定を行い、体積平均粒子径(dv)、数平均粒子径(dn)を得た。測定時の循環分散媒にはイオン交換水を使用した。
1−5.副生小粒子量
得られた重合体微粒子の分散液から揮発分(重合溶媒、残存モノマー等)を除去して回収した重合体微粒子を、電界放射走査型電子顕微鏡(FE−SEM、日本電子(株)製JSM−6330F)にて観察した。1枚の写真に200個以上の粒子が撮影される倍率で撮影位置を変えながら5枚以上のSEM写真を撮影した。このSEM画像について、粒子径の測長が可能な0.1μm以上のすべての粒子について粒子径(円相当直径)を測定し、1000個以上の粒子径を測長した。測定した粒子の内、0.5μm以下の粒子数が1000個当たりに何個存在するかについて画像解析ソフトWinROOF(三谷商事製)を用いて測定した。
2.分散安定剤を含む液の製造
製造例1(分散液(MM−1)の製造)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び送液配管連結部を備えたガラス製反応器に、イオン交換水200質量部を仕込んだ。さらにメタクリル酸メチル(以下、「MMA」ともいう)1.69質量部、メタクリル酸イソブチル(以下、「IBMA」ともいう)1.69質量部、メタクリル酸(以下、「MAA」ともいう)1.25質量部及びチオグリコール酸2−エチルヘキシル(以下、「OTG」ともいう)0.36質量部を仕込み(5質量部)、攪拌及び窒素ガスの吹き込みを行いながら、反応器の内温を80℃に調整した。
一方、定量ポンプによる送液配管を取り付けたガラス製容器に、MMA32.17質量部、IBMA32.17質量部、MAA23.75質量部及びOTG6.93量部を仕込み、攪拌して単量体の混合液(95質量部)を調製した。
上記反応器の内温が80℃で安定したことを確認した後、反応器に、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.8質量部をイオン交換水3.0質量部に溶解した重合開始剤水溶液を添加した。次いで、その5分後に、定量ポンプを使用して、上記単量体の混合液の反応器への供給を開始し、単量体の混合液95質量部を一定速度で240分かけて反応器に供給した。供給完了後より30分間かけて反応器の内温を90℃に昇温し、その後4.5時間内温を維持して、分子鎖の途中にカルボキシル基を有する重合体(A)(以下、重合体(A−1)という)の分散液を得た。分散液の少量をサンプリングして乾燥した後、上記した方法でGPC測定したところ、重合体(A−1)の重量平均分子量(Mw)は5,100であり、数平均分子量(Mn)は2,900であった。また、重合体(A−1)のカルボキシル基量は、単量体組成より2.06meq/gと計算される。
次に、上記反応器内の重合体(A−1)の分散液の温度を30分間かけて80℃に降温した後、窒素ガスの吹き込みを空気の吹き込みに変更し、直ちにメトキシハイドロキノン0.03質量部を添加した。メトキシハイドロキノンを添加した5分後に、トリエチルアミン(以下、「TEA」ともいう)11.7質量部を一定速度で30分間に渡り反応器に供給した。そして、その15分後にグリシジルメタクリレート(以下、「GMA」ともいう)10.15質量部を一定速度で30分間に渡り反応器に供給し、内温80℃で3時間加熱して、重合体(A−1)のカルボキシル基の一部にGMAを付加させて、メタクリロイル基を有するマクロモノマーを含む重合体組成物(重合体からなる混合物)の分散液を製造した。以下、この重合体組成物を、「重合体組成物(MM−1)」という。重合体組成物(MM−1)の分散液にイオン交換水を添加して固形分を30質量%に調整し、分散液(MM−1)を得た。
その後、上記で得られたマクロモノマーを含む分散液(MM−1)から一部をサンプリングして、上記の方法によりGC分析を行った。測定の結果、GMAは検出されなかった。また、GMAの8%に相当するGMA水付加物が検出された。この結果より、重合体(A−1)へのGMAの付加率は92%、水付加率は8%と計算される。従って、重合体(A−1)の数平均分子量(Mn)及び重合体(A−1)へのGMA付加率を用いた、後述の計算により、重合体組成物(MM−1)は、1分子当たり(ポリマー鎖1本当たり)、平均して1.91個のエチレン性不飽和基(f値)を有することが分かった。また、GPCにより測定した重合体組成物(MM−1)の重量平均分子量(Mw)は5,600であり、数平均分子量(Mn)は3,200であった。
上記で得られた重合体組成物(MM−1)におけるエチレン性不飽和基の平均導入量(f値)及びカルボキシル基の含有量の平均値は、以下の計算により求めた。
[重合体組成物におけるエチレン性不飽和基の平均導入量(f値)の計算]
重合体(A−1)100部のモル数は、重合体(A−1)のMn(2900)を利用して、100/2900である。
重合体(A−1)100部に対し、グリシジルメタクリレートの10.15部×0.92が付加している。
グリシジルメタクリレートの分子量(142)より、グリシジルメタクリレートの付加モル数は、(10.15部×0.92)/142である。従って、
f値={付加したグリシジルメタクリレートのモル数}/{重合体(A−1)のモル数}
=(10.15×0.92/142)/(100/2900)
=1.91
が得られる。
[重合体組成物におけるカルボキシル基の含有量の平均値(meq/g)の計算]
重合体組成物におけるカルボキシル基の含有量の平均値(D)は、上記した数式(1)に従って求めた。
具体的には、
X=重合体(A−1)100質量部当たりのカルボキシル基量
=291(meq)
Y={重合体(A−1)100質量部に対するグリシジルメタクリレートの仕込み量}×{重合体(A−1)へのグリシジルメタクリレートの付加率}
=10.15×0.92
=9.34質量部(重合体(A−1)100質量部に付加したグリシジルメタクリレート量(質量部)である)
Z={Y/グリシジルメタクリレートの分子量}×1000
=(9.34/142)×1000
=65.8(meq)(重合体(A−1)100質量部に付加したグリシジルメタクリレート量(meq)である)
から、D=2.06meq/gを得た。
尚、以下の製造例2〜15で得られた重合体組成物におけるエチレン性不飽和基の平均導入量(f値)及びカルボキシル基量も、上記と同様にして求めた。
製造例2〜13(分散液(MM−2〜13)の製造)
下記の表1及び表2に示す組成の単量体を用いて、製造例1と同様の操作を行って、分子鎖の途中にカルボキシル基を有する重合体(A−2)〜(A−13)の分散液を製造した。分散液の少量をサンプリングして乾燥した後、上記した方法でGPC測定したところ、重合体(A−2)〜(A−13)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、表1に示すとおりであった。また、重合体(A−2)〜(A−13)のカルボキシル基量は、単量体組成より、下記の表1及び表2に示すとおりであった。
上記で得られた重合体(A−2)〜(A−13)の分散液に、下記の表1及び表2に示す量のTEA及びGMAを添加し、製造例1と同様にして、重合体(A−2)〜(A−13)のカルボキシル基の一部にGMAを付加させて、マクロモノマーを含む重合体組成物(重合体組成物(MM−2)〜(MM−13))の分散液を製造した。重合体組成物(MM−2〜MM−13)の分散液にイオン交換水を添加して固形分を30質量%に調整し、分散液(MM−2〜MM−13)を得た。
その後、上記で得られた重合体組成物(MM−2)〜(MM−13)を含む分散液から一部をサンプリングして、上記の方法によりGC分析を行った。測定の結果、全ての分散液において、GMAは検出されなかった。また、GMA水付加物の量を測定して、製造例1と同様にして、重合体組成物(MM−2)〜(MM−13)の1分子当たり(ポリマー鎖1本当たり)のエチレン性不飽和基の平均個数[エチレン性不飽和基の平均導入量(f値)]を求めたところ、表1及び表2に示すとおりであった。
製造例14(分散液(MM−14)の製造)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び送液配管連結部を備えたガラス製反応器に、イオン交換水200質量部を仕込み、攪拌及び窒素ガスの吹き込みを行いながら、反応器の内温を80℃に調整した。
一方、定量ポンプによる送液配管を取り付けたガラス製容器に、MMA35.0質量部、IBMA35.0質量部、MAA26.5質量部及びOTG3.6質量部を仕込み、攪拌して単量体の混合液(100質量部)を調製した。
上記反応器の内温が80℃で安定したことを確認した後、反応器に、過硫酸アンモニウム(重合開始剤)0.8質量部をイオン交換水3.0質量部に溶解した重合開始剤水溶液を添加した。次いで、その5分後に、定量ポンプを使用して、上記単量体の混合液の反応器への供給を開始し、単量体の混合液100質量部を一定速度で240分かけて反応器に供給した。供給完了後より30分間かけて反応器の内温を90℃に昇温し、その後4.5時間内温を維持して、分子鎖の途中にカルボキシル基を有する重合体(A−14)の分散液を得た。分散液の少量をサンプリングして乾燥した後、上記した方法でGPC測定したところ、重合体(A−14)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、表2に示すとおりであった。また、重合体(A−14)のカルボキシル基量は、単量体組成より、下記の表2に示すとおりであった。
上記で得られた重合体(A−14)の分散液に、下記の表2に示す量のTEA及びGMAを添加し、製造例1と同様にして、重合体(A−14)のカルボキシル基の一部にGMAを付加させて、マクロモノマーを含む重合体組成物(重合体組成物(MM−14)の分散液を製造した。重合体組成物(MM−14)の分散液にイオン交換水を添加して固形分を30質量%に調整し、分散液(MM−14)を得た。
その後、上記で得られた重合体組成物(MM−14)を含む分散液から一部をサンプリングして、上記の方法によりGC分析を行った。測定の結果、全ての分散液において、GMAは検出されなかった。また、GMA水付加物の量を測定して、製造例1と同様にして、重合体組成物(MM−14)の1分子当たり(ポリマー鎖1本当たり)のエチレン性不飽和基の平均個数[エチレン性不飽和基の平均導入量(f値)]を求めたところ、表2に示すとおりであった。
製造例15(分散液(MM−15)の製造)
下記の表2に示す組成の単量体を用いて、製造例14と同様の操作を行って、分子鎖の途中にカルボキシル基を有する重合体(A−15)の分散液を製造した。分散液の少量をサンプリングして乾燥した後、上記した方法でGPC測定したところ、重合体(A−15)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、表1に示すとおりであった。また、重合体(A−15)のカルボキシル基量は、単量体組成より、下記の表2に示すとおりであった。
上記で得られた重合体(A−15)の分散液に、下記の表1に示す量のTEA及びGMAを添加し、製造例1と同様にして、重合体(A−15)のカルボキシル基の一部にGMAを付加させて、マクロモノマーを含む重合体組成物(重合体組成物(MM−15))の分散液を製造した。重合体組成物(MM−15))の分散液にイオン交換水を添加して固形分を30質量%に調整し、分散液(MM−15)を得た。
その後、上記で得られた重合体組成物(MM−15)を含む分散液から一部をサンプリングして、上記の方法によりGC分析を行った。測定の結果、全ての分散液において、GMAは検出されなかった。また、GMA水付加物の量を測定して、製造例1と同様にして、重合体組成物(MM−15)の1分子当たり(ポリマー鎖1本当たり)のエチレン性不飽和基の平均個数[エチレン性不飽和基の平均導入量(f値)]を求めたところ、表2に示すとおりであった。
Figure 2016074821
Figure 2016074821
表1及び表2において用いた化合物の詳細を以下に示す。
MMA:メタクリル酸メチル
IBMA:メタクリル酸イソブチル
MAA:メタクリル酸
OTG:チオグリコール酸2−エチルヘキシル
TEA:トリエチルアミン
GMA:メタクリル酸グリシジル
3.重合体微粒子の製造(1)
実施例1(重合体微粒子(PA−1)の製造)
攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び送液配管連結部を備えたガラス製反応器に、イオン交換水98.6質量部、メタノール255.6質量部、25%アンモニア水0.12質量部、製造例1で製造した重合体組成物(分散安定剤)を含む分散液(MM−1)8.33質量部(固形分2.5質量部相当)、MMA50質量部及びIBMA50質量部を仕込み、攪拌及び窒素ガスの吹き込みを行いながら、反応器の内温を55℃に調整した。
上記反応器の内温が55℃で安定したことを確認した後、当該反応器に、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシピバレートの70%溶液(商品名「パーブチルPV」、日本油脂株式会社製)2.4質量部を添加して重合を開始した。重合開始剤の添加直後に反応液に濁りが生じ、徐々に白化して乳白色となり、重合体微粒子(以下、「重合体微粒子(PA−1)」という)が生成していることが確認された。
上記重合開始剤の添加後、240分経過した時点で反応液を冷却して重合を完了させた。重合反応液を、200目ポリネットを通過させて、重合体微粒子(PA−1)の分散液を回収した。重合反応液を抜き出した後の反応器の内部や攪拌翼に重合体の付着はなく、更に、200目ポリネット上にろ過残渣は4ppmであり極めて少量であった。
回収した分散液の一部をメタノールで5%に希釈し、超音波を10分照射した後、レーザー回折散乱式粒度分布計を用いて粒径を測定した。得られた粒度分布は単峰性で、体積平均粒子径(dv)と数平均粒子径(dn)は、それぞれ1.10μmと1.05μmであった。
実施例2〜11(重合体微粒子(PA−2)〜(PA−11)の製造)
分散液の種類並びに溶媒としての水及びメタノールの使用量を、表3に示すようにした以外は、実施例1と同様に行って、重合体微粒子(以下、「重合体微粒子(PA−2)〜(PA−11)」という)の分散液を製造した。そして、実施例1と同様にして、重合安定性の評価を行ったところ、表3に示すとおりであった。
尚、上記した実施例1及びこの実施例2〜11のすべてにおいて、媒体(メタノール、水及び25%アンモニア水)とモノマーとの比は、媒体/モノマー=360/100となるように調整した(モノマー濃度約22%)。また、水の使用量は、得られる重合体微粒子の体積平均径が1.0〜1.2μm程度の範囲で同等となるように調整した。
Figure 2016074821
比較例1〜5(重合体微粒子(PB−1〜PB−5)の製造)
分散液の種類及び量、並びに、溶媒としての水及びメタノールの使用量を、表4に示すようにした以外は、実施例1と同様に行って、重合体微粒子(以下、「重合体微粒子(PB−1)〜(PB−5)」という)の分散液を製造した。そして、実施例1と同様にして、重合安定性の評価を行ったところ、表4に示すとおりであった。
ここで、比較例4及び5では、重合開始剤を添加した後、1時間以内に多量の凝集物が発生し、攪拌が困難となったため、重合を中止した。このため、重合体微粒子PB−4及びPB−5を得ることはできなかった。
Figure 2016074821
実施例1〜11は、分散安定剤として、分子鎖の途中にカルボキシル基を有し、本発明において規定するエチレン性不飽和基数及び分子量分布を有するマクロモノマーを含む重合体組成物を用いて、親水性溶媒中でビニル単量体(メタクリル酸メチル及びメタクリル酸イソブチル)の分散重合を行った例である。極めて少量の分散安定剤の使用で、体積平均粒子径(dv)が1.06〜1.15μmの範囲の粒子径の極めて小さい重合体微粒子を、狭い粒度分布で、重合体微粒子間の凝集等を生ずることなく、良好な重合安定性で円滑に得られている。
比較例1は、分散安定剤として、エチレン性不飽和基平均導入量が2.70と多い重合体組成物(MM−4)を用いた例であるが、非常に多くの小粒子の副生が見られる結果が得られた。逆に、エチレン性不飽和基平均導入量が1.11と少ない重合体組成物(MM−7)を用いた比較例2では、モノマー濃度が20%を超えるような条件下では十分な重合安定性を付与することができず、多量の凝集物が発生する結果が得られた。
比較例3及び4は、分子量分布の広い重合体組成物(MM−14及びMM−15)を用いて例であるが、多量の副生粒子又は凝集物の発生が認められた。また、比較例5では、親水性溶媒中での分散重合用分散剤として一般的に使用されるポリビニルピロリドン(PVP、和光純薬製K−30)を使用したものである。マクロモノマー型分散剤と同じ固形分換算で2.5部使用した場合、重合安定性が十分ではなく、分散安定剤としての性能に大きく劣っていた。
本発明は、分子鎖の途中にカルボキシル基を有し、且つ、特定のエチレン性不飽和基数及び分子量分布を有するマクロモノマー(Ma)を分散安定剤として用いた分散重合法により重合体微粒子を製造する方法である。これにより、ミクロンサイズの極めて微小な粒子径を有し、しかも粒度分布が狭くて均一な粒径を有し、単分散性で粒子間の凝集のない非架橋の重合体微粒子又は架橋した重合体微粒子を、円滑に生産性よく製造することができる。そして、本発明の方法で得られる重合体微粒子のうち、架橋した重合体微粒子は耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性、強度等にも優れている。そのため、本発明の方法で得られる重合体微粒子は、上記した優れた特性を活かして、液晶表示用スペーサ、液晶表示用の光拡散フィルム、及び拡散板等の光拡散剤、液晶表示用のAGフィルム等のAG剤、各種フィルム用のアンチブロッキング剤、導電性微粒子、カラム用充填剤、診断薬用の担体等をはじめとして、種々の用途に有効に使用することができる。

Claims (5)

  1. 分散安定剤の存在下に、ビニル単量体を、該ビニル単量体及び該分散安定剤を溶解するが、生成する重合体を溶解しない親水性溶媒中で重合する工程を備える、重合体微粒子を製造する方法であって、
    前記分散安定剤が、分子鎖の途中にカルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有するマクロモノマーを含有するものであり、
    前記マクロモノマーが、1分子当り平均して1.4〜2.5個のエチレン性不飽和基を有し、且つ、その分子量分布が2.0以下である、
    ことを特徴とする重合体微粒子の製造方法。
  2. 前記マクロモノマーが、(メタ)アクリロイル基を含む請求項1に記載の重合体微粒子の製造方法。
  3. 前記マクロモノマーの数平均分子量が、1000〜10000g/molである請求項1又は2に記載の重合体微粒子の製造方法。
  4. 前記マクロモノマーにおけるカルボキシル基の含有量の平均値が、0.1〜9.0meq/gである請求項1〜3のいずれかに記載の重合体微粒子の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項の製造方法で得られた重合体微粒子であって、
    体積平均粒子径が0.7〜3.0μmであり、
    体積平均粒子径(dv)/数平均粒子径(dn)が1.2以下であり、
    粒子径0.1μm以上の重合体微粒子1000個当りの副生小粒子の数が500個以下である、
    ことを特徴とする重合体微粒子。
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