JP6431326B2 - ポリビニルアセタール微粒子 - Google Patents
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Description
一方、近年では、環境汚染や人体への有毒性および使用時の危険性等の理由から、有機溶剤を含有する系の替わりに、水を主成分とする系に交換する試みが増加し、その結果、ポリビニルアセタール水性分散液の重要性がますます増加している。
しかしながら、従来のポリビニルアセタール樹脂の水性分散液組成物は、オレイン酸カリウム又はオレイン酸ナトリウム等の分散剤を使用しており、分散液のpHは約9でアルカリ性となっている。従って、分散液のpHが中性に近くなると、分散剤の分散効果が低下して、ポリビニルアセタール樹脂が沈殿するという問題があった。特に、添加される化合物の酸性度が強い場合は、化合物を添加した近傍のpHが低くなるため、水性分散液全体のpHが中性に近くなる前に沈殿を生じるという問題もあった。
しかしながら、このような分散剤を用いた場合でも、水を主成分とする液体媒体中での分散性は充分ではないという問題があった。また、多量の分散剤を含んでいるために乾燥後に得られる被膜の耐水性が低下するという問題もあった。
しかしながら、この微粒子の主成分である(メタ)アクリル酸エステル化合物は、機械的強度が低く、形成した被膜が強靭性に劣るという問題がある。
以下、本発明を詳述する。
また、このようなポリビニルアセタール微粒子から得られる水性分散液は、高い耐水性と強靭性を有する膜を作製することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記イオン性官能基をアセタール単位に有することで、イオン性官能基によるポリマー間での静電相互作用によってポリマーが結束されることにより、高い強靭性を有する膜を作成することができるという利点がある。
これにより、水を主成分とする分散媒中において優れた分散安定性を実現することができ、また、分散媒を乾燥させた後に高い機械的強度、及び、柔軟性を有する膜とすることができるという利点がある。
特に、アセタール単位中にイオン性官能基及び芳香族系置換基を有する場合、イオン性官能基によるポリマー間での静電相互作用に加えて、芳香族環によるポリマー間でのπ−π相互作用が働くことによってポリマーが強く結束されることにより、より高い強靭性を有する膜を作成することができるという利点がある。
上記芳香族系置換基としては、ベンゼン環、ピリジン環等の芳香環や、ナフタレン環、アントラセン環等の縮合多環芳香族基等が挙げられる。
イオン性官能基を含むアセタール単位のアセタール化度が0.3モル%未満であると、得られるポリビニルアセタール樹脂微粒子の分散性が低下することがあり、10モル%を超えると、被膜とした際に耐水性が低下することがある。より好ましくは1〜5モル%である。
なお、上記イオン性官能基を含むアセタール単位のアセタール化度は、ポリビニルアセタール樹脂のDMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)溶液を試料としてプロトンNMR測定を行い、得られたスペクトルから算出することができる。
イオン性官能基を含まないアセタール単位のアセタール化度が40モル%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂が水溶性となり、水性分散液を形成することができないことがあり、80モル%を超えると、疎水性が強くなりすぎて安定した分散液を得ることが困難となることがある。より好ましくは55〜75モル%である。
なお、上記イオン性官能基を含まないアセタール単位のアセタール化度は、ポリビニルアセタール樹脂のDMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)溶液を試料としてプロトンNMR測定を行い、得られたスペクトルから算出することができる。
なお、ここでいう全アセタール化度とは、ポリビニルアセタール樹脂を構成する全単量体単位に対する、アセタール化されたビニルアルコール単位の割合を表し、該変性ポリビニルアセタール樹脂のDMSO−d6(ジメチルスルホキサイド)溶液を試料としてプロトンNMR測定を行い、得られたスペクトルから算出することができる。
上記比率が0.35%未満であると、得られるポリビニルアセタール樹脂微粒子の分散性が低下することがあり、20%を超えると、被膜とした際に耐水性が低下することがある。より好ましくは1〜15%である。
また、上記塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が挙げられる。
なお、本明細書において、ポリビニルアセタール樹脂の重合度は、原料であるポリビニルアルコールの重合度から求めることができる。
上記ケン化度が80モル%より小さいと、水への溶解性が悪くなるためアセタール化反応が困難になり、また、水酸基量が少ないためアセタール化反応自体が困難となる。特に、ケン化度85モル%以上とすることがより好ましい。
上記イオン性官能基含有アルデヒドとしては、例えば、4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム、4−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−ピリジンカルバルデヒド塩酸塩、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド塩酸塩、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド塩酸塩、ベタインアルデヒドクロリド、(2−ヒドロキシ−3−オキソプロポキシ)リン酸、5−リン酸ピリドキサール、フタルアルデヒド酸、テレフタルアルデヒド酸、イソフタルアルデヒド酸等が挙げられる。
なお、上記ポリビニルアセタール微粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置等を用いて測定することができる。
上記CV値の好ましい上限は35%、より好ましい上限は32%、更に好ましい上限は30%、特に好ましい上限は25%、最も好ましい上限は20%である。なお、CV値は、標準偏差を平均粒子径で割った値の百分率(%)で示される数値である。
なかでも、ポリビニルアセタール樹脂本来の優れた機械的性質を低下させることが無く、被膜とした際に高い機械的性質を発現させることができ、また、導入した官能基の変質等が発生しないために、ポリビニルアセタール樹脂を作製した後、更にイオン性官能基を含有するアルデヒドを反応させ再度アセタール化する方法が特に好ましい。
なかでも、本発明のポリビニルアセタール微粒子の体積平均粒子径を制御しやすく、体積平均粒子径のCV値を小さくすることができることから、上記イオン性官能基を含むアセタール単位を有するポリビニルアセタール樹脂を有機溶剤に溶解した後、水を少量ずつ添加し、加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法、または大量の水に上記イオン性官能基を含むアセタール単位を有するポリビニルアセタール樹脂が溶解した溶液を添加した後に必要に応じて加熱及び/又は減圧して有機溶剤を除去する方法が好適である。
なお、本発明の水性分散液は、充分な分散安定性を有しているが、得られる被膜の機械的性質を劣化させない範囲で、分散剤を別途添加しても良い。
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度65.0モル%、水酸基量33.8モル%、アセチル基量1.2モル%)20重量部をメタノール180重量部に溶解させ、溶解液に4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.1重量部加え、60℃にて2時間反応させた。反応液を冷却し、水200重量部を滴下添加した。次いで、ビス(2−エチルヘキサン酸)トリエチレングリコールを2重量部添加し、1時間攪拌した後、液温を30℃に保ち、減圧しながら攪拌を行うことでメタノールを揮発させ、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を得た。
得られたポリビニルアセタール微粒子を構成するポリビニルアセタール樹脂をNMR(日本電子社製、JNM−ECA400)で測定し、樹脂中に含まれるイオン性官能基を含むアセタール単位のアセタール化度、イオン性官能基を含まないアセタール単位のアセタール化度、アセチル基量、水酸基量およびイオン性官能基量を測定した。得られた結果を表1に示した。また、得られた樹脂について、カラムとしてWaters社製「2690 Separations Model」を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定した。得られた重量平均分子量を表1に示した。
また、以下の実施例、比較例についても同様の測定を行った。
4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム1重量部に代えて、3−ピリジンカルバルデヒド塩酸塩1重量部を用いた以外は実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を作製した。
4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム1重量部に代えて、4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム0.15重量部を用いた以外は実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を作製した。
4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム1重量部に代えて、4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム5重量部を用いた以外は実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を作製した。
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度3300、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%)20重量部をメタノール180重量部に溶解させ、溶解液に4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウムを1重量部、12Mの濃塩酸を0.1重量部加え、60℃にて2時間反応させた。反応液を冷却し、水200重量部を滴下添加した。次いで、ビス(2−エチルヘキサン酸)トリエチレングリコールを2重量部添加し、1時間攪拌した後、液温を30℃に保ち、減圧しながら攪拌を行うことでメタノールを揮発させ、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を得た。
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度74.0モル%、水酸基量22.0モル%、アセチル基量4.0モル%)20重量部をメタノール180重量部に溶解させ、溶解液に4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウムを1.5重量部、12Mの濃塩酸を0.1重量部加え、60℃にて2時間反応させた。反応液を冷却し、水200重量部を滴下添加した。次いで、ビス(2−エチルヘキサン酸)トリエチレングリコールを2重量部添加し、1時間攪拌した後、液温を30℃に保ち、減圧しながら攪拌を行うことでメタノールを揮発させ、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を得た。
ポリビニルアルコール(重合度1700、ケン化度99.0モル%)20重量部を純水200重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を60℃に冷却し、これに12Mの塩酸16重量部を添加した後、4−ホルミルベンゼン−1,3−スルホン酸2ナトリウムを1重量部添加し、アセタール化反応を行った。その後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド14重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
次に、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。次いで、得られたポリビニルアセタール樹脂10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、溶解液を水300重量部に滴下添加した。次いで液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでメタノールを揮発させ、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を得た。
4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム1重量部に代えて、4−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム1重量部を用いた以外は実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を作製した。
4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム1重量部に代えて、テレフタルアルデヒド酸1重量部を用いた以外は実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を作製した。
4−ホルミルベンゼン−1,3−ジスルホン酸二ナトリウム1重量部に代えて、(2−ヒドロキシ−3−オキソプロポキシ)リン酸1重量部を用いた以外は実施例1と同様の操作によりポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を作製した。
ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%)10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、次いで、分散剤としてのオレイン酸カリウムをポリビニルアセタール樹脂に対して10重量%となるよう添加し、得られた溶解液を水300重量部に滴下添加した。
次いで、液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行うことでメタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮し、ポリビニルアセタール粒子が分散した水性分散液を作製した。
ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.0モル%、アセチル基量1.0モル%)10重量部をメタノール150重量部に溶解させ、溶解液を水300重量部に滴下添加した。次いで、液温を30℃に保ち、減圧しながら撹拌を行い、メタノールを揮発させた後、固形分が20重量%となるまで濃縮させたが、ポリビニルアセタール樹脂からなる塊が発生し微粒子が分散した水性分散液は得られなかった。
ポリビニルアルコール(重合度1700、ケン化度99.0モル%)20重量部を純水200重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。
この溶液を60℃に冷却し、これに12Mの濃塩酸16重量部を添加した後、4−ホルミルベンゼン−1,3−スルホン酸2ナトリウムを1重量部添加し、アセタール化反応を行った。その後、液温を4℃に下げてn−ブチルアルデヒド14重量部を添加しこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。
次に、液温を30℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、ポリビニルアセタール系樹脂の白色粉末を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂10重量部に水300重量部を加え、攪拌を行うことでポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を得た。
得られたポリビニルアセタール微粒子、及び、ポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液の性能を以下の方法で評価した。結果を表1に示した。
得られたポリビニルアセタール微粒子の体積平均粒子径及び体積粒子径分布をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、LA−950)を用いて測定した。
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液を24時間放置し、以下の基準でポリビニルアセタール微粒子の分散性を評価した。
◎:沈降物がなく、完全に分散していた。
○:ごく一部の沈降物が見られたが、概ね分散していた。
×:全てが沈降していた。
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液について、遠心分離機によってポリビニルアセタール微粒子を沈降させた後、撹拌によって微粒子が再分散可能かを以下の基準で評価した。
◎:撹拌時間10分未満で完全に分散した。
○:撹拌時間10分以上、1時間以下で完全に分散した。
×:分散しなかった。
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液をPETフィルム上に塗布し、160℃で乾燥させることでPETに積層されたポリビニルアセタールフィルムを得た。得られたポリビニルアセタールフィルムをPETから剥がし、ポリビニルアセタールフィルムを20℃の水に24時間浸漬した。浸漬前後でポリビニルアセタールフィルムの引張試験を行い、破断応力について測定し、耐水性の有無を以下の基準で評価した。
◎:浸漬前後での破断応力の変化が10%未満であった。
○:浸漬前後での破断応力の変化が10%以上25%未満であった。
×:浸漬前後での破断応力の変化が25%以上であった。
得られたポリビニルアセタール微粒子が分散した水性分散液をPETフィルム上に塗布し、160℃で乾燥させることでPETに積層されたポリビニルアセタールフィルムを得た。得られたポリビニルアセタールフィルムをPETから剥がし、10×40mmのサイズに裁断し、引張試験機を用いて引張速度0.1m/分でフィルムを引っ張り、引っ張り強度(N/mm2)を測定した。得られた引張伸度及び破断強度について、以下の基準で評価した。
[引張伸度]
◎:引張伸度が150%以上。
○:引張伸度が100%以上150%未満。
×:引張伸度が100%未満。
[破断強度]
◎:破断強度が30N/mm2以上。
○:破断強度が10N/mm2以上30N/mm2未満。
×:破断強度が10N/mm2未満。
Claims (6)
- イオン性官能基を含むアセタール単位を有するポリビニルアセタール樹脂からなり、体積平均粒子径が10nm〜100μm、かつ、体積粒子径分布のCV値が40%以下であり、
前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量が30〜60モル%、イオン性官能基を含むアセタール単位のアセタール化度が1〜5モル%である
ことを特徴とするポリビニルアセタール微粒子。 - イオン性官能基は、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、及び、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアセタール微粒子。
- イオン性官能基は、スルホン酸基又はスルホン酸基の塩であることを特徴とする請求項2記載のポリビニルアセタール微粒子。
- イオン性官能基を含まないアセタール単位のアセタール化度が40〜80モル%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のポリビニルアセタール微粒子。
- ポリビニルアセタール樹脂のイオン性官能基の含有量が0.01〜1mmol/gであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のポリビニルアセタール微粒子。
- 請求項1、2、3、4又は5記載のポリビニルアセタール微粒子を、水を含有する分散媒中に分散してなることを特徴とする水性分散液。
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