JP6262976B2 - ポリビニルアセタール系樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、機械強度や無機物との密着性が高く、寸法安定性に優れるポリビニルアセタール系樹脂組成物に関する。
ポリビニルアセタール樹脂は、機械特性や、無機物との接着性に優れていることから、合わせガラス用中間膜、金属処理のウォッシュプライマー、各種塗料、接着剤、樹脂加工剤、セラミックバインダー等に多目的に用いられている。
しかしながら、ポリビニルアセタール樹脂は水酸基を多量に含有しているため水との親和性が強く、そのため吸湿による物性変化や寸法変化が大きい等の問題点を有する。例えば、紙、各種フィルムなどにコートした場合、湿度の変化による寸法変化が基材に比べて大きく、カールしてしまい、さらに塗膜の強度、密着性が経時的に低下するなどの欠点がある。また、導電性接着剤の樹脂改質剤として使用した場合、ハンダ付け、ハンダリフロー工程での加熱時、吸湿した水分が揮発して接着剤が膨張し、基板から剥離するという問題があった。
これらの問題を改善するため、これまでに、他の重合体や耐湿剤をブレンドする方法や、ポリビニルアセタール樹脂を変性する方法等が行われている。
しかし、他の重合体とブレンドする方法では、新たに添加した重合体とポリビニルアセタール樹脂との親和性が問題となり、結果的に強度が低下するという大きな問題があった。
これに対して、特許文献1には、耐湿剤としてリン酸エステルをブレンドする方法が開示されているが、得られる樹脂組成物内部でのポリビニルアセタール樹脂の吸湿は減少するものの、添加したリン酸エステルの吸湿性が高く、樹脂組成物全体では寸法変化が大きいままとなっていた。
また、ポリビニルアセタール樹脂を変性させる方法としては、例えば、ポリビニルエステルのけん化を部分的に行い、エステル構造を残した部分けん化ポリビニルアセタール樹脂等が製造されている。この部分ケン化ポリビニルアセタール樹脂は、水酸基を減少させて、水との親和性を低下させるには良い方法であるが、水酸基が少なくなることで、ポリビニルアセタール樹脂が本来有する強靭性や接着性といった特長が損なわれていた。
また、特許文献2には、極性の低いアルデヒドでアセタール化することにより、寸法安定性を向上させている方法が開示されているが、水酸基の量は通常のポリビニルアセタールと変わらないため、その効果は小さいものとなっていた。
特開2012−254924号公報 WO2012/023517号パンフレット
本発明は、機械強度や無機物との密着性が高く、寸法安定性に優れるポリビニルアセタール系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂及び(メタ)アクリル樹脂を含有するポリビニルアセタール系樹脂組成物であって、連続相としての前記ポリビニルアセタール樹脂中に、分散相として前記(メタ)アクリル樹脂が分散した構造を有しており、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値が2.5〜10であり、前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、30〜40モル%であるポリビニルアセタール系樹脂組成物である。
以下、本発明を詳述する。
本発明者は、ポリビニルアセタール樹脂及び(メタ)アクリル樹脂を含有するポリビニルアセタール系樹脂を、連続相としてのポリビニルアセタール樹脂中に、分散相として(メタ)アクリル樹脂が分散された構造とすることに加えて、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値を所定の範囲内とすることで、機械強度や無機物との密着性が高く、寸法安定性に優れるものとすることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、ポリビニルアセタール樹脂と、(メタ)アクリル樹脂を含有するポリビニルアセタール系樹脂組成物であり、連続相としての上記ポリビニルアセタール樹脂中に、分散相として上記(メタ)アクリル樹脂が分散した構造を有する。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物がこのような構造を有していることは、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た後、得られたフィルムを切断し、その切断面に対し、例えば、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、位相差顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、顕微ラマン、走査型プローブ顕微鏡等を用いて観察することにより判断することができる。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値が2.5〜10である。上記範囲内とすることで、優れた機械強度や無機物との密着性、及び、高い寸法安定性を発現することができる。これは、ポリビニルアセタール樹脂の水酸基に由来する優れた特長を阻害することなく、(メタ)アクリル樹脂に由来する特長、及び、相構造に由来する特長のバランス良く発現可能なためであると考えられる。
上記表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値は、2.8〜8であることが好ましい。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物の表面自由エネルギー(非極性成分、極性成分)は、例えば、以下の方法で測定することができる。
まず、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物のシート状サンプルを作製した後、断面を切断し、その断面に対して、水とヨウ化メチレンの接触角を測定する。ここで、表面自由エネルギーが極性成分と非極性成分に分離できると仮定すると下記式(1)を満たす。また、この場合に接触角のつりあい式から下記式(2)を満たす。そして、γL、γ γ に接触角を測定した水、または、ヨウ化メチレンそれぞれの値を代入し、連立方程式を解くことで、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の表面自由エネルギーの極性成分と非極性成分を算出することができる。
表面自由エネルギー(γ)=極性成分(γ)+非極性成分(γ) (1)
γ(cosθ+1)=2(γ γ 1/2+2(γ γ 1/2 (2)
式(2)中、γ、γ 、γ 、γ、γ 、γ は以下に示す通りである。
γ:液滴の表面自由エネルギー (水:72.8、ヨウ化メチレン:50.8)
γ :液滴の表面自由エネルギーの非極性成分(水:21.8、ヨウ化メチレン:49.5)
γ :液滴の表面自由エネルギーの極性成分(水:51、ヨウ化メチレン:1.3)
γ:ポリビニルアセタール系樹脂組成物の表面自由エネルギー
γ :ポリビニルアセタール系樹脂組成物の表面自由エネルギーの非極性成分
γ :ポリビニルアセタール系樹脂組成物の表面自由エネルギーの極性成分
θ:液滴の接触角
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物において、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値を2.5〜10とするためには、ケン化度が90モル%以上、水酸基が30〜40モル%のポリビニルアセタール樹脂と、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値が2.5〜15の(メタ)アクリル樹脂との組み合わせが好ましい。このような組み合わせとすることで、両樹脂の特性バランスに優れる樹脂組成物とすることができる。
なお、このようなポリビニルアセタール樹脂及び(メタ)アクリル樹脂については後述する。
上記ポリビニルアセタール樹脂は特に限定されないが、重合度800〜5000、ケン化度80モル%以上のポリビニルアルコールをアセタール化することで得られるポリビニルアセタール樹脂が好ましい。このようなポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、ポリビニルアセタール系樹脂組成物が優れた機械強度を発現するものとすることができる。
ポリビニルアルコールの重合度が800未満であると、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の機械強度が低下することがある。ポリビニルアルコールの重合度が5000を超えると、ポリビニルアルコールのアセタール化の際に溶液粘度が異常に高くなってアセタール化が困難になることがある。ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は4500である。
ポリビニルアルコールのケン化度が80モル%未満であると、ポリビニルアルコールの水への溶解度が低下するためアセタール化が困難になることがある。また、ポリビニルアルコールの水酸基量が少ないためアセタール化反応が進みにくくなることがある。さらに、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の機械強度が低下することがある。ポリビニルアルコールのケン化度のより好ましい下限は85モル%である。
なお、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物において、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値を2.5〜10とするためには、ケン化度を90モル%以上とすることがより好ましい。
上記アセタール化の方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、塩酸等の酸触媒の存在下でポリビニルアルコールの水溶液にアルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
上記アルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、生産性、特性バランス等の点で、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、ブチルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒドが好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(本明細書中、アセタール基がアセトアセタール基である場合には、アセトアセタール化度ともいい、アセタール基がブチラール基である場合には、ブチラール化度ともいう)は、アルデヒドを単独で用いた場合又は2種以上を併用した場合のいずれであっても、好ましい下限が40モル%、好ましい上限が80モル%である。アセタール化度が40モル%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂の分子間での水素結合が強く、連続相の極性が高くなりすぎて、ポリビニルアセタール系樹脂組成物とした際の連続層と分散相の間の界面が剥がれやすく、優れた強度を発現できないことがある。アセタール化度が80モル%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の分子間での水素結合が弱くなりすぎて、機械特性や無機物との密着性が低下することがある。アセタール化度のより好ましい下限は55モル%、より好ましい上限は75モル%である。
なお、アセタール化度の計算方法については、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基がポリビニルアルコールの2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用する。
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量の好ましい下限は20モル%、好ましい上限は45モル%である。上記水酸基量が20モル%未満であると、強靭性や無機物密着性が優れないことがあり、45モル%を超えると、凝集力が強く、柔軟性に欠けることがある。上記水酸基量のより好ましい下限は25モル%であり、より好ましい上限は40モル%である。
なお、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物において、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値を2.5〜10とするためには、水酸基量を30〜40モル%とすることが好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂は、3つ以上連続して並んでいる水酸基の合計の割合が、全水酸基量を100モル%とした時に、30〜60モル%であることが好ましい。上記範囲内にあることで、連続相と分散相の界面の親和性を高くするために重要な疎水性相互作用と、連続相を形成するポリビニルアセタール樹脂の強度とのバランスが取れ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物が強靭性を発現する。上記割合が30モル%より低いと、ポリビニルアセタール樹脂の強度が弱くなるため、ポリビニルアセタール系樹脂組成物は十分な強度を発現しない場合がある。一方、上記割合が60モル%より高いと、ポリビニルアセタール樹脂の凝集力が上がるため、長軸平均分散径を規定の範囲に調節できなくなる場合がある。また、スラリーとした場合の粘度が高く、ハンドリング性が悪くなる。
なお、上記ポリビニルアセタール樹脂の3つ以上連続して並んでいる水酸基の合計の割合は13C−NMRの測定より、水酸基が3つ以上連続して並んだ構造由来のピークと、全ての水酸基ピークを積分し、算出した値を除することにより、求めることができる。
ポリビニルアセタール樹脂の表面エネルギーの表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値は0.5〜7であることが好ましい。上記範囲内とすることで、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物の表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値を2.5〜10とすることができる。また、上記範囲内とすることで、強靭性、無機物密着性、寸法安定性のバランスを取り、全体的に優れた特性とすることができる。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物の分散相は(メタ)アクリル樹脂によって構成される。
上記分散相の形状としては、扁平な形状であることが好ましい。これにより、フィルムとした際に、フィルム表面と分散相の長軸とが平行に分散されることで、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の寸法安定性を更に高めることができる。これは、上記(メタ)アクリル樹脂からなる分散相が折り重なるように存在することで、ポリビニルアセタール樹脂の吸湿を妨害できるためであると考えられる。
上記分散相は、長軸平均分散径が0.01〜10μmであることが好ましく、0.03〜5μmであることがより好ましく、0.05〜3μmであることがさらに好ましい。
上記長軸平均分散径が0.01μmより小さいと、ポリビニルアセタール樹脂と(メタ)アクリル樹脂が相溶状態に近づくために、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の強度は構成成分の配合割合に準じた物性になる。つまり、言い換えると、ポリビニルアセタール樹脂単独よりも弱くなる可能性が高くなる。一方、長軸平均分散径が10μmより大きい場合は、連続相と分散相の界面が広く小さな力で剥離するために、強度が低下する。また、無機物をポリビニルアセタール系樹脂組成物に分散させた場合には、ポリビニルアセタール樹脂と(メタ)アクリル樹脂では無機物との相互作用が異なるため、無機物の偏在が起こりやすくなる。
上記分散相の長軸平均分散径と短軸平均分散径の比は1.1以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。
なお、長軸平均分散径及び短軸平均分散径は、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た後、得られたフィルムを切断し、その切断面に対し、例えば、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、位相差顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、顕微ラマン、走査型プローブ顕微鏡等を用いて観察し、分散相のサイズを測定することにより、算出できる。
なお、長軸平均分散径とは、100個の分散相に対し、1つの分散相の径の中で最長の径を測定し、その平均を算出したものを意味し、短軸平均分散径とは100個の分散相に対し、1つの分散相の径の中で最短の径を測定し、その平均を算出したものを意味する。
画像解析により算出する場合には、精度の点から最終的に1000倍以上に拡大した写真を使用することが好ましい。
上記(メタ)アクリル樹脂の特長は、表面自由エネルギーの非極性成分と極性成分を調整しやすく、かつ、ガラス転移温度など他の物性の制御が容易であることである。
(メタ)アクリル樹脂は、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値が2.5〜15であることが好ましい。上記範囲内とすることで、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物の表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値を2.5〜10とすることができる。
上記表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値が2.5〜15である(メタ)アクリル樹脂を構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、エステル残基の炭素数が6〜12のものを用いることが好ましい。上記エステル残基の炭素数が6〜12の(メタ)アクリルモノマーは、疎水性相互作用が高いため、(メタ)アクリル樹脂の表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値を2.5〜15としやすい。
特に、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物の表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値を2.5〜10とするとするためには、エステル残基の炭素数が8〜12のものを用いることがより好ましい。
上記表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値が2.5〜15である(メタ)アクリル樹脂を構成する(メタ)アクリルモノマーは、エステル残基が鎖状であることが好ましい。鎖状とすることで、例えば、ポリビニルアセタール樹脂と(メタ)アクリル樹脂とがグラフト体を構成した場合の相溶化能が大きくなり、その結果、相分離構造が安定し、優れた強靭性を発現するようになる。
また、上記(メタ)アクリルモノマーは、エステル残基が炭素と水素以外の元素を含まないものであることが好ましい。
上記エステル残基の炭素数が6〜12の(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリルモノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のなかでも、生産性、特性バランス等の点で、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが好ましい。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記(メタ)アクリル樹脂との合計100重量%中、上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量を40〜95重量%、上記(メタ)アクリル樹脂の含有量を5〜60重量%とすることが好ましく、上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量を45〜80重量%、上記(メタ)アクリル樹脂の含有量を20〜55重量%とすることがより好ましく、上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量を50〜70重量%、上記(メタ)アクリル樹脂の含有量を30〜50重量%とすることが更に好ましい。含有量が上記範囲を外れると、ポリビニルアセタール樹脂を連続相にできず、優れた機械強度や無機物密着性を発現させることが困難になることがある。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、連続相及び分散相を有する構造を破壊しない程度であれば、更に、相溶化剤を含有していてもよい。
上記相溶化剤は特に限定されず、例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記(メタ)アクリル樹脂とのブロックコポリマー又はグラフトコポリマー、イオン的相互作用による相溶化剤(例えば、特定の官能基を有する化合物又はポリマー等)等が挙げられる。上記相溶化剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂と、上記(メタ)アクリル樹脂との合計100重量部に対して、1〜80重量部程度が好ましい。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、分散剤等の各種添加剤を含有してもよい。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、ブレンド法、二段反応法等が採用できる。
ブレンド法とは、上記ポリビニルアセタール樹脂と、上記(メタ)アクリル樹脂とを別々に準備した後、両者を混合(ブレンド)する方法である。混合方法は特に限定されず、例えば、溶融混練混合、溶解液混合等が挙げられる。二段反応法とは、まず、上記ポリビニルアセタール樹脂を準備し、上記ポリビニルアセタール樹脂の存在下で上記(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマーの重合を行う方法である。
二段反応法で得られるポリビニルアセタール系樹脂組成物においては、ブレンド法と比較して、分散相である上記(メタ)アクリル樹脂の平均分散径が小さくなる。これは、上記(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマーの重合時に、上記ポリビニルアセタール樹脂に上記(メタ)アクリル樹脂がグラフトしたコポリマーが一部生成し、該コポリマーが、連続相と分散相との両方に対して親和性を有する界面活性作用(相溶化作用)を発揮して、分散相を安定化させるためと考えられる。このような分散相の平均分散径が小さいポリビニルアセタール系樹脂組成物は、上述したような連続相及び分散相からなる構造を有するとともに、より優れた機械強度を発現することができる。
従って、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物を製造する方法のなかでも、二段反応法が好ましい。本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、上記ポリビニルアセタール樹脂の存在下で、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値が2.5以上である(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマーの重合を行うことにより得られることが特に好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂に上記(メタ)アクリル樹脂がグラフトしたコポリマー(本明細書中、グラフトコポリマーともいう)とは、主鎖としての上記ポリビニルアセタール樹脂に、側鎖としての上記(メタ)アクリル樹脂が分岐状に結合したポリマーである。
上記グラフトコポリマーの分子量は特に限定されないが、数平均分子量(Mn)が10000〜400000で、重量平均分子量(Mw)が20000〜800000で、これらの比(Mw/Mn)が2.0〜40であることが好ましい。Mn、Mw、Mw/Mnをこのような範囲に調整することにより、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の機械強度と柔軟性とのバランスをとることができる。また、スラリー粘度が高くなりすぎることを抑制することができる。
上記グラフトコポリマーのグラフト率(グラフトコポリマー中のポリビニルアセタール樹脂に対する(メタ)アクリル樹脂の比率)は、用途に応じて設計されるため、特に限定されないが、10〜900重量%が好ましい。グラフト率をこのような範囲に調整することにより、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の機械強度と柔軟性とのバランスをとることができる。
なお、グラフト率は、グラフトコポリマー中のポリビニルアセタール樹脂に対する(メタ)アクリル樹脂の比率を表し、単離したグラフトポリマーについてNMR測定を行い、ポリビニルアセタール樹脂の重量と(メタ)アクリル樹脂の重量とを換算し、下記式を用いて算出することができる。
グラフト率(%)
={((メタ)アクリル樹脂の重量)/(ポリビニルアセタール樹脂の重量)}×100
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物の用途は特に限定されないが、例えば、合わせガラス用中間膜、金属処理のウォッシュプライマー、各種塗料、接着剤、樹脂改質剤、樹脂加工剤、セラミックスバインダー等に好適に用いることができる。
本発明によれば、機械強度や無機物との密着性が高く、寸法安定性に優れるポリビニルアセタール系樹脂組成物を提供することができる。
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1)
(ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量30.8モル%、アセチル基量1.2モル%、けん化度98.8%)25重量部と、アクリル酸イソボルニル25重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に85℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
次に、本溶液に、可塑剤としてジオクチルフタレートを2重量%加えて、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを四酸化オスミウムで染色後、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相がポリビニルアセタール樹脂で、分散相が(メタ)アクリル樹脂(ポリアクリル酸イソボルニル)であることを確認できた。分散相の長軸平均分散径は0.8μmで、短軸平均分散径との比は1.8であった。
(接触角測定)
得られたポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムについて接触角測定を行うことで、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値を算出した。
また、実施例1で使用した(メタ)アクリル樹脂(アクリル酸イソボルニルからなる樹脂)を用いて得られるフィルムについても同様に表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値を算出した。
(1)ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの測定
作製したポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを積層し、140℃、30MPa、10分の条件で加熱プレスし、厚み1cmの成形体を作製した。40℃で成形体を剃刀刃で切断し、その断面に対し、KSV社製接触角計(CAM200)を用いて純水、及び、ヨウ化メチレンの接触角測定を行った。測定に用いた液量はそれぞれ10μlと2.5μlとした。また、測定温度は23℃とした。そして、上述した式(1)及び(2)から表面自由エネルギーの非極性成分及び極性成分を算出するとともに、非極性成分を極性成分で除した値(非極性成分/極性成分)を算出した。
(2)(メタ)アクリル樹脂からなるフィルムの測定
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、アクリル酸イソボルニル50重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながら、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分後、0.2重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを10重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に85℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、(メタ)アクリル樹脂からなるフィルムを得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂からなるフィルムについて、上述の「(1)ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの測定」と同様の方法で、非極性成分を極性成分で除した値(非極性成分/極性成分)を算出した。
(実施例2)
(ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%、けん化度99%)25重量部と、メタクリル酸2−エチルヘキシル10重量部と、メタクリル酸メチル2.5重量部を、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に85℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを四酸化オスミウムで染色後、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相がポリビニルアセタール樹脂で、分散相が(メタ)アクリル樹脂であることを確認できた。分散相の長軸平均分散径は0.6μmで、短軸平均分散径との比は1.6であった。
得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、接触角測定を行った。また、(メタ)アクリル樹脂からなるフィルムについても同様に接触角測定を行った。
(実施例3)
(ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度3300、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量31.2モル%、アセチル基量0.8モル%、けん化度99.2%)25重量部と、アクリル酸イソボルニル10重量部と、アクリル酸2−エチルヘキシル10重量部、及び、アクリル酸2−ヒドロキシエチル5重量部を重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に85℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
次に、本溶液を、可塑剤としてジオクチルフタレートを2重量%加えて、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを四酸化オスミウムで染色後、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相がポリビニルアセタール樹脂で、分散相が(メタ)アクリル樹脂であることを確認できた。分散相の長軸平均分散径は1.1μmで、短軸平均分散径との比は2.1であった。
得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、接触角測定を行った。また、(メタ)アクリル樹脂からなるフィルムについても同様に接触角測定を行った。
(実施例4)
(ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%、けん化度99%)25重量部と、アクリル酸ベンジル25重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に85℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
次に、本溶液に、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを四酸化オスミウムで染色後、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相がポリビニルアセタール樹脂で、分散相が(メタ)アクリル樹脂(ポリアクリル酸ベンジル)であることを確認できた。分散相の長軸平均分散径は0.4μmで、短軸平均分散径との比は1.4であった。
得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、接触角測定を行った。また、(メタ)アクリル樹脂からなるフィルムについても同様に接触角測定を行った。
(実施例5)
(ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%、けん化度99%)40重量部と、アクリル酸イソボルニル10重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に85℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
次に、本溶液を、可塑剤としてジオクチルフタレートを2重量%加えて、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを四酸化オスミウムで染色後、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相がポリビニルアセタール樹脂で、分散相が(メタ)アクリル樹脂(アクリル酸イソボルニル)であることを確認できた。分散相の長軸平均分散径は0.5μmで、短軸平均分散径との比は1.6であった。
得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、接触角測定を行った。また、(メタ)アクリル樹脂からなるフィルムについても同様に接触角測定を行った。
(比較例1)
(ポリビニルアセタール樹脂からなるフィルムの作成)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%、けん化度99%)25重量部を溶剤(メタノールとトルエンの混合溶剤、メタノールとトルエンの重量比率は1:1)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。次に、本溶液を、可塑剤としてジオクチルフタレートを2重量%加えて、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させてポリビニルアセタール樹脂からなるフィルムを得た。
得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、接触角測定を行った。
(比較例2)
(ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量30.8モル%、アセチル基量1.2モル%、けん化度98.8%)25重量部と、アクリル酸エチル25重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に85℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを四酸化オスミウムで染色後、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相がポリビニルアセタール樹脂で、分散相がポリアクリル酸エチルであることを確認できた。分散相の長軸平均分散径は0.4μmで、短軸平均分散径との比は1.1であった。
得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、接触角測定を行った。また、(メタ)アクリル樹脂からなるフィルムについても同様に接触角測定を行った。
(比較例3)
(ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量30.8モル%、アセチル基量1.2モル%、けん化度98.8%)20重量部と、メタクリル酸イソボルニル30重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら85℃に加熱した。30分後、1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に85℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
次に、本溶液を、可塑剤としてジオクチルフタレートを2重量%加えて、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを四酸化オスミウムで染色後、透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相がポリビニルアセタール樹脂で、分散相がポリアクリル酸エチルであることを確認できた。分散相の長軸平均分散径は1.5μmで、短軸平均分散径との比は1.8であった。
得られたフィルムについて、実施例1と同様にして、接触角測定を行った。また、(メタ)アクリル樹脂からなるフィルムについても同様に接触角測定を行った。
<評価>
実施例及び比較例で得られたフィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
(長軸平均分散径、及び、長軸平均分散径と短軸平均分散径の比)
得られたフィルムを切断し、その切断面を四酸化オスミウムで染色後、透過型電子顕微鏡にて3000倍以上の倍率で観察した。100個の分散相に対し、1つの分散相の径の中で最長の径を測定し、その後、それらの平均を算出し、長軸平均分散径とした。短軸平均分散径も同様に算出した。
長軸平均分散径を短軸平均分散径で除し、長軸平均分散径と短軸平均分散径の比とした。
(強度評価[引張伸度及び破断強度])
得られたフィルムを離型フィルムから剥離し、5cm×1cmにカットした試料の引張伸度及び破断強度を引張試験機で測定した(速度:100mm/分)。
(ガラス密着性評価)
得られたフィルムを離型フィルムから剥離し、直径3mmのワンホールパンチにて打ち抜き、5×24×80mmのサイズのガラス板2枚で十字にはさみ、めがねクリップを用いて固定した。それを真空乾燥オーブンに入れ、真空にした後、160℃に昇温し、30分間加熱真空乾燥した。30分後、オーブンから出し、室温に戻るのを待った。室温に戻ったのを確認し、めがねクリップを素早く外した。それをサンプルとし、引張試験機(オリエンテック社製、UTA−500)を用いて、圧縮モードにて速度5mm/minの条件で試験し、接着力(N/cm)を測定した。
(経時寸法安定性評価)
得られたフィルムを離型フィルムから剥離し、30cm×30cmにカットした試料を23℃、65%RHの恒温恒湿下に静置し、製膜後と10日後の寸法変化率を測定し、以下の基準で評価した。
○:フィルムの寸法変化率が0.1%未満であって、かつ、反りが認められない。
×:フィルムの寸法変化率が0.1%以上である、及び/または、反りが認められる。
(熱寸法安定性評価)
得られたフィルムを離型フィルムから剥離し、30cm×30cmにカットした試料を−30℃から80℃まで5℃/minの速度で、昇温させる前後での寸法変化率を測定し、以下の基準で評価した。
○:フィルムの寸法変化率が0.1%未満であって、かつ、反りが認められない。
×:フィルムの寸法変化率が0.1%以上である、及び/または、反りが認められる。
Figure 0006262976
本発明によれば、優れた機械強度や無機物密着性を有しながら、寸法安定性を発現するポリビニルアセタール系樹脂組成物を提供することができる。

Claims (5)

  1. ポリビニルアセタール樹脂及び(メタ)アクリル樹脂を含有するポリビニルアセタール系樹脂組成物であって、
    連続相としての前記ポリビニルアセタール樹脂中に、分散相として前記(メタ)アクリル樹脂が分散した構造を有しており、
    表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値が2.5〜10であり、
    前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基量は、30〜40モル%である
    ことを特徴とするポリビニルアセタール系樹脂組成物。
  2. (メタ)アクリル樹脂は、表面自由エネルギーの非極性成分を極性成分で除した値が2.5〜15であることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアセタール系樹脂組成物。
  3. (メタ)アクリル樹脂からなる分散相は、長軸平均分散径が0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1又は2記載のポリビニルアセタール系樹脂組成物。
  4. ポリビニルアセタール樹脂と(メタ)アクリル樹脂との合計100重量%中、ポリビニルアセタール樹脂の含有量が40〜95重量%、(メタ)アクリル樹脂の含有量が5〜60重量%であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のポリビニルアセタール系樹脂組成物。
  5. ポリビニルアセタール樹脂の存在下で、(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマーの重合を行うことにより得られることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のポリビニルアセタール系樹脂組成物。
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