JP5535433B2 - アクリル系熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
メタクリル系樹脂にブレンドする他のポリマーとして、例えば、特定組成のスチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーが提案されている。しかし、これらポリマーのブレンドでは靭性を十分に改良することができていない。
非特許文献2には、メタクリル酸メチル樹脂とポリビニルブチラールとは、相溶性が弱く、それらを混合して得られたものは、通常、相分離して2相構造となるが、分子量の低いメタクリル酸メチル樹脂を用いた場合には相溶して単一相になる可能性があると記載されている。非特許文献2の図5にはビニルアルコール単位を様々な量で含有するポリビニルブチラール50質量部とメタクリル酸メチル樹脂50質量部とのブレンド物を溶媒に溶解して、キャスト成形して得られたフィルムの光学顕微鏡観察像が示されている。このフィルムはメタクリル酸メチル樹脂が様々な大きさの分散相となった相分離構造を有している。
本発明はこれらの知見に基づいてさらに検討し、完成するに至ったものである。
該樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、せん断速度100sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融混練し、次いで120℃以下の温度に冷却することによって得られる。
なお、本発明においてガラス転移温度は損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度である。損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度は、実施例の欄に記載した方法によって測定する。
本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを含有してなるものである。
アルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレートが好ましい。これらのアルキルアクリレートは単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また、メタクリル系樹脂(A)の耐熱性の観点から0.1〜20質量%の範囲でアルキルアクリレート単位を含有することが好ましい。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、単量体が線状に結合したものであっても良いし、分岐を有するものであっても良いし、環状構造を有するものであっても良い。
ポリビニルアルコール樹脂は、完全けん化されたものであってもよいが、部分的にけん化された部分けん化ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。けん化度は80mol%以上のものを用いることが好ましい。
これらポリビニルアルコール樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度(mol%)は、以下の式で定義することができる。
アセタール化度(mol%)=
{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2
/{{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2+l+m}×100
ブチラール化度(mol%)={k(1)}×2
/{{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2+l+m}×100
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、ブチラール化度が55〜75mol%であることがさらに好ましい。すなわち、0.55≦k(1)≦0.75であることが好ましい。ブチラール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、力学特性、特に靭性に優れ、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物を容易に且つ安価に得ることができる。また、ブチラール化度が上記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、メタクリル系樹脂(A)の屈折率とポリビニルブチラールの屈折率との差が小さくなり、メタクリル系樹脂(A)の特長である透明性(高可視光線透過率・低ヘイズ)が保持されやすい。さらに、延伸した際、折り曲げた際、衝撃を受けた際および/または長時間湿熱条件下に置かれた際にほとんど白化しないという特長があらわれやすい。
上記酸触媒除去のために用いる化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属化合物やアンモニア、アンモニア水溶液が挙げられる。また、アルキレンオキサイド類としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド;エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類が挙げられる。
残渣等が除去された含水状態のポリビニルアセタール樹脂は、必要に応じて乾燥され、必要に応じてパウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工され、成形材料として供される。パウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工される際に、減圧状態で脱気することによりアルデヒドの反応残渣や水分などを低減しておくことが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度が一つしか観測できない場合は、すなわちTgAP=TgBPとなる場合は、熱可塑性樹脂組成物中のメタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全な相溶状態になっていることを示している。
TgAP=TgA、TgBP=TgBとなる場合は、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全な非相溶の状態になっていることを示している。
なお、本発明において、メタクリル系樹脂(A)が二以上のメタクリル系樹脂の組み合わせである場合は、その組み合わせたもののうちのいずれか一つのガラス転移温度をTgAとし、ポリビニルアセタール樹脂(B)が二以上のポリビニルアセタール樹脂の組み合わせである場合は、その組み合わせたもののうちのいずれか一つのガラス転移温度をTgBとし、上記関係、すなわちTgB<TgAP<TgA、又はTgA<TgAP<TgBの関係を満たしていればよい。
一方、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全相溶である場合は、樹脂組成物の表面硬度が低下傾向になる。また、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全相溶でTgB<TgAである場合には耐熱性が低下傾向になる。メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが完全非相溶である場合は、強度が低下したり、白化したりするようになる。
(B)の割合が1質量%を下回ると、本発明の熱可塑性樹脂組成物の靭性などの力学物性の改善効果が低下傾向になる。一方、(B)の割合が49質量%を上回ると、本発明の熱可塑性樹脂組成物の表面硬度(および剛性)が不足する傾向になる。
また、本発明の好適な態様のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、JIS K7171にしたがって、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて歪み速度1mm/min.で曲げ試験した際において、応力の降伏点を有している。なお、応力の降伏点は、固体において塑性変形がはじまる応力限界のことである。
さらに、本発明の好適な態様のアクリル系熱可塑性樹脂組成物は、温度60℃、湿度90%の条件下に、1500時間放置された前後におけるヘイズの変化(放置前のヘイズと放置後のヘイズとの差)が、1.0%未満である。
さらに好適な製法では、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、樹脂温度140℃以上で溶融混練する際に、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、該せん断をせん断速度50sec-1以下にする段階とをそれぞれ少なくとも2回経ることが好ましい。
溶融混練する際に熱可塑性樹脂組成物に与える剪断は、剪断速度が100sec-1以上であることが必要であり、200sec-1以上であることが好ましい。
さらに、耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤を添加することができる。紫外線吸収剤の種類は特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、または、トリアジン系のものが好ましい。紫外線吸収剤の添加量は、熱可塑性樹脂組成物に対して、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。
なお、本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物に添加される上記添加剤は、熱可塑性樹脂組成物を製造する際に添加してもよいし、後述する成形の直前に添加してもよい。
積層フィルムに用いられる他の樹脂は、フィルムの意匠性の観点から、メタクリル系樹脂などの透明な樹脂が好ましい。
フィルムに傷がつきにくく、意匠性が長く持続するという観点から、最外層に用いる樹脂材料は、表面硬度および耐候性が高いものが好ましく、例えば、メタクリル系樹脂又は本発明のアクリル系熱可塑性樹脂組成物が好ましい。
積層フィルムの製造方法は特に限定されないが、共押出し法により直接多層フィルムを製造する方法、単層で作製したフィルムを貼り合わせる方法等が挙げられる。
(1)重量平均分子量
テトラヒドロフランを溶媒に用い、昭和電工株式会社製Shodex(商標)GPC SYSTEM11に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー用カラムとしてShodex(商標)KF−806Lを繋ぎ、検出器としてShodex(商標)示差屈折率検出器RI−101を用いて測定した。試料溶液は、重合体を3mg精秤し、これを3mlのテトラヒドロフランに溶解し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過することにより調製した。測定の際の流量は、1.0ml/min.とし、ポリマーラボラトリーズ製標準ポリメタクリル酸メチルで作製した検量線に基づいて、ポリメタクリル酸メチル換算分子量として重量平均分子量(Mw)を算出した。
曲げ試験における弾性率、降伏点伸度、破断伸度は、JIS K7171に従い、株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、射出成形法で得られた長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて歪み速度1mm/min.で測定した。
靭性は、試験片が破断するまでに要するエネルギーで評価した。
白化状態は、曲げ歪み20%における試験片の白化状態を目視で観察することにより行い、試験片の長さ方向の白化している部分の長さが2mm以上であるものを×、0.3mm以上かつ2mm未満であるものを△、0.3mm未満であるものを○、その中で全く白化が見られないものを◎として評価した。
引張り試験における弾性率は、JIS K7162に従い、株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、射出成形法で得られた1A形ダンベル状試験片を用いて歪み速度1mm/min.で測定した。破断伸度、靭性および白化状態の観察は、JIS K7162に従い、株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、射出成形法で得られた1A形ダンベル状試験片を用いて歪み速度5mm/min.で測定することにより評価した。靭性は、試験片が破断するまでに要するエネルギーで評価した。
白化状態は、引張り歪み10%における試験片の白化状態を目視で観察することにより行い、試験片の長さ方向の白化している部分の長さが10mm以上であるものを×、1mm以上かつ10mm未満であるものを△、1mm未満であるものを○、その中で全く白化が見られないものを◎として評価した。
損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度(Tg)は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製EXSTAR6000 DMSを用いて、射出成形で得られた試験片を切断することによって得た長さ60mm×幅10mm×厚さ4mmの直方体試験片を曲げモード(両持ち梁測定)において、正弦波振動10Hz、昇温速度3℃/min.により測定した。
JIS K7202−2に従い、射出成形で得られた100mm×100mm×厚さ4mmの平板を用いてロックウェル硬度(Mスケール)を測定した。
JIS K7136に従い、厚さ4mmの試験片で測定した。
射出成形で得られた試験片からウルトラミクロトーム(RICA社製ReichertULTRACUT−S)を用いて超薄切片を作製した後、熱可塑性樹脂組成物のポリビニルアセタール部分を四酸化ルテニウムの蒸気で電子染色し、試料を作製した。こうして作成した試料のモルフォロジーを株式会社日立製作所製透過電子顕微鏡H−800NAを用いて観察した。観察されたモルフォロジーにおいて非染色部(メタクリル系樹脂(A))が連続相を形成していたものを○、メタクリル系樹脂(A)が不連続であったものを×として評価した。
射出成形で得られた100mm×100mm×厚さ4mmの平板を60℃、95%RHの条件下に1500時間放置した。該処理前後のヘイズの差(ΔH)により耐湿熱性を評価した。
ポリビニルアルコール樹脂を溶解した水溶液に、アルデヒド化合物ならびに酸触媒(塩酸)を添加し、攪拌してアセタール化し、樹脂を析出させた。公知の方法に従ってpH=6になるまで洗浄し、次いでアルカリ性にした水性媒体中に懸濁させて攪拌しながら後処理し、再びpH=7になるまで洗浄し、揮発分が1.0%になるまで乾燥することにより、表1に示すポリビニルアセタール樹脂をそれぞれ得た。
まず、JIS K6728(1977年)に記載の方法に則って、ビニルアルコールユニットの質量割合(l0)および酢酸ビニルユニットの質量割合(m0)を後記の方法によって求め、さらに、ビニルアセタールユニットの質量割合(k0)をk0=1−l0−m0によって求めた。
次に、l=(l0/44.1)/(l0/44.1+m0/86.1+2k0/Mw(acetal))およびm=(m0/86.1)/(l0/44.1+m0/86.1+2k0/Mw(acetal))を計算によって求め、k=1−l−mの計算式によりビニルアセタールユニットの割合(k=k(1)+k(2)+・・・+k(n))を計算し、最後に、アセタール化度(mol%)={k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2/{{k(1)+k(2)+・・・+k(n)}×2+l+m}×100によって求めた。
ここで、Mw(acetal)はアセタール化ユニットひとつあたりの分子量であり、例えば、ポリビニルブチラールのとき、Mw(acetal)=Mw(butyral)=142.2である。
また、ブチルアルデヒドとその他のアルデヒドとで共アセタール化した場合は、1H−NMR、または13C−NMRを測定し、各々のアセタール化度(mol%)を算出することができる。
ポリビニルアセタール樹脂約0.4gを共せん付き三角フラスコに正確に量りとり、ピリジン/無水酢酸(体積比92/8)の混合液10mlをピペットで加えて溶解し、冷却器をつけて温度50℃の水浴上で120分間加熱した。冷却後ジクロロエタン20mlを加えてよく振り混ぜ、さらに水50mlを加え、栓をして激しく振り混ぜた後、30分間放置した。生成した酢酸をN/2水酸化ナトリウム溶液でフェノールフタレインを指示薬として激しく振り混ぜながら微紅色をするまで滴定し、その滴定量をa(ml)とする。別にブランク試験を行い、これに要したN/2水酸化ナトリウム溶液の滴定量をb(ml)とし、次の式により求めた。
l0=2.2×(b−a)×Fl/(sl×Pl)
式中の、s1:ポリビニルアセタール樹脂の質量、Pl:純分(%)、Fl:N/2水酸化ナトリウム溶液の力価である。
また、ポリビニルアセタール樹脂約0.4gを共せん付き三角フラスコに正確に量りとり、エタノール25mlを加えて85℃で溶解し、N/10水酸化ナトリウム溶液5mlをピペットでよく振り混ぜながら加え、冷却器をつけて温度85℃の水浴中で60分間還流させた。冷却後、N/10塩酸5mlをピペットで加えてよく振り混ぜ、30分間放置した。過剰の塩酸をN/10水酸化ナトリウム溶液でフェノールフタレインを指示薬として微紅色を呈するまで滴定し、その滴定量をc(ml)とした。別にブランク試験を行い、これに要したN/10水酸化ナトリウム溶液の滴定量をd(ml)として、次の式により求めた。
m0=0.86×(c−d)×Fm/(sm×Pm)
式中の、sm:ポリビニルアセタール樹脂の質量、Pm:純分(%)、Fm:N/10水酸化ナトリウム溶液の力価である。
メタクリル系樹脂(A−1:クラレ製PARAPET G、Mw=100,000、Tg=121℃)90部、およびポリビニルアセタール樹脂(B−1)10部を、日本製鋼所製二軸混練押出機TEX−44α(L/D=40)を用いてシリンダー温度220℃、スクリュー回転数200rpmで混練し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。押出機内の最大剪断速度は300sec-1であり、バレルとスクリューエレメントとのクリアランスが大きい部分でのせん断速度は45sec-1であった。スクリューは上記の回転数において、300sec-1のせん断と45sec-1のせん断とが交互に2回ずつ掛かる構成のものを用いた。その際の押出機のダイ直前で測定した樹脂温度は232℃であった。
これらの試験片を用い、曲げ試験における弾性率、破断伸度、靭性および試料の白化状態、引張り試験における弾性率、破断伸度、靭性および試料の白化状態、熱可塑性樹脂組成物のメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度(TgAP)、表面硬度、ヘイズ、耐湿熱性を測定し、それらの結果を表2に示した。また、モルフォロジーを観察し、表2にその結果を示した。
実施例1で用いた熱可塑性樹脂組成物のペレットに代えて、メタクリル系樹脂(A−1:PARAPET G)のみからなるペレットを用いて実施例1と同様にして試験片を製
造した。その結果を表2に示した。
メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)の種類および/または配合量を表2に示す処方に変えた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得、さらに該ペレットを用いて試験片を製造した。それらの結果を表2に示した。
実施例3における押出し機の最大剪断速度は300sec-1であり、熱可塑性樹脂組成物の押出し機のダイ直前で測定した樹脂温度は232℃であった。
実施例4における押出し機の最大剪断速度は300sec-1であり、熱可塑性樹脂組成物の押出し機のダイ直前で測定した樹脂温度は231℃であった。
実施例5における押出し機の最大剪断速度は300sec-1であり、熱可塑性樹脂組成物の押出し機のダイ直前で測定した樹脂温度は230℃であった。
実施例6における押出し機の最大剪断速度は300sec-1であり、熱可塑性樹脂組成物の押出し機のダイ直前で測定した樹脂温度は229℃であった。
実施例7における押出し機の最大剪断速度は300sec-1であり、熱可塑性樹脂組成物の押出し機のダイ直前で測定した樹脂温度は230℃であった。
メタクリル系樹脂(A−2:メタクリル酸メチル92質量%およびアクリル酸メチル8質量%からなるモノマーをラジカル重合して得られたMw=45000、Mw/Mn=2.5の樹脂、Tg=116℃)75部及びポリビニルアセタール樹脂(B−1)25部に配合処方を変えた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得、さらに該ペレットを用いて試験片を製造した。それらの結果を表3に示した。その際の最大剪断速度は300sec-1であった。熱可塑性樹脂組成物の押出し機のダイ直前で測定した樹脂温度は225℃であった。
メタクリル系樹脂(A−3:メタクリル酸メチル92質量%およびアクリル酸メチル8質量%からなるモノマーをラジカル重合して得られたMw=15,000、Mw/Mn=2.7の樹脂、Tg=116℃)75部及びポリビニルアセタール樹脂(B−1)25部に配合処方を変えた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得、さらに該ペレットを用いて試験片を製造した。それらの結果を表3に示した。その際の最大剪断速度は300sec-1であった。この際、ペレットを作製するときのシリンダー温度は180℃に設定した。また、熱可塑性樹脂組成物の押出し機のダイ直前で測定した樹脂温度は225℃であった。
メタクリル系樹脂(A−1)75部及びポリビニルアセタール樹脂(B−4)25部に配合処方を変えた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得、該ペレットを用いて試験片を製造した。それらの結果を表3に示した。その際の押出し機の最大剪断速度は300sec-1であり、熱可塑性樹脂組成物の押出し機のダイ直前で測定した樹脂温度は231℃であった。
メタクリル系樹脂(A−6:クラレ製PARAPET HR−F、Mw=90,000、Tg=135℃)75部及びポリビニルアセタール樹脂(B−1)25部に配合処方を変えた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得、さらに該ペレットを用いて試験片を製造した。それらの結果を表3に示した。その際の押出し機の最大剪断速度は300sec-1であり、熱可塑性樹脂組成物の押出し機のダイ直前で測定した樹脂温度は236℃であった。
実施例1で用いた熱可塑性樹脂組成物のペレットに代えて、メタクリル系樹脂(A−2:メタクリル酸メチル92質量%およびアクリル酸メチル8質量%からなるモノマーをラジカル重合して得られたMw=45000、Mw/Mn=2.5の樹脂)のみからなるペレットを用い、射出成形およびプレス成形の温度を220℃に変更した以外は、実施例1と同様にして試験片を製造した。その評価結果を表3に示した。
実施例1で用いた熱可塑性樹脂組成物のペレットに代えて、メタクリル系樹脂(A−3:メタクリル酸メチル92質量%およびアクリル酸メチル8質量%からなるモノマーをラジカル重合して得られたMw=15,000、Mw/Mn=2.7の樹脂)のみからなるペレットを用い、射出成型およびプレス成形の温度を200℃に変更した以外は実施例1と同様にして試験片を製造した。試験片は非常に脆く、物性測定は不可能であった。
実施例1で用いた熱可塑性樹脂組成物のペレットに代えて、メタクリル系樹脂(A−4:アルキルアクリレート単位を含んでなる軟質重合体層とアルキルメタクリレート単位を含んでなる硬質重合体層との組み合わせからなり且つ最外層が硬質重合体層である多層構造重合体[1] 16質量部、およびメタクリル系樹脂 84質量部からなるコア−シェル型粒子含有メタクリル系樹脂組成物)のみからなるペレットを用いて、実施例1と同様にして試験片を製造した。評価結果を表3に示した。
実施例1で用いた熱可塑性樹脂組成物のペレットに代えて、メタクリル系樹脂(A−5:アルキルアクリレート単位を含んでなる軟質重合体層とアルキルメタクリレート単位を含んでなる硬質重合体層との組み合わせからなり且つ最外層が硬質重合体層である多層構造重合体[1] 28質量部、およびメタクリル系樹脂 72質量部からなるコア−シェル型粒子含有メタクリル系樹脂組成物)のみからなるペレットを用いて、実施例1と同様に試験片を製造した。評価結果を表3に示した。
メタクリル系樹脂(A−1:PARAPET G)20部及びポリビニルアセタール樹脂(B−1)80部に配合処方を変えた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物のペレットを得、該ペレットを用いて試験片を製造した。それらの結果を表3に示した。その際の押出し機の最大剪断速度は300sec-1であり、熱可塑性樹脂組成物の押出し機のダイ直前で測定した樹脂温度は227℃であった。
(1)フィルムの可視光線透過率
株式会社日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計U−4100を用いて厚さ100μmのフィルムの波長380nmから780nmにおける透過率を測定し、JIS R3106に従って算出した可視光線透過率を測定した。
JIS K7136に従い、厚さ100μmの試験フィルムで測定した。
厚さ100μmのフィルムから引張試験時にMD方向に延伸されるようにプラスチックJIS1A型ダンベル形状試験フィルムを打抜き、株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、歪み速度5mm/min.で試験を行い、試験フィルムの弾性率、破断伸度、靭性を測定した。靭性は、試験フィルムが破断するまでに要するエネルギーで評価した。
株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用いて、JIS K6252規格に準拠した切込みなしアングル型試験フィルムを打抜き、引張り速度5mm/min.で切込みなしアングル型試験フィルムを引裂いた際の、厚さ換算した最大引裂き強さ(単位:N/mm)で評価した。測定は厚さ100μmのフィルムで行った。
JIS K5400にしたがって、厚さ100μmのフィルムの鉛筆硬度を測定した。
厚さ100μmのフィルムをTD方向に折り目がつくように180°折り曲げた際に、目視評価により、折り曲げた部分が全く白化しないものを○、折り曲げた部分の一部が白化したものを△、折り曲げた部分全体が白化したものを×として評価した。
フィルムからウルトラミクロトーム(RICA社製ReichertULTRACUT−S)を用いて超薄切片を作製した後、熱可塑性樹脂組成物のポリビニルアセタール部分を四酸化ルテニウムの蒸気で電子染色し、試料を作製した。こうして作成した試料のモルフォロジーを株式会社日立製作所製透過電子顕微鏡H−800NAを用いて観察した。観察されたモルフォロジーにおいて非染色部(メタクリル系樹脂(A))が連続相を形成していたものを○、メタクリル系樹脂(A)が不連続であったものを×として評価した。
(8)フィルムの耐湿熱性
厚さ100μmのフィルムを60℃、95%RHの条件下で1500時間処理し、処理前後のヘイズの差(ΔH)により耐湿熱性を評価した。
実施例1で製造したペレットをプラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイよりシリンダー温度およびTダイ温度が220℃の条件で押出成形することにより、厚さ100μmの熱可塑性樹脂組成物のフィルムを得た。得られたフィルムの可視光線透過率、ヘイズ、引張り弾性率、引張り破断伸度、靭性、引裂き強度、表面硬度、白化状態、耐湿熱性およびモルフォロジー観察の結果を表4に示した。
実施例1で製造したペレットの代わりに、実施例2〜7で製造したペレットをそれぞれ用いた以外は、実施例12と同様の方法にてフィルムを作製し、得られたフィルムの可視光線透過率、ヘイズ、引張り弾性率、引張り破断伸度、靭性、引裂き強度、表面硬度、白化状態、耐湿熱性およびモルフォロジー観察の結果を表4に示した。
実施例1で製造したペレットの代わりに、メタクリル系樹脂(A−1:PARAPET G)のみからなるペレットを用いた以外は、実施例12と同様の方法でフィルムを作製し、各種測定、観察を行った。結果を表4に示した。白化状態は、180°折り曲げる際にフィルムが破断したため、評価が不可能であった。
実施例1で製造したペレットの代わりに、実施例10及び11で製造したペレットをそれぞれ用いた以外は、実施例12と同様の方法にてフィルムを作製し、得られたフィルムの可視光線透過率、ヘイズ、引張り弾性率、引張り破断伸度、靭性、引裂き強度、表面硬度、白化状態、耐湿熱性、モルフォロジー観察の結果を表5に示した。
実施例1で製造したペレットの代わりに、比較例2で用いたメタクリル系樹脂(A−2)のみからなるペレットを用いた以外は実施例12と同様にしてフィルムを作製しようとしたが、樹脂が非常に脆く、フィルム状の成形体を得ることができなかった。
実施例1で製造したペレットの代わりに、比較例3で用いたメタクリル系樹脂(A−3:Mw=15,000)のみからなるペレットを用い、押出し機のシリンダーおよびTダイの温度を200℃に変更した以外は実施例12と同様にしてフィルムを作製しようとしたが、樹脂が非常に脆く、フィルム状の成形体を得ることができなかった。
実施例1で製造したペレットの代わりに、比較例4〜6で用いたペレットをそれぞれ用いた以外は実施例12と同様の方法にてフィルムを作製し、得られたフィルムの各種測定、観察を行った。結果を表5に示した。
メタクリル系樹脂(A−1)0.9gおよびポリビニルアセタール樹脂(B−1)0.3gをテトラヒドロフラン10.8gに溶解し、25℃で撹拌して、質量比:メタクリル系樹脂(A−1)/ポリビニルアセタール樹脂(B−1)=75/25の混合溶液を得た。この混合溶液を、底辺を10cm×10cmに仕切ったポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に流し込み、25℃で風乾し、次いで真空乾燥することにより、テトラヒドロフラン含有率が0.03%のフィルムを得た。得られたフィルムの厚さは104μmであった。得られたフィルムのメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度(TgAP)を測定したところTgAP=121℃であり、TgAP=TgAであった。得られたフィルムの可視光線透過率、ヘイズ、引張り弾性率、引張り破断伸度、靭性、引裂き強度、表面硬度、耐湿熱性、モルフォロジー観察の結果を表5に示した。白化状態は、180°折り曲げる際にフィルムが破断したため、評価が不可能であった。
細かく粉砕したメタクリル系樹脂(A−1)4.5gおよび細かく粉砕したポリビニルアセタール樹脂(B−1)1.5gを混合し、230℃に加熱した半径20mmのパラレルプレートに挟んで、下側のプレートは固定したまま、上側のプレートのみ15rpmで回転させて一定の剪断を10分間印加した。このときのパラレルプレートの間隔は4mmであり、パラレルプレートと上記樹脂との間に空隙はなかった。この条件では、樹脂に印加される剪断速度は、2π×(15/60)/(4/20)≒7.9(sec-1)であると計算される。このようにして溶融混練した樹脂組成物を熱プレスすることにより、厚み105μmのフィルムを得た。得られたフィルムのメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度(TgAP)を測定したところTgAP=121℃であり、TgAP=TgAであった。
得られたフィルムの可視光線透過率、ヘイズ、引張り弾性率、引張り破断伸度、靭性、引裂き強度、表面硬度、耐湿熱性、モルフォロジー観察の結果を表5に示した。白化状態は、180°折り曲げる際にフィルムが破断したため、評価が不可能であった。
Claims (16)
- メチルメタクリレート単位80〜99.9質量%およびアルキルアクリレート単位0.1〜20質量%を含有するメタクリル系樹脂(A)と
ポリビニルアセタール樹脂(B)と
を含有するアクリル系熱可塑性樹脂組成物であって、
少なくともメタクリル系樹脂(A)が連続相を形成しており、
アクリル系熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度のうちメタクリル系樹脂(A)に起因するガラス転移温度TgAPが、メタクリル系樹脂(A)単独でのガラス転移温度(TgA)とポリビニルアセタール樹脂(B)単独でのガラス転移温度(TgB)との間の値を示し、
前記のガラス転移温度は損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度であり、
該損失正接(tanδ)の主分散のピーク温度は、射出成形で得られる試験片を切断して長さ60mm×幅10mm×厚さ4mmの直方体試験片を得、該直方体試験片を曲げモード(両持ち梁測定)において、正弦波振動10Hz、昇温速度3℃/min.により測定して得られる値である、
アクリル系熱可塑性樹脂組成物。 - メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)の質量比(A)/(B)が99/1〜51/49である請求項1に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
- メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が40000以上である請求項1又は2に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
- ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度が55〜83mol%である請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
- ポリビニルアセタール樹脂(B)が、ポリビニルアルコール樹脂を(共)アセタール化して得られたスラリーのpHを6〜8に調整した後に乾燥処理を施して得られたものである請求項1〜4のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
- ポリビニルアセタール樹脂(B)が、ポリビニルブチラールである請求項1〜5のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
- JIS K7171にしたがって、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて歪み速度1mm/min.で試験した際の曲げ弾性率、および、JIS K7162にしたがって、1A形ダンベル状試験片を用いて歪み速度1mm/min.で試験した際の引張り弾性率、の少なくとも一方が2GPa以上である請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
- JIS K7171にしたがって、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を用いて歪み速度1mm/min.で曲げ試験した際において、応力の降伏点を有する請求項1〜7のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
- メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、せん断速度100sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融混練し、次いで120℃以下の温度に冷却する工程を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の製法。
- メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、樹脂温度140℃以上で溶融混練する際に、せん断速度100sec-1以上のせん断を印加する段階と、該せん断をせん断速度50sec-1以下にする段階とをそれぞれ少なくとも2回経る、請求項9に記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物の製法。
- 請求項9または10に記載の製法によって得られたアクリル系熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜8および請求項11のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物からなる成形体。
- 温度60℃、湿度90%の条件下に、1500時間放置された前後におけるヘイズの変化が、1.0%未満である、請求項12に記載の成形体。
- 請求項1〜8および請求項11のいずれかに記載のアクリル系熱可塑性樹脂組成物からなるフィルム。
- ポリビニルアセタール樹脂(B)がポリビニルブチラールであり、表面がJIS鉛筆硬度でFまたはそれよりも硬い、請求項14に記載のフィルム。
- 温度60℃、湿度90%の条件下に、1500時間放置された前後におけるヘイズの変化が、1.0%未満である、請求項14または15に記載のフィルム。
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