JP5345037B2 - アクリル系樹脂フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はアクリル系樹脂フィルムに関するものである。より詳細に、本発明は、透明性・耐候性・表面硬度といったアクリル系樹脂の優れた特徴を保持しつつ、良好な取扱い性および表面平滑性を兼ね備えたアクリル系樹脂フィルムに関するものである。また、本発明は、透明性・耐候性・表面硬度に優れ、且つ良好な取扱い性および靭性、耐衝撃性、表面平滑性を兼ね備えたアクリル系樹脂フィルムの製造方法に関するものである。なお、本発明における「フィルム」は一般的にフィルムより厚い構造体を指す「シート」をも含むものである。
自動車の内装・家電品の外装・壁紙などの基材には、木目調などの絵柄による加飾・意匠性の付与、耐傷つき性の付与、耐候性の付与などを目的として、透明な樹脂フィルムが貼り合せられている。その透明な樹脂フィルムの中でもアクリル系樹脂フィルムは透明性・耐候性・表面硬度に優れることから広範囲の分野において用いられている。
しかし、メタクリル系樹脂のみからなるフィルムは非常に脆く、製膜が困難であるばかりでなく、取扱い性が非常に悪く、製膜と同時にトリミングする際、製膜後にフィルムを切断する際、フィルムを基材と貼り合わせる際、あるいは、基材と貼り合わせた後にバリを除去する際、に割れるなどの不具合を生じることがあった。そのため、該樹脂フィルムには、靭性や耐衝撃性の改善が求められていた。
このメタクリル系樹脂のみからなるフィルムの脆さを改善するために、メタクリル系樹脂に、架橋されたコア−シェル型粒子を配合し、それを用いて成形してなるアクリル系樹脂フィルムが提案されている。
例えば、特許文献1には、架橋されたアクリル酸アルキルエステル重合体の存在下でメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルをグラフト共重合して得られる2層型のコア−シェル型粒子を配合したアクリル系樹脂フィルムが提案されている。この2層型のコア−シェル型粒子をブレンドしたアクリル系樹脂フィルムは、一般的に表面硬度が低い。その改善のために、3層型のコア−シェル型粒子(特許文献2)およびそれをブレンドしたアクリル系樹脂フィルム(特許文献3、4)が提案されている。アクリル系樹脂フィルムの表面硬度が高くなると、フィルムの耐傷つき性が向上し、保護フィルムとして有利になる。
しかし、架橋されたコア−シェル型粒子自体は流動性がないので、該コア−シェル型粒子をメタクリル系樹脂にブレンドした組成物を用いて、例えば、Tダイを用いた溶融成形あるいはインフレーション成形などで製膜した場合には、成形されたフィルムの表面からコア−シェル型粒子の一部分が高さ数十nm〜100nm程度の円丘状に突出することは避けられない。この突出がアクリル系樹脂フィルムの表面平滑性を低下させる。
特に3層型のコア−シェル型粒子は一般的に2層型のコア−シェル型粒子に比べ変形しにくいため、3層型のコア−シェル型粒子を用いたアクリル系樹脂フィルムは、2層型のコア−シェル型粒子を用いたものに比べ、その表面硬度は高くなるものの、表面平滑性の低下は顕著であった。
フィルムの表面平滑性の低下は、製膜後にフィルムを切断する際、フィルムを基材と貼り合わせる際、あるいは、基材と貼り合わせた後にバリを除去する際等におけるフィルムの割れやすさを増大させる傾向にする。
そこで、このような意に反するフィルムの割れを起こり難くするために、特許文献5において、コア−シェル型粒子を用いた場合にも優れた表面平滑性を有すると述べているアクリル系樹脂フィルムが提案されている。この特許文献5には、Tダイから溶融押出しされたアクリル系ゴム粒子含有アクリル系樹脂を、線圧300N/cm以上の押し付け圧力にて2本の鏡面ロールで挟み込んだ状態で製膜することによって、アクリル系ゴム粒子を含有し、少なくとも片方の面のJIS B0601に規定されている中心線平均粗さRaが0.01〜0.05μmとなるアクリル系樹脂フィルムが得られたことが示されている。
ところで、特許文献5においては、半径3μmの測定触針を用いて、表面粗さ計〔(株)東京精密製の「サーフコム 570A型」〕にてRaの測定を行っている。本発明者らの検討によると、この測定触針のサイズはコア−シェル型粒子(通常数十〜数百nm)に比べて非常に大きいため、コア−シェル型粒子の突出の度合いなどを正確に評価できていないことがわかった。また、凝集したコア−シェル型粒子(通常数百nm〜1μm)があったとしても、それほどRaに反映されないことがわかった。そのため、中心線平均粗さRaが上記範囲になるアクリル系樹脂フィルムであっても、製膜後のフィルム切断の際、フィルムを基材と貼り合わせる際、あるいは、基材と貼り合わせた後にバリを除去する際等において、突出したコア−シェル型粒子や凝集したコア−シェル型粒子に起因する欠陥を起点とした、意に反するフィルムの割れを十分に防ぐことができていなかった。
このように、コア−シェル型粒子の配合だけでは、アクリル系樹脂フィルムの取扱い性、靭性、耐衝撃性、表面硬度、および表面平滑性を同時に満足することは非常に困難であった。
また、アクリル系樹脂フィルムを液晶保護フィルム、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面フィルム、拡散フィルム等の光学関係部品などに用いる場合には、フィルムとしての取扱い性に加え、表面欠点の少なさなどの高い表面平滑性が要求される。さらに、フィルム表面に賦形を施す際にはその基材となるフィルムの表面粗さが賦形精度に影響を及ぼすので、この点からも非常に高い表面平滑性が要求される。
ところで、非特許文献1には、メタクリル酸メチル樹脂50質量部とポリビニルブチラール50質量部とのブレンド物を溶媒に溶解して、キャスト成形してフィルムを得たことが開示されている。このフィルムはメタクリル酸メチル樹脂が様々な大きさの分散相となった相分離構造を有している。このフィルムは、製膜時に溶媒を用いているので生産性が低いだけでなく、製膜環境を汚染するなどの不具合があった。また低分子量のポリメタクリル酸メチルを用いたフィルムは、取り扱い性が十分でなかった。また高分子量のポリメタクリル酸メチルを用いた場合でも、溶融混練を行っていないので、十分な取り扱い性を持ったフィルムを得ることができなかった。
特公昭56−27378号公報 特公昭55−27576号公報 特許3287255号公報 特許3287315号公報 特開2003−253016号公報
Macromolecules, Vol.34, 4277 (2001)
本発明の課題は、フィルムの取扱い性が良く、靭性や耐衝撃性に優れ、表面硬度が高く、且つ、表面欠点がほとんどない良好な表面平滑性を有する、アクリル系樹脂フィルムを提供することである。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定のメタクリル系樹脂と特定のポリビニルアセタール樹脂とを特定の質量比で溶融混練し、次いで特定の方法で成膜することによって、透明性・耐候性・表面硬度といったアクリル系樹脂の優れた特徴を保持しつつ、良好な取扱い性、靭性、耐衝撃性、高い表面平滑性を兼ね備えたフィルムを得られることを見出した。本発明は、この知見に基づき、さらに検討し、完成したものである。
すなわち、本発明によれば、重量平均分子量40000以上のメタクリル系樹脂(A)と、 粘度平均重合度200〜4000のポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化してなるポリビニルアセタール樹脂(B)とを、95/5〜60/40の質量比(A)/(B)で含有してなるフィルムであって、 前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、アルデヒドでアセタール化された繰返し単位が全繰返し単位に対して65〜85モル%含まれ且つ炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル比が90/10〜0/100のものであり、且つ少なくとも片方の面の粗度が1.5nm以下であるアクリル系樹脂フィルムが提供される。
また、粘度平均重合度が200〜4000のポリビニルアルコール樹脂を炭素数4以上のアルデヒドと炭素数3以下のアルデヒドを用いてアセタール化して、アルデヒドでアセタール化された繰返し単位が全繰返し単位に対して65〜85モル%含まれ且つ炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル比が90/10〜0/100となるポリビニルアセタール樹脂(B)を得、 重量平均分子量が40000以上のメタクリル系樹脂(A)と、前記ポリビニルアセタール樹脂(B)とを95/5〜60/40の質量比(A)/(B)で溶融混練し、 Tダイから溶融状態で押し出し、該押し出されたものの両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形することを含む、アクリル系樹脂フィルムの製造方法が提供される。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、透明性・耐候性・表面硬度といったメタクリル系樹脂自体の特長を持つ上に、取扱い性、靭性(低速引張靭性)、耐衝撃性および表面平滑性を兼ね備えた、バランスに優れるフィルムである。このような特性を持つフィルムは、これまでのアクリル系樹脂フィルムでは成し得ることができなかった。本発明のアクリル系樹脂フィルムは、この優れた特長を活かして、意匠性の要求される製品や光学製品に好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを含有してなるフィルムである。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステルを含有する単量体混合物を重合することによって得られる。
メタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレートなどが挙げられる。これらのメタクリル酸エステルは単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いても良い。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜4であるアルキルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
メタクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリル酸エステルが挙げられる。またメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、パルミチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、アルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレートが好ましい。これらのアクリル酸エステルは単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いても良い。
メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルと共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、ハロゲンで核置換されたスチレン、1−ビニルナフタレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンなどのビニル芳香族化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸イミド、モノメチルマレエート、ジメチルマレエートなどを挙げることができる。
これらのエチレン性不飽和単量体は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステル単位の割合が、耐候性の観点から、50〜100質量%であることが好ましく、80〜99.9質量%であることがより好ましい。
また、メタクリル系樹脂(A)の耐熱性の観点から0.1〜20質量%の範囲でアクリル酸エステル単位を含有することが好ましい。
本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、強度特性および溶融性の点から、重量平均分子量が、40,000以上、好ましくは40,000〜1,000,000であり、より好ましくは80,000〜500,000である。本発明に用いられるメタクリル系樹脂(A)は、分子鎖が線状のものであっても良いし、分子鎖に分岐を有するものであっても良いし、分子鎖に環状構造を有するものであっても良い。
メタクリル系樹脂(A)は、α,β−不飽和化合物を重合させることができる方法であれば特にその製法によって制限されないが、ラジカル重合によって製造されたものが好ましい。重合法としては、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などが挙げられる。
重合時に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスγ−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、オキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物が挙げられる。重合開始剤は、全単量体100質量部に対して、通常、0.05〜0.5質量部用いられる。重合は、通常50〜140℃の温度で、通常2〜20時間行われる。
メタクリル系樹脂(A)の分子量を制御するために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコエート、メルカプトエタノール、チオ−β−ナフトール、チオフェノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、全単量体に対し通常0.005〜0.5質量%の範囲で使用される。
ポリビニルアセタール樹脂(B)は、通常、化1に表される繰り返し単位を有する樹脂である。
Figure 0005345037
化1中、R3はアセタール化反応に用いた炭素数3以下のアルデヒド由来のアルキル残基または水素原子、R4はアセタール化反応に用いた炭素数4以上のアルデヒド由来のアルキル残基(なお、アルキル残基R3およびR4の炭素数は、アセタール化反応に用いたアルデヒドの炭素数から1を引いた整数iとなる。iがゼロのときはR3は水素原子である。)、k3は炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合、k4は炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合、lはビニルアルコール単位のモル割合、mは酢酸ビニル単位のモル割合である。ただし、lおよび/またはmはゼロであってもよい。
各繰返し単位は、化1に示す配列順序によって特に制限されず、ランダムに配列されていてもよいし、ブロック状に配列されていてもよいし、テーパー状に配列されていてもよい。
なお、繰返し単位のモル%は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ポリビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位など)を一繰返しとして計算されたものである。例えば、化1に示すポリビニルアセタール樹脂では、全繰返し単位(=k3+k4+l+m)に対する、炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル%(k(AA))が、式:(k3/(k3+k4+l+m))×100 によって求められ、炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル%(k(BA))が、式:(k4/(k3+k4+l+m))×100 によって求められ、ビニルアルコールの繰返し単位のモル%(k(VA))が、式:(l/(k3+k4+l+m))×100 によって求められ、酢酸ビニルの繰返し単位のモル%(k(AV))が、式:(m/(k3+k4+l+m))×100 によって求められる。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂(B)は、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化することによって得ることができる。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用いられるポリビニルアルコール樹脂は、粘度平均重合度が、200〜4,000、好ましくは300〜3,000、より好ましくは500〜2,000である。ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度が200未満であると、得られるポリビニルアセタール樹脂の力学物性が不足し、本発明のアクリル系樹脂フィルムの力学物性、特に靭性が不足する傾向があり、フィルムの取扱い性が悪くなる傾向がある。一方、ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度が4,000を超えるとメタクリル系樹脂と溶融混練する際の溶融粘度が高くなり、製造が困難になる傾向がある。
ポリビニルアルコール樹脂は、その製法によって特に限定されず、例えば、ポリ酢酸ビニル等をアルカリ、酸、アンモニア水等によりけん化することにより製造されたものを用いることができる。
ポリビニルアルコール樹脂は、完全けん化されたものであってもよいが、部分的にけん化されたもの、すなわち、部分けん化ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。けん化度は80mol%以上であることが好ましく、97モル%以上であることがさらに好ましく、99.5モル%以上であることが特に好ましい。
また、上記ポリビニルアルコール樹脂として、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、部分けん化エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂等の、ビニルアルコール単位とこれに共重合可能なモノマー単位とからなる共重合体を用いることができる。さらに、一部にカルボン酸等が導入された変性ポリビニルアルコール樹脂を用いることができる。
これらポリビニルアルコール樹脂は、一種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用いられる炭素数3以下のアルデヒドとしては、例えばホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒドなどが挙げられる。これら炭素数3以下のアルデヒドは1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。これら炭素数3以下のアルデヒドのうち、製造の容易さの観点から、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)およびホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)を主体とするものが好ましく、アセトアルデヒドが特に好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の製造に用いられる炭素数4以上のアルデヒドとしては、ブチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。これら炭素数4以上のアルデヒドは1種単独で若しくは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらアルデヒドのうち、製造の容易さの観点からブチルアルデヒドを主体とするものが好ましく、ブチルアルデヒドが特に好ましい。
ポリビニルアルコール樹脂のアセタール化を、ブチルアルデヒドで行った場合、アセタール化されたビニルアルコールの繰返し単位のモル割合はブチラール化度と呼ばれる。また、アセトアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコールの繰返し単位のモル割合はアセトアセタール化度、ホルムアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコールの繰返し単位のモル割合はホルマール化度と呼ばれる。
例えば、ブチルアルデヒド、アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドでアセタール化して得られたポリビニルアセタール樹脂において、ブチルアルデヒドでアセタール化して得られたビニルアセタール単位のモル割合をk(BA)、アセトアルデヒドでアセタール化して得られたビニルアセタール単位のモル割合をk(AA)、ホルムアルデヒドでアセタール化して得られたビニルアセタール単位のモル割合をk(FA)、ビニルアルコール単位のモル割合をl、および酢酸ビニル単位のモル割合をmであるとしたとき、ブチラール化度は、 式:(k(BA)/{k(BA)+k(AA)+k(FA)+l+m})×100で求められる。アセトアセタール化度は、式:(k(AA)/{k(BA)+k(AA)+k(FA)+l+m})×100で求められる。ホルマール化度は、式:(k(FA)/{k(BA)+k(AA)+k(FA)+l+m})×100で求められる。
ポリビニルアルコール樹脂のアセタール化反応は、公知の方法で行うことができる。例えば、ポリビニルアルコール樹脂の水溶液とアルデヒドとを酸触媒の存在下、アセタール化反応させて樹脂粒子を析出させる水媒法;ポリビニルアルコール樹脂を有機溶媒中に分散させ、酸触媒の存在下、アルデヒドでアセタール化反応させ、この反応液をポリビニルアセタール樹脂に対して貧溶媒である水等により析出させる溶媒法などが挙げられる。これらのうち、水媒法が好ましい。
アセタール化に用いられるアルデヒドは、すべてを同時に仕込んでも良いし、1種類づつを別々に仕込んでも良い。また、酸触媒の添加も、全てを同時に仕込んでも良いし、1種類づつを別々に仕込んでも良い。さらに、アルデヒドと酸触媒の添加順序も特に制限されない。
アセタール化反応に用いる酸触媒は特に限定されず、例えば、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類;硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸類;炭酸ガス等の水溶液にした際に酸性を示す気体;陽イオン交換体や金属酸化物等の固体酸触媒などが挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の炭素数4以上のアルデヒドおよび炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位の合計(総アセタール化度)は、JIS K6728(1977年)に記載の方法に則って、ビニルアルコール単位の質量割合(l0)および酢酸ビニル単位の割合(m0)を滴定によって求め、アセタール化されたビニルアルコール単位の質量割合(k0)をk0=1−l0−m0によって求め、これからビニルアルコール単位のモル割合(l)および酢酸ビニル単位のモル割合(m)を計算し、k=1−l−mの計算式によりアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)を計算し、総アセタール化度(mol%)=k/(k+l+m)×100によって求めても良いし、ポリビニルアセタール樹脂を重水素化ジメチルスルフォキサイドに溶解し、1H−NMR、13C−NMRを測定して算出しても良い。
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂(B)は、炭素数4以上のアルデヒドおよび炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位の合計(総アセタール化度)が、全繰返し単位に対して65〜85モル%、好ましくは70〜85モル%、より好ましくは80〜85モル%である。アセタール化された繰返し単位の合計が全繰返し単位に対して65モル%を下回ると、本発明のアクリル系樹脂フィルムの力学物性、特に靭性と耐衝撃性が不足する。一方、85モル%を超えるポリビニルアセタール樹脂を製造する場合には非常に長い時間を要するため、経済的に不利である。
また、好適なポリビニルアセタール樹脂(B)は、ビニルアルコール単位を通常17〜45モル%含み、ビニルアセテート単位を通常0〜5モル%、好ましくは0〜3モル%含む。
水媒法及び溶媒法等において生成したポリビニルアセタール樹脂(B)のスラリーは、通常、酸触媒によって酸性を呈している。酸触媒を除去する方法として、該スラリーの水洗を繰り返し、pHを通常5〜9、好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8に調整する方法;該スラリーに中和剤を添加して、pHを通常5〜9、好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8に調整する方法;アルキレンオキサイド類等を添加する方法などが挙げられる。
上記酸触媒除去のために用いる化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属化合物やアンモニア、アンモニア水溶液が挙げられる。また、アルキレンオキサイド類としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド;エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類が挙げられる。
次に中和により生成した塩、アルデヒドの反応残渣などを除去する。除去方法は特に制限されず、脱水と水洗を繰り返すなどの方法が通常用いられる。
残渣等が除去された含水状態のポリビニルアセタール樹脂は、必要に応じて乾燥され、さらに、必要に応じてパウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工され、成形に供される。パウダー状、顆粒状あるいはペレット状に加工される際に、減圧状態で脱気することによりアルデヒドの反応残渣や水分などを低減しておくことが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムにおいて、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)との質量比(A)/(B)は、95/5〜60/40である。本発明のアクリル系樹脂フィルムの靭性、取扱い性および表面硬度の観点から、質量比(A)/(B)は、90/10〜60/40であることがより好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の割合が質量%を下回ると、本発明のアクリル系樹脂フィルムの靭性や耐衝撃性などの力学物性が低下傾向になり、フィルムの取扱い性が悪くなる傾向がある。一方、ポリビニルアセタール樹脂(B)の割合が40質量%を上回ると、本発明のアクリル系樹脂フィルムの表面硬度が不足する傾向になる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムに、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、発泡剤、充填剤、艶消し剤などを添加してもよい。なお、本発明のアクリル系樹脂フィルムの力学物性および表面硬度の観点から軟化剤や可塑剤は多量に添加しないことが好ましい。
これら添加剤のうち、紫外線吸収剤は、耐候性を向上させる目的で好ましく添加することができる。紫外線吸収剤の種類は特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、またはトリアジン系のものが好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、メタクリル系樹脂(A)の質量とポリビニルアセタール樹脂(B)の質量の合計に対して、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜5質量%、さらに好ましくは0.3〜2.0質量%である。
なお、上記添加剤は、溶融混練前のメタクリル系樹脂(A)および/またはポリビニルアセタール樹脂(B)に添加されていてもよいし、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを溶融混練する際に添加してもよいし、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを含む混合物を作製し、これを製膜する際に添加してもよい。また、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)と上記添加剤を混合し、直接に製膜を行ってアクリル系樹脂フィルムを作製してもよい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成していることが好ましい。メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成していることにより、メタクリル系樹脂(A)に由来する良好な耐熱性および高い表面硬度を持ったアクリル系樹脂フィルムが得られる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、四酸化ルテニウムで電子染色したときに透過型電子顕微鏡にて観察される、染色された分散相が存在することが好ましい。該分散相は小さい方が好ましく、平均径は通常200nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。なお、50nm以下という場合には、二つの成分が互いに完全相溶して、分散粒子が観察されない場合をも含む。
染色された分散相には、ポリビニルアセタール樹脂(B)が含まれていると考えられる。一方、染色されていない連続相はメタクリル系樹脂(A)によって形成されていると考えられる。
なお、アクリル系樹脂フィルムの相構造の観察は、まずミクロトームを用いて超薄切片を作製し、次いで四酸化ルテニウムで電子染色し、透過型電子顕微鏡を用いて行う。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、その製法によって特に制限されないが、上記したメタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを、上記の質量比(A)/(B)で溶融混練し、成膜する方法で得るのが好ましい。
特に、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とに対して、最大せん断速度10sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融混練し、次いで120℃以下の温度に冷却する工程をさらに含むことが好ましい。このような工程を経ることにより、少なくともメタクリル系樹脂(A)が連続相を形成しているアクリル系樹脂フィルムを得ることができる。
上記工程を含む製法であれば、一旦メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの公知の混練機を用いて、各構成成分を最大せん断速度10sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融混練し、その後120℃以下に冷却し、必要に応じてカットしてペレット形状としてから、これをフィルム化しても良いし、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とを含む混合物に対して直接に最大せん断速度10sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融し、120℃以下に冷却してフィルム形状に成形しても良い。
これらの製法のうち、大きなせん断力が得られ、メタクリル系樹脂(A)が連続相を形成しやすく、安定性および取扱い性に優れるので、二軸押出機を用いて溶融混練した後、冷却し、必要に応じてカットして一旦ペレット形状としてから、これをフィルム化するのが好ましい。溶融混練する際の樹脂温度は、140℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、180℃以上が特に好ましい。また、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)との劣化を抑制するという観点から、樹脂温度は、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがさらに好ましい。
溶融混練する際に与える剪断は、最大剪断速度が10sec-1以上であることが好ましく、100sec-1以上であることが特に好ましい。
上記混合物のペレットを作製する際に、10sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融し、次いで120℃以下に冷却した場合には、その後、フィルム化の際に再び10sec-1以上のせん断をかけながら樹脂温度140℃以上で溶融してもよいが、特にその必要はない。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの製造法としては、Tダイ法、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を挙げることができる。良好な表面平滑性および低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、上記溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。このように押し出された溶融混練物の両面を鏡面に接触させて製膜する場合には、フィルム両面を鏡面ロールあるいは鏡面ベルトで加圧し挟むことが好ましい。鏡面ロールあるいは鏡面ベルトによる挟み込み圧力は、高い方が好ましく、線圧として10N/mm以上であることが好ましく、30N/mm以上であることがさらに好ましい。
また、良好な表面平滑性、良好な表面光沢および低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、フィルムを挟み込む鏡面ロールあるいは鏡面ベルトの少なくとも一方の表面温度を60℃以上で且つフィルムを挟み込む鏡面ロールあるいは鏡面ベルトの両方の表面温度を130℃以下とすることが好ましい。フィルムを挟み込む鏡面ロールあるいは鏡面ベルトの両方の表面温度が60℃未満である場合には、得られるアクリル系樹脂フィルムの表面平滑性、ヘイズが不足する傾向にあり、少なくとも一方の表面温度が130℃を超える場合には、フィルムと鏡面ロールあるいは鏡面ベルトが密着しすぎるため、鏡面ロールあるいは鏡面ベルトからフィルムを引き剥がす際にフィルム表面が荒れやすくなり、得られるアクリル系樹脂フィルムの表面平滑性が低くなるか、またはヘイズが高くなる傾向になる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、連続相がメタクリル系樹脂(A)によって形成されていることが好ましい。樹脂温度140℃以上に昇温、あるいは樹脂温度140℃以上で溶融混練した後、樹脂温度120℃以下の温度に冷却する。冷却は溶融状態のストランドを冷水を溜めた水槽に浸すなどの方法で自然放冷に比べて急速に行うことが好ましい。急速冷却することによって、メタクリル樹脂(A)が連続相を形成し、かつメタクリル樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とが部分相溶または完全相溶しやすくなる。さらに、分散相の大きさが非常に小さくなる。分散相の大きさは、通常200nm以下、好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。なお、50nm以下という場合には、二つの成分が互いに完全相溶して、分散粒子が観察されない場合をも含む。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも片面の粗度は1.5nm以下、好ましくは0.1〜1.0nmである。これにより、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、意匠性を要求される分野に用いられる場合には、表面光沢や本発明のアクリル系樹脂フィルムに印刷された絵柄層の鮮明さに優れる。また、光学用途においては、光線透過率等の光学特性や表面賦形を行う際の賦形精度に優れる。
また、本発明のアクリル系樹脂フィルムのヘイズは、厚さ125μmにおいて、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。これにより、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、意匠性を要求される分野に用いられる場合には、表面光沢や本発明のアクリル系樹脂フィルムに印刷された絵柄層の鮮明さに優れる。また、液晶保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においては、光源の利用効率が高まり好ましい。さらに、表面賦形を行う際の賦形精度に優れるため好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの厚さは、500μm以下が好ましい。500μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性・打抜き性などの二次加工性が低下し、フィルムとしての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利である。特に、当該フィルムの厚さとしては50〜300μmがより好ましく、75〜200μmが特に好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは着色されていてもよい。着色法としては、メタクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)との混合物自体に、顔料又は染料を含有させ、フィルム化前の樹脂自体を着色する方法;アクリル系樹脂フィルムを、染料が分散した液中に浸漬して着色させる方法(染色法)などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面に、絵柄、文字、図形などの模様が印刷されていてもよい。模様は有彩色のものであっても、無彩色のものであってもよい。印刷は、印刷層の退色を防ぐために、後述する他の熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂と接する側に施すのが好ましい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、表面が好ましくはHBまたはそれよりも硬い鉛筆硬度を有し、より好ましくはFまたはそれよりも硬い鉛筆硬度を有し、さらに好ましくはHまたはそれよりも硬い鉛筆硬度を有する。
本発明の積層フィルムは、前述の本発明アクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、他の熱可塑性樹脂層が少なくとも1層、直接または接着層を介して設けられているものである。
積層に適した他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂などが挙げられる。
積層フィルムの製法は、特に制限されない。例えば、(1)本発明のアクリル系樹脂フィルムと、他の熱可塑性樹脂フィルムとを別々に用意しておき、加熱ロール間で連続的にラミネートする方法、プレスで熱圧着する方法、圧空又は真空成形すると同時に積層する方法、接着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション); (2)本発明のアクリル系樹脂フィルムを基材にして、Tダイから溶融押出した他の熱可塑性樹脂をラミネートする方法; (3)前述のメタクリル系樹脂(A)および前述のポリビニルアセタール樹脂(B)の混合物と、別の熱可塑性樹脂とを共押出することにより、本発明のアクリル系樹脂フィルムの層と、他の熱可塑性樹脂フィルムの層とが積層されたフィルムを得る方法などが挙げられる。
これらの方法のうち、(1)または(2)の方法では、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは他の熱可塑性樹脂フィルムの貼り合せ面側には、コロナ放電処理などの表面処理が施されていてもよい。
本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムは、その片面に金属又は金属酸化物からなる層が設けられていてもよい。金属としては、例えば、アルミニウム、珪素、マグネシウム、パラジウム、亜鉛、錫、ニッケル、銀、銅、金、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタンなどを使用することができ、また金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、珪素酸化物、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウムなどを使用することができる。これらの金属及び金属酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。これらのなかでもアルミニウムは、優れた意匠性を有し、かつ工業的にも安価に入手できるので、特に好ましい。これらの金属及び/又は金属酸化物からなる層を設ける方法としては真空蒸着法が通常用いられるが、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相堆積)などの方法を用いてもよい。金属及び/又は金属酸化物からなる層の厚さは、一般的には5〜100nm程度である。
本発明の成形体は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムが、他の熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の表面に接着されてなるものである。
該成形体に用いられる他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂などが挙げられる。他の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
本発明の成形体の製法は、特に制限されない。例えば、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムを、他の熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の表面に、加熱下で真空成形・圧空成形・圧縮成形することにより、本発明の成形体を得ることができる。本発明の成形体は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムが、成形体の最表層に接着されて配置されており、それによって、表面平滑性、表面硬度、光沢などに優れ、さらにアクリル系樹脂フィルムに印刷された絵柄等が鮮明に表示される。
本発明に係る成形体の製法のうち、好ましい方法は、射出成形同時貼合法と一般に呼ばれている方法である。
この射出成形同時貼合法は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムを射出成形用雌雄金型間に挿入し、その金型に該フィルムの片方の面から溶融した熱可塑性樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時に、その成形体に前記フィルムを貼合する方法である。
金型に挿入されるフィルムは、平らなものそのままであってもよいし、真空成形、圧空成形等で予備成形して得られた凹凸形状のものであってもよい。
フィルムの予備成形は、別個の成形機で行ってもよいし、射出成形同時貼合法に用いる射出成形機の金型内で予備成形を行ってもよい。後者の方法、すなわち、フィルムを予備成形した後、その片面に溶融樹脂を射出する方法は、インサート成形法と呼ばれる。
フィルムに本発明の積層フィルムを用いる場合には、積層された他の熱可塑性樹脂の層が射出成形される樹脂側になるように、すなわち、アクリル系樹脂フィルムが最表層となるように配置することが好ましい。
このようにして、最表層に本発明のアクリル系樹脂フィルムが積層された成形体を得ることができる。
本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは積層フィルムは、良好な取扱い性、良好な表面平滑性および高表面硬度を活かして、意匠性の要求される成形品や高度な光学特性が要求される成形品、すなわち、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ風防、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、自動車内装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、レントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓等の機器関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁等の交通関係部品;その他、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク等の表面の加飾フィルム兼保護フィルム、壁紙;マーキングフィルム;液晶保護フィルム、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面フィルム、拡散フィルム等の光学関係部品等に好適に用いられる。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、特にことわりのない限り「質量部」を表し、「%」は、特にことわりのない限り「質量%」を表す。
本発明のアクリル系樹脂フィルムの特性評価を以下の方法に従って行った。
(1)重量平均分子量
テトラヒドロフランを溶媒に用い、昭和電工株式会社製Shodex(商標)GPC SYSTEM11に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー用カラムとしてShodex(商標)KF−806Lを繋ぎ、検出器としてShodex(商標)示差屈折率検出器RI−101を用いて測定した。試料溶液は、樹脂を3mg精秤し、これを3mlのテトラヒドロフランに溶解し、0.45μmのメンブランフィルターでろ過することにより調製した。測定の際の温度は40℃、流量は、1.0ml/min.とし、ポリマーラボラトリーズ製標準ポリメタクリル酸メチルで作成した検量線に基づいて、ポリメタクリル酸メチル換算分子量として重量平均分子量を算出した。
(2)フィルム表面の粗度の測定
原子間力顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPI4000プローブステーションE−sweep環境制御ユニット)を用いて、表面の形状をDFMモードによって測定した。プローブはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製SI−DF20(背面Al)を用いた。なお、試料の測定に先立ち、ピッチ10μm、段差100nmの参照試料を測定し、装置のX軸、Y軸の測定誤差が10μmに対して5%以下、Z軸の誤差が100nmに対して5%以下であることを確認した。
試料の観察領域は2μm×2μmとし、測定周波数を1.0Hzとした。スキャンライン数はX軸を512、Y軸を512とした。測定は25℃±2℃、湿度30±5%の大気環境で行った。得られた測定データを、装置に付属のデータ処理ソフトウェアにより解析し、平均面粗さRaを求めた。すなわち、装置の測定ソフトウェアの[ツール]メニューの[3次傾き補正]コマンドを選択し、フィルムの傾きや大きなうねりの全面傾きを補正した後、[解析]メニューの[表面粗さ解析]コマンドを選択し、平均面粗さRaを得た。平均面粗さRaは、以下のように定義される。
※平均面粗さRa:基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値。
Figure 0005345037
ここでF(X,Y)は(X,Y)座標での高さの値を表す。Z0は以下で定義されるZデータの平均値を表す。
Figure 0005345037
また、S0は、測定領域の面積を表す。
この平均面粗さRaをフィルムの両面(便宜上、A面およびB面とする)において異なる10箇所の領域で測定し、10箇所の平均面粗さRaの平均値をフィルム表面の粗度とした。
3次傾き補正は、測定した試料表面を3次の曲面で最小2乗近似によってフィッティングすることによって行い、フィルム試料の傾きおよびうねりの影響を排除するために行った。
(3)透過型電子顕微鏡によるモルフォロジー観察
アクリル系樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)を溶融混練後、冷却した。これを、ウルトラミクロトーム(RICA社製 ReichertULTRACUT−S)を用いて超薄切片を作製した。この該切片を四酸化ルテニウムで電子染色し、ポリビニルアセタール樹脂(B)部分を染色した。こうして作製した試料のモルフォロジーを株式会社日立製作所製透過型電子顕微鏡H−800NAを用いて観察した。観察されたモルフォロジーにおいて非染色部が連続相を形成していたものを○、非染色部が不連続であったものを×として評価した。なお、非染色部は主にメタクリル系樹脂(A)からなる部分である。
また、染色された分散相の平均粒子径を計測した。染色部は、ポリビニルアセタール樹脂(B)からなる部分である。
(4)引張り試験における靭性の測定
厚さ125μmのフィルムを、Dumb Bell Ltd.製スーパーダンベルカッターで打ち抜いて、JIS K6251に記載のダンベル状2号形の試験片を得た。株式会社島津製作所製オートグラフAG−500を用いて、該試験片を引張り速度5mm/min.で引張り、試験片が破断するまでに要するエネルギーで靭性を評価した。
(5)デュポン式落球衝撃試験
長さ25mm×幅25mm×厚さ125μmのフィルムを、JIS K5600−5−3に記載のデュポン方式で、0.3〜1.0kgの錘を用いて落球衝撃試験を行い、落球によってフィルムが破砕しない最大衝撃(単位:J)を求めた。なお、試験に用いる錘の重さ(単位:kg)と落下する距離(単位:m)から、フィルムに与える衝撃(単位:J)を下記の計算式よって算出することが出来る。
フィルムに与える衝撃[J]=
錘の重さ[kg]×重力加速度[m/s2]×錘が落下する距離[m]
(6)フィルムのヘイズ
JIS K7136に従って、厚さ125μmのフィルムのヘイズを測定した。
(7)フィルムの表面硬度
JIS K5400に従って、厚さ125μmのフィルムの鉛筆硬度を測定した。
(8)フィルムの取扱い性
(A)フィルムの製膜同時トリミング性
プラスチック工学研究所製GT−40単軸押出し機を用いて幅500mmのTダイよりフィルム状成形体を押出し、フィルムを巻き取る前に、フィルムに対して60°の角度でフェザー株式会社製フェザーS 青函片刃(品番FAS−10)をフィルムの両端から5cmのところに接触させることによりトリミングを行い、製膜同時トリミング性を評価した。フィルムが直線的に切断でき2時間以上フィルムのMD方向以外に亀裂が全く入らなかった場合を○、フィルムが直線的に切断できるが2時間以内にフィルムのMD方向以外に一度でも亀裂が入った場合を△、フィルムが直線的に切断できなかった場合を×として評価した。
(B)フィルムの切断性
株式会社ダンベル製スーパーダンベルカッターを株式会社ダンベル製SDL−200型レバー式試料裁断器に取り付け、株式会社ダンベル製台紙(サイズ:160mm×200mm×3mm)の上にフィルムを置いて、フィルムからJIS K7162に記載の1A形ダンベル状試験片を10回打抜いた際に、1A形ダンベル形状以外に亀裂が10回とも入らなかった場合を○、1A形ダンベル形状以外に1回以上亀裂が入った場合を△、1A形ダンベル形状以外に亀裂が10回すべてに入った場合を×として評価した。
(9)フィルムの表面光沢
JIS K7105に従って、厚さ125μmのフィルムの60度表面光沢度を測定した。
〔メタクリル系樹脂〕
表1に示す比率のメタクリル酸メチル単位およびアクリル酸メチル単位からなるメタクリル系樹脂をバルク重合法により作製した。作製したメタクリル系樹脂の重量平均分子量を表1に示した。
Figure 0005345037
〔ポリビニルアセタール樹脂〕
ポリビニルアルコール樹脂を溶解した水溶液に、アルデヒド化合物ならびに酸触媒(塩酸)を添加し、攪拌してアセタール化し、樹脂を析出させた。公知の方法に従ってpH=6になるまで洗浄し、次いでアルカリ性にした水性媒体中に懸濁させて攪拌しながら後処理し、再びpH=7になるまで洗浄し、揮発分が0.3%以下になるまで乾燥することにより、表2に示すポリビニルアセタール樹脂をそれぞれ得た。
Figure 0005345037
実施例1
メタクリル系樹脂(A−1)およびポリビニルアセタール樹脂(B−2)を表3に記載した処方で、日本製鋼所製二軸混練押出機TEX−44α(L/D=40)を用いて混練してペレットを得た。得られたペレットをプラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイより押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ125μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度(便宜上、A面およびB面と記載した。以下、同様。)、モルフォロジー、靭性、デュポン式落球衝撃試験、ヘイズ、表面硬度、取扱い性および表面光沢の評価結果を表3に示した。
実施例2〜7
メタクリル系樹脂および/またはポリビニルアセタール樹脂の種類を表3に記載した処方に変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ125μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、モルフォロジー、靭性、デュポン式落球衝撃試験、ヘイズ、表面硬度、取扱い性および表面光沢の評価結果を表3に示した。
実施例8
実施例1において、Tダイ直下において2本の金属製鏡面ロールで挟み込まず、フィルムを1本の90℃に温度調節した鏡面金属ロールのみに接触させ、片面を空気に開放したこと以外は実施例1と同様にして厚さ125μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、モルフォロジー、靭性、デュポン式落球衝撃試験、ヘイズ、表面硬度、取扱い性および表面光沢の評価結果を表3に示した。
Figure 0005345037
実施例9〜14
メタクリル系樹脂および/またはポリビニルアセタール樹脂の種類を表3に記載した処方に変更した以外は実施例8と同様にして、厚さ125μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、モルフォロジー、靭性、デュポン式落球衝撃試験、ヘイズ、表面硬度、取扱い性および表面光沢の評価結果を表3に示した。
比較例1
メタクリル系樹脂(A−1)のみを用いて、プラスチック工学研究所製GT−40を用いて幅500mmのTダイより押出成形し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込むことにより、厚さ125μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、モルフォロジー、靭性、デュポン式落球衝撃試験、ヘイズ、表面硬度、取扱い性および表面光沢の評価結果を表4に示した。
比較例2
メタクリル系樹脂(A−2)のみを用いたこと以外は、比較例1と同様にして厚さ125μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度モルフォロジー、靭性、デュポン式落球衝撃試験、ヘイズ、表面硬度、取扱い性および表面光沢の評価結果を表4に示した。
比較例3
メタクリル系樹脂(3)のみを用いて、比較例1と同様にしてフィルムを作製しようとしたが、樹脂が非常に脆いためフィルム状の成形体を作製することができなかった。
比較例4〜7
メタクリル系樹脂およびポリビニルアセタール樹脂を表4に示す割合で用いた以外は、比較例1と同様にして厚さ125μmのフィルムを得た。このフィルムの表面の粗度、モルフォロジー、靭性、デュポン式落球衝撃試験、ヘイズ、表面硬度、取扱い性および表面光沢の評価結果を表4に示した。
表3および表4に示すように、本発明のアクリル系樹脂フィルムは、メタクリル系樹脂のみからなるフィルムと同等の表面平滑性とヘイズを有し、しかも、メタクリル系樹脂だけでは達成できなかった製膜同時トリミング性、切断性等の取り扱い性が向上しただけではなく、靭性、耐衝撃性も向上し、これまでにないバランスを達成したフィルムであることがわかった。
Figure 0005345037

Claims (9)

  1. 重量平均分子量40000以上のメタクリル系樹脂(A)と、
    粘度平均重合度200〜4000のポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化してなるポリビニルアセタール樹脂(B)とを、95/5〜60/40の質量比(A)/(B)で含有してなるフィルムであって、
    前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、アルデヒドでアセタール化された繰返し単位が全繰返し単位に対して65〜85モル%含まれ且つ炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル比が90/10〜0/100のものであり、且つ少なくとも片方の面の粗度が1.5nm以下であるアクリル系樹脂フィルム。
  2. 四酸化ルテニウムで電子染色したときに透過型電子顕微鏡にて観察される、染色された分散相の平均径が50nm以下である請求項1に記載のアクリル系樹脂フィルム
  3. JIS K7136に準じて測定したヘイズが0.3%以下である請求項1または2に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  4. HBまたはそれより硬い鉛筆硬度を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  5. 前記メタクリル系樹脂(A)と前記ポリビニルアセタール樹脂(B)とを溶融混練し、Tダイから溶融状態で押し出し、該押し出されたものの両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形してなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂フィルム。
  6. 粘度平均重合度が200〜4000のポリビニルアルコール樹脂を炭素数4以上のアルデヒドと炭素数3以下のアルデヒドを用いてアセタール化して、アルデヒドでアセタール化された繰返し単位が全繰返し単位に対して65〜85モル%含まれ且つ炭素数4以上のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位/炭素数3以下のアルデヒドでアセタール化された繰返し単位のモル比が90/10〜0/100となるポリビニルアセタール樹脂(B)を得、
    重量平均分子量が40000以上のメタクリル系樹脂(A)と、前記ポリビニルアセタール樹脂(B)とを95/5〜60/40の質量比(A)/(B)で溶融混練し、
    Tダイから溶融状態で押し出し、該押し出されたものの両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形することを含む、アクリル系樹脂フィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムが熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の表面に接着されてなる成形体。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムの少なくとも一方の面に、他の熱可塑性樹脂層が少なくとも1層設けられてなる積層フィルム。
  9. 請求項8に記載の積層フィルムが熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の表面に接着されてなる成形体。
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