JP6370073B2 - ポリビニルアセタール系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、可塑剤を使用しなくても、長期に渡って優れた可撓性と機械強度を安定的に発現し、樹脂密着性に優れるポリビニルアセタール系樹脂組成物に関する。
ポリビニルアセタール樹脂は、合わせガラス用中間膜、金属処理のウォッシュプライマー、各種塗料、接着剤、樹脂加工剤、セラミックスバインダー等に多目的に用いられており、近年では電子材料へと用途が拡大している。なかでも、ポリビニルアセタール樹脂からなるフィルムを中間層として有する合わせガラスは、石等の飛来物が衝突してガラスが破損した場合でも、ガラスの間に介在させたフィルムが衝撃を吸収し、飛来物の貫通を防止できることから、特に好適に用いられている。
このような、優れた可撓性を発現させるため、従来はポリビニルアセタール樹脂に可塑剤を添加することで可塑化させることが行われている。
しかしながら、可塑剤を含有させると、使用中に可塑剤が環境中に飛散したり、接触している他の樹脂に移行したりするという問題が生じていた。例えば、セラミックコンデンサ用バインダーにポリビニルブチラールを用いた場合に、フタル酸エステルのような低分子量の可塑剤を含有させると、時間経過と共に可塑剤が環境中に飛散し、可撓性が低下するため、長期安定性が低下するという問題があった。
一方で、可塑剤を添加しない方法も試行されてはいるが、可塑剤を用いない場合、樹脂との密着性が低下するため、樹脂同士と貼り合わせる用途には使用できないという問題もあった。
特許文献1には、遮音性能を有する合わせガラス用中間膜に可塑剤を添加して用いる方法が記載されている。しかしながら、この方法では、可塑剤量の異なるポリビニルアセタール樹脂を積層させているため、可塑剤量が多い方から低い方へ可塑剤が移行するという問題が起きていた。それに対して、特許文献1では可塑剤を浸透しない透明フィルムを介して、可塑剤量の異なる樹脂を積層させるという処理を施しているが、このような方法では、可塑剤がポリビニルブチラール樹脂層と透明フィルムとの界面にブリードアウトし、接着性を低下させるとともに、透明フィルムを侵食するという問題が起きていた。
更に、もう1つの問題として、優れた可撓性を発現させるためには、ポリビニルアセタール樹脂との相溶性に優れる可塑剤を選定する必要があるが、その作業は煩雑であった。例えば、物性改善のために、ポリビニルアセタールの組成、例えば、アセタール化に用いるアルデヒドや、ケン化度、アセタール化度を変更した場合には、相溶性の観点から従来用いていた可塑剤を使用できなくなり、可塑剤を新たに選定する必要があった。
特開平6−135748号公報
本発明は、可塑剤を使用しなくても、長期に渡って優れた可撓性と機械強度を安定的に発現し、樹脂密着性に優れるポリビニルアセタール系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂と、ガラス転移温度が−100〜20℃の島成分樹脂とを含有するポリビニルアセタール系樹脂組成物であって、連続相としての前記ポリビニルアセタール樹脂中に、分散相として前記島成分樹脂が分散した構造を有しており、前記島成分樹脂は、架橋構造を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルであり、ポリビニルアセタール樹脂と、島成分樹脂との合計100重量%中、前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20〜90重量%、前記島成分樹脂の含有量が10〜80重量%であり、前記島成分樹脂の全量を100重量%とした場合、ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合が10重量%以上であるポリビニルアセタール系樹脂組成物である。
以下、本発明を詳述する。
本発明者は、ポリビニルアセタール樹脂に加えてガラス転移温度が所定の範囲内である島成分樹脂を含有するポリビニルアセタール系樹脂組成物であって、連続相としてのポリビニルアセタール樹脂中に、分散相として島成分樹脂が分散した構造を有し、ポリビニルアセタール樹脂及び島成分樹脂の含有量、及び、島成分樹脂中のポリビニルアセタール樹脂と結合している樹脂の割合を所定の範囲内とすることで、可塑剤を使用しなくても、長期に渡って優れた可撓性と機械強度を安定的に発現し、さらに、優れた樹脂密着性を発現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、ポリビニルアセタール樹脂と、ガラス転移温度が−100〜20℃の島成分樹脂とを含有するポリビニルアセタール系樹脂組成物であって、連続相としての上記ポリビニルアセタール樹脂中に、分散相として上記ガラス転移温度が−100〜20℃の島成分樹脂が分散した構造(本明細書中、このような構造を、海島構造ともいう)を有する。
なお、ポリビニルアセタール系樹脂組成物が海島構造を有していることは、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た後、得られたフィルムをカミソリ刃、ミクロトーム等を用いて切断し、その切断面を、例えば、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、位相差顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、顕微ラマン等を用いて観察することにより判断することができる。
上記ガラス転移温度が−100〜20℃の島成分樹脂は、連続相としての上記ポリビニルアセタール樹脂中に、略球状で分散していることが好ましい。この場合、分散相である上記島成分樹脂の平均分散径(直径)は特に限定されないが、0.1〜10μm程度であることが好ましい。
なお、分散径(直径)は、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た後、得られたフィルムをカミソリ刃、ミクロトーム等を用いて切断し、その切断面を、例えば、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡、位相差顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡、顕微ラマン等を用いて撮影し、得られた写真を、画像解析装置を用いて解析処理することにより測定することができる。平均分散径(直径)は、任意に選んだ100個の分散相の分散径(直径)の平均値を求めることにより算出することができる。
上記分散相の平均分散径が10μmを超えると、応力集中が起こりやすく、分散相の変形から連続相の変形を均一に誘発できないため、優れた力学特性を発現させることができないことがある。一方、分散相の平均分散径が0.1μm未満であるポリビニルアセタール系樹脂組成物を作製することは、困難である。分散相である上記島成分樹脂の平均分散径は、0.1〜3μmがより好ましく、0.1〜2μmが更に好ましい。島成分樹脂の平均分散径が上記範囲であると、連続相と分散相が偏りなく存在するため、一様な樹脂密着性を発現する。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、周波数1Hzで動的粘弾性スペクトルを測定したとき、上記ポリビニルアセタール樹脂に由来する損失正接の極大値を50℃以上に有し、かつ、上記島成分樹脂に由来する損失正接の極大値を−100〜20℃に有することが好ましい。
上記損失正接の極大値を上記範囲内とすることによって、可塑剤を含有しなくとも、優れた可撓性と機械強度、及び、樹脂密着性を発現することができる。これは、低いガラス転移温度を有する島成分樹脂が塑性変形することによって、連続相であるポリビニルアセタール樹脂相のミクロレベルでの形状変形を誘発されるため、可撓性が発現されると考えられる。一方、優れた機械強度は、連続相を形成するポリビニルアセタール樹脂が有する水素結合による凝集力によって発現されるものと考えられる。また、低いガラス転移温度を有する島成分樹脂が塑性変形することによって、連続相であるポリビニルアセタール樹脂相のミクロレベルでの形状変形を誘発し、表面に追従することができる。これにより、優れた樹脂密着性が発現されると考えられる。
上記ポリビニルアセタール樹脂に由来する損失正接が極大値を示す温度は、50℃以上であることが好ましいが、55℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが更に好ましい。
上記島成分樹脂に由来する損失正接が極大値を示す温度は、−100〜20℃であることが好ましいが、より好ましい下限は−80℃、更に好ましくは−60℃である。より好ましい上限は18℃、更に好ましい上限は16℃である。
各成分の損失正接が極大値を示す温度が上記範囲にあるとき、使用頻度が高いと予想される10〜30℃の領域で安定した可撓性と強靭性、及び、樹脂密着性を発現させることができる。
また、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、引張法、せん断法にて周波数1Hz、ひずみ量1%で動的粘弾性スペクトルを測定したとき、10〜30℃における引張貯蔵弾性率が1×10〜3×10Pa・sであり、せん断貯蔵弾性率が1×10〜1×10Pa・sであることが好ましく、0〜35℃における引張貯蔵弾性率が1×10〜3×10Pa・sであり、せん断貯蔵弾性率が1×10〜1×10Pa・sであることがより好ましく、−10〜40℃における引張貯蔵弾性率が1×10〜3×10Pa・sであり、せん断貯蔵弾性率が1×10〜1×10Pa・sであることが更に好ましい。
各貯蔵弾性率を上記範囲に調整することにより、ポリビニルアセタール系樹脂組成物を長期に渡って優れた可撓性と機械強度を安定的に発現するとともに、優れた樹脂密着性を発現させるものとすることができる。なお、10℃〜30℃における引張貯蔵弾性率のより好ましい下限は2×10Pa・s、より好ましい上限は1×10Pa・sであり、せん断貯蔵弾性率のより好ましい下限は2×10Pa・s、より好ましい上限は8×10Pa・sである。
なお、動的粘弾性スペクトルは、例えば、ARES(TAインスツルメント社製)やDVA−200(アイティー計測制御社製)等の動的粘弾性測定装置により、周波数1Hz、昇温速度5℃/分にて、−50℃から100℃の温度範囲で測定することができる。
また、各貯蔵弾性率については、上記動的粘弾性スペクトルを用いることで確認することができる。
本発明では、ポリビニルアセタール系樹脂組成物を海島構造とするため、上記ポリビニルアセタール樹脂と、上記島成分樹脂との合計100重量%中、上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量を20〜90重量%、上記島成分樹脂の含有量を10〜80重量%とすることを必須とする。上記含有量が上記範囲を外れると、動的粘弾性スペクトルを上記範囲に調整することができず、長期に渡って優れた可撓性と機械強度を安定的に発現し、優れた樹脂密着性を発現することが困難になることがある。
特に、上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20重量%未満であると、優れた機械強度を発現できず、90重量%を超えると、優れた可撓性を発現できない。
上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量の好ましい下限は30重量%、好ましい上限は80重量%である。また、より好ましい下限は40重量%、より好ましい上限は70重量%である。
また、上記島成分樹脂の含有量が10重量%未満であると、優れた樹脂密着性や柔軟性を発現できず、80重量%を超えると、島成分樹脂が分散した構造とならず、優れた強靭性を発現できない。
上記島成分樹脂の含有量の含有量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は70重量%である。また、より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は60重量%である。
上記ポリビニルアセタール樹脂及び上記島成分樹脂の含有量を上記範囲に調整するためには、例えば、本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物を上記ポリビニルアセタール樹脂の存在下で(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマーの重合を行う場合に、例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂に対する(メタ)アクリル樹脂を構成するモノマーの量を調整したり、重合開始剤の添加量を調整したりすることが好ましい。
また、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の相構造を調整したり、動的粘弾性スペクトルを上記範囲に調整するためには、上記ポリビニルアセタール樹脂及び上記島成分樹脂の組成に加えて、ガラス転移温度等の物性、含有量等を調整したり、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の製造方法を工夫したりすることが好ましい。
上記ポリビニルアセタール樹脂は特に限定されないが、重合度800〜5000、ケン化度80モル%以上のポリビニルアルコールをアセタール化することで得られるポリビニルアセタール樹脂が好ましい。このようなポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、ポリビニルアセタール系樹脂組成物を長期に渡って優れた可撓性と機械強度を安定的に発現するものとすることができる。
ポリビニルアルコールの重合度が800未満であると、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の機械強度が低下することがある。ポリビニルアルコールの重合度が5000を超えると、ポリビニルアルコールのアセタール化の際に溶液粘度が異常に高くなってアセタール化が困難になることがある。ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は4500である。
ポリビニルアルコールのケン化度が80モル%未満であると、ポリビニルアルコールの水への溶解度が低下するためアセタール化が困難になることがある。また、ポリビニルアルコールの水酸基量が少ないためアセタール化反応が進みにくくなることがある。ポリビニルアルコールのケン化度のより好ましい下限は85モル%である。
上記アセタール化の方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、塩酸等の酸触媒の存在下でポリビニルアルコールの水溶液にアルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
上記アルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、生産性、特性バランス等の点で、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、ブチルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒドが好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(本明細書中、アセタール基がアセトアセタール基である場合には、アセトアセタール化度ともいい、アセタール基がブチラール基である場合には、ブチラール化度ともいう)は、アルデヒドを単独で用いた場合又は2種以上を併用した場合のいずれであっても、好ましい下限が40モル%、好ましい上限が80モル%である。アセタール化度が40モル%未満であると、ポリビニルアセタール樹脂の分子間での水素結合が強く凝集力が高くなりすぎて、特に可撓性を発現しにくい。アセタール化度が80モル%を超えると、ポリビニルアセタール樹脂の分子間での水素結合が弱くなり凝集力が低くなりすぎて、特に強靭性を発現しにくい。アセタール化度のより好ましい下限は55モル%、より好ましい上限は75モル%である。
なお、アセタール化度の計算方法については、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基がポリビニルアルコールの2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用する。
上記島成分樹脂は、ガラス転移温度が−100〜20℃である。これにより、強度と柔軟性のバランスに優れた特性を得ることが可能となる。
ガラス転移温度が−100℃未満であると、柔軟性が高くなりすぎて、優れた機械強度を発現しない。また、ガラス転移温度が20℃を超えると、分散相が変形に追従しにくくなるため、連続相と分散相の界面で剥離し、可撓性、強靭性、及び、樹脂密着性を発現しない。ガラス転移温度のより好ましい下限は−80℃、更に好ましい下限は−60℃で、より好ましい上限は18℃、更に好ましい上限は16℃ある。
なお、上記ガラス転移温度は、例えば、DSC6020(日立ハイテクサイエンス社製)等の示差走査熱量測定装置により測定することができる。
上記島成分樹脂は、上記ポリビニルアセタール樹脂とは異なるものである。
上記島成分樹脂としては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアセタール、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン等が挙げられる。なかでも、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが、ガラス転移温度を制御しやすく、また、ポリビニルアセタール系樹脂組成物とした際の島成分樹脂に由来する損失正接を低い温度とすることができる。また、上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、様々な官能基の導入が容易であり、可撓性、機械強度、及び、樹脂密着性に優れたポリビニルアセタール系樹脂組成物が得られることから好適である。
上記島成分樹脂は、水酸基を含んでいてもよい。島成分樹脂中に水酸基が存在することにより、ポリビニルアセタール樹脂との相互作用が強くなり、その結果、連続相と分散相の相互作用が強くなり、相界面で剥離しにくくなるため、優れた機械強度を発現するようになる。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、島成分樹脂の全量を100重量%とした場合、ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合が10重量%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合を10重量%以上とすることで、連続相と分散相の界面を安定化させることができ、相界面での剥離を起きにくくすることができる。その結果、安定した強度や伸度、及び、樹脂密着性を発現することが可能となる。
ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合は15重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。
また、上記割合は90重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。上記範囲を満たすことで、ポリビニルアセタール樹脂と島成分樹脂の優れた点を両立することができるため、長期に渡って優れた可撓性と機械強度とを安定的に発現することできると共に、優れた樹脂密着性を発揮する。
上記「ポリビニルアセタール樹脂と結合している」とは、島成分樹脂とポリビニルアセタール樹脂とが共有結合にて結合している状態のことをいう。このような結合としては、例えば、島成分樹脂とポリビニルアセタール樹脂とがブロック共重合体となって結合している状態や、島成分樹脂とポリビニルアセタール樹脂とがグラフト共重合体となって結合している状態等が挙げられる。
上記島成分樹脂中の上記ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合は、以下の方法で評価することができる。
まず、ポリビニルアセタール樹脂に結合している島成分樹脂は溶解せずに、残りの島成分樹脂のみを溶解する溶媒を選定し、その後、ポリビニルアセタール系樹脂組成物をその溶媒に溶解させ、遠心分離を行うことにより、上澄みと沈殿に分離する。分離前のポリビニルアセタール系樹脂組成物と得られた沈殿物に対し、重量測定を行うと共に、NMR測定を行い、ポリビニルアセタール樹脂に対する島成分樹脂の重量比率(ポリビニルアセタール樹脂を100重量%とする)を算出する。
次いで、重量と算出した比率の積を計算することにより、分離前のポリビニルアセタール系樹脂組成物と得られた沈殿物に含まれる島成分樹脂の重量を算出する。ここで、ポリビニルアセタール樹脂と島成分樹脂の結合は溶媒に溶解しただけでは切断されることがないため、沈殿に含まれる島成分樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂に結合しているとみなせるので下記式が成り立つ。

(ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合)(重量%)
=(沈殿中の島成分樹脂の重量)/(ポリビニルアセタール系樹脂組成物中の島成分樹脂の重量)×100

なお、ポリビニルアセタール樹脂に結合している島成分樹脂は、前記結合により、大幅に溶剤溶解性が変わるため、島成分樹脂単独なら溶解する溶媒にも溶解しない場合がある。今回選定する溶媒はそのような溶媒である。
ポリビニルアセタール樹脂に結合している島成分樹脂は溶解せずに島成分樹脂のみを溶解する溶媒を選定する方法は以下の通りである。ポリビニルアセタール系樹脂組成物を溶媒に溶解させ、遠心分離を行うことにより、上澄みと沈殿に分離する。その後、上澄みに対し、NMR測定を行い、ポリビニルアセタール樹脂が溶出していない溶媒を、ポリビニルアセタール樹脂に結合している島成分樹脂は溶解せずに島成分樹脂のみを溶解する溶媒とする。このような溶媒としては、例えば、アセチル基が3%以下のポリビニルブチラールと疎水性島成分樹脂でポリビニルアセタール系樹脂組成物を構成している場合、トルエン、キシレン、ヘキサンなどの単独溶媒、または、それらの混合溶媒を用いる。
上記島成分樹脂の全量を100重量%とした場合、ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合が10重量%以上とする方法としては、例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂の存在下で上記島成分樹脂を構成するモノマーの重合を行う方法等が挙げられる。
上記島成分樹脂は、架橋構造を有してもよい。架橋構造を有することにより、弾性率を制御でき、優れた可撓性と強靭な強度を併せ持つポリビニルアセタール系樹脂組成物を作製することができる。上記島成分樹脂に架橋構造を導入する方法は特に限定されず、例えば、ポリマー構造中に互いに反応する官能基を予め導入しておいて架橋を形成させる方法、ポリマー構造中に存在する官能基に対して反応する官能基を2つ以上有する架橋剤を用いて架橋させる方法、過酸化物等の水素引き抜き能を有するラジカル発生剤を用いてポリマーを架橋させる方法、電子線照射により架橋させる方法等が挙げられる。なかでも、海島構造を制御しやすく、生産性がよいことから、ポリマー構造中に互いに反応する官能基を予め導入しておいて架橋を形成させる方法が好ましい。
上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルを構成するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸2−エチルオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。なかでも、動的粘弾性スペクトルにおいて損失正接を低くすることができることからアクリル酸エステル系が好適であり、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチルが、生産性と特性バランス等の点でより好適である。上記(メタ)アクリル酸エステルは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルを構成するモノマーとして(メタ)アクリル酸メチルを用いた場合、ガラス転移温度が高いため、可塑剤を使用しない場合に優れた機械的強度と可撓性、及び、樹脂密着性を発現することが難しくなることがある。
上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルを構成するモノマーのエステル残基は、炭素数が2以上の構造であるものが好ましく、より好ましくは炭素数が3以上であり、更に好ましくは4以上である。
上記ポリ(メタ)アクリル酸エステルが架橋構造を有する場合、架橋を形成させるためのモノマーの組み合わせとして、例えば、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、カルボキシル基又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの組み合わせ、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、水酸基、アミノ基又はカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸モノマーとの組み合わせ、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、アルコキシシラン基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの組み合わせ、ビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー同士の組み合せ等が挙げられる。なかでも、架橋反応が制御しやすいことから、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、カルボキシル基又は水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの組み合わせが好ましい。これらのモノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
上記カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸モノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
上記イソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸2−イソシアナトエチル等が挙げられる。
上記アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
上記アルコキシシラン基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル等が挙げられる。
上記ビニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが架橋構造を有することは、以下の方法で確認することができる。
まず、架橋処理を行った樹脂サンプルをテトラヒドロフランに漬けて室温で24時間振蘯浸漬させた後、メッシュを介して、不溶解成分と溶解成分とに分離する。次いで、不溶解成分については、110℃で1時間加熱乾燥させた後、重量を測定する。溶解成分については、加熱乾燥によりテトラヒドロフランを除去した後、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d;D化率99.9%)に1.0重量%の濃度となるように再溶解させ、NMRを用いて組成分析を行う。その後、下記式を用いて(メタ)アクリル樹脂のゲル分率の算出を行い、ゲル分率が0重量%ではないことを確認することによって、架橋構造を有することを確認することができる。
(メタ)アクリル樹脂のゲル分率(重量%)
={1−(W−W)×R/(W×R)}×100
:浸漬前の樹脂サンプル重量(g)、W:浸漬及び乾燥後の不溶解成分重量(g)
:複合化樹脂のアクリル割合(%)、R:溶解成分中のアクリル割合(%)
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、海島構造を破壊しない程度であれば、更に、相溶化剤を含有していてもよい。
上記相溶化剤は特に限定されず、例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂と上記島成分樹脂とのブロックコポリマー又はグラフトコポリマー、イオン的相互作用による相溶化剤(例えば、特定の官能基を有する化合物又はポリマー等)等が挙げられる。上記相溶化剤の含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアセタール樹脂と、上記島成分樹脂との合計100重量部に対して、0〜50重量部程度が好ましい。
上記島成分樹脂は、上記ポリビニルアセタール樹脂の存在下で上記島成分樹脂を構成するモノマーの重合を行うことによって得られるものが好ましい。
このような方法を用いることで、ポリビニルアセタール系樹脂組成物において、分散相である上記島成分樹脂の平均分散径(直径)が小さくすることができる。これは、上記島成分樹脂を構成するモノマーの重合時に、上記ポリビニルアセタール樹脂に上記島成分樹脂が結合したコポリマーが一部生成し、該コポリマーが、連続相と分散相との両方に対して親和性を有する界面活性作用(相溶化作用)を発揮して、分散相を安定化させるためと考えられる。このような分散相の平均直径が小さいポリビニルアセタール系樹脂組成物は、上述したような海島構造を有するとともに上述したような動的粘弾性スペクトルを満たすものとなり、より優れた可撓性、機械強度、及び、樹脂密着性を発現することができる。
一方で、このような方法ではなく、ポリビニルアセタール樹脂と島成分樹脂とを別々に重合する方法で作製する場合は、ガラス転移温度の低い樹脂成分の流動性がガラス転移温度の高い樹脂成分より大きいため、島成分樹脂が連続相になりやすく、優れた特性を発現させることができない。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物では、上記ポリビニルアセタール樹脂と島成分樹脂とからなるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーを含有することが好ましい。
なお、上記ポリビニルアセタール樹脂と島成分樹脂とからなるグラフトコポリマーとしては、主鎖としての上記ポリビニルアセタール樹脂に、側鎖としての上記島成分樹脂が分岐状に結合したグラフトコポリマーが好ましい。
上記ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーの分子量は特に限定されないが、数平均分子量(Mn)が10000〜400000で、重量平均分子量(Mw)が20000〜800000で、これらの比(Mw/Mn)が2.0〜40であることが好ましい。Mn、Mw、Mw/Mnをこのような範囲に調整することにより、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の相溶化能が変わるため、分散相のサイズを制御することができ、機械強度と柔軟性とのバランスをとることができ、優れた樹脂密着性を発現させることができる。また、スラリー粘度が高くなりすぎることを抑制することができる。
上記ブロックコポリマー又はグラフトコポリマー中のポリビニルアセタール樹脂に対する島成分樹脂の比率は、用途に応じて設計されるため、特に限定されないが、10〜900重量%が好ましい。コポリマー中のポリビニルアセタール樹脂に対する島成分樹脂の比率をこのような範囲に調整することにより、相溶化能が変わるため、分散相のサイズを制御することができ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物の機械強度と柔軟性とのバランスをとることができ、優れた樹脂密着性を発現させることができる。
なお、コポリマー中のポリビニルアセタール樹脂に対する島成分樹脂の比率は、例えば、単離したブロックコポリマー又はグラフトポリマーについてNMR測定を行い、ポリビニルアセタール樹脂の重量と島成分樹脂の重量とを換算し、下記式を用いて算出することができる。
コポリマー中のポリビニルアセタール樹脂に対する島成分樹脂の比率(%)
={(島成分樹脂の重量)/(ポリビニルアセタール樹脂の重量)}×100
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物は、可塑剤を使用しなくても、長期に渡って優れた可撓性と機械強度を安定的に発現し、更に、優れた樹脂密着性を発現する。
本発明のポリビニルアセタール系樹脂組成物の用途は特に限定されないが、例えば、合わせガラス用中間膜、金属処理のウォッシュプライマー、各種塗料、印刷用インク、接着剤、樹脂加工剤、セラミックス焼成用バインダー等に好適に用いることができる。
本発明によれば、可塑剤を使用しなくても、長期に渡って優れた可撓性と機械強度を安定的に発現するポリビニルアセタール系樹脂組成物を提供することができ、更に、優れた樹脂密着性を発現する。
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
参考例1)
(グラフト共重合体を含むポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部と、アクリル酸2−エチルヘキシル10重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に70℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:1)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度を、示差走査熱量計(日立ハイテクサイエンス社製「DSC6020」)を用いて、昇温速度10℃/分で、測定したところ−68℃であった。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相としてのポリビニルアセタール樹脂中に、分散相としてポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散した構造が確認できた。
参考例2)
(グラフト共重合体を含むポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量30.8モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部と、アクリル酸ベンジル30重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に70℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は5℃であった。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させた、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相としてのポリビニルアセタール樹脂中に、分散相としてポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散した構造が確認できた。
参考例3)
(グラフト共重合体を含むポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%)5重量部と、メタクリル酸2−エチルヘキシル20重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に70℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は−18℃であった。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相としてのポリビニルアセタール樹脂中に、分散相としてポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散した構造が確認できた。
参考例4)
(グラフト共重合体を含むポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度3800、ブチラール化度66.9モル%、水酸基量31.2モル%、アセチル基量1.9モル%)25重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル20重量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル5重量部を、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に70℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は−57℃であった。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相としてのポリビニルアセタール樹脂中に、分散相としてポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散した構造が確認できた。
(実施例5)
(グラフト共重合体を含むポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度3800、ブチラール化度66.9モル%、水酸基量31.2モル%、アセチル基量1.9モル%)25重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル12.5重量部と、アクリル酸4−ヒドロキシブチル5重量部、アクリル酸2.5重量部、メタクリル酸グリシジル5重量部を、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に70℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は−34℃であった。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間、110℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相としてのポリビニルアセタール樹脂中に、分散相としてポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散した構造が確認できた。
参考例6)
(ブロック共重合体を含むポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、末端にメルカプト基を有するポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度68.0モル%、水酸基量30.8モル%、アセチル基量1.2モル%)25重量部と、アクリル酸ブチル22.5重量部、アクリル酸2.5重量部、酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分間後、0.5重量部の重合開始剤としてのAIBNを16重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に5時間かけて滴下添加した。その後、さらに75℃にて3時間反応させた。
次いで、反応液を冷却し、得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は−45℃であった。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相としてのポリビニルアセタール樹脂中に、分散相としてポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散した構造が確認できた。
参考例7)
(ポリ(メタ)アクリル酸エステルを含むポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、アクリル酸ブチル20重量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル2.5重量部、アクリル酸2.5重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に70℃にて3時間反応させ、反応液を冷却し、得られた溶液を酢酸エチルにより希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
(グラフト共重合体を含むポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%)20重量部と、酢酸エチル20重量部、得られたポリ(メタ)アクリル酸エステル溶液60重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルブチラールを溶解させた。次に2−イソシアナトエチルメタクリレート0.6重量部とトリメチルアミン1重量部を加え、反応容器内を撹拌しながら75℃で10時間反応させた。
反応液を冷却し、得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は−41℃であった。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相としてのポリビニルアセタール樹脂中に、分散相としてポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散した構造が確認できた。
(比較例1)
(ポリビニルアセタール樹脂からなるフィルムの作製)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部を溶剤(メタノールとトルエンの混合溶剤、メタノールとトルエンの重量比率は1:1)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。次に、本混合溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させてポリビニルアセタール樹脂からなるフィルムを得た。
(比較例2)
(ポリビニルアセタール樹脂からなるフィルムの作製)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部を溶剤(メタノールとトルエンの混合溶剤、メタノールとトルエンの重量比率は1:1)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。この溶液に、可塑剤としてフタル酸ジオクチルを2.5重量部添加した。次に、本混合溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させてポリビニルアセタール樹脂からなるフィルムを得た。
(比較例3)
(ポリビニルアセタール樹脂からなるフィルムの作製)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部を溶剤(メタノールとトルエンとの混合溶剤、メタノールとトルエンとの重量比率は1:1)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが12.5μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、常温で1時間風乾させた後、熱風乾燥機で80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール樹脂からなるフィルムを得た。
(ポリ(メタ)アクリル酸エステルからなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、アクリル酸エチル20重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に85℃にて3時間反応させ、反応液を冷却した。
得られた溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが25μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させポリ(メタ)アクリル酸エステルからなるフィルムを得た。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は−20℃である。
(積層フィルムの作製)
上記で得たポリ(メタ)アクリル酸エステルからなるフィルムの両面に、上記で得たポリビニルアセタール樹脂からなるフィルムを積層し、層構造を有するフィルムを得た。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、低倍率で積層構造を形成していることを確認した。さらに、3000倍まで拡大したが、一様で、海島構造は確認できなかった。
(比較例4)
(ポリ(メタ)アクリル酸エステルの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、アクリル酸2−エチルヘキシル20重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に70℃にて3時間反応させ、反応液を冷却した。
(フィルムの作製)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度800、ブチラール化度65.1モル%、水酸基量33.9モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部と、得られたポリアクリル酸2−エチルヘキシル25重量部をミキシングロールで充分に混練することにより、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.1mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ70μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相としてのポリアクリル酸2−エチルヘキシル中に、分散相としてポリビニルアセタール樹脂が分散した構造が確認できた。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は−68℃である。
(比較例5)
(ポリ(メタ)アクリル酸エステルの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、アクリル酸エチル20重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に70℃にて3時間反応させ、反応液を冷却した。
(フィルムの作製)
ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部と、得られたポリアクリル酸エチル25重量部を160℃で溶融混練することにより、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を2枚のテフロン(登録商標)シート間に0.1mmのクリアランス板を介して挟み込み、150℃にてプレス成形して、厚さ70μmのフィルムを作製した。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相としてのポリビニルアセタール樹脂中に、分散相としてポリアクリル酸2−エチルヘキシルが分散した構造が確認できた。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は−68℃である。
(比較例6)
(ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムの作製)
温度計、攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた反応容器内に、ポリビニルアセタール樹脂(重合度1700、ブチラール化度67.0モル%、水酸基量32.0モル%、アセチル基量1.0モル%)25重量部と、メタクリル酸メチル10重量部と、アクリル酸エチル10重量部と、重合溶媒としての酢酸エチル100重量部とを加え、撹拌しながらポリビニルアセタール樹脂を溶解させた。次に、窒素ガスを30分間吹き込んで反応容器内を窒素置換した後、反応容器内を撹拌しながら70℃に加熱した。30分後、0.1重量部の重合開始剤としてのt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートを5重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を反応容器内に3時間かけて滴下添加した。その後、更に70℃にて3時間反応させた後、反応液を冷却した。得られた溶液を希釈溶剤(メタノールとトルエンの混合溶剤、メタノールとトルエンの重量比率は1:2)により希釈し、固形分20重量%の溶液とした。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステルのガラス転移温度は30℃である。
次に、本溶液を、コーターを用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗布し、80℃で1時間乾燥させ、ポリビニルアセタール系樹脂組成物からなるフィルムを得た。得られたフィルムを透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、連続相としてのポリ(メタ)アクリル酸エステル中に、分散相としてポリビニルアセタール樹脂が分散した構造が確認できた。
<評価>
実施例及び比較例で得られたフィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
(ポリビニルアセタール系樹脂組成物の構成比評価)
得られたポリビニルアセタール系樹脂組成物に対し、NMR測定を行い、ポリビニルアセタール樹脂と島成分樹脂との合計を100重量%とした時の、各構成成分の重量割合を算出した。
(ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合評価)
得られたポリビニルアセタール系樹脂組成物の島成分樹脂のみを溶解する溶媒を選定し、その後、得られたフィルムをその溶媒に溶解させ、遠心分離を行うことにより、上澄みと沈殿に分離した。分離前のポリビニルアセタール系樹脂組成物と得られた沈殿物に対し、重量測定を行うと共に、NMR測定を行い、ポリビニルアセタール樹脂に対する島成分樹脂の重量比率(ポリビニルアセタール樹脂を100%とする)を算出した。重量と算出した重量比率の積を計算することにより、分離前のポリビニルアセタール系樹脂組成物と得られた沈殿物に含まれる島成分樹脂の重量を算出した。沈殿に含まれる島成分樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂に結合しているとみなせるので下記式より、ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合を算出した。

(ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合)(%)
=(沈殿中の島成分樹脂の重量)/(ポリビニルアセタール系樹脂組成物中の島成分樹脂の重量)×100

なお、島成分樹脂のみを溶解する溶媒を選定した方法は以下の通りである。ポリビニルアセタール系樹脂組成物を溶媒に溶解させ、遠心分離を行うことにより、上澄みと沈殿に分離した。その後、上澄みに対し、NMR測定を行い、ポリビニルアセタール樹脂が溶出していない溶媒を、島成分樹脂のみを溶解する溶媒とした。
(平均分散径評価)
分散径(直径)は、ミクロトーム等を用いて得られたフィルムを切断し、その切断面を、透過型電子顕微鏡を用いて撮影し、得られた写真を、画像解析装置を用いて解析処理することにより測定した。平均分散径(直径)は、任意に選んだ100個の分散相の分散径(直径)の平均値を求めることにより算出した。
(動的粘弾性測定)
得られたフィルムを熱プレスにより重ね合わせることによって厚さ500μmのシートを得た。得られたシートを直径8mmの円形に切り抜き、粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製「ARES」)を用いて、せん断法にて、ひずみ量1.0%及び周波数1Hzの条件で、昇温速度5℃/分で動的粘弾性の温度分散測定を行うことにより、損失正接のピーク温度を求めた。
(貯蔵弾性率評価)
動的粘弾性測定により得られた貯蔵弾性率のグラフから、10〜30℃におけるせん断貯蔵弾性率を測定した。
また、引張貯蔵弾性率は、得られたシートを動的粘男性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA−200)により周波数10Hz、昇温速度5℃/分にて測定した。
(強度評価)
フィルムを離型フィルムから剥離し、5cm×1cmにカットした試料の引張伸度及び破断強度を引張試験機で測定した(速度:100mm/分)。測定温度は20℃とした。
(安定性評価)
作製したフィルムを離型フィルムから剥離し、5cm×1cmにカットし、23℃にて12ヶ月保存した。保存後のサンプルについて、上述した方法で引張伸度及び破断強度を測定した(速度:100mm/分)。
(樹脂密着性評価)
得られたフィルムを離型処理していないPETフィルム上に積層し、140℃でラミネートし、その後、130℃、13気圧で30分、オートクレーブを行い、PET上にフィルムが積層したサンプルを作成した。得られたサンプルについて、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下にて、剥離速度10mm/分の速度で引張試験機を用いて180°方向にPET上からフィルムを剥がし、その際の剥離力を測定した。
Figure 0006370073
本発明によれば、可塑剤を使用しなくても、長期に渡って優れた可撓性と機械強度を安定的に発現し、樹脂密着性に優れるポリビニルアセタール系樹脂組成物を提供することができる。

Claims (5)

  1. ポリビニルアセタール樹脂と、ガラス転移温度が−100〜20℃の島成分樹脂とを含有するポリビニルアセタール系樹脂組成物であって、
    連続相としての前記ポリビニルアセタール樹脂中に、分散相として前記島成分樹脂が分散した構造を有しており、
    前記島成分樹脂は、架橋構造を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルであり、
    ポリビニルアセタール樹脂と、島成分樹脂との合計100重量%中、前記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20〜90重量%、前記島成分樹脂の含有量が10〜80重量%であり、
    前記島成分樹脂の全量を100重量%とした場合、ポリビニルアセタール樹脂と結合している島成分樹脂の割合が10重量%以上である
    ことを特徴とするポリビニルアセタール系樹脂組成物。
  2. 島成分樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂の存在下で、島成分樹脂を構成するモノマーの重合を行うことにより得られることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアセタール系樹脂組成物。
  3. 島成分樹脂からなる分散相は、0.1〜10μmの平均分散径であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリビニルアセタール系樹脂組成物。
  4. ポリ(メタ)アクリル酸エステルを構成するモノマーは、エステル残基の炭素数が2以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のポリビニルアセタール系樹脂組成物。
  5. 周波数1Hzで動的粘弾性スペクトルを測定したとき、
    前記ポリビニルアセタール樹脂に由来する損失正接の極大値を50℃以上に有し、
    前記島成分樹脂に由来する損失正接の極大値を−100〜20℃に有し、
    10〜30℃における引張貯蔵弾性率が1×10〜3×10Pa・sであり、かつ、
    せん断貯蔵弾性率が1×10〜1×10Pa・sである
    ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のポリビニルアセタール系樹脂組成物。
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