JP2015160925A - 皮膜およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来の方法で得られる皮膜よりも柔軟であり、合成樹脂エマルション中の合成樹脂のTgが高い場合でも、Tgより低い製膜温度での製膜を可能とする皮膜およびその製造方法を提供する。【解決手段】水、および水溶性高分子に対する貧溶媒中で、合成樹脂が水溶性高分子により粒子状に分散安定化された合成樹脂エマルションから得られる皮膜であり、合成樹脂中に水溶性高分子が粒子状に分散されている皮膜。【選択図】なし

Description

本発明は、合成樹脂エマルションを乾燥して得られる皮膜(コーティング層、フィルム、塗膜、粘着剤層等)およびその製造方法に関するものである。
保護コロイドによってポリマーが水中で分散安定化されている一般的な合成樹脂エマルションは、従来より、塗工、乾燥・製膜させて得られる皮膜(フィルムやコーティング層)の材料として知られている。このような皮膜として、例えば、ポリビニルアルコール(以下、ポリビニルアルコールを「PVA」と略記することがある。)単独またはPVAを主成分とする乳化分散剤とし、エチレンと、(メタ)アクリル酸エステルを有するモノマーを、レドックス重合して得られるアクリルエマルションは、乾燥させてフィルム状にした際に引張強度が高くなるフィルムの材料として開発されている(特許文献1)。また、全量中にPVA系樹脂を2〜20重量%含有する合成樹脂エマルションを結合剤としたコーティング剤組成物を塗工・乾燥すると、耐水性に優れる皮膜が得られることも知られている(特許文献2)。
特開2006−28381号公報 特開2013−18915号公報
しかしながら、上記特許文献1および2に開示されているような皮膜は、弾性率が高く、柔軟性に劣るという問題があった。また、合成樹脂のガラス転移温度(Tg)が比較的高い場合には、製膜時の温度(乾燥温度)をTg以上とすることが難しく、皮膜が得られないという問題もあった。
そこで、このような背景下において、本発明は、従来の方法で得られる皮膜よりも柔軟であり、合成樹脂エマルション中の合成樹脂のTgが高い場合でも、Tgより低い製膜温度での製膜を可能とする皮膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、通常の製造方法で得られた合成樹脂エマルションと水溶性高分子に対する貧溶媒を用いて得られる皮膜であり、合成樹脂と水溶性高分子とを相反転させ、合成樹脂中に水溶性高分子が分散されている皮膜とすることにより、柔軟性に優れることを見出した。さらに、合成樹脂エマルション中の合成樹脂のTgが比較的高い場合に、Tgより低い製膜温度で製膜しても皮膜を作製できることも見出した。
即ち、本発明の要旨は、水、および水溶性高分子に対する貧溶媒中で、合成樹脂が水溶性高分子により粒子状に分散安定化された合成樹脂エマルションから得られる皮膜であり、合成樹脂中に水溶性高分子が粒子状に分散されている皮膜に関するものである。
また、本発明においては、合成樹脂が水溶性高分子により分散安定化されてなる合成樹脂エマルションに、水溶性高分子に対する貧溶媒を配合した溶液を、キャストし、乾燥して得る皮膜の製造方法も提供するものである。
一般に、保護コロイドに水溶性高分子を用いた合成樹脂エマルションより得られる皮膜は、副成分である水溶性高分子がマトリックスに、主成分である合成樹脂がドメインになるが、本発明においては、水溶性高分子と合成樹脂とを相反転させ、副成分である水溶性高分子がドメインに、主成分である合成樹脂がマトリックスとなる皮膜とするものであり、このような相構造は、上記一般的知見からすると、非常に驚くべきものである。
そして、このような相構造を持つ皮膜は、柔軟性に優れ、さらに、合成樹脂エマルション中の合成樹脂のTgが比較的高い場合に、Tgより低い製膜温度で製膜しても皮膜を製造できることを見出し、本発明に到達した。
本発明の皮膜は、水、および水溶性高分子に対する貧溶媒中で、合成樹脂が水溶性高分子により粒子状に分散安定化された合成樹脂エマルションから得られる皮膜であり、合成樹脂中に水溶性高分子が粒子状に分散されている皮膜であることから、従来の方法で得られる皮膜よりも柔軟であり、合成樹脂エマルション中の合成樹脂のTgが高い場合でも、Tgより低い製膜温度での製膜を可能とする。そのため、粘着剤等の用途に特に有用である。
また、上記水溶性高分子がPVA系樹脂であると、易粘度調整性に優れ、皮膜の調製により優れるようになる。
さらに、上記皮膜中の水溶性高分子の粒子間距離が、20〜2,000nmであると、より柔軟な皮膜が得られるようになる。
そして、皮膜の20℃、10Hzでの貯蔵弾性率が、0.5×10〜6×10Paであると、粘着剤等の用途により一層優れるようになる。
また、合成樹脂が水溶性高分子により分散安定化されてなる合成樹脂エマルションに、水溶性高分子に対する貧溶媒を配合した溶液を、キャストし、乾燥して得る皮膜の製造方法によれば、従来の方法では製造が困難な、合成樹脂中に水溶性高分子が分散された相構造をとらせることができ、得られた皮膜は、上記のように、従来の方法で得られる皮膜よりも柔軟であり、合成樹脂エマルション中の合成樹脂のTgが高い場合でも、Tgより低い製膜温度での製膜を可能とする。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
上記のように、本発明の皮膜は、合成樹脂中に水溶性高分子が粒子状に分散されている皮膜であるが、これは、水、および水溶性高分子に対する貧溶媒中で、合成樹脂が水溶性高分子により粒子状に分散安定化された合成樹脂エマルションから得られる皮膜であり、相反転を利用して得られるものである。
まず、合成樹脂エマルション(以下、「エマルション」と略す場合がある。)を構成する成分、すなわち合成樹脂、水溶性高分子等について順に説明する。
〔合成樹脂〕
上記合成樹脂としては、例えば、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、ビニルエステル系モノマーの少なくとも1種のモノマー成分を主成分として重合してなるものが好ましい。本発明において、主成分とは重量を基準として全体の過半をしめる成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。
上記アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の脂肪族系(メタ)アクリレートや、フェノキシ(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル等が挙げられ、中でもアルキル基の炭素数が1〜18が好適であり、さらに1〜10の脂肪族系(メタ)アクリレートが好適であり、また、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、直鎖状のまたは枝分かれした炭素原子数2〜12のモノカルボン酸のビニルエステルが挙げられ、具体的には、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
また、官能基含有モノマー等を共重合させてもよく、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、アリル基含有モノマー、加水分解性シリル基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマー、ヒドロキシル基含有モノマー等が挙げられる。
〔水溶性高分子〕
つぎに、水溶性高分子としては、例えば、PVA系樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アミノメチルヒドロキシプロピルセルロース、アミノエチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体類、デンプン、トラガント、ペクチン、グルー、アルギン酸またはその塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸またはその塩、ポリメタアクリル酸またはその塩、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、酢酸ビニルとマレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等の不飽和酸との共重合体、スチレンと上記不飽和酸との共重合体、ビニルエーテルと上記不飽和酸との共重合体および前記共重合体の塩類またはエステル類が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられ、これらの中でもPVA系樹脂が低価格性、易粘度調整性の点で好ましい。
かかる水溶性高分子の使用量は、上記モノマー成分全体100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜7重量部である。かかる水溶性高分子の使用量が少なすぎると、乳化重合の際の保護コロイド量が不足となって、重合安定性が不良となる傾向があり、使用量が多すぎると、エマルションの粘度が高まり安定性が低下する傾向がある。
上記PVA系樹脂としては、次に示す特定の平均ケン化度および平均重合度を有するPVA系樹脂が好ましい。
PVA系樹脂の平均ケン化度としては、70〜99.9モル%であることが好ましく、特に好ましくは80〜99.5モル%、さらに好ましくは85〜99.0モル%である。かかる平均ケン化度が低すぎると安定的に重合が進行しにくく、重合が完結したとしても噴霧乾燥後の再乳化性合成樹脂粉末の保存安定性が低下してしまう傾向があり、高すぎると再乳化し難くなる傾向がある。
なお、本発明において、平均ケン化度は、JIS K 6726に記載のケン化度の算出方法にしたがって求めることができる。
また、PVA系樹脂の平均重合度としては、50〜3,000であることが好ましく、特に好ましくは200〜2,000であり、さらに好ましくは300〜1,000である。かかる平均重合度が低すぎると、乳化重合時の保護コロイド能力が不充分となり重合が安定的に進行しにくい傾向があり、高すぎると、重合時に増粘して反応系が不安定になり分散安定性が低下する傾向がある。
なお、本発明において、平均重合度は、JIS K 6726に記載の平均重合度の算出方法にしたがって求めることができる。
本発明において、PVA系樹脂とは、PVA自体、または、例えば、各種変性種によって変性されたものを意味し、その変性度は、通常20モル%以下、好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
変性PVA系樹脂としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基をはじめとするアニオン性基で変性されたアニオン変性PVA系樹脂、四級アンモニウム基等のカチオン性基で変性されたカチオン変性PVA系樹脂、アセトアセチル基、ジアセトンアクリルアミド基、メルカプト基、シラノール基をはじめとする各種官能基等により変性された変性PVA系樹脂や、側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂等を挙げることができる。乳化安定性に優れる点で、アニオン変性PVA、特にスルホン酸基で変性された変性PVA系樹脂が好ましい。
側鎖に1,2−ジオール結合を有するPVA系樹脂としては、例えば、下記式(1)で示される1,2−ジオール構造単位を含有するPVA系樹脂が挙げられる。
Figure 2015160925
このようなPVA系樹脂は、例えば、(I)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(II)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化および脱炭酸する方法、(III)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化および脱ケタール化する方法、(IV)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法等により得られる。
PVA系樹脂の1,2−ジオール結合量は、1〜15モル%であることが好ましく、より好ましくは1〜12モル%、さらに好ましくは2〜10モル%、さらに特に好ましくは2〜9モル%である。ここで、1,2−ジオール結合量とは、例えば、1,2−ジオール構造単位が上記式(1)で表される場合、PVA系樹脂中に含まれる上記式(1)で表される1,2−ジオール結合構造単位のモル比率を意味する。かかる1,2−ジオール結合量が少なすぎると、エマルションの機械安定性や皮膜の耐水性などが低下する傾向があり、多すぎると重合時の安定性が低下し、不揮発分の高い安定なエマルションが得られにくくなる傾向がある。
なお、不揮発分とは、エマルションを加熱乾燥して残った残分を意味し、通常、加熱乾燥前後の重量をJIS K 6828−1に記載の算出方法にしたがって求めることができる。
本発明において、保護コロイド(分散安定剤)として、未変性タイプの部分・完全ケン化PVA系樹脂や各種変性タイプの部分・完全ケン化PVA系樹脂などを併用しても良い。
PVA系樹脂の使用量は、前記モノマー成分全体100重量部に対して、0.01〜20重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜7重量部である。かかるPVA系樹脂の使用量が少なすぎると、乳化重合の際の保護コロイド量が不足となって、重合安定性が不良となる傾向があり、使用量が多すぎると、エマルションの粘度が高まり安定性が低下する傾向がある。
ここで、用いられたPVA系樹脂は、通常、重合により形成されるエマルション中に全量が存在することとなる。すなわち、合成樹脂(重合体)100重量部に対して0.01〜20重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜7重量部のPVA系樹脂がエマルション中に存在することとなる。
また、本発明では、水溶性高分子、とりわけPVA系樹脂は、通常、水系媒体を用いて水溶液とし、これが乳化重合の過程において使用される。ここで水系媒体とは、水、または水を主体とするアルコール性溶媒をいい、好ましくは水のことをいう。
この水溶液における水溶性高分子の量(不揮発分)については、取り扱いの容易性の観点からは、5〜30重量%であることが望ましい。
〔他の成分〕
本発明によるエマルションにおいては、前記モノマー成分や水溶性高分子の他に、必要に応じて他の成分をさらに用いることができる。このような他の成分としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合開始剤、重合調整剤、補助乳化剤、可塑剤、造膜助剤、pH調整剤、粘度安定剤等が挙げられる。
上記重合開始剤としては、通常の乳化重合に使用できるものを使用でき、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物;有機過酸化物、アゾ系開始剤、過酸化水素、ブチルパーオキサイド等の過酸化物;および、これらと酸性亜硫酸ナトリウムやL−アスコルビン酸等の還元剤とを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
これらの中でも、皮膜物性や強度増強に悪影響を与えず重合が容易な点で、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムが好ましい。
上記重合調整剤としては、公知のものの中から適宜選択することができる。このような重合調整剤としては、例えば、連鎖移動剤、バッファー等が挙げられる。
上記連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;および、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類等が挙げられる。これらは、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記バッファーとしては、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
上記補助乳化剤としては、乳化重合に用いるものとして当業者に公知のものであれば、いずれのものでも使用可能である。したがって、補助乳化剤は、例えば、アニオン性、カチオン性、およびノニオン性の界面活性剤等の公知のものの中から、適宜選択することができる。
上記界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤、および、プルロニック型構造を有するものやポリオキシエチレン型構造を有するもの等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。また、界面活性剤として、構造中にラジカル重合性不飽和結合を有する反応性界面活性剤を使用することもできる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いることができる。
上記界面活性剤の使用は、乳化重合をスムーズに進行させ、コントロールし易くしたり(乳化剤としての効果)、重合中に発生する粗粒子やブロック状物の発生を抑制する効果がある。ただし、これら界面活性剤を乳化剤として多く使用すると、グラフト率が低下する傾向がある。このため、界面活性剤を使用する場合には、その使用量はPVA系樹脂に対して補助的な量であること、すなわち、できる限り少なくすることが望ましい。
上記可塑剤としては、例えば、アジペート系可塑剤、フタル酸系可塑剤、リン酸系可塑剤等が挙げられる。また、沸点が260℃以上の造膜助剤も使用できる。
上記造膜助剤としては、例えば、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテルアルコールおよびエーテル系溶剤、エステルおよびエーテルエステル系溶剤等が挙げられる。
これら他の成分の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて適宜選択することができる。
<エマルションの製造方法>
本発明に使用するエマルションは、例えば、PVA系樹脂等の水溶性高分子を保護コロイド剤として用い、前記モノマー成分を乳化重合することによって製造することができる。この重合過程において、保護コロイド剤である水溶性高分子により分散安定化されてなる合成樹脂を分散質とするエマルションが製造される。
通常、乳化重合は、水溶性高分子および前記モノマー成分の他に、重合開始剤、重合調整剤、補助乳化剤等のような前記した他の成分を必要に応じて用いて実施する。また、重合の反応条件は、モノマーの種類、目的等に応じて適宜選択することができる。
乳化重合の方法としては、例えば、反応缶に、水、水溶性高分子を仕込み、昇温してモノマー成分と重合開始剤を滴下するモノマー滴下式乳化重合法;および、滴下するモノマーを予め水溶性高分子と水とで分散・乳化させた後、滴下する乳化モノマー滴下式乳化重合法等が挙げられるが、重合工程の管理やコントロール性等の面でモノマー滴下式が有利である。
乳化重合過程をさらに具体的に説明にすると、以下のとおりである。
まず、反応缶に水、水溶性高分子、必要に応じて補助乳化剤を仕込み、これを昇温(通常65〜90℃)した後、モノマー成分の一部と重合開始剤をこの反応缶に添加して、初期重合を実施する。次いで、残りのモノマー成分を、一括または滴下しながら反応缶に添加し、必要に応じてさらに重合開始剤を添加しながら重合を進行させる。重合反応が完了したと判断されたところで、反応缶を冷却し、目的とするエマルションを取り出すことができる。
<エマルションの物性>
本発明において、乳化重合より得られるエマルションは、典型的には、均一な乳白色であって、エマルション中の合成樹脂の平均粒子径は、0.02〜2μmであることが好ましく、より好ましくは0.03〜1.5μmである。
なお、ここで、平均粒子径は、慣用の方法、例えば、レーザー解析/散乱式粒度分布測定装置(LA−950S2、堀場製作所社製)、電気泳動光散乱方式ゼータ電位計(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)により測定することができる。
上記エマルションを構成する合成樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−90〜150℃であることが好ましく、特に好ましくは−85〜140℃、更に好ましくは−80〜130℃である。
かかるガラス転移温度は、合成樹脂を構成する各モノマー成分からなるホモポリマーのガラス転移温度をFoxの式により算出して求められる値であり、合成樹脂を構成する各重合成分の重量比を適宜調整することによって、調整することができる。
また、エマルションの粘度としては、通常10〜100,000mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは10〜50,000mPa・s、さらに好ましくは10〜10,000mPa・sである。かかる粘度が低すぎると皮膜を得にくい傾向があり、高すぎると皮膜の調整の作業性が低下する傾向がある。
なお、かかる粘度はB型粘度計で測定した値である。
さらに、本発明においては、水溶性高分子の少なくとも一部が、前記合成樹脂にグラフトしていることが、得られる乾燥前のエマルション自体の貯蔵安定性や接着強度測定における測定値のばらつきが少なくなること等の点で好ましい。
水溶性高分子が前記合成樹脂にグラフトした場合に、下記式(2)で表される値(W)が50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは65重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上である。なお、上限としては、通常、95重量%、好ましくは85重量%、さらに好ましくは80重量%である。かかる値は、グラフト化程度の目安になるものであり、この値が低すぎると、グラフト化の程度が低く、乳化重合時の保護コロイド作用が低下し、重合安定性が低下する等の傾向がある。
式(2)の値(W)は、以下のようにして算出される。
すなわち、対象となるエマルション等を室温(例えば、23℃)で乾燥して皮膜を作製し、その皮膜を沸騰水中およびアセトン中でそれぞれ8時間抽出して、グラフト化していない樹脂等を除去する。この場合の、抽出前の皮膜絶乾重量をw(g)、抽出後の皮膜絶乾重量をw(g)とし、下記の式(2)より求める。
W(重量%)=(w)/(w)×100 …(2)
上記式(2)の値(W)を50重量%以上に調整する方法としては、乳化重合温度を従来よりもやや高くしたり、重合用触媒として使用する過硫酸塩などに極微量の還元剤(例えば、酸性亜硫酸ナトリウム等)を併用したりする方法等が挙げられる。
本発明においては、乳化重合後のエマルションに、必要に応じて各種添加剤をさらに加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、水溶性添加剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、粘度安定剤等が挙げられる。
このようにして、本発明で用いられるエマルションが得られ、その使用に際しては、不揮発分として通常40〜60重量%に調整することが好ましい。
<皮膜の製造方法>
本発明の皮膜は、水、および水溶性高分子に対する貧溶媒中で、前記の合成樹脂が水溶性高分子により粒子状に分散安定化された合成樹脂エマルションから得られる皮膜であり、合成樹脂中に水溶性高分子が粒子状に分散されている皮膜である。
かかる本発明の皮膜は、例えば、(1)上記得られたエマルションに、水溶性高分子に対する貧溶媒を配合した溶液をキャストし、乾燥することにより得られる。
また、別の方法としては、例えば、(2)水溶性高分子に対する貧溶媒の存在下で乳化重合を行ないエマルションを製造し、得られたエマルションをキャストし、乾燥する方法や、(3)合成樹脂エマルションを噴霧乾燥した合成樹脂粉末を、水溶性高分子に対する貧溶媒中に配合した溶液とし、キャストし、乾燥する方法等も挙げられる。
以下、上記(1)の方法について説明する。
本発明における水溶性高分子に対する貧溶媒とは、溶質である水溶性高分子に対するχパラメーター(フローリー・ハギンスの相互作用パラメーター)が0.5より大きくなるような溶媒である。
上記χパラメーターは、
成分1:溶質(水溶性高分子)、成分2:溶媒であるとき、
χ12=V/RT・(δ−δ
〔ここで、Vはセグメントのモル体積、Rは気体定数,Tは絶対温度である。また、δ,δは成分1および2の溶解度パラメーターである。〕
で求められ、
χ12>0.5を満たすような溶媒(成分2)が、水溶性高分子に対する貧溶媒である。
上記水溶性高分子に対する貧溶媒として具体的には、例えば、水溶性高分子がPVA系樹脂の場合は、貧溶媒として、ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ホルムアミド等を挙げることができる。また、水溶性高分子がポリアクリルアミドの場合は、貧溶媒として、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
水溶性高分子に対する貧溶媒の配合量としては、エマルション中の水量も加え、合計で水/貧溶媒の重量比が1/99〜90/10となるように配合することが好ましく、さらに5/95〜80/20、特に10/90〜60/40となるように配合することが好ましい。貧溶媒の種類にもよるが、水よりも沸点が高い場合、多すぎると溶媒の蒸発に多くの時間や熱量が必要となり好ましくない傾向にあり、少なすぎると相反転の効果が発現されない傾向がある。
また、エマルションの固形分100重量部に対する水および貧溶媒の合計量は、通常50〜25,000重量部、好ましくは80〜20,000重量部であり、貧溶媒配合後のエマルションの固形分濃度は、通常0.1〜60%、好ましくは1〜40%である。
つぎに、上記キャスト方法としては、容器に溶液を入れ、溶媒を蒸発させる方法、アプリケーターやバーコーターで塗工する方法、グラビア塗工などが用いられる。
上記乾燥方法としては、例えば、恒温槽、ドラフトチャンバー内に設置した乾燥機、真空オーブン、ホットプレート等の乾燥装置を使い、通常、室温(23℃)〜100℃の乾燥温度とし、さらに30〜95℃、特に40〜90℃の乾燥温度とすることが好ましい。また、乾燥時間としては、溶媒がほぼ除去できる程度に乾燥をかければよく、通常1分〜5日間であり、さらに3分〜3日間であることが好ましい。乾燥時間の経過により皮膜の重量に変化がなくなれば乾燥が完了したとみなし、これにより本発明の皮膜が得られる。
上記本発明の皮膜の製造方法を使用すれば、従来技術の二つの問題点を解決できる。
すなわち、「エマルション中の合成樹脂のTg > 製膜温度」の場合、従来は合成樹脂の融着が進行しないため、脆いフィルムしか得られなかったが、本発明の皮膜によると相反転によりマトリックスが合成樹脂相になるため強靭な皮膜ができる。
また、「エマルション中の合成樹脂のTg ≦ 製膜温度」の場合には、相反転によりマトリックスが合成樹脂(低弾性率成分)になるので、水溶性高分子の保護コロイドエマルションでも低分子界面活性剤使用品に近い、低弾性率の柔軟な皮膜の製造が可能となる。
<皮膜の膜厚>
本発明の皮膜の膜厚としては、通常1〜1,000μmであり、さらに100〜900μm、特に200〜800μm、殊に300〜700μmであることが製膜しやすさの点から好ましい。
<皮膜の貯蔵弾性率>
本発明の皮膜の20℃、10Hzでの貯蔵弾性率としては、通常0.5×10〜6×10Paであり、さらに0.9×10〜5.5×10Pa、特に1×10〜5×10Paであることが好ましい。貯蔵弾性率が高すぎると柔軟性が発現されない傾向があり、低すぎると粘稠な液体のようなものになり皮膜としての性質が保持できない傾向がある。
ここで、かかる貯蔵弾性率は、例えば、動的粘弾性測定装置(DVA−225、アイティー計測制御社製)を用いて測定することができる。
<皮膜の水溶性高分子の粒子間距離>
本発明の皮膜の水溶性高分子の粒子間距離としては、通常20〜2,000nmであり、さらに25〜1,800nm、特に35〜1,500nmであることが透明性の点から好ましい。
ここで、かかる粒子間距離は、下記の通りにて測定される。即ち、小角X線散乱(SAXS)測定により得られたSAXS像を解析ソフトを用いて一次元化し、さらに補正した解析用一次散乱強度をクラツキープロットによりグラフ化し、このグラフの散乱ベクトル(q)の一番小さい側の、ピークまたはショルダー位置のqを読み取り、「d=2π/q」の式を用いることにより、粒子間距離(d)が得られる。
本発明の皮膜のガラス転移温度(Tg)としては、通常−80〜150℃、好ましくは−75〜140℃、特に好ましくは−70〜130℃である。
ここで、かかるガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(DSC)を用いて測定することにより得られる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
まず、実施例,比較例となる皮膜の製造に先立ち、以下に示す材料の、調製および準備を行った。
<<エマルション製造>>
<エマルション(E−1)(2EHA系)>
4つ口ガラス製フタと500mLガラス製反応容器を使用した。この反応容器に水163.4gとアニオン変性PVA(ゴーセネックス L−3266、日本合成化学工業社製)を13.87g仕込み、窒素バブリングした状態で回転数300rpmで撹拌しながら75℃まで昇温した。かかる撹拌は重合終了時まで同じ回転数で続けた。
その後、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)モノマー190gのうちの5%を投入し、続いて過硫酸アンモニウム水溶液の5%溶液11.4gの内の20%を投入(初期重合)した。
20分後にモノマーの残り95%と過硫酸アンモニウム水溶液の5%溶液の残り80%を80℃/240分で等速滴下した。滴下終了後、80℃で90分間熟成を行った。
熟成後は60℃へ冷却した。未反応のモノマーの消費のための追込重合としての2つの試薬(t−ブチルヒドロペルオキシド0.1部、5%の亜硫酸水素ナトリウムを0.1部)を投入し60℃で60分間反応した。室温(23℃)へ冷却し、エマルション(E−1)を調製した。
得られたエマルション(E−1)は、不揮発分39.7%、pH5.15、粘度150mPa・s(温度23℃、Brookfield viscosity社製、ローターNo.2、回転数60rpm)、動的光散乱で得られた合成樹脂の体積平均粒子径(直径)150.7nm(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)、合成樹脂のTg=−70℃であった。
<エマルション(E−2)(MMA系)>
4つ口ガラス製フタと500mLガラス製反応容器を使用した。この反応容器に水141.55gとアニオン変性PVA(ゴーセネックス L−3266、日本合成化学工業社製)を55.48g仕込み、窒素バブリングした状態で回転数150rpmで撹拌しながら75℃まで昇温した。かかる撹拌は重合終了時まで同じ回転数で続けた。
その後、メタクリル酸メチル(MMA)モノマー190gのうちの5%を投入し、続いて過硫酸アンモニウム水溶液の5%溶液311.4gの内の20%を投入(初期重合)した。
20分後にモノマーの残り95%と過硫酸アンモニウム水溶液の5%溶液の残り80%を80℃/240分で等速滴下した。滴下終了後、80℃で90分間熟成を行った。
熟成後は60℃へ冷却した。追込重合としての2つの試薬(t−ブチルヒドロペルオキシド0.1部、5%の亜硫酸水素ナトリウム0.1部)を投入し60℃で60分間反応させた。室温(23℃)へ冷却し、エマルション(E−2)を調製した。
得られたエマルション(E−2)は、不揮発分40.0%、 pH5.81、粘度1,103mPa・s(温度23℃、Brookfield viscosity社製、ローターNo.2、回転数12rpm)、動的光散乱で得られた合成樹脂の体積平均粒子径(直径)136.6nm(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)、合成樹脂のTg=−105℃であった。
<エマルション(E−3)(ST系)>
4つ口ガラス製フタと500mLガラス製反応容器を使用した。この反応容器に水141.55gとアニオン変性PVA(ゴーセネックス L−3266、日本合成化学工業社製)を55.48g仕込み、窒素バブリングした状態で回転数150rpm で撹拌しながら75℃まで昇温した。かかる撹拌は重合終了時まで同じ回転数で続けた。
その後、スチレン(ST)モノマー190gの内の5%を投入し、続いて過硫酸アンモニウム水溶液の5%溶液11.4gの内の20%を投入(初期重合)した。20分後にモノマーの残り95%と過硫酸アンモニウム水溶液の5%溶液の残り80%を80℃/240分で等速滴下した。滴下終了後、80℃で90分間熟成を行った。
熟成後は60℃へ冷却した。追込重合としての2つの試薬(t−ブチルヒドロペルオキシド0.1部、5重量%の亜硫酸水素ナトリウム0.1部)を投入し60℃で60分間反応した。室温(23℃)へ冷却し、エマルション(E−3)を調製した。
得られたエマルション(E−3)は、不揮発分39.0%、pH5.40、粘度65mPa・s(温度23℃、Brookfield viscosity、ローターNo.1、回転数60rpm)、動的光散乱で得られた合成樹脂の体積平均粒子径(直径)109.6nm(NICOMP 380ZLS、Particle Sizing System社製)、合成樹脂のTg=−100℃であった。
上記調製した各エマルションにつき、その粒子径、粘度、Tgについては下記に示す方法により測定し、その結果を後記の表1および表2に示す。なお、対比を容易にするため、合成樹脂のTgが比較的低いものと高いものとに分け、Tgが低いものを表1に表し、Tgが高いものを表2に表した。
《合成樹脂の平均粒子径》
得られたエマルション中の合成樹脂の平均粒子径は、NICOMP 380ZLS(Particle Sizing System社製)を用いて体積平均粒子径を評価した。測定条件は以下の通りである。
即ち、イオン交換水で無限希釈し、散乱角90℃、試料ホルダー温調部温度23℃で測定を行った。
〔実施例1〕
上記で得られたエマルション(E−1)9.34gに、PVAに対する貧溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)を50.55g添加し、水(エマルション中の水を含む)とDMFの重量比が10/90の塗剤1を調製した。
次いで、剥離ポリエチレンテレフタレート(SP−PET−38−01−BU、三井化学東セロ社製)を貼り付けたアルミカップ(5−361−01 アルミカップ 107、アズワン社製)に、膜厚が500μm目標となるよう塗剤1を流し込んだ後、これをドラフトチャンバー内に設置した乾燥機(ミニ ジェット オーブン MO−931、富山産業社製)中で80℃にて2日間乾燥した。その後、さらに、真空オーブン(EYELA VOS−300DS、東京理化器械社製)中で80℃にて2日間静置し、残存DMFを除去して皮膜を作製した。アルミカップから剥離後、剥離ペットで挟んで測定用試料の調製まで常温・常湿で保管した。
〔実施例2〕
実施例1において、塗剤1の代わりに、エマルション(E−1)18.72gに、PVAに対する貧溶媒としてDMFを11.30g添加し、水(エマルション中の水を含む)とDMFの重量比が50/50の塗剤2を用いた以外は同様にして皮膜を作製した。
〔比較例1〕
実施例1において、貧溶媒を配合しなかった以外は同様にして皮膜を作製した。
〔実施例3〕
実施例1において、塗剤1の代わりに、エマルション(E―2)18.87gに、PVAに対する貧溶媒としてDMFを11.26g添加し、溶媒の水とDMFの重量比が50/50の塗剤3を用いた以外は実施例1と同様にして皮膜を作製した。
〔実施例4〕
実施例1において、塗剤1の代わりに、エマルション(E−2)10.99gに、PVAに対する貧溶媒としてDMFを59.01g添加し、溶媒の水とDMFの重量比が10/90の塗剤4を用いた以外は同様にして皮膜を作製した。
〔実施例5〕
実施例1において、塗剤1の代わりに、エマルション(E−3)10.84gに、PVAに対する貧溶媒としてDMFを59.21g添加し、溶媒の水とDMFの重量比が10/90の塗剤5を用いた以外は同様にして皮膜を作製した。
〔比較例2〕
実施例3において、貧溶媒を配合しなかった以外は同様にして皮膜を作製した。
〔比較例3〕
実施例5において、貧溶媒を配合しなかった以外は同様にして皮膜を作製した。
上記作製した各皮膜を用いて、下記測定条件にしたがって各種測定を行い、さらに貯蔵弾性率および造膜性については下記評価基準にしたがって評価を行った。その結果を下記の表1および表2に併せて示す。
《貯蔵弾性率》
試料は23℃、50%RH下で保管しておいたものを使用した。
下記の測定条件にしたがって測定をし、20℃でのE’を読み取った。
・装 置:DVA225(アイティー計測制御社製)
・周 波 数:10Hz
・温 度:−150〜150℃(2EHA)、−50〜200℃(PMMA、PS)
・昇温速度:3℃/min
・動 的 歪:0.1%
・動的歪印加:即刻
・サンプリング:0.5℃毎
・サンプルサイズ:長さ 20mm、幅 3mm
・チャック間距離:10mm
<評価>
○…0.5×10Pa ≦ E’ ≦ 20×10Pa
△…20×10Pa < E’ ≦ 50×10Pa
×…50×10Pa < E’
《造膜性》
貯蔵弾性率が測定できる皮膜ができるかどうかで造膜性を評価した。
○…貯蔵弾性率が測定できるシートまたはフィルムができた。
×…融着が起こっておらず、シートまたはフィルムができない。または、カッターで切断時に粉々に砕けてしまう。
《粒子間距離》
粒子間距離の測定は公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI)の同意を得て、SPring−8 BL08B2 (兵庫県ビームライン)(課題番号 2011B3331、2012B3331、2013B3331)を使用した。
皮膜試料を長さ10mm、幅3mmに切り出したものを測定に使用した。なお、融着せずにフィルムが作製できなかったものは測定に耐え得る大きさの粒状物あるいはチップを測定した。
カメラ長6183mmまたは6080mm、X線の波長0.15nm、ビーム径0.5×0.5mmで測定を行った。積算時間は数秒〜60秒(試料の散乱強度により適選)であり、検出器には高速2次元X線検出器(PILATUS 100K/R、リガク社製)を使用した。
カメラ長およびビームセンターの算出は、標準物質である鶏由来コラーゲンを使用して、行った。このコラーゲンを水平方向配置し、2次あるいは6次ピークを利用して水平方向のセンターとカメラ長を算出した。今度は垂直方向にコラーゲンを配置し、垂直方向のセンターを算出した。
測定されたSAXS像は解析ソフト(Fit2d、Dr. Andy Hammersley著、Version V12.077)により1次元化した。X軸は散乱角ではなくて散乱ベクトル(q=4π sinθ/λ)に変換した。なお、1次元化に際し、デテクターの素子不良による欠点にマスクをかけた。
皮膜試料および空気散乱の1次元化されたデータに対して、積算時間での規格化、ダーク補正を行った。次いで、試料位置の上流および下流側に設置されたX線強度計の数値を用いて、吸収補正を行った後、空気散乱を差し引いた。最後に、厚さで規格化することにより解析用の1次元散乱強度を得た。
横軸を散乱ベクトル(q)の対数、縦軸を散乱強度に散乱ベクトルの二乗を乗じたものに変換し、グラフ化した(q vs. I・qプロットまたはクラツキープロットという)。このグラフの一番qが小さい側のピークまたはショルダー位置のqを読み取り、粒子間距離(d)を算出した。算出は「d=2π/q」という関係式を使用した。
《ガラス転移温度(Tg)》
得られた皮膜のTgは、23℃、50%RH下で保管しておいたものを使用し、下記の測定条件にしたがって温度変調DSC測定を行った。
・装 置:Q2000(ティー・エイ・インスツルメント社製)
・測定モード:温度変調
・昇温・降温速度:5℃/min
・変調条件:ヒートオンリー条件(周期 60秒、振幅0.796℃)
・温度範囲:−85〜100℃(2EHA)、−50〜200℃(PMMA,PS))
・温度プログラム:
(a) Tsで5分ホールド
(b) 5℃/min周期 60秒、振幅 0.796℃)でTeまで昇温
(c) Teで1分ホールド
(d) 5℃/min周期 60秒、振幅 0.796℃)でTsまで降温
(e) Tsで1分ホールド
(f) 5℃/min周期 60秒、振幅 0.796℃)でTeまで昇温
〔ここで、Tsは低温側の測定開始温度、Teは高温側の測定終了温度〕
このうち、上記(b)の過程を1st runといい、上記(f)の過程を2nd runという。
Tgは熱履歴によって変化するため、熱履歴を統一した2nd runで評価した。
Tgの算出はリバーシングヒートフローのチャートを使用し、ガラス領域とゴム領域の熱容量の差の半分であるHalf Cpの温度(DSCチャート上のガラス転移による変曲点上の接点(L)とガラス状態のベースラインの高温側への延長線の交点であるonsetの熱容量をC、接線Lとゴム領域からのベースラインの低温側への延長線の交点の熱容量Cとするとき、(C+C)/2となる温度とした。
なお、上記ヒートオンリー条件とは、温度変調DSCでは単純昇温+正弦波で変化する温度変化を同時に加えるが、特定の昇温速度、周期、温度振幅を選択することにより、常に昇温とするための条件のことをいう。
上記のように、対比を容易にするため、エマルション中の合成樹脂のTgが比較的低いものを下記表1に表し、合成樹脂のTgが比較的高いものを表2に表した。
Figure 2015160925
Figure 2015160925
上記表1の実施例1,2と比較例1とを対比すると、貧溶媒を用いなかった比較例1においては、合成樹脂と水溶性高分子の相反転が生じなかったため、貯蔵弾性率の高い皮膜となっていたのに対し、実施例1,2では、相反転が起こり、皮膜の貯蔵弾性率が低くなっていることが分かった。
一方、上記表2の実施例3〜5と比較例2,3とを対比すると、実施例3〜5では造膜性のある皮膜が作製されているのに対し、比較例2,3ではエマルション中の合成樹脂のTgが高いことから融着が起こっておらず、皮膜の作製ができなかった。このことから、本発明の皮膜であれば、合成樹脂のTgが比較的高い場合であっても、最低造膜温度以下の製膜温度で製膜し皮膜を製造できることが分かった。
本発明の皮膜は、従来の方法で得られる皮膜よりも柔軟な皮膜が得られるため、特に、粘着剤等の用途に有用である。

Claims (5)

  1. 水、および水溶性高分子に対する貧溶媒中で、合成樹脂が水溶性高分子により粒子状に分散安定化された合成樹脂エマルションから得られる皮膜であり、合成樹脂中に水溶性高分子が粒子状に分散されていることを特徴とする皮膜。
  2. 水溶性高分子がポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の皮膜。
  3. 皮膜中の水溶性高分子の粒子間距離が、20〜2,000nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の皮膜。
  4. 皮膜の20℃、10Hzでの貯蔵弾性率が、0.5×10〜6×10Paであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の皮膜。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の皮膜の製造方法であって、合成樹脂が水溶性高分子により分散安定化されてなる合成樹脂エマルションに、水溶性高分子に対する貧溶媒を配合した溶液を、キャストし、乾燥して得ることを特徴とする皮膜の製造方法。
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