JPWO2013031797A1 - Maldi質量分析法 - Google Patents

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Abstract

一般的なMALDI法による質量分析法に適用可能で、試料に含まれている複数の測定対象分子の測定を従来法と比べて、定量的にかつ短時間で効率よく、また定量的に行うことができる質量分析法を提供することを課題とし、複数の測定対象分子を含む試料のMALDI質量分析法であって、該複数の測定対象分子は、糖の混合物、又は糖ぺプチドの混合物、又は糖ぺプチドとペプチドの混合物、又は糖タンパク質の混合物、又は糖タンパク質とタンパク質の混合物であり、測定試料全体を測定し積算平均化することなく、シグナルが出る測定試料の任意の点から、該複数の測定対象分子についての定量的なマススペクトルを得ることを特徴とするMALDI質量分析法により課題を解決した。

Description

本発明は質量分析法に関し、更に詳しくは、測定試料全体を測定し積算平均化することなくシグナルが出る任意の点から、複数の測定対象分子について定量的なマススペクトルを得ることを特徴とするMALDI質量分析法に関するものである。
「質量分析(mass spectrometry)(以下、「MS」と略記することがある)法」とは、測定対象分子を含む試料をイオン化し、測定対象分子由来のイオンを質量電荷比(質量/電荷(m/z))によって分離し検出することによって、その測定対象分子の化学構造に関する情報を得る方法である。
MSにおいて、試料のイオン化は、分析の可否や得られるスペクトルの質を左右する重要な過程であり、試料を効率よくイオンにするためにこれまで多くのイオン化法が開発されてきた。現在のところ、生体高分子のイオン化には、ソフトイオン化であるマトリックス支援レーザー脱離イオン化(matrix−assisted laser desorption/ionization)(以下、「MALDI」と略記することがある)法やエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization)(以下、「ESI」と略記することがある)法が主に用いられている。これらのイオン化法を用いた質量分析計は、NMR等に比べて試料量が少なくても測定が可能であることから、バイオ分野でも広く用いられている。
MALDI−MSにおいて、特に例えば糖類等の分析は、ペプチドやタンパク質等に比べて困難であると考えられている。その根本的な理由のひとつに、糖類のイオン化の効率がペプチド等に比べて著しく悪く、高感度分析が困難であることが挙げられる。
MALDI−MSにおける試料のイオン化効率は、用いるマトリックスの種類、マトリックスへの添加剤、溶媒等の様々な要因により異なってくることが報告されており、感度良く測定するために特殊なマトリックスが開発されている(特許文献1〜3、非特許文献1〜2)。
また、測定対象分子の性質そのものにも影響されるため、測定対象分子を誘導体化することでイオン化効率を向上させることも知られており、糖鎖の水酸基をメチル化する手法や、糖鎖の還元末端やシアル酸を誘導体化する手法が知られている(例えば、特許文献4〜5)。
測定対象分子を予め誘導体化して別の分子に変換してから分析すると、測定対象分子の感度が上昇し、測定対象分子の正確な情報が得られるものは多い。また、測定試料に複数の測定対象分子が存在したり測定対象分子以外の分子も共存したりする場合に、その中の特定の分子のみが誘導体化されることによって他の分子と区別されることを利用して、より詳細な又は正確な情報を得る分析方法も考えられる。
特に、測定対象分子の一部の物性を測定したり、測定対象分子のフラグメントを測定したり、誘導体化に用いた誘導体化剤の情報が測定対象分子の情報を阻害しなかったり、誘導体化剤の情報のみを除去できるような分析等に関しては、測定対象分子の誘導体化が好適に用いられ得る。
例えば、非特許文献3には、4−アミノ安息香酸エチルエステル、2−アミノピリジン、1−ピレンブタン酸ヒドラジド(1−pyrenebutanoic acid hydrazide;PBH)等を用いて、予め糖鎖を誘導体化した後に試料支持部材に載せ、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)する方法が提案されている。
しかしながら、未だ、MALDIのイオン化メカニズムは完全に解明されていないため、測定に用いる誘導体化試薬やマトリックスの選択、測定試料の調製方法等は、経験的な知見に基づく場合が多い。一般に、MALDIで主として用いられる固体マトリックスにおいて、マトリックスと試料は良く混ざり、混合結晶となる必要があると考えられている。しかし、固体結晶となるため不均一となり、更に、結晶が生成した場所すべてから測定対象分子由来のイオンが得られるわけでもなく、生成した結晶のごく一部分にレーザーを照射した場合のみ測定対象分子由来のイオンが得られる。
そこで、通常、測定は複数回(数十回〜数百回)のレーザー照射を繰り返し、個別に得られたスペクトルを積算平均化して代表スペクトルとする。定量的な測定には、1000〜3000レーザーショットの積算を行うことが多い。その際、測定試料表面の1点に固定しての測定では、表面のむらに影響されて代表的でないスペクトルとなるおそれがあるので、レーザー照射位置を移動しながら積算する手法が採られる。
その際、自動測定により、一定間隔で多数の測定点を積算することも可能である(非特許文献4)。ところが、測定試料の状態によってはイオンの生成する部位が極めて限定的で、上記自動測定では結果的に貧弱で定量的でないスペクトルになってしまう場合がある。
あるいは、測定対象分子由来のイオンが特に感度良く得られるスイートスポットを探し出して質の高いマススペクトルを得る手法もある。しかし、スイートスポットが結晶のどの部分であるかは測定対象分子によって異なり、それぞれのスイートスポットは経験によって探す他はない。
また、スイートスポットを探し出し、そこにレーザー照射を行ったとしても、スイートスポットの位置は測定対象分子によって異なるため、従来の調製方法で調製した測定試料では、複数の測定対象分子を定量的に測定することは難しかった。例えば、複数の測定対象分子の試料中でのそれぞれの含有比率を正確に取得することは難しかった。
ペプチドや糖ペプチドの混合物を単一の測定対象分子として分離することは一般に確立された方法はなく、特に、微量になると分離精製は極めて困難であった。
そこで、更に、糖タンパク質や糖ペプチドの糖鎖構造解析の際には、糖鎖を一旦ペプチドから切り離して、遊離糖鎖を精製して質量分析する方法が一般的であり、感度が低いため多量の試料が必要であること、作業に時間を要することや、試料が消費される等の問題点があった。
このように、特に極めて微量の測定対象分子を含む試料に対しては、高感度で効率よく、短時間で測定対象分子を定量的に測定する質量分析法が強く望まれているが未だ十分な方法はなかった。
特開2008−261824号公報 特開2008−261825号公報 特開2001−013110号公報 特開2008−051790号公報 WO2006/109485号公報
Snovida, S.I. et al., J.Am.Soc. Mass spectrom. 19 (2008) 1138-1146 Fukuyama,Y. et al., Anal.Chem. 80 (2008) 2172-2179 Sugahara, D. et al., Anal.Sci. 19 (2003) 167-169 高橋他、ぶんせき 7 (2007) 328-335
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、一般的なMALDI質量分析法に適用可能で、試料に含まれている複数の測定対象分子の測定を従来法と比べて定量的にかつ短時間で効率よく行うことができる質量分析法を提供することにある。
更に、具体的には、測定試料全体を測定し積算平均化することなく、測定試料の一部のシグナルが出る任意の点にレーザー照射することによって、短時間での定量測定をも可能にする質量分析法を提供することにある。
それによって、測定対象分子を含む試料が極めて微量であっても、信頼性の高い化学構造についての情報を得ることができる質量分析法を提供することにある。
また、糖、糖タンパク質、糖ペプチド等の微量な「生体由来の分子又は生体試料中の分子」に適用して、その機能解明や病態の解明に有用な情報を好適に得ることができる質量分析法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、測定試料に含まれる複数の測定対象分子のうち、糖鎖構造が異なる糖ペプチドであったり、そこに糖を持たないペプチドが存在していたりしても、ペプチド部分の構造が同一であれば、試料支持部材上に調製したMALDIマトリックス結晶中で、シグナルが出る点やイオン化効率に優れたスイートスポットとなる位置は共通であることを見いだした。
また、複数の測定対象分子の間で、ペプチド部分の構造が異なっている糖ペプチドであったり、ペプチドを持たない糖であったりしても、共通の誘導体化剤を用いて試料に誘導体化反応を施し、複数の測定対象分子に共通の誘導体化を行えば、測定対象分子のイオン化効率が極めて向上するだけでなく、複数の測定対象分子の「スイートスポットを含むシグナルが出る点」が、測定試料上の共通の位置に形成されることを見いだした。
更に、試料の一部のシグナルが出る任意の点にレーザーを照射することにより、調製した測定試料の全体にレーザーを多点照射して長時間かけて測定しなくても、複数の測定対象分子の定量を、より短時間で効率よく行えることを見いだして本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]複数の測定対象分子を含む試料のMALDI質量分析法であって、
該複数の測定対象分子は、糖の混合物、又は糖ぺプチドの混合物、又は糖ぺプチドとペプチドの混合物、又は糖タンパク質の混合物、又は糖タンパク質とタンパク質の混合物であり、
測定試料全体を測定し積算平均化することなく、シグナルが出る測定試料の任意の点から、該複数の測定対象分子についての定量的なマススペクトルを得ることを特徴とするMALDI質量分析法である。
[2]上記複数の測定対象分子が、糖ぺプチドの混合物であって、そのペプチド部分は同一であるか、又は、糖ぺプチドとペプチドの混合物であって、糖ペプチドのペプチド部分は同一で、かつ糖ペプチドのペプチド部分と該ペプチドは同一である[1]に記載のMALDI質量分析法である。
[3]上記複数の測定対象分子が糖の混合物であり、試料を縮合多環化合物と反応させ、得られた縮合多環化合物で標識した測定対象分子とマトリックスとを結晶化させて測定試料を調製する[1]に記載のMALDI質量分析法である。
[4]上記複数の測定対象分子が糖ぺプチドとペプチドの混合物であって、糖ペプチドのペプチド部分は同一で、かつ糖ペプチドのペプチド部分と該ペプチドは同一であり、試料を縮合多環化合物と反応させ、得られた縮合多環化合物で標識した測定対象分子とマトリックスとを結晶化させて測定試料を調製する[1]に記載のMALDI質量分析法である。
[5]上記複数の測定対象分子が糖ぺプチドの混合物であって、その糖ペプチドは糖及び/又はペプチドがそれぞれ異なってもよいものであり、試料を縮合多環化合物と反応させ、得られた縮合多環化合物で標識した測定対象分子とマトリックスとを結晶化させて測定試料を調製する[1]に記載のMALDI質量分析法である。
[6]上記縮合多環化合物がピレン環化合物である[3]ないし[5]の何れかに記載のMALDI質量分析法である。
[7]上記ピレン環化合物が1−ピレニルジアゾメタン(PDAM)である[6]に記載のMALDI質量分析法である。
[8]測定試料に存在する上記複数の測定対象分子がそれぞれ10pmol以下である[1]ないし[7]の何れかに記載のMALDI質量分析法である。
本発明によれば、前記問題点を解消し前記課題を解決し、複数の測定対象分子の測定を、従来法と比べて定量的に短時間で効率よく行うことができる。
更に具体的には、測定試料全体を測定し積算平均化することなく、試料の一部のシグナルが出る任意の点を測定することによって、複数の測定対象分子の定量測定をも可能にする質量分析法を提供することができる。そのため、測定対象分子を含む試料が極めて微量であっても、測定の再現性を向上させることができ、信頼性の高い化学構造についての情報を得ることができる。
また、複数の測定対象分子の混合物である場合、それぞれの測定対象分子のイオン化効率が異なったり、互いにイオン化を阻害したりする可能性があるので、測定試料全体を積算平均化するとかえって定量的な結果が得られないが、本発明によれば、複数の測定対象分子の混合物中の測定対象分子が同一のイオン化効率やシグナル分布を示すようになるので、測定試料全体を積算平均化しても、あるいは、シグナルが出る任意の1点を測定しても定量的な結果が得られる。
また、本発明は微量な生体試料由来の分子や生体試料中の分子に適用できるので、例えば、糖、糖ペプチド、糖タンパク質等の分子の化学構造解析はもちろん、機能解明や病態の解明にも有用な情報をより好適に得ることができる。
バイオロジクスにも適用することができるので、各グリコフォームの存在比が明らかになり、薬理活性や有害作用の予測や品質管理にも応用できる。
実施例1において、測定対象分子としてピレン環化合物で標識された2種類の糖(A2、A2F)を含む試料のマススペクトルを示す図である。 Total:全体を自動測定した結果のマススペクトルである。 Point 1〜3:測定試料の3箇所の測定点における個別マススペクトルである。 比較例1において、測定対象分子として2種類の糖(A2、A2F)を含む測定試料のマススペクトルを示す図である。 Total:全体を自動測定した結果のマススペクトルである。 Point 1〜3:測定試料の3箇所の測定点における個別マススペクトルである。 比較例2において、測定対象分子として2−アミノベンザミドで標識した2種類の糖(2AB−NA2、2AB−NA2F)を含む試料のマススペクトルを示す図である。 Total:全体を自動測定した結果のマススペクトルである。 Point 1〜2:測定試料の2箇所の測定点における個別マススペクトルである。 実施例2において、測定対象分子として5種類の糖ペプチドを含む試料の、マススペクトルと、測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真と、測定対象分子のシグナルの出る点の分布を示す図である。 (a)〜(c):測定試料中の3箇所の測定点における個別マススペクトルである。 実施例3における、測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真と、3種類の測定対象分子のシグナルの出る点の分布を示す図である。 実施例4における、測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真と、3種類の測定対象分子のシグナルの出る点の分布を示す図である。 実施例5及び比較例3において、測定対象分子として6種類の糖ペプチドを含む試料の、マススペクトルと、測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真と、測定対象分子のシグナルの出る点の分布を示す図である。 a:測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真である。 b:全体を自動測定した結果のマススペクトルである。 c:ペプチドとしてEEQFNSTFRの構造を有する糖ペプチド3種類のシグナルの出る点の分布と、ペプチドとしてEEQYNSTYRの構造を有する糖ペプチド3種類のシグナルの出る点の分布を示す図である。 実施例6における、測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真と、測定対象分子のシグナルの出る点の分布を示す図である。 実施例で使用した化合物の構造を示す図である。 実施例8における、Glu−C消化糖ペプチド混合物のマススペクトルを示す図である。 実施例8における、測定対象分子のシグナルの出る点の分布を示す図である。 実施例で使用した化合物の構造を示す図である。
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の具体的態様に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
本発明のMALDI質量分析法は、複数の測定対象分子を含む試料とマトリックスとから調製される質量分析法用測定試料(本発明においては、単に「測定試料」と略記することがある)を用いた質量分析法であって、複数の測定対象分子は共通のペプチド構造を有するか、又は、誘導体化試薬により共通の誘導体化構造を有することにより、シグナルが出る点が共通の位置に形成されるので、測定試料全体にわたって、例えば数百回以上の、レーザーショットを繰り返して得られたスペクトルを積算平均化することなく、測定試料の何れかの測定点にレーザーを照射して個別のスペクトルを測定するのみで定量的なマススペクトルを得ることを特徴とする。
本発明のMALDI質量分析法は、複数の測定対象分子を含む試料のMALDI質量分析法であって、該複数の測定対象分子は、糖の混合物、又は糖ぺプチドの混合物、又は糖ぺプチドとペプチドの混合物、又は糖タンパク質の混合物、又は糖タンパク質とタンパク質の混合物であり、測定試料全体を測定し積算平均化することなく、シグナルが出る測定試料の任意の点から、複数の測定対象分子について定量的なマススペクトルを得ることを特徴とする。
<測定対象分子>
本発明のMALDI質量分析法が適用される測定対象分子は特に限定はないが、生体由来の分子又は生体試料中の分子であることが好ましく、具体的には、糖、糖ペプチド、ペプチド、糖タンパク質又はタンパク質であり、特に好ましくは、糖、糖ペプチド又は糖タンパク質である。
本発明において「糖」と記載するときは、主として糖鎖(オリゴ糖、多糖)をいうが、単糖も含めた糖類全般をいうものとする。また、糖タンパク質や糖脂質由来の「糖」も含む。
「測定対象分子」としては、天然物から調製されるもの、天然物を化学的又は酵素学的に一部改変して調製されるものの他、化学的又は酵素学的に調製されるものも好ましい。また、生体に含まれる分子の部分構造を有するものや生体に含まれる分子を模倣して作製されたものも好ましい。
質量分析法に用いる試料支持部材(以下、「プレート」と略記することがある)上に載せる試料、すなわち、測定対象分子を含む試料としては、「測定対象分子」そのものだけでもよいし、「測定対象分子」を含むものであってもよい。
また、試料は、例えば、生体の組織、細胞、体液や分泌物(例えば、血液、血清、尿、精液、唾液、涙液、汗、糞便等)等から得られたものであってもよい。
試料をプレート上に載せ、酵素処理等を行なって、測定対象分子を調製してもよい。
「複数の測定対象分子を含む試料」中には、従って、測定対象分子以外の分子を含んでいてもよく、ここで「測定対象分子以外の分子」には、測定対象でない、糖、糖ぺプチド、ペプチド、糖タンパク質、タンパク質、糖脂質、脂質等も含まれる。
上記した分子は、分析に供される試料が少量である場合が多く、また特に、糖、糖ぺプチド若しくは糖タンパク質のような複合糖質、又は、それらから化学的若しくは酵素学的に遊離させて得たものは、糖部分のイオン化の効率が著しく悪いために、又は、スイートスポットを含むシグナルの出る点が容易に見つからないために、測定を断念していた場合も多く、本発明のMALDI質量分析法は、それら分子の化学構造解析に対して、特に前記顕著な効果を奏するので好ましい。
本発明のMALDI質量分析法において、上記「複数の測定対象分子」は、糖の混合物、又は糖ぺプチドの混合物、又は糖ぺプチドとペプチドの混合物、又は糖タンパク質の混合物、又は糖タンパク質とタンパク質の混合物である。
本発明のMALDI質量分析法は、
(a)上記複数の測定対象分子が、糖ぺプチドの混合物であって、そのペプチド部分は同一であるか、又は、
(b)上記複数の測定対象分子が、糖ぺプチドとペプチドの混合物であって、糖ペプチドのペプチド部分は同一で、かつ糖ペプチドのペプチド部分と該ペプチドは同一である、ことが、
試料支持部材上に調製した測定試料である「試料とマトリックスとの混合結晶又は混合物」中で、複数の測定対象分子についてシグナルが出る点が共通になるため、該測定試料の任意のシグナルが出る点にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子について定量的なマススペクトルを得ることができる点で好ましい。すなわち、測定試料上のある1点にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子の試料中でのそれぞれの含有比率を、正確に取得・把握できる点で好ましい。
また、本発明のMALDI質量分析法は、
(c)上記複数の測定対象分子が糖の混合物であり、試料を縮合多環化合物と反応させ、得られた縮合多環化合物で標識した測定対象分子とマトリックスとを結晶化させて測定試料を調製することが、
試料支持部材上に調製した測定試料である「試料とマトリックスとの混合結晶又は混合物」中で、複数の測定対象分子についてシグナルが出る点が共通になるため、該シグナルが出る点にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子について定量的なマススペクトルを得ることができる点で好ましい。すなわち、測定試料上のある1点にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子の試料中でのそれぞれの含有比率を、正確に取得・把握できる点で好ましい。
また、本発明のMALDI質量分析法は、
(bc)上記複数の測定対象分子が、糖ぺプチドとペプチドの混合物であって、糖ペプチドのペプチド部分は同一で、かつ糖ペプチドのペプチド部分と該ペプチドは同一であり、試料を縮合多環化合物と反応させ、得られた縮合多環化合物で標識した測定対象分子とマトリックスとを結晶化させて測定試料を調製する、ことが、
試料支持部材上に調製した測定試料である「試料とマトリックスとの混合結晶又は混合物」中で、複数の測定対象分子についてシグナルが出る点が共通になるため、該シグナルが出る点にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子について定量的なマススペクトルを得ることができる点で好ましい。すなわち、測定試料上のある1点にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子の試料中でのそれぞれの含有比率を、正確に取得・把握できる点で好ましい。
また、本発明のMALDI質量分析法は、
(c’)上記複数の測定対象分子が糖ぺプチドの混合物であって、その糖ペプチドは糖及び/又はペプチドがそれぞれ異なってもよいものであり、試料を縮合多環化合物と反応させ、得られた縮合多環化合物で標識した測定対象分子とマトリックスとを結晶化させて測定試料を調製する、ことが、
試料支持部材上に調製した測定試料である「試料とマトリックスとの混合結晶又は混合物」中で、複数の測定対象分子についてシグナルが出る点が共通になるため、該シグナルが出る点にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子について定量的なマススペクトルを得ることができる点で好ましい。すなわち、測定試料上のある1点にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子の試料中でのそれぞれの含有比率を、正確に取得・把握できる点で好ましい。
従来から、測定試料全体を測定し積算平均化することなく、シグナルが出る測定試料の任意の1点から、複数の測定対象分子についてのマススペクトルを得る方法は知られていた。
しかしながら、糖ペプチド(糖タンパク質)の糖鎖部分の化学構造を知りたい場合には、通常はペプチド部分(タンパク質部分)を外してから測定試料を調製するか、又は、外さずに測定試料全体を測定し積算平均化していた(多点測定の積算が行われていた)ため、有効な方法ではなかった。
本願発明は、ペプチド部分(タンパク質部分)を除かなくても、更に、上記した、(a)又は(b);(c);(bc);(c’)という「特定の測定対象分子の組み合わせ又は特定の測定試料の形態」にあっては、むしろ除かない方が、複数の測定対象分子についてシグナルが出る点が共通になるため、結果として前記した顕著な効果が得られることを見いだしてなされたものである。
また、従来から、誘導体化剤で測定対象分子を標識し、得られた測定試料全体を測定し積算平均化することなく、シグナルが出る測定試料の任意の1点から、複数の測定対象分子についてのマススペクトルを得る方法は知られていた。
しかしながら、特定の誘導体化剤で測定対象分子を標識した場合には、ペプチド部分(タンパク質部分)は除いても除かなくても、複数の測定対象分子について、スイートスポットを含む「シグナルが出る点」が共通になり、その結果として前記した顕著な効果が得られることを見いだして、本願発明はなされたものである。
測定対象分子がペプチド又は糖ペプチドである場合、該ペプチド又は該糖ペプチドは、タンパク質や糖タンパク質を化学的に断片化したり、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、エンドプロテイナーゼLys−C、エンドプロテイナーゼArg−C、エンドプロテイナーゼGlu−C等の酵素を、単独又は組み合わせて用いて調製したりしたものであることが好ましい。どの方法が最適であるかはタンパク質のアミノ酸配列にもよるが、より小さいペプチドにするときはサーモリシン等が好ましく、C末端アミノ酸が同一になる点ではエンドプロテイナーゼLys−C、エンドプロテイナーゼArg−C、エンドプロテイナーゼGlu−C等が好ましい。
誘導体化剤としてPDAMを用いるときは、以上のどの方法でもC末端アミノ酸のカルボキシル基が存在するので好適であるが、エンドプロテイナーゼGlu−Cを使用すると、C末端アミノ酸側鎖にもカルボキシル基が存在するので特に好ましい。
<測定点>
本発明のMALDI質量分析法においては、測定試料全体を測定し積算平均化することなく、スイートスポットでなくても、測定試料のシグナルが出る任意の点から、複数の測定対象分子について定量的なマススペクトルを得ることを特徴とする。
本発明の極めて限定された「複数の測定対象分子」を含む測定試料においては、測定試料上のシグナルが出る点にレーザー照射すれば、その点が該「複数の測定対象分子」で共通するので、複数の測定対象分子を含有する試料中でのそれぞれの含有比率を正確に取得・把握できる。
「測定試料のシグナルが出る任意の点」とは、いわゆるスイートスポット(sweet spot)を含むが、シグナルが得られればよく、必ずしも高感度である点である必要はなく、「スイートスポット」には限られない。
「スイートスポット」とは、そこにレーザーを照射したとき、測定対象分子由来のイオンが特に感度良く得られる場所のことをいう。
「測定試料のシグナルが出る点」の大きさは、通常、1場所のレーザーの照射面積に等しく、市販のMALDI質量分析法用の装置の1場所のレーザーの照射面積が好ましいが、具体的には、10000μm(100μm×100μm)以下が好ましく、100μm(10μm×10μm)〜2500μm(50μm×50μm)が特に好ましい。
本発明は、少なくとも測定対象分子のシグナルが出る任意の1点(スイートスポットも含まれる)から、「複数の測定対象分子について定量的なマススペクトル」を得ることが必須であるが、測定試料のシグナルが出る任意の2点以上の数点から、「複数の測定対象分子について定量的なマススペクトル」を得て、それらを平均化してもよい。ただし、測定試料全体を測定し積算平均化することは除かれる。
シグナルが出る任意の1点に対するレーザーショット数は限定されないが、5〜20ショットが好ましい。
<試料とマトリックスとの混合結晶の析出又は混合物の生成>
本発明では、まず、MALDI質量分析法における測定対象分子を含む試料とマトリックスの混合結晶を析出させる。該混合結晶を析出させる方法は特に限定はないが、例えば、好ましい方法として、以下の(1)〜(3)が挙げられる。
(1)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後に、乾燥後又は乾燥する前にマトリックスの溶液を載置し、次いで、該溶液を乾燥させて、該混合結晶を析出させる方法。
(2)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、次いで、該溶液を乾燥させて、該混合結晶を析出させる方法。
(3)試料支持部材上に該マトリックスの溶液を載置し、次いで該溶液を乾燥させ該マトリックスの結晶を析出させた後、同一又は異なる化学構造を有するマトリックスと測定対象分子を含む溶液を重層し、次いで該溶液を乾燥させて混合物を生成させる方法。
液体マトリックスの場合は例えば以下のようになる。
(1)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後に、乾燥後又は乾燥する前にマトリックスの溶液を載置し、次いで、該混合溶液の溶媒を揮発させて、該混合物を生成させる方法。
(2)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、次いで、該混合溶液の溶媒を揮発させて、該混合物を生成させる方法。
試料とマトリックスの混合結晶を析出させる方法として、特に好ましくは上記(1)又は(2)である。すなわち、
(1)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後にマトリックスの溶液を載置し、又は、
(2)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、
次いで、該溶液を乾燥させて、該混合結晶を析出させる方法
である。
<<(1)法>>
上記(1)法は、本発明において特に好適な方法であり、測定対象分子を含む試料を先に試料支持部材上に存在させ、次いで、マトリックスの溶液(好ましくは実質的にマトリックスのみの溶液)を、該試料に重層し、試料を溶解させながら、試料支持部材(以下、「プレート」と略記することがある)上で乾燥させて、結晶を析出させる測定試料の調製方法である。
上記(1)においては、マトリックス溶液をプレート上で乾燥する工程を、プレート上に物質を供給する工程の中では最終の工程とする。一般に、高いイオン生成量を得るためには試料とマトリックスがよく混合されなければならないとされているが、上記(1)の方法を用いれば、最終の工程でプレートに供給する溶液の中に測定対象分子が溶解(含有)されていなくてもマトリックスとよく混和する。
物質をプレート上に載置するための実質的な最終工程に、マトリックスのみの溶液を用いる場合、該溶液の溶媒は、測定対象分子と該マトリックスの何れをも溶解できる溶媒であることが好ましい。下層に既にある測定対象分子を溶解して、マトリックスと混合させることができるからである。
上記(1)法は、以下の、工程(A)及び工程(B)を必須の工程として含むことが好ましい。
(A)測定対象分子を含む試料の溶液をプレート上で乾燥する工程と、その後に、
(B)マトリックスのみを溶媒に溶解した溶液を、上記プレートに滴下する工程
工程(A)では、測定対象分子を含む試料の溶液をプレート上で乾燥する。このときの溶液は、測定対象分子を含有してさえいればよく、マトリックスは含有されていてもいなくてもよい。ただし、測定対象分子を含む試料が極微量の場合、測定対象分子を含む試料の良溶媒がマトリックスの貧溶媒であり、そのマトリックスや溶媒を用いたい場合、マトリックスが溶解した溶媒に対して試料が不安定でありストック溶液として保管若しくは使用ができない又は取り扱いが難しくなる場合等には、測定試料の調製が容易である点、溶媒の選択幅が広がる点、試料の分解や容器への吸着を抑制できる点等のため、このときの溶液中にはマトリックスが溶解されておらず、測定対象分子を含む試料のみが溶解されている方が好ましい。
その際の溶媒としては、測定対象分子を含む試料を溶解しさえすれば特に限定はなく、マトリックスを溶解させる性質は有していなくてもよいし、常圧における沸点が高く、蒸発(乾燥)速度は遅くてもよい。測定対象分子又は測定対象分子を含む試料が水溶性であるならば、工程(A)で用いる溶媒は水単独が特に好ましい。測定対象分子を含む試料が糖であるならば、工程(A)で用いる溶媒は水単独が最も好ましい。マトリックスを溶解させないので、マトリックスに対する溶解度は低くてもよく、そのため測定対象分子又は測定対象分子を含む試料に最も好適な溶媒が選択できる。
工程(A)における上記溶液中における測定対象分子の濃度は特に限定はないが、1amol/μL〜1μmol/μLが好ましく、100amol/μL〜1nmol/μLが特に好ましい。工程(A)終了後に(乾燥後に)、プレート上に存在する測定対象分子を含有する層の厚さは特に限定はないが、5μm以下が好ましく、1μm以下が特に好ましい。かかる層の厚さが厚すぎると、マトリックス溶液を滴下した場合にマトリックス分子とうまく混和しない可能性があり、MSシグナル強度が低下する場合がある。
(1)法は、「測定対象分子を含む試料」の溶液をまずプレートに滴下するので、測定対象分子を含む試料が極めて微量である場合に、別の容器でマトリックス溶液と混合しその一部をプレートに滴下することなく、微量試料のほとんど全量を分析に供することができるため特に有用である。
(1)法においては、試料は複数の測定対象分子を含むが、それぞれの測定対象分子は、10pmol以下の場合が好ましく、1pmol(1000fmol)以下の場合がより好ましく、300fmol以下の場合が特に好ましく、100fmol(例えば、それぞれの測定対象分子100fmol/μLに溶解した水溶液を1μL滴下する等によりプレート上に100fmol載せる等)以下の場合に更に有用である。
(1)法においては、工程(A)の後に、(B)マトリックスのみを溶媒に溶解した溶液を上記プレートに滴下する工程を有する。「工程(A)の後に」の意味は、「工程(A)の直後に」には限定されず、工程(A)と工程(B)の間に、他の工程が挿入されていてもよい。「他の工程」としては、例えば、後述する工程(C)が挙げられる。
工程(B)では、実質的にマトリックスのみを溶媒に溶解した溶液を上記プレートに滴下するが、測定対象分子と該マトリックスの何れをも溶解できる溶媒を用いることによって、下層の測定対象分子がマトリックス分子と混和し、乾燥後、混合結晶が現出し、スイートスポットが形成される。
<<<誘導体化>>>
(1)法において測定試料の誘導体化を行う場合は、上記工程(A)と工程(B)の間に、
(C)測定対象分子と反応することによってイオン化効率を高める誘導体化剤の溶液を、上記プレートに滴下して乾燥する工程
を含むことが、イオン化効率を更に高めるために好ましい。
すなわち、(A)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後であって、(B)マトリックスの溶液を載置する前に、(C)測定対象分子と反応することによってイオン化効率を高める誘導体化剤の溶液を該試料支持部材上に滴下して乾燥する工程を挿入するMALDI質量分析法は、イオン化効率が更に高くなるために好ましい。
測定対象分子と反応することによってイオン化効率を高める誘導体化剤(以下、単に「誘導体化剤」と略記する)を、予め測定対象分子と反応させてから、プレートに供給すると、測定試料のロスに繋がる場合がある。従って、糖、糖タンパク質、糖ペプチド等の微量な「生体由来の分子又は生体試料中の分子」に質量分析法を適用する場合、工程(A)と工程(B)の間に工程(C)を挿入することが特に好ましい。
誘導体化剤は、誘導体化された測定対象分子すなわち質量分析に供される分子のイオン化効率を高めるものであれば特に限定はない。誘導体化剤は、MALDI質量分析法におけるマトリックスとしての効果を有する化合物、又はそれらに後記する反応性官能基やスペーサ部分を更に有する化合物も好ましい。
かかる誘導体化剤の化学構造は上記効果を奏するものであれば特に限定はないが、その分子内にナフタレン、アントラセン、ピレン等の縮合多環を有する縮合多環化合物が、上記効果(イオン化効率を高める効果)を好適に奏することに加えて、試料支持部材上において、測定対象分子のシグナルが出る測定試料上の点が共通になるためにより好ましい。「シグナルが出る測定試料の任意の点」にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子について、試料中での混合比を反映した定量的なマススペクトルを得ることができる。
ここで「縮合多環化合物」とは、窒素、硫黄又は酸素分子を含む複素環を一部に含んでいてもよい縮合多環部分と、測定対象分子とを結合することが可能である反応性官能基と、要すれば、該縮合多環部分と該反応性官能基とを連結するスぺーサー部分とを有する化合物をいう。特に、芳香族環を有する縮合多環芳香族化合物であることが好ましい。
誘導体化剤は、測定対象分子に反応することによって、誘導体化された分子すなわち質量分析に供される分子の、イオン化切断位置を制御できるようにするものであることが特に好ましい。
誘導体化剤は、アミノ基、ヒドラジド基、ジアゾメチル基、スクシニミジルエステル基、塩化スルホニル基、ヨード基(−I)等の反応性官能基を有することが好ましい。特に好ましい誘導体化剤としては、具体的には、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等の縮合多環に、上記基が直接若しくは他の基(スペーサ部分)を介して結合した縮合多環誘導体化合物;ヨウ化メチル;ジアゾメタン;トリメチルシリルジアゾメタン等が挙げられる。
このうち、誘導体化された分子すなわち質量分析に供される分子のイオン化効率が高まる;イオン化切断位置を制御できる;試料支持部材上に調製した測定試料上で、複数の測定対象分子について、「シグナルが出る測定試料の点」が共通になる;等の点から、ピレン環化合物が特に好ましい。
ここで「ピレン環化合物」とは、ピレン環と、「測定対象分子」に結合することが可能である反応性官能基と、要すれば該ピレン環と該反応性官能基とを連結するスペーサ部分とを有する化合物をいう。
具体的には、1−ピレンブタン酸ヒドラジド(1-pyrenebutanoic acid, hydrazide)(以下、「PBH」と略記する)、1−ピレン酢酸ヒドラジド(1-pyreneacetic acid, hydrazide)、1−ピレンプロピオン酸ヒドラジド(1-pyrenepropionic acid, hydrazide)、1−ピレン酢酸スクシニミジルエステル(1-pyreneacetic acid, succinimidyl ester)、1−ピレンプロピオン酸スクシニミジルエステル(1-pyrenepropionic acid, succinimidyl ester)、1−ピレンブタン酸スクシニミジルエステル(1-pyrenebutanoic acid, succinimidyl ester)、N−(1−ピレンブタノイル)システイン酸スクシニミジルエステル(N-(1-pyrenebutanoyl)cysteic acid, succinimidyl ester)、N−(1−ピレン)ヨードアセトアミド(N-(1-pyrene) iodoacetamide)、N−(1−ピレン)ヨードマレイミド(N-(1-pyrene) maleimide)、N−(1−ピレンメチル)ヨードアセトアミド(N-(1-pyrenemethyl) iodoacetamide)、1−ピレンメチルヨードアセテート(1-pyrenemethyl iodoacetate)、アミノピレン(aminopyrene)、1−ピレンメチルアミン(1-pyrenemethyl amine)、1−ピレンプロピルアミン(3-(1-pyrenyl)propylamine)、1−ピレンブチルアミン(4-(1-pyrenyl)butylamine)、1−ピレンスルホン酸クロリド(1-pyrenesμLfonyl chloride)、1−ピレニルジアゾメタン(1-pyrenyldiazomethane)(以下、「PDAM」と略記する)、1−ピレンカルバルデヒド ヒドラゾン(1-pyrenecarbaldehyde hydrazone)、1−ピレニルチオシアネート(1-pyrenylthiocyanate)、1−ピレニルイソチオシアネート(1-pyrenylisothiocyanate)等が好ましいものとして挙げられる。
誘導体化剤としては、上記具体的化合物において、ピレン環を、ナフタレン環又はアントラセン環に代えたものも好ましいものとして挙げられる。また、ヨウ化メチル、ジアゾメタン又はトリメチルシリルジアゾメタンも好ましい。
これらのうち、試料支持部材上に調製した測定試料中で、複数の測定対象分子について「シグナルが出る点」が共通になるために、更に好ましくはPBH又はPDAMであり、最も好ましくはPDAMである。「シグナルが出る測定試料の任意の点」にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子について、効率よく、かつ定量的なマススペクトルを得ることができる。
好ましい「測定対象分子と誘導体化剤との組み合わせ」としては、測定対象分子がアルデヒド基を含有する糖鎖を有する分子であり、誘導体化剤がアミノ基又はヒドラジド基等を有するものである場合が挙げられる。
また、好ましい組み合わせとしては、測定対象分子が、カルボキシル基、アミノ基又はメルカプト基を有する糖ペプチド若しくはペプチド、又は、かかる基を有する糖タンパク質若しくはタンパク質であり、誘導体化剤が、アミノ基、ヒドラジド基又はジアゾメチル基等を有するものである場合が挙げられ、更に、測定対象分子が、カルボキシル基を有する糖ペプチド若しくはペプチド、又は、かかる基を有する糖タンパク質若しくはタンパク質であり、誘導体化剤がヨウ化メチル又はトリメチルシリルジアゾメタンである場合が挙げられる。
これらの組み合わせは、測定対象分子及び誘導体化剤を、容易にプレート上で反応させることができる点、イオン化を阻害しない点、反応が選択的である点、一般に微量での分析の必要性が高いので、前記効果を奏し易い点等から好ましい。
測定対象分子と誘導体化剤の反応温度は特に限定はないが、40〜100℃で反応させることが好ましく、60〜90℃で反応させることが特に好ましい。室温より高い温度で反応させることによって、反応速度が増加する。
<<(2)法>>
(2)試料支持部材上に測定対象分子を含む試料とマトリックスの溶液を同時に載置し、該溶液を乾燥させて、試料支持部材上に該混合結晶を析出させる方法も好ましい。かかる(2)の測定試料の調製方法は、「Dried Droplet法」として知られているものである。(1)の調製方法で、試料支持部材上に測定対象分子を含む試料を載せた後に、乾燥する前にマトリックスの溶液を載置する方法も同様である。
(2)法においては、試料は複数の測定対象分子を含むが、それぞれの測定対象分子は、10pmol以下の場合が好ましく、1pmol(1000fmol)以下の場合がより好ましく、300fmol以下の場合が特に好ましく、100fmol以下の場合が更に好ましい。
この(2)法においても測定対象分子の誘導体化を行ってもよい。「好ましい誘導体化剤」等は、(1)法と同様である。
<マトリックス溶液>
マトリックスはレーザーの光エネルギーを吸収して、共存する分析対象分子の脱離及びイオン化を達成する物質であれば液体及び固体を問わず種類は限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
1,8−ジアミノナフタレン(1,8-Diaminonaphthalene)(1,8−DAN)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(2,5-Dihydroxybenzoic acid)(以下、「DHBA」と略記する場合がある)、1,8−アントラセンジカルボン酸ジメチルエステル(1,8-Anthracenedicarboxylic Acid Dimethyl ester)、ロイコキニザリン(Leucoquinizarin)、アントラロビン(Anthrarobin)、1,5−ジアミノナフタレン(1,5-Diaminonaphthalene)(1,5−DAN)、6−アザ−2−チオチミン(6-Aza-2-thiothymine)、1,5−ジアミノアントラキノン(1,5-Diaminoanthraquinone)、1,6−ジアミノピレン(1,6-Diaminopyrene)、3,6−ジアミノカルバゾール(3,6-Diaminocarbazole)、1,8−アントラセンジカルボン酸(1,8-Anthracenedicarboxylic Acid)、ノルハルマン(Norharmane)、1−ピレンプロピルアミンハイドロクロライド(1-Pyrenepropylamine hydrochloride)、9−アミノフルオレンハイドロクロライド(9-Aminofluorene Hydrochloride)、フェルラ酸(Ferulic
acid)、ジトラノール(Dithranol)、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸(2-(4-Hydroxyphenylazo) benzoic acid)(HABA)、trans−2−[3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチル−2−プロペニリデン]マロンニトリル(trans-2-[3-(4-tert-Butylphenyl)-2-methyl-2-propenylidene]malononitrile)(DCTB)、trans−4−フェニル−3−ブテン−2−オン(trans-4-Phenyl-3-buten-2-one)(TPBO)、trans−3−インドールアクリル酸(trans-3-Indoleacrylic acid)(IAA)、1,10−フェナントロリン(1,10-Phenanthroline)、5−ニトロ−1,10−フェナントロリン(5-Nitro-1,10-phenanthroline)、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(α-Cyano-4-hydroxycinnamic acid)(CHCA)、シナピン酸(Sinapic acid)(SA)、2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン(2,4,6-Trihydroxyacetophenone)(THAP)、3−ヒドロキシピコリン酸(3-Hydroxypicolinic acid)(HPA)、アントラニル酸(Anthranilic
acid)、ニコチン酸(Nicotinic acid)、3−アミノキノリン(3-Aminoquinoline)、2−ヒドロキシ−5−メトキシ安息香酸(2-Hydroxy-5-methoxybenzoic
acid)、2,5−ジメトキシ安息香酸(2,5-Dimethoxybenzoic acid)、4,7−フェナントロリン(4,7-Phenanthroline)、p−クマル酸(p-Coumaric acid)、1−イソキノリノール(1-Isoquinolinol)、2−ピコリン酸(2-Picolinic acid)、1−ピレンブタン酸ヒドラジド(1-Pyrenebutanoic acid, hydrazide)(PBH)、1−ピレンブタン酸(1-Pyrenebutyric acid)(PBA)、1−ピレンメチルアミンハイドロクロライド(1-Pyrenemethylamine hydrochloride)(PMA)、3−AC(アミノキノリン)−CHCA(3-AC(aminoquinoline)-CHCA)。
マトリックスを溶解させる溶媒としては特に限定はないが、例えば、水、アセトニトリル、メタノール、エタノール、それらの混合溶媒等が挙げられる。
マトリックス溶液の乾燥方法は特に限定されないが、加温する、冷却する、風を送る、減圧する等によって乾燥を促進することが効果的な場合がある。
<質量分析装置>
イオン化に用いられるレーザーとしては、窒素レーザー(337nm)、YAGレーザー3倍波(355nm)、NdYAGレーザー(256nm)、炭酸ガスレーザー(2940nm)等が挙げられるが、窒素レーザーが好ましい。イオンの分離検出方法は特に限定はなく、二重収束法、四重極集束法(四重極(Q)フィルター法)、タンデム型四重極(QQ)法、イオントラップ法、飛行時間(TOF)法等を用いて、イオン化した分子を質量/電荷比(m/z)に従って分離し検出する。好ましくは、QIT−TOFである。
糖、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質等の分子は、分子量や組成が同じ異性体を多く含むので、イオンの生成効率を向上させ、分子のフラグメント化をn回繰り返す方法(MS法)が好ましい。MS法により、例えば分子中の結合位置等を決定できる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
<A2/A2F混合物、PDAM標識(誘導体化)、測定点によってスペクトルが一定>
まず、質量分析用プレート(試料支持部材)に、測定対象分子である中性糖鎖A2及びA2F(それぞれの化学構造を図9に示す)を水に溶解して、それぞれ100fmol/μLにした水溶液を1μL滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
次に、誘導体化剤である標識試薬PDAM(1−pyrenyldiazomethan;Molecular;Probes社製)を、DMSO(dimethyl sulfoxide;SIGMA社製)に溶解させ、10nmol/μLにした溶液を0.25μL滴下し、ヒートブロック上で、70℃、大気圧下に放置し乾燥させた。余剰の誘導体化剤を除くため、キシレン(SIGMA社製)に浸し、余剰のPDAMを除去し十分に乾燥させた。
次に、マトリックスとして、高純度DHBA(Shimadzu Biotech社製)を60%アセトニトリル水溶液に溶解して10mg/mLにした水溶液1.00μLを試料支持部材上に滴下し、室温、大気圧下で溶媒を乾燥させ結晶化を行った。
この測定試料について、MALDI質量分析法によってマススペクトルを取得した。測定は、質量分析計として、MALDI−QIT−TOF型質量分析計(AXIMA−QIT、Shimadzu Biotech社製)を用い、負イオンモードで行った。
また、測定試料の全域に対して、レーザーパワーを測定対象分子のイオンのシグナルが出始める閾値に最適化した後、50μm間隔でレーザー照射を行い、自動測定した。
自動測定は、1点あたり10ショットのレーザーを照射し、1つの測定試料につき2209点を測定し、積算平均化したスペクトルを取得した。
得られたマススペクトルを図1に示した。図1の「Total」には、測定試料の全体を自動測定し積算平均化したスペクトルを、「Point 1〜3」には、測定試料にレーザー照射し、糖鎖のシグナルが顕著に検出されたうちの異なる3点から得られたスペクトルを示した。
比較例1
<A2/A2F混合物、標識(誘導体化)無し、測定点によってシグナルパターンが異なる>
まず、質量分析用プレート(試料支持部材)に、測定対象分子である糖鎖A2及びA2F(化学構造を図9に示す)を水に溶解して、それぞれ2pmol/μL及び1pmol/μLにした水溶液を1μL滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
この測定試料について、実施例1と同様の操作により結晶化を行い、MALDI質量分析法によってマススペクトルを取得した。
得られたマススペクトルを図2に示した。図2の「Total」には、測定試料の全体を自動測定し積算平均化したスペクトルを、「Point 1〜3」には、測定試料にレーザー照射した際に糖鎖のシグナルが顕著に検出されたうちの異なる3点で得られたスペクトルを示した。
比較例2
<NA2/NA2F混合物、2AB標識(誘導体化)、測定点によってシグナルパターンが異なる>
まず、質量分析用プレート(試料支持部材)に、測定対象分子である糖鎖NA2及びNA2F(化学構造を図9に示す)の2−アミノベンズアミド(以下、「2AB」と略記する)の誘導体を水に溶解して、それぞれ100fmol/μLにした水溶液を1μL滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
以下、2ABで標識(誘導体化)したものを、「2AB−NA2」、「2AB−NA2F」等と表記する。
この測定試料について、実施例1と同様の操作により結晶化を行い、MALDI質量分析法によって正イオンモードのマススペクトルを取得した。
得られたマススペクトルを図3に示した。図3の「Total」には、測定試料の全体を自動測定し積算平均化したスペクトルを、「Point 1〜2」には、測定試料にレーザー照射した際に糖鎖のシグナルが顕著に検出されたうちの異なる2点で得られたスペクトルを示した。
<実施例1、比較例1及び比較例2の結果>
実施例1の「Point 1〜3」のマススペクトルを比較すると、2つの測定対象分子のシグナルの相対強度は、レーザーを照射した場所によらず一定で、同一の測定試料内でばらつきがなく、各点それぞれのスペクトルは、測定試料の全体を自動測定し積算平均化したスペクトルと一致していた。
一方で、比較例1の図2の「Point 1〜3」のマススペクトルを比較すると、2つの測定対象分子のシグナルの相対強度は、レーザーを照射した場所によって異なり、同一の測定試料内でもばらつきがあることが明らかである。具体的には、Point 2は、全体平均のスペクトルと類似のスペクトルを示していたが、Point 1とPoint 3は、2つのシグナルの強度比が平均のスペクトルとは逆転していた。
更に、比較例2においても、Point 1と、Point 2のスペクトルを比較すると、2つのシグナルの強度比は測定場所によって異なっていた。
このことは、非標識の糖(比較例1)や、非標識の糖に比べて高感度にはなるが2−ABにより誘導体化した糖(比較例2)では、測定場所により各シグナルの相対強度が異なったが、PDAMを用いて誘導体化(標識)した糖(実施例1)では、各シグナルの相対強度が、測定試料中での位置に依存せず一定となった。
従って、測定対象試料の全体を1時間以上かけて20000回以上のレーザーショットの測定を積算平均化しなくても、一部分だけを10分程度の短時間で測定したとしても、効率よく定量的に測定できることが分かった。
実施例2
<RNaseB糖ペプチド、標識(誘導体化)無し>
<ペプチドが付加することによって、糖鎖構造が不均一でもスペクトルのシグナルパターンが同一になることの実施例>
まず、20μgのRNaseB(Sigma−Aldrich社製)に、RapiGest SF(waters社製)を最終濃度が0.1%となるように加え、100℃で5分間加熱した。冷却後、10mmol/L重炭酸アンモニウムと10mmol/Lジチオトレイトールを含む水溶液に溶解し、55℃で45分間インキュベートした。
反応後、135mmol/Lのヨードアセトアミドを5μL加え、暗所で45分間静置した。次に、1μgのLys−Cを加え、37℃で一晩反応させた。
反応後の溶液は、セルロースを用いて濃縮精製した後、得られた溶液を質量分析用プレート(試料支持部材)に1μL滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
この測定試料について、実施例1と同様の操作により結晶化を行い、MALDI質量分析法によって正イオンモードのマススペクトルを取得した。
図4に、測定試料において異なる3点で測定されたマススペクトルと、測定対象分子の糖ペプチド(Man5〜9−SRNSTK)の顕著にシグナルが検出された点の分布及び測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真を示した。
「SRNSTK」は、1文字アミノ酸の配列で表わしたペプチドを示す。
<実施例2の結果>
実施例2の図4(a)〜(c)のマススペクトルを比較すると、3つのスペクトルのシグナル強度比が場所によらず一定であることが分かる。更に、Man5〜7−SRNSTKのシグナル分布は一致していた。
このことは、糖ペプチドのペプチド部分が共通であれば、糖鎖部分の化学構造が異なっていても、シグナルが出る点の分布は共通であることを示している。
従って、測定対象試料の全体を1時間以上かけて20000回以上のレーザーショットの測定を積算平均化しなくても、より強いシグナルが出る点を時間をかけて探さなくても、シグナルが出る一部分だけを10分程度の短時間で測定したとしても、効率よく定量的に測定できることが分かった。
実施例3
<IRNKS/GlcNAc−IRNKS/NA2−IRNKS、標識(誘導体化)無し>
まず、質量分析用プレート(試料支持部材)に、測定対象分子である、ペプチドIRNKSを1pmol/μL、糖ペプチドGlcNAc−IRNKSを500fmol/μL、及び、NA2−IRNKS(化学構造を図9に示す)500fmol/μLを水に溶解した水溶液を1μL滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
「IRNKS」は、1文字アミノ酸の配列で表わしたペプチドを示す。
この測定試料について、実施例1と同様の操作によりマトリックスの結晶化を行い、MALDI質量分析法によって正イオンモードのマススペクトルを取得した。
図5に、測定試料において測定対象分子であるペプチド及び糖ペプチドイオンのシグナルが顕著に検出されたそれぞれの位置及び測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真を示した。
<実施例3の結果>
実施例3の図5を比較すると、3つの測定対象分子のシグナル分布は一致していた。
このことは、糖ペプチドのペプチド部分が共通であれば、糖鎖部分の有無や化学構造が異なっていても、それぞれのシグナル分布は共通であることを示している。
従って、測定対象試料の全体を1時間以上かけて20000回以上のレーザーショットの測定を積算平均化しなくても、一部分だけを10分程度の短時間で測定したとしても、効率よく定量的に測定できることが分かった。
実施例4
<IRNKS/GlcNAc−IRNKS/NA2−IRNKS、PDAM標識(誘導体化)有り>
<ペプチドが同一で、更にピレン標識されると、測定点によってシグナルパターンがより均一になる>
まず、質量分析用プレート(試料支持部材)に、測定対象分子であるペプチドIRNKSを1pmol/μLと、糖ペプチドGlcNAc−IRNKS及びNA2−IRNKS(化学構造を図9に示す)をそれぞれ500fmol/μLを水に溶解した水溶液を1μL滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
「GlcNAc」は、N−アセチルグルコサミンを示す。
次に、誘導体化剤である標識試薬PDAM(1−pyrenyldiazomethan;Molecular Probes社製)を、DMSO(dimethyl sulfoxide;SIGMA社製)に溶解させて10nmol/μLにした溶液を0.25μL滴下し、ヒートブロック上で、70℃、大気圧下に放置し乾燥させた。
余剰の誘導体化剤を除くため、キシレン(SIGMA社製)に浸し余剰のPDAMを除去し十分に乾燥させた。
この測定試料について、実施例1と同様の操作により結晶化を行い、MALDI質量分析法によって正イオンモードのマススペクトルを取得した。
図6に、測定試料において測定対象分子であるペプチド及び糖ペプチドイオンのシグナルが顕著に検出されたそれぞれの位置及び測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真を示した。
<実施例4の結果>
実施例4の図6を比較すると、3つの測定対象分子のシグナルが出る点の分布は一致しており、実施例3の分布状態よりも更に均一になっていた。
このことは、糖ペプチドのペプチド部分が共通で、更にPDAMによる誘導体化を行うと、糖鎖部分の有無や化学構造が異なっていても、それぞれのシグナルが出る点の分布は共通であることを示している。
従って、測定対象試料の全体を1時間以上かけて20000回以上のレーザーショットの測定を積算平均化しなくても、一部分だけを10分程度の短時間で測定したとしても、効率よく定量的に測定できることが分かった。
実施例5
<IgG1+IgG2混合物、標識(誘導体化)無し>
<IgG1又はIgG2のグリコフォームを調べることが可能>
まず、20μgの免疫グロブリンG(IgG、主にサブクラスIgG1及びIgG2が含まれる)(和光純薬工業製)に、RapiGest SF(waters社製)を最終濃度が0.1%となるように加え、100℃で5分間加熱した。
冷却後、10mmol/L重炭酸アンモニウムと10mmol/Lジチオトレイトールを含む水溶液に溶解し、55℃で45分間インキュベートした。
反応後、135mmol/Lのヨードアセトアミドを5μL加え、暗所で45分間静置した。反応後の溶液に1μgのトリプシンを加え、37℃で一晩反応させた。
「IgG1」、「IgG2」は、それぞれ、免疫グロブリンGのサブクラスであり、上記の操作により、IgG試薬から得られた測定対象分子の糖ペプチドを示す。
反応後、溶液はセルロースを用いて濃縮精製し、0.8%のトリフルオロ酢酸を加えて80℃で45分間加熱し、溶媒を乾燥させた。
得られた試料を水に溶解し、質量分析用プレート(試料支持部材)に1μL滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
この測定試料について、実施例1と同様の操作により結晶化を行い、MALDI質量分析法によって負イオンモードのマススペクトルを取得した。
図7(a)に、測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真、図7(b)には測定試料において得られたマススペクトル、図7(c)には測定対象分子の糖ペプチドのシグナル(IgG1及びIgG2それぞれのG0F、G1F、G2F)が顕著に検出されたそれぞれの位置を示した。
比較例3
<実施例5と同じ「IgG1+IgG2混合物」、誘導体化無し>
<ペプチドの異なるIgG1とIgG2はMALDIイメージ偏在分離・不均一>
実施例5において、ペプチド部分が異なり、糖鎖部分が共通の測定対象分子とする以外は、実施例5と同様の実験を行った。
<実施例5と比較例3の結果>
実施例5の図7(b)のマススペクトルには、6種類の糖ペプチド(IgG1及びIgG2のそれぞれG0F、G1F、G2F))が検出されている。そのうちのIgG2の糖ペプチドG0F、G1F、G2Fは、糖鎖の化学構造が異なるがペプチド部分はEEQFNSTFRで共通である。また、IgG1の糖ペプチドG0F、G1F、G2Fは、糖鎖の化学構造が異なるがペプチド部分はEEQYNSTYRで共通である。
これら6種類の糖ペプチドのシグナル分布を比較すると、ペプチド部分が共通の3つの測定対象分子のシグナルが出る点の分布は一致している。すなわち、G0F、G1F、G2Fの糖鎖が異なっても、ペプチド部分が同じの糖ペプチドであれば、それらのシグナルは、同一場所から再現性よく検出された。
このことは、糖ペプチドのペプチド部分が共通であれば、糖鎖部分の化学構造が異なっていても、それぞれのシグナルが出る点の分布は共通であることを示している。
従って、測定対象試料の全体を1時間以上かけて20000回以上のレーザーショットの測定を積算平均化しなくても、一部分だけを10分程度の短時間で測定したとしても、効率よく定量的に測定できることが分かった。
一方、比較例3において、ペプチド部分が異なり、糖鎖部分が共通の測定対象分子同士のシグナル分布を比較すると、全く異なっていることが分かった。
従って、糖鎖が同一であっても、ペプチドが異なれば検出される位置も異なり、測定対象試料の一部分だけを測定して、ペプチド部分の異なる糖ペプチド同士のシグナル強度を比較することはできないことが分かった。
実施例6
<IgG1+IgG2混合物、誘導体化有り>
<感度向上、スペクトルパターン同一、ペプチドが異なってもMALDIイメージ類似、ペプチドの異なるIgG1とIgG2を比較することが可能>
まず、20μgの免疫グロブリンG(IgG)(和光純薬工業製)にRapiGest SF(waters社製)を最終濃度が0.1%となるように加え、100℃で5分間加熱した。冷却後、10mmol/L重炭酸アンモニウムと10mmol/Lジチオトレイトールを含む水溶液に溶解し、55℃で45分間インキュベートした。
反応後、135mmol/Lのヨードアセトアミドを5μL加え、暗所で45分間静置した。次に、2μgのキモトリプシンを加え、25℃で一晩反応させた。
反応後、溶液はセルロースを用いて濃縮精製し、0.8%のトリフルオロ酢酸を加えて80℃で45分間加熱し、溶媒を乾燥させた。
得られた試料を水に溶解し、質量分析用プレート(試料支持部材)に1μL滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
次に、誘導体化剤である標識試薬PDAM(1−pyrenyldiazomethan;Molecular Probes社製)をDMSO(dimethyl sulfoxide;SIGMA社製)に溶解させ、10nmol/μLにした溶液を0.25μL滴下し、ヒートブロック上で、70℃、大気圧下に放置し乾燥させた。
余剰の誘導体化剤を除くため、キシレン(SIGMA社製)に浸し余剰のPDAMを除去し十分に乾燥させた。
この測定試料について、実施例1と同様の操作によりマトリックスの結晶化を行い、MALDI質量分析法によって負イオンモードのマススペクトルを取得した。
図8には、測定試料の共焦点レーザー顕微鏡写真と、測定対象分子の糖ペプチドのシグナル(IgG1(G1F)、IgG2(G1F))が顕著に検出されたそれぞれの位置を示した。
実施例6のIGg1とIgG2の糖ペプチドのシグナル分布を比較すると、何れの糖ペプチドにおいても、測定試料の同一部分から強いシグナルが検出されていた。
このことは、糖ペプチドのペプチド部分が異なっていても、PDAMを用いて誘導体化することにより、それぞれの検出感度が増加するだけでなく、測定試料の一部分からでも、異なる糖ペプチドを同時に測定できることを示している。
従って、測定対象試料の全体を1時間以上かけて20000回以上のレーザーショットの測定を積算平均化しなくても、一部分だけを短時間で測定したとしても、効率よく定量的に測定できることが分かった。
実施例7
<2種類の糖ペプチド混合物、誘導体化有り>
<感度向上、スペクトルパターン同一、ペプチドが異なってもMALDIイメージ類似、ペプチドの異なるNA2−LNDTRとNA2−AQNNGSNを比較することが可能>
まず、2μgのα2−HS−glycoprotein(Sigma社製)を50mmol/Lの重炭酸アンモニウムに溶解し、Thermolysinを最終濃度が200U/mLとなるように加え、56℃で一晩インキュベートした。反応後、0.8%のトリフルオロ酢酸を加えて80℃で45分間加熱し、溶媒を乾燥させた。次に、試料に水を加えて再溶解し、カーボングラファイトカートリッジ(GLサイエンス製)を用いて精製した。更に、セルロースを用いて濃縮精製した後、溶媒を乾燥させた。
得られた試料を水に溶解し、質量分析用プレート(試料支持部材)に1μL(1pmol)滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
次に、実施例6と同様の操作により、糖ペプチドのPDAM誘導体化を行った。
この測定試料について、実施例1と同様の操作によりマトリックスの結晶化を行い、MALDI質量分析法によって負イオンモードのマススペクトルを取得した。
実施例7において得られた、ペプチドの異なる2種類の糖ペプチドNA2−LNDTRとNA2−AQNNGSN(化学構造を図9に示す)のシグナル分布を比較すると、何れの糖ペプチドにおいても、強いシグナルが測定試料から一様に検出されており、その強いシグナルの分布は同一であった。更に、測定試料中で、異なる測定点から得られたマススペクトルを比較すると、2つの測定対象分子のシグナルの相対強度は、レーザーを照射した場所によらず一定で、同一の測定試料内でばらつきがなく、従って各点それぞれのスペクトルは、測定試料の全体を自動測定し積算平均化したスペクトルとも一致していた。
実施例8
<多種類の糖ペプチド混合物、誘導体化有り>
<感度向上、スペクトルパターン同一、ペプチドが異なってもMALDIイメージ類似、site−specificな糖鎖構造を比較することが可能>
10μgのα1−acid−glycoprotein(Sigma社製)を実施例6と同様に、RapiGestで変性後、還元アルキル化を行い、50mmol/Lの重炭酸アンモニウムに溶解し、Glu−Cを500ng(タンパク質量の1/20)となるように加え、37℃で一晩インキュベートした。
反応後、0.8%のトリフルオロ酢酸を加えて80℃で45分間加熱し、溶媒を乾燥させた。次に、試料に水を加えて再溶解し、セルロースを用いて濃縮精製した後、溶媒を乾燥させた。
得られた試料を水に溶解し、質量分析用プレート(試料支持部材)に1μL(250ng)滴下し、室温(23℃)、大気圧下で放置し乾燥させた。
次に、実施例6と同様の操作により、糖ペプチドのPDAM誘導体化を行った。
この測定試料について、実施例1と同様の操作によりマトリックスの結晶化を行い、MALDI質量分析法によって正イオン及び負イオンモードのマススペクトルを取得した。
図10に、Glu−C消化糖ペプチド混合物のマトリックス結晶中の一部分にレーザーを照射して得られた負イオンスペクトルを示す。
N38、N54、N75及びN85の4カ所の糖鎖結合アスパラギンをそれぞれ含む糖ペプチドが検出された。N38には、糖鎖NA2及びNA3が結合し、N54には、糖鎖NA2、NA3及びNA4が結合し、N75には、糖鎖NA3及びNA4が結合し、N85には、糖鎖NA2、NA3及びNA4が結合することが分かった。
更に、図11には、マトリックス全域を自動測定し、これらのうちの糖ペプチドのシグナルの分布を示したが、同一の分布であった。すなわち、ペプチドが同一で糖鎖が異なった糖ペプチド同士でも、ペプチドが異なる糖ペプチド同士でも分布は同じであり、各測定点のスペクトルは同一となることを示している。
正イオン測定でも同様の結果が得られた。
比較例4
<多種類の糖ペプチド混合物、誘導体化無し>
実施例8と同様に、α1−acid−glycoproteinをGlu−C消化を行った後、PDAM誘導体化を実施しなかった測定試料のMALDI質量分析を行った。その結果、実施例8で検出された4カ所の糖鎖結合アスパラギンをそれぞれ含む糖ペプチドを検出することはできず、定量的なMSスペクトルを得ることはできなかった。
このことは、一種類のペプチドではなく、異なったペプチドに糖鎖が結合した糖ペプチドの混合物では、それぞれのペプチドをもつ糖ペプチドがマトリックス分子と異なった相互作用をしたり、互いにイオン化を阻害したりすることで、定量的な測定をすることが困難であることを示している。
実施例9
<多種類の糖ペプチド混合物、誘導体化有り>
α1−acid−glycoproteinを実施例6と同様な操作により得たサーモリシン消化糖ペプチド混合物でも同様の結果が得られた。すなわち、N15を含むITN、N54を含むFTPNKTEDT、N75を含むIYN、N85を含むVQRENGTの4種類のペプチド(「ITN」、「FTPNKTEDT」、「IYN」、「QRENGT」はそれぞれ、1文字アミノ酸の配列で表わしたペプチドを示す。)に複数の糖鎖が結合した糖ペプチドを検出し、それぞれのシグナル分布は同一であった。
以上のように、糖タンパク質から調製された糖ペプチド試料は、糖鎖部分及び/又はペプチド部分がそれぞれ異なった混合物であり、本発明により、縮合多環化合物で標識した測定対象分子とマトリックスとを結晶化させて測定試料を調製することが、試料支持部材上に調製した測定試料である「試料とマトリックスとの混合結晶又は混合物」中で、複数の測定対象分子についてシグナルが出る点が共通になるため、該シグナルが出る点にレーザーを照射すれば、複数の測定対象分子について定量的なマススペクトルを得ることができる点で好ましい。
特に、生体試料由来測定試料は、多種類の糖タンパク質が含まれていたり、一種類の糖タンパク質でも糖鎖が2カ所以上に結合していたりするので、糖鎖部分及び/又はペプチド部分がそれぞれ異なった混合物であり、本発明により、著しく効果を奏する。
更に、糖ペプチド調製にサーモリシンを用いると、比較的低分子量のペプチドを生じるので、縮合多環化合物で標識した測定対象分子中の共通の誘導体化構造の占有率が大きくなり好ましい。
あるいは、Glu−C、Lys−C又はArg−Cによる消化を実施すると、C末端アミノ酸が共通になるので、共通の誘導体化構造の効果を更に向上させるので好ましい。
以上のことは、糖ペプチドのペプチド部分が大きく異なっていても、PDAMを用いて誘導体化することにより、それぞれのイオン化効率が一様に増加し、検出感度が増加するだけでなく、測定試料の一部分からでも、異なる糖ペプチドを同時に測定できることを示している。
従って、測定対象試料の全体を1時間以上かけて20000回以上のレーザーショットの測定を積算平均化しなくても、それぞれのより強いシグナルが出る点を探さなくても、最初に測定したシグナルが出る一部分だけを短時間で測定したとしても、効率よく定量的に測定できることが分かった。
本発明の質量分析法は、試料に含まれている複数の分子を短時間で効率よく定量することができ、それによって信頼性の高い化学構造についての情報を得ることができるので、微量な生体試料由来の分子や生体試料中の分子の化学構造解析はもちろん、機能解明や病態の解明の分野にも広く利用されるものである。
本願は、2011年8月31日に出願した日本の特許出願である特願2011−188615に基づくものであり、それらの出願の全ての内容はここに引用し、本願発明の明細書の開示として取り込まれるものである。

Claims (8)

  1. 複数の測定対象分子を含む試料のMALDI質量分析法であって、該複数の測定対象分子は、糖の混合物、又は糖ぺプチドの混合物、又は糖ぺプチドとペプチドの混合物、又は糖タンパク質の混合物、又は糖タンパク質とタンパク質の混合物であり、測定試料全体を測定し積算平均化することなく、シグナルが出る測定試料の任意の点から、該複数の測定対象分子についての定量的なマススペクトルを得ることを特徴とするMALDI質量分析法。
  2. 上記複数の測定対象分子が、糖ぺプチドの混合物であって、そのペプチド部分は同一であるか、又は、糖ぺプチドとペプチドの混合物であって、糖ペプチドのペプチド部分は同一で、かつ糖ペプチドのペプチド部分と該ペプチドは同一である請求項1に記載のMALDI質量分析法。
  3. 上記複数の測定対象分子が糖の混合物であり、試料を縮合多環化合物と反応させ、得られた縮合多環化合物で標識した測定対象分子とマトリックスとを結晶化させて測定試料を調製する請求項1に記載のMALDI質量分析法。
  4. 上記複数の測定対象分子が糖ぺプチドとペプチドの混合物であって、糖ペプチドのペプチド部分は同一で、かつ糖ペプチドのペプチド部分と該ペプチドは同一であり、試料を縮合多環化合物と反応させ、得られた縮合多環化合物で標識した測定対象分子とマトリックスとを結晶化させて測定試料を調製する請求項1に記載のMALDI質量分析法。
  5. 上記複数の測定対象分子が糖ぺプチドの混合物であって、その糖ペプチドは糖及び/又はペプチドがそれぞれ異なってもよいものであり、試料を縮合多環化合物と反応させ、得られた縮合多環化合物で標識した測定対象分子とマトリックスとを結晶化させて測定試料を調製する請求項1に記載のMALDI質量分析法。
  6. 上記縮合多環化合物がピレン環化合物である請求項3ないし請求項5の何れかの請求項に記載のMALDI質量分析法。
  7. 上記ピレン環化合物が1−ピレニルジアゾメタン(PDAM)である請求項6に記載のMALDI質量分析法。
  8. 測定試料に存在する上記複数の測定対象分子がそれぞれ10pmol以下である請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載のMALDI質量分析法。
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