JP5302212B2 - 治療タンパク質の凝集体の直接質量分光分析 - Google Patents

治療タンパク質の凝集体の直接質量分光分析 Download PDF

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Description

本発明は、治療タンパク質の凝集の分析法および、抗体などの治療タンパク質または他の治療タンパク質の消化されていない、フラグメント化されていない共有結合で安定化された凝集体からのインタクトなイオンに関する高質量MALDI質量分析法を使用する凝集の定量に関する。
[発明の背景]
抗体凝集体または抗体の他の分子間生成物の同定および特徴付けは極めて重要である。何故ならば、多数の抗体が医薬品として使用されているからである。老化、熱ストレス、pHストレスまたはホスト細胞発現の結果としての抗体凝集体または他の治療タンパク質により形成された凝集体の分析は、これらの治療分子の安定性を評価するのに極めて重要である。
抗体などの治療タンパク質の凝集は、患者への適用が治療効果を達成するのに高い濃度を必要とするとき、大きな問題となりうる。抗体および他の治療タンパク質の凝集は、減少した活性および溶解度を含む重要な結果をもたらす。治療タンパク質凝集の主要な結果は、処置された患者に結果をもたらすことがありうる免疫原性の増加でもある。
モノクローナル抗体および他の治療タンパク質の凝集は、対処されるべき複雑な問題である。何故ならば、凝集は関与するストレスのタイプに依存してタンパク質に異なる影響を与えることができるからである。産生期間中、モノクローナル抗体および他の治療タンパク質は、凝集をもたらすことがありうる温度、圧力およびpH変動を受ける。抗体凝集の分析は関心が高い。何故ならば、この現象は、これらの治療物質のそれらのターゲット(抗原、レセプター等)への結合に対する影響を有するからである。
このような抗体凝集体の分析のための慣用の技術としては、抗体凝集体を含有するタンパク質抽出物をモノマー形態から分離し、そして液相中に集めるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC);モノマーおよびダイマーの三次構造を評価することができる近紫外線および遠紫外線円二色性分析;抗体凝集体を共有結合凝集と非共有結合凝集とに区別することを特徴とすることができるドデシル硫酸ナトリウムによる毛細管電気泳動(CE−SDS)が挙げられる。エレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析法を使用して、逆相クロマトグラフィーと組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/rp−HPLC)により予備分別された抗体凝集体の異なる種間の識別をすることが可能である(Remmele, R. et al., J. Pharma. Sci. 95:126-145(2005))。このESI質量分光分析は、サンプルの凝集の量の定量分析を可能としない。何故ならば、この分析は、凝集したサンプルの高度に精製された画分に適用されなければならないからである。
インタクトな非共有結合タンパク質複合体の分析のためには、MALDI質量分析法が使用されてきた。特定のマトリックスおよびレーザー組み合わせ、「最初のショット」スペクトルの蓄積、pHの改変、サンプル調製期間中の選ばれた溶媒条件および複合体のサブユニットを共有結合で安定化させるための架橋試薬の使用といった多くの特定の方法が開発されてきた。これらの方法は、興味ある結果を与えるが、強い限界も有する(Farmer et al., Biological Mass Spectrometry 20:796-800, 1991; Farmer et al., J. Mass Spectrom. 33: 697-704, 1998)。これらの限界の中でも、使用される架橋安定化プロトコールの有効性の低さおよび高分子範囲(200kDaより高い)においてインタクトなタンパク質複合体を検出できないことが特に注目される。
最近、特別に開発されたMALDI高質量検出および新規な架橋プロトコールの組み合わせを使用して、Nazabal et al.は、より高いレベルの複雑性および高質量範囲における改良された感度でタンパク質−タンパク質相互作用を分析することができた(Nazabal, A. et al., Anal. Chem. 78:3562-3570, 2006; WO2006/116893)。
挙げられた分析法は、抗体または他の治療タンパク質凝集体の定量分析には決して適用されなかった。何故ならば、MALDI質量分析法は3つの大きな欠点を有するからである:1)イオン化のために使用されるレーザーは凝集体の非共有結合相互作用を混乱させる;2)検出感度は、高質量範囲で減少するか、またはない;および3)MALDI質量分析法は、定量的ツールとは考えられない。Farmer et al.(J. Mass Spectrom. 30: 1245-1254, 1995)による唯1つの研究がMALDI質量分析法を使用する架橋したオリゴマー複合体の定量分析のための基礎を提唱した。この方法は、補正係数を使用して実験における標準検出の使用を補うことを提唱した。標準検出システムの使用は、より高い質量範囲での検出限界;30〜150kDa範囲について計算された補正係数により補われうる限界、をもたらす。検出有効性のためのこの補正係数は、同じタイプの機器を使用するときのみおよび正確に同じ実験のセットアップについてのみ適用可能であり、これは定量分析のためのこの方法を極めて限定しそして適用することを困難にしている。
WO2006/116893(Eidgenossische Technische Hochschule Zurich)では、消化されていない、フラグメント化されていない共有結合で安定化された超分子ターゲット−リガンド複合体のインタクトなイオンをマトリックス支援式レーザー脱離イオン化(MALDI)により分析する、質量分析法が提唱されている。この方法は、抗体−抗原複合体および他のタンパク質−タンパク質複合体、例えばCDC42とSalmonella外側タンパク質Eとの複合体の分析により例示されるが、抗体または治療タンパク質の自己凝集の分析のために使用されたことはない。更に、この方法は、形成されたタンパク質複合体の量の定量分析のために使用されたことはない。
発明の要約
本発明の目的は、治療タンパク質、例えば抗体、薬物または薬物候補の凝集の量を決定する方法であって、凝集体を架橋して、精製された多成分サンプルまたは不均質生物学的マトリックス(heterogeneous biological matrices)において、共有結合で安定化された凝集体を形成し、次いでサンプルの消化またはフラグメント化なしに高質量検出器を備えたMALDI ToF質量分析法により、モノマー治療タンパク質および凝集した治療タンパク質の得られた混合物を分析することによる方法を提供することである。
特に、本発明は、
(a)モノマー治療タンパク質および非共有結合で凝集した治療タンパク質の混合物を架橋試薬と接触させて共有結合で安定化された治療タンパク質凝集体を形成する工程;
(b)形成されたインタクトなイオンを、高質量検出器を備えた高質量MALDI ToF質量分析法により分析する工程;
(c)質量ピークを予め確立された較正曲線と比較することにより治療タンパク質サンプルにおける凝集の量を直接決定する工程
を含む、質量分析法を使用して、消化されていない、フラグメント化されていないモノマー治療タンパク質のインタクトなイオンと共に消化されていない、フラグメント化されていない治療タンパク質凝集体のインタクトなイオンを測定することにより凝集の量を決定する方法を提供する。
本発明は、種々の用途、例えば、薬物開発、製造プロセスにおける治療タンパク質、例えば抗体、薬物または薬物候補の特徴付け、および自動化および/または高スループット用途を含むタンパク質品質コントロールにおける多様なツールとしてのこの方法の使用を提供する。
定量分析のためのこの方法は、高分子量イオン(ダイマー対モノマー)の検出に影響を与える飽和効果を補うための機器または実験条件に依存するいかなる補正係数も必要としない。本発明においては、簡単な較正曲線がサンプル中に存在する凝集体の正確な量への直接のアクセスを与える。
抗体サンプルにおける凝集の量の直接の決定。 架橋および高質量MALDI質量分析法を使用する安定化後の抗体モノマー(Ab)およびダイマー[Ab・Ab]混合物の高質量MALDI ToF分析。混合物は増加する量の抗体ダイマー(A.0%、B.10%、C.20%、D.30%、E.50%、F.80%)を含有する。 G.サンプル中に存在する抗体ダイマーの%の関数としてRiD/(Rim+RiD)をプロットすることにより得られた較正曲線。RiDは抗体ダイマーピークの積分であり、Rimは抗体モノマーピークの積分である。 治療タンパク質(薬物候補)TK−190906を含有するサンプルにおける凝集の量の決定。 A.架橋後の高質量MALDI質量分析法によるTK−190906の凝集体の分析。m=モノマー、D=ダイマー。 B.較正曲線を使用して、凝集したサンプルTK190906の凝集の量を決定する。 治療タンパク質TK200906凝集体を含有する複合体サンプルからの質量スペクトル結果。 A.TK−200906のモノマーサンプルを架橋後に高質量MALDI ToF質量分析法により分析する。 B.TK−200906の部分的に凝集したサンプルを架橋後に高質量MALDI ToF質量分析法により分析する。タンパク質ダイマー(D)およびトリマー(T)形成の量は、質量スペクトルに存在するピークの表面積から直接計算される。観測された値は49%モノマー、16%ダイマーおよび35%トリマーである。 検出された凝集体の感度の限界および反復率。A.架橋後の高質量MALDI ToF質量分析法により分析されたTN300707のモノマーサンプル。B.架橋後の高質量MALDI ToF質量分析法により分析されたTN300707の部分的に凝集したサンプル。C.サンプル中に存在するダイマーの%の関数としてRiD/(Rim+RiD)をプロットすることにより得られた較正曲線。RiDはダイマーピークの積分であり、そしてRimはモノマーピークの積分である。タンパク質ダイマーの量が計算され、そして4.47%の凝集比を示す。 D.定量方法の精度に対処するために実験を10回繰り返した。結果は、試験された10個の個々のサンプルの間で高い反復率(4.47±0.08%)を示す。
発明の詳細な説明
本発明は、骨の折れるルーチンな分析のための高質量MALDI ToF質量分析法および架橋化学の組み合わせを使用して高い感度および精度で、精製された多成分混合物または不均質生物学的マトリックスにおいて、治療タンパク質、例えば抗体、薬物または薬物候補の凝集の量を分析する方法に関する。
特に本願の方法は、非共有結合で結合したタンパク質凝集体を最初に特異的に架橋し、次いでそれを、消化またはフラグメント化工程を伴わないで鋭敏な高質量検出を使用するMALDI ToF質量分析法に供することにより、高い感度および精度で、インタクトな治療タンパク質(抗体または他の治療タンパク質、例えば薬物または潜在的薬物を含む薬物候補)の凝集体の分析を可能とする。サンプル中の凝集の量は、補正係数または他の機器調節の必要なしに標準較正曲線を使用して得られたMALDI質量スペクトルから直接決定される。本発明は、治療タンパク質サンプル中の凝集の量と、高質量MALDI質量分析法により分析されたサンプル中のモノマー形態および凝集した形態(1種または複数)について検出されたピークの表面積との相関を確立することが可能であることを証明する。このような定量は、質量分析計の検出限界を補うためのいかなる補正係数も必要とせず、高質量範囲(200kDaより高い)において低い飽和および高い感度を与える特定の高質量検出システムの使用の利益を受ける。本発明は、高質量検出システムの感度および開発された架橋プロトコールの高い有効性の利益を受ける高い精度での低い量の(5%より低い)凝集体の定量の可能性も証明する。
特定の態様においては、治療タンパク質凝集体は、精製された多成分サンプルまたは不均質生物学的マトリックスにおいて、消化またはフラグメント化工程なしに分析される。
更なる特定の態様においては、抗体凝集体は、2つの抗体の非共有結合複合体(抗体ダイマー)、3つの抗体の非共有結合複合体(抗体トリマー)または抗体のマルチマーを表す。考慮される更なる治療タンパク質は、アミノ酸の鎖からなる潜在的薬物を含む薬物または薬物候補である。治療タンパク質凝集体は、2つの治療タンパク質の非共有結合複合体(ダイマー)、3つの治療タンパク質の非共有結合複合体(トリマー)または治療タンパク質のマルチマーを表す。したがって、形成された抗体凝集体および他の治療タンパク質凝集体は、それぞれ、抗体−抗体相互作用またはタンパク質−タンパク質相互作用から生じる。
本発明の方法は、消化またはフラグメント化を伴わない治療タンパク質凝集体の直接質量分析を提供し、したがって、治療タンパク質凝集体の変異体を認識する能力およびサンプル内のそれらの量を解明する能力も含む。
本発明の方法の使用は、すべて同じ実験において、凝集体の量の直接の定量のみならず、サンプル中に存在する異なる凝集した種の化学量論性の決定および相互作用(非共有結合または共有結合相互作用)の物理的性質の決定も可能とする。相互作用が共有結合性であるかまたは部分的に共有結合性であるならば、対応する共有結合で結合した凝集体は、治療タンパク質を含む混合物を架橋試薬または架橋試薬混合物と接触させる前に、すでに高質量MALDI ToF質量分析法により検出される。
本発明自体は、好ましい態様の下記の説明から最善に理解されるであろう。当業者は、本明細書に示されそして説明された特定の態様について改変および/または変更を考えることができることが理解される。この説明の範囲内に入る任意のこのような改変または変更も本発明内に含まれることを意図する。本願の出願時点で出願人に知られている本発明の好ましい態様および最善の様式の説明が提示され、そして例示および説明の目的を意図とする。網羅的であることまたは開示された正確な形態に本発明を限定することを意図するものではなく、多くの改変および変更が前記および下記した教示に照らして可能である。この態様は、本発明の原理およびその実際の適用を示し、そして当業者が種々の態様において本発明を最善に利用することおよび意図する特定の使用に適する種々の改変を伴って本発明を最善に利用することを可能とする。
本発明の方法は、高質量MALDI ToF質量分析法および架橋化学を使用して、例えば、薬学的サンプルまたは不均質生物学的マトリックスなどの精製されたサンプルからの、治療タンパク質サンプルの凝集の量の直接の決定を可能とする。
本発明の方法は、例えば精製された薬学的サンプルまたは不均質生物学的マトリックスにおいて、治療タンパク質凝集体の分析が架橋後に可能であるという発見に基づいている。高質量MALDI質量分析法は、サンプル中の凝集の量の直接の決定を可能とする。高質量検出システムを備えたMALDI質量分析法により検出されたピークの表面積とサンプル中に存在する治療タンパク質の凝集した形態の割合との間には相関がある。
本発明は、治療タンパク質の凝集の量を決定するための直接の方法を提供し、そして
(a)モノマー治療タンパク質および非共有結合で凝集した治療タンパク質の混合物を架橋試薬(架橋試薬混合物を含む)と接触させて共有結合で安定化された治療タンパク質凝集体を形成する工程;
(b)工程(a)のタンパク質モノマーおよび凝集体から形成されたインタクトなイオンを、高質量検出器を備えた高質量MALDI ToF質量分析法により分析する工程;
(c)質量ピークを予め確立された較正曲線と比較することにより凝集の量を直接決定する工程;
を含む。
較正曲線は、既知の量のモノマーおよび架橋した凝集体(ダイマー、トリマー等)で予め形成された混合物を同じ反応条件下に高質量MALDI ToF質量分析法により分析し、そしてモノマーおよび凝集体のピーク面積を予め形成された混合物の組成の関数としてプロットすることにより得られる。質量スペクトルで観察されたモノマーピークおよび凝集体ピークの表面積を積分することにより、サンプル中の凝集の量の関数としてRiD/(Rim+RiD)をプロットすることによって標準曲線を確立することができる。次いでこの標準曲線を使用して未知のサンプルの凝集の量を直接決定する。特に、凝集の量は同じ質量スペクトルに存在するモノマー治療タンパク質および凝集した治療タンパク質に対応するピークの全表面積に基づいて確立される。本発明は、薬学的サンプル中の治療タンパク質凝集体の量を高い検出感度で分析するための直接の方法を提供する。この方法は、0.1%の精度で、サンプル中の2〜100%の凝集体の量の決定を提供する。
もし架橋工程を省くならば、治療タンパク質サンプルの高質量MALDI ToF質量分析法は、凝集体なしのモノマーを含有するサンプルに相当する。何故ならば、非共有結合的に結合した凝集体は、質量分析法の条件下にモノマーに崩壊するからである。
更に詳しくは、消化されていない、フラグメント化されていない治療タンパク質モノマーおよび凝集体のインタクトなイオンを測定することにより凝集の量を決定する方法であって、
(a)治療タンパク質モノマーおよび非共有結合で結合した治療タンパク質凝集体(1種または複数)を含む第1サンプルを得る工程;
(b)該第1サンプルを架橋試薬または架橋試薬混合物と接触させて、治療タンパク質モノマーおよび共有結合で安定化された治療タンパク質凝集体(1種または複数)を含む第2サンプルを得る工程;
(c)該第2サンプルをマトリックス溶液と混合してサンプル/マトリックス混合物を得る工程;
(d)基材上に該サンプル/マトリックス溶液をデポジションさせ、それにより均質な薄層を形成する工程;
(e)基材をレーザーからの放射により照明し、それにより該治療タンパク質モノマーおよび共有結合で安定化された治療タンパク質凝集体(1種または複数)を脱離させそしてインタクトなイオンを発生させる工程;
(f)消化されていない、フラグメント化されていない治療タンパク質モノマーおよび共有結合で安定化された治療タンパク質凝集体(1種または複数)の該インタクトなイオンを質量分離および高質量検出システムを使用して質量分離および検出する工程;
(g)治療タンパク質のモノマー形態および凝集した形態(1種または複数)について検出されたピークの表面積を決定する工程;
(h)予め確立された較正曲線上にこれらの表面積の値をプロットする工程;
(i)サンプルの凝集の量を較正曲線から決定する工程;
を含む。
所望により、処理されていない混合物中の治療タンパク質の共有結合凝集の量を決定するために、混合物中のインタクトなイオンを、混合物を架橋試薬または架橋試薬混合物と接触させる前に同じ条件下に高質量MALDI ToF質量分析法により更に分析する。これは、共有結合凝集と非共有結合凝集を区別することを可能とする。
本明細書で使用された用語「得る」は、ヒトまたは動物の身体で実施されるいかなる方法(procedure)も含まないが、例えば製造プロセスからまたは細胞培養物などの生物学的マトリックスからの治療タンパク質を含むサンプルおよび更に下記に説明するとおりのヒトを含む動物から単離されたサンプルを得る任意の他の方法を意味する。
本明細書で使用された用語「治療タンパク質凝集体」および「抗体または他の治療タンパク質凝集体」は、2つの抗体分子もしくは2つの治療タンパク質分子の特異的または非特異的結合(ダイマー)、3つの抗体分子もしくは3つの治療タンパク質分子の特異的または非特異的結合(トリマー)または4、5、6もしくはそれより多くの抗体分子もしくは他の治療タンパク質分子のモノマーからなるマルチマーの特異的または非特異的結合から生じる非共有結合相互作用であって、他の治療薬物分子が、例えば、潜在的薬物を含む薬物または薬物候補である、非共有結合相互作用を指す。分かり易くする目的で、「凝集体」は、1種類のみの治療タンパク質分子が存在するならば、「自己凝集体」を意味する。2つ以上の異なる治療タンパク質がサンプル中に存在するならば、「凝集体」は、任意の種類の凝集体、即ち、異なる治療タンパク質間の凝集体および自己凝集体を含む。
本明細書で使用された用語「凝集の量」は、サンプル中の凝集した治療タンパク質の割合を指す。この凝集の量は、モノマーと凝集体の全混合物中のモノマーの百分率または凝集体の百分率としてモノマー対ダイマー対トリマー対マルチマーの比として表されうるか、または対応する量のモノマーと凝集体の他の相対的指示により表されうる。
本明細書で使用された用語「高質量MALDI質量分析法」は、高分子範囲、例えば約5kDa〜約100MDa、更に特定的には約10kDa〜約20MDa、最も好ましくは約10kDa〜約10MDaの範囲のイオンの検出の感度を増強するように、この増強を行うのに適用される技術が何であれ、特に改変されたマトリックス支援式レーザー脱離イオン化質量分析計機器を使用する分析を指す。
本明細書で使用された用語「インタクトなイオン」は、質量分析の前またはその期間に治療タンパク質のプロテオリシス、分解または解離なしに共有結合で安定化された凝集体からの質量分析のために生成された帯電した分子を指す。
本明細書で使用された用語「共有結合で安定化された治療タンパク質凝集体」または「共有結合で安定化された抗体または他の治療タンパク質凝集体」は、凝集体の化学量論性を乱すことなく任意の既知の手段またはまだ発見されていない手段により架橋された上記した凝集体を指す。
本明細書で使用された用語「精製された薬学的サンプル」は、部分的にまたは完全に精製された、抗体、タンパク質、ポリペプチド、糖ポリペプチド、ホスホポリペプチド、ペプチドグリカン、多糖、ペプチド模倣物、脂質、炭水化物、ポリヌクレオチドまたは有機化合物の不均質もしくは均質混合物を含有する任意のサンプルを指す。
本明細書で使用された用語「不均質な生物学的マトリックス」は、組織、細胞または細胞ペレットなどの固体物質の溶解から得られた混合物;尿、血液、唾液、羊水または感染もしくは炎症の領域からの滲出液などの生物学的流体;細胞抽出物または生検サンプル;または生きているソース、例えば動物、例えばヒトまたは他の哺乳動物、植物、バクテリア、真菌またはウイルスから得られた混合物を含む任意の粗反応混合物を指す。
本明細書で使用された、治療タンパク質凝集体に関する用語「高質量またはより高い質量」は、約10kDaより高い質量、例えば約10kDa〜約100MDa、更に特定的には約20kDa〜約20MDa、最も好ましくは約30kDa〜約10MDaの範囲にある質量を指す。
本明細書で使用された用語「分析する」は、インタクトなイオンとしてこのような共有結合で安定化された治療タンパク質凝集体の存在、不存在または変化を同定または決定するかまたはインタクトなイオンとしてのこのような共有結合で安定化された治療タンパク質凝集体のアイデンティティーを決定することを意味する。
本明細書で使用された用語「高スループット」は、1日当たり1つより多くの分析、更に詳しくは1日当たりいくつか、最も好ましくは1日当たり数百の分析を行うことを意味する。
本明細書で使用された用語「凝集体検出の高い感度」は、その方法の低い量の治療タンパク質凝集体を検出する能力を指す。
本発明の方法は、精製したサンプルもしくは粗サンプルの両方、即ちいくらかの精製を受けていてもいなくてもよいが依然として外来汚染物を含有することがありうる生物学的サンプルの凝集の量の、高い精度(例えば約0.1%)、高い感度(例えば約2%)および高いシグナル対ノイズ比での分析を可能とする。したがって、他の場合には混合物、汚染物または不純物の存在により分析することが困難である汚染されたサンプルからの高分子量の治療タンパク質凝集体の凝集の量は、本発明の方法により可能とされ、そして更に大規模プロセスにおいて所望される自動化に従うことを可能とすることができる。これは、データの解釈のためのソフトウエアの使用およびサンプル調製および/または分析のコントロールのためのロボットの使用も含むことができる。
本発明は、さらに種々の用途、例えば、製品開発、製造プロセスにおける治療タンパク質の特徴付け、および自動化された用途および/または高スループット用途を含む治療タンパク質品質コントロールにおけるこの方法の使用を与える。
本発明の方法の態様を実施する際に、分析されるべき非共有結合で結合した治療タンパク質凝集体を含有するサンプルを、最初に、例えば、高質量MALDI質量分光分析の前に凝集体を安定化させるためのアミン反応性架橋化学反応を使用して架橋条件に供する。本発明の方法に有用な典型的な架橋試薬は、特許出願WO2006/116893に列挙されたような試薬である。可能な架橋試薬は、ホモ多官能性試薬およびヘテロ多官能性試薬の両方を含み、そしてイミドエステル、N−ヒドロキシスクシンイミド(スクシンイミジル)エステル、マレイミド、ハロアセタート、ピリジルジスルフィド、ヒドラジド、カルボジイミド、アリールアジド、イソシアナート、ビニルスルホン等を含む。スクシンイミジルエステルの架橋反応の例示的なものは、下記のスキームであり、このスキームにおいて、Rは更なる反応性基、例えば他のスクシンイミジルエステル官能基またはヨウ素を有する残基を含む残基であり、R’−NHはタンパク質中のアクセス可能なアミノ基を示す:
Figure 0005302212
典型的には、選択された架橋試薬を含有する溶液を、凝集体を含有するサンプルに加え、次いで特定された時間、例えば1〜60分間、好ましくは約30分間、ほぼ室温で、0℃または40℃までの温度でインキュベーションして、反応の完了を確実にする。典型的な架橋剤はホモ多官能性架橋剤およびヘテロ多官能性架橋剤を含む。この分析のための好ましい架橋試薬は、下記の架橋剤の少なくとも1つからなる混合物である:酒石酸ジスクシンイミジル、オクタン二酸ビス(3−スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド)エステル、ヨード酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、3,3’−ジチオプロピオン酸ジスクシンイミジル、オクタン二酸ジ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびエチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシナート)。
架橋工程の反応条件は、凝集していないモノマーの架橋を引き起こさないように注意深く選ばれなければならない。
架橋反応の完了後に、得られた液体混合物を、上記した高質量MALDI質量分析装置において使用する。
凝集の量は精製されたサンプル、例えば薬学的サンプルにおいて決定することができるが、複合生物学的マトリックス(complex biological matrices)中の凝集の量を決定することも可能である。
架橋反応の完了後、液体を任意の質量分析法装置、好ましくはMALDI MS装置において使用することを意図する。好ましい態様においては、治療タンパク質モノマーおよび今共有結合で安定化されている凝集体(1種または複数)を含有するサンプルのアリクォート、例えば1マイクロリットルを、マトリックス溶液のアリクォート、例えば1マイクロリットルと混合して、サンプル/マトリックス混合物を得るか、または当業者により知られているマトリックスの薄層または他のMALDIサンプルデポジション技術により覆われたプレート上に直接スポットさせる。本明細書に開示された方法において使用するための典型的なマトリックス溶液は、脱離およびイオン化を行うのに使用されるべきレーザーの波長における十分な吸収を有し、約室温(25℃)で液体であり、そしてガラス質またはガラス固体を形成することができる。中でも好ましいマトリックスは、特許出願WO2006/116893において好ましいことが述べられたマトリックスである。特に好ましいのは、シナピン酸(3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル)−プロプ−2−エン酸)である。相対的に低い揮発性の物質は、MS分析期間中真空の条件下急速な蒸発を回避するのに好ましい。好ましくは、液体は、単独のまたはサンプル溶液と混合された、マイクロリットル〜ナノリットル容積のマトリックスの分配を促進するための適切な粘度を有する。好ましくは、溶液の調製に使用される任意の液体(1つまたは複数)を、分析の前にサンプル/マトリックス混合物を乾燥することにより除去して、均質な「固溶体」、即ち、マトリックス全体にわたり分布したアナライト複合体を含む「固溶体」を形成する。好ましい態様においては、マトリックス溶液は、例えば、アセトニトリル、水およびトリフルオロ酢酸を含有する溶液中のシナピン酸(約10mg/mL)を含有する。架橋工程により達成された凝集体の安定化により、有機溶媒なしのマトリックス溶液またはソフトレーザー分析(即ち、使用された低いレーザーパワーまたは最初のショット分析)などの「ソフト」条件を最適化する手間を要するプロセスを受けることは必要ではない。
上記した好ましい態様は、乾燥した液体溶液(dried liquid solutions)を使用することを含むが、液体MALDI、オンラインAP−MALDI、固相調製および他のサンプル調製技術などの他の方法を、それらが当技術分野で周知されているとおりに使用することができる。
好ましい態様においては、発生したイオン粒子は、質量分析器における分離および検出の前に遅延した方式において質量分析器による分析のために引き出される。好ましくは、分離形式は、線形フィールドおよび非線形フィールド、例えばカーブドフィールドリフレクトロン(curved field reflectron)を使用する線形もしくはリフレクトロン飛行時間型(ToF)、単一もしくは多重四重極;単一もしくは多重磁場型もしくは電場型;フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR);またはイオントラップ質量分析計、最も好ましくは線形飛行時間型(ToF)を含むが、それらに限定されない。
イオン変換ダイノード(ICD)は好ましいが、他の既知の検出器であって、高質量イオンに感受性であり、したがって化学的に安定化された多成分イオンを検出することができる検出器を使用することができ、これらは、当技術分野で周知の、超電導トンネル接合素子(STJ)検出器、光学的にデカップリングされ、増幅されまたは特殊コーティングされた電子増倍管またはMCP’sおよび他のクライオデテクター(cryodetectors)または鋭敏な高質量検出器を含むが、それらに限定されない。
実施例
質量分析法:すべての質量測定は、高質量レトロフィット検出器システム(HM1,CovalX,Zurich,Switzerland)を備えたMALDI ToF質量分析計Reflex IV(Bruker,Bremen)で行った。CovalX HM1高質量レトロフィットシステムは、5〜1500kDa範囲における高分子量分子イオンの検出を最適化するように設計される。CovalX HM1高質量レトロフィットシステムは、すべての標準MALDI ToF質量分析計にインストールされうる。
実施例1:治療抗体候補Hab−32の凝集量の決定のための化学的架橋および高質量MALDI質量分析法の使用
Hab−32は、腫瘍細胞を化学療法および放射に対して脆弱性にし、そして腫瘍細胞成長を遅くする薬物抗体候補である。Hab−32モノマーおよびダイマーの精製されたサンプルは、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して調製される。サイズ排除クロマトグラフィーの異なる画分を、1:1:1オクタン二酸ビス(3−スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド)エステル、3,3’−ジチオプロピオン酸ジスクシンイミジルおよびグルタル酸ジスクシンイミジルの混合物(200μg/mL)を使用して架橋に供する。25℃で45分間インキュベーション後に、既知濃度でHab−32の異なる量のモノマーおよびダイマーを含有する混合サンプルを調製する。高質量MALDI ToF質量分析法(HM1, CovalX, Zurich, Switzerland)を使用してこのサンプルを分析する(図1A、B、C、D、E、F)。各スペクトルにおいて、Hab−32モノマーおよびHab−32ダイマーに対応する2つのピークを検出する。これらのスペクトルから、検出されたピークの表面積(RiD/(Rim+RiD)を凝集の%の関数としてプロットする。RiDはピークダイマーの表面積であり、Rimはピークモノマーの表面積である。得られた較正曲線は、サンプル中に存在する凝集した抗体の百分率と高質量MALDI ToF MSにより検出されたピークの表面積間との相関を示す。各サンプルのタンパク質濃度は10μLの容積で1μMである。1mg/mL架橋混合物1μLを使用して、高質量MALDI ToF 分析の前に凝集体を安定化する。凝集体溶液1μLをシナピン酸(70%アセトニトリル:30%水:0.1%トリフルオロ酢酸中の10mg/mL)1μLと混合し、そして乾燥小滴技術を使用して1μLをスポットすることによりサンプルを調製する。
実施例2:化学的架橋および高質量MALDIを使用する治療タンパク質TK−190906の凝集体を含有するサンプル中の凝集の量の決定
TK−190906は、チロシンキナーゼが関与する種々の生理学的経路に対するその効果のために開発された薬物候補である。この実施例は、治療タンパク質TK−190906の精製されていないサンプルから直接凝集の量を決定することを証明する。タンパク質TK−190906を含有するサンプルを、前もってサイズ排除クロマトグラフィーに供することなく、酒石酸ジスクシンイミジル、ヨード酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよび3,3’ジチオプロピオン酸ジスクシンイミジルの3:1:1混合物(200μg/mL、25℃、45分)を使用して直接架橋反応に供する。高質量MALDI質量分析法による分析後に、治療タンパク質TK−190906のダイマーがm/z86.2kDaで明らかに検出される(図2A)。実施例1におけるとおりに得られた較正曲線から、サンプル中の凝集の量を直接決定することができる。反応には、500nMのTK−190906サンプル10μLが関与する。MS分析のために、シナピン酸(70%アセトニトリル:30%水:0.1%トリフルオロ酢酸中の10mg/mL)1μLと混合された溶液1μlを使用し、そして乾燥小滴技術を使用して1μLをスポットしてサンプルを調製する。
実施例3:架橋安定化およびMALDI質量分析法を使用するタンパク質LK−200906の凝集の量の決定
LK−200906は、MAPk経路に対する効果について評価された薬物候補である。この実施例は、モノマー状態(図3A)および凝集した状態(図3B)のタンパク質LK−200906を実証する。凝集体のスペクトルにおいて、タンパク質LK−200206のダイマーおよびトリマーは、m/z=34.5kDaおよびm/z=51.8kDaで検出される。反応には、酒石酸ジスクシンイミジル、ヨード酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、3,3’ジチオプロピオン酸ジスクシンイミジルおよびエチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシニマート)の3:1:1:1混合物を使用して架橋反応に供された(200μg/mL、25℃、45分)500nMのLK−200206、10μLが関与する。サンプルの凝集の量は、モノマー、ダイマーおよびトリマーのピークの表面積を100%と考えて決定される。分析は、LK−200906の凝集されたサンプルが、モノマー形態49%,ダイマー形態16%およびトリマー形態35%を含有していることを示す。
実施例4: 架橋安定化およびMALDI質量分析法を使用する抗体TN300707の凝集の量の決定
TN300707は、心肺バイパスの処置について評価された治療抗体候補である。この実施例は、低い量の凝集体を含有するサンプルの高質量MALDI分析を証明する。架橋試薬による処理の前には、タンパク質TN300707のダイマーは検出されない(図4A)。架橋後に、TN300707のダイマーが、m/z=304.92で検出される(図4B)。分析には、酒石酸ジスクシンイミジル、ヨード酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよび3,3’ジチオプロピオン酸ジスクシンイミジルおよびエチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシニマート)の3:1:1:1混合物を使用して架橋反応に供された(200μg/mL、25℃、45分)500nMのTN300707、10μLが関与する。サンプルの凝集の量は、架橋実験についてのモノマーのピークおよびダイマーピークの表面積を考慮して決定され、そして予め確立された較正曲線と比較される(図4C)。分析は、TN300707のサンプルがダイマー4.47%を含有することを示す。同じ実験を10回繰り返すと、ダイマー値は4.47%±0.08との分析の高い精度を示した。

Claims (12)

  1. (a)モノマー形態および非共有結合で自己凝集した形態との混合からなる治療タンパク質を架橋試薬または架橋試薬混合物と接触させて、非共有結合で自己凝集した形態から共有結合で安定化された自己凝集した形態の該治療タンパク質を形成する工程;
    (b)工程(a)のモノマー形態および自己凝集した形態の該治療タンパク質から形成されたインタクトなイオンを、5〜1500kDa範囲の高質量検出器を備えた高質量MALDI ToF質量分析法により分析する工程;
    (c)質量ピークを予め確立された較正曲線と比較することにより自己凝集した形態の該治療タンパク質割合を直接決定する工程;
    を含む、自己凝集した治療タンパク質の割合を決定するための方法。
  2. - モノマー形態および非共有結合で自己凝集した形態との混合を含む治療タンパク質の第1サンプルを得る工程;
    - 該第1サンプルを架橋試薬または架橋試薬混合物と接触させて、モノマー形態および共有結合で安定化された自己凝集した形態との混合の該治療タンパク質を含む第2サンプルを得る工程;
    - 該第2サンプルをマトリックス溶液と混合してサンプル/マトリックス混合物を得る工程;
    - 基材上に該サンプル/マトリックス混合物をデポジションさせ、それにより均質な薄層を形成する工程;
    - 基材をレーザーからの放射により照明し、それによりモノマー形態の該治療タンパク質および共有結合で安定化された自己凝集した形態の該治療タンパク質を脱離させ、そしてインタクトなイオンを発生させる工程;
    - 消化されていない、フラグメント化されていないモノマー形態の該治療タンパク質および消化されていない、フラグメント化されていない共有結合で安定化された自己凝集した形態の該治療タンパク質の該インタクトなイオンを質量分離および5〜1500kDa範囲の高質量検出システムを使用して質量分離および検出する工程;
    - 該治療タンパク質のモノマー形態および自己凝集した形態について検出されたピークの面積を決定する工程;
    - 予め確立された較正曲線上にこれらの面積の値をプロットする工程;
    - 該治療タンパク質の自己凝集の割合を較正曲線から決定する工程;
    を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 既知の割合の自己凝集した形態の該治療タンパク質を有するサンプルを分析することにより較正曲線を確立する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 同じ質量分析法スペクトルに存在するモノマー形態および自己凝集した形態の該治療タンパク質に対応するピーク全面積に基づいて自己凝集の割合を確立する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 更なる工程において、モノマー形態および非共有結合で自己凝集した形態との混合の該治療タンパク質から形成されたインタクトなイオンを、該混合物を架橋試薬または架橋試薬混合物と接触させる前に高質量検出器を備えた高質量MALDI ToF質量分析法により分析して、共有結合自己凝集の割合を決定する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 精製された多成分サンプルまたは不均質生物学的マトリックスにおいて自己凝集した治療タンパク質を分析する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 治療タンパク質が抗体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 治療タンパク質が薬物または薬物候補である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方
    法。
  9. 架橋試薬が、酒石酸ジスクシンイミジル、オクタン二酸ビス(3−スルホ−N−ヒドロ
    キシスクシンイミド)エステル、ヨード酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、3
    ,3’−ジチオプロピオン酸ジスクシンイミジル、オクタン二酸ジ−N−ヒドロキシスク
    シンイミドエステル、グルタル酸ジスクシンイミジルおよびエチレングリコールビス(ス
    クシンイミジルスクシナート)から選ばれる1つの試薬または架橋試薬の混合物である、
    請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  10. 高質量検出器がイオン変換ダイノード(ICD)検出器である、請求項1〜9のいずれ
    か一項に記載の方法。
  11. 薬物開発、製造プロセスにおける治療タンパク質の特徴付けおよび治療タンパク質品質
    コントロールのための請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法の使用。
  12. 自動化された高スループット分析における請求項11に記載の使用。
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